(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
G01H 11/08 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
G01H11/08
(21)【出願番号】P 2020088660
(22)【出願日】2020-05-21
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 守
(72)【発明者】
【氏名】大泉 晶
(72)【発明者】
【氏名】田尻 和喜
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特許第5933144(JP,B1)
【文献】特開平11-064095(JP,A)
【文献】特開2016-089870(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0143781(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00 - 17/00
G01M 13/00 - 13/045
G01M 99/00
G01N 29/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出針と、
前記検出針の後端が挿入される筒状のホルダーと、
前記ホルダー内の前記検出針の後方に前記検出針の後端と接して設けられる圧電素子と、
前記ホルダー内の前記圧電素子の後方に前記圧電素子と接して設けられ、前記圧電素子を前記検出針の後端に押し付ける押し付け部材と、
前記押し付け部材の後方に設けられ、前記ホルダーと螺合することによって前記押し付け部材を前記圧電素子側へ押し付けるねじ部材と、
前記ねじ部材の螺合動作による前記押し付け部材の供回りを阻止する供回り阻止部とを備え、
前記供回り阻止部は、前記ホルダー内の前記押し付け部材と前記ねじ部材との間において前記押し付け部材および前記ねじ部材とは別体に設けられており、前記ねじ部材の螺合動作によって生じる、前記ホルダーの軸心方向の押し付け力および前記ホルダーの軸心周りの回転力のうち、前記押し付け力を前記押し付け部材に伝達する伝達部を有し、
前記供回り阻止部は、前記押し付け部材と直接的または間接的に接する基部をさらに有し、
前記伝達部は、前記基部と一体形成され、前記ホルダーの軸心上で前記ねじ部材と点接触しており、
前記検出針の先端を測定対象物に押し当てることによって該測定対象物の振動を検出する
ことを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
検出針と、
前記検出針の後端が挿入される筒状のホルダーと、
前記ホルダー内の前記検出針の後方に前記検出針の後端と接して設けられる圧電素子と、
前記ホルダー内の前記圧電素子の後方に前記圧電素子と接して設けられ、前記圧電素子を前記検出針の後端に押し付ける押し付け部材と、
前記押し付け部材の後方に設けられ、前記ホルダーと螺合することによって前記押し付け部材を前記圧電素子側へ押し付けるねじ部材と、
前記ねじ部材の螺合動作による前記押し付け部材の供回りを阻止する供回り阻止部とを備え、
前記供回り阻止部は、前記ホルダー内の前記押し付け部材と前記ねじ部材との間において前記押し付け部材および前記ねじ部材とは別体に設けられており、前記ねじ部材の螺合動作によって生じる、前記ホルダーの軸心方向の押し付け力および前記ホルダーの軸心周りの回転力のうち、前記押し付け力を前記押し付け部材に伝達する伝達部を有し、
前記供回り阻止部は、前記ねじ部材と直接的または間接的に接する基部をさらに有し、
前記伝達部は、前記基部と一体形成され、前記ホルダーの軸心上で前記押し付け部材と点接触して
おり、
前記検出針の先端を測定対象物に押し当てることによって該測定対象物の振動を検出する
ことを特徴とするセンサ装置。
【請求項3】
請求項
1または
2に記載のセンサ装置において、
前記伝達部は、前記基部から半球状または半楕円状に突出している
ことを特徴とするセンサ装置。
【請求項4】
検出針と、
前記検出針の後端が挿入される筒状のホルダーと、
前記ホルダー内の前記検出針の後方に前記検出針の後端と接して設けられる圧電素子と、
前記ホルダー内の前記圧電素子の後方に前記圧電素子と接して設けられ、前記圧電素子を前記検出針の後端に押し付ける押し付け部材と、
前記押し付け部材の後方に設けられ、前記ホルダーと螺合することによって前記押し付け部材を前記圧電素子側へ押し付けるねじ部材と、
前記ねじ部材の螺合動作による前記押し付け部材の供回りを阻止する供回り阻止部とを備え、
前記供回り阻止部は、
前記ねじ部材を兼用しており、
前記ホルダーと螺合する螺合部と、
前記螺合部と一体形成されると共に、前記ホルダーの軸心上で前記押し付け部材と点接触し、前記ホルダーへの螺合動作によって生じる前記ホルダーの軸心方向の押し付け力を前記押し付け部材に伝達する伝達部とを有
しており、
前記検出針の先端を測定対象物に押し当てることによって該測定対象物の振動を検出する
ことを特徴とするセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示の技術は、センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、検出針を測定対象物に押し当てて振動を検出するセンサ装置が知られている。このセンサ装置は、筒状のケーシングと、該ケーシングに収容される振動検出ユニットとを備えている。振動検出ユニットは、検出針の後端が挿入された筒状のホルダー内に、圧電素子(電極板含む)、ウエイトおよびバネ部材等が順に挿入されている。このセンサ装置では、検出針の先端を測定対象物に押し当てることにより、測定対象物の振動が検出針に伝わり、圧力変動として圧電素子に作用し電圧変動が生じる。そして、電圧変動に関する信号が電極板から信号処理回路に送られて測定対象物の振動が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した振動検出ユニットでは、ホルダー内に圧電素子やウエイト等を順に挿入した後、ねじ部材をホルダーに締め付けて圧電素子やウエイト等を保持する。こうして、圧電素子が検出針の後端に所定の力で押し付けられる。しかしながら、ねじ部材を締め付ける際、ウエイトが供回りして圧電素子(電極板含む)に対し摺動する虞がある。そうすると、ウエイトの摺動面が粗い場合には、圧電素子が損傷してしまい、振動の検出精度が低下する虞がある。
【0005】
本願に開示の技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ホルダーにねじ部材を締め付ける動作(螺合動作)に起因する圧電素子の損傷を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示の技術は、検出針と、ホルダーと、圧電素子と、押し付け部材と、ねじ部材と、供回り阻止部とを備え、前記検出針の先端を測定対象物に押し当てることによって該測定対象物の振動を検出するセンサ装置である。前記ホルダーは、前記検出針の後端が挿入される筒状のものである。前記圧電素子は、前記ホルダー内の前記検出針の後方に前記検出針の後端と接して設けられている。前記押し付け部材は、前記ホルダー内の前記圧電素子の後方に前記圧電素子と接して設けられ、前記圧電素子を前記検出針の後端に押し付けるものでる。前記ねじ部材は、前記押し付け部材の後方に設けられ、前記ホルダーと螺合することによって前記押し付け部材を前記圧電素子側へ押し付けるものである。前記供回り阻止部は、前記ねじ部材の螺合動作による前記押し付け部材の供回りを阻止するものである。
【発明の効果】
【0007】
本願に開示の技術によれば、ホルダーにねじ部材を締め付ける動作(螺合動作)に起因する圧電素子の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るセンサ装置の概略構成を示す正面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るセンサ本体の概略構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るセンサ本体の要部を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態の変形例1に係るセンサ本体の要部を拡大して示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態の変形例2に係るセンサ本体の要部を拡大して示す断面図である。
【0009】
以下、本願の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本願に開示の技術、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0010】
図1に示す本実施形態のセンサ装置1は、図示しない固定器具に連結して測定対象物(例えば、スチームトラップ)に固定し、該測定対象物の振動および温度の2つを検出する、いわゆる固定タイプのセンサである。センサ装置1は、例えば上下方向に延びる状態で測定対象物に固定される。
【0011】
センサ装置1は、センサ本体2と、アンテナ3と、接続軸4とを備えている。接続軸4は、中空軸であり、両端がナット5,6によってセンサ本体2とアンテナ3に連結されている。アンテナ3は、図示しないが、信号処理回路や発信部が内蔵されており、センサ本体2によって検出された測定対象物の振動および温度に関する信号が送られる。
【0012】
図2に示すように、センサ本体2は、ケーシング10と、振動検出ユニット20と、温度検出ユニット40(熱電対ユニット)とを備えている。
【0013】
ケーシング10は、略円筒状に形成され、大径部11、中径部12および小径部13を有する。大径部11の外周面には、上述したナット5が締結される雄ねじ部11aが形成されている。小径部13の外周面には、上述した固定器具に締結される雄ねじ部13aが形成されている。
【0014】
振動検出ユニット20は、検出針21と、ホルダー22と、圧電素子25,26と、ウエイト29(錘)と、バネ部材31と、ねじ部材32と、供回り阻止部37とを備え、ケーシング10に挿入されて測定対象物の振動を検出(測定)するものである。
【0015】
検出針21は、細長い棒状の部材であり、後方側から順に、大径部21a、中径部21bおよび小径部21cが形成されている。検出針21は、ケーシング10と同軸に配置されると共に、先端21dがケーシング10から突出する状態で配置されている。
【0016】
ホルダー22は、内側の金属製ホルダー23と、該金属製ホルダー23を収容保持する外側の樹脂製ホルダー24とで構成されている。金属製ホルダー23および樹脂製ホルダー24は、何れも、有底の円筒状に形成されており、ケーシング10と同軸に配置されている。
【0017】
金属製ホルダー23は、筒状壁の径が異なる大径部23a、中径部23bおよび小径部23cが後方側から順に形成されており、小径部23cに検出針21の後端が挿入されて固定されている。具体的に、検出針21は、大径部21aが金属製ホルダー23の中径部23b内に位置し、中径部21bの後方側が金属製ホルダー23の小径部63cに挿入されている。
【0018】
検出針21の大径部21aは、金属製ホルダー23の小径部23cの内径よりも大径に形成されており、金属製ホルダー23の中径部23bと小径部23cとの段差部に接している。金属製ホルダー23内には、圧電素子25,26やウエイト29、バネ部材31等が収容されており、これらの構成については後で詳述する。
【0019】
樹脂製ホルダー24は、金属製ホルダー23の前方側に配置され、金属製ホルダー23の小径部23cおよび中径部23bと、大径部23aの過半部とを収容している。具体的に、樹脂製ホルダー24は、筒状壁の径が異なる大径部24aおよび小径部24bが後方側から順に形成されている。樹脂製ホルダー24内において、大径部24aに金属製ホルダー23の大径部23aが位置し、小径部24bに金属製ホルダー23の中径部23bおよび小径部23cが位置している。そして、樹脂製ホルダー24の底壁24cには、検出針21の中径部21bが嵌合する挿入孔24dが形成されている。
【0020】
金属製ホルダー23は、2つの突片23dを有している。突片23dは、金属製ホルダー23大径部23aの筒状壁から突出し周方向に延びる片であり、互いに対向する位置に設けられている。一方、樹脂製ホルダー24は、筒状壁の内周面に、突片23dが挿入される2つの周方向溝24eが形成されている。2つの周方向溝24eは、大径部24aの周方向に延びる溝であり、互いに対向する位置に設けられている。
【0021】
センサ本体2は、振動検出ユニット20を前方へ付勢するコイルバネ35を備えている。振動検出ユニット20は、ケーシング10の軸方向(即ち、前後方向)に変位可能にケーシング10に挿入されている。コイルバネ35は、ケーシング10内の振動検出ユニット20の後方に配置されている。
【0022】
コイルバネ35の一端(後方側端部)は、スナップリング36に支持され、コイルバネ35の他端(前方側端部)は、樹脂製ホルダー24における筒状壁の後方側端面に接している。スナップリング36は、ケーシング10の大径部11の内面に形成された溝11bに嵌め込まれており、コイルバネ35の一端を受けている。コイルバネ35は、樹脂製ホルダー24(ホルダー22)を前方へ付勢することで振動検出ユニット20を前方へ付勢し、検出針21の先端21dをケーシング10から突出させるように構成されている。
【0023】
温度検出ユニット40は、接触板41(伝熱板)と、保持部材42とを備え、測定対象物の温度を検出(測定)するものである。接触板41は、略環状の板部材である。保持部材42は、検出針21の小径部21cと接触板41を保持するものである。保持部材42は、略円筒状に形成され、ケーシング10の小径部13の先端側に収容(挿入)されている。接触板41は、保持部材42の先端に保持されている。
【0024】
保持部材42には、それぞれ軸方向に延びる、1つの検出針用孔43と、2つの熱電対線用孔44,45とが形成されている。検出針用孔43は、保持部材42の中央に形成された貫通孔であり、検出針21の小径部21cが挿入されている。熱電対線用孔44,45は、検出針用孔43を間に置いて180°ずれた位置に形成された貫通孔であり、2本の熱電対線(図示省略)が挿通されている。この2本の熱電対線は、一端が接触板41に接続され、他端がアンテナ3の信号処理回路に接続されている。また、ケーシング10内には保持部材42をケーシング10の先端側へ付勢するコイルバネ46が設けられている。
【0025】
図3にも示すように、検出針21の大径部21aが挿入された金属製ホルダー23(ホルダー22)内には、圧電素子25,26と、ウエイト29(錘)と、バネ部材31と、ねじ部材32と、供回り阻止部37とが設けられている。
【0026】
具体的に、金属製ホルダー23の小径部23c内には、検出針21の後方に、2つの圧電素子25,26が設けられている。2つの圧電素子25,26には、電極板27,28が一体に設けられている。より詳しくは、小径部23c内では、検出針21側から順に、第1圧電素子25、第1電極板27、第2圧電素子26および第2電極板28が互いに接した状態で配置されている。第1圧電素子25は、検出針21の後端(大径部21a)と接した状態で配置されている。
【0027】
なお、金属製ホルダー23の小径部23cの内面には、圧電素子25,26および電極板27,28の外周を保持するガイド部23eが形成されている。また、2つの電極板27,28は、図示しないが、それぞれ信号線によってアンテナ3の信号処理回路に接続されている。つまり、信号線はセンサ本体2から接続軸4内を通ってアンテナ3内まで配線されている。
【0028】
ウエイト29は、金属製ホルダー23内の圧電素子25,26の後方に、圧電素子25,26と接して設けられている。即ち、ウエイト29は、第2電極板28の後方に第1電極板27と接して設けられている。ウエイト29は、圧電素子25,26を検出針21の後端(大径部21a)に押し付ける押し付け部材である。
【0029】
ウエイト29は、金属製ホルダー23の大径部23aと小径部23bとに跨って設けられている。ウエイト29は、一体形成された頭部29aと軸部29bとで構成されている。頭部29aは、金属製ホルダー23の軸心Xと同軸の円板状に形成され、軸部29bは、頭部29aから軸心Xと同軸に検出針21側へ延びる棒状に形成されている。頭部29aは金属製ホルダー23の大径部23aに位置し、軸部29bは金属製ホルダー23の小径部23bに位置して第2電極板28と接している。ウエイト29は、自身の重力によって圧電素子25,26を検出針21に押し付ける。
【0030】
バネ部材31は、金属製ホルダー23内のウエイト29の後方に設けられている。具体的に、バネ部材31は、金属製ホルダー23の大径部23aに設けられている。バネ部材31は、ウエイト29の頭部29aに接して設けられている。本実施形態では、バネ部材31は、2つ重ねられた皿バネである。バネ部材31は、ウエイト29を前方へ付勢することにより、圧電素子25,26を検出針21に押し付ける。
【0031】
ねじ部材32は、ウエイト29の後方に設けられ、金属製ホルダー23と螺合することによってウエイト29を圧電素子25,26側へ押し付けるものである。具体的に、ねじ部材32は、金属製ホルダー23の大径部23a内のバネ部材31の後方であって供回り阻止部37の後方に、供回り阻止部37と接して設けられている。つまり、金属製ホルダー23内には、圧電素子25,26の後方に、ウエイト29、バネ部材31、供回り阻止部37およびねじ部材32が順に設けられている。ねじ部材32は、外周面に雄ねじが形成された円板状の部材であり、大径部23aの内面の雌ねじ部23eと螺合することで金属製ホルダー23に固定される。
【0032】
より詳しくは、ねじ部材32は、2つ設けられており、互いに接している。2つのうち前方側のねじ部材32(即ち、供回り阻止部37と接している方のねじ部材32)は、その締め付け力によって、供回り阻止部37、バネ部材31およびウエイト29を介して圧電素子25,26を検出針21に押し付ける。2つのうち後方側のねじ部材32は、前方側のねじ部材32の緩み止め機能を有している。
【0033】
供回り阻止部37は、ねじ部材32(前方側のねじ部材32)の螺合動作によるウエイト29の供回りを阻止するものである。
【0034】
具体的に、供回り阻止部37は、金属製ホルダー23内のウエイト29(より詳しくは、バネ部材31)とねじ部材32との間に設けられている。供回り阻止部37は、基部37aと、伝達部37bとを有している。
【0035】
基部37aは、バネ部材31と接している(即ち、ウエイト29と間接的に接している)。より詳しくは、基部37aは、軸心Xと同軸の円板状に形成されている。基部37aは、一方の面(前方側の面)がバネ部材31と接している。つまり、基部37aとバネ部材31とは、互いに面接触している。なお、ウエイト29の頭部29a、バネ部材31および基部37aのそれぞれの径は、互いに略同じであり、金属製ホルダー23の大径部23aの内径よりも若干小さい。
【0036】
伝達部37bは、ねじ部材32の螺合動作によって生じる、金属製ホルダー23の軸心X方向の押し付け力(以下、単に「押し付け力」ともいう)および金属製ホルダー23の軸心X周りの回転力(以下、単に「回転力」ともいう)のうち、軸心X方向の押し付け力をウエイト29に伝達する。ねじ部材32の螺合動作は、ねじ部材32が軸心X周りに回転する動作である。
【0037】
より詳しくは、伝達部37bは、基部37aと一体形成されている。そして、伝達部37bは、金属製ホルダー23の軸心X上でねじ部材32(前方側のねじ部材32)と点接触するように構成されている。
【0038】
具体的に、伝達部37bは、基部37aの他方の面(後方側の面)からねじ部材32側に半球状に突出している。伝達部37bは、基部37aの中央に形成されている。つまり、伝達部37bの中心は軸心Xと一致している。伝達部37bは、その突出端が、ねじ部材32(前方側のねじ部材32)の下面と点接触している。ねじ部材32の下面は、平坦な面である。そして、伝達部37bとねじ部材32との接点Pは、軸心X上に位置している。
【0039】
上述したセンサ装置1では、検出針21の先端21dを測定対象物に押し当てて検出針21を押し込むことによって、測定対象物の機械的振動が検出針21に伝わり、圧力変動として圧電素子25,26に作用する。これに応じて圧電素子25,26に電圧変動が生じ、この電圧変動に関する信号が電極板27,28から信号線を介してアンテナ3の信号処理回路に送られる。こうして、振動検出ユニット20によって測定対象物の振動が検出(測定)される。
【0040】
また、センサ装置1では、測定対象物の熱(高温熱)が接触板41に伝わり、2本の熱電対線において電位差が生じる。そして、この電位差に関する信号がアンテナ3の信号処理回路に送られて測定対象物の温度が検出(測定)される。つまり、本実施形態の温度検出ユニット40は検出針21が押し込まれることによって測定対象物に接して該測定対象物の温度を検出する。以上のようにして検出された測定対象物の振動および温度の数値は、アンテナ3の発信部から別の受信部(図示省略)へ無線送信される。
【0041】
次に、金属製ホルダー23にねじ部材32を締め付ける(螺合する)際の動作について説明する。検出針21の後端が挿入された金属製ホルダー23には、順に、圧電素子25,26(電極板27,28含む)、ウエイト29、バネ部材31および供回り阻止部37が収容される。そして、金属製ホルダー23にねじ部材32(前方側のねじ部材32)を締め付ける(螺合する)ことにより、ウエイト29、バネ部材31、供回り阻止部37およびねじ部材32が、互いに密接して圧電素子25,26を検出針21に押し付ける。
【0042】
より詳しくは、ねじ部材32の締め付け動作(螺合動作)によって、軸心X方向の押し付け力および軸心X周りの回転力が、供回り阻止部37に作用する。ここで、供回り阻止部37(伝達部37b)とねじ部材32とは、軸心X上の接点Pで点接触しているため、ねじ部材32の回転力は供回り阻止部37には伝達されない。つまり、ねじ部材32の締め付け動作(螺合動作)によって生じる押し付け力および回転力のうち、押し付け力のみが供回り阻止部37に伝達される。
【0043】
供回り阻止部37に伝達された押し付け力は、バネ部材31を介してウエイト29に伝達される。こうして、押し付け力は、供回り阻止部37(伝達部37b)によってウエイト29に伝達されるが、回転力は、供回り阻止部37(伝達部37b)によって遮断される。このように、ウエイト29には回転力が伝達されないため、ねじ部材32の締め付け動作(螺合動作)によるウエイト29の供回りが阻止される。
【0044】
こうして、圧電素子25,26が、ウエイト29、バネ部材31、供回り阻止部37およびねじ部材32によって検出針21に所定の力(初期押付け力)で押し付けられる。これにより、測定対象物以外の振動や力が外乱として圧電素子25,26に作用しても、その外乱を吸収することができ、外乱による影響を受けずにすむ。
【0045】
以上のように、上記実施形態のセンサ装置1は、ねじ部材32の螺合動作によるウエイト29の供回りを阻止する供回り阻止部37を備えている。具体的には、供回り阻止部37は、金属製ホルダー23内のウエイト29(押し付け部材)とねじ部材32との間に設けられている。そして、供回り阻止部37は、ねじ部材32の螺合動作によって生じる、金属製ホルダー23の軸心X方向の押し付け力および軸心X周りの回転力のうち、押し付け力をウエイト29に伝達する伝達部37bを有する。
【0046】
上記の構成によれば、ねじ部材32の螺合動作によって生じる押し付け力はウエイト29に伝達されるが、回転力はウエイト29に伝達されない。つまり、回転力は遮断される。そのため、ねじ部材32の螺合動作によるウエイト29の供回りを阻止することができる。これにより、ウエイト29が圧電素子25,26(電極板27,28含む)に対して摺動することによる圧電素子25,26の損傷を防止することができる。そのため、振動の検出精度の低下を防止することができる。
【0047】
また、供回り阻止部37は、ウエイト29と間接的に接する基部37aをさらに有する。そして、供回り阻止部37の伝達部37bは、基部37aと一体形成され、金属製ホルダー23の軸心X上でねじ部材32と点接触している。この構成によれば、押し付け力は伝達し回転力は遮断することを簡易な構成で実現することができる。
【0048】
また、供回り阻止部37の伝達部37bは、基部37aから半球状に突出している。この構成によれば、伝達部37bとねじ部材32とが軸心X上で点接触する構成を簡易に実現することができる。
【0049】
(実施形態の変形例1)
本変形例は、上記実施形態のセンサ装置1において、バネ部材および供回り阻止部の配置を変更するようにしたものである。ここでは、上記実施形態と異なる点について説明する。
【0050】
図4に示すように、本変形例の供回り阻止部38は、ウエイト29の後方に設けられ、バネ部材31は、供回り阻止部38の後方に設けられている。バネ部材31は、供回り阻止部38を前方へ付勢することにより、ウエイト29を介して圧電素子25,26を検出針21に押し付ける。ねじ部材32は、バネ部材31の後方に、バネ部材31と接して設けられている。
【0051】
供回り阻止部38は、金属製ホルダー23内のウエイト29とねじ部材32(より詳しくは、バネ部材31)との間に設けられている。供回り阻止部38は、基部38aと伝達部38bとを有している。
【0052】
基部38aは、バネ部材31と接している(即ち、ねじ部材32と間接的に接している)。基部38aは、一方の面(後方側の面)がバネ部材31と接している。つまり、基部38aとバネ部材31とは、互いに面接触している。伝達部38bは、上記実施形態と同様、ねじ部材32の螺合動作によって生じる押し付け力および回転力のうち、押し付け力をウエイト29に伝達する。
【0053】
伝達部38bは、基部38aと一体形成されている。伝達部38bは、金属製ホルダー23の軸心X上でウエイト29と点接触するように構成されている。具体的に、伝達部38bは、基部38aの他方の面(前方側の面)からウエイト29側に半球状に突出している。伝達部38bは、基部38aの中央に形成されている。つまり、伝達部38bの中心は軸心Xと一致している。伝達部38bは、その突出端が、ウエイト29の頭部29aの上面29cと点接触している。頭部29aの上面29cは、平坦な面である。そして、伝達部38bとウエイト29との接点Pは、軸心X上に位置している。
【0054】
本変形例では、ねじ部材32の締め付け動作(螺合動作)によって生じる押し付け力および回転力が、バネ部材31に作用する。そのため、バネ部材31は、供回り阻止部38に押し付けられると共に、軸心X周りに回転し得る(即ち、供回りする)。供回り阻止部38(基部38a)には、バネ部材31から押し付け力および回転力が作用する。そのため、供回り阻止部38は、ウエイト29に押し付けられると共に、軸心X周りに回転し得る(即ち、供回りする)。
【0055】
ここで、供回り阻止部38(伝達部38b)とウエイト29とは、軸心X上の接点Pで点接触しているため、供回り阻止部38の回転力はウエイト29には伝達されない。つまり、ねじ部材32の締め付け動作(螺合動作)によって生じる押し付け力および回転力のうち、押し付け力のみがウエイト29に伝達される。こうして、押し付け力は、供回り阻止部38(伝達部38b)によってウエイト29に伝達されるが、回転力は、供回り阻止部38(伝達部38b)によって遮断される。
【0056】
このように、本変形例においても、ウエイト29には回転力が伝達されないため、ねじ部材32の螺合動作によるウエイト29の供回りを阻止することができる。したがって、ウエイト29が圧電素子25,26(電極板27,28含む)に対して摺動することによる圧電素子25,26の損傷を防止することができる。その他の構成、作用および効果は、上記実施形態と同様である。
【0057】
(実施形態の変形例2)
本変形例は、上記変形例1のセンサ装置1において、供回り阻止部がねじ部材32(前方側のねじ部材32)を兼用するようにしたものである。また、本変形例は、上記変形例1のバネ部材31が省略されている。ここでは、上記変形例1と異なる点について説明する。
【0058】
図5に示すように、本変形例の供回り阻止部39は、螺合部39aと、伝達部39bとを有している。螺合部39aは、金属製ホルダー23(ホルダー22)と螺合する。伝達部39bは、螺合部39aと一体形成されている。伝達部39bは、金属製ホルダー23の軸心X上でウエイト29と点接触し、金属製ホルダー23への螺合動作によって生じる軸心X方向の押し付け力をウエイト29に伝達する。
【0059】
螺合部39aは、上記変形例1の基部38aと同様、軸心Xと同軸の円板状に形成されている。螺合部39aは、外周面に雄ねじが形成されている。つまり、供回り阻止部39は、螺合部39aが大径部23aの雌ねじ部23eと螺合することで金属製ホルダー23に固定される。螺合部39aは、一方の面(後方側の面)がねじ部材32と接している。このねじ部材32は、供回り阻止部39(螺合部39a)の緩み止め機能を有している。
【0060】
伝達部39bは、螺合部39aの他方の面(前方側の面)からウエイト29側に半球状に突出している。伝達部39bは、螺合部39aの中央に形成されている。つまり、伝達部39bの中心は軸心Xと一致している。伝達部39bは、その突出端が、ウエイト29の頭部29aの上面29cと点接触している。そして、伝達部39bとウエイト29との接点Pは、軸心X上に位置している。
【0061】
本変形例では、供回り阻止部39の螺合動作によって、軸心X方向の押し付け力および軸心X周りの回転力が生じる。供回り阻止部39の押し付け力は、上記変形例1と同様、伝達部39bを介してウエイト29に伝達される。供回り阻止部39の回転力は、上記変形例1と同様、ウエイト29には伝達されない。したがって、本変形例においても、ねじ部材(螺合部39a)の螺合動作によるウエイト29の供回りを阻止することができる。その他の構成、作用および効果は、上記実施形態と同様である。
【0062】
(その他の実施形態)
なお、本願に開示の技術は、上記実施形態および変形例のセンサ装置1について、以下のような構成としてもよい。
【0063】
例えば、供回り阻止部37,38,39の伝達部37b,38b,39bは、基部37a,38a(螺合部39a)から半楕円状に突出するものであってもよい。
【0064】
また、伝達部の形状は、ウエイト29と点接触し得るものであれば、上述した形状に限られない。例えば、伝達部の形状は、基部(螺合部)から円錐状または角錐状に突出するものであってもよい。
【0065】
また、上記実施形態および変形例では、伝達部を供回り阻止部に備えるようにしたが、
これに代えて、伝達部をウエイトの頭部の上面に備えるようにしてもよい。また、伝達部
を供回り阻止部およびウエイトの両方に備えるようにしてもよい。また、上記実施形態において、供回り阻止部37の基部37aは、ウエイト29(押し付け部材)と直接的に接するようにしてもよい。また、上記変形例1において、供回り阻止部38の基部38aは、ねじ部材32と直接的に接するようにしてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、測定対象物に固定して振動等を測定するセンサ装置1について説明したが、本願に開示の技術は、作業者が手で持って測定対象物に押し当てて測定するハンディタイプのセンサ装置1についても同様の作用効果を得ることができる。
【0067】
また、本願のセンサ装置1は、温度検出ユニット40を省略して、測定対象物の振動のみを検出するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本願に開示の技術は、検出針を測定対象物に押し当てて測定対象物の振動を検出するセンサ装置について有用である。
【符号の説明】
【0069】
1 センサ装置
21 検出針
22 ホルダー
23 金属製ホルダー(ホルダー)
25,26 圧電素子
29 ウエイト(押し付け部材)
32 ねじ部材
37,38 供回り阻止部
37a,38a 基部
37b,38b 伝達部
39 供回り阻止部
39a 螺合部
39b 伝達部
X 軸心