(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】足部評価システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/107 20060101AFI20240308BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
A61B5/107 130
A61B5/11 230
(21)【出願番号】P 2020109394
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】519318351
【氏名又は名称】山下 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110560
【氏名又は名称】松下 恵三
(74)【代理人】
【識別番号】100182604
【氏名又は名称】長谷川 二美
(72)【発明者】
【氏名】山下 和彦
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0285646(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0140463(US,A1)
【文献】国際公開第2018/110623(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06- 5/22
A43B 1/00- 23/30
A43C 1/00- 19/00
A43D 1/00-999/00
B29D 35/00- 35/14
G01B 11/00- 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状の本体を有し、当該本体の上板が透明であり且つ当該上板の複数個所にカメラその他の撮影手段が所定高さで固定され、当該上板の面には所定箇所に複数のマーカが設けられると共に前記本体の内部にもカメラその他の撮影手段が設けられ、更に上板の表面または上板を通して見える前記本体の内部に模様が設けられていることを特徴とする足部評価システム。
【請求項2】
前記撮影手段により撮影した複数の画像から三次元画像を形成する三次元画像形成手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の足部評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の足裏から踵の上方の部位における異常の有無を判定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
足裏から踵の上方、例えば膝下までの箇所(以下、「足部」とする)には、年齢や環境、その他の要因により、多様なタイプが存在している。ここで、踵の外反、外反母趾、小指の変形等、歩行に困難を招く恐れがある程度まで変形している場合、すなわち足部に異常が存在する場合がある。しかし、従来は、係る異常を簡便且つ定量的に判断する技術は存在しなかった。
【0003】
その他の従来技術として、シート式の圧力センサを用いて歩行能力を評価する技術が存在する(特許文献1参照)。しかし、係る従来技術(特許文献1)は、人間の足裏から踵の上方の部位における異常の有無を判定することは出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る足部評価システムは、箱状の本体を有し、当該本体の上板が透明であり且つ当該上板の複数個所にカメラその他の撮影手段が所定高さで固定され、当該上板の面には所定箇所に複数のマーカが設けられると共に前記本体の内部にもカメラその他の撮影手段が設けられ、更に上板の表面または上板を通して見える前記本体の内部に模様が設けられていることを特徴とする。
【0007】
更に、前記撮影手段により撮影した複数の画像から三次元画像を形成する三次元画像形成手段を設けるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る足部計測装置を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示した足部計測装置のマーカ及びカメラの位置を示す説明図である。
【
図6】足部計測装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】下方から撮影した画像の例を示す説明図である。
【
図9】本発明の実施の形態2に係る足部計測装置を示す斜視図である。
【
図13】足部計測装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る足部計測装置を示す斜視図である。
図2は、
図1に示し足部計測装置の断面図、
図3は、
図1に示した足部計測装置のマーカ及びカメラの位置を示す説明図である。
図4は、
図1に示した足部計測装置の構成図である。この足部計測装置100は、上板2が透明のアクリル板からなる箱状の本体1からなる。上板2は、例えば一辺70cmの正方形であり、その表面に位置決めのための複数のマーカ3が設けられる。さらに、表面には、足の特徴点を乱し難いようにするため、ペイズリーなどの複雑な模様が表示される。
【0010】
マーカ3は、両足内果の中央,両足第1中足骨頭中央にそれぞれ一つの計2個、四隅のそれぞれ一つの計4つ又は(中点を含めて計8つ)、それぞれが異なる色または形状で設けられる。マーカ3は、印刷でもシール貼り付けでも良い。また、小さい光源でも良い(図示省略)。
【0011】
前記模様は、足部の輪郭を特定するために周囲の空間には明らかに存在しないような模様とする。例えば、ペイズリー柄は、一般的な測定環境には存在していないことが多いことから、好ましい。模様は、細線で構成され、下方からの視認性を妨げないものとする。
【0012】
上板2は透明であるから、上板2の下側からも足部、特に足の裏を測定できる。なお、上板2が透明であることから、上記模様は、本体1の内側面に設けても良い。この場合、上板2に模様がないことから足の裏の撮影が鮮明に行えるので、足部の三次元形成の精度が向上する。
【0013】
図3を位置関係を示す説明図に示すように、本体1の内部の床面にも床上と床下の位置合わせ用のマーカ3が設けられる。当該マーカ3は、両足内果の中央,両足第1中足骨頭中央にそれぞれ一つの計2個に対応した位置に設けられる。
【0014】
前記上板2の6か所にはカメラ5が設けられる。当該カメラ5は、前後方向(ユーザが乗ったときの前後)の辺の中央位置に1個づつ、横方向の辺の前後1/3の位置に2個づつ設けられる。換言すれば、踵を0度として60度ごとの位置にカメラ5を設置する。各カメラ5は、
図5(a)に示すように、支持柱31により支持される。支持柱は、根元がコイルスプリングで上板2に固定される。床上15cm(20cm)を撮影できればよい。また、上板2の上方には、
図5(b)に示すように、フレキシブルアーム32で支持されたカメラ5が一つ設けられる(図示しないが2つでも良い)。
【0015】
本体1の内部であって平面視で中央位置には、上向きに1つのカメラ5が設けられる。当該カメラ5の周囲には光源6が設けられる。光源6は、LEDや太陽光を外部から導入する光ファイバーの先端であっても良い(図示省略)。
【0016】
図4に示すように、足部計測装置100は、カメラ5からの画像情報を取得する画像取得部11と、取得した画像から足部の形状を三次元で生成する足部形状生成部12と、取得した足部の足の裏の上板2への接触状態から圧力分布を取得する圧力分布取得部13と、足部の形状や圧力分布などから足部の状態を評価する評価部14と、表示部15を有する。
【0017】
図6は、足部計測装置100の動作を示すフローチャートである。まずは測定の準備を行う(ステップS1)。ユーザが上板2の足置き位置の図形の部分に両足を乗せる。この状態で、フレキシブルアームを使ってカメラ5を足部の上に位置させる。更に、本体1内部の光源6を点灯して足の裏に光を照射する。
【0018】
画像取得部11は、カメラ5から画像情報を取得する(ステップS2)。足部形状生成部12は、撮影した画像の中に映り込んでいるマーカ3を基準にして、足部の位置や大きさを演算して取得する。
図7に、撮影した画像の例を示す。同図(a)は、前方から撮影した画像を示す。同図(b)は、後方から撮影した画像を示す。同図(c)は、右斜め後方から撮影した画像を示す。左斜め後方からの画像も同様の画像になる(図示省略)。同図(d)は、右斜め前方から撮影した画像を示す。左斜め前方からの画像も同様の画像になる(図示省略)。
図8は、下方から撮影した画像を示す。
【0019】
足部形状生成部12は、これらの情報から足部の三次元形状を生成する(ステップS3)。三次元形状の生成には、SfM法などの公知技術を用いる。マーカ3を使って距離を補正するので、自動的に足部の特徴点の寸法,角度等が計測できる。また、足の裏の形状の画像を合わせて使用することで、足部全体の三次元化ができる。
【0020】
続いて、圧力分布取得部13は、足の裏が上面に接触している部分を有する画像を取得し、この接触部分の形状や濃淡から足の裏の圧力分布を取得する(ステップS4)。また、両足の圧力分布から重心を取得する。
【0021】
続いて、上記形成した三次元画像及び圧力分布から、足部の評価を行う(ステップS5)。
足部を評価することで次の事項が判明する。
a.座位および立位の骨格(踵の曲がりや外反母趾の角度,足の厚みなど)がわかる。
b.立位と座位の変化を比較することで足部の筋骨格系の柔軟度がわかる(柔軟すぎると足部の変形リスクが大きい)。
c.バランス機能がわかる(ロコモで注目されている座位から立位への変化に着目)
具体的には、床上部では舟状骨や外果などの両足の動揺を調べ、床下部では足裏の接地面積や踵,前足部,足指の変化を調べることができる。
d.つま先側のカメラ5、上部のカメラ5を用いて、足爪の形状,長さを計測できる。具体的には、床下のカメラ5から足指の接地状況を用いて足爪への応力を推定できる。
【0022】
また、座位から立位までの動作を連続撮影することで足部骨格および足底部の骨格モデルの変化を取得できる。複数のカメラ5を固定して使用するため、すべての角度から連続撮影が可能となる。立位動作を時間単位(例えば0.1秒単位)で前記すべてのカメラ5で撮影し、上記ステップにて時間単位で足部の三次元形状を生成する。これにより、足部骨格および足底部の骨格モデルの変化を取得でき、さらに詳細に足部の評価を行うことができる。
【0023】
本発明の足部計測装置100によれば、カメラ位置を固定したので、静止画で画像の質が向上する。更に、カメラ位置を固定したので、人間の動きを取れるようになる。
【0024】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2に係る足部計測装置を示す斜視図である。
図10は、足部計測装置を示す平面図である。この足部計測装置200は、実施の形態1のカメラ5に代えて、携帯情報端末Sに搭載されたカメラ205を用いる点に特徴がある。この足部計測装置200は、上板202が透明のアクリル板からなる箱状の本体201からなる。上板202は、例えば一辺70cmの正方形であり、その表面に位置決めのための複数のマーカ203が設けられる。さらに、表面には、足の特徴点を乱し難いようにするため、ペイズリーなどの複雑な模様が表示される。
【0025】
マーカ203は、両足内果の中央,両足第1中足骨頭中央にそれぞれ一つの計2個、四隅のそれぞれ一つの計4つ又は(中点を含めて計8つ)、それぞれが異なる色または形状で設けられる。マーカ203は、印刷でもシール貼り付けでも良い。また、小さい光源でも良い(図示省略)。前記模様は、足部の輪郭を特定するために周囲の空間には明らかに存在しないような模様とする。例えば、ペイズリー柄は、一般的な測定環境には存在していないことが多いことから、好ましい。模様は、細かい線で構成され、下方からの視認性を妨げないものとする。
【0026】
上板202は透明であるから、上板202の下側からも足部、特に足の裏を測定できる。なお、上板202が透明であることから、上記模様は、本体201の内側面に設けても良い。この場合、上板202に模様がないことから足の裏の撮影が鮮明に行えるので、足部の三次元形成の精度が向上する。本体201の内部の床面にも床上と床下の位置合わせ用のマーカ203が設けられる。当該マーカ203は、両足内果の中央,両足第1中足骨頭中央にそれぞれ一つの計2個に対応した位置に設けられる。
【0027】
本体201の周囲には、リング状のレール装置250が配置される。このレール装置250は、上下二分割構造である。
図11(a)の断面図に示すように、下リング251にはリング上端に沿って溝252が周設され、溝252内には複数の歯車253が設けられる。同図(b)に示すように、一つの歯車253にはギアボックス254を介してモータ255に連結される。モータ255は制御装置256で回転制御される。また、均等に複数個所、歯車が配置される。上リング257は、下端に歯258が設けられ、前記歯車253とかみ合う。また、歯車253により上リング257が支持される。歯車253が回転すると、上リング257が回転する。また、上リング257には、携帯情報端末Sを保持するホルダ258が設けられる。
【0028】
前記モータ255は制御装置256に接続される。制御装置256は、USBケーブル等で携帯情報端末Sに接続可能な構成とし、携帯情報端末Sにインストールしたアプリケーションプログラムにより所定の回転数で回転するように制御する。
【0029】
本体201の上板202には、
図12に示すように、開口部21が設けられる。開口部21の蓋22は、外側に向かって開き、内側面がミラーになる。本体1の内部にはミラー23が複数設けられ、上板2の下側から足の裏を見ることができる。開口部21は、開いた状態でレール装置250に保持した携帯情報端末Sのカメラ205と略同じ高さになる。
【0030】
また、足部計測装置200は、携帯情報端末Sのカメラ205からの画像情報を取得する画像取得部と、取得した画像から足部の形状を三次元で生成する足部形状生成部と、取得した足部の足の裏の上板202への接触状態から圧力分布を取得する圧力分布取得部と、足部の形状や圧力分布などから足部の状態を評価する評価部とを有する。これらは、携帯情報端末Sにインストールしたアプリケーションプログラムと携帯情報端末のハードウェア又はネットワークで接続された別のコンピュータシステムにより構成される。
【0031】
図13は、この足裏測定装置の動作を示すフローチャートである。まずは測定の準備を行う(ステップS1)。ユーザが上板202の足置き位置の図形の部分に両足を乗せる。この状態で、携帯情報端末をレール装置250により回転させ、すべての角度から足部の連続撮影を行う。撮影の角度は自由に設定できる。例えば、60度ごとに撮影しても良いし、1度ごとに撮影しても良い。更に、本体201の内部のライトを点灯して足の裏に光を照射する。
【0032】
画像取得部は、カメラ205から画像情報を取得する(ステップS2)。取得した画像が多数になる場合は、その画像から三次元形状を生成するのに適した角度から撮影した画像を選択して、用いる。また、足部形状生成部は、取得した画像の中に映り込んでいるマーカ203を基準にして、足部の位置や大きさを演算して取得する。
【0033】
足部形状生成部は、これらの情報から足部の三次元形状を生成する(ステップS3)。三次元形状の生成には、SfM法などの公知技術を用いる。マーカ203を使って距離を補正するので、自動的に足部の特徴点の寸法,角度等が計測できる。また、足の裏の形状の画像を合わせて使用することで、足部全体の三次元化ができる。
【0034】
続いて、圧力分布取得部は、足の裏が上面に接触している部分を有する画像を取得し、この接触部分の形状や濃淡から足の裏の圧力分布を取得する(ステップS4)。また、両足の圧力分布から重心を取得する。なお、足の裏の撮影は、前記蓋を開けてこの蓋の内面のミラーと本体201の内部に配置したミラーを用いて足の裏を撮影する。蓋を開けた状態で前記内面が携帯情報端末に向く。
【0035】
続いて、上記形成した三次元画像及び圧力分布から、足部の評価を行う(ステップS5)。
足部を評価することで次の事項が判明する。
a.座位および立位の骨格(踵の曲がりや外反母趾の角度,足の厚みなど)がわかる。
b.立位と座位の変化を比較することで足部の筋骨格系の柔軟度がわかる(柔軟すぎると足部の変形リスクが大きい)。
c.バランス機能がわかる(ロコモで注目されている座位から立位への変化に着目)
具体的には、床上部では舟状骨や外果などの両足の動揺を調べ、床下部では足裏の接地面積や踵,前足部,足指の変化を調べることができる。
d.つま先側のカメラ5、上部のカメラ5を用いて、足爪の形状,長さを計測できる。具体的には、床下のカメラ5から足指の接地状況を用いて足爪への応力を推定できる。
【0036】
本発明の足部計測装置200によれば、携帯情報端末Sのカメラ205を利用して撮影すると共に、データ処理を携帯情報端末Sまたはこれに接続したコンピュータシステムで行うことから、装置構成は本体201及びレール装置250で済む。このため、装置構成を簡単にできる。
【0037】
(他の実施の形態)
上板2を構成するアクリル板の間に何かの加工を施すと、圧力の指標が推定できる。例えば、二枚のアクリル板の間に油を入れると、圧力が加わることで、縞模様になる。これを撮影することで圧力の指標となる。
【符号の説明】
【0038】
100 足部計測装置
1 本体
2 上板
3 マーカ
4 模様
5 カメラ
6 光源
11 画像取得部
12 足部形状生成部
13 圧力分布取得部
14 評価部