(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】急速吸引血栓摘出システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20240308BHJP
A61F 2/01 20060101ALI20240308BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20240308BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20240308BHJP
【FI】
A61B17/22
A61B17/22 528
A61F2/01
A61M25/00 600
A61M25/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020117570
(22)【出願日】2020-07-08
(62)【分割の表示】P 2017541355の分割
【原出願日】2016-02-04
【審査請求日】2020-08-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-05
(32)【優先日】2015-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516237385
【氏名又は名称】ルート92メディカル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Route 92 Medical, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【氏名又は名称】言上 惠一
(72)【発明者】
【氏名】ミチ・イー・ギャリソン
(72)【発明者】
【氏名】トニー・エム・チョウ
(72)【発明者】
【氏名】スコット・ディ・ウィルソン
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】村上 哲
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-508270(JP,A)
【文献】国際公開第2014/022310(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/22
A61M 25/00
A61F 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルの管腔内に挿入して、
脳血管内の管腔内医療処置の促進のため
に用いる拡張器であって、
前記拡張器が、
可撓性の遠位部であって、近位端領域と、テーパー状遠位先端部を備えた遠位端領域と、1つの管腔と、外径とを有し、前記1つの管腔は、前記遠位部を通して前記テーパー状遠位先端部の遠位開口部まで長手方向に延在している、前記可撓性の遠位部と、
前記遠位部の前記近位端領域から近位方向に延在する金属から成るスパインであって、前記遠位部とは異なる材料から成り、前記遠位部の前記1つの管腔と通じる1つの管腔を有する、前記スパインと、を有してなり、
前記可撓性の遠位部の前記遠位端領域はより柔軟な材料から成り、近位方向に向かって硬くなる、
拡張器。
【請求項2】
前記テーパー状遠位先端部の遠位端に第1のマーカーをさらに含む請求項1に記載の
拡張器。
【請求項3】
前記テーパー状遠位先端部の近位端に第2のマーカーをさらに含む請求項2に記載の
拡張器。
【請求項4】
前記テーパー状遠位先端部の近位端に第1のマーカーをさらに含む請求項1に記載の
拡張器。
【請求項5】
前記テーパー状遠位先端部の長さは、1.5cm~3cmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の
拡張器。
【請求項6】
前記遠位部は、ポリマーから成
る、請求項2~4のいずれか1項に記載の
拡張器。
【請求項7】
前記可撓性の遠位部は、前記外径を有し、前記可撓性の遠位部の少なくとも一部に沿って延在する筒状部を有する、請求項1または2に記載の
拡張器。
【請求項8】
前記筒状部は、前記可撓性の遠位部の全長に亘って延在している、請求項7に記載の
拡張器。
【請求項9】
前記可撓性の遠位部の外径と、カテーテル
の管腔の直径との差は、0.002インチであり、
前記可撓性の遠位部の少なくとも一部は、スリップフィットでカテーテル
の管腔内に受け入れられる、請求項7に記載の
拡張器。
【請求項10】
前記拡張器の近位端に位置する、メス型ルアーアダプターをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の
拡張器。
【請求項11】
前記スパインの外径は、前記可撓性の遠位部の前記外径と同じである、請求項1に記載の
拡張器。
【請求項12】
前記スパインの外径は、前記可撓性の遠位部の前記外径より小さい、請求項1に記載の
拡張器。
【請求項13】
前記可撓性の遠位部の前記1つの管腔の直径は、0.014~0.018インチの直径を有するガイドワイヤに対応するように位置決めされる、請求項1または2に記載の
拡張器。
【請求項14】
前記可撓性の遠位部の前記1つの管腔の直径は、0.020~0.024インチである、請求項1または2に記載の
拡張器。
【請求項15】
前記可撓性の遠位部の外径は、カテーテルの管腔内に受け入れ可能であって、前記可撓性の遠位部と前記カテーテルの前記管腔との間のスムーズな移動が可能となるように、大きさが決められている、請求項1または2に記載の
拡張器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2015年2月4日に出願された米国仮出願第62/111,481号、および2015年4月3日に出願された米国仮出願第62/142,637号に基づく優先権を主張するものであり、出典明示により、それぞれの開示内容は、すべて本明細書に組み入れられる。
【0002】
本願は、また以下の米国特許出願に関連するものであり、出典明示にそのすべての内容が本明細書に組み入れられる:(1)2014年12月19日に出願された米国特許出願第14/576,953号;(2)2014年12月12日に出願された米国特許出願第14/569,365号;(3)2014年11月10日に出願された米国特許出願第14/537,316号;(4)2014年3月21日に出願された米国特許出願第14/221,917号。
【背景技術】
【0003】
本開示は、一般に、急性虚血性脳卒中の治療のための医療方法および医療デバイスに関する。さらに詳しくは、本開示は、迅速かつ安全な脳梗塞の吸引および除去を行うために、複雑な解剖をナビゲートするための方法およびシステムに関する。
【0004】
急性虚血性脳卒中は、脳の部分への適切な血流の突然の閉塞であり、通常、脳に血液を供給する血管の1つに詰まったあるいは形成された血栓またはその他の塞栓により引き起こされる。この閉塞状態が迅速に解消されない場合、虚血により永久的な神経障害または死に至る場合がある。脳卒中の効果的治療の期限は、静脈内(IV)血栓溶解療法の場合は3時間以内、部位特異的な動脈内血栓溶解療法の場合は6時間以内、閉塞脳動脈の介入再開通の場合は最大8時間である。この期間後の虚血性脳への再灌流は、患者に対しては全体的な利益はなく、実際に、線維素溶解剤の使用により頭蓋内出血の危険性が増加することで、害をもたらす場合がある。この期間内であっても、発症から治療までの時間が短いほど、良好な結果が得られるという強い証拠がある。残念なことに、時間枠内に、症状に気付き、患者を脳卒中の治療場所まで運び、そして最終的にこれらの患者をこの期限内に治療できることはまれである。治療の進歩にもかかわらず、脳卒中は未だに3番目の主要な死因であり、米国における重篤で長期的な障害の主要な原因でもある。
【0005】
急性脳卒中の血管内治療は、組換え組織プラスミノーゲン活性化因子(rtPA)等の血栓溶解薬の動脈内投与、閉塞の機械的除去、またはこれらの2つの組み合わせからなる。上記のように、これらの介入治療は、発症の数時間以内に行わなければならない。動脈内(IA)血栓溶解療法と介入血栓摘出術の両方は、血管内技術およびデバイスを介して、閉塞脳動脈にアクセスすることを含む。
【0006】
IV血栓溶解療法の場合と同様に、IA血栓溶解療法単独では、効果的に凝血塊を溶解するには注入に数時間を要するという制約がある。介入的血栓切除療法は、スネア、コイルまたは一時的なステント(回収可能なステントデバイスとしても知られている)を使用して凝血塊を捕捉および除去し、さらに凝血塊の破壊を伴うかまたは伴わずに凝血塊を吸引することを含む。回収可能なステントデバイスは、介入中に血管への流れを迅速に回復させるために用いられる。凝血塊の除去を補助するとともに遠位塞栓の危険性を減らすために、回収可能なステントデバイスと、ガイドカテーテルまたは中間カテーテルを介した吸引とを組み合わせた複合手順も用いられる。最後に、凝血塊の除去または溶解が可能でない場合、凝血塊を貫通する開存ルーメン(patent lumen)を形成するために、バルーンまたはステントが用いられている。
【0007】
大脳の解剖学的構造(cerebral anatomy)にアクセスするため、ガイドカテーテルまたはガイドシースを用いて、動脈アクセス部位、典型的には大腿動脈から、標的解剖学的構造へと介入デバイスを案内する。高レベルの塞栓を遊離させる可能性のある近位頸動脈閉塞を処置期間中に可能にするため、バルーンガイドカテーテルが、しばしば使用される。近位閉塞は、前進流を阻止するとともに、ガイドカテーテルの管腔を通る吸引の効率を高める効果を有する。ガイドの長さは、アクセス部位とガイド先端チップの所望の位置との間の距離によって決定される。部分選択ガイド(sub-selective guides)および吸引に使用されるガイドワイヤ、マイクロカテーテル、および中間カテーテル等の介入デバイスは、ガイドを通って挿入され、標的部位へ送られる。しばしば、デバイスは同軸的に使用される、すなわち、中間カテーテル内のマイクロカテーテル内のガイドワイヤは、アセンブリとして標的部位に向けて段階的に送られ、内部の最も非侵襲的な要素を最初に遠位に前進させ、外側要素の前進を保護する。同軸アセンブリの各要素の長さは、ガイドの長さ、カテーテル上の近位コネクタの長さ、および遠位端から伸びるのに必要な長さを考慮する。したがって、例えば、中間カテーテルの作業長は、典型的には、ガイドの作業長よりも20~40cm長く、マイクロカテーテルの作業長は、典型的には、中間カテーテルの作業長よりも10~30cm長い。ガイドワイヤは、典型的には、マイクロカテーテルよりも20~50cm長い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在の技術に関するいくつかの典型的な問題は、閉塞部位へアクセスするために必要な時間あるいは少なくともアクセスできること、流れを回復させるために必要な時間あるいは血管への流れを完全または少なくとも部分的に回復させることができないこと、負の神経学的効果と穿孔および脳内出血などの処置合併症を潜在的に有する処置期間中の遠位塞栓の発生、を含んでいる。潜在的に塞栓を解消できる、迅速なアクセス、凝血塊の最適化吸引、処置の全段階にわたる遠位保護、および閉塞大脳血管への流れを完全に回復させるために必要とされる、安全で迅速なデバイスの交換、を可能とするデバイスのシステムおよび方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、アクセスシースを通して行う神経血管内の管腔内医療処置を容易にするための血管内アクセスシステムが開示される。このシステムは、可撓性の遠位管腔部であって、前記管腔部の近位端の近位開口部と前記管腔部の遠位端の遠位開口部との間に延在する管腔を画定する内径を有する、該可撓性の遠位管腔部、を有する吸引カテーテルまたは支持カテーテルを含んでいる。このカテーテルは、前記管腔部の少なくとも近位端に結合され、前記管腔部から近位方向に延在する剛直なスパイン(spine)を有している。このシステムは、前記管腔部の管腔内に受容されるように寸法決めされた可撓性の遠位拡張器部と、その拡張器部から近位方向に延在する剛性の拡張器スパインとを有する拡張器を含んでいる。
【0010】
拡張器スパインは、カテーテルのスパインと並べて整列させることができる。遠位拡張器部は、テーパー状の遠位先端部を有することができる。拡張器は、拡張器の遠位先端部が管腔部の遠位開口部から突出できるように、カテーテルの長さと少なくとも同じ長さを有している。拡張器は、長さの少なくとも一部分に沿って概して管状である場合がある。カテーテルスパインの近位端は、アクセスシースを通してカテーテルを移動させるためにユーザーが把持できるように構成された把持機構を含むことができる。拡張スパインの近位端は、カテーテルスパイン上の把持機構に係止できるように構成されたタブを含むことができる。カテーテルと拡張器とが係止されたとき、それらは単一ユニットとして、アクセスシースを通って前進させることができる。把持機構と拡張器タブとは、取り外し可能に結合させることができ、係止された構成では拡張器タブが把持要素に係合し、非係止された構成では拡張器タブが把持要素から外れる。拡張器タブは、拡張器に固定することができる、あるいは拡張器とカテーテルとの間の異なる相対位置に対応するために、拡張器上で摺動させることもできる。遠位拡張器部は、1つ以上の戻り止めを外面上に含むことができ、該戻り止めは、拡張器部がその中を延在する管腔内管腔の内面上の、対応するよう賦形された表面特徴に係止されるように構成されている。拡張スパインとカテーテルスパインとは、同様の剛性とよじれ耐性を有することができる。拡張器は、遠位先端部の遠位端および/または近位端に視覚マーカーを有することができる。拡張器の遠位端領域は、より柔軟であり、かつ拡張器の近位端領域に向うに従って剛直になるようにすることができる。カテーテルスパインと拡張器スパインとは、アクセスシースの管腔を通って管腔部の双方向摺動運動を引き起こし、および管腔部を脳血管に進めて治療部位に到達するように構成することができる。
【0011】
相互に関係する態様では、アクセスシースと吸引カテーテルまたは支持カテーテルを有する神経血管内の管腔内医療処置を容易にするための血管内アクセスシステムが開示される。アクセスシースは、シース本体の近位端と遠位端との間の管腔を画定する内径を有するシース本体を有している。シース本体は、シース本体の遠位端領域付近の管腔からの少なくとも1つの開口部を有している。吸引カテーテルまたは支持カテーテルは、アクセスシースの管腔を通って挿入されるように寸法決めされた外径と、管腔部の近位端の近位開口部と、管腔部の遠位端の近位開口部と遠位開口部との間を延在する管腔を確定する内径と、近位開口部と遠位開口部との間の長さとを有する、可撓性の遠位管腔部を有している。吸引カテーテルまたは支持カテーテルは、管腔部の少なくとも近位端に結合され、そこから近位方向に延在する剛直なスパインを含んでいる。剛直なスパインは、アクセスシースの管腔を通る管腔部の双方向摺動運動を生じさせることで、少なくとも1つの開口部から出て、管腔部を脳血管に進めて治療部位に到達させるように構成されている。管腔部の遠位端が治療部位に達するように脳血管内に延在する時、管腔部の外径の一部はアクセスシースの内径を流体封止する。
【0012】
管腔部とシース本体とは、同心円状に整列させることができ、管腔部の管腔とシース本体の管腔とは、管腔部の遠位端からシース本体の近位端まで連続する吸引管腔を形成する。連続した吸引管腔は、管腔部の遠位開口部から流体および破片を吸引するために使用することができる。連続した吸引腔は、管腔部の遠位開口部を通して材料を送達することができる。連続した吸引管腔は直径の増加部を形成してもよく、そこでは管腔部の管腔の中身をシース本体の管腔内に全部移す。管腔部の管腔は、シース本体の管腔よりも短くすることができる。管腔部とシース本体とは、管腔部がシース本体の少なくとも1つの開口部を越えて遠位方向に延在する重なり領域を形成することができる。管腔部の外径は、シース本体の管腔の内径に近づくことができ、その結果、重なり領域によりシールが形成される。シールは、最高25水銀柱インチ(inHg)または最高28水銀柱インチ(inHg)の真空に対してシールすることができるように構成することができる。重なり領域内のシールは、最大300mmHgまたは最大600mmHgまたは700mmHgまでの圧力に対してシールすることができるように構成することができる。シールは、管腔部の近位端の遠位であって、シース本体の少なくとも1つの開口部の近位に配置させることができる。
【0013】
このシステムは、管腔部の外表面上に配置された封止要素をさらに含むことができる。封止要素は、重なり領域内に逓増する直径部または突出特徴部を含むことができる。封止要素は、1つ以上の外部リッジ特徴部を含むことができる。管腔部がシース本体の管腔に挿入されるとき、前記1つ以上のリッジ特徴部を圧縮可能とすることができる。封止要素は、シース本体管腔の内面に対して偏倚された1つ以上の傾斜面を含むことができる。封止要素は、封止するために作業させる1つ以上の拡張可能な部材を含むことができる。シース本体は、頸動脈への挿入に適した外径を有することができる。シース本体の外径は、5Frと7Frとの間にすることができる。
【0014】
シース本体は、経大腿動脈アプローチから、シース本体の遠位端を内頚動脈の錐体部に配置するのに適した長さを、近位端と遠位端との間に持つことができる。シース本体の長さは、80cmと105cmの間にすることができる。管腔部の長さは、10cmと25cmの間にすることができる。カテーテルがシース本体内に引き込まれると、管腔部の重複領域とシース本体の内径との間にシールが残るように、管腔部の長さは、シース本体の長さよりも短くすることができる。
【0015】
スパインは、シース本体の全長より長くすることができる。管腔部は、内側潤滑ライナー、補強層、および外側ジャケット層を含む3つ以上の層を含むことができる。外側ジャケット層は、遠位管腔部の長さに沿って可撓性を変化させるために、異なるデュロメータ硬度(durometer)、組成および/または厚さを有するポリマーの個別部分から構成することができる。遠位管腔部の外径は、大脳動脈内への移動に合わせて寸法化することができる。遠位管腔部の内径は、0.040インチと0.088インチの間にすることができる。管腔部の外径を、シース本体の内径に近づけることができ、それにより、カテーテルがシース本体を通って移動することを可能にする一方で、重なり領域に密閉領域を形成する。管腔部の最遠位端部が、管腔部がシース本体とシールする部分の近くで管腔部のより近位の領域と比較してより小さい外径を有するように、カテーテルを遠位開口部に向かうテーパー形状にすることができる。シース本体の遠位端領域は、閉塞要素を含むことができる。シース本体の遠位端領域は、拡張先端チップを含むことができる。管腔からの少なくとも1つの開口部は、シース本体の遠位先端からある距離離れて配置された側方開口部を含むことができる。シース本体の遠位先端部は、カテーテルをシース本体管腔の長手方向軸線から少なくとも1つの開口部を通って外側に向くように構成された傾斜特徴部をさらに含むことができる。
【0016】
スパインは、シース本体の全長より長くてもよい。スパインは、0.014インチ(0.014“)から0.018インチ(0.018”)の外形寸法を有するワイヤでもよい。スパインは、そこを通って延びるガイドワイヤ通路を有するハイポチューブ(hypotube)であってもよい。スパインは、厚さ0.010インチから0.025インチの外寸を有するリボンであってもよい。リボンを、円弧の少なくとも一部に沿って湾曲させることができる。スパインは、アクセスシースの長手方向軸の周りで管腔部を回転させるように構成することができる。スパインは管腔部に偏心的に結合することができ、スパインは、管腔部からシース本体の近位端の外側へ、近位方向に延在する。管腔部の近位端は、角度付きカットを有していてもよい。その角度付きカットは、一般的に平面状または湾曲状でもよい。シース本体は、シース本体の遠位端領域に1つ以上の視覚マーカーを有していてもよい。遠位管腔部は、管腔部の遠位端領域、管腔部の近位端領域、またはその両方に1つ以上の視覚マーカーを有していてもよい。シース本体上の1つ以上の視覚マーカーと、管腔部上の1つ以上の視覚マーカーとは、視覚的に区別することができる。スパインは、1つ以上の視覚マーカーを有することができる。スパインの1つ以上の視覚マーカーは、遠位管腔部とシース本体との間の重なりを示すことができる。スパインの視覚マーカーがアクセスシースの一部と位置合わせされる時に、カテーテルとシース本体との間にシールを形成するに必要な最短の重なり長さを有する最も遠位の位置にカテーテルが配置されるように、スパインの1つ以上の視覚マーカーを配置することができる。
【0017】
このシステムは、遠位先端部を有し、カテーテルの管腔部内に受容されるように寸法決めされた、可撓性の遠位拡張器部をさらに含むことができる。拡張器は、その長さの少なくとも一部に沿った管状要素とすることができる。拡張器は、ユーザーにより賦形されるように構成された可鍛性材料で形成された中実ロッドであってもよい。拡張器は、拡張器部から近位方向に延在する剛直な拡張器スパインをさらに含むことができる。拡張器スパインは、同軸であってもよく、それを通って延びる管腔を有することができる。拡張器スパインは偏心していてもよい。使用時には、拡張器スパインをカテーテルのスパインと並べて整列させることができる。拡張器の遠位先端部は先細形状にすることができる。拡張器は、遠位先端部が管腔部の遠位開口部から突出するように、カテーテルの長さと少なくとも同じ長さを有することができる。スパインの近位端は、アクセスシースを通ってカテーテルを移動させるために、ユーザーが把持できるように構成された把持機構を含むことができる。拡張スパインの近位端は、カテーテルスパイン上の把持機構と係止されるように構成されたタブを含むことができる。カテーテルと拡張器が係止された構成にあるとき、シース本体を通って単一ユニットとしてそれらを前進させることができる。把持機構と拡張器タブは、取り外し可能に結合することができ、係止された構成では、拡張器タブが把持要素に係合し、非係止の構成では、拡張器タブが把持要素から外れる。拡張器タブは、拡張器に固定することができ、および/または拡張器とカテーテルとの間の異なる相対位置に対応するために、拡張器上で摺動可能とすることができる。
【0018】
遠位拡張器部は、1つ以上の戻り止めを外面上に含むことができ、該戻り止めは、拡張器部がその中を延在する管腔部の内面上の、対応するように賦形された表面特徴に係止されるように構成されている。拡張スパインとカテーテルスパインとは、同様の剛性とキンク耐性を有することができる。拡張器は、遠位先端部の遠位端および/または近位端に視覚マーカーを有することができる。拡張器の遠位端領域は、より柔軟であり、かつ拡張器の近位端領域に向うに従って剛直になるようにすることができる。カテーテルスパインと拡張器スパインとは、アクセスシースの管腔を通って管腔部の双方向摺動運動を引き起こし、および管腔部を脳血管に進めて治療部位に到達するように構成することができる。
【0019】
アクセスシースは、シース本体の近位端を近位止血弁に接続するコネクタをさらに含むことができる。近位止血弁は、その上の凝血塊を除去することなくカテーテルを取り外すのに十分な大きさを有するように寸法決めされた調節可能な開口部を有することができる。アクセスシースと共に使用されるとき、カテーテルの剛直なスパインは、アクセスシース管腔を通って管腔部から近位方向に延び、アクセスシースの近位止血弁から出ることができる。コネクタは、シース本体の近位端の吸引ラインへの接続を提供することができる。コネクタは、大口径の管腔を有し、大口径の吸引ラインに接続することができる。吸引ラインは、吸引源に接続することができる。吸引源は、能動吸引源とすることができる。吸引ラインは、前方点滴(forward drip)または洗浄ラインに接続することができる。アクセスシースは近位方向延長部をさらに含むことができ、カテーテルの遠位管腔部がシース本体管腔から引き抜かれるとき、それが近位延長部分内に留まるようにすることができる。管腔部の内径は、管腔部を通って介入デバイスを配置することを可能にするように寸法決めすることができる。
【0020】
他の特徴および利点は、例えば本発明の原理を示す様々な実施態様についての以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、大腿動脈アクセス部位からの急性虚血性脳卒中を治療するために、大脳閉塞にアクセスし、それを除去するためのデバイスのシステムの分解図の一例である。
【
図2A】
図2Aは、
図1のシステムの構成要素であって、閉塞治療のために経大腿動脈アプローチにより患者の所定の位置に配置されている構成要素を示す。
【
図3】
図3は、経頚動脈アクセス部位を介して使用される、
図1のシステムの構成要素を示す。
【
図5】
図5は、別個の取り外し可能な構成要素として提供される、
図4のアクセスシースの近位部の実施態様を示す。
【
図6】
図6は、
図4のアクセスシースを通って近位部に至る流れ抵抗を最小にするためのコネクタの実施態様を示す。
【
図7】
図7は、閉塞バルーンを有するアクセスシースの実施態様を示す図である。
【
図8A】
図8Aは、アクセスシース本体とそれを通って延びるカテーテルの管腔部との間のシーリング要素の実施態様を示す。
【
図8B】
図8Bは、アクセスシース本体とそれを通って延びるカテーテルの管腔部との間のシーリング要素の実施態様を示す。
【
図9】
図9は、スパインカテーテルを通して配置されたマイクロカテーテルおよび回収可能なステントデバイスの実施態様を示す。
【
図10A】回収可能なステントデバイス上の拡張可能部の実施態様を示す図である。
【
図10B】回収可能なステントデバイス上の拡張可能部の実施態様を示す図である。
【
図10C】回収可能なステントデバイス上の拡張可能部の実施態様を示す図である。
【
図11】
図11は、本明細書に記載のシステムで使用する吸引システムの実施態様を示す。
【
図12A】
図12Aは、本明細書に記載のシステムで使用するスパイン付きカテーテルシステムの実施態様を示す。
【
図12B】
図12Bは、スパイン付きカテーテルの管腔を通って延びるスパイン付き拡張器を有する
図12Aのスパイン付きカテーテルシステムを示す。
【
図12C】
図12Cは、アクセスシースの実施態様の側部開口部を通って延在する
図12Aのスパイン付きカテーテルシステムを示す。
【
図15A】
図15Aは、係止された構成における、スパイン付きカテーテルおよびスパイン付き拡張器を有するスパイン付き吸引カテーテル-拡張器システムの実施態様を示す。
【
図15B】
図15Bは、非係止の構成における、スパイン付きカテーテルおよびスパイン付き拡張器を有するスパイン付き吸引カテーテル-拡張器システムを示す。
【
図16】
図16は、脳血管内の塞栓を治療するために、アクセスシースまで遠位方向に延在するスパイン付きカテーテルシステムの実施態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
現在の急性脳卒中介入処置の主な欠点の1つは、脳への血液灌流を回復させるのに必要な時間である。この時間には、大脳動脈の閉塞部位にアクセスするのに要する時間、および動脈の閉塞を完全に除去するのに要する時間が含まれる。閉塞を完全に除去するためには、多くの場合、複数の試行を行う必要があり、追加の試行のためにデバイスを交換するのに要する時間を短縮するとともに、試行回数を減らすことが、全体の時間を最小限に抑えるための重要な要素である。さらに、各試行は、繊細な脳血管系におけるデバイスの前進に起因する、潜在的な処置リスクに関連している。
【0023】
本明細書には、脳および頭蓋内動脈の複雑な神経血管系解剖学的構造への安全かつ迅速なアクセスおよび閉塞の除去を可能にする方法およびデバイスが開示されている。この方法およびデバイスは、閉塞を除去するための1つ以上のアクセスデバイス、カテーテル、および血栓摘出デバイスを含んでいる。遠位塞栓を最小化するだけでなく閉塞の除去を容易にする目的で、能動吸引および/または受動的逆流を提供する方法およびデバイスが開示されている。このシステムは、脳脈管構造の特定の血行力学的要求に対処するため、ある程度の流量制御をユーザーに提供する。本明細書に記載されているシステムは、切り換えなしで迅速かつ安全な交換を行うため、1人のオペレータが単一点連続吸引(single-point continuous aspiration)を使用して開示されたシステムを操作することができる点で優れた使い易さを提供する。本明細書に記載のシステムにより得られる吸引力の高い効率は、遠位塞栓屑を減少させ、「ワンパス」血栓切除術の速度を増加させる。
【0024】
いくつかの実施形態は、神経血管系解剖学的構造を吸引することに関して具体的に記載されているが、実施形態はそれに限定されず、他の用途にも適用可能であることを理解されたい。例えば、本明細書に記載されている、スパイン付き吸引カテーテルや、アクセスシステムの1つ以上の構成要素を用いて、冠動脈の解剖学的構造または他の血管の解剖学的構造の標的血管へ作業デバイスを送ることができる。本明細書で「吸入カテーテル」という語句が使用されている箇所では、吸引以外の、または吸引に加えて他の目的、例えば、治療部位への流体の送達用として、あるいはガイドワイヤまたは介入デバイス等の他のデバイスの送達または交換を容易にし、案内する導管を提供する支持カテーテルとして、カテーテルを使用できることも理解されたい。あるいは、このアクセスシステムは、脈管構造に限定される必要はなく、脈管構造の外側の身体の他の部分にアクセスするのにも有用である。本明細書を通して、特定の特徴、構造、構成、特徴、あるいは実施態様または実施形態を任意の適切な方法で組み合わせることができることも理解されたい。本明細書全体を通して相対的な用語を使用することで、相対的な位置または方向を示すことができる。例えば、「遠位」は、基準点から離れた第1の方向を示すことができる。同様に、「近位」は、第1の方向と反対の第2の方向における位置を示すことができる。しかし、このような用語は、相対的な基準フレームを確立するために提供されるものであり、以下の様々な実施形態に記載された特定の構成に、アンカー送達システム(anchoring delivery system)を限定することを意図するものではない。
【0025】
図1は、大腿動脈アクセス部位から急性虚血性脳卒中を治療するために、脳閉塞にアクセスし、それを除去するためのデバイスのシステムを示す。システム100は、アクセスシース220、シース拡張器250、ガイドワイヤ270、1つ以上のスパイン付き吸引カテーテルまたは支持カテーテル320、拡張器340、マイクロカテーテル400、および回収可能なステントデバイス500を含んでおり、それぞれについては以下に詳細に記載されている。さらに、システム100は、アクセスシース220、1つ以上のシース拡張器250、およびシースガイドワイヤ270を含む、1つ以上の動脈アクセスシースシステム200を含むことができる。システム100は、スパイン付き吸引カテーテルまたは支持カテーテル320、テーパー付き拡張器340、あるいはカテーテル清掃ツール350を含む、1つ以上のスパインカテーテルシステム300を含むことができる。スパインカテーテルシステム300は、遠位部位へ拡張到達を提供するための入れ子式スパイン付きカテーテルを組み込むことができる。システム100は、アクセスシースシステム200、テーパ付きカテーテルシステム300、マイクロカテーテル400、および回収可能なステントデバイス500を含むことができる。
【0026】
図2Aは、閉塞治療のために経大腿動脈アプローチにより患者の所定の位置に配置されているシステムのいくつかの構成要素を示す。アクセスシース220は、大腿動脈挿入部位を通して挿入されることができ、アクセスシース220の遠位先端部は内頚動脈ICAの錐体部またはその近傍に配置される。スパイン付き吸引カテーテル320は、動脈の閉塞面に遠位先端部を有するように配置されることができる。いくつかの実施態様では、アクセスシース220は、経大腿動脈アプローチではなく、総頸動脈の壁への直接的な穿刺を通して挿入することで、内頸動脈に進入することができる(
図3参照)。
【0027】
詳細な
図2Bでより明確にわかるように、アクセスシース220は、シース本体222と、シース本体222の近位端と遠位端領域との間に延在する内側管腔223を有することができる。カテーテル320の遠位端領域がアクセスシース220の遠位端領域を越えて延在するように、スパイン付き吸引カテーテル320は寸法決めされ、アクセスシース220の内側管腔223を通して延在する。カテーテル320は、
図2Bに示されており、遠位開口部221を通って、シース本体222の管腔223から出る。しかし、以下に詳細に記載されているように、シース本体222は、本体222の遠位端領域近傍の1つ以上の側方開口部を有していてもよく、それを通ってカテーテル320が延在できる(
図12C参照)。
【0028】
まだ
図2Bについて説明するが、スパイン付き吸引カテーテル320は、硬く、耐キンク性を有する近位スパイン330に結合された比較的柔軟な遠位管腔部322を含むことができる。遠位管腔部322は、管腔部322の近位端と遠位端との間に延在する内部管腔323を有することができる。カテーテル320の管腔323は第1の内径を有し、アクセスシース220の管腔223は第2のより大きな内径を有することができる。管腔223,323は、アクセスシース220上のコネクタ226を介してシステムに結合された吸引源から吸引すること等により、システムへの流体の流入および/またはシステムからの流体の流出が可能なように、流体的に結合されかつ接触している。シース本体222の遠位セクションとカテーテル320の管腔部322との間の重なり領域120は、スパイン付きカテーテル320の遠位先端領域から近位シースコネクタ226までの連続吸引管腔を可能にするように寸法決めされ、かつ構成されている。シース本体222がカテーテル320の遠位管腔部322が貫通する側方開口部を有する場合、シース本体222と管腔部322との間の重なり領域120に形成されたシールは、側方開口部の近傍に配置されている。
【0029】
管を通す吸引力に影響を与える主要な寸法は、半径(r)、圧力(P)、粘度(n)、および長さ(L)を含み、流量=Q=πr4(ΔP)/8nLである。半径の変化は、その4乗で流量を増加させ、長さは流量に反比例する。以下でより詳細に説明するように、吸引カテーテルは、標的部位に達するのに必要な全距離の一部にオーバーザワイヤ(over-the-wire)部分を有する。この構成は、カテーテルの後退および再前進に要する時間を大幅に短縮する。さらに、本明細書に記載されたシステムは、特に、吸引管腔が吸引カテーテルの全内径に沿って延びる従来のシステムと比較して、凝血塊の吸引のために著しく増大した半径および管腔領域、並びに顕著に短い長さを提供することができる。本明細書に記載のシステムでは、吸引管腔の大部分は処置シース(procedural sheath)の半径を有している。カテーテル320はガイドよりも直径が小さいが、アクセスシース220の管腔に到達すると管腔の直径が大きくなり、管腔システムの長さの大部分に大きな吸引力を加えることができる。さらに、カテーテル320のこの狭い直径領域の全長は、アクセスシースの全長に比べて非常に短い。シース220の管腔223を通ってカテーテル320を前進および後退させるために使用できるように、カテーテル320の近位スパイン330は、アクセスシースの管腔223を通ってシステムの近位端まで延在する長さと構造を有している。しかし、吸引カテーテル320のスパイン330は、管腔空間の一部のみを塞ぐだけで、システムの吸引のための管腔面積は増加する。吸引のための増加した管腔面積は、閉塞を吸引するのに要する時間を増加させるとともに、1回の吸引試行で閉塞を除去できる可能性を増加させる。マイクロカテーテルまたはテーパー付き拡張器等のデバイスを、スパイン付きカテーテル320とアクセスシース220の中に同軸的に配置した状態で、管腔直径を増加させても、造影剤、生理食塩水、または他の溶液の前方洗浄のために利用可能な管状領域を増加させる。これにより、デバイスの移動中の血管造影の実施を容易にするとともにその能力を高めることができる。
【0030】
現在の脳卒中介入は、遠位閉塞が放出されるリスクをもたらす。脳動脈中の血栓閉塞を除去または溶解する努力を行っている間には、例えば、血栓断片化の重大なリスクがあり、それにより閉塞粒子が生成し、その閉塞粒子は下流へと移動して閉塞血管または他の欠陥のいずれかに到達したり、脳灌流を損なう場合がある。頸動脈ステント留置術手順(CAS)において、塞栓保護デバイス及びシステムは、塞栓物質が脳血管に入るリスクを低減するために一般的に使用される。このタイプのデバイスは、血管内遠位フィルタ、および逆流または静的フローシステムを含む。残念ながら、迅速な介入の必要性だけでなく、繊細な解剖学的構造とアクセスの課題により、これらのタイプの塞栓保護システムは、急性虚血性脳卒中の介入治療に使用されていない。流れが回復している時の脳卒中介入の期間は、脳が血液で現在灌流されている、重要な時間であると通常考えられている。しかし、それはまた、塞栓リスクのある期間でもある。動脈に閉栓がある間は、流れはない。従って、ガイドワイヤおよび/またはマイクロカテーテルで塞栓を横切ることにより、あるいは閉塞を横切って回収可能ステントデバイスを配置することにより形成されたあらゆる塞栓デブリは、停滞したままである。しかし、動脈に流れが回復した時、塞栓は順方向へ流れて、遠位血管領域へと至る。
【0031】
塞栓リスクの第2の期間は、回収可能ステントデバイスがガイドまたはカテーテルの中に引っ込んでいるときに発生する。従来の方法及びデバイスでは、回収可能ステントデバイスがカテーテルの中に引っ込んでいる間、中間カテーテルに吸引が適用される、あるいは、カテーテルおよび回収可能ステントデバイスはガイドの中に一緒に引き込まれ、それと同時にガイドカテーテルに吸引が適用される。カテーテルを通るもの、およびガイドを通るものの2点の吸引は、ガイドを通って患者から塞栓を取り出す重要なステップの間、遠位塞栓のリスクを減少させるために、その両方が使用される場合がある。しばしば、2点吸引を可能にするためには、二人の人間が必要である、あるいは、最初にカテーテルから、その後ガイドから連続して吸引を行うが、それらは、吸引の中断または最適ではない吸引をもたらす場合がある。開示されたシステムおよび方法では、デバイスが前進中で流れ回復の重要な時間に、および塞栓が除去されている全時間の間に、単一の吸引点で標的部位に逆流が適用されてもよい。
【0032】
本開示の一態様では、遠位塞栓からの適切な保護を達成する低いレベルから、塞栓除去のための有効な吸引を提供する高いレベルまで、吸引のレベルを変更してもよい。この態様は、高レベルの血液損失無しで遠位保護を可能とし、さらに塞栓除去に必要な強い吸引力を可能とする。
【0033】
別の態様では、血栓を除去し、遠位塞栓を最小限にするための手順の間、能動吸引または受動的逆行フローをさらに提供するための、方法とデバイスが開示されている。このシステムは、脳血管の具体的な血行動態の要求に対処するために、ある程度の血流制御をユーザーに提供する。このシステムは、流量コントローラを含み、それは、吸引のタイミングとモードをユーザーが調整することを可能とする。
【0034】
別の態様では、システム中の塞栓捕捉を最小限にするとともに、使用時のシステム中の粒子の可視化を増大させるための、洗浄工程をさらに提供する方法とデバイスが開示されている。
【0035】
以下の説明は、開示された本発明の各態様の詳細な実施態様および利点を提供する。
【0036】
再び、アクセスシース220の実施態様を示す
図1を参照する。シース220は、シース220の挿入可能部分であるシース本体222(すなわち、患者に挿入する部分)と、近位コネクタ226、吸引ライン230、近位止血弁234、および洗浄ライン236を含んでいる。シース220は、近位延長部240を含んでもよく、またアクセスシース220の近位部240からシース本体222を流体的に隔離するコネクタ226上のバルブを含んでもよい。アクセスシース220は、1つ以上の拡張器250と、シースガイドワイヤ270とのキットであってもよい。
【0037】
シース本体222の直径は、頚動脈への挿入に適しており、塞栓を治療するためにカテーテルに通路を提供するように好適に寸法決めされた内側管腔223を有している。一実施態様では、シース本体222は、5フレンチシースサイズに対応する、内径が約0.074インチ(0.074“)、外径が約0.090インチ(0.090”)のもの、6フレンチシースサイズに対応する、内径が約0.087インチ(0.087“)、外径が約0.104インチ(0.104”)のもの、または7フレンチシースサイズに対応する、内径が約0.100インチ(0.100“)、外径が約0.177インチ(0.177”)のものである。シース本体222の長さは、シース本体222の遠位先端をできるだけ遠位の内頚動脈の錐体部分に配置できるように構成されている。一実施態様では、シース本体222の長さは、経大腿動脈アプローチに適しており、80~90cmの範囲、または約100cmまで、または約105cmまでの長さである。一実施態様では、シース本体222の長さは、錐体部ICAへの経頸動脈アプローチに適しており、20~25cmの範囲である。一実施態様では、シース本体222の長さは、CCAまたは近位ICAへの経頸動脈アプローチに適しており、10~15cmの範囲である。シース本体222は、血管系の屈曲部を想定して移動するとともに、キンク、崩壊または血管外傷を引き起こすことなく、高い吸引力を受けることができるように、構成されている。
【0038】
シース本体222は、2つ以上の層で構成することができる。内側ライナーは、内側管腔を通ってデバイスを前進させるための滑らかな表面を提供するために、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)またはFEP(フッ素化エチレンプロピレン)等の低摩擦ポリマーで構成することができる。外側ジャケット材料は、内側ライナーに機械的一体性を提供することができ、例えば、PEBAX、熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレン、ナイロン等の材料から構成されてもよい。第3の層を組み込むこともでき、内側ライナーと外側ジャケットとの間を補強することができる。補強層は、シース本体222の内側管腔の平坦化やよじれを防止することができ、これにより、吸引または逆流だけでなく、血管の屈曲部を通って円滑にデバイスのナビゲーションも行うことができる。シース本体222は、周方向に補強されてもよい。補強層は、ステンレス鋼、ニチノール、ニチノール組紐、ヘリカルリボン、ヘリカルワイヤ、カットステンレス鋼等の金属、またはPEEK等の剛性ポリマーから作製することができる。補強層は、コイルまたは組紐、または可撓性を持つように、レーザ切断または機械切断されたチューブ等の構造を有することができる。別の実施態様では、補強層は、ニチノールのハイポチューブまたは切断硬質ポリマー等の切断ハイポチューブであってもよいです。
【0039】
シース本体222の可撓性は、その長さ方法に亘って変化させることができ、シース本体222の遠位部に向かって可撓性を増加させることができる。可撓性を変化させることは様々な方法で達成することができる。例えば、外側ジャケットは、様々な部分で、デュロメータ硬度および/または材料を変更することができる。低いデュロメータ硬度の外側ジャケット材料は、シースの他の部分に比べて、シースの遠位部分に使用することができる。または、可撓性を増加させるために、ジャケットの壁の厚さを薄くしたり、および/または補強層の密度を変更することができる。例えば、コイルまたは編組のピッチを伸ばしてもよいし、チューブ内のカットパターンを、より柔軟になるように変更することもできる。また、補強構造または補強材料が、シース本体222の長さに亘って変化してもよい。一実施態様では、最遠位部分は、曲げ剛性(E*I)の範囲が50~300N-mm2であり、シース本体222の残りの部分の曲げ剛性が500~1500N-mm2であり、Eは弾性係数であり、Iはデバイスの面積慣性モーメントである。別の実施態様では、最遠位の可撓性部分と近位部分との間の移行部分があり、最遠位部分とシース本体222の残りの部分との間に1つ以上の可撓性が変化する部分を備えている。この実施態様では、最遠位部分は約2cmから約5cmであり、移行部分は約2cmから約10cmであり、近位部分はシース長さの残りを占める。
【0040】
シース本体222の先端は、1つ以上の遠位の放射線不透過性マーカー224を含むことができる(
図1参照)。一実施態様では、放射線不透過性マーカー224は、例えば白金イリジウム合金である金属バンドであり、シース本体222の遠位端近傍に埋め込まれている。あるいは、アクセスシースの先端材料は、別個の放射線不透過性材料でもよく、例えば、バリウムポリマーブレンドまたはタングステンポリマーブレンドである。シース本体222の遠位領域は、カテーテル320とシース本体222との間のシールを可能にし、連続吸引管腔を形成する重なり領域120の範囲でもある。したがって、吸引カテーテル320の管腔部322の外径は、シールが形成されるように、シース本体222の管腔223の遠位領域の内径に近づく。形成されるシールの相対的な位置は、以下でより詳細に説明するように、吸引カテーテル320が、どこでシース本体222の管腔223から出るか、およびシース本体222からの開口部の位置に依存して変化し得る。シース本体222が遠位端に開口部を有する場合には、シース本体222が、シース本体222の遠位端領域に、それを通ってカテーテル320が管腔223から出ることのできる1つ以上の側方開口部を有する場合に比べて、シールの位置をシース本体222の遠位端により近くなるようにしてもよい。
【0041】
再び
図1を参照すると、アクセスシース220は、コネクタ226も含むことができ、そのコネクタは、シース本体222の近位端を近位止血弁234に接続し、また吸引ライン230との接続も提供する。このコネクタ226は、大口径の管腔を有し、大口径の吸引ライン230に接続する。一実施態様では、コネクタ226の管腔は、少なくとも0.080インチである。一実施態様では、吸引ライン230の管腔は、少なくとも0.080インチである。吸引ライン230は、吸引源への接続を可能にするストップコック、雌ルアーコネクタ、または他のコネクタ232で終端することができる。一実施態様では、吸引源は、注射器またはポンプ等の能動吸引源である。別の実施態様では、吸引源は、米国特許第8,157,760号および米国特許出願公開第2010/0217276号に記載されているような逆流シャントラインであり、その両方は出典明示により本明細書に組み入れられる。大口径の吸引ライン230は、崩壊に対する耐性を有するように構成することができる。例えば、吸引ライン230は、厚肉ポリマーチューブまたは強化ポリマーチューブとすることができる。吸引ラインバルブ232は、ライン230の開閉を可能にする。一実施態様では、バルブ232は、造影剤注入または生理食塩水注入のための前方点滴または洗浄ラインへ接続するための、1つ以上の追加の流体ラインへの接続も可能とする。一例として、バルブ232は、複数接続を可能にするために、介入手順で一般的に使用されるストップコックマニホールドであってもよい。コネクタ226は、処置中にシースの抜けのリスクを減らすために、患者にアクセスシース220を固定するための手段を含むことができる。例えば、コネクタ226は、1つ以上の縫合糸アイレット233を含むことができる。
【0042】
また
図1を参照すると、アクセスシース220の近位端は、近位止血弁234で終わることができる。このバルブ234は、血液損失を防止および最小限に抑えるとともに、アクセスシース220内への空気の侵入を防止しながら、シース220を通って血管内へデバイスを導入することを可能とする。近位止血弁234は、所望の手順の間、シース220が生理食塩水または放射線不透過性造影剤で洗浄できるように、洗浄ライン236または洗浄ライン236への接続部を含むことができる。止血弁234は、静的シール型能動バルブ、またはトーイボーストバルブまたは回転止血弁(RHV)でもよい。止血弁234は、アクセスシース220と一体化することができる、あるいはアクセスシース220は、受動シールバルブ、トーイボーストバルブまたは回転止血弁等の別個の止血弁234部品を取り付けることができるメス型ルアーアダプタの中の近位端で終わらせてもよい。一実施態様では、バルブ234は調節可能な開口部を有し、該開口部は、除去中にバルブ234で凝血塊が除去されることのないように、先端に凝血塊が付着したデバイスを移動させるのに十分な大きさを有している。あるいは、バルブ234は、取り外し可能であり、バルブ234で凝血塊が除去されるのを防止するため、カテーテルの先端部がシース220から取り外される時に取り外される。
【0043】
再び
図1を参照すると、動脈シースシステム200は、1つ以上のシース拡張器250とシースガイドワイヤ270を含むことができる。微小穿刺技術または改良セルディンガー技術等の標準的な血管アクセス技術を用いて動脈内にシースガイドワイヤ270を最初に挿入することができる。シース拡張器250は、動脈壁内の穿刺部位を通る、アクセスシース220の円滑な挿入を可能にする。拡張器250は、アクセスシース220に挿入することができ、次いで、シースガイドワイヤ270に沿って、その2つの要素が一緒に動脈内に挿入される。拡張器250の遠位端256は、動脈壁を通って動脈に挿入される時に、拡張器250が針穿刺部位を拡張できるように、一般的に、テーパー形状を有することができる。テーパー形状の遠位端256は、R形状の先端であって、一般に6~12度の間の全刃先角(拡張器の長手方向軸に対して)を有することができる。
【0044】
拡張器250の管腔は、シースガイドワイヤ270に対応することができ、シースガイドワイヤ270の0.035インチ~0.038インチに対応して、0.037インチ~0.041インチの内径を有することができる。あるいは、拡張器250の管腔は、シースガイドワイヤ270の0.014インチ~0.018インチに対応して、0.020インチ~0.022インチでもよい。あるいは、拡張器250は、内側拡張器と外側拡張器を有する2つの部分の拡張器であってもよい。外側拡張器は、0.037インチ~0.041インチの間の内径を有することができ、内側拡張器は、0.020インチ~0.022インチの間の内径を有することができる。使用時には、シース220は、0.035インチ~0.038インチの間のシースガイドワイヤ270を備えた外側拡張器とともに動脈内に挿入することができる。次に、シースガイドワイヤ270は除去され、内側拡張器と0.014インチ~0.018インチの間のより小さなガイドワイヤとに置き換えられ、次に、頚動脈内の所望の部位へとさらに遠位方向にアクセスシース220を前進させることができる。
【0045】
シースガイドワイヤ270に沿って動脈の中に最初に動脈シース220を挿入するためには、動脈穿刺部位に適切な拡張力を与えるため、拡張器のテーパー256は、所定の剛性とテーパー角を持つことができる。しかし、安全にICAの錐体部分に到達するために、初期の動脈アクセスに使用されるものよりも、遠位端においてより柔軟および/またはより長いテーパーを有するシース拡張器250を有することが望ましい。一実施態様では、アクセスシースシステム200は、2つ以上のテーパー付き拡張器を含むことができる。第1のテーパー付き拡張器は、動脈内へ進入するために、動脈アクセスデバイスと共に用いることができ、それにより、標準的なイントロデューサシース拡張器と同様の方法で寸法決めと構成を行うことができる。テーパー付き拡張器に使用できる材料例として、例えば、高密度ポリエチレン、72D PEBAX、90D PEBAX、または同等の剛性および潤滑性を有する材料を含む。第2のテーパー付き拡張器は、第1のテーパー付き拡張器の遠位部分に比べて低い曲げ剛性、および/または長いテーパー長さを有する柔軟な遠位部分または遠位部分を有していてもよい。すなわち、第2の拡張器は、第1の拡張器の対応する遠位領域に比べ、より柔軟で、より可撓性で、またはより容易に間接接合し、またはより容易に曲がる遠位領域を有している。よって、第2の拡張器の遠位領域は、第1の拡張器の対応する遠位領域よりも容易に曲がる。一実施態様では、第1の拡張器の遠位部は、50~100N-mm2の範囲の曲げ剛性を有し、第2の拡張器の遠位部は、5~15N-mm2の範囲の曲げ剛性を有する。第2の拡張器の柔軟な遠位部により血管上に過度の力または外傷が生じることなく、内頸動脈の中および動脈の湾曲部に沿って前進させることができるように、第2の拡張器(低曲げ剛性の遠位部を有する)は、最初の第1の拡張器と交換することができる。
【0046】
柔軟な、第2の拡張部の遠位部は、例えば35または40D PEBAXでもよく、例えば72D PEBAXから成る近位部を備えていてもよい。柔軟な遠位部と硬い近位部との間のスムーズな移行を提供するために、中間中央部または中間中央部群が、第2の拡張器上に含まれてもよい。一実施態様では、両方の拡張器は、0.037インチ~0.041インチの間の内径を有する。別の実施態様では、第1の拡張器は0.037インチ~0.041インチの間の内径を有し、第2の拡張器は0.020インチ~0.022インチの間の内径を有する。さらに別の実施態様では、第2の拡張器は、上述のような、内側拡張器および外側拡張器を有する2つの部分からなる拡張器である。一実施態様では、一方または両方の拡張器は、拡張器の先端位置がX線透視法で見えるように放射線不透過性の先端マーカー224を有していてもよい。一変形例では、放射線不透過性マーカー224は、拡張器の遠位先端部に熱溶着されたタングステン担持のPEBAXまたはポリウレタン部分である。遠位先端部に放射線不透過性マーカー224を形成するために、他の放射線不透過性材料を同様に用いてもよい。
【0047】
一実施態様では、アクセスシース220は、コネクタ226と近位止血弁234との間に延在する近位延長部240を含んでいる。システムの経頸動脈構成では、アクセスシース220の遠位先端部から離れる方向に近位止血弁234を移動させることが望ましく、挿入可能なシース本体部222の長さを維持しながら、身体の外にあるアクセスシースの近位部を効果的に伸ばしたりまたは長くすることができる。これにより、ユーザーは、標的部位から遠く離れた場所から、それ故、X線透視法で標的を画像化するために用いられるX線源および/または画像増強器(image intensifier)から離れた場所から、アクセスシース220の近位止血弁234の中へデバイスを挿入できるので、ユーザーの手および彼または彼女の全身に対する放射線被曝を最小限に抑えることができる。本実施態様では、近位延長部240を10~25cmの範囲、または15~20cmの範囲にすることができる。経頸動脈または経大腿動脈のいずれの構成でも、アクセスシース吸引ラインに流体的に接続されているアクセスシース220の部分を設けることが望ましいが、これは吸引ライン接続部から近位方向に延在してもよい。これにより、ユーザーは、アクセスシース220からデバイスを完全に取り外すことなく、シース先端部から吸引ラインへの血液の流れからデバイスを引き出すことができる。
【0048】
別の実施態様では、シース本体222からこの近位部240を断続的に分離することも望ましい。一実施態様では、
図4に示すように、コネクタ226は、シース本体222と、吸引ライン230、近位延長部240および近位止血弁234を含むアクセスシース220の近位部240との間の流体接続を閉鎖するバルブ242を含んでいる。これにより、シース220から動脈出血させることなく、カテーテル、回収ステントデバイス、または他の血栓除去デバイスの遠位部をこの近位延長部240の中に引き込むこと、シースの近位部からシース本体222を流体的に分離するためにバルブ242を閉鎖すること、次いで近位止血弁234を広く開放するまたは取り外すこと、あるいはシース220の全ての近位延長部240を取り外すこと、が可能となる。シース220からカテーテル320を完全に取り外すために、近位止血弁234を広く開放する前に、遠位管腔部322が近位延長部240の中に完全に引き込まれ、バルブ242が閉鎖されるように、近位延長部240は、スパイン付きカテーテル320の遠位管腔部322と少なくとも同じ長さを有することができる。
【0049】
また、血栓除去デバイスまたは他の介入デバイスがこの近位延長部240内に引き込まれ、シース本体222がバルブ242で閉鎖された後、血栓除去デバイスの一部、例えば吸引カテーテル320の遠位管腔部322は、近位延長部240の中に残ってもよく、そしてアクセスシース220からデバイス320を完全に取り外すことなく凝血塊を除去するために、洗浄ラインから吸引ラインへの流れを作ることにより、洗浄または清掃される。血栓除去デバイスを完全に取り外すことなく血栓除去デバイスを洗浄および清掃するというこの能力により、血栓除去処置の間の工程中の出血、時間、および空気塞栓のリスクを減少させることができる。また、洗浄および清掃している間、シース本体222から血栓除去デバイスを完全に取り外すことなく、近位延長部240の中に血栓除去デバイスを引き込むことで、デバイスの洗浄に起因する血液やデブリに対するオペレータやスタッフの接触リスクを最小限に抑えることができる。これらの実施態様のいずれにおいても、洗浄液、および塞栓デブリまたは空気の存在/非存在がチューブを通して視認できるように、近位延長チューブは透明である。
【0050】
アクセスシース220の近位延長部240は、近位端に標準接続で任意のシースに取り付けることができる、別個の、取り外し可能な部材として提供できる。
図5に示すように、近位部材280は、標準シース10の近位ハブ15に接続できるコネクタ285を含む。接続された部材は、アクセスシース220の構成と特徴を有するアセンブリを形成する。
本実施態様では、ユーザーは、手順に対して適切な長さ、形状、および機械的特徴を有するいくつかの利用可能なシースから選択することができ、本開示に記載された手順の工程を実施することができる。取り外し可能な近位部材280は、吸引ライン230と洗浄ライン236をそれぞれ終端させるバルブコネクタ232と238とともに、Y字アームコネクタ226、吸引ライン230、近位延長部240、近位止血弁234および洗浄ライン236を含むことができる。コネクタ285は、シース220の近位コネクタ226に接続することができる。
図6に示す一実施態様では、コネクタ285は、シース10を通り、近位部280に入る流れ抵抗を最小限にするように構成されている。例えば、標準的なオスメスのルアー接続に代えて、コネクタ285は、管腔と、シースによくみられる標準メス型ルアーコネクタ62に合う面とを有するアダプター60、そのアダプター60とシースメス型ルアー62との間をシールするシール部材64、および回転ナット66とを含み、該回転ナットは、シール64が圧縮されると、流体、空気真空および圧力に対してシールすることができるように、メス型ルアー62のネジ部分と係合し、アダプター60とルアー62とを一体となるように接続している。再び
図5に戻ると、近位部材280がシース10に接続された場合に、シース10との流体接続を近位部が選択的に開放または閉鎖できるように、近位部材280はY字アームコネクタ226上にバルブ242を含んでもよい。シース吸引ライン230を吸引源に接続するコネクタ232についても、同様のタイプの接続を行うことができる。
【0051】
好ましい実施態様では、近位接続は、全長約34cmに対して、長さ約22cmの近位延長部、約7センチのY字アームコネクタ、および長さ約5cmの近位止血弁を有している。
【0052】
手順の一部において、塞栓の順行性流動を阻止するために、介入時に頸動脈を一時的に閉塞することが望ましい場合がある。一実施態様では、
図7に示すように、アクセスシース220は、シース本体222の遠位先端部に閉塞バルーン246を含んでいる。シース本体222内の追加の管腔は膨張ライン248に接続でき、バルーン246を膨張ライン248に流体接続する。閉塞バルーン246を膨張させるため、膨張ライン248に膨張デバイスが接続される。本実施態様では、頸動脈の閉塞が必要な場合、バルーン246を膨張させる。
【0053】
いくつかの例では、動脈穿刺の直径を最小限に抑制するために、シース挿入の際にはシース先端部をできるだけ小さく維持する一方、血管へ挿入後は、シース220の開口部を拡張することが望まれている。この機能の少なくとも1つの目的は、吸引カテーテル320を引き戻す時または他の血栓除去デバイスをシース220に引き込む時、遠位閉塞の影響または生成を最小限に抑制することである。血栓除去手順の間、血栓を捕捉したデバイス上のシース220の遠位開口部221内に血栓が「引き戻される」場合がある。シース220の遠位先端部がその最初の大きさに比べて拡大されているか、または漏斗状に広がっている場合、血栓片が断片化され塞栓を引き起こす可能性が最小化される。何故なら、シース先端部の寸法が大きい場合または漏斗状の形状の場合、塞栓は多数片に分裂することなく、その中に引き込まれる可能性が大きくなるからである。このことは、患者に対してより好ましい臨床結果をもたらす。アクセスシースの一実施態様では、シース220が動脈内に挿入され、所望の位置に配置された後で、先端部が拡大できるように、シース本体222の遠位部は、材料および/または構造が選定される。一実施態様では、IDが約0.087インチシースである遠位領域は、約0.100インチ~0.120インチの直径に拡大でき、寸法は変化してもおよび/またはフレア状でもよい。
【0054】
拡張する遠位先端部の構成例は、拡張するために収縮させることのできる、被覆された編組先端部を含む。拡張する遠位先端部の別の例は、束縛のない場合には機械駆動または弾性バネにより開く、傘またはその類似構造物である。直径が拡張可能な他の機構は公知である。1つの具体的な実施態様は、高圧バルーンを用いて拡張した時に変形可能な材料からなるシースである。2014年12月19日に出願された同時係属中の米国特許公開第2015/0173782号には、例示的なデバイスが記載され、その全体は出典明示により本明細書に組み入れられる。この特徴の構成は、同時係属中の公開第2015/0173782号に記載されている。
【0055】
シース本体222の遠位端領域では、開口部の位置、大きさ及び数を変えることもできる。シース本体222には、シース220の遠位端領域の近くに1つ以上の開口部を組み込むことができ、該開口部は、シース本体222の管腔223と、シース220がその中に配置される血管との間に流体が流れることを可能とする。前記1つ以上の開口部は、吸引カテーテル320の管腔部322がそれを通って延在できるように寸法決めすることができる。前記1つ以上の開口部は、前記1つ以上の開口部が、シース本体222の遠位端領域に細長い口、溝(slot)、または切れ込み(notch)を形成できるように、管腔部322の外径よりも大きくなるように寸法決めすることができる。前記1つ以上の開口部は、該開口部が、シース本体222の遠位端から、少なくとも0.25mm、0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm、または4.0mmまたはそれ以上離れて位置するように、遠位端の直ぐ近傍のシース本体222の側壁の領域内に形成することができる。前記1つ以上の開口部は、シース本体222の遠位端領域の近傍に多孔質領域を形成する複数の開口部であってもよく、前記複数の開口部の少なくとも1つは、システムの1つ以上の部材が、シース本体222の管腔223から出ることができる十分な大きさを有するように寸法決めされている。いくつかの実施態様では、前記1つ以上の開口部は、シース本体222の管腔223からの遠位開口部221を含んでいる(
図4および
図12Cを参照)。いくつかの実施態様では、前記1つ以上の開口部は、細長い遠位口を含み、該遠位口は、シース本体222の第1の面上に遠位端領域の近傍に位置する側方開口部1219を形成する(
図12Cを参照)。側方開口部1219は、シース本体222の遠位端から少なくとも0.25mm以上離れて配置することができる。側方開口部1219は、スパイン付きカテーテル320の遠位管腔部322の外径と少なくも同じ直径を有することができる。好ましくは、側方開口部1219は、遠位管腔部322の外径の少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、または3倍の大きさの直径を有する。別の実施態様では、シース本体222は、遠位端領域の近傍に、シース本体222の対向する、および/または隣接する面の上に一対の側方開口部1219を含んでいる。別の実施態様では、シース本体222は、管腔223からの遠位開口部221と、管腔223からの1つ以上の細長い側方開口部1219を含んでいる。シース220の長手方向軸Aに対して所望の方向に、側方開口部1219からのカテーテル320の遠位拡張が可能となるように、前記1つ以上の開口部1219の配置がなされるべく、シース本体222が長手方向軸Aの周りを回転可能であることを理解されたい。広口の側方開口部1219の導入は、カテーテル320の出口角度の範囲を、実質的に(すなわち、ほとんど)シース本体222に平行な位置から、シース本体222に対して角度を有する位置、例えば、90度よりも大きな角度だけでなく、シース本体222に対して実質的に垂直または直角な位置へ変化させることができる。横切られる血管内に厳しい角形状(angulation)がある場合、あるいは分岐が存在する場合、のような状況では、この配置が非常に重要になる場合がある。しばしば、血管内の曲がりくねった部分や分岐は、90度まで、あるいはそれより大きく180度まで、の厳しい角形状を有している。血管系における代表的な厳しい角形状点は、大動脈腸骨接合、大動脈からの左鎖骨下動脈分岐、上行大動脈からの腕頭(無名)動脈分岐、並びに多くの他の周辺位置を含むことができる。
【0056】
再び
図1を参照すると、上述したように、カテーテルシステム300は、可撓性の遠位管腔部322と、剛性の近位スパイン330を有するスパイン付き吸引カテーテル320を含むことができる。剛性のスパイン330と対をなす管腔部322の可撓性および潤滑性だけでなく、遠位管腔部322の外径は、心臓血管系を移動できるように構成された他のシステムと比較して、スパイン付き吸引カテーテル320が脳血管における閉塞部位に移動することを可能にする。本明細書に記載されたシステムは、長く、曲がりくねったアクセス経路を有する解剖学的構造の領域内の塞栓に到達することができる。その経路は、大動脈弓血管、頸動脈血管および腕頭血管に起因する狭窄プラーク物質を含む場合があり、塞栓合併症のリスクがある。さらに、脳血管は、通常、冠状動脈または他の末梢血管系よりも繊細で、かつ穿孔を起こし易い。本明細書中に記載のカテーテルシステムは、これらのアクセスの課題を克服する能力を有しているので、より容易に神経血管介入手順を提供できる。本明細書に記載のカテーテルシステムは、屈曲部を押し通すのではなく、屈曲部を移動(ナビゲート)するように設計されている。2014年12月12日に出願された米国特許出願公開第2015/0174368号、および2014年12月19日に出願された米国特許出願公開第2015/0173782号は、出典明示により本明細書に組み入れられ、大脳動脈の屈曲した解剖学的構造をナビゲートできるカテーテルデバイスの特徴を記載している。
【0057】
遠位管腔部322の長さは変えることができる。いくつかの実施態様では、遠位管腔部322の長さは、アクセスシース本体222の遠位先端部の近傍領域から頸動脈の閉塞部位へと延び、アクセスシース222の遠位端と近位重なり領域120を形成する(
図2Bを参照)。閉塞部位と、アクセスシースの遠位先端部が配置されている部位の変動を考慮すると、遠位管腔部322の長さは、約10cm~約25cmの範囲が可能である。遠位管腔部322の長さは、アクセスシース220のシース本体222の長さ未満であり、スパイン付き吸引カテーテル320はシース本体222の中に引っ込むので、スパイン付き吸引カテーテル320の重なり領域328と、シース本体222の内径との間にはシールが残る。
【0058】
本明細書のカテーテルシステムは、屈曲した解剖学的構造の中への拡張到達を可能とするために互いに入れ子にされた複数のスパイン付きカテーテルを組み込むことができる。例えば、シース本体222の管腔内に受け入れ可能に寸法決めされた外径を有する第1のスパイン付きカテーテル320は、そのスパイン付きカテーテル320の内部管腔を通って延在する第2のスパイン付きカテーテル320を有してもよい。第2のスパイン付きカテーテル320は、より小さい直径を有するその第2のスパイン付きカテーテル320が、血管のより遠位領域、特により狭い寸法のその領域に到達できるように、その近位スパインを用いて、第1のスパイン付きカテーテル320の遠位端を超えて延在させることができる。この実施態様では、第1のスパイン付きカテーテル320は、第2のスパイン付きカテーテル320の支持体として機能する。第2のスパイン付きカテーテル320は、シース本体222の内部管腔と流体的に連通し連続する吸引管腔を形成する、第1のスパイン付きカテーテル320の内部管腔、と流体的に連通する内部管腔を有する。
【0059】
一実施態様では、カテーテル320の遠位管腔部322は、標的部位に安全に移動できるように、柔軟で滑らかであり、そして高い吸引力を受けた時に凝血塊を効果的に吸引できるように、キンク抵抗と圧壊抵抗を有するように構成され、遠位端に向かって可撓性が増加する複数の部分を有する。一実施態様では、遠位管腔部322は、内側潤滑性ライナー、補強層、および外側ジャケット層を含む3層以上を含む。外側ジャケット層は、遠位管腔部322の長さに沿って可撓性を変化させるために、異なるデュロメータ硬度、組成、および/または厚さを有するポリマーの個別部分(discreet sections)から構成されてもよい。一実施態様では、内側潤滑性ライナーは、可撓性の異なる部分に沿って1つ以上の厚さ部分を有するPTFEライナーである。一実施態様では、補強層は、例えば巻回リボンまたはワイヤコイルまたは組紐で形成されたほぼ筒状の構造体である。補強構造の材料は、ステンレス鋼、例えば304ステンレス鋼、ニチノール、コバルトクロム合金、あるいは強度、可撓性、および破損抵抗の所望の組み合わせを提供する他の金属合金でもよい。一実施態様では、補強構造は、また遠位管腔部322の長さに沿って可撓性が変化するように、複数の材料および/または構成を含んでもよい。一実施態様では、カテーテル320の外面が親水性コーティング等の潤滑性コーティングで被覆されている。いくつかの実施態様では、トラッキング(tracking)時の摩擦を減らすために、内面上および/または外面上にコーティングがあってもよい。コーティングは、公知の様々な材料を含んでもよい。アクセスシース220を通るトラッキングを向上させるために、スパイン部に被膜が形成されてもよい。適切な潤滑性ポリマーは公知であり、シリコーン等、高密度ポリエチレン(HDPE)のような親水性ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアリーレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシアルキルセルロース誘導体、アルギン、糖類、カプロラクトン等、およびそれらの混合物および組み合わせを挙げることができる。好適な潤滑性、接着性、および溶解性を有するコーティングを得るために、親水性ポリマーを、それら同士で、または配合量の水不溶性化合物(いくつかのポリマーを含む)とブレンドしてもよい。
【0060】
遠位管腔部322の外径は、脳動脈内へ移動できるように寸法決めすることができる。カテーテルは、吸引力を最適化するために、閉塞部位に安全に移動することができるように可能な限り大きい内径を有することが望ましい。内径の適切な寸法は、患者の解剖学的構造と凝血塊と組成に応じて、0.040インチ~0.075インチの間、または0.040インチ~0.088インチの間の範囲とすることができる。カテーテル320の機械的完全性を維持しながら、外径はできるだけ小さくする必要がある。しかしながら、シース220を通ってカテーテル320を容易に挿入できるようにするとともに、所望の部位にカテーテル320を配置できるようにしながら、重なり領域120にシール領域を形成するために、重なり領域120では、カテーテル320の外径(OD)がアクセスシース220の内径(ID)に近付いている。一実施態様では、カテーテル320とアクセスシース220は、カテーテル320の外径を変化させることなく、重なり領域120で適合できるよう寸法決めされている(
図2B参照)。一実施態様では、重なり領域でのカテーテルODとアクセスシースIDとの間の差は、0.002インチ以下である。別の実施態様では、その差は0.003インチ以下である。一実施態様では、カテーテルがアクセスシースをシールする場所の近傍で、カテーテルの最遠位端がカテーテルのより近位領域と比べてより小さな外径を有するように、前記カテーテルは前記遠位開口部に向かうテーパー形状を有する。別の実施態様では、カテーテルODは、シースの内径とより密に適合するために、重なり部328でより逓増している(
図1参照)。この実施態様は、単一のアクセスシースサイズで使用するのに適した複数のカテーテルを用いるシステムでは特に有用である。スパイン付きカテーテル320のカテーテルODが、シース内径と適合する、あるいは差が0.002インチ以下である場合、カテーテルODを増加させる必要なしに、注入または吸引される流体に対するシールが重なり部328により達成可能であることを理解されたい。カテーテルとシースの間で注入または吸引される流体に対するシールは、別のシール構造またはシール機能を組み込むことなく、カテーテルとシースの実質的に同じ寸法同士の重なりにより達成可能である。
【0061】
図8Aと
図8Bに示す別の実施態様では、遠位管腔部322の近位端の外表面上に配置されたシール要素336がある。シール要素336は、1つ以上の外部リッジ(ridge)特徴部とすることができ、アクセスシース220の管腔内にカテーテル320が挿入されると圧縮されることが可能である。そのリッジ形状は、シール要素336が、Oリング、クアッドリング、または他のピストンシール構造として振る舞うような形状とすることができる。
図8Bは同様の構成を示し、シール要素366は、傾斜面がアクセスシース本体222の内面に対して付勢されるように構成されたワイパーシール構成を有している。あるいは、シール要素336は、カテーテル320が所望の部位に配置された後でも、膨張可能または拡張可能で、2つのデバイス間をいつでもシールすることができる、バルーンまたは被覆組紐構造等の膨張可能部材または拡張可能部材でもよい。この実施態様の利点は、カテーテルの位置決めの際にはカテーテル320にはシール力が作用しないが、カテーテル320の位置決めの後に、シールのためにシール力が適用または作業することである。
【0062】
遠位管腔部322の近位端領域の形状は、
図8A-8Bに示す直線カットに対して角度付きカットでもよいことを理解されたい。スパイン330は、カテーテル320の近位端領域で結合してもよく、および/または、スパイン330が近位端から離れた距離で遠位管腔部322と結合するように、遠位管腔部322の少なくとも一部に沿って延在してもよいことを理解されたい。スパイン330および/または前記の部322を構成する1つ以上の要素を、接合、溶接、接着、挟持、ストリンギング(stringing)、テザリング(tethering)、または結束(tying)を含む様々なメカニズムを用いて結合することで、前記の部322にスパイン330を結合することができる。いくつかの実施態様では、スパイン330を、遠位管腔部322の層の間に挟持することで、スパイン330と管腔部322とを結合させる。例えば、スパイン330は遠位端を有するハイポチューブまたはロッドでもよく、該遠位端が積層され、あるいは近位端領域の近傍でカテーテル部322の層に取り付けられるように、該遠位端は、削られ、研磨され、あるいは切断されている。スパイン330と前記の部322との間の重なりの領域は、少なくとも約1cmとすることができる。このタイプの結合は、スパイン330から管腔部322への円滑で平坦な移行を可能とする。
【0063】
一実施態様では、重なり領域は、25水銀柱インチ(inHg)まで、または28水銀柱インチ(inHg)までの真空に対してシール可能なように構成されている。一実施態様では、重なり領域120は、最小限の漏れで、300mmHgまで、または600mmHgまで、または700mmHgまでの圧力に対してシール可能なように構成されている。さらに、スパイン付き吸引カテーテル320がアクセスシース220の遠位端を越えて前進し過ぎるのを防止する、特徴部を設けてもよい。スパイン付きカテーテル320の重なり領域328に逓増した直径と突出特徴を含むいくつかの実施態様では、アクセスシース本体222は、スパイン付き吸引カテーテル320の近位重なり部がシース本体222から抜けるのを防止するアンダーカットをその先端に設けてもよい。
【0064】
カテーテル320の遠位管腔部322は、X線透視装置の下での遠位先端部の移動および適切な位置決めを補助するために、遠位先端部に放射線不透過性マーカー324を有していてもよい(
図1参照)。さらに、重なり領域120が、アクセスシース遠位マーカー224とカテーテル近位マーカー1324との間の関係として視覚化できるように、カテーテル320の近位重なり領域328は1つ以上の近位放射線不透過性マーカー1324を含んでもよい(
図12C参照)。一実施態様では、2つのマーカー(遠位先端部のマーカー324とより近位のマーカー1324)は、X線透視画像の不明瞭さを最小限にするように区別され、例えば、カテーテル近位マーカー1324を単一バンドとし、シース先端マーカー224を二重バンドとしてもよい。
【0065】
スパイン付き吸引カテーテル320のスパイン330は、遠位管腔部322の近位端領域に結合されている。アクセスシース220の管腔223を通って、カテーテル320が遠位方向に前進し、かつ近位方向に後退できるように、スパイン330は構成されている。一実施態様では、スパイン330の長さは、アクセスシース220の全長(遠位先端部から近位バルブまで)よりも、例えば約5cmから15cm長い。
図1に示すように、スパイン330は、カテーテル320の遠位管腔部322とシース本体222との間の重なりを示すマーク332を含むことができる。シース220を通ってカテーテル320を挿入する際にマーク332をシース近位バルブ234と位置合わせする時、スパイン付き吸引カテーテル320とアクセスシース220との間にシールを形成するのに必要な最小限の重なり長さで、最遠位の位置にスパイン付きカテーテルを配置できるように、マーク332を配置することができる。スパイン330は、近位端上にタブ334等の把持特徴部を含むことができ、それにより、スパインを容易に掴むことができ、および前進または後退が容易となる。タブ334は、以下でより詳細に説明するように、遠位管腔部322の管腔323を通って延在するように構成された拡張器等の、システム300の1つ以上の要素と結合することができる。ガイドワイヤ270または回収可能ステントデバイスワイヤ500等の、シース近位バルブ234の中に存在する他のデバイスの間で、容易に区別できるように近位タブ334を構成することができる。一実施態様では、ガイドワイヤ、回収可能ステントテザー等と容易に区別することができるように、スパイン330は、明るい色に着色され、または明るい色でマークされている。
【0066】
スパイン330は、スパイン付き吸引カテーテル320の遠位管腔部322の前進と後退を可能とするに十分な剛性を有するように構成され、しかも、必要に応じて、脳の解剖学的構造を通って移動するのに十分な柔軟性を有している。さらに、スパイン330の外径は、アクセスシース220とシース本体222の管腔223の中であまりに多くの管腔面積を占めることのないように寸法決めされている。一実施態様では、スパイン330は、寸法が0.014インチから0.018インチの丸線である。別の実施態様では、スパイン330は、厚さが0.010インチから0.015インチと、0.015インチから0.025インチの寸法を有するリボンである。リボンは、平らなリボン、または円弧に沿ってC字形状または他の形状を形成する湾曲したリボン等の様々な断面形状を有することができる。別の実施態様では、スパイン330はハイポチューブである。一実施態様では、スパイン330の材料は、ステンレス鋼またはニチノール等の金属、並びに様々なポリマー等のプラスチックである。
【0067】
本明細書に記載された、システムの1つ以上の要素は、金属、金属合金、ポリマー、金属-ポリマー複合材、セラミックス、それらの組み合わせ等、または他の適切な材料から作製できる。適切な金属および金属合金の例の一部として、以下を含む:304V、304Lおよび316LV等のステンレス鋼;軟鋼;線形弾性および/または超弾性ニチノール等のニッケル-チタン合金;他のニッケル合金、例えばニッケル-クロム-モリブデン合金(例えば、INCONEL(登録商標)625等のUNS:N06625、HASTELLOY(登録商標)C-22(登録商標)等のUNS:N06022、HASTELLOY(登録商標)C276(登録商標)等のUNS:N10276、他のHASTELLOY(登録商標)合金等)、ニッケル-銅合金(例えば、MONTEL(登録商標)400、NICKELVAC(登録商標)400、NICORROS(登録商標)400等のUNS:N04400)、ニッケル-コバルト-クロム-モリブデン合金(例えば、MP35-N(登録商標)等のUNS:R30035)、ニッケル-モリブデン合金(例えば、HASTELLOY(登録商標)、ALLOY B2(登録商標)等のUNS:N10665)、他のニッケル-クロム合金、他のニッケル-モリブデン合金、他のニッケル-コバルト合金、他のニッケル-鉄合金、他のニッケル-銅合金、他のニッケル-タングステン合金またはタングステン合金等;コバルト-クロム合金;コバルト-クロム-モリブデン合金(例えば、ELGILOY(登録商標)、PHYNOX(登録商標)等のUNS:R30003);白金リッチなステンレス鋼;チタン;それらの組み合わせ等;または他の適切な材料。
【0068】
カテーテル320の遠位腔部322と近位スパイン330との間の接合部は、キンクまたは弱い点を形成しないようにそれら2つの部分の間で可撓性のスムーズな移行が可能となるとともに、アクセスシース220の管腔223と、カテーテル320の管腔部322の管腔323とにより形成される連続する内部管腔を通して、ガイドワイヤやマイクロカテーテル等のデバイスのスムーズな通行が可能となるように構成されている。一実施態様では、シース220の内部管腔223からカテーテル320の内部管腔323への急激な段階的移行がないように、遠位管腔部322は、前記の部322が角度付きカットを有するスパイン330と結合する場所の近傍に、移行部326(
図1参照)を有している。角度付きカットは、一般的に平面とすることができる。別の実施態様では、より緩やかな移行領域を形成するために、角度付きカットは、湾曲するか、段付きでもよい。遠位管腔部322とスパイン330は、溶接結合、機械的結合、接着結合、またはそれらの組み合わせによって接合することができる。スパイン330の遠位端は、溶接時の機械的接合を容易にするため、テクスチャー表面、突出特徴部、またはカットアウト特徴部等の特徴部を有していてもよい。熱溶接プロセス中には、この特徴部は、ポリマーの遠位管腔部322とスパイン330との間の機械的結合を促進する。別の実施態様では、スパイン付きカテーテル1320とそれを通って延在する拡張器1340を有する、
図12A~12Bに示すカテーテルシステム1300では、システム1300の前進時に、キンクすることなく、または弱い点を形成することなく、その2つの部分の間の可撓性の円滑な移行が形成される。スパイン付きカテーテル1320から拡張器1340を取り外すと、この円滑な可撓性の移行の喪失が起こり得る。キンクまたは弱い点の形成リスクを顕著に低下させることができる場合、スパイン付きカテーテル1320を最初に引き出すようにすることができる。
【0069】
スパイン付き吸引カテーテル320は、その近位端領域上にスパイン330が存在しているため、その全長320に延びる管腔を有していないので、使用前または処置中のいずれかで、カテーテルの管腔が詰まると、従来の洗浄工程または調製工程は有効ではない。従来の単一の管腔カテーテルでは、注射器がカテーテルの近位アダプターに取り付けられており、内部管腔は溶液で強制的に洗浄される。スパイン付きカテーテル320に、付属のカテーテル洗浄および清掃デバイス350を設けることもできる(
図1参照)。このデバイス350は、遠位端には丸いまたはテーパー状の先端部を有し、近位端にはメス型ルアーコネクタを有するチューブでもよい。ルアーコネクタは、注射器をデバイス350に接続することができる。鈍いまたはテーパー状の先端部は、カテーテル320を損傷する危険なしに、カテーテル320の管腔部322の遠位端または近位端のいずれかにデバイス350を挿入すること、および注射器を作業させてデバイスを洗浄することを可能にする。清掃デバイス350のODは、スパイン付きカテーテル320の管腔部322のIDと厳密に一致しており、それにより、カテーテルからデブリや吸引された閉塞物質を掃除するのに十分な力で、スパイン付き吸引カテーテル320を洗浄することができる。デバイス350は、プランジャー型作用で、詰まった血栓を機械的に掃除するのに用いることができ、デバイス350の作業長は、カテーテル320の遠位管腔部322と少なくとも同じ長さとすることができ、それにより、遠位管腔部322の全管腔323を通って挿入することができる。カテーテル320から詰まった血栓または他の塞栓物質をより効果的に除去するために、デバイスを押し込むのと併せて洗浄してもよい。
【0070】
別の実施態様では、吸引カテーテル320は、単一管腔カテーテルであり、例えば、そのタイプのカテーテルは、2014年12月12日に出願された、同時係属出願である、米国特許出願公開第2015/0174368号に記載されている。その実施態様では、カテーテルは、テーパー付き同軸拡張器とともに提供されるか、あるいはそのテーパー付き同軸拡張器と結合していてもよく、該テーパー付き同軸拡張器は、一般的に筒状で、カテーテルと、そのカテーテル内に配置されたガイドワイヤとの間の円滑な移行を可能とするテーパー形状の遠位部を有する。
【0071】
スパイン付き吸引カテーテル320は、血管を通って、適切に寸法決めされたマイクロカテーテルおよびガイドワイヤに沿って移動させることができる。あるいは、スパイン付きカテーテル320は、同軸拡張器340と共に供給できる(
図1参照)。拡張器340は、カテーテル320の遠位管腔部322の内部管腔323を通って同軸方式で挿入できるように、寸法決めと賦形がなされており、それにより、使用時には、拡張器340の近位端領域は、カテーテル320のスパイン330と並んで整列する。拡張器340は、テーパー状の遠位先端部346を有することができる。拡張器340の長さは、スパイン付き吸引カテーテル320と少なくとも同じ長さにすることができ、それにより、スパイン付きカテーテル320の管腔部322の遠位端から、最小限でも遠位テーパー状先端部346を突出させることができる。拡張器340は、カテーテルの遠位端へのスムーズな移行を提供する外径と、拡張器340の内部管腔から外へ延在するガイドワイヤへと至るまでのスムーズな移行を提供する遠位テーパー状先端部346と、を有することができる。拡張器340は、その長さの少なくとも一部に沿って概ね筒状とすることができる。一実施態様では、テーパー付き拡張器340は、例えば、直径が0.014インチと0.018インチの範囲にあるガイドワイヤを受け入れることができるように設計されている。この実施態様では、内部管腔の直径は、0.020インチと0.024インチの間とすることができる。テーパー状遠位先端部346は、1.5cmから3cmの範囲とすることができる。
【0072】
スパイン付きカテーテルとともに用いる、本明細書に記載された拡張器は、その構成が変化し得ることを理解されたい。例えば、上記のように、拡張器340は、概ね筒状で、カテーテル320とそのカテーテル320内に配置されたガイドワイヤとの間にスムーズな移行を可能とするテーパー状の遠位部を有する、同軸拡張器340とすることができる。拡張器340の筒状本体は、カテーテル320の全長に沿って延在することができる。あるいは、拡張器340は、カテーテル320のスパインと並んで整列する近位スパインを組み込むことができる。近位スパインは、拡張器340の遠位端領域と同軸に、またはそれに対して偏心させて配置することができる。拡張器340の同軸近位スパインは、それを通って延在する管腔を有することができる。あるいは、拡張器340は、管腔のない中実ロッドでもよい。中実ロッド拡張器は、ガイドワイヤがどのように使用されるのかと同様に、ユーザーにより所望されるあらゆる角度と形状に拡張器が成形できるように、狭い外径(例えば、0.010インチ~0.014インチ)を有するように削られた可鍛性材料から作製することができる。この構成では、カテーテルシステムは、ガイドワイヤまたはマイクロカテーテルを含んでいない。そのような拡張器は、スパイン付きカテーテル320の内径よりも0.003インチ~0.010インチ小さい外径を有するという点において、マイクロカテーテルに対して利点を有している。
【0073】
拡張器340は、拡張器340を注射器で洗浄することができるように、近位端に近位メス型ルアーアダプター348を有してもよい。拡張器340は、近位端にクリップ特徴部を組み込んでもよく、これにより、拡張器340の材料を十分に柔軟性を有する材料とすることができ、およびテーパー状遠位先端部346を十分な長さとすることで、ガイドワイヤの可撓性とカテーテルの可撓性との間に円滑な移行を可能とすることができる。この構成は、屈曲した解剖学的構造を通って標的脳血管の中へカテーテル320を容易に前進させることができる。一実施態様では、拡張器340の遠位端は、放射線不透過性マーカー344および/またはマーカー343を、テーパー状遠位先端部346の近位端に有している。マーカー物質は、白金/イリジウムバンド、タングステン、白金またはタンタルを含浸させたポリマー、または他の放射線不透過性マーカーでもよい。
【0074】
拡張器340は、拡張器340の遠位端と近位端との間で剛性が変化するように構成することができる。例えば、カテーテル320の管腔部322の遠位端を超えて延在する最遠位部を、より柔軟な材料で作製することができ、より近位部に向かって次第に硬い材料を用いることができる。いくつかの実施態様では、以下に詳細に記載されるように、拡張器340は、近位スパインを有するスパイン付き拡張器とすることができる。拡張器340の近位端は、タブ1364を含むことができ、該タブは、カテーテル320のスパイン330の近位端上で、拡張器340をタブ334と係止させることができ、これにより、2つの要素(スパイン付きカテーテル320と拡張器340)が、単一のユニットとしてガイドワイヤに沿って前進することができる(
図12A参照)。いくつかの実施態様では、カテーテル320のタブ334は、そこを通って延在する中央開口部を有するリングを形成することができる。拡張器340のタブ1364は、中央ポストを有する環状の戻り止めを有することができる。タブ1364の中央ポストは、タブ334のリングが、タブ1364の環状戻り止めの中に受け入れられて、アクセスシースを通ってカテーテルシステムをユーザーが前進および/または引き戻すことができる単一の把持要素を形成するように、タブ1364の中央ポストは、タブ334の中央開口部を通って挿入できるように寸法決めすることができる。タブ1364は、拡張器340に取り付けてもよく、または、拡張器340とスパイン付きカテーテル320との間の異なる相対位置に対応できるように拡張器340上を摺動可能でもよい。
【0075】
図12A~
図16は、本明細書の他の箇所に記載されているスパイン付き吸引カテーテルと拡張器システム1300の追加の図を提供する。
図12A~12Bは、遠位管腔部1322の吸引管腔1323を通って延在する拡張器1340を有するスパイン付き吸引カテーテル1320を示す。本明細書の他の箇所に記載されているように、カテーテル1320は、タブ1334を有する近位スパイン1330と、吸引管腔1323を有する遠位管腔部1322を有することができる。スパイン1330は、遠位管腔部1322とタブ1334との間に延在することができる。拡張器1340は、スパイン付きカテーテル1320の吸引管腔1323内に受け入れ可能である。拡張器1340は、遠位拡張部1360と近位スパイン1362を含むことができる。拡張部1360は、拡張器1340の遠位先端部1346と、近位スパイン1362の始点との間に延在することができる。拡張器先端部1346がカテーテル1320の遠位管腔部1322の遠位端を超える所定の距離延在することで、改良されたトラッキングのための円滑な移行を提供できるように、カテーテル1320と係合する時に、拡張器1340の拡張部1360は、カテーテル1320の遠位管腔部1322の全長を通って延在することができる。本明細書の他の箇所に記載されているように、拡張器先端部1346は、テーパー状にすることができ、および血管壁に対して、柔らかく、非外傷性で、柔軟にすることができ、それにより、組織と動脈壁を通って遠慮なく切開する、経皮的動脈アクセスのために通常使用されている拡張器に比べて、屈曲した解剖学的構造中の塞栓への血管内移動を容易にすることができる。
【0076】
拡張器1340は、急性虚血性脳卒中における屈曲し、しばしば罹患した血管を通る改良されたトラッキングのために構成されたカテーテル1320を備えた係止構成で示されている。拡張器部1360は、拡張器部1360の外面上に1つ以上の戻り止めを含むことができる。戻り止めは、拡張器部1360の近位端領域および/または遠位端領域の近くに配置することができる。戻り止めは、それを通って拡張器部1360が延在する管腔1323の内面上の対応する形状の表面特徴部に係止するように構成される。拡張器1340は、拡張器1340の近位スパイン1362の近位端に拡張タブ1364を含むことができ、上述したように、カテーテルスパイン1330の近位端領域上の対応する特徴に接続および係止するように構成されることができ、例えば、1つ以上の戻り止めまたは他の表面特徴を介して行うことができる。これにより、拡張器1340とカテーテル1320は、それらの間に単一点を超える係止接続点を持つことができる。拡張器1340の近位スパイン1362は、拡張器1340の拡張器部1360とタブ1364との間に延在することができる。拡張器部1360は、本明細書の別の箇所に記載されている筒状要素であり、拡張器部1360の全長に亘るガイドワイヤ管腔を形成する(およびスパイン付きカテーテル1320の遠位管腔部1322の全長)。拡張器1340全体が、拡張器部1360並びに、スパイン1362を通ってガイドワイヤを受け入れることができるように構成された筒状要素であってもよいことを理解されたい。拡張器部1360の近位端、すなわち、拡張器部1360と近位スパイン1362との間の移行部1326は、カテーテル1320の遠位管腔部1322と拡張器1340の拡張器部1360との間の移行を円滑に行うための“逓増部”(step up)を含むことができる。移行部1326は、シース1220の内部管腔1223からカテーテル1320の内部管腔1323への急激な段階移行がないように、角度付きカットを組み込むことができる。それにより、スパイン付き吸引カテーテル-拡張器1300は、それが接触する血管壁に対して滑らかとなるようにすることができる。
【0077】
拡張器1340の近位スパイン1362は、カテーテル1320のスパイン1330と同様の剛性および特性を有することができる。より具体的には、スパイン1362,1330の一方または両方は、剛性および/または耐キンク性を有することができる。さらに、スパイン1362、1330の一方または両方は、非常に低いプロフィールを生成しながら、アクセスシースまたはガイドワイヤを通って、複数の遠位部、すなわち、組み合わされた遠位管腔部1322と拡張器部1360を押すことを可能とする剛性を有することができる。
【0078】
カテーテルタブ1334と拡張器タブ1364は、互いに取り外し可能に接続することができる。より具体的には、タブ1334,1364は、係止構成と非係止構成をとることができる。係止構成では、拡張器タブ1364は、カテーテルタブ1334と係合することができる。非係止構成では、拡張器タブ1364は、カテーテルタブ1334から係合を解除することができる。拡張器タブ1364は、係止構成にある、スパイン付き拡張器1340の対応する部分とスパイン付きカテーテル1320との関係を維持するような方式で、カテーテルタブ1334に、例えばクリック止めまたは閉じ込めることにより、取り付けることができる。このような係止は、例えば、拡張器タブ1364上の戻り止めを用い、カテーテルタブ1334の中に形成された凹部内の場所に嵌め込む等により達成できる。いくつかの実施態様では、スパイン付きカテーテル1320のスパイン1330は、拡張器スパイン1362の特別のチャンネルと並んでまたはその中を動くことができる。このチャンネルは、拡張器スパイン1362の長さに沿って配置させることができ、およびカテーテル1320のスパイン1330が、チャンネル内に受け入れられ、チャンネルに沿って双方向に円滑に摺動できるように、カテーテルスパイン1330の断面形状に適合する断面形状を有することができる。一旦、スパイン付きカテーテル1320とスパイン付き拡張器1340が固定されると、組み合わされたシステム、すなわち吸引カテーテル-拡張器1300は、例えば本明細書の別の箇所に記載されたアクセスシース220の管腔223を通って、標的部位に送られることができる。
【0079】
図12Bを参照すると、一実施形態に基づき、非係止構成にある、スパイン付きカテーテル1320とスパイン付き拡張器1340を有するスパイン付き吸引カテーテル-拡張器1300が示されている。スパイン付き吸引カテーテル-拡張器1300が標的部位に配置されると、本明細書で説明されているように、拡張器タブ1364は、カテーテルタブ1334による係止を解除することができる。スパイン付き拡張器1340は引き出され、スパイン付きカテーテル1320を、例えば、吸引あるいはワイヤまたはバルーン送達のために使用することができる。
【0080】
図13は、一実施形態に基づくものであり、
図12BのA-A線に沿った断面図であって、スパイン付き拡張器1340と同軸的に配置されたスパイン付きカテーテル1320の断面図である。この断面図は、遠位管腔部1322の吸引管腔1323内に受け入れられた拡張部1360を有するカテーテル-拡張器の一部を示している。管腔1323は、0.072インチまでの範囲の内径を有してもよいが、より大きい、またはより小さい内径も可能である(より大きくても、より小さくても可能)。遠位管腔部1322の壁は、吸引のための最大直径を提供するために、ねじれまたは楕円化に抵抗することができる。拡張器部1360は、スリップフィットで遠位管腔部1322に受け入れることができる。したがって、一実施形態では、拡張器部1360の外径は、遠位管腔部1322の内径未満でもよい。例えば、管腔1323は0.072インチの直径を有し、拡張器部1360が0.070インチの外径を有してもよい。
【0081】
図14は、一実施形態に基づくものであり、
図12BのB-B線に沿った断面図であって、スパイン付き拡張器1340を除いたスパイン付きカテーテル1320の断面図である。断面は、拡張部1360が後退および/または除去された後の遠位管腔部1322を示している。遠位管腔部1322は、管腔1323を画定する内壁1321を有している。管腔1323は、図に示すように円形でもよく、または別の形状でもよい。一実施形態では、管腔1323の有効直径は0.072インチまでの範囲である。
【0082】
図15Aは、一実施形態に基づくものであり、係止構成にあるスパイン付きカテーテル1320とスパイン付き拡張器1340を有するスパイン付き吸引カテーテル-拡張器システム1300が示されている。一実施形態では、スパイン1330と拡張器1340は、全長に亘り実質的に同様の外形寸法を有することができる。例えば、拡張器部1360と拡張器スパイン1362との間をより小さな寸法へ収束させるよりもむしろ、拡張器スパイン1362は拡張器部1360と同じ寸法を有してもよい。よって、少なくともその長さの大部分に亘って、実質的に同じ断面積を有するカテーテル-拡張器が提供できる。上述のように、スパイン付き拡張器1340とスパイン付きカテーテル1320は、係止構成で係合し、非係止構成で係合が解除される、対応するタブ1334,1364を有することができる。
【0083】
図15Bは、一実施形態に基づくものであり、非係止構成にあるスパイン付きカテーテル1320とスパイン付き拡張器1340を有するスパイン付き吸引カテーテル-拡張器が示されている。スパイン付き拡張器1340は、上述した方法と同様にして、スパイン付きカテーテル1320から除去することができる。一実施形態では、スパイン付き吸引カテーテル-拡張器は、その長さの大部分に亘って同様の断面積を有することができ、それにより、スパイン付きカテーテル1320とスパイン付き拡張器1340の形状は、相補的であってもよい。例えば、スパイン1330は、円弧、例えば四分円に沿った断面積を有することができ、それにより、拡張器スパイン1362の断面積は円の四分の3でもよい。このように、スパイン1330は、全円の全断面積を提供するために、拡張器スパイン1362に一致してもよい。
【0084】
図16は、一実施形態に基づくものであり、神経血管の解剖学的構造内に位置する、内部管腔1322を有する遠位管腔部1322を有するスパイン付きカテーテル1320の模式図が示されている。シース本体1222と内部管腔1232を有するアクセスシース1220とともに使用される場合、スパイン付きカテーテル1320がICAに到達し、塞栓Eまでの距離が20cm未満であると矛盾なく感じられる一実施形態では、長さが25cmである遠位管腔部1322が、重なり領域1120がアクセスシース1220とともにシールを形成することが理解されるであろう。重なり領域は数cmの長さを有することができ、塞栓Eから管腔部1322の遠位管腔部の遠位端の距離に応じて、例えば、スパイン付きカテーテル1320をアクセスシース1220からどの程度遠くまで前進させるかに応じて、変化することができる。
【0085】
本明細書の別の箇所に記載されているように、塞栓の吸引に利用できる管腔領域は、アクセスシースに従来の大口径のカテーテルを有する吸引システムを用いた場合と比べ、スパイン付きカテーテル1320を用いた方が大きい。より詳細には、スパイン付きカテーテル1320の管腔領域と遠位管腔部1322の近くのアクセスシース1220の管腔領域とを組み合わせた体積は、システムの全長に沿った大口径カテーテルの管腔領域よりも大きい。そのため、1回の吸引試行で塞栓を除去できる可能性を増加させることができる。より詳細には、スパイン1330に沿った、拡径した管腔直径により大きな吸引力を得ることが可能となり、塞栓に対する吸引力を改善することができる。拡径された管腔直径は、マイクロカテーテルまたはテーパー状内部部材等のデバイスが、スパイン付きカテーテルおよびアクセスシースに同軸的に配置されている状態で、造影剤、生理食塩水、または他の溶液で前方洗浄することができる環状領域を増加させることもできる。そのため、デバイスの移動中に血管造影を行うことの容易性および能力を向上させることができる。
【0086】
開示されたシステムは、そのシステムと共に使用されるように特別に構成された補助デバイスを備えることができる。アクセスシースシステムまたは吸引カテーテルシステムの一実施態様を参照することは、限定されることを意図するものではないこと、および本明細書に記載された補助デバイスは、本明細書に記載された特徴の変形例または組み合せを有する任意のシステムと共に使用することができることを理解されたい。例えば、アクセスシースが以下に記載されている場合、本明細書に記載のアクセスシースまたはアクセスシースシステムのいずれかの1つ以上の特徴を組み込むことが可能であることを理解されたい。同様に、スパイン付きカテーテルが、以下に記載されている場合、本明細書に記載されているスパイン付きカテーテルまたはスパイン付きカテーテルシステムを組み込むことができる。
【0087】
一実施態様では、システムはマイクロカテーテル400を含む(
図1参照)。マイクロカテーテル400は、脳血管内における移動に特に適するように構成することができる。
スパイン付きカテーテル320を所望の部位に移動させるのを補助するために、テーパー付き拡張器340に代えてマイクロカテーテル400を用いることができる。よって、その近位端に、スパイン330をマイクロカテーテル400に係止する手段を含んでもよく、それにより、2つの要素(スパイン付きカテーテルおよびマイクロカテーテル400)を、ガイドワイヤに沿って単一のユニットとして前進させることができる。いくつかの例では、マイクロカテーテル400は、カテーテル320の前方を前進させて、カテーテル320が前進する時のサポートをさせ、あるいは閉塞を横断させ、閉塞に遠位の血管造影を行う。この場合、マイクロカテーテル400の長さを、スパイン付きカテーテルよりも約10~20cm長くすることができる。マイクロカテーテル400は、回収可能なステントデバイス500を閉塞に送達するために使用することもできる。この場合、マイクロカテーテル400は、回収可能なステントデバイス500の送達に適した内径、例えば、0.021インチと0.027インチの範囲と、PTFEのインナーライナーとを有することができる。マイクロカテーテル400は、移動時に吸引カテーテル320の遠位端を超えて延在できるように、スパイン付きカテーテル320の全長よりも少なくとも約5~10cm、あるいは約5~20cm長くしてもよい。
【0088】
一実施態様では、システムは、遠位拡張可能部510を有する回収可能なステントデバイス500を含み、それは
図9に示すように、マイクロカテーテル400を通って送達できるように寸法決めされ、かつ構成されている。回収可能なステントデバイス500は、閉塞の除去を補助するために、システムの他の要素と共に使用することができる。回収可能なステントデバイス500は、血栓摘出手順中に、閉塞された動脈への流れを迅速に回復させるために用いることもできる。回収可能なステントデバイスの例には、ソリティア血行再建デバイス(Solitaire Revascularization Device)(メドトロニック)(Medtronic)またはトレボ・ステントリーバー(Trevo Stentriever)(ストライカー)(strayker)が挙げられる。
【0089】
使用方法では、回収可能なステントデバイス500は、吸引段階でカテーテル320の中に血栓を取り込むことを補助する、あるいは吸引段階で詰まる可能性のあるカテーテル320を掃除することを補助するために用いられる。一実施態様では、検索可能なステントデバイス500は、これらの機能を実行するのに特に適合するように構成されている。例えば、
図10Aに示すように、デバイス500の拡張可能部510の遠位端は、最遠位端を閉鎖するために、遠位端で一体となる複数の支柱(struts)または要素を有し、それにより、デバイスがデバイスを横切る血流を可能とするが、デバイス500がカテーテル320の中に引き込まれる際に、血栓片を捕捉し、その後、カテーテル320を通って遠位端から出るように構成されている。あるいは、遠位端520は、フィルタ要素またはバルーン要素である。
【0090】
図10Bに示す別の例では、回収可能なステントデバイス500は、2つ以上のセグメントを含み、1つ以上の近位セグメント510aは、カテーテルの遠位内部管腔内で拡張可能に構成され、一方、1つ以上の遠位セグメント510bは、従来の回収可能ステントデバイスで行われているように、閉塞を横切って拡張可能に構成されている。あるいは、
図10Cで見られるように、回収可能なステントデバイス500は、非常に長い拡張可能部510を有し、該拡張可能部の近位部は、カテーテルの遠位内部管腔内で拡張可能であり、一方、遠位部は閉塞を横切って拡張される。これら全ての実施態様では、拡張可能部510の近位端は、最小の構造要素を有し、これにより、拡張可能部は、カテーテル320の管腔の中に容易に引き込まれ、およびアクセスシース320から容易に引き出され、装置を介する血栓吸引の障害を最小限に抑える。これらの実施例では、凝血塊がカテーテル320の中に吸引された場合であっても、拡張可能部510は依然として凝血塊と係合しており、もしカテーテル320に栓がされた場合には、引き戻された時に凝血塊を掃除できるようにデバイス500は好位置に配置される。一旦、回収可能なステントデバイス500が、カテーテル320の管腔部322から除去されると、依然として部分的または完全に閉塞されている場合には、カテーテル320を通してその部位に対して追加の吸引を適用することができる。カテーテル320が詰まったままでは、このステップは不可能であるので、追加の吸引のために再挿入される前に、カテーテルは取り外され、患者の体外で洗浄されなくてはならない。回収可能なステントデバイス500のこの構成は、従来の単一管腔吸引カテーテル、またはスパイン付き吸引カテーテル320のいずれかで使用することができる。
【0091】
図10A~10Cに示すデバイス500の実施態様は、公知の血栓摘出デバイスおよび血栓吸引中のカテーテルの詰まりの問題に対処する方法と共に使用できる。
【0092】
一実施態様において、
図2Aまたは
図3に示すように、システムは吸引源600を含む。吸引源600は、アクセスシース220上の吸引ライン230に取り付けることができる。吸引源600の例としては、注射器または能動吸引ポンプを挙げることができる。吸引源600は、容器等の送達場所に接続することができる。容器と吸引源600とは別々でもよく、その出口が採血槽に接続された機械式または電気機械式の流体ポンプでもよく、あるいは、注射器または注射器ポンプ等の単一のデバイスに統合されてもよい。あるいは、採血槽は、病院の真空ラインまたは空気真空ポンプ等の真空源に接続され、このようにして、容器ならびに吸引源が提供される。フィルタおよび/または逆止弁は、吸引源に結合されてもよい。ポンプは、ダイアフラムまたはピストンポンプのような容積式ポンプ、ぜん動ポンプ、遠心ポンプ、または当該技術分野で知られている他の流体ポンプ機構でもよい。
【0093】
一実施態様では、吸引源は、可変状態または多状態吸引源であり、および吸引レベルを制御する機構を含み、それには、例えば、真空ポンプ内の真空レベルを変更すること、容積式ポンプ、ぜん動ポンプまたは遠心ポンプのモータへの動力を変更すること、あるいは注射器または注射器ポンプにおける注射器の引き戻し速度を変更することを含む。あるいは、可変流動抵抗を有する要素を設けることにより吸引速度を変化させることができ、例えば、高流動抵抗流路と低流動抵抗流路との間で切り替え可能な並行流流路、可変的に開くことができるオリフィスまたは管腔、あるいは流動抵抗を変化させることのできる他の手段を挙げることができる。一例では、吸引源は、2つの吸引レベルを有するように構成される:カテーテルが血栓材料と接触しているときに使用される高レベルの吸引であって、血栓閉塞を吸引するレベルと、遠位塞栓を引き起こす危険性が高いステップ中、例えば、傷害部を横切るか、回収可能なステントデバイスが拡張され、血管への流れが回復する時に使用される低レベルの吸引とを含む。
【0094】
図11に示す別の例では、吸引源600は、吸引ライン230内の流量を感知する流量センサ275をさらに含み、そのセンサは吸引のレベルを制御するコントローラに結合されている。吸引源600は、流量が遅い時に吸引レベルを増加させ、流量が増加した時に吸引レベルを減少させることができる。この方法では、カテーテルが目詰まりしたり、または部分的に目詰まりした時に力が最も大きくなるが、遠位塞栓からの保護を保証する自由な流れを確保しながら、吸引される血液の体積を制限する場合には、最小レベルまで減少させる。この方法では、システムは、吸引される血液の量を制限しながら、血栓の吸引を最適化する。あるいは、吸引源600は、真空計を含むことができる。カテーテル320内の流れが遮断されるか、または制限されると、ポンプはより高いレベルの真空を生成せる。この例では、より高い真空が検出されたときに、吸引力が上昇するように構成することができる。
【0095】
さらに別の吸引源の実施態様では、吸引源600は、周期的レベルの吸引力を提供し、例えば、所定の周波数で高レベルの真空と低レベルの真空との間、あるいは高レベルの真空から真空でない状態、あるいは高レベルの真空から圧力源の状態をサイクルさせる。周期的吸引モードは、血栓にジャックハンマー型の力を提供し、カテーテルを介して血栓を吸引する能力を高めることができる。周期的吸引力は、電磁弁、プログラマブルポンプモータ等を介して可能とすることができる。一実施態様では、詰まった時、または吸引ラインで制限流が検知された時のみに、上述のように、低流量または高真空で周期的吸引は適用し、それ以外の時には、吸引源は、低レベルの流れに戻るか、またはオフにされる。この構成は、ユーザーにより制御可能であり、または吸引源へのフィードバックループを介して自動的に制御されるように構成される。
【0096】
一実施態様では、システムは、アクセスシース上の吸引ラインに接続されるように構成されている自動逆流機構を含む。例えば、吸引ラインは、中央静脈のような低圧部位、あるいはゼロまたは負圧に設定された外部容器に接続されている。
【0097】
図11に示す一実施態様では、洗浄ライン236は、ストップコック238を介して、生理食塩水または放射線不透過性造影剤を保持する注射器286に接続されてもよい。さらに、洗浄ライン236は、洗浄源288、例えば、生理食塩水の加圧バッグに接続されてもよい。バルブ292は、洗浄源288から洗浄ライン236への流れを制御することができる。バルブ292が、洗浄ライン236に開放されている時、加圧された流体源が提供される。一実施態様では、吸引源600がオンの時にのみ、バルブ292が開状態となるように、機械式または電気機械式カプラ295を介してバルブ292が吸引源600に結合されている。あるいは、吸引源600に向かう流れが存在する時のみにバルブ292がオン状態となるように、バルブ292は、吸引ライン230の流量センサ275に結合されている。これらの実施態様では、洗浄源288の流量は、近位延長部240の血液が明瞭となる程度で十分であり、吸引流に対して作用する流れを発生させて血栓の吸引を制限する程高くはない。この実施態様の利点は、近位延長部240では血液の明瞭なままであり、近位延長部240内にあるあらゆる塞栓または空気が明瞭に見えることである。
これは、注射器286を介してカテーテルを生理食塩水または造影剤で洗浄する場合に、ユーザーにフィードバックを提供する。
【0098】
別の実施態様では、バルブ292は、シース本体222をシース220の近位部240に接続するバルブ242に機械式または電気機械式のいずれかにより接続されている。バルブ242が閉じられている時のみにバルブ292が開くように、カップリング290を構成することができる。この特徴により、塞栓がカテーテルを通って脈管構造内に逆流する危険なしで、洗浄ステップを介して近位延長部240から血液を除去されることを可能にする。カップリング290は、例えば、いくつかの方法のいずれかで構成することができる。例えば、バルブ242が閉じられている時には、カップリング290を常に開放し、あるいは、バルブ242が閉じられておらず、自動的に開いていない限り、バルブ238が開くのを防止することができる。
【0099】
一実施態様では、バルブ292は、異なるレベルの洗浄流量を可能にする可変動バルブである。この例では、バルブ292は、吸引源が低設定にあるときには遅い洗浄を行い、吸引源が高設定にあるときには高レベルの洗浄を行うように構成されている。一実施態様では、バルブ242が閉じられた時にはさらに高レベルの洗浄を行うように構成されている。これらの構成は、デブリの連続的な除去および/またはアクセスシースの近位部の明瞭な可視性を可能とするとともに、手順のステップ中に遠位塞栓または空気が血管に入るリスクを最小化する。例えば、カテーテルの遠位先端部が、近位止血弁234から除去されるステップでは、カテーテルの先端に捕捉されたすべての凝血塊は、カテーテルがバルブを通して引っ張られるときに遊離するが、遊離した塞栓は連続洗浄により吸引ラインへと洗浄され、例えば、カテーテルが取り外された後の造影剤注入の間に、前記遊離した塞栓が血管内で再注入される可能性のある、シース内には残留しない。
【0100】
再び、
図1に関し、システム100は、複数のデバイスのキットを含むことができる。一実施態様では、キットはアクセスシースシステム200を含み、該アクセスシースシステムは、アクセスシース、1つ以上のテーパー状シース拡張器、および1つ以上のシースガイドワイヤを含む。別の実施態様では、システム100は、アクセスシースシステム200と、1つ以上の内径を有する1つ以上のスパイン付きカテーテルシステム300を含んでいる。一実施態様では、スパイン付きカテーテルシステム300は、スパイン付き吸引カテーテル320とテーパー付き拡張器340とを含んでいる。一実施態様では、スパイン付きカテーテルシステム300は、カテーテル清掃ツール350も含んでいる。さらに別の実施態様では、システム100は、アクセスシースシステム200、テーパー付きカテーテルシステム300、マイクロカテーテル400、および回収可能なステントデバイス500を含む。
【0101】
経皮アクセスのために構成された実施態様では、キットはアクセスシース220を含み、挿入可能なシース本体222の長さは約23cmであり、近位延長部240は約22cmであり、コネクタ226は約7cmであり、近位止血弁234は約5cmである、アクセスシースの全長は約57cmである。一実施態様では、キットは、スパイン付き吸引カテーテル320も含み、カテーテル遠位管腔部322は約20cmであり、移行部326は約2~4cmであり、スパイン部330は約65cmであり、スパイン付きカテーテルの全長が約88cmである。別の実施態様では、キットは、作業長が93cmであるテーパー付き拡張器340も含む。別の実施態様では、キットは、作業長が約198cmであるマイクロカテーテル400と全長が128cmである回収可能なステント装デバイス500も含む。
【0102】
経大腿アクセスのために構成された実施態様では、キットは、アクセスシースシステム220を含み、挿入可能なシース本体222の長さは約90cmであり、近位延長部240は約22cmであり、コネクタ226は約7cmであり、近位止血弁234は約5cmであり、アクセスシースの全長は約124cmである。アクセスシースの近位部は、取り外し可能な近位部280とすることができる。一実施態様では、キットは、スパイン付き吸引カテーテル320も含み、カテーテル遠位管腔部322は約20cmであり、移行部326は、約2~4cmであり、スパイン部330は約132cmであり、カテーテルの全長が約155cmである。別の実施態様では、キットは、作業長が160cmであるテーパー付き拡張器340も含む。別の実施態様では、キットは、作業長が約165cmであるマイクロカテーテル400と全長が195cmである回収可能なステントデバイス500も含む。
【0103】
別の実施態様では、キットは、取り外し可能な近位部280を有するアクセスシース220と、単一管腔吸引カテーテルとを含む。別の実施態様では、キットは、手順に適した任意の導入シースに取り付け可能な近位部280のみを含む。この実施態様では、キットは、スパイン付き吸引カテーテル320または単一管腔吸引カテーテルを含むことができる。
【0104】
これらの実施態様のいずれにおいても、キットは、吸引源も含むことができ、例えば、ポンプ、真空ポンプへのアタッチメント、注射器、シリンジポンプに取り付け可能な注射器等を挙げることができる。キットは、自動洗浄のための手段、例えば、カップリング手段290または292を含むことができる。
【0105】
本明細書の別の個所に記載されているように、アクセスシースシステムまたはカテーテルシステムの一実施態様に対する参照は、限定されることを意図するものではないこと、および本明細書に記載されたキットは、様々な特徴のいずれかを有するものとして本明細書に記載されているシステムおよび/または補助デバイスのいずれかを組み込むことができることを理解されたい。例えば、アクセスシースがキットの一部として記載されている場合、本明細書に記載されているアクセスシースまたはアクセスシースシステムのいずれかの1つ以上の特徴を組み込むことができることを理解されたい。同様に、スパイン付きカテーテルがキットの一部として記載されている場合、本明細書に記載されているスパイン付きカテーテルまたはスパイン付きカテーテルシステムのいずれかの1つ以上の特徴を組み込むことができることを理解されたい。
【0106】
図2Aおよび3は、使用方法を示している。
図2Aに示すように、アクセスシース220は、標準的な血管アクセスシースを用いて大腿動脈内に挿入され、そしてシース先端が内頚動脈または総頚動脈内で安全に可能な限り遠位の部位に位置するまで前進する。
図3では、アクセスシース220は、総頚動脈内に直接挿入され、シース先端が内頚動脈内で安全に可能な限り遠位となる部位に位置するまで前進する。いずれのシナリオにおいても、シースは最初に総頚動脈または近位頚動脈を前進し、次いで拡張器が前進し、シースを内頸動脈内のより遠位方向に前進させる前により柔らかい拡張器に交換される。シースは、その後、シースコネクタのアイレットを通して縫合糸を用いて患者に固定される。次いで、シースは、シースコネクタ上の小孔(eyelet)を通して縫合糸を用いて患者に固定される。シース吸引ライン230は、注射器または吸引ポンプ等の吸引源600に接続される。シース吸引ラインは、ストップコックまたはストップコックマニホールドを介して、前方洗浄ライン(加圧生理食塩水バッグ等)に接続されてもよい。
【0107】
一旦、シース先端部が所望の位置に固定されると、これは患者に固定される。スパイン付きカテーテル、テーパー付き拡張器、およびガイドワイヤは同軸構成に予め組み立てられ、シース近位止血弁を介して頚動脈内に導入される。スパイン付き吸引カテーテル320は、アクセスシースを通って前進し、遠位先端部が治療部位に位置した時点で位置決めされる。遠位カテーテル先端部が閉塞の近位面に位置するまで、標準的な介入技術を用いてデバイスを前進させる。スパイン330上のマーク332は、カテーテルの遠位管腔部322とアクセスシース本体222との間に依然として重なり領域120があることを保証する。この時点で、テーパー付き拡張器340とガイドワイヤを除去することができる。別の実施態様では、カテーテル320を閉塞に移動させるのを補助するために、テーパー付き拡張器340に代えてマイクロカテーテル400を用いる。この手順の間、吸引の前またはその間に管腔を明瞭に保つために、吸引管腔に対して前方洗浄を開放する。デバイス移動時のいずれの時点でも、遠位塞栓防止に適したレベルで吸引源600から吸引を開始することができ、例えば、ガイドワイヤまたはマイクロカテーテル400が閉塞を横断している場合である。
【0108】
一旦、スパイン付き吸引カテーテル320の遠位先端部が凝血塊の表面に達すると、吸引血栓摘出に適したレベルで吸引が開始されるが、それは遠位塞栓防止よりも高いレベルである。カテーテル320は、ユーザーが適切であると考えるある程度の期間、凝血塊に対して吸引モードを維持することができる。吸引血栓摘出操作の結果に応じて(吸引ラインを通る流れおよび/またはカテーテルのスパイン上の後ろ向きの力に対する抵抗を観察して)、ユーザーは、凝血塊が完全に吸引されたことを決定でき、あるいはそうでない場合には、ユーザーは、カテーテル320を前後に移動させて、その場で凝血塊を吸引することを選択することができ、あるいはカテーテル320をシース220内にゆっくりと後退させることができる。もしカテーテル320およびシース220を通して凝血塊を吸引することにより、動脈に血流が回復した場合には、最終の血管造影を実施し、カテーテル320を後退させることができる。しかし、血栓がカテーテル先端を閉塞し、除去することができない場合には、吸引力によりカテーテル320の先端に閉塞の一部または全部が付着した状態で、カテーテル320が引き戻される。
【0109】
後者のシナリオでは、カテーテル320がアクセスシース220の中に引き戻される間はずっと、カテーテル320の先端部では吸引が維持される。カテーテル320がアクセスシース内に完全に引き戻されると、シースにおける吸引を維持しながら、カテーテル320をシース本体222から迅速に取り外すことができる。シース本体222の遠位先端部にある遠位開口部219を通って延在した後で、カテーテル320がシース本体222の中に引き戻してもよいことを理解されたい。あるいは、カテーテル320は、シース本体222の遠位端領域の近傍の側方開口部219を通って延在してもよく、その場合、カテーテル320は、この側方開口部219を通ってシース本体222内に引き戻される。カテーテルの後退中のある時点で、カテーテル320が閉塞材料で詰まっているか否かに応じて、吸引血栓摘出に適した高レベルから遠位塞栓防止に適した低レベルまで吸引レベルを変化させることができる。カテーテル先端部またはシース先端部またはシース遠位領域のいずれかから連続的に吸引を維持する能力を提供すること、および吸引レベル変化させるとともに吸引を維持する手段を提供することにより、遠位塞栓を最小限にしながら、かつ吸引からの血液損失を最小限にしながら、この手順は、吸引の能力を最適化できる。所望であれば、近位バルブ234の洗浄ライン236で吸引を開始することもでき、それにより、近位バルブ234を介して凝血塊が付着する可能性のあるカテーテル先端部を取り外す際に、遠位塞栓の形成の可能性を減少させることができる。
【0110】
スパイン付き吸引カテーテル320は、シース220の近位止血弁234から完全に取り外すことができる。あるいは、アクセスシース220が近位延長部240を有する場合、遠位管腔部322を近位延長部240に引き込むことができる。後者のシナリオでは、一旦引き込まれると、シース220からカテーテル320を完全に取り外すことなく、カテーテル320とシース220は洗浄して、潜在的な塞栓物質を除去することができる。吸引ライン230からの吸引と同時に近位バルブ洗浄ライン236からの激しい洗浄により、カテーテル320とシース220のための洗浄環境が形成される。所望であれば、カテーテル清掃ツール350は、シース近位バルブ234に挿入され、この時点で、カテーテル320の管腔323を清掃するために使用されることができる。アクセスシース220が、コネクタバルブ242を有する場合、この段階では近位部240はシース本体222から閉鎖されてもよく、それにより、塞栓物質がシース本体222に流入して動脈内に流入する危険性がないようにすることができる。
【0111】
あるいは、バルブ242を閉鎖して、近位バルブが開放または除去される間は吸引を停止させることができ、そしてカテーテル320はシース320から完全に除去される。バルブ242を閉鎖することでカテーテル320が除去された時のシースからの血液の損失を制限できる。次に、カテーテル320は、清掃ツール350を用いて、テーブル上で洗浄しても、またはボウルまたは他の受容器に中に洗い出してもよい。近位延長部240は、吸引ライン230からの吸引と同時に、近位バルブ洗浄ライン236から洗浄源288を用いて、あるいはテーブル上で洗浄するため、またはボウルまたは他の受容器に中に洗い出すために側方ポートを開放することにより、洗浄されてもよい。所望であれば、血管造影を実行して、治療された動脈を通る流れを評価することができる。手順の指示がある場合、カテーテル320または他のカテーテルは、別の吸引血栓摘出ステップを試みるために上述のように、ガイドワイヤおよびテーパー付き拡張器340またはマイクロカテーテル400上を再度前進させることができる。カテーテルとアクセスシース220の近位延長部240の洗浄は、これらの後続のステップ中の遠位塞栓のリスクを最小限にすることができる。
【0112】
別の例示的な方法では、回収可能なステントデバイス500は、血栓性閉塞を除去するために、吸引と共に用いることができる。
図9は、経皮アクセス部位または経大腿アクセス部位のいずれかを介した使用方法を示す。このシナリオでは、アクセスシース220は上述のように位置決めされ、内頸動脈内で安全のため可能な限り遠位にシース先端部が到達するまで、前進させることができる。次に、スパイン付き吸引カテーテル320は、マイクロカテーテル400およびガイドワイヤ上に予め装填され、その同軸アセンブリは、アクセスシース220を介して頸動脈内に導入され、そして脳血管内に前進させることができる。マイクロカテーテル400およびガイドワイヤは、閉塞を横切って前進させることができる。スパイン付き吸引カテーテル320の先端部は、できるだけ遠位であって凝血塊に近くなるように前進させることができる。
【0113】
この時点で、ガイドワイヤを除去し、閉塞を横切って位置決めされるまで、マイクロカテーテル400を通って回収可能なステントデバイスを挿入することができる。マイクロカテーテル400を、ステントを配置するために引き戻すことができる。デバイス移動のいずれの時点でも、遠位塞栓防止に適したレベルで、例えば、ガイドワイヤまたはマイクロカテーテル400が閉塞を横断している時、またはステントの展開前に、吸引源から吸引を開始することができる。ステントの展開前に吸引を開始することで、病変部を横断している時に遊離した塞栓は、動脈内の回復流の下流には搬送されず、むしろカテーテル先端部内に捕捉される。回収可能なステント装置500が展開されている間、吸引を維持することができる。典型的には、ステントを後退させる前の数分間に展開され、ステントストラットの閉塞に対する係合を最大にすることができる。次に、回収可能なステントデバイス500をスパイン付きカテーテル320の中に引き込み、アクセスシース220の近位バルブから完全に除去されるまで後退を続けさせることができる。
【0114】
あるいは、ステントデバイス500をスパイン付きカテーテル320の遠位部内に引き込むことができ、ステントデバイス500およびスパイン付きカテーテル320を、アクセスシース220から一緒に引き戻すことができる。ステントおよび/またはカテーテルの引き込みステップの間、吸引をより高いレベルまで増加させることができ、凝血塊の吸引を最適化し、遠位塞栓を最小化することができる。アクセスシース220は、コネクタ上にバルブを有する近位延長部240を有し、デバイス500は、近位延長部240内に引き込まれ、そのバルブが閉じられ、次いで、近位止血弁234を広く開けることができ、そしてステントデバイス500またはステントデバイス/スパイン付きカテーテルの組み合わせを引き出すことができる。次いで、手順が指示する場合、別の血栓摘出の試みのために、同じまたは代替のデバイスが再挿入される前に、近位延長部240は、バルブ洗浄ライン236および吸引ライン230を介して洗浄されることができる。
【0115】
吸引カテーテル320を配置した後で交互に、拡張可能部510の一部が血栓を横切るとともに、一部がカテーテル320の遠位セグメント322にあるように、長尺の、またはセグメント化されたステント回収器500はマイクロカテーテル400とともに上述のように配置され、次いで拡張される。拡張可能部510が拡張された後、血栓が血管およびカテーテル320から吸引源600の中に完全に吸引されるように、あるいは、カテーテル320の遠位先端部および/または遠位管腔323に吸引されるように、吸引を開始させることができる。その時点で、長尺の、またはセグメント化されたステント回収器500を、吸引しながら、カテーテル320内に注意深く引き込むことができる。この時点で、カテーテル320に詰まっている凝血塊および/またはこのステップの間に遊離するデブリは、カテーテル320の中に吸引されなくてはならない。カテーテル320の作業チャネル323からステント回収デバイス500を完全に取り外すことで、管腔323から閉塞物質を完全に除去しなければならない。
【0116】
これらのいずれのシナリオにおいても、吸引源は、カテーテル内の自由流れの間の血液損失を最小限に抑えながら、血栓性閉塞に対する吸引力を最大化するように構成されている、可変またはマルチステートの吸引源であってもよい。
【0117】
別の例示的な方法では、アクセスシース220は、閉塞バルーン246を有している。
図7に示すように、遠位塞栓の高いリスクが存在する手順のステップの際に、例えば、凝血塊の付着した、ステントデバイス500またはスパイン付きカテーテル320の後退時に、バルーン246を膨張させることができる。バルーン246は、順行性の流れを停止させ、頚動脈内の吸引力を増加させる効果を有し、それにより、凝血塊の吸引を増加させるとともに、遠位塞栓の危険を減少させる。
【0118】
別の例示的な方法では、アクセスシース220は、拡張可能な遠位先端部を有する。この方法では、アクセスシース先端部が所望の部位に到達した後しばらくして、しかし、スパイン付きカテーテル320がアクセスシース220の中に後退する前に、遠位先端部を拡張することができる。遠位先端部がシース220の先端部の中に引き込まれているので、この方法によれば、スパイン付きカテーテル320の遠位先端部に付着している凝血塊の遊離によりもたらされる遠位塞栓の可能性を減少させることができる。代わりに、拡張または膨張したアクセスシースの先端部は、全ての凝血塊を捕捉するための漏斗として作用する。
【0119】
別の例示的な方法では、先に簡単に説明したように、アクセスシース1220は、側方開口部1219を有している(
図12Cに最もよく示されている)。この方法では、カテーテル1320の遠位管腔部1322の管腔1323を通って延在するスパイン付き拡張器1340を有するスパイン付きカテーテル1320を、アクセスシース1220の管腔1223を通って、シース本体n1222の遠位端領域に向かって前進させることができる。スパイン付きカテーテル1320の遠位管腔部1322の遠位先端部(遠位管腔部1322を通って延在し、カテ-テルシステムに最遠位端を形成するスパイン付き拡張器を有してもよい)は、側方開口部1219を介して管腔1223から出ることができ、次いでアクセスシース1220の遠位先端部を超えて遠位方向にさらに前進することができる。傾斜特徴部1217または他の内部特徴部を、管腔1223の遠位端領域に取り込むことで、面を形成することができ、その面に対しては、カテーテル1320をシース本体1222の管腔1223の長手方向軸Aから離れて側方開口部1219に向けて誘導するように、拡張器の先端部を偏向させることができ、それにより円滑な移行または管腔1223からの出口を達成できる。拡張器1340の遠位先端部1346は、傾斜特徴部1217に当接するとともに、シース本体1222の長手方向軸から離れるように僅かな角度だけ側方開口部1219の方向に向けられてもよい。本明細書の他の箇所に記載されているように、シース本体1222、よって側方開口部1219は、シース1220の長手方向軸Aに対する所望の方向に向けて、側方開口部1219からカテーテル1320が遠位に延在可能に、1つ以上の側方開口部1219が配置されるように、長手方向軸Aの回りを回転可能とすることができる。これは、オペレータが遭遇する解剖学的構造によって決定されることが多い。また、本明細書の他の箇所に記載されているように、カテーテルの遠位管腔部1322とアクセスシース本体1222との間に重なり領域1120に形成されている。シール要素1336は、遠位管腔部1322の外面、例えば、遠位管腔部1322の近位端領域の近傍に位置決めすることができ、重なり領域1120内に配置させることができる。形成されたシールは、管腔部1322の管腔1323から拡張器1340を引き出す時に、管腔部1322の管腔1323とアクセスシース本体1222の管腔1223とにより形成される、連続管腔を通して吸引力の完全な伝達を可能とする。
【0120】
別の例示的な方法では、吸引源600は、血液の完全性を維持する採血槽に接続されるが、そこでは、手順の血栓摘出部の終了時に、直接、あるいは細胞洗浄および/または血液濾過のような血液の後処理のいずれかにより、患者に安全に血液を戻すことができるようにすることができる。別の例示的な方法では、血液槽を必要とせずに処置中に血液を患者に戻すことを可能にする、静脈シースまたは静脈還流カテーテル等のデバイスに順番に接続される血液シャントに吸引源を接続する。別の例示的な方法では、血液は槽の中に回収され、手順の終了時に廃棄される。
【0121】
別の例示的な方法では、本明細書の他の箇所に記載されているように、アクセスシース1220は、大腿挿入部位から、鎖骨下動脈または外頸動脈へ送達される。アクセスシース1220は、塞栓を有する内頸動脈(ICA)等の標的血管と外頸動脈(ECA)等の別の血管との間の分岐部の竜骨(carina)に送達されることができる。アクセスシース1220が位置決めされると、スプライン吸引カテーテル1320等の作業デバイスは、アクセスシース1220の管腔1223を通って標的血管内へ送達されることができる。本明細書の他の箇所に記載されているように、アクセスシース1220の管腔1223とカテーテル1320の管腔1323は隣接しており、吸引のための逓増した直径を形成する。重なり領域1120は、アクセスシース1220の管腔1223から遠位方向に延在するカテーテル1320の間に維持される。カテーテル1320は、アクセスシース1220の遠位先端部にある開口部1221、あるいはアクセスシース1220の遠位領域の近傍にある側方開口部1119を通って、アクセスシース1220の管腔1223から遠位方向に延在することができることを理解されたい。解剖学的構造に対する側方開口部1119の最適な配置を提供するために、アクセスシース1220の本体部1222を配向させることができる。カテーテル1320の遠位管腔部1322とアクセスシース本体1222との間の重なり領域1120は、シールを形成するとともに、管腔部1322の管腔1323とアクセスシース本体部1222の管腔1223との間に形成される隣接管腔を通して吸引力を完全に伝達することが可能であり、並びに血管造影用造影剤注入、生理食塩水、1つ以上の薬剤または他の材料等の神経血管系の解剖学的構造への直接注入等の、標的血管への流体の送達に対するシールを提供することができる。アクセスシース1220の作業管腔1223が吸引カラムの大部分を提供するようにすることで、スパイン付き吸引カテーテル1320は、より強力な吸引力を生成することができる。本明細書の他の箇所に記載されているように、吸引カテーテル1320の遠位管腔部1322の管腔1323の寸法は、アクセスシース1220の管腔1223の直径より小さくすることができ、それを貫通して延在するスパイン1330の直径分だけ減らすことができる。管腔の逓増した直径は、例えば、同様の全長を有する大口径カテーテルの吸引カラムよりも大きな吸引カラムを形成することができる。スパイン付き吸引カテーテル1320は、例えば、オペレータが、頸動脈錐体部または脳血管内の到達困難な目印に到達することを望む場合の、支持送達カテーテルとしても用いることができる。より具体的には、アクセスシース1220の作業管腔1223を通して標的血管内にスパイン付き吸引カテーテル1320を送達後、ガイドワイヤ、マイクロカテーテル、ステント回収器等の第2の作業デバイスを、本明細書の別の箇所に記載されているように、別の手順動作を行うために、管腔1323を通して、より遠位の解剖学的構造に送達することができる。
【0122】
本明細書は、多くの具体例を含んでいるが、これらは、請求されているまたは請求可能な発明の範囲に対する制限としてではなく、特定の実施態様に特有の特徴を説明するものとして解釈されるべきである。別の実施態様との関係で本明細書に記載された特定の複数の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実行することも可能である。反対に、単一の実施態様との関係で記載された様々な特徴は、複数の実施態様で別々に、または適切なサブコンビネーションで、実行することもできる。さらに、特徴が、特定の組合せで機能すると上述され、また、たとえ最初にそのように請求されていたとしても、請求された組合せ由来の1つまたは複数の特徴は、いくつかの事例では、その組合せから除外され、また、請求された組合せは、サブコンビネーションまたはサブコンビネーションの変形と関連する場合もある。同様に、操作は、特定の順序で図面に示されているが、そのような操作は、望ましい結果を達成するには、図示された特定の順序でまたは順次行われること、または図示された全ての操作が行われることが必要であると理解されるべきではない。したがって、添付の請求項の趣旨および範囲は、本明細書に含まれる実施態様の記載に制限されるべきものではない。