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  • 特許-上げ下げ窓の釣合装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】上げ下げ窓の釣合装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 1/16 20060101AFI20240308BHJP
   E06B 3/44 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
E05F1/16 E
E06B3/44
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020166725
(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公開番号】P2022059162
(43)【公開日】2022-04-13
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501433619
【氏名又は名称】中西産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100081547
【弁理士】
【氏名又は名称】亀川 義示
(72)【発明者】
【氏名】中西 好一
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-194886(JP,U)
【文献】特開昭62-264285(JP,A)
【文献】特開2008-57653(JP,A)
【文献】特開2019-27083(JP,A)
【文献】特開平5-156859(JP,A)
【文献】特開平3-197785(JP,A)
【文献】特開平3-197784(JP,A)
【文献】特開平11-62373(JP,A)
【文献】実開昭62-46783(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/16
E05D 1/00-15/58
E06B 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓枠に沿って延びるパイプと、
上記パイプ内に収納され長手方向に沿ってねじ部が形成され下端が該パイプの下部から突出するスパイラルロッドと、
上記パイプの下端近くに回転可能に設けられ上記スパイラルロッドがねじ係合して挿通するカプリングと、
の重量に相当する初期ばね圧が付与されたねじりばねと、
窓枠に沿って摺動可能に設けられ窓に連結するスライドブロックと、
該スライドブロックに回転可能に設けた回転軸を具備し、
上記ねじりばねは、その下端が、上記カプリングの上方に形成された下方スリーブに固定され、その上端が、上記パイプの上部に挿入され固定された上方スリーブに固定され、
上記スパイラルロッドの下端は該回転軸に連結され、上記ねじりばねによる大きな反発力がスパイラルロッドを介して回転軸に作用した際、該回転軸の回転を許容するよう上記初期ばね圧よりも大きいばね圧の緩衝ばねで回転軸をスパイラルロッドの回転方向と逆方向に付勢したことを特徴とする上げ下げ窓の釣合装置。
【請求項2】
上記緩衝ばねは、コイルばねで構成され、該コイルばねの一端は回転軸に支持され、他端はスライドブロックに支持されている請求項1に記載の上げ下げ窓の釣合装置。
【請求項3】
上記回転軸には突起が設けられ、スライドブロックには、上記突起を挟んで対向状態にストッパーが設けられている請求項1に記載の上げ下げ窓の釣合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上げ下げ窓を軽く開閉できるようにするとともに任意の位置で静止できるようにした上げ下げ窓の釣合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上げ下げ窓は、重量が大きい窓(障子)を押し上げたり、押し下げたりして開閉する構造であるから、開閉操作が重くなり、また任意の位置に静止させておくと、自重で降下してしまうことがある。そのような事態を生じないよう窓を開閉する際に窓の重量に対応する釣合荷重を生じさせてバランスをとるようにした釣合装置が知られている。この種の釣合装置として、ねじりばねとスパイラルロッド(ねじ板)を組み合わせたスパイラルバランサーが広く用いられている。
【0003】
スパイラルバランサー式の釣合装置は、例えば、特許文献1に示すように、窓枠に固定したパイプ内にねじりばね(螺旋ばね)を収納し、該ねじりばねの上端をパイプの上部に固定し、下端をパイプの下部に回動可能に設けたカプリング(ナット部材) に固定し、パイプ内に挿入したスパイラルロッド (ねじ板)をカプリングにねじ係合させてその下端をパイプから下方に突出している。スパイラルロッドの先端は、窓枠に設けた縦溝内を摺動するスライドブロック(連結金具)に回転不能に連結され、このスライドブロックに設けた連結部材には、窓(障子)が取り付けられ、スパイラルロッドの下端は回転不能に窓に連結されている。なお、パイプを窓側に連結し、スパイラルロッドを窓枠側に連結することもできる。そして、窓を降下させる際、スパイラルロッドは窓と一緒に軸方向に移動するからカプリングが回転し、該カプリングにより上記ねじりばねが巻き締められる。巻き締めによりねじりばねとスパイラルロッドの摩擦係合力が大きくなり、この巻き締めによるねじりばねの反発力でスパイラルロッドとカプリングがさらに強力に摩擦係合し、この摩擦係合力がねじりばねの反発力による窓の重量に打ち勝って窓の重量とバランスすることにより任意の位置に窓を停止できるように構成されている。
【0004】
上記ねじりばねは、窓が上部位置にあるとき窓が降下することがないように、窓の重量に対応する初期ばね圧を与えるために巻き締められるが、窓を閉鎖する際にさらに巻き込まれるから、スパイラルロッドには窓の降下にともなってねじりばねによる反発力が大きく作用する。窓が降下するとき、ねじりばねの巻き込み量は次第に大きくなり、反発力が増大するので、通常はスパイラルロッドのねじ部のピッチを変化させて次第にねじりばねの巻き込み量が少なくなるよう調整することが多いが、それでも最降下位置に窓が到達するときの反発力は、非常に大きくなるから、窓を強く押し下げなければ、閉鎖できなくなる。通常、上記スパイラルロッドの下端は、窓枠内を摺動するスライドブロックを介して窓に対して回転不能に連結されているので、スパイラルロッドに作用する反発力は、上記スライドブロックを窓枠に押し付ける方向に回転させる回転力となって伝達される。この回転力は、窓を押し上げるとき、スライドブロックと窓枠との間の大きな摺動抵抗となって作用し、操作が重くなる。
【0005】
上記スパイラルロッドの下端が、スライドブロックに回転自在に連結されていれば、回転力が伝達されないが、そうするとスパイラルロッドはねじりばねの反発力により自由に回転してしまうので、摩擦係合力の増大により窓の重量とバランスさせて窓を任意位置に保持しようとするスパイラルバランサーの作用効果を期待できなくなる。なお、スパイラルロッドの下端を、回転可能な回転体を介してスライドブロックに連結する構成のスパイラルバランサーも知られている(例えば特許文献2参照)。しかし、上述したように通常の使用状態でスパイラルロッドの下端が回転すると、スパイラルバランサーとしての機能を発揮できないので、特許文献2に記載のように、回転軸は一方向クラッチを介して回転しないようにスライドブロックに嵌合されている。そして、ねじり力を調整するときにドライバー等の工具を用いて回転体を回転させてねじりばねを巻き込む方向にスパイラルロッドを回転できるようにしたものである。このように、従来スパイラルロッドの下端を回転可能な部材を介しスライドブロックに連結する構成が知られているとしても、ねじりばねの反発力により、スパイラルロッドに大きな回転力が作用したときに回転するものではなく、窓の開閉操作を軽減させる機能はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実公昭59-14622号公報(2欄16行~3欄12行、第4図)
【文献】特開2008-57653号公報(段落0035~0037、図11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、スパイラルロッド(ねじ板)を軸方向に移動してねじりばね(螺旋ばね)を巻き込み、該ねじりばねの反発力によりスパイラルロッドに引上げ力を作用させて窓の重量とバランスさせるスパイラルバランサー形式の上げ下げ窓の釣合装置において、窓を下方位置まで降下させるときの押し下げ力を軽くし、かつ窓を開閉するとき、ねじりばねの反発力によりスパイラルロッドを介して窓枠に作用する摺動抵抗を軽減し、軽快に窓を上昇させることができるようにした上げ下げ窓の釣合装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、窓枠に沿って延びるパイプと、上記パイプ内に収納され長手方向に沿ってねじ部が形成され下端が該パイプの下部から突出するスパイラルロッドと、上記パイプの下端近くに回転可能に設けられ上記スパイラルロッドがねじ係合して挿通するカプリングと、窓の重量に相当する初期ばね圧が付与されたねじりばねと、窓枠に沿って摺動可能に設けられ窓に連結するスライドブロックと、該スライドブロックに回転可能に設けた回転軸を具備し、上記ねじりばねは、その下端が、上記カプリングの上方に形成された下方スリーブに固定され、その上端が、上記パイプの上部に挿入され固定された上方スリーブに固定され、上記スパイラルロッドの下端は該回転軸に連結され、上記ねじりばねによる大きな反発力がスパイラルロッドを介して回転軸に作用した際、該回転軸の回転を許容するよう上記初期ばね圧よりも大きいばね圧の緩衝ばねで回転軸をスパイラルロッドの回転方向と逆方向に付勢したことを特徴とする上げ下げ窓の釣合装置が提供され、上記課題が解決される。
【0009】
本発明によれば、上記緩衝ばねは、コイルばねで構成され、該コイルばねの一端は回転軸に支持され、他端はスライドブロックに支持され、回転軸には外周方向に突出する突起が設けられ、スライドブロックには、窓が上昇位置にあるとき上記突起が当接するストッパーが設けられている上記上げ下げ窓の釣合装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の釣合装置は、上記のように構成され、窓を押し下げると、スパイラルロッドの移動によりねじりばねが巻き込まれ、ねじりばねからスパイラルロッドに作用する反発力によりカプリングとスパイラルロッド間に作用する摩擦係合力が増大して、窓を任意の位置で停止させることができる。最大押し下げ位置に近づき、スパイラルロッドに作用する回転力が大きくなると、ねじりばねの反発力によりスパイラルロッドが回転する方向と逆方向に付勢されている回転軸に抗してスパイラルロッドが回転し、スライドブロックに作用する回転が緩められ、窓を軽く押し下げることができる。そして、窓を上昇させるとき、スライドブロックは、緩衝ばねにより弾性的に窓枠に摺接しており、回転軸が回転する範囲内で若干回転可能になるから、窓を上昇させる際の力が軽減される。
【0011】
また、上記回転軸に外周方向に突出する突起を設け、スライドブロックにストッパーを設けてあるので、回転軸の回転範囲が規制され、むやみに回転軸が回転することはなく、スパイラルロッドとカプリングの間には初期ばね圧に相当する摩擦係合力が確保され、窓が降下するようなおそれはない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例を示し、(A)はパイプの下方部分の一部省略断面図、(B)はパイプの上方部分の断面図。
図2】スライドブロックの分解斜視図。
図3】スライドブロックの斜視図。
図4】回転軸が回転する状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明の一実施例を示し、スパイラルバランサーとしては、公知の各種スパイラルバランサーを使用することができ、図1においては、一例として、特開2019-27083号公報に記載されているスパイラルバランス装置に本発明を適用した実施例が示されている。詳述すると、上げ下げ窓(障子)1の窓枠2に収納されるパイプ3を有し、該パイプ3は上端と下端が開放され、上端近くに設けた取付孔4に取付ねじ(図示略)を挿通して窓枠2に固定される。該パイプ3の下端側には、回転可能にカプリング5が取り付けられており、該カプリング5にねじ係合するねじ部6を有するスパイラルロッド7がパイプ3内に挿入されている。該スパイラルロッド7は、窓1が上昇位置(開放状態)にある図1において、上端8がパイプ3の上端近くまで伸びる長さであり、下端9はパイプ3の下端から下方に突出する長さである。下方に突出するスパイラルロッドの下端9には、窓側に取り付けるための取付ピン10が設けられている。上記パイプ3の上部には、取付ねじで固定される上方スリーブ11が挿入され、該上方スリーブ11は、下方部分に小径部が形成され、該小径部と上記カプリング5の上方に形成された下方スリーブ12には、ねじりばね(トーションスプリング)13の両端部がそれぞれ固定されている。そして、公知のように、窓1を閉鎖するときスパイラルロッド7が下方に移動すると、ねじりばね13が巻き込まれ、窓1を開放するときスパイラルロッド7が上方に移動すると、その巻き込み分が解放される。なお、パイプ3を窓側に連結し、スパイラルロッド7を窓枠側に連結するようにした窓装置にも適用することもできる。
【0014】
上記上方スリーブ11の大径部には、固定部材14が挿入固定され、該固定部材14の下面側の小径部には調整部材15が回転可能に挿入されている。該調整部材は、上方に引き上げるばねにより固定部材14側に付勢されている。上記調整部材15の内面には、上記スパイラルロッド7が上方位置にあるとき、その上端8が係合可能な係合突起16が対向状態に設けられており、また調整部材15の上面と固定部材14の下面の間には、固定部材14に対し、ねじりばね13を巻き込む方向には調整部材15の回転を許容するが、ねじりばね13を巻き戻す方向には調整部材15の回転を阻止するようラチェットその他の一方向クラッチ機構(図示略)が設けられている。
【0015】
上記のように、上記調整部材15を一方向クラッチを介して固定部材14に組み合わせたことにより、窓1にスライドバランサーを設置する前に、若しくは、スパイラルロッド7が上昇位置にあるとき、スパイラルロッド7を回転させると、カプリング5が回転してねじりばね13を巻き込むことができるから、窓1に設置する前に、若しくは設置後に、簡単に、ねじりばねに窓(障子)の重量に相当する初期ばね圧を付与することができる。
【0016】
上記窓枠2内には、摺動可能にスライドブロック17が挿入されている。該スライドブロックは、図に示す実施例では、長方体形状であるが、板状その他適宜の形状に形成することができる。上記スパイラルロッド7の下端9に設けた取付ピン10は、該スライドブロック17に設けたフック18に着脱可能に連結される。なお、スライドブロック17側に取付ピンを設け、スパイラルロッド7側にフックを設けたり、その他適宜の機構により着脱可能に連結することができる。スライドブロック17には、窓1に連結するための連結部材19が設けられており、該連結部材19は、窓枠2に設けた縦溝20を通して窓方向に延び、取付孔21に取付ボルト等を挿通して窓に固定される。
【0017】
上記スライドブロック17には、回転軸22が回転可能に設けられている。図2に示すように、該回転軸22は、スライドブロック17に形成した回転孔23に挿入される本体軸部24と、上方に形成された台座部25と、台座部25の上方に形成された連結部26を有し、該連結部26に設けた溝27に上記フック18の基部を挿入して固定ピン28で固定している。回転孔23に挿入される本体軸部24の下端は、ワッシャ29を介して保持ピン30で抜け止めされている。該回転軸22の台座部25には、スライドブロック17に対向状態に設けたストッパー31、32間に突出するよう外周方向に突出する突起33と、上下方向に延びる掛止溝34が設けられている。
【0018】
上記回転軸22とスライドブロック17間には、上記ねじりばね13による大きな反発力がスパイラルロッド7を介して回転軸22に作用した際、該回転軸22の回転を許容するよう上記初期ばね圧よりも大きいばね圧で上記スパイラルロッド7の回転方向と逆方向に回転軸22を付勢する緩衝ばね35が設けられている。該緩衝ばね35は、適宜の弾性体で構成することができるが、好ましくはコイルばねで構成され、上記回転孔23にワッシャ36を介して挿入され、一端37が上記回転軸22の台座部25の掛止溝34に係止され、他端38は、スライドブロック17に設けた掛止溝39に係止されている。
【0019】
上記の構成により、窓1を押し下げると、スパイラルロッド7の移動によりねじりばね13が巻き込まれ、ねじりばね13からスパイラルロッド7に作用する反発力によりカプリング5とスパイラルロッド7間に作用する摩擦係合力が増大して、窓1を任意の位置で停止させることができる。窓を閉鎖する最大押し下げ位置に近づき、スパイラルロッド7に作用する回転力が大きくなると、ねじりばね13の反発力によりスパイラルロッド7が回転する方向と逆方向に付勢されている回転軸22に抗してスパイラルロッド7が回転し、スライドブロック17に作用する回転力が緩められ、窓を軽く閉鎖することができる。スライドブロック17は、緩衝ばね35により弾性的に窓枠2に摺接しており、窓1を上昇させるとき、回転軸22が回転した範囲内で若干回転可能になるから、窓を上昇させる際の力が軽減され、窓を軽快に上昇させることができる。
【0020】
上記緩衝ばね35は、ねじりばねに与えた初期ばね圧より大きいばね圧を有するので、回転軸22に設けた突起33は、窓が上昇位置にあるとき、すなわちスパイラルロッド7が上昇位置にあるとき、スライドブロック17に形成した一方のストッパー31に当接している。したがって、スパイラルロッド7の回転を阻止することができ、窓1が自重で降下することはない。また、スパイラルロッド7が緩衝ばね35に抗して大きく回転しようとしても、回転軸22は他方のストッパー32に当ってスパイラルロッド7の回転を阻止するから、スパイラルロッド7とカプリング5間に生じる摩擦係合力は確保され、窓の重量との釣合状態を保持することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 窓
2 窓枠
3 パイプ
5 カプリング
7 スパイラルロッド
13 ねじりばね
17 スライドブロック
22 回転軸
35 緩衝ばね
図1
図2
図3
図4