(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】RNAおよびそれを含む核酸キャリア
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20240308BHJP
C12N 15/87 20060101ALI20240308BHJP
C12N 15/117 20100101ALI20240308BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240308BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240308BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240308BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240308BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240308BHJP
A61K 47/55 20170101ALI20240308BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240308BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C12N15/113 130Z
C12N15/87 Z ZNA
C12N15/117 Z
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61K9/14
A61K47/04
A61K47/55
A61K31/7105
A61K31/713
(21)【出願番号】P 2022520088
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(86)【国際出願番号】 KR2021008530
(87)【国際公開番号】W WO2022005268
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-03-30
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】10-2021-0088160
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517022072
【氏名又は名称】レモネックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LEMONEX INC.
【住所又は居所原語表記】(DM Tower, Bangbae-dong) 103, Bangbae-ro, Seocho-gu, Seoul 06683 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, チョル ヘ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジュン
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0142239(US,A1)
【文献】米国特許第08389708(US,B2)
【文献】small,2012年,Vol.8, No.11,p.1752-1761
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CpG-ODN-RNAコンジュゲートおよびそれを気孔内に担持した多孔性シリカ粒子を含み、前記多孔性シリカ粒子は、平均気孔直径が7~30nmであ
り、
前記RNAは、IDO(インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(indoleamine 2,3-dioxygenase))siRNAである核酸キャリア。
【請求項2】
前記CpG-ODNと前記RNAとはリンカーを介して結合している、請求項1に記載の核酸キャリア。
【請求項3】
前記リンカーは、飽和アルキル鎖(C3~C18)、トリゾールリンカー(trizole linker)、または4-メチル-6,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-5H-3λ2-シクロオクタ[d]ピリダジンリンカー(4-methyl-6,7,8,9,10,10a-hexahydro-5H-3λ2-cycloocta[d]pyridazine linker)である、請求項
2に記載の核酸キャリア。
【請求項4】
前記IDO siRNAは、配列番号1および2のsiRNA、配列番号3および4のsiRNA、配列番号5および6のsiRNA、配列番号7および8のsiRNA、または配列番号9および10のsiRNAを含む、請求項
1に記載の核酸キャリア。
【請求項5】
前記siRNAは、N末端またはC末端に、IDO mRNAに対して相補的な配列を1~10ntさらに含む、請求項
1に記載の核酸キャリア。
【請求項6】
前記IDO siRNAは、配列番号11および12のsiRNAを含む、請求項
1に記載の核酸キャリア。
【請求項7】
前記CpG-ODNは、CpG-A ODN、CpG-B ODNまたはCpG-C ODNである、請求項1に記載の核酸キャリア。
【請求項8】
前記CpG-ODNは、配列番号13~15のいずれか1つのヌクレオチドを含む、請求項1に記載の核酸キャリア。
【請求項9】
前記多孔性シリカ粒子は、気孔内部が陽電荷に帯電されたものである、請求項1に記載の核酸キャリア。
【請求項10】
前記多孔性シリカ粒子は、前記CpG-ODN-RNAコンジュゲートの担持前のゼータ電位が5~80mVである、請求項1に記載の核酸キャリア。
【請求項11】
前記CpG-ODN-RNAコンジュゲートと前記多孔性シリカ粒子との重量比は1:1~20である、請求項1に記載の核酸キャリア。
【請求項12】
前記多孔性シリカ粒子のBET表面積は200~700m
2/gであり、粒径は50~1000nmである、請求項1に記載の核酸キャリア。
【請求項13】
請求項1に記載の核酸キャリアを含み、前記RNAは、IDO(インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(indoleamine 2,3-dioxygenase)) siRNAである、癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項14】
前記癌は、卵巣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵胞癌、婦人癌、泌尿器癌、前立腺癌、腎臓癌、精巣癌、陰茎癌、尿生殖路癌、精巣腫、膀胱癌、皮膚癌、肉腫、骨肉腫、悪性骨腫瘍、軟部組織肉腫、角化棘細胞腫、黒色腫、肺癌、小細胞肺癌腫、非小細胞肺癌腫(NSCLC)、肺腺癌、肺扁平細胞癌、結腸癌、乳頭癌、乳癌、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、乳房内分泌癌、肝胆膵癌、肝癌、胆管癌、胆嚢癌、胆道癌、膵臓癌、骨癌、骨髄障害、リンパ障害、ヘアリー細胞癌、口腔および咽頭(経口)癌、口唇癌、舌癌、口腔癌、唾液腺癌、咽頭癌、甲状腺癌、喉頭癌、食道癌、胃癌、胃腸管癌、小腸癌、結腸癌、直腸癌、前立腺癌、陰門癌、甲状腺癌、大腸癌、子宮内膜癌、子宮癌、脳癌、神経膠腫、非膠腫性腫瘍、悪性神経膠腫、脳転移癌、脳髄膜腫、聴神経鞘腫、脳下垂体腫瘍、頭頸部癌、中枢神経系の癌、腹膜癌、肝細胞癌、頭部癌、頸部癌、原発性腫瘍、転移性腫瘍、リンパ腫、扁平上皮癌、血液癌、内分泌癌、ホジキン、または白血病である、請求項
13に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RNAおよびそれを含む核酸キャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍は、IDO(indoleamine 2,3-dioxygenase)を用いて、免疫反応から防御壁を構築することができる。IDOは本来胎児が母体の拒絶反応を回避するために使用する酵素であり、強力な調節T細胞(Tregs:regulatory T cells)を動員して免疫反応を抑制することができる。Tregsは、関節リウマチや1型糖尿病などの自己免疫疾患を予防する上で重要な役割を果たす免疫細胞であるが、腫瘍細胞が動員したTregsは人体の他の部位に存在するTregsよりもさらに攻撃的で抑制力に優れている。癌患者は、活性化された腫瘍特異的T細胞を多く保有しているにもかかわらず、実際には腫瘍を退治できないことが多いが、これはTregsが腫瘍特異的CTL(CD8 T cytotoxic)細胞とTh(CD4 T helper)細胞を抑制して、癌が免疫系の攻撃を回避することを助けるためである。したがって、IDOを抑制することにより、癌の治療効果を高めることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、免疫または疾患に関連する遺伝子の発現を抑制するsiRNAを含む核酸分子を提供することを目的とする。
【0004】
本発明は、siRNAにCpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG-ODN)をさらに含む核酸分子を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は、siRNAおよびCpG-ODNを含む核酸分子を担持した核酸キャリアを提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、癌の予防または治療用医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1.CpG-ODN-RNAコンジュゲートおよびそれを気孔内に担持した多孔性シリカ粒子を含み、前記多孔性シリカ粒子は、平均気孔直径が7~30nmである、核酸キャリア。
【0008】
2.前記項目1において、前記RNAはmRNA、tRNA、miRNA、snRNA、snoRNA、aRNA、siRNA、環状(circular)RNAまたはpiRNAである、核酸キャリア。
【0009】
3.前記項目1において、前記RNAは、IDO(indoleamine 2,3-dioxygenase) siRNAである、核酸キャリア。
【0010】
4.前記項目1において、前記CpG-ODNと前記RNAはリンカーを介して結合している、核酸キャリア。
【0011】
5.前記項目4において、前記リンカーは、飽和アルキル鎖(C3~C18)、トリゾールリンカー(trizole linker)、または4-メチル-6,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-5H-3λ2-シクロオクタ[d]ピリダジンリンカー(4-methyl-6,7,8,9,10,10a-hexahydro-5H-3λ2-cycloocta[d]pyridazine linker)である、核酸キャリア。
【0012】
6.前記項目3において、前記IDO siRNAは、配列番号1および2のsiRNA、配列番号3および4のsiRNA、配列番号5および6のsiRNA、配列番号7および8のsiRNA、または配列番号9および10のsiRNAを含む、核酸キャリア。
【0013】
7.前記項目3において、前記siRNAは、N末端またはC末端に、IDO mRNAに対して相補的な配列を1~10ntさらに含む、核酸キャリア。
【0014】
8.前記項目3において、前記IDO siRNAは、配列番号11および12のsiRNAを含む、核酸キャリア。
【0015】
9.前記項目1において、前記CpG-ODNは、CpG-A ODN、CpG-B ODN、またはCpG-C ODNである、核酸キャリア。
【0016】
10.前記項目1において、前記CpG-ODNは、配列番号13~15のいずれか1つのヌクレオチドを含む、核酸キャリア。
【0017】
11.前記項目1において、前記多孔性シリカ粒子は、気孔内部が陽電荷に帯電されたものである、核酸キャリア。
【0018】
12.前記項目1において、前記多孔性シリカ粒子は、前記コンジュゲート担持前のゼータ電位が5~80mVである、核酸キャリア。
【0019】
13.前記項目1において、前記コンジュゲートと前記粒子の重量比は1:1~20である、核酸キャリア。
【0020】
14.前記項目1において、前記粒子のBET表面積は200~700m2/gであり、粒径は50~1000nmである、核酸キャリア。
【0021】
15.前記項目1の核酸キャリアを含み、前記RNAは、IDO(indoleamine 2,3-dioxygenase) siRNAである、癌の予防または治療用薬学組成物。
【0022】
16.前記項目15において、前記癌は、卵巣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵胞癌腫、婦人癌、泌尿器癌、前立腺癌、腎臓癌、精巣癌、陰茎癌、尿生殖路癌、精巣腫、膀胱癌、皮膚癌、肉腫、骨肉腫、悪性骨腫瘍、軟部組織肉腫、角化棘細胞腫、黒色腫、肺癌、小細胞肺癌腫、非小細胞肺癌腫(NSCLC)、肺腺癌、肺扁平細胞癌、結腸癌、乳頭癌、乳癌、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、乳房内分泌癌、肝胆膵癌、肝癌、胆管癌、胆嚢癌、胆道癌、膵臓癌、骨癌、骨髄障害、リンパ障害、ヘアリー細胞癌、口腔および咽頭(経口)癌、口唇癌、舌癌、口腔癌、唾液腺癌、咽頭癌、甲状腺癌、喉頭癌、食道癌、胃癌、胃腸管癌、小腸癌、結腸癌、直腸癌、前立腺癌、陰門癌、甲状腺癌、大腸癌、子宮内膜癌、子宮癌、脳癌、神経膠腫、非膠腫性腫瘍、悪性神経膠腫、脳転移癌、脳髄膜腫、聴神経鞘腫、脳下垂体腫瘍、頭頸部癌、中枢神経系の癌、腹膜癌、肝細胞癌、頭部癌、頸部癌、原発性腫瘍、転移性腫瘍、リンパ腫、扁平上皮癌、血液癌、内分泌癌、ホジキン、または白血病である、組成物。
【0023】
17.下記配列で構成されるRNA。
(1)配列番号1および2のsiRNA、
(2)配列番号3および4のsiRNA、
(3)配列番号5および6のsiRNA、
(4)配列番号7および8のsiRNA、または
(5)配列番号9および10のsiRNA
【0024】
18.前記項目17において、前記siRNAは、N末端またはC末端に、IDO mRNAに対して相補的な配列を1~10ntさらに含む、RNA。
【0025】
19.前記項目17において、前記RNAは、配列番号11および12のsiRNAで構成される、RNA。
【0026】
20.前記項目17において、前記RNAは、N末端またはC末端に結合したCpG-ODNをさらに含む、RNA。
【0027】
21.前記項目20において、前記CpG-ODNは、CpG-A ODN、CpG-B ODN、またはCpG-C ODNである、RNA。
【0028】
22.前記項目20において、前記CpG-ODNは、配列番号13~15のいずれか1つのヌクレオチドを含む、RNA。
【0029】
23.前記項目20において、前記CpG-ODNとsiRNAは、リンカーを介して結合している、RNA。
【0030】
24.前記項目23において、前記リンカーは、飽和アルキル鎖(C3~C18)、トリゾールリンカー(trizole linker)、または4-メチル-6,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-5H-3λ2-シクロオクタ[d]ピリダジンリンカー(4-methyl-6,7,8,9,10,10a-hexahydro-5H-3λ2-cycloocta[d]pyridazine linker)である、RNA。
【発明の効果】
【0031】
本発明のRNAを含む核酸分子は、IDO(indoleamine 2,3-dioxygenase)の発現を高効率で阻害することができる。
【0032】
本発明のRNAおよびCpG-ODNを含む核酸分子は、I型インターフェロンを増加させ、そのRNAの固有の機能を示すことができる。
【0033】
本発明の核酸キャリアは、担持された核酸分子を体内に安定に送達し、標的に放出して、I型インターフェロンを増加させ、そのRNAの固有の機能を示すことができる。
【0034】
本発明の組成物は、優れた抗癌活性を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による多孔性シリカ粒子の顕微鏡写真である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態による多孔性シリカ粒子の顕微鏡写真である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態による多孔性シリカ粒子の製造工程中の小気孔粒子の顕微鏡写真である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態による小気孔粒子の顕微鏡写真である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の気孔直径別の顕微鏡写真である。DDV(Degradable Delivery Vehicle(分解性送達賦形剤))は、実施例の粒子であり、括弧内の数字は粒子の直径を、下付き文字の数字は気孔の直径を意味する。例えば、DDV(200)
10は、粒子直径が200nm、気孔直径が10nmである実施例の粒子を意味する。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の生分解性を確認できる顕微鏡写真である。
【
図7】
図7は、一つの例示による円筒状の透過膜を備えたチューブである。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の時間経過による吸光度の減少の結果である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の時間経過による粒径別の吸光度の減少の結果である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の時間経過による気孔直径別の吸光度の減少の結果である。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の時間経過による環境のpH別の吸光度の減少の結果である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の時間経過による吸光度の減少の結果である。
【
図13a】
図13aは、本発明の一実施形態による核酸分子を担持した多孔性シリカ粒子(LEM-S403)の特性を分析した結果である。
図13aのaは、CpG-ODN-siIDOの送達に最適化されたDegradaBALLのTEM画像および物理的特性(表面積、気孔サイズ、ゼータ電位、平均サイズ、気孔サイズおよびロード容量)を示す。
図13aのaの左下のバーは、長さが200nmであることを示す。
図13aのbは、ヒトおよび動物研究のためのLEM-S403の配列を示す。
【
図13b】
図13bは、本発明の一実施形態による核酸分子を担持した多孔性シリカ粒子(LEM-S403)の特性を分析した結果である。
図13bのcは、様々な量のDegradaBALLに担持されるCpG-ODN-siIDOの担持容量を示す。担持容量は、重量比が1対5(Cargo対DegradaBALL)のとき、CpG-ODN-siIDOの90%が室温で30分以内にDegradaBALLに担持された。
図13bのdは、37℃の擬似生体溶液におけるLEM-S403の累積放出運動プロファイルを示す。
図13bのeは、RT-PCRによるA549細胞およびCT26腫瘍におけるLEM-S403によるIDO1のノックダウンを示す。
図13bのfは、マウスPBMCにおけるLEM-S403の細胞取り込み効率テストを示す。マウスPBMCを分離し、バッファー、CpG-ODN-siIDO(FITC)(100nM)またはCpG-ODN-siIDO(FITC)with DegradaBALL(100nM)で6時間処理した。CpG-ODN-siIDO(FITC)の担持効率は、フローサイトメトリーによって分析した。
図13bのhは、fのgated resultsに基づくPBMCの形質細胞様樹状細胞(pDC)およびnon-pDC中の細胞内CpG-ODN-siIDO(FITC)の定量分析を示す。データ(群当たりn=3)は、平均±SDで示す。***P<0.001 vs 他の群。
【
図14】
図14は、LEMIDOのIDO1遺伝子ノックダウン効率およびI型IFNの誘導効率を示す。
図14のaでは、A549細胞を様々な濃度(10、50および150nM)のLEM-S403または比較対照群サンプルで12時間処理した。その後、IFN-γの80ng/mlをさらに12時間加えて、IDO1遺伝子の発現を誘導した。データ(群当たりn=3)は平均±SEMで示す。群の比較は一元分散分析を利用した。*p<0.05および***p<0.001 vs IFN-γのみを処理した群。
図14のbは、A549細胞におけるLEM-S403の長期IDO1遺伝子ノックダウン効率を示す。比較のために、細胞をそれぞれ150nMのLEM-S403およびLNPに担持されたCpG-ODN-siIDOで処理した。12時間のIFN-γ誘導を含んで細胞を24、48および72時間培養した。群の比較は一元分散分析を利用した。**p<0.01及び***p<0.001。
図14のcは、ヒトPMBCを様々な濃度(7.82、15.63、31.25、62.5、125、250および500nM)のLEM-S403で12時間処理した後、HEK-Blue
TM INF-a/b細胞を用いて、上澄み液に存在する分泌されたI型IFNを分析した結果を示す。グラフは、群当たりの平均±SEM、n=3を示す。
図14のdは、ヒトPMBCを、DegradaBALLを有するかまたは有しないsiIDO(125nM)、CpG-ODN(125nM)、CpG-ODN-siIDO(125nM)で処理し、細胞を22時間さらに培養した後、HEK-Blue
TM INF-a/b細胞を用いて、上澄み液に存在する分泌されたI型IFNを分析した結果を示す。データ(群当たりn=4)は平均±SDを示す。群の比較は一元分散分析を利用した。*p<0.05、**p<0.01および***p<0.001 vs 非処理群。
図14のeは、5つの異なる配置のヒトPMBCを用いたLEM-S403のI型IFN誘導テストを示す。データ(群当たりn=5)は平均±SDで示す。群の比較は一元分散分析を利用した。*p<0.05。
【
図15a】
図15aは、CT26同系マウスモデルにおけるLEM-S403の持続放出システムおよび向上した生体分布を示す。
図15aのaは、腫瘍イメージングおよびフローサイトメトリーのための治療スケジュールを示す。腫瘍イメージング試験において、マウスは、バッファー、70μgのDegradaBALL(TAMRA)、14μgのCpG-ODN-siIDO(Cy5)または14μgのLEMIDO(CpG-ODN-siIDO(Cy5)with DegradaBALL(TAMRA))で処理された。治療後1日目及び3日目に腫瘍を体外イメージングおよび免疫蛍光染色をするために分離した。フローサイトメトリーにおいて、マウスは70μgのDegradaBALL、14μgのCpG-ODN-siIDO(FITC)、またはLEMIDO(CpG-ODN-siIDO(Cy5))with DegradaBALL(TAMRA)が処理された。治療後1日目及び3日目にフローサイトメトリーのために腫瘍とリンパ節を分離した。
図15aのbは、DegradaBALLと結合しているかまたは結合していない場合におけるCpG-ODN-siIDOの持続放出プロフィールを示す。
図15aのcは、樹状細胞(cd11c)、DegradaBALLおよびCpG-ODN-siIDOの分布を示す腫瘍組織の組織学的断面画像を示す。
【
図15b】
図15bは、CT26同系マウスモデルにおけるLEM-S403の持続放出システムおよび向上した生体分布を示す。
図15bのdは、リンパ球、非リンパ球(主に腫瘍細胞)および腫瘍の全細胞におけるCpG-ODN-siIDO(FITC)の時間依存的(1日及び3日)な内在化を示す。FITC-接合されたCpG-ODN-siIDOの百分率は、フローサイトメトリーによって決定された。データ(n=群当たりマウス3匹)は平均±SDで示す。両群の比較は、スチューデントのt検定(student's t-test(two-tailed))で行った。*p<0.05及び***p<0.001。
図15bのeは、流入領域リンパ節(draining lymph nodes)におけるCpG-ODN-siIDO(FITC)の時間依存的(1日及び3日)な内在化を示す。両群の比較は、スチューデントのt検定(student's t-test(two-tailed))で行った。***p<0.001。
【
図16a】
図16aは、CT26同系マウスモデルにおけるLEMIDOの腫瘍内注射の治療効果を示す。
図16aのaは、aPD-1 ab、CpG-ODN、siIDOおよびLEM-S403の投与経路および注射当たりの投与量(活性医薬成分(API)およびDegraBALL)をまとめた治療スケジュールおよび表を示す。
図16aのbは、CT26同系マウスモデルにおける平均腫瘍体積を用いた腫瘍成長曲線を示す(n=群当たりマウス6匹)。データは平均±SEMで示す。両群の比較は、スチューデントのt検定(student's t-test(two-tailed))で行った。*p<0.05、**p<0.01及び***p<0.001 vs ビヒクル(vehicle)群。
図16aのcは、バッファー、ビヒクル、aPD-1 ab、CpG-ODN+ビヒクル、siIDO+ビヒクル、LEM-S403(3.5/7/14μg)またはLEM-S403(14μg)with aPA-1 abで処理されたマウスの生存百分率を示す。バッファー、ビヒクル、aPD-1 ab、CpG-ODN+ビヒクル、siIDO+ビヒクルおよびLEM-S403の3.5μgの群とは非常に異なる値を示す(**p<0.01、ログランクMantel-Cox検定)。
図4aのdは、aPD-1 ab、aCTLA-4 abおよびLEM-S403の投与経路および注射当たりの投与量(活性医薬成分(API)およびDegraBALL)をまとめた表を示す。
図16aのeは、CT26同系マウスモデルにおける平均腫瘍体積による腫瘍成長曲線を示す(n=群当たりマウス6匹)。データは平均±SEMで示す。両群の比較は、スチューデントのt検定(student's t-test(two-tailed))で行った。*p<0.05、**p<0.01及び***p<0.001 vs ビヒクル群。#p<0.05及び##p<0.01 vs LEM-S403群。
図16aのfは、
図16aのeのマウスの生存百分率を示す。LEM-S403群とは大きく異なる値を示す(***p<0.001、ログランクMantel-Cox検定)。
【
図16b】
図16bは、CT26同系マウスモデルにおけるLEMIDOの腫瘍内注射の治療効果を示す。
図16bのgは、CT26同系マウスモデルにおけるLEM-S403の抗腫瘍メカニズム試験のための処理スケジュールを示す。マウスをバッファー、ビヒクル、CpG-ODN+ビヒクル、siIDO+ビヒクルまたはLEM-S403で0日目及び3日目に2回処理し、最後の処理から24時間後にマウスを犠牲にした。
図16bのhでは、腫瘍内細胞の割合は、アネキシンV(Annexin V)およびPIで二重染色した後、フローサイトメトリーに基づいて決定された。データ(n=群当たりマウス6匹)は平均±SDで示す。群の比較は一元分散分析を利用した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001対バッファー、ビヒクルおよびCpG-ODN+ビヒクル群。#p<0.05 vs siIDO+ビヒクル群。
図16bのiは、切片化された腫瘍のTUNEL染色を示す。スケールバーは100μmを示す。
図16bのjは、腫瘍におけるphospho-STAT1、IDO1およびキヌレニン(Kynurenine)の免疫蛍光染色を示す。
図16bのkは、jに示される画像に基づく蛍光信号の定量化データを示す。データ(n=群当たりマウス3匹)は平均±SDで示す。群の比較は一元分散分析を利用した。***p<0.001。1、4日目にIDO1のmRNA発現レベルをRT-PCRで測定した。データ(n=群当たりマウス3匹)は平均±SDで示す。群の比較は一元分散分析を利用した。***p<0.001。
【
図17a】
図17aは、CT26同系マウスモデルにおけるLEM-S403の抗腫瘍免疫反応を示す。
図17aのaは、モデルにおける抗腫瘍免疫反応を分析するための治療スケジュールを示す。
図17aのbは、腫瘍微小環境(Tumor microenvironment、TME)における樹状細胞の成熟頻度および最後の処理から24時間後の流入領域リンパ節(draining lymph nodes、dLNs)を示す。データ(n=群当たりマウス5匹)は平均±SDで示す。群の比較は一元分散分析を利用した。*p<0.05、**p<0.01及び***p<0.001 vs バッファー群。
図17aのcは、TMEでCD86を示す代表的なフローサイトメトリーグラフである。
【
図17b】
図17bは、CT26同系マウスモデルにおけるLEM-S403の抗腫瘍免疫反応を示す。
図17bのd及びeは、腫瘍におけるNK1.1+細胞およびNK1.1+CD69+細胞の免疫細胞浸潤および免疫蛍光染色を示す。両群の比較は一元分散分析を利用した。*p<0.05、**p<0.01及び***p<0.001。
図17bのf及びgは、腫瘍におけるCD8+細胞およびCD8+CD69+細胞の免疫細胞浸潤および免疫蛍光染色を示す。両群の比較は一元分散分析を利用した。*p<0.05、**p<0.01及び***p<0.001。
図17bのhは、最後の処理から24時間後の腫瘍におけるTreg細胞の頻度を示す。両群の比較は一元分散分析を利用した。***p<0.001。
図17bのiは腫瘍におけるCD8/treg細胞比を示す。両群の比較は一元分散分析を利用した。***p<0.001。
【
図18a】
図18aは、CT26同系モデルにおける遠隔腫瘍に対するLEM-S403の治療効果(アブスコパル効果)を示す。
図18aのaは、モデルにおけるアブスコパル(abscopal)効果を評価するための治療スケジュールを示す。マウスは、バッファー、ビヒクル、aPD-1 ab、CpG-ODN+ビヒクル、siIDO+ビヒクル、LEM-S403(14μg)、LEM-S403(14μg)with aPD-1 abまたはLEM-S403(14μg)with aCTLA-4 abを3~4日毎に4回投与した。
図18aのbは、Balb/cマウスの相対的な平均腫瘍体積を有する末端腫瘍(非注入)増殖曲線(n=群当たりマウス6匹)を示す。データは平均±SEMで示す。両群の比較は、スチューデントのt検定(student's t-test(two-tailed))を利用した。*p<0.05、**p<0.01及び***p<0.001 vs ビヒクル群。#p<0.05 vs LEM-S403群。
図18aのcは、遠隔腫瘍における抗腫瘍活性および腫瘍浸潤リンパ球(TIL)分析に関する治療スケジュールを示す。
【
図18b】
図18bは、CT26同系モデルにおける遠隔腫瘍に対するLEM-S403の治療効果(アブスコパル効果)を示す。
図18bのdは、切開された遠隔腫瘍のTUNEL染色を示し、スケールバーは100μmを示す。
図18bのeは、白血球、好中球およびリンパ球の細胞数を示す。循環する白血球、好中球およびリンパ球の細胞数は、全血中でHemavetを用いて評価した。データ(n=群当たりマウス5匹)は平均±SDで示す。両群の比較は、スチューデントのt検定(student's t-test(two-tailed))を利用した。*p<0.05 vs バッファー群。
図18bのf、g及びhは、遠隔腫瘍(n=マウス5匹)における免疫細胞集団(f,NK1.1+細胞およびNK1.1+CD69+細胞、g,CD8+細胞およびCD8+CD69+細胞、h,Treg細胞)はフローサイトメトリーによって分析した。両群の比較は一元分散分析を利用した。*p<0.05及び***p<0.001。
【
図19】
図19は、配列番号7および8のsiRNA(#4)および4merをさらに延長したsiRNA(#4’、合計24mer)のIFNγ誘発効果を示す。
【
図20】
図20は、腫瘍内のCD8細胞およびTreg細胞の割合を示す。LEM-S403とCpG ODN+siIDOを併用処理した場合の差異を示し、CpG ODNとsiIDOを連結するカーボンリンカー(Carbon linker)の重要性を示す。
【
図21】
図21は、粒子が細胞内に送達される一実施形態の概略図である。
【
図22】
図22は、本発明の一実施形態による多孔性シリカ粒子と核酸分子の含有量比を多様に調節した場合、細胞(B16F10)内に円滑に流入するかどうかを確認したものである。
【
図23】
図23は、本発明の一実施形態による多孔性シリカ粒子の概略図である。
【
図24】
図24は、本発明の一実施形態によるCpG-ODN-siIDOを担持した核酸キャリアの作用に関する概略図である。
【
図25】
図25は、CpGクラスA、BまたはCが結合した場合のIDO1発現レベルを示す。
【
図26】
図26は、Cpgクラスによる1型IFN誘発(induction)効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0037】
本発明は核酸キャリアに関するものである。
【0038】
本発明の核酸キャリアは、CpG-ODN-RNAコンジュゲートおよびそれを気孔内に担持した多孔性シリカ粒子を含む。
【0039】
CpG-ODN-RNAコンジュゲートは、CpG-ODN(オリゴジオキシヌクレオチド)とRNAのコンジュゲートである。CpG-ODNは、メチル化されていないCpGジヌクレオチドを含む短い合成の一本鎖オリゴヌクレオチドである。メチル化されていないCpGジヌクレオチドを含有するオリゴヌクレオチドは、メチル化されていないシトシン-グアニンジヌクレオチド配列(すなわち、「CpG DNA」、または5’シトシンに3’グアニンが続き、ホスフェート結合によって連結されたDNA)を含み、免疫系を活性化する核酸分子である。全CpGオリゴヌクレオチドがメチル化されていなくてもよいし、一部がメチル化されていなくてもよいが、少なくとも5’CG3’のCはメチル化されてはいけない。本明細書で使用される用語「CpGオリゴヌクレオチド」または「CpG核酸」とは、特に取り立てて言及しない限り、免疫刺激性のCpGオリゴヌクレオチドまたは核酸を指す。
【0040】
CpG-ODNをコンジュゲートすることにより、I型インターフェロンを増加させることができる。
【0041】
CpG-ODNは、その種類(class)を限定しないが、例えば、A、BまたはCクラスであってもよく、Aクラス(CpG-A ODN)であってもよい。Aクラスを使用する場合は、I型IFNの誘発(induction)の観点から好ましい。
【0042】
CpG-ODNとしては、当該分野で公知の配列を制限なく用いることができ、例えば、配列番号13~15の配列を用いることができ、具体的には配列番号13の配列を用いることができる。
【0043】
CpG-ODNは、例えば、その長さは10~100nt、10~80nt、10~50nt、15~80nt、15~50nt、10~40nt、10~30nt、15~40nt、15~30nt、10~25nt、15~25nt、20~25ntであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0044】
CpG-ODNは、リンカーを介して前記RNAに結合することができる。リンカーとしては、当該分野で公知のものを制限なく使用することができ、例えば、飽和アルキル鎖(C3~C18)、トリゾールリンカー(trizole linker)、または4-メチル-6,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-5H-3λ2-シクロオクタ[d]ピリダジンリンカー(4-methyl-6,7,8,9,10,10a-hexahydro-5H-3λ2-cycloocta[d]pyridazine linker)などを用いることができる。体内副反応、副作用を最小限に抑える観点から、好ましくは飽和アルキル鎖を使用することができる。飽和アルキル鎖としては、C3~C18、C3~C15、C3~C12、C3~C10、C4~C15、C4~C12、C4~C10、C4~C8、C5~C15、C5~C12、C5~C10、C3 ~C8、C3~C6、C4~C6のものを使用することができる。CpG ODNとRNAがリンカーを介して強く結合することによって、CpG ODNの使用時の副作用であるT reg細胞をインクルト(incruit)する問題を防止することができる。
【0045】
RNAとしては、送達が必要なものであれば制限なく使用することができ、例えば、mRNA、tRNA、miRNA、snRNA、snoRNA、aRNA、siRNA、環状(circul)RNAまたはpiRNAであってもよい。例えば、薬理活性を示すRNAであってもよい。
【0046】
具体的には、RNAはIDO siRNAであってもよい。
【0047】
RNAは、CpG-ODNの5’末端または3’末端に結合しているものであってもよい。
【0048】
IDO(インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(indoleamine 2,3-dioxygenase))は、IDO1またはIDO2であってもよい。IDO siRNAは、ヒトIDO mRNAまたはイヌIDO mRNAを標的とするものであってもよい。例えば、配列番号32(ヒトIDO1 mRNA)または配列番号33(イヌIDO1 mRNA)のmRNAを標的とすることができる。
【0049】
IDO siRNAは、IDO mRNAの発現を阻害できるものであれば、その配列、長さなどを制限しない。例えば、配列番号1および2のsiRNA、配列番号3および4のsiRNA、配列番号5および6のsiRNA、配列番号7および8のsiRNA、または配列番号9および10のsiRNAを含むことができ、その発現抑制率の観点から、好ましくは、配列番号5および6のsiRNA、配列番号7および8のsiRNA、または配列番号9および10のsiRNAを含むことができる。
【0050】
IDO siRNAは、そのN末端またはC末端に結合した1~10ntの塩基をさらに含むことができる。このような長さの延長は安定性を改善するためのものであってもよい。追加に含まれる塩基は、標的mRNAに対する発現抑制効率を阻害するものでなければ制限なく使用することができ、例えば標的に対する相補的な塩基であってもよい。その長さは1~10nt、1~8nt、1~6ntなどであってもよい。例えば、配列番号11および12のsiRNAを用いることができる。
【0051】
RNAは、例えば、その長さが10~50nt、10~30nt、10~25nt、15~25nt、17~25nt、18~25nt、17~23nt、18~23ntなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0052】
コンジュゲートは、粒子への担持のためにCpG ODNまたはRNAの一端または両端に、多孔性シリカ粒子と結合できる官能基がさらに結合したものであってもよい。生物学、化学分野で互いにカップリング可能な官能基、またはそれを有する化合物を制限なく適用することができる。そのようなカップリングされる官能基が前記コンジュゲートと粒子の気孔内部に使用され、その官能基間のカップリング反応によってコンジュゲートを多孔性シリカ粒子に担持させることができる。
【0053】
多孔性シリカ粒子は、前記コンジュゲートを気孔内に担持したものである。前記コンジュゲートは、気孔内に担持することによって、外部環境から保護することができる。
【0054】
また、CpG-ODNとRNAがコンジュゲートの形で気孔内に担持されるので、CpG-ODNのみを担持して送達する場合に比べてTreg細胞収集防止効果を示すことができ、RNAのみ担持して送達する場合に比べてCpG-ODNの使用による免疫改善効果を示すことができる。これらをそれぞれ担持して送達する場合に比べてもTreg細胞群をさらに減少させることができ、腫瘍のCD8/Teg比が高い。
【0055】
多孔性シリカ粒子はシリカ(SiO2)素材の粒子であり、ナノサイズの粒径を有する。
【0056】
多孔性シリカナノ粒子は多孔性粒子であり、ナノサイズの気孔を有し、その表面及び/又は気孔内部に核酸分子を担持することができる。
【0057】
多孔性シリカ粒子は平均気孔直径が7~30nmである。
【0058】
平均気孔直径は、前記範囲内で、例えば7~30nm、前記範囲内で、例えば7~25nm、7~23nm、10~25nm、13~25nm、7~20nm、7~18nm、10~20nm、10~18nm、12~18nm、12~16nm、14~18nm、14~16nm、15~16nmなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0059】
多孔性シリカ粒子は、前記平均気孔直径を有することにより、その気孔内部に前記核酸分子を十分に担持して送達することができる。
【0060】
多孔性シリカ粒子は、気孔内部が陽電荷に帯電されたものであってもよい。例えば、ゼータ電位は5~80mVであってもよい。前記範囲内で、例えば5~80mV、5~70mV、5~60mV、5~55mV、10~80mV、10~70mV、10~60mV、10~55mV、20~80mV、20~70mV、20~60mV、20~55mV、30~80mV、30~70mV、30~60mV、30~55mV、40~80mV、40~70mV、40~60mV、40~55mV、50~80mV、50~70mV、50~60mV、50~55mVなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0061】
電荷を帯びる粒子が標的細胞に取り込まれるとき(例えば、エンドサイトーシスなどの過程によって)、細胞内に入った粒子はエンドソーム内の低いpHによって強い陽電荷を帯びることになる。これはエンドソームの膜を横切る水の拡散による浸透圧を誘発し、液胞(vacuole、空胞)の形成につながることがある。
【0062】
粒子の陽電荷が強い場合には、細胞膜が粒子を包むとき、より大きく開くようになって粒子以外の細胞外液(extracellular fluid)、又はそれに含まれているいくつかのタンパク質などの異物が標的細胞内に共に流入することがある。その場合には、異物の流入による予期せぬ効果が発生したり、異物が流入しない場合に比べて粒子が相対的に少なく流入し、粒子の十分な送達による薬効の発現が困難になることがある。これに対して、本発明は、CpG ODN-RNA複合体を担持した粒子の電荷を最適化することにより、この問題を防止することができる。
【0063】
また、粒子の陽電荷が弱い場合には、担持効率が低下することがあるので、本発明は、CpG ODN-RNA複合体を担持した粒子の電荷を最適化することにより、この問題を防止することができる。
【0064】
コンジュゲートが、CpG ODNまたはRNAの一端または両端にカップリング官能基を有するものであれば、多孔性シリカ粒子は、気孔内部にそれとカップリングできる官能基を有するように表面改質されたものであってもよい。
【0065】
核酸分子(コンジュゲート)の粒子への担持割合は、例えば核酸分子と多孔性シリカ粒子の重量比が1:1~20であってもよい。含有量比が前記範囲内であると、核酸分子が十分に担持され、核酸分子が担持されていない空の多孔性シリカ粒子が発生することを防止することができる。これにより、強い陽電荷を持つ粒子が細胞に送達されることを防止することができる。前記範囲内で、例えば1:1~20、1:3~20、1:3~15、1:3~12、1:3~10、1:5~20、1:5~15、1:5~10などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0066】
具体的には、本発明の送達体を個体に投与するために、核酸分子を担持した多孔性シリカ粒子は分散媒に分散されているものであってもよく、これは多孔性シリカ粒子と核酸分子を分散媒に入れて攪拌して得られたものであってもよい。これに関し、核酸分子に対して粒子の量が多すぎると、核酸分子を十分に担持していない空の粒子が発生することがある。核酸分子に対して粒子の量が少なすぎると、粒子に担持されない残りの核酸分子が発生することがある。
【0067】
本発明の一実施形態では、多孔性シリカ粒子は下記仕様を有するものであってもよい。例えば、気孔サイズは7~30nm、具体的には12~18nm、より具体的には14~16nmであってもよい。粒径は50~1000nm、具体的には200~500nm、より具体的には250~350nmであってもよい。表面積は200~700m2/g、具体的には360~480m2/gであってもよい。ゼータ電位は、核酸分子担持前の状態で5mV以上、具体的には20mV~70mV、より具体的には40mV~60mVであってもよい。粒子は、核酸分子を重量比が1:1~20、具体的には1:5~10となるように担持することができる。
【0068】
多孔性シリカ粒子は、
図23に例示するように、複数の気孔を有し、前記気孔は粒子の表面から内部までつながっていてもよい。これにより、核酸分子を気孔内部に十分に担持させることができる。各気孔は互いに連結されていてもよい(inter connected)。
【0069】
多孔性シリカ粒子は生分解性粒子であってもよい。これにより、核酸分子を担持して体内に投与した場合、体内で生分解されて核酸分子を放出することができるが、体内で徐々に分解され、担持された核酸分子を徐放的に放出させることができる。例えば、下記数式1の吸光度の比が1/2となるtは24以上である。
【0070】
[数式1]
At/A0
(式中、A0は、前記多孔性シリカ粒子1mg/mlの懸濁液5mlを直径50kDaの気孔を有する円筒状の透過膜に入れて測定した多孔性シリカ粒子の吸光度であり、
前記透過膜の外部には、前記透過膜と接し、前記懸濁液と同じ溶媒15mlが位置し、前記透過膜の内外部は、37℃で60rpmで水平攪拌され、
前記懸濁液のpHは、7.4であり、
Atは、前記A0の測定時からt時間経過後に測定した多孔性シリカ粒子の吸光度である。)
【0071】
前記数式1は、多孔性シリカ粒子が体内と同様の環境でどの程度の速度で分解されるかを意味するものである。
【0072】
前記数式1における吸光度A
0、A
tは、例えば
図34に示されているように、円筒状の透過膜に多孔性シリカ粒子および懸濁液を入れ、透過膜の外部にも同じ懸濁液を入れて測定したものであってもよい。
【0073】
多孔性シリカ粒子は生分解性であり、懸濁液中で徐々に分解され得る。直径50kDaは約5nmに相当するものであり、生分解された多孔性シリカ粒子は直径50kDaの透過膜を通過することができる。円筒状の透過膜は、60rpmの水平攪拌下にあるので、懸濁液を均一に混合することができ、分解された多孔性シリカ粒子は透過膜の外部に放出され得る。
【0074】
前記数式1における吸光度は、例えば、透過膜の外部の懸濁液が新しい懸濁液に入れ替わる環境下で測定したものであってもよい。懸濁液は、持続的に入れ替わるものであってもよく、一定期間ごとに入れ替わるものであってもよい。前記一定期間は、定期的または不定期的な期間であってもよい。例えば、1時間~1週間の範囲内で、1時間おき、2時間おき、3時間おき、6時間おき、12時間おき、24時間おき、2日おき、3日おき、4日おき、7日おきなどに入れ替えることができるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
前記「吸光度の比が1/2となる」ということは、t時間後の吸光度が初期吸光度の半分になるということであり、これは多孔性シリカ粒子の約半分が分解されたことを意味する。
【0076】
前記懸濁液は緩衝溶液であってもよく、具体例としては、PBS(リン酸緩衝食塩水)およびSBF(疑似体液)からなる群より選択される1種以上であってもよく、より具体的にはPBSであってもよい。
【0077】
前記数式1の吸光度の比が1/2となるtは20以上であり、例えばtは24~120であってもよく、例えば、前記範囲内で20~96、24~96、24~72、30~70、40~70、50~65などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0078】
多孔性シリカ粒子は、前記数式1の吸光度の比が1/5となるtが、例えば70~140であってもよく、例えば、前記範囲内で80~140、80~120、80~110、70~140、70~120、70~110などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0079】
多孔性シリカ粒子は、前記数式1の吸光度の比が1/20となるtが、例えば130~220であってもよく、例えば、前記範囲内で130~200、140~200、140~180、150~180などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0080】
多孔性シリカ粒子は、測定される吸光度が0.01以下となるtが、例えば、250以上、300以上、350以上、400以上、500以上、1,000以上などであってもよく、その上限は2,000であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0081】
多孔性シリカ粒子における前記数式1の吸光度の比とtは、高い正の相関関係を有するものであり、例えば、ピアソン相関係数が0.8以上であってもよく、例えば0.9以上、0.95以上であってもよい。
【0082】
前記数式1のtは、多孔性シリカ粒子が体内と同様の環境でどの程度の速度で分解されるかを意味するものである。これは、例えば多孔性シリカ粒子の表面積、粒径、気孔直径、表面及び/又は気孔内部の置換基、表面の緻密さの程度などを調節することによって調節できる。
【0083】
例えば、粒子の表面積を増加させてtを減少させるか、表面積を減少させてtを増加させることができる。表面積は、粒子の直径、気孔の直径を調節することによって調節できる。また、表面及び/又は気孔内部に置換基を位置させ、多孔性シリカ粒子が環境(溶媒など)に直接露出することを減らしてtを増加させることができる。また、多孔性シリカ粒子に核酸分子を担持させ、核酸分子と多孔性シリカ粒子間の親和度を増加させ、多孔性シリカ粒子が環境に直接露出することを減らしてtを増加させることができる。また、粒子の製造時に表面をより緻密に製造してtを増加させることもできる。前記に数式1のtを調節できる様々な例を示したが、それらに限定されるものではない。
【0084】
多孔性シリカ粒子は、例えば球状粒子であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0085】
多孔性シリカ粒子の粒径は、例えば50~1,000nmであってもよい。前記範囲内で、例えば50~1,000nm、50~500nm、50~400nm、50~350nm、100~1,000nm、100~500nm、100~450nm、100~400nm、100~350nm、150~400nm、150~350nm、200~400nm、200~350nm、250~400nm、250~350nm、280~350nmなどであってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0086】
多孔性シリカ粒子のBET表面積は、例えば200~700m2/gであってもよい。例えば、前記範囲内で200m2/g~700m2/g、220m2/g~680m2/g、220m2/g~620m2/g、280m2/g~680m2/g、280m2/g~580m2/g、280m2/g~520m2/g、280m2/g~480m2/g、320m2/g~620m2/g、320m2/g~580m2/g、320m2/g~520m2/g、320m2/g~480m2/g、320m2/g~450m2/g、320m2/g~420m2/g、360m2/g~480m2/g、360m2/g~420m2/gなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0087】
本発明の多孔性シリカナノ粒子は、気孔のg当たりの体積が例えば0.7ml~2.2mlであってもよい。例えば、前記範囲内で0.7ml~2.0ml、0.8ml~2.2ml、0.8ml~2.0ml、0.9ml~2.0ml、1.0ml~2.0mlなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0088】
多孔性シリカ粒子は、平均気孔直径5nm未満の小気孔粒子の気孔が平均直径7~30nmに拡張されたものであってもよい。これにより、気孔直径が大きくなって大きな核酸分子を気孔内部に担持することができ、気孔直径に比べて粒径自体は大きくないため、細胞内への送達および吸収が容易である。
【0089】
本発明の多孔性シリカ粒子は、外部表面及び/又は気孔内部が陽電荷に帯電されたものであってもよい。例えば、表面および気孔内部の両方が陽電荷に帯電されてもよく、表面または気孔内部のみが陽電荷に帯電されてもよい。前記帯電は、例えば、陽イオン性置換基が存在することによって行われたものであり得る。
【0090】
前記陽イオン性置換基は、例えば、塩基性基としてアミノ基、その他の窒素含有基などであってもよく、前記陰イオン性置換基は、例えば、酸性基としてカルボキシ基(-COOH)、スルホン酸基(-SO3H)、チオール基(-SH)などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0091】
前記帯電によって前記置換基の調節により核酸分子の放出環境に対する多孔性シリカ粒子の相互作用を調節し、ナノ粒子自体の分解速度を調節して、核酸分子の放出速度を調節することができる。また、核酸分子は、ナノ粒子から拡散して放出することもできるが、前記置換基の調節により核酸分子のナノ粒子への結合力を調節し、核酸分子の放出を調節することができる。
【0092】
また、多孔性シリカ粒子は、その表面及び/又は気孔内部に前記の他に核酸分子の担持、核酸分子の標的細胞への移動、その他の目的のための物質の担持、又はその他の追加置換基の結合などのための置換基が存在してもよく、それに結合された抗体、リガンド、細胞透過性のペプチドまたはアプタマーなどをさらに含んでいてもよい。
【0093】
前述した表面及び/又は気孔内部の置換基、電荷、結合物質などは、例えば、表面改質によって付加することができる。
【0094】
表面改質は、例えば、導入しようとする置換基を有する化合物を粒子と反応させて行うことができる。前記化合物は、例えば、C1~C10のアルコキシ基を有するアルコキシシランであってもよいが、これに限定されるものではない。前記アルコキシシランは、前記アルコキシ基を1つ以上有するものであり、例えば1~3つを有することができ、アルコキシ基の結合していない部位に導入しようとする置換基があるか、又はそれで置換された置換基があってもよい。
【0095】
多孔性シリカ粒子は、例えば、小気孔の粒子の製造および気孔拡張工程を経て製造したものであってもよく、必要に応じて、か焼(calcination)工程、表面改質工程などをさらに経て製造したものであってもよい。か焼および表面改質工程をすべて経た場合は、か焼後に表面改質されたものであってもよい。
【0096】
前記小気孔の粒子は、例えば、平均気孔直径が1nm~5nmの粒子であってもよい。
【0097】
前記小気孔の粒子は、溶媒に界面活性剤とシリカ前駆物質を入れて攪拌および均質化して得ることができる。
【0098】
前記溶媒は、水及び/又は有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);その他ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホアミド、テトラメチル尿素、N-メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m-ジオキサン、P-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどを使用でき、具体的にはアルコール、より具体的にはメタノールを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
前記溶媒において、水と有機溶媒の混合溶媒の使用時の割合は、例えば、水と有機溶媒を1:0.7~1.5の体積比、例えば1:0.8~1.3の体積比で使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
前記界面活性剤は、例えば、CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)、TMABr(臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム)、TMPrCl(塩化ヘキサデシルトリメチルピリジニウム)、TMACl(塩化テトラメチルアンモニウム)などであってもよく、具体的にはCTABを使用することができる。
【0101】
前記界面活性剤は、例えば、溶媒1リットル当たりに1g~10g、例えば、前記範囲内で1g~8g、2g~8g、3g~8gなどの量で添加できるが、これらに限定されるものではない。
【0102】
前記シリカ前駆物質は、溶媒に界面活性剤を添加して攪拌した後に添加することができる。シリカ前駆物質は、例えば、TMOS(テトラメチルオルソシリケート)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0103】
前記攪拌は、例えば10分~30分間行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0104】
前記シリカ前駆物質は、例えば溶媒1リットル当たりに0.5ml~5ml、例えば、前記範囲内で0.5ml~4ml、0.5ml~3ml、0.5ml~2ml、1ml~2mlなどの量で添加できるが、これらに限定されるものではない。
【0105】
必要に応じて、触媒として水酸化ナトリウムをさらに使用することができるが、これは溶媒に界面活性剤を添加した後、シリカ前駆物質の添加前に撹拌しながら添加することができる。
【0106】
前記水酸化ナトリウムは、例えば、1M水酸化ナトリウム水溶液を基準で溶媒1リットル当たりに0.5ml~8ml、例えば、前記範囲内で0.5ml~5ml、0.5ml~4ml、1ml~4ml、1ml~3ml、2ml~3mlなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0107】
前記シリカ前駆物質の添加後に溶液を攪拌して反応させることができる。攪拌は、例えば2時間~15時間行うことができ、例えば、前記範囲内で3時間~15時間、4時間~15時間、4時間~13時間、5時間~12時間、6時間~12時間、6時間~10時間などであってもよいが、これらに限定されるものではない。攪拌時間(反応時間)が短すぎると、結晶核生成(nucleation)が不足することがある。
【0108】
前記攪拌の後には、溶液を熟成(aging)させることができる。熟成は、例えば、8時間~24時間行うことができ、例えば、前記範囲内で8時間~20時間、8時間~18時間、8時間~16時間、8時間~14時間、10時間~16時間、10時間~14時間などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0109】
その後、反応産物を洗浄および乾燥して多孔性シリカ粒子を得ることができる。必要に応じて、洗浄の前に未反応物質の分離を先行することができる。
【0110】
前記未反応物質の分離は、例えば、遠心分離で上澄み液を分離して行うことができる。遠心分離は、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、例えば、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0111】
前記洗浄は、水及び/又は有機溶媒で行うことができ、具体的には、溶媒ごとに溶解できる物質が異なるので、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記洗浄する回数は、例えば2回以上10回以下、例えば、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0112】
前記有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);その他ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホアミド、テトラメチル尿素、N-メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m-ジオキサン、P-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどを使用でき、具体的にはアルコール、より具体的にはエタノールを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
前記洗浄は遠心分離下で行うことができ、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、例えば、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0114】
前記洗浄は、遠心分離をせずに、フィルタで粒子をろ過して行うこともできる。フィルタは、多孔性シリカ粒子の直径以下の気孔を有するものであってもよい。反応液を、そのようなフィルタでろ過すると、粒子だけがフィルタの上に残り、そのフィルタの上に水及び/又は有機溶媒を注ぎ、洗浄することができる。
【0115】
前記洗浄時には、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記洗浄する回数は、例えば、2回以上10回以下、例えば、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0116】
先に例示した方法により製造される粒子は、その表面および気孔内部に、反応に用いられた残留有機物質(界面活性剤など)が残っていることがあるので、それを除去するために洗浄が行われるものであり得る。通常、この有機物質の除去のために、酸処理(または酸性の有機溶媒処理)を行うことができるが、本発明は、この酸処理を行わないため、洗浄後も気孔内部に残留有機物質が残っているものであり得る。
【0117】
前記乾燥は、例えば20℃~100℃で行うことができるが、これらに限定されず、真空状態で行うこともできる。
【0118】
その後、前記で得られた多孔性シリカ粒子の気孔を拡張する。気孔の拡張は、気孔膨張剤を用いて行うことができる。
【0119】
前記気孔膨張剤としては、例えば、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、トリプロピルベンゼン、トリブチルベンゼン、トリペンチルベンゼン、トリヘキシルベンゼン、トルエン、ベンゼンなどを使用でき、具体的にはトリメチルベンゼンを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0120】
また、前記気孔膨張剤としては、例えばN,N-ジメチルヘキサデシルアミン(N,N-dimethylhexadecylamine、DMHA)を使用できるが、これに限定されるものではない。
【0121】
前記気孔の拡張は、例えば、溶媒中の多孔性シリカ粒子を気孔膨張剤と混合し、加熱して反応させて行うことができる。
【0122】
前記溶媒は、例えば、水及び/又は有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;などを使用でき、具体的にはアルコール、より具体的にはエタノールを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0123】
前記多孔性シリカ粒子は、例えば、溶媒1リットル当たりに10g~200g、例えば、前記範囲内で10g~150g、10g~100g、30g~100g、40g~100g、50g~100g、50g~80g、60g~80gなどの割合で添加できるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
前記多孔性シリカ粒子は、溶媒中に均一に分散されているものであってもよく、例えば、溶媒に多孔性シリカ粒子を添加して超音波分散したものであってもよい。混合溶媒を使用する場合には、第1の溶媒に多孔性シリカ粒子を分散した後、第2の溶媒を添加したものであってもよい。
【0125】
前記気孔膨張剤は、例えば、溶媒100体積部に対して10~200体積部、前記範囲内で10~150体積部、10~100体積部、10~80体積部、30~80体積部、30~70体積部などの割合で添加できるが、これらに限定されるものではない。
【0126】
前記反応は、例えば120℃~190℃で行うことができる。例えば、前記範囲内で120℃~190℃、120℃~180℃、120℃~170℃、130℃~170℃、130℃~160℃、130℃~150℃、130℃~140℃などで行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0127】
前記反応は、例えば6時間~96時間行うことができる。例えば、前記範囲内で30時間~96時間、30時間~96時間、30時間~80時間、30時間~72時間、24時間~80時間、24時間~72時間、36時間~96時間、36時間~80時間、36時間~72時間、36時間~66時間、36時間~60時間、48時間~96時間、48時間~88時間、48時間~80時間、48時間~72時間、6時間~96時間、7時間~96時間、8時間~80時間、9時間~72時間、9時間~80時間、6時間~72時間、9時間~96時間、10時間~80時間、10時間~72時間、12時間~66時間、13時間~60時間、14時間~96時間、15時間~88時間、16時間~80時間、17時間~72時間などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0128】
前記例示した範囲内で時間および温度を調節して、反応が過剰せずに十分に行われるようにすることができる。例えば、反応温度が低くなると反応時間を増やしたり、反応温度が高くなると反応時間を短くしたりすることができる。反応が十分でないと、気孔の拡張が十分でないことがあり、反応が進行しすぎると、気孔の過剰拡張により粒子が崩壊することがある。
【0129】
前記反応は、例えば、段階的に昇温して行うことができる。具体的には、常温から前記温度まで0.5℃/分~15℃/分の速度で段階的に昇温して行うことができ、例えば、前記範囲内で1℃/分~15℃/分、3℃/分~15℃/分、3℃/分~12℃/分、3℃/分~10℃/分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0130】
前記反応は、攪拌下で行うことができる。例えば100rpm以上の速度で攪拌することができ、具体的には100rpm~1,000rpmの速度で行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0131】
前記反応後は、反応液を徐々に冷却することができ、例えば、段階的に減温して冷却することができる。具体的には、前記温度から常温まで0.5℃/分~20℃/分の速度で段階的に減温して行うことができ、例えば、前記範囲内で1℃/分~20℃/分、3℃/分~20℃/分、3℃/分~12℃/分、3℃/分~10℃/分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0132】
粒子の製造後に酸処理で洗浄していない場合には、気孔内部の残留物質が前記気孔の拡張にも関与して、より十分に均一に気孔を拡張することができる。
【0133】
前記冷却後に反応産物を洗浄および乾燥し、気孔が拡張された多孔性シリカ粒子を得ることができる。必要に応じて、洗浄の前に未反応物質の分離を先行することができる。
【0134】
前記未反応物質の分離は、例えば、遠心分離で上澄み液を分離して行うことができる。遠心分離は、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、例えば、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0135】
前記洗浄は、水及び/又は有機溶媒で行うことができる。具体的には、溶媒ごとに溶解できる物質が異なるので、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記洗浄する回数は、例えば2回以上、10回以下、例えば、3回、4回、5回、6回、7回、8回などであってもよい。
【0136】
前記有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;などを使用することができ、具体的にはアルコール、より具体的にはエタノールを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0137】
前記洗浄は遠心分離下で行うことができ、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、例えば、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0138】
前記洗浄は遠心分離をせずに、フィルタで粒子をろ過して行うこともできる。フィルタは、多孔性シリカ粒子の直径以下の気孔を有するものであってもよい。反応液を、そのようなフィルタでろ過すると、粒子だけがフィルタの上に残り、そのフィルタの上に水及び/又は有機溶媒を注ぎ、洗浄することができる。
【0139】
前記洗浄時には、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記洗浄する回数は、例えば2回以上10回以下、例えば、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0140】
粒子の製造後に酸処理で洗浄していない場合には、気孔拡張後も気孔内部の残留物質が残っていることがあり、気孔拡張後の洗浄時にも酸処理を行うことができるが、本発明は、酸処理を行うことなく、後述するか焼によって残留物質を除去することができる。
【0141】
前記乾燥は、例えば20℃~100℃で行うことができるが、これに限定されるものではなく、真空状態で行うこともできる。
【0142】
その後、得られた粒子は、か焼することができる。か焼は、粒子を加熱してその表面および内部のシラノール基を除去して粒子の反応性を下げ、より緻密な構造にし、気孔を満たす有機物を除去する工程であり、例えば400℃以上の温度に加熱して行うことができる。その上限は特に限定されず、例えば1,000℃、900℃、800℃、700℃等であってもよい。加熱は、例えば3時間以上、4時間以上などを行うことができる。その上限は特に限定されず、例えば24時間、12時間、10時間、8時間、6時間、5時間などであってもよい。具体的には、400℃~700℃で3時間~8時間、より具体的には500℃~600℃で4時間~5時間行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0143】
気孔を満たす有機物を除去することにより、残存有機物によって示される細胞毒性、泡の発生などの問題を防止することができる。
【0144】
その後、得られた多孔性シリカ粒子は、表面改質することができる。表面改質は、表面及び/又は気孔内部に行うことができる。粒子表面と気孔内部は、同じように表面改質してもよく、異なるように表面改質してもよい。
【0145】
前記表面改質により粒子が帯電されるようにすることができる。
【0146】
表面改質は、例えば、導入しようとする陽イオン性置換基を有する化合物を粒子と反応させて行うことができる。前記化合物は、例えばC1~C10のアルコキシ基を有するアルコキシシランであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0147】
前記アルコキシシランは、前記アルコキシ基を1個以上有するものであり、例えば1~3個有することができ、アルコキシ基が結合していない部位に導入しようとする置換基があるか、又はそれで置換された置換基があってもよい。
【0148】
前記アルコキシシランを多孔性シリカ粒子と反応させると、シリコン原子と酸素原子との共有結合が形成され、アルコキシシランが多孔性シリカ粒子の表面及び/又は気孔内部と結合することができる。前記アルコキシシランは、導入しようとする置換基を有しているので、当該置換基を多孔性シリカ粒子の表面及び/又は気孔内部に導入することができる。
【0149】
前記反応は、溶媒に分散した多孔性シリカ粒子をアルコキシシランと反応させて行うことができる。
【0150】
前記溶媒は、水及び/又は有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);その他ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホアミド、テトラメチル尿素、N-メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m-ジオキサン、P-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどを使用でき、具体的にはトルエンを使用できるが、これらに制限されるものではない。
【0151】
前記陽電荷での帯電は、例えばアミノ基、アミノアルキル基などの窒素含有基などの塩基性基を有するアルコキシシランと反応させて行うことができる。具体的には、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(N-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]ethylenediamine)、N1-(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン(N1-(3-Trimethoxysilylpropyl)diethylenetriamine)、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxysilane)、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アニリン(N-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]aniline)、トリメトキシ[3-(メチルアミノ)プロピル]シラン(Trimethoxy[3-(methylamino)propyl]silane)、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン(3-(2-Aminoethylamino)propyldimethoxymethylsilane)などを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0152】
また、前記表面改質は、複合的に行うこともできる。例えば、外部表面または気孔内部に2回以上の表面改質を行うこともできる。具体例として、アミノ基が導入されたシリカ粒子にカルボキシル基を含む化合物をアミド結合で結合して陽電荷に帯電した粒子を、他の表面特性を持つように変化させることができるが、これに限定されるものではない。
【0153】
前記多孔性シリカ粒子のアルコキシシランとの反応は、例えば、加熱下で行うことができる。加熱は、例えば80℃~180℃、例えば、前記範囲内で80℃~160℃、80℃~150℃、100℃~160℃、100℃~150℃、110℃~150℃などで行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0154】
前記多孔性シリカ粒子のアルコキシシランとの反応は、例えば4時間~20時間、例えば、前記範囲内で4時間~18時間、4時間~16時間、6時間~18時間、6時間~16時間、8時間~18時間、8時間~16時間、8時間~14時間、10時間~14時間などで行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0155】
前記反応温度、時間、そして表面改質に使用される化合物の量などは、表面改質しようとする程度によって選択でき、核酸分子の電荷の程度によって反応条件を変えて多孔性シリカ粒子の電荷の程度を調節することにより、核酸分子の放出速度を調節することができる。例えば、核酸分子が中性のpHで強い陰電荷を帯びる場合には、多孔性シリカ粒子が強い陽電荷を帯びるようにするために、反応温度を高くしたり、反応時間を長くしたり、化合物の処理量を増やすことができるが、これらに限定されるものではない。
【0156】
また、本発明の多孔性シリカ粒子は、例えば、小気孔の粒子の製造、気孔の拡張、表面改質、気孔内部の改質工程を経て製造されたものであってもよい。
【0157】
前記小気孔の粒子の製造および気孔拡張工程は前述通りの工程によって行うことができ、小気孔の粒子の製造後、そして気孔拡張工程の後に洗浄および乾燥工程を行うことができる。
【0158】
必要に応じて、洗浄の前に未反応物質の分離を先行することができる。未反応物質の分離は、例えば遠心分離で上澄み液を分離して行うことができる。
【0159】
前記遠心分離は、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、具体的には、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0160】
前記小気孔の粒子の製造後の洗浄は、先に例示した範囲内の方法/条件で行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0161】
前記気孔拡張後の洗浄は、先の例示よりは緩和された条件で行うことができる。例えば、洗浄を3回以内行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0162】
前記表面改質と気孔内部改質のそれぞれは、前述通りの工程によって行うことができる。表面改質と気孔内部改質の順に工程を行うことができ、前記両工程の間に粒子の洗浄工程をさらに行うことができる。
【0163】
前記小気孔の粒子の製造および気孔拡張の後に洗浄をより緩和された条件で行う場合、気孔内部には粒子製造、気孔拡張に使用された界面活性剤などの反応液が満たされているため、表面改質時に気孔内部が改質されずに、表面だけが改質され得る。その後、粒子を洗浄すると、気孔内部の反応液が除去され得る。
【0164】
前記表面改質工程と気孔内部改質工程との間の粒子の洗浄は、水及び/又は有機溶媒で行うことができる。具体的には、溶媒ごとに溶解できる物質が異なるので、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記洗浄する回数は、例えば2回以上10回以下、具体的には、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0165】
前記洗浄は遠心分離下で行うことができ、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、具体的には、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0166】
前記洗浄は遠心分離をせずに、フィルタで粒子をろ過して行うこともできる。フィルタは、多孔性シリカ粒子の直径以下の気孔を有するものであってもよい。反応液をそのようなフィルタでろ過すると、粒子だけがフィルタの上に残り、そのフィルタの上に水及び/又は有機溶媒を注ぎ、洗浄することができる。
【0167】
前記洗浄時には、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記洗浄する回数は、例えば2回以上10回以下、具体的には、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0168】
前記乾燥は、例えば20℃~100℃で行うことができるが、これに限定されるものではなく、真空状態で行うこともできる。
【0169】
核酸分子は、多孔性シリカ粒子の表面及び/又は気孔内部に担持することができる。担持は、例えば、溶媒中の多孔性シリカ粒子と核酸分子とを混合して行うことができる。
【0170】
前記溶媒は、水及び/又は有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;などを使用することができる。
【0171】
また、前記溶媒として、PBS(リン酸緩衝食塩水)、SBF(疑似体液)、ホウ酸塩-緩衝食塩水(Borate-buffered saline)、トリス-緩衝食塩水(Tris-buffered saline)などを使用することもできる。
【0172】
前記多孔性シリカ粒子に担持された核酸分子は、延長された時間をかけて段階的に放出され得る。このような遅い放出は、連続または非連続性、線形または非線形であってもよく、多孔性シリカ粒子の特徴及び/又はそれと核酸分子との相互作用に起因して異なり得る。
【0173】
前記多孔性シリカ粒子に担持された核酸分子は、多孔性シリカ粒子が生分解されながら放出されるが、本発明に係る多孔性シリカ粒子は徐々に分解され、担持された核酸分子が徐放的に放出されるようにすることができる。これは例えば、多孔性シリカ粒子の表面積、粒径、気孔直径、表面及び/又は気孔内部の置換基、表面の緻密さの程度などを調節することで調節できるが、これらに限定されるものではない。
【0174】
また、前記多孔性シリカ粒子に担持された核酸分子は、多孔性シリカ粒子から離脱して拡散しながらも放出できる。これは多孔性シリカ粒子と核酸分子、核酸分子の放出環境との関係に影響を受けるものであるところ、これを調整して、核酸分子の放出を調節することができる。例えば、表面改質によって多孔性シリカ粒子の核酸分子との結合力を強化または弱化させることによって調節することができる。
【0175】
核酸分子は、必要な治療の種類、放出環境、使用される多孔性シリカ粒子に依存して、例えば7日~1年またはそれ以上の期間にわたって放出され得る。
【0176】
また、多孔性シリカ粒子は、生分解性で100%分解され得るので、これに担持された核酸分子は、100%放出され得る。
【0177】
また、本発明は、癌の予防または治療用医薬組成物に関するものである。
【0178】
本発明の医薬組成物は前記核酸キャリアを含む。
【0179】
核酸分子および多孔性シリカ粒子は、前述の範囲内のものであってもよい。
【0180】
本発明の組成物は抗癌効果を有するものであり、この効果は担持された核酸分子を体内に安定的に送達し、標的に放出して、IDO-1(インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(indoleamine 2,3-dioxygenase))の発現阻害によるものであり得る。
【0181】
IDO1の発現を阻害することにより、IDO1によるキヌレニン(KYN)の生成を防止でき、Treg細胞の分化を抑制することができる。
【0182】
本発明の組成物の予防または治療対象となる癌は、前記経路によって予防または治療できる全ての癌であり、例えば、卵巣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵胞癌腫、婦人癌、泌尿器癌、前立腺癌、腎臓癌、精巣癌、陰茎癌、尿生殖路癌、精巣腫、膀胱癌、皮膚癌、肉腫、骨肉腫、悪性骨腫瘍、軟部組織肉腫、角化棘細胞腫、黒色腫、肺癌、小細胞肺癌腫、非小細胞肺癌腫(NSCLC)、肺腺癌、肺扁平細胞癌、結腸癌、乳頭癌、乳癌、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、乳房内分泌癌、肝胆膵癌、肝癌、胆管癌、胆嚢癌、胆道癌、膵臓癌、骨癌、骨髄障害、リンパ障害、ヘアリー細胞癌、口腔および咽頭(経口)癌、口唇癌、舌癌、口腔癌、唾液腺癌、咽頭癌、甲状腺癌、喉頭癌、食道癌、胃癌、胃腸管癌、小腸癌、結腸癌、直腸癌、前立腺癌、陰門癌、甲状腺癌、大腸癌、子宮内膜癌、子宮癌、脳癌、神経膠腫、非膠腫性腫瘍、悪性神経膠腫、脳転移癌、脳髄膜腫、聴神経鞘腫、脳下垂体腫瘍、頭頸部癌、中枢神経系の癌、腹膜癌、肝細胞癌、頭部癌、頸部癌、原発性腫瘍、転移性腫瘍、リンパ腫、扁平上皮癌、血液癌、内分泌癌、ホジキン、または白血病などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0183】
本発明の組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含むことができ、担体と共に製剤化することができる。本発明で用語「薬学的に許容可能な担体」とは、生物体を刺激せず投与化合物の生物学的活性および特性を阻害しない担体または希釈剤を意味する。液状溶液に製剤化される組成物において薬学的に許容可能な担体は、滅菌および生体に適したものとして、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、アルブミン注射液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノールおよびこれらの成分のうち1成分以上を混合して使用することができ、必要に応じて、抗酸化剤、緩衝液および静菌剤などの他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤および潤滑剤を付加的に添加し、水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。
【0184】
本発明の組成物は、いずれの剤型にも適用可能であり、経口用または非経口用の剤形に製造することができる。本発明の薬学的剤形は、口腔(oral)、直腸(rectal)、鼻腔(nasal)、局所(topical;頬および舌下を含む)、皮下、膣(vaginal)または非経口(parenteral;筋肉内、皮下および静脈内を含む)投与に適したもの、あるいは吸入(inhalation)または注入(insufflation)による投与に適した形態を含む。
【0185】
本発明の組成物は、薬学的に有効な量で投与する。有効容量は、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路、排出割合、治療期間、同時使用される薬物を含む要素、およびその他の医学分野でよく知られている要素によって決定できる。本発明の薬学的組成物は、個々の治療剤として投与してもよく、他の治療剤と併用して投与してもよい。また、従来の治療剤と順次または同時に投与することができ、単一または多重投与することができる。前記の要素をすべて考慮して副作用なしに最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは当業者によって容易に決定され得る。
【0186】
本発明の組成物の投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食物、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度などによってその範囲が非常に多様である。適正な投与量は、例えば、患者の体内に蓄積された薬物の量及び/又は使用される本発明の送達体の具体的な効能程度によって異なり得る。例えば、体重1kg当たりに0.01μg~1gであってもよい。日、週、月、または年の単位期間に、単位期間当たりに一回または数回に分けて投与してもよく、若しくはインフュージョンポンプを用いて長期間連続して投与してもよい。反復投与の回数は、薬物の体内滞在時間、体内薬物濃度などを考慮して決定する。疾患の治療経過によっては、治療された後でも再発防止のために組成物を投与することができる。
【0187】
本発明の組成物は、例えば腫瘍内に投与されるものであってもよい。
【0188】
本発明の組成物は、創傷の治療に関して同一または類似の機能を示す有効成分を1種以上、または有効成分の溶解性及び/又は吸収性を維持/増加させる化合物をさらに含有することができる。
【0189】
また、本発明の組成物は、哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、持続または遅延放出を提供できるように、当該分野で公知の方法を用いて剤形化することができる。剤形は、粉末、顆粒、錠剤、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟質または硬質のゼラチンカプセル、滅菌注射液、滅菌粉末の形態であってもよい。
【0190】
また、本発明はRNAに関するものである。
【0191】
本発明のRNAは、下記配列で構成することができる。
(1)配列番号1および2のsiRNA、
(2)配列番号3および4のsiRNA、
(3)配列番号5および6のsiRNA、
(4)配列番号7および8のsiRNA、または
(5)配列番号9および10のsiRNA
【0192】
本発明のsiRNAは、IDO mRNAを標的とするsiRNAであってもよい。
【0193】
本発明のsiRNAは、そのN末端またはC末端に結合した1~10ntの塩基をさらに含むことができる。このような長さの延長は安定性を改善するためのものであってもよい。追加に含まれる塩基は、そのsiRNAのmRNAに対する発現抑制効率を阻害するものでなければ制限なく使用することができ、例えば標的に対する相補的な塩基であってもよい。その長さは1~10nt、1~8nt、1~6ntなどであってもよい。例えば、配列番号11および12のsiRNAを用いることができる。
【0194】
IDO siRNAは、例えば、その長さが10~50nt、10~30nt、10~25nt、15~25nt、17~25nt、17~23ntなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0195】
本発明のRNAは、そのN末端に結合したCpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG-ODN)をさらに含むことができる。すなわち、本発明のRNAはCpG-ODN-IDO siRNAコンジュゲートであってもよい。
【0196】
CpG-ODNは、その種類(class)は限定されないが、例えば、A、BまたはCクラスであってもよく、Aクラス(CpG-A ODN)であってもよい。Aクラスを使用する場合は、I型IFNの誘発 (induction)の観点から好ましい。
【0197】
CpG-ODNとしては、当該分野で公知の配列を制限なく用いることができる。例えば、配列番号13~15の配列を用いることができ、具体的には配列番号13の配列を用いることができる。
【0198】
CpG-ODNは、例えば、その長さが10~100nt、10~80nt、10~50nt、15~80nt、15~50nt、10~40nt、10~30nt、15~40nt、15~30nt、10~25nt、15~25nt、20~25ntであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0199】
CpG-ODNは前記siRNAのリンカーを介して結合することができる。リンカーとしては、当該分野で公知のものを制限なく使用することができる。例えば、飽和アルキル鎖(C3~C18)、トリゾールリンカー(trizole linker)、4-メチル-6,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-5H-3λ2-シクロオクタ[d]ピリダジンリンカー(4-methyl-6,7,8,9,10,10a-hexahydro-5H-3λ2-cycloocta[d]pyridazine linker)などを用いることができる。体内副反応、副作用を最小限に抑える観点から、好ましくは飽和アルキル鎖を使用することができる。飽和アルキル鎖としては、前述のように、C3~C18、C3~C15、C3~C12、C3~C10、C4~C15、C4~C12、C4~C10、C4~C8、C5~C15、C5~C12、C5~C10、C3~C8、C3~C6、C4~C6のものを使用することができる。
【0200】
RNAは、粒子への担持のためにCpG ODNまたはIDO siRNAの一端または両端に多孔性シリカ粒子と結合できる官能基がさらに結合したものであってもよい。生物学、化学分野で互いにカップリング可能な官能基、またはそれを有する化合物を制限なく適用することができる。そのようなカップリングされる官能基が前記コンジュゲートと粒子の気孔内部に使用され、その官能基間のカップリング反応によってコンジュゲートを多孔性シリカ粒子に担持させることができる。
【0201】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0202】
実施例
実施例1.多孔性シリカ粒子(DDVまたはDegradaBALL)
1.多孔性シリカ粒子の製造
(1)多孔性シリカ粒子の製造
1)小気孔粒子の製造
2L丸底フラスコに蒸留水(DW)の960mlとMeOHの810mlを入れた。前記フラスコにCTABを7.88g入れた後、攪拌しながら1M NaOHの4.52mlを素早く入れた。10分間攪拌して均一な混合液を得た後、TMOSの2.6mlを入れた。6時間攪拌して均一に混合した後、24時間熟成し、反応液を得た。
【0203】
その後、前記反応液を25℃で10分間8,000rpmで遠心分離して上澄液を除去し、25℃で10分間8,000rpmで遠心分離し、エタノールおよび蒸留水で交互に5回洗浄した。
【0204】
その後、70℃のオーブンで乾燥し、1.5gの粉末状の小気孔多孔性シリカ粒子(気孔平均直径2nm、粒径200nm)を得た。
【0205】
2)気孔の拡張
1.5gの小気孔多孔性シリカ粒子の粉末をエタノール10mlに添加して超音波分散し、水10ml、TMB(trimethyl benzene)10mlを添加して超音波分散し、分散液を得た。
【0206】
その後、前記分散液をオートクレーブに入れて160℃、48時間反応させた。
【0207】
反応は25℃で開始し、10℃/分の速度で昇温して行った。その後、オートクレーブ内で1~10℃/分の速度で徐々に冷却した。
【0208】
冷却した反応液を25℃で10分間8,000rpmで遠心分離して上澄液を除去し、25℃で10分間8,000rpmで遠心分離し、エタノールおよび蒸留水で交互に5回洗浄した。
【0209】
その後、70℃のオーブンで乾燥し、粉末状の多孔性シリカ粒子(気孔直径10~15nm、粒径200nm)を得た。
【0210】
3)か焼
前記2)で製造された多孔性シリカ粒子をガラスバイアル(vial)に入れて550℃で5時間加熱し、反応終了後、常温まで徐々に冷却して粒子を製造した。
【0211】
(2)多孔性シリカ粒子の製造
気孔拡張時の反応条件を140℃、72時間に変更した以外は、前記1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0212】
(3)多孔性シリカ粒子の製造(10Lスケール)
5倍大きな容器を使用し、各物質をいずれも5倍の容量で使用した以外は、実施例1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0213】
(4)多孔性シリカ粒子の製造(粒径300nm)
小気孔粒子の製造時に蒸留水920ml、メタノール850mlを使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0214】
(5)多孔性シリカ粒子の製造(粒径500nm)
小気孔粒子の製造時に蒸留水800ml、メタノール1,010ml、CTAB 10.6gを使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0215】
(6)多孔性シリカ粒子の製造(粒径1,000nm)
小気孔粒子の製造時に蒸留水620ml、メタノール1,380ml、CTAB 7.88gを使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0216】
(7)多孔性シリカ粒子の製造(気孔直径4nm)
気孔拡張時にTMBを2.5ml使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0217】
(8)多孔性シリカ粒子の製造(気孔直径7nm)
気孔拡張時にTMBを4.5ml使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0218】
(9)多孔性シリカ粒子の製造(気孔直径17nm)
気孔拡張時にTMBを11ml使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0219】
(10)多孔性シリカ粒子の製造(気孔直径23nm)
気孔拡張時にTMBを12.5ml使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0220】
(11)多孔性シリカ粒子の製造
小気孔粒子の製造時に蒸留水900ml、メタノール850ml、CTAB 8gを使用した以外は、1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0221】
2.多孔性シリカ粒子の表面改質
(1)実施例1-1-(1)の多孔性シリカ粒子を(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane,APTES)と反応させて、陽電荷に帯電させた。
【0222】
具体的には、100mL丸底フラスコにおいて、100mgの多孔性シリカ粒子を10mLのトルエンに洗浄器(bath sonicator)で分散させた。その後、1mLのAPTESを添加し、400rpmで攪拌し、130℃で攪拌して12時間反応させた。
【0223】
反応後、常温まで徐々に冷却し、10分間8,000rpmで遠心分離して上澄み液を除去し、25℃で10分間8,000rpmで遠心分離し、エタノールおよび蒸留水で交互に5回洗浄した。
【0224】
その後、70℃のオーブン中で乾燥し、表面および気孔内部にアミノ基を有する粉末状の多孔性シリカ粒子を得た。
【0225】
(2)1.8mLのAPTESを使用した以外は、前記と同様な方法で実施例1-1-(11)を表面改質して、表面および気孔内部にアミノ基を有する粉末状の多孔性シリカ粒子を得た。
【0226】
3.粒子の形成および気孔拡張の確認
実施例1-1-(1)~(3)の粒子の小気孔粒子、製造された多孔性シリカ粒子を顕微鏡で観察し、小気孔粒子が均一に生成されているか、気孔が十分に拡張されて多孔性シリカ粒子が均一に形成されているかを確認した(
図1~4)。
【0227】
図1は、実施例1-1-(1)の多孔性シリカ粒子の写真、
図2は、実施例1-1-(2)の多孔性シリカ粒子の写真であり、気孔が十分に拡張された球状の多孔性シリカ粒子が均一に生成されたことを確認することができる。
【0228】
図3は、実施例1-1-(1)の小気孔粒子の写真、
図4は、実施例1-1-(1)と1-1-(3)の小気孔粒子の比較写真であり、球状の小気孔粒子が均一に生成されたことを確認することができる。
【0229】
4.気孔直径およびBET表面積の計算
実施例1-1-(1)の小気孔粒子、実施例1-1-(1)、(7)、(8)、(10)、(11)の多孔性シリカ粒子の表面積を計算した。表面積は、ブルナウアー-エメット-テラー(Brunauer-Emmett-Teller)(BET)方法により計算し、気孔直径の分布は、バーレット-ジョイナー-ハレンダ(Barrett-Joyner-Halenda)(BJH)方法により計算した。
前記各粒子の顕微鏡写真を
図5に、計算の結果を下記表1に示す。
【0230】
【0231】
5.生分解性の確認
実施例1-1-(1)の多孔性シリカ粒子の生分解性を確認するために、37℃、SBF(pH7.4)における生分解の程度を0時間、120時間、360時間に顕微鏡で観察した。それを
図6に示す。
それを参照すると、多孔性シリカ粒子が生分解され、360時間経過後はほぼすべてが分解されたことを確認することができる。
【0232】
6.吸光度比の測定
時間別に下記数式1による吸光度比を測定した。
【0233】
[数式1]
At/A0
(式中、A0は、前記多孔性シリカ粒子1mg/mlの懸濁液5mlを直径50kDaの気孔を有する円筒状の透過膜に入れて測定した多孔性シリカ粒子の吸光度であり、
前記透過膜の外部には、前記透過膜と接し、前記懸濁液と同じ溶媒15mlが位置し、前記透過膜の内外部は、37℃において60rpmで水平攪拌され、
Atは、前記A0の測定時からt時間経過後に測定した多孔性シリカ粒子の吸光度である。)
【0234】
具体的には、多孔性シリカ粒子粉末5mgをSBF(pH7.4)5mlに溶かした。その後、5mlの多孔性シリカ粒子溶液を、
図7に示す直径50kDaの気孔を有する透過膜に入れた。外部膜に15mlのSBFを添加し、外部膜のSBFは12時間ごとに入れ替えた。多孔性シリカ粒子の分解は、37℃において60rpmで水平攪拌して行った。
その後、紫外・可視分光法(UV-vis spectroscopy)によって吸光度を測定し、λ=640nmで分析した。
【0235】
(1)吸光度比の測定
実施例1-1-(1)の多孔性シリカ粒子の吸光度比を前記方法に従って測定した。その結果を
図8に示す。
これを参照すると、吸光度比が1/2となるtは約58時間であり、非常にゆっくりと分解されることが確認できた。
【0236】
(2)粒径別
実施例1-1-(1)、(5)、(6)の多孔性シリカ粒子の吸光度を前記数式1により測定した。その結果を
図9に示す(懸濁液と溶媒としては、SBFを使用した。)。
これを参照すると、粒径の増加によってtが減少することが分かる。
【0237】
(3)気孔の平均直径別
実施例1-1-(1)、(9)の多孔性シリカ粒子、そしてコントロールとして実施例1-1-(1)の小気孔多孔性シリカ粒子の吸光度を前記数式1により測定した。その結果を
図10に示す(懸濁液と溶媒としては、SBFを使用した。)。
これを参照すると、実施例の多孔性シリカ粒子は、コントロールに比べてtが非常に大きいことが確認できる。
【0238】
(4)pH別
実施例1-1-(4)の多孔性シリカ粒子のpH別吸光度を測定した。吸光度は、SBFで、そしてpH2、5および7.4のTrisで測定した。その結果を
図11に示す。
これを参照すると、pH別にtの差はあるが、いずれも吸光度の比が1/2となるtは24時間以上であった。
【0239】
(5)帯電
実施例1-2-(1)-1)の多孔性シリカ粒子の吸光度を測定し、その結果を
図12に示す(懸濁液と溶媒としては、トリス(Tris,pH7.4)を使用した。)。
これを参照すると、陽電荷に帯電した粒子も吸光度の比が1/2となるtは24時間以上であった。
【0240】
実施例2.DegradaBALLの製造、並びにCpG-ODNおよびsiIDOの選定
1.DegradaBALLの製造
小気孔粒子の製造時に蒸留水920ml、メタノール850mlを使用したこと、気孔拡張時にTMBを11mL使用したこと以外は1-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。その後、2mLのAPTESを用いて、2-(1)の方法で表面改質を行った。その結果、
図13aのaのようなDegradeBALLが得られた。
【0241】
2.siIDOの選定およびノックダウン効率
配列番号7および8のsiRNAの安定性のために、4merをさらに延長して実験を行った。4merを延長した配列番号11および12の配列においても優れたK/D効果が観察され(
図19)、最終のsiIDO1の配列番号11および12の配列を本実験のsiIDOに選定した。
【0242】
【0243】
3.CpG-ODNの選定
選定されたsiIDO 1(#4、#4’)をそれぞれ異なるクラス(class)のCpG(A、B、C)と連結して効果を確認した。各テストは、DegradaBALLに担持して行った。
CpGクラスとは関係なく、いずれもsiIDO1が正常にK/Oさせることを確認した(
図25)。
実験の結果、CpG-ODNクラスAに連結されたsiIDO1が、クラスBまたはCに連結されたsiIDO1に比べて優れたI型IFN誘発(induction)効果があることを確認した(
図26)。
したがって、CpG-ODNクラスAを本実験のCpG-ODNに選定した。
【0244】
実施例3.CpG-ODN-siIDOがDegradaBALLに担持されたLEM-S403の製造
1.CpG-ODN-siIDOを担持するための材料
DegradaBALLとしては、実施例2-1の粒子を使用した。エタノールは、シグマ・アルドリッチ(Sigma-aldrich、ミズーリ州、米国)から購入した。フィコール・パケ(Ficoll-paque)は、Geヘルスケア・バイオサイエンス(GE Healthcare Bio Sciences AB、Uppsala、Sweden)から購入した。TAMRA NHSエステルは、サーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific、Massachusetts、USA)から購入した。10xリン酸緩衝食塩水(Phosphate buffered saline(10x PBS)、Ham’s F-12K培地(F-12K)、最少必須培地(Minimum Essential Medium、MEM)、ロズウェルパーク記念研究所1640培地(Roswell Park Memorial Institute 1640、RPMI1640)、ウシ胎児血清(fetal bovine serum、FBS)、仔ウシ血清(bobvine calf serum、BCS)、ペニシリン-ストレプトマイシン(penicillin-streptomycin)およびトリプシン(trypsin)-EDTAは、ウェルジン(WelGene、ソウル、韓国)から購入した。抗マウスPD-1およびCTLA-4抗体は、バイオ・エックス・セル(Bio X Cell、NH、USA)から購入した。ヒトおよびマウスCpG-ODN、siIDO、CpG-ODN-siIDO、FITC-conjugated CpG-ODN-siIDO、Cy5-conjugated CpG-ODN-siIDOおよびPCRプライマーは、バイオニア(Bioneer,Inc、テジョン、韓国)で合成された。PCRプライマーの配列情報は表3に示されている。フローサイトメトリー用抗体(Alexa Fluor(登録商標) 647 anti-mouse CD11c,Alexa Fluor(登録商標) R-PE anti-Ly6C,Alexa Fluor(登録商標) 647 anti-mouse FOXP3,Alexa Fluor(登録商標) 488 anti-mouse NK-1.1,PE/Cy7 anti-mouse CD4、APC anti-mouse CD3、FITC and Alexa Fluor(登録商標) 488 anti-mouse CD8a、PE anti-mouse CD122、PE anti-mouse CD25、Alexa Fluor(登録商標) 647 anti-mouse CD69、および Alexa Fluor(登録商標) 647 anti-mouse CD86)は、バイオレジェンド(Biolegend、CA、USA)から購入した。抗ウサギp-STAT-1抗体は、CST(MA, USA)から購入し、FITC抗マウスIDO1抗体は、サンタクルズバイオテクノロジー(Santa Cruz biotechnology、CA、USA)から購入した。抗ウサギL-キヌレニン抗体は、イムスモル(ImmuSmol、CA、USA)から購入した。TUNEL分析キットは、プロメガ(Promega、WA、USA)から購入した。Lipofectamine(登録商標) 2000、TRIzolおよびパワーSYBR(登録商標) グリーンPCRマスターミックス(Power SYBRGreen PCR Master Mix)は、サーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific、MA、USA)から購入した。組換えヒトインターフェロン-γ(Recombinant human interferon-gamma、IFN-γ)は、ペプロテック(Peprotech Inc、NJ、USA)から購入した。HEK-BlueTM IFN-α/β細胞は、インビボゲン(Invivogen、CA、USA)から購入した。PCRプライマーの塩基配列の情報は表3に示されている。
【0245】
【0246】
2.LEM-S403の製造に使用されるDegradaBALLの特性
DegradaBLLのTEM画像は、LIBRA 120 EF-TEM(Carl Zeiss、Germany)から得た。DegradaBALLのゼータ電位および流体力学的サイズは、ゼータサイザーナノS(Zetasizer Nano S、Malvern Instruments、UK)によって測定した。窒素吸着等温線はNOVA吸着装置を用いて測定した。DegradaBALLの表面積は、ブルナウアー-エメット-テラー(Brunauer-Emmitt-Teller)法を用いて計算した。
【0247】
3.LEM-S403の担持容量
担持容量を測定するために、様々な濃度のDegradaBALL(1、2、3、4、5、7および10μg)を10μLの1xPBS溶液に1μgのヒトCpG-ODN-siIDOと混合した。室温で30分間培養した後、混合物を8,000rpmで10分間遠心分離した。次に、上澄み液を新しいマイクロチューブに移し、残留CpG-ODN-siIDOの濃度をCitation5(Biotech、VT、USA)で測定した。上澄み液の残留CpG-ODN-siIDOの量は、260nmにおける吸光度を測定することで決定した。担持容量は、上澄み液のCpG-ODN-siIDO残留量を基準に計算した。
【0248】
LEM-S403の投与量は、LEM-S403のCpG-ODN-siIDO含有量を示す。LEM-S403は、DegradaBALLで1:5の重量比(CpG-ODN-siIDO:DegradaBALL)で製造されたCpG-ODN-siIDOである。
【0249】
4.LEM-S403の放出プロファイリング
LEM-S403の放出プロファイリングのために、LEM-S403(100μg/mL、容積=100μL)を疑似体液(SBF、pH7.4、[Na+]=142mM、[K+]=5mM、[Mg2+]=1.5mM、[Ca2+]=2.5mM、[Cl-]=148.8mM、[HCO3-]=4.2mM、[HPO42-]=1.0mM(pH7.4 Tris緩衝液([Tris]=50mM)))に37℃で10日間拡散させた。指定した時点(1、2、3、4、7および10日)で混合物を8,000rpmで10分間遠心分離してLEM-S403をプルダウンし、上澄み液を新鮮なSBFに交換した。上澄み液から放出されたCpG-ODN-siIDOの量は、260nmにおける吸光度を基準に測定された。
【0250】
5.細胞の培養
全ての細胞は、37℃、5%CO2の条件下でCO2培養器(SANYO Electric、Osaka、Japan)で培養された。A549細胞は、10%FBS(v/v)および10unit/mLのペニシリン・ストレプトマイシンを含むF-12K培地で培養された。CT26細胞は、10%FBS(v/v)および10unit/mLのペニシリン・ストレプトマイシンを含むRPMI-1640培地で培養された。ヒト末梢血単核細胞(PBMC)は、ロンザ(Lonza、Basel、Switzerland)から購入した。マウスPBMCは、生後5週齢のBalb/cマウスから、Ca2+およびMg2+のない条件でフィコール(ficoll)勾配法を用いて分離した。
【0251】
6.マウスPBMCにおけるLEM-S403の細胞取り込み効率のテスト
マウスPMBCを24ウェルプレートに2.5×104細胞/ウェルの密度で播種した。次に、DegradaBALLを有するかまたは有しないバッファーまたはFITC接合されたCpG-ODN-siIDO(100nM)を各ウェルに添加した。6時間培養した後、細胞を1xPBSで洗浄し、染色のために採集した。細胞を室温で10分間培養緩衝液(1xPBS中の0.5%BSA)に懸濁した。ブロッキングの後、細胞を1,250rpmで2分間遠心分離し、上澄み液を除去した。次いで、細胞を一次抗体溶液(1xPBS中の0.5%BSA)(1:200希釈)で処理し、室温で1時間培養した。細胞を遠心分離し、培養緩衝液で洗浄した。洗浄した細胞を200μLの培養緩衝液に再懸濁し、Attune NxTフローサイトメーター(Thermo Fisher、MA、USA)を用いて分析した。
【0252】
7.A549細胞におけるIDO1ノックダウン効率のテスト
A549細胞を24ウェルプレートに5×104細胞/ウェルの密度で播種した。24時間培養した後、細胞を1xPBSで洗浄した。次に、DegradaBALL、CpG-ODN-siIDO(150nM)、siIDO(150nM)、CpG-ODN(150nM)、CpG-ODN-siIDO with DegradaBALL(10、50及び150nM)、siIDO with DegradaBALL(150nM)またはCpG-ODN with DegradaBALL(150nM)を500μLのF-12K培地(無血清)に分散し、各ウェルに添加した。DegradaBALLと担持される物質の割合は、5:1(w/w)で準備した。6時間培養した後、細胞を1xPBSで洗浄し、IFN-γ(80ng/mL)を含む新鮮な増殖培地で指定の時間さらに培養した。リアルタイムqPCRによってIDO1の阻害が検出された。
【0253】
ノックダウン効率の持続時間を調べるために、A549細胞を24ウェルプレートに5×104細胞/ウェルの密度で播種した。24時間培養した後、細胞を1xPBSで洗浄した。その後、DegradaBALLに担持されたCpG-ODN-siIDO(150nM)とリポフェクタミン(Lipofectamine)に担持されたCpG-ODN-siIDOを500μLのF-12K培地(無血清)に分散し、ウェルに添加した。6時間培養した後、細胞を1xPBSで洗浄し、IFN-γ(80ng/mL)を含む新しい増殖培地で指定の時間さらに培養した。リアルタイムqPCRによってIDO1の阻害が検出された。
【0254】
8.I型IFNの分泌の誘導
ヒトPBMCを50μLのMEM培地と共に96ウェルプレート(5×105細胞/ウェル)に播種した。2時間培養した後、緩衝液、siIDO(125nM)、CpG-ODN(125nM)、CpG-ODN-siIDO(125nM)を、DegradaBALLを有するかまたは有しない50μLのMEM培地に分散し、各ウェルに添加した。細胞をさらに22時間培養した。培地中の1型IFNは、メーカーの指針に従ってレポーター細胞システム(HEK-BlueTM IFN-α/β細胞)を用いて決定した。
【0255】
ヒトPBMCを50μLのMEM培地と共に96ウェルプレート(5×105細胞/ウェル)に播種した。2時間培養した後、50μLのMEM培地に分散された500、250、125、62.5、31.25、15.63および7.81nMのLEM-S403を各ウェルに添加した。細胞をさらに22時間培養した。培地のI型IFNは、メーカーの指針に従ってレポーター細胞システム(HEK-BlueTM IFN-α/β細胞)を用いて決定した。
【0256】
9.動物実験
すべての動物実験は、ソウル大学動物実験倫理委員会(IACUC)の指針に従って行った。Balb/c雄マウス(5週齢)は、オリエント・バイオ(ORIENT BIO、ソンナム、韓国)から購入した。実験期間中、動物は19~25℃、湿度40~70%、光12時間、暗闇12時間の周期などの環境条件下で収容された。
【0257】
10.腫瘍内注射後のLEM-S403の持続能
腫瘍保有マウス(Balb/c)は、マトリゲル(Matrigel)を含む100μLの滅菌1xPBS溶液にCT26細胞(1×106細胞)を皮下注射することで準備した。腫瘍体積が約200mm3に達したとき、マウスに対して、腫瘍内注射によってTAMRA接合されたDegradaBALLを使用するかまたは使用せずに、緩衝液、TAMRA接合されたDegradaBALLまたはCy5接合されたCpG-siIDOを処理した。注射後1日目及び3日目に、分析のために腫瘍を切除した。全腫瘍の蛍光画像は、FOBIインビボ・イメージング・システム(NeoScience、Seoul、Korea)を用いて得た。腫瘍は4%PFA溶液中で培養された。ショ糖の浸透後、サンプルをOCTコンパウンド(optimal cutting temperature compound)に含め、10μmの厚さに切片化した。切片スライドを滅菌水で洗浄し、DAPIで染色した。サンプルは、10倍の対物レンズを備えたBX71顕微鏡で観察した。
【0258】
フローサイトメトリーのために、腫瘍体積が約200mm3に達したとき、FITC接合CpG-siIDOをDegradaBALLと共にまたはDegradaBALLなしで腫瘍(CT26)保有マウスの腫瘍に注入した。注射後1日目及び3日目に腫瘍を採取した。採取した腫瘍を細かく切り、1mLのコラーゲン分解酵素溶液中において37℃で30分間培養した。セルストレーナーを用いて細胞を採集し、フローサイトメトリーを行った。
【0259】
11.LEM-S403単独療法および免疫チェックポイント阻害剤を用いた併用療法の治療効果
マトリゲル(matrigel)を含む100μLの滅菌1xPBS溶液に入っているCT26細胞(1×106細胞)を、Balb/cマウスの右脇腹または両脇腹に皮下注射した。緩衝液、ビヒクル(DegradaBALLの70μg)、CpG-ODN(4.5μg)+ビヒクル(DegradaBALLの22.5μg)、siIDO(9.5μg)+ビヒクル(DegradaBALLの47.5μg)またはLEMIDO(3.5、7及び14μg)を、腫瘍体積が約100mm3になってから0日目、3日目、7日目及び10日目に右脇腹に注射した。腫瘍体積は週3回測定した。生存率はカプラン・マイヤー・プロット(Kaplan-Meier plot)として提示された。
【0260】
前記方法により腫瘍(CT26)保有マウスを作製した。バッファー、ビヒクル(DegradaBALLの70μg)、抗PD-1 ab(aPD-1;10mg/kg)、抗CTLA-4 ab(aCTLA-4;10mg/kg)、LEMIDO(14μg)、LEMIDO+aPD-1 abまたはLEMIDO+aCTLA-4 abを、腫瘍体積が約100mm3になってから0日目、3日目、7日目及び10日目に注入した。バッファー、ビヒクルおよびLEMIDOは右脇腹に腫瘍内注射し、aPD-1およびaCTLA-4は腹腔内注射した。腫瘍体積は週3回測定した。生存率はカプラン・マイヤー・プロットとして提示された。
【0261】
12.LEM-S403単独療法の治療メカニズム
前記方法により腫瘍(CT26)保有マウスを準備した。バッファー、ビヒクル(DegradaBALLの70μg)、CpG-ODN(4.5μg)+ビヒクル(DegradaBALLの22.5μg)、siIDO(9.5μg)+ビヒクル(DegradaBALLの47.5μg)またはLEMIDO(14μg)を、腫瘍体積100mm3になってから0日目及び3日目に右脇腹に腫瘍内注射した。4日目にマウスを犠牲にし、注入されたかまたは遠く離れた腫瘍をさらなる分析のために採取した。犠牲の過程でEDTA処理されたチューブを用いてマウスの全血を採取した。採取した血液を、Hemavet950を用いて分析した。
【0262】
13.ネキシンV(Annexin V)
採取した腫瘍を細かく切り、1mLのコラーゲン分解酵素溶液中において37℃で30分間培養した。細胞は、セルストレーナーを用いて採集した。アネキシンVおよびヨウ化プロピジウム(propidum iodide)染色は、メーカーの指針に従ってPI(Biolegend、CA、USA)と共にFITCアネキシンVアポトーシス検出キット(Apoptosis Detection Kit)を用いて行った。
【0263】
14.逆転写酵素PCR(RT-PCR)
結合GITCカラム(combined GITC-column)に基づいて採取した細胞または腫瘍から全RNAを抽出した。cDNAの合成は以下の条件で行った:65℃で5分間、42℃で2分間、42℃で50分間、そして70℃で15分間、不活性化の条件で1サイクル。ゲル遅延のために、cDNAの増幅は以下の条件で行った:95℃で30秒、55℃で60秒、および72℃で30秒の条件で30サイクル。生成物は電気泳動によって2%TAEアガロースゲルで遅延され、Gel-DOC XR+システム(Bio-rad、CA、USA)を用いて可視化された。qPCRは、メーカーの指針に従ってCFX96タッチリアルタイムPCR検出システム(CFX96 Touch Real-Time PCR Detection System、Bio-rad)およびパワーSYBR(登録商標)グリーンPCRマスターミックス(Power SYBR(登録商標) Green PCR Master Mix)を用いて行った。
【0264】
15.組織学的評価と蛍光染色
採取した腫瘍を4%PFA溶液で培養した。ショ糖の浸透後、臓器をOCTコンパウンドに入れ、10μm厚に切片化した。切片化した組織をH&E染色試薬(BBC Biochemical、Mt Vernon、WA、USA)で染色した。
【0265】
免疫蛍光染色のために、5%正常ヤギ血清が含まれたPBSを用いて45分間ブロッキングした後、組織切片を蛍光染料結合抗体または一次抗体に続いて蛍光染料結合の二次抗体で染色した。核はDAPIを用いて染色した。染色された組織切片は、10倍の対物レンズを備えたBX71顕微鏡で観察した。
【0266】
16.フローサイトメトリー
腫瘍組織の場合、採取した腫瘍を1mLのコラーゲン分解酵素溶液中において37℃で30分間培養し、セルストレーナーを用いて細胞を採取した。一次細胞(1×105細胞)を4%PFA中において37℃で10分間培養した後、培養緩衝液で洗浄した。細胞を培養緩衝液(1xPBS中の0.5%BSA)に室温で10分間懸濁した。ブロッキングの後、細胞を1,250rpmで2分間遠心分離し、上澄み液を除去した。次いで、細胞を一次抗体溶液(1xPBS中の0.5%BSA、1:200希釈)で処理し、室温で1時間培養した。細胞を遠心分離し、培養緩衝液で洗浄した。洗浄した細胞を200μLの培養バッファーに再懸濁し、Attune NxTフローサイトメーター(Thermo Fisher、MA、USA)を用いて分析した。
【0267】
17.cpGODNとsiIDOとをカーボンリンカーを介して連結した場合の相乗効果
連結された形態のLEM-S403に相乗効果があるか否かを確認するために比較試験を行った。マウスに対して、0日目と3日目にビヒクル、CpGODN+ビヒクル、LEM-S403またはカクテル(CpGODN+siIDO+ビヒクル)で処理した。4日目には流量細胞測定法で腫瘍を採取して分析した。カクテル療法群は、CpG-ODNおよびLEM-S403群の場合と類似したCD8+T細胞増加を示したが、LEM-S403のようなTreg細胞群を減少させることはなかった。この差異から、腫瘍のCD8/Teg比に優れていた。この結果は、治療上の有益性のために、siIDOとCpGODNを連結する戦略が必須であることを示している。
【0268】
18.LEM-S403の治療機構、並びにCpG-ODNおよびsiIDOを用いたカクテル療法
マウス内腫瘍(CT26)を前述の方法によって準備した。腫瘍体積が約100mm3に達したとき、ビヒクル(DegradaBALLの70μg)、CpG-ODN(4.5μg)+ビヒクル(DegradaBALLの22.5μg)、LEM-S403(14μg)またはCpG-ODN(4.5μg)+siIDO(9.5μg)+ビヒクル(DegradaBALLの70μg)を0日目及び3日目に右脇腹の腫瘍内に注射した。4日目にマウスを犠牲にし、流量細胞の測定のために注射された腫瘍を採取した。
【配列表】