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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/16 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
F16H1/16 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023125408
(22)【出願日】2023-08-01
【審査請求日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2022182678
(32)【優先日】2022-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】523207755
【氏名又は名称】株式会社Tankyu
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 晴暢
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】独国特許発明第00353540(DE,C1)
【文献】特開平02-042231(JP,A)
【文献】独国特許発明第00827891(DE,C1)
【文献】米国特許第05237886(US,A)
【文献】仏国特許発明第00469757(FR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォーム回転軸周りを螺旋状に延びるウォーム歯を備えており、前記ウォーム回転軸を中心にして回転可能であるウォームと、
前記ウォーム歯と噛み合い可能であり、前記ウォームの回転に連動して動く可動部材と、を備えており、
前記可動部材は、
本体と、
前記ウォームと対向する前記本体の対向面上で、前記可動部材が動く可動方向に等間隔に並んで配置されている複数の突出歯と、
隣接する2個の前記突出歯の間に配置されており、前記ウォーム歯を受け入れる複数の受入歯溝であって、少なくとも2個の前記受入歯溝が前記ウォーム歯を受け入れており、前記受入歯溝が前記ウォーム歯を受け入れているとき、前記隣接する2個の突出歯のうちの一方の前記突出歯と前記ウォーム歯との間に第1受入歯溝が画定されるとともに、前記隣接する2個の突出歯のうちの他方の前記突出歯と前記ウォーム歯との間に第2受入歯溝が画定される、前記複数の受入歯溝と、
複数の第1ボールリターン通路であって、前記第1ボールリターン通路が前記第1受入歯溝の両端に接続されている、前記複数の第1ボールリターン通路と、
複数の第2ボールリターン通路であって、前記第2ボールリターン通路が前記第2受入歯溝の両端に接続されている、前記複数の第2ボールリターン通路と、
前記第1受入歯溝内で、前記一方の突出歯と前記ウォーム歯との間に挟まれており、前記第1受入歯溝と前記第1ボールリターン通路を循環する複数の第1ボールと、
前記第2受入歯溝内で、前記他方の突出歯と前記ウォーム歯との間に挟まれており、前記第2受入歯溝と前記第2ボールリターン通路を循環する複数の第2ボールと、を備えており、
前記突出歯は、
前記受入歯溝が前記ウォーム歯を受け入れているときに前記ウォーム歯との間で前記第1ボールを挟む第1突出歯側面と、
前記受入歯溝が前記ウォーム歯を受け入れているときに前記ウォーム歯との間で前記第2ボールを挟む第2突出歯側面と、を備えており、
前記ウォーム歯は、
前記第1突出歯側面との間で前記第1ボールを挟む第1ウォーム歯側面と、
前記第2突出歯側面との間で前記第2ボールを挟む第2ウォーム歯側面と、を備えており、
前記第1ウォーム歯側面には、前記複数の第1ボールが前記第1受入歯溝内を移動する方向に延びており、前記複数の第1ボールを受け入れる第1ボール溝が形成されており、
前記第2ウォーム歯側面には、前記複数の第2ボールが前記第2受入歯溝内を移動する方向に延びており、前記複数の第2ボールを受け入れる第2ボール溝が形成されており、
前記ウォームの直径は、前記ウォーム回転軸が延びる方向における前記ウォームの中心位置から前記ウォーム回転軸が延びる前記方向における前記ウォームの両端に向かうにつれて増加し、
前記第1ボールが前記第1ボール溝に入り込む深さは、前記ウォームの前記中心位置から前記ウォームの前記両端に向かうにつれて浅くなり、
前記第2ボールが前記第2ボール溝に入り込む深さは、前記ウォームの前記中心位置から前記ウォームの前記両端に向かうにつれて浅くなる、伝達装置。
【請求項2】
伝達装置であって、
ウォーム回転軸周りを螺旋状に延びるウォーム歯を備えており、前記ウォーム回転軸を中心にして回転可能であるウォームと、
前記ウォーム歯と噛み合い可能であり、前記ウォームの回転に連動して動く可動部材と、を備えており、
前記可動部材は、
本体と、
前記ウォームと対向する前記本体の対向面上で、前記可動部材が動く可動方向に等間隔に並んで配置されている複数の突出歯と、
隣接する2個の前記突出歯の間に配置されており、前記ウォーム歯を受け入れる複数の受入歯溝であって、少なくとも2個の前記受入歯溝が前記ウォーム歯を受け入れており、前記受入歯溝が前記ウォーム歯を受け入れているとき、前記隣接する2個の突出歯のうちの一方の前記突出歯と前記ウォーム歯との間に第1受入歯溝が画定されるとともに、前記隣接する2個の突出歯のうちの他方の前記突出歯と前記ウォーム歯との間に第2受入歯溝が画定される、前記複数の受入歯溝と、
複数の第1ボールリターン通路であって、前記第1ボールリターン通路が前記第1受入歯溝の両端に接続されている、前記複数の第1ボールリターン通路と、
複数の第2ボールリターン通路であって、前記第2ボールリターン通路が前記第2受入歯溝の両端に接続されている、前記複数の第2ボールリターン通路と、
前記第1受入歯溝内で、前記一方の突出歯と前記ウォーム歯との間に挟まれており、前記第1受入歯溝と前記第1ボールリターン通路を循環する複数の第1ボールと、
前記第2受入歯溝内で、前記他方の突出歯と前記ウォーム歯との間に挟まれており、前記第2受入歯溝と前記第2ボールリターン通路を循環する複数の第2ボールと、を備えており、
前記突出歯は、
前記受入歯溝が前記ウォーム歯を受け入れているときに前記ウォーム歯との間で前記第1ボールを挟む第1突出歯側面と、
前記受入歯溝が前記ウォーム歯を受け入れているときに前記ウォーム歯との間で前記第2ボールを挟む第2突出歯側面と、を備えており、
前記第1突出歯側面には、前記複数の第1ボールが前記第1受入歯溝内を移動する方向に延びており、前記複数の第1ボールを受け入れる第1ボール溝が形成されており、
前記第2突出歯側面には、前記複数の第2ボールが前記第2受入歯溝内を移動する方向に延びており、前記複数の第2ボールを受け入れる第2ボール溝が形成されており、
前記可動部材は、前記ウォームの回転に連動してホイール回転軸を中心にして回転するウォームホイールであり、
前記ウォーム歯は、
前記第1突出歯側面との間で前記第1ボールを挟む第1ウォーム歯側面と、
前記第2突出歯側面との間で前記第2ボールを挟む第2ウォーム歯側面と、を備えており、
前記伝達装置を前記ホイール回転軸に直交する面で切断したとき、前記ウォーム歯を受け入れている前記受入歯溝において、前記第1ウォーム歯側面は、前記第1ウォーム歯側面に当接する前記第1ボールの中心と前記ホイール回転軸とを結ぶ第1直線と平行であり、前記第2ウォーム歯側面は、前記第2ウォーム歯側面に当接する前記第2ボールの中心と前記ホイール回転軸とを結ぶ第2直線と平行である、伝達装置。
【請求項3】
前記可動部材は、
前記第1受入歯溝内の前記複数の第1ボールに対して、前記本体の前記対向面と反対側に配置されており、前記複数の第1ボールを前記第1受入歯溝内に保持する第1リテーナと、
前記第2受入歯溝内の前記複数の第2ボールに対して、前記本体の前記対向面と反対側に配置されており、前記複数の第2ボールを前記第2受入歯溝内に保持する第2リテーナと、をさらに備えている、請求項1または2に記載の伝達装置。
【請求項4】
前記第1ボールリターン通路の少なくとも一部は、前記本体の内部に配置されており、
前記第2ボールリターン通路の少なくとも一部は、前記本体の内部に配置されている、請求項1または2に記載の伝達装置。
【請求項5】
ウォーム回転軸周りを螺旋状に延びるウォーム歯を備えており、前記ウォーム回転軸を中心にして回転可能であるウォームと、
前記ウォーム歯と噛み合い可能であり、前記ウォームの回転に連動して動く可動部材と、を備えており、
前記可動部材は、
本体と、
前記ウォームと対向する前記本体の対向面上で、前記可動部材が動く可動方向に等間隔に並んで配置されている複数の突出歯と、
隣接する2個の前記突出歯の間に配置されており、前記ウォーム歯を受け入れる複数の受入歯溝であって、少なくとも2個の前記受入歯溝が前記ウォーム歯を受け入れており、前記受入歯溝が前記ウォーム歯を受け入れているとき、前記隣接する2個の突出歯のうちの一方の前記突出歯と前記ウォーム歯との間に第1受入歯溝が画定されるとともに、前記隣接する2個の突出歯のうちの他方の前記突出歯と前記ウォーム歯との間に第2受入歯溝が画定される、前記複数の受入歯溝と、
複数の第1ボールリターン通路であって、前記第1ボールリターン通路が前記第1受入歯溝の両端に接続されている、前記複数の第1ボールリターン通路と、
複数の第2ボールリターン通路であって、前記第2ボールリターン通路が前記第2受入歯溝の両端に接続されている、前記複数の第2ボールリターン通路と、
前記第1受入歯溝内で、前記一方の突出歯と前記ウォーム歯との間に挟まれており、前記第1受入歯溝と前記第1ボールリターン通路を循環する複数の第1ボールと、
前記第2受入歯溝内で、前記他方の突出歯と前記ウォーム歯との間に挟まれており、前記第2受入歯溝と前記第2ボールリターン通路を循環する複数の第2ボールと、を備えており、
前記突出歯は、
前記受入歯溝が前記ウォーム歯を受け入れているときに前記ウォーム歯との間で前記第1ボールを挟む第1突出歯側面と、
前記受入歯溝が前記ウォーム歯を受け入れているときに前記ウォーム歯との間で前記第2ボールを挟む第2突出歯側面と、を備えており、
前記ウォーム歯は、
前記第1突出歯側面との間で前記第1ボールを挟む第1ウォーム歯側面と、
前記第2突出歯側面との間で前記第2ボールを挟む第2ウォーム歯側面と、を備えており、
前記第1ウォーム歯側面には、前記複数の第1ボールが前記第1受入歯溝内を移動する方向に延びており、前記複数の第1ボールを受け入れる第1ボール溝が形成されており、
前記第2ウォーム歯側面には、前記複数の第2ボールが前記第2受入歯溝内を移動する方向に延びており、前記複数の第2ボールを受け入れる第2ボール溝が形成されており、
前記ウォームの直径は、前記ウォーム回転軸が延びる方向における前記ウォームの中心位置から前記ウォーム回転軸が延びる前記方向における前記ウォームの両端に向かうにつれて増加し、
前記第1ウォーム歯側面に直交する方向に関して、前記第1ボールと前記第1ウォーム歯側面との接触位置は、前記ウォームの前記中心位置から前記ウォームの前記両端に向かうにつれて前記第1ボールの中心から離れ、
前記第2ウォーム歯側面に直交する方向に関して、前記第2ボールと前記第2ウォーム歯側面との接触位置は、前記ウォームの前記中心位置から前記ウォームの前記両端に向かうにつれて前記第2ボールの中心から離れる、伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、伝達装置が開示されている。伝達装置では、複数の鋼球が、ホイールのボール溝と溝ネジギヤのネジ溝の間に挟まれている。また、ホイールの内部には、ボール穴が形成されており、ボール穴は、ボール循環路を介して、ボール溝に接続されている。溝ネジギヤが回転すると、鋼球を介してホイールに力が伝達され、ホイールが回転する。このとき、複数の鋼球は、転がりながら、ボール溝と、ボール循環路と、ボール穴を循環する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平02-042231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、溝ネジギヤが鼓形状を有しているため、溝ネジギヤの直径は、溝ネジギヤの長手方向の中心位置から溝ネジギヤの長手方向の端部に向かうにつれて大きくなる。例えば、溝ネジギヤの長手方向の中心位置近傍で、鋼球がホイールのボール溝を溝ネジギヤのネジ溝の間に挟まれている一方で、ネジ溝ギヤの長手方向の端部近傍で、鋼球とボール溝との間や、鋼球とネジ溝との間に、隙間が生じることがある。この場合、鋼球を介して溝ネジギヤからホイールに力が伝達されず、ホイールが回転することができないことがある。
【0005】
本明細書は、ウォームの歯が可動部材の複数の歯と噛み合っている状態において、ウォームの回転をボールを介して可動部材に伝達することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する技術の第1の態様では、伝達装置は、ウォーム回転軸周りを螺旋状に延びるウォーム歯を備えており、ウォーム回転軸を中心にして回転可能であるウォームと、ウォーム歯と噛み合い可能であり、ウォームの回転に連動して動く可動部材と、を備えている。可動部材は、本体と、ウォームと対向する本体の対向面上で、可動部材が動く可動方向に等間隔に並んで配置されている複数の突出歯と、隣接する2個の突出歯の間に配置されており、ウォーム歯を受け入れる複数の受入歯溝であって、少なくとも2個の受入歯溝がウォーム歯を受け入れており、受入歯溝がウォーム歯を受け入れているとき、隣接する2個の突出歯のうちの一方の突出歯とウォーム歯との間に第1受入歯溝が画定されるとともに、隣接する2個の突出歯のうちの他方の突出歯とウォーム歯との間に第2受入歯溝が画定される、複数の受入歯溝と、複数の第1ボールリターン通路であって、第1ボールリターン通路が第1受入歯溝の両端に接続されている、複数の第1ボールリターン通路と、複数の第2ボールリターン通路であって、第2ボールリターン通路が第2受入歯溝の両端に接続されている、複数の第2ボールリターン通路と、第1受入歯溝内で、一方の突出歯とウォーム歯との間に挟まれており、第1受入歯溝と第1ボールリターン通路を循環する複数の第1ボールと、第2受入歯溝内で、他方の突出歯とウォーム歯との間に挟まれており、第2受入歯溝と第2ボールリターン通路を循環する複数の第2ボールと、を備えている。
【0007】
上記の構成によれば、ウォームのウォーム歯が複数の受入歯溝に受け入れられているとき、いずれの受入歯溝内においても、複数の第1ボールが一方の突出歯とウォーム歯との間に挟まれており、複数の第2ボールが他方の突出歯とウォーム歯との間に挟まれている。このため、ウォームが回転したとき、第1ボールが第1受入歯溝内を転がって移動し、第2ボールが第2受入歯溝内を転がって移動するとともに、第1ボールと第2ボールのそれぞれを介してウォームから可動部材に力が伝達される。これにより、ウォームの回転を第1ボールと第2ボールを介して可動部材に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施例の伝達装置10の側面図である。
図2】第1実施例の伝達装置10をホイール回転軸AX2に直交する面で切断したときの断面図である。
図3】第1実施例の伝達装置10をウォーム回転軸AX1に直交する面で切断したときの断面図である。
図4】第1実施例の伝達装置10において、受入歯溝34に受け入れられるウォーム歯22近傍の拡大断面図である。
図5】第2実施例の伝達装置10の縦断面図である。
図6】第2実施例の伝達装置10をウォーム回転軸AX1に直交する面で切断したときの断面図である。
図7】第2実施例の伝達装置10において、受入歯溝34に受け入れられるウォーム歯22近傍の拡大断面図である。
図8】第3実施例の伝達装置10をホイール回転軸AX2に直交する面で切断したときの断面図である。
図9】第3実施例の伝達装置10において、受入歯溝34に受け入れられるウォーム歯22近傍の拡大断面図である。
図10】第4実施例の伝達装置10において、受入歯溝34に受け入れられるウォーム歯22近傍の拡大断面図である。
図11】第4実施例の伝達装置10をホイール回転軸AX2に直交する面で切断したときのウォーム12の本体20の中心位置CL1近傍の拡大断面図である。
図12】第4実施例の伝達装置10をホイール回転軸AX2に直交する面で切断したときのウォーム12の本体20の端近傍の拡大断面図である。
図13】第4実施例の伝達装置10において、第1ボール溝180の深さと第2ボール溝184の深さを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に開示する技術の第2の態様では、上記の第1の態様において、突出歯は、受入歯溝がウォーム歯を受け入れているときにウォーム歯との間で第1ボールを挟む第1突出歯側面と、受入歯溝がウォーム歯を受け入れているときにウォーム歯との間で第2ボールを挟む第2突出歯側面と、を備えている。第1突出歯側面には、複数の第1ボールが第1受入歯溝内を移動する方向に延びており、複数の第1ボールを受け入れる第1ボール溝が形成されている。第2突出歯側面には、複数の第2ボールが第2受入歯溝内を移動する方向に延びており、複数の第2ボールを受け入れる第2ボール溝が形成されている。
【0010】
上記の構成によれば、複数の第1ボールは第1受入歯溝内をスムーズに転がって移動することができ、複数の第2ボールは第2受入歯溝内をスムーズに転がって移動することができる。
【0011】
本明細書に開示する技術の第3の態様では、上記の第1または第2の態様において、可動部材は、ウォームの回転に連動してホイール回転軸を中心にして回転するウォームホイールである。ウォーム歯は、第1突出歯側面との間で第1ボールを挟む第1ウォーム歯側面と、第2突出歯側面との間で第2ボールを挟む第2ウォーム歯側面と、を備えている。伝達装置をホイール回転軸に直交する面で切断したとき、第1ウォーム歯側面は、第1ボールの中心とホイール回転軸とを結ぶ第1直線と平行であり、第2ウォーム歯側面は、第2ボールの中心とホイール回転軸とを結ぶ第2直線と平行である。
【0012】
上記の構成によれば、ウォームホイールが回転しても、第1ボールが第1突出歯側面と第1ウォーム歯側面との間に挟まれた状態を維持することができ、第2ボールが第2突出歯側面と第2ウォーム歯側面との間に挟まれた状態を維持することができる。これにより、ウォームの回転を第1ボールと第2ボールを介して可動部材により伝達することができる。
【0013】
本明細書に開示する技術の第4の態様では、上記の第1から第3のいずれか1つの態様において、可動部材は、第1受入歯溝内の複数の第1ボールに対して、本体の対向面と反対側に配置されており、複数の第1ボールを第1受入歯溝内に保持する第1リテーナと、第2受入歯溝内の複数の第2ボールに対して、本体の対向面と反対側に配置されており、複数の第2ボールを第2受入歯溝内に保持する第2リテーナと、をさらに備えている。
【0014】
上記の構成によれば、可動部材の動きに伴いウォーム歯が受入歯溝に受け入れられなくなったときでも、第1ボールが第1受入歯溝から抜け出ることを抑制することができ、第2ボールが第2受入歯溝から抜け出ることを抑制することができる。
【0015】
本明細書に開示する技術の第5の態様では、上記の第1から第4のいずれか1つの態様において、第1ボールリターン通路の少なくとも一部は、本体の内部に配置されている。第2ボールリターン通路の少なくとも一部は、本体の内部に配置されている。
【0016】
上記の構成によれば、第1ボールリターン通路と第2ボールリターン通路が本体の外部に配置される構成と比較して、可動部材が大型化することを抑制することができる。
【0017】
本明細書に開示する第6の態様では、上記の第1の態様において、突出歯は、受入歯溝がウォーム歯を受け入れているときにウォーム歯との間で第1ボールを挟む第1突出歯側面と、受入歯溝がウォーム歯を受け入れているときにウォーム歯との間で第2ボールを挟む第2突出歯側面と、を備えている。ウォーム歯は、第1突出歯側面との間で第1ボールを挟む第1ウォーム歯側面と、第2突出歯側面との間で第2ボールを挟む第2ウォーム歯側面と、を備えている。第1ウォーム歯側面には、複数の第1ボールが第1受入歯溝内を移動する方向に延びており、複数の第1ボールを受け入れる第1ボール溝が形成されている。第2ウォーム歯側面には、複数の第2ボールが第2受入歯溝内を移動する方向に延びており、複数の第2ボールを受け入れる第2ボール溝が形成されている。ウォームの直径は、ウォーム回転軸が延びる方向におけるウォームの中心位置からウォーム回転軸が延びる方向におけるウォームの両端に向かうにつれて増加する。第1ボールが第1ボール溝に入り込む深さは、ウォームの中心位置からウォームの両端に向かうにつれて浅くなる。第2ボールが第2ボール溝に入り込む深さは、ウォームの中心位置からウォームの両端に向かうにつれて浅くなる。
【0018】
上記の構成によれば、第1ボールが第1ボール溝に入り込む深さと第2ボールが第2ボール溝に入り込む深さがウォームの中心位置からウォームの両端に向かうにつれて浅くなる。このため、第1ウォーム歯側面に直交する方向において、第1ボールと第1ウォーム歯側面との接触位置は、ウォームの中心位置からウォームの両端に向かうにつれて第1ボールの中心から徐々に離れる。これにより、ウォームの直径がウォームの中心位置からウォームの両端に向かうにつれて増加する構成において、ウォームの中心位置からウォームの両端に亘って、第1ボールの回転量が同一となる。例えば、ウォームの中心位置での第1ボールの回転量と、ウォームの両端での第1ボールの回転量との差がゼロになる。また、第2ウォーム歯側面に直交する方向において、第2ボールと第2ウォーム歯側面との接触位置は、ウォームの中心位置からウォームの両端に向かうにつれて第2ボールの中心から徐々に離れる。これにより、ウォームの直径がウォームの中心位置からウォームの両端に向かうにつれて増加する構成において、ウォームの中心位置からウォームの両端に亘って、第2ボールの回転量が同一となる。例えば、ウォームの中心位置での第2ボールの回転量と、ウォームの両端での第2ボールの回転量との差がゼロになる。よって、第1ボールと第2ボールを介してウォームと可動部材をバックラッシュゼロで、滑らかに噛み合せることができる。
【0019】
(第1実施例)
図1に示すように、伝達装置10は、ウォーム減速機である。伝達装置10は、ウォーム12と、可動部材14と、を備えている。ウォーム12は、金属材料または樹脂材料からなる。ウォーム12は、入力シャフト15に固定されている。ウォーム12は、入力シャフト15が回転すると、ウォーム回転軸AX1周りを回転する。可動部材14は、出力シャフト16に固定されている。可動部材14は、例えば、ウォームホイールである。可動部材14は、ウォーム12と噛み合う。可動部材14は、ホイール回転軸AX2周りを回転可能である。
【0020】
ウォーム12は、本体20と、ウォーム歯22と、を備えている。本体20は、入力シャフト15に固定されている。図2に示すように、本体20の直径は、長手方向における本体20の中心位置CL1から長手方向における本体20の両端に向かって増加する。本体20は、鼓形状を有する。ウォーム歯22は、本体20の外面24から突出している。ウォーム歯22は、ウォーム回転軸AX1周りを螺旋状に延びている。
【0021】
ウォーム歯22は、第1ウォーム歯側面26と、第2ウォーム歯側面28と、を備えている。第1ウォーム歯側面26と第2ウォーム歯側面28は、本体20の外面24と接続している。第1ウォーム歯側面26は、第2ウォーム歯側面28と反対側の面である。第1ウォーム歯側面26は、本体20の中心位置CL1から本体20の両端に向かうにつれて、本体20の中心位置CL1に向かって徐々に傾く。第1ウォーム歯側面26の傾斜角度は、本体20の中心位置CL1から本体20の両端に向かうにつれて大きくなる。第2ウォーム歯側面28は、本体20の中心位置CL1から本体20の両端に向かうにつれて、本体20の中心位置CL1に向かって徐々に傾く。第2ウォーム歯側面28の傾斜角度は、本体20の中心位置CL1から本体20の両端に向かうにつれて大きくなる。
【0022】
可動部材14は、本体30と、複数の突出歯32と、複数の受入歯溝34と、複数の第1リテーナ36と、複数の第2リテーナ38と、複数の第1ボールリターン通路40と、複数の第2ボールリターン通路42と、複数の第1ボール44と、複数の第2ボール46と、を備えている。本体30は、金属材料または樹脂材料からなる。図1に示すように、本体30は、円板形状を有する。本体30は、出力シャフト16に固定されている。本体30の外面48は、本体20の外面24と対向している。
【0023】
複数の突出歯32は、本体30の外面48に配置されている。突出歯32は、本体30の外面48から突出している。ホイール回転軸AX2が延びる方向において、突出歯32は、本体30の一端から他端まで延びている。複数の突出歯32は、本体30の外面48の周方向に(ホイール回転軸AX2周りに)等間隔に配置されている。本体30の外面48の周方向は、可動部材14の回転方向D1と同一である。図2に示すように、突出歯32は、第1突出歯側面50と、第2突出歯側面52と、を備えている。第1突出歯側面50と第2突出歯側面52は、本体30の外面48と接続している。第1突出歯側面50は、第2突出歯側面52と反対側の面である。隣接する2個の突出歯32では、一方の突出歯32の第1突出歯側面50は、他方の突出歯32の第2突出歯側面52と対向している。
【0024】
受入歯溝34は、可動部材14の回転方向D1において、隣接する2個の突出歯32との間に配置されている。即ち、受入歯溝34は、一方の突出歯32の第1突出歯側面50と、他方の突出歯32の第2突出歯側面52と、本体30の外面48により画定されている。受入歯溝34は、ウォーム12のウォーム歯22を受け入れる。少なくとも2個(本実施例では3個)の受入歯溝34のそれぞれが、ウォーム歯22を受け入れる。受入歯溝34がウォーム歯22を受け入れているとき、ウォーム歯22の第1ウォーム歯側面26は、一方の突出歯32の第1突出歯側面50と平行に対向し、ウォーム歯22の第2ウォーム歯側面28は、他方の突出歯32の第2突出歯側面52と平行に対向している。これにより、第1ウォーム歯側面26と第1突出歯側面50との間に、第1受入歯溝54が画定され、第2ウォーム歯側面28と第2突出歯側面52との間に、第2受入歯溝56が画定される。また、図4に示すように、本体30の外面48には、凹部48aが形成されており、受入歯溝34がウォーム歯22を受け入れているとき、ウォーム歯22は、凹部48aと対向する位置に配置される。
【0025】
図3に示すように、第1リテーナ36は、第1受入歯溝54を覆うように、本体30に取り付けられている。第1リテーナ36は、本体30の外面48から離れている。また、第2リテーナ38は、第2受入歯溝56を覆うように、本体30に取り付けられている。第2リテーナ38は、本体30の外面48から離れている。
【0026】
ホイール回転軸AX2(図1参照)が延びる方向に関して、第1ボールリターン通路40は、第1受入歯溝54の両端に接続されている。第1ボールリターン通路40は、第1ボールリターン孔60と、第1連絡通路62、64と、を備えている。第1ボールリターン孔60は、本体30の外面48よりもホイール回転軸AX2側で、本体30を貫通している。第1ボールリターン孔60は、ホイール回転軸AX2に沿って延びている。第1ボールリターン孔60が延びる方向は、ホイール回転軸AX2が延びる方向と同一である。第1ボールリターン孔60は、本体30の内部に配置されている。第1ボールリターン孔60は、第1受入歯溝54に直接連通していない。第1ボールリターン孔60は、第1リテーナ36と本体30との取付位置AP1よりも、本体30の外面48側に配置されている。第1ボールリターン孔60の両端は、第1リテーナ36により塞がれていない。第1ボールリターン孔60の断面は、第1ボール44の直径以上の直径を有する円形状を有する。第1連絡通路62、64は、第1リテーナ36と本体30との間に画定されている。第1連絡通路62は、第1受入歯溝54の一端と第1ボールリターン孔60の一端とを接続している。第1連絡通路64は、第1受入歯溝54の他端と第1ボールリターン孔60の他端とを接続している。
【0027】
ホイール回転軸AX2が延びる方向に関して、第2ボールリターン通路42は、第2受入歯溝56の両端に接続されている。第2ボールリターン通路42は、第2ボールリターン孔70と、第2連絡通路72、74と、を備えている。第2ボールリターン孔70は、本体30の外面48よりもホイール回転軸AX2側で、本体30を貫通している。第2ボールリターン孔70は、ホイール回転軸AX2に沿って延びている。第2ボールリターン孔70が延びる方向は、ホイール回転軸AX2が延びる方向と同一である。第2ボールリターン孔70は、本体30の内部に配置されている。第2ボールリターン孔70は、第2受入歯溝56に直接連通していない。第2ボールリターン孔70は、第2リテーナ38と本体30との取付位置AP2よりも、本体30の外面48側に配置されている。第2ボールリターン孔70の両端は、第2リテーナ38により塞がれていない。第2ボールリターン孔70の断面は、第2ボール46の直径以上の直径を有する円形状を有する。第2連絡通路72、74は、第2リテーナ38と本体30との間に画定されている。第2連絡通路72は、第2受入歯溝56の一端と第2ボールリターン孔70の一端とを接続している。第2連絡通路74は、第2受入歯溝56の他端と第2ボールリターン孔70の他端とを接続している。
【0028】
図2に示すように、第1ボールリターン通路40と第2ボールリターン通路42は、本体30の回転方向D1に交互に並んでいる。第1ボールリターン通路40と第2ボールリターン通路42は、連通していない。ホイール回転軸AX2(図1参照)から第1ボールリターン通路40までの距離は、ホイール回転軸AX2から第2ボールリターン通路42までの距離と同一である。
【0029】
図3に示すように、複数の第1ボール44は、第1受入歯溝54と第1ボールリターン通路40の両方に配置されている。図4に示すように、第1受入歯溝54内では、第1ボール44は、ウォーム歯22の第1ウォーム歯側面26と突出歯32の第1突出歯側面50との間に挟まれている。伝達装置10をホイール回転軸AX2(図1参照)に直交する面で切断したとき、第1ボール44の中心CP1とホイール回転軸AX2とを結ぶ第1直線SL1は、第1ウォーム歯側面26と平行である。本実施例では、ウォーム歯22を受け入れている3個の受入歯溝34のそれぞれにおいて、第1直線SL1は、その第1直線SL1に対応する第1ボール44に当接する第1ウォーム歯側面26と平行である。
【0030】
第1突出歯側面50には、第1ボール溝80が形成されている。第1ボール溝80は、ウォーム歯22の第1ウォーム歯側面26と対向している。第1ボール溝80は、第1突出歯側面50から凹んでいる。第1ボール44が第1ウォーム歯側面26と第1突出歯側面50との間に挟まれているとき、第1ボール溝80は、第1ボール44を受け入れており、第1ボール44は、本体30の外面48から離れている。これにより、第1ボール44は、第1受入歯溝54内を移動しているときに外面48と接触し難い。伝達装置10をホイール回転軸AX2(図1参照)に直交する面で切断したとき、第1ボール溝80は、第1ボール44の外面に沿う湾曲形状を有する。図3に示すように、ホイール回転軸AX2に直交する方向に第1ボール溝80を見たとき、第1ボール溝80は、第1突出歯側面50の一端近傍から他端近傍まで(第1ボール44が第1受入歯溝54内を移動する方向に)延びている。また、ホイール回転軸AX2に直交する方向に第1ボール溝80を見たとき、第1ボール溝80は、ウォーム回転軸AX1を中心とした円弧形状を有する。
【0031】
図4に示すように、第1受入歯溝54内では、第1ボール44は、本体30の外面48と第1リテーナ36との間に配置されている。第1リテーナ36は、第1ボール44の外面を部分的に覆うように配置されている。伝達装置10をホイール回転軸AX2に直交する面で切断したとき、第1リテーナ36は、第1ボール44の外面に沿うように湾曲している。第1リテーナ36は、第1突出歯側面50と本体30の外面48のそれぞれから離れている。図4において、第1リテーナ36の一端と第1突出歯側面50との間の最小の間隔は、第1ボール44の直径よりも小さい。また、第1リテーナ36の他端と本体30の外面48との間の最小の間隔は、第1ボール44の直径よりも小さい。これらにより、第1ボール44は、第1リテーナ36により第1受入歯溝54に保持される。第1ボール44が第1ウォーム歯側面26と第1突出歯側面50との間に挟まれているとき、第1ボール44は、第1リテーナ36と離れている。これにより、第1ボール44は、第1受入歯溝54内を移動しているときに第1リテーナ36と接触し難い。
【0032】
図3に示すように、複数の第2ボール46は、第2受入歯溝56と第2ボールリターン通路42の両方に配置されている。図4に示すように、第2受入歯溝56内では、第2ボール46は、ウォーム歯22の第2ウォーム歯側面28と突出歯32の第2突出歯側面52との間に挟まれている。伝達装置10をホイール回転軸AX2(図1参照)に直交する面で切断したとき、第2ボール46の中心CP2とホイール回転軸AX2とを結ぶ第2直線SL2は、第2ウォーム歯側面28と平行である。本実施例では、ウォーム歯22を受け入れている3個の受入歯溝34のそれぞれにおいて、第2直線SL2は、その第2直線SL2に対応する第2ボール46に当接する第2ウォーム歯側面28と平行である。
【0033】
第2突出歯側面52には、第2ボール溝84が形成されている。第2ボール溝84は、ウォーム歯22の第2ウォーム歯側面28と対向している。第2ボール溝84は、第2突出歯側面52から凹んでいる。第2ボール46が第2ウォーム歯側面28と第2突出歯側面52との間に挟まれているとき、第2ボール溝84は、第2ボール46を受け入れており、第2ボール46は、本体30の外面48から離れている。これにより、第2ボール46は、第2受入歯溝56内を移動しているときに外面48と接触し難い。伝達装置10をホイール回転軸AX2(図1参照)に直交する面で切断したとき、第2ボール溝84は、第2ボール46の外面に沿う湾曲形状を有する。図3に示すように、ホイール回転軸AX2に直交する方向に第2ボール溝84を見たとき、第2ボール溝84は、第2突出歯側面52の一端近傍から他端近傍まで(第2ボール46が第2受入歯溝56内を移動する方向に)延びている。また、ホイール回転軸AX2に直交する方向に第2ボール溝84を見たとき、第2ボール溝84は、ウォーム回転軸AX1を中心とした円弧形状を有する。
【0034】
図4に示すように、第2受入歯溝56内では、第2ボール46は、本体30の外面48と第2リテーナ38との間に配置されている。第2リテーナ38は、第2ボール46の外面を部分的に覆うように配置されている。伝達装置10をホイール回転軸AX2に直交する面で切断したとき、第2リテーナ38は、第2ボール46の外面に沿うように湾曲している。第2リテーナ38は、第2突出歯側面52と本体30の外面48のそれぞれから離れている。図4において、第2リテーナ38の一端と第2突出歯側面52との間の最小の間隔は、第2ボール46の直径よりも小さい。また、第2リテーナ38の他端と本体30の外面48との間の最小の間隔は、第2ボール46の直径よりも小さい。これらにより、第2ボール46は、第2リテーナ38により第2受入歯溝56に保持される。第2ボール46が第2ウォーム歯側面28と第2突出歯側面52との間に挟まれているとき、第2ボール46は、第2リテーナ38と離れている。これにより、第2ボール46は、第2受入歯溝56内を移動しているときに第2リテーナ38と接触し難い。
【0035】
次に、ウォーム12が回転したときの可動部材14の動きを説明する。入力シャフト15(図1参照)の回転に伴いウォーム12が回転すると、ウォーム歯22が可動部材14の受入歯溝34内を移動する。ウォーム12がウォーム回転軸AX1の周りを第1方向に回転すると、ウォーム歯22の第1ウォーム歯側面26が第1受入歯溝54内で複数の第1ボール44に加圧方向DP1に加圧され(押し付けられ)、かつ、複数の第1ボール44が突出歯32の第1突出歯側面50に加圧方向DP2に加圧される。このため、第1受入歯溝54内の第1ボール44は、ウォーム12の回転に伴い転がる。なお、加圧方向DP1は、受入歯溝34に受け入れられている3個のウォーム歯22のすべてにおいて、第1ウォーム歯側面26と直交している。第1受入歯溝54内の複数の第1ボール44は、第1ボール溝80に案内されて、ウォーム歯22が移動する方向(回転する方向)と同じ方向に転がって移動する。例えば、ウォーム歯22が第1受入歯溝54の一端から他端に向かって回転するときに、複数の第1ボール44は、第1受入歯溝54の一端から他端に向かって転がって移動する。その後、第1ボール44は、第1受入歯溝54から第1連絡通路64(図3参照)に移動する。これにより、図3に示すように、複数の第1ボール44は、第1連絡通路64、第1ボールリターン孔60、第1連絡通路62、第1受入歯溝54の順番に、第1ボールリターン通路40と第1受入歯溝54を転がって循環する。
【0036】
また、図4に示すように、第2受入歯溝56内の複数の第2ボール46は、第2ボール溝84に案内されて、ウォーム歯22が移動する方向(回転する方向)と同じ方向に転がって移動する。第2ボール46の移動方向は、第1ボール44の移動方向と同一である。その後、第2ボール46は、第2受入歯溝56から第2連絡通路74(図3参照)に移動する。これにより、図3に示すように、複数の第2ボール46は、第2連絡通路74、第2ボールリターン孔70、第2連絡通路72、第2受入歯溝56の順番に、第2ボールリターン通路42と第2受入歯溝56を転がって循環する。
【0037】
図4に示すように、ウォーム12がウォーム回転軸AX1の周りを第1方向と反対の第2方向に回転すると、ウォーム歯22の第2ウォーム歯側面28が第2受入歯溝56内で複数の第2ボール46に加圧方向DP3に加圧され、かつ、複数の第2ボール46が突出歯32の第2突出歯側面52に加圧方向DP4に加圧される。このため、第2受入歯溝56内の第2ボール46は、ウォーム12の回転に伴い転がる。なお、加圧方向DP3は、受入歯溝34に受け入れられている3個のウォーム歯22のすべてにおいて、第2ウォーム歯側面28と直交している。また、加圧方向DP3は、加圧方向DP1と反対の方向である。第2受入歯溝56内の複数の第2ボール46は、第2ボール溝84に案内されて、ウォーム歯22が移動する方向(回転する方向)と同じ方向に転がって移動する。例えば、ウォーム歯22が第2受入歯溝56の他端から一端に向かって回転するときに、複数の第2ボール46は、第2受入歯溝56の他端から一端に向かって転がって移動する。その後、第2ボール46は、第2受入歯溝56から第2連絡通路72(図3参照)に移動する。これにより、図3に示すように、複数の第2ボール46は、第2連絡通路72、第2ボールリターン孔70、第2連絡通路74、第2受入歯溝56の順番に、第2ボールリターン通路42と第2受入歯溝56を循環する。
【0038】
また、図4に示すように、第1受入歯溝54内の複数の第1ボール44は、第1ボール溝80に案内されて、ウォーム歯22が移動する方向(回転する方向)と同じ方向に転がって移動する。第1ボール44の移動方向は、第2ボール46の移動方向と同一である。その後、第1ボール44は、第1受入歯溝54から第1連絡通路62(図3参照)に移動する。これにより、図3に示すように、複数の第1ボール44は、第1連絡通路62、第1ボールリターン孔60、第1連絡通路64、第1受入歯溝54の順番に、第1ボールリターン通路40と第1受入歯溝54を転がって循環する。
【0039】
図1に示すように、複数の第1ボール44が第1ボールリターン通路40と第1受入歯溝54を循環し、複数の第2ボール46が第2ボールリターン通路42と第2受入歯溝56を循環しながら、可動部材14は、出力シャフト16とともに、ウォーム12の回転数よりも小さい回転数で回転する。
【0040】
本実施例の伝達装置10では、ウォーム12の回転に伴い可動部材14を回転させることができるとともに、可動部材14の回転に伴いウォーム12を回転させることもできる。可動部材14の回転に伴いウォーム12を回転させるとき、ウォーム12は、入力シャフト15とともに、可動部材14の回転数よりも大きい回転数で回転する。このとき、伝達装置10は、ウォーム増速機として機能する。
【0041】
(効果)
本実施例の伝達装置10は、ウォーム回転軸AX1周りを螺旋状に延びるウォーム歯22を備えており、ウォーム回転軸AX1を中心にして回転可能であるウォーム12と、ウォーム歯22と噛み合い可能であり、ウォーム12の回転に連動して動く可動部材14と、を備えている。可動部材14は、本体30と、ウォーム12と対向する本体30の外面48(対向面の一例)上で、可動部材14が動く回転方向D1(可動方向の一例)に等間隔に並んで配置されている複数の突出歯32と、隣接する2個の突出歯32の間に配置されており、ウォーム歯22を受け入れる複数の受入歯溝34であって、少なくとも2個の受入歯溝34がウォーム歯22を受け入れており、受入歯溝34がウォーム歯22を受け入れているとき、隣接する2個の突出歯32のうちの一方の突出歯32とウォーム歯22との間に第1受入歯溝54が画定されるとともに、隣接する2個の突出歯32のうちの他方の突出歯32とウォーム歯22との間に第2受入歯溝56が画定される、複数の受入歯溝34と、複数の第1ボールリターン通路40であって、第1ボールリターン通路40が第1受入歯溝54の両端に接続されている、複数の第1ボールリターン通路40と、複数の第2ボールリターン通路42であって、第2ボールリターン通路42が第2受入歯溝56の両端に接続されている、複数の第2ボールリターン通路42と、第1受入歯溝54内で、一方の突出歯32とウォーム歯22との間に挟まれており、第1受入歯溝54と第1ボールリターン通路40を循環する複数の第1ボール44と、第2受入歯溝56内で、他方の突出歯32とウォーム歯22との間に挟まれており、第2受入歯溝56と第2ボールリターン通路42を循環する複数の第2ボール46と、を備えている。
【0042】
上記の構成によれば、ウォーム12のウォーム歯22が複数の受入歯溝34に受け入れられているとき、いずれの受入歯溝34内においても、複数の第1ボール44が一方の突出歯32とウォーム歯22との間に挟まれており、複数の第2ボール46が他方の突出歯32とウォーム歯22との間に挟まれている。このため、ウォーム12が回転したとき、第1ボール44が第1受入歯溝54内を転がって移動し、第2ボール46が第2受入歯溝56内を転がって移動するとともに、第1ボール44と第2ボール46のそれぞれを介してウォーム12から可動部材14に力が伝達される。これにより、ウォーム12の回転を第1ボール44と第2ボール46を介して可動部材14に伝達することができる。
【0043】
また、突出歯32は、受入歯溝34がウォーム歯22を受け入れているときにウォーム歯22との間で第1ボール44を挟む第1突出歯側面50と、受入歯溝34がウォーム歯22を受け入れているときにウォーム歯22との間で第2ボール46を挟む第2突出歯側面52と、を備えている。第1突出歯側面50には、複数の第1ボール44が第1受入歯溝54内を移動する方向に延びており、複数の第1ボール44を受け入れる第1ボール溝80が形成されている。第2突出歯側面52には、複数の第2ボール46が第2受入歯溝56内を移動する方向に延びており、複数の第2ボール46を受け入れる第2ボール溝84が形成されている。
【0044】
上記の構成によれば、複数の第1ボール44は第1受入歯溝54内をスムーズに転がって移動することができ、複数の第2ボール46は第2受入歯溝56内をスムーズに転がって移動することができる。
【0045】
また、可動部材14は、ウォーム12の回転に連動してホイール回転軸AX2を中心にして回転するウォームホイールである。ウォーム歯22は、第1突出歯側面50との間で第1ボール44を挟む第1ウォーム歯側面26と、第2突出歯側面52との間で第2ボール46を挟む第2ウォーム歯側面28と、を備えている。伝達装置10をホイール回転軸AX2に直交する面で切断したとき、第1ウォーム歯側面26は、第1ボール44の中心CP1とホイール回転軸AX2とを結ぶ第1直線SL1と平行であり、第2ウォーム歯側面28は、第2ボール46の中心CP2とホイール回転軸AX2とを結ぶ第2直線SL2と平行である。
【0046】
上記の構成によれば、ウォームホイールが回転しても、第1ボール44が第1突出歯側面50と第1ウォーム歯側面26との間に挟まれた状態を維持することができ、第2ボール46が第2突出歯側面52と第2ウォーム歯側面28との間に挟まれた状態を維持することができる。これにより、ウォーム12の回転を第1ボール44と第2ボール46を介して可動部材14により伝達することができる。
【0047】
また、可動部材14は、第1受入歯溝54内の複数の第1ボール44に対して、本体30の外面48と反対側に配置されており、複数の第1ボール44を第1受入歯溝54内に保持する第1リテーナ36と、第2受入歯溝56内の複数の第2ボール46に対して、本体30の外面48と反対側に配置されており、複数の第2ボール46を第2受入歯溝56内に保持する第2リテーナ38と、をさらに備えている。
【0048】
上記の構成によれば、可動部材14の動きに伴いウォーム歯22が受入歯溝34に受け入れられなくなったときでも、第1ボール44が第1受入歯溝54から抜け出ることを抑制することができ、第2ボール46が第2受入歯溝56から抜け出ることを抑制することができる。
【0049】
また、第1ボールリターン通路40の少なくとも一部は、本体30の内部に配置されている。第2ボールリターン通路42の少なくとも一部は、本体30の内部に配置されている。
【0050】
上記の構成によれば、第1ボールリターン通路40と第2ボールリターン通路42が本体30の外部に配置される構成と比較して、可動部材14が大型化することを抑制することができる。
【0051】
(第2実施例)
第2実施例では、第1実施例と異なる点のみを説明する。図5に示すように、伝達装置10は、ウォームラック型伝達装置である。ウォーム12の本体20は、円柱形状を有する。ウォーム歯22は、本体20の外面24から径方向外側に向かって突出している。図5では、ウォーム歯22が螺旋状に延びる様子が、一点鎖線により図示されている。ウォーム歯22では、第1ウォーム歯側面26は、第2ウォーム歯側面28と平行である。
【0052】
可動部材14は、ウォームラックである。ウォームラックは、第1実施例のウォームホイールの直径を大きくすることにより実現される構成であるといえる。可動部材14は、ウォーム12のウォーム回転軸AX1に沿って延びている。ウォーム12が回転すると、可動部材14は、ウォーム12のウォーム回転軸AX1に沿って、例えば移動方向D2に移動する。
【0053】
外面48は、平面形状を有する。本体30の外面48は、本体20の外面24と対向している。図6に示すように、可動部材14の本体30は、固定台110に挟まれている。本体30には、第1ガイド溝112と循環通路113が形成されている。第1ガイド溝112は、ウォーム12のウォーム回転軸AX1に沿って延びている。第1ガイド溝112は、固定台110の側面に形成されており、固定台110の側面は、本体30と対向している。循環通路113は、固定台110の内部に配置されている。図示省略されているが、循環通路113は、第1ガイド溝112の両端に接続されている。
【0054】
また、固定台110は、第1ガイド溝112に対向する位置に位置する第2ガイド溝114を有する。第2ガイド溝114は、ウォーム回転軸AX1に沿って延びている。第1ガイド溝112と第2ガイド溝114との間には、複数のガイドボール116が配置されている。複数のガイドボール116は、第1ガイド溝112と第2ガイド溝114との間を転がって移動する。また、複数のガイドボール116は、第1ガイド溝112と循環通路113を転がって循環する。これらにより、本体30は、固定台110に摺動可能に取り付けられている。
【0055】
図5に示すように、複数の突出歯32は、移動方向D2に等間隔に配置されている。また、複数の受入歯溝34も、移動方向D2に等間隔に配置されている。
【0056】
突出歯32では、第1突出歯側面50は、第2突出歯側面52と平行である。また、第1突出歯側面50は、第1ウォーム歯側面26と平行である。第2突出歯側面52は、第2ウォーム歯側面28と平行である。
【0057】
図6および図7に示すように、第1ボール溝80は、可動部材14の第1突出歯側面50に形成されている。ウォーム12が回転したとき、第1ボール溝80は、第1受入歯溝54内の第1ボール44を、ウォーム歯22が移動する方向と同じ方向に案内する。例えば、ウォーム歯22が第1受入歯溝54の一端から他端に向かって回転するときに、複数の第1ボール44は、第1ボール溝80に案内されて、第1受入歯溝54の一端から他端に向かって移動する。
【0058】
第2ボール溝84は、可動部材14の第2突出歯側面52に形成されている。ウォーム12が回転したとき、第2ボール溝84は、第2受入歯溝56内の第2ボール46を、ウォーム歯22が移動する方向と同じ方向に案内する。例えば、ウォーム歯22が第2受入歯溝56の一端から他端に向かって回転するときに、複数の第2ボール46は、第2ボール溝84に案内されて、第2受入歯溝56の一端から他端に向かって移動する。第2受入歯溝56内の複数の第2ボール46は、第1受入歯溝54内の複数の第1ボール44の移動方向と同じ方向に移動する。
【0059】
(第3実施例)
第3実施例では、第1実施例と異なる点のみを説明する。第2実施例では、ウォーム2の形状が第1実施例のウォーム12の形状と異なる。図8に示すように、本体20は、略円柱形状を有する。ウォーム歯22は、本体20の外面24から突出している。外面24からのウォーム歯22の突出量は、本体20の中心位置CL1から本体20の両端に向かうにつれて徐々に大きくなる。
【0060】
本実施例では、3個の受入歯溝34のそれぞれが、ウォーム歯22を受け入れる。このため、3個の受入歯溝34のそれぞれにおいて、第1ボール44が、ウォーム歯22の第1ウォーム歯側面26と突出歯32の第1突出歯側面50との間に挟まれており、第2ボール46が、ウォーム歯22の第2ウォーム歯側面28と突出歯32の第2突出歯側面52との間に挟まれている。伝達装置10をホイール回転軸AX2(図1参照)に直交する面で切断したとき、各受入歯溝34内の第1ボール44の中心CP1を結ぶ第3直線SL3は、各受入歯溝34内の第2ボール46の中心CP2を結ぶ第4直線SL4と一致する。また、第3直線SL3と第4直線SL4のそれぞれは、ウォーム回転軸AX1と平行である。
【0061】
図9に示すように、第1リテーナ36は、第1スリット36aを有する。複数の第1ボール44は、第1スリット36aに受け入れられた状態で、第1リテーナ36と第1突出歯側面50との間に配置されている。このため、受入歯溝34がウォーム歯22を受け入れないときでも、第1ボール44が第1受入歯溝54から抜け出ることが抑制される。なお、図9では、図面を見やすくするために、ウォーム歯22の高さと突出歯32の高さが図8中で図示された各構成の高さよりも短く図示されている。
【0062】
第2リテーナ38は、第2スリット38aを有する。複数の第2ボール46は、第2スリット38aに受け入れられた状態で、第2リテーナ38と第2突出歯側面52との間に配置されている。このため、受入歯溝34がウォーム歯22を受け入れないときでも、第2ボール46が第2受入歯溝56から抜け出ることが抑制される。
【0063】
第3実施例では、第1突出歯側面50には、第1実施例の第1ボール溝80が形成されていない。第3実施例では、ウォーム12の第1ウォーム歯側面26に、第1ボール溝180が形成されている。第1ボール溝180は、第1突出歯側面50と対向している。第1ボール溝180は、第1ウォーム歯側面26から凹んでいる。第1ボール溝180は、螺旋状に延びている。伝達装置10をホイール回転軸AX2(図1参照)に直交する面で切断したとき、第1ボール溝180は、第1ボール44の外面に沿う湾曲形状を有する。第1ボール溝180は、第1ボール44を受け入れており、第1ボール44は、本体30の外面48と本体20の外面24のそれぞれから離れている。第1ボール溝180と本体20の外面24との間の距離は、中心位置CL1から本体20の両端に向かうにつれて、長くなる。
【0064】
また、第2突出歯側面52には、第1実施例の第2ボール溝84が形成されていない。第3実施例では、ウォーム12の第2ウォーム歯側面28に、第2ボール溝184が形成されている。第2ボール溝184は、第2突出歯側面52と対向している。第2ボール溝184は、第2ウォーム歯側面28から凹んでいる。第2ボール溝184は、螺旋状に延びている。伝達装置10をホイール回転軸AX2(図1参照)に直交する面で切断したとき、第2ボール溝184は、第2ボール46の外面に沿う湾曲形状を有する。第2ボール溝184は、第2ボール46を受け入れており、第2ボール46は、本体30の外面48と本体20の外面24のそれぞれから離れている。第2ボール溝184と本体20の外面24との間の距離は、中心位置CL1から本体20の両端に向かうにつれて、長くなる。
【0065】
(第4実施例)
図10に示すように、第4実施例では、第1ボール溝180は、ウォーム12の第1ウォーム歯側面26に形成されている。第2ボール溝184は、ウォーム12の第2ウォーム歯側面28に形成されている。
【0066】
図11に示すように、第1ボール溝180の深さDG1は、ウォーム12の本体20の中心位置CL1で最大である。ここで、深さDG1は、第1ウォーム歯側面26に直交する方向に測定される深さである。また、第1ボール溝180の幅は、本体20の中心位置CL1で最大である。ここで、第1ボール溝180の幅は、ウォーム歯22の突出方向(図11では紙面下方向)に測定される幅である。図12に示すように、第1ボール溝180の深さDG1は、本体20の両端で最小である。また、第1ボール溝180の幅は、本体20の両端で最小である。第1ボール溝180の深さDG1は、本体20の中心位置CL1から本体20の両端に向かうにつれて徐々に浅くなる。第1ボール溝180の幅は、本体20の中心位置CL1から本体20の両端に向かうにつれて徐々に小さくなる。
【0067】
図11および図12に示すように、第1ボール44は、第1ボール溝180に受け入れられている。第1ウォーム歯側面26に直交する方向に関して、第1ボール44と第1ウォーム歯側面26との接触位置300は、本体20の中心位置CL1から本体20の両端に向かうにつれて、第1ボール44の中心CP1から徐々に離れる。このため、第1ウォーム歯側面26に直交する方向に関して、接触位置300と中心CP1との間の距離L1は、本体20の中心位置CL1から本体20の両端に向かうにつれて徐々に大きくなる。よって、第1ウォーム歯側面26に直交する方向に関して、距離L1は、本体20の中心位置CL1で最小であり、本体20の両端で最大である。
【0068】
図11に示すように、第1ウォーム歯側面26に直交する方向に関して、第1ボール44が第1ボール溝180に入り込む深さDB1(接触位置300と第1ボール溝180内に配置される第1ボール44の表面との最長距離)は、本体20の中心位置CL1で最大である。深さDB1は、第1ボール44の半径から距離L1を減算した値と等しい。図12に示すように、第1ウォーム歯側面26に直交する方向に関して、深さDB1は、本体20の両端で最小である。図13に示すように、深さDB1は、本体20の中心位置CL1から本体20の両端に向かうにつれて徐々に浅くなる。
【0069】
図11に示すように、第2ボール溝184の深さDG2は、ウォーム12の本体20の中心位置CL1で最大である。ここで、深さDG2は、第2ウォーム歯側面28に直交する方向に測定される深さである。また、第2ボール溝184の幅は、本体20の中心位置CL1で最大である。ここで、第2ボール溝184の幅は、ウォーム歯22の突出方向(図11では紙面下方向)に測定される幅である。図12に示すように、第2ボール溝184の深さDG2は、本体20の両端で最小である。第2ボール溝184の幅は、本体20の両端で最小である。第2ボール溝184の深さDG2は、本体20の中心位置CL1から本体20の両端に向かうにつれて徐々に浅くなる。第2ボール溝184の幅は、本体20の中心位置CL1から本体20の両端に向かうにつれて徐々に小さくなる。
【0070】
図11および図12に示すように、第2ボール46は、第2ボール溝184に受け入れられている。第2ウォーム歯側面28に直交する方向に関して、第2ボール46と第2ウォーム歯側面28との接触位置310は、本体20の中心位置CL1から本体20の両端に向かうにつれて、第2ボール46の中心CP2から徐々に離れる。このため、第2ウォーム歯側面28に直交する方向に関して、接触位置310と中心CP2との間の距離L2は、本体20の中心位置CL1から本体20の両端に向かうにつれて徐々に大きくなる。よって、第2ウォーム歯側面28に直交する方向に関して、距離L2は、本体20の中心位置CL1で最小であり、本体20の両端で最大である。
【0071】
図11に示すように、第2ウォーム歯側面28に直交する方向に関して、第2ボール46が第2ボール溝184に入り込む深さDB2(接触位置310と第2ボール溝184内に配置される第2ボール46の表面との最長距離)は、本体20の中心位置CL1で最大である。深さDB2は、第2ボール46の半径から距離L2を減算した値と等しい。図12に示すように、第2ウォーム歯側面28に直交する方向に関して、深さDB2は、本体20の両端で最小である。図13に示すように、深さDB2は、本体20の中心位置CL1から本体20の両端に向かうにつれて徐々に浅くなる。
【0072】
図10に示すように、ウォーム12がウォーム回転軸AX1(図1参照)を中心にして回転すると、ウォーム歯22が可動部材14の受入歯溝34内を移動する。これにより、第1受入歯溝54内の第1ボール44は、ウォーム12の回転に伴い転がる。また、第2受入歯溝56内の第2ボール46は、ウォーム12の回転に伴い転がる。
【0073】
ここで、深さDB1、DB2が本体20の中心位置CL1と本体20の両端との間で同一である比較例では、距離L1、L2は、中心位置CL1と本体20の両端との間で同一である。本体20の直径が本体20の中心位置CL1から本体20の両端に向かうにつれて増加するため、第1直線SL1周りの第1ボール44の回転量と第2直線SL2周りの第2ボール46の回転量は、中心位置CL1から本体20の両端に向かうにつれて増加する。
【0074】
これに対して本実施例では、深さDB1、CB2が本体20の中心位置CL1から本体20の両端に向かうにつれて浅くなるため、距離L1、L2は、中心位置CL1から本体20の両端に向かうにつれて大きくなる。これにより、本体20の直径が本体20の中心位置CL1から本体20の両端に向かうにつれて増加する構成において、中心位置CLから本体20の両端に亘って、第1直線SL1周りの第1ボール44の回転量が同一となる。例えば、中心位置CL1での第1直線SL1周りの第1ボール44の回転量と、本体20の両端での第1直線SL1周りの第1ボール44の回転量との差がゼロになり、上記の比較例での回転量の差よりも小さくなる。また、中心位置CL1から本体20の両端に亘って、第2直線SL2周りの第2ボール46の回転量が同一となる。例えば、中心位置CL1での第2直線SL2周りの第2ボール46の回転量と、本体20の両端での第2直線SL2周りの第2ボール46の回転量との差がゼロになり、上記の比較例での回転量の差よりも小さくなる。これにより、第1ボール44と第2ボール46を介して、バックラッシュゼロで、力がウォーム12から可動部材14に滑らかに伝達される。また、可動部材14が回転する構成においても、バックラッシュゼロで、力が可動部材14からウォーム12に滑らかに伝達される。
【0075】
(効果)
本実施例では、突出歯32は、受入歯溝34がウォーム歯22を受け入れているときにウォーム歯22との間で第1ボール44を挟む第1突出歯側面50と、受入歯溝34がウォーム歯22を受け入れているときにウォーム歯22との間で第2ボール46を挟む第2突出歯側面52と、を備えている。ウォーム歯22は、第1突出歯側面50との間で第1ボール44を挟む第1ウォーム歯側面26と、第2突出歯側面52との間で第2ボール46を挟む第2ウォーム歯側面28と、を備えている。第1ウォーム歯側面26には、複数の第1ボール44が第1受入歯溝54内を移動する方向に延びており、複数の第1ボール44を受け入れる第1ボール溝180が形成されている。第2ウォーム歯側面28には、複数の第2ボール46が第2受入歯溝56内を移動する方向に延びており、複数の第2ボール46を受け入れる第2ボール溝184が形成されている。ウォーム12の直径は、ウォーム回転軸AX1が延びる方向におけるウォーム12の中心位置CL1からウォーム回転軸AX1が延びる方向におけるウォーム12の両端に向かうにつれて増加する。第1ボール44が第1ボール溝180に入り込む深さDB1は、ウォーム12の中心位置CL1からウォーム12の両端に向かうにつれて浅くなる。第2ボール46が第2ボール溝184に入り込む深さDB2は、ウォーム12の中心位置CL1からウォーム12の両端に向かうにつれて浅くなる。
【0076】
上記の構成によれば、第1ボール44が第1ボール溝180に入り込む深さDB1と第2ボール46が第2ボール溝184に入り込む深さDB2がウォーム12の中心位置CL1からウォーム12の両端に向かうにつれて浅くなる。このため、第1ウォーム歯側面26に直交する方向において、第1ボール44と第1ウォーム歯側面26との接触位置300は、ウォーム12の中心位置CL1からウォーム12の両端に向かうにつれて第1ボール44の中心CP1から離れる。これにより、ウォーム12の直径がウォーム12の中心位置CL1からウォーム12の両端に向かうにつれて増加する構成において、ウォームの中心位置CL1からウォーム12の両端に亘って、第1ボール44の回転量が同一となる。例えば、ウォーム12の中心位置CL1での第1ボール44の回転量と、ウォーム12の両端での第1ボール44の回転量との差がゼロになる。また、第2ウォーム歯側面28に直交する方向において、第2ボール46と第2ウォーム歯側面28との接触位置310は、ウォーム12の中心位置CL1からウォーム12の両端に向かうにつれて第2ボール46の中心CP2から離れる。これにより、ウォーム12の直径がウォーム12の中心位置CL1からウォーム12の両端に向かうにつれて増加する構成において、ウォーム12の中心位置CL1からウォーム12の両端に亘って、第2ボール46の回転量が同一となる。例えば、ウォーム12の中心位置CL1での第2ボール46の回転量と、ウォーム12の両端での第2ボール46の回転量との差がゼロになる。よって、第1ボール44と第2ボール46を介してウォーム12と可動部材14をバックラッシュゼロで、滑らかに噛み合せることができる。
【0077】
(対応関係)
第1ボール44は、第1転動体の一例である。第2ボール46は、第2転動体の一例である。第1ボール溝80、180は、第1転動体溝の一例である。第2ボール溝84、184は、第2転動体溝の一例である。
【0078】
(変形例)
一実施形態において、伝達装置10は、ナットランナ、パイプベンダ、回転アクチュエータであってもよい。
【0079】
一実施形態において、ウォーム12は、バネ状に撓むように構成されていてもよい。この場合、ウォーム12は、可動部材14の本体30の外面48に沿って撓んでいてもよい。
【0080】
一実施形態において、第1ボールリターン通路40の第1連絡通路62は、本体30を径方向に貫通することにより、第1受入歯溝54の一端と第1ボールリターン孔60の一端とを接続していてもよい。また、第1連絡通路64は、本体30を径方向に貫通することにより、第1受入歯溝54の他端と第1ボールリターン孔60の他端とを接続していてもよい。このとき、本体30に形成される貫通孔の幅は、第1ボール44の直径よりも大きい。また、第2ボールリターン通路42の第2連絡通路72は、本体30を径方向に貫通することにより、第2受入歯溝56の一端と第2ボールリターン孔70の一端とを接続していてもよい。また、第2連絡通路74は、本体30を径方向に貫通することにより、第2受入歯溝56の他端と第2ボールリターン孔70の他端とを接続していてもよい。このとき、本体30に形成される貫通孔の幅は、第2ボール46の直径よりも大きい。
【0081】
実施例では3個の受入歯溝34のそれぞれがウォーム歯22を受け入れているが、一実施形態において、2個または4個以上の受入歯溝34のそれぞれがウォーム歯22を受け入れていてもよい。
【0082】
一実施形態において、第1ボールの形状は、球形状に限られず、例えば、2つの円錐の底面同士が接続された立体形状、2つの円錐台の底面同士が接続された立体形状であってもよい。
【0083】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0084】
10 :伝達装置
12 :ウォーム
14 :可動部材
22 :ウォーム歯
26 :第1ウォーム歯側面
28 :第2ウォーム歯側面
30 :本体
32 :突出歯
34 :受入歯溝
36 :第1リテーナ
38 :第2リテーナ
40 :第1ボールリターン通路
42 :第2ボールリターン通路
44 :第1ボール
46 :第2ボール
48 :外面
50 :第1突出歯側面
52 :第2突出歯側面
54 :第1受入歯溝
56 :第2受入歯溝
80 :第1ボール溝
84 :第2ボール溝
180 :第1ボール溝
184 :第2ボール溝
300、310:接触位置
AP1、AP2:取付位置
AX1 :ウォーム回転軸
AX2 :ホイール回転軸
CL1 :中心位置
CP1、CP2:中心
D1 :回転方向
D2 :移動方向
DB1、DB2:深さ
DP1、DP2、DP3、DP4:加圧方向
L1、L2:距離
SL1 :第1直線
SL2 :第2直線
SL3 :第3直線
SL4 :第4直線
【要約】      (修正有)
【課題】ウォームの歯が可動部材の複数の歯と噛み合っている状態において、ウォームの回転をボールを介して可動部材に伝達する。
【解決手段】伝達装置の可動部材は、複数の突出歯と、隣接する2個の突出歯の間に配置されている複数の受入歯溝であって、少なくとも2個の受入歯溝が伝達装置のウォームのウォーム歯を受け入れ、ウォーム歯を受け入れているとき、第1受入歯溝と第2受入歯溝が画定される複数の受入歯溝と、各第1受入歯溝の両端に接続されている複数の第1ボールリターン通路と、各第2受入歯溝の両端に接続されている複数の第2ボールリターン通路と、第1受入歯溝内で一方の突出歯とウォーム歯との間に挟まれており、第1受入歯溝と第1ボールリターン通路を循環する複数の第1ボールと、第2受入歯溝内で他方の突出歯とウォーム歯との間に挟まれており、第2受入歯溝と第2ボールリターン通路を循環する複数の第2ボールと、を備えている。
【選択図】図2
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13