IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 織井 雅史の特許一覧

<>
  • 特許-放電器 図1
  • 特許-放電器 図2
  • 特許-放電器 図3
  • 特許-放電器 図4
  • 特許-放電器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】放電器
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/00 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
H04R1/00 318Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023151871
(22)【出願日】2023-09-20
【審査請求日】2023-09-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523358851
【氏名又は名称】織井 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】織井 雅史
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特許第7261966(JP,B2)
【文献】特許第7252687(JP,B2)
【文献】登録実用新案第3200305(JP,U)
【文献】特開2022-002195(JP,A)
【文献】特開2020-038840(JP,A)
【文献】特開2015-088299(JP,A)
【文献】特開2014-107092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00
H05F 3/00- 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ回路を含む電気回路のグランドにつける放電器であって、
一方に、グランドと接続される端子部を持ち、
他方に、少なくとも三以上の導体からなる放出部を持ち、
該端子部と該放出部は、中間部を介して、電気的に接続され、
該中間部は、絶縁体で覆われており、
該放出部は、放射状に広がる突出部を持つことを特徴とする放電器。
【請求項2】
前記放出部は、少なくとも三以上の円盤状導体で構成され、該円盤状導体同士は、中心で接続され、該円盤状導体同士は、スペーサで一定の間隔で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の放電器。
【請求項3】
前記中間部は、中空の導体で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の放電器。
【請求項4】
前記円盤状導体少なくとも両端の2枚は、歯車状の前記突出部を持つことを特徴とする請求項2に記載の放電器。
【請求項5】
前記放出部は、少なくとも三以上の線状導体の束の一方がまとめられ、前記中間部と接続するブラシ部であり、
束の他方の端部は、前記突出部であり、束の一方に対して、放射状に広がっていることを特徴とする請求項1に記載の放電器。
【請求項6】
前記線状導体は、複数の太さのものから成り、
太さごとに、材質又はコーティングの状態が異なることを特徴とする請求項5に記載の放電器。
【請求項7】
前記線状導体は、コーティング無しの高純度無酸素銅線で構成された第1の線状導体と、
第1の導体よりも細く、シルバーコーティングされた高純度無酸素銅線で構成された第2の線状導体とから成ることを特徴とする請求項6に記載の放電器。
【請求項8】
前記中間部は、同軸ケーブルで構成され、前記端子部に、該同軸ケーブルの内部導体と外部導体が接続され、
前記ブラシ部に、該同軸ケーブルの内部導体が接続され、
前記ブラシ部は、該内部導体と、一方が撚線状で他方が放射状の線状導体群と、から成り、
該線状導体群は複数あり、
前記内部導体と該線状導体群は、リングスリーブでカシメられていることを特徴とする請求項5に記載の放電器。
【請求項9】
前記グランドと前記放電器の間には、仮想アースが接続されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の放電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ回路を含む電子機器のグランドに取り付ける放電器に関し、詳しくは、放電器により、音声の品質を性能向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オーディオ回路について、音質を向上させるためにグランドを強化したり、仮想アースを用いることがなされていた。
しかし、限られた筐体のスペースの中で、グランドを強化するにも限度がある。また、仮想アースによる改善では、高周波成分のノイズに起因する音質劣化について十分対応できないことも多かった。
そこで、グランド周りに関連する対応で、高周波成分のノイズに起因する音質劣化を軽減する技術が求められていた。
【0003】
このような問題に対して、従来からも様々な技術が提案されている。例えば、仮想アースの材料を回線する技術(特許文献1参照)が提案され、公知技術となっている。より詳しくは、仮想アース用材料について、アラミド繊維、アルミノシリケート、カルシウムシリケート、非晶質シリカ、活性炭、粉末ゴムを含む混合物からなり、アルミノシリケートとして合成ゼオライトを含むものである。
しかしながら、高周波成分のノイズに起因する音質の改善については記載されておらず、前記問題を解決していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第7252687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、オーディオ機器において、ノイズに起因する音質劣化を改善するという問題点に鑑み、機器のグランド、又は仮想アースのグランドに放電器を取り付けることによって、機器内のノイズを取り除くことで課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、一方に、グランドと接続される端子部を持ち、他方に、少なくとも三以上の線状導体の束の一方がまとめられたブラシ部を持ち、端子部とブラシ部は、中間部を介して、電気的に接続され、中間部は、絶縁体で覆われており、ブラシ部は、放射状に広がっている手段を採る。
【0007】
また、本発明は、線状導体が、複数の太さのものから成り、太さごとに、材質又はコーティングの状態が異なる手段を採る。
【0008】
また、本発明は、線状導体が、コーティングされていない高純度無酸素銅線で構成された第1の線状導体と、第1の導体よりも細く、シルバーコーティングされた高純度無酸素銅線で構成された第2の線状導体とから成る手段を採る。
【0009】
また、本発明は、中間部が、同軸ケーブルで構成され、端子部に、同軸ケーブルの内部導体と外部導体が接続され、ブラシ部に、同軸ケーブルの内部導体が接続され、ブラシ部は、内部導体と、一方が撚線状で他方が放射状の線状導体群と、から成り、線状導体群は複数あり、内部導体と線状導体群は、リングスリーブでカシメられている手段を採る。
【0010】
また、本発明は、グランドと放電器の間には、仮想アースが接続されている手段を採る。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る放電器によれば、オーディオを含む機器のグランドに、放電器を接続することで、機器内のノイズが除去され、音質改善に奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る放電器の実施形態を示すシステム図である。
図2】本発明に係る放電器の実施形態を示す放電器の全体図である。
図3】本発明に係る放電器の実施形態を示す放電器の断面模式図である。
図4】本発明に係る放電器の実施形態を示す放電器の組立工程を示す図である。
図5】本発明に係る放電器の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明にかかる放電器は、機器内のノイズを除去することで音質を向上させることができることを最大の特徴とする。以下、実施例を図面に基づいて説明する。
なお、本実施例で示される放電器の全体形状及び各部の形状は、下記に述べる実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、即ち、同一の作用効果を発揮できる形状及び寸法の範囲内で変更することができるものである。
【0014】
図1から図4に従って、本発明を説明する。
図1は、本発明に係る放電器の実施形態を示すシステム図である。
図2は、本発明に係る放電器の実施形態を示す放電器の全体図であり、(a)が単一の線状導体を用いた場合であり、(b)が、複数の種類の線状導体を用いた場合であり、(c)が、中間部に同軸ケーブルを用いた場合である。図3は、本発明に係る放電器の内、同軸ケーブルを用いた放電器の断面模式図である。
図4は、本発明に係る放電器の実施形態を示す放電器の組立工程を示す図であり、(a)から(c)が組立工程であり、(d)が完成図である。
【0015】
放電器1は、グランドに接続し、グランドに含まれる不要なノイズ成分を放電の形で空間に発散するものである。
放電器1は、端子部10と中間部20とブラシ部30とから構成されている。
より詳しくは、オーディオ回路を含む電気回路のグランドにつける放電器であって、一方に、グランドと接続される端子部を持ち、他方に、複数の導体からなる放出部を持ち、端子部と放出部は、中間部を介して、電気的に接続され、
中間部は、絶縁体で覆われており、放出部は、放射状に広がる突出部を持つものである。
【0016】
端子部10は、放電器1を、グランドに接続する部分である。具体的には、オーディオ機器21のフレームグランド62のネジ部分や、仮想アース70の放電器側接続部72に接続する部分である。
形状は、電極用端子と称するものであれば、形状を問わないが、一般的に、U字状、リング状が考えられる。本実施例では、U字状としている。相手方の固定部を緩めるのみで、接続可能であり、着脱が容易であるからである。
フレームグランド62のネジ部分や仮想アース70の放電器側接続部72が、雄ネジ、雌ネジから成る場合、両ネジで挟みやすく、脱落しにくい形状が適当である。
端子部10は、圧着部11を備える。リング等の形状であり、電線等を挟み込み、圧着工具等で圧着することで、端子部10と電線等を一体として、電気的に導通させる部分である。
圧着部11は、中間部20の電線21の一方を固定し、電線21と端子部10とを導通させる。
本実施例では、圧着による接続を行ったが、半田付け、溶接等であっても良い。
【0017】
中間部20は、端子部10とブラシ部30を繋ぐ部分である。端子部10とブラシ部30を電線21で電気的に接続すると共に、周囲を絶縁部50で覆う構造である。絶縁部50の端部は、ホットボンド52で隙間なく塞がれている。ホットボンド52で隙間を塞ぐので、中間部20は、絶縁物で完全に覆われる。
中間部20を絶縁物で覆わないと、本来、ブラシ部から放出されるノイズが、中間部20から、中間部に比較的近いフレームグランド62や、仮想アース70に向けて、放出されてしまい、ノイズがグランドに戻ってしまう場合がある。中間部20を絶縁物で覆うことで、ノイズをブラシ部からのみ放出されることが出来る。
絶縁部50としては、熱収縮チューブ51が適当である。熱収縮チューブ51は、120度程度の熱風を当てることで、収縮するチューブである。
加熱することで、収縮し、絶縁部50の端部の隙間を少なくすることが出来る。
【0018】
電線21は、そのまま、線状導体40として、ブラシ部30まで延長し、ブラシ部としても良い。また、電線21のブラシ側端部で、線状導体40と接続し、線状導体40がブラシ部を構成しても良い。
また、一般的な電線21に代えて、同軸ケーブル22を用いても良い。同軸ケーブル22を用いることで、高周波を含むノイズを効率よくブラシ部30に送ることが出来る。
【0019】
ブラシ部30は、オーディオ機器21のグランドから放電器1内に流入したノイズ成分を放射する放出部46である。
少なくとも三以上の線状導体40の束から成り、束の一方がまとめられており、他方が放射状に広がっている。グランドに乗っているノイズ成分は、端子部10から中間部20を通って、ブラシ部30にて、放射される。
放射量を増やすために、線状導体40の先端を3センチ程度、放射状に、配置している。全体としては、半球状である。このような形状とすることで、効率的に放電し、グランド内のノイズ成分を軽減することが出来る。
【0020】
線状導体40は、概ね直径1mm以下の銅線で構成される。本実施例は、微小なノイズ成分に関するので、銅線の抵抗値は低いほど良い。例えば、高純度無酸素銅線などが適当である。
また、銅線の直径は、大きいほど、抵抗値を抑えることが出来るので、直径を大きくすることで、ノイズ全体の伝達量を増やすことが出来る。また、銅線の直径が小さいほど、相対的に表面積が広くなることから、直径を小さくすることで、高周波ノイズの伝達効率が高くすることが出来る。
従って、1種類の線状導体40よりも複数の種類の異なる直径からなる線状導体40のほうが、より多くの帯域のノイズを放出することが出来る。
本実施例では、第1の線状導体として、直径0.5mmの高純度無酸素銅線を用い、第2の線状導体として、直径0.1mmのシルバーコーティングされた高純度無酸素銅線を用いている。
第1の線状導体は、銅線の直径が比較的大きいことから、ノイズ全体を放射することが出来る。第2の線状導体は、銅線の直径が比較的小さいことから、より高周波成分のノイズを放射することが出来る。
第2の線状導体の表面がシルバーコーティングされているのは、銅線の直径が小さくなるほど、腐食の影響を受けやすくなることから、表面の腐食等による劣化を抑制するためである。
【0021】
仮想アース70について説明する。仮想アース70は、オーディオ機器のグランドを強化するものである。
一般に、機器のグランドは、容積、表面積が大きい方が、より安定したグランドとなる。そこで、機器のグランドの容積、表面積を擬似的に大きくするために、仮想アース70を接続する。
オーディオ機器60のフレームグランド62と仮想アース70のグランド側接続部71とを接続する。
仮想アース70は、内部に、複数の金属板を重ねたレイヤ部73がある。この構造によって、グランドの容積、表面積を拡げている。
仮想アース70の放電器側接続部72には、放電器1の端子部10を接続する。放電器1は、仮想アース70によって取り切れない高周波ノイズを除去する。
【0022】
図1は、放電器1の設置例である。仮想アース70を介した例である。
オーディオ機器60のシャーシ61にあるフレームグランド62の端子部分と仮想アース70のグランド側接続部71とを、ケーブルで接続する。仮想アース70の放電器側接続部72に放電器1の端子部10を接続する。
オーディオ機器60のグランドに仮想アース70を接続することによって、仮想アース70内のレイヤ部73によって、グランドの容量、表面積が拡大され、グランドの安定度が高まる。
ノイズ成分は、オーディオ機器60から仮想アース70に流入する。そのうち、比較的高周波のノイズ成分が、放電器1に入り、ブラシ部30で放射される。
そうすることによって、オーディオ機器60内の高周波ノイズ成分の一部が除かれることになり、オーディオ機器60の音質を向上させることが出来る。
また、図1では、仮想アース70を介した例を示したが、フレームグランド62に直接、放電器側接続部72を接続しても良い。
【0023】
図2に、放電器1の正面図を示す。(a)は、基本形である。線状導体40は、第1の線状導体41のみを用いている。
第1の線状導体41は、直径0.5mmの高純度無酸素銅線であるので、ノイズ全体の放射を行うことが出来る。
第1の線状導体41は、中間部20の電線21も兼ねている。従って、第1の線状導体41の長さは、概ね、中間部20とブラシ部30を合わせた長さである。
第1の線状導体41の一部は束ねられ、中間部20に配置され、その端部は、端子部10の圧着部11で圧着固定される。
第1の線状導体41は、中間部20の終端まで束ねられた状態であり、ブラシ部30で、概ね、半球状に、放射状に拡げられる。拡げることで、各銅線間の距離が延び、効率よく、ノイズを放射することが出来る。
【0024】
(b)は、線状導体40が第1の線状導体41と第2の線状導体42とから成る場合である。第1の線状導体は、直径0.5mmの高純度無酸素銅線であり、第2の線状導体は、直径0.1mmのシルバーコーティングされた高純度無酸素銅線である。複数の種類の銅線を用いることによって、より多くの高周波ノイズを放射することが出来る。他の構造は、(a)と同様である。
【0025】
(c)は、中間部20に同軸ケーブル22を用いる場合である。同軸ケーブル22を用いることで、より多くの高周波を含むノイズ成分を、ブラシ部30から放出することが出来る。詳細は後述する。
【0026】
図3図4を用いて、中間部20に同軸ケーブル22を用いる場合の構造と組立工程を説明する。
全体的には、中間部は、同軸ケーブルで構成され、端子部に、該同軸ケーブルの内部導体と外部導体が接続され、ブラシ部に、同軸ケーブルの内部導体が接続され、ブラシ部は、内部導体と、が撚線状で他方が放射状の線状導体群と、から成る構造である。
まず、図4(a)のように、端子部10と同軸ケーブル22とを接続していく。同軸ケーブル22は、例えば、75Ω同軸ケーブルである。同軸ケーブル22は、通常、信号用に用いる芯線23(以下、内部導体ともいう)と、その周りを囲む、絶縁体24と、絶縁体24を覆うように配置されるシールド25(以下、外部導体ともいう)と、全体を覆う外部被覆26とから成る(図3)。
【0027】
同軸ケーブル22の全体の長さは、8cm程度で、芯線23のみ、ブラシ部30方向に、3~5cm程度突出させる。この突出部分は、ブラシ部30の一部となる。
同軸ケーブル22の端子部10側は、芯線23とシールド25が引き出され、圧着部11で、共に圧着される。ブラシ部30側のシールド25は、芯線23及びブラシ部30と接触しないように切りそろえられ、他の電気部材とは接触しない。
ノイズ成分は、端子部10側から同軸ケーブル22に入る。同軸ケーブル22のシールド25を基準として、ノイズ成分の一部が信号として、芯線23に入る形である。
同軸ケーブル22は、芯線23とシールド25の関係で、高周波成分を低減衰で伝達することが出来る。
【0028】
次に、図4(b)のように、内部導体である芯線23と複数の線状導体群44をリングスリーブ31でかしめる。
線状導体群44は、線状導体40の集合体で、一方が、線状導体40を撚った撚線部45となり、他方が解けて放射状となっているものである。
線状導体群44は、第1の線状導体41と第2の線状導体42から成る。
第1の線状導体41と第2の線状導体42をまとめ、線材の一端を撚って撚線部45とする。撚線部とすることで、まとめやすく、芯線23との接触量を増やすことが出来る。
【0029】
また、要件を満たす線材から構成されるケーブル、例えば、高級スピーカーケーブルの内芯を用いてもよい。内芯の被覆を除き、一端をそのまま撚線部45として用い、他端をほぐすことで、放射状とすることが出来る。
4つの線状導体群44を芯線23の周りに配置し、リングスリーブ31にて覆い、リングスリーブ31をカシメることで、芯線23と線状導体群44を一体化する(図3)。
その際、芯線23の先端を線状導体群44の先端とそろえることで、芯線23による放電効果を高めることが出来る。
【0030】
次に、図4(c)のように、絶縁部50である熱収縮チューブ51で中間部20を覆う。絶縁部50で中間部20を覆うことで、端子部10に近いフレームグランド62や仮想アース70に対して、中間部20から無用な放射が起きることを防ぐことが出来る。
絶縁部50の端部の隙間を少なくするために、絶縁部50として熱収縮チューブ51を用いる。熱収縮チューブ51を用いることによって、熱を加えることで、熱収縮チューブ51は、端子部10、同軸ケーブル22、リングスリーブ31等に密着する。さらに、隙間を無くするために、隙間にホットボンド52を流し込む(図3)。
放電器1の完成例を図4(d)に示す。
このような構造とすることによって、高周波ノイズ成分を効率よく放射することが出来る。
【0031】
他の実施例について図5を用いて説明する。実施例1と同様の部分は省略する。図5は、実施例2の構造を示す図であり、(a)は、側面図であり、(b)は、斜視図であり、(c)は、分解図である。
実施例1によって、グランド上の高周波ノイズ成分を低減することが出来るが、多くの線材を放射状に成形することは、時間が掛かる場合もあった。また、放射状の形状によって、性能が左右される恐れもあり、品質の均一化の点で懸念があった。
そこで、製造工程を簡略化出来、かつ、性能の均一化を図れる構造が求められていた。
【0032】
図5に沿って、本実施例について説明する。
放電器1は、端子部10と中間部20と放出部46とから構成されている。
端子部10は、実施例1とほぼ同様の機能を持つ。圧着部11と中間部20のシャフト27は、半田付けで電気的に接続される。シャフト27は比較的剛性が高いので、単なるカシメよりも半田付けのほうが安定して固定できるからである。
【0033】
中間部20は、端子部10と放出部46を繋ぐ部分である。
中間部は、シャフト27と、テフロン(登録商標)チューブ53と、熱収縮チューブ51とから成る。
端子部10と放出部46をシャフト27で電気的に接続すると共に、周囲を絶縁部50で覆う構造である。シャフト27の長さは、例えば、4cm程度である。長すぎると、シャフトの抵抗値が問題となるし、短すぎると、放出部46がアースに近くなりすぎ、放電しにくくなる。長さは、測定、検討により、決定する。
シャフト27は、抵抗値の少ない銅を素材とすると好適である。無酸素銅を用いることで、さらに、抵抗値を下げることも出来る。
また、シャフト27は、中空でも良い。中空とすることで、放電器全体としての表面積を拡大することが出来るので好適である。
中間部20の導体はシャーシ27であり、その周りをテフロン(登録商標)チューブ53で覆う。テフロン(登録商標)チューブ53は、強度があることから、シャフト27を補強することが出来る。さらに、熱圧縮チューブ51を被せることで、端子10との境界や放出部46との境界付近を絶縁物で覆うことが出来るので好適である。
また、実施例1と同様に、熱圧縮チューブ51の両端をホットボンド52で塞いでも良い。
【0034】
放出部46は、本実施例における重要な要素である。放出部46は、金属性の円盤状導体から放射状に広がる突起部によって、放電を行うものである。
放出部46は、主に、第1の円盤状導体48と第2の円盤状導体49とから成る。第1の円盤状導体48は、例えば、厚さ0.1mm、直径22mm程度である。周部分に多くの突起部47を持ち、歯車状である。言い換えれば、放射状の突起部47を持つと言える。
突起部47の数は、例えば、50から80程度である。突起部47は多いほどいいが、突起部47自体の長さも重要であるので、突起部47の数と大きさは、実験、測定等によって決定する。
第2の円盤状導体49は、複数の孔を持つ円盤状である。寸法は、例えば、厚さ0.4mm、直径22mm程度である。周及び平面部分に、第1の円盤状導体48よりも微小な突起部47を多数持つ。
第1の円盤状導体48と異なる突起を持つことによって、第1の円盤状導体48とは異なる周波数のノイズを放出することが出来る。
2つの第1の円盤状導体48で、第2の円盤状導体49を挟む3枚構造とすることによって、第1の円盤状導体48の突起部47から多くのノイズ成分を放出出来、第2の円盤状導体49の突起部47から、第1の円盤状導体48の突起部47とは異なるノイズ成分を放出出来るので、好適である。
【0035】
シャーシ27の先端に、第1の円盤状導体48、第2の円盤状導体49、第1の円盤状導体48の順に取り付ける。各円盤状導体の間には、絶縁物であるスペーサ54を配置する。
スペーサ54を配置することによって、各円盤状導体は中心部分のみで接続され、各円盤状導体は、スペーサ54の厚さ分だけ間隔を開けて配置される。
スペーサ54の厚さは、0.5mmから2mm程度である。薄い場合は、リングワッシャ形状が考えられるし、厚い場合はナット形状が適当である。
少なくとも三以上の円盤状導体が、間隔を開けて配置されるので、グランドの表面積を拡げる効果を持つ。さらに、円盤状導体は、複数の突起部47を持つことから、グランドに乗っているノイズ成分を、大量の突起部47から放射することが出来る。
また、円盤状導体を増やすことによって、放射をさらに多くすることが出来る。
【0036】
本実施例の組立工程を説明する。
まず、シャーシ27にテフロン(登録商標)チューブ53を被せ、シャーシ27と端子部10の圧着部11とを半田付けで固定する。
次に、第1の円盤状導体48、スペーサ54、第2の円盤状導体49、スペーサ54、第1の円盤状導体48の順に組、ネジ55にて、シャーシ27の端部に取り付ける。ネジ55の長さは、第1の円盤状導体48と第2の円盤状導体49との隙間の距離によって、適宜変える。
最後に、熱収縮チューブ51を中間部20に被せ、完成させる。
また、熱収縮チューブ51の両端をホットボンド52で覆い、中間部20部分の密閉度、絶縁度を高めても良い。
【0037】
このように、整形しやすい部品のみから成るので、組み立てやすく、生産時のバラツキを低減できるので、製品ごとに、均一の性能を保つことが出来る。
【0038】
放電器の有無による音質評価を行った(表1)。
音質評価は、主音評価、余韻評価、立体感評価を用い、アンプのフレームグランド端子に仮想アース70を接続した状態で、仮想アース70の放電器側接続部72への放電器1の接続の有無の場合を比較した。
音質評価項目として、主音評価は、低音、中音、高音の3つに分けた。
音質評価は、34才から64才の6人で行った。
評価は、S:大変良い、A:良い、B:変わらない、C:悪い、の4段階で行い、S:大変良いと感じた人の割合をまとめ、評価とした。
【0039】
【表1】
◎:音質が大きく向上したと感じた人の割合が70%以上
〇:音質が大きく向上したと感じた人の割合が70%未満50%以上
△:音質が大きく向上したと感じた人の割合が50%未満40%以上
×:音質が大きく向上したと感じた人の割合が40%未満
【0040】
表1に示すように、放電器を用いることで、低音の厚み感が出る。さらに、中高音の音の輪郭がしっかり出ていること、余韻、立体感とも向上したことが、評価として明示することが出来た。
【0041】
このように、本発明に係る放電器によれば、グランドに、放電器を接続することで、オーディオ機器内のノイズの一部が、除去され、音質改善に奏するものである。
【0042】
また、同様に、オーディオ機器で発生した、静電気についても、放電することで軽減することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る放電器は、オーディオ機器の音質性能を向上させるものであり、既存・新規を問わずあらゆるオーディオ機器へ装着して効果を発揮することができるものである。よって、本発明に係る放電器の産業上の利用可能性は大きいものと思料する。
【符号の説明】
【0044】
1 放電器
10 端子部
11 圧着部
20 中間部
21 電線
22 同軸ケーブル
23 芯線(内部導体)
24 絶縁体
25 シールド(外部導体)
26 外部被覆
27 シャフト
30 ブラシ部
31 リングスリーブ
40 線状導体
41 第1の線状導体
42 第2の線状導体
43 放射状部
44 線状導体群
45 撚線部
46 放出部
47 突起部
48 第1の円盤状導体
49 第2の円盤状導体
50 絶縁部
51 熱収縮チューブ
52 ホットボンド
53 テフロン(登録商標)チューブ
54 スペーサ
55 ネジ
60 オーディオ機器
61 シャーシ
62 フレームグランド
70 仮想アース
71 グランド側接続部
72 放電器側接続部
73 レイヤ部

【要約】
【課題】グランド強化において、音質に影響するノイズを軽減する技術を提供する。
【解決手段】オーディオ回路を含む電気回路のグランドにつける放電器であって、一方に、グランドと接続される端子部を持ち、他方に、複数の線状導体の束の一方がまとめられた放出部を持ち、端子部と放出部は、中間部を介して、電気的に接続され、中間部は、絶縁体で覆われており、放出部は、放射状に広がった突出部を持つ構成を採る。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5