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特許7450318はんだ組成物およびフレキシブル回路基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】はんだ組成物およびフレキシブル回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20240308BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20240308BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20240308BHJP
   B23K 35/26 20060101ALN20240308BHJP
   C22C 13/00 20060101ALN20240308BHJP
【FI】
B23K35/363 C
B23K35/363 E
H05K3/34 505B
H05K3/34 502A
H05K3/28 D
B23K35/26 310A
C22C13/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021150920
(22)【出願日】2021-09-16
(65)【公開番号】P2023043354
(43)【公開日】2023-03-29
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 澄怜
(72)【発明者】
【氏名】宗川 裕里加
(72)【発明者】
【氏名】市川 大悟
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-040120(JP,A)
【文献】特開2018-202472(JP,A)
【文献】特開2017-177166(JP,A)
【文献】特開2017-064761(JP,A)
【文献】特開2015-006687(JP,A)
【文献】特開2019-130566(JP,A)
【文献】特許第6928294(JP,B1)
【文献】特開2015-064545(JP,A)
【文献】国際公開第2008/007635(WO,A1)
【文献】特開2018-053215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363
H05K 3/28
H05K 3/32- 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁被膜がアルカリ現像型ソルダーレジスト膜であるフレキシブル回路基板の製造に用いるはんだ組成物であって、
(A)ロジン系樹脂(ただし、ロジンおよび分子内に水酸基を少なくとも4つ有するポリオールのロジンエステルを除く)、(B)活性剤、(C)チクソ剤、および(D)溶剤を含有するフラックス組成物と、(E)はんだ粉末とを含有し、
前記(B)成分が、(B1)炭素数が3以上8以下であるジカルボン酸を含有し、
前記(C)成分が、(C1)1分子中にヒドロキシ基を有するアマイド系チクソ剤、および(C2)1分子中にヒドロキシ基を有するグリセロール系チクソ剤からなる群から選択される少なくとも1つを含有し、
前記(A)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、30質量%以上70質量%以下であり、
前記(B)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、2質量%以上6質量%以下であり、
前記(B1)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、2質量%以上6質量%以下であり、
前記(C1)成分および前記(C2)成分の合計配合量をXとし、前記(B1)成分の配合量をYとしたとき、下記数式(F1)で示される条件を満たす、
はんだ組成物。
2X/3≦Y≦3X/2・・・(F1)
【請求項2】
請求項1に記載のはんだ組成物において、
前記(C1)成分が、1分子中に2つ以上のヒドロキシ基を有するビスアマイド系チクソ剤である、
はんだ組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のはんだ組成物において、
前記(B1)成分以外の有機酸、ハロゲン系活性剤、およびアミン系活性剤を含有しない、
はんだ組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のはんだ組成物において、
前記(A)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、35質量%以上70質量%以下である、
はんだ組成物。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のはんだ組成物を用いてはんだ付けを行うフレキシブル回路基板の製造方法であって、
フレキシブル配線基板上に、前記はんだ組成物を塗布する工程と、
前記はんだ組成物上に電子部品を配置する工程と、
リフロー炉により所定条件にて加熱して、前記電子部品を前記フレキシブル配線基板に実装する工程と、を備える、
フレキシブル回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ組成物およびフレキシブル回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
はんだ組成物は、はんだ粉末にフラックス組成物(ロジン系樹脂、活性剤および溶剤など)を混練してペースト状にした混合物である(特許文献1参照)。
近年の電子機器の小型化や軽量化のニーズから空間を節約するために、小型部品を自由に実装することが求められている。そして、基板の微小ランドに小型部品を実装することが可能なはんだ組成物の需要が高まっている。
さらに、はんだ組成物を用いて、狭い範囲に密集する小型部品に実装するために、隣接する部品に影響を与えないことが求められる。そのため、はんだ組成物は、プリント配線基板上の絶縁被膜に作用しにくいことが重要になってくる。以上のように、はんだ組成物は、絶縁被膜に作用しにくく、はんだの広がり性を確保することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5887330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、絶縁被膜に作用しにくく、はんだの広がり性に優れるはんだ組成物、並びに、これを用いたフレキシブル回路基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)チクソ剤、および(D)溶剤を含有するフラックス組成物と、(E)はんだ粉末とを含有し、前記(B)成分が、(B1)炭素数が3以上8以下であるジカルボン酸を含有し、前記(C)成分が、(C1)1分子中にヒドロキシ基を有するアマイド系チクソ剤、および(C2)1分子中にヒドロキシ基を有するグリセロール系チクソ剤からなる群から選択される少なくとも1つを含有し、前記(C1)成分および前記(C2)成分の合計配合量をXとし、前記(B1)成分の配合量をYとしたとき、下記数式(F1)で示される条件を満たす、はんだ組成物が提供される。
X/2≦Y≦5X・・・(F1)
【0006】
本発明の一態様によれば、前述の本発明の一態様に係るはんだ組成物を用いてはんだ付けを行うフレキシブル回路基板の製造方法であって、フレキシブル配線基板上に、前記はんだ組成物を塗布する工程と、前記はんだ組成物上に電子部品を配置する工程と、リフロー炉により所定条件にて加熱して、前記電子部品を前記フレキシブル配線基板に実装する工程と、を備える、フレキシブル回路基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、絶縁被膜に作用しにくく、はんだの広がり性に優れるはんだ組成物、並びに、これを用いたフレキシブル回路基板の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態に係るはんだ組成物は、(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)チクソ剤、および(D)溶剤を含有するフラックス組成物と、(E)はんだ粉末とを含有し、前記(B)成分が、(B1)炭素数が3以上8以下であるジカルボン酸を含有し、前記(C)成分が、(C1)1分子中にヒドロキシ基を有するアマイド系チクソ剤、および(C2)1分子中にヒドロキシ基を有するグリセロール系チクソ剤からなる群から選択される少なくとも1つを含有し、前記(C1)成分および前記(C2)成分の合計配合量をXとし、前記(B1)成分の配合量をYとしたとき、下記数式(F1)で示される条件を満たすものである。
X/2≦Y≦5X・・・(F1)
【0009】
本実施形態によれば、絶縁被膜に作用しにくく、はんだの広がり性に優れるはんだ組成物が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。
すなわち、プリント配線基板上の絶縁被膜には、フラックス組成物中の有機酸が悪影響を及ぼす。また、有機酸の炭素鎖が短いほど、絶縁被膜への悪影響を及ぼす。しかしながら、炭素鎖が短い有機酸は、はんだの広がり性の観点からは必須の成分である。
これに対し、本実施形態に係るはんだ組成物は、(B1)炭素数が3以上8以下であるジカルボン酸と、(C1)1分子中にヒドロキシ基を有するアマイド系チクソ剤、および(C2)1分子中にヒドロキシ基を有するグリセロール系チクソ剤からなる群から選択される少なくとも1つとを併用している。これらの組合せで使用した場合には、驚くべきことに、(B1)成分による絶縁被膜への悪影響を低減できることが分かった。この理由について、本発明者らは、(C1)成分または(C2)成分により形成される三次元構造によって、(B1)成分による絶縁被膜への悪影響を低減できるものと推察している。
さらに、本発明者らは、(C1)成分および(C2)成分の合計配合量Xと、(B1)成分の配合量Yとが、上記数式(F1)で示される条件を満たすようにすれば、絶縁被膜に作用しにくさと、はんだの広がり性とを両立できることを見出した。以上のようにして、上記本発明の効果が達成されるものと本発明者らは推察する。
【0010】
なお、絶縁被膜に作用しにくいことは、特に、フレキシブル回路基板を製造する場合に求められる。なぜならば、フレキシブル配線基板に形成されている絶縁被膜は、フレキシブル性に優れるが、その反面、はんだ耐熱性に劣る傾向にあるからである。そのため、本実施形態に係るはんだ組成物は、フレキシブル回路基板の製造用として、特に好適に使用できる。
また、絶縁被膜への作用しにくさと、はんだの広がり性との両立の観点から、(B1)成分の配合量Yの値は、2X/3以上であることが好ましく、3X/4以上であることがより好ましく、4X/5以上であることがさらに好ましく、9X/10以上であることが特に好ましい。また、Yの値の上限値は、4X以下であることが好ましく、3X以下であることがより好ましく、2X以下であることがさらに好ましく、3X/2以下であることが特に好ましい。
【0011】
[フラックス組成物]
まず、本実施形態に用いるフラックス組成物について説明する。本実施形態に用いるフラックス組成物は、はんだ組成物におけるはんだ粉末以外の成分であり、以下説明する(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)チクソ剤、および(D)溶剤を含有するものである。
【0012】
[(A)成分]
本実施形態に用いる(A)ロジン系樹脂としては、ロジン類およびロジン系変性樹脂が挙げられる。ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジンおよびトール油ロジンなどが挙げられる。ロジン系変性樹脂としては、不均化ロジン、重合ロジン、水素添加ロジンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。水素添加ロジンとしては、完全水添ロジン、部分水添ロジン、並びに、不飽和有機酸((メタ)アクリル酸などの脂肪族の不飽和一塩基酸、フマル酸、マレイン酸などのα,β-不飽和カルボン酸などの脂肪族不飽和二塩基酸、桂皮酸などの芳香族環を有する不飽和カルボン酸など)の変性ロジンである不飽和有機酸変性ロジンの水素添加物(「水添酸変性ロジン」ともいう)などが挙げられる。これらのロジン系樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0013】
(A)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、20質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、35質量%以上50質量%以下であることが特に好ましい。(A)成分の配合量が前記下限以上であれば、はんだ付ランドの銅箔面の酸化を防止してその表面に溶融はんだを濡れやすくする、いわゆるはんだ付け性を向上でき、はんだボールを十分に抑制できる。また、(A)成分の配合量が前記上限以下であれば、フラックス残さを十分に抑制できる。
【0014】
[(B)成分]
本実施形態に用いる(B)活性剤は、(B1)炭素数が3以上8以下であるジカルボン酸を含有することが必要である。
(B1)成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、およびスベリン酸などが挙げられる。
(B1)成分の配合量は、はんだの広がり性の観点から、フラックス組成物100質量%に対して、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましく、2質量%以上6質量%以下であることが特に好ましい。
【0015】
(B)成分は、本発明の課題を達成できる範囲において、(B1)成分以外に、その他の活性剤(以下(B2)成分とも称する)をさらに含有してもよい。(B2)成分としては、(B1)成分以外の有機酸、ハロゲン系活性剤、およびアミン系活性剤などが挙げられる。ただし、(B2)成分が本発明の作用効果に悪影響を与えうるという観点から、(B)成分は、(B1)成分のみからなることが好ましい。また、(B1)成分の配合量の合計は、(B)成分100質量%に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。
【0016】
(B)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましく、2質量%以上6質量%以下であることが特に好ましい。(B)成分の配合量が前記下限以上であれば、活性作用を向上できる傾向にあり、他方、前記上限以下であれば、フラックス組成物の絶縁性を維持できる傾向にある。
【0017】
[(C)成分]
本実施形態に用いる(C)チクソ剤は、(C1)1分子中にヒドロキシ基を有するアマイド系チクソ剤、および(C2)1分子中にヒドロキシ基を有するグリセロール系チクソ剤からなる群から選択される少なくとも1つを含有することが必要である。
(C1)成分は、1分子中にヒドロキシ基を有するアマイド系チクソ剤である。このアマイド系チクソ剤がヒドロキシ基を有さない場合、(B1)成分による絶縁被膜への悪影響が低減できない。また、(C1)成分は、1分子中に2つ以上のヒドロキシ基を有するビスアマイド系チクソ剤であることが好ましい。
(C1)成分としては、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、およびヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。これらの中でも、上記の観点から、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、またはヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミドが好ましい。
(C2)成分は、1分子中にヒドロキシ基を有するグリセロール系チクソ剤である。このグリセロール系チクソ剤のヒドロキシ基を有さない場合、(B1)成分による絶縁被膜への悪影響が低減できない。
(C2)成分としては、硬化ひまし油などが挙げられる。
【0018】
(C)成分は、本発明の課題を達成できる範囲において、(C1)成分および(C2)成分以外に、その他のチクソ剤(以下(C3)成分とも称する)をさらに含有してもよい。(C3)成分としては、(C1)成分以外のアマイド系チクソ剤、(C2)成分以外のグリセロール系チクソ剤、カオリン、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、およびガラスフリットなどが挙げられる。ただし、本発明の作用効果を確保するという観点から、(C)成分は、(C1)成分および(C2)成分のみからなることが好ましい。また、(C1)成分および(C2)成分の配合量の合計は、(C)成分100質量%に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
【0019】
(C)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、0.5質量%以上15質量%以下であることが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上8質量%以下であることが特に好ましい。(C)成分の配合量が前記下限以上であれば、印刷時のだれ性を向上できる傾向にあり、他方、前記上限以下であれば、チクソ性が高すぎて、印刷不良となりやすい傾向にある。
【0020】
[(D)成分]
本実施形態に用いる(D)溶剤としては、公知の溶剤を適宜用いることができる。このような溶剤としては、沸点170℃以上の溶剤を用いることが好ましい。また、グリコール系溶剤が好ましい。
このような溶剤としては、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ヘキシルジグリコール、1,5-ペンタンジオール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、2-エチルヘキシルジグリコール(EHDG)、オクタンジオール、フェニルグリコール、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(BFTG)、およびジブチルマレイン酸などが挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
(D)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、20質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。(D)成分の配合量が前記範囲内であれば、得られるはんだ組成物の粘度を適正な範囲に適宜調整できる。
【0022】
[酸化防止剤]
本実施形態のフラックス組成物においては、はんだ溶融性などの観点から、さらに酸化防止剤を含有することが好ましい。ここで用いる酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤を適宜用いることができる。酸化防止剤としては、硫黄化合物、ヒンダードフェノール化合物、およびホスファイト化合物などが挙げられる。これらの中でも、ヒンダードフェノール化合物が好ましい。
【0023】
ヒンダードフェノール化合物としては、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]、N,N’-ビス[2-[2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)エチルカルボニルオキシ]エチル]オキサミド、および、N,N’-ビス{3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジンなどが挙げられる。
【0024】
[他の成分]
本実施形態に用いるフラックス組成物には、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、および酸化防止剤の他に、必要に応じて、その他の添加剤、更には、その他の樹脂を加えることができる。その他の添加剤としては、消泡剤、改質剤、つや消し剤、および発泡剤などが挙げられる。これらの添加剤の配合量としては、フラックス組成物100質量%に対して、0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましい。その他の樹脂としては、アクリル系樹脂などが挙げられる。
【0025】
[はんだ組成物]
次に、本実施形態のはんだ組成物について説明する。本実施形態のはんだ組成物は、前述の本実施形態のフラックス組成物と、以下説明する(E)はんだ粉末とを含有するものである。
フラックス組成物の配合量は、はんだ組成物100質量%に対して、5質量%以上35質量%以下であることが好ましく、7質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、8質量%以上13質量%以下であることが特に好ましい。フラックス組成物の配合量が5質量%未満の場合(はんだ粉末の配合量が95質量%を超える場合)には、バインダーとしてのフラックス組成物が足りないため、フラックス組成物とはんだ粉末とを混合しにくくなる傾向にあり、他方、フラックス組成物の配合量が35質量%を超える場合(はんだ粉末の配合量が65質量%未満の場合)には、得られるはんだ組成物を用いた場合に、十分なはんだ接合を形成できにくくなる傾向にある。
【0026】
[(E)成分]
本実施形態に用いる()はんだ粉末は、鉛フリーはんだ粉末のみからなることが好ましいが、有鉛のはんだ粉末であってもよい。また、このはんだ粉末におけるはんだ合金は、スズ(Sn)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、インジウム(In)、ビスマス(Bi)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびゲルマニウム(Ge)からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
このはんだ粉末におけるはんだ合金としては、スズを主成分とする合金が好ましい。また、このはんだ合金は、スズ、銀および銅を含有することがより好ましい。さらに、このはんだ合金は、添加元素として、アンチモン、ビスマスおよびニッケルのうちの少なくとも1つを含有してもよい。本実施形態のフラックス組成物によれば、アンチモン、ビスマスおよびニッケルなどの酸化しやすい添加元素を含むはんだ合金を用いた場合でも、ボイドの発生を抑制できる。
ここで、鉛フリーはんだ粉末とは、鉛を添加しないはんだ金属または合金の粉末のことをいう。ただし、鉛フリーはんだ粉末中に、不可避的不純物として鉛が存在することは許容されるが、この場合に、鉛の量は、300質量ppm以下であることが好ましい。
【0027】
鉛フリーのはんだ粉末の合金系としては、具体的には、Sn-Ag-Cu系、Sn-Cu系、Sn-Ag系、Sn-Bi系、Sn-Ag-Bi系、Sn-Ag-Cu-Bi系、Sn-Ag-Cu-Ni系、Sn-Ag-Cu-Bi-Sb系、Sn-Ag-Bi-In系、Sn-Ag-Cu-Bi-In-Sb系などが挙げられる。
【0028】
(E)成分の平均粒子径は、通常1μm以上40μm以下であるが、はんだ付けパッドのピッチが狭い電子基板にも対応するという観点から、1μm以上35μm以下であることがより好ましく、2μm以上35μm以下であることがさらにより好ましく、3μm以上32μm以下であることが特に好ましい。なお、平均粒子径は、動的光散乱式の粒子径測定装置により測定できる。
【0029】
[はんだ組成物の製造方法]
本実施形態のはんだ組成物は、上記説明したフラックス組成物と上記説明した(E)はんだ粉末とを上記所定の割合で配合し、撹拌混合することで製造できる。
【0030】
[フレキシブル回路基板の製造方法]
次に、本実施形態のフレキシブル回路基板の製造方法について説明する。本実施形態のフレキシブル回路基板の製造方法は、以上説明したはんだ組成物を用いてはんだ付けを行うことを特徴とする方法である。本実施形態のフレキシブル回路基板の製造方法によれば、前記はんだ組成物を用いて電子部品をフレキシブル配線基板に実装することで製造できる。
前述した本実施形態のはんだ組成物は、絶縁被膜に作用しにくい。そのため、このはんだ組成物は、はんだ耐熱性に劣る傾向にある絶縁被膜を備えるフレキシブル配線基板にも、好適に適用できる。
すなわち、従来、フレキシブル配線基板の絶縁被膜は、フレキシブル配線基板に、接着層を備えたカバーレイを被覆するものであった。しかしながら、近年のパット部の微細化に伴い、写真現像型の感光性樹脂組成物であるソルダーレジストを用いるようになった。
一方で、このソルダーレジストをフレキシブル配線基板に用いるためには、柔軟性が要求される。そのため、絶縁被膜の樹脂組成の硬化物は、耐屈曲性を有する反面、はんだ耐熱性に欠点もある組成とする傾向にある。とりわけ、アルカリ現像型ソルダーレジストの場合はこの傾向が強く、特に、リフローの際、はんだ組成物中に含まれるフラックス成分により、ソルダーレジスト膜の開口部への浸み込み剥離が生じやすい傾向にある。
このように、はんだ耐熱性に劣る傾向にある絶縁被膜を備えるフレキシブル配線基板についても、前述した本実施形態のはんだ組成物を用いてはんだ付けを行うことで、問題なく、フレキシブル回路基板を作製できる。すなわち、前述した本実施形態のはんだ組成物は、アルカリ現像型ソルダーレジスト膜である絶縁被膜を備えるフレキシブル回路基板の製造のために、特に有用である。
【0031】
なお、ここで、フレキシブル配線基板に絶縁被膜を形成する方法(絶縁被膜の形成方法)について説明する。
絶縁被膜の形成方法としては、まず、ポリイミドフィルム上に銅配線を備えたフレキシブル配線基板に上に、スクリーン印刷法などの公知の方法にて、所望の厚さに、感光性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成する。その後、必要に応じて、感光性樹脂組成物中の非反応性希釈剤(有機溶剤)を揮散させるために60~100℃程度の温度で5~30分間程度加熱する予備乾燥を行い、塗膜をタックフリーの状態にする。次に、塗膜上に回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルム(フォトマスク)を密着させ、その上から紫外線(例えば、波長300~400nmの範囲)を照射させて塗膜を光硬化させる。そして、前記ランドに対応する非露光領域を希アルカリ水溶液で除去して塗膜を現像する。現像方法には、スプレー法、またはシャワー法などが用いられる。使用する希アルカリ水溶液としては、例えば、0.5~5質量%の炭酸ナトリウム水溶液が挙げられる。アルカリ現像後、130~170℃の熱風循環式の乾燥機等で、20~80分間、熱硬化処理(ポストキュア)することにより、フレキシブル配線基板上に、絶縁被膜であるソルダーレジスト膜を形成させることができる。
【0032】
本実施形態のフレキシブル回路基板の製造方法においては、まず、フレキシブル配線基板上に、はんだ組成物を塗布装置にて塗布する。
ここで用いる塗布装置としては、スクリーン印刷機、メタルマスク印刷機、ディスペンサー、およびジェットディスペンサーなどが挙げられる。
また、塗布装置にて塗布したはんだ組成物上に電子部品を配置し、リフロー炉により所定条件にて加熱して、電子部品をフレキシブル配線基板に実装するリフロー工程により、電子部品をフレキシブル配線基板に実装できる。
【0033】
リフロー工程においては、はんだ組成物上に電子部品を配置し、リフロー炉により所定条件にて加熱する。このリフロー工程により、電子部品およびフレキシブル配線基板の間に十分なはんだ接合を行うことができる。その結果、電子部品をフレキシブル配線基板に実装することができる。
リフロー条件は、はんだの融点に応じて適宜設定すればよい。例えば、プリヒート温度は、140℃以上200℃以下であることが好ましく、150℃以上160℃以下であることがより好ましい。プリヒート時間は、60秒間以上120秒間以下であることが好ましい。ピーク温度は、230℃以上270℃以下であることが好ましく、240℃以上255℃以下であることがより好ましい。また、220℃以上の温度の保持時間は、20秒間以上60秒間以下であることが好ましい。
【0034】
また、本実施形態のはんだ組成物およびフレキシブル回路基板の製造方法は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
例えば、前述のフレキシブル回路基板の製造方法では、リフロー工程により、フレキシブル配線基板と電子部品とを接着しているが、これに限定されない。例えば、リフロー工程に代えて、レーザー光を用いてはんだ組成物を加熱する工程(レーザー加熱工程)により、フレキシブル配線基板と電子部品とを接着してもよい。この場合、レーザー光源としては、特に限定されず、金属の吸収帯に合わせた波長に応じて適宜採用できる。レーザー光源としては、例えば、固体レーザー(ルビー、ガラス、YAGなど)、半導体レーザー(GaAs、およびInGaAsPなど)、液体レーザー(色素など)、並びに、気体レーザー(He-Ne、Ar、CO、およびエキシマーなど)が挙げられる。
【実施例
【0035】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
((A)成分)
ロジン系樹脂:水添酸変性ロジン、商品名「パインクリスタルKE-604」、荒川化学工業社製
((B1)成分)
ジカルボン酸A:マロン酸
ジカルボン酸B:コハク酸
ジカルボン酸C:グルタル酸
ジカルボン酸D:アジピン酸
ジカルボン酸E:スベリン酸
((B2)成分)
ジカルボン酸F:セバシン酸
ジカルボン酸G:エイコサン二酸、商品名「SL-20」、岡村製油社製
モノカルボン酸A:カプリン酸
モノカルボン酸B:パルミチン酸
モノカルボン酸C:イソパルミチン酸
モノカルボン酸D:ステアリン酸
((C1)成分)
アマイド系チクソ剤A:ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、商品名「スリパックスZHH」、三菱ケミカル社製
アマイド系チクソ剤B:エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、商品名「スリパックスH」、三菱ケミカル社製
((C3)成分)
アマイド系チクソ剤C:エチレンビスステアリン酸アミド(分子量:593)、商品名「スリパックスE」、日化トレーディング社製
((D)成分)
溶剤A:トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(BFTG)、日本乳化剤社製
溶剤B:ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル(2-エチルヘキシルジグリコール(EHDG))、日本乳化剤社製
((E)成分)
はんだ粉末:合金組成はSn-3.0Ag-0.5Cu、粒子径分布は15~25μm(IPC-J-STD-005Aのタイプ5に相当)、はんだ融点は217~220℃
【0036】
[実施例1]
ロジン系樹脂40質量%、ジカルボン酸A5質量%、溶剤A50質量%、およびチクソ剤A5質量%を容器に投入し、プラネタリーミキサーを用いて混合してフラックス組成物を得た。
その後、得られたフラックス組成物11質量%、溶剤B1.6質量%、およびはんだ粉末87.4質量%(合計で100質量%)を容器に投入し、プラネタリーミキサーにて混合することではんだ組成物を調製した。
【0037】
[実施例2~8]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、フラックス組成物およびはんだ組成物を得た。
[比較例1~17]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、フラックス組成物およびはんだ組成物を得た。
【0038】
<はんだ組成物の評価>
はんだ組成物の評価(はんだ耐熱性(ベタ塗、パターン)、はんだの広がり性)を以下のような方法で行った。得られた結果を表1に示す。
(1)はんだ耐熱性(ベタ塗、パターン)
プリント配線基板(基材:FR-4、基板厚:1.6mm、Cu厚:50μm)上にソルダーレジスト膜(タムラ製作所製の「DSR-2200」、フレキシブル配線基板用アルカリ現像型ソルダーレジスト、膜厚:20μm)を形成した(このソルダーレジストは、固形分として、カルボキシル基含有感光性樹脂、エポキシ化合物、光重合開始剤、反応性希釈剤、着色剤、エラストマーおよび体質顔料を80質量%以上含有する。)。このソルダーレジスト膜を形成した評価基板に対し、JIS C-6481の試験方法に従って、フラックス組成物を全面塗布し、続いて260℃のはんだ槽に30秒間浸せき後、セロハンテープによるピーリング試験を行った。これを1サイクルとし、これを1サイクル~3サイクル繰り返した後の絶縁被膜の状態(べタ塗部分およびパターン部分(直径1mmφのフォトバイア形成))を目視並びに光学顕微鏡(200倍)により観察し、以下の基準に従って、はんだ耐熱性を評価した。なお、本評価は、はんだ組成物の絶縁被膜への作用をより厳しく判定するために、フラックス組成物にて評価を行っている。
(i)ベタ塗部評価
◎:3サイクル繰り返し後も絶縁被膜に変化が認められない。
○:3サイクル繰り返し後の絶縁被膜にほんの僅か変化が認められる。
△:2サイクル繰り返し後の絶縁被膜に変化が認められる。
×:1サイクル繰り返し後の絶縁被膜に剥離が認められる。
(ii)パターン部評価
○:3サイクル繰り返し後も絶縁被膜に変化が認められない。
×:2サイクル繰り返し後の絶縁被膜に若干剥離が認められる。
××:1サイクル繰り返し後の絶縁被膜に剥離が認められる。
(2)はんだの広がり性
JIS Z 3197(1986)のはんだ付け用樹脂系フラックス試験方法6.10項の方法に準拠して、酸化銅板上にフラックス組成物を、0.05gを秤量し、JIS Z 3282 H60 A1.6mmΦの線状はんだ直径3cmのリングをのせた。そして、250℃のはんだバスで溶融後、フラックス残留分をとりのぞき、はんだを観察して、以下の基準に従って、はんだの広がり性を評価した。
◎:はんだが十分に広がっている。
○:はんだが広がっている。
△:はんだが広がらない。
×:銅板にぬれていない。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明のはんだ組成物(実施例1~8)は、はんだ耐熱性(ベタ塗、パターン)、およびはんだの広がり性の全ての結果が良好であることが確認された。
従って、本発明のはんだ組成物は、絶縁被膜に作用しにくく、はんだの広がり性に優れることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のはんだ組成物は、電子機器のプリント配線基板などの電子基板に電子部品を実装するための技術として好適に用いることができる。