IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エー・アンド・デイの特許一覧

<>
  • 特許-体重計 図1
  • 特許-体重計 図2
  • 特許-体重計 図3
  • 特許-体重計 図4
  • 特許-体重計 図5
  • 特許-体重計 図6
  • 特許-体重計 図7
  • 特許-体重計 図8
  • 特許-体重計 図9
  • 特許-体重計 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】体重計
(51)【国際特許分類】
   G01G 19/44 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
G01G19/44 L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023134017
(22)【出願日】2023-08-21
【審査請求日】2023-08-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522193547
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜野 強太
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-239140(JP,A)
【文献】登録実用新案第3162981(JP,U)
【文献】特開2023-009453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 19/00-19/64
G01G 21/00-23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計量物が載置される計量台と、
前記計量台の下方に配置されて前記計量台を支持し、床面に着地される脚と、
を有し、
前記計量台の側縁部に、下方に向かって突出する凸部が前記側縁部に沿って周設されており、前記凸部により、前記計量台と前記床面との間の空間の入口高さが、前記空間の中央部の高さよりも低く構成されており、
少なくとも一部の前記凸部は、長手方向断面が、下方に向かって突出する三角形状や半円形状である、
ことを特徴とする体重計。
【請求項2】
計量可能最大荷重が載加された前記計量台のたわみ量と、前記空間の前記入口高さを加算した値が、前記空間の中央部の高さよりも小さくなるよう構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の体重計。
【請求項3】
少なくとも一部の前記凸部は、下カバー部材の構成の一部として前記計量台の底面に取付けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の体重計。
【請求項4】
前記下カバー部材は、前記計量台の一辺の側面と底面に亘って、設けられる、
ことを特徴とする請求項3に記載の体重計。
【請求項5】
少なくとも一部の前記凸部は、一方向に長い略矩形の金属平板から構成され、長手方向に沿って複数回折り曲げられることで、前記金属平板の一方の長辺に、長手方向の側縁に沿って、下方に向かって突出するライン状凸部として形成され、前記長辺が前記計量台の左右の辺に沿うように、かつ前記ライン状凸部が外側となるように配置され、前記計量台の底面に締結される、
ことを特徴とする請求項1、請求項3、請求項4のいずれか一項に記載の体重計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は体重計、特に計量台下への異物侵入による計量精度の悪化を抑制した体重計に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1のように、車椅子体重計や医療用秤など、大型の体重計がある。被計量者が、足を高く上げることなく計量台の上に乗ることができるように、計量台本体を薄く構成し、かつ脚を短くして床面と計量台との差が少なくなるように、低床に構成されている。このため、計量台と床面との隙間にペンなどの異物が入り込んで、計量台の下面に接触してしまい、計量値を狂わせてしまうという問題が発生する。同様の問題は家庭用の小型体重計でも発生する可能性があるが、計量台自体が軽く小さいので、異常を感じた際に計量台を持ち上げて確認することができ、異常の原因を発見することができた。
【0003】
また、例えば特許文献2では、床面と計量台下の距離を測るセンサを備え、異常が発生すると検知してエラー状態を生成して報知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録3234894号
【文献】特開2010-25596号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように、大型の体重計では、例えばペンや注射針キャップなどの異物が転がって、計量台下の空間に入り込んでしまっても気がつきにくく、また取り出しにくい。計量台に荷重が載加されて計量台が下方へたわみ、計量台下に入り込んだ異物と干渉すると計量誤差を生じてしまう。
【0006】
さらに、特許文献2では、エラーを検知するセンサや報知する報知手段が必要となり、構造が複雑となり、もっとシンプルに計量精度の悪化を抑制する機構が望まれている。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、計量台下への異物侵入による計量精度の悪化を抑制した体重計を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するため、本開示の体重計は、被計量物が載置される計量台と、前記計量台の下方に配置されて前記計量台を支持し、床面に着地される脚とを有し、前記計量台の側縁部に、下方に向かって突出する凸部が前記側縁部に沿って周設されており、前記凸部により、前記計量台と前記床面との間の空間の入口高さが、前記空間の中央部の高さよりも低く構成されているものとした。
【0009】
この態様によれば、計量台下の空間は、入口が最も低く、中央部の方が高い。計量台下に入り込んだ異物が、計量台と干渉し、計量精度を悪化させることを抑制した。
【0010】
また、ある態様では、計量可能最大荷重が載加された前記計量台のたわみ量と、前記空間の前記入口高さを加算した値が、前記空間の中央部の高さよりも小さくなるよう構成した。この態様においては、計量可能最大荷重が計量台に載加された場合でも、計量台下の空間の中央部の高さは、計量台下の空間の入口高さよりも高くなる。異物が計量台下に侵入しても、異物が計量台と干渉することがなく、計量値に影響を与えることもない。
【発明の効果】
【0011】
上記構成によれば、計量台下への異物侵入による計量精度の悪化を抑制した体重計を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る体重計の斜視図である。
図2】同体重計の正面図である。
図3】同体重計の平面図である。
図4】同体重計の部分分解斜視図である。
図5】同体重計の図2のV-V線に沿った端面図である。
図6】同体重計の図3のVI-VI線に沿った端面図である。
図7】同体重計の図3のVII-VII線に沿った断面図である。
図8】同体重計の計量台に負荷がかかった状態を示す。図6に対応する。
図9】比較用の従来体重計の断面図である。図6に対応する。
図10】比較用の従来体重計の断面図である。図7に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。また、以下の実施形態および変形例の説明において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0014】
(体重計)
本開示の構成に係る好ましい実施形態である体重計1を、図面に従って説明する。図1は、本発明の好適な実施の形態に係る体重計1の斜視図を示す。図2は、体重計1の正面図を示す。図3は、体重計1の平面図である。
【0015】
図1図3に示すように、体重計1は車椅子体重計などの医療用の大型の体重計である。被計量物荷重(被計量者)が載加される計量台20と、計量台20の下方の四隅に配置される脚8を有し、床面FLに脚8を着地させて使用される。脚8により、計量台20と床面FLとの間には隙間が生じる。この隙間を台下空間Sと称する。
【0016】
被計量者が安全に乗り上げるため、計量台20は、踏面となる上面が広く、かつ全体が薄く構成されて、床面FL近くに配置される。歩行が不自由または困難な被計量者が掴まり立ちできるように、計量台20の左右の側縁には手すり4が立設している。車椅子に乗った被計量者も、車椅子のまま計量台20に乗り上げることができるように、計量台20の前後の側縁部には、床面FLに連なる緩勾配のスロープ3が設けられている。計量台20には、表示部5が立設しており、計量台20へ載加された荷重が、計量結果として表示部5に表示される。
【0017】
体重計1は、例えばペンや注射針キャップなどの異物が、計量台20の側面下の隙間から、台下空間Sに転がり入り込み、計量時に下方へたわんだ計量台20と干渉して、計量値に誤差が生じることを防止するように構成されている(詳しくは後述する)。
【0018】
体重計1の構成について詳しく説明する。図4は、体重計1の部分分解斜視図である。体重計1は、表示部5を除き左右対称に構成されており、図4では体重計1の右方領域のみ分解して示して左方領域の分解を省略した。
【0019】
体重計1は、前述の計量台20、手すり4、表示部5、脚8のほか、上カバー部材80、荷重センサ40、固定プレート60、下カバー部材70を備える。
【0020】
計量台20は、平面視矩形状で、大きさに対して高さが非常に低い扁平形状に構成される。計量台20は、計量台20の左右の側辺を構成するベース梁21、左右のベース梁21に渡って固定される複数の桁材23、および左右のベース梁21の間に配置されて固定されるロードプレート22を有する。
【0021】
ベース梁21は、無底であり、前後の端面も開放され、主として左右の面と天井面からなり、それぞれの面を構成する中空角材や平板が溶接されて形成される。このため、内側には下方から大きく窪む内部空間(以下、収容空間SPを称する)が形成される。この収容空間SPに荷重センサ40が収容される。
【0022】
桁材23は、中空角材で構成され、複数の桁材23が左右のベース梁21の底面に溶接され、左右のベース梁21に連結する。
【0023】
ロードプレート22は、桁材23の上に載置され固定される。スロープ3はロードプレート22の一部として構成される。桁材23は、ベース梁21の底面に固定されているため、ロードプレート22もベース梁21の下方に固定され、被計量者が足を大きく上げることなく計量台20へ上がることができる。
【0024】
計量台20の四隅の下方には、荷重センサ40である起歪体が連結される。荷重センサ40は計量台20と脚8の間に介装され、計量台20は荷重センサ40に支持される。
【0025】
上カバー部材80は、ベース梁21およびベース梁21に装着される図示しない演算装置などの内部機構の目隠し部材であり、ベース梁21を上から覆い、該ベース梁21に取り付けられることで、ベース梁21および内部機構を外部から隠蔽する。上カバー部材80には、手すり4および表示部5が立設され、手すり4および表示部5を含む上カバー部材80は、計量台20を介して荷重センサ40に装着される。上カバー部材80は、床面FLからは離間して計量台20にのみ接触して該ベース梁21に支持されており、荷重センサ40と干渉することはない。このため、計量台20の上に乗った被計量者が、手すり4に掴まる、もたれ掛かるなどしても、計量値に影響はない。
【0026】
荷重センサ40では所定の標準状態から変化値が荷重として計算される。即ち、計量台20には何も置かれていない状態から、計量台20に載加されて重量として作用した負荷が、荷重センサ40で検出され、差分値が重量変換されて、表示部5に表示される。被計量者が車椅子に乗っていた場合、あらかじめ車椅子の重量を記憶させることで、差分値を計算して被計量者の体重を表示させることも可能である。
【0027】
図5図2のV-V線に沿ったA部の鉛直端面図である。荷重センサ40である起歪体は、一方向に長い略直方体形状で、長手方向をベース梁21と揃えて、ベース梁21の上面の下方で、ベース梁21の内側の収容空間SPに配置される。荷重センサ40である起歪体の一方の端部が可動端41、もう一方の端部が固定端42であり、固定端42側をベース梁21の端部に向けて配置される。荷重センサ40の側方にはメガネ状の貫通孔が穿設されており、貫通孔の設けられた薄肉部に、図示しない歪みゲージが貼り付けされている。固定端42を固定し、可動端41に荷重を付加することによって薄肉部が変形し、この変形が歪みゲージによって電気信号に変換され、重量値に変換される。
【0028】
固定端42の上面には不図示のネジ穴が設けられており、固定端42は平板の中間部材46を挟んでベース梁21の底面にボルト(不図示)で締結される。
【0029】
前述の通り、ベース梁21の下方には、荷重センサ40を収めるため収容空間SPが設けられており、荷重センサ40は収容空間SPに収まってベース梁21の下面に固定され、ベース梁21を下方から支持する。荷重センサ40とベース梁21の間に中間部材46が介装されており、荷重センサ40がベース梁21に接触することはない。ベース梁21に底面から上方に大きく窪んだ収容空間SPを設けて、収容空間SPの上面に荷重センサ40を固定することで、ベース梁21と荷重センサ40との固定面を高くし、相対的にベース梁21に固定されるロードプレート22の配置位置を下げている。ロードプレート22の上面は、被計量者の踏面であり、踏面をより床面FL近くに配置して、安全性を高めている。
【0030】
荷重センサ40の可動端41の底面には、平板の固定プレート60が、不図示の固定部材にて締結されている。固定プレート60の底面には、床面FLに当接する脚8が配置されている。脚8の先端部にはネジ部が設けられており、脚8を回転させることで、固定プレート60からの突出量が変化する。脚8を回転させることで、脚8の突出量を調整して、計量台20が水平となるように調整できる。
【0031】
下カバー部材70は、上カバー部材80と同様に、ベース梁21を下から覆い、ベース梁21を外部から目隠しする。下カバー部材70は、桁材23の底面に不図示の固定部材で取り付けられる。荷重センサ40は、ベース梁21と桁材23の間に配置され、両者と接触することはない。
下カバー部材70には、脚8の配置に対応して挿通孔72が形成されおり、脚8は挿通孔72に挿通して配置される。
【0032】
(配置と離間距離)
体重計1は、計量台20下の台下空間Sに異物が侵入し、この異物が計量台20と干渉して計量精度悪化などの悪影響が生じることを抑制するように構成されている。これを、図を用いて詳しく説明する。図6は、図3のVI-VI線に沿った断面図である。図7は、図3のVII-VII線に沿った断面図である。図2のA部拡大図および図4の分解斜視図も参照のこと。なお、図6においては、上カバー部材80の両端に設けられた上カバー蓋81(図3参照)は取り外した状態としている。
【0033】
図4の分解斜視図、および図6の断面図に示すように、下カバー部材70は、一方向に長い略矩形の金属平板から構成され、長手方向に沿って複数回折り曲げられることで、一方の長辺に、長手方向の側縁に沿って、下方に向かって突出するライン状凸部71が形成される。下カバー部材70は、長辺が計量台20の左右の辺に沿うように、かつライン状凸部71が外側となるように配置される。下カバー部材70がベース梁21の底面に締結されると、ライン状凸部71は計量台20の左右の側端部に沿って配置され、下方へ向かって突出して床面FLに近接する。ライン状凸部71は台下空間Sの左右辺の入口に配置されるため、ライン状凸部71により台下空間Sの左右の辺の入口が狭められる(図6参照)。
【0034】
また、図1に示すように、計量台20の前後の辺には、スロープ3が設けられている。スロープ3は、計量台20の内側から外側に向かって低くなり、外側端部で最も床面FLに近接する。計量誤差を発生させないように、スロープ3は、もっとも低く配置される外側端部でも、床面FLには接触しない。図7に示すように、スロープ3は台下空間Sの前後の辺の入口に配置されるため、換言すれば、スロープ3により、台下空間Sの前後の辺の入口が狭められる。
【0035】
ここで、矩形状の台下空間Sの入口の高さを入口高Tとする。詳しくは、ライン状凸部71と床面FLとの離間距離である、台下空間Sの左右辺の入口高さを第1入口高T1とする。スロープ3の先端部と床面FLとの離間距離である、台下空間Sの前後辺の入口高さを第2入口高T2とする。台下空間Sの入口部分を除いた空間の高さである、計量台20と床面FLとの離間距離を離間距離Dとする。
【0036】
計量台20は床面FL近くに配置されているため、台下空間Sは、高さが極めて低い極薄型の略直方体状となる。計量台20の左右の側縁部の下方、即ち、台下空間Sの左右辺の入口に、下カバー部材70が配置されることにより、ライン状凸部71の突出量分だけ、第1入口高T1は離間距離Dよりも小さくなる。同様に、計量台20の前後の辺にスロープ3が設けられることにより、スロープ3の分だけ、第2入口高T2は、離間距離Dよりも小さくなる。台下空間Sの入口となる四辺が、台下空間Sの他領域の高さより低く構成され、台下空間Sは入口となる側縁部が最も低くなる。
【0037】
このように、体重計1では、計量台20にライン状凸部71およびスロープ3を設けることで、計量台20の側縁部に下方に向かって突出する凸部を周設し、台下空間Sの入口高さが、台下空間Sの中央部の高さより低くなるように構成した。
【0038】
台下空間Sの入口が低くなると、相対的に台下空間Sの内側空間(入口以外の空間)が高くなる。台下空間Sにおいては、入口が最も低く(狭く)、それ以外の箇所では相対的に高く(広く)なるように、高低差が形成される。これにより、仮に入口高Tよりも小さな異物が台下空間Sに浸入した場合であっても、異物が台下空間Sで計量台20と干渉することを防止した。即ち、体重計1では、台下空間Sへの大きな異物の侵入は入口で阻止され、かつ、入口を通過した小さな異物は台下空間Sの高低差により、計量台20と干渉することがない。
【0039】
(作用効果)
例えば、台下空間Sの入口を遮蔽する、床面FLと接触して完全に異物を遮蔽する遮蔽機構を用いた場合と比較すると、以下の利点がある。
【0040】
まず、例えば体重計1を移動せるため、計量台20を倒立させて、側面に設けられた車輪で転がして搬送するとき、台下空間Sの入口には床面FLとの隙があるため、作業者が台下空間Sの入口から指を入れて、ライン状凸部71に指をかけると、計量台20を持ち上げやすい。同様に、作業者がライン状凸部71に手をかけて倒立状態の計量台20を下げたときにも、作業者が指を計量台20と床面FLと挟まれにくい。このため、入口高Tは、指一本分の厚み程度あると好ましい。具体的には、入口高Tが10mm~15mmだと好ましく、より好ましくは11mm~13mmである。また、入口に隙を設けているため、計量台20を上げ下げしたときに、ライン状凸部71が床面FLと接触して床面FLを傷つけることがない。加えて、台下空間Sの入口を低くしているため、ライン状凸部71に当たって止まった異物、例えば、落として転がったペンなどを、作業者は視認することができ、見つけ次第、取り除くことができる。
【0041】
図8は計量台20に荷重か載加された状態の体重計1を示す。図8図6に対応する。計量台20は、高さに対して踏面が広い薄型直方体であり、四隅に配置された荷重センサ40の起歪体でのみ支持されているため、踏面に載加されると下方へたわみやすい。このとき、体重計1は、計量可能範囲で以下の式が成立する。
入口高T+たわみ量ST < 初期離間距離D0
初期離間距離D0は、計量台20の側縁部以外(台下空間Sへの入口以外)の、計量台20に無負荷状態の計量台20と床面FLとの離間距離を示す。
【0042】
体重計1の最大計量値(計量可能な最大荷重)が計量台20に載加されると、計量台20のたわみ量は最大となる。体重計1の計量可能範囲で上記式は成立するため、初期離間距離D0のうち、最小の初期離間距離D0で、かつたわみ量STが最大でも上記式は成立する。
入口高T < 最小の初期離間距離 - 最大たわみ量
即ち、計量台20と床面FLとの距離が最も近い位置に、想定される最大荷重が計量台20に掛けられ、計量台20が下方に最大にたわんだとき、計量台20と床面FLとの離間距離は最小となる。この最小離間距離よりも、入口高Tの方が小さい。このため、台下空間Sに入口から入り込んだ異物は、計量台20と干渉することはなく、計量値を狂わせることがない。
【0043】
図8に示すように、第1入口高T1よりも大きな異物G1は、ライン状凸部71に邪魔され、台下空間Sに侵入することができない。第1入口高T1よりも小さな異物G2は、ライン状凸部71の下をくぐり、台下空間Sに侵入することができるが、最もたわんだ計量台20とも干渉しないため計量値に悪影響を与えることがない(図7点線の異物G2´参照)。
【0044】
同様に、図7に示すように、第2入口高T2よりも大きな異物G3は、スロープ3の先端に邪魔され、台下空間Sに侵入することができない。第2入口高T2よりも小さな異物G4は、スロープ3下から台下空間Sに侵入することができるが、最もたわんだ計量台20とも干渉しないため、計量値に悪影響を与えることがない(図3の点線の異物G4´参照)。異物の大きさに関係なく、計量台20下への異物侵入による計量精度悪化を抑制できる。
【0045】
計量台20の側縁部に、下方に突出する凸部(ライン状凸部71とスロープ3)を周設し、台下空間Sの入口高さが、台下空間Sの中央部の高さよりも低く構成されることで、異物と計量台との干渉を抑制し、計量の精度悪化を防止した。
【0046】
ライン状凸部71や、スロープ3などの、計量台20の床面よりも下方に突出する凸部が、計量台20の側端部に周設されることで、台下空間Sへの異物の侵入を抑制することができる。このときライン状凸部71のように、長手方向断面が、下方に向かって突出する三角形状や半円形状であると、作業者が指を掛けやすく好ましい
【0047】
(従来品との比較)
体重計1の上記作用効果を従来品と比較しながら説明する。図9は従来体重計901の断面図であり、図6に対応する。図10は従来体重計の断面図であり、図7に対応する。
【0048】
図9に示すように、従来体重計901は、下カバー部材70を備えておらず、計量台920にライン状凸部71が設けられていない。ベース梁921の底面に計量台920(詳しくは中空角材の桁材923)が固定されているため、計量台920下の台下空間S900の高さは、入口と中央部で変わらず、一定となる。計量台920と床面FLとの離間距離D900は、台下空間S900の第1入口高T901と同じである(第1入口高T901=離間距離D900)。
【0049】
従来体重計901にはライン状凸部71が設けられておらず、落としたペンなどの第1入口高T901よりも小さな異物G901は、計量台920下に転がり、台下空間S900に入り込む。計量台920に荷重が載加されて計量台920がたわむと、たわんだ計量台920´と台下空間S900に転がり込んだ異物G901´が干渉し、従来体重計901の計量値を狂わせ、計量精度が下がる。
【0050】
従来体重計901について、台下空間S900の前後の辺の入口の態様についても同様である。図10に示すように、計量台920の前後の辺にはスロープ903が設けられている。計量台920下の台下空間S900の高さはおおむね一定であり、計量台920と床面FLとの離間距離D900は、台下空間S900の第2入口高T902ともおおよそ同じとなる(第2入口高T902=離間距離D900)。このため第2入口高T902よりも小さな異物G903は、計量台920下に転がり、台下空間S900に入りこむ。計量台920に荷重が載加されて計量台920がたわむと、たわんだ計量台920と台下空間S900に転がり込んだ異物G903´が干渉し、従来体重計901の計量値を狂わせ、計量精度が下がる。
【0051】
次に具体的な数値で説明する。体重計1も従来体重計901も、ともに最大計量可能値150kgで、最大計量可能荷重が載加された際の計量台20のたわみ量、計量台920のたわみ量がともに4mmであるとする。
【0052】
一例として、体重計1では、第1入口高T1=11.4mm、初期離間距離D0=20.6mmとする。計量可能最大荷重が負荷された際の計量台20と床面との最小離間距離は、以下の通りである。
体重計1の最小離間距離=20.6mm-4mm=16.6mm
台下空間Sの左右の辺から侵入できる異物の最大の大きさは11.4mmであるため、最大の大きさの異物が台下空間Sに侵入しても、最大にたわんだ計量台20と異物の隙は5.2mm以上となる(16.6mm-11.4mm=5.2mm)。このため、台下空間Sに異物が浸入しても、計量台20と干渉することはなく、体重計1の計量精度に影響はない。
【0053】
これに対し、従来体重計901においては、一例として、無負荷時の離間距離D900=12.6mmとすると、第1入口高T901も離間距離D900と同等となる。計量可能最大荷重が負荷された際の計量台20と床面との最小離間距離は、以下の通りである。
従来体重計901の最小離間距離=12.6mm-4mm=8.6mm
直径12.6mm以下の異物は台下空間S900に入り込んでしまうため、例えば直径10mmのペンが台下空間S900に入りこんだ場合、計量台920に最大計量可能荷重がかかると、ペンと計量台20との隙は1.4mm不足する(8.6mm-10mm=-1.4mm)。この場合、たわんだ計量台920と台下空間S900に入り込んだペンが接触し、従来体重計901の計量値に誤差を生じさせてしまう。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態や変形例について述べたが、上記の実施形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1 :体重計
8 :脚
20 :計量台
FL :床面
S :台下空間(空間)
T :入口高
D :離間距離
【要約】
【課題】
計量台下への異物侵入による計量精度の悪化を抑制した体重計を提供する。
【解決手段】
被計量物が載置される計量台と、前記計量台の下方に配置されて前記計量台を支持し、床面に着地される脚と、を有し、前記計量台の側縁部に、下方に向かって突出する凸部が前記側縁部に沿って周設されており、前記凸部により、前記計量台と前記床面との間の空間の入口高さが、前記空間の中央部の高さよりも低く構成されていることを特徴とする体重計を提供する。計量台下の空間入口に配置される凸部が下方に突出しているため、計量台下の空間は、入口が最も低く、中央部の方が高いため、計量台下に入り込んだ異物が、計量台と干渉し、計量精度を悪化させることを抑制される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10