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  • 特許-繰出容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】繰出容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/12 20060101AFI20240308BHJP
   A45D 40/06 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
A45D40/12
A45D40/06 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018143621
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020018463
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-02-01
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】古原 裕嗣
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】長馬 望
【審判官】西 秀隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-97766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/12
A45D 40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状内容物を保持する保持筒と、
前記保持筒に外装され、径方向に貫く縦孔が形成された規制筒と、
前記規制筒に、前記保持筒の中心軸線回りに沿う周方向に相対回転可能に外装され、内周面に雌ねじ部が形成された外装筒と、
前記外装筒と前記規制筒との間に配設されたねじ筒と、
前記縦孔を通して、前記ねじ筒と前記保持筒とを連結する連結部材と、を備え、
前記ねじ筒の外周面に、前記外装筒の雌ねじ部に螺合する雄ねじ部が形成され、
前記連結部材は、前記保持筒の外周面に、径方向の外側に向けて突出して形成された突起とされ、
前記ねじ筒に、前記連結部材が嵌合された嵌合孔が形成され
前記連結部材が、前記縦孔を通して前記嵌合孔に嵌合されることにより、前記連結部材が、前記ねじ筒と前記保持筒とを連結している、繰出容器。
【請求項2】
前記雌ねじ部および前記雄ねじ部は、複数周にわたって螺合している、請求項1に記載の繰出容器。
【請求項3】
前記雌ねじ部および前記雄ねじ部は一条ねじである、請求項1または2に記載の繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、棒状内容物を保持する保持筒と、保持筒に外装され、径方向に貫く縦孔が形成された規制筒と、規制筒に、保持筒の中心軸線回りに沿う周方向に相対回転可能に外装され、内周面に螺旋溝が形成された外装筒と、を備え、保持筒に、縦孔を通して螺旋溝に挿入された円柱状の被案内突起が形成された繰出容器が知られている。
この繰出容器では、外装筒および規制筒を周方向に相対回転することにより、被案内突起が、縦孔の内周面により規制筒に対する周方向の移動が規制された状態で、螺旋溝内を相対移動することで、保持筒が、外装筒および規制筒に対して前記中心軸線に沿う軸方向に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-208154公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の繰出容器では、外装筒および規制筒を周方向に相対回転したときに、円柱状の被案内突起が、螺旋溝内を相対移動することで、保持筒が軸方向に移動するので、外装筒および規制筒の周方向の相対的な回転移動量に対する、保持筒の軸方向の移動量を調整するのに設計上の制約を受けやすいという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、外装筒および規制筒の周方向の相対的な回転移動量に対する、保持筒の軸方向の移動量を容易に調整することができる繰出容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る繰出容器は、棒状内容物を保持する保持筒と、前記保持筒に外装され、径方向に貫く縦孔が形成された規制筒と、前記規制筒に、前記保持筒の中心軸線回りに沿う周方向に相対回転可能に外装され、内周面に雌ねじ部が形成された外装筒と、前記外装筒と前記規制筒との間に配設されたねじ筒と、前記縦孔を通して、前記ねじ筒と前記保持筒とを連結する連結部材と、を備え、前記ねじ筒の外周面に、前記外装筒の雌ねじ部に螺合する雄ねじ部が形成され、前記連結部材は、前記保持筒の外周面に、径方向の外側に向けて突出して形成された突起とされ、前記ねじ筒に、前記連結部材が嵌合された嵌合孔が形成され、前記連結部材が、前記縦孔を通して前記嵌合孔に嵌合されることにより、前記連結部材が、前記ねじ筒と前記保持筒とを連結している
【0007】
この発明によれば、連結部材が、ねじ筒と保持筒とを、縦孔を通して連結しているので、保持筒、規制筒、およびねじ筒の周方向の相対回転が規制される。これにより、外装筒および規制筒を周方向に相対回転すると、保持筒およびねじ筒も、外装筒に対して周方向に相対回転することとなり、ねじ筒の雄ねじ部および外装筒の雌ねじ部の螺合により、ねじ筒が保持筒とともに、外装筒および規制筒に対して軸方向に移動する。
以上より、外装筒および規制筒を周方向に相対回転したときに、保持筒を軸方向に移動させる機構が、ねじ筒の雄ねじ部および外装筒の雌ねじ部の螺合となっていることから、従来のような、円柱状の被案内突起が螺旋溝内を相対移動する構成と比べて、外装筒および規制筒の周方向の相対的な回転移動量に対する、保持筒の軸方向の移動量を、設計上の制約少なく容易に調整することができる。
【0008】
ここで、前記雌ねじ部および前記雄ねじ部は、複数周にわたって螺合してもよい。
【0009】
この場合、雌ねじ部および雄ねじ部が、複数周にわたって螺合しているので、ねじ筒および保持筒と、外装筒と、の相対位置が不安定になるのを抑制することが可能になり、保持筒内の棒状内容物が折れやすくなるのを抑制することができる。
【0010】
また、前記雌ねじ部および前記雄ねじ部は一条ねじであってもよい。
【0011】
この場合、雌ねじ部および雄ねじ部が一条ねじとなっているので、外装筒および規制筒の周方向の相対的な回転移動量に対する、保持筒の軸方向の移動量を小さく抑えることが可能になり、保持筒内の棒状内容物が折れやすくなるのを確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、棒状内容物が折れやすくなるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る繰出容器の縦断面図である。
図2図1に示す繰出容器において、ねじ筒および保持筒が、外装筒および規制筒に対して上昇した状態を示す縦断面図である。
図3図1に示すねじ筒の縦断面図であって、嵌合孔を正面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1を参照し、本発明の一実施形態に係る繰出容器を説明する。
繰出容器1は、保持筒11、規制筒12、外装筒13、およびねじ筒14を備える。保持筒11、規制筒12、外装筒13、およびねじ筒14は、共通軸と同軸に配設されている。
以下、この共通軸を中心軸線Oといい、中心軸線Oに沿う軸方向から見て、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0015】
保持筒11は、棒状内容物Wを、軸方向のうちの一方側に突出させ、かつ他方側に突出させない状態で保持している。
以下、軸方向のうち、前記一方側を上側といい、その反対側を下側という。棒状内容物Wとしては、例えば化粧料(口紅、リップクリーム、若しくはスティックアイシャドーなど)、薬剤、または糊などが挙げられ、油分を多く含む柔らかい材質であってもよい。
【0016】
保持筒11の下端部に、径方向の外側に向けて突出する嵌合突起(連結部材)11aが形成されている。嵌合突起11aは、保持筒11に2つ形成され、中心軸線Oを径方向に挟む両側に各別に配設されている。嵌合突起11aは、円柱状に形成されている。嵌合突起11aの直径は、嵌合突起11aの高さより大きい。なお、嵌合突起11aの直径は、嵌合突起11aの高さ以下としてもよい。
【0017】
規制筒12は、保持筒11に外装され、径方向に貫く縦孔17が形成されている。保持筒11は、規制筒12内に軸方向に移動可能に嵌合されている。規制筒12の上端開口縁は、保持筒11の上端開口縁より上方に位置している。規制筒12の上端開口縁は、棒状内容物Wの上端縁より上方に位置している。規制筒12の下端開口縁は、保持筒11の下端開口縁より下方に位置している。
【0018】
縦孔17は、規制筒12の下端開口縁から上方に向けて延びている。縦孔17の上端縁は、規制筒12における軸方向の中央部より下方に位置している。縦孔17の上端縁は、保持筒11の上端開口縁より下方で、かつ保持筒11の軸方向の中央部より上方に位置している。縦孔17の内周面のうち、周方向を向く側面17aは、嵌合突起11aの外周面に当接、若しくは近接している。
【0019】
外装筒13は、規制筒12に周方向に相対回転可能に外装されている。外装筒13の内周面と、規制筒12の外周面と、の間に径方向の隙間が設けられている。外装筒13の上端開口縁は、縦孔17の上端縁より上方で、かつ保持筒11の上端開口縁より下方に位置している。外装筒13は、環状の底壁を有する有底筒状に形成されている。底壁における内周縁部に上方に向けて突出する環状突部13aが形成されている。環状突部13aが、規制筒12の下端部内に挿入されている。外装筒13の内周面に、雌ねじ部13bが形成されている。雌ねじ部13bは、外装筒13の内周面のうち、上部を除く全域にわたって形成されている。雌ねじ部13bは、外装筒13の内周面に、軸方向の位置を異ならせて複数周にわたって延びている。
【0020】
図示の例では、繰出容器1は、外装筒13に対する規制筒12の上昇移動を規制する規制リング15を備える。規制リング15は、第1規制リング15aおよび第2規制リング15bを備える。
第1規制リング15aは、外装筒13の上端部内に嵌合された下部と、外装筒13の上端開口から上方に突出した上部と、を備える。第1規制リング15aの上部に、規制筒12および棒状内容物Wを覆うオーバーキャップ16が着脱可能に外嵌されている。
第2規制リング15bは、第1規制リング15aの下部内に嵌合されている。第2規制リング15bの下端開口縁が、規制筒12の外周面に形成された係止突部12bに、係止突部12bの上方から係合することで、外装筒13に対する規制筒12の上昇移動を規制する。
なお、第1規制リング15aおよび第2規制リング15bは、一体に形成されてもよい。
【0021】
ねじ筒14は、外装筒13の内周面と、規制筒12の外周面と、の間に配設されている。ねじ筒14の上端開口縁は、縦孔17における軸方向の中央部より下方に位置している。ねじ筒14の下端開口縁は、外装筒13の下端部に位置している。ねじ筒14の軸方向の長さは、雌ねじ部13bの軸方向の長さの約半分となっている。
【0022】
ねじ筒14の外周面に、外装筒13の雌ねじ部13bに螺合する雄ねじ部14aが形成されている。雄ねじ部14aは、ねじ筒14の外周面に、軸方向の位置を異ならせて複数周にわたって延びている。雄ねじ部14aは、ねじ筒14の外周面における軸方向の全域にわたって形成されている。雄ねじ部14aおよび雌ねじ部13bは、複数周にわたって螺合している。雄ねじ部14aの全体が、雌ねじ部13bに螺合している。雄ねじ部14aおよび雌ねじ部13bは、一条ねじとなっている。
【0023】
ねじ筒14の下部に、径方向に貫く嵌合孔14bが形成されている。嵌合孔14bは、ねじ筒14に2つ形成され、中心軸線Oを径方向に挟む両側に各別に配設されている。嵌合孔14bは、図3に示されるように円形状に形成されている。嵌合孔14bに、保持筒11の嵌合突起11aが、規制筒12の縦孔17を通して嵌合されている。これにより、ねじ筒14および保持筒11が、規制筒12に対して、周方向の移動が規制された状態で、軸方向に移動可能になっている。
【0024】
ねじ筒14の内周面における上端部に、環状溝14cが形成されている。環状溝14cは、ねじ筒14の上端開口縁に開口している。ねじ筒14の縦断面視において、環状溝14cのうち、上部は軸方向に延び、下部は、下方に向かうに従い漸次、径方向の内側に向けて延びるとともに、径方向の外側に向けて窪む曲面状に形成されている。
【0025】
ねじ筒14の内周面において、環状溝14cと嵌合孔14bとの間に位置する部分に、軸方向に延びる導入溝14dが形成されている。導入溝14dは、ねじ筒14の内周面において、嵌合孔14bと周方向の位置が同等の部分に各別に配設されている。導入溝14dの上端部、および環状溝14cは、互いに連通している。導入溝14dの上端部における深さと、環状溝14cの上部における深さと、が互いに同等になっている。導入溝14dの下端部における深さは、下方に向かうに従い漸次、浅くなっている。導入溝14dの下端部は、嵌合孔14bより上方に位置している。
【0026】
以上の構成において、保持筒11の下端部を、ねじ筒14内にねじ筒14の上方から押込むことで、保持筒11の嵌合突起11aが、ねじ筒14の上方から、環状溝14cおよび導入溝14dをこの順に通過し、嵌合孔14bに到達したときに、嵌合孔14b内に嵌合される。
【0027】
以上説明したように、本実施形態による繰出容器1によれば、保持筒11に、ねじ筒14に形成された嵌合孔14bに、規制筒12の縦孔17を通して嵌合された嵌合突起11aが形成されているので、保持筒11、規制筒12、およびねじ筒14の周方向の相対回転が規制される。
これにより、外装筒13および規制筒12を周方向に相対回転すると、保持筒11およびねじ筒14も、外装筒13に対して周方向に相対回転することとなり、ねじ筒14の雄ねじ部14aおよび外装筒13の雌ねじ部13bの螺合により、ねじ筒14が保持筒11とともに、図1および図2に示されるように、外装筒13および規制筒12に対して軸方向に移動する。
【0028】
以上より、外装筒13および規制筒12を周方向に相対回転したときに、保持筒11を軸方向に移動させる機構が、ねじ筒14の雄ねじ部14aおよび外装筒13の雌ねじ部13bの螺合となっていることから、従来のような、円柱状の被案内突起が螺旋溝内を相対移動する構成と比べて、外装筒13および規制筒12の周方向の相対的な回転移動量に対する、保持筒11の軸方向の移動量を、設計上の制約少なく容易に調整することができる。
【0029】
また、雌ねじ部13bおよび雄ねじ部14aが、複数周にわたって螺合しているので、ねじ筒14および保持筒11と、外装筒13と、の相対位置が不安定になるのを抑制することが可能になり、保持筒11内の棒状内容物Wが折れやすくなるのを抑制することができる。
また、雌ねじ部13bおよび雄ねじ部14aが一条ねじとなっているので、外装筒13および規制筒12の周方向の相対的な回転移動量に対する、保持筒11の軸方向の移動量を小さく抑えることが可能になり、保持筒11内の棒状内容物Wが折れやすくなるのを確実に抑制することができる。
【0030】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0031】
例えば前記実施形態では、保持筒11に嵌合突起11aが形成され、ねじ筒14に嵌合孔14bが形成された構成を示したが、保持筒11に嵌合孔14bが形成され、ねじ筒14に嵌合突起11aが形成された構成を採用してもよい。すなわち、ねじ筒14および保持筒11のうちのいずれか一方に、他方に形成された嵌合孔14bに、縦孔17を通して嵌合された嵌合突起11aが形成された構成を採用してもよい。
また、嵌合突起11aとして、保持筒11およびねじ筒14とは別体のピン部材を採用し、このピン部材を、保持筒11およびねじ筒14に形成した嵌合孔に嵌合してもよい。
また、雌ねじ部13bおよび雄ねじ部14aは、1周以下螺合してもよいし、多条ねじであってもよい。
【0032】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 繰出容器
11 保持筒
11a 嵌合突起(連結部材)
12 規制筒
13 外装筒
13b 雌ねじ部
14 ねじ筒
14a 雄ねじ部
14b 嵌合孔
17 縦孔
O 中心軸線
W 棒状内容物
図1
図2
図3