IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特許7450363照明光学系、露光装置および物品製造方法
<>
  • 特許-照明光学系、露光装置および物品製造方法 図1
  • 特許-照明光学系、露光装置および物品製造方法 図2
  • 特許-照明光学系、露光装置および物品製造方法 図3
  • 特許-照明光学系、露光装置および物品製造方法 図4
  • 特許-照明光学系、露光装置および物品製造方法 図5
  • 特許-照明光学系、露光装置および物品製造方法 図6
  • 特許-照明光学系、露光装置および物品製造方法 図7
  • 特許-照明光学系、露光装置および物品製造方法 図8
  • 特許-照明光学系、露光装置および物品製造方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】照明光学系、露光装置および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019193008
(22)【出願日】2019-10-23
(65)【公開番号】P2021067814
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 将樹
(72)【発明者】
【氏名】須田 広美
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-199714(JP,U)
【文献】特開平10-270312(JP,A)
【文献】特開2000-164500(JP,A)
【文献】特開2001-035772(JP,A)
【文献】特開2002-231625(JP,A)
【文献】特開2006-221068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照明面を照明する照明光学系であって、
第1入射面および第1射出面を有し、前記第1入射面に入射した光を均一化して前記第1射出面から射出する第1ロッドインテグレータと、
第2入射面および第2射出面を有し、前記第1射出面から射出し前記第2入射面に入射した光を均一化して前記第2射出面から射出する第2ロッドインテグレータと、
前記第1射出面と前記第2入射面とによって挟まれたスペーサと、
前記第2射出面と前記被照明面との間に配置され、前記第2射出面から射出した光の強度分布の不均一性を低減する光学系と、
を備えることを特徴とする照明光学系。
【請求項2】
前記スペーサは、前記第1射出面から射出した光の一部を減衰させる減衰部を有し、前記減衰部は、回転対称性を有する光強度分布が前記第2入射面に形成されるように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の照明光学系。
【請求項3】
被照明面を照明する照明光学系であって、
第1入射面および第1射出面を有する第1ロッドインテグレータと、
第2入射面および第2射出面を有し、前記第1射出面から射出した光が前記第2入射面に入射する第2ロッドインテグレータと、
前記第1射出面と前記第2入射面とによって挟まれたスペーサと、
前記第2射出面と前記被照明面との間に配置され、前記第2射出面から射出した光の強度分布の不均一性を低減する光学系と、を備え
前記スペーサは、前記第1射出面から射出した光の一部を減衰させる減衰部を有し、前記減衰部は、回転対称性を有する光強度分布が前記第2入射面に形成されるように構成されている、
ことを特徴とする照明光学系。
【請求項4】
前記スペーサは、2回対称性を有する光強度分布が前記第2入射面に形成されるように構成されている、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の照明光学系。
【請求項5】
前記スペーサは、4回対称性を有する光強度分布が前記第2入射面に形成されるように構成されている、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の照明光学系。
【請求項6】
前記第1ロッドインテグレータおよび前記第2ロッドインテグレータは、断面形状が四角形であり、
前記減衰部は、前記第1射出面および前記第2入射面の4隅に接触する、
ことを特徴とする請求項に記載の照明光学系。
【請求項7】
前記スペーサは、前記第1射出面および前記第2入射面と接触するように前記第1射出面と前記第2入射面とによって挟まれて配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の照明光学系。
【請求項8】
前記第1ロッドインテグレータおよび前記第2ロッドインテグレータを支持する支持部材を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の照明光学系。
【請求項9】
前記光学系は、ズーム光学系を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の照明光学系。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の照明光学系と、
投影光学系と、を備え、
前記照明光学系によって照明された原版のパターンが前記投影光学系によって基板に投影されるように構成されていることを特徴とする露光装置。
【請求項11】
基板に塗布された感光材を請求項10に記載の露光装置によって露光する露光工程と、
前記感光材を現像する現像工程と、を含み、
前記現像工程を経た前記基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光学系、露光装置および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の物品を製造するためのリソグラフィー工程において露光装置が使用されうる。露光装置は、原版を照明する照明光学系と、照明光学系によって照明された原版のパターンを基板に投影する投影光学系とを備えうる。露光装置に提供される基板は、表面に感光材が塗布されていて、原版のパターンが基板に投影されることによって、そのパターンが感光材に転写される。照明光学系による原版の照明が不均一であると、感光材へのパターンの転写が良好になされない可能性がある。そこで、照明光学系は、原版を均一な照度で照明するための反射型オプティカルインテグレータを有しうる。
【0003】
照度の均一性を向上させるためには、長い全長を有する反射型オプティカルインテグレータが有利であるが、長い全長を有する反射型オプティカルインテグレータ(ロッドインテグレータ)を低コストで製造することは難しい。特許文献1には、複数のオプティカルインテグレータ(ロッドインテグレータ)を照明光の通過方向に直列に配置した構成が記載されている。この構成により、複数のオプティカルインテグレータを合計した長さを有する1個のオプティカルインテグレータを用いた場合と同等の効果が得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-32909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数のオプティカルインテグレータを互いに離隔して配置すると、上流側のオプティカルインテグレータと下流側のオプティカルインテグレータとの間において損失が発生したり、周辺部の照度が低下したりしうる。そこで、複数のオプティカルインテグレータを互いに接触させて配置すると、接触面で傷、欠損等の劣化が発生しやすくなり、これらも照度を低下させる要因になりうる。あるいは、複数のオプティカルインテグレータを接着剤によって接合する方法も考えられるが、このような方法では、長時間にわたる使用において接着剤が劣化し、光透過率が低下しうる。
【0006】
本発明は、オプティカルインテグレータ同士の接触による傷、欠損等の劣化を抑えながら照度の低下を抑えるために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの側面は、被照明面を照明する照明光学系に係り、前記照明光学系は、第1入射面および第1射出面を有し、前記第1入射面に入射した光を均一化して前記第1射出面から射出する第1ロッドインテグレータと、第2入射面および第2射出面を有し、前記第1射出面から射出し前記第2入射面に入射した光を均一化して前記第2射出面から射出する第2ロッドインテグレータと、前記第1射出面と前記第2入射面とによって挟まれたスペーサと、前記第2射出面と前記被照明面との間に配置され、前記第2射出面から射出した光の強度分布の不均一性を低減する光学系と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オプティカルインテグレータ同士の接触による傷、欠損等の劣化を抑えながら照度の低下を抑えるために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】比較例の露光装置の構成を示す図。
図2】比較例の露光装置におけるオプティカルインテグレータの構成を示す図。
図3】第1実施形態の露光装置の構成を示す図。
図4】第1実施形態の露光装置のオプティカルインテグレータの構成を模式的に示す図。
図5】第1実施形態の露光装置のオプティカルインテグレータにおける光強度分布を模式的に示す図。
図6】第2実施形態の露光装置のオプティカルインテグレータの構成を模式的に示す図。
図7】第2実施形態の露光装置のオプティカルインテグレータにおける光強度分布を模式的に示す図。
図8】第2実施形態の露光装置の照明光学系の機能を説明するための図。
図9】第2実施形態の露光装置の照明光学系の機能を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
まず、図1図2を参照しながら比較例を説明する。図1には、比較例の露光装置EX’の構成が示されている。図2(a)には、オプティカルインテグレータ4の構成が示されている。露光装置EX’は、照明光学系ILと、投影光学系7とを備えうる。照明光学系ILは、例えば、光源1、楕円ミラー2、集光光学系3、オプティカルインテグレータ4、集光光学系5を含みうる。光源1は、例えば、超高圧水銀ランプ、エキシマレーザーまたはLED等で構成されうるが、他の発光デバイスによって構成されてもよい。楕円ミラー2は、その第1焦点が光源1の位置に一致するように配置されうる。楕円ミラー2で反射された光は、集光光学系3を経てオプティカルインテグレータ4に導かれる。
【0012】
オプティカルインテグレータ4は、光軸に沿って配置された第1ロッドインテグレータ4aおよび第2ロッドインテグレータ4bを含みうる。第1ロッドインテグレータ4aは、第1入射面42および第1射出面44を有し、第2ロッドインテグレータ4bは、第2入射面52および第2射出面54を有する。集光光学系3から射出した光は、まず、第1ロッドインテグレータ4aの第1入射面42に入射し、第1ロッドインテグレータ4aにおいて反射を繰り返することによって均一化され、第1ロッドインテグレータ4aの第1射出面44から射出する。第1ロッドインテグレータ4aの第1射出面44から射出した光は、第1射出面44から離隔して配置された第2ロッドインテグレータ4bの第2入射面52に入射する。第2入射面52に入射した光は、第2ロッドインテグレータ4bにおいて反射を繰り返することによって均一化され、第2ロッドインテグレータ4bの第2射出面54から射出する。
【0013】
第2ロッドインテグレータ4bの第2射出面54から射出した光は、集光光学系5を経て原版6を照明する。このようにして、被照明面に配置された原版6は、照明光学系ILによって照明される。照明光学系ILによって照明された原版6のパターンは、基板ステージ9に配置された基板8に対して投影光学系7によって投影される。これによって、基板8に塗布された感光材(フォトレジスト)が露光され、潜像が形成される。照明光学系ILによって被照明面(原版6)を均一な照度で照明することは、原版6の微細なパターンを高精度に基板8上の感光材に転写するために重要である。
【0014】
被照明面をより均一な照度で照明するためには、オプティカルインテグレータ4の長さを長くすることが有効であるが、オプティカルインテグレータ4を1つの長いロッドインテグレータで構成することは難しい。そこで、少なくとも2つのロッドインテグレータ4a、4bを直列に配置してオプティカルインテグレータ4が構成されうる。
【0015】
図2(b)において、第2ロッドインテグレータ4bの第2入射面52における光強度Iの分布が実線によって示されている。図2(b)において、横軸は、第2入射面52上のY方向における位置であり、縦軸は光強度Iである。第1射出面44と第2入射面52との間隙から光が漏れるために、第1射出面44から射出した光の一部は、第2入射面52に入射しない。したがって、第2入射面52の周辺部における光強度Iが低下しうる。なお、図2(b)において、点線は、第1射出面44と第2入射面52とが接触している場合におけるその接触面における光強度の分布を示している。第1、第2インテグレータ4a、4bの間に間隙が存在する場合、それらの合計の長さを有する1つのロッドインテグレータでオプティカルインテグレータ4を構成した場合よりも被照明面における照度が低下し、また、照度の均一性が低下する。
【0016】
しかし、第1ロッドインテグレータ4aの第1射出面44と第2ロッドインテグレータ4bの第2入射面52とを接触させて配置すると、露光装置の振動、光の照射による膨張等によって第1射出面44および第2入射面52に傷、欠損等の劣化が発生しうる。これによって、被照明面における照度が低下しうる。また、第1ロッドインテグレータ4aの第1射出面44と第2ロッドインテグレータ4bの第2入射面52とを接着剤で接着すると、長時間にわたる使用において接着剤が劣化するために光透過率が低下し、被照明面における照度が低下しうる。したがって、ロッドインテグレータ同士を近接して配置することが望ましいものの、ロッドインテグレータ同士を接触させて配置することは好ましくない。
【0017】
以下、図3図4図5を参照しながら本発明の第1実施形態の露光装置EXについて説明する。図3には、第1実施形態の露光装置EXの構成が示されている。図4には、第1実施形態の露光装置EXのオプティカルインテグレータ4の構成が模式的に示されている。図5には、第1実施形態の露光装置EXのオプティカルインテグレータ4における光強度分布が模式的に示されている。第1実施形態として言及しない事項は、上記の比較例に従いうる。
【0018】
第1実施形態の露光装置EXは、比較例の露光装置EXにおけるオプティカルインテグレータ4を改良した構成を有する。第1実施形態において、オプティカルインテグレータ4は、光軸に沿って配置された第1ロッドインテグレータ4aおよび第2ロッドインテグレータ4bを含みうる。第1ロッドインテグレータ4aは、第1入射面42および第1射出面44を有し、第2ロッドインテグレータ4bは、第2入射面52および第2射出面54を有する。集光光学系3から射出した光は、まず、第1ロッドインテグレータ4aの第1入射面42に入射し、第1ロッドインテグレータ4aにおいて反射を繰り返することによって均一化され、第1ロッドインテグレータ4aの第1射出面44から射出する。第1ロッドインテグレータ4aの第1射出面44から射出した光は、第1射出面44から離隔して配置された第2ロッドインテグレータ4bの第2入射面52に入射する。第2入射面52に入射した光は、第2ロッドインテグレータ4bにおいて反射を繰り返することによって均一化され、第2ロッドインテグレータ4bの第2射出面54から射出する。第1ロッドインテグレータ4aおよび第2ロッドインテグレータ4bは、断面形状が四角形(例えば、正方形、または、正方形以外の長方形)でありうる。
【0019】
第1実施形態において、オプティカルインテグレータ4は、第1ロッドインテグレータ4aの第1射出面44と第2ロッドインテグレータ4bの第2入射面52とによって挟まれたスペーサ12を含みうる。スペーサ12は、第1射出面44および第2入射面52と接触するように配置されうる。スペーサ12は、第1ロッドインテグレータ4aの第1射出面44と第2ロッドインテグレータ4bの第2入射面52とが接触しないように、第1射出面44と第2入射面52との間の間隙を維持しうる。スペーサ12を設けることによって、第1射出面44と第2入射面52との間の間隙を小さく維持しつつ、第1射出面44と第2入射面52との接触を防止することができる。これにより、該間隙による光の損失を抑えつつ第1射出面44および第2入射面52に傷等の劣化が生じることを抑制することができる。
【0020】
第1実施形態において、オプティカルインテグレータ4は、第1、第2ロッドインテグレータ4a、4bを支持する支持部材Bを含みうる。支持部材Bは、スペーサ12を支持してもよい。オプティカルインテグレータ4は、位置決め部材P1および保持部材P2を含みうる。位置決め部材P1および保持部材P2は、支持部材Bによって支持されうる。保持部材P2は、位置決め部材P1に対して第1、第2ロッドインテグレータ4a、4bを押し付けて、摩擦力によって第1、第2ロッドインテグレータ4a、4bを保持しうる。保持部材P2は、第1、第2ロッドインテグレータ4a、4bに接触する部分を有し、該部分は、弾性部材で構成されうる。
【0021】
スペーサ12は、第1射出面44から射出した光の一部(光軸に直交する断面における一部)を減衰させる減衰部BPを有し、減衰部BPは、図4(b)に例示されるように、回転対称性を有する光強度分布が第2入射面52に形成されるように構成されうる。図4(b)に示された例では、スペーサ12は、2回対称性を有する光強度分布が第2入射面52に形成されるように構成されうる。
【0022】
オプティカルインテグレータ4は、光軸に沿って第1、第2ロッドインテグレータ4a、4bと直列に配置された少なくとも1つの他のロッドインテグレータを含むことできる。つまり、オプティカルインテグレータ4は、光軸に沿って直列に配置された少なくとも3つのロッドインテグレータを含むことができ、それらのうち互いに隣り合うロッドインテグレータの間にはスペーサ12が配置されうる。
【0023】
図5(a)には、第2ロッドインテグレータ4bの第2入射面52における光強度分布が模式的に示されている。図5(b)には、第2ロッドインテグレータ4bの第2入射面52と第2射出面54との間の仮想面53における光強度分布が模式的に示されている。図5(c)には、第2ロッドインテグレータ4bの第2射出面54における光強度分布が模式的に示されている。図5(a)、(b)、(c)に模式的に示されるように、減衰部BPによって形成される回転対称性を有する不均一な光強度分布は、第2ロッドインテグレータ4bにおける反射の繰り返しによって徐々に均一化される。
【0024】
照明光学系ILは、光学系13を含みうる。光学系13は、第2射出面54と被照明面(原版6)との間に配置され、第2射出面54から射出した光の強度分布の不均一性を低減するように構成されうる。図3における符号13a、13b、13cは、光学系13の移動を模式的に示すものである。光学系13は、例えば、ズーム光学系でありうる。光学系13を設けることによって、スペーサ12の減衰部BPによって発生しうる光強度分布の不均一性を低減することができる。
【0025】
以下、図6図7図8を参照しながら本発明の第2実施形態の露光装置EXについて説明する。図6には、第2実施形態の露光装置EXのオプティカルインテグレータ4の構成が模式的に示されている。図7には、第2実施形態の露光装置EXのオプティカルインテグレータ4における光強度分布が模式的に示されている。第2実施形態として言及しない事項は、第1実施形態の露光装置EXに従いうる。第2実施形態において、オプティカルインテグレータ4は、第1ロッドインテグレータ4aの第1射出面44と第2ロッドインテグレータ4bの第2入射面52とによって挟まれたスペーサ12を含みうる。スペーサ12は、第1射出面44および第2入射面52と接触するように配置されうる。スペーサ12は、第1ロッドインテグレータ4aの第1射出面44と第2ロッドインテグレータ4bの第2入射面52とが接触しないように、第1射出面44と第2入射面52との間の間隙を維持しうる。第1ロッドインテグレータ4aおよび第2ロッドインテグレータ4bは、断面形状が四角形(例えば、正方形、または、正方形以外の長方形)でありうる。
【0026】
第2実施形態において、スペーサ12は、第1射出面44から射出した光の一部を減衰する減衰部BPを有し、減衰部BPは、図6(b)に例示されるように、回転対称性を有する光強度分布が第2入射面52に形成されるように構成されうる。図6(b)に示された例では、スペーサ12は、4回対称性を有する光強度分布が第2入射面52に形成されるように構成されうる。減衰部BPは、第1射出面44および第2入射面52の4隅に接触するように配置されうる。スペーサ12は、例えば、円形の開口を有しうるが、他の形状(例えば、楕円形)の開口を有してもよい。
【0027】
図7(a)には、第2ロッドインテグレータ4bの第2入射面52における光強度分布が模式的に示されている。図7(b)には、第2ロッドインテグレータ4bの第2入射面52と第2射出面54との間の仮想面53における光強度分布が模式的に示されている。図7(c)には、第2ロッドインテグレータ4bの第2射出面54における光強度分布が模式的に示されている。図7(a)、(b)、(c)に模式的に示されるように、減衰部BPによって形成される回転対称性を有する不均一な光強度分布は、第2ロッドインテグレータ4bにおける反射の繰り返しによって徐々に均一化される。しかしながら、オプティカルインテグレータ4による光強度分布の均一化が不十分な場合がありうる。
【0028】
そこで、照明光学系ILは、光学系13を含みうる。光学系13は、第2射出面54と被照明面(原版6)との間に配置され、第2射出面54から射出した光の強度分布の不均一性を低減するように構成されうる。図3における符号13a、13b、13cは、光学系13の移動を模式的に示すものである。光学系13は、例えば、ズーム光学系でありうる。光学系13を設けることによって、スペーサ12の減衰部BPによって発生しうる光強度分布の不均一性を低減することができる。
【0029】
図8(a)には、第2ロッドインテグレータ4bの第2入射面52、仮想面53、第2射出面54における光強度分布が例示されている。図8(a)において、横軸は、第2ロッドインテグレータ4bの断面(光軸に直交する方向の断面)における対角方向の位置であり、縦軸は光強度である。
【0030】
図8(b)には、光学系13の作用が模式的に示されている。光学系13を移動させることによって、原版6が配置された被照明面における光強度Iの分布を変化させることができる。ここで、図8(b)は、光学系13に対して、均一な光強度分布を有する光が入射した場合に被照明面に形成される光強度Iの分布を模式的に示している。図8(b)において、横軸は、第2ロッドインテグレータ4bの断面(光軸に直交する方向の断面)における対角方向の位置であり、縦軸は光強度である。光学系13が光源1の側の位置13aに配置されるとき、被照明面に形成される光強度Iの分布は、下凸の2次曲線のような断面形状になりうる。光学系13が被照明面の側の位置13cに配置されるとき、被照明面に形成される光強度Iの分布は、上凸の2次曲線のような断面形状になりうる。
【0031】
図9(a)、(b)には、光学系13によって提供される効果が模式的に示されている。図9(a)において、符号53は、第2ロッドインテグレータ4bの長さが図6(a)の仮想面53までしかなく、かつ、光学系13がない場合に、原版6が配置される被照明面に形成される光強度Iの分布が模式的に示されている。図9(a)において、符号13aは、位置13aに配置された光学系13による光強度Iの補正効果を示している。図9(a)において、符号6は、第2ロッドインテグレータ4bの長さが図6(a)の仮想面53までしかなく、かつ、光学系13が位置13aに配置されている場合に原版6が配置される被照明面に形成される光強度Iの分布が模式的に示されている。光学系13の位置の調整によって、被照明面に形成される光強度Iの分布における不均一性を低減することができることが分かる。
【0032】
図9(b)において、符号54は、第2ロッドインテグレータ4bの長さが図6(a)の第2射出面54まであり、かつ、光学系13がない場合に、原版6が配置される被照明面に形成される光強度Iの分布が模式的に示されている。図9(b)において、符号13cは、位置13cに配置された光学系13による光強度Iの補正効果を示している。図9(b)において、符号6は、第2ロッドインテグレータ4bの長さが図6(a)の第2射出面54まであり、かつ、光学系13が位置13cに配置されている場合に原版6が配置される被照明面に形成される光強度Iの分布が模式的に示されている。光学系13の位置の調整によって、被照明面に形成される光強度Iの分布における不均一性を低減することができることが分かる。
【0033】
以上の各実施形態において、スペーサ12の開口は、回転対称性を有する光強度分布が第2入射面52に形成される形状を有しうる。スペーサ12に設けられうる開口は、例えば、円形であってもよいし、楕円形であってもよいし、第2ロッドインテグレータ4bの4隅において光を遮断する他の形状であってもよい。あるいは、スペーサ12は、分離した複数の部分で構成されてもよい。減衰部BPの個数は、任意に定められうるが、回転対称性を有する光強度分布が第2入射面52に形成されるように定められることが好ましい。複数の減衰部BPの個々の面積は、任意に定められうるが、回転対称性を有する光強度分布が第2入射面52に形成されるように定められることが好ましい。
【0034】
スペーサ12は、光を透過するする部材で構成されてもよい。その場合、被照明面により均一な光強度分布が形成されうる。光学系13は、上記の例のようにズーム光学系でありうるが、他の光学系であってもよい。光学系13は、例えば、集光光学系5の瞳付近に配置され、入射角度に依存して透過率を変化させるような光学部材などでもよい。
【0035】
以下、露光装置EXまたは照明光学系ILの調整方法を説明する。まず、原版6が配置される被照明面または基板8が配置される被露光面における照度分布が測定されうる。その後、その測定の結果に基づいて、照度分布の不均一性が低減されるように光学系13の位置が決定され、その位置に光学系13が調整あるいは駆動される。これにより、基板8を露光する準備が完了しうる。
【0036】
以下、上記の露光装置EXを用いてリソグラフィー工程によって半導体デバイス等の物品を製造する物品製造方法を説明する。物品製造方法は、基板に塗布された感光材を露光装置にEXよって露光する露光工程と、該感光材を現像する現像工程と、を含み、該現像工程を経た基板から物品を製造する。
【0037】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0038】
4a:第1ロッドインテグレータ、4b:第2ロッドインテグレータ、6:原版(被照明面)、13:光学系、EX:露光装置、IL:照明光学系、7:投影光学系、12、スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9