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特許7450370トンネルへのパイプ挿入装置、及びパイプの挿入方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】トンネルへのパイプ挿入装置、及びパイプの挿入方法
(51)【国際特許分類】
   E21F 13/00 20060101AFI20240308BHJP
   F16L 55/32 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
E21F13/00
F16L55/32
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019209330
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021080751
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-08-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000182937
【氏名又は名称】日鉄パイプライン&エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】柳本 速雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 啓介
(72)【発明者】
【氏名】生野 康夫
(72)【発明者】
【氏名】今村 肇
(72)【発明者】
【氏名】川内 大輔
(72)【発明者】
【氏名】伊東 俊彦
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04323981(US,A)
【文献】特開2002-188756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F 13/00
F16L 55/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの一方の端部から連続して挿入されるパイプの先端に固定され、前記パイプを前記トンネル内で走行させる台車と、
前記トンネルの内部に固定され、前記パイプを支持する第1ローラと、を備え、
前記台車に設けられた車輪は、前記第1ローラに対して前記トンネルの周方向に沿って位置を異ならせ、かつ前記パイプの先端は、前記第1ローラ位置では、前記第1ローラよりも高い位置に配置されるパイプ挿入装置。
【請求項2】
トンネルの一方の端部から連続して挿入されるパイプの先端に固定され、前記パイプを前記トンネル内で走行させる台車と、
前記トンネルの内部に固定されるとともに、前記トンネルの延伸方向において、前記トンネルの第1円弧部を間に挟んだ両側に配置され、前記パイプを支持する第1ローラと、
前記トンネルの内部に固定されるとともに、前記トンネルの延伸方向において、前記トンネルの第2円弧部を間に挟んだ両側に配置され、前記パイプを支持する第2ローラと、を備え
前記台車に設けられた車輪は、前記第2ローラに対して前記トンネルの周方向に沿って位置を異ならせ、かつ前記パイプの先端は、前記第2ローラ位置では、前記第2ローラよりも高い位置に配置されるパイプ挿入装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパイプ挿入装置を用いてトンネルにパイプを挿入する方法であって、
前記トンネルの第1円弧部を通して最深部に挿入させる第1工程を備え、
前記第1工程では、前記台車によって前記パイプを走行させながら前記第1ローラによって前記パイプを支持させることにより、前記パイプを前記第1円弧部に沿って弾性変形させながら前記第1円弧部を通過させるパイプの挿入方法。
【請求項4】
前記台車が取り付けられた前記パイプを前記トンネル内で走行させ、前記パイプを、前記最深部から前記トンネルの第2円弧部を通して前記トンネルの第2勾配部に挿入させる第2工程を備え、
前記第2工程では、前記台車によって前記パイプを走行させながら第2ローラによって前記パイプを支持させることにより、前記パイプを前記第2円弧部に沿って弾性変形させながら前記第2円弧部を通過させる請求項に記載のパイプの挿入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル構造とトンネルへのパイプ挿入装置、及びパイプの挿入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に記載されているように、ガス管や水道管等のパイプラインを地下のトンネル内に設置する場合、所定長を有したパイプを立坑内に吊り降ろした後、立坑の底部から水平方向に延びるトンネル内の所定位置までパイプを搬送する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4012639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したような搬送する構成では、パイプラインを形成するには、大きな立坑を掘る必要がある。トンネルが深くなれば立坑も深く掘り下げる必要があり、このため立坑の施工が大掛かりになりコストも高くなる。
また、トンネル内で複数本のパイプを溶接して接続する必要がある。これには、トンネル内で、パイプ同士の溶接だけでなく、溶接部の検査、溶接部の防食処理等の作業を行う必要がある。しかしながら、トンネル内は、作業環境が悪く、作業効率も低下しやすい。また、トンネル内に多数本のパイプを運び込むのにも手間がかかる。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、良好な作業環境下で効率良くパイプを接続しながら、トンネル内にパイプを円滑に敷設することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明の一態様に係るトンネル構造は、第1円弧部と第2円弧部と、を備えるトンネルと、前記トンネルの一方の端部から連続して挿入され、前記第1円弧部および前記第2円弧部に沿って曲がるパイプと、前記第1円弧部および前記第2円弧部の双方においてそれぞれに前記パイプを支持する複数のローラと、を備える。
(2)上記(1)に係るトンネル構造では、前記第1円弧部において前記パイプが撓み始めた位置と撓み終わり位置とを結ぶ弦と、最も撓む部分までの距離である矢高の比率は、前記第1円弧部の始点と終点を結ぶ弦に対する前記第1円弧部の矢高の比率よりも大きく、前記第2円弧部において前記パイプが撓み始めた位置と撓み終わり位置とを結ぶ弦と、最も撓む部分までの距離である矢高の比率は、前記第2円弧部の始点と終点を結ぶ弦に対する前記第2円弧部の矢高の比率よりも大きくてもよい。
(3)上記(1)または(2)に係るトンネル構造では、前記ローラは、前記トンネルの延伸方向において前記第1円弧部および前記第2円弧部の範囲内に固定されていてもよい。
(4)本発明の一態様に係るパイプ挿入装置は、トンネルの一方の端部から連続して挿入されるパイプの先端に固定され、前記パイプを前記トンネル内で走行させる台車と、前記トンネルの内部に固定され、前記パイプを支持する第1ローラと、を備える。
(5)上記(4)に係るパイプ挿入装置では、前記台車に設けられた車輪は、前記第1ローラに対して前記トンネルの周方向に沿って位置を異ならせ、かつ前記パイプの先端は、前記第1ローラ位置では、前記第1ローラよりも高い位置に配置されてもよい。
(6)上記(4)に係るパイプ挿入装置では、前記台車と、前記トンネルの内部に固定され、前記パイプを支持する第2ローラを備えてもよい。
(7)上記(6)に係るパイプ挿入装置では、前記台車に設けられた車輪は、前記第2ローラに対して前記トンネルの周方向に沿って位置を異ならせ、かつ前記パイプの先端は、前記第2ローラ位置では、前記第2ローラよりも高い位置に配置されてもよい。
(8)本発明の一態様に係るパイプ挿入方法は、上記(4)から(7)のいずれか1項に記載のパイプ挿入装置を用いてトンネルにパイプを挿入する方法であって、前記トンネルの第1円弧部を通して最深部に挿入させる第1工程を備え、前記第1工程では、前記台車によって前記パイプを走行させながら前記第1ローラによって前記パイプを支持させることにより、前記パイプを前記第1円弧部に沿って弾性変形させながら前記第1円弧部を通過させる。
(9)上記(8)に係るパイプ挿入方法では、前記台車が取り付けられた前記パイプを前記トンネル内で走行させ、前記パイプを、前記最深部から前記トンネルの第2円弧部を通して前記トンネルの第2勾配部に挿入させる第2工程を備え、前記第2工程では、前記台車によって前記パイプを走行させながら第2ローラによって前記パイプを支持させることにより、前記パイプを前記第2円弧部に沿って弾性変形させながら前記第2円弧部を通過させてもよい。
【0007】
本発明の他の態様に係るトンネル構造は、第1勾配部と、第2勾配部と、これらの両勾配部の間に位置する最深部と、前記第1勾配部と前記最深部とを接続する第1円弧部と、前記第2勾配部と前記最深部とを接続する第2円弧部と、を備えるトンネルと、前記トンネル内にその全長にわたって挿入され、前記第1円弧部および前記第2円弧部に沿って曲がるパイプと、前記トンネル内に配置され、前記第1円弧部および前記第2円弧部の双方においてそれぞれに前記パイプを支持する複数のローラと、を備える。
【0008】
この態様では、パイプをトンネルの一端側の第1勾配部から挿入する場合、パイプは、第1勾配部から第1円弧部を経て、トンネルの最深部に挿入される。さらに、パイプは、最深部から第2円弧部、第2勾配部を経て、トンネルの他端に到達する。トンネル内に挿入されたパイプは、第1円弧部および第2円弧部の双方に設けられた複数のローラによって支持されることで、第1円弧部および第2円弧部に沿って曲がる。つまり、パイプは、第1円弧部および第2円弧部では、複数のローラ間でパイプの弾性変形域内で撓むことで、第1円弧部および第2円弧部に沿って曲がる。したがって、パイプを予め曲げておくことなく、パイプを第1円弧部および第2円弧部に通すことができる。
このような構成によれば、従来のように立坑から所定長のパイプをトンネル内に搬送することなく、その延伸方向に連続するパイプを、第1勾配部側からトンネルに連続的に挿入して、トンネル内に設置することができる。このように、作業環境が悪いトンネル内で、パイプ同士の溶接、検査、防食処理等の作業を行う必要がなく、これらの作業を地上で行うことができるので、良好な作業環境下で効率良くパイプを接続しながら、トンネル内にパイプを円滑に敷設することが可能となる。
【0009】
また、前記パイプを前記第1円弧部の始点側および終点側において2つの前記ローラによって支持し、これらの両ローラの間において支持しなかった場合に、前記第1円弧部内において弾性変形する前記パイプのうち、2つの前記ローラによって支持される部分を結ぶ弦に対して、最も撓む部分までの距離の比率は、前記第1円弧部の弦に対する矢高の比率よりも大きく、前記パイプを前記第2円弧部の始点側および終点側において2つの前記ローラによって支持し、これらの両ローラの間において支持しなかった場合に、前記第2円弧部内において弾性変形する前記パイプのうち、2つの前記ローラによって支持される部分を結ぶ弦に対して、最も撓む部分までの距離の比率は、前記第2円弧部の弦に対する矢高の比率よりも大きいようにしてもよい。
【0010】
この場合、パイプの曲がりが大きく、前述した作用効果を顕著に奏功させることができる。
【0011】
また、前記ローラは、前記トンネルの延伸方向において前記第1円弧部および前記第2円弧部の範囲内に配置されているようにしてもよい。
【0012】
この場合、第1円弧部および第2円弧部の双方の始点側および終点側のローラに加えて、第1円弧部および第2円弧部の範囲内に設けられたローラでも、湾曲したパイプを支持することができる。
【0013】
本発明の他の態様に係るパイプ挿入装置は、第1勾配部と、第2勾配部と、これらの両勾配部の間に位置する最深部と、前記第1勾配部と前記最深部とを接続する第1円弧部と、前記第2勾配部と前記最深部とを接続する第2円弧部と、を備えるトンネル内にパイプを挿入するための装置であって、前記パイプに取り付けられ、前記パイプを前記トンネル内で走行させる台車と、前記第1円弧部の始点側および終点側に配置され、前記パイプが前記第1勾配部および前記第1円弧部を通して前記最深部に挿入されるときに、前記パイプを支持する第1ローラと、を備える。
【0014】
この態様では、パイプに取り付けられた台車がトンネル内で走行すると、トンネルの第1円弧部では、トンネル側から台車に作用する反力がトンネルの湾曲によって増大する。この反力により、パイプは第1円弧部の湾曲に応じて弾性変形して曲がる。このようにして湾曲に応じて曲がったパイプを、トンネルの第1円弧部の始点側および終点側に配置された第1ローラで支持することで、トンネル内の第1円弧部に沿って曲がるパイプと、トンネル内に配置され、パイプを第1円弧部の始点側および終点側において支持する複数の第1ローラと、を備えるトンネル構造が実現される。
【0015】
また、前記台車に設けられた車輪は、前記第1ローラ位置では、前記第1ローラに対して前記トンネルの周方向に沿って位置を異ならせているようにしてもよい。
【0016】
この場合、台車が第1ローラを通過する際、台車に設けられた車輪は、第1ローラに対し、トンネルの周方向で異なる位置を通過する。したがって、台車の車輪と第1ローラとの干渉を抑えることができる。
【0017】
また、前記台車に支持された前記パイプの先端は、前記第1ローラよりも高い位置に配置されるようにしてもよい。
【0018】
この場合、トンネルの第1円弧部の湾曲に応じて弾性変形して曲がったパイプの先端は、第1ローラよりも高い位置に配置されるので、パイプの先端が第1ローラに干渉するのを抑えることができる。
【0019】
また、前記第2円弧部の始点側および終点側に配置され、前記パイプが前記最深部および前記第2円弧部を通して前記第2勾配部に挿入されるときに、前記パイプを支持する第2ローラを更に備えるようにしてもよい。
また、本発明の他の態様に係るパイプ挿入装置は、第1勾配部と、第2勾配部と、これらの両勾配部の間に位置する最深部と、前記第1勾配部と前記最深部とを接続する第1円弧部と、前記第2勾配部と前記最深部とを接続する第2円弧部と、を備えるトンネル内にパイプを挿入するための装置であって、前記パイプに取り付けられ、前記パイプを前記トンネル内で走行させる台車と、前記第2円弧部の始点側および終点側に配置され、前記パイプが前記最深部および前記第2円弧部を通して前記第2勾配部に挿入されるときに、前記パイプを支持する第2ローラを備える。
【0020】
この場合、パイプに取り付けられた台車がトンネル内で最深部から第2円弧部に至ると、第2円弧部におけるトンネル側から台車に作用する反力がトンネルの湾曲によって増大する。この反力により、パイプは第2円弧部の湾曲に応じて弾性変形して曲がる。このようにして湾曲に応じて曲がったパイプを、トンネルの第2円弧部の始点側および終点側に配置された第2ローラで支持することで、トンネル内の第2円弧部に沿って曲がるパイプと、トンネル内に配置され、パイプを第2円弧部の始点側および終点側において支持する複数の第2ローラと、を備えるトンネル構造が実現される。
【0021】
また、本発明の他の態様に係るパイプの挿入方法は、上記したようなパイプ挿入装置を用いて前記トンネル内に前記パイプを挿入する方法であって、前記台車が取り付けられた前記パイプを前記トンネル内で走行させ、前記パイプを、前記第1勾配部から前記第1円弧部を通して前記最深部に挿入させる第1工程を備え、前記第1工程では、前記台車によって前記パイプを走行させながら前記第1ローラによって前記パイプを支持させることにより、前記パイプを前記第1円弧部に沿って弾性変形させながら前記第1円弧部を通過させる。
【0022】
この態様では、トンネル内の第1円弧部に沿って曲がるパイプと、トンネル内に配置され、パイプを第1円弧部の始点側および終点側において支持する複数の第1ローラと、を備えるトンネル構造が実現される。
【0023】
また、本発明の他の態様に係るパイプの挿入方法は、上記したようなパイプ挿入装置を用いて前記トンネル内に前記パイプを挿入する方法であって、前記台車が取り付けられた前記パイプを前記トンネル内で走行させ、前記パイプを、前記最深部から前記第2円弧部を通して前記第2勾配部に挿入させる第2工程を備え、前記第2工程では、前記台車によって前記パイプを走行させながら前記第2ローラによって前記パイプを支持させることにより、前記パイプを前記第2円弧部に沿って弾性変形させながら前記第2円弧部を通過させる。
【0024】
この態様では、トンネル内の第2円弧部に沿って曲がるパイプと、トンネル内に配置され、パイプを第2円弧部の始点側および終点側において支持する複数の第2ローラと、を備えるトンネル構造が実現される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、良好な作業環境下で効率良くパイプを接続しながら、トンネル内にパイプを円滑に敷設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係るトンネル構造を模式的に示した断面図である。
図2図1に示すトンネル構造においてトンネルの第1円弧部で湾曲したパイプを示す概略図である。
図3図1に示すトンネル構造においてトンネルの第2円弧部で湾曲したパイプを示す概略図である。
図4】本発明の一実施形態に係るパイプ挿入装置を示す側面図である。
図5図4に示すパイプ挿入装置の正面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るパイプの挿入方法の流れを示すフローチャートである。
図7図6に示すパイプの挿入方法において、トンネル内に複数のローラを設置した状態を示す断面図である。
図8図6に示すパイプの挿入方法において、トンネルの第1勾配部にパイプを挿入している状態を示す断面図である。
図9図6に示すパイプの挿入方法において、トンネルの第1円弧部にパイプの先端が到達する直前の状態を示す断面図である。
図10図6に示すパイプの挿入方法において、トンネルの第1円弧部でパイプの先端部が撓んで湾曲している状態を示す断面図である。
図11図6に示すパイプの挿入方法において、パイプの先端部が第1円弧部を通過した状態を示す断面図である。
図12図6に示すパイプの挿入方法において、パイプの先端部が第1円弧部を通過し、最深部に到達した状態を示す断面図である。
図13図6に示すパイプの挿入方法において、パイプの先端部が第2円弧部を通過し、第2勾配部に到達した状態を示す断面図である。
図14】本発明の一実施形態に係るトンネル構造の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るトンネル構造、パイプ挿入装置、パイプの挿入方法を説明する。
図1に示すように、トンネル1は、例えば、堤防や橋桁等の既存構造物の杭基礎2や河川3を下方に迂回して通るものである。このトンネル1は、トンネル最深部(最深部)11と、第1勾配部12と、第2勾配部13と、第1円弧部14と、第2円弧部15と、を主に備えている。
【0028】
トンネル最深部11は、杭基礎2や河川3等の下方の地盤G中に設けられ、水平方向に延びている。第1勾配部12は、トンネル最深部11の一方の端部から地表部に向けて斜め上方に延びている。第1勾配部12の上端12tは、地表部に設けられた第1立坑16内に開口している。第2勾配部13は、トンネル最深部11の他方の端部から地表部に向けて斜め上方に延びている。第2勾配部13の上端13tは、地表部に設けられた第2立坑17内で開口している。
【0029】
第1円弧部14は、トンネル最深部11の一方の端部と第1勾配部12とを接続する。第1円弧部14は、所定の曲率半径(例えば、曲率半径250m)で円弧状に湾曲している。第2円弧部15は、トンネル最深部11の他方の端部と第2勾配部13との間に設けられている。第2円弧部15は、所定の曲率半径(例えば、曲率半径250m)で円弧状に湾曲している。ここで、第1円弧部14の曲率半径と、第2円弧部15の曲率半径とは、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0030】
第1立坑16、第2立坑17は、それぞれ、地表部からトンネル最深部11よりも浅く形成されている。第1立坑16、第2立坑17は、少なくとも、第1勾配部12の上端12t、第2勾配部13の上端13tよりも下方まで形成されていればよく、トンネル最深部11までの深さで掘削形成する必要はない。
【0031】
このようなトンネル1は、例えば、第1立坑16から掘削機を発進させ、推進工法により掘削機を推進させつつ、第1勾配部12を上端12t側から斜め下方に向かって所定の傾斜角度で構築していく。このように、第1勾配部12では、例えば30°以上の下り勾配で第1勾配部12を構築する。推進工法は、既存の方法を用いればよい。推進工法では、掘削機で地盤Gを掘削することでトンネル孔を掘削しつつ、第1立坑16内で組み立てたトンネル躯体を、第1立坑16の壁面に反力が支持された推進ジャッキでトンネル孔内に順次推進させていく。
【0032】
推進工法により、掘削機が、第1勾配部12、第1円弧部14を経てトンネル最深部11まで到達したら、推進工法からシールド工法に切り替え、トンネル最深部11、第2円弧部15、および第2勾配部13を順次構築していく。シールド工法は、既存の方法を用いればよい。シールド工法では、掘削機で地盤Gを掘削してトンネル孔を掘削しつつ、掘削機内でトンネル躯体を構成するセグメントを順次組み立てていく。
シールド工法により構築する第2勾配部13が第2立坑17まで到達することで、トンネル1の構築が完了する。
【0033】
このようなトンネル1は、第1勾配部12、第2勾配部13を備えることで、トンネル最深部11まで到達する深い立坑を掘削する必要がなく、トンネル最深部11よりも大幅に浅い第1立坑16、第2立坑17を掘削すればよい。これにより、工期短縮化、施工コストの低減を図ることができる。
また、下り勾配となる第1勾配部12の構築時には、推進工法を用いることで、シールド工法では困難な傾斜であっても第1勾配部12を確実に構築できる。またトンネル最深部11をシールド工法で構築することで、トンネル最深部11が大深度であっても施工を確実に行うことができる。
なお、上記したトンネル1の構築方法は一例に過ぎず、例えばトンネル1の全長を推進工法またはシールド工法で構築してもよい。
【0034】
このようなトンネル1内には、例えばガス管、水道管等として用いられるパイプ20が敷設されている。パイプ20は、所定長を有した複数本のパイプ材21を互いに溶接することで、その延伸方向に長尺に連続している。パイプ20は、第1立坑16側の地表部と、第2立坑17側の地表部との間で、トンネル1内にその全長にわたって挿入されている。具体的には、パイプ20は、第1立坑16側から第2立坑17側に向かって、第1勾配部12、第1円弧部14、トンネル最深部11、第2円弧部15、第2勾配部13内に挿通されている。パイプ20は、トンネル1の一方の端部(本実施形態では第1勾配部12)から連続して挿入される。
【0035】
パイプ20は、第1円弧部14および第2円弧部15において、第1円弧部14および第2円弧部15に沿って略円弧状に曲がった湾曲部20b、20cを有する。パイプ20は、トンネル1内に設けられた複数のローラ30に支持されることで、第1円弧部14および第2円弧部15に沿って略円弧状に曲がっている。本実施形態では、複数のローラ30として、第1ローラ31と、第2ローラ32とが設けられている。
【0036】
図2に示すように、第1ローラ31は、トンネル1の延伸方向において第1円弧部14の始点側および終点側に設けられている。言い換えると、第1ローラ31は、前記延在方向において第1円弧部14を間に挟んだ両側(第1円弧部14の範囲外)に配置されている。本実施形態では、第1ローラ31は、トンネル1の内周面に固定されたローラ支持台33に、パイプ20の進行方向と垂直な水平線を軸として回転自在に設けられている。
【0037】
パイプ20は、第1円弧部14の一方の側の第1勾配部12に位置する第1ローラ31Aと、第1円弧部14の他方の側のトンネル最深部11に位置する第1ローラ31Bとに支持されることで、略円弧状に湾曲し、湾曲部20bを形成している。パイプ20は、第1円弧部14の始点側および終点側において2つの第1ローラ31A,31Bによって支持され、これらの第1ローラ31A,31Bの間においては支持されていない。湾曲部20bは、第1円弧部14の始点側および終点側において第1ローラ31A、31Bに2点支持されたパイプ20が、第1ローラ31A、31Bの間で下方に略円弧状に撓むことで形成されている。湾曲部20bにおいて、パイプ20は、塑性変形しておらず、パイプ20の弾性変形域内で弾性変形した状態である。なおここで、湾曲部20bは、一定の曲率半径で湾曲しているとは限らず、トンネル1の延伸方向において曲率半径が変化していてもよい。また、湾曲部20bが湾曲している領域は、第1ローラ31A、31B間に限らず、パイプ20の延伸方向において第1ローラ31A、31Bの外側まで至っていてもよい。
【0038】
図3に示すように、第2ローラ32は、トンネル1の延伸方向において第2円弧部15の始点側および終点側に設けられている。言い換えると、第2ローラ32は、前記延在方向において第2円弧部15を間に挟んだ両側(第2円弧部15の範囲外)に配置されている。本実施形態では、第2ローラ32は、トンネル1の内周面に固定されたローラ支持台33に、パイプ20の進行方向と垂直な水平線を軸として回転自在に設けられている。
【0039】
パイプ20は、第2円弧部15の一方の側のトンネル最深部11に位置する第2ローラ32Aと、第2円弧部15の他方の側の第2勾配部13に位置する第2ローラ32Bとに支持されることで、円弧状に湾曲し、湾曲部20cを形成している。パイプ20は、第2円弧部15の始点側および終点側において2つの第2ローラ32A,32Bによって支持され、これらの第2ローラ32A,32Bの間においては支持されていない。湾曲部20cは、第2円弧部15の始点側および終点側において第2ローラ32A、32Bに2点支持されたパイプ20が、第2ローラ32A、32Bの間で下方に略円弧状に撓むことで形成されている。湾曲部20cにおいて、パイプ20は、塑性変形しておらず、パイプ20の弾性変形域内で弾性変形した状態である。なおここで、湾曲部20cは、一定の曲率半径で湾曲しているとは限らず、トンネル1の延伸方向において曲率半径が変化していてもよい。また、湾曲部20cが湾曲している領域は、第2ローラ32A、32B間に限らず、パイプ20の延伸方向において第2ローラ32A、32Bの外側まで至っていてもよい。
【0040】
図2図3に示すように、湾曲部20b、20cにおけるパイプ20の平均曲率半径Rpは、パイプ20に許容される最大曲率半径Rmaxよりも小さい。最大曲率半径Rmaxは、パイプ20が塑性変形域に至らないように設定された最大の曲率半径である。これにより、湾曲部20b、20cにおいて、パイプ20は、塑性変形域に至らず、弾性変形域内で曲がっている。
【0041】
2つの第1ローラ31A,31Bによって支持されて略円弧状に湾曲したパイプ20において、2つの第1ローラ31A,31Bによって支持される部分を結ぶ弦の長さをLa1とし、この弦から、パイプ20が第1ローラ31A,31B間で最も撓む部分までの距離(矢高)をD1とする。前記弦は、第1円弧部14においてパイプ20が撓み始めた位置と撓み終わり位置とを結ぶ弦ともいえる。これらの距離D1と長さLa1との比率である比率D1/La1は、トンネル1の中心線Ctの第1円弧部14における始点と終点を結ぶ弦Lb1に対する矢高A1の比率A1/Lb1よりも大きい。
また、2つの第2ローラ32A,32Bによって支持されて略円弧状に湾曲したパイプ20において、2つの第2ローラ32A,32Bによって支持される部分を結ぶ弦の長さをLa2とし、この弦から、パイプ20が第2ローラ32A,32B間で最も撓む部分までの距離(矢高)をD2とする。前記弦は、第2円弧部15においてパイプ20が撓み始めた位置と撓み終わり位置とを結ぶ弦ともいえる。これらの距離D2と長さLa2との比率である比率D2/La2は、トンネル1の中心線Ctの第2円弧部15における始点と終点を結ぶ弦Lb2に対する矢高A2の比率A2/Lb2よりも大きい。
【0042】
上記のように弾性変形域内でパイプ20が湾曲することで形成される湾曲部20b、20cは、パイプ20の材料特性に応じて、複数のローラ30(2つの第1ローラ31A,31B、2つの第2ローラ32A,32B)の間隔を適切に設定することで形成される。
例えば、複数のローラ30の間隔は、パイプ20が自重によって撓む撓み量に基づいて設定される。パイプ20が自重によって撓む撓み量は、パイプ20の単位重量、断面係数、ヤング率を含む関数によって算定される。
複数のローラ30は、パイプ20の自重による撓みが第1円弧部14、第2円弧部15に沿ったものとなるような間隔に設置してもよい。また、複数のローラ30は、第1円弧部14、第2円弧部15で湾曲したパイプ20に合わせて、パイプ20の平均曲率半径Rpが適切な数値となるよう、位置を調整してもよい。
【0043】
次に、上記のような、トンネル1と、トンネル1内に挿入されたパイプ20とで構成されるトンネル構造を実現するための、パイプ挿入装置50、およびパイプ20の挿入方法について説明する。
図4図5に示すように、トンネル1内にパイプ20を挿入するパイプ挿入装置50は、上記した複数のローラ30(第1ローラ31、第2ローラ32)と、台車51と、を備える。
【0044】
台車51は、パイプ20を支持するパイプ支持部52と、車輪53と、を備える。パイプ支持部52は、例えば円環状で、その内側にパイプ20の先端20Sが挿通される。パイプ支持部52は、半円弧状の上部部材52Aと下部部材52Bとが組み合わされることで円環状に形成されている。上部部材52Aと、下部部材52Bとは、その合わせ目に設けられた上部フランジ52fと下部フランジ52gとが、ボルト(図示無し)等で着脱可能に接続されている。上部部材52Aと、下部部材52Bとを連結した状態で、パイプ20は、パイプ支持部52に保持される。
【0045】
車輪53は、パイプ支持部52の下部に設けられている。各車輪53は、パイプ支持部52に固定された車輪支持部54に、回転自在に設けられている。車輪53は、パイプ支持部52に対し、パイプ20の中心軸回りの周方向に間隔をあけて、二個一対で設けられている。これら二個一対の車輪53は、ローラ30(第1ローラ31、第2ローラ32)に対し、周方向の両側に配置されている。
【0046】
このような台車51は、パイプ20の先端20Sが第1ローラ31、第2ローラ32よりも高い位置となるようにパイプ20を支持する。
台車51は、ワイヤーロープ等の牽引具55を、図示しないウインチ等の巻取装置で巻き取ることで、台車51のパイプ支持部52に先端20Sが支持されたパイプ20を、トンネル1の延伸方向に引き込む。
台車51に設けられた車輪53は、パイプ20の中心軸回りの周方向に間隔をあけて設けられている。車輪53は、トンネル1の最下部に設けられたローラ30に対し、周方向両側を通る。
【0047】
図6に示すように、パイプ挿入装置50を用いてトンネル1内にパイプ20を挿入するパイプ挿入方法は、パイプ溶接工程S1と、パイプ挿通工程(第1工程、第2工程)S2と、を含む。ここで、本実施形態では、トンネル1に対し、第1勾配部12側から第2勾配部13側に向かってパイプ20を挿入する。このため、パイプ20の挿入方向において、第1勾配部12は下り勾配、第2勾配部13は上り勾配となる。
【0048】
パイプ溶接工程S1では、図7に示すように、第1立坑16側の地表部において、所定長のパイプ材21を溶接することで、長尺のパイプ20を形成する。なお、このパイプ溶接工程S1は、後述するパイプ挿通工程S2におけるパイプ20の挿通作業と並行し、地表部で継続して順次実行する。
地表部で、ある程度の本数のパイプ材21を溶接した後、パイプ20の先端20Sに、台車51を取り付ける。
一方、トンネル1内には、予め、複数のローラ30(第1ローラ31、第2ローラ32)を設置しておく。
【0049】
この後、パイプ挿通工程S2では、トンネル1内にパイプ20を挿通していく。パイプ挿通工程S2では、パイプ20を、第1勾配部12から第1円弧部14を通してトンネル最深部11に挿入させる。本実施形態において、パイプ挿通工程S2は、パイプ20を第1勾配部12に通す工程S21と、パイプ20を第1円弧部14に通す工程S22と、パイプ20をトンネル最深部11に通す工程S23と、パイプ20を第2円弧部15に通す工程S24と、パイプ20を第2勾配部13に通す工程S25と、を含む。
【0050】
パイプ20を第1勾配部12に通す工程S21では、図8に示すように、先端20Sに台車51を取り付けたパイプ20を、第1立坑16から第1勾配部12内に挿入する。このとき、地表部から第1立坑16を通して第1勾配部12内にパイプ20が挿入される部分Pにおいて、パイプ20は、自重により斜め下方に湾曲する。
台車51に設けられた牽引具55(図5参照)をトンネル1の延伸方向に引っ張ることで、パイプ20を、第1勾配部12内に順次引き込んでいく。トンネル1内で、台車51は、車輪53がトンネル1の内周面(下面)上で転動する。これによってパイプ20は、トンネル1内で走行する。
【0051】
パイプ20を第1円弧部14に通す工程S22では、図9図10に示すように、パイプ20の先端20Sを、第1勾配部12から第1円弧部14に通す。図9に示すように、第1円弧部14に対して第1勾配部12側に設けられた第1ローラ31Aを台車51が通過すると、パイプ20は、台車51と、第1ローラ31Aとによって支持された状態となる。
【0052】
図10に示すように、台車51が第1円弧部14に進入すると、トンネル1の湾曲によってトンネル1側から台車51に作用する反力Fが増大する。この反力Fにより、台車51に支持されたパイプ20は、第1円弧部14の湾曲に応じて弾性変形して曲がる。このとき、パイプ20は、台車51と、第1ローラ31Aとに2点支持された状態で、下方に湾曲する。
【0053】
図11に示すように、台車51が第1円弧部14を通過すると、パイプ20の先端20Sは、トンネル最深部11に進入する。このとき、台車51に支持されたパイプ20の先端20Sは、第1ローラ31位置では、第1ローラ31Bよりも高い位置に配置されるので、湾曲部20bで湾曲したパイプ20の先端20Sが第1ローラ31Bと干渉することが抑えられる。
【0054】
パイプ20をトンネル最深部11に通す工程S23では、図12に示すように、台車51を牽引することで、パイプ20をトンネル最深部11に沿って第2円弧部15に向かって走行させていく。このとき、台車51が第1ローラ31Bを通過した後、パイプ20の走行方向後方の第1円弧部14では、パイプ20は、第1ローラ31A、31Bによって2点支持された状態で湾曲した状態を維持する。つまり、台車51によってパイプ20を走行させながら、第1ローラ31A、31Bによって支持された部分において、パイプ20は第1円弧部14に沿って略円弧状に弾性変形しながら第1円弧部14を通過していく。
【0055】
パイプ20を第2円弧部15に通す工程S24では、図13に示すように、トンネル最深部11を通過した台車51が第2円弧部15に進入すると、トンネル1の湾曲によってトンネル1側から台車51に作用する反力Fが増大する。この反力Fにより、台車51に支持されたパイプ20は第2円弧部15の湾曲に応じて弾性変形して曲がる。
【0056】
パイプ20を第2勾配部13に通す工程S25では、第2円弧部15を通過した台車51が第2勾配部13に進入すると、パイプ20は、第2勾配部13に沿った上り勾配を地表部に向けて走行していく。パイプ20の先端20Sが第2立坑17内に到達することで、パイプ20がトンネル1の全長にわたって挿入されたことになる。
この後、パイプ20の先端20Sを、台車51とともに、第2立坑17内から地表部に引き上げる。さらに、第1立坑16、第2立坑17等の埋め戻しを行うことで、トンネル1へのパイプ20の敷設が完了し、図1に示したようなトンネル構造が実現される。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係るトンネル構造によれば、トンネル1内にその全長にわたって挿入され、第1円弧部14および第2円弧部15に沿って曲がるパイプ20と、トンネル1内に配置され、第1円弧部14および第2円弧部15の双方においてそれぞれにパイプ20を支持する複数のローラ30と、を備える。
このような構成では、パイプ20は、トンネル1の一端側の第1勾配部12から第1円弧部14を経て、トンネル1のトンネル最深部11に挿入される。また、パイプ20は、トンネル最深部11から第2円弧部15、第2勾配部13を経て、トンネル1の他端に到達している。トンネル1内に挿入されたパイプ20は、第1円弧部14および第2円弧部15の双方に設けられた複数のローラ30によって支持されることで、第1円弧部14および第2円弧部15に沿って曲がる。つまり、パイプ20は、第1円弧部14および第2円弧部15では、複数のローラ30間で、パイプ20の弾性変形域内で下方に撓むことで、第1円弧部14および第2円弧部15に沿って曲がる。したがって、パイプ20を予め曲げておくことなく、パイプ20を弾性変形させて湾曲させながら、第1円弧部14および第2円弧部15に通すことができる。
このような構成によれば、従来のように立坑から所定長のパイプ材をトンネル1内に搬送することなく、その延伸方向に連続するパイプ20を、第1勾配部12側からトンネル1に連続的に挿入して、トンネル1内にパイプ20を敷設することができる。このようにして、作業環境が悪いトンネル1内で、パイプ20同士の溶接、検査、防食処理等の作業を行う必要がなく、これらの作業を地表部(地上)で行うことができる。したがって、良好な作業環境下で効率良くパイプ20を接続しながら、トンネル1内のパイプ20を円滑に敷設することが可能となる。
【0058】
また、ローラ30は、第1円弧部14および第2円弧部15の径方向外側に配置されている。
このような構成によれば、パイプ20は、第1円弧部14および第2円弧部15の径方向外側に配置された複数のローラ30間で撓むことで、トンネル1の第1円弧部14および第2円弧部15の曲率半径に応じて湾曲する。
【0059】
また、本実施形態に係るパイプ挿入装置50は、パイプ20に取り付けられ、パイプ20をトンネル1内で走行させる台車51と、第1円弧部14の始点側および終点側に配置され、パイプ20が第1勾配部12および第1円弧部14を通してトンネル最深部11に挿入されるときに、パイプ20を支持する第1ローラ31と、を備える。
このような構成では、パイプ20に取り付けられた台車51がトンネル1内で走行すると、トンネル1の第1円弧部14では、トンネル1側から台車51に作用する反力Fがトンネル1の湾曲によって増大する。この反力Fにより、パイプ20は第1円弧部14の湾曲に応じて弾性変形して曲がる。このようにして湾曲に応じて曲がったパイプ20を、トンネル1の第1円弧部14の始点側および終点側に配置された第1ローラ31で支持することで、トンネル1内の第1円弧部14に沿って曲がるパイプ20と、トンネル1内に配置され、パイプ20を第1円弧部14の始点側および終点側において支持する複数の第1ローラ31と、を備えるトンネル構造が実現される。
第1円弧部14における台車51に作用する反力Fによってパイプ20を弾性変形させて曲げるときには、台車51に大きな反力Fが作用する。台車51に代えて、トンネル1側に設けた複数(多数)のローラを設けることも考えられるが、複数のローラ間でパイプ20の先端がローラと干渉してしまう。このため、トンネル1側に設けた複数のローラのみでパイプ20を曲げながらパイプ20の延伸方向に送ることは困難である。また、その場合、複数のローラは、大きな反力Fに耐えうるよう強度を高める必要があり、大掛かりなものとなる。これに対し、本実施形態の構成では、台車51のみを、大きな反力Fに耐えうるように強度を高めればよく、コスト上昇を抑えることができる。
【0060】
また、台車51に設けられた車輪53は、第1ローラ31に対してトンネル1の周方向に沿って位置を異ならせている。
このような構成によれば、台車51が第1ローラ31を通過する際、台車51に設けられた車輪53は、第1ローラ31に対し、トンネル1の周方向で異なる位置を通過する。したがって、台車51の車輪53と第1ローラ31との干渉を抑えることができる。
【0061】
また、台車51に支持されたパイプ20の先端20Sは、第1ローラ31位置では第1ローラ31よりも高い位置に配置され、第2ローラ32位置では第2ローラ32よりも高い位置に配置される。
このような構成によれば、トンネル1の第1円弧部14、第2円弧部15の湾曲に応じて弾性変形して曲がったパイプ20の先端20Sが、第1ローラ31、第2ローラ32に干渉するのを抑えることができる。
【0062】
また、パイプ20がトンネル最深部11および第2円弧部15を通して第2勾配部13に挿入されるときに、パイプ20を支持する第2ローラ32を更に備える。
このような構成によれば、第2円弧部15の湾曲に応じて曲がったパイプ20を、トンネル1の第2円弧部15の始点側および終点側に配置された第2ローラ32で支持することで、トンネル1内の第2円弧部15に沿って曲がるパイプ20と、トンネル1内に配置され、パイプ20を第2円弧部15の始点側および終点側において支持する複数の第2ローラ32と、を備えるトンネル構造が実現される。
【0063】
また、本実施形態に係るパイプ20の挿入方法は、パイプ20に取り付けられた台車51をトンネル1内で走行させることで、パイプ20は第1円弧部14の湾曲に応じて弾性変形して曲がる。このようにして湾曲に応じて曲がったパイプ20を、トンネル1の第1円弧部14の始点側および終点側に配置された第1ローラ31で支持することで、トンネル1内の第1円弧部14に沿って曲がるパイプ20と、トンネル1内に配置され、パイプ20を第1円弧部14の始点側および終点側において支持する複数の第1ローラ31と、を備えるトンネル構造が実現される。
【0064】
なお、本発明の技術的範囲は実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、図14に示すように、ローラ39を、トンネル1の延伸方向において第1円弧部14および第2円弧部15の範囲内に配置するようにしてもよい。
この場合、第1円弧部14および第2円弧部15の外側に設けられたローラ30(第1ローラ31、第2ローラ32)に加えて、第1円弧部14および第2円弧部15の範囲内に設けられたローラ39でも、湾曲したパイプ20を支持することができる。
【0065】
また、上記実施形態では、複数のローラ30(第1ローラ31、第2ローラ32)を、パイプ20のトンネル1への挿入に先だって設置しておくようにしたが、これに限らない。複数のローラ30は、台車51によってトンネル1内を走行するパイプ20の先端20Sが、第1円弧部14、第2円弧部15を通過し、パイプ20が湾曲して湾曲部20b、20cが形成された後に、ローラ30を後から設置してもよい。また、ローラ30は、第1円弧部14、第2円弧部15の双方以外にも、例えばトンネル最深部11、第1勾配部12、第2勾配部13等の途中に設けるようにしてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、台車51は、トンネル1の第2勾配部13を通過するまで、パイプ20の先端20Sに取り付けるようにしたが、これに限らない。例えば、パイプ20の先端20Sを第1円弧部14で湾曲させ、トンネル最深部11側の第1ローラ31Bに受け渡すまでの領域のみで台車51を用いてもよい。すなわち、パイプ20の先端20Sが、トンネル最深部11で、最も第1円弧部14側に位置する第1ローラ31Bを通過した後は、台車51を取り外し、順次送り込むパイプ20を、トンネル最深部11に設けた複数のローラ上で搬送するようにしてもよい。
【0067】
また、台車51は、例えば、パイプ20の先端20Sを第2円弧部15で湾曲させ、第2勾配部13側のローラ30に受け渡すまでの領域のみで用いてもよい。すなわち、パイプ20の先端20Sが、第2円弧部15において第2勾配部13側に位置するローラ30を通過した後は、第2勾配部13に設けたローラ30上をパイプ20が搬送されるようにしてもよい。
【0068】
また、パイプ20を、第1勾配部12側から第2勾配部13側に向かってトンネル1に挿入していくようにしたが、これに限らない。例えば、第1勾配部12側から第1円弧部14を経てパイプ20を挿入していくとともに、第2勾配部13側から第2円弧部15を経てパイプ20を挿入してもよい。第1勾配部12側から挿入したパイプ20と、第2勾配部13側から挿入したパイプ20は、トンネル最深部11内で接合するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、トンネル1の全長にわたって、上記パイプ挿入装置50、パイプ20の挿入方法を用いてパイプ20をトンネル1に挿入するようにしたが、これに限らない。トンネル1の全長の一部(第1円弧部14や第2円弧部15を含む一部)で上記パイプ挿入装置50、パイプ20の挿入方法を用いてパイプ20をトンネル1に挿入すれば、トンネル1の残る部分では、所定長を有したパイプ20をトンネル1内に搬入し、トンネル1内で溶接等によるパイプ20の接合を行うようにしてもよい。このような場合においても、上記パイプ挿入装置50、パイプ20の挿入方法を用いてパイプ20をトンネル1に挿入することで、トンネル1内における溶接等の作業量を低減することができる。したがって、良好な作業環境下で効率良くパイプ20を接続しながら、トンネル1内のパイプラインを円滑に構築することが可能となる。
【0070】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 トンネル
11 トンネル最深部(最深部)
12 第1勾配部
13 第2勾配部
14 第1円弧部
15 第2円弧部
20 パイプ
20S 先端
30 ローラ
31、31A、31B 第1ローラ
32、32A、32B 第2ローラ
39 ローラ
50 パイプ挿入装置
51 台車
53 車輪
A1、A2 矢高
D1、D2 距離
La1、La2、Lb1、Lb2 弦
S2 パイプ挿通工程(第1工程)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14