(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】インピーダンス調整装置
(51)【国際特許分類】
H03H 7/38 20060101AFI20240308BHJP
H03H 7/40 20060101ALI20240308BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20240308BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240308BHJP
C23C 16/509 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
H03H7/38 B
H03H7/40
H05H1/46 R
H01L21/302 101B
C23C16/509
(21)【出願番号】P 2019238645
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】森井 龍哉
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-069823(JP,A)
【文献】特開2015-167070(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0355554(US,A1)
【文献】特表2001-516954(JP,A)
【文献】特開2003-268557(JP,A)
【文献】特開2012-060104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/30- 7/54
H05H 1/46
H01L 21/3065
C23C 16/509
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から負荷に出力される交流電圧の伝送路の中途に配置され、前記交流電源から見た前記負荷側のインピーダンスを調整するインピーダンス調整装置であって、
複数のコンデンサ及び複数の半導体スイッチを有する可変コンデンサユニットと、
前記複数の半導体スイッチを各別にオン又はオフに切替えることによって前記可変コンデンサユニットの容量値を変更する容量値変更部と、
前記可変コンデンサユニットの容量値の目標容量値を決定する決定部と
を備え、
前記可変コンデンサユニットでは、コンデンサ及び半導体スイッチが直列に接続された複数のコンデンサ回路が並列に接続されており、
前記容量値変更部は、
前記決定部が決定した目標容量値に前記容量値を変更する場合、
前記容量値は、前記決定部が決定した目標容量値と異なる中継容量値に変更された後、予め定めた時間が経過した後に前記決定部が決定した目標容量値に変更され、
前記予め定めた時間は、前記負荷の状態が安定するために必要な時間として実験又はシミュレーションの結果に基づいて導出された時間であり、前記容量値変更部が参照可能な記憶部に予め記憶されている設定時間である
インピーダンス調整装置。
【請求項2】
前記予め定めた時間は、前記負荷で行われる処理のプロセス条件に応じて任意に設定可能である
請求項1に記載のインピーダンス調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインピーダンス調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波電源が高周波の交流電圧を負荷に印加する構成では、高周波電源から負荷に出力される交流電圧の伝送路の中途に、高周波電源から見た負荷側のインピーダンスを調整するインピーダンス調整装置(例えば、特許文献1を参照)が配置されている。特許文献1に記載されているインピーダンス調整装置は可変コンデンサユニットを備える。可変コンデンサユニットでは、コンデンサ及び半導体スイッチが直列に接続された複数の直列回路が並列に接続されている。
【0003】
可変コンデンサユニットが有する複数の半導体スイッチを各別にオン又はオフに切替えることによって可変コンデンサユニットの容量値が変更される。可変コンデンサユニットの容量値を変更することにより、高周波電源から見た負荷側のインピーダンスは、高周波電源の出力インピーダンスの複素共役と一致するように、又は、高周波電源から見た負荷側の反射係数の絶対値が最小値となるように調整される。所謂、インピーダンス整合が行われる。結果、負荷側に効率よく電力を供給することができる。負荷では、高周波電源から入力された交流電圧の印加によって、種々の処理を実行するプラズマが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のインピーダンス調整装置では、コンデンサ及び半導体スイッチが直列に接続されている。このため、半導体スイッチがオフからオンに切替わった場合、その半導体スイッチに接続されているコンデンサが有効となる。半導体スイッチがオンからオフに切替わった場合、その半導体スイッチに接続されているコンデンサが無効となる。前述したように、可変コンデンサユニットでは、コンデンサ及び半導体スイッチが直列に接続された複数の直列回路が並列に接続されているので、有効なコンデンサの容量値の合計値が可変コンデンサユニットの容量値である。
【0006】
このように半導体スイッチをオン又はオフに切替えることによってコンデンサの容量値を変更する構成では、非常に高速にコンデンサの容量値を変更することができる。このため、インピーダンス整合の高速化を実現できる。
半導体スイッチの過渡応答は、使用する半導体スイッチの特性によって異なる。しかしながら、半導体スイッチの過渡応答は、通常、数十μsec~百数十μsecである。このため、半導体スイッチをオン又はオフに切替える場合、急峻なインピーダンス変化が起こり、負荷におけるプラズマの状態が不安定な状態になる可能性がある。プラズマが不安定な状態で、更に半導体スイッチをオン又はオフに切替えた場合、プラズマ自体が消滅する現象が確認されている。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、半導体スイッチをオン又はオフに切替えることによってコンデンサの容量値を変更する構成であっても、負荷が不安定な状態になることを回避することができるインピーダンス調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るインピーダンス調整装置は、交流電源から負荷に出力される交流電圧の伝送路の中途に配置され、前記交流電源から見た前記負荷側のインピーダンスを調整するインピーダンス調整装置であって、複数のコンデンサ及び複数の半導体スイッチを有する可変コンデンサユニットと、前記複数の半導体スイッチを各別にオン又はオフに切替えることによって前記可変コンデンサユニットの容量値を変更する容量値変更部と、前記可変コンデンサユニットの容量値の目標容量値を決定する決定部とを備え、前記可変コンデンサユニットでは、コンデンサ及び半導体スイッチが直列に接続された複数のコンデンサ回路が並列に接続されており、前記容量値変更部は、前記決定部が決定した目標容量値に前記容量値を変更する場合、前記容量値を変更してから、予め定めた時間が経過した後に前記容量値を再び変更する。
【0009】
上記の態様にあっては、負荷では、例えば、交流電源が出力した交流電圧を用いてプラズマを発生する。可変コンデンサユニットを前述したように変更することによって、急峻なインピーダンス変化を抑制することができる。この場合、負荷のプラズマがインピーダンス変化に追従することができるので、負荷が不安定な状態になることを回避することができる。
【0010】
本発明の一態様に係るインピーダンス調整装置では、前記予め定めた時間は、前記負荷で行われる処理のプロセス条件に応じて任意に設定可能である。
【0011】
上記の態様にあっては、プロセス条件に応じたきめ細かな調整を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0012】
上記の態様によれば、半導体スイッチをオン又はオフに切替えることによってコンデンサの容量値を変更する構成であっても、負荷が不安定な状態になることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施の形態におけるプラズマ装置1の要部構成を示すブロック図である。
【
図2】プラズマ発生器における処理を行う上で必要な設定値の一例を示す図表である。
【
図3】インピーダンス調整装置の要部構成を示すブロック図である。
【
図4】可変コンデンサユニットの容量値の説明図である。
【
図5】算出回路の算出処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】マイコンの要部構成を示すブロック図である。
【
図7】設定番号に対応する設定時間及び基準時間の候補値を示す図表である。
【
図8】時間変更処理の手順を示すフローチャートである。
【
図9】調整処理の手順を示すフローチャートである。
【
図10】調整処理の手順を示すフローチャートである。
【
図11】調整処理の手順を示すフローチャートである。
【
図12】インピーダンス調整装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
<プラズマ装置の構成>
図1は、本実施の形態におけるプラズマ装置1の要部構成を示すブロック図である。プラズマ装置1は、処理対象物W、例えばウェハに処理を施す装置であり、高周波電源10a,10b、プラズマ発生器11、高周波検出器12a,12b、インピーダンス調整装置13a,13b、コイル14、直流電源15及び主制御装置16を備える。プラズマ発生器11は、箱体状のチャンバ20及び板状の電極21a,21bを有する。
図1では、チャンバ20については断面が示されている。
【0015】
プラズマ発生器11のタイプは容量結合型である。チャンバ20には、2つの貫通孔が設けられている。一方の貫通孔からガスがチャンバ20内に注入される。他方の貫通孔から、チャンバ20内の物質が排出される。チャンバ20には、2つの電極21a,21bが収容されている。電極21a,21bの板面は互いに対向している。
【0016】
伝送路Taは、高周波電源10aからプラズマ発生器11に至るまでの伝送路を示している。高周波電源10aは、伝送路Taを介してプラズマ発生器11の電極21aに接続されている。伝送路Taの中途に高周波検出器12a及びインピーダンス調整装置13aが配置されている。高周波検出器12aは、高周波電源10aとインピーダンス調整装置13aとの間に位置する。高周波電源10aは接地されている。
【0017】
同様に、伝送路Tbは、高周波電源10bからプラズマ発生器11に至るまでの伝送路を示している。高周波電源10bは、伝送路Tbを介してプラズマ発生器11の電極21bに接続されている。伝送路Tbの中途に高周波検出器12b及びインピーダンス調整装置13bが配置されている。高周波検出器12bは、高周波電源10bとインピーダンス調整装置13bとの間に位置する。高周波電源10bは接地されている。
また、電極21aは、コイル14を介して、直流電源15の負極に接続されている。直流電源15の正極は接地されている。
【0018】
高周波電源10a,10bそれぞれは、周波数が高い交流電圧を出力する交流電源である。高周波電源10a,10bが出力する交流電圧の周波数(以下、出力周波数という)は、例えば、工業用のRF(Radio Frequency)帯に属する400kHz、2MHz、13.56MHz、27.12MHz、40.68MHz又は60MHz等の周波数である。一般的には、高周波電源10aの出力周波数の方が高周波電源10bの出力周波数よりも高い。例えば、高周波電源10aの出力周波数は13.56MHzであり、かつ、高周波電源10bの出力周波数は400kHzである組み合わせが用いられる。
【0019】
高周波電源10aは、高周波検出器12a及びインピーダンス調整装置13aを介して交流電圧をプラズマ発生器11の電極21aに出力する。このとき、高周波電源10aが出力した交流電圧は伝送路Taを伝送する。コイル14のインダクタンスは十分に大きいので、交流電圧はコイル14を通過することはない。このため、交流電圧が直流電源15に出力されることはない。
【0020】
同様に、高周波電源10bは、高周波検出器12b及びインピーダンス調整装置13bを介して交流電圧をプラズマ発生器11の電極21bに出力する。このとき、高周波電源10bが出力した交流電圧は伝送路Tbを伝送する。高周波電源10a,10bの出力インピーダンスは、例えば実部のみによって表される。この場合、出力インピーダンスは例えば50オームである。プラズマ発生器11は負荷として機能する。
【0021】
高周波電源10a,10bそれぞれが出力した交流電圧は電極21a,21bに印加される。直流電源15は、コイル14を介して負の直流電圧を電極21aに印加している。電極21a,21b全体は印加体として機能する。なお、直流電源15は必ずしも必要ではない。直流電源15の出力電圧は、インピーダンス調整装置13a及びインピーダンス調整装置13bの制御には直接関係しない。
【0022】
チャンバ20内にガスが注入されている状態で、高周波電源10a,10bが交流電圧を電極21a,21bに印加した場合、電極21a,21b間においてプラズマが発生する。ユーザは、電極21bにおける電極21a側の板面上に処理対象物Wを配置する。プラズマを用いた処理が処理対象物Wに施される。プラズマを用いた処理は、エッチング又はCVD(Chemical Vapor Deposition)等の処理である。
【0023】
プラズマ発生器11のチャンバ20内では、プラズマを用いた複数の処理が順次実行される。処理に応じて、高周波電源10a,10bが電極21a,21bに供給する交流電力、直流電源15が電極21aに印加する直流電圧、並びに、チャンバ20内に注入するガスの種類、圧力及び流量の少なくとも1つが調整される。これらの値に応じて、プラズマ発生器11において発生しているプラズマの状態が変化し、プラズマ発生器11のインピーダンスが変化する。プラズマ発生器11のチャンバ20内で実行される処理に応じて、高周波電源10a,10bが電極21a,21bに供給する交流電力の値、直流電源15が電極21aに印加する直流電圧の値、チャンバ20内に注入するガスの種類、ガスの圧力及びガスの流量等の条件が定まっている。また、実行する実行タイミングも定まっている。
【0024】
図2は、プラズマ発生器11における処理を行う上で必要な設定値の一例を示す図表である。
図2には、実行タイミング、電極21a,21bに印加される2つの交流電力の値、電極21aに印加される直流電圧の値、ガスの種類、ガスの圧力、ガスの流量が示されている。実行タイミング、2つの交流電力の値、直流電圧の値、ガスの種類、ガスの圧力及びガスの流量の組合せごとに設定番号が設定されている。
【0025】
プラズマ発生器11が稼働している場合、プラズマを用いた複数の処理が順次実行されるタイミングで、各装置に必要な設定値が通知される。例えば、主制御装置16から高周波電源10a,10bに対して、高周波電源10a,10bから出力すべき交流電力の値が通知される。また、必要に応じて、主制御装置16からインピーダンス調整装置13a,13bに対して、高周波電源10a,10bから出力すべき交流電力の値が通知される。主制御装置16から高周波電源10a,10bに対して、必要な設定値が通知された後、高周波電源10a,10bからインピーダンス調整装置13a,13bに対して、その設定値を通知してもよい。
【0026】
また、高周波電源10a,10b及びインピーダンス調整装置13a,13bは、
図2に示す設定値の情報を予め取得しておいてもよい。この構成では、主制御装置16から高周波電源10a,10b及びインピーダンス調整装置13a,13bに対して、プラズマを用いた複数の処理が順次実行されるタイミングで、
図2に示す設定番号を通知すればよい。設定番号を通知することによって、高周波電源10a,10b及びインピーダンス調整装置13a,13bは、必要な設定値を認識することができる。
主制御装置16から設定値が通知された各装置は、通知された設定値に応じた処理を行う。
【0027】
処理が順次実行される。例えば、設定番号が2である場合、高周波電源10aから出力される交流電力が1400Wに設定され、高周波電源10bから出力される交流電力が600Wに設定される。このとき、ガスの種類は、例えばアルゴンである。ガスの圧力やガスの流量等の設定値は、対応する装置に通知される。
その後、所定の時間が経過した場合、設定番号3で示される設定値が高周波電源10a,10bに通知される。これにより、例えば、高周波電源10aから出力する交流電力が2000Wに変更されるとともに、高周波電源10bから出力される交流電力が700Wに変更される。
【0028】
なお、前述した設定値は一例であり、高周波電源10a,10bから出力すべき交流電力の値は、前述した値に限定されない。また、
図2に示した要素とは異なる要素が含まれてもよい。
【0029】
例えば、高周波電源10a,10bから出力される交流電力の波形がパルス波形である場合、交流電圧のデューティー比等を主制御装置16が高周波電源10a,10bに通知してもよい。また、高周波電源10a,10bの出力周波数を変更することができる場合、その出力周波数を主制御装置16が高周波電源10a,10bに通知してもよい。
このような種々の条件を総称して、本実施の形態では、プロセス条件という。
【0030】
高周波検出器12aは、高周波電源10aから見たプラズマ発生器11側のインピーダンスを算出するためのパラメータ、又は、高周波電源10aから見たプラズマ発生器11側の反射係数を算出するためのパラメータを周期的に検出する。以下では、高周波電源10aから見たプラズマ発生器11側のインピーダンスを、第1負荷側インピーダンスと記載する。高周波電源10aから見た交流電圧の反射係数を第1反射係数と記載する。一般的に、反射係数は、複素数である。反射係数の絶対値は、ゼロ以上であり、かつ、1以下である。
【0031】
第1負荷側インピーダンスは、高周波電源10aの出力端からプラズマ発生器11側を見たインピーダンス、又は、インピーダンス調整装置13aにおける交流電圧の入力端からプラズマ発生器11側を見たインピーダンスである。インピーダンス調整装置13aの入力端は、高周波電源10aの出力端に相当する。第1負荷側インピーダンスは、インピーダンス調整装置13aのインピーダンスとプラズマ発生器11のインピーダンスとの合成インピーダンスである。
【0032】
高周波検出器12aは、パラメータの一例として、高周波検出器12aを介して伝送する交流電圧及び交流電流、並びに、これらの位相差を検出する。高周波検出器12aは、パラメータの他例として、高周波電源10aからプラズマ発生器11に向かう交流電圧の進行波電力(又は進行波電圧)と、プラズマ発生器11で反射して高周波電源10aに向かう反射波電力(又は反射波電圧)とを検出する。高周波検出器12aは、パラメータを検出する都度、検出したパラメータを示すパラメータ情報をインピーダンス調整装置13aに出力する。
【0033】
インピーダンス調整装置13aは、自装置のインピーダンスを変更することによって第1負荷側インピーダンスを調整する。具体的には、インピーダンス調整装置13aは、高周波検出器12aから入力されたパラメータ情報に基づいて、第1負荷側インピーダンスが高周波電源10aの出力インピーダンスの複素共役となるように、又は、第1反射係数が最小値となるように、自装置のインピーダンスを調整する。所謂、インピーダンス整合を行う。これにより、プラズマ発生器11側に効率よく電力を供給できる。
【0034】
第1負荷側インピーダンスが出力インピーダンスの複素共役とならない場合、インピーダンス調整装置13aは、第1負荷側インピーダンスが高周波電源10aの出力インピーダンスの複素共役に最も近い値となるように、自装置のインピーダンスを調整する。インピーダンス調整装置13aは、主制御装置16が出力した設定番号に応じた処理を実行する。
【0035】
高周波電源10bから見たプラズマ発生器11側のインピーダンスを第2負荷側インピーダンスと記載する。高周波電源10bから見た交流電圧の反射係数を第2反射係数と記載する。高周波検出器12b及びインピーダンス調整装置13bそれぞれは、高周波検出器12a及びインピーダンス調整装置13aと同様に構成される。第1負荷側インピーダンス及び第1反射係数それぞれは、第2負荷側インピーダンス及び第2反射係数に対応する。
【0036】
<インピーダンス調整装置13aの構成>
図3はインピーダンス調整装置13aの要部構成を示すブロック図である。前述したように、インピーダンス調整装置13bはインピーダンス調整装置13aと同様に構成されている。以下では、インピーダンス調整装置13aの構成を説明する。インピーダンス調整装置13bの構成の説明を省略する。伝送路Taは伝送路Tbに対応する。
【0037】
インピーダンス調整装置13aは、コイル30、可変コンデンサユニット31、コンデンサ32、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)33及び算出回路34を有する。コイル30は、伝送路Taの中途に配置されている。コイル30において、高周波検出器12a側の一端に可変コンデンサユニット31の一端が接続されている。コイル30において、プラズマ発生器11側の一端にコンデンサ32の一端が接続されている。可変コンデンサユニット31及びコンデンサ32の他端は接地されている。
【0038】
コイル30、可変コンデンサユニット31及びコンデンサ32によって構成される回路は、π型の回路である。インピーダンス調整装置13aが有する回路は、π型に限定されず、L型又はT型等であってもよい。L型の回路の一例として、コイル30及びコンデンサ32の直列回路の一端又は他端に可変コンデンサユニット31の一端が接続され、かつ、可変コンデンサユニット31の他端が接地されている回路が挙げられる。この場合、コンデンサ32は、伝送路Tpの中途に配置されてプラズマ発生器11に接続される。L型の回路の他例として、コイル30及び可変コンデンサユニット31の直列回路の一端又は他端にコンデンサ32の一端が接続され、かつ、コンデンサ32の他端が接地されている回路が挙げられる。この場合、可変コンデンサユニット31は、伝送路Tpの中途に配置されて高周波検出器12aに接続される。なお、コンデンサ32の代わりに、もう1つの可変コンデンサユニット31を配置してもよい。
【0039】
T型の回路の例として、コイル30と、図示しない他のコイルとが直列に接続され、コイル30及び他のコイル間の接続ノードに可変コンデンサユニット31の一端が接続され、かつ、可変コンデンサユニット31の他端が接地されている回路が挙げられる。
以下では、インピーダンス調整装置13aがπ型の回路を有する例を説明する。
【0040】
可変コンデンサユニット31は、並列に接続されたn個のコンデンサ回路A1,A2,・・・,Anを有する。nは2以上の整数である。コンデンサ回路A1,A2,・・・,Anそれぞれは、コンデンサ40、PINダイオード41及び駆動部42を有する。コンデンサ回路A1,A2,・・・,Anそれぞれでは、コンデンサ40の一端がコイル30の一端に接続されている。コンデンサ40の他端は、PINダイオード41のアノードに接続されている。PINダイオード41のカソードは接地されている。このように、コンデンサ40及びPINダイオード41は直列に接続されている。コンデンサ40及びPINダイオード41間の接続ノードに駆動部42が接続されている。
【0041】
n個のコンデンサ回路A1,A2,・・・,Anの並列は、厳密な並列を意味せず、実質的な並列を意味する。従って、例えば、コンデンサ回路A1の両端間に、コンデンサ回路A2及び図示しない抵抗の直列回路が接続されてもよい。
【0042】
駆動部42は、接地電位を基準とした正の電圧をPINダイオード41のアノードに印加する。これにより、PINダイオード41に順方向電圧が印加される。駆動部42は、更に、接地電位を基準とした負の電圧をPINダイオード41のアノードに印加する。これにより、PINダイオード41に逆方向電圧が印加される。
【0043】
PINダイオード41では、P型、I型及びN型の半導体層が接合されている。I型の半導体は真性半導体である。P型及びN型の半導体層の間にI型の半導体層が配置されている。P型及びN型それぞれの半導体層にアノード及びカソードが設けられている。PINダイオード41は半導体スイッチとして機能する。
【0044】
駆動部42がPINダイオード41に順方向電圧を印加した場合、PINダイオード41の両端間の抵抗値は十分に小さな値に低下し、PINダイオード41はオンに切替わる。駆動部42がPINダイオード41に逆方向電圧を印加した場合、PINダイオード41の両端間の抵抗値は十分に大きな値に上昇し、PINダイオード41はオフに切替わる。以上のように、駆動部42は、自身に接続されているPINダイオード41をオン又はオフに切替える。PINダイオード41がオンである場合、交流電圧はPINダイオード41を通過することができる。PINダイオード41がオフである場合、交流電圧はPINダイオード41を通過することができない。
【0045】
マイコン33は、可変コンデンサユニット31が有するn個の駆動部42にハイレベル電圧又はローレベル電圧を出力している。各駆動部42は、マイコン33から入力されている電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わった場合、PINダイオード41をオンに切替える。各駆動部42は、マイコン33から入力されている電圧がハイレベル電圧からローレベル電圧に切替わった場合、PINダイオード41をオフに切替える。
【0046】
図4は可変コンデンサユニット31の容量値の説明図である。
図4では、nが8である例が示されている。
図4では、コンデンサ回路A1,A2,・・・,Anそれぞれについて、コンデンサ40の容量値と、PINダイオード41の状態とが示されている。オン及びオフそれぞれは、1及びゼロによって表されている。
【0047】
オンであるPINダイオード41の数が2以上である場合、可変コンデンサユニット31の容量値は、オンである複数のPINダイオード41に接続されている複数のコンデンサ40の容量値の総和で表される。オンであるPINダイオード41の数が1である場合、可変コンデンサユニット31の容量値はオンであるPINダイオード41に接続されているコンデンサ40の容量値で表される。
【0048】
コンデンサ回路Ai(i=1,2,・・・,n)が有するコンデンサ40の容量値は、正の実数Hと、2の(i-1)乗との積で表される。
図4の例では、実数Hは1pFである。これにより、可変コンデンサユニット31の容量値を実数H刻みで調整することができる。
図4の例では、可変コンデンサユニット31の容量値を1pF刻みで調整することができる。
図4の例では、コンデンサ回路A1,A2,・・・,A7が有する7つのPINダイオード41がオンであるので、可変コンデンサユニット31の容量値は127pFである。
【0049】
n個のコンデンサ回路A1,A2,・・・,Anは、k個のグループG1,G2,・・・,Gkに分けられている。kは、2以上の整数であり、整数n未満である。
図4は、n個のコンデンサ回路A1,A2,・・・Anが属するグループが示されている。グループの数、即ち、kが2である場合、例えば、
図4に示すように、コンデンサ回路A1~A4がグループG1に属し、コンデンサ回路A5~A8はグループG2に属する。
【0050】
グループGj(j=1,2,・・・,k)の容量値範囲は、グループGjに属するコンデンサ40の最小値及び最大値によって定められている。グループGjの容量値範囲は、グループG1,G2,・・・,Gkの中でグループGjを除く全てのグループの容量値範囲と異なっている。
図4の例では、グループG1の容量値範囲は、1pFから8pFまでの範囲であり、グループG2の容量値範囲は、16pFから128pFまでの範囲である。グループG1,G2の容量値範囲は相互に異なっている。グループG1の容量値範囲の値が最も小さい。グループの番号が大きい程、容量値範囲の値は大きい。従って、グループGkの容量値範囲の値が最も大きい。
【0051】
図4の例では、グループG1の容量値範囲は1pFから8pFまでの範囲である。グループG2の容量値範囲は、16pFから128pFまでの範囲である。グループG1,G2の容量値範囲は互いに異なっている。
【0052】
図1及び
図3に示す高周波検出器12aは、パラメータ情報をインピーダンス調整装置13aの算出回路34に出力する。マイコン33は、ハイレベル電圧及びローレベル電圧によって構成されるマスク信号を算出回路34に出力している。
【0053】
算出回路34は、例えばFPGA(field-programmable gate array)によって構成され、第1負荷側インピーダンス又は第1反射係数を算出する算出処理を実行する。算出処理では、算出回路34は、マスク信号がローレベル電圧を示している場合、高周波検出器12aから入力されたパラメータ情報が示すパラメータに基づいて、第1負荷側インピーダンス又は第1反射係数を繰り返し算出する。算出回路34は、基準時間が経過する都度、基準時間の間に算出した複数の第1負荷側インピーダンス又は複数の第1反射係数の平均値を算出する。算出回路34は、算出した平均値を示す平均情報をマイコン33に出力する。算出回路34は、マスク信号がハイレベル電圧を示している場合、算出を停止する。
【0054】
マイコン33は、時間を示す時間情報を算出回路34に出力する。算出回路34は、時間情報が入力された場合、基準時間を変更する変更処理を実行する。変更処理では、算出回路34は、基準時間を、マイコン33から入力された時間情報が示す時間に変更し、変更処理を終了する。
【0055】
マイコン33は、算出回路34から平均情報が入力された場合、算出回路34から入力された平均情報が示す第1負荷側インピーダンス又は第1反射係数の平均値に基づいて、可変コンデンサユニット31の容量値を算出する。平均情報が第1負荷側インピーダンスの平均値を示す場合、マイコン33は、第1負荷側インピーダンスが高周波電源10aの出力インピーダンスの複素共役となる可変コンデンサユニット31の容量値を算出する。平均情報が第1反射係数の平均値を示す場合、マイコン33は、第1反射係数がゼロとなる可変コンデンサユニット31の容量値を算出する。マイコン33は、算出した容量値に基づいて、可変コンデンサユニット31の容量値の目標容量値を決定する。目標容量値は、可変コンデンサユニット31において実現することができる容量値であって、算出した容量値に一致するか、又は、算出した容量値に最も近い容量値である。
【0056】
前述したように、マイコン33は、可変コンデンサユニット31が有するn個の駆動部42に出力している出力電圧をハイレベル電圧又はローレベル電圧に切替えることによって、可変コンデンサユニット31が有するn個のPINダイオード41を各別にオン又はオフに切替える。マイコン33は、n個のPINダイオード41を各別にオン又はオフに切替えることによって、可変コンデンサユニット31の容量値を変更する。
【0057】
マイコン33は、可変コンデンサユニット31の容量値を目標容量値に変更する場合、まず、可変コンデンサユニット31の容量値を、目標容量値とは異なる中継容量値に変更する。マイコン33は、容量値を中継容量値に変更してから、設定時間が経過した後、容量値を他の中継容量値又は目標容量値に変更する。主制御装置16は、設定番号をマイコン33に出力する。マイコン33は、設定番号が入力された場合、設定時間を、入力された設定番号に応じた時間に変更する。更に、マイコン33は、設定番号が入力された場合、入力された設定番号に応じた基準時間の候補値を示す時間情報を算出回路34に出力する。
以下では、算出回路34の算出処理及びマイコン33の動作を詳細に説明する。
【0058】
<算出回路34の算出処理>
図5は、算出回路34の算出処理の手順を示すフローチャートである。
図5では、ハイレベル電圧は「H」によって示され、ローレベル電圧は「L」によって示されている。
図5以外の図においても、ハイレベル電圧及びローレベル電圧それぞれは「H」及び「L」によって示されている。ここでは、第1負荷側インピーダンスを算出する算出処理を説明する。
【0059】
算出回路34は、マイコン33から入力されているマスク信号がハイレベル電圧を示す状態で算出処理を開始する。算出処理では、算出回路34は、マイコン33から入力されているマスク信号の電圧がハイレベル電圧からローレベル電圧に切替わったか否かを判定する(ステップS1)。算出回路34は、マスク信号の電圧がローレベル電圧に切替わっていないと判定した場合(S1:NO)、ステップS1を再び実行し、マスク信号が示す電圧がローレベル電圧に切替わるまで待機する。
【0060】
算出回路34は、マスク信号の電圧がローレベル電圧に切替わったと判定した場合(S1:YES)、マスク信号の電圧がローレベル電圧に切替わってから待機時間が経過したか否かを判定する(ステップS2)。待機時間は、一定値であり、予め設定されている。算出回路34が図示しないタイマを有する場合、タイマは、マスク信号の電圧がローレベル電圧に切替わってから経過した時間を計測する。算出回路34は、タイマが計測している時間に基づいて、待機時間が経過したか否かを判定する。算出回路34は、待機時間が経過していないと判定した場合(S2:NO)、ステップS2を再び実行し、待機時間が経過するまで待機する。
【0061】
算出回路34は、待機時間が経過したと判定した場合(S2:YES)、マイコン33から入力されているマスク信号がハイレベル電圧を示すか否かを判定する(ステップS3)。算出回路34は、マスク信号がハイレベル電圧を示すと判定した場合(S3:YES)、算出処理を終了し、再び、算出処理を開始する。算出回路34は、マスク信号がハイレベル電圧を示していない、即ち、マスク信号がローレベル電圧を示している場合(S3:NO)、高周波検出器12aからパラメータ情報が入力したか否かを判定する(ステップS4)。算出回路34は、パラメータ情報が入力してないと判定した場合(S4:NO)、ステップS3を再び実行する。マスク信号の電圧がローレベル電圧に維持されている場合、算出回路34は、パラメータ情報が入力されるまで待機する。
【0062】
算出回路34は、パラメータ情報が入力されたと判定した場合(S4:YES)、高周波検出器12aから入力されたパラメータ情報が示すパラメータに基づいて、第1負荷側インピーダンスを算出する(ステップS5)。前述したように、算出処理では、算出回路34は平均情報をマイコン33に出力する。算出回路34は、待機時間が経過してから、又は、平均情報を出力してから、基準時間が経過したか否かを判定する(ステップS6)。前述したように、基準時間は、基準時間変更処理において、プラズマ発生器11の状態に応じた時間に変更される。
【0063】
算出回路34がタイマを有する場合、タイマは、待機時間が経過してから、又は、平均情報を出力してから経過した時間を計測する。ステップS6では、算出回路34は、タイマが計測している時間に基づいて基準時間が経過したか否かを判定する。
【0064】
算出回路34は、基準時間が経過していないと判定した場合(S6:NO)、ステップS3を再び実行する。マスク信号の電圧がローレベル電圧に維持されている場合、算出回路34は再び第1負荷側インピーダンスを算出する。高周波検出器12aがパラメータ情報を出力する周期は基準時間よりも十分に短く、基準時間が経過するまでに、算出回路34がステップS5を実行する回数は2回以上である。
【0065】
算出回路34は、基準時間が経過したと判定した場合(S6:YES)、基準時間が経過するまでに算出した複数の第1負荷側インピーダンスの平均値を算出し(ステップS7)、算出した平均値を示す平均情報をマイコン33に出力する(ステップS8)。算出回路34は、ステップS8を実行した後、ステップS3を再び実行する。
【0066】
以上のように、算出回路34は、マスク信号の電圧がローレベル電圧に維持されている場合、基準時間が経過するまで、第1負荷側インピーダンスを繰り返し算出する。算出回路34は、基準時間が経過した場合、基準時間の間に算出した複数の第1負荷側インピーダンスの平均値を算出し、算出した平均値を示す平均情報をマイコン33に出力する。マスク信号の電圧がハイレベル電圧に切替わった場合、算出回路34は、第1負荷側インピーダンスの算出を停止する。マスク信号の電圧がローレベル電圧に切替わった場合、算出回路34は、ローレベル電圧に切替わってから待機時間が経過した後、再び、第1負荷側インピーダンス及び平均値の算出を再開する。算出回路34は、繰り返し算出部及び平均値算出部として機能する。基準時間は所定時間に相当する。
【0067】
第1反射係数を算出する算出処理は、第1負荷側インピーダンスの算出処理と同様である。第1負荷側インピーダンスの算出処理の説明において、第1負荷側インピーダンスを第1反射係数に置き換えることによって、第1反射係数を算出する算出処理を説明することができる。インピーダンス調整装置13bの算出回路34が実行する第2負荷側インピーダンス(又は第2反射係数)の算出処理は、第1負荷側インピーダンス(又は第1反射係数)の算出処理と同様である。
【0068】
算出回路34は、処理を実行する処理素子、例えば、CPU(Central Processing Unit)を有する構成であってもよい。この場合、算出回路34では、図示しない記憶部にコンピュータプログラムが記憶されており、処理素子はコンピュータプログラムを実行することによって算出処理を実行する。
【0069】
コンピュータプログラムは、算出回路34の処理素子が読み取り可能に記憶媒体に記憶されていてもよい。この場合、図示しない読み出し装置によって記憶媒体から読み出されたコンピュータプログラムが算出回路34の記憶部に書き込まれる。記憶媒体は、光ディスク、フレキシブルディスク、磁気ディスク、磁気光ディスク又は半導体メモリ等である。光ディスクは、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、又は、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)等である。磁気ディスクは、例えばハードディスクである。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部装置からコンピュータプログラムをダウンロードし、ダウンロードしたコンピュータプログラムを記憶部に書き込んでもよい。
【0070】
<マイコン33の構成>
図6はマイコン33の要部構成を示すブロック図である。マイコン33は、入力部50,51、出力部52,53,54、記憶部55及び制御部56を有する。これらは、内部バス57に接続されている。入力部50は、更に、主制御装置16に接続されている。入力部51及び出力部52,53それぞれは、更に、算出回路34に接続されている。出力部54は、可変コンデンサユニット31が有するn個の駆動部42に各別に接続されている。
【0071】
設定番号は、主制御装置16から入力部50に入力される。入力部50は、設定番号が入力された場合、入力された設定番号を制御部56に通知する。平均情報は、算出回路34から入力部51に入力される。入力部51は、平均情報が入力された場合、入力された平均情報が示す第1負荷側インピーダンス又は第1反射係数の平均値を制御部56に通知する。
【0072】
出力部52は、算出回路34にマスク信号を出力している。出力部52は、制御部56の指示に従って、マスク信号が示す電圧をハイレベル電圧又はローレベル電圧に切替える。出力部53は、制御部56に従って、時間情報を算出回路34に出力する。
【0073】
出力部54は、n個の駆動部42にハイレベル電圧又はローレベル電圧を出力している。出力部54は、制御部56の指示に従って、n個の駆動部42への出力電圧をハイレベル電圧又はローレベル電圧に切替える。前述したように、各駆動部42は、出力電圧に応じてPINダイオード41をオン又はオフに切替える。
【0074】
制御部56は、出力部54に指示して、n個の駆動部42への出力電圧をハイレベル電圧又はローレベル電圧に各別に切替えさせる。これにより、制御部56は、可変コンデンサユニット31が有するn個のPINダイオード41のオン又はオフへの切替えを各別に実現する。制御部56は、n個のPINダイオード41を各別にオン又はオフに切替えることによって、可変コンデンサユニット31の容量値を変更する。制御部56は容量値変更部として機能する。
【0075】
記憶部55は不揮発メモリである。記憶部55には、コンピュータプログラムPが記憶されている。制御部56は、処理を実行する処理素子、例えばCPUを有する。制御部56の処理素子は、コンピュータプログラムPを実行することによって、設定時間及び基準時間を変更する時間変更処理と、第1負荷側インピーダンスを調整する調整処理とを並行して実行する。
【0076】
コンピュータプログラムPは、制御部56の処理素子が読み取り可能に記憶媒体Eに記憶されていてもよい。この場合、図示しない読み出し装置によって記憶媒体Eから読み出されたコンピュータプログラムPがマイコン33の記憶部55に書き込まれる。記憶媒体Eは、光ディスク、フレキシブルディスク、磁気ディスク、磁気光ディスク又は半導体メモリ等である。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部装置からコンピュータプログラムPをダウンロードし、ダウンロードしたコンピュータプログラムPを記憶部55に書き込んでもよい。
制御部56が有する処理素子の数が2以上であってもよい。この場合、複数の処理素子が調整処理を協同で実行してもよい。
【0077】
記憶部55には、設定番号に対応付けて、設定時間及び基準時間の候補値が記憶されている。
図7は設定番号に対応する設定時間及び基準時間の候補値を示す図表である。
図7に示すように、設定番号1,2,・・・それぞれに対応する設定時間及び基準時間の候補値が記憶部55に記憶されている。各設定番号について、設定時間の候補値が短い場合、基準時間の候補値は長い。例えば、各設定番号における設定時間及び基準時間それぞれの候補値は、これらの候補値の合計が一定値となるように調整される。
図2に示す各設定番号について、プラズマ発生器11のインピーダンスの範囲を算出することができる。インピーダンスの範囲の値が小さい設定番号に対応する設定時間の候補値は長い。
【0078】
<時間変更処理>
図8は時間変更処理の手順を示すフローチャートである。時間変更処理では、制御部56は、入力部50に設定番号が入力されたか否かを判定する(ステップS11)。制御部56は、設定番号が入力されていないと判定した場合(S11:NO)、ステップS11を再び実行し、設定番号が入力されるまで待機する。
【0079】
制御部56は、設定番号が入力されたと判定した場合(S11:YES)、入力部50に入力された設定番号に対応する設定時間及び基準時間の候補値を、記憶部55から読み出す(ステップS12)。制御部56は、設定時間を、ステップS12で読み出した設定時間の候補値に変更する(ステップS13)。従って、設定時間は、設定番号、即ち、プラズマ発生器11の状態に応じた時間である。
【0080】
次に、制御部56は、出力部53に指示して、ステップS12で読み出した基準時間の候補値を示す時間情報を算出回路34に出力させる(ステップS14)。これにより、算出回路34は、基準時間を、出力部53から入力された時間情報が示す基準時間の候補値に変更する。従って、基準時間も、設定番号、即ち、プラズマ発生器11の状態に応じた時間である。算出回路34は時間変更部としても機能する。制御部56は、ステップS14を実行した後、時間変更処理を終了する。
【0081】
前述したように、設定時間の候補値が長い程、基準時間の候補値は短い。このため、設定時間が長い程、基準時間は短い。また、入力部50に入力された設定番号に対応するインピーダンスの範囲の値が小さい程、設定時間は長い。
インピーダンス調整装置13bの制御部56が実行する時間変更処理は、インピーダンス調整装置13aの制御部56が実行する時間変更処理と同様である。
【0082】
<調整処理>
図9、
図10及び
図11は調整処理の手順を示すフローチャートである。制御部56は、調整処理を周期的に実行する。記憶部55には、可変コンデンサユニット31の容量値を示す容量値情報と、変数qの値とが記憶されている。なお、容量値情報が示す容量値は、可変コンデンサユニット31のn個のコンデンサ回路A1,A2,・・・,An全体の容量値であり、PINダイオード41のオン/オフ状態から算出することができる。容量値情報が示す容量値は制御部56によって更新される。変数qの値は、制御部56によって変更される。変数qの値は、1以上であり、かつ、k以下である整数である。kは、前述したように、グループG1,G2,・・・,Gkの数を示す。
図4の場合、kは2である。以下では、平均情報が第1負荷側インピーダンスの平均値を示す場合に実行される第1負荷側インピーダンスの調整処理を説明する。
【0083】
調整処理では、まず、制御部56は、入力部51に入力された最新の平均情報が示す第1負荷側インピーダンスの平均値、即ち、算出回路34が算出した平均値に基づいて、第1負荷側インピーダンスが高周波電源10aの出力インピーダンスの複素共役と一致する可変コンデンサユニット31の容量値を算出する(ステップS21)。次に、制御部56は、ステップS21で算出した容量値に基づいて目標容量値を決定する(ステップS22)。目標容量値は、可変コンデンサユニット31において実現することができる容量値であって、ステップS21で算出した容量値に一致するか、又は、算出した容量値に最も近い容量値である。制御部56は決定部としても機能する。
【0084】
なお、前述したように、容量値情報が示す容量値は、可変コンデンサユニット31の各PINダイオード41のオン/オフ状態から算出することができる。即ち、容量値情報として可変コンデンサユニット31の各PINダイオード41のオン/オフ状態を示す情報を用いてもよい。同様に、目標容量値を可変コンデンサユニット31の各PINダイオード41のオン/オフ状態で表すこともできる。
【0085】
次に、制御部56は、可変コンデンサユニット31の容量値を、現在の容量値(以下、現在容量値という)から、ステップS22で決定した目標容量値に変更した場合に可変コンデンサユニット31の容量値が変化するか否かを判定する(ステップS23)。ステップS23が実行された時点における可変コンデンサユニット31の現在容量値は、容量値情報が示す容量値である。ステップS23では、制御部56は、ステップS22で決定した目標容量値が、容量値情報が示す現在容量値と異なる場合、容量値が変化すると判定する。制御部56は、ステップS22で決定した目標容量値が、容量値情報が示す現在容量値と一致する場合、容量値が変化しないと判定する。
【0086】
制御部56は、容量値が変化しないと判定した場合(S23:NO)、可変コンデンサユニット31の容量値を変更する必要がないので、調整処理を終了する。制御部56は、容量値が変化すると判定した場合(S23:YES)、可変コンデンサユニット31の容量値をステップS22で決定した目標容量値に変更するため、可変コンデンサユニット31の容量値がステップS22で決定した目標容量値となるn個のPINダイオード41の状態を決定する(ステップS24)。具体的には、
図4に示されているn個のPINダイオード41の状態を変更する。
【0087】
次に、制御部56は、可変コンデンサユニット31の容量値を目標容量値に変更した場合に可変コンデンサユニット31の容量値が増加するか否かを判定する(ステップS25)。制御部56は、容量値が増加すると判定した場合(S25:YES)、変数qの値を1に設定する(ステップS26)。次に、制御部56は、グループGqに属するPINダイオード41のオン又はオフへの切替えが必要であるか否かを判定する(ステップS27)。制御部56は、PINダイオード41の切替えが必要であると判定した場合(S27:YES)、グループGqに属する複数のPINダイオード41の状態がステップS24で決定した複数のPINダイオード41の状態となるように、グループGqの駆動部42への出力電圧をハイレベル電圧又はローレベル電圧に切替える(ステップS28)。
【0088】
これにより、グループGqに属し、かつ、目標容量値への変更のために切替えが必要な全てのPINダイオード41が駆動部42によってオン又はオフに切替えられる。ステップS28の実行が終了した時点において、オン又はオフへの切替えが必要なPINダイオード41が残っていると仮定する。この場合、ステップS28の実行により、可変コンデンサユニット31の容量値は、目標容量値とは異なる中継容量値に変更される。
【0089】
次に、制御部56は、ステップS28を実行してから設定時間が経過したか否かを判定する(ステップS29)。前述したように、設定時間は、時間変更処理において設定番号に応じた時間に変更される。マイコン33が図示しないタイマを有する場合、制御部56は、ステップS28が実行されてから経過した時間をタイマに計測させる。ステップS29では、制御部56は、タイマが計測した時間に基づいて設定時間が経過したか否かを判定する。制御部56は、設定時間が経過していないと判定した場合(S29:NO)、ステップS29を再び実行し、設定時間が経過するまで待機する。可変コンデンサユニット31の容量値の変更によって、プラズマ発生器11の状態が変動する。設定時間は、容量値の変更に必要な時間の最大時間とプラズマ発生器11の状態が安定するために必要な時間との合計時間よりも長い。
【0090】
即ち、一旦、PINダイオード41をオン又はオフに切替えることによって可変コンデンサユニット31の容量値が変更された直後に、次の容量値の変更を行わず、プラズマ発生器11の状態(プラズマの状態)が安定するために必要な時間が経過するまで、制御部56は待機する。制御部56は、必要な時間が経過した後、次の容量値の変更を行う。これにより、急峻なインピーダンス変化を抑制することができる。この場合、プラズマ発生器11において、プラズマがインピーダンス変化に追従することができるので、プラズマ発生器11においてプラズマの状態が不安定な状態になることを回避することができる。また、上記の設定時間は、実験又はシミュレーションの結果に基づいて、プロセス条件に合わせて適切な時間に設定することが可能である。プロセス条件とは、高周波電源10a,10bから出力すべき交流電力の値、ガス流量等の各種の条件である。
【0091】
制御部56は、グループGqに属するPINダイオード41の切替えが必要ではないと判定した場合(S27:NO)、又は、設定時間が経過したと判定した場合(S29:YES)、変数qの値を1だけインクリメントし(ステップS30)、変数qの値がkであるか否かを判定する(ステップS31)。前述したように、kは、グループG1,G2,・・・,Gkの数である。
【0092】
制御部56は、変数qの値がkではないと判定した場合(S31:NO)、ステップS27を再び実行し、可変コンデンサユニット31の容量値を再び変更する。これにより、制御部56は、グループG1からグループGk-1まで、順次、複数の駆動部42への出力電圧の切替え、即ち、複数のPINダイオード41の切替えを行う。制御部56は、変数qの値がkであると判定した場合(S31:YES)、出力部52に指示して、算出回路34に出力しているマスク信号の電圧をハイレベル電圧に切替えさせる(ステップS32)。これにより、算出回路34は、第1負荷側インピーダンスの算出を停止する。
【0093】
次に、制御部56は、グループGkに属するPINダイオード41のオン又はオフへの切替えが必要であるか否かを判定する(ステップS33)。制御部56は、PINダイオード41の切替えが必要であると判定した場合(S33:YES)、グループGkに属する複数のPINダイオード41の状態がステップS24で決定した複数のPINダイオード41の状態となるように、グループGkの駆動部42への出力電圧をハイレベル電圧又はローレベル電圧に切替える(ステップS34)。グループGkに属するPINダイオード41に、切替えが必要なPINダイオード41が含まれている場合、ステップS32の実行により、可変コンデンサユニット31の容量値が目標容量値に変更される。
【0094】
前述したように、グループの番号が大きい程、グループの容量値範囲の値は大きい。目標容量値への変更によって可変コンデンサユニット31の容量値が増加する場合、制御部56は、オン又はオフへの切替えが必要なPINダイオード41を含む複数のグループの中で、容量値範囲の値が最も小さいグループに属し、かつ、目標容量値への変更のために切替えが必要な全てのPINダイオード41をオン又はオフに切替える。これにより、可変コンデンサユニット31の容量値が中継容量値に変更される。容量値範囲の値が最も小さいグループから、PINダイオード41の切替えを行うので、中継容量値が目標容量値を超えることはない。可変コンデンサユニット31の容量値が大きい場合にプラズマ発生器11の動作が不安定である構成では、この切替えは効果的である。
【0095】
制御部56は、容量値が増加しない、即ち、容量値が減少すると判定した場合(S25:NO)、変数qの値をkに設定する(ステップS35)。次に、制御部56は、グループGqに属するPINダイオード41のオン又はオフへの切替えが必要であるか否かを判定する(ステップS36)。制御部56は、PINダイオード41の切替えが必要であると判定した場合(S36:YES)、ステップS28と同様に、グループGqの駆動部42への出力電圧をハイレベル電圧又はローレベル電圧に切替える(ステップS37)。
【0096】
次に、制御部56は、ステップS29と同様に、ステップS37を実行してから設定時間が経過したか否かを判定する(ステップS38)。制御部56は、設定時間が経過していないと判定した場合(S38:NO)、ステップS28を再び実行し、設定時間が経過するまで、即ち、プラズマの状態が安定するまで待機する。このステップS38における設定時間は、ステップS29と同様の役割を果たす。
【0097】
制御部56は、グループGqに属するPINダイオード41の切替えが必要ではないと判定した場合(S36:NO)、又は、設定時間が経過したと判定した場合(S38:YES)、変数qの値を1だけデクリメントし(ステップS39)、変数qの値が1であるか否かを判定する(ステップS40)。
【0098】
制御部56は、変数qの値が1ではないと判定した場合(S40:NO)、ステップS36を再び実行し、可変コンデンサユニット31の容量値を再び変更する。これにより、制御部56は、グループGkからグループG2まで、順次、複数の駆動部42への出力電圧の切替え、即ち、複数のPINダイオード41の切替えを行う。制御部56は、変数qの値が1であると判定した場合(S40:YES)、出力部52に指示して、算出回路34に出力しているマスク信号の電圧をハイレベル電圧に切替えさせる(ステップS41)。これにより、算出回路34は、第1負荷側インピーダンスの算出を停止する。
【0099】
次に、制御部56は、グループG1に属するPINダイオード41のオン又はオフへの切替えが必要であるか否かを判定する(ステップS42)。制御部56は、PINダイオード41の切替えが必要であると判定した場合(S42:YES)、グループG1に属する複数のPINダイオード41の状態がステップS24で決定した複数のPINダイオード41の状態となるように、グループG1の駆動部42への出力電圧をハイレベル電圧又はローレベル電圧に切替える(ステップS43)。グループG1に属するPINダイオード41に切替えが必要なPINダイオード41が含まれている場合、ステップS43の実行により、可変コンデンサユニット31の容量値が目標容量値に変更される。
【0100】
目標容量値への変更によって可変コンデンサユニット31の容量値が減少する場合、制御部56は、オン又はオフへの切替えが必要なPINダイオード41を含む複数のグループの中で、容量値範囲の値が最も大きいグループに属し、かつ、目標容量値への変更のために切替えが必要な全てのPINダイオード41をオン又はオフに切替える。これにより、可変コンデンサユニット31の容量値が現在容量値から中継容量値に変更される。容量値範囲の値が最も大きいグループから、PINダイオード41の切替えを行うので、中継容量値が目標容量値を大きく超えることはない。可変コンデンサユニット31の容量値が大きい場合にプラズマ発生器11の動作が不安定である構成では、この切替えは効果的である。
【0101】
制御部56は、グループGkに属するPINダイオード41の切替えが必要ではないと判定した場合(S33:NO)、グループG1に属するPINダイオード41の切替えが必要ではないと判定した場合(S42:NO)、又は、ステップS34若しくはステップS43を実行した後、ステップS32又はステップS41を実行してからマスク時間が経過したか否かを判定する(ステップS44)。マスク時間は、一定値であり、予め設定されている。マイコン33がタイマを有する場合、制御部56は、ステップS32又はステップS41が実行されてから経過した時間をタイマに計測させる。ステップS44では、制御部56は、タイマが計測した時間に基づいてマスク時間が経過したか否かを判定する。制御部56は、マスク時間が経過していないと判定した場合(S44:NO)、ステップS44を再び実行し、マスク時間が経過するまで待機する。可変コンデンサユニット31の容量値の変更によって、第1負荷側インピーダンスが変動する。マスク時間は、ステップS34又はステップS43で行われる容量値の変更に必要な時間の最大時間と、第1負荷側インピーダンスが安定するために必要な時間との合計時間よりも長い。
【0102】
制御部56は、マスク時間が経過したと判定した場合(S44:YES)、容量値情報が示す容量値を、ステップS22で決定した目標容量値に更新し(ステップS45)、出力部52に指示して、算出回路34に出力しているマスク信号の電圧をローレベル電圧に切替えさせる(ステップS46)。これにより、算出回路34は、第1負荷側インピーダンス及び平均値の算出を再開する。制御部56は、ステップS46を実行した後、調整処理を終了する。
【0103】
平均情報が第1反射係数の平均値を示す場合に実行される第1反射係数の調整処理は、以下の点を除いて第1負荷側インピーダンスの調整処理と同様である。第1反射係数の調整処理のステップS21では、制御部56は、入力部51に入力された平均情報が示す第1反射係数の平均値に基づいて、第1反射係数がゼロとなる可変コンデンサユニット31の容量値を算出する。制御部56がステップS32又はステップS41を実行した場合、算出回路34は第1反射係数の算出を停止する。制御部56がステップS46を実行した場合、算出回路34は第1反射係数の算出を再開する。
【0104】
インピーダンス調整装置13bの制御部56が実行する第2負荷側インピーダンス(又は第2反射係数)の調整処理は、インピーダンス調整装置13aの制御部56が実行する第1負荷側インピーダンス(又は第1反射係数)の調整処理と同様である。
【0105】
<インピーダンス調整装置13aの動作>
図12は、インピーダンス調整装置13aの動作を説明するためのタイミングチャートである。算出回路34、マイコン33及び駆動部42が実行する処理が時系列で示されている。ここでは、グループの数、即ち、kが2であって、かつ、グループG1,G2に属する駆動部42がPINダイオード41をオン又はオフに切替える例を説明する。
【0106】
図12に示すように、算出回路34は、基準時間の間に第1負荷側インピーダンス又は第1反射係数を繰り返し算出し、基準時間の間に算出した複数の第1負荷側インピーダンス又は第1反射係数の平均値を算出する。算出回路34は、マスク信号の電圧がハイレベル電圧である期間と、マスク信号の電圧がローレベル電圧に切替わってから待機時間が経過するまでの期間とを除いて、この一連の算出を繰り返し実行する。算出回路34は、一連の算出が終了する都度、第1負荷側インピーダンス又は第1反射係数の平均値を示す平均情報をマイコン33に出力する。
【0107】
マイコン33は、算出回路34から入力された最新の平均情報が示す第1負荷側インピーダンス又は第1反射係数の平均値に基づいて、第1負荷側インピーダンスが高周波電源10aの出力インピーダンスの複素共役に一致する可変コンデンサユニット31の容量値を算出し、算出した容量値に基づいて目標容量値を決定する。
【0108】
マイコン33は、目標容量値への変更によって、可変コンデンサユニット31の容量値が増加する場合、容量値範囲の値が小さいグループG1に属し、かつ、目標容量値への変更のために切替えが必要な全てのPINダイオード41をオン又はオフに切替える。これにより、可変コンデンサユニット31の容量値は中継容量値に変更される。具体的には、マイコン33は、駆動部42への出力電圧を切替えることによって、駆動部42にPINダイオード41を切替えさせる。マイコン33は、容量値を中継容量値に変更してから設定時間が経過した後、容量値範囲の値がグループG1の次に大きいグループG2に属し、かつ、目標容量値への変更のために切替えが必要な全てのPINダイオード41をオン又はオフに切替える。これにより、可変コンデンサユニット31の容量値は目標容量値に変更される。
【0109】
マイコン33は、目標容量値への変更によって、可変コンデンサユニット31の容量値が減少する場合、容量値範囲の値が大きいグループG2に属し、かつ、目標容量値への変更のために切替えが必要な全てのPINダイオード41をオン又はオフに切替える。次に、マイコン33は、容量値を中継容量値に変更してから設定時間が経過した後、容量値範囲の値がグループG2の次に小さいグループG1に属し、かつ、目標容量値への変更のために切替えが必要な全てのPINダイオード41をオン又はオフに切替える。
【0110】
マイコン33は、可変コンデンサユニット31の容量値の変更に係る最後のグループに属するPINダイオード41をオン又はオフに切替えるとともに、マスク信号の電圧をローレベル電圧からハイレベル電圧に切替える。マイコン33は、マスク信号の電圧をハイレベル電圧に切替えてからマスク時間が経過した後、マスク信号の電圧をローレベル電圧に戻す。算出回路34は、マスク信号の電圧がローレベル電圧に戻ってから、待機時間が経過した後、再び、一連の算出を繰り返す。
【0111】
以上のように、可変コンデンサユニット31の容量値を目標容量値に切替える場合、マイコン33は、グループG1又はグループG2に属し、目標容量値への変更のために、切替えが必要な全てのPINダイオード41をオン又はオフに切替える。これにより、マイコン33は、可変コンデンサユニット31の容量値を一旦、中継容量値に変更する。その後、マイコン33は、残りのグループに属し、目標容量値への変更のために、切替えが必要な全てのPINダイオード41をオン又はオフに切替える。
【0112】
共通の時間帯に複数のPINダイオード41がオン又はオフに切替わると仮定する。オン又はオフに切替わる複数のPINダイオード41に、オンに切替わるPINダイオード41及びオフに切替わるPINダイオード41が含まれている場合、可変コンデンサユニット31の容量値は、目標容量値を超過する。
図4に示すようにグループ分けが行われているインピーダンス調整装置13aでは、中継容量値は、現在容量値と目標容量値との間の容量値である。このため、たとえ、グループG1に属するコンデンサ回路A1,A2,A3,A4に、共通の時間帯に、オンに切替わるPINダイオード41と、オフに切替わるPINダイオード41とが含まれている場合であっても、可変コンデンサユニット31の容量値が現在容量値から中継容量値となるまでの過渡期において、目標容量値を超過する可能性は非常に低い。
【0113】
また、容量値は、既に中継容量値に変更された状態から目標容量値へ変更される。このため、たとえ、可変コンデンサユニット31の容量値が目標容量値を超過した場合であっても、その超過量は、全てのコンデンサ回路A1~A8の容量値を共通の時間帯に変更する場合における超過量に比べて小さい。そのため、従来よりも反射係数が大きく変動することはない。このため、例えば、プラズマ発生器11で発生しているプラズマの状態が不安定な状態に固定されることを防止することができる可能性は高い。
【0114】
1つのグループに属する駆動部42がPINダイオード41をオン又はオフに切替える場合にかかる時間は殆ど同じである。このため、設定時間が長い程、可変コンデンサユニット31の容量値が中継容量値に変更されてから、次の容量値の変更が開始されるまでにかかる時間は長い。前述したように、プラズマ発生器11のチャンバ20内では、プラズマを用いた複数の処理が順次実行される。このため、プラズマ発生器11の状態は時間の経過とともに変化する。可変コンデンサユニット31の容量値が中継容量値に変更されてから、プラズマ発生器11の状態が安定するまでにかかる時間は、プラズマ発生器11の状態に応じて異なる。設定時間は、プラズマ発生器11の状態に応じて変更される。このため、プラズマ発生器11の状態が安定した直後に次の容量値の変更を開始することができる。結果、プラズマ発生器11の状態が不安定である状態で、次の容量値の変更が行われることはない。
【0115】
マイコン33は、目標容量値を周期的に決定する。設定時間が長い程、マスク信号の電圧がローレベル電圧に切替わった後において、算出回路34が第1負荷側インピーダンス又は第1反射係数の算出を開始するタイミングは遅れる。しかしながら、設定時間が長い場合、基準時間が短いので、マイコン33は、可変コンデンサユニット31の容量値が現時点の目標容量値に変更した後に算出回路34が算出した第1負荷側インピーダンス又は第1反射係数の平均値に基づいて、次の目標容量値を決定することができる。
基準時間が一定である構成では、設定時間が長い場合、マイコン33は、可変コンデンサユニット31の容量値が現時点の目標容量値に変更される前に算出回路34が算出した第1負荷側インピーダンス又は第1反射係数の平均値に基づいて次の目標容量値を決定する可能性がある。
【0116】
インピーダンス調整装置13bの動作は、インピーダンス調整装置13aの動作と同様である。インピーダンス調整装置13bは、インピーダンス調整装置13aが奏する効果を同様に奏する。
【0117】
<変形例>
プラズマ発生器11の状態に応じて変更する時間は、基準時間及び設定時間に限定されない。例えば、プラズマ発生器11の状態に応じてマスク時間を変更してもよい。マスク時間は、基準時間と同様に、設定時間が長い場合、短い時間に変更される。基準時間を固定し、マスク時間をプラズマ発生器11の状態に応じて変更してもよい。更に、目標容量値の決定に係る周期が十分に長い場合、基準時間及びマスク時間は固定されていてもよい。
【0118】
本実施の形態において、プラズマ装置1が備える高周波電源の数は、2に限定されず、1であってもよい。プラズマ装置1は、高周波電源10a,10bの一方を備えていなくてもよい。プラズマ装置1が高周波電源10aのみを備える場合、電極21bは接地される。プラズマ装置1が高周波電源10bのみを備える場合、電極21aには直流電源15のみが接続される。プラズマ発生器11のタイプは、容量値結合型に限定されず、例えば、誘導結合型であってもよい。この場合、プラズマ発生器11は、電極21a,21bの代わりにコイルを有し、箱体状のチャンバ20の代わりに筒状のチャンバを有する。コイルはチャンバの外面に巻き付いている。例えば、チャンバ内にガスが注入され、かつ、コイルの一端が接地されている状態で、高周波電源10aが高周波検出器12a及びインピーダンス調整装置13aを介してコイルの他端に周波数が高い交流電圧を印加する。これにより、チャンバ内でプラズマが発生する。この構成では、コイルが印加体として機能する。
【0119】
本実施の形態において、インピーダンス調整装置13a,13bそれぞれにおいて、算出回路34が実行する処理を、マイコン33の制御部56が実行してもよい。この場合、高周波検出器12a,12bそれぞれからインピーダンス調整装置13a,13bのマイコン33にパラメータ情報が出力される。本実施の形態において、PINダイオード41は半導体スイッチとして機能すればよい。このため、PINダイオード41の代わりに、FET(Field Effect Transistor)、バイポーラトランジスタ又はサイリスタ等を用いてもよい。高周波電源10a,10bが交流電圧を出力する負荷は、プラズマ発生器11に限定されず、例えば、非接触電力伝送装置であってもよい。また、コンデンサ回路A1,A2,・・・,Anそれぞれのコンデンサ40の容量値は、他のコンデンサ回路のコンデンサ40の容量値と一致していてもよい。
【0120】
開示された本実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0121】
10a,10b 高周波電源(交流電源)、11 プラズマ発生器(負荷)、13a,13b インピーダンス調整装置、20 チャンバ、21a,21b 電極(印加体)、31 可変コンデンサユニット、34 算出回路(繰り返し算出部、平均値算出部、時間変更部)、40 コンデンサ、41 PINダイオード(半導体スイッチ)、56 制御部(容量値変更部、決定部)、A1,A2,・・・,An コンデンサ回路、G1,G2,・・・,Gn グループ、Ta,Tb 伝送路