(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】治療レジメンを生成するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/28 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
A61M1/28 130
(21)【出願番号】P 2019556279
(86)(22)【出願日】2018-06-08
(86)【国際出願番号】 EP2018065163
(87)【国際公開番号】W WO2018228942
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-06-07
(32)【優先日】2017-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RO
(73)【特許権者】
【識別番号】597075904
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ムスカ ゲオルゲ
(72)【発明者】
【氏名】ポペスク アリアナ
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-527615(JP,A)
【文献】特開2013-240647(JP,A)
【文献】特表2014-523303(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0221910(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/009810(US,A1)
【文献】Donata Vaitkunaite, et al.,Adapted Automated Peritoneal Dialysis: Importance of Varying Dwell Time and Fill Volume,MEDICINOS TEORIJA PRAKITA,Vol. 20, No. 3,2014年,pp. 217-220
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00-1/38;60/00-60/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療ターゲット又は治療ターゲットレンジに適合するよう腹膜透析機械の動作を制御するように腹膜透析レジメンを生成する、コンピュータにより実行される方法(100)であって、
前記コンピュータが治療ターゲットの入力を受け取るステップ(101)と、
前記コンピュータが患者特性の入力を受け取るステップ(102)と、
前記コンピュータが複数の腹膜透析治療レジメンを生成するステップ(103)と、を含み、
前記腹膜透析レジメンの各々が、
一連の第1のサイクル及び第2のサイクルであって、
前記第1のサイクルがそれぞれ、第1の流入量及び第1のドウェル時間によって定められ、
前記第2のサイクルがそれぞれ、第2の流入量及び第2のドウェル時間によって定められる、一連の第1のサイクル及び第2のサイクルと、
ある数の第1のサイクル及びある数の第2のサイクルであって、
前記第1のサイクルの数及び/又は前記第2のサイクルの数が可変であり及び/又は互いに独立している、ある数の第1のサイクルによって及びある数の第2のサイクルと、
によって定められ、
さらに、前記コンピュータがシミュレーション治療結果を生成するよう、前記入力された患者特性を考慮した前記複数の腹膜透析治療レジメンの各々について腹膜透析治療結果をシミュレーション(104)し、前記コンピュータが前記シミュレーション治療結果及び入力された前記治療ターゲットに基づいて選択のため特定の治療に対して適用される腹膜透析治療レジメンを利用可能にするステップ(106)を含む、
ことを特徴とするコンピュータにより実行される方法(100)。
【請求項2】
前記第1のドウェル時間と前記第2のドウェル時間との間に一定の比率が予め定められる、
請求項1に記載の腹膜透析レジメンを生成するコンピュータにより実行される方法(100)。
【請求項3】
前記第1の流入量と前記第2の流入量との間に一定の比率が予め定められる、
請求項1又は2に記載の腹膜透析レジメンを生成するコンピュータにより実行される方法(100)。
【請求項4】
前記第1のサイクルは、前記第2のサイクルよりも短く且つ小さい、
請求項1ないし3の何れか1項に記載の腹膜透析レジメンを生成するコンピュータにより実行される方法(100)。
【請求項5】
前記第1のグルコース濃度は、前記第1のサイクルに対して定義され、前記第2のグルコース濃度は、前記第2のサイクルに対して定義され、前記第1のグルコース濃度は、前記第2のグルコース濃度よりも大きい、
請求項4に記載の腹膜透析レジメンを生成するコンピュータにより実行される方法(100)。
【請求項6】
前記第1のサイクルは、第2のサイクルよりも先行する、
請求項3に記載の腹膜透析レジメンを生成するコンピュータにより実行される方法(100)。
【請求項7】
前記第1のサイクル及び前記第2のサイクルが互いに交互する、
請求項3に記載の腹膜透析レジメンを生成するコンピュータにより実行される方法(100)。
【請求項8】
治療ターゲット又は治療ターゲットレンジに適合するよう腹膜透析機械の動作を制御するための腹膜透析レジメンを生成する装置(2)であって、
治療ターゲット入力ユニット(201)と、
患者特性入力ユニット(202)と、
一連の第1のサイクル及び第2のサイクルによって各々が定められる複数の腹膜透析治療レジメンを生成するよう構成された腹膜レジメン生成ユニット(203)であって、前記第1のサイクルが第1の流入量及び第1のドウェル時間によって定められ、前記第2のサイクルが第2の流入量及び第2のドウェル時間によって定められ、前記治療レジメンの各々が、ある数の第1のサイクルによって及びある数の第2のサイクルによって定められ、前記第1のサイクルの数及び/又は前記第2のサイクルの数が可変であり及び/又は互いに独立している、腹膜レジメン生成ユニットと、
前記複数の腹膜透析治療レジメンの各々について腹膜透析治療結果をシミュレーションして、シミュレーション治療結果を生成するよう構成されたシミュレーションユニット(204)と、
前記それぞれのシミュレーション治療結果及び前記治療ターゲットに基づいて前記複数の腹膜透析治療レジメンから特定の治療に適用される腹膜透析治療レジメンを選択するよう構成された選択ユニット(205)と、を備えている、
ことを特徴とする腹膜透析レジメンを生成する装置(2)。
【請求項9】
請求項1ないし7の何れかに記載のコンピュータにより実行される方法を実施するよう適合されている、
請求項8に記載の腹膜透析レジメンを生成する装置(2)。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の腹膜透析レジメンを生成する装置を備えた腹膜透析治療機械(3)。
【請求項11】
請求項8又は9に記載の装置(2)を含む患者データベース(4)のためのデータベースモジュール(41)であって、前記データベースモジュール(41)は、請求項8又は9に記載の前記レジメンを生成する装置と前記患者データベース(4)の間のインターフェースである、データモジュール(41)。
【請求項12】
請求項11に記載のデータベースモジュール(41)を有する患者データベース(4)と、前記患者データベース(4)から腹膜透析レジメンをダウンロードするため前記患者データベース(4)に接続され、ダウンロードした前記腹膜透析レジメンに従って動作するよう適合された請求項10に記載の腹膜透析治療機械(3)とを備える、腹膜透析システム。
【請求項13】
コンピュータによって実行されたときに、前記コンピュータに請求項1ないし7の何れか1項に記載のコンピュータにより実行される方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項14】
コンピュータ上で実行されたときに、請求項1ないし7の何れか1項に記載のコンピュータにより実行される方法を実行する命令を含むコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療レジメンの生成、特に腹膜透析治療装置を動作するためのレジメンを生成する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
自動腹膜透析(「APD」)を行う患者の割合は世界中で増加しており、これは、一部には、患者の私生活に関する患者の特定の要求及び患者の治療要求に適応するAPDの能力に起因するものである。透析、溶質クリアランス及び限外濾過(「UF」)の2つの主な目的は、実施されるAPDのモダリティ又はタイプによって決まる。
【0003】
従来、APDデバイスは通常、患者の最近の治療の有効性に関して患者へのフィードバックを提供する能力を有していなかった。また、APDデバイスは通常、実際に測定された1日のクリアランス及びUFに基づいて治療パラメータ(例えば、モダリティ、溶液の種類、治療時間、及び充填容積)を調整しないようにオープンループを実行した。従って、一部の患者は、彼らのターゲットが達成されず、体液過剰及び場合によっては高血圧のような有害な状況を発現させるという著しいリスクが存在した。
【0004】
上記の問題に対処するために、特定の治療ターゲット(例えば、限外濾過容積、クリアランス)及び治療入力のレンジ(例えば、交換回数、流入量、サイクル時間、溶液選択)と組み合わせた患者の生理学的データを用いて、提供されるレンジ内に収まる実施可能なレジメンを計算又は送達するコンピュータによる処方最適化システムが開発されてきた。
【0005】
患者特性は、患者の輸送及びUF特性を分類するために、物質移動面積係数(「MTAC」)データ及び透水率データを含む。腹膜透析治療の結果をシミュレーションするために、種々のアルゴリズムが開発されて文献にて記載されている(「Kinetic modelling in Peritoneal dialysis(腹膜透析における動力学的モデリング)」,Gotch,Keen,Clinical Dialysis,4th edition,2005:p385-p419)。透析治療結果をシミュレーションするために高頻度で使用される1つのアルゴリズムは、3細孔モデル(three-pore model)を利用しており、これは、患者の腹膜の3つの異なるサイズの細孔にわたる予測クリアランスを追加する。腹膜の血管の大きな孔、小さな孔、及び微小孔を通る毒素の流れが合計される。例えば、尿素及びクレアチニンは、小さな孔を通して患者の血液から除去される。大きな孔は、より大きなタンパク質分子が患者の血液から透析液に通過することを可能にする。何れの場合も、浸透圧勾配により患者の血液から透析液に毒素が送り込まれる。より簡易的な2つの細孔モデルでは、2つの異なるサイズの孔だけが考慮される。代替として、いわゆるツープール腹膜透析動力学的モデルを用いて、腹膜透析における流体及び溶質除去を予測して、治療結果をシミュレーションすることができる。2つのプールモデルは、「等価」膜コアの身体及び透析液区画の両方において拡散及び対流物質輸送の両方を全体的に記述する微分方程式のセットを利用している。
【0006】
処方最適システムは通常、2つの細孔、3つの細孔又は2つのプールモデルもしくは他のモデルを適用し、ターゲット情報及び他の治療入力情報を使用してレジメンを生成する。
【0007】
本出願の発明者は、従来の治療レジメンは、必ずしも最適な治療結果をもたらしておらず、患者が治療方針に届かない結果となることを見いだした。
【0008】
従って、本発明の目的は、治療方針及び対応するデバイスの改善された成果に照らして、腹膜透析治療を制御するための腹膜透析治療レジメンを生成する改善された方法を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】「Kinetic modelling in Peritoneal dialysis(腹膜透析における動力学的モデリング)」,Gotch,Keen,Clinical Dialysis,4th edition,2005:p385-p419
【発明の概要】
【0010】
上述の目的は、治療ターゲット又は治療ターゲットレンジに適合するよう腹膜透析治療機械の動作を制御する腹膜透析レジメンを生成する方法によって解決される。
本方法は、
治療ターゲットの入力を受け取るステップと、
患者特性の入力を受け取るステップと、
一連の第1のサイクル及び第2のサイクルによって及び対応する数の第1のサイクル及びある数の第2のサイクルによって各々が定められる複数の腹膜透析治療レジメンを生成するステップと、
シミュレーション治療結果を生成するよう、入力された前記患者特性を考慮した複数の腹膜透析治療レジメンの各々について腹膜透析治療結果をシミュレーションし、シミュレーション治療結果及び入力された治療ターゲットに基づいて選択のため特定の治療に対して適用される腹膜透析治療レジメンを利用可能にするステップと、を含む。
提案された方法によれば、第1のサイクルは、第1の流入量及び第1のドウェル時間によって定められ、第2のサイクルは、第2の流入量及び第2のドウェル時間によって定められ、第1のサイクルの数及び/又は第2のサイクルの数が可変であり及び/又は互いに独立している。
有利には、本方法は、治療パラメータレンジ入力を受け取るステップと、1又は2以上の治療パラメータに対して許容可能なレンジ、換言すると1又は2以上の治療制約のセットを記述するステップと、を含み、複数の腹膜透析レジメンが1又は2以上の治療パラメータの許容可能なレンジ内で生成される。
更に有利には、第1のグルコース濃度は、第1のサイクルに対して定義され、第2のグルコース濃度は、第2のサイクルに対して定義され、第2のグルコース濃度は、第1のグルコース濃度とは異なる。更に、上述の目的は、独立請求項の主題によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項によって提供される。
【0011】
(更なる実施形態)
本開示によれば、本開示の特定の態様に焦点を当てることを目的として、実施形態1~14が提供される。
【0012】
(実施形態1):治療ターゲット又は治療ターゲットレンジに適合するよう腹膜透析機械の動作を制御するための腹膜透析レジメンを生成する方法であって、
治療ターゲットの入力を受け取るステップと、
患者特性の入力を受け取るステップと、
一連の第1のサイクル及び第2のサイクルによって各々が定められる複数の腹膜透析治療レジメンを生成するステップであって、第1のサイクルがそれぞれ、第1の流入量及び第1のドウェル時間によって定められ、第2のサイクルがそれぞれ、第2の流入量及び第2のドウェル時間によって定められ、第1のサイクルは、第2のサイクルよりも短く且つ小さく、第1のグルコース濃度は、第1のサイクルに対して定義され、第2のグルコース濃度は、第2のサイクルに対して定義され、該第1のグルコース濃度は、第2のグルコース濃度よりも大きい、ステップと、
シミュレーション治療結果を生成するよう、入力された前記患者特性を考慮した複数の腹膜透析治療レジメンの各々について腹膜透析治療結果をシミュレーション(104)し、シミュレーション治療結果及び入力された治療ターゲットに基づいて選択のため特定の治療に対して適用される腹膜透析治療レジメンを利用可能にするステップと、を含む、
ことを特徴とする方法。
【0013】
(実施形態2):許容可能な治療パラメータレンジを入力するステップを更に備え、前記複数の腹膜透析治療レジメンが前記許容可能な治療パラメータレンジを考慮して生成される、実施形態1に記載の方法。
【0014】
(実施形態3):第1のドウェル時間と第2のドウェル時間との間に一定の比率が予め定められる、実施形態1又は2に記載の腹膜透析レジメンを生成する方法。
【0015】
(実施形態4):第1の流入量と第2の流入量との間に一定の比率が予め定められる、実施形態1ないし3の何れか1つに記載の腹膜透析レジメンを生成する方法。
【0016】
(実施形態5):第1のサイクルは、第2のサイクルよりも先行する、実施形態1ないし4の何れか1つに記載の腹膜透析レジメンを生成する方法。
【0017】
(実施形態6):第1のサイクル及び第2のサイクルは互いに交互している、実施形態1ないし4の何れか1つに記載の腹膜透析レジメンを生成する方法。
【0018】
(実施形態7):治療ターゲット又は治療ターゲットレンジに適合するよう腹膜透析機械の動作を制御するための腹膜透析レジメンを生成する装置であって、
治療ターゲット入力ユニットと、
患者特性入力ユニットと、
一連の第1のサイクル及び第2のサイクルによって各々が定められる複数の腹膜透析治療レジメンを生成するよう構成された腹膜レジメン生成ユニットであって、第1のサイクルが第1の流入量及び第1のドウェル時間によって定められ、第2のサイクルが第2の流入量及び第2のドウェル時間によって定められ、第1のサイクルは、第2のサイクルよりも短く且つ小さく、第1のグルコース濃度は、第1のサイクルに対して定義され、第2のグルコース濃度は、第2のサイクルに対して定義され、該第1のグルコース濃度は、第2のグルコース濃度よりも大きい、腹膜レジメン生成ユニットと、
複数の腹膜透析治療レジメンの各々について腹膜透析治療結果をシミュレーションして、シミュレーション治療結果を生成するよう構成されたシミュレーションユニットと、
それぞれのシミュレーション治療結果及び治療ターゲットに基づいて複数の腹膜透析治療レジメンから特定の治療に適用される腹膜透析治療レジメンを選択するよう構成された選択ユニットと、を備える、
ことを特徴とする腹膜透析レジメンを生成する装置。
【0019】
(実施形態8):実施形態1ないし6の何れかに記載の方法を実施するよう適合されている、実施形態7に記載の腹膜透析レジメンを生成する装置。
【0020】
(実施形態9):実施形態7又は8に記載の腹膜透析レジメンを生成する装置と、入力溶液から腹膜透析液を混合して第1のグルコース濃度の腹膜透析液及び第2のグルコース濃度の腹膜透析液を生成する溶液混合ユニットと、上記混合ユニットを制御する用適合された制御ユニット及び/又は選択された治療レジメンに従って動作する注入ユニットとを備える、腹膜透析機械。
【0021】
(実施形態10):実施形態7又は8に記載の装置を含むデータベース用のデータベースモジュール。
【0022】
(実施形態11):実施形態10に記載のデータベースモジュールを有するデータベースと、データベースから腹膜透析レジメンをダウンロードするためデータベースに接続され、ダウンロードした腹膜透析レジメンに従って動作するよう適合された腹膜透析機械とを備える、腹膜透析システム。
【0023】
(実施形態12):実施形態1ないし6の何れかに記載の方法を適用することによって生成される腹膜透析レジメン。
【0024】
(実施形態13):コンピュータによって実行されたときに、コンピュータに実施形態1ないし6の何れか1項に記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【0025】
(実施形態14):コンピュータ上で実行されたときに、実施形態1ないし6の何れか1項に記載の方法を実行する命令を含むコンピュータ可読媒体。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】腹膜透析治療レジメンを生成し、生成した治療を患者に適用する方法を示す図である。
【
図2】腹膜透析治療レジメン生成デバイスを示す図である。
【
図3】治療レジメン生成デバイスを含む腹膜透析機械を示す図である。
【
図4】データベース及び腹膜透析機械を含む腹膜透析システムを示す図である。
【
図5】腹膜透析治療レジメンの候補セットのグラフィック表現である。
【
図6】腹膜透析治療レジメンの候補セットのグラフィック表現である。
【
図7】腹膜透析治療レジメンの候補セットのグラフィック表現である。
【
図8】腹膜透析治療レジメンの候補セットのグラフィック表現である。
【
図9】腹膜透析治療レジメンの候補セットのグラフィック表現である。
【
図10】腹膜透析治療レジメンの候補セットのグラフィック表現である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、腹膜透析治療を実施するよう腹膜透析機械の動作を制御するための腹膜レジメンを生成する方法100の1つの実施形態を示す。
各腹膜透析レジメンは、治療に適用される腹膜透析液、及びこれによりグルコース濃度の観点で、また、一連の交換サイクルの数、充填量並びに充填時間、ドウェル時間及び排液時間を含むタイミングによって腹膜透析治療を定める。
【0028】
本方法は、治療ターゲット入力又は治療ターゲットレンジ入力を受け取る、詳細には、患者データベースから又はオペレータ(患者、看護師、医師、介護士、或いは患者の治療を管理する際に患者を支援する人など)からの腹膜透析治療ターゲット又はターゲットレンジ入力を受ける入力ステップ101を含む。治療ターゲット値は、治療結果を記述する1又は2以上のパラメータ値の観点で所望の治療結果を定める。治療ターゲット値は、医師によって指示することができる。1つの実施形態において、治療ターゲットは、限外濾過容積又はクレアチニン又は尿素クリアランスなどの溶質クリアランスによって、或いはこれらの組み合わせによって定義される。
【0029】
有利には、本方法は、データベース又はオペレータから治療パラメータレンジ入力を受け取る入力ステップ109を含む。治療パラメータレンジは、1又は2以上の治療パラメータの許容可能レンジ、又は換言すると1又は2以上の治療制約のセットを記述する。治療パラメータレンジは、特定の患者又は特定の腹膜透析機械もしくは機械タイプに関連付けることができる。
【0030】
例えば、治療制約は、特定の患者に許容される最大流入量のような特定の安全パラメータ及び/又は最大総治療時間のような特定の生活の質特有のパラメータを定義することができる。APD患者は、多くの場合、午前中の特定の定められた時間に夜間APD治療を終了しなければならず、従って、総治療時間を制限する必要がある。
【0031】
本方法は、データベース又はオペレータから、腹膜輸送特性値又はBSA(体表面積)もしくは他の患者特性値などの患者特性入力を受け取る更なる入力ステップ102を含む。患者の体表面積は、患者の身長及び体重を入力として用いてデュボアの式のような疫学的式に基づいて推定することができる。患者の腹膜輸送特性値は、輸送体タイプと呼ばれることもあり、腹膜機能検査によって事前に決定することができる。特定の予め定められた均衡条件では、クレアチニン又は場合によっては尿素についての特定のD/P比(透析液/血漿比)は、特定の輸送体タイプに対応すると見なすことができる。
【0032】
レジメン生成ステップ103において、パラメータレンジ又は「溶液スペース」内、例えば、事前に入力された許容可能治療パラメータレンジ/治療制約内の腹膜透析レジメンが生成され、各腹膜透析レジメンは、流入量すなわち患者に最初に注入された腹膜透析液の容積によって定義される一連の交換サイクル、ドウェル時間、すなわち溶液が能動的に抜き取られるか又は注入されていない時間、並びに注入時間、ドウェル時間及び抜き取り又は排液時間の総和である総交換時間によって定義される。更に、腹膜透析レジメンはまた、溶液のグルコース濃度を記述する値を含む、特定の治療に適用される腹膜透析液の記載を含むことができる。
【0033】
本発明の技術によれば、各腹膜透析レジメンは、一連の第1のサイクル及び第2のサイクルによって定義され、複数の腹膜透析レジメンの各腹膜透析レジメンの第1のサイクルは、第1の流入量及び第1のドウェル時間によって定義され、複数の腹膜透析レジメンの各腹膜透析レジメンの第2のサイクルは、第2の流入量及び第2のドウェル時間によって定義され、各治療レジメンは、幾つかの第1のサイクルによって及び幾つかの第2のサイクルによって定義され、第1のサイクルの数及び/又は第2のサイクルの数は、可変であり、及び/又は互いに独立している。
【0034】
1つの実施形態において、第1のサイクルは、第2のサイクルよりも短く小さい。この実施形態において、第1のすなわち小さいサイクルの流入量は、患者の800ml/m2BSAに対して第1の予め定められた関係に従って決定することができる。より短いサイクルのドウェル時間及び総サイクル時間は各々、より短いサイクルについての輸送体タイプ又は腹膜輸送特性値に対応する予め定められた関係に従って決定することができる。より大きいサイクルの流入量は、患者の1500ml/m2BSA(体表面積)に対して第2の予め定められた関係に従って決定することができる。より長いサイクルのドウェル時間及び総サイクル時間は、より長いサイクルについての腹膜輸送特性値又は輸送体タイプに対応する予め定められた関係に従って各々決定することができる。より短い及びより小さいサイクルは、より長い及びより大きいサイクルに先行している。本実施形態によれば、腹膜透析治療レジメンについての溶液スペース又はパラメータレンジ内で、より短い及びより小さい/短いサイクルの数は、第1の自由度であり、より大きい/長いサイクルの数は別の自由度である。この実施形態において、第1のサイクルの数は、第2のサイクルの数とは独立しており、第1のサイクルの数及び第2のサイクルの数の両方は可変である。
【0035】
腹膜透析治療レジメンのパラメータレンジ又は溶液スペース内の別の自由度は、腹膜透析液のタイプ及び/又は適用される腹膜透析液のグルコース濃度とすることができる。グルコース濃度のパラメータレンジは、後続のシミュレーションステップの要求に応じて、及び/又は利用可能な腹膜透析液に応じて並びにPD機械の能力に基づいてサンプリングすることができる。1つの実施形態において、PD機械は、グルコースプロファイリングを提供する能力、すなわち、治療中にグルコース濃度を適合させる能力を備えることができる。本明細書において、第1のグルコース濃度は、第1のサイクルに対して定義することができ、第2のグルコース濃度は、第2のサイクルに対して定義することができる。別の実施形態によれば、適用される腹膜透析液の溶液タイプ及び/又はグルコース濃度は、予め定めることができる。
【0036】
レジメン生成ステップ103の第1の変形形態によれば、小さな交換サイクルの交換容積のサイズと、大きな交換サイクルの交換容積のサイズとの間には一定の比率が定められる。この第1の変形形態によれば、小さな交換サイクル又は大きな交換サイクルの何れかの絶対容積は、追加の自由度である。従って、パラメータレンジ又は溶液スペースは、以下の自由度、すなわち、小さな交換サイクル又は大きな交換サイクルの何れかの絶対サイズ、小さな交換サイクルの数、大きな交換サイクルの数、腹膜透析液の溶液タイプ/グルコース濃度又は上述の腹膜透析液の第1及び第2のグルコース濃度を有する。パラメータレンジは、後続のシミュレーションステップの要求に応じて、及び/又はグルコース濃度の場合には利用可能な腹膜透析液に応じて及び/又はPD機械能力に応じてサンプリングすることができる。上述のレジメン生成ステップ103の第2の変形形態によれば、より短いサイクル及びより長いサイクルに対するドウェル時間及び総サイクル時間は、輸送特性値又は輸送体タイプに対するそれぞれの予め定められた関係に従って計算される。第2の変形形態によれば、小さな交換サイクル又は大きな交換サイクルの絶対容積は、追加の自由度である。従って、パラメータレンジ又は溶液スペースは、以下の自由度、すなわち、小さな交換サイクル及び大きな交換サイクルの絶対サイズ、小さな交換サイクルの数、大きな交換サイクルの数、腹膜透析液の溶液タイプ/グルコース濃度、又は上述の腹膜透析液の第1及び第2のグルコース濃度を有する。パラメータレンジは、後続のシミュレーションステップの要求、及び/又は利用可能な腹膜透析液、及び/又はPD機械能力(グルコース濃度に対する)に応じてサンプリングすることができる。
【0037】
上述のレジメン生成ステップ103の別の変形形態によれば、大きな交換サイクル及び小さな交換サイクルのドウェル時間は、追加の自由度である。更に、第2の変形形態と同様に、小さな交換サイクル又は大きな交換サイクルの絶対容積はそれぞれ可変である。従って、溶液スペース又はパラメータレンジは、以下の自由度、すなわち、小さな交換サイクル又は大きな交換サイクルのドウェル時間、小さな交換サイクル又は大きな交換サイクルの絶対サイズ、小さな交換サイクルの数、大きな交換サイクルの数、腹膜透析液のグルコース濃度、又は上述の腹膜透析液の第1及び第2のグルコース濃度を有する。シミュレーションステップ104において、処方パラメータは、予め定められた(許容可能な)治療パラメータレンジ又は溶液スペース内で変化し、シミュレーションツールに入力されて、シミュレーション治療結果又は品質パラメータを決定する。1つの実施形態において、シミュレーション治療結果は、限外濾過、クレアチニンもしくは尿素クリアランスの観点で、又はこれらのパラメータを組み合わせたコスト関数の観点で表わされる。
【0038】
治療結果のシミュレーションでは、当該技術分野にて周知のように、3つの細孔モデル、2つの細孔モデル、又は2つのプールモデルを適用することができる。
【0039】
マッチングステップ105において、事前入力治療ターゲット又は治療ターゲットレンジは、腹膜透析治療レジメンのセット内の腹膜透析治療レジメンの各々に対してシミュレーション治療結果とマッチング(整合)され、予め定められた許容可能な治療ターゲット又は治療ターゲットレンジに適合する処方候補のセットを生成し、或いは、換言すると、許容可能な治療結果レンジ内のシミュレーション治療結果を有する(許容可能な)治療パラメータレンジ内の処方候補のセットの処方を生成する。治療レジメン候補のセット内の処方は、ステップ106においてオペレータによる選択に利用される。
【0040】
次いで、オペレータは、ステップ107において選択可能な腹膜透析治療レジメンのセット内で特定の治療に対して適用されることになる処方を選択することができる。
【0041】
最後に、ステップ108において、選択された腹膜透析治療レジメンに従った腹膜透析治療が、治療される患者に対して実施される。このため、機械には、当該特定の治療レジメンのための腹膜透析液又は溶液を含む、すなわち、適切な溶液タイプ及びグルコース濃度を有する腹膜透析液又は選択された治療レジメンに対応する適切な溶液及び濃度の組み合わせを可能にする1又は2以上の腹膜透析液バッグが供給される。患者は、腹膜透析機械に接続され、腹膜透析機械は、選択された治療レジメンに従って一連の治療サイクルを適用するよう動作し、すなわち、ポンプ及び弁が、流入量及びそれぞれのサイクルのグルコース濃度、並びに第1及び第2の治療サイクルのスケジュールによって定められる総サイクル時間及びドウェル時間により定められる腹膜透析流体の供給及び抜き取りする目的で動作する。
【0042】
図2は、許容可能な治療パラメータレンジ/治療制約内で一連の第1の交換サイクル及び第2の交換サイクルを適用し、これにより治療ターゲット又は治療ターゲットレンジに適合する働きをするよう腹膜透析治療機械の動作を制御する腹膜透析レジメンを生成する腹膜透析レジメン生成装置2を示している。レジメン生成装置2は、
図1に関して記載した方法100を適用することにより動作するように適合されている。
【0043】
レジメン生成装置2は、特定の患者に対する治療ターゲット又は治療ターゲットレンジを入力するための治療ターゲット入力201を含む。治療ターゲットは、手動動作I/Oデバイスに入力されるか、或いは、それぞれの患者データ記録として治療ターゲット又は治療ターゲットレンジを含む患者データ記録を管理しているデータベースから入力することができる。治療ターゲット又は治療ターゲットレンジは、医師により指示することができる。
【0044】
レジメン生成装置2は更に、患者特性を入力するための患者特性入力ユニット202を含む。患者特性は、手動動作I/Oデバイスに入力されるか、或いは、それぞれの患者データ記録として患者特性を含む患者データ記録を管理しているデータベースから入力することができる。患者特性は、腹膜輸送特性値及び
図1の方法に関連して上記に記載された他の患者特性を含むことができる。
【0045】
レジメン生成装置2は更に、許容可能な治療パラメータレンジ内の腹膜透析レジメンの初期セットを生成するよう構成された腹膜透析レジメン生成ユニット203を含む。腹膜透析治療レジメンの初期セット内の各腹膜透析レジメンは、一連の第1及び第2のサイクルによって定義され、第1のサイクルは、第1の流入量、第1のドウェル時間及び有利には第1のグルコース濃度によって定義され、第2のサイクルは、第2の流入量、第2のドウェル時間及び有利には第2のグルコース濃度によって定義され、腹膜透析治療レジメンの初期セット内の治療レジメンは、第1のサイクルの数及び第2のサイクルの数によって定義され、第1のサイクルの数及び第2のサイクルの数は、可変であり、及び/又は互いに独立している。
【0046】
腹膜透析治療レジメン生成ユニット203は、許容可能な治療パラメータレンジ入力を受け取るよう構成することができ、治療パラメータレンジは、腹膜透析治療レジメンのセットの腹膜透析レジメンに対する治療パラメータの間隔を定義する。許容可能な治療パラメータレンジ/治療制約は、治療される患者の患者データ記録に含めることができる。許容可能な治療パラメータレンジ/治療制約は、医師により指示することができる。
【0047】
腹膜透析治療レジメン生成ユニット203、患者特性入力ユニット202、及び腹膜透析レジメン生成ユニット203は、複数の腹膜透析治療レジメンの各々についての腹膜透析治療結果をシミュレーションしてシミュレーション治療結果を生成するよう構成されたシミュレーションユニット204に接続される。
【0048】
シミュレーションユニット204は更に、シミュレーション治療結果と、腹膜透析治療レジメンのセット内の腹膜透析治療レジメンに対する治療ターゲット又は治療ターゲットレンジ、すなわち、許容可能な治療パラメータレンジ/治療制約とをマッチングさせて、予め定められた許容可能治療ターゲット又は治療ターゲットレンジに適合する治療レジメン候補のセットを生成するよう構成されている。
【0049】
シミュレーションユニット204は、腹膜透析治療レジメン候補のセットの送信のため選択ユニット205に接続される。選択ユニット205において、腹膜透析治療候補のセットの腹膜透析治療候補は、オペレータによる特定の治療に適用される腹膜透析治療レジメンの選択に利用される。
【0050】
図3は、
図2に関して上記で記載されたレジメン生成装置2を含む腹膜透析機械3の1つの実施形態を示す。腹膜透析機械3は、ユーザーインターフェースUI、少なくとも1つのセンサS、並びに特定の治療レジメンに従って腹膜透析機械を作動させる弁及びポンプのような1又は2以上の能動体を含む注入ユニットAを備える。注入ユニットAは、腹膜透析治療を受ける患者Pに流体接続され、腹膜透析液を患者に供給して、患者から代謝廃棄物を含む溶液を抜き取る。治療レジメンのサイクルの各々において、特定の溶液濃度を定義することができる。1つの実施形態において、予め定められた濃度セットの濃度の透析液(例えば、1.5%、2.3%、又は4.25%グルコース)は、治療レジメンの各サイクルに対して適用される。例えば、1.5%、2.3%、又は4.25%グルコースの溶液バッグのような溶液源は、注入ユニットAに連続的に接続され、治療レジメンの特定のサイクルに対して定義された適切な濃度の透析液を患者に注入することができる。
【0051】
代替の実施形態において、注入ユニットAは、入力溶液からの腹膜透析液を混合して、腹膜透析治療レジメンに必要な1又は2以上の腹膜透析液濃度を生成する溶液混合ユニットMUに接続される。入力濃縮物の混合は、溶液混合ユニットMU内で、或いは、第1の濃度の溶液と第2の濃度の溶液とを患者の腹部に連続的に注入することにより腹膜腹部内で実施することができ、連続的注入は溶液混合ユニットにより制御される。溶液混合ユニットMUは、例えば、1.5%、2.3%、又は4.25%グルコースの溶液バッグのような少なくとも2つの溶液源に接続される。患者の腹部との連続的注入及び混合が適用される場合には、流入フェーズは、各々が異なる溶液(グルコース)で2つの別個の流入フェーズに分けることができる。この実施形態において、サイクルに対するグルコース濃度は、溶液源の利用可能な濃度に応じて、例えば、[1.5%,2.3%]又は[2.3%,4.25%]グルコースの間隔内で可変とすることができる。例えば、容積V及びグルコース濃度g(例えば、gは1.5%~2.3%グルコース間の任意の値を有する)のサイクルを治療レジメン内で定義することができる。そこで、2つの隣接する流入フェーズは、容積V1及びV2、並びに例えばグルコース濃度g1=1.5%及びg2=2.3%(又はg1=2.3%及びg2=1.5%)で決定付けられて、次式のようになる。
V1+V2=V
g1*V1+g2*V2=g*V
【0052】
g1、g2、g及びVが与えられると、上記式を解いてV1及びV2を計算することができる。
【0053】
溶液混合ユニットは、(患者の腹部内で)容積V及び等価混合グルコースgをもたらすことになる連続する2つの流入(V1,g1)及び(V2,g2)を実施するよう制御することができる。
【0054】
濃縮物の混合は、治療レジメンの各サイクルに対して実施することができ、唯一の制約は、溶液混合ユニットが扱うことができるバッグの最大数(例えば、6つのバッグ)を超えないことである。
【0055】
ユーザーインターフェースUI、センサS、注入ユニットA及びレジメン生成装置2は、中央処理ユニットCPUに接続される。中央処理ユニットCPUは、レジメン生成装置2から特定の治療に対する選択された腹膜透析治療レジメンを受け取り、注入ユニットA及び/又は溶液混合ユニットMUを制御して、選択された腹膜透析治療レジメンに従って流体交換サイクルを適用することで患者Pに腹膜透析治療を実施する。
【0056】
図4は、腹膜透析治療を患者P2に適用するため者P2に流体接続された腹膜透析装置31に治療レジメン又は治療レジメンのセットを供給する患者データベース4を備えた腹膜透析システム6を示している。患者データベース4は、腹膜透析患者の患者データ記録を管理するデータベースモジュール41を備える。各患者データ記録は、上述のような、患者特性、許容可能な治療パラメータレンジ/治療制約、及び治療ターゲット又は治療ターゲットレンジを含むことができる。データベースモジュール41は、レジメン生成装置2に接続されて、患者特性及び治療ターゲット又は治療ターゲットレンジを
図2に関して上述されたレジメン生成装置に提供する。患者データベース4は、腹膜透析レジメン記録を送信するため腹膜透析機械31に接続される。腹膜透析機械31は、患者P2に流体接続され、同様に
図3に関して上述されたような、受け取った治療レジメンに従って腹膜治療を実施する。
【0057】
図5は、上述のようにシミュレーションに入力される腹膜透析治療レジメンの候補セットのグラフィック表現である。
【0058】
図5に示す実施形態によれば、ある数の第1のサイクルはある数の第2のサイクルに先行し、第1のサイクルは、より小さくより短く、第2のサイクルは、より大きくより長い。
【0059】
通常は、より短くより小さいサイクルは限外濾過であり、より長くより大きいサイクルは溶質クリアランスである。有利には、第1のグルコース濃度は、限外濾過をターゲットとするサイクルに対して定義され、第2のグルコース濃度は、溶質クリアランスをターゲットとするサイクルに対して定義され、より大きいグルコース濃度は、限外濾過をターゲットとするサイクルに対して定義され、これにより、より大きい浸透圧勾配及び/又は浸透圧を生成する。
【0060】
図5に示す実施形態によれば、第1のすなわちより小さくより短いサイクルの数及び第2のサイクルの数は可変であり、互いに独立している。
【0061】
図5に示す実施形態において、腹膜透析治療レジメンは、以下の自由度、すなわち、第1のより小さくより短いサイクルの数、第2のより長くより大きいサイクルの数、並びに治療のため適用される腹膜透析液の溶液タイプ/グルコース濃度を有する。グルコース濃度のパラメータレンジは、後続のシミュレーションステップの要求に応じて、及び/又は利用可能な腹膜透析液又はPD機械能力に応じてサンプリングすることができる。
【0062】
図5の実施形態によれば、第1及び第2のサイクルの流入量は、体表面積に対して第1及び第2の予め定められた関係に従って決定される。第1及び第2のサイクルのドウェル時間及び総サイクル時間は各々、それぞれの第1又は第2のサイクルに対する輸送体タイプ又は腹膜輸送特性値に対応する予め定められた関係に従って決定することができる。
【0063】
図6は、代替の実施形態において腹膜透析治療の候補セットのグラフィック表現である。
図5に示した実施形態と同様に、より短くより小さいサイクルは、より大きくより長いサイクルよりも先行し、第1のすなわちより小さくより短いサイクルの数及び第2のすなわちより大きくより長いサイクルの数は可変であり、互いに独立している。更に、第1及び第2のサイクルのドウェル時間及び総サイクル時間は各々、それぞれの第1又は第2のサイクルに対する輸送体タイプ又は腹膜輸送特性値に対応する予め定められた関係に従って決定することができる。
図5に示す実施形態とは異なって、小さい交換サイクル及び/又は大きい交換サイクルの絶対容積は、追加の自由度である。小さな交換サイクルの交換容積のサイズと、大きな交換サイクルの交換容積のサイズとの間には一定の比率を定めることができる。或いは、大きな交換サイクル及び小さな交換サイクルの交換容積は、独立して可変とすることができる。従って、パラメータレンジ又は溶液スペースは、以下の自由度、すなわち、小さな交換サイクル及び/又は大きな交換サイクルの容積、小さな交換サイクルの数、大きな交換サイクルの数、腹膜透析液の溶液タイプ/グルコース濃度を有する。パラメータレンジは、シミュレーション要求に応じて、及び/又は溶液タイプ可用性又はPD機械の混合及び/又は溶液プロファイリング能力(グルコース濃度に対する)に応じてサンプリングすることができる。
【0064】
図7は、別の代替の実施形態において腹膜透析治療の候補セットのグラフィック表現である。
図5及び6に示される実施形態と同様に、より短い及びより小さいサイクルは、より長い及びより大きいサイクルに先行し、第1のすなわちより小さくより短いサイクルの数及び第2のすなわちより大きくより長いサイクルの数は可変であり、互いに独立している。
【0065】
図5及び
図6に示す実施形態とは違って、より大きい交換サイクル及び/又はより小さい交換サイクルのドウェル時間は、追加の自由度である。短い交換サイクルのドウェル時間と、長い交換サイクルのドウェル時間との間には一定の比率を定めることができる。或いは、大きな交換サイクル及び小さな交換サイクルのドウェル時間は、独立して可変とすることができる。
【0066】
従って、パラメータレンジ又は溶液スペースは、以下の自由度、すなわち、小さな交換サイクル及び/又は大きな交換サイクルの絶対容積、短い交換サイクル及び/又は長い交換サイクルのドウェル時間、小さな交換サイクルの数、大きな交換サイクルの数、腹膜透析液の溶液タイプ/グルコース濃度を有する。パラメータレンジは、後続のシミュレーションステップの要求に応じて、及び/又は利用可能な腹膜透析液、又は混合、及び/又は溶液タイプ可用性又はPD機械の混合及び/又は溶液プロファイリング能力(グルコース濃度に対する)に応じてサンプリングすることができる。
【0067】
図8は、腹膜透析治療シミュレーションに入力される腹膜透析治療レジメンの代替の候補セットのグラフィック表現である。
【0068】
図8に示される実施形態によれば、第1のタイプのより小さくより短いサイクルは、第2のタイプのより大きくより長いサイクルと交互する。
【0069】
図8に示す実施形態によれば、第1のすなわちより小さくより短いサイクルの数及び第2のすなわちより大きくより長いサイクルの数が可変である。
【0070】
従って、
図8に示す実施形態によれば、短い/小さいサイクルの数及び大きい/長いサイクルの数が結合される。腹膜透析治療レジメンのパラメータ又は自由度としてパラメータ充填容積、ドウェル時間及びグルコース濃度に関連して、
図8に示される腹膜透析治療レジメンの候補セットは、
図5の候補セットに相当する。
【0071】
図9は、腹膜透析治療シミュレーションに入力される腹膜透析治療レジメンの別の代替の候補セットのグラフィック表現である。
【0072】
図8に示した候補セットと同様に、第1のタイプのより小さくより短いサイクルは、第2のタイプのより大きくより長いサイクルと交互し、第1のすなわちより小さくより短いサイクルの数及び第2のすなわちより大きくより長いサイクルの数が可変である。腹膜透析治療レジメンのパラメータ又は自由度としてパラメータ充填容積、ドウェル時間及びグルコース濃度に関連して、
図9に示される腹膜透析治療レジメンの候補セットは、
図6の候補セットに相当する。
【0073】
図10は、腹膜透析治療シミュレーションに入力される腹膜透析治療レジメンの更に別の代替の候補セットのグラフィック表現である。
【0074】
図8及び
図9に示した候補セットと同様に、第1のより小さくより短いサイクルは、第2のより大きくより長いサイクルと交互し、第1のサイクルの数及び第2のサイクルの数が可変である。腹膜透析治療レジメンのパラメータ又は自由度としてパラメータ充填容積、ドウェル時間及びグルコース濃度に関連して、
図10に示される腹膜透析治療レジメンの候補セットは、
図7の候補セットに相当する。