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特許7450396酔い予測システム及び酔い予測システムを備えた車両、酔い予測システムの制御方法及びプログラム
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  • 特許-酔い予測システム及び酔い予測システムを備えた車両、酔い予測システムの制御方法及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】酔い予測システム及び酔い予測システムを備えた車両、酔い予測システムの制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20240308BHJP
   A61B 5/18 20060101ALI20240308BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240308BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20240308BHJP
【FI】
A61B10/00 W
A61B5/18
A61B5/11 120
B60W40/08
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020021040
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021126174
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】石原 慶隆
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 恭史
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 隆太
(72)【発明者】
【氏名】湊 裕貴
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-126185(JP,A)
【文献】国際公開第2019/110312(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0005341(US,A1)
【文献】特開2006-123735(JP,A)
【文献】特開2005-128631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/16-5/18
A61B 10/00
B60W 40/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に乗車した乗員を撮像し、撮像情報を出力する撮像手段から出力された前記撮像情報に基づいて前記乗員の頭部の運動量を算出し、前記乗員の頭部の運動量が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、前記乗員が酔い状態であると判定する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、さらに前記撮像情報に含まれる前記乗員の右肩及び左肩に関する情報に基づいて前記乗員の右肩と左肩とを結ぶ仮想線を算出し、前記仮想線の傾きの変化に基づいて前記乗員の頭部の運動量を算出し、前記乗員の頭部の運動量が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、前記乗員が酔い状態であると判定することを特徴とする、
酔い判定システム。
【請求項2】
車両に乗車した乗員を撮像し、撮像情報を出力する撮像手段から出力された前記撮像情報に基づいて前記乗員の頭部の運動量を算出し、前記乗員の頭部の運動量が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、前記乗員が酔い状態であると判定する制御手段と、
前記制御手段は、さらに、前記撮像情報と、前記車両に備えられたハンドルの舵角に関する情報であるハンドル角情報と、前記車両の速度に関する情報である速度情報と、に基づいて前記乗員の頭部の運動量を算出し、前記乗員の頭部の運動量が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、前記乗員が酔い状態であると判定することを特徴とする、
酔い判定システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記乗員を複数回撮像した撮像手段から出力された複数の撮像情報に含まれる前記乗員の頭に関する情報と、前記撮像手段の撮像間隔と、に関する情報に基づいて前記乗員の頭部の運動量を算出し、前記乗員の頭部の運動量が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、前記乗員が酔い状態であると判定することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の酔い判定システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記撮像情報と、前記車両に生じる速度変化に関する情報である速度変化情報と、に基づいて前記乗員の頭部の運動量を算出し、前記乗員の頭部の運動量が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、前記乗員が酔い状態であると判定することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の酔い判定システム。
【請求項5】
前記閾値の値を変更する閾値変更手段と、
を備えたことを特徴とする、
請求項1から4のいずれか1項に記載の酔い判定システム。
【請求項6】
前記閾値変更手段は、前記撮像情報に基づいて乗員の顔を認識し、前記閾値の値を予め乗員の顔と対応して記憶された乗員個別閾値の値に変更することを特徴とする、
請求項5に記載の酔い判定システム。
【請求項7】
前記閾値変更手段は、単位時間当たりの前記車両に備えられたハンドルの操舵角の変化量であるハンドル角変化量、前記車両に備えられたアクセルペダルの踏み込み角度の変化量であるアクセルペダル角変化量又は前記車両に備えられたブレーキペダルの踏み込み角度の変化量であるブレーキペダル角変化量のいずれかが、予め定められた所定の既定値を超えた場合に、前記閾値の値を変更することを特徴とする、
請求項5に記載の酔い判定システム。
【請求項8】
前記閾値変更手段は、前記車両の位置を検出する位置情報検出手段によって検出された位置情報に基づき、予め記憶された道路情報から現在位置の道路情報を抽出し、前記道路情報に応じて前記閾値の値を変更することを特徴とする、
請求項5に記載の酔い判定システム。
【請求項9】
車両に乗車した乗員を撮像し、撮像情報を出力する撮像手段と、
前記撮像手段から出力された前記撮像情報に基づいて前記乗員の頭部の運動量を算出し、前記乗員の頭部の運動量が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、前記乗員が酔い状態であると判定する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、さらに前記撮像情報に含まれる前記乗員の右肩及び左肩に関する情報に基づいて前記乗員の右肩と左肩とを結ぶ仮想線を算出し、前記仮想線の傾きの変化に基づいて前記乗員の頭部の運動量を算出し、前記乗員の頭部の運動量が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、前記乗員が酔い状態であると判定することを特徴とする、
車両。
【請求項10】
車両に乗車した乗員を撮像し、撮像情報を出力する撮像手段と、
前記撮像手段から出力された前記撮像情報に基づいて前記乗員の頭部の運動量を算出し、前記乗員の頭部の運動量が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、前記乗員が酔い状態であると判定する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、さらに、前記撮像情報と、前記車両に備えられたハンドルの舵角に関する情報であるハンドル角情報と、前記車両の速度に関する情報である速度情報と、に基づいて前記乗員の頭部の運動量を算出し、前記乗員の頭部の運動量が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、前記乗員が酔い状態であると判定することを特徴とする、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酔い予測システム及び酔い予測システムを備えた車両、酔い予測システムの制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗り物酔いを検出し、乗り物酔いの程度を低減することが可能な乗り物酔い対策装置が知られている。例えば、特許文献1には、車両内の搭乗者の状態を検出して搭乗者状態情報を生成する搭乗者状態検出部と、車両の状態に関する情報を検出して車両状態情報を生成する車両状態検出部と、搭乗者状態情報、車両状態情報、および、搭乗者が乗り物酔い状態にあるか否かを判定するために用いる乗り物酔い判定閾値の情報を格納するデータ処理格納部と、データ処理格納部が格納する情報に基づいて、搭乗者が乗り物酔い状態にあるか否かを判定し、搭乗者が乗り物酔い状態にあると判定したとき、対策措置を施すか否かを決定する乗り物酔い判定部と、乗り物酔い判定部が対策措置を施すと決定したとき、乗り物酔いの程度を低減するための対策措置を施す対策部とを備えた構成を有する乗り物酔い対策装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-34576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の乗り物酔い対策装置では、行動や生理的変化に基づいて乗り物酔いを検出しているため、乗り物酔いの検出の正確性が十分ではないという課題がある。また、正確に乗り物酔いを検出するためには、種々のデータの検出が必要になるという課題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、頭部の運動量から乗り物酔いを検出することができる車酔い予測システムを提供することを主目的とする。また、このような車酔い予測システムを備えた車両を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の目的の少なくとも一つを達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の酔い予測システムは、
車両に乗車した乗員を撮像し、撮像情報を出力する撮像手段から出力された前記撮像情報に基づいて前記乗員の頭部の運動量を算出し、前記乗員の頭部の運動量が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、前記乗員が酔い状態であると判定する制御手段と、
を備えたことを特徴とする、
ものである。
【0008】
この酔い予測システムでは、車両に乗車した乗員を撮像する撮像手段から出力された撮像情報に基づいて乗員の頭部の運動量を算出し、乗員の頭部の運動量が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、乗員が酔い状態であると判定する。こうすることにより、乗員の頭部の運動量という少ないパラメータから乗員の酔い状態を判定することができる。
【0009】
本発明の酔い予測システムにおいて、前記制御手段は、前記乗員を複数回撮像した撮像手段から出力された複数の撮像情報に含まれる前記乗員の頭に関する情報と、前記撮像手段の撮像間隔と、に関する情報に基づいて前記乗員の頭部の運動量を算出し、前記乗員の頭部の運動量が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、前記乗員が酔い状態であると判定することを特徴としてもよい。こうすることにより、乗員の頭部の運動量という少ないパラメータから乗員の酔い状態を判定することができる。
【0010】
この態様を採用した本発明の酔い予測システムにおいて、前記制御手段は、前記撮像情報に含まれる前記乗員の右肩及び左肩に関する情報に基づいて前記乗員の右肩と左肩とを結ぶ仮想線を算出し、前記仮想線の傾きの変化に基づいて前記乗員の頭部の運動量を算出し、前記乗員の頭部の運動量が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、前記乗員が酔い状態であると判定することを特徴としてもよい。一般的に、撮像手段で撮像した撮像情報は二次元情報となるため、「奥行き」に関する変化については、正確に変化を捉えることが難しい場合がある。これに対し、乗員の右肩と左肩とを結ぶ仮想線の傾きの変化を用いることで、乗員の頭部の運動量を算出する際、より正確に算出することができる。
【0011】
本発明の酔い予測システムにおいて、前記制御手段は、前記撮像情報と、前記車両に生じる速度変化に関する情報である速度変化情報と、に基づいて前記乗員の頭部の運動量を算出し、前記乗員の頭部の運動量が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、前記乗員が酔い状態であると判定することを特徴としてもよい。こうすることにより、乗員の頭部の運動量の算出に際し、車両の運動量を加味することができるため、乗員の頭部の運動量を算出する際、より正確に算出することができる。なお、ここで、「速度変化情報」とは、速度変化に関する情報を意味し、速度の増減に加え、加速度、加加速度(躍度)の値や変化量も含む意味である。
【0012】
本発明の酔い予測システムにおいて、前記制御手段は、前記撮像情報と、前記車両に備えられたハンドルの舵角に関する情報であるハンドル角情報と、前記車両の速度に関する情報である速度情報と、に基づいて前記乗員の頭部の運動量を算出し、前記乗員の頭部の運動量が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、前記乗員が酔い状態であると判定することを特徴としてもよい。乗員が操作するハンドルの舵角に関する情報、車両の速度に関する情報は、いずれも車両の運動量に大きく影響を与える情報であるため、乗員の頭部の運動量を算出するに際し、これらの情報を加味することによって車両の運動量を加味することができるため、乗員の頭部の運動量を算出する際、より正確に算出することができる。
【0013】
本発明の酔い予測システムは、前記閾値の値を変更する閾値変更手段と、を備えたことを特徴としてもよい。こうすることにより、乗員が酔いを感じるか否かは個人差があるため、個人差に対応した酔い予測を行うことができる。
【0014】
この態様を採用した本発明の酔い予測システムにおいて、前記閾値変更手段は、前記撮像情報に基づいて乗員の顔を認識し、前記閾値の値を予め乗員の顔と対応して記憶された乗員個別閾値の値に変更することを特徴としてもよい。酔いの感じ方には個人差があるため、乗員の顔と対応して予め記憶された乗員個別閾値の値を閾値の値に変更することで、個人差を加味した酔い予測を行うことができる。
【0015】
この態様を採用した本発明の酔い予測システムにおいて、前記閾値変更手段は、単位時間当たりの前記車両に備えられたハンドルの操舵角の変化量であるハンドル角変化量、前記車両に備えられたアクセルペダルの踏み込み角度の変化量であるアクセルペダル角変化量又は前記車両に備えられたブレーキペダルの踏み込み角度の変化量であるブレーキペダル角変化量のいずれかが、予め定められた所定の既定値を超えた場合に、前記閾値の値を変更することを特徴としてもよい。乗員が酔いを感じるか否かは、運転者のハンドル操作やアクセル操作、ブレーキ操作の影響が大きいことが分かっているため、ハンドル角変化量、アクセルペダル角変化量、ブレーキペダル角変化量に基づいて酔い判定閾値の値を変更することで、より正確に酔い状態を判定することができる。
【0016】
この態様を採用した本発明の酔い予測システムにおいて、前記閾値変更手段は、前記車両の位置を検出する位置情報検出手段によって検出された位置情報に基づき、予め記憶された道路情報から現在位置の道路情報を抽出し、前記道路情報に応じて前記閾値の値を変更することを特徴としてもよい。乗員が酔いを感じるか否かは、車両が走行する道路状態の影響が大きいことが分かっているため、車両が走行する道路状態に応じて閾値を変更することにより、より正確に酔い状態を判定することができる。なお、ここで、「道路情報」とは、道路の凹凸や起伏、湾曲等、車両が走行するに際し、振動等の頭部の運動量に影響する情報を意味する。
【0017】
本発明の車両は、
車両に乗車した乗員を撮像し、撮像情報を出力する撮像手段と、
前記撮像手段から出力された前記撮像情報に基づいて前記乗員の頭部の運動量を算出し、前記乗員の頭部の運動量が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、前記乗員が酔い状態であると判定する制御手段と、
を備えたことを特徴とする、
ものである。
【0018】
この車両では、車両に乗車した乗員を撮像する撮像手段から出力された撮像情報に基づいて乗員の頭部の運動量を算出し、乗員の頭部の運動量が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、乗員が酔い状態であると判定する。こうすることにより、乗員の頭部の運動量という少ないパラメータから乗員の酔い状態を判定することができる。
【0019】
本発明の酔い予測システムの制御方法は、
車両に乗車した乗員を撮像し、撮像情報を出力する撮像手段から出力された前記撮像情報に基づいて前記乗員の頭部の運動量を算出し、前記乗員の頭部の運動量が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、前記乗員が酔い状態であると判定する制御手段と、を備えたことを特徴とする、酔い予測システムの制御方法であって、
前記撮像手段から出力された前記撮像情報に基づいて前記乗員の頭部の運動量を算出し、前記乗員の頭部の運動量が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、前記乗員が酔い状態であると判定する判定ステップと、
を含むことを特徴とする、
ものである。
【0020】
この酔い予測システムの制御方法は、車両に乗車した乗員を撮像する撮像手段から出力された撮像情報に基づいて乗員の頭部の運動量を算出し、乗員の頭部の運動量が予め定められた閾値以上であると判定した場合に、乗員が酔い状態であると判定する。こうすることにより、乗員の頭部の運動量という少ないパラメータから乗員の酔い状態を判定することができる。
【0021】
本発明の酔い予測システムの制御方法において、酔い予測システムの制御方法は上述したいずれかの酔い予測システムが備えている各種構成を備えていてもよいし、また、上述したいずれかの酔い予測システムの機能を実現するようなステップを追加しても良い。
【0022】
本発明のプログラムは、酔い予測システムの制御方法の各ステップを1又は2以上のコンピュータに実行させるためのプログラムである。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体(例えば、ハードディスク、ROM、CD、DVD、フラッシュメモリなど)に記録されていても良いし、伝送媒体(インターネットや有線/無線LANなどの通信網)を介してあるコンピュータから別のコンピュータへ送信されても良いし、その他どのような形で授受されても良い。また、制御方法の各ステップを実行する装置で実行されるものであっても、プログラムが実行される装置と処理が行われる装置とが異なっていてもよい。いずれの場合であっても、このプログラムを1つのコンピュータに実行させるか又は複数のコンピュータに各ステップを分担して実行させれば、上述した制御方法と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、車両20の電気的接続を説明するためのブロック図である。
図2図2は、酔い判定処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態の一例である車両20について詳しく説明する。以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。なお、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号を付す。また、車両20における酔い予測システムの制御方法の一例を示すことで、本発明の酔い予測システムの制御方法の一例を明らかにする。
【0025】
本発明の実施の形態の一例である車両20は、図1に示すように、乗員を撮像するカメラ22と、車両20の速度を計測する速度センサ24と、カメラ22から出力された撮像情報及び速度センサ24から出力された速度情報に基づいて乗員の酔いを予測する制御ユニット30と、を備えている。こうすることにより、撮像手段から出力された撮像情報及び速度センサ24から出力された速度情報から算出される速度変化情報に基づいて乗員の酔いを予測することができる。
【0026】
カメラ22は、本発明の撮像手段に相当する公知のデジタルカメラであり、予め定められた撮像間隔に従って、連続して乗員を含む車両用シート周辺を撮像し、撮像情報として出力する。
【0027】
速度センサ24は、公知の速度センサであり、車両20の速度を速度情報として制御ユニット30に出力する。
【0028】
制御ユニット30は、本発明の制御手段に相当し、CPU31を中心とするマイクロプロセッサとして構成されている。この制御ユニット30は、乗員の酔いを予測する酔い判定処理ルーチンを含む各種プログラム等が記憶されたROM32と、カメラ22から出力された撮像情報や速度センサ24から出力された速度情報等を一時的に記憶するRAM33と、酔い判定閾値等各種情報を記憶する記憶手段34と、カメラ22との間の各種信号の送受信を行うインタフェース35(以下、「I/F35」と言う。)がそれぞれバス36を介して電気的に接続されている。この制御ユニット30は、カメラ22から出力された撮像情報に基づいて乗員が酔い状態であるか否かを判定する。具体的には、以下の酔い判定処理ルーチンを実行することにより、乗員が酔い状態であるか否かを判定する。なお、この制御ユニット30は、酔い状態であるか否かを判定する処理のみを行うものであってもよいし、車両に備えられたECU等の制御ユニットの一部であってもよい。
【0029】
次に、乗員が酔い状態であるか否かを判定する酔い判定方法の一例について、図2を用いて説明する。ここで、図2は、酔い判定処理ルーチンの一例を示すフローチャートであり、この酔い判定処理ルーチンは、カメラ22から撮像情報が出力された際に繰り返し実行される。
【0030】
この酔い判定処理ルーチンが実行されると、CPU31は、カメラ22から出力された撮像情報を取得する(ステップS110)と共に、速度センサ24から出力された速度情報を取得し、速度情報から速度変化情報を算出する(ステップS120)。
【0031】
続いて、CPU31は、速度変化情報と撮像情報に基づいて乗員の頭の運動量を算出する(ステップS130)。具体的には、連続する撮像情報に含まれる乗員の頭の位置をそれぞれ検出し、連続する撮像情報のいずれにも含まれる対象情報(例えば、ヘッドレスト等)との位置関係と撮像間隔から、乗員の頭の位置の変化量を算出し、予め定められた撮像間隔で変化量の値を除算することにより運動量、乗員の動きに起因する乗員の頭部の運動量を算出する。加えて、車両20の速度変化情報から車両20の運動量を算出することで、車両20の動きに起因する乗員の頭部の運動量を算出し、乗員の運動量に起因する乗員の頭部の運動量と車両20の動きに起因する頭部の運動量とを合成し、乗員の頭部の運動量を算出する。
【0032】
続いて、CPU31は、記憶手段34から酔い判定閾値を読み出し、ステップS130で算出した運動量が酔い判定閾値以上であるか否かを判定し(ステップS140)、酔い判定閾値以上であると判定した場合には、酔い状態信号を出力して(ステップS150)、本ルーチンを終了する。こうすることにより、撮像情報に基づいて算出した運動量から乗員が酔い状態であるか否かを判定することができる。
【0033】
一方、ステップS130で算出した運動量が酔い判定閾値未満であるとステップS140で判定した場合には、本ルーチンを終了する。付言すると、このような場合には酔い状態信号が出力されないため、酔い状態ではないと判断することができる。
【0034】
以上詳述した実施の形態の車両20によれば、カメラ22から出力された撮像情報に基づいて算出した乗員の動きに起因する頭部の運動量に基づいて乗員の頭部の運動量を算出し(ステップS130)、乗員の頭部の運動量があらかじめ定められた酔い判定閾値以上であるか否かを判定し(ステップS140)、酔い判定閾値以上であると判定した場合には、酔い信号を出力する(ステップS150)。こうすることにより、乗員の頭部の運動量から乗員の酔い状態を判定することができる。
【0035】
また、ステップS130において、連続する撮像情報に含まれる乗員の頭の位置をそれぞれ検出し、連続する撮像情報のいずれにも含まれる対象情報(例えば、ヘッドレスト等)との位置関係から乗員の頭の位置の変化量を算出し、予め定められた撮像間隔で変化量の値を除算することにより運動量を算出することで、乗員の頭部の運動量という少ないパラメータから乗員の酔い状態を判定することができる。
【0036】
更に、ステップS130で頭部の運動量を算出するに際し、撮像情報に基づいて算出した乗員の動きに起因する頭部の運動量に速度情報に基づいて算出した車両20の動きに起因する頭部の運動量を合成することにより、乗員の動きに起因する頭部の運動量のみで頭部の運動量を算出する場合と比較して、より頭部の運動量を正確に算出することができるため、より正確に乗員の酔い状態を判定することができる。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0038】
例えば、上述した実施の形態では、撮像情報に含まれる乗員の頭の相対位置変化と撮像間隔に基づいて運動量を算出するものとしたが、撮像情報に含まれる乗員の右肩及び左肩の位置を抽出し、右肩と左肩とを結ぶ仮想線の傾きの変化に基づいて、乗員の頭の運動量を算出するものとしてもよい。一般的に、撮像手段で撮像した撮像情報は二次元情報となるため、「奥行き」に関する変化については、正確に変化を捉えることが難しい場合がある。これに対し、乗員の右肩と左肩とを結ぶ仮想線の傾きの変化と頭の移動の相関関係を用いることで、乗員の頭部の運動量を算出する際、より正確に算出することができる。
【0039】
上述した実施の形態では、撮像情報に含まれる乗員の頭の相対位置変化と撮像間隔に基づいて酔いを推定するための運動量を算出するものとしたが、乗員の頭に変えて、又は、加えて、撮像情報に含まれる乗員の眼球の移動量の相対位置変化と撮像間隔に基づいて酔いを推定するための運動量を算出してもよい。眼球の移動量が大きい場合には酔い状態を感じやすいことが知られているため、眼球の移動量を用いることで、より正確に乗員の酔い状態を判定することができる。
【0040】
上述した実施の形態では、ステップS130にいて、速度センサ24から出力された速度情報に基づいて車両20の動きに起因する頭部の運動量を算出するものとしたが、速度情報に加え、ハンドルの舵角に関するハンドル角情報に基づいて車両の動きに起因する頭部の運動量を算出してもよい。具体的には、ハンドルの舵角と車両速度から車両20の動きに起因して生じる運動量の大きさ及び方向を算出し、これを車両の動きに起因する頭部の運動量と推定することで算出する。こうすることにより、ハンドル角情報を用いない場合と比較して、より正確に乗員の頭部の運動量を算出することができるため、より正確に乗員の酔い状態を判定することができる。
【0041】
上述した実施の形態では、カメラ22を設けるものとしたが、カメラは複数設けてもよい。複数のカメラからの撮像情報を用いることで、乗員の頭部の移動をより正確に検出することができる。このとき、カメラは車両用シートの前方右側及び前方左側となる左右両側に設けても良い。こうすることにより、右側に位置するカメラからの撮像情報と左側に位置するカメラからの撮像情報がお互いに情報を補い合うことになるため、乗員の頭部の移動をより正確に検出することができる。
【0042】
上述した実施の形態では、カメラ22はデジタルカメラであるものとしたが、カメラ22はデジタルビデオカメラであってもよい。この場合も、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0043】
上述した実施の形態では、酔い判定閾値はあらかじめ記憶手段34に定められているものとしたが、酔い判定閾値を入力する入力手段(例えば、タッチパネルやテンキー等)を備え、入力手段から入力された値を酔い判定閾値として記憶手段34に記憶するものとしてもよい。酔い状態であると感じるか否かは、乗員の個人差があるため、乗員に応じて閾値を設定することで、乗員の個人差に応じて酔い状態を判定することができる。
【0044】
上述した実施の形態では、酔い判定閾値はあらかじめ記憶手段34に定められているものとしたが、酔い判定閾値を表示する表示手段(例えば、液晶モニタ等)と、酔い判定閾値を変更する変更手段(例えば、タッチパネルやテンキー等)と、を備え、記憶手段34に記憶された酔い判定閾値を表示手段に表示するとともに、入力手段から入力された入力情報(例えば、アップや上、ダウンや下、といった数値の変更を意図する信号)に基づいて酔い判定閾値を変更してもよい。酔い状態であると感じるか否かは、乗員の個人差があるため、乗員に応じて閾値を設定することで、乗員の個人差に応じて酔い状態を判定することができる。
【0045】
上述した実施の形態では、酔い判定閾値はあらかじめ記憶手段34に定められているものとしたが、乗員の顔情報と対応する乗員個別閾値を予め記憶手段34に記憶し、カメラ22で乗員を撮像した際、乗員の顔情報と対応する乗員個別閾値を読み出し、閾値として採用しても良い。酔い状態であると感じるか否かは、乗員の個人差があるため、乗員に応じて閾値を設定することで、乗員の個人差に応じて酔い状態を算出することができる。
【0046】
上述した実施の形態では、酔い判定閾値はあらかじめ記憶手段34に定められているものとしたが、乗員がハンドルを操作する際のハンドルの舵角の単位時間当たりの角度の変化量であるハンドル角変化量に基づいて酔い判定閾値の値を変更するものとしてもよい。例えば、ハンドル角変化量が小さい場合には酔い判定閾値の値を大きくし、ハンドル角変化量が大きい場合には酔い判定閾値の値を小さくしてもよい。乗員が酔いを感じるか否かは、運転者のハンドル操作の影響が大きいことが分かっているため、ハンドル角変化量に基づいて酔い判定閾値の値を変更することで、より正確に酔い状態を判定することができる。
【0047】
上述した実施の形態では、酔い判定閾値はあらかじめ記憶手段34に定められているものとしたが、乗員がアクセルペダルを操作する際のアクセルペダルの踏み込み角度の単位時間当たりの角度の変化量であるアクセルペダル角変化量に基づいて酔い判定閾値の値を変更するものとしてもよい。例えば、アクセルペダル角変化量が小さい場合には酔い判定閾値の値を大きくし、アクセルペダル角変化量が大きい場合には酔い判定閾値の値を小さくしてもよい。乗員が酔いを感じるか否かは、運転者のアクセルワークの影響が大きいことが分かっているため、アクセルペダル角変化量に基づいて酔い判定閾値の値を変更することで、より正確に酔い状態を判定することができる。
【0048】
上述した実施の形態では、酔い判定閾値はあらかじめ記憶手段34に定められているものとしたが、乗員がブレーキペダルを操作する際のブレーキペダルの踏み込み角度の単位時間当たりの角度の変化量であるブレーキペダル角変化量に基づいて酔い判定閾値の値を変更するものとしてもよい。例えば、ブレーキペダル角変化量が小さい場合には酔い判定閾値の値を大きくし、ブレーキペダル角変化量が大きい場合には酔い判定閾値の値を小さくしてもよい。乗員が酔いを感じるか否かは、運転者のブレーキワークの影響が大きいことが分かっているため、ブレーキペダル角変化量に基づいて酔い判定閾値の値を変更することで、より正確に酔い状態を判定することができる。
【0049】
上述した実施の形態では、酔い判定閾値はあらかじめ記憶手段34に定められているものとしたが、車両の位置を検出する位置情報検出手段(例えば、公知のGPSシステム)によって検出された位置情報に基づき、予め記憶された地図情報から現在の位置の道路情報を抽出し、道路情報に応じて閾値を変更するものとしてもよい。例えば、現在走行中の道路が起伏が激しい場合や道路表面に凹凸を有する場合には閾値の値を小さくしてもよい。乗員が酔いを感じるか否かは、道路状況の影響が大きいことが分かっているため、道路状況に基づいて酔い判定閾値の値を変更することで、より正確に酔い状態を判定することができる。
【0050】
上述した実施の形態では、速度センサ24から出力された速度情報に基づいて車両の動きに起因する頭部の運動量を算出するものとしたが、速度情報の出力方法は速度センサ24に限定されるものではなく、公知の車両に設けられた種々のセンサ、例えば、車軸の回転数を検出する車軸センサ)からの出力信号を用いてもよいし、位置情報システム(例えば、GPSシステム)等から得られる移動度及び移動時間から速度情報を算出してもよい。いずれの場合も、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0051】
上述した実施の形態では、速度センサ24から出力された速度情報に基づいて車両の動きに起因する頭部の運動量を算出するものとしたが、速度情報としては、加速度センサ等から出力される加速度や加加速度(躍度)等に基づいて車両の動きに起因する頭部の運動量を算出しても良よい。いずれの場合も、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0052】
上述した実施の形態では、ステップS120で速度センサ24から出力された速度情報に基づいて車両の動きに起因する頭部の運動量を算出するものとしたが、ステップS120は省略してもよい。こうすることにより、処理ルーチンを簡略化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
上述した実施の形態で示すように、車両の制御分野、特に乗員の酔い予測システムとして利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
20…車両、22…カメラ、24…速度センサ、30…制御ユニット、31…CPU、32…ROM、33…RAM、34…記憶手段、35…インタフェース、36…バス。
図1
図2