(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】粉体貯留装置およびその粉塵爆発防止システム
(51)【国際特許分類】
B65D 90/22 20060101AFI20240308BHJP
G06N 3/08 20230101ALI20240308BHJP
B65D 90/48 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
B65D90/22 Z
G06N3/08
B65D90/48 Z
(21)【出願番号】P 2020027802
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390010342
【氏名又は名称】エア・ウォーター防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 秀晃
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-230835(JP,A)
【文献】特開2019-070485(JP,A)
【文献】特開2014-065515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 90/22
G06N 3/08
B65D 90/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を貯留するサイロ容器と、
前記サイロ容器に不活性ガス、イオンおよびミストからなる群より選ばれた少なくとも一種を注入する注入部とを備え、
前記注入部は、前記サイロ容器の周面に設けられ、前記注入部は配管と、前記配管に取り付けられたノズルとを有し、
前記サイロ容器の外周面には第1の温度センサが複数設けられ、前記サイロ容器の中心部には第2の温度センサが設けられている、粉体貯留装置。
【請求項2】
前記不活性ガス、イオンおよびミストからなる群より選ばれた少なくとも一種の注入量を調整する制御部と、前記注入量の調整に必要な関数を記憶する記憶部をさらに備えた、請求項1に記載の粉体貯留装置。
【請求項3】
前記制御部は、粉体の種類および粉体の総体積に応じて前記注入量を調整する、請求項2に記載の粉体貯留装置。
【請求項4】
前記制御部は、粉体の種類および粉体の含水率に応じて前記注入量を調整する、請求項2または3に記載の粉体貯留装置。
【請求項5】
前記制御部は、粉体の種類および粉体の粒径に応じて前記注入量を調整する、請求項2から4のいずれか1項に記載の粉体貯留装置。
【請求項6】
前記制御部は、粉体の種類および投入時の湿度に応じて前記注入量を調整する、請求項2から5のいずれか1項に記載の粉体貯留装置。
【請求項7】
前記制御部は、粉体の爆発限界濃度に応じて前記注入量を調整する、請求項2から6のいずれか1項に記載の粉体貯留装置。
【請求項8】
前記制御部は、粉体の統計的な最小着火エネルギーに応じて前記注入量を調整する、請求項2から7のいずれか1項に記載の粉体貯留装置。
【請求項9】
前記制御部は、粉体の限界酸素濃度に応じて前記注入量を調整する、請求項2から8のいずれか1項に記載の粉体貯留装置。
【請求項10】
情報処理装置によりニューラルネットワークを実現する粉体貯留装置の粉塵爆発防止システムであって、
前記粉体貯留装置は、
粉体を貯留するサイロ容器と、
前記サイロ容器に不活性ガス、イオンおよびミストからなる群より選ばれた少なくとも一種を注入する注入部とを備え、
前記粉体貯留装置の粉塵爆発防止システムは、入力層と出力層とを備え、前記入力層の入力データを前記サイロ容器への粉体投入時の粉体粉塵爆発に関する複数のリスク要因の少なくとも一つとし、前記出力層の出力データを粉体投入時刻より未来の前記サイロ容器内の粉塵爆発発生確率とするニューラルネットワークと、前記入力データおよび前記出力データの実績値を教師データとして前記ニューラルネットワークを学習させる機械学習部と、前記機械学習部にて学習させた前記ニューラルネットワークに現在時刻を基準時刻として前記入力データを入力し、現在時刻が基準時刻である前記出力データに元づいて未来の推定値を求める推定部と、前記推定部の推定値に応じて前記注入部からの注入量を決定する制御部とを備え、
前記リスク要因は、粉体の種類、粉体の総体積、粉体の含水率、粉体の粒径、粉体投入時の湿度である、粉体貯留装置の粉塵爆発防止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粉体貯留装置およびその粉塵爆発防止システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、サイロは、たとえば特開2018-185264号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1には、サイロの上部から垂下される吸引ホースと、サイロ内に貯蔵された貯蔵物の高さ情報に基づいて、貯蔵物の表面近傍に前記吸引ホースの吸引口が位置するよう、前記吸引ホースの長さを調整する吸引ホース長調整装置と、前記吸引ホースで吸引されたガス中の所定の成分の濃度を検知するガスセンサと、を備えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のサイロでは爆発事故が発生しうるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
粉体貯留装置は、粉体を貯留するサイロ容器と、前記サイロ容器に不活性ガス、イオンおよびミストからなる群より選ばれた少なくとも一種を注入する注入部とを備える。
【0006】
このように構成された粉体貯留装置は、サイロ容器に不活性ガスなどを注入するためサイロ容器内での粉塵爆発を抑制できる。
【0007】
好ましくは、前記不活性ガス、イオンおよびミストからなる群より選ばれた少なくとも一種の注入量を調整する制御部と、前記注入量の調整に必要な関数を記憶する記憶部をさらに備える。
【0008】
この場合には記憶部に記憶された関数に応じて注入量を調整するため、効果的に注入量を制御できる。
【0009】
好ましくは、前記制御部は、粉体の種類および粉体の総体積に応じて注入量を調整する。この場合、効果的に粉塵爆発を抑制できる。
【0010】
好ましくは、前記制御部は、粉体の種類および粉体の含水率に応じて注入量を調整する。この場合、効果的に粉塵爆発を抑制できる。
【0011】
好ましくは、前記制御部は、粉体の種類および粉体の粒径に応じて注入量を調整する。この場合、効果的に粉塵爆発を抑制できる。
【0012】
好ましくは、制御部は、粉体の種類および投入時の湿度に応じて注入量を調整する。この場合、効果的に粉塵爆発を抑制できる。
【0013】
好ましくは、前記制御部は、粉体の爆発限界濃度に応じて注入量を調整する。
好ましくは、前記制御部は、粉体の統計的な最小着火エネルギーに応じて注入量を調整する。
【0014】
好ましくは、前記制御部は、粉体の限界酸素濃度に応じて注入量を調整する。
この発明に従った粉塵爆発防止システムは、情報処理装置によりニューラルネットワークを実現する粉体貯留装置の粉塵爆発防止システムであって、前記粉体貯留装置は、粉体を貯留するサイロ容器と、前記サイロ容器に不活性ガス、イオンおよびミストからなる群より選ばれた少なくとも一種を注入する注入部とを備え、前記粉体貯留装置の粉塵爆発防止システムは、入力層と出力層とを備え、前記入力層の入力データを前記サイロ容器への粉体投入時の粉体粉塵爆発に関する複数のリスク要因の少なくとも一つとし、前記出力層の出力データを前記粉体投入時刻より未来の前記サイロ容器内の粉塵爆発発生確率とするニューラルネットワークと、前記入力データおよび前記出力データの実績値を教師データとして前記ニューラルネットワークを学習させる機械学習部と、前記機械学習部にて学習させたニューラルネットワークに現在時刻を基準時刻として前記入力データを入力し、現在時刻が基準時刻である出力データに元づいて未来の推定値を求める推定部と、前記推定部の推定値に応じて前記注入部からの注入量を決定する制御部とを備え、前記リスク要因は、粉体の種類、粉体の総体積、粉体の含水率、粉体の粒径、粉体投入時の湿度である。
【0015】
このように構成された、粉体貯留装置の粉塵爆発防止システムは、ニューラルネットワークを用いて未来の推定値を求めるため、高精度に注入量を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態に従った粉体貯留装置の模式図である。
【
図2】実施の形態に従った粉体貯留装置の詳細図である。
【
図3】粉体の総体積とガス等の注入量との関係を示すグラフである。
【
図4】粉体の含水率とガス等の注入量との関係を示すグラフである。
【
図5】粉体の粒径とガス等の注入量との関係を示すグラフである。
【
図6】粉体投入時の湿度とガス等の注入量との関係を示すグラフである。
【
図7】粉体の爆発限界濃度とガス等の注入量との関係を示すグラフである。
【
図8】粉体の統計的な最小着火エネルギーとガス等の注入量との関係を示すグラフである。
【
図9】粉体の限界酸素濃度とガス等の注入量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(装置の構成)
図1は、実施の形態に従った粉体貯留装置の模式図である。
図1で示すように、実施の形態に従った粉体貯留装置1は、粉体を貯留するサイロ容器100と、前記サイロ容器に不活性ガス、イオンおよびミストからなる群より選ばれた少なくとも一種を注入する注入部300とを備える。
【0018】
粉体貯留装置1はサイロ容器100に粉体を投入する投入部200を備える。粉体貯留装置1は、注入部300から注入されるガスなどの流量、注入タイミングなどを制御する制御部400と、制御部400の演算に用いるためのデータを記憶する記憶部500とを備える。
【0019】
サイロ容器100は、円筒形状、各筒形状などの筒状態である。内径は一定である必要はなく、高さに応じて内径が変化していてもよい。サイロ容器100の体積は特に制限されるものではない。
【0020】
サイロ容器100には、粉体が溜められる。サイロ容器100に溜められるペレット(粉体)として、たとえば小麦、大麦、ライ麦、トウモロコシ、大豆、小豆、大豆かす、などの食物、アルミナ、石炭、タイヤチップ、木質チップ、藁などの工業製品などがある。
【0021】
投入部200はサイロ容器100の上部に設けられる。投入部200は、たとえば重力によりサイロ容器100内に粉体を落下させる。しかしながら、重力落下のみでなく、たとえばスクリュー(ネジ)により投入部200からサイロ容器100内に粉体を投入してもよい。なお、スクリューなどの動力を用いる場合には投入部200は必ずしもサイロ容器100の上部に設けられる必要は無く、サイロ容器100の側部または下部に設けられていてもよい。
【0022】
注入部300は、サイロ容器100にガス、イオン、ミストなどを注入するための装置である。注入部300は、サイロ容器100内に設けられたノズルを含んでもよい。注入部300はサイロ容器100内での粉塵爆発を抑制するためにたとえば、窒素、二酸化炭素などの不活性ガスをサイロ容器100内に注入する。
【0023】
サイロ容器100内にモミなどの植物が入っている場合にはモミは貯蔵中にも呼吸する。これにより、酸素を消費して二酸化炭素を発生させる。そのためサイロ容器100内は空気が薄く、酸素欠乏状態となる。点検等でサイロ容器100内に入るときは、酸素濃度測定器で酸素濃度を測定し、18%以上であれば安全であるが、これを下回る場合は酸素欠乏症となる。これを防止するために、注入部300から酸素が供給されてサイロ容器100内の酸素濃度を18%以上にしてもよい。すなわち、注入部300からは粉塵爆発を防止するための不活性ガスのみならず、作業員がサイロ容器100内での作業を可能にするための酸素ガスまたは空気を注入してもよい。
【0024】
注入部300からサイロ容器100内にイオンを注入してもよい。イオンを注入することで各粉体を除電して粉塵爆発のリスクを低下させることができる。このようなイオンを発生させる装置として、たとえば株式会社キーエンス製のハイブリッド型超高速センシングイオナイザSJ-Eシリーズを用いることができる。イオンを注入する場合には上記のようなガスを注入する場合と比較してサイロ容器100内のガスの組成を変化させないため、サイロ容器100内のガス組成を管理する必要がある粉体(たとえばモミなど)の貯留に最適である。さらに、注入部300からガスとイオンの両方を注入してもよい。
【0025】
注入部300からはミストを注入してもよい。ミストは、たとえば有限会社ガリュー製の商品名「メカスイングノズル」シリーズまたは「ウォーターミスト」によって製造することができる。水分が付着しても腐食などの問題が生じない粉体にはミストを用いることが好ましい。
【0026】
制御部400は、注入部300から注入されるガス、イオン、ミストなどの流量、流速、注入タイミングを制御するための装置である。制御部400は、たとえばコンピュータを含む。
【0027】
記憶部500は、制御部400において制御に用いるテーブルを記憶している。記憶部500は制御部400を構成するコンピュータのハードディスクであってもよい。記憶部500は、コンピュータから切り離し可能な記録媒体であってもよい。記録媒体として、記録媒体としては、たとえば、DVD-RAM、DVD-ROM、CD-ROM、FD、ハードディスク、磁気テープ、カセットテープ、光ディスク、EEPROM、フラッシュROMなどの半導体メモリ等の固定的にプログラムを担持する媒体が挙げられる。また、記録媒体は、当該プログラム等をコンピュータが読取可能な一時的でない媒体である。また、ここでいうプログラムとは、CPUにより直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム形式のプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む。
【0028】
図2は、実施の形態に従った粉体貯留装置の詳細図である。
図2で示す粉体貯留装置1は、サイロ容器100内をイナート化するものである。サイロ容器100は入口110および出口120部分がテーパ形状とされている。サイロ容器100は円筒形状であり、その内部に粉体104が貯留される。
【0029】
サイロ容器100の外周面には温度センサ102が複数設けられている。サイロ容器100の中心部にも温度センサ105が設けられている。温度センサ102,105によってサイロ容器100内の温度を測定し、サイロ容器100の温度が所定値以上になるとサイロ容器100内を冷却する。なお、温度センサ102は必ずしも設けられていなくてもよい。
【0030】
サイロ容器100の上に投入部200が設けられている。投入部200から入口110へ粉体が投入される。投入部200から入口110への粉体の投入速度は調整可能である。
【0031】
サイロ容器100の出口120から粉体104が排出される。
サイロ容器100の周面には注入部300が設けられている。注入部300は配管107と、配管107に取り付けられたノズル103とを有する。配管107は制御部400に接続されている。配管107内のガスなどの流れが制御部400で制御される。
【0032】
制御部400は、たとえばバルブおよびそのバルブを制御するコンピュータを有する。
制御部400には高圧容器群610、CE(コールドエバポレータ)タンク装置620およびPSA(Pressure Swing Adsorption)装置630の少なくとも一つが接続されている。
【0033】
高圧容器群610は、複数のボンベ611により構成されている。複数のボンベ611にはたとえば窒素ガスが充填されている。サイロ容器100にノズル103から窒素ガスを注入する際の窒素ガスがボンベ611から供給される。配管619により制御部400と高圧容器群610とが接続されている。
【0034】
CEタンク装置620は、液体窒素が溜められるタンク621と、タンクから液体窒素の供給を受けて液体窒素を気化させる調整器622とを有する。配管629により制御部400とCEタンク装置620とが接続されている。
【0035】
PSA装置630は、圧力変動吸着装置である。吸着剤のガスに対する吸着特性の違いを利用して、加圧と減圧の操作を交互に繰り返しながら、目的とするガス(窒素)を連続的に分離する。吸着剤として、たとえばエア・ウォーター株式会社製の高性能MSC(モレキュラー・シーブス・カーボン)である「ベルファイン活性炭」を用いることができる。配管639により制御部400とPSA装置630とが接続されている。
【0036】
制御部400に窒素ガスを送る装置として、エア・ウォーター株式会社製の高純度窒素ガス発生装置「V1」(商品名)が用いられてもよい。この装置は、液化窒素の冷熱を利用した熱交換により高純度窒素ガスを安定的に発生させる。すなわち、液体窒素が気化するときに大量の熱が奪われる。この熱を利用して空気を冷却することで空気中の酸素、二酸化炭素等を液化し、気体として残った窒素を所定の目的に利用するものである。これにより、低コストで窒素ガスを安定供給できる。
【0037】
粉塵爆発を発生させるためには、可燃性粉塵が存在すること、着火源が存在すること、爆発に必要な酸素が存在すること、の3つの要件が必要とされる。本発明では窒素ガス等を注入することにより粉塵爆発のリスクを低下させるものであるが、これは酸素を減少させることのみならず、可燃性粉塵の可燃性を低下させること、着火源(静電気)を発生させないことにも寄与する。
【0038】
図3は、粉体の総体積とガス等の注入量との関係を示すグラフである。
図3で示すように粉体の総体積と粉塵爆発のリスクとは相関があり粉体の総体積が大きくなると粉塵爆発のリスクが高くなる。これは粉体の総体積が大きくなると粉体をサイロ容器100内に投入する際の粉体同士の接触回数が多くなるため、粉体間で静電気が発生し、これが粉塵爆発のトリガーになるからと推定される。さらに、粉体が穀物である場合よりも、粉体が木質ペレットである場合の方が粉塵爆発のリスクが高くなる。これは穀物よりも木質ペレットの含水率が低いからであると推定される。
図3のグラフに関するデータは、記憶部500に保存されている。
【0039】
粉体の総体積に関するデータは、船などで運ばれてきた粉体を陸揚げした段階で測定することができる。総体積に関するデータは、たとえば記憶部500に入力される。入力されたデータと
図3のグラフに基づいて、サイロ容器100へのガスなどの注入量を決定する。そして、投入部200から入口110へ粉体が投入される際に、決定した注入量に基づいてガスなどを注入する。
【0040】
図4は、粉体の含水率とガス等の注入量との関係を示すグラフである。
図4で示すように粉体の含水率と粉塵爆発のリスクとは相関があり粉体の含水率が小さくなると粉体を燃焼させるためのエネルギー(活性化エネルギー)が小さいため粉塵爆発のリスクが高くなる。これは粉体の含水率が小さくなると粉体がサイロ容器100内で燃焼しやすくなるからと推定される。
図4のグラフに関するデータは、記憶部500に保存されている。
【0041】
粉体の含水率に関するデータは、サイロ容器100に投入前の一部の粉体を抽出し、それの含水率を測定することで得られる。含水率に関するデータは、たとえば記憶部500に入力される。入力されたデータと
図4のグラフに基づいて、サイロ容器100へのガスなどの注入量を決定する。そして、投入部200から入口110へ粉体が投入される際に、決定した注入量に基づいてガスなどを注入する。
【0042】
図5は、粉体の粒径とガス等の注入量との関係を示すグラフである。
図5で示すように粉体の粒径と粉塵爆発のリスクとは相関があり粉体の粒径が小さくなると粉塵爆発のリスクが高くなる。これは粉体の粒径が小さくなると粉体が酸素と接触する面積が大きいため粉体がサイロ容器100内で燃焼しやすくなるからと推定される。
図5のグラフに関するデータは、記憶部500に保存されている。
【0043】
粉体の粒径に関するデータは、サイロ容器100に投入前の一部の粉体を抽出し、それの粒径を測定することで得られる。粒径は、たとえばJIS-Z-8825:2013に基づいて測定することができる。さらに、サイロ容器に投入前の粉体を写真撮影し、それを画像解析して個々の粒子の粒径を求めることができる。粒径に関するデータは、たとえば記憶部500に入力される。入力されたデータと
図5のグラフに基づいて、サイロ容器100へのガスなどの注入量を決定する。そして、投入部200から入口110へ粉体が投入される際に、決定した注入量に基づいてガスなどを注入する。
【0044】
図6は、粉体投入時の湿度とガス等の注入量との関係を示すグラフである。
図6で示すように粉体投入時の湿度と粉塵爆発のリスクとは相関があり粉体投入時の湿度が低いと粉塵爆発のリスクが高くなる。これは湿度が低いと粉体の表面に水分が付着しにくいため粉体を燃焼させるために必要なエネルギーが小さくなり粉体がサイロ容器100内で燃焼しやすくなるからと推定される。
図6のグラフに関するデータは、記憶部500に保存されている。
【0045】
粉体投入時の湿度に関するデータは、サイロ容器100に投入前の時刻のおける気象庁発表の湿度から得られる。さらに、サイロ容器100内に湿度計を設けて、その湿度計を用いて湿度を測定してもよい。
【0046】
図7は、粉体の爆発限界濃度とガス等の注入量との関係を示すグラフである。
図7で示すように、粉体の爆発限界濃度と粉塵爆発のリスクとは相関があり粉体の爆発限界濃度が小さくなると粉塵爆発のリスクが高くなる。爆発限界濃度が小さいことは粉体が低濃度で爆発しやすいことを示すからである。爆発限界濃度は粉体の種類を主たる因子とし、これに粒径、含水率などを考慮して決定される。爆発限界濃度を決定するに当たっては、投入部200に運ばれる粉体の種類のみによって決定してもよいし、粉体の種類および粒径を考慮して決定してもよい。
図7で示すように、木質ペレットの爆発限界濃度は穀物の爆発限界濃度の1/4程度であり、木質ペレットは爆発しやすいことが分かる。
図7のグラフに関するデータは、記憶部500に保存されている。
【0047】
図8は、粉体の統計的な最小着火エネルギーとガス等の注入量との関係を示すグラフである。
図8で示すように、粉体の最小着火エネルギーと粉塵爆発のリスクとは相関があり粉体の最小着火エネルギーが小さくなると粉塵爆発のリスクが高くなる。最小着火エネルギーが小さいことは小さいエネルギーで粉塵爆発しやすいことを示すからである。最小着火エネルギーは粉体の種類を主たる因子とし、これに粒径、含水率などを考慮して決定される。最小着火エネルギーを決定するに当たっては、投入部200に運ばれる粉体の種類のみによって決定してもよいし、粉体の種類および粒径を考慮して決定してもよい。
図8で示すように、木質ペレットの最小着火エネルギーは穀物の最小着火エネルギーの1/64程度であり、木質ペレットは爆発しやすいことが分かる。
図8のグラフに関するデータは、記憶部500に保存されている。
【0048】
図9は、粉体の限界酸素濃度とガス等の注入量との関係を示すグラフである。
図9で示すように、粉体の限界酸素濃度と粉塵爆発のリスクとは相関があり粉体の限界酸素濃度が小さくなると粉塵爆発のリスクが高くなる。限界酸素濃度が小さいことは薄い酸素濃度で粉塵爆発が起こりうることを示すからである。限界酸素濃度は粉体の種類を主たる因子とし、これに粒径、含水率などを考慮して決定される。限界酸素濃度を決定するに当たっては、投入部200に運ばれる粉体の種類のみによって決定してもよいし、粉体の種類および粒径を考慮して決定してもよい。
図9のグラフに関するデータは、記憶部500に保存されている。
【0049】
粉体貯留装置1における粉塵爆発防止システムは、情報処理装置によりニューラルネットワークを実現する粉体貯留装置1の粉塵爆発防止システムであって、前記粉体貯留装置1は、粉体を貯留するサイロ容器100と、前記サイロ容器100に不活性ガス、イオンおよびミストからなる群より選ばれた少なくとも一種を注入する注入部300とを備え、前記粉体貯留装置1の粉塵爆発防止システムは、入力層と出力層とを備え、前記入力層の入力データを前記サイロ容器100への粉体投入時の粉体粉塵爆発に関する複数のリスク要因の少なくとも一つとし、前記出力層の出力データを前記粉体投入時刻より未来の前記サイロ容器100内の粉塵爆発発生確率とするニューラルネットワークと、前記入力データおよび前記出力データの実績値を教師データとして前記ニューラルネットワークを学習させる機械学習部と、前記機械学習部にて学習させたニューラルネットワークに現在時刻を基準時刻として前記入力データを入力し、現在時刻が基準時刻である出力データに元づいて未来の推定値を求める推定部と、前記推定部の推定値に応じて前記注入部からの注入量を決定する制御部400とを備え、前記リスク要因は、粉体の種類、粉体の総体積、粉体の含水率、粉体の粒径、粉体投入時の湿度、粉体の爆発限界濃度、分体の統計的な最小着火エネルギー、粉体の限界酸素濃度である。
【0050】
機械学習に関する入力および出力データは、シミュレーションによって得られる。市販のシミュレータに、様々なリスク要因の値を変化させてデータを入力し、シミュレーションによって出力された値を実績値として教師データを作成する。
【0051】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 粉体貯留装置、100 サイロ容器、102,105 温度センサ、103 ノズル、104 粉体、107,619,629,639 配管、110 入口、120 出口、200 投入部、300 注入部、400 制御部、500 記憶部、610 高圧容器群、611 ボンベ、620 CEタンク装置、621 タンク、622 調整器、630 PSA装置。