(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】X線CT装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
A61B6/03 530A
A61B6/03 531
(21)【出願番号】P 2020035561
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】竹本 和馬
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-207346(JP,A)
【文献】特開2009-142518(JP,A)
【文献】特開2014-087522(JP,A)
【文献】特開2015-213748(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0114289(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にX線を照射するX線源と前記X線源に対向配置され前記被検体を透過するX線を検出するX線検出器とを前記被検体の周囲で回転させる回転板と、
前記被検体を載置するとともに前記回転板に対して相対移動することによりスキャン位置を変更する寝台と、
前記X線検出器の出力に基づいて前記スキャン位置における断層画像を生成する画像生成部を備えるX線CT装置であって、
スキャン終了位置において予め定められる領域割合の閾値を記憶する記憶部と、
スキャン中に生成される断層画像から所定の領域を抽出する領域抽出部と、
前記領域を用いて算出される領域の割合と前記閾値との比較に基づいて前記スキャン位置が前記スキャン終了位置に達したか否かを判定する比較判定部をさらに備え、
前記記憶部は、肺野に対する閾値として、骨と体内空気のそれぞれの閾値を記憶し、
前記領域抽出部はスキャン中に生成される断層画像から骨と体内空気を抽出することを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
被検体にX線を照射するX線源と前記X線源に対向配置され前記被検体を透過するX線を検出するX線検出器とを前記被検体の周囲で回転させる回転板と、
前記被検体を載置するとともに前記回転板に対して相対移動することによりスキャン位置を変更する寝台と、
前記X線検出器の出力に基づいて前記スキャン位置における断層画像を生成する画像生成部を備えるX線CT装置であって、
スキャン終了位置において予め定められる領域割合の閾値を記憶する記憶部と、
スキャン中に生成される断層画像から所定の領域を抽出する領域抽出部と、
前記領域を用いて算出される領域の割合と前記閾値との比較に基づいて前記スキャン位置が前記スキャン終了位置に達したか否かを判定する比較判定部をさらに備え、
前記記憶部は、頭部に対する閾値として、骨と体外空気のそれぞれの閾値を記憶し、
前記領域抽出部はスキャン中に生成される断層画像から骨と体外空気を抽出することを特徴とするX線CT装置。
【請求項3】
被検体にX線を照射するX線源と前記X線源に対向配置され前記被検体を透過するX線を検出するX線検出器とを前記被検体の周囲で回転させる回転板と、
前記被検体を載置するとともに前記回転板に対して相対移動することによりスキャン位置を変更する寝台と、
前記X線検出器の出力に基づいて前記スキャン位置における断層画像を生成する画像生成部を備えるX線CT装置であって、
スキャン終了位置において予め定められる領域割合の閾値を記憶する記憶部と、
スキャン中に生成される断層画像から所定の領域を抽出する領域抽出部と、
前記領域を用いて算出される領域の割合と前記閾値との比較に基づいて前記スキャン位置が前記スキャン終了位置に達したか否かを判定する比較判定部をさらに備え、
前記画像生成部は、前記スキャン位置までのボリューム画像を生成するとともに、前記ボリューム画像を用いて推定される前記被検体の体軸の傾き角度を算出し、
前記比較判定部は、前記傾き角度に基づいて変換された閾値を用いて、前記スキャン位置が前記スキャン終了位置に達したか否かを判定することを特徴とするX線CT装置。
【請求項4】
被検体にX線を照射するX線源と前記X線源に対向配置され前記被検体を透過するX線を検出するX線検出器とを前記被検体の周囲で回転させる回転板と、
前記被検体を載置するとともに前記回転板に対して相対移動することによりスキャン位置を変更する寝台と、
前記X線検出器の出力に基づいて前記スキャン位置における断層画像を生成する画像生成部を備えるX線CT装置であって、
スキャン終了位置において予め定められる領域割合の閾値を記憶する記憶部と、
スキャン中に生成される断層画像から所定の領域を抽出する領域抽出部と、
前記領域を用いて算出される領域の割合と前記閾値との比較に基づいて前記スキャン位置が前記スキャン終了位置に達したか否かを判定する比較判定部をさらに備え、
前記被検体をスキャンするときの心位相を計測する心電波形計測部をさらに備え、
前記比較判定部は、スキャン時の心位相を用いて、各スキャン位置において心位相毎の閾値が定められる閾値マップから取得される閾値を用いて、前記スキャン位置が前記スキャン終了位置に達したか否かを判定することを特徴とするX線CT装置。
【請求項5】
請求項
4に記載のX線CT装置であって、
前記記憶部は、各スキャン位置において心位相毎の面積割合が示されるモデルマップをさらに記憶し、
前記閾値マップは、前記被検体のスキャンに先立って取得される透視画像と、前記透視画像を取得するときの心位相と、前記モデルマップとに基づいて作成されることを特徴とするX線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の断層画像を生成するX線CT装置に係り、特にスキャン中の位置がスキャンを終了する位置であるスキャン終了位置に達したか否かを判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、被検体のX線投影像である投影データを様々な投影角度で計測し、複数の投影データを再構成演算することにより被検体の断層画像を生成する装置である。生成された断層画像は被検体の診断等に用いられる。スキャン時間の短縮と被検体の被ばく低減との観点から、投影データは所望の領域、例えば診断対象となる部位の領域に対して過不足なく計測されることが望ましい。
【0003】
特許文献1には、基準データとして予め格納された投影データとスキャン中の位置において収集された投影データとの比較結果に基づいて、スキャン中の位置がスキャン終了位置に達したか否かを判定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では基準データとされた投影データとスキャン中の投影データとを比較しているので、スキャン終了位置がずれる場合がある。すなわち、X線は被検体を透過する過程で線質が硬化するので、X線源からより深い位置にある部位が投影データでは不鮮明になり、スキャン終了位置を判定する精度が低下することがある。
【0006】
そこで本発明は、スキャン終了位置をより正確に判定するX線CT装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、被検体にX線を照射するX線源と前記X線源に対向配置され前記被検体を透過するX線を検出するX線検出器とを前記被検体の周囲で回転させる回転板と、前記被検体を載置するとともに前記回転板に対して相対移動することによりスキャン位置を変更する寝台と、前記X線検出器の出力に基づいて前記スキャン位置における断層画像を生成する画像生成部を備えるX線CT装置であって、スキャン終了位置において予め定められる領域割合の閾値を記憶する記憶部と、スキャン中に生成される断層画像から所定の領域を抽出する領域抽出部と、前記領域を用いて算出される領域の割合と前記閾値との比較に基づいて前記スキャン位置が前記スキャン終了位置に達したか否かを判定する比較判定部をさらに備えることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、被検体にX線を照射するX線源と前記X線源に対向配置され前記被検体を透過するX線を検出するX線検出器とを前記被検体の周囲で回転させる回転板と、前記被検体を載置するとともに前記回転板に対して相対移動することによりスキャン位置を変更する寝台と、前記X線検出器の出力に基づいて前記スキャン位置における断層画像を生成する画像生成部を備えるX線CT装置を制御する制御方法であって、スキャン中に生成される断層画像から所定の領域を抽出する領域抽出ステップと、前記領域を用いて算出される領域の割合とスキャン終了位置において予め定められる領域割合の閾値との比較に基づいて前記スキャン位置が前記スキャン終了位置に達したか否かを判定する比較判定ステップを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スキャン終了位置をより正確に判定するX線CT装置及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1のX線CT装置の全体構成の一例を示す図である。
【
図2】実施例1の機能ブロックの一例を示す図である。
【
図3】実施例1の処理の流れの一例を示す図である。
【
図4】肺野における断層画像の一例を示す図である。
【
図5】肺野におけるスキャン終了位置の判定処理について補足説明する図である。
【
図6】頭部における断層画像の一例を示す図である。
【
図7】頭部におけるスキャン終了位置の判定処理について補足説明する図である。
【
図8】スキャン中心線に対する被検体の体軸の傾きを説明する図である。
【
図9】実施例2の処理の流れの一例を示す図である。
【
図10】実施例2の処理の流れの他の例を示す図である。
【
図11】実施例3のX線CT装置の全体構成の一例を示す図である。
【
図12】実施例3の処理の流れの一例を示す図である。
【
図13】対象部位を含む透視画像と心位相の計測処理について補足説明する図である。
【
図14】閾値マップの作成処理について補足説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
以下、添付図面に従って本発明に係るX線CT装置の好ましい実施形態について説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
【0012】
図1を用いて本実施例のX線CT装置の全体構成について説明する。X線CT装置は、スキャンガントリ部100と操作ユニット120を備える。
【0013】
スキャンガントリ部100は、X線源101と、回転板102と、コリメータ103と、X線検出器106と、データ収集部107と、寝台105と、ガントリ制御部108と、寝台制御部109と、X線制御部110と、高電圧発生部111を備えている。X線源101は寝台105に載置された被検体10にX線を照射する装置であり、例えばX線菅である。コリメータ103はX線の照射範囲を制限する装置である。回転板102は、寝台105上に載置された被検体10が入る開口部104を備えるとともに、X線源101とX線検出器106を搭載し、X線源101とX線検出器106を被検体10の周囲で回転させる。
【0014】
X線検出器106は、X線源101と対向配置され、被検体10を透過したX線を検出する複数の検出素子を備え、X線の空間的な分布を検出する装置である。X線検出器106の検出素子は、回転板102の回転方向と回転軸方向との二次元に配列される。データ収集部107は、X線検出器106で検出されたX線の空間的な分布をデジタルデータとして収集する装置である。
【0015】
ガントリ制御部108は回転板102の回転及び傾斜を制御する装置である。寝台制御部109は、寝台105の上下前後左右動を制御する装置である。高電圧発生部111はX線源101に印加される高電圧を発生する装置である。X線制御部110は、高電圧発生部111の出力を制御する装置である。ガントリ制御部108と寝台制御部109とX線制御部110は、例えばMPU(Micro-Processing Unit)等である。
【0016】
操作ユニット120は、入力部121と、画像生成部122と、表示部125と、記憶部123と、システム制御部124を備えている。入力部121は、被検体10の氏名、検査日時、スキャン条件などを入力するための装置であり、例えばキーボードやポインティングデバイス、タッチパネル等である。画像生成部122は、データ収集部107で収集されたデジタルデータを用いて断層画像を生成する装置であり、例えばMPUやGPU(Graphics Processing Unit)等である。表示部125は、画像生成部122で再構成された断層画像などを表示する装置であり、例えば液晶ディスプレイやタッチパネル等である。記憶部123は、データ収集部107で収集されたデジタルデータや画像生成部122で再構成された断層画像、システム制御部124が実行するプログラム、プログラムが使用するデータ等を記憶する装置であり、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等である。システム制御部124は、ガントリ制御部108、寝台制御部109、X線制御部110等の各部を制御する装置であり、例えばCPU(Central Processing Unit)である。
【0017】
入力部121から入力されて設定されたスキャン条件に基づき、X線源101に印加される高電圧である管電圧を高電圧発生部111が発生することにより、スキャン条件に応じたX線がX線源101から被検体10に照射される。X線検出器106は、X線源101から照射され被検体10を透過したX線を多数の検出素子で検出し、透過X線の空間的な分布を取得する。回転板102はガントリ制御部108により制御され、入力部121から入力されたスキャン条件、特に回転速度等に基づいて回転する。寝台105は寝台制御部109によって制御され、入力部121から入力されたスキャン条件、特にらせんピッチ等に基づいて動作し、回転板102に対して相対移動することにより、スキャン位置を変更する。
【0018】
X線源101によるX線の照射とX線検出器106によるX線の検出が回転板102の回転とともに繰り返されることにより、被検体10のX線投影像である投影データが様々な投影角度で計測される。投影データは、各投影角度を表すビュー(View)と、X線検出器106の検出素子番号であるチャネル(ch)番号及び列番号と対応付けられる。計測された投影データは画像生成部122に送信される。画像生成部122は複数の投影データを逆投影処理することにより断層画像を生成する。生成された断層画像は表示部125に表示されたり、記憶部123に記憶されたりする。
【0019】
断層画像は被検体10の診断に用いられるので、診断対象となる部位の領域に対して投影データが過不足なく計測されることが望ましい。例えば、診断対象となる部位の領域よりも投影データの計測範囲が狭ければ診断に支障をきたす場合があり、計測範囲が広過ぎれば被検体10の無効被ばくの量が増加する。そこで本実施例では、投影データの計測範囲に過不足が生じないようにスキャン終了位置をより正確に判定する。
【0020】
図2を用いて本実施例の機能ブロックについて説明する。なおこれらの機能ブロックは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を用いた専用のハードウェアで構成されても良いし、システム制御部124上で動作するソフトウェアで構成されても良い。以降の説明では本実施例の機能ブロックがソフトウェアで構成される場合について説明する。
【0021】
本実施例は、領域抽出部201と比較判定部202を備える。以下、各部について説明する。なお記憶部123には、スキャンを終了する位置であるスキャン終了位置において予め定められる領域割合の閾値がスキャンの対象となる部位毎に記憶される。領域割合の閾値は統計データ等に基づいて定められ、例えば被検体10の性別や年代に応じて定められても良い。
【0022】
領域抽出部201は、スキャン中に画像生成部122によって生成される断層画像から所定の領域を抽出する。抽出される領域は、スキャンの対象となる部位によって異なり、例えば肺野に対しては骨の領域と体内空気の領域が抽出され、頭部に対しては骨の領域と体外空気の領域が抽出される。
【0023】
比較判定部202は、領域抽出部201によって抽出された領域を用いて算出される領域の割合と、記憶部123に記憶される領域割合の閾値との比較に基づいてスキャン位置がスキャン終了位置に達したか否かを判定する。スキャン終了位置の判定に用いられる閾値は、スキャンの対象となる部位に応じて記憶部123から読み出される。
【0024】
図3を用いて、本実施例の処理の流れの一例についてステップ毎に説明する。
【0025】
(S301)
システム制御部124は、スキャンの対象となる部位である対象部位とスキャン条件を取得する。対象部位とスキャン条件は、入力部121を介して操作者によって入力される。
【0026】
(S302)
システム制御部124は、S301で取得された対象部位に対するスキャン終了位置での領域割合の閾値を記憶部123から読み出す。
【0027】
(S303)
システム制御部124は、S301で取得されたスキャン条件に基づいて、スキャンガントリ部100に投影データを計測させる。すなわち、回転板102が定速回転しているときに、X線源101から被検体10へX線が照射されるとともに被検体10を透過するX線がX線検出器106によって検出され、様々な投影角度で投影データが計測される。計測された投影データは画像生成部122へ送信される。
【0028】
(S304)
画像生成部122は、S303で計測された投影データを用いてスキャン位置における断層画像を生成する。生成された断層画像は領域抽出部201へ送信される。
【0029】
(S305)
領域抽出部201は、S304で生成された断層画像から対象部位に応じて定められる所定の領域を抽出する。例えば、対象部位が肺野であれば骨の領域と体内空気の領域が抽出され、対象部位が頭部であれば骨の領域と体外空気の領域が抽出される。X線CT装置によって生成される断層画像において骨のCT値400~1000と空気のCT値-1000は、脂肪組織や軟部組織のCT値-100~100との差異が大きいので、骨や空気の領域の抽出は容易である。
【0030】
(S306)
比較判定部202は、S305で抽出された領域を用いて領域割合を算出する。
【0031】
(S307)
比較判定部202は、S302で読み出された領域割合の閾値とS306で算出された領域割合とを比較し、スキャン位置がスキャン終了位置に達したか否かを判定する。スキャン終了位置に達した場合はS308へ処理が進められ、達していない場合はS303へ処理が戻る。すなわち、スキャン位置がスキャン終了位置に達するまで、投影データの計測が継続される。
【0032】
図4及び
図5を用いて、肺野をスキャンするときのスキャン終了位置の判定処理について説明する。
図4には肺野の断層画像の一例として、スキャン位置PL1、PL2、PL3における断層画像が示される。骨の領域が占める割合は、頭部側のスキャン位置PL1では30%程度と比較的大きいのに対し、中央付近のスキャン位置PL2及び下肢側のスキャン位置PL3では数%程度である。また体内空気の領域が占める割合は、スキャン位置PL2では60%程度と比較的大きいのに対し、スキャン位置PL2及びPL3では数%程度である。
【0033】
図5には肺野を頭部側からスキャンするときのスキャン終了位置付近の断層画像と、各断層画像における骨の割合と体内空気の割合が、閾値とともに例示される。骨の割合と体内空気の割合の閾値がそれぞれ4%と0.5%であるのに対し、スキャン位置PL31では骨の割合と体内空気の割合はそれぞれ9%と3.1%であっていずれも閾値より大きいので、スキャン終了位置に達していないと判定される。スキャン位置PL32では体内空気の割合が0.46%であって閾値0.5%をより小さいものの骨の割合が7.8%であって閾値4%より大きいので、スキャン終了位置に達していないと判定される。スキャン位置PL33では骨の割合3.9%と体内空気の割合0.31%はともに閾値4%と0.5%より小さいので、スキャン終了位置に達したと判定される。
【0034】
図6及び
図7を用いて、頭部をスキャンするときのスキャン終了位置の判定処理について説明する。
図6には頭部の断層画像の一例として、スキャン位置PH1、PH2、PH3における断層画像が示される。骨の領域が占める割合は、眼窩付近のスキャン位置PH1から中央付近のスキャン位置PH2、頭頂部付近のスキャン位置PH3へ進むに従って減少する。また体外空気の領域が占める割合も、スキャン位置PH1からスキャン位置PH2、PH3へ進むに従って減少する。
【0035】
図7には頭部を眼窩付近から頭頂部へスキャンするときのスキャン終了位置付近の断層画像と、各断層画像における骨の割合と体外空気の割合が、閾値とともに例示される。骨の割合と体外空気の割合の閾値がそれぞれ1.1%と95%であるのに対し、スキャン位置PH31では骨の割合と体外空気の割合はそれぞれ3.5%と64.9%であっていずれも閾値を満たさないので、スキャン終了位置に達していないと判定される。スキャン位置PH32では骨の割合が1.1%であって閾値を満たすものの体内空気の割合が82.4%であって閾値を満たさないので、スキャン終了位置に達していないと判定される。スキャン位置PH33では骨の割合0.8%と体外空気の割合96.1%はともに閾値を満たすので、スキャン終了位置に達したと判定される。
【0036】
(S308)
システム制御部124は、スキャンガントリ部100でのスキャンを終了させる。すなわち、X線源101から被検体10へのX線の照射と回転板102の回転とが停止させられて、処理の流れが終了する。
【0037】
以上説明した処理の流れにより、スキャン中に生成される断層画像から抽出される骨や体空気の領域の割合に基づいて、スキャン位置がスキャン終了位置に達したか否かが判定されるので、より正確にスキャン終了位置を判定できる。特にX線源101からより深い位置にある部位であっても断層画像上では不鮮明にならずスキャン終了位置を判定する精度は低下せずに済む。そしてスキャン終了位置をより正確に判定できることにより、余計なスキャンをせずに済むので、スキャン時間の短縮と被検体10の被ばく低減を図ることができる。
【実施例2】
【0038】
実施例1では、スキャン中に生成される断層画像から抽出される所定の領域の割合を予め定められる閾値と比較することによってスキャン終了位置を判定することについて説明した。スキャン終了位置における閾値は、被検体10の体軸と直交する断面において定められるため、
図8に示されるように。回転板102の回転軸であるスキャン中心線に対して被検体10の体軸が傾くとスキャン終了位置の判定精度が低下する場合がある。そこで本実施例では、スキャン中心線に対して被検体10の体軸が傾いた場合であっても、スキャン終了位置をより正確に判定することについて説明する。なお本実施例には、実施例1で説明した構成や機能の一部を適用できるので、同様の構成、機能については説明を省略する。
【0039】
図9を用いて、本実施例の処理の流れの一例についてステップ毎に説明する。なお、実施例1の処理の流れの一例である
図3と
図9との違いは、S304の断層画像の生成処理に代わり、S901~S903が追加された点である。以下、S901~S903について主に説明する。
【0040】
(S301)~(S303)
実施例1と同様である。
【0041】
(S901)
画像生成部122は、S303で計測された投影データを用いてスキャン位置までのボリューム画像を生成する。ボリューム画像は複数の断層画像がスキャン方向に積み上げられて生成される。
【0042】
(S902)
画像生成部122は、S901で生成されたボリューム画像を用いて被検体10の体軸を推定する。体軸の推定処理はいかような処理でも良く、例えばボリューム画像から抽出される脊椎を細線化処理して得られる芯線を用いて体軸を推定しても良い。
【0043】
(S903)
画像生成部122は、S902で推定された体軸と直交する面で画像を生成する。体軸との直交面での画像は、S901で生成されるボリューム画像を用いて生成される。生成された画像は領域抽出部201に送信される。
【0044】
(S305)
領域抽出部201は、S903で生成された画像から対象部位に応じて定められる所定の領域を抽出する。
【0045】
(S306)~(S308)
実施例1と同様である。
【0046】
以上説明した処理の流れにより、スキャン中心線に対して被検体10の体軸が傾いた場合であっても、体軸に直交する面で生成される画像から抽出される所定の領域に基づいてスキャン終了位置が判定されるので、スキャン終了位置の判定精度は低下せずに済む。
【0047】
図10を用いて、本実施例の処理の流れの他の例についてステップ毎に説明する。なお、本実施例の処理の流れの一例である
図9と
図10との違いは、S903の体軸との直交面での画像生成に代わり、S1001が追加された点である。以下、S1001について主に説明する。
【0048】
(S301)~(S303)
実施例1と同様である。
【0049】
(S901)~(S902)
図9を用いて説明した処理と同様である。
【0050】
(S1001)
画像生成部122はS902で推定された体軸とスキャン中心線との傾き角度を算出する。また算出された傾き角度に応じてS302で読み出された閾値が比較判定部202によって変換される。
【0051】
(S305)
領域抽出部201は、S901で生成されたボリューム画像の中のスキャン位置における断層画像から対象部位に応じて定められる所定の領域を抽出する。
【0052】
(S306)
実施例1と同様である。
【0053】
(S307)
比較判定部202は、S1001で変換された閾値とS306で算出された領域割合とを比較し、スキャン位置がスキャン終了位置に達したか否かを判定する。スキャン終了位置に達した場合はS308へ処理が進められ、達していない場合はS303へ処理が戻る。
【0054】
(S308)
実施例1と同様である。
【0055】
以上説明した処理の流れにより、スキャン中心線に対して被検体10の体軸が傾いた場合であっても、体軸の傾き角度に応じて変換された閾値に基づいてスキャン終了位置が判定されるので、スキャン終了位置の判定精度は低下せずに済む。
図10に例示される処理の流れでは、推定された体軸と直交する面で画像を生成せずに済むので
図9に比べて処理の高速化を図ることができる。
【実施例3】
【0056】
実施例1では、スキャン中に生成される断層画像から抽出される所定の領域の割合を予め定められる閾値と比較することによってスキャン終了位置を判定することについて説明した。スキャン終了位置における閾値は、被検体10の部位が静止していることを前提に定められるため、心臓のようにスキャン中に動く部位に対してはスキャン終了位置の判定精度が低下する場合がある。そこで本実施例では、被検体10の部位に動きがある場合であっても、スキャン終了位置をより正確に判定することについて説明する。なお本実施例には、実施例1で説明した構成や機能の一部を適用できるので、同様の構成、機能については説明を省略する。
【0057】
図11を用いて本実施例のX線CT装置の全体構成について説明する。なお、実施例1の全体構成を例示する
図1と
図11との違いは、心電波形計測部1101が追加された点である。心電波形計測部1101は、被検体10の心臓の電気的な活動を示す心電波形を計測する装置である。心電波形は周期的なグラフであり、横軸は心位相となる。心電波形計測部1101も、他の各部と同様に、システム制御部124によって制御される。
【0058】
図12を用いて、本実施例の処理の流れの一例についてステップ毎に説明する。なお、実施例1の処理の流れの一例である
図3と
図12との違いは、S302の閾値の読み出し処理とS303の投影データの計測処理の代わりにS1201~S1203が追加された点である。以下、S1201~S1203について主に説明する。
【0059】
(S301)
システム制御部124は、スキャンの対象となる部位である対象部位とスキャン条件を取得する。本実施例の対象部位は、スキャン中に周期的に動く部位であり、例えば心臓である。
【0060】
(S1201)
システム制御部124は、対象部位を含む透視画像をスキャンガントリ部100に計測させるとともに、透視画像が計測されるときの心位相を心電波形計測部1101に計測させる。
【0061】
図13を用いて、本ステップで計測される透視画像と心位相について説明する。透視画像は、回転板102が停止した状態で寝台105を回転板102の回転軸に沿って移動させながらX線源101から被検体10へX線を照射し、被検体を透過するX線をX線検出器によって検出することによって計測される。透視画像の計測中にも心臓は周期的に動き、心位相に応じて心臓の大きさは変化する。そこで、透視画像計測時の心位相を計測することにより、透視画像中の各スキャン位置における心臓の幅がいずれの心位相のときのものであるかが対応付けられる。
【0062】
(S1202)
比較判定部202は、S1201で計測された透視画像と心位相に基づいて閾値マップを作成する。閾値マップは、各スキャン位置において心位相毎の閾値が定められたものである。
【0063】
図14を用いて、本ステップで作成される閾値マップについて説明する。周期的に動く部位、例えば心臓は、各スキャン位置において心位相毎に大きさが異なり、断層画像における心臓領域の面積も心位相に応じて変化する。例えば
図14のグラフに示されるように、各スキャン位置PC31~PC33における心臓領域の面積は心位相t1~t7に応じて変化し、変化の仕方はスキャン位置によって異なる。そこで本実施例では、各スキャン位置において心位相毎の面積割合が示されるモデルマップが記憶部123に予め記憶される。面積割合は、例えば各スキャン位置における最小面積に対する割合が求められ、スキャン位置毎に規格化された値となる。なおモデルマップは統計データ等に基づいて定められ、例えば被検体10の性別や年代に応じて定められても良い。またモデルマップに含まれるスキャン位置や心位相の数は、
図14に例示される3や7に限定されず、判定精度を向上させるにはより多い方が望ましい。
【0064】
閾値マップは、記憶部123から読み出されるモデルマップと、S1201で計測された透視画像と心位相に基づいて作成される。すなわち、透視画像から求められる各スキャン位置における対象部位の幅と透視画像計測時の心位相とに基づいて、モデルマップの各スキャン位置における面積割合が閾値マップの各スキャン位置における閾値に変換される。作成された閾値マップは記憶部123に記憶される。
【0065】
(S1203)
システム制御部124は、S301で取得されたスキャン条件に基づいて、スキャンガントリ部100に投影データを計測させるとともに、投影データが計測されるときの心位相を心電波形計測部1101に計測させる。計測された投影データは画像生成部122へ、心位相は比較判定部202へそれぞれ送信される。
【0066】
(S304)~(S306)
実施例1と同様である。
【0067】
(S307)
比較判定部202は、S1202で作成された閾値マップからS1203で計測された心位相を用いてスキャン位置における閾値を読み出し、読み出された閾値とS306で算出された領域割合とを比較してスキャン位置がスキャン終了位置に達したか否かを判定する。スキャン終了位置に達した場合はS308へ処理が進められ、達していない場合はS1203へ処理が戻る。
(S308)
実施例1と同様である。
【0068】
以上説明した処理の流れにより、被検体10の部位に動きがある場合であっても、動きの位相に応じて設定される閾値に基づいてスキャン終了位置が判定されるので、スキャン終了位置の判定精度は低下せずに済む。
【0069】
以上、本発明のX線CT装置に関して、複数の実施形態を説明した。本発明のX線CT装置は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせても良い。例えば実施例2と実施例3とを組み合わせても良い。さらに、上記実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。
【符号の説明】
【0070】
10:被検体、100:スキャンガントリ部、101:X線源、102:回転板、103:コリメータ、104:開口部、105:寝台、106:X線検出器、107:データ収集部、108:ガントリ制御部、109:寝台制御部、 110:X線制御部、111:高電圧発生部、120:操作ユニット、121:入力部、122:画像生成部、123:記憶部、124:システム制御部、125:表示部、201:領域抽出部、202:比較判定部、1101:心電波形計測部