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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】コンクリート部材及びセグメント
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/08 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
E21D11/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020044726
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021143577
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-12-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆一
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮一
(72)【発明者】
【氏名】小林 一博
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-043884(JP,A)
【文献】特開2009-215771(JP,A)
【文献】特開2007-270484(JP,A)
【文献】特開平07-076997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する端面を有するコンクリート部材であって、
対向する前記端面にそれぞれ露出して配設された圧縮伝達材と、
対向する前記圧縮伝達材の間に配設されている鋼部材と、
前記圧縮伝達材及び鋼部材の一方に螺合した状態で進退可能に連結されていて他方に当接されている定着具と、
を備え
定着具は、前記圧縮伝達材及び鋼部材の一方から外れることなく前記圧縮伝達材及び鋼部材の他方に当接する長さを有する、
ことを特徴とするコンクリート部材。
【請求項2】
前記定着具はナット部を有しており、鋼部材は前記ナット部に螺合するネジ節鉄筋またはねじ部を有しており、
前記ナット部は前記ネジ節鉄筋またはねじ部に螺合した状態で進退可能とした請求項1に記載されたコンクリート部材。
【請求項3】
前記対向する圧縮伝達材の間に前記鋼部材を含む鉄筋かごが配設されている請求項1または2に記載されたコンクリート部材。
【請求項4】
前記端面にはその上下に前記圧縮伝達材が配設され、前記上下の圧縮伝達材の間に継手が設置されている請求項1から3のいずれか1項に記載されたコンクリート部材。
【請求項5】
コンクリート製の継手面及び主桁面で複数個連結されることで筒状壁体を構築する円弧版状のセグメントであって、
対向する前記継手面にそれぞれ露出して配設された圧縮伝達材と、
対向する前記圧縮伝達材の間に配設されている鋼部材と、
前記圧縮伝達材及び鋼部材の一方に螺合した状態で進退可能に連結されていて他方に当接されている定着具と、
を備え
定着具は、前記圧縮伝達材及び鋼部材の一方から外れることなく前記圧縮伝達材及び鋼部材の他方に当接する長さを有する、
ことを特徴とするセグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば地中の大深度区間に埋設されている道路トンネル等を含むシールドトンネルの筒状壁体を構成するコンクリート部材及びセグメントにおいて、土圧等の外力が大きくても耐力を確保できるコンクリート部材及びセグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に大深度区間に設けられたシールドトンネル等では、土圧や地下水圧、建築物の荷重等がかかるため、トンネル壁体を構成するセグメントに作用する外力が大きくなる。そのため、セグメント本体及び継手部に印加される圧縮応力度が増大する。一方、隣り合うセグメントを連結する継手部は引張部材であり、圧縮力を担保できない。
そのため、RCセグメントを用いた場合には外力に耐え得るように厚さを厚くする必要があり、トンネル外径が大きくなることにより非経済的でコスト高になる。
【0003】
このような外力に耐えると共に厚さを抑えたセグメントとして、例えば特許文献1に記載された合成セグメントが提案されている。この合成セグメントでは、対向する継手面に露出する圧縮伝達材の間に、上下に配設された板状の鋼板を束材で連結した略H字状の主鋼板をコンクリートに埋設している。
そして、圧縮伝達材と主鋼板の間にくさび材を介在させて圧縮力を調整することで、外力により対向する端面にかかる圧縮力を圧縮伝達材から主鋼板に分散させることで受け止めることができる。そのため、セグメントに過大な圧縮力がかかることがなく、継手面の圧壊を防止できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5285933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された合成セグメントでは、圧縮伝達材と主鋼板の間にくさび材を逆方向からそれぞれ打ち込んで外力に対向する圧縮力を設定するため、くさび材による圧縮力の調整が煩雑であった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、高圧縮力が作用する場合でも、耐圧縮力が大きく強度を補強できるようにしたコンクリート部材及びセグメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコンクリート部材は、対向する端面を有するコンクリート部材であって、対向する端面にそれぞれ露出して配設された圧縮伝達材と、対向する圧縮伝達材の間に配設されている鋼部材と、圧縮伝達材及び鋼部材の一方に進退可能に連結されていて他方に当接または固定されている定着具と、を備えたことを特徴とする。
本発明では、コンクリート部材における圧縮伝達材及び鋼部材の一方に進退可能に連結された定着具を繰り出し調整して他方に当接または固定させることで、圧縮伝達材と定着具と鋼部材とを連続して配設でき、コンクリート部材の圧縮伝達材同士の当接部に圧力が印加されたとしても圧縮伝達材と定着具と鋼部材とコンクリートに分散して受け止めることができる。
【0008】
また、定着具はナット部を有しており、鋼部材はナット部に螺合するネジ節鉄筋またはねじ部を有しており、ナット部はネジ節鉄筋またはねじ部に螺合した状態で進退可能とすることが好ましい。
コンクリート部材における端面の圧縮伝達材と鋼部材とが分離されていても、圧縮伝達材及び鋼部材の一方に螺合された定着具を進退させることで他方と当接または固定でき、圧縮伝達材と定着具と鋼部材とを連結することができる。
【0009】
また、対向する圧縮伝達材の間に鋼部材を含む鉄筋かごが配設されていてもよい。
鋼部材が鉄筋かごの一部であると、圧縮伝達材に印加される圧縮力を鉄筋かごを介してコンクリートに分散して受け止めることができる。
【0010】
また、端面にはその上下に圧縮伝達材が配設され、上下の圧縮伝達材の間に継手が設置されていてもよい。
上下方向のいずれから圧縮力が印加されたとしても上下に配置された圧縮伝達材で受け止めることができる。
【0011】
本発明によるセグメントは、コンクリート製の継手面及び主桁面で複数個連結されることで筒状壁体を構築する円弧版状のセグメントであって、対向する継手面にそれぞれ露出して配設された圧縮伝達材と、対向する圧縮伝達材の間に配設されている鋼部材と、圧縮伝達材及び鋼部材の一方に進退可能に連結されていて他方に当接または固定されている定着具と、を備えたことを特徴とする。
本発明では、セグメントにおける圧縮伝達材及び鋼部材の一方に進退可能に連結された定着具を繰り出し調整して他方に当接または固定させることで、圧縮伝達材と定着具と鋼部材とを連続して配設でき、セグメントの圧縮伝達材同士の当接部に圧力が印加されたとしても圧縮伝達材と定着具と鋼部材とコンクリートに分散して受け止めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るコンクリート部材及びセグメントによれば、コンクリートの端面を圧縮伝達材で補強できると共に、大きな圧縮力がかかった場合でも圧縮伝達材から定着具を介して鋼部材に荷重を分散できるため耐圧縮力が大きく高強度である。
しかも、くさび材を用いることなく、圧縮伝達材及び鋼部材の一方に定着具を進退可能に連結して他方に当接または固定したため調整作業が容易で低コストであり、H字状の主鋼板を用いないためコンクリート部材及びセグメントの厚みを増大させることなく耐圧縮力を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態による大深度区間に設置されたトンネルの説明図である。
図2図1に示すトンネルのセグメントを示す斜視図である。
図3】セグメントの継手面を示す正面図である。
図4図3に示すセグメントのA-A線断面図である。
図5図3に示すセグメントのB-B線断面図である。
図6図3に示すセグメントのC-C線断面図である。
図7図3に示すセグメントのD-D線断面図である。
図8図4のE-E線断面図である。
図9】(a)、(b)、(c)はセグメントの製造工程を示す図である。
図10】高ナットの第一変形例を用いた鋼板とネジ節鉄筋との連結構造の図である。
図11】高ナットの第二変形例を用いた鋼板とネジ節鉄筋との連結構造の図である。
図12】鋼板の変形例を用いた鋼板と主鉄筋との連結構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態による大深度区間に適用可能なセグメントについて添付図面を参照して説明する。
図1乃至図9は本発明の実施形態による大深度区間に設置したトンネル1に用いるセグメント2を示すものである。図1に示すトンネル1は地上から例えば70m以上の深さに設置されており、地上には高層建築物Bが構築されている。トンネル1は図2から図8に示す本発明の実施形態によるセグメント2が周方向に連結されたセグメントリング3が軸方向に連結されて筒状壁体を形成している。
【0015】
地中に埋設されたトンネル1には、土圧の影響に加えて地下水圧や建築物荷重の影響が付与されている。大深度区間では地表面から例えば深さ70m以上の土圧が印加されている。具体的には、トンネル1の上側と下側から頂部鉛直土圧及び底部鉛直土圧、側部から水平土圧が印加されている。更に、地中を流れる地下水の地下水位の荷重や、地上に設置された高層建築物Bの鉛直荷重や側圧が印加されている。
これらの荷重はトンネル1のセグメントリング3のセグメント2同士を連結する継手面7に曲げ圧縮荷重として印加される。各セグメント2はこれらの圧縮荷重に耐え得る構成を必要とされている。
【0016】
図2及び図3に示すセグメント2はRCセグメントである。このセグメント2はコンクリート製のセグメント本体の内部に後述する鉄筋かご16が配設されて補強されている。セグメント2の側面は略長方形状で平面内で略円弧状に湾曲形成された一対の主桁面6と、長方形に形成された一対の継手面7と、を備えている。セグメント2は全体に略四角形板状で円弧版状に湾曲して形成されている。
セグメント2の外周面8と内周面9はそれぞれ湾曲形成されたコンクリートCの面である。両側の主桁面6には所定間隔で雄継手からなる継手部11と雌継手からなる継手部11がそれぞれ設置されている。両側の継手面7には雄継手としての例えば2組のM金物12と、雌継手としての2組のF金物13がそれぞれ装着されている。なお、継手面7の雄継手や雌継手は1組でもよい。
【0017】
また、図3に示す継手面7には、M金物12及びF金物13を挟んでその上部と下部に圧縮伝達材として鋼板15が露出して固定されている。上側の鋼板15は上部鋼板15aであり、下側の鋼板15は下部鋼板15bである。上部鋼板15aと下部鋼板15bは継手面7の幅と同一長さに亘って形成されている。
対向する継手面7の間にはコンクリートC中に図4図8に示す鉄筋かご16が内蔵されている。図4及び図5には鉄筋かご16の一部が示されている。M金物12及びF金物13には鉄筋かご16の内部に延びるアンカー筋14がコンクリートC中に固定されている。アンカー筋14は鉄筋かご16に固定または接触していてもよいし、非接触でもよい。
【0018】
図3図4図6図8に示すように、鉄筋かご16はセグメント2の外周面8側に主桁面6の方向に沿って主鉄筋(鋼部材)として複数のネジ節鉄筋18が所定間隔で配列され、内周面9側にも主桁面6の方向に沿って複数のネジ節鉄筋18が所定間隔で配列されている。これら上下に配列されたネジ節鉄筋18は直交する方向に配列された配力筋19によって囲われて互いに固定されている。配力筋19はネジ節鉄筋18の長手方向に沿って所定間隔に複数組設けられている。
【0019】
図4図8において、1組の配力筋19は、上下に配列された複数のネジ節鉄筋18を全体に囲うように第一の配力筋19aが二重に配設されている。第一の配力筋19aに接触させて左側の一部のネジ節鉄筋18を囲うように第二の配力筋19bが配設されている。更に、別の組の第一の配力筋19aに接触させて右側の一部のネジ節鉄筋18を囲うように第三の配力筋19cが配設されている。
第一~第三の配力筋19a、19b、19cはネジ節鉄筋18に直交する方向にそれぞれ略四角形枠状に巻回されている。上下に配列された各ネジ節鉄筋18と第一~第三の配力筋19a、19b、19cとは溶接等でそれぞれ連結され、格子状に配列されている。
【0020】
上下に対向して配設された複数のネジ節鉄筋18の両端部にはそれぞれ定着具として高ナット21が螺合されている。図6及び図7に示すように、高ナット21は鋼板15側に設けられた拡径されたフランジ部22とネジ節鉄筋18を螺合させたナット部23とが一体に形成されている。そして、対向する鋼板15の間に鉄筋かご16のネジ節鉄筋18を配設した状態で、ネジ節鉄筋18の両端に螺合させた高ナット21を進退させることでフランジ部22を鋼板15に当接させている。ナット部23はネジ節鉄筋18から繰り出した際に雌ねじ部が外れることなく鋼板15に当接する程度の長い長さに設定されている。
しかも、各高ナット21はネジ節鉄筋18毎に装着されている。ネジ節鉄筋18と高ナット21と鋼板15とは同一線状に配設されている。
【0021】
そのため、トンネル1のセグメントリング3において、互いに連結されたセグメント2の継手面7同士に外部から土圧等の荷重が印加された場合、互いに当接する上部鋼板15a及び下部鋼板15bにかかる圧縮荷重は高ナット21からネジ節鉄筋18を含む鉄筋かご16及びコンクリートCに伝達され、荷重を分担して受けることができる。なお、継手面7からネジ節鉄筋18の自由端までのコンクリートCのみの構造について、高ナット21を接続配置することによって主断面と同一の性能とすることができる。
なお、上述した説明では省略されているが、セグメント2の主桁面6と継手面7の上部鋼板15aには漏水を防止するためのシール溝とシール部材が設置されていてもよい。
【0022】
本実施形態によるセグメント2は上述した構成を備えており、次にその製造方法を図9により説明する。
図9(a)に示す型枠25は、セグメント2の内周面9に対向する凸状に湾曲した底盤部25aと、対向する主桁面6及び継手面7にそれぞれ対向する4面の側部25bとを有している。型枠25内にネジ節鉄筋18と配力筋19とで格子状に形成された鉄筋かご16を設置する。各ネジ節鉄筋18の両端部または一部のネジ節鉄筋18には高ナット21が螺合されている。
【0023】
主桁面6に対向する側部25bには雄継手と雌継手をそれぞれネジ等で固定する。型枠25の継手面7に対向する側部25bの下側に、下部鋼板15bを取り付けてネジ等で固定する。側部25bの上側には、上部鋼板15aを取り付けてネジ等で固定する。そして、各ネジ節鉄筋18の両端部に螺合させた高ナット21を回転させることで緩めて高ナット21のフランジ部22を下部鋼板15b及び上部鋼板15aに当接させる。この状態で、高ナット21のナット部23はネジ節鉄筋18と螺合状態に維持されている。
次に、図9(b)において、型枠25内に設置した蓋部26の中央開口を通してコンクリートCを充填して打設する。その際、充填されたコンクリートCは鉄筋かご16の隙間を流通し、型枠25内で隙間なく充填される。型枠25内に充填されたコンクリートCを養生した後、型枠25から取り出すことで、図9(c)に示すRCのセグメント2を製造できる。
【0024】
実施形態によるセグメント2を、地中深く掘削した大深度区画で継手面7同士をM金物12及びF金物13同士で連結して鋼板15同士を当接させてセグメントリング3を構築する。更に、軸方向にセグメント2の主桁面6同士を当接させ、継手部11の雄継手と雌継手を連結させることでトンネル1を構築する。
このトンネル1には外側から土圧、建築物荷重及び地下水圧による荷重が、隣り合うセグメント2の継手面7同士に外側から印加される。そのため、特に継手面7の鋼板15に大きな圧縮力荷重がかかる。しかし、この圧縮力荷重は鋼板15から高ナット21と鉄筋かご16のネジ節鉄筋18及び配力筋19とコンクリートCに伝達されることで分散して荷重を受ける。
【0025】
そのため、継手面7のコンクリートCがクリープ破壊することを鋼板15によって防止できる。また、継手面7にかかる圧縮力荷重は鋼板15、高ナット21及び鉄筋かご16のネジ節鉄筋18及び配力筋19に分散されることでコンクリートCの損傷を防止できる。
また、鋼板15及び高ナット21をM金物12及びF金物13の上下にそれぞれ配設したため、上下方向に不均等な荷重が印加されたとしても、鋼板15及び高ナット21で荷重を受けることができる。
【0026】
上述のように本実施形態によれば、大深度区間においてトンネル1を構築するセグメント2の継手面7同士に大きな圧縮力荷重がかかったとしても、継手面7の上下に固定された上部鋼板15a及び下部鋼板15bから高ナット21を介して鉄筋かご16のネジ節鉄筋18及び配力筋19とコンクリートCに分散されるため、耐圧縮力と強度が高い。また、セグメント2の継手面7の強度を上部鋼板15a、下部鋼板15bによって補強でき、コンクリートCのクリープ破壊を防止できる。
また、鉄筋かご16等の圧縮部材が存在しない雄継手や雌継手の付近の領域を高ナット21によって補強することができる。
【0027】
しかも、鉄筋かご16の主鉄筋にネジ節鉄筋18を採用することにより高ナット21による調整が可能になった。しかも、鉄筋かご16のネジ節鉄筋18に螺合した高ナット21を上部鋼板15a及び下部鋼板15bに当接するよう調節するだけなので、従来のくさびの打設と比較して耐圧縮力の調整が容易である。しかも、セグメント2の厚みを増大させることなく耐圧縮力を向上できる。
また、上部鋼板15a及び下部鋼板15bは高ナット21を介して鉄筋かご16のネジ節鉄筋18を同一線状に連続して配設したため、上部鋼板15a及び下部鋼板15bに印加される土圧等の圧縮荷重を受け止めることができる。
【0028】
以上、本発明の実施形態によるセグメント2について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や置換等が可能であり、これらはいずれも本発明に含まれる。以下に、本実施形態の変形例等について説明するが、上述の実施形態と同一または同様な部分、部材には同一の符号を用いて説明を省略する。
【0029】
図10は高ナット21の第一変形例を示すものである。
図10において、第一変形例による高ナット21Aはフランジ部22を備えておらず、長軸のナット部23だけで構成されている。高ナット21Aはネジ節鉄筋18に螺合した状態で鋼板15側に進退可能である。
図11は第二変形例による高ナット21Bを示すものである。
本変形例では、高ナット21Bはフランジ部22を備えておらず、長軸のナット部23だけで構成されている。しかもナット部23の鋼板15側端部の外周面には雄ねじ部28が形成されている。鋼板15の背面には高ナット21Bの先端を受け入れる凹部29が形成され、この凹部29の内周面には高ナット21Bの雄ねじ部28と螺合される雌ねじ部29aが形成されている。主鉄筋18Aは例えば異形棒材で形成され、その端部に雄ねじ部が形成されている。
【0030】
そのため、セグメント2の製造時に型枠25の側部25bに固定された鋼板15に対して高ナット21Bの位置を調整する際、ナット部23の雄ねじ部28を凹部29の雌ねじ部29aに螺合する。これによって、高ナット21Bはより高強度に鋼板15に固定され、土圧等による圧縮力の伝達がより確実になる。
【0031】
なお、鋼板15の凹部29に雌ねじ部29aを設けなくてもよく、この場合、高ナット21Bに雄ねじ部28を形成する必要もない。この場合でも、調整時に高ナット21Bを鋼板15の凹部29内に嵌合できるため高ナット21Bを位置決めできて保持強度が高い。
【0032】
また、図12は鋼板15の変形例を示すものである。
本変形例では、鋼板15の裏面に雄ねじ部31が突出して連結または形成されている。この雄ねじ部31に高ナット21のナット部23が螺合して位置調整可能とされている。そして、雄ねじ部31に対する高ナット21の位置を調整することで、例えば異形棒材等からなる主鉄筋18Bの先端にフランジ部22を当接させて保持できる。
本変形例の場合でも、セグメント2の継手面7同士に大きな圧縮力荷重がかかったとしても、継手面7の上下に固定された上部鋼板15a及び下部鋼板15bから高ナット21を介して鉄筋かご16の主鉄筋18B及び配力筋19に分散されるため、耐圧縮力と強度が高い。
【0033】
なお、鋼板15についてもその位置や形状を適宜選択でき、上部鋼板15a、下部鋼板15bの一方だけ設置してもよく、上部鋼板15a、下部鋼板15bは必ずしもセグメント2の上面、下面に到達していなくてもよい。これらの鋼板15は圧縮伝達材に含まれる。
上述した実施形態によるセグメント2は地下の大深度区画にトンネル1を設置する場合に用いるセグメント2について説明したが、本実施形態によるセグメント2は大深度区画に限定されない。例えば、セグメント2は地下の適宜の浅い区画または地上等に施工するトンネル1にも適用できる。また、本発明のトンネル1は、道路トンネルだけでなく鉄道トンネル、共同溝、下水道、上水道、地下河川、貯留管等にも適用できる。
なお、本実施形態によるセグメント2はコンクリート部材に含まれる。コンクリート部材には円弧版状に湾曲していない平板状の部材やその他の適宜形状のものも含まれる。また、主鉄筋は必ずしもネジ節鉄筋18に限定されるものではなく、柱状の棒材や異形棒材等の端部に雄ねじ部を形成したものを採用してもよい。また、端面は継手面7を含んでいる。高ナット21、21A、21Bは定着具に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1 トンネル
2 セグメント
3 セグメントリング
6 主桁面
7 継手面
12 M金物
13 F金物
15 鋼板
15a 上部鋼板
15b 下部鋼板
16 鉄筋かご
18 ネジ節鉄筋
18A、18B 主鉄筋
19 配力筋
19a 第一の配力筋
19b 第二の配力筋
19c 第三の配力筋
21、21A、21B 高ナット
22 フランジ部
23 ナット部
29 凹部
B 高層建築物
C コンクリート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12