(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】給湯システムの水漏れ判定装置
(51)【国際特許分類】
F24H 1/00 20220101AFI20240308BHJP
F24H 15/12 20220101ALI20240308BHJP
F24H 15/395 20220101ALI20240308BHJP
F24H 15/212 20220101ALI20240308BHJP
F24H 15/208 20220101ALI20240308BHJP
F24H 15/37 20220101ALI20240308BHJP
【FI】
F24H1/00 Z
F24H15/12
F24H15/395
F24H15/212
F24H15/208
F24H15/37
(21)【出願番号】P 2020051187
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 弘明
(72)【発明者】
【氏名】中島 幸祐
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-172934(JP,A)
【文献】特開昭61-195326(JP,A)
【文献】特開平07-294007(JP,A)
【文献】特開2000-111157(JP,A)
【文献】特開2018-036101(JP,A)
【文献】特開2011-012911(JP,A)
【文献】特開平11-173671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 15/10
F24H 15/395
G01M 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が流通する給水配管と、湯が流通する給湯配管と、前記給水配管から流入した水を加熱して前記給湯配管に湯を排出する加熱器と、作動を制御する制御部とを備えた給湯器を有する給湯システムの水漏れ判定装置であって、
前記給水配管を流通する水の温度を計測する水温計測部と、
前記給湯器の内部空気の温度を計測する雰囲気温度計測部と、
前記給湯システムの水漏れ判定を実行する判定部と、を備え、
前記判定部は、前記給湯器が給湯停止してから給湯開始するまでの待機状態にあり、且つ、前記制御部が
電気ヒータを作動させて前記給湯器の内部空気の温度を上昇させる制御を実行したとき、前記水温計測部の計測値及び前記雰囲気温度計測部の計測値に基づいて前記水漏れ判定を実行する給湯システムの水漏れ判定装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記水温計測部の計測値と前記雰囲気温度計測部の計測値との差の絶対値が所定温度以下となれば水漏れが無いと判定する請求項1に記載の給湯システムの水漏れ判定装置。
【請求項3】
水が流通する給水配管と、湯が流通する給湯配管と、前記給水配管から流入した水を加熱して前記給湯配管に湯を排出する加熱器とを備えた給湯器を有する給湯システムの水漏れ判定装置であって、
前記給水配管を流通する水の温度を計測する水温計測部と、
前記給湯配管を流通する湯の温度を計測する湯温計測部と、
前記給湯器の内部空気の温度を計測する雰囲気温度計測部と、
前記給湯システムの水漏れ判定を実行する判定部と、を備え、
前記判定部は、前記給湯器が給湯停止後、前記水温計測部又は前記湯温計測部の計測値と前記雰囲気温度計測部との計測値に基づいて前記水漏れ判定を実行する給湯システムの水漏れ判定装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記水温計測部又は前記湯温計測部の計測値と前記雰囲気温度計測部の計測値との差の絶対値が所定温度以下となれば水漏れが無いと判定する請求項3に記載の給湯システムの水漏れ判定装置。
【請求項5】
前記給湯器の外部で前記給水配管に接続された水道管を流通する水の温度を計測する水道水温計測部をさらに備え、
前記判定部は、前記水温計測部又は前記湯温計測部の計測値が、前記雰囲気温度計測部の計測値よりも前記水道水温計測部の計測値に近い値であるとき、水漏れが有ると判定する請求項3又は4に記載の給湯システムの水漏れ判定装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記水温計測部の計測値の変化率に基づいて、前記水漏れ判定を実行する請求項1から5のいずれか一項に記載の給湯システムの水漏れ判定装置。
【請求項7】
前記給水配管を流通する水の流量を計測する流量計測部をさらに備え、
前記判定部は、前記流量計測部の計測値が所定値未満であるときに前記水漏れ判定を実行する請求項1から6のいずれか一項に記載の給湯システムの水漏れ判定装置。
【請求項8】
前記流量計測部の計測値が前記所定値以上となる給湯期間を学習する学習部をさらに備え、
前記判定部は、前記学習部が学習した前記給湯期間に基づいて前記水漏れ判定を実行する請求項7に記載の給湯システムの水漏れ判定装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記流量計測部の計測値が前記所定値以上となったとき、前記水漏れ判定の実行を停止する請求項7又は8に記載の給湯システムの水漏れ判定装置。
【請求項10】
前記判定部による前記水漏れ判定の結果を記憶する記憶部をさらに備え、
前記判定部は、前記結果に基づいて前記水漏れ判定の実行頻度を変更する請求項1から9のいずれか一項に記載の給湯システムの水漏れ判定装置。
【請求項11】
前記判定部による前記水漏れ判定の結果を報知する報知部をさらに備え、
前記報知部は、前記判定部により水漏れが有ると判定されたときに作動するように構成されている請求項1から10のいずれか一項に記載の給湯システムの水漏れ判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器を有する給湯システムの水漏れ判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、台所や浴室等に設けられた温水消費装置に湯を供給する給湯システムは、給水配管から流入する水を給湯器により加熱して湯を生成する。つまり、給湯システムには、水が流通する給水配管と、湯が流通する給湯配管と、給水配管から流入した水を加熱して給湯配管に湯を排出する加熱器とを備えた給湯器が設けられている。この給湯システムにあっては、配管の継ぎ目からの水漏れ、配管の腐食による水漏れ、給湯を制御するバルブの動作不良による水漏れ等が発生することがある。
【0003】
特許文献1には、給湯システムにおける少量の水漏れを判定することができる水漏れ判定装置が開示されている。特許文献1に記載の発明は、通常、給湯が停止した後に給湯が再開されると、給湯器内部の雰囲気温度により温められた給水配管には冷水が供給されて水温が低下するが、水漏れが発生している場合には給水配管中の水の流れが停止していないため、水温の変動量が小さくなる点に着目している。そこで、特許文献1に記載の水漏れ判定装置は、給湯を開始した後、給水配管の水温と給湯器外部の雰囲気温度との温度差が所定温度差以上であり、且つ、給水配管中の水温の変動量が所定値を下回る場合に水漏れが発生していると判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の水漏れ判定装置は、給水配管が温められる十分な給湯時間が確保されない場合は水漏れが無くても給水配管中の水温の変動量が小さくなり、次回の給湯までの間隔が短い場合には、水漏れが有っても給水配管中の水温の変動量が大きくなるため、水漏れ判定精度が低下するおそれがあった。
【0006】
そこで、様々な使用環境において水漏れ判定精度を高めることが可能な給湯システムの水漏れ判定装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る給湯システムの水漏れ判定装置の特徴構成は、水が流通する給水配管と、湯が流通する給湯配管と、前記給水配管から流入した水を加熱して前記給湯配管に湯を排出する加熱器と、作動を制御する制御部とを備えた給湯器を有する給湯システムの水漏れ判定装置であって、前記給水配管を流通する水の温度を計測する水温計測部と、前記給湯器の内部空気の温度を計測する雰囲気温度計測部と、前記給湯システムの水漏れ判定を実行する判定部と、を備え、前記判定部は、前記給湯器が給湯停止してから給湯開始するまでの待機状態にあり、且つ、前記制御部が電気ヒータを作動させて前記給湯器の内部空気の温度を上昇させる制御を実行したとき、前記水温計測部の計測値及び前記雰囲気温度計測部の計測値に基づいて前記水漏れ判定を実行する点にある。
【0008】
本構成では、給湯停止中の待機状態において、制御部が電気ヒータを作動させて給湯器の内部空気の温度を上昇させる制御を実行して、水温計測部の計測値及び雰囲気温度計測部の計測値に基づいて水漏れ判定を実行している。つまり、給湯器の使用頻度に関係なく、給湯停止中に強制的に給湯器内部を加温しているため、給湯システムに水漏れが発生していない場合には、給湯器内部の雰囲気温度に追従して給水配管の温度を高めることが可能となる。
【0009】
一方、給湯システムに水漏れが発生している場合には、給水配管に冷水が常時流通しているため、給水配管の水温が給湯器内部の雰囲気温度に追従しない。したがって、給湯停止中に強制的に給湯器内部を加温した場合でも、給水配管の水温が給湯器内部の雰囲気温度に近づかないため、水漏れ判定が正確なものとなる。
【0010】
このように、給湯器の使用頻度に関係なく、水漏れ判定精度を高めることが可能な給湯システムの水漏れ判定装置を提供できた。
【0011】
他の特徴構成は、前記判定部は、前記水温計測部の計測値と前記雰囲気温度計測部の計測値との差の絶対値が所定温度以下となれば水漏れが無いと判定する点にある。
【0012】
給湯停止中の待機状態において、給湯器の内部空気の温度を上昇させる制御を実行したとき、給湯システムに水漏れが発生していない場合には、給水配管の水温が給湯器内部の雰囲気温度に追従する。このため、本構成のように、水温計測部の計測値と雰囲気温度計測部の計測値との差の絶対値が所定温度以下となれば水漏れが無いと判定すれば、水漏れ判定が正確なものとなる。
【0013】
本発明に係る水漏れ判定装置の特徴構成は、水が流通する給水配管と、湯が流通する給湯配管と、前記給水配管から流入した水を加熱して前記給湯配管に湯を排出する加熱器とを備えた給湯器を有する給湯システムの水漏れ判定装置であって、前記給水配管を流通する水の温度を計測する水温計測部と、前記給湯配管を流通する湯の温度を計測する湯温計測部と、前記給湯器の内部空気の温度を計測する雰囲気温度計測部と、前記給湯システムの水漏れ判定を実行する判定部と、を備え、前記判定部は、前記給湯器が給湯停止後、前記水温計測部又は前記湯温計測部の計測値と前記雰囲気温度計測部との計測値に基づいて前記水漏れ判定を実行する点にある。
【0014】
給湯停止後、給湯システムに水漏れが発生していない場合には、給湯器における給水配管の水温及び給湯配管の水温は、給湯器内部の雰囲気温度に収束する。一方、給湯停止後、給湯システムに水漏れが発生している場合には、給水配管に冷水が常時流通しているため、給湯停止後、給水配管の水温及び給湯配管の水温は、給湯器内部の雰囲気温度に追従せず、給湯器外部の水道水の水温に収束する。
【0015】
そこで、本構成では、流量計測部の計測値が所定値以上から所定値未満となった給湯停止後、水温計測部又は湯温計測部の計測値と雰囲気温度計測部の計測値とに基づいて水漏れ判定を実行する。つまり、給湯システムの水漏れの有無により温度変化の挙動が異なる給水配管の水温又は給湯配管の湯温に基づいて水漏れ判定を実行すれば、水漏れ判定が正確なものとなる。
【0016】
このように、給湯停止後において水漏れ判定を実行するため、給湯器の使用頻度に関係なく、水漏れ判定精度を高めることが可能な給湯システムの水漏れ判定装置を提供できた。
【0017】
他の特徴構成は、前記判定部は、前記水温計測部又は前記湯温計測部の計測値と前記雰囲気温度計測部の計測値との差の絶対値が所定温度以下となれば水漏れが無いと判定する点にある。
【0018】
給湯停止後、給湯システムに水漏れが発生していない場合には、給湯器における給水配管の水温及び給湯配管の水温は、給湯器内部の雰囲気温度に収束する。そこで、本構成のように、水温計測部又は湯温計測部の計測値と雰囲気温度計測部の計測値との差の絶対値が所定温度以下となれば水漏れが無いと判定すれば、水漏れ判定が正確なものとなる。
【0019】
他の特徴構成は、前記給湯器の外部で前記給水配管に接続された水道管を流通する水の温度を計測する水道水温計測部をさらに備え、前記判定部は、前記水温計測部又は前記湯温計測部の計測値が、前記雰囲気温度計測部の計測値よりも前記水道水温計測部の計測値に近い値であるとき、水漏れが有ると判定する点にある。
【0020】
給湯停止後、給湯システムに水漏れが発生している場合には、給水配管に冷水が常時流通しているため、給湯停止後、給湯器における給水配管の水温及び給湯配管の水温は、給湯器内部の雰囲気温度に追従せず、水道管の水道水温に近くなる。そこで、本構成のように、水温計測部又は湯温計測部の計測値が、雰囲気温度計測部の計測値よりも水道水温計測部の計測値に近い値であるとき、水漏れが有ると判定すれば、水漏れ判定が正確なものとなる。
【0021】
他の特徴構成は、前記判定部は、前記水温計測部の計測値の変化率に基づいて、前記水漏れ判定を実行する点にある。
【0022】
給湯停止後、給湯システムに水漏れが発生していない場合には、給湯器における給水配管の水温は、給湯器内部の雰囲気温度に収束し、給湯システムに水漏れが発生している場合には、給水配管に冷水が常時流通しているため、給湯器における給水配管の水温は、ほとんど変化しない。そこで、本構成のように、水温計測部の計測値の変化率に基づけば、水漏れ判定が正確なものとなる。
【0023】
他の特徴構成は、前記給水配管を流通する水の流量を計測する流量計測部をさらに備え、前記判定部は、前記流量計測部の計測値が所定値未満であるときに前記水漏れ判定を実行する点にある。
【0024】
本構成では、水漏れ判定を実行する給湯器の待機状態又は給湯停止状態を確実に検出することができる。
【0025】
他の特徴構成は、前記流量計測部の計測値が前記所定値以上となる給湯期間を学習する学習部をさらに備え、前記判定部は、前記学習部が学習した前記給湯期間に基づいて前記水漏れ判定を実行する点にある。
【0026】
本構成のように、学習部が学習した給湯期間に基づいて水漏れ判定を実行すれば、給湯器の使用頻度の少ないときに水漏れ判定を実行できるため、水漏れ判定中に再度給湯開始され、水漏れ判定精度が低下する不都合を防止できる。
【0027】
他の特徴構成は、前記判定部は、前記流量計測部の計測値が前記所定値以上となったとき、前記水漏れ判定の実行を停止する点にある。
【0028】
本構成のように、流量計測部の計測値が所定値以上となったとき、水漏れ判定の実行を停止すれば、仮に水漏れ判定中に給湯が開始されたとしても、水漏れの誤判定を防止することができる。
【0029】
他の特徴構成は、前記判定部による前記水漏れ判定の結果を記憶する記憶部をさらに備え、前記判定部は、前記結果に基づいて前記水漏れ判定の実行頻度を変更する点にある。
【0030】
本構成のように、水漏れ判定の結果に基づいて水漏れ判定の実行頻度を変更すれば、水漏れの無い場合には不必要な水漏れ判定によるエネルギー消費を削減可能となり、水漏れの有る場合には、判定頻度を上げることで水漏れ判定の信頼度を高めることができる。
【0031】
他の特徴構成は、前記判定部による前記水漏れ判定の結果を報知する報知部をさらに備え、前記報知部は、前記判定部により水漏れが有ると判定されたときに作動するように構成されている点にある。
【0032】
本構成のように、水漏れが有る場合に報知部を作動させれば、ユーザは水漏れ情報を知ることが可能となり、事業者は水漏れ防止措置等の迅速な対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図3】第一実施形態に係る水漏れ判定フロー図である。
【
図4】第一実施形態に係る水温挙動例を示す図である。
【
図5】第二実施形態に係る水漏れ判定フロー図である。
【
図6】第二実施形態に係る湯温挙動例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明に係る給湯システムの水漏れ判定装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、水漏れ判定装置の一例として、給湯器1を有する給湯システムXの水漏れを判定する水漏れ判定装置100として説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0035】
図1に示すように、給湯システムXは、給湯器1にて水を加熱して湯を生成し、この湯を、給湯器1の外部にある温水消費装置90に供給する。本実施形態における水漏れ判定装置100は、給湯システムXの配管系(例えば
図1の符号Lの部位)やバルブの破損による水漏れや、バルブの異物噛み込みによる下流側への水漏れ等の有無を判定する。この水漏れ判定装置100は、給湯器1の給湯機能の一部として機能する機構であっても良いし、給湯器1の状態を遠隔地で集中管理する管理センタに設けられたコンピュータに機能の一部を受け持たせても良い。
【0036】
給湯器1は、ケーシング60内部に配管20を備えており、配管20に給湯熱源である熱交換器2(加熱器の一例)が設けられている。この給湯器1は、ガス配管24から供給される天然ガスなどの燃焼ガスの燃焼火炎で得た熱を、熱交換器2により配管20を流通する水に与えて湯とすることで、給湯機能を実行するガス給湯器である。
【0037】
本実施形態における給湯器1は、ケーシング60と、ケーシング60内に設けられ、水道管Wからの水(水道水)が流通する給水配管21及び湯が流通する給湯配管23を含む配管20と、給水配管21と給湯配管23の間に設けられた熱交換器2と、給水配管21から供給された水を熱交換器2で加熱して給湯配管23から給湯する給湯流量を計測する流量計測部51とを備えている。水漏れ判定装置100は、給湯器1を有する給湯システムXの水漏れを判定する。
【0038】
また、給湯器1は、その作動を制御する制御部3を有しており、その他一般に知られる給湯器に用いられる機構、機能部などを備えている。制御部3は、各種処理を実行するCPUやメモリを中核としたソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアとの協働により構成されている。
【0039】
ケーシング60は、内部が空気で満たされており、空気の温度を計測する温度センサ等の温度計を有する雰囲気温度計測部42が設けられている。ヒータHは、配管20を流通する水の凍結を防止するための電気ヒータ等で構成されている。雰囲気温度計測部42は、例えば、温度センサとして熱電対やサーミスタ(以下、「熱電対等」を言う)を含んでおり、当該熱電対等で検出した温度に係る情報を、制御部3や水漏れ判定装置100へ出力する。
【0040】
熱交換器2は、配管20を流通する水に熱を与えて湯とする部材であり、給水配管21から流入した水を加熱して給湯配管23に湯を排出する。熱交換器2は、例えばガス配管24から供給される天然ガスの燃焼火炎で得た熱を、配管20を流通する水に与える。熱交換器2への熱量供給は、ガス配管24に設けられたガスバルブ33の開度調整で調整される。ガスバルブ33の開閉および開度は、制御部3により制御される。天然ガスの燃焼によって生成された燃焼ガスの排気は、排気管25を介してケーシング60の外部へ放出される。
【0041】
配管20は、ケーシング60内部に収容されており、給水して給湯する配管部である。配管20のうち、熱交換器2より上流側の配管20が、給水配管21であり、熱交換器2より下流側の配管20が、給湯配管23である。したがって、配管20は、外部から供給された水を給水源として、給水配管21、熱交換器2、給湯配管23へと流通させて、温水消費装置90へ給湯する。
【0042】
なお、配管20には、熱交換器2をバイパスするように、給水配管21から給湯配管23へ接続するバイパス配管22が設けられている。必要に応じてバイパス配管22に設けられたバイパスバルブ32の開度を調整し、給湯器1の給湯温度を調整することができる。
【0043】
給水配管21は、給湯器1の外部の水道管Wから給水を受け、熱交換器2に連通する配管部である。水道管Wには、水道水温計測部7が設けられている。給水配管21には、ヒータHと、給水バルブ31と、流量計測部51と、水温計測部41とが設けられている。本実施形態における給水配管21には、ヒータH、給水バルブ31、流量計測部51及び水温計測部41が、上流から下流に向かってこの順に設けられている。給湯配管23は、熱交換器2と連通し、熱交換器2から供給される湯水を、給湯器1の外部にある温水消費装置90へ供給する配管部である。給湯配管23には、湯温計測部43が設けられている。なお、給湯配管23にもヒータHを設けても良いし、ヒータHを設ける箇所は特に限定されない。
【0044】
ヒータHは、配管20を流通する水の凍結を防止するための電気ヒータ等で構成されている。制御部3は、雰囲気温度計測部42で計測された温度が、凍結温度(例えば0℃)以下となったとき、ヒータHを作動させる。なお、給湯器1の外部の雰囲気温度を計測する温度計(不図示)の計測値に基づいて、ヒータHを作動させても良い。
【0045】
給水バルブ31は、配管20の水の流通を制御するボール弁等で構成される弁部材である。なお、給水バルブ31に用いる弁部材としては、その他、ダイヤフラム弁、バタフライ弁などを用いることもできる。この給水バルブ31は、制御部3からの指示に従って、開状態と閉状態とに切り替わる。つまり、給水バルブ31が開状態で給湯可能となる。給水バルブ31の開閉状態に係る情報は、制御部3へ出力される。
【0046】
流量計測部51は、熱交換器2を介して配管20を流通する給湯流量を計測する流量計を有している。流量計測部51は、例えば、流量計としてプロペラ式流量計で構成されており、当該流量計で検出した流量に係る情報を制御部3や水漏れ判定装置100へ出力する。本実施形態における流量計測部51は、その計測のダイナミックレンジの下限は2リットル毎分(所定値の一例)に設定されており、配管20を流通する給湯流量が2リットル毎分未満の場合、ゼロを出力する。
【0047】
水道水温計測部7は、水道管Wを流通する水道水の温度を計測する温度センサ等の温度計を有している。また、水温計測部41は、給水配管21を流通する水の温度を計測する温度センサ等の温度計を有している。水道水温計測部7は、ケーシング60(給湯器1)の外部に設けられており、水温計測部41は、ケーシング60(給湯器1)の内部に設けられている。水道水温計測部7及び水温計測部41は、例えば、温度センサとして熱電対等を含んでおり、当該熱電対等で検出した温度に係る情報を、制御部3や水漏れ判定装置100へ出力する。
【0048】
本実施形態における給水配管21は、水温計測部41の温度センサ近傍に、伝熱部44を備えている。この伝熱部44は、ケーシング60内の空気の温度(雰囲気温度)と、水温計測部41の温度センサ近傍における給水配管21内の水の温度とを近づける機能を発揮する。具体的には、水温計測部41の温度センサ近傍の給水配管21の水温がケーシング60内の雰囲気温度に近づくように、ケーシング60内の空気と給水配管21内の水との間で、伝熱部44を介して熱をやり取りする。伝熱部44は、水温計測部41の温度センサ近傍の給水配管21に立設した金属板を複数枚有する伝熱フィン等で構成されている。なお、伝熱部44を省略しても良い。
【0049】
湯温計測部43は、給湯配管23を流通する湯の温度を計測する温度センサ等の温度計を有している。つまり、湯温計測部43は、給湯配管23を流通する湯の温度として給湯温度を検出する。湯温計測部43は、例えば、温度センサとして熱電対等を含んでおり、当該熱電対等で検出した温度に係る情報を、制御部3や水漏れ判定装置100へ出力する。本実施形態における湯温計測部43は、熱交換器2の下流側であって、給湯配管23とバイパス配管22との接続部の上流側でケーシング60(給湯器1)の内部に設けられている。
【0050】
図2に示すように、水漏れ判定装置100は、上述した水道水温計測部7と水温計測部41と雰囲気温度計測部42と湯温計測部43と流量計測部51とを備えている。また、水漏れ判定装置100は、通信部10と判定実行部11(判定部の一例)と漏水判定部12(判定部の一例)と計時部13と報知部14と記憶部15と学習部16とを備えている。判定実行部11、漏水判定部12及び学習部16は、各種処理を実行するCPUやメモリを中核としたソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアとの協働により構成されている。記憶部15は、RAMやHDDといったハードウェアで構成されている。
【0051】
通信部10は、給湯器1との間で有線又は無線で構成されるネットワークを介して送受信するためのインターフェースである。本実施形態における通信部10は、水道水温計測部7、水温計測部41、雰囲気温度計測部42、湯温計測部43及び流量計測部51の計測値を受信すると共に、制御部3に指示信号を送信する。
【0052】
判定実行部11は、給湯システムXにおける水漏れ判定の実行を制御する。判定実行部11より水漏れ判定を開始するとの指示信号を受けて、漏水判定部12が水漏れの有無を判定する。判定実行部11は、流量計測部51の計測値が所定値(例えば2リットル毎分)未満の待機状態、又は、流量計測部51の計測値が所定値(例えば2リットル毎分)以上から所定値未満となった給湯停止後、水漏れ判定を実行する。また、判定実行部11は、水漏れ判定中に流量計測部51の計測値が所定値(例えば2リットル毎分)以上となったとき、水漏れ判定の実行を停止させる。なお、給湯システムXに水漏れが有った場合でも通常は少量であるため、流量計測部51の計測値が所定値(例えば2リットル毎分)以上とならず、水漏れ判定の実行が停止されない。
【0053】
判定実行部11は、学習部16が学習した給湯期間に基づいて水漏れ判定を実行することが好ましい。例えば、学習部16が学習した給湯期間のうち、給湯しない確率の高い時間帯に定期的(例えば週1回)に水漏れ判定を実行する。また、判定実行部11は、記憶部15が記憶した水漏れ判定の結果に基づいて、水漏れ判定の実行頻度を変更することが好ましい。例えば、水漏れ判定により水漏れが無い回数が連続して所定回数以上となったとき、水漏れ判定の実行頻度を週1回から2週間に1回に変更する。
【0054】
漏水判定部12は、給湯システムXにおける水漏れの有無を判定する。流量計測部51の計測値が所定値(例えば2リットル毎分)未満の待機状態にあるとき、判定実行部11による水漏れ判定の開始信号を、通信部10を介して制御部3に伝達し、制御部3がヒータHを作動させる。そして、漏水判定部12は、水温計測部41の計測値及び雰囲気温度計測部42の計測値に基づいて、水漏れ判定を実行する(第一実施形態)。一例として、漏水判定部12は、水温計測部41の計測値と雰囲気温度計測部42の計測値との差の絶対値が所定温度(例えば5℃)以下となれば、水漏れが無いと判定する。反対に、漏水判定部12は、水温計測部41の計測値と雰囲気温度計測部42の計測値との差の絶対値が所定温度(例えば5℃)より大きくなれば、水漏れが有ると判定しても良い。この判定は、一定時間(例えば1分)継続して実行することが好ましい。
【0055】
他の実施形態として、流量計測部51の計測値が所定値(例えば2リットル毎分)以上から所定値未満となった給湯停止後、漏水判定部12は、水道水温計測部7の計測値、水温計測部41の計測値、湯温計測部43の計測値及び雰囲気温度計測部42の計測値に基づいて、水漏れ判定を実行する(第二実施形態)。一例として、漏水判定部12は、水温計測部41の計測値と雰囲気温度計測部42の計測値との差の絶対値が所定温度(例えば5℃)以下であり、又は、湯温計測部43の計測値と雰囲気温度計測部42の計測値との差の絶対値が所定温度(例えば5℃)以下であれば、水漏れが無いと判定する。また、水温計測部41又は湯温計測部43の計測値が、雰囲気温度計測部42の計測値よりも水道水温計測部7の計測値に近い値であるとき、水漏れが有ると判定する。この判定は、一定時間(例えば1分)継続して実行することが好ましい。
【0056】
計時部13は、時間の経過を計測する計時機構であり、判定実行部11の水漏れ判定の指示信号を受けて計時を開始し、漏水判定部12の要求に応じて経過時間に係る情報を出力する。
【0057】
報知部14は、漏水判定部12により水漏れ判定の結果を報知する。この報知部14は、漏水判定部12により水漏れが有ると判定された場合に、使用者や管理センタなどへ水漏れが発生している旨を報知する信号を発する機構である。報知部14は、例えば水漏れを知らせる警報を音や光、もしくはその他の使用者が知覚可能な信号を発して水漏れが発生している旨を報知する。また、報知部14は、給湯器1の状態を遠隔地で集中管理する管理センタなどへ、電気通信回線を介して通信して、水漏れが発生している旨を報知することもできる。
【0058】
記憶部15は、給湯器1による給湯実績、及び、漏水判定部12の水漏れ判定実績を記憶する。給湯実績は、温水消費装置90への給湯が実行された日時及び給湯流量等で構成されている。水漏れ判定実績は、水漏れ判定が実行された日時及び判定結果等で構成されている。
【0059】
学習部16は、記憶部15に記憶された給湯器1による給湯実績に基づいて、流量計測部51の計測値が所定値(例えば2リットル毎分)以上となる給湯期間を学習する。一例として、
図7に示すように、曜日毎に4時間単位で時間を区切り、給湯確率を演算する。月曜日の0時から4時の間で、過去の給湯実績として平均約7分間の給湯があれば、3%の給湯確率として学習する。この学習部16による給湯期間の学習は、都度更新しても良いし、所定期間(例えば1年間)の学習内容を固定しても良い。
【0060】
(第一実施形態の判定フロー)
図3~
図4を用いて、第一実施形態における水漏れ判定装置100の判定方法について説明する。
【0061】
図3に示すように、判定実行部11が水漏れ判定を開始するか否か判定する(#31)。#31の判定は、流量計測部51の計測値が所定値(例えば2リットル毎分)未満の待機状態にあるときに行う。本実施形態では、学習部16が学習した給湯期間のうち、給湯しない確率の高い時間帯に水漏れ判定を開始する(#31Yes)。例えば、判定実行部11は、
図7に示すテーブルを用いて、給湯しない確率の高い時間帯(5%以下の時間帯)のうち、最も確率の低い日曜日の0時から16時の間に水漏れ判定を開始する。
【0062】
制御部3は、判定実行部11による水漏れ判定の開始信号を受信したとき、ヒータHを作動させる(#32)。制御部3がヒータHを作動させた後、漏水判定部12は、流量計測部51の計測値が所定値(例えば2リットル毎分)以上となる給湯開始が行われたか否かを監視する(#33)。流量計測部51の計測値が所定値以上となれば、漏水判定部12は、制御部3がヒータHを停止させるように指示信号を送る(#33Yes、#34)。水漏れ判定を開始してから(ヒータHを作動してから)、計時部13が計時を開始し、漏水判定部12は、所定時間を経過したか否かを判定する(#33Nо、#35)。
【0063】
#35の判定の結果、所定時間を経過するまでに流量計測部51の計測値が所定値以上となれば、ヒータHを停止させる(#35Nо、#33Yes、#34)。一方、#35の判定の結果、所定時間を経過すれば、漏水判定部12が水漏れ判定を実行する(#35Yes、#36)。この所定時間は、ゼロ~数秒程度であっても良いし、判定精度を高めるために、数分程度確保しても良い。
【0064】
図4には、本実施形態に係る水温計測部41で計測された水温挙動例が示されている。実線は、雰囲気温度計測部42で計測されたケーシング60内部の雰囲気温度であり、二点鎖線は、水道水温計測部7で計測された給湯器1外部の水道管Wにおける水道水の温度である。また、破線は、水漏れが無い場合の水温計測部41で計測された給水配管21内の水の温度であり、一点鎖線は、水漏れが有る場合の水温計測部41で計測された給水配管21内の水の温度である。
【0065】
給湯中は、給水配管21には水道管Wからの水道水が常に供給されているため、破線及び一点鎖線で示すように、水温計測部41で計測された給水配管21内の水の温度は、水道水温計測部7で計測された水道水の温度に近い値となっている。一方、給湯を停止したとき、実線で示すようにケーシング60内部の雰囲気温度は、徐々に低下する。このとき、水温計測部41で計測された給水配管21内の水の温度は、破線で示すように、水漏れが無い場合には雰囲気温度に追従して徐々に上昇するが、一点鎖線で示すように、水漏れが有る場合には給水配管21に温度の低い水道水が流れ続けるため、水道水の温度に近い値で維持される。
【0066】
そして、ヒータHを作動させた場合、実線で示すように、ケーシング60内部の空気がヒータHからの伝熱により加温され、ケーシング60内部の雰囲気温度が上昇する。このとき、水温計測部41で計測された給水配管21内の水の温度は、破線で示すように、水漏れが無い場合には雰囲気温度の上昇に追従して徐々に上昇するが、一点鎖線で示すように、水漏れが有る場合には、給水配管21に温度の低い水道水が流れ続けるため、上昇しないか、僅かに上昇する程度となる。
【0067】
そこで、本実施形態における漏水判定部12は、制御部3がヒータHを作動させて所定時間経過したとき、水温計測部41の計測値及び雰囲気温度計測部42の計測値に基づいて、水漏れ判定を実行する。
図3に戻って説明すると、漏水判定部12は、水温計測部41の計測値と雰囲気温度計測部42の計測値との差の絶対値が所定温度(例えば5℃)以下であるか否かを判定する(#36)。
【0068】
#36の判定の結果、漏水判定部12は、水温計測部41の計測値と雰囲気温度計測部42の計測値との差の絶対値が所定温度以下であれば、水漏れが無いと判定し、この判定結果を記憶部15に記憶させて、制御部3にヒータHを停止させる信号を送信する(#37、#40)。一方、#36の判定の結果、漏水判定部12は、水温計測部41の計測値と雰囲気温度計測部42の計測値との差の絶対値が所定温度より大きければ、水漏れが有ると判定し、報知部14を作動させる(#38、#39)。そして、この判定結果を記憶部15に記憶させて、制御部3にヒータHを停止させる信号を送信する(#40)。なお、漏水判定部12による判定は、一定時間継続して実行しても良い。
【0069】
このように、本実施形態では、給湯停止中の待機状態において、給湯器1の内部空気の温度を上昇させる制御を実行して、水温計測部41の計測値及び雰囲気温度計測部42の計測値に基づいて水漏れ判定を実行している。つまり、給湯器1の使用頻度に関係なく、給湯停止中に強制的に給湯器1内部を加温しているため、給湯器1内部の雰囲気温度に追従して給水配管21の温度を高めることが可能となる。一方、給湯システムXに水漏れが発生している場合には、給水配管21に冷水が常時流通しているため、給水配管21の水温が給湯器1内部の雰囲気温度に追従しない。したがって、給湯停止中に強制的に給湯器1内部を加温した場合でも、給水配管21の水温が給湯器1内部の雰囲気温度に近づかないため、水漏れ判定が正確なものとなる。
【0070】
また、学習部16が学習した給湯期間に基づいて水漏れ判定を実行すれば、給湯器1の使用頻度の少ないときに水漏れ判定を実行できるため、水漏れ判定中に再度給湯開始され、水漏れ判定精度が低下する不都合を防止できる。さらに、記憶部15に記憶した水漏れ判定の結果に基づいて水漏れ判定の実行頻度を変更することが好ましい。これのより、水漏れの無い場合には不必要な水漏れ判定によるエネルギー消費を削減可能となり、水漏れの有る場合には、判定頻度を上げることで水漏れ判定の信頼度を高めることができる。
【0071】
(第二実施形態の判定フロー)
図5~
図6を用いて、第二実施形態における水漏れ判定装置100の判定方法について説明する。
【0072】
図5に示すように、判定実行部11は、給湯器1が給湯を停止したか否かを監視し、水漏れ判定を開始するか否か判定する(#51)。流量計測部51の計測値が所定値(例えば2リットル毎分)以上から所定値未満となった給湯停止後、水漏れ判定を実行する(#51Yes)。このとき、学習部16が学習した給湯期間のうち、給湯実績があるが、給湯しない確率の比較的高い時間帯に水漏れ判定を開始することが好ましい。例えば、判定実行部11は、
図7に示すテーブルを用いて、給湯しない確率の高い時間帯(5%以下の時間帯)のうち、最も確率の高い金曜日の8時から12時の間に水漏れ判定を開始する。
【0073】
漏水判定部12は、流量計測部51の計測値が所定値(例えば2リットル毎分)以上となる給湯開始が行われたか否かを監視する(#52)。流量計測部51の計測値が所定値以上となれば、判定を停止する(#52Yes、#53)。水漏れ判定を開始してから、計時部13が計時を開始し、漏水判定部12は、所定時間を経過したか否かを判定する(#54)。
【0074】
#54の判定の結果、所定時間を経過するまでに流量計測部51の計測値が所定値以上となれば、判定を停止する(#54No、#52Yes、#53)。一方、#54の判定の結果、所定時間を経過すれば、漏水判定部12が水漏れ判定を実行する(#54Yes、#55)。この所定時間は、数分程度確保することが好ましい。
【0075】
図6には、本実施形態に係る湯温計測部43で計測された湯温挙動例が示されている。実線は、雰囲気温度計測部42で計測されたケーシング60内部の雰囲気温度であり、二点鎖線は、水道水温計測部7で計測された給湯器1外部の水道管Wにおける水道水の温度である。また、破線は、水漏れが無い場合の湯温計測部43で計測された給湯配管23内の湯の温度であり、一点鎖線は、水漏れが有る場合の湯温計測部43で計測された給湯配管23内の湯の温度である。
【0076】
給湯中は、実線で示すようにケーシング60内部の空気が熱交換器2からの伝熱により加温されており、破線及び一点鎖線で示すように、湯温計測部43で計測された給湯配管23内の湯の温度は、熱交換器2により加熱されているので、ケーシング60内部の雰囲気温度よりも高温となっている。一方、給湯を停止したとき、実線で示すようにケーシング60内部の雰囲気温度は、徐々に低下する。このとき、湯温計測部43で計測された給湯配管23内の湯の温度は、破線で示すように、水漏れが無い場合には雰囲気温度に近づくように徐々に低下するが、一点鎖線で示すように、水漏れが有る場合には給水配管21に温度の低い水道水が流れ続けるため、急激に低下して水道水温計測部7で計測された水道水の温度に近い温度へと収束する。また、第一実施形態で
図4を用いて説明したように、給湯を停止したとき、水温計測部41で計測された給水配管21内の水の温度は、水漏れが無い場合には雰囲気温度に追従して徐々に上昇するが、水漏れが有る場合には給水配管21に温度の低い水道水が流れ続けるため、水道水の温度に近い値で維持される。
【0077】
そこで、本実施形態における漏水判定部12は、給湯を停止してから所定時間経過したとき、水温計測部41又は湯温計測部43の計測値と雰囲気温度計測部42の計測値とに基づいて、水漏れ判定を実行する。
図5に戻って説明すると、漏水判定部12は、水温計測部41の計測値と雰囲気温度計測部42の計測値との差の絶対値が所定温度(例えば5℃)以下、又は、湯温計測部43の計測値と雰囲気温度計測部42の計測値との差の絶対値が所定温度(例えば5℃)以下であるか否かを判定する(#55)。
【0078】
#55の判定の結果、漏水判定部12は、水温計測部41又は湯温計測部43の計測値と雰囲気温度計測部42の計測値との差の絶対値が所定温度(例えば5℃)以下であれば(Yes判定)、水漏れが無いと判定し、この判定結果を記憶部15に記憶させる(#57、#60)。一方、#55の判定の結果、漏水判定部12は、水温計測部41又は湯温計測部43の計測値と雰囲気温度計測部42の計測値との差の絶対値が所定温度より大きければ(Nо判定)、湯温計測部43の計測値が、雰囲気温度計測部42の計測値よりも水道水温計測部7の計測値に近い値か否かを判定する(#56)。つまり、湯温計測部43の計測値が水道水の温度に近い温度へと収束しているか否か判定する。なお、湯温計測部43の計測値に代えて、水温計測部41の計測値を用いても良い。
【0079】
#56の判定の結果、漏水判定部12は、湯温計測部43(又は水温計測部41)の計測値が、雰囲気温度計測部42の計測値よりも水道水温計測部7の計測値に近い値であれば(Yes判定)、水漏れが有ると判定し、報知部14を作動させる(#58、#59)。一方、漏水判定部12は、湯温計測部43(又は水温計測部41)の計測値が、水道水温計測部7の計測値よりも雰囲気温度計測部42の計測値に近い値、つまり、給湯配管23内の湯の温度が雰囲気温度に近づくように徐々に低下していれば(No判定)、水漏れが無いと判定する(#57)。そして、これらの判定結果を記憶部15に記憶させて、水漏れ判定を終了する(#60)。なお、漏水判定部12による判定は、一定時間継続して実行しても良い。また、#55及び#56の判定のうち、いずれか一方を用いても良い。
【0080】
このように、本実施形態では、流量計測部51の計測値が所定値以上から所定値未満となった給湯停止後、水温計測部41又は湯温計測部43の計測値と雰囲気温度計測部42の計測値とに基づいて水漏れ判定を実行する。つまり、給湯システムXの水漏れの有無により温度変化の挙動が異なる給水配管21の水温又は給湯配管23の湯温に基づいて水漏れ判定を実行すれば、水漏れ判定が正確なものとなる。また、本実施形態のように、水温計測部41又は湯温計測部43の計測値と雰囲気温度計測部42の計測値との差の絶対値が所定温度以下となれば水漏れが無いと判定すれば、水漏れ判定が正確なものとなる。さらに、湯温計測部43の計測値が、雰囲気温度計測部42の計測値よりも水道水温計測部7の計測値に近い値であるとき、水漏れが有ると判定すれば、水漏れ判定が正確なものとなる。
【0081】
また、学習部16が学習した給湯期間に基づいて水漏れ判定を実行すれば、給湯器1の使用頻度の少ないときに水漏れ判定を実行できるため、水漏れ判定中に再度給湯開始され、水漏れ判定精度が低下する不都合を防止できる。さらに、記憶部15に記憶した水漏れ判定の結果に基づいて水漏れ判定の実行頻度を変更することが好ましい。これにより、水漏れの無い場合には不必要な水漏れ判定によるエネルギー消費を削減可能となり、水漏れの有る場合には、判定頻度を上げることで水漏れ判定の信頼度を高めることができる。
【0082】
[その他の実施形態]
(1)漏水判定部12が水漏れ判定は、第一実施形態及び第二実施形態における水温計測部41の計測値の変化率や第二実施形態における湯温計測部43の計測値の変化率で判定しても良い。
図4に示すように、給湯停止後、給湯システムXに水漏れが発生していない場合には、給湯器1における給水配管21の水温は、給湯器内部の雰囲気温度に収束し、給湯システムXに水漏れが発生している場合には、給水配管21に冷水が常時流通しているため、給湯器1における給水配管21の水温は、ほとんど変化しない。また、
図6に示すように、給湯停止後、給湯システムXに水漏れが発生していない場合には、給湯器1における給湯配管23の湯温は、給湯器1内部の雰囲気温度に収束し、給湯システムXに水漏れが発生している場合には、給湯配管23に冷水が流通するため、給湯器1における給湯配管23の湯温は、給湯器1外部の水道水の温度に収束する。そこで、水温計測部41の計測値又は湯温計測部43の計測値の変化率に基づいて判定すれば、水漏れ判定が正確なものとなる。
【0083】
(2)漏水判定部12に対する水漏れ判定の実行指示を受け付ける入力部を設けても良い。この入力部は、例えばタッチパネルや、ボタン式のリモコンで構成される。また、水漏れ判定を実行する給湯器1の待機状態は、使用者が給湯停止指示を入力してから所定時間経過後であっても良い。
(3)第一実施形態において、水温計測部41の計測値の代わりに湯温計測部43の計測値を用いても良い。第一実施形態及び第二実施形態において、水温計測部41又は湯温計測部43の計測値ではなく、水温計測部41及び湯温計測部43の計測値を用いても良い。この場合、漏水判定部12の判定精度がより正確なものとなる。
(4)水漏れ判定装置100は、水道水温計測部7を備えていなくても良い。
(5)漏水判定部12における判定閾値は、学習部16により学習させて変更可能に構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、給湯器を有する給湯システムの水漏れ判定装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 :給湯器
2 :熱交換器(加熱器)
3 :制御部
7 :水道水温計測部
11 :判定実行部(判定部)
12 :漏水判定部(判定部)
14 :報知部
15 :記憶部
16 :学習部
21 :給水配管
23 :給湯配管
41 :水温計測部
42 :雰囲気温度計測部
43 :湯温計測部
51 :流量計測部
100 :水漏れ判定装置
W :水道管
X :給湯システム