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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】環境試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
G01N17/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020062908
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021162428
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀樹
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-118944(JP,U)
【文献】特開2015-001352(JP,A)
【文献】特開平05-305243(JP,A)
【文献】特開2015-010857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試体を設置する試験室と、空調手段と、送風機と、を有し、前記空調手段で調整された空気を前記送風機で前記試験室内に送風する環境試験装置であって、
前記送風機は、羽根部材と、風向変更部材と、回転軸と、を有し、
前記羽根部材は、回転することによって吸気した空気に遠心力を付与し、前記回転軸の軸方向に対して交差する方向に向かって前記空気を吹き出す遠心式の回転羽根であり、
前記風向変更部材は、両端が開口する筒部を有し、
前記筒部の一端が、前記羽根部材の吸気側に位置する吸い込み側開口となり、
前記筒部の他端が、吹き出し側開口となり、
前記筒部は、前記羽根部材の周囲の少なくとも一部を覆うことが可能であり、
前記羽根部材から前記交差する方向に向かって吹き出された前記空気の一部又は全部の流れ方向が前記筒部によって変更されて、流れ方向が変更された前記空気が前記吹き出し側開口から吹き出されるものであり、
前記風向変更部材は、位置及び/又は形態を変更可能であり、前記羽根部材の一部又は全部が前記筒部から露出する状態、及び/又は前記羽根部材の一部又は全部が前記筒部の周側から目視できる状態となることが可能であり、
前記筒部の位置及び/又は形態を変更する操作手段を有することを特徴とする環境試験装置。
【請求項2】
供試体を設置する試験室と、空調手段と、送風機と、を有し、前記空調手段で調整された空気を前記送風機で前記試験室内に送風する環境試験装置であって、
前記送風機は、羽根部材と、風向変更部材と、回転軸と、を有し、
前記羽根部材は、回転することによって吸気した空気に遠心力を付与し、前記回転軸の軸方向に対して交差する方向に向かって前記空気を吹き出す遠心式の回転羽根であり、
前記風向変更部材は、両端が開口する筒部を有し、
前記筒部の一端が、前記羽根部材の吸気側に位置する吸い込み側開口となり、
前記筒部の他端が、吹き出し側開口となり、
前記筒部は、前記羽根部材の周囲の少なくとも一部を覆うことが可能であるとともに、前記羽根部材の周囲の少なくとも一部を前記試験室内に露出することが可能であり、
前記羽根部材から前記交差する方向に向かって吹き出された前記空気の一部又は全部の流れ方向が前記筒部によって変更されて、流れ方向が変更されて前記空気が前記吹き出し側開口から吹き出される風と、前記筒部から露出した前記羽根部材から前記軸方向に対して交差する方向に向かって吹き出される風が生じるものであり、
前記筒部の位置及び/又は形態を変更する操作手段を有することを特徴とする環境試験装置。
【請求項3】
供試体を設置する試験室と、空調手段と、送風機と、を有し、前記空調手段で調整された空気を前記送風機で前記試験室内に送風する環境試験装置であって、
前記送風機は、羽根部材と、風向変更部材と、回転軸と、を有し、
前記羽根部材は、回転することによって吸気した空気に遠心力を付与し、前記回転軸の軸方向に対して交差する方向に向かって前記空気を吹き出す遠心式の回転羽根であり、
前記風向変更部材は、両端が開口する筒部を有し、
前記筒部の一端が、前記羽根部材の吸気側に位置する吸い込み側開口となり、
前記筒部の他端が、吹き出し側開口となり、
前記筒部は、前記羽根部材の周囲の少なくとも一部を覆うことが可能であり、
前記羽根部材から前記交差する方向に向かって吹き出された前記空気の一部又は全部の流れ方向が前記筒部によって変更されて、流れ方向が変更された前記空気が前記吹き出し側開口から吹き出されるものであり、
前記筒部は、周部に開口が設けられ、固定側筒と可動側筒を有し、
前記可動側筒と前記固定側筒によって前記周部の前記開口の面積を変更可能であることを特徴とする環境試験装置。
【請求項4】
前記風向変更部材は、前記軸方向に移動可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項5】
前記風向変更部材は、位置及び/又は形態を変更可能であり、前記羽根部材の一部又は全部が前記筒部から露出する状態、及び/又は前記羽根部材の一部又は全部が前記筒部の周側から目視できる状態となることが可能であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項6】
前記筒部は、前記吸い込み側開口を狭める底部を有するものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずかに記載の環境試験装置。
【請求項7】
前記筒部は、周部に開口が設けられ、当該開口の面積を変更可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験装置。
【請求項8】
前記送風機は、前記試験室の壁面の中央部に位置するように設置されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずかに記載の環境試験装置。
【請求項9】
前記筒部の位置及び/又は形態を変更する操作手段を有することを特徴とする請求項3に記載の環境試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験室の内部に所望の環境を形成する環境試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境試験装置は、試験室を有しており、温度環境(例えば、高温や低温)や湿度環境(例えば、高湿度や低湿度)等の所定の環境を試験室内に人工的に作り出すことができるものである。
【0003】
環境試験装置には、空調部と試験室を有しているものがある。ここで、空調部はヒータや冷却器等の空調機器が内蔵された部分であり、試験室は供試体(被試験物)が配置される空間である。
環境試験装置は送風機を備え、当該送風機で前記した空調部と試験室の間で空気を循環させて、試験室内の環境を所望の環境に整えるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-66593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
環境試験を行う場合、供試体に直接的に空気を吹きつけ、短時間の内に供試体の温度等を試験温度に至らせたい場合がある。
一方、例えば供試体が大きいものである様な場合、供試体に直接的に空気を吹きつけると、供試体の表面に温度ばらつきが生じてしまうことがある。この様な事態に備え、供試体の周囲を所定の温度等に調整された空気で包み込むことが望ましい場合がある。
また、環境試験装置に必要な一般的性能として、試験室内の温度ばらつきが小さいことが要求される。
【0006】
供試体に直接的に空気を吹きつけたい場合には、送風機から試験室の中心部に向かって直進方向に風を吹き出させることが望ましい場合がある。
一方、供試体の周囲を所定の温度等に調整された空気で包み込むことを希望する場合や、物品配置室内の温度ばらつきを小さくしたい場合には、送風機から試験室に吹き出される送風を、ある程度拡散させる方が良い場合もある。
本発明は、上記した要求に応えることができる環境試験装置を提供することを目的とするものであり、試験室に向かって直進方向に送風される吹き出し風量と、拡散方向への風量の割合を、変更することができる環境試験装置を開発することを課題とするものである。
【0007】
また本発明は、特有の送風機を備え、上記した課題を解決するための基本形となる環境試験装置を開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するための態様は、供試体を設置する試験室と、空調手段と、送風機と、を有し、前記空調手段で調整された空気を前記送風機で前記試験室内に送風する環境試験装置であって、前記送風機は、羽根部材と、風向変更部材と、回転軸と、を有し、前記羽根部材は、回転することによって吸気した空気に遠心力を付与し、前記回転軸の軸方向に対して交差する方向に向かって前記空気を吹き出す遠心式の回転羽根であり、前記風向変更部材は、両端が開口する筒部を有し、前記筒部は、前記羽根部材の周囲の少なくとも一部を覆うことが可能であり、前記筒部によって、前記羽根部材から吹き出された前記空気の一部又は全部の流れ方向が変更されて、前記筒部の一方の開口から前記空気が吹き出されることを特徴とする環境試験装置である。
上記した課題を解決するための具体的態様は、供試体を設置する試験室と、空調手段と、送風機と、を有し、前記空調手段で調整された空気を前記送風機で前記試験室内に送風する環境試験装置であって、前記送風機は、羽根部材と、風向変更部材と、回転軸と、を有し、前記羽根部材は、回転することによって吸気した空気に遠心力を付与し、前記回転軸の軸方向に対して交差する方向に向かって前記空気を吹き出す遠心式の回転羽根であり、前記風向変更部材は、両端が開口する筒部を有し、前記筒部の一端が、前記羽根部材の吸気側に位置する吸い込み側開口となり、前記筒部の他端が、吹き出し側開口となり、前記筒部は、前記羽根部材の周囲の少なくとも一部を覆うことが可能であるとともに、前記羽根部材の周囲の少なくとも一部を前記試験室内に露出することが可能であり、前記羽根部材から前記交差する方向に向かって吹き出された前記空気の一部又は全部の流れ方向が前記筒部によって変更されて、流れ方向が変更されて前記空気が前記吹き出し側開口から吹き出される風と、前記筒部から露出した前記羽根部材から前記軸方向に対して交差する方向に向かって吹き出される風が生じるものであり、前記筒部の位置及び/又は形態を変更する操作手段を有することを特徴とする環境試験装置である。
【0009】
本態様の環境試験装置が採用する送風機は、シロッコファン等の羽根部材と同様の羽根部材を有している。即ち、本態様の環境試験装置で採用する羽根部材は、回転することによって吸気した空気に遠心力を作用させ、外方向(回転軸に対して交差する方向)に向かって吹き出す遠心式の回転羽根である。
本態様の送風機は、特徴的構成として、風向変更部材を有している。当該風向変更部材は、両端が開口する筒部を有し、当該筒部によって羽根部材の周囲の少なくとも一部が覆われている場合がある。
そのため、羽根部材によって外側に吹き出された空気の少なくとも一部は、筒部に阻まれて拡散することができず、流れ方向が変わって筒部の壁面に沿って流れ、筒部の先端から吹き出される。
本態様の環境試験装置では、羽根部材から外側に向かって拡散する方向に吹き出された空気の少なくとも一部を、風向変更部材によって強制的に軸方向に向け、筒部の一方の開口から吹き出す。
そのため、何らかの変化をつけることにより、直進方向に送風される吹き出し風量と、拡散方向への風量の割合を、加減することができる。
【0010】
例えば送風機の回転数を変えることによっても、直進方向に送風される吹き出し風量と、拡散方向への風量の割合を、加減することができる可能性がある。
【0011】
上記した態様において、前記風向変更部材は、前記軸方向に移動可能であることが望ましい。
【0012】
風向変更部材を軸方向に移動させると、羽根部材と筒部との位置関係が変わり、試験室に向かって直進方向に送風される吹き出し風量と拡散方向への風量の割合が変化する。
【0013】
上記した各態様において、前記風向変更部材は、位置及び/又は形態を変更可能であり、前記羽根部材の一部又は全部が前記筒部から露出する状態、及び/又は前記羽根部材の一部又は全部が前記筒部の周側から目視できる状態となることが可能であることが望ましい。
【0014】
「羽根部材の一部又は全部が筒部から露出する状態」とすることにより、羽根部材の一部又は全部の周囲に筒部が存在しない状態となり、羽根部材で起こされた送風が、筒部が無い部分から周方向(回転軸の軸方向に対して交差する方向)に向かって吹き出される。
従って、羽根部材の露出量を変えることによって、試験室に向かって直進方向に送風される吹き出し風量と、拡散方向へ吹き出す風量の割合を、加減することができる。
「羽根部材の一部又は全部が筒部の周側から目視できる状態」についても同様であり、羽根部材の一部又は全部の周囲に障害物が存在しない状態となり、羽根部材で起こされた送風が、目視可能な部分から外方向に向かって吹き出される。
【0015】
上記した各態様において、前記筒部は、当該筒部の他方の開口を狭める底部を有するものであることが望ましい。
【0016】
本態様によると、羽根部材から外側に向かって拡散する方向に吹き出された送風を、効率よく、試験室に向かって直進方向に向けることができる。
【0017】
上記した各態様において、前記筒部は、周部に開口が設けられ、当該開口の面積を変更可能であることが望ましい。
この構成を備えた態様は、供試体を設置する試験室と、空調手段と、送風機と、を有し、前記空調手段で調整された空気を前記送風機で前記試験室内に送風する環境試験装置であって、前記送風機は、羽根部材と、風向変更部材と、回転軸と、を有し、前記羽根部材は、回転することによって吸気した空気に遠心力を付与し、前記回転軸の軸方向に対して交差する方向に向かって前記空気を吹き出す遠心式の回転羽根であり、前記風向変更部材は、両端が開口する筒部を有し、前記筒部の一端が、前記羽根部材の吸気側に位置する吸い込み側開口となり、前記筒部の他端が、吹き出し側開口となり、前記筒部は、前記羽根部材の周囲の少なくとも一部を覆うことが可能であり、前記羽根部材から前記交差する方向に向かって吹き出された前記空気の一部又は全部の流れ方向が前記筒部によって変更されて、流れ方向が変更された前記空気が前記吹き出し側開口から吹き出されるものであり、前記筒部は、周部に開口が設けられ、固定側筒と可動側筒を有し、前記可動側筒と前記固定側筒によって前記周部の前記開口の面積を変更可能であることを特徴とする環境試験装置である。
【0018】
開口の面積を変更することにより、拡散方向に吹き出される風量を変化させることができる。
【0019】
上記した態様において、前記送風機は、前記試験室の壁面の中央部に位置するように設置されていることが望ましい。
【0020】
「中央部」は、「中心部」だけでなく、その周辺を含む概念である。具体的には、送風機の吹き出し口と、試験室の天井、底及び側壁の間に隙間がある状態を指す。本態様によると、送風機の上下や左右に空間があるので、送風機から吹き出される空気を拡散させ易い。
【0021】
上記した各態様において、前記筒部を移動させる操作手段を有することが望ましい。
この構成を備えた態様は、供試体を設置する試験室と、空調手段と、送風機と、を有し、前記空調手段で調整された空気を前記送風機で前記試験室内に送風する環境試験装置であって、前記送風機は、羽根部材と、風向変更部材と、回転軸と、を有し、前記羽根部材は、回転することによって吸気した空気に遠心力を付与し、前記回転軸の軸方向に対して交差する方向に向かって前記空気を吹き出す遠心式の回転羽根であり、前記風向変更部材は、両端が開口する筒部を有し、前記筒部の一端が、前記羽根部材の吸気側に位置する吸い込み側開口となり、前記筒部の他端が、吹き出し側開口となり、前記筒部は、前記羽根部材の周囲の少なくとも一部を覆うことが可能であり、前記羽根部材から前記交差する方向に向かって吹き出された前記空気の一部又は全部の流れ方向が前記筒部によって変更されて、流れ方向が変更された前記空気が前記吹き出し側開口から吹き出されるものであり、前記風向変更部材は、位置及び/又は形態を変更可能であり、前記羽根部材の一部又は全部が前記筒部から露出する状態、及び/又は前記羽根部材の一部又は全部が前記筒部の周側から目視できる状態となることが可能であり、前記筒部の位置及び/又は形態を変更する操作手段を有することを特徴とする環境試験装置である。
【0022】
本態様によると、外部から操作することによって筒部の位置を変更し、試験室に向かって直進方向に送風される吹き出し風量と、拡散方向へ吹き出す風量の割合を、変更することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の環境試験装置によると、試験室に向かって直進方向に送風される吹き出し風量と、拡散方向へ吹き出す風量の割合を、変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態の環境試験装置の断面図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3図1の環境試験装置で採用する送風機の斜視図である。
図4】(a)は、図1の環境試験装置で採用する送風機の羽根部材を正面側から観察した斜視図であり、(b)は、当該羽根部材を裏面側から観察した斜視図である。
図5図1の環境試験装置の送風機の近傍を概念的に示した断面図であり、(a)は風向変更部材を空調部側に移動させて、試験室に向かって直進方向に送風される風量を多くした場合を示し、(b)は風向変更部材を試験室側に移動させて、拡散方向への風量の割合を多くした場合を示す。
図6】本発明の他の実施形態における環境試験装置の送風機の近傍を概念的に示した断面図であり、(a)は風向変更部材を空調部側に移動させて、試験室に向かって直進方向に送風される風量を多くした場合を示し、(b)は風向変更部材を試験室側に移動させて、拡散方向への風量の割合を多くした場合を示す。
図7】本発明のさらに他の実施形態における環境試験装置の送風機の近傍を概念的に示した断面図であり、(a)は風向変更部材を空調部側に移動させて、試験室に向かって直進方向に送風される風量を多くした場合を示し、(b)は風向変更部材を試験室側に移動させて、拡散方向への風量の割合を多くした場合を示す。
図8】本発明のさらに他の実施形態における環境試験装置の送風機の近傍を概念的に示した断面図であり、(a)は筒部の側面の開口を閉じて、試験室に向かって直進方向に送風される風量を多くした場合を示し、(b)は筒部の側面の開口を開いて拡散方向への風量の割合を多くした場合を示す。
図9図8に示す送風機の風向変更部材を示し、(a)はその分解斜視図であり、(b)はその斜視図であって側面の開口を閉じた状態を示し、(c)はその斜視図であって側面の開口を開いた状態を示す。
図10】本発明のさらに他の実施形態における環境試験装置の送風機の近傍を概念的に示した断面図であり、(a)は筒部の側面の開口を閉じて、試験室に向かって直進方向に送風される風量を多くした場合を示し、(b)は筒部の側面の開口を開いて拡散方向への風量の割合を多くした場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下さらに、本発明の実施形態の環境試験装置1について説明する。
図1に示すように、本実施形態の環境試験装置1は、断熱壁2で形成された筐体3を有している。筐体3の前面には開口5があり、開口5には扉6が設けられている。筐体3の内部には試験室8として機能する空間がある。
【0026】
本実施形態では、筐体3及び扉6によって断熱槽10が形成されている。断熱槽10の内部には仕切り壁(仕切り)11があり、仕切り壁11によって、断熱槽10内が試験室8と空調部15に大きく分かれている。
仕切り壁11には、上下の端部、即ち仕切り壁11の上下の辺部の近傍に、吸気開口16、17が設けられている。
また、仕切り壁11の中心部には、送風開口20がある。
【0027】
環境試験装置1は空調機器(空調手段)22を有している。
空調機器22は、加湿装置23、冷却装置及び加熱ヒータ26によって構成されている。
冷却装置は、蒸発器たる冷却器25a、25bを有している。本実施形態の冷却装置は、凝縮器(図示せず)の下流側が分岐され、2基の冷却器25a、25bが並列に接続されてそれぞれに冷媒が供給される構成となっている。
加熱ヒータ26は、電気ヒータであり、略環状に形成されている。加湿装置23は、水を溜める加湿皿27と、加湿ヒータ28によって、構成されている。
本実施形態では、加湿皿27、加湿ヒータ28、冷却器25a、25b及び加熱ヒータ26が、空調部15内に内蔵されている。
【0028】
本実施形態では、仕切り壁11の中央に相当する位置に送風機30が配置されている。
以下、送風機30について説明する。以下の説明において、試験室8側を前方と称し、空調部15側を後方と称する。送風方向を基準にすると、吸い込み側が後方であり、吹き出し側が前方である。
送風機30は、図3図4に示すように、羽根部材31、モータ32及び風向変更部材33によって構成されている。
【0029】
羽根部材31は、公知の遠心送風機の羽根車と略同一の構造である。羽根部材31は、公知の遠心送風機の多翼羽根と同様、回転軸40を中心として回転することによって吸気した空気に遠心力を作用させ、回転軸40に対して交差する方向に向かって吹き出す遠心式の回転羽根である。
以下、「回転軸40に対して交差する方向」を「外方向」と称する場合がある。即ち、羽根部材31は、回転することによって吸気した空気に遠心力を作用させ、外方向に向かって吹き出す遠心式の回転羽根である。
【0030】
本実施形態で採用する羽根部材31は、板(以下、封止板35)に、翼片部材36が複数設けられた多翼状の羽根であって、遠心式の回転羽根である。
封止板35は、円形の板であり、実質的に通気開口はなく、通気性はない。封止板35は、試験室8側から、空気を吸い込むことを防ぐ機能を有している。
【0031】
翼片部材36は、四角形の板である。本実施形態で採用する翼片部材36は、平板状である。羽根部材31は、プレートファンに類する構造を備えたものであり、図4に示すように、翼片部材36は、封止板35の中心方向に向いている。
羽根部材31の構造は、プレートファンに類する構造に限定されるものではなく、例えばシロッコファンの様に翼片部材36が曲面を構成していてもよい。また、ターボファンの様に回転方向に対して逆方向に傾斜した姿勢であってもよい。
【0032】
風向変更部材33は、図5に示す様に、前後が貫通し、周囲が覆われた筒である。即ち、風向変更部材33は、筒部48を有し、吹き出し側開口55と、吸い込み側開口56を有している。
吹き出し側開口55の開口径は、羽根部材31の外径に比べて十分に大きい。これに対して、吸い込み側開口56の開口径は、羽根部材31の外径に比べてわずかに大きい。
このように、本実施形態では、吸い込み側開口56の内径は、吹き出し側開口55の内径よりも小さい。そのため、筒部48は、直径が略一定の円筒形領域たる平行領域Aと、直径が漸次小さくなっていく底部38によって構成されている。本実施形態では、風向変更部材33の外観形状は釣り鐘状である。底部38の内周面は円弧状である。
風向変更部材33には、操作棒45が設けられている。なお作図の関係上、図3については、操作棒45を省略している。
【0033】
風向変更部材33は、図3図5の様に、羽根部材31の外周を覆っている。即ち、羽根部材31は、風向変更部材33の空洞部内に、一部又は全部が収容されている。
また風向変更部材33は、軸方向に移動可能である。
【0034】
送風機30の羽根部材31をモータ32で回転させると、翼片部材36によって、空気が遠心方向(拡散方向、放射方向)に付勢される。即ち、回転軸40に対して交差する方向に向かって空気を吹き出す。
【0035】
本実施形態で採用する送風機30は、前記したように、羽根部材31を覆う風向変更部材33(筒部48)がある。
風向変更部材33の筒部48が、図5(a)の様に羽根部材31の大部分の周囲を覆う位置関係にある場合、羽根部材31で起こされた遠心方向に向かう送風が、風向変更部材33の内壁に衝突して、周方向へ送風が拡散することが阻まれる。送風は、筒部48の内壁に沿って流れる。特に本実施形態で採用する風向変更部材33は、底部38の内周面が円弧状であるから、羽根部材31によって起こされた拡散方向に吹き出す送風が、円滑に前方向に向きを変える。そのため、羽根部材31で起こされた送風は、風向変更部材33の内壁に沿って流れ、風向変更部材33の吹き出し側開口55から吹き出される。
即ち、風向変更部材33の筒部48が、図5(a)の様に羽根部材31の大部分の周囲を覆う位置関係にある場合は、送風は、直線的に吹き出される。
【0036】
これに対して、図5(b)の様に、風向変更部材33が前方に移動し、羽根部材31の一部が風向変更部材33の筒部48から露出する位置に風向変更部材33があるならば、羽根部材31で起こされた送風は、筒部48が無い部分から周方向に向かって吹き出される。
羽根部材31の全部が風向変更部材33の筒部48から露出する位置に風向変更部材33があるならば、羽根部材31で起こされた送風は、全て、拡散方向に向かって吹き出される。
【0037】
次に、環境試験装置1を構成する各部材の位置関係について説明する。
本実施形態では、送風機30が、前記した仕切り壁11の中心部に位置するように、断熱槽10に取り付けられている。
本実施形態では、仕切り壁(仕切り)11の中心に送風機30が設置されているが、送風機30の位置は、中心から幾分ずれても大きな影響はない。
【0038】
2基の冷却器25a、25bは、図1図2の様に、送風機30の上下の位置にある。
加熱ヒータ26は、送風機30の吸気側を取り巻く位置に設けられている。
加湿皿27は、空調部15の下方に設置されている。
また、試験室8内であって、送風開口20の近傍に、温度センサー52と湿度センサー53が設けられている。温度センサー52と湿度センサー53の位置は任意であり、送風開口20の近傍に限定されるものではない。
【0039】
送風機30は、図1図2の様に、仕切り壁11の中間部に設置されている。
即ち、送風機30の羽根部材31は、仕切り壁11に設けられた送風開口20に対応する位置にあり、風向変更部材33は、当該位置において、羽根部材31の周囲を覆っている。
モータ32は、断熱槽10の外にあり、モータ32と羽根部材31は、シャフト57で連結されている。
操作棒45は、空調部15を貫通して断熱槽10の外に突出している。
従って、手動又は動力によって、外部から操作棒45を前後方向に移動させることにより、筐体3内で風向変更部材33が前後方向に移動し、風向変更部材33と羽根部材31との相対位置関係が変化する。そのため、本実施形態の環境試験装置1では、扉6を閉じた状態で外部から風向変更部材33を前後方向に移動し、試験室8内の空気の流れを変えることができる。
【0040】
次に、本実施形態の環境試験装置1の機能について説明する。
本実施形態の環境試験装置1では、送風機30を起動すると、空調部15と試験室8との間で空気が循環し、試験室8内の温度や湿度が所望の環境に調節される。
送風機30を起動すると、試験室8内の空気が上下の吸気開口16、17から空調部15内に導入される。その結果、空調部15が通風状態となり、空調機器22に空気が接触して熱交換や湿度調整がなされ、後記するように送風機30に吸引される。
そして送風機30の先端から、試験室8内に温度や湿度を調整後の空気が吹き出される。即ち、仕切り壁11の中央部から試験室8に向かって空気が吹き出されることとなる。
環境試験装置1を使用する際には、送風機30を運転し、温度センサー52及び湿度センサー53の検出値が設定環境の温度及び湿度に近づく様に、空調機器22を制御する。
【0041】
以下、送風機30に注目し、送風機30の機能について説明する。
送風機30を起動して、羽根部材31を回転させると、内部の空気に遠心力が作用し、空気が付勢されて周囲に移動する。その結果、羽根部材31の中心部が負圧傾向となる。
ここで本実施形態では、羽根部材31に封止板35が設けられており、当該封止板35は、試験室8側に配置されている。そのため、試験室8と羽根部材31の中心部側との間は、封止板35によって遮断され、試験室8側から羽根部材31の中心部側への空気の流入はない。
その結果、送風機30には、空調部15側からのみ給気される。即ち、送風機30は、空調部15側から空気を吸引し、試験室8側に吹き出す。
【0042】
例えば、送風機30から直接的に供試体に風を当てたい場合には、操作棒45を操作して、図5(a)の様に、風向変更部材33を後退させ、羽根部材31の大部分の周囲を筒部48で覆う。その結果、羽根部材31が起こす、外側に向かうベクトルを有する送風が、風向変更部材33の内壁に衝突して周方向への拡散が阻まれて方向を変え、風向変更部材33の内壁に沿って流れ、風向変更部材33の先端の吹き出し側開口55から試験室8に吹き出される。
そのため、羽根部材31によって起こされた全ての送風が、風向変更部材33の吹き出し側開口55から試験室8に吹き出されて、例えば供試体に直接当てられる。
【0043】
逆に、供試体の周囲を温度等が調節された空気で覆いたい場合は、図5(b)の様に、風向変更部材33の筒部48を前進させ、風向変更部材33から羽根部材31のモータ32側の一部を露出させる。
その結果、羽根部材31が起こす風の内、外側に向かうベクトルを有する送風が、風向変更部材33の筒部48が存在しない部分から吹き出され、例えば仕切り壁11に沿って流れる。
一方、羽根部材31の風向変更部材33の筒部48で覆われている部分においては、前記した様に、送風は、風向変更部材33の内壁に衝突して周方向への拡散が阻まれて方向を変え、風向変更部材33の内壁に沿って流れ、風向変更部材33の先端の吹き出し側開口55から試験室8に吹き出される。
従って、風向変更部材33の位置を変更することにより、試験室8に向かって直進方向に送風される吹き出し風量と、拡散方向への風量の割合を、変更することができる。
【0044】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。以下の実施形態の内、前記した実施形態と同一の構成部材には、同一の番号を付することによって、重複した説明を省略する。
図6に示す環境試験装置50で採用する送風機60は、風向変更部材61が平行筒状であり、底部を持たない。
例えば、送風機60から直接的に供試体に風を当てたい場合には、操作棒45を操作して、図6(a)の様に、風向変更部材61を後退させ、風向変更部材61の吸い込み側開口56を仕切り壁11に押し当て、吸い込み側開口56を塞ぐ。
その結果、羽根部材31が起こす送風が、風向変更部材61の内壁に衝突して周方向への拡散が阻まれて方向を変え、風向変更部材61の内壁に沿って流れ、風向変更部材61の先端の吹き出し側開口55から試験室8に吹き出される。
【0045】
逆に、供試体の周囲を温度等が調節された空気で覆いたい場合は、前記した実施形態と同様、図6(b)の様に、風向変更部材61を前進させ、風向変更部材61を仕切り壁11から離して、羽根部材31のモータ32側の一部を露出させる。
その結果、羽根部材31が起こす風の内、外側に向かうベクトルを有する送風が、風向変更部材61が存在しない部分から吹き出され、例えば仕切り壁11に沿って流れる。
一方、羽根部材31の風向変更部材61で覆われている部分においては、送風は、風向変更部材61の先端の吹き出し側開口55から試験室8に吹き出される。
【0046】
図7は、風向変更部材58の形状をテーパー状とし、開口径が全体的に変化するものとした例を示すものである。
【0047】
図8は、風向変更部材65の周部に開口62を設け、当該開口62の開口面積を変化させることによって、試験室8に向かって直進方向に送風される吹き出し風量と、拡散方向への風量の割合を、変更する構成を例示するものである。
即ち、図8に示す環境試験装置66で採用する送風機67は、風向変更部材65の周部に開口62が設けられている。そして、当該開口62部分に封鎖部材78があり、開口面積を増減することができる。
開口62が開いている状態においては、羽根部材31の一部又は全部が風向変更部材65の周側から目視できる。即ち、通風可能な状態となる。
開口62の開口面積が小さい場合には、拡散方向に吹き出される送風量が少なく、開口面積が大きい場合には、拡散方向に吹き出される送風量が多くなる。
【0048】
図9は、開口面積を変更することができる風向変更部材の一例を示すものである。
図9に示す風向変更部材70は、固定側筒71と可動側筒72によって構成されている。
固定側筒71の側面には、四角形の開口73が設けられている。
可動側筒72の側面には、四角形の開口75が設けられている。
【0049】
風向変更部材70は、固定側筒71の外側に、可動側筒72が回転可能に装着されたものである。
可動側筒72は、固定側筒71に対して回転可能である。
そして図9(b)の様に、可動側筒72の側面の開口75の位置と固定側筒71の側面の開口73の位置を一致させない場合、固定側筒71の側面の開口73は閉じられた状態となる。
【0050】
一方、図9(c)の様に、可動側筒72が他の一定の回転姿勢のとき、可動側筒72の側面の開口75の位置と、固定側筒71の側面の開口73の位置が、合致する。その結果、固定側筒71の側面の開口73が開かれた状態となり、風向変更部材70の内外が連通する。
そして、可動側筒72の回転姿勢によって、開口73の開口割合を変更することができる。
【0051】
図10に示す環境試験装置80は、風向変更部材65の周部に開口62を設け、当該開口62にダンパ81を設けたものである。図10に示す環境試験装置80では、ダンパ81の開口面積を変化させることによって、試験室8に向かって直進方向に送風される吹き出し風量と拡散方向への吹き出し風量の割合を、変更することができる。
【0052】
以上説明した実施形態では、前記した様に、仕切り壁11の上下の辺部の近傍に吸気開口16、17を設け、二つの冷却器25a、25bを、吸気開口16、17と送風機30の間に配置したが、仕切り壁11の左右の辺部の近傍にそれぞれ吸気開口を設け、二つの冷却器25a、25bを、各吸気開口と送風機30の間に配置してもよい。
さらに、仕切り壁11の上下の辺部の近傍と左右の辺部の近傍に、それぞれ吸気開口を設け、送風機30の吸気側の周囲に冷却器を環状に配置してもよい。
【0053】
吸気開口の形状は任意であり、多数の小孔によって構成されていてもよい。また、フィルター等が装着されていてもよい。
【0054】
以上説明した実施形態では、加熱ヒータ26を、送風機30を取り巻く位置に設置したが、冷却器25a、25bと同様に、複数に分割して、吸気開口16、17等と送風機30の間に設けてもよい。
【0055】
送風機30は、試験室8の中心に向かって送風できる位置にあることが推奨されるが、送風機30の位置は限定されず、他の位置であってもよい。
【0056】
上記した実施形態では、仕切り壁11に送風機30を一台だけ設置したが、送風機30を複数台設置してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,50、66、80 環境試験装置
6 扉
8 試験室
22 空調機器(空調手段)
30、60、67 送風機
31 羽根部材
32 モータ
33、58、61、65、70 風向変更部材
35 封止板
36 翼片部材
38 底部
40 回転軸
45 操作棒
48 筒部
62 開口
73 開口
75 開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10