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特許7450442燃料電池の排熱利用システム及び燃料電池システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】燃料電池の排熱利用システム及び燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   F24D 15/00 20220101AFI20240308BHJP
   F24D 18/00 20220101ALI20240308BHJP
   F24D 3/00 20220101ALI20240308BHJP
【FI】
F24D15/00 B
F24D18/00
F24D3/00 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020065155
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021162249
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中島 匠
(72)【発明者】
【氏名】今西 望
(72)【発明者】
【氏名】桑原 愛
(72)【発明者】
【氏名】北西 博
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-116230(JP,A)
【文献】特開2019-066138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00-15/493
F24D 1/00-19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排熱を発生する燃料電池と、
前記燃料電池の排熱を温水として貯える貯湯タンクと、
前記貯湯タンクの温水の熱を利用可能な浴室暖房乾燥機と、
前記貯湯タンク内の温水が循環する貯湯水循環流路と、
前記浴室暖房乾燥機を通して温水が循環する暖房温水循環流路と、
前記貯湯水循環流路を流れる温水と前記暖房温水循環流路を流れる温水との間で熱交換を行う第1熱交換器と、
前記貯湯水循環流路を流れる温水を加熱する補助熱源機と、
前記貯湯水循環流路及び前記暖房温水循環流路の温水の流れと、前記浴室暖房乾燥機の動作と、前記補助熱源機の動作と、を制御する制御部と、を備え、
前記浴室暖房乾燥機は、前記暖房温水循環流路に循環する温水との間で熱交換を行う第2熱交換器と、前記第2熱交換器によって加熱可能な空気を吸引し浴室内に循環させる循環ファンと、を備え、前記循環ファンを駆動させて浴室に加熱された空気又は未加熱の空気を放出する低温乾燥モード及び高温乾燥モードの実行が可能であり、
前記制御部は、
前記低温乾燥モードを実行する場合、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量以上であると、前記補助熱源機を利用せず、前記貯湯水循環流路及び前記暖房温水循環流路における温水の循環を許容する排熱運転を実行し、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量未満であると、前記暖房温水循環流路における温水の循環を停止する涼風運転を実行し、
前記高温乾燥モードを実行する場合、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量以上であると、前記排熱運転を実行し、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量未満であると、前記補助熱源機を駆動して当該補助熱源機によって加熱された温水を前記貯湯水循環流路に供給する補助熱源運転を実行する、燃料電池の排熱利用システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記低温乾燥モードの実行に際し、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量以上であると、前記排熱運転を実行し、前記排熱運転の実行中に、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量未満になると、前記涼風運転を実行する、請求項1に記載の燃料電池の排熱利用システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記低温乾燥モードの実行に際し、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量未満であると、前記涼風運転を実行し、前記涼風運転の実行中に、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量以上になると、前記排熱運転を実行する、請求項1に記載の燃料電池の排熱利用システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記低温乾燥モードにおいて、前記排熱運転の実行中に、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量未満になると、前記排熱運転に代えて前記涼風運転を実行し、前記涼風運転の実行中に、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量以上になると、前記涼風運転に代えて前記排熱運転を実行する、請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料電池の排熱利用システム。
【請求項5】
浴室暖房乾燥機と接続された燃料電池システムであって、
排熱を発生する燃料電池と、
前記燃料電池の排熱を温水として貯える貯湯タンクと、
前記貯湯タンク内の温水が循環する貯湯水循環流路と、
前記貯湯水循環流路を流れる温水と、前記貯湯タンクの温水の熱を利用可能な前記浴室暖房乾燥機を通して温水が循環する暖房温水循環流路を流れる温水との間で熱交換を行う第1熱交換器と、
前記貯湯水循環流路を流れる温水を加熱する補助熱源機と、
前記貯湯水循環流路及び前記暖房温水循環流路の温水の流れと、前記浴室暖房乾燥機の動作と、前記補助熱源機の動作と、を制御する制御部と、を備え、
前記浴室暖房乾燥機は、前記暖房温水循環流路に循環する温水との間で熱交換を行う第2熱交換器と、前記第2熱交換器によって加熱可能な空気を吸引し浴室内に循環させる循環ファンと、を備え、前記循環ファンを駆動させて浴室に加熱された空気又は未加熱の空気を放出する低温乾燥モード及び高温乾燥モードの実行が可能であり、
前記制御部は、
前記低温乾燥モードを実行する場合、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量以上であると、前記補助熱源機を利用せず、前記貯湯水循環流路及び前記暖房温水循環流路における温水の循環を許容する排熱運転を実行し、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量未満であると、前記暖房温水循環流路における温水の循環を停止する涼風運転を実行し、
前記高温乾燥モードを実行する場合、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量以上であると、前記排熱運転を実行し、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量未満であると、前記補助熱源機を駆動して当該補助熱源機によって加熱された温水を前記貯湯水循環流路に供給する補助熱源運転を実行する、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の排熱を利用する燃料電池の排熱利用システム及び燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題、エネルギー効率などの観点から、家庭用燃料電池として燃料電池反応の作動温度が低い固体高分子形燃料電池(PEFC)が用いられることがある。このような燃料電池を利用した排熱利用システムは、電気と熱を発生する固体高分子形燃料電池と、排熱を温水として貯える貯湯タンクと、燃料電池を通して冷却水を循環する冷却水循環流路と、貯湯タンク内の水を循環させる貯湯水循環流路と、冷却水循環流路を流れる冷却水と貯湯水循環流路を流れる水との間で熱交換する熱交換器とを備えている(例えば、特許文献1)。こうした排熱利用システムでは、固体高分子形燃料電池の排熱が冷却水循環流路を流れる冷却水を介して貯湯タンクに伝達され、この貯湯タンクに温水として貯えられる。ここで、固体高分子形燃料電池の排熱を利用することにより、貯湯タンク内に貯えられる温水の温度は40℃程度である。
【0003】
特許文献1に示される排熱利用システムでは、燃料電池の排熱を床暖房及びデシカント空調機の加温に利用している。また、特許文献2に示されるコージェネレーションシステムでは、発電ユニットの燃料電池の排熱利用先(床暖房、浴室暖房乾燥機、浴槽、洗濯機等)の順位を予め定めて排熱を利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-265293号公報
【文献】特開2015-209991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の排熱利用システムでは、補助熱源として太陽熱集熱装置を備えており、貯湯タンクの蓄えられる熱量が排熱利用先に対して十分でないときには、太陽熱集熱装置によって貯湯タンクの湯水が加熱される。また、特許文献2のコージェネレーションシステムでは、補助熱源を備えており、貯湯タンクの蓄えられる熱量が排熱利用先に対して十分でないときには、補助熱源が燃焼運転をして貯湯タンクの湯水が加熱される。排熱利用先のうち、床暖房は必要な温水の温度が比較的低い(例えば40℃)ので、補助熱源を利用せずに燃料電池の排熱のみで対応することができる。一方、浴室暖房乾燥機は、床暖房に比べて高温の温水(例えば80℃)を必要とするため、例えば燃料電池として固体高分子形燃料電池を用いてその排熱を使用した場合には温水の温度が十分でない可能性が高い。そのため、浴室暖房乾燥機を使用するうえで、燃料電池の排熱を有効活用できず、改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、本発明では、燃料電池の排熱を浴室暖房乾燥機に有効活用できる燃料電池の排熱利用システム及び燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る燃料電池の排熱利用システムの特徴構成は、
排熱を発生する燃料電池と、
前記燃料電池の排熱を温水として貯える貯湯タンクと、
前記貯湯タンクの温水の熱を利用可能な浴室暖房乾燥機と、
前記貯湯タンク内の温水が循環する貯湯水循環流路と、
前記浴室暖房乾燥機を通して温水が循環する暖房温水循環流路と、
前記貯湯水循環流路を流れる温水と前記暖房温水循環流路を流れる温水との間で熱交換を行う第1熱交換器と、
前記貯湯水循環流路を流れる温水を加熱する補助熱源機と、
前記貯湯水循環流路及び前記暖房温水循環流路の温水の流れと、前記浴室暖房乾燥機の動作と、前記補助熱源機の動作と、を制御する制御部と、を備え、
前記浴室暖房乾燥機は、前記暖房温水循環流路に循環する温水との間で熱交換を行う第2熱交換器と、前記第2熱交換器によって加熱可能な空気を吸引し浴室内に循環させる循環ファンと、を備え、前記循環ファンを駆動させて浴室に加熱された空気又は未加熱の空気を放出する低温乾燥モード及び高温乾燥モードの実行が可能であり、
前記制御部は、
前記低温乾燥モードを実行する場合、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量以上であると、前記補助熱源機を利用せず、前記貯湯水循環流路及び前記暖房温水循環流路における温水の循環を許容する排熱運転を実行し、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量未満であると、前記暖房温水循環流路における温水の循環を停止する涼風運転を実行し、
前記高温乾燥モードを実行する場合、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量以上であると、前記排熱運転を実行し、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量未満であると、前記補助熱源機を駆動して当該補助熱源機によって加熱された温水を前記貯湯水循環流路に供給する補助熱源運転を実行する点にある。
【0008】
本特徴構成によれば、燃料電池の排熱利用システムは、低温乾燥モードを実行する場合、貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量以上であると、排熱運転を実行し、貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量未満であると、涼風運転を実行する。したがって、補助熱源機は利用することなく、燃料電池の排熱を利用して低温乾燥モードの運転を行うことができる。その結果、燃料電池の排熱利用システムにおいて、燃料電池の排熱を有効活用することができる。また、燃料電池の排熱利用システムは、高温乾燥モードを実行する場合、貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量以上であると、排熱運転を実行し、貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量未満であると、補助熱源機を駆動して当該補助熱源機によって加熱された温水を貯湯水循環流路に供給する補助熱源運転を実行する。
浴室暖房乾燥機を用いた浴室乾燥において、排熱運転と涼風運転とを併用した場合、涼風運転中は加熱空気が浴室に供給されない。したがって、涼風運転の時間が長くなるにつれて浴室乾燥が完了するまでの時間が長くなる。そこで。本特徴構成では、補助熱源機を用いた補助熱源運転の実行が可能に構成されている。これにより、必要に応じて涼風運転に代えて補助熱源運転を実行することで、浴室乾燥を早期に完了させることができる。
【0009】
このように、本構成の燃料電池の排熱利用システムは、燃料電池の排熱をそのまま浴室暖房乾燥機に用いることができる。例えば、燃料電池として用いられる固体高分子形燃料電池は燃料電池反応の作動温度が低く、その排熱を利用しても水を40℃程度までしか加温することができないが、浴室暖房乾燥機に適用して有効活用することができる。したがって、燃料電池として固体高分子形燃料電池を用いたときにおいても、浴室暖房乾燥機の使用によってエネルギー利用率を高めることができる。
【0010】
本発明に係る燃料電池の排熱利用システムの更なる特徴構成は、
前記制御部は、前記低温乾燥モードの実行に際し、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量以上であると、前記排熱運転を実行し、前記排熱運転の実行中に、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量未満になると、前記涼風運転を実行する点にある。
【0011】
本特徴構成によれば、燃料電池の排熱利用システムは、浴室暖房乾燥機を用いて低温乾燥モードを実行する際に、貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量以上であると排熱運転を実行し、排熱運転の実行中に、貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量未満になると、涼風運転を実行する。したがって、補助熱源機は利用することなく、燃料電池の排熱を利用して低温乾燥モードの運転を行うことができる。その結果、排熱利用システムにおいて、燃料電池の排熱を有効活用することができる。
【0012】
本発明に係る燃料電池の排熱利用システムの更なる特徴構成は、
前記制御部は、前記低温乾燥モードの実行に際し、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量未満であると、前記涼風運転を実行し、前記涼風運転の実行中に、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量以上になると、前記排熱運転を実行する点にある。
【0013】
本特徴構成によれば、燃料電池の排熱利用システムは、浴室暖房乾燥機を用いて低温乾燥モードを実行する際に、貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量未満であると涼風運転を実行し、涼風運転の実行中に、貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量以上になると、排熱運転を実行する。したがって、補助熱源機は利用することなく、燃料電池の排熱を利用して低温乾燥モードの運転を行うことができる。その結果、排熱利用システムにおいて、燃料電池の排熱を有効活用することができる。
【0014】
本発明に係る燃料電池の排熱利用システムの更なる特徴構成は、前記制御部は、前記低温乾燥モードにおいて、前記排熱運転の実行中に、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量未満になると、前記排熱運転に代えて前記涼風運転を実行し、前記涼風運転の実行中に、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量以上になると、前記涼風運転に代えて前記排熱運転を実行する点にある。
【0015】
本特徴構成によれば、排熱運転の実行中に、貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量未満になることで涼風運転に移行した後であっても、貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量以上になることで再び排熱運転の実行が可能になる。これにより、排熱利用システムは、浴室暖房乾燥機の低温乾燥モードの実行時に、燃料電池の排熱を有効活用することができる。
【0018】
本発明に係る燃料電池システムの特徴構成は、
浴室暖房乾燥機と接続された燃料電池システムであって、
排熱を発生する燃料電池と、
前記燃料電池の排熱を温水として貯える貯湯タンクと、
前記貯湯タンク内の温水が循環する貯湯水循環流路と、
前記貯湯水循環流路を流れる温水と、前記貯湯タンクの温水の熱を利用可能な前記浴室暖房乾燥機を通して温水が循環する暖房温水循環流路を流れる温水との間で熱交換を行う第1熱交換器と、
前記貯湯水循環流路を流れる温水を加熱する補助熱源機と、
前記貯湯水循環流路及び前記暖房温水循環流路の温水の流れと、前記浴室暖房乾燥機の動作と、前記補助熱源機の動作と、を制御する制御部と、を備え、
前記浴室暖房乾燥機は、前記暖房温水循環流路に循環する温水との間で熱交換を行う第2熱交換器と、前記第2熱交換器によって加熱可能な空気を吸引し浴室内に循環させる循環ファンと、を備え、前記循環ファンを駆動させて浴室に加熱された空気又は未加熱の空気を放出する低温乾燥モード及び高温乾燥モードの実行が可能であり、
前記制御部は、
前記低温乾燥モードを実行する場合、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量以上であると、前記補助熱源機を利用せず、前記貯湯水循環流路及び前記暖房温水循環流路における温水の循環を許容する排熱運転を実行し、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量未満であると、前記暖房温水循環流路における温水の循環を停止する涼風運転を実行し、
前記高温乾燥モードを実行する場合、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量以上であると、前記排熱運転を実行し、前記貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量未満であると、前記補助熱源機を駆動して当該補助熱源機によって加熱された温水を前記貯湯水循環流路に供給する補助熱源運転を実行する点にある。
【0019】
本特徴構成によれば、燃料電池システムは、低温乾燥モードを実行する場合、貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量以上であると、排熱運転を実行し、貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量未満であると、涼風運転を実行する。したがって、補助熱源機は利用することなく、燃料電池の排熱を利用して低温乾燥モードの運転を行うことができる。その結果、燃料電池システムにおいて、燃料電池の排熱を有効活用することができる。また、燃料電池システムは、高温乾燥モードを実行する場合、貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量以上であると、排熱運転を実行し、貯湯タンクに貯められた熱量が所定熱量未満であると、補助熱源機を駆動して当該補助熱源機によって加熱された温水を貯湯水循環流路に供給する補助熱源運転を実行する。
浴室暖房乾燥機を用いた浴室乾燥において、排熱運転と涼風運転とを併用した場合、涼風運転中は加熱空気が浴室に供給されない。したがって、涼風運転の時間が長くなるにつれて浴室乾燥が完了するまでの時間が長くなる。そこで。本特徴構成では、補助熱源機を用いた補助熱源運転の実行が可能に構成されている。これにより、必要に応じて涼風運転に代えて補助熱源運転を実行することで、浴室乾燥を早期に完了させることができる。
【0020】
このように、本構成の燃料電池システムは、燃料電池の排熱をそのまま浴室暖房乾燥機に用いることができる。例えば、燃料電池として用いられる固体高分子形燃料電池は燃料電池反応の作動温度が低く、その排熱を利用しても水を40℃程度までしか加温することができないが、浴室暖房乾燥機に適用して有効活用することができる。したがって、燃料電池として固体高分子形燃料電池を用いたときにおいても、浴室暖房乾燥機の使用によってエネルギー利用率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態の排熱利用システムを簡略的に示すシステム図である。
図2】浴室暖房乾燥機の低温乾燥モードのフローチャートを示す図である。
図3】浴室暖房乾燥機の高温乾燥モードのフローチャートを示す図である。
図4】浴室暖房乾燥機の高温乾燥モードの変形例のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明に係る燃料電池の排熱利用システム及び燃料電池システムについて説明する。
【0023】
図1において、燃料電池の排熱利用システム100及び燃料電池システムは、燃料電池(例えば、固体高分子形燃料電池)2と、温水を貯湯するための貯湯タンク4と、を備え、予備的に、補助熱源を利用して水(又は温水)を加温するための補助熱源機6を備えている。燃料電池2は燃料電池反応によって発生する熱により熱回収低温配管24を流れる水を加温し、補助熱源機6は燃焼運転によって貯湯水循環流路12の水を加温する。暖房温水循環流路31を流れる水は、暖房熱交換器13によって加温される。燃料電池2の排熱により加温された温水が貯湯タンク4に貯えられる。また、この実施形態では、燃料電池2の排熱及び/又は補助熱源機6の燃焼熱が熱消費機器としての浴室暖房乾燥機8で消費されるように構成されている。
【0024】
燃料電池2の近くには、貯湯タンク4の下部から取り出した水を、燃料電池2の排熱を回収して昇温した後、貯湯タンク4の上部に戻す排熱回収ユニット20が設けられている。
【0025】
排熱回収ユニット20は、燃料電池2の排熱を回収するための排熱回収用熱交換器21と、排熱回収用循環ポンプ22を備えている。排熱回収ユニット20の入側と貯湯タンク4の下部取水口14との間は熱回収低温配管24で接続され、排熱回収ユニット20の出側と貯湯タンク4の上部戻り口15との間は熱回収高温配管25で接続されている。熱回収低温配管24及び熱回収高温配管25は循環路として構成されている。また、熱回収低温配管24及び熱回収高温配管25を流れる水は燃料電池2の冷却水として機能する。
【0026】
貯湯タンク4には、貯湯水循環流路12が接続されている。貯湯水循環流路12には、補助熱源機6、暖房熱交換器13(第1熱交換器の一例)、開閉弁16、及び循環用ポンプ17が配置されている。補助熱源機6は、貯湯タンク4の水又は図示しない給水路の水を加熱して貯湯水循環流路12を介して暖房熱交換器13に向けて供給する。暖房熱交換器13は、貯湯タンク4の温水または補助熱源機6によって加熱された温水の熱を、暖房温水循環流路31を流れる水に伝達するために用いられる。貯湯水循環流路12の温水は循環用ポンプ17によって暖房熱交換器13に供給される。貯湯タンク4内はサーミスタ(不図示)を有し、サーミスタによって検出された貯湯タンク4内の湯水の温度が、サーミスタから制御部60に出力される。
【0027】
貯湯水循環流路12を流れる温水の熱は、浴室暖房乾燥機8にて消費されるように構成されている。浴室暖房乾燥機8には、暖房温水循環流路31の一部、熱交換器32(第2熱交換器の一例)、及び循環ファン33が収容されている。暖房温水循環流路31には、熱交換器32(第2熱交換器の一例)、熱動弁34、及び循環用ポンプ35が配置されている。暖房温水循環流路31は、暖房熱交換器13によって加温された温水を熱交換器32に供給するために用いられる。暖房熱交換器13において貯湯水循環流路12を流れる温水と暖房温水循環流路31を流れる水との間で熱交換が行われる。この熱交換によって、暖房温水循環流路31の水が加温され、浴室暖房乾燥機8に配置される熱交換器32によって浴室暖房乾燥機8の内部の空気の加熱が可能になる。循環ファン33は、熱交換器32によって加熱可能な空気を浴室内等から吸引し浴室内に循環させるためのものである。熱交換器32によって加熱された空気は、循環ファン33の駆動により浴室内に循環させることができる。熱動弁34は、熱動素子(ペレット)を用いて開閉させるバルブであって、開操作されることで暖房温水循環流路31の水の循環を許容する。熱動弁34の開閉動作は制御部60によって制御される。
【0028】
排熱利用システム100は、燃料電池2と、貯湯タンク4と、浴室暖房乾燥機8と、貯湯水循環流路12と、暖房温水循環流路31と、暖房熱交換器13と、システムを制御するための制御部60と、を備えて構成されている。燃料電池システムは、燃料電池2と、貯湯タンク4と、貯湯水循環流路12と、暖房熱交換器13と、制御部60と、を備えて構成されている。
【0029】
本実施形態では、制御部60は、浴室乾燥モードとして、低温乾燥モード及び高温乾燥モードの実行が可能に構成されている。また、制御部60は、燃料電池2、補助熱源機6、及び浴室暖房乾燥機8の動作と、排熱回収用循環ポンプ22、貯湯水循環流路12、及び暖房温水循環流路31の水の流れ等を制御する。尚、浴室暖房乾燥機8は、例えば専用のリモコン(図示せず)によって作動制御される。
【0030】
低温乾燥モードは、燃料電池2の排熱を利用した排熱運転と、燃料電池2の排熱及び補助熱源機6の何れも利用しない涼風運転とを併用して浴室乾燥を行う運転モードである。一方、高温乾燥モードは、燃料電池2の排熱を利用した排熱運転と、補助熱源機6を利用する補助熱源運転とを併用して浴室乾燥を行う運転モードである。上述した燃料電池2の排熱利用システム100の各種運転モードにおける運転状態について説明する。制御部60において低温乾燥モードが実行されたときには、図2に示すフローチャートに基づく制御が行われる。
【0031】
〔低温乾燥モード〕
低温乾燥モードでは、ステップ#11において、浴室暖房乾燥機8が始動する。具体的には、循環ファン33が駆動される。ステップ#12において、貯湯タンク4内の熱量が所定熱量以上(所定温度以上且つ所定水量以上)であるか否かを判断される。貯湯タンク4内の湯水の温度は、貯湯タンク4内に配置されたサーミスタ(不図示)から制御部60に出力される。したがって、制御部60は、貯湯タンク4内の湯水の温度と湯水量に基づいて貯湯タンク4内の熱量が所定熱量以上(所定温度以上且つ所定水量以上)であるか否かを判断することができる。貯湯タンク4内の熱量が所定熱量以上と判断すると(ステップ#12、YES)、ステップ#13において排熱運転を実行する。具体的には、開閉弁16を開にしつつ循環用ポンプ17を作動して貯湯水循環流路12の温水の循環を許容するとともに、熱動弁34を開にしつつ循環用ポンプ35を作動して暖房温水循環流路31の温水の循環を許容する。これにより、暖房熱交換器13において、貯湯タンク4内の湯水の熱が暖房温水循環流路31の水に伝達され、浴室暖房乾燥機8の内部の空気が熱交換器32によって加熱される。その結果、浴室暖房乾燥機8は、加熱された空気を循環ファン33の作動によって浴室内に循環させることができる。
【0032】
一方、貯湯タンク4内の熱量が所定熱量未満と判断すると(ステップ#12、NO)、ステップ#14において涼風運転を実行する。具体的には、開閉弁16を閉にしつつ循環用ポンプ17を停止して貯湯水循環流路12の温水の循環が停止するとともに、熱動弁34を閉にしつつ循環用ポンプ35を停止して暖房温水循環流路31の温水の循環を停止する。これにより、浴室暖房乾燥機8は、未加熱の空気(涼風)を循環ファン33の作動によって浴室内に循環させることができる。
【0033】
排熱運転中に、ステップ#15において浴室暖房乾燥機8の動作が確認されて停止でない場合(動作中)であると(ステップ#15、NO)、ステップ#12に戻って、貯湯タンク4内の熱量が所定熱量以上であるか否かが再度確認される。排熱運転中に、貯湯タンク4内の熱量が所定熱量未満(ステップ#12、NO)になると、排熱運転に代えて涼風運転(ステップ#14)を実行する。
【0034】
一方、涼風運転中に、ステップ#15において浴室暖房乾燥機8の動作が確認されて停止でない場合(動作中)であると(ステップ#15、NO)、ステップ#12に戻って、貯湯タンク4内の熱量が所定熱量以上であるか否かが再度確認される。涼風運転中に、貯湯タンク4内の熱量が所定熱量以上(ステップ#12、YES)になると、涼風運転に代えて排熱運転(ステップ#13)を実行し、貯湯タンク4内の熱量が所定熱量未満(ステップ#12、NO)であれば涼風運転を継続する(ステップ#14)。排熱運転中及び涼風運転中のいずれにおいても、ステップ#15において浴室暖房乾燥機8の停止が確認されると(ステップ#15、YES)、低温乾燥モードが終了する。
【0035】
制御部60において高温乾燥モードを設定されたときには、図3に示すフローチャートに基づく制御が行われる。
【0036】
〔高温乾燥モード〕
高温乾燥モードでは、ステップ#21において、浴室暖房乾燥機8が始動する。具体的には、循環ファン33が駆動される。ステップ#22において、貯湯タンク4内の熱量が所定熱量以上であるか否かを判断される。貯湯タンク4内の熱量が所定熱量以上と判断すると(ステップ#22、YES)、ステップ#23において排熱運転を実行する。
【0037】
一方、貯湯タンク4内の熱量が所定熱量未満と判断すると(ステップ#22、NO)、ステップ#23において補助熱源運転を実行する。具体的には、補助熱源機6が駆動され、開閉弁16を開にしつつ循環用ポンプ17を作動して補助熱源機6によって加熱された温水を貯湯水循環流路12に供給して循環を許容するとともに、熱動弁34を開にしつつ循環用ポンプ35を作動して、暖房温水循環流路31の温水の循環を許容する。これにより、暖房熱交換器13において、貯湯タンク4内の湯水の熱が暖房温水循環流路31の水に伝達され、浴室暖房乾燥機8の内部の空気が熱交換器32によって加熱される。その結果、浴室暖房乾燥機8は、加熱された空気を循環ファン33の作動によって浴室内に循環させることができる。
【0038】
排熱運転中に、ステップ#25において浴室暖房乾燥機8の動作が確認されて停止でない場合(動作中)であると(ステップ#25、NO)、ステップ#22に戻って、貯湯タンク4内の熱量が所定熱量以上であるか否かが再度確認される。排熱運転中に、貯湯タンク4内の熱量が所定熱量未満(ステップ#22、NO)になると、排熱運転に代えて補助熱源運転を実行する(ステップ#24)。排熱運転中に、ステップ#25において浴室暖房乾燥機8の停止が確認されると(ステップ#25、YES)、高温乾燥モードが終了する。
【0039】
補助熱源運転中に、ステップ#26において浴室暖房乾燥機8の動作が確認されて停止でない場合(動作中)であると(ステップ#26、NO)、補助熱源運転を継続する。ステップ#26において浴室暖房乾燥機8の停止が確認されると(ステップ#26、YES)、高温乾燥モードが終了する。
【0040】
〔高温乾燥モードの変形例〕
高温乾燥モードの変形例について、図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0041】
図3に示すフローチャートでは、補助熱源運転は、浴室暖房乾燥機8が停止されるまで継続する。これに代えて、図4に示すフローチャートでは、補助熱源運転中において、ステップ#25において浴室暖房乾燥機8の動作が確認されて停止でない場合(動作中)であると(ステップ#25、NO)、ステップ#22に戻って、貯湯タンク4内の熱量が所定熱量以上であるか否かが再度確認される。補助熱源運転中に、貯湯タンク4内の熱量が所定熱量以上(ステップ#22、YES)になると、補助熱源運転に代えて排熱運転(ステップ#13)を実行する。すなわち、補助熱源機6が停止する。排熱運転中及び補助熱源運転中のいずれにおいても、ステップ#25において浴室暖房乾燥機8の停止が確認されると(ステップ#15、YES)、高温乾燥モードが終了する。
【0042】
これにより、補助熱源機6を用いる高温乾燥モードにおいて、燃料電池2の排熱をより有効に活用することができる。
【0043】
上記の実施形態では、排熱利用システム100及び燃料電池システムの燃料電池2として固体高分子形燃料電池を用いる例を示したが、燃料電池2は固体高分子形燃料電池に限定されない。燃料電池2として例えば固体酸化物形燃料電池(SOFC)等の他の燃料電池を用いてもよい。
【0044】
上記の実施形態では、燃料電池2の排熱利用システム100が、熱消費機器として浴室暖房乾燥機8のみを備える例を示したが、熱消費機器に床暖房装置を追加してもよい。
【0045】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ) で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る燃料電池の排熱利用システム及び燃料電池システムは、浴室暖房乾燥機に燃料電池の排熱を用いるシステムにおいて広く利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
2 :燃料電池
4 :貯湯タンク
6 :補助熱源機
8 :浴室暖房乾燥機
12 :貯湯水循環流路
13 :暖房熱交換器(第1熱交換器)
14 :下部取水口
15 :上部戻り口
16 :開閉弁
20 :排熱回収ユニット
21 :排熱回収用熱交換器
22 :排熱回収用循環ポンプ
24 :熱回収低温配管
25 :熱回収高温配管
31 :暖房温水循環流路
32 :熱交換器(第2熱交換器)
33 :循環ファン
34 :熱動弁
60 :制御部
100 :排熱利用システム
図1
図2
図3
図4