(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】施工管理書類作成装置、施工管理書類作成方法、配管施工図作成装置及び配管施工図作成方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20240308BHJP
【FI】
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2020068780
(22)【出願日】2020-04-07
【審査請求日】2022-12-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年7月22日等 株式会社テクノワークにて、施工管理書類作成装置、施工管理書類作成方法、配管施工図作成装置及び配管施工図作成方法について説明
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【氏名又は名称】河崎 眞一
(72)【発明者】
【氏名】岸 正蔵
(72)【発明者】
【氏名】小丸 維斗
(72)【発明者】
【氏名】原田 和眞
(72)【発明者】
【氏名】山下 彰
【審査官】宮地 匡人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-078033(JP,A)
【文献】特開2018-014011(JP,A)
【文献】特開2008-080589(JP,A)
【文献】特開2009-243613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管布設工事の施工現場で収集した管の施工管理情報に基づいて施工管理書類を作成する施工管理書類作成装置であって、
配管設計情報に基づいて前記施工現場で採用した布設対象管毎に入力される管形状及び管の布設姿勢を含む管属性情報に関連付けてユニークな管番号とユニークな継手番号とを付与する処理を繰り返すことにより、前記管番号と前記継手番号によって布設対象管の接続関係を特定可能な管接続情報と、前記管属性情報によって布設対象管の種類及び布設姿勢を特定可能な管布設情報と、を
前記施工管理情報として生成する第1の入力処理部と、
前記継手番号で特定される管接合部
であって、前記配管設計情報に示された配管経路に沿う順ではなく接合が完了した任意の管接合部毎に入力される接合手順の確認済情報と接合状態評価情報とに基づいて
適切に接合されたことを示す接合状態管理情報を
前記施工管理情報として生成する第2の入力処理部と、
前記管接続情報と前記管布設情報と前記接合状態管理情報と
を含む前記施工管理情報に基づいて
前記施工管理書類を生成する書類生成処理部と、
を備えている施工管理書類作成装置。
【請求項2】
前記第1の入力処理部は、前記管属性情報として選択可能な複数の選択肢をリスト表示するリスト表示処理部、前記布設対象管に対応して準備されたコード情報を読み取って前記管属性情報を特定するコード情報読取処理部、前記布設対象管の撮影画像から対応する管属性情報を特定する画像認識処理部、または前記配管設計情報に付されたコード情報に基づいて前記管属性情報を取得する設計情報取得処理部の何れかまたは複数を備えている請求項1記載の施工管理書類作成装置。
【請求項3】
前記接合状態評価情報は、治具を用いて管の周方向に沿って複数個所で測定され管の受口端部から前記接合部に内装されるシール用のゴム輪位置までの引退距離を含み、前記第2の入力処理部は複数個所で測定された前記引退距離が全て許容範囲であるか否かを評価して結果を表示する接合状態評価処理部を備えている請求項1または2記載の施工管理書類作成装置。
【請求項4】
前記接合状態評価情報は、治具を用いて管の周方向に沿って複数個所で測定され管の受口端部から挿口側の管の周囲に付されたマーカー線までの突出距離を含み、前記第2の入力処理部は複数個所で測定された前記突出距離に基づいて前記接合部における管の曲げ角度が許容範囲であるか否かを評価して結果を表示する接合姿勢評価処理部を備えている請求項1から3の何れかに記載の施工管理書類作成装置。
【請求項5】
前記接合姿勢評価処理部は、前記配管設計情報で規定される各接合部における管の曲げ角度情報に基づいて対応する継手番号毎に前記曲げ角度の許容範囲を設定し、既入力の複数の接合部における管の曲げ角度の累積値に基づいて未入力の接合部における管の曲げ角度の許容範囲を動的に変更設定する許容範囲設定処理部を備えている請求項4記載の施工管理書類作成装置。
【請求項6】
前記第1の入力処理部と前記第2の入力処理部は、施工現場で作業者により操作される携帯型情報端末で構成され、前記書類生成処理部は、前記携帯型情報端末と通信回線を介して接続され、前記携帯型情報端末から送信された前記管接続情報と前記管布設情報と前記接合状態管理情報を記憶するデータベースを備えたサーバで構成されている請求項1から5の何れかに記載の施工管理書類作成装置。
【請求項7】
管布設工事の施工現場で収集した管の施工管理情報に基づいて施工管理書類を作成する情報処理装置により実行される施工管理書類作成方法であって、
配管設計情報に基づいて前記施工現場で採用した布設対象管毎に入力される管形状及び管の布設姿勢を含む管属性情報に関連付けてユニークな管番号とユニークな継手番号とを付与する処理を繰り返すことにより、前記管番号と前記継手番号によって布設対象管の接続関係を特定可能な管接続情報と、前記管属性情報によって布設対象管の種類及び布設姿勢を特定可能な管布設情報と、を
前記施工管理情報として生成する第1の入力処理と、
前記継手番号で特定される管接合部
であって、前記配管設計情報に示された配管経路に沿う順ではなく接合が完了した任意の管接合部毎に入力される接合手順の確認済情報と接合状態評価情報とに基づいて
適切に接合されたことを示す接合状態管理情報を
前記施工管理情報として生成する第2の入力処理と、
前記管接続情報と前記管布設情報と前記接合状態管理情報と
を含む前記施工管理情報に基づいて
前記施工管理書類を生成して記憶部に記憶する書類生成処理と、
を実行する施工管理書類作成方法。
【請求項8】
前記第1の入力処理は、前記管属性情報として選択可能な複数の選択肢をリスト表示するリスト表示処理、前記布設対象管に対応して準備されたコード情報を読み取って前記管属性情報を特定するコード情報読取処理、前記布設対象管の撮影画像から対応する管属性情報を特定する画像認識処理、または前記配管設計情報に付されたコード情報に基づいて前記管属性情報を取得する設計情報取得処理の何れかを実行する請求項7記載の施工管理書類作成方法。
【請求項9】
前記接合状態評価情報は、治具を用いて管の周方向に沿って複数個所で測定され管の受口端部から前記接合部に内装されるシール用のゴム輪位置までの引退距離を含み、前記第2の入力処
理は複数個所で測定された前記引退距離が全て許容範囲であるか否かを評価して結果を表示する接合状態評価処理を実行する請求項7または8記載の施工管理書類作成方法。
【請求項10】
前記接合状態評価情報は、治具を用いて管の周方向に沿って複数個所で測定され管の受口端部から挿口側の管の周囲に付されたマーカー線までの突出距離を含み、前記第2の入力処
理は複数個所で測定された前記突出距離に基づいて前記接合部における管の曲げ角度が許容範囲であるか否かを評価して結果を表示する接合姿勢評価処理を実行する請求項7から9の何れかに記載の施工管理書類作成方法。
【請求項11】
管布設工事の施工現場で収集した管の施工管理情報に基づいて配管施工図を作成する配管施工図作成装置であって、
請求項1から6の何れかに記載の施工管理書類作成装置に加えて、
前記管接続情報と前記管布設情報と前記接合状態管理情報と
を含む前記施工管理情報に基づいて各布設対象管の平面視での相対的接続関係を表す配管施工図を生成して記憶部に記憶する配管施工図生成部と、
前記配管施工図生成部で生成された配管施工図を表示処理する配管施工図表示処理部と、
を備えている配管施工図作成装置。
【請求項12】
管布設工事の施工現場で収集した管の施工管理情報に基づいて配管施工図を作成する配管施工図作成方法であって、
請求項7から10の何れかに記載の施工管理書類作成方法に加えて、
前記管接続情報と前記管布設情報と前記接合状態管理情報と
を含む前記施工管理情報に基づいて各布設対象管の平面視での相対的接続関係を表す配管施工図を生成して記憶部に記憶する配管施工図生成処理と、
前記配管施工図生成処理で生成された配管施工図を表示する配管施工図表示処理と、
を実行する配管施工図作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管布設工事の施工現場で収集した管の施工管理情報に基づいて施工管理書類を作成する施工管理書類作成装置、施工管理書類作成方法、配管施工図作成装置及び配管施工図作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上水道管路網等の配管布設工事の施工に付帯して、施工業者は当日の作業終了時に配管の使用材料や工事内容を特定する図面を工事日報に書き込み、工事の終了後に管路の埋設位置を表す竣工図や、竣工図よりも管路の正確な埋設位置を表すオフセット図を工事管理者に提出する必要がある。
【0003】
しかし、施工業者にとってこのような書類の作成作業は非常に煩雑であるため、正確な情報の記入が保証され難いという問題があった。例えば、工事に用いられる多品種の管材料や各管の埋設位置を手帳にメモしておき、後にそのメモを参照して上述の書類をまとめて作成する場合が多いのであるが、その際に転記ミスも多く、また、配管の埋設後に位置を計測するような場合も多いため、正確さに欠けるのである。
【0004】
また、管接合部(管継手部)の接合作業が適切に行なわれたか否かを工事の後に検証可能な形態で記録する手立てが求められていた。
【0005】
そこで、特許文献1には、このような煩雑さを軽減するために、施工現場に配置された管に貼付された管情報ラベルの撮影情報に基づいて管情報を取得する管情報取得装置と、施工現場の位置情報を取得するGPS受信装置と、配管の継手部の画像を取得する画像取得装置とを介して得られた管情報、位置情報、及び画像情報を送信装置により施工管理情報サーバにアップロードし、前記施工管理情報サーバから情報処理端末にダウンロードした管情報、位置情報、及び画像情報に基づいて、前記情報処理端末に備えたマッピング処理部で管理される地図上に竣工図を生成する管路竣工図作成方法が提案されている。
【0006】
当該管路竣工図作成方法によれば、作業者が管情報を手帳にメモしたり、測量装置で位置を測量したり、撮影作業を行なうような労力を伴わずに、管情報、位置情報、及び画像情報が施工現場で収集されて施工管理情報サーバにアップロードされるので正確な情報が確実に得られるようになる。そのような正確な情報に基づいて接合状態を適切に検証することが可能になるとともに工事日報を自動生成することが可能になり、施工管理情報サーバと接続すれば場所を問わずに情報処理端末上で正確な竣工図が生成できるようになる。
【0007】
特許文献2には、GPS位置情報システムを利用しなくても簡易的に配管施工図を自動生成できる配管施工図作成方法及び配管施工図作成装置が開示されている。
【0008】
当該配管施工図作成装置は、布設対象管に付加された管情報表示から管形状を特定可能な管情報を取得する管情報取得部と、前記管情報から得られた管形状に基づいて布設対象管の向き及び/または接合対象口の接合順を含む管布設情報を入力する管布設情報入力部と、前記情報処理装置により各布設対象管の接合関係情報を生成する接合関係情報生成部と、前記管形状と管布設情報と接合関係情報に基づいて、情報処理装置により各布設対象管の平面視での相対的接続関係を表す配管施工図を生成する配管施工図生成部と、前記配管施工図生成部で生成された配管施工図を表示する配管施工図表示部と、を含み、少なくとも施工現場で管接合処理が終了する度に、前記管情報取得部を介して前記管情報が取得され、前記管布設情報入力部を介して布設対象管の向き及び/または接合対象口の接合順を含む管布設情報が入力され、前記接合関係情報生成部を介して前記接合関係情報が生成されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2015-75927号公報
【文献】特開2018-14011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上述した従来の配管施工図作成装置では、施工現場で管接合処理が終了する度に、管情報取得部を介して管情報が取得され、管布設情報入力部を介して布設対象管の向き及び/または接合対象管の接合順を含む管布設情報が入力され、接合関係情報生成部を介して接合関係情報が生成されるように構成されているため、工事区間の一端側から他端側に向けて順番に管を布設する必要があった。
【0011】
そのため、布設工事の自由度が制限され、施工効率が低下するという課題があった。例えば、工事区間の両端側から同時に管の布設工事を行ない、或いは、工事区間の一端側から他端側に向けて布設工事を行なう際に、障害物等の影響で途中の区間を飛び越して布設工事を行なうような場合に、適切に接合関係情報が生成できないために配管施工図作成装置を柔軟に活用することができなかったのである。
【0012】
本発明の目的は、上述した従来技術に鑑み、管の布設工事の自由度を高めることができる施工管理書類作成装置、施工管理書類作成方法、配管施工図作成装置及び配管施工図作成方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため、本発明による施工管理書類作成装置の第一の特徴構成は、管布設工事の施工現場で収集した管の施工管理情報に基づいて施工管理書類を作成する施工管理書類作成装置であって、配管設計情報に基づいて前記施工現場で採用した布設対象管毎に入力される管形状及び管の布設姿勢を含む管属性情報に関連付けてユニークな管番号とユニークな継手番号とを付与する処理を繰り返すことにより、前記管番号と前記継手番号によって布設対象管の接続関係を特定可能な管接続情報と、前記管属性情報によって布設対象管の種類及び布設姿勢を特定可能な管布設情報と、を前記施工管理情報として生成する第1の入力処理部と、前記継手番号で特定される管接合部であって、前記配管設計情報に示された配管経路に沿う順ではなく接合が完了した任意の管接合部毎に入力される接合手順の確認済情報と接合状態評価情報とに基づいて適切に接合されたことを示す接合状態管理情報を前記施工管理情報として生成する第2の入力処理部と、前記管接続情報と前記管布設情報と前記接合状態管理情報とを含む前記施工管理情報に基づいて前記施工管理書類を生成する書類生成処理部と、を備えている点にある。
【0014】
例えば、作業者が作業現場において配管設計情報が記載された図面を参照して、布設に必要な管を選択し、選択した布設対象管毎に管形状及び管の布設姿勢を含む管属性情報を入力し、各布設対象管にユニークな管番号とユニークな継手番号を入力すると、第1の入力処理部は、管番号と継手番号によって布設対象管の接続関係が特定可能な管接続情報を生成し、管属性情報によって布設対象管の種類及び布設姿勢を特定可能な管布設情報を生成する。さらに、作業者が接合処理の対象となる管継手の継手番号を選択し、対応する管継手に対する接合作業が予め設定された接合手順に基づいて行ったか否かの確認済情報と、接合が適切に行われたか否かを評価するための接合状態評価情報を入力すると、第2の入力処理部は、当該継手番号の管継手に対して、確認済情報と接合状態評価情報とに基づいて接合状態管理情報を生成する。書類生成処理部は、第1の入力処理部で生成された管接続情報及び管布設情報と、第2の入力処理部で生成された接合状態管理情報とに基づいて施工管理書類を生成する。つまり、第1の入力処理部では管の布設工事の進捗の如何に無関係に管属性情報、管番号及び継手番号の入力が可能となり、第2の入力部では配管設計情報に示された配管経路に沿って順に管を接合しなくとも、接合作業が終了した任意の接合部に対して確認済情報と接合状態評価情報を入力することができるようになる。
【0015】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記第1の入力処理部は、前記管属性情報として選択可能な複数の選択肢をリスト表示するリスト表示処理部、前記布設対象管に対応して準備されたコード情報を読み取って前記管属性情報を特定するコード情報読取処理部、前記布設対象管の撮影画像から対応する管属性情報を特定する画像認識処理部、または前記配管設計情報に付されたコード情報に基づいて前記管属性情報を取得する設計情報取得処理部の何れかまたは複数を備えている点にある。
【0016】
第1の入力処理部にリスト表示処理部を備えていれば、リスト表示処理部に表示された管属性情報から該当する管属性情報を選択するだけで入力が完了する。第1の入力処理部にコード情報読取処理部を備えていれば、布設対象管に対応して準備されたコード情報を読み取ることにより、コード情報を介して管属性情報を取得して入力することができる。例えば、コード情報に関連付けた管属性情報を外部データベースから取り込めばよい。第1の入力処理部に画像認識処理部を備えていれば、布設対象管を撮影して得られる画像情報に基づいて管属性情報を取得することができる。例えば、画像処理により画像情報に含まれる布設対象管の管形状を抽出し、当該管形状に基づいて管属性情報を導き出すことができる。第1の入力処理部に設計情報取得処理部を備えていれば、配管設計情報に付された図面管理番号等のコード情報を介して管属性情報を取得して入力することができる。例えば、コード情報で特定される配管設計情報に含まれる管属性情報を外部データベースから取り込めばよい。
【0017】
同第三の特徴構成は、上述した第一または第二の特徴構成に加えて、前記接合状態評価情報は、治具を用いて管の周方向に沿って複数個所で測定され管の受口端部から前記接合部に内装されるシール用のゴム輪位置までの引退距離を含み、前記第2の入力処理部は複数個所で測定された前記引退距離が全て許容範囲であるか否かを評価して結果を表示する接合状態評価処理部を備えている点にある。
【0018】
第2の入力処理部に備えた接合状態評価処理部は、管の周方向に沿って複数個所で測定されたゴム輪までの引退距離が入力されると、その値が許容範囲に入っているか否かに基づいて、管接合部に配されるシールゴムが適切な位置に配されているか否かを評価する。
【0019】
同第四の特徴構成は、上述した第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記接合状態評価情報は、治具を用いて管の周方向に沿って複数個所で測定され管の受口端部から挿口側の管の周囲に付されたマーカー線までの突出距離を含み、前記第2の入力処理部は複数個所で測定された前記突出距離に基づいて前記接合部における管の曲げ角度が許容範囲であるか否かを評価して結果を表示する接合姿勢評価処理部を備えている点にある。
【0020】
第2の入力処理部に備えた接合状態評価処理部は、管の周方向に沿って複数個所で測定された受口端部からマーカー線までの突出距離が入力されると、その値に基づいて管の曲がりの程度を算出し、曲がりの程度が許容範囲に入っているか否かを評価する。
【0021】
同第五の特徴構成は、上述した第四の特徴構成に加えて、前記接合姿勢評価処理部は、前記配管設計情報で規定される各接合部における管の曲げ角度情報に基づいて対応する継手番号毎に前記曲げ角度の許容範囲を設定し、既入力の複数の接合部における管の曲げ角度の累積値に基づいて未入力の接合部における管の曲げ角度の許容範囲を動的に変更設定する許容範囲設定処理部を備えている点にある。
【0022】
継手部を構成する直管同士は継手部である程度の曲げが許容される。そこで、例えば道路に沿って小さな曲率で曲がるように管を布設する場合に、直管の接合部で僅かに曲がるように管を布設することで対応できる場合がある。そのような場合に、曲率に適合するように各継手部の曲げ角度の許容範囲を予め設定するのであるが、既に接合した複数の継手部の曲げ角度の累積誤差が大きくなる場合に、未接合の継手部の曲げ角度の許容範囲を変更することにより累積誤差を吸収することができる。そのような場合に、許容範囲設定処理部は管の曲げ角度の許容範囲を動的に変更設定する。
【0023】
同第六の特徴構成は、上述した第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記第1の入力処理部と前記第2の入力処理部は、施工現場で作業者により操作される携帯型情報端末で構成され、前記書類生成処理部は、前記携帯型情報端末と通信回線を介して接続され、前記携帯型情報端末から送信された前記管接続情報と前記管布設情報と前記接合状態管理情報を記憶するデータベースを備えたサーバで構成されている点にある。
【0024】
施工現場で作業者により操作される携帯型情報端末を介して入力された各種情報に基づいて管接続情報、管布設情報、接合状態管理情報といった施工管理情報が生成され、その施工管理情報がサーバに送信されてデータベースに格納される。
【0025】
本発明による施工管理書類作成方法の第一の特徴構成は、管布設工事の施工現場で収集した管の施工管理情報に基づいて施工管理書類を作成する情報処理装置により実行される施工管理書類作成方法であって、配管設計情報に基づいて前記施工現場で採用した布設対象管毎に入力される管形状及び管の布設姿勢を含む管属性情報に関連付けてユニークな管番号とユニークな継手番号とを付与する処理を繰り返すことにより、前記管番号と前記継手番号によって布設対象管の接続関係を特定可能な管接続情報と、前記管属性情報によって布設対象管の種類及び布設姿勢を特定可能な管布設情報と、を前記施工管理情報として生成する第1の入力処理と、前記継手番号で特定される管接合部であって、前記配管設計情報に示された配管経路に沿う順ではなく接合が完了した任意の管接合部毎に入力される接合手順の確認済情報と接合状態評価情報とに基づいて適切に接合されたことを示す接合状態管理情報を前記施工管理情報として生成する第2の入力処理と、前記管接続情報と前記管布設情報と前記接合状態管理情報とを含む前記施工管理情報に基づいて前記施工管理書類を生成して記憶部に記憶する書類生成処理と、を実行する点にある。
【0026】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記第1の入力処理は、前記管属性情報として選択可能な複数の選択肢をリスト表示するリスト表示処理、前記布設対象管に対応して準備されたコード情報を読み取って前記管属性情報を特定するコード情報読取処理、前記布設対象管の撮影画像から対応する管属性情報を特定する画像認識処理、または前記配管設計情報に付されたコード情報に基づいて前記管属性情報を取得する設計情報取得処理の何れかを実行する点にある。
【0027】
同第三の特徴構成は、上述した第一または第二の特徴構成に加えて、前記接合状態評価情報は、治具を用いて管の周方向に沿って複数個所で測定され管の受口端部から前記接合部に内装されるシール用のゴム輪位置までの引退距離を含み、前記第2の入力処理は複数個所で測定された前記引退距離が全て許容範囲であるか否かを評価して結果を表示する接合状態評価処理を実行する点にある。
【0028】
同第四の特徴構成は、上述した第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記接合状態評価情報は、治具を用いて管の周方向に沿って複数個所で測定され管の受口端部から挿口側の管の周囲に付されたマーカー線までの突出距離を含み、前記第2の入力処理は複数個所で測定された前記突出距離に基づいて前記接合部における管の曲げ角度が許容範囲であるか否かを評価して結果を表示する接合姿勢評価処理を実行する点にある。
【0029】
本発明による配管施工図作成装置の第一の特徴構成は、管布設工事の施工現場で収集した管の施工管理情報に基づいて配管施工図を作成する配管施工図作成装置であって、上述した第一から第六の何れかの特徴構成を備えた施工管理書類作成装置に加えて、前記管接続情報と前記管布設情報と前記接合状態管理情報とを含む前記施工管理情報に基づいて各布設対象管の平面視での相対的接続関係を表す配管施工図を生成して記憶部に記憶する配管施工図生成部と、前記配管施工図生成部で生成された配管施工図を表示処理する配管施工図表示処理部と、を備えている点にある。
【0030】
本発明による配管施工図作成方法の第一の特徴構成は、管布設工事の施工現場で収集した管の施工管理情報に基づいて配管施工図を作成する配管施工図作成方法であって、上述した第一から第四の何れかの特徴構成を備えた施工管理書類作成方法に加えて、前記管接続情報と前記管布設情報と前記接合状態管理情報とを含む前記施工管理情報に基づいて各布設対象管の平面視での相対的接続関係を表す配管施工図を生成して記憶部に記憶する配管施工図生成処理と、前記配管施工図生成処理で生成された配管施工図を表示する配管施工図表示処理と、を実行する点にある。
【発明の効果】
【0031】
以上説明した通り、本発明によれば、管の布設工事の自由度を高めることができる施工管理書類作成装置、施工管理書類作成方法、配管施工図作成装置及び配管施工図作成方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図5】情報処理端末で実行される配管施工図作成方法のフローチャート
【
図6】情報処理サーバで実行される配管施工図作成方法のフローチャート
【
図8】情報処理端末に表示される管番号及び継手番号の入力画面の説明図
【
図10】ゴム輪の引退距離を入力する接合部のチェック画面の説明図
【
図11】白線までの突出距離を入力する接合部のチェック画面の説明図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、ダクタイル鋳鉄管(以下、「鉄管」と記す。)を用いた上水道管に対する配管の接合作業を例に、管布設工事の施工現場で収集した管の施工管理情報に基づいて施工管理書類を作成する施工管理書類作成装置、施工管理書類作成方法、配管施工図作成装置及び配管施工図作成方法を説明する。
【0034】
[管布設工事の説明]
管布設工事は、地面を掘削して溝部を形成する掘削作業、当該溝部に管を布設して接合する接合作業、接合後に溝を埋め戻す埋め戻し作業等を含む工事である。
【0035】
図1には、所謂プッシュオンタイプの管継手構造を備えた直管の接合作業が示されている。一方の管2の受口2Aに他方の管3の挿口を預けて、受口2A近傍で受口側の管2にスリングベルトやチェーンで構成される接合器具200を巻き付けるとともに、挿口近傍で挿口側の管3に同じく接合器具201を巻き付け、管2,3の両側で接合器具間に夫々レバーホイスト202,203を装着して手動操作で巻き上げるという接合作業が行なわれる。
【0036】
布設対象管として直管以外の異形管では、一方の管の受口に他方の管の挿口を挿入した後に、押輪を用いて挿口と受口の隙間にシール部材を挿入するように、押輪と受口のフランジ部との間がT頭ボルト及びナットで締め付けられる。異形管には、曲り角度が90°,45°,22.5°,11.25°等の各曲管、乙字管、三受十字管や二受T字管等の分岐管が含まれる。
【0037】
図2(a)~(d)には、上述の接合作業によって接合された管2,3の継手部の断面が示されている。一方の管2の端部に形成された受口2Aの内部に他方の管3の端部に形成された挿口3Aが挿入されている。受口2Aの内周面と挿口3Aの外周面との間でシール用のゴム輪4が圧縮されるように介装され、ロックリング5aと挿口3Aに形成された突部3aが係合して抜止めされる。
図2(a)中、符号5bはロックリング心出し用部材である。
【0038】
ゴム輪4は、ヒール部4aとバルブ部4bを備えている。ゴム輪4は、管2,3が適正に接合された状態で、受口2A内周部に形成されたゴム輪収容凹部2Bにヒール部4aが嵌め込まれ、シール部材収容凹部2Bに連接されたシール部材圧縮凸部2Cと挿口側の管3の外周面との間でバルブ部4bが圧縮される。
【0039】
図2(c)には、ゴム輪4が適正な姿勢で管2,3が接合された状態が示され、
図2(d)には、ゴム輪4が不適正な姿勢で管2,3が接合され、バルブ部4bが管3によって奥側に引き込まれ、ヒール部4aがゴム輪収容凹部2Bから離脱した状態が示されている。管の接合作業で、
図2(d)に示すような不適切な状態になると、ゴム輪4によるシール機能が損なわれるため、再度接合作業を行なう必要がある。
【0040】
そこで、接合作業が終了すると、作業者が隙間ゲージGを管2,3の間に挿入して、ゴム輪4の位置までの引退距離、つまり隙間ゲージGが受口2Aの管端面からゴム輪4に当たる位置までの距離を、管の周方向に沿って等間隔(中心角で45度単位)に8か所で測定して、ゴム輪4が適正な姿勢であるか否かを確認している。
【0041】
なお、隙間ゲージGは、表面に引退距離を確認する目盛りを配した所定厚さの板状体が汎用されるが、管端面から隙間ゲージGの挿入深さを引退距離として測定し、近距離無線通信インタフェースを介してその結果を外部に無線送信するような電子隙間ゲージを用いることも可能である。
【0042】
図3(a),(b)には、受口2A及び挿口3Aの接合部の近傍で、挿口側の管3の周面に白線3Bがペイントされた様子が示されている。
図3(a)は略直線状に接合された状態、
図3(b)は僅かに曲がって接合された状態である受口側の管2の直線状の管端部から白線3Bのまでの突出距離を、管の周方向に沿って等間隔に4か所測定し、その結果から接合部の曲げ角度θを求めることができる。なお、
図3(a),(b)に示す符号2Cは管情報を示す二次元バーコードである。
【0043】
プッシュオンタイプの管継手構造では、最大4°の曲げ角度θが許容される。そのため、直線状に布設する場合には許容曲げ角度θを0°に近い小さな範囲に設定して直線性を旦保するように管理する。また、道路に沿って小さな曲率で弧状に布設する場合には、許容曲げ角度θを0°から4°の範囲の所定の範囲に設定して複数本の直管の全体として弧状に布設するように管理する。
【0044】
[施工管理書類作成装置、配管施工図作成装置の構成]
配管施工現場では、工事終了後に竣工図等を作成するための配管施工情報を工事日毎に記録する必要がある。本発明による施工管理書類作成装置は、管布設工事の施工現場で収集した管の施工管理情報に基づいて、工事名、工事日、布設された各管の種類、呼び径、長さなどを記録した工事日報を自動生成可能にする装置である。また、本発明による配管施工図作成装置は、施工管理書類作成装置にさらに管布設工事の施工現場で収集した管の施工管理情報に基づいて、布設された各管の種類、呼び径、長さ、及び、各管の接合関係が識別できる簡易的な配管施工図を自動生成可能な機能を備えた装置である。
【0045】
図4に示すように、施工管理書類作成装置100は、施工現場で用いられる情報処理端末110と、情報処理端末110と通信可能で施工現場から遠隔地に設置される情報処理サーバ120とで構成されている。情報処理サーバ120にはデータベース20Aが接続されており、データベース20Aには、管接続情報20B、管布設情報20C、接合状態管理情報20D等の施工管理情報
、及び、施工管理情報に基づいて生成された工事日報、配管施工図、竣工図などの
施工管理書類である各種書類情報20Eが格納されている。
【0046】
情報処理端末110と情報処理サーバ120には、相互にインターネットなどの通信媒体を介して通信接続可能なように、Wi-Fiなどの公衆無線LAN10D,20Fや携帯電話通信部10F等の通信装置(インタフェース)を備えるとともに、それら通信装置を制御する通信処理部17,25が設けられている。
【0047】
情報処理端末110としてラップトップコンピュータやタブレット型コンピュータやスマートフォン等のモバイルコンピュータが用いられる。モバイルコンピュータには、CPU基板の他にタッチパネル式の表示部10A、カメラ10B、端末側メモリ10C、公衆無線LAN10D、近距離無線通信部10E、携帯電話通信部10F等を備えている。
【0048】
CPU基板にはCPU及び不揮発性メモリがマウントされ、不揮発性メモリには、管布設工事を支援するアプリケーションソフトウェアがインストールされている。当該アプリケーションソフトウェアがCPUで実行され、或いは上述した情報処理サーバ120がクラウドサーバで構成される場合には、クラウドサーバ120に準備された管布設工事を支援するアプリケーションソフトウェアが情報処理端末110のCPUを介して実行されることにより、後述する第1の入力処理部11、リスト表示処理部12、第2の入力処理部13、接合姿勢評価処理部14、許容範囲設定処理部15、表示処理部16、通信処理部17等の各種の機能ブロックが具現化される。
【0049】
また、施工現場毎に用いられる複数の情報処理端末110と通信処理部17,25を介して接続される情報処理サーバ120は、マザーボード及びメモリボードが装着され、メモリボード上のメモリには管布設工事を管理支援するアプリケーションソフトウェアがインストールされており、マザーボード上のCPUで当該アプリケーションソフトウェアが実行されることにより、配管図面を自動生成可能なマッピング処理部21が機能する。後述するように、マッピング処理部21には、情報処理端末110から送信された施工管理情報に基づいて工事日報を自動生成する書類生成処理部22や、配管施工図を自動生成する配管施工図生成部23や、詳細施工管理情報に基づいて竣工図を自動生成する竣工図生成部24の各機能ブロックが構築されている。
【0050】
施工管理書類作成装置100に、配管施工図生成処理部23及び竣工図生成処理部24の機能ブロックを付加することにより配管施工図作成装置が構成される。以下、施工管理書類作成装置100について詳述する。
【0051】
[施工現場における配管施工管理]
情報処理端末110に備えた第1の入力処理部11は、事前に準備された配管設計情報に基づいて施工現場で採用した布設対象管毎に入力される管形状及び管の布設姿勢を含む管属性情報に関連付けてユニークな管番号とユニークな継手番号とを付与する処理を繰り返すことにより、管番号と継手番号によって布設対象管の接続関係を特定可能な管接続情報と、管属性情報によって布設対象管の種類及び布設姿勢を特定可能な管布設情報と、を生成する。配管設計情報は電子データとして情報処理端末110に格納し、表示部10Aに表示してもよいし、紙の図面として作業者が目視確認できる態様であってもよい。
【0052】
第1の入力処理部11は、管属性情報として選択可能な複数の選択肢をリスト表示するリスト表示処理部12を備え、リスト表示処理部12によって画面に表示された管属性情報から該当する管属性情報を選択することにより、所望の管属性情報が入力されるように構成されている。
【0053】
リスト表示処理部12は、管属性情報を階層的に表示するように構成され、先ず、「直管」 / 「甲切管、乙切管、P-link」 / 「曲管90°」 / 「曲管45°」 / 「曲管22°1/2」 / 「曲管11°1/4」 / 「曲管5°5/8」 / 「二受T字管、フランジ付T字管、浅層埋設形フランジ付きT字管」 / 「継ぎ輪、両受短管、両受曲管、ソフトシール弁」 / 「既設管」 / 「その他異形管(片落管等)」の11種類の管形状を選択肢とする第1選択画面を表示する。なお、これらの選択肢は例示であり、実際には管のラインナップの変更に合わせて適宜設定される。
【0054】
第1選択画面に表示された管形状から該当する管形状をタップして選択すると、さらに詳細な選択肢を表示する第2選択画面を表示するように構成され、第2選択画面に表示された選択肢から該当する選択肢をタップして選択することにより最終的に管属性情報が設定される。階層構造は2階層に限るものではない。
【0055】
例えば、第1選択画面で「曲管90°」が選択されると、第2表示画面では、布設姿勢を特定する選択肢が表示される。具体的に、「曲管90°(HB)平面配管(左)」 / 「曲管90°(HB)平面配管(右)」 / 「曲管90°(CB)ひねり配管(左上)」 / 「曲管90°(CB)ひねり配管(左下)」 / 「曲管90°(CB)ひねり配管(右上)」 / 「曲管90°(CB)ひねり配管(右下)」 / 「曲管90°(VB)垂直配管(上)」 / 「曲管90°(VB)垂直配管(下)」の8種類の曲がり方向を特定する布設姿勢を選択肢とする第2表示画面が表示される。
【0056】
例えば、第1選択画面で「二受T字管」が選択されると、第2表示画面では、向き及び接合対象口の接合順の選択肢が表示される。管の布設方向に沿って分岐部が左側に位置するか、右側に位置するか、が表示される。
【0057】
第2の入力処理部13は、継手番号で特定される管接合部毎に入力される接合手順の確認済情報と接合状態評価情報とに基づいて接合状態管理情報を生成する接合姿勢評価処理部14と許容範囲設定処理部15を備えている。
【0058】
接合手順の確認済情報とは、挿し口突部の有無、清掃・異物除去等の接合作業時に定められた確認事項を行なったか否かを確認するための情報である。接合状態評価情報とは、上述した隙間ゲージGを用いて管の周方向に沿って複数個所(本実施形態では中心角が45度間隔となる8か所)で測定され、管の受口端部から接合部に内装されるシール用のゴム輪の位置までの引退距離、及び、ゲージを用いて管の受口端部から挿口側の管の周囲に付されたマーカー線までの突出距離を含む。
【0059】
接合姿勢評価処理部14は、上述した引退距離に基づいてゴム輪の位置が適正か否かを評価して評価結果を表示し、上述した突出距離に基づいて管の曲げ角度θが適正か否かを評価して評価結果を表示するとともに接合状態管理情報として端末側メモリ10cに格納する。
【0060】
許容範囲設定処理部15は、上述した突出距離に基づいて算出される管の曲げ角度θの許容範囲を設定する部位で、上述した継手番号毎に管理される値である。継手番号を入力する際に配管設計情報に基づいて初期設定され、直線布設する場合には例えば±θ0以内と設定され、所定の曲率で布設する場合にはその区間を示す曲げ区間フラグと曲げ角度範囲θ1≦θ≦θ2などと設定される。
【0061】
許容範囲設定処理部15はさらに、曲げ区間フラグが設定されている継手番号に対して、既入力の複数の接合部における管の曲げ角度の累積値に基づいて未入力の接合部における管の曲げ角度の許容範囲を動的に変更設定する。曲率に適合するように各継手部の曲げ角度の許容範囲を予め設定するのであるが、既に接合した複数の継手部の曲げ角度の累積誤差が大きくなる場合に、未接合の継手部の曲げ角の許容範囲を変更することにより累積誤差を吸収するべく、対応する継手番号の接合部の接合される管の曲げ角度の許容範囲を動的に変更設定する。
【0062】
書類生成処理部22は、管接続情報と管布設情報と接合状態管理情報を含む施工管理情報に基づいて工事日報を含む施工管理書類を生成し、生成した書類をデータベース20Aに格納するとともに、情報処理端末110に送信するように構成されている。従って、施工現場で情報処理端末110を介して設定した施工管理情報に基づいて生成された工事日報などが施工現場で情報処理端末110を介して確認可能になる。
【0063】
第1の入力処理部11は、リスト表示処理部12を設けることにより管属性情報を設定する態様を説明したが、他に布設対象管に対応して準備されたコード情報を読み取って管属性情報を特定するコード情報読取処理部、布設対象管の撮影画像から対応する管属性情報を特定する画像認識処理部、または配管設計情報に付されたコード情報に基づいて管属性情報を取得する設計情報取得処理部の何れかを備えていてもよい。
【0064】
コード情報読取処理部としてカメラ10B及びコード情報読取アプリケーションプログラムを用いることができる。例えば、
図3(a),(b)に示すように、受口側の管の表面に貼付されたQRコード(登録商標)のような二次元情報ラベルに管属性情報を関連付けて、コードリーダとしてカメラ10Bを機能させることができる。カメラ10Bで読み込まれた二次元情報ラベルに基づいて、例えば情報処理サーバ120に接続されたデータベース20Aに格納されている管属性情報をダウンロードしてもよい。例えば、製造年月日、製造工場、型式、管種、呼び径、管の個体番号等の詳細な情報を取得できる。
【0065】
画像認識処理部としてカメラ10B及び画像認識アプリケーションプログラムを用いることができる。例えば、カメラ10Bで選択した布設対象管を撮影し、画像処理によって撮影された管の管形状を把握し、把握した管形状に対応する管属性情報を獲得するように構成してもよい。このような画像認識処理アルゴリズムとして、例えばAIや機械学習アルゴリズムを活用することができる。例えば、撮影した布設対象管の特徴部分を抽出した画像要素を入力層に入力すれば、出力層から管属性情報を出力するようなニューたるネットワークなどである。この場合、管属性情報が予め情報処理端末110の端末側メモリ10Cに格納されていてもよいし、情報処理サーバ120に接続されたデータベース20Aに格納されていてもよい。何れの態様であっても、布設姿勢を特定するために、リスト表示処理部を併用することが好ましい。
【0066】
設計情報取得処理部として、カメラ10Bまたはタッチパネル表示部10A及び情報取得アプリケーションプログラムを用いることができる。配管設計情報に付されたコード情報をカメラ10Bで読み込むかタッチパネル表示部10Aを介して入力することにより、コード情報で特定される配管設計情報に含まれる管情報リストを例えば情報処理サーバ120に接続されたデータベース20Aから読み出してタッチパネル表示部10Aに表示し、表示したリストから該当する管属性情報を選択してもよい。この場合には、配管設計情報から布設姿勢を特定することも可能になる。
【0067】
[施工管理書類作成方法、配管施工図作成方法の説明]
図5には、上述した施工管理書類作成装置の情報処理端末110を用いた現場で実行される施工管理書類作成方法の手順が示され、
図6には、上述した施工管理書類作成装置の情報処理装置120で実行される施工管理書類作成方法の手順が示されている。各処理を示す矩形枠が破線で表わされた処理は、人により実行される処理であり、施工管理書類作成装置で実行される処理ではないことを強調するための表記である。
【0068】
図5に示すように、施工現場では、作業者によって配管設計情報が確認され、帳票の種類、工事日、工事名等の管理情報が管理シート入力画面に入力された後に(SA1)、情報処理端末110の第1の入力処理部11を介して管番号・継手番号が入力され(SA2)、入力された管番号に対応する布設対象管の管属性情報である種類(形状)及び布設姿勢が入力される(SA3)。
【0069】
第1の入力処理部11では、入力された管番号・継手番号に基づいて布設対象管の接続関係を特定可能な管接続情報、及び、布設対象管の種類及び布設姿勢を特定する管布設情報が生成される(SA4,SA5)。なお、管番号・継手番号と管布設情報の入力順は逆であってもよく、管布設情報を入力した後に対応する管に管番号・継手番号を設定してもよい。
【0070】
ステップSA2からステップSA5の処理は、施工の進捗とは無関係に、つまり実際の管布設作業の前に施工日に布設される予定の全ての布設対象管に対して繰り返し実行され(SA6,N)、全ての布設対象管に対して実行されると処理を終了する(SA6,Y)。
【0071】
図7には、管理シート入力画面が示されている。リスト表示処理部12の機能により各欄をタップすると選択肢がプルダウンメニュー方式で表示され、適正な選択肢が選択可能に構成されている。
【0072】
図8には、入力処理部11により表示される入力画面の一部が表示されている。当該画面は施工対象となる管に管番号、継手番号などを付す画面で、1本目から9本目まで入力可能に構成されている。なお、1本目は前回の工事で布設された最終の管である。各管の受け口側に継手番号が設定される。管番号、継手番号はシリアル番号でなくてもよいが、一意に特定可能な番号に限られ、自動採番されてもよい。
【0073】
各欄をタップすることにより表示される選択肢から適正な選択肢を選択することにより入力作業が進捗する。例えば、1本目の管は先日の布設であるため「×」印を付し、2本目の管は当日の施工対象管であるため「〇」印を付す。管番号をタップすると自動採番されてシリアル番号が付され、対応する継手番号も同様に自動採番されてシリアル番号が付される。
【0074】
図8では管番号1と2の接合部が継手番号1、管番号2と3の接合部が継手番号2、管番号3と4の接合部が継手番号3となる。これにより、管の接続順が特定可能になる。
【0075】
管番号2の管の種類を入力する場合、上欄をタップすると管形状の選択肢がプルダウンメニューで表示され、この例では「曲管45°」が選択されている。さらに、下欄をタップすると布設姿勢の選択肢がプルダウンメニューで表示され、この例では右曲がり布設が選択されそのシンボルが表示されている。
【0076】
管番号3の管として切管を選択すると、切管長さの欄に「要入力」と表示され、表示画面に表示される数値キー画面をタップ操作することにより、長さが設定される。なお、管形状として片落ち管や2受T字管のように、1本の管で異なる値の口径を備えた管では、呼び系Dの欄に大径が、呼び系dの欄に小径が入力される。
【0077】
図5に戻り、このようにして施工日の全ての布設対象管に対してステップSA2からSA5の処理が終了すると、実際の管接合作業が進捗する。ある管に対する接合処理を終了すると(SA7)、施工対象の継手番号の欄をタップして選択すると(SA8)、接合チェック画面に切り替わって接続手続確認入力が行なわれ(SA9)、「次のページへ」のボタンがタップされると次画面に切り替わって、ゴム輪の引退距離等の接合状態評価情報の入力画面が表示され、引退距離等が入力されて問題がないことを確認すると(SA10)、
図8の画面に戻って、管番号と継手番号を含む管接続情報、管属性情報を含む管布設情報、接合手順の確認済情報と接合状態評価情報を含む接合状態管理情報が情報処理サーバ120に送信される(SA11)。
【0078】
情報処理サーバ120から作業が完了したところまでの作業日報、配管施工図が送信され、タッチパネル表示部10Aに表示され、その内容を確認する(SA12,SA13,SA14)。ステップSA7からSA14の処理が各接合部の接合処理を完了する度に実行される(SA15)。
【0079】
図8で、接合処理が終了した継手番号をタップして接合チェックボタンをタップすると、
図9に示す第1の接合チェック画面が表示される。挿し口突部の有無、清掃・異物の有無、ライナの位置確認等の確認項目の右側のチェックボックスをタップすると、「〇」「×」の選択肢が表示され、適正に作業した場合に「〇」を選択することで、作業の手順が適切か否かを検証可能にしている。なお、この入力は現場作業の監督者が行い、不正な入力は阻止される。
【0080】
「次のページ」ボタンがタップされると、
図10の画面が表示され、挿し口から挿入された隙間ゲージGの値(周方向に8か所)が入力される。入力値が予め設定された許容範囲であれば「OK」判定が表示され、入力値が予め設定された許容範囲を逸脱していれば「NG」判定が表示される。これにより、ゴム輪の位置が適正であるか否かが容易に判定できる。なお、電子隙間ゲージを用いる場合には、近距離無線通信部10Eを介して計測データが無線入力される。近距離無線通信部10Eとして、ZigBeeやBluetooth(登録商標)等が採用可能である。
【0081】
さらに「次のページ」ボタンがタップされると、
図11の画面が表示され、スケールで測定された受け口側の管端部から白線までの突出距離(周方向に4か所)が入力され、継手部の曲げ角度θが算出され、予め設定された許容範囲に入っているか否かが自動判定される。図では、位置1の値-位置3の値と、位置5の値-位置7の値の差に対する許容範囲が規定される。「NG」判定が出ると、「OK」判定が出るまで、作業者により挿し口側の管の姿勢が調整され、突出距離が再計測される。
【0082】
このようにして、「OK」判定が出ると、継手写真の撮影の欄をタップすることにより、カメラ10Bが起動して、右欄に示された位置に対応するように継手部が撮影される。撮影された画像が継手写真の撮影の欄に張り付けられる。カメラ10Bにより撮影された画像は、情報処理端末に備えた位置検出機能により取得された緯度、経度の座標位置がリンクされている。
【0083】
全ての項目で「OK」判定を確認して、「接合チェック完了」ボタンをタップすると
図8の画面に戻る。
図8の画面で「送信」ボタンの左横の表示欄に「送信OK」との表示を確認して送信ボタンをタップすると、管番号と継手番号を含む管接続情報、管属性情報を含む管布設情報、接合手順の確認済情報と接合状態評価情報を含む接合状態管理情報が情報処理サーバ120に送信される。接合状態評価情報には上述した継手写真とその座標が含まれる。なお、何れかの項目で「NG」判定されていると、「送信」ボタンの左横の表示欄に「送信NG」と表示され、送信ボタンのタップの可否の判断が可能になっている。
【0084】
図6に示すように、情報処理サーバ120は、情報処理端末110から施工管理情報(管番号と継手番号を含む管接続情報、管属性情報を含む管布設情報、接合手順の確認済情報と接合状態評価情報を含む接合状態管理情報)が送信されると(SB1)、データベース20Aに対応する施工管理情報を格納するとともに(SB2)、マッピング処理部21の書類生成処理部22及び配管施工図生成部23を起動して、作業日報、配管施工図を生成して(SB3)、データベース20Aに格納するとともに(SB4)、情報処理端末に作業日報、配管施工図を送信する(SB5)。ステップSB1からSB5の処理は当日の工事が終了するまで繰り返される(SB6)。
【0085】
図12には工事日報のサンプルが示されている。工事日報は、工事名称、工事現場、受注者の各識別名称欄と、工事が行なわれた日時、天候、工程、出来高延長、使用材料合計、使用材料詳細、残管という各項目欄を備え、各項目欄に管情報を含む施工管理情報が示された帳票である。
【0086】
図13には配管施工図のサンプルが示されている。括弧書きの番号が継手番号を示し、括弧の無い番号が管番号を示している。なお、工事日報及び配管施工図は
図8で説明した布設対象管とは対応するものではなく、サンプルとして表示するものである。
【0087】
接合部の位置情報は接合写真に付される位置情報で把握でき、最初の管の接合部を描画レイヤの任意の位置に設定し、当該接合部を起点に管情報から得られる管の形状及び長さと、管布設情報から得られる管の布設情報、つまり管が何れに曲がるのか、何れに分岐するのかといった情報に基づいて管の平面視での長さに相当する線を描画する処理が、情報処理端末110から配管施工情報が送信される度に繰り返され、以降の接合部の位置情報と照合しつつ描画する。このような配管施工図によって、どのように管が布設されたのであるか、管同士の相対接合関係が把握できる。
【0088】
なお、配管施工図は位置情報を参酌せずに、任意の接合部を基点に管情報から得られる管の形状及び長さと、管布設情報から得られる管の布設情報、つまり管が何れに曲がるのか、何れに分岐するのかといった情報に基づいて管の平面視での長さに相当する線を描画する処理を繰り返すことによっても作成できる。
【0089】
尚、施工現場では、接合部の位置情報、例えば基準となる建物からどの程度の距離に接合部が位置するのかといった情報が測量によって求められ、また接合部の位置情報が得られる。竣工図生成処理部24は、そのような情報を加味することにより、最終的に竣工図に加工することができる。
【0090】
また、接合部の位置情報などを基準にして、竣工図をマッピングシステムで管理される道路地図上に整合するように描画することもできる。
【0091】
上述した実施形態は本発明の一実施形態に過ぎず、該記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、各部の具体的な構成処理ステップ等は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能である。
【符号の説明】
【0092】
100:施工管理書類作成装置
110:情報処理端末
10A:タッチパネル表示部
10B:カメラ
10C:端末側メモリ
10D:公衆無線LAN
10E:近距離無線通信部
10F:携帯電話通信部
11:第1の入力処理部
12:リスト表示処理部
13:第2の入力処理部
14:接合姿勢評価処理部
15:許容範囲設定処理部
16:表示処理部
17:端末側通信処理部
120:情報処理サーバ
20A:データベース
20B:管接続情報
20C:管布設情報
20D:接合状態管理情報
20E:各種書類情報
20F:公衆無線LAN
21:マッピング処理部
22:書類生成処理部
23:配管施工図生成処理部
24:竣工図生成処理部
25:サーバ側通信処理部