(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】半導体装置、半導体装置の製造方法、および試験装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20240308BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20240308BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20240308BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20240308BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20240308BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240308BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
H01L29/80 F
H01L29/80 H
H01L29/50 M
H01L21/28 301R
H01L21/28 301B
H01L29/78 301B
H01L29/78 301N
(21)【出願番号】P 2020071866
(22)【出願日】2020-04-13
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 健祐
(72)【発明者】
【氏名】山ノ内 智雄
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/009006(WO,A1)
【文献】特開2012-174804(JP,A)
【文献】特開2017-228685(JP,A)
【文献】特開2012-124436(JP,A)
【文献】特開2012-178419(JP,A)
【文献】特開2010-141144(JP,A)
【文献】特開2018-182155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/28
H01L 21/336
H01L 21/338
H01L 29/417
H01L 29/778
H01L 29/78
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物半導体層と、
前記化合物半導体層上に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に設けられ、前記第1の絶縁膜よりもバンドギャップが大きい材料の第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜の上方に設けられたゲート電極と
、
前記第1の絶縁膜と前記化合物半導体層との間に設けられ、前記ゲート電極の下方において、前記化合物半導体層を露出させる第1の開口を有する第3の絶縁膜と、
を備え
、
前記第1の絶縁膜は、前記第1の開口において前記化合物半導体層と接し、
前記第3の絶縁膜は、アルミニウム窒化物またはシリコン窒化物である
、
半導体装置。
【請求項2】
前記第1の絶縁膜はタンタル酸窒化物を含み、
前記第2の絶縁膜は、前記タンタル酸窒化物よりもバンドギャップが大きい材料を含む
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2の絶縁膜は、アルミニウム酸窒化物を含む
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
化合物半導体層と、
前記化合物半導体層上に接して設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に接して設けられ、前記第1の絶縁膜よりもバンドギャップが大きい材料の第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜の上方に設けられたゲート電極と、
を備え、
前記第2の絶縁膜の全体は、アルミニウム酸窒化物で形成される、
半導体装置。
【請求項5】
化合物半導体層と、
前記化合物半導体層上に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に設けられ、前記第1の絶縁膜よりもバンドギャップが大きい材料の第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜の上方に設けられたゲート電極と、
を備え、
前記第1の絶縁膜はタンタル酸窒化物を含み、
前記第2の絶縁膜は、アルミニウム酸窒化物を含む、
半導体装置。
【請求項6】
前記第1の絶縁膜と前記化合物半導体層との間に設けられ、前記ゲート電極の下方において、前記化合物半導体層を露出させる第1の開口を有する第3の絶縁膜を更に備え、
前記第1の絶縁膜は、前記第1の開口において前記化合物半導体層と接している
請求項
4または5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1の絶縁膜は、前記第3の絶縁膜に比べて膜厚が小さい
請求項
1から3および6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第3の絶縁膜の膜厚は、20nm以下である
請求項
7に記載の半導体装置。
【請求項9】
化合物半導体層と、
前記化合物半導体層上に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に設けられ、前記第1の絶縁膜よりもバンドギャップが大きい材料の第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜の上方に設けられたゲート電極と、
前記化合物半導体層と前記第1の絶縁膜との間に設けられたソース電極およびドレイン電極と、
前記ソース電極および前記ドレイン電極の上方に設けられ、前記ソース電極および前記ドレイン電極よりもアルカリ溶液に対する耐腐食性が高い材料を含む第1のバリアメタル層と、
前記第1のバリアメタル層の上方に設けられ、プラチナを含む第2のバリアメタル層と
、
を備え、
前記第1の絶縁膜および前記第2の絶縁膜は、前記第2のバリアメタル層を露出させる第2の開口を有す
る
半導体装置。
【請求項10】
化合物半導体層と、
前記化合物半導体層上に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に設けられ、前記第1の絶縁膜よりもバンドギャップが大きい材料の第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜の上方に設けられたゲート電極と、
前記化合物半導体層と前記第1の絶縁膜との間に設けられたソース電極およびドレイン電極と、
前記ソース電極および前記ドレイン電極の上方に設けられ、前記ソース電極および前記ドレイン電極よりもアルカリ溶液に対する耐腐食性が高い材料を含む第1のバリアメタル層と、
前記第1のバリアメタル層の上方に設けられ、プラチナを含む第2のバリアメタル層と、
を備え、
前記第1のバリアメタル層は、前記ソース電極または前記ドレイン電極の上面の凹凸の深さよりも厚い、
半導体装置。
【請求項11】
前記第1のバリアメタル層は、チタンを含む
請求項
9または10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第2のバリアメタル層は、前記第1のバリアメタル層よりも膜厚が小さい
請求項
9から11のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1のバリアメタル層の膜厚は100nm以上であり、
前記第2のバリアメタル層の膜厚は10nm以上である
請求項
9から
12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
化合物半導体層を形成する半導体層形成段階と、
前記化合物半導体層上に第1の絶縁膜を形成する第1絶縁膜形成段階と、
前記第1の絶縁膜の上方に、前記第1の絶縁膜
よりもバンドギャップが大きい材料の第2の絶縁膜を形成する第2絶縁膜形成段階と、
前記第2の絶縁膜の上方にゲート電極を形成するゲート電極形成段階と、
前記半導体層形成段階と前記第1絶縁膜形成段階との間において、前記化合物半導体層上に第3の絶縁膜を形成する第3絶縁膜形成段階と、
前記第3の絶縁膜をエッチングして、前記ゲート電極の下方において前記化合物半導体層を露出させる第1の開口を形成する第1エッチング段階と、
を備え
、
前記第1絶縁膜形成段階において、前記第1の開口において前記化合物半導体層と接するように前記第1の絶縁膜を形成し、
前記第3の絶縁膜は、アルミニウム窒化物またはシリコン窒化物である
、
半導体装置の製造方法。
【請求項15】
化合物半導体層を形成する半導体層形成段階と、
前記化合物半導体層上に第1の絶縁膜を形成する第1絶縁膜形成段階と、
前記第1の絶縁膜の上方に、前記第1の絶縁膜とは異なる材料の第2の絶縁膜を形成する第2絶縁膜形成段階と、
前記第2の絶縁膜の上方にゲート電極を形成するゲート電極形成段階と、
前記半導体層形成段階と前記第1絶縁膜形成段階との間において、前記化合物半導体層上にソース電極およびドレイン電極を形成するソースドレイン電極形成段階と、
前記ソースドレイン電極形成段階と前記第1絶縁膜形成段階との間において、前記ソース電極および前記ドレイン電極の上方に、前記ソース電極および前記ドレイン電極よりもアルカリ溶液に対する耐腐食性が高い材料を含む第1のバリアメタル層を形成し、前記第1のバリアメタル層の上方に、プラチナを含む第2のバリアメタル層を形成するバリアメタル形成段階と、
前記第2絶縁膜形成段階より後に、前記第2の絶縁膜をアルカリ溶液でウェットエッチングして第2の開口を形成する第2エッチング段階と、
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記半導体層形成段階と前記第1絶縁膜形成段階との間において、前記化合物半導体層上に第3の絶縁膜を形成する第3絶縁膜形成段階と、
前記第3の絶縁膜をエッチングして、前記ゲート電極の下方において前記化合物半導体層を露出させる第1の開口を形成する第1エッチング段階と
を備え、
前記第1絶縁膜形成段階において、前記第1の開口において前記化合物半導体層と接するように前記第1の絶縁膜を形成する
請求項
15に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
被試験デバイスを試験する試験装置であって、
前記被試験デバイスとの間で電気信号を伝送して前記被試験デバイスを試験する試験部と、
前記被試験デバイスおよび前記試験部の間の伝送経路に設けられ、前記被試験デバイスおよび前記試験部の間を電気的に接続するか切断するかを切り替える請求項1から
13のいずれか一項に記載の半導体装置と、
を備える試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、半導体装置の製造方法、および試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)等の、ゲート電極を用いた半導体装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2013-41969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体装置においては、ゲート電極と半導体層との間のゲートリーク電流の抑制と、半導体層の表面におけるキャリアのトラップによりソースドレイン間電流が減少する電流コラプスの抑制とを両立することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、化合物半導体層を備える半導体装置を提供する。半導体装置は、化合物半導体層上に設けられた第1の絶縁膜を備えてよい。半導体装置は、第1の絶縁膜上に設けられ、第1の絶縁膜よりもバンドギャップが大きい材料の第2の絶縁膜を備えてよい。半導体装置は、第2の絶縁膜の上方に設けられたゲート電極を備えてよい。
【0005】
第1の絶縁膜はタンタル酸窒化物を含んでよい。第2の絶縁膜は、タンタル酸窒化物よりもバンドギャップが大きい材料を含んでよい。
【0006】
第2の絶縁膜は、アルミニウム酸窒化物を含んでよい。
【0007】
半導体装置は、第1の絶縁膜と化合物半導体層との間に設けられ、ゲート電極の下方において、化合物半導体層を露出させる第1の開口を有する第3の絶縁膜を備えてよい。第1の絶縁膜は、第1の開口において化合物半導体層と接していてよい。
【0008】
第1の絶縁膜は、第3の絶縁膜に比べて膜厚が小さくてよい。
【0009】
第3の絶縁膜の膜厚は、20nm以下であってよい。
【0010】
半導体装置は、化合物半導体層と第1の絶縁膜との間に設けられたソース電極およびドレイン電極を備えてよい。半導体装置は、ソース電極およびドレイン電極の上方に設けられ、ソース電極およびドレイン電極よりもアルカリ溶液に対する耐腐食性が高い材料を含む第1のバリアメタル層を備えてよい。半導体装置は、第1のバリアメタル層の上方に設けられ、プラチナを含む第2のバリアメタル層を備えてよい。第1の絶縁膜および第2の絶縁膜は、第2のバリアメタル層を露出させる第2の開口を有してよい。
【0011】
第1のバリアメタル層は、チタンを含んでよい。
【0012】
2のバリアメタル層は、第1のバリアメタル層よりも膜厚が小さくてよい。
【0013】
第1のバリアメタル層の膜厚は100nm以上であってよい。第2のバリアメタル層の膜厚は10nm以上であってよい。
【0014】
本発明の第2の態様においては、半導体装置の製造方法を提供する。製造方法は、化合物半導体層を形成する半導体層形成段階を備えてよい。製造方法は、化合物半導体層上に第1の絶縁膜を形成する第1絶縁膜形成段階を備えてよい。製造方法は、第1の絶縁膜の上方に、第1の絶縁膜とは異なる材料の第2の絶縁膜を形成する第2絶縁膜形成段階を備えてよい。製造方法は、第2の絶縁膜の上方にゲート電極を形成するゲート電極形成段階を備えてよい。
【0015】
製造方法は、半導体層形成段階と第1絶縁膜形成段階との間において、化合物半導体層上に第3の絶縁膜を形成する第3絶縁膜形成段階を備えてよい。製造方法は、第3の絶縁膜をエッチングして、ゲート電極の下方において化合物半導体層を露出させる第1の開口を形成する第1エッチング段階を備えてよい。第1絶縁膜形成段階において、第1の開口において化合物半導体層と接するように第1の絶縁膜を形成してよい。
【0016】
製造方法は、半導体層形成段階と第1絶縁膜形成段階との間において、化合物半導体層上にソース電極およびドレイン電極を形成するソースドレイン電極形成段階を備えてよい。製造方法は、ソースドレイン電極形成段階と第1絶縁膜形成段階との間において、ソース電極およびドレイン電極の上方に、ソース電極およびドレイン電極よりもアルカリ溶液に対する耐腐食性が高い材料を含む第1のバリアメタル層を形成し、第1のバリアメタル層の上方に、プラチナを含む第2のバリアメタル層を形成するバリアメタル形成段階を備えてよい。製造方法は、第2絶縁膜形成段階より後に、第2の絶縁膜をアルカリ溶液でウェットエッチングして第2の開口を形成する第2エッチング段階を備えてよい。
【0017】
本発明の第3の態様においては、被試験デバイスを試験する試験装置を提供する。試験装置は、被試験デバイスとの間で電気信号を伝送して被試験デバイスを試験する試験部を備えてよい。試験装置は、被試験デバイスおよび試験部の間の伝送経路に設けられ、被試験デバイスおよび試験部の間を電気的に接続するか切断するかを切り替える、第1の態様に係る半導体装置を備えてよい。
【0018】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の断面の構成例を示す。
【
図2】第1の絶縁膜121の膜厚T1、第2の絶縁膜122の膜厚T2、および、第3の絶縁膜123の膜厚T3を説明する図である。
【
図3】実施例および比較例における、ゲートリーク電流の測定結果を示す図である。
【
図4】実施例および比較例における、電流コラプスの測定結果を示す図である。
【
図5】半導体装置100の他の構造例を示す図である。
【
図6】バリアメタル部190の構成例を示す図である。
【
図7】実施例に係る半導体装置100の断面の顕微鏡写真を模式化した図である。
【
図8】比較例に係る半導体装置の断面の顕微鏡写真を模式化した図である。
【
図9】半導体装置100の製造工程の一例を示す図である。
【
図10】第1エッチング段階S904の後の工程の例を示す図である。
【
図11】ゲート電極形成段階S907の後の工程の例を示す図である。
【
図12】第3エッチング段階S910の後の工程の例を示す図である。
【
図13】本発明の一つの実施形態に係る試験装置410の構成例を被試験デバイス400と共に示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体装置の実装時における方向に限定されない。本明細書では、半導体基板の上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。
【0022】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の断面の構成例を示す。本例の半導体装置100は、化合物半導体層110、第1の絶縁膜121、第2の絶縁膜122およびゲート電極140を備える。化合物半導体層110は、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、または、炭化珪素(SiC)等の化合物を材料とする半導体層である。
図1の例における化合物半導体層110は、窒化物(GaNまたはAlGaN)の半導体層である。
【0023】
ゲート電極140は、アルミニウム等の導電性材料で形成された電極である。ゲート電極140は、化合物半導体層110の上面の上方に配置されている。ゲート電極140と化合物半導体層110との間には、第1の絶縁膜121および第2の絶縁膜122が配置されている。これにより、ゲート電極140は、化合物半導体層110と絶縁されている。ゲート電極140は、所定のゲート電圧が印加されることで、化合物半導体層110に流れる電流を制御する。ゲート電極140は、化合物半導体層110の上面と平行な方向に流れる電流を制御してよい。
【0024】
半導体装置100は、高電子移動度トランジスタ(HEMT)であってよい。この場合、ゲート電極140に所定のゲート電圧が印加されることで、化合物半導体層110の電子走行層における2次元電子ガスの濃度を制御する。
図1に示した半導体装置100はHEMTである。半導体装置100は、電界効果トランジスタ(FET)であってもよい。この場合、ゲート電極140に所定のゲート電圧を印加することで、化合物半導体層110の上面近傍におけるチャネルを制御する。
【0025】
本例の半導体装置100は、ゲート電極140および化合物半導体層110の間に絶縁膜を積層することで、ゲート電極140と化合物半導体層110との間に流れるゲートリーク電流を低減するとともに、電流コラプスも抑制する。電流コラプスとは、半導体層の上面に形成されたトラップの影響により、半導体層に流れる電流が減少する現象である。例えば、ゲート電極に所定のオフストレス電圧を印加して半導体装置100をオフ状態にした後に半導体装置100をオン状態にすると、オフストレス電圧を印加しない場合に比べてドレイン・ソース間に流れるドレイン電流が減少してしまう現象が知られている。
【0026】
第1の絶縁膜121は、化合物半導体層110上に設けられている。化合物半導体層110上に設けられるとは、第1の絶縁膜121の少なくとも一部が化合物半導体層110と接していることを指す。本例の第1の絶縁膜121は、ゲート電極140の下方において、化合物半導体層110と接している。ゲート電極140の下方とは、Z軸方向から見てゲート電極140と重なる領域を指す。つまり、第1の絶縁膜121は、Z軸方向から見てゲート電極140と重なる領域の少なくとも一部において、化合物半導体層110と接している。
【0027】
第2の絶縁膜122は、第1の絶縁膜121上に設けられる。つまり、第2の絶縁膜122の少なくとも一部は、第1の絶縁膜121の上面と接している。また、第2の絶縁膜122は、化合物半導体層110とは接していない。第2の絶縁膜122は、第1の絶縁膜121とは異なる材料で形成されている。つまり、ゲート電極140と化合物半導体層110とは、異種材料の積層絶縁膜により絶縁されている。このような構成により、一方の絶縁膜によりゲートリーク電流を抑制し、もう一方の絶縁膜により電流コラプスを抑制できるので、ゲートリーク電流の抑制と、電流コラプスの抑制の両立が容易になる。
【0028】
第1の絶縁膜121は、化合物半導体層110の上面に形成されるトラップが、第2の絶縁膜122を化合物半導体層110上に形成した場合に比べて少なくなる材料で形成されることが好ましい。トラップとは、電子を補足する表面準位である。第1の絶縁膜121は、例えばタンタル酸窒化物(TaON)を含む。第1の絶縁膜121は、全体がタンタル酸窒化物であってよい。化合物半導体層110との界面において、タンタル酸窒化物は、タンタル酸化物および二酸化ケイ素等に比べてトラップ密度が少ない良好な界面を形成できる。これにより、電流コラプスを抑制できる。
【0029】
第2の絶縁膜122は、第1の絶縁膜121よりもバンドギャップが大きい材料を含む。つまり第2の絶縁膜122は、第1の絶縁膜121よりも絶縁性の高い材料を含む。第2の絶縁膜122は、全体が当該材料で形成されてよい。第1の絶縁膜121がタンタル酸窒化物を含む場合、第2の絶縁膜122は、タンタル酸窒化物よりもバンドギャップが大きい材料を含む。一例として第2の絶縁膜122は、アルミニウム酸窒化物(AlON)で形成されている。これにより、ゲートリーク電流を抑制できる。第2の絶縁膜122は、酸窒化シリコン(SiON)、二酸化シリコン(SiO2)等であってもよい。
【0030】
本例の半導体装置100は、基板10、第3の絶縁膜123、保護膜150、ソース電極160、ドレイン電極170、ソース配線180およびドレイン配線182を更に備える。基板10は、上面に化合物半導体層110が形成される基板である。一例として化合物半導体層110は、基板10の上面にエピタキシャル成長により形成される。基板10は、化合物半導体層110の結晶性を保ったまま形成させるように、化合物半導体層110の格子定数と略同一の格子定数を有する結晶であってよい。一例として基板10は、サファイア、SiC(炭化ケイ素)、GaN、GaAs、またはSi等の単結晶であってよい。
【0031】
本例の化合物半導体層110は、窒化物系半導体で形成される。化合物半導体層110は、バンドギャップの異なる2種類以上の半導体を、結晶性を有したまま接合させたヘテロ接合を有してよい。本実施例において化合物半導体層110は、電子走行層112と、スペーサ層114と、電子供給層116とを有する。
【0032】
電子走行層112は、基板10の上面に形成される。電子走行層112には、高速で電子を流すことができる二次元電子ガスが形成される。本例の電子走行層112は、不純物を意図的に添加しないアンドープのi型GaN層である。
【0033】
スペーサ層114は、電子走行層112上に形成される。スペーサ層114は、電子走行層112とはバンドギャップの異なる異種の半導体材料で形成される。電子走行層112とスペーサ層114とがヘテロ接合となることで、電子走行層112は、スペーサ層114との界面近傍の領域において、二次元電子ガスを形成することができる。本例のスペーサ層114は、アンドープのi型AlGaN層である。
【0034】
電子供給層116は、スペーサ層114上に形成される。電子供給層116は、スペーサ層114を介して電子走行層112に電子を供給する。本例の電子供給層116は、不純物をドープしたn型AlGaN層である。
【0035】
化合物半導体層110は、電子供給層116の上に保護層を更に有してもよい。保護層は、例えば、電子供給層116中のAl等の酸化を抑制する。保護層は、例えば不純物をドープしたn型GaN層である。
【0036】
ソース電極160およびドレイン電極170は、化合物半導体層110上に設けられる。ソース電極160およびドレイン電極170は、XY面内においてゲート電極140を挟むように配置されている。本例のソース電極160およびドレイン電極170は、電子供給層116に接している。ソース電極160およびドレイン電極170は、化合物半導体層110とオーミック接合される。ソース電極160およびドレイン電極170は、Ni(ニッケル)、Pt(白金)、Au(金)、Mo(モリブデン)、Al(アルミニウム)、またはTi(チタン)等を有してよい。
【0037】
第3の絶縁膜123は、第1の絶縁膜121と化合物半導体層110との間に設けられている。本例の第3の絶縁膜123は、化合物半導体層110、ソース電極160およびドレイン電極170を覆って設けられる。ただし、第3の絶縁膜123は、化合物半導体層110を露出させる第1の開口131を有する。第1の開口131は、XY面内において、ソース電極160およびドレイン電極170の間に配置され、且つ、ゲート電極140と重なる領域に配置されている。第1の絶縁膜121は、第1の開口131において化合物半導体層110と接している。
【0038】
第3の絶縁膜123は、第1の絶縁膜121と同一の材料で形成されてよい。例えば第3の絶縁膜123は、タンタル酸窒化物である。第3の絶縁膜123は、第1の絶縁膜121と異なる材料で形成されてもよい。例えば第3の絶縁膜123は、窒化アルミニウム(AlN)または窒化シリコン(SiN)である。
【0039】
第3の絶縁膜123および第1の開口131を設けることで、第1の絶縁膜121および第2の絶縁膜122には、第1の開口131の上方において窪みが形成される。ゲート電極140は、当該窪み上に配置された本体部141と、窪み以外に配置された段差部142を有する。段差部142は、XY面において、第1の開口131よりも外側まで延伸していてよい。本例の段差部142は、XY面において、第1の開口131とドレイン電極170との間の少なくとも一部の領域を覆っている。本体部141は、窪みに配置されているので、化合物半導体層110との距離が小さい。このため、ゲート電圧が印加されたときに、化合物半導体層110の電流を制御しやすくなる。また、金属の段差部142で化合物半導体層110を覆うことで、化合物半導体層110を保護しやすくなる。
【0040】
保護膜150は、ゲート電極140および第2の絶縁膜122上に設けられた絶縁性の膜である。保護膜150は、第2の絶縁膜122とは別種の絶縁材料を含んでよい。一例として、保護膜150は、SiN(窒化シリコン)を絶縁材料として含む。
【0041】
保護膜150、第2の絶縁膜122、第1の絶縁膜121および第3の絶縁膜123には、第2の開口132が2つ形成されている。第2の開口132-1は、ソース電極160を露出させる開口であり、内部にソース配線180が設けられている。第2の開口132-2は、ドレイン電極170を露出させる開口であり、内部にドレイン配線182が設けられている。ソース配線180およびドレイン配線182は、ソース電極160およびドレイン電極170と同一の材料で形成されてよく、異なる材料で形成されてもよい。ソース配線180およびドレイン配線182の少なくとも一方は、保護膜150の上にも形成されてよい。ソース配線180およびドレイン配線182の少なくとも一方は、ワイヤボンディング等によって外部回路と電気的に接続されてよい。
【0042】
図2は、第1の絶縁膜121の膜厚T1、第2の絶縁膜122の膜厚T2、および、第3の絶縁膜123の膜厚T3を説明する図である。各膜の膜厚は、Z軸方向における厚みを指す。また、各膜の膜厚は、XY面内の各位置における膜厚の平均値を用いてよい。
【0043】
膜厚T1は、膜厚T2および膜厚T3のいずれよりも小さくてよい。第1の絶縁膜T1は、化合物半導体層110との界面におけるトラップを少なくできればよいので、化合物半導体層110と接してさえいれば、膜厚T1は小さくてよい。膜厚T1は、20nm以下であってよく、10nm以下であってよく、5nm以下であってよく、1nm以下であってもよい。膜厚T1を小さくすることで、半導体装置100をオン状態に遷移させる閾値電圧の負側へのシフトを抑制できる。膜厚T1は、1原子層分の厚み以上であってよく、5nm以上であってもよい。
【0044】
膜厚T3は、第1の開口131における段差を形成するために、ある程度の厚みを有することが好ましい。ただし、膜厚T3が大きすぎると、第3の絶縁膜123の上方に形成する膜が、段差で切れてしまう場合がある。膜厚T3は、20nm以下であってよい。ただし、膜厚T3は膜厚T1よりも大きい。膜厚T3は5nm以上であってよく、10nm以上であってもよい。
【0045】
膜厚T2は、膜厚T1より大きくてよい。第2の絶縁膜122の膜厚T2を大きくすることで、ゲートリーク電流を抑制しやすくなる。膜厚T2は20nmより大きくてよい。なお、各膜厚は、
図2において説明した例には限定されない。
【0046】
図3は、実施例および比較例における、ゲートリーク電流の測定結果を示す図である。
図3の横軸はソースドレイン電圧Vdsであり、縦軸はゲートリーク電流である。実施例は、
図1に示した構造を有する。なお、第3の絶縁膜123および第1の絶縁膜121は酸窒化タンタルであり、第2の絶縁膜122は酸窒化アルミニウムである。また、比較例は、
図1に示した構造において、第1の絶縁膜121を有していない。つまり比較例においては、第2の絶縁膜122が第1の開口131において化合物半導体層110と接している。
図3に示すように、実施例は、比較例と同等のオフリーク電流であった。
【0047】
図4は、実施例および比較例における、電流コラプスの測定結果を示す図である。
図4の横軸は、オフストレス印加時間を示し、縦軸はオン抵抗増加倍率を示す。オフストレス印加時間は、ゲート電極140に所定のオフストレス電圧を印加して半導体装置100をオフ状態にした期間である。本例におけるオフストレス電圧は200Vである。オン抵抗増加倍率は、オフストレス電圧の印加を停止して半導体装置100をオン状態にした直後におけるオン抵抗Ron1と、オフストレス電圧を印加していない状態のオン抵抗Ron2との比Ron1/Ron2である。電流コラプスにより化合物半導体層110の界面に電子がトラップされると、半導体装置100のオン抵抗が増大する。
【0048】
図4に示すように、実施例のオン抵抗増加倍率は、比較例のオン抵抗増加倍率の半分程度に抑制できた。比較例では、ゲート電極140の下方の化合物半導体層110に第2の絶縁膜122が接しているのに対し、実施例では、ゲート電極140の下方の化合物半導体層110に第1の絶縁膜121が接しているので、化合物半導体層110の界面におけるトラップが少ないためと考えられる。
【0049】
図5は、半導体装置100の他の構造例を示す図である。本例の半導体装置100は、
図1から
図4において説明した半導体装置100の構造に対して、バリアメタル部190を更に備える。他の構造は、
図1から
図4において説明した例と同様である。
【0050】
バリアメタル部190は、ソース電極160およびドレイン電極170の上方に設けられている。バリアメタル部190は、ソース電極160とソース配線180との間、および、ドレイン電極170とドレイン配線182との間に配置されている。バリアメタル部190は、各配線の下面全体を覆っていてよい。つまり、各配線は、各電極と接していない。バリアメタル部190は、各電極の上面全体を覆っていてもよい。
【0051】
本例のバリアメタル部190は、ソース電極160およびドレイン電極170よりもアルカリ溶液に対する耐腐食性が高い材料を含む。バリアメタル部190は、チタン(Ti)を含んでよく、プラチナ(Pt)を含んでもよい。バリアメタル部190を設けることで、各電極を保護できる。
【0052】
図6は、バリアメタル部190の構成例を示す図である。
図6においては、ドレイン電極170上のバリアメタル部190を示しているが、ソース電極160上のバリアメタル部190も同一の構造を有してよい。
【0053】
本例のバリアメタル部190は、第1のバリアメタル層191と、第2のバリアメタル層192とを有する。第1のバリアメタル層191は、ソース電極160およびドレイン電極170の上方に設けられ、ソース電極160およびドレイン電極170よりもアルカリ溶液に対する耐腐食性が高い材料を含む。第1のバリアメタル層191は、チタンを含んでよい。第1のバリアメタル層191は、全体がチタンであってよい。第1のバリアメタル層191は、クロム(Cr)の層であってもよい。また、第1のバリアメタル層191は、チタン層の上にタンタル層が積層された積層構造を有してもよい。
【0054】
本例の半導体装置100は、ソース電極160およびドレイン電極170の上方に、酸窒化アルミニウムの第2の絶縁膜122が設けられている。アルカリ溶液を用いたウェットエッチングにより、第2の絶縁膜122を容易にエッチングして、第2の開口132を形成できる。しかし、アルカリ溶液を用いたウェットエッチングを行うと、ソース電極160およびドレイン電極170もエッチングされてしまう場合がある。本例では、第1のバリアメタル層191を設けることで、ソース電極160およびドレイン電極170を保護できる。
【0055】
第1のバリアメタル層191は、ソース電極160またはドレイン電極170の上面の凹凸の深さよりも厚いことが好ましい。これにより、ソース電極160またはドレイン電極170の凸部が、第2の開口132内に露出することを防げる。第1のバリアメタル層191の膜厚T4は、100nm以上であってよい。第1のバリアメタル層191の膜厚T4は、200nm以上であってもよい。
【0056】
第2のバリアメタル層192は、第1のバリアメタル層191の上方に設けられ、プラチナを含む。第2のバリアメタル層192は、全体がプラチナであってよい。なお、第2の開口132は、第2のバリアメタル層192を露出させている。第2の開口132に設けられた各配線は、第2のバリアメタル層192に接続されている。第2のバリアメタル層192を設けることで、第1のバリアメタル層191が酸化されるのを抑制できる。また、バリアメタル部190を積層構造とすることで、バリアメタル部190の全体をプラチナで形成する場合に比べて、材料コストを低減できる。
【0057】
第2のバリアメタル層192の膜厚T5は、第1のバリアメタル層191の膜厚T4よりも小さくてよい。各層の膜厚は、XY面内の各位置における平均膜厚を用いてよい。各層の膜厚は、XY面において各配線(ソース配線180またはドレイン配線182)と重なる領域における平均膜厚を用いてもよい。
【0058】
第2のバリアメタル層192は、酸化防止膜として機能できればよいので、第1のバリアメタル層191よりも膜厚が小さくてよい。膜厚T5は、10nm以上であり、且つ、100nmより小さくよい。膜厚T5は、膜厚T4の半分以下であってよく、10%以下であってもよい。
【0059】
図7は、実施例に係る半導体装置100の断面の顕微鏡写真を模式化した図である。
図7においては、ソース電極160の近傍における断面を示している。本例の半導体装置100は、
図1から
図6において説明した構造とは、各膜の厚みが異なっている。また、第1の絶縁膜121、第2の絶縁膜122および第3の絶縁膜123は膜厚が小さいので、
図7においてはこれらの絶縁膜を省略している。
【0060】
本例では、ソース電極160の上にバリアメタル部190が設けられている。第2の開口132は、バリアメタル部190の上面を露出させており、第2の開口132内に設けられたソース配線180がバリアメタル部190と接続されている。ゲート電極140と、ソース電極160との間には、保護膜150、第1の絶縁膜121、第2の絶縁膜122および第3の絶縁膜123等が配置されている。
【0061】
図8は、比較例に係る半導体装置の断面の顕微鏡写真を模式化した図である。本例では、第2の開口132がソース電極160の上面を露出させ、ソース配線180がソース電極160と接続している。
【0062】
比較例においてはバリアメタル部190が設けられていないので、第2の開口132を形成する工程で、ソース電極160および保護膜150もエッチングされてしまう場合がある。
図8においては、エッチングされたソース電極160をエッチング領域161とし、エッチングされた保護膜150をエッチング領域151としている。エッチング領域151が生じると、ゲート電極140を囲う保護膜150が薄くなるので、ゲート電極140の絶縁性が低下してしまう。例えば、エッチング領域151およびエッチング領域161にもソース配線180が入り込んでしまうと、ゲート電極140とソース配線180との間の絶縁性が低下してしまう。これに対して、
図7に示した実施例によれば、バリアメタル部190を設けているので、ソース電極160およびドレイン電極170がエッチングされるのを抑制できる。
【0063】
図9は、半導体装置100の製造工程の一例を示す図である。まず半導体層形成段階S901において、基板10上に化合物半導体層110を形成する。化合物半導体層110は、MOVPE法(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy:有機金属気相成長エピタキシー法)、またはMBE法(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシー法)等で形成されてよい。
【0064】
次に、化合物半導体層110上にソース電極160およびドレイン電極170を形成する。ソース電極160およびドレイン電極170は、タンタル層/アルミニウム層/タンタル層が積層された電極であってよい。
【0065】
ソース電極160およびドレイン電極170は、一例として、材料を加熱して気化または昇華させて基板の表面に付着させる蒸着法によって形成される。これに代えて、ソース電極160およびドレイン電極170は、スパッタ法によって形成されてもよい。また、ソース電極160およびドレイン電極170は、一例として、形成すべきパターンの逆パターンを、基板上にフォトレジスト等で形成し、形成すべき薄膜を蒸着後、パターン以外の不用部分をフォトレジストと共に除去する蒸着リフトオフ法で形成される。また、ソース電極160およびドレイン電極170を形成した化合物半導体層110を、500℃程度以上の温度でアニール処理することで、電極と化合物半導体層110との間にオーミック接合を形成する。
【0066】
次に、バリアメタル形成段階S902において、ソース電極160およびドレイン電極170の上に、バリアメタル部190を形成する。バリアメタル形成段階S902においては、
図6等に示したように、ソース電極160およびドレイン電極170の上方に第1のバリアメタル層191を形成し、第1のバリアメタル層191の上方に第2のバリアメタル層192を形成する。バリアメタル部190は、ソース電極160およびドレイン電極170と同様の方法で形成されてよい。
【0067】
次に、第3絶縁膜形成段階S903において、化合物半導体層110、ソース電極160およびドレイン電極170の上に第3の絶縁膜123を形成する。第1の絶縁膜121、第2の絶縁膜122および第3の絶縁膜123の各絶縁膜は、スパッタによって形成されてよい。各絶縁膜は、一例として、絶縁物のターゲットに高周波電圧を印加してスパッタするRFスパッタによって形成される。
【0068】
次に、第1エッチング段階S904において、第3の絶縁膜123をエッチングして、化合物半導体層110の上面を露出させる第1の開口131を形成する。第1の開口131は、後の工程で形成されるゲート電極140の下方に配置されるように形成する。第1エッチング段階S904においては、ドライエッチングにより第3の絶縁膜123をエッチングしてよい。
【0069】
図10は、第1エッチング段階S904の後の工程の例を示す図である。本例では、第1絶縁膜形成段階S905において、第3の絶縁膜123および化合物半導体層110上に第1の絶縁膜121を形成する。本例の第1絶縁膜形成段階S904においては、第1の開口131において化合物半導体層110と接するように、第1の絶縁膜121を形成する。第1の絶縁膜121は、第3の絶縁膜123全体と、第1の開口131全体を覆ってよい。本例の第1の絶縁膜121は、第1の開口131の上方において窪みを有する。
【0070】
次に、第2絶縁膜形成段階S906において、第1の絶縁膜121の上方に、第1の絶縁膜121とは異なる材料の第2の絶縁膜122を形成する。第2の絶縁膜122は、第1の絶縁膜121全体を覆ってよい。本例の第2の絶縁膜122は、第1の開口131の上方において窪みを有する。
【0071】
次に、ゲート電極形成段階S907において、第2の絶縁膜122の上方にゲート電極140を形成する。ゲート電極形成段階S907では、第2の絶縁膜122の窪みにゲート電極140を形成してよい。ゲート電極形成段階S907では、第2の絶縁膜122の窪みよりも広い範囲に、ゲート電極140を形成してもよい。ゲート電極140は、一例として、蒸着法によって形成される。ゲート電極140は、一例として、蒸着リフトオフ法によって形成される。ゲート電極140は、複数の電極材料を蒸着して形成されてよい。これに代えて、ゲート電極140は、スパッタ法によって形成されてもよい。
【0072】
図11は、ゲート電極形成段階S907の後の工程の例を示す図である。本例では、保護膜形成段階S908において、第2の絶縁膜122およびゲート電極140の上方に保護膜150を形成する。保護膜150は、第2の絶縁膜122全体と、ゲート電極140全体を覆ってよい。保護膜150は、酸窒化アルミニウム等の絶縁材料で形成されてよい。保護膜150は、CVD法、ALD法、スパッタ法等によって形成されてよい。保護膜150は、第1の絶縁膜121、第2の絶縁膜122および第3の絶縁膜123のいずれよりも膜厚が大きくてよい。
【0073】
次に、第2エッチング段階S909において、第2の絶縁膜122をアルカリ溶液でウェットエッチングして、それぞれの第2の開口132の一部を形成する。保護膜150が第2の絶縁膜122と同一の材料で形成されている場合、第2エッチング段階S909において、保護膜150もウェットエッチングしてよい。保護膜150が第2の絶縁膜122とは異なる材料で形成されている場合、第2エッチング段階S909の前に、保護膜150をエッチングする。第2エッチング段階S909により、第1の絶縁膜121が第2の開口132に露出する。
【0074】
仮に、第2エッチング段階S909によって第1の絶縁膜121もエッチングされた場合であっても、バリアメタル部190により各電極が保護される。このため、第2エッチング段階S909では、ソース電極160およびドレイン電極170が浸食されない。
【0075】
次に、第3エッチング段階S910において、第1の絶縁膜121をエッチングして、第2の開口132を形成する。第3エッチング段階S910においては、第1の絶縁膜121をドライエッチングしてよい。第3エッチング段階S910により、それぞれの第2の開口132に、バリアメタル部190が露出する。
【0076】
図12は、第3エッチング段階S910の後の工程の例を示す図である。本例では、配線形成段階S910において、それぞれの第2の開口132に導電材料を充填する。これにより、ソース配線180およびドレイン配線182が形成される。これにより半導体装置100が形成できる。
【0077】
図13は、本発明の一つの実施形態に係る試験装置410の構成例を被試験デバイス400と共に示す。試験装置410は、アナログ回路、デジタル回路、アナログ/デジタル混載回路、メモリ、およびシステム・オン・チップ(SOC)等の少なくとも1つの被試験デバイス400を試験する。試験装置410は、被試験デバイス400を試験するための試験パターンに基づく試験信号を被試験デバイス400に入力して、試験信号に応じて被試験デバイス400が出力する出力信号に基づいて被試験デバイス400の良否を判定する。
【0078】
試験装置410は、試験部420と、信号入出力部430と、制御装置440とを備える。試験部420は、被試験デバイス400との間で電気信号を授受して被試験デバイス400を試験する。試験部420は、試験信号発生部423と、期待値比較部426とを有する。
【0079】
試験信号発生部423は、信号入出力部430を介して1または複数の被試験デバイス400に接続されて、被試験デバイス400へ供給する複数の試験信号を発生する。試験信号発生部423は、試験信号に応じて被試験デバイス400が出力する応答信号の期待値を生成してよい。
【0080】
期待値比較部426は、信号入出力部430から受信した被試験デバイス400の応答信号に含まれるデータ値と試験信号発生部423が生成する期待値とを比較する。期待値比較部426は、比較結果に基づき、被試験デバイス400の良否を判定する。
【0081】
信号入出力部430は、試験すべき被試験デバイス400と試験部420との間を電気的に接続して、試験信号発生部423が発生した試験信号を当該被試験デバイス400に送信する。また、信号入出力部430は、試験信号に応じて当該被試験デバイス400が出力する応答信号を受信する。信号入出力部430は、受信した被試験デバイス400の応答信号を期待値比較部426へと送信する。信号入出力部430は、複数の被試験デバイス400を搭載するパフォーマンスボードであってよい。信号入出力部430は、半導体装置100を有する。
【0082】
半導体装置100は、試験部420および被試験デバイス400の間に設けられ、試験部420および被試験デバイス400の間を電気的に接続または切断する。試験装置410は、本実施形態に係る半導体装置100によって電気的な接続または切断を実行してよい。
【0083】
本例において、信号入出力部430は1つの被試験デバイス400に接続され、半導体装置100は、1つの被試験デバイス400の入力信号ラインおよび出力信号ラインにそれぞれ1つ設けられる例を説明した。これに代えて信号入出力部430は、複数の被試験デバイス400に接続され、半導体装置100は、複数の被試験デバイス400の入力信号ラインおよび出力信号ラインのそれぞれに1つ設けられてよい。また、信号入出力部430から1つの被試験デバイス400へ接続される信号入出力ラインが1つの場合、1つの入出力ラインに1つの半導体装置100が設けられてよい。
【0084】
制御装置440は、試験装置410の試験を実行すべく、試験部420および信号入出力部430に制御信号を送信する。制御装置440は、試験プログラムに応じて、試験部420に、試験信号の発生または試験結果と期待値との比較等を実行させる制御信号を送信する。また、制御装置440は、試験プログラムに応じて、接続すべき信号入出力ラインに設けられた半導体装置100の接続の指示、および切断すべき信号入出力ラインに設けられた半導体装置100の切断の指示等を、信号入出力部430に送信する。
【0085】
以上の本実施例における試験装置410は、高耐圧、高出力、および高周波数特性を有し、ゲートリーク電流を低減させつつ、ゲート電極にパルスを印加した場合の高周波特性を向上させた半導体装置100を用いて試験を実行することができる。
【0086】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0087】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
[項目1]
化合物半導体層と、
前記化合物半導体層上に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に設けられ、前記第1の絶縁膜よりもバンドギャップが大きい材料の第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜の上方に設けられたゲート電極と、
を備える半導体装置。
[項目2]
前記第1の絶縁膜はタンタル酸窒化物を含み、
前記第2の絶縁膜は、前記タンタル酸窒化物よりもバンドギャップが大きい材料を含む、
項目1に記載の半導体装置。
[項目3]
前記第2の絶縁膜は、アルミニウム酸窒化物を含む、項目2に記載の半導体装置。
[項目4]
前記第1の絶縁膜と前記化合物半導体層との間に設けられ、前記ゲート電極の下方において、前記化合物半導体層を露出させる第1の開口を有する第3の絶縁膜を更に備え、
前記第1の絶縁膜は、前記第1の開口において前記化合物半導体層と接している、
項目1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
[項目5]
前記第1の絶縁膜は、前記第3の絶縁膜に比べて膜厚が小さい、項目4に記載の半導体装置。
[項目6]
前記第3の絶縁膜の膜厚は、20nm以下である、項目5に記載の半導体装置。
[項目7]
前記化合物半導体層と前記第1の絶縁膜との間に設けられたソース電極およびドレイン電極と、
前記ソース電極および前記ドレイン電極の上方に設けられ、前記ソース電極および前記ドレイン電極よりもアルカリ溶液に対する耐腐食性が高い材料を含む第1のバリアメタル層と、
前記第1のバリアメタル層の上方に設けられ、プラチナを含む第2のバリアメタル層と、
を更に備え、
前記第1の絶縁膜および前記第2の絶縁膜は、前記第2のバリアメタル層を露出させる第2の開口を有する、
項目1から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
[項目8]
前記第1のバリアメタル層は、チタンを含む、項目7に記載の半導体装置。
[項目9]
前記第2のバリアメタル層は、前記第1のバリアメタル層よりも膜厚が小さい、項目7または8に記載の半導体装置。
[項目10]
前記第1のバリアメタル層の膜厚は100nm以上であり、
前記第2のバリアメタル層の膜厚は10nm以上である、
項目7から9のいずれか一項に記載の半導体装置。
[項目11]
化合物半導体層を形成する半導体層形成段階と、
前記化合物半導体層上に第1の絶縁膜を形成する第1絶縁膜形成段階と、
前記第1の絶縁膜の上方に、前記第1の絶縁膜とは異なる材料の第2の絶縁膜を形成する第2絶縁膜形成段階と、
前記第2の絶縁膜の上方にゲート電極を形成するゲート電極形成段階と、
を備える半導体装置の製造方法。
[項目12]
前記半導体層形成段階と前記第1絶縁膜形成段階との間において、前記化合物半導体層上に第3の絶縁膜を形成する第3絶縁膜形成段階と、
前記第3の絶縁膜をエッチングして、前記ゲート電極の下方において前記化合物半導体層を露出させる第1の開口を形成する第1エッチング段階と、
を備え、
前記第1絶縁膜形成段階において、前記第1の開口において前記化合物半導体層と接するように前記第1の絶縁膜を形成する、
項目11に記載の半導体装置の製造方法。
[項目13]
前記半導体層形成段階と前記第1絶縁膜形成段階との間において、前記化合物半導体層上にソース電極およびドレイン電極を形成するソースドレイン電極形成段階と、
前記ソースドレイン電極形成段階と前記第1絶縁膜形成段階との間において、前記ソース電極および前記ドレイン電極の上方に、前記ソース電極および前記ドレイン電極よりもアルカリ溶液に対する耐腐食性が高い材料を含む第1のバリアメタル層を形成し、前記第1のバリアメタル層の上方に、プラチナを含む第2のバリアメタル層を形成するバリアメタル形成段階と、
前記第2絶縁膜形成段階より後に、前記第2の絶縁膜をアルカリ溶液でウェットエッチングして第2の開口を形成する第2エッチング段階と、
を更に備える、
項目11または12に記載の半導体装置の製造方法。
[項目14]
被試験デバイスを試験する試験装置であって、
前記被試験デバイスとの間で電気信号を伝送して前記被試験デバイスを試験する試験部と、
前記被試験デバイスおよび前記試験部の間の伝送経路に設けられ、前記被試験デバイスおよび前記試験部の間を電気的に接続するか切断するかを切り替える項目1から10のいずれか一項に記載の半導体装置と、
を備える試験装置。
【符号の説明】
【0088】
10 基板、100 半導体装置、110 化合物半導体層、112 電子走行層、114 スペーサ層、116 電子供給層、121 第1の絶縁膜、122 第2の絶縁膜、123 第3の絶縁膜、131 第1の開口、132 第2の開口、140 ゲート電極、141 本体部、142 段差部、150 保護膜、151 エッチング領域、160 ソース電極、161 エッチング領域、170 ドレイン電極、180 ソース配線、182 ドレイン配線、190 バリアメタル部、191 第1のバリアメタル層、192 第2のバリアメタル層、400 被試験デバイス、410 試験装置、420 試験部、423 試験信号発生部、426 期待値比較部、430 信号入出力部、440 制御装置