(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20240308BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20240308BHJP
F15B 21/042 20190101ALI20240308BHJP
【FI】
E02F9/22 Z
F15B11/02 C
F15B21/042
(21)【出願番号】P 2020080273
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】別府 充心
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-023794(JP,A)
【文献】特開2002-364603(JP,A)
【文献】特開2019-007157(JP,A)
【文献】特開2018-188827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
F15B 11/00-11/22
F15B 20/00-21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
作動油を貯留する作動油タンクと、
前記作動油の温度を検知する温度センサと、
前記エンジンにより駆動され、前記作動油タンクに貯留された前記作動油を圧送する容量可変型の油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから供給される前記作動油によって駆動される走行モータと、
前記走行モータを操作する操作装置と、
前記操作装置の操作量に応じて、前記油圧ポンプの吐出容量を予め定められた目標容量まで上昇させるコントローラと、を備える作業機械において、
前記コントローラは、
前記温度センサで検知された前記作動油の温度が閾値以上の場合に、前記操作装置の操作開始から第1時間までに前記油圧ポンプの吐出容量を前記目標容量まで上昇させ、
前記温度センサで検知された前記作動油の温度が前記閾値未満の場合に、前記操作装置の操作開始から前記第1時間より長く設定された第2時間までに前記油圧ポンプの吐出容量を前記目標容量まで上昇させることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記コントローラには、前記温度センサで検知された前記作動油の温度が低いほど、前記第2時間が長くなるように設定されていることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記コントローラは、
前記温度センサで検知された前記作動油の温度が前記閾値以上の場合に、前記油圧ポンプの吐出容量を第1上昇率で直線的に上昇させ、
前記温度センサで検知された前記作動油の温度が前記閾値未満の場合に、前記油圧ポンプの吐出容量を前記第1上昇率より小さい第2上昇率で直線的に上昇させることを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において、
前記コントローラは、前記温度センサで検知された前記作動油の温度が前記閾値未満の場合に、前記油圧ポンプの吐出容量を、前記目標容量に近づくほど上昇率が小さくなる曲線に沿って上昇させることを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1に記載の作業機械において、
前記コントローラは、前記温度センサで検知された前記作動油の温度が前記閾値未満の場合に、前記油圧ポンプの吐出容量を、前記操作装置の操作開始から前記第1時間より長く且つ前記第2時間より短い第3時間まで最低容量に維持した後、前記目標容量まで上昇させることを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項1に記載の作業機械において、
前記コントローラは、
前記温度センサで検知された前記作動油の温度が前記閾値以上の場合に、前記油圧ポンプの吐出容量を第1上昇率で直線的に上昇させ、
前記温度センサで検知された前記作動油の温度が前記閾値未満の場合に、前記油圧ポンプの吐出容量を前記第1上昇率より小さい第2上昇率で直線的に上昇させた後、前記油圧ポンプの吐出容量を前記目標容量に近づくほど上昇率が小さくなる曲線に沿って上昇させることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧によって駆動する走行モータを備える作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、油圧ポンプから供給される作動油によって回転する走行モータを備える作業機械が知られている。このような作業機械を寒冷地で使用する場合、エンジン始動直後は作動油の粘度が高いので、作動油の抵抗によって油圧負荷が大きくなる。その結果、低温下での走行起動時に、走行モータのドレン圧に高いサージが発生する。
【0003】
また、特許文献1には、冬季等の低温下で建設機械を運転する場合の対策として、作動油の温度が低い場合に、エンジン回転数に対応するポンプの最大流量を低減することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、ポンプの最大流量を制御しているに過ぎないので、最大流量に至るまでは操作量に応じてポンプ流量が増加する。その結果、走行起動時におけるドレン圧のサージを低減できるとはいえない。
【0006】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、油圧によって駆動する走行モータを備える作業機械において、走行起動時におけるドレン圧のサージを低減する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、エンジンと、作動油を貯留する作動油タンクと、前記作動油の温度を検知する温度センサと、前記エンジンにより駆動され、前記作動油タンクに貯留された前記作動油を圧送する容量可変型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される前記作動油によって駆動される走行モータと、前記走行モータを操作する操作装置と、前記操作装置の操作量に応じて、前記油圧ポンプの吐出容量を予め定められた目標容量まで上昇させるコントローラと、を備える作業機械において、前記コントローラは、前記温度センサで検知された前記作動油の温度が閾値以上の場合に、前記操作装置の操作開始から第1時間までに前記油圧ポンプの吐出容量を前記目標容量まで上昇させ、前記温度センサで検知された前記作動油の温度が前記閾値未満の場合に、前記操作装置の操作開始から前記第1時間より長く設定された第2時間までに前記油圧ポンプの吐出容量を前記目標容量まで上昇させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、走行起動時におけるドレン圧のサージを低減することができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る油圧ショベルの側面図である。
【
図4】油圧ショベルに搭載されるセンタージョイントの斜視図である。
【
図6】本実施形態に係る走行操作レバーの操作圧、油圧ポンプの吐出容量、走行モータのモータ回転数、及びドレン圧の推移を示す図である。
【
図7】変形例1に係る走行操作レバーの操作圧、油圧ポンプの吐出容量、走行モータのモータ回転数、及びドレン圧の推移を示す図である。
【
図8】変形例2に係る走行操作レバーの操作圧、油圧ポンプの吐出容量、走行モータのモータ回転数、及びドレン圧の推移を示す図である。
【
図9】変形例3に係る走行操作レバーの操作圧、油圧ポンプの吐出容量、走行モータのモータ回転数、及びドレン圧の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る油圧ショベル1(作業機械)の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、作業機械の具体例は油圧ショベル1に限定されず、ホイールローダ、クレーン、ダンプトラック等でもよい。また、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、油圧ショベル1に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。
【0011】
図1は、本実施形態に係る油圧ショベル1の側面図である。
図2は、キャブ7の一部を破断させた斜視図である。
図1に示すように、油圧ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2により支持された上部旋回体3とを備える。下部走行体2及び上部旋回体3は、車体の一例である。
【0012】
下部走行体2は、無限軌道帯である左右一対のクローラ8a、8b(8bは図示省略)を備える。そして、走行モータ17a、17b(
図3参照)の駆動により、左右一対のクローラ8a、8bが独立して回転する。その結果、油圧ショベル1が走行する。但し、下部走行体2は、クローラ8a、8bに代えて、装輪式であってもよい。
【0013】
上部旋回体3は、旋回モータ(図示省略)によって旋回可能に下部走行体2に支持されている。上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム5と、旋回フレーム5の前方中央に上下方向に回動可能に取り付けられたフロント作業機4(作業装置)と、旋回フレーム5の前方左側に配置されたキャブ(運転席)7と、旋回フレーム5の後部に配置されたカウンタウェイト6とを主に備える。
【0014】
フロント作業機4は、上部旋回体3に起伏可能に支持されたブーム4aと、ブーム4aの先端に回動可能に支持されたアーム4bと、アーム4bの先端に回動可能に支持されたバケット4cと、ブーム4aを駆動させるブームシリンダ4dと、アーム4bを駆動させるアームシリンダ4eと、バケット4cを駆動させるバケットシリンダ4fとを含む。カウンタウェイト6は、フロント作業機4との重量バランスを取るためのもので、上面視円弧形状を成す重量物である。
【0015】
キャブ7には、油圧ショベル1を操作するオペレータが搭乗する内部空間が形成されている。
図2に示すように、キャブ7の内部には、オペレータが着席するシート9と、シート9に着席したオペレータにより操作される操作装置10が配置されている。
【0016】
操作装置10は、油圧ショベル1を動作させるためのオペレータの操作を受け付ける。操作装置10は、走行操作レバー10a、10bと、作業機操作レバー10c、10dとを少なくとも含む。但し、操作装置10は、レバーのみならず、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル、スイッチ等を含んでもよい。
【0017】
走行操作レバー10a、10bは、下部走行体2を走行させるために、オペレータによって操作される。すなわち、オペレータは、走行操作レバー10a、10bを操作することによって、下部走行体2の走行方向(前進、後退、旋回など)と、走行速度とを指示する。また、走行操作レバー10aは左側のクローラ8a(走行モータ17a)に対応し、走行操作レバー10bは右側のクローラ8b(走行モータ17b)に対応する。すなわち、走行操作レバー10a、10bは、走行モータ17a、17bを操作する。作業機操作レバー10c、10dは、上部旋回体3を旋回させ、フロント作業機4を動作させるために、オペレータによって操作される。
【0018】
操作装置10は、オペレータの操作に対応する操作信号を、コントローラ20に出力する。より詳細には、操作信号は、操作装置10の操作方向(例えば、レバーの倒伏方向)と、操作装置10の操作量(例えば、レバーの倒伏量)とを示す。または、操作装置10は、オペレータによる操作方向及び操作量に応じたパイロット圧油を、方向制御弁(図示省略)のパイロットポートに供給してもよい。
【0019】
図3は、油圧ショベル1のハードウェア構成図である。
図4は、油圧ショベル1に搭載されるセンタージョイント16の斜視図である。
図3に示すように、油圧ショベル1は、エンジン11と、作動油タンク12と、油圧ポンプ13、14と、油圧回路15と、センタージョイント16と、走行モータ17a、17bと、温度センサ18と、コントローラ20とを主に備える。
【0020】
エンジン11は、油圧ショベル1を動作させるための駆動力を発生させる駆動源である。作動油タンク12は、油圧アクチュエータ(旋回モータ、ブームシリンダ4d、アームシリンダ4e、バケットシリンダ4f、走行モータ17a、17b)を動作させるための作動油を貯留する。温度センサ18は、作動油タンク12に貯留された作動油の温度(以下、「作動油温度」と表記する。)を検知し、検知結果を示す検知信号をコントローラ20に出力する。なお、温度センサ18の設置位置は、作動油タンク12に限定されず、流路L1~L10の任意の位置でよい。
【0021】
油圧ポンプ13、14は、エンジン11の出力軸11aに連結されて駆動する。油圧ポンプ13、14は、エンジン11により駆動され、作動油タンク12に貯留された作動油を、流路L1、L2を通じて油圧回路15に圧送する。油圧ポンプ13、14は、例えば、容量可変型の油圧ポンプである。より詳細には、油圧ポンプ13、14には、コントローラ20の制御に従って吐出容量を変更するレギュレータ13a、14aが設けられている。
【0022】
油圧回路15は、流路L
1、L
2を通じて油圧ポンプ13、14から供給された作動油を、各油圧アクチュエータに分配する。油圧回路15は、流路L
3、L
4の一方を通じて走行モータ17a、17bに作動油を供給し、流路L
3、L
4の他方を通じて走行モータ17a、17bから排出された作動油を作動油タンク12に還流させる。なお、
図4では、旋回モータ、ブームシリンダ4d、アームシリンダ4e、バケットシリンダ4fに対して作動油を給排する流路の図示を省略する。
【0023】
油圧回路15は、例えば、複数の方向制御弁、電磁比例弁、リリーフ弁などの組み合わせによって構成される。そして、油圧回路15は、オペレータによる操作装置10の操作に従って、油圧アクチュエータへの作動油の供給量及び供給方向を制御する。
【0024】
一例として、油圧回路15は、コントローラ20からの制御信号に従って、油圧アクチュエータへの作動油の供給量及び供給方向を制御してもよい。他の例として、油圧回路15は、方向制御弁のパイロットポートに供給されるパイロット圧油に従って、油圧アクチュエータへの作動油の供給量及び供給方向を制御してもよい。
【0025】
センタージョイント16は、流路L3を通じて油圧回路15から供給された作動油を、流路L5、L7を通じて走行モータ17a、17bに供給し、流路L6、L8を通じて走行モータ17a、17bから排出された作動油を、流路L4を通じて油圧回路15(作動油タンク12)に還流させる。このとき、流路L5、L7は供給流路の一例であり、流路L6、L8は戻り流路の一例である。
【0026】
また、センタージョイント16は、流路L4を通じて油圧回路15から供給された作動油を、流路L6、L8を通じて走行モータ17a、17bに供給し、流路L5、L7を通じて走行モータ17a、17bから排出された作動油を、流路L3を通じて油圧回路15(作動油タンク12)に還流させる。このとき、流路L6、L8は供給流路の一例であり、流路L5、L7は戻り流路の一例である。
【0027】
さらに、センタージョイント16は、流路L
9、L
10を通じて走行モータ17a、17bから排出された作動油を、作動油タンク12に還流させる。なお、
図4に示すように、流路L
9、L
10は、合流してからセンタージョイント16に接続されている。
【0028】
走行モータ17a、17bは、油圧回路15及びセンタージョイント16を通じて油圧ポンプ13、14から供給される作動油によって駆動(回転)する。そして、走行モータ17a、17bが回転することによって、クローラ8a、8bが回転(すなわち、下部走行体2が走行)する。
【0029】
走行モータ17aは、流路L5、L6の一方(供給流路)を通じて供給された作動油のうちの一部を用いて回転し、回転に用いた作動油を流路L5、L6の他方(戻り流路)を通じて作動油タンク12に還流させる。また、走行モータ17aは、供給された作動油のうちの他の一部(余剰な作動油)を、流路L9(ドレン流路)を通じて作動油タンク12に還流させる。
【0030】
同様に、走行モータ17bは、流路L7、L8の一方(供給流路)を通じて供給された作動油のうちの一部を用いて回転し、回転に用いた作動油を流路L7、L8の他方(戻り流路)を通じて作動油タンク12に還流させる。また、走行モータ17bは、供給された作動油のうちの他の一部(余剰な作動油)を、流路L10(ドレン流路)を通じて作動油タンク12に還流させる。
【0031】
流路L
1~L
10は、作動油が通過する管状の部材であって、金属配管やホースなどを組み合わせて構成される。ここで、
図3に示す油圧ショベル1の構成部品のうち、エンジン11、作動油タンク12、油圧ポンプ13、14、及び油圧回路15は、上部旋回体3に収容されている。一方、センタージョイント16及び走行モータ17a、17bは、下部走行体2に収容されている。
【0032】
走行モータ17a、17bのドレン流路である流路L9、L10は、走行モータ17a、17bからセンタージョイント16までの部分が下部走行体2内に配索され、センタージョイント16から作動油タンク12までの部分が上部旋回体3内に配策される。そのため、流路L9、L10は、旋回モータから作動油タンク12に至るドレン流路と比較すると、延設長さが非常に長い。その結果、粘度の高い作動油が流路L9、L10に急激に流入すると、ドレン圧に高いサージが発生する。
【0033】
コントローラ20は、CPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、及びRAM(Random Access Memory)23を備える。コントローラ20は、ROM22に格納されたプログラムコードをCPU21が読み出して実行することによって、後述する処理を実現する。RAM23は、CPU21がプログラムを実行する際のワークエリアとして用いられる。
【0034】
但し、コントローラ20の具体的な構成はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0035】
コントローラ20は、油圧ショベル1全体の動作を制御する。より詳細には、コントローラ20は、操作装置10から出力される操作信号と、温度センサ18から出力される検知信号とに基づいて、レギュレータ13a、14a及び油圧回路15を制御する。
【0036】
次に、
図5及び
図6を参照して、吐出容量制御処理を説明する。
図5は、吐出容量制御処理のフローチャートである。
図6は、本実施形態に係る走行操作レバー10a、10bの操作圧(操作量)、油圧ポンプ13、14の吐出容量、走行モータ17a、17bのモータ回転数、及び流路L
9、L
10を通過する作動油の圧力(ドレン圧)の推移を示す図である。
【0037】
コントローラ20は、オペレータによる走行操作レバー10a、10bの操作が開始された(すなわち、走行操作レバー10a、10bから操作信号が出力された)タイミングで、
図5に示す吐出容量制御処理を開始する。なお、吐出容量制御処理の開始時点において、油圧ポンプ13、14の吐出容量は、予め定められた最低容量に設定されている。
【0038】
まず、コントローラ20は、走行操作レバー10a、10bの操作が開始された時刻t0に温度センサ18から出力された検知信号を取得する。そして、コントローラ20は、取得した検知信号で示される作動油温度と、ROM22或いはRAM23に記憶された閾値とを比較する(S11)。閾値は、走行モータ17a、17bのドレン圧に高いサージが発生する程度に作動油の粘度が高くなる時の温度であって、予め設定された値である。
【0039】
次に、コントローラ20は、時刻t
0における作動油温度が閾値以上だと判定した場合に(S11:Yes)、
図6に実線で示す変化傾向に従って、油圧ポンプ13、14の吐出容量を予め定められた目標容量まで上昇させる(S12)。より詳細には、コントローラ20は、時刻t
0から時刻t
1までの第1時間までに、最低容量から目標容量まで、第1上昇率(第1の傾き)で直線的に吐出容量を上昇させる。第1時間は、予め定められた固定値(例えば、2~3sec)である。第1上昇率は、{(目標容量-最低容量)/(t
1-t
0)}で表される。
【0040】
一方、コントローラ20は、時刻t0における作動油温度が閾値未満だと判定した場合に(S11:No)、作動油温度に応じて第2時間の長さを決定する(S13)。より詳細には、コントローラ20は、作動油温度が高いほど第2時間を短く設定し、作動油温度が高いほど第2時間を長く設定する。なお、第2時間は、第1時間より長く設定された時間(例えば、3~5sec)である。また、ステップS13を省略して、第2の時間を固定値にしてもよい。
【0041】
次に、コントローラ20は、
図6に一点鎖線で示す変化傾向に従って、油圧ポンプ13、14の吐出容量を予め定められた目標容量まで上昇させる(S14)。より詳細には、コントローラ20は、時刻t
0から時刻t
2までの第2時間までに、最低容量から目標容量まで、第2上昇率(第2の傾き)で直線的に吐出容量を上昇させる。第2上昇率は、第1上昇率より小さい上昇率である。第2上昇率は、{(目標容量-最低容量)/(t
2-t
0)}で表される。
【0042】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0043】
上記の実施形態によれば、作動油温度が閾値未満の場合(S14)に、作動油温度が閾値以上の場合(S12)と比較して、吐出容量をゆっくり上昇させる。これにより、吐出容量を目標容量まで上昇させる過程において、流路L9、L10に流入する作動油の量が減少する。
【0044】
ここで、
図6のドレン圧の推移は、作動油温度が閾値未満だと判定した場合において、吐出容量を第1上昇率で上昇(上昇率が高い)させた場合を実線で、吐出容量を第2上昇率で上昇(上昇率が低い)させた場合を一点鎖線で示している。このグラフを参照すれば明らかなように、吐出容量をゆっくり上昇させることによって、ドレン圧のサージを低減することができる。
【0045】
また、上記の実施形態によれば、作動油温度が低いほど第2時間を長くなるように設定するので、作動油の粘度が高いほど吐出容量の上昇率が低くなる。その結果、さらに効果的にドレン圧のサージを低減することができる。
【0046】
なお、ステップS14における吐出容量の変化傾向は、
図6の例に限定されず、ステップS12の変化傾向と比較して、吐出容量の上昇率が低い変化傾向であれば、どのような傾向であってもよい。以下、
図7~
図9を参照して、吐出容量の変化傾向の変形例1~3を説明する。すなわち、コントローラ20は、ステップS14において、
図6~
図9に一点鎖線で示される変化傾向に従って、油圧ポンプ13、14の吐出容量を上昇させればよい。
【0047】
[変形例1]
図7は、変形例1に係る本実施形態に係る走行操作レバー10a、10bの操作圧(操作量)、油圧ポンプ13、14の吐出容量、走行モータ17a、17bのモータ回転数、及び流路L
9、L
10を通過する作動油の圧力(ドレン圧)の推移を示す図である。なお、上記の実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0048】
図7に一点鎖線で示す吐出容量の変化傾向は、予め定められた時定数に従って曲線的に上昇するものである。より詳細には、
図7に一点鎖線で示される曲線は、目標容量に近づくほど上昇率(すなわち、接線の傾き)が小さくなる曲線の変化傾向である。
【0049】
変形例1によれば、目標容量に達する時点直前(すなわち、時刻t
2)において、油圧ポンプ13、14の吐出容量が変化を滑らかにすることができる。その結果、油圧ポンプ13、14の吐出容量が目標容量に達した時点のショックが少なくなる。一方、変形例1では、時刻t
0の近傍における吐出容量の上昇率が
図6より高くなるので、時刻t
0の近傍におけるドレン圧が高くなる傾向がある。
【0050】
[変形例2]
図8は、変形例2に係る本実施形態に係る走行操作レバー10a、10bの操作圧(操作量)、油圧ポンプ13、14の吐出容量、走行モータ17a、17bのモータ回転数、及び流路L
9、L
10を通過する作動油の圧力(ドレン圧)の推移を示す図である。なお、上記の実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0051】
図8に一点鎖線で示す吐出容量の変化傾向は、油圧ポンプ13、14の吐出容量を、時刻t
0から時刻t
3までの第3時間までは最低容量に維持した後、時刻t
3から時刻t
2までは目標容量まで上昇させるものである。
【0052】
第3時間(t3-t0)は、少なくとも第2時間(t2-t0)より短い。一方、第3時間(t3-t0)は、第1時間(t1-t0)より長くてもよいし、第1時間(t1-t0)より短くてもよい。また、コントローラ20は、例えば、時刻t3から時刻t2までは、最低容量から目標容量まで、第1上昇率で直線的に吐出容量を上昇させればよい。
【0053】
変形例2によれば、時刻t0の近傍において、流路L9、L10に流入する作動油の量を最小限にすることができるので、ドレン圧のサージを極限まで低減することができる。一方、変形例2では、時刻t0から時刻t3までの間、走行モータ17a、17bがほとんど回転しないので、走行操作レバー10a、10bの操作に対する追従性は低い。
【0054】
[変形例3]
図9は、変形例3に係る本実施形態に係る走行操作レバー10a、10bの操作圧(操作量)、油圧ポンプ13、14の吐出容量、走行モータ17a、17bのモータ回転数、及び流路L
9、L
10を通過する作動油の圧力(ドレン圧)の推移を示す図である。なお、上記の実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0055】
図9に一点鎖線で示す吐出容量の変化傾向は、
図6に一点鎖線で示す変化傾向と、
図7に一点鎖線で示す変化傾向とを組み合わせたものである。
図9に一点鎖線で示す吐出容量の変化傾向は、油圧ポンプ13、14の吐出容量を、時刻t
0から時刻t
4までの第4時間までは第2上昇率で直線的に上昇させ、時刻t
4から時刻t
2までは予め定められた時定数に従って曲線的に上昇するものである。
【0056】
第4時間(t4-t0)は、少なくとも第2時間(t2-t0)より短い。一方、第4時間(t4-t0)は、第1時間(t1-t0)より長くてもよいし、第1時間(t1-t0)より短くてもよい。
【0057】
変形例3によれば、時刻t0の近傍でドレン圧のサージを低減できるという実施形態の効果と、油圧ポンプ13、14の吐出容量が目標容量に達した時点のショックが少なくなるという変形例1の効果とを両立させることができる。
【0058】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 フロント作業機
4a ブーム
4b アーム
4c バケット
4d ブームシリンダ
4e アームシリンダ
4f バケットシリンダ
5 旋回フレーム
6 カウンタウェイト
7 キャブ
8a,8b クローラ
9 シート
10 操作装置
10a,10b 走行操作レバー
10c,10d 作業機操作レバー
11 エンジン
12 作動油タンク
13,14 油圧ポンプ
13a,14a レギュレータ
15 油圧回路
16 センタージョイント
17a,17b 走行モータ
18 温度センサ
20 コントローラ
21 CPU
22 ROM
23 RAM