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特許7450495トラフィックコーン設置回収装置並びにトラフィックコーンの設置及び回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】トラフィックコーン設置回収装置並びにトラフィックコーンの設置及び回収方法
(51)【国際特許分類】
   E01F 13/02 20060101AFI20240308BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
E01F13/02 A
B60P3/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020142754
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2022038318
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】509274407
【氏名又は名称】中日本ハイウェイ・メンテナンス名古屋株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188765
【弁理士】
【氏名又は名称】赤座 泰輔
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】干村 秀次
(72)【発明者】
【氏名】小池 克尊
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2345303(KR,B1)
【文献】特開平05-331814(JP,A)
【文献】特開2003-206514(JP,A)
【文献】特開平09-279532(JP,A)
【文献】特開2004-052379(JP,A)
【文献】特開2009-096494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 13/02
B60P 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられて、該車両が走行するにつれて円錐形状のトラフィックコーンを路面に設置又は路面から回収するトラフィックコーン設置回収装置であって、
水平方向に延びるとともに該車両の走行方向に対して直交する回動軸を備え、該回動軸について該走行方向における一方の側において、該回動軸を中心として上下に略半回転するように回転する反転装置と、
該反転装置に取り付けられて、該トラフィックコーンの先端部が該回動軸に近く該トラフィックコーンの基端部が該回動軸から遠くなるように該トラフィックコーンを把持する把持装置と、
該反転装置の回動範囲の略下半分において、該把持装置に把持された該トラフィックコーンの該基端部が該反転装置による回動により描く軌跡に沿って設けられ、下端部が該路面付近に配置され、トラフィックコーンの放出を防止する弧状枠体と、
を備えることを特徴とするトラフィックコーン設置回収装置。
【請求項2】
前記把持装置は、該把持装置に固定されて前記トラフィックコーンを支持する支持部材と、該支持部材に対して開閉して該トラフィックコーンを把持する把持部材と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のトラフィックコーン設置回収装置。
【請求項3】
前記支持部材に、前記トラフィックコーンが当接したことを感知するセンサを備え、
該トラフィックコーンの当接により、前記把持部材を閉じ、前記把持装置が該トラフィックコーンを把持することを特徴とする請求項2に記載のトラフィックコーン設置回収装置。
【請求項4】
前記回動軸を挟んで前記走行方向の他方の側に、路面側から立設されるゲートを備えることを特徴とする請求項1に記載のトラフィックコーン設置回収装置。
【請求項5】
前記ゲートの左右の下部から前記走行方向の他方の側に、トラフィックコーンの位置を整えるガイド棒が延設されていることを特徴とする請求項4に記載のトラフィックコーン設置回収装置。
【請求項6】
前記反転装置が固定される枠体本体と、前記車両の荷台の側枠に係合可能であって該枠体本体に上下方向の位置を調節可能に取り付けられる車両側枠体と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のトラフィックコーン設置回収装置。
【請求項7】
請求項1に記載のトラフィックコーン設置回収装置を用いて、前記車両を前記走行方向の前記一方の側に進行させながら前記トラフィックコーンを設置し、該走行方向の他方の側に進行させながら該トラフィックコーンを回収する、ことを特徴とするトラフィックコーンの設置及び回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の工事現場と車道との境界に設置される円錐形状の中空のトラフィックコーン(Traffic cone)の設置と回収を行なう設置回収装置並びにこれを用いたトラフィックコーンの設置及び回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラフィックコーンの設置回収装置として、走行車体の適所に垂直面上で無端状に巡回する左右一対の挟持ベルトを配設し、該挟持ベルトによってトラフィックコーンの大径部を弾力的に挟持させ、挟持ベルトの下方からトラフィックコーンを送出する、トラフィックコーン設置回収装置が、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-331814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたトラフィックコーン設置回収装置は、倒立状態で供給されたトラフィックコーンの大径部を左右一対の挟持ベルトが弾力的に挟持し、挟持ベルトの下方に送り出すことによって、トラフィックコーンを反転させて送出する。しかし、トラフィックコーンは、JIS(日本産業規格)などで規格が定められているものではないため、形状はほどほど統一されていても、弾性率などの規格の異なるトラフィックコーンが存在する。このため、このような弾性率の異なるトラフィックコーンや使用頻度により弾性率が変化したトラフィックコーンを使用した場合には、従来のトラフィックコーン設置回収装置は、挟持ベルトがトラフィックコーンを挟持することができないおそれがあるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記にかんがみて、弾性率などの規格の異なるトラフィックコーンであっても使用することができるトラフィックコーン設置回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るトラフィックコーン設置回収装置は、車両に取り付けられて、該車両が走行するにつれて円錐形状のトラフィックコーンを路面に設置又は路面から回収するトラフィックコーン設置回収装置であって、
水平方向に延びるとともに該車両の走行方向に対して直交する回動軸を備え、該回動軸について該走行方向における一方の側において、該回動軸を中心として上下に略半回転するように回転する反転装置と、
該反転装置に取り付けられて、該トラフィックコーンの先端部が該回動軸に近く該トラフィックコーンの基端部が該回動軸から遠くなるように該トラフィックコーンを把持する把持装置と、
該反転装置の回動範囲の略下半分において、該把持装置に把持された該トラフィックコーンの該基端部が該反転装置による回動により描く軌跡に沿って設けられ、下端部が該路面付近に配置され、トラフィックコーンの放出を防止する弧状枠体と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明のトラフィックコーン設置回収装置によれば、走行方向の一方の側に走行しながら、反転装置によって、トラフィックコーンをその上下を反転させて路面に設置することができ、走行方向の他方の側に走行しながら、路面に設置されたトラフィックコーンをその上下を反転させて回収することができる。トラフィックコーンは、把持装置に把持されて、把持装置の取り付けられた反転装置が回動軸を中心として上下に略半回転することによって、上下が反転される。トラフィックコーンの基端部が反転装置の反転により描く軌跡に沿って、トラフィックコーンの放出を防止する弧状枠体が設けられている。このため、把持装置は、トラフィックコーンを弾性的に挟持することなく軽く把持することによって、トラフィックコーンの放出を防止することができるため、弾性率などの規格の異なるトラフィックコーンであっても使用することができる。
【0008】
ここで、上記トラフィックコーン設置回収装置において、前記把持装置は、該把持装置に固定されて前記トラフィックコーンを支持する支持部材と、該支持部材に対して開閉して該トラフィックコーンを把持する把持部材と、を備えるものとすることができる。
【0009】
これによれば、把持部材の閉じた状態では、把持装置はトラフィックコーンを把持可能とし、把持部材の開いた状態では、トラフィックコーンの設置や回収を容易に行えるものとすることができる。
【0010】
また、上記トラフィックコーン設置回収装置において、前記支持部材に、前記トラフィックコーンが当接したことを感知するセンサを備え、
該トラフィックコーンの当接により、前記把持部材を閉じ、前記把持装置が該トラフィックコーンを把持する構成とすることができる。
【0011】
これによれば、トラフィックコーン設置回収装置は、走行方向の他方の側に走行し、トラフィックコーンを路面から回収する際に、センサが支持部材にトラフィックコーンが当接したことを感知して、把持部材が閉じてトラフィックコーンを把持する。このため、把持装置は、トラフィックコーンを確実に回収することができる。
【0012】
また、上記トラフィックコーン設置回収装置において、前記回動軸を挟んで前記走行方向の他方の側に、路面側から立設されるゲートを備える構成とすることができる。
【0013】
これによれば、トラフィックコーンを路面から回収する際に、トラフィックコーンが路面側から立設されるゲートを通過し、ゲートによってトラフィックコーンの位置が合わせられるため、トラフィックコーンをより確実に回収することができる。
【0014】
また、上記トラフィックコーン設置回収装置において、前記ゲートの左右の下部から前記走行方向の他方の側に、トラフィックコーンの位置を整えるガイド棒が延設されている構成とすることができる。
【0015】
これによれば、トラフィックコーンを路面から回収する際に、ガイド棒によってトラフィックコーンの位置が整えられるため、トラフィックコーンをさらに確実に回収することができる。
【0016】
また、上記トラフィックコーン設置回収装置において、前記反転装置が固定される枠体本体と、前記車両の荷台の側枠に係合可能であって該枠体本体に上下方向の位置を調節可能に取り付けられる車両側枠体と、を備える構成とすることができる。
【0017】
これによれば、車両側枠体が枠体本体に上下方向の位置を調節可能に取り付けられているため、荷台の側枠の高さに制限されることなく、種々の車両にトラフィックコーン設置回収装置を取り付けることができる。
【0018】
また、本発明に係るトラフィックコーンの設置及び回収方法は、上記トラフィックコーン設置回収装置を用いて、前記車両を前記走行方向の前記一方の側に進行させながら前記トラフィックコーンを設置し、該走行方向の他方の側に進行させながら該トラフィックコーンを回収する、ことを特徴とする。
【0019】
これによれば、トラフィックコーンの設置及び回収を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のトラフィックコーン設置回収装置によれば、弾性率などの規格の異なるトラフィックコーンであっても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態のトラフィックコーン設置回収装置の車両に取り付けられた状態の右側面図である。
図2】同正面図である。
図3】同背面図である。
図4】同平面図である。
図5】後方からの同斜視図である。
図6】トラフィックコーンを路面に設置するために、上下を反転させたトラフィックコーンを把持装置に把持させた状態の右側面図である。
図7】トラフィックコーンを路面に設置する途中の図であり、図6の次の状態を示す図である。
図8】トラフィックコーンの路面への設置が完了した図であり、図7の次の状態を示す図である。
図9】トラフィックコーンを路面から回収する途中の図であり、支持部材にトラフィックコーンが当接した状態を示す図である。
図10図9の次の状態を示す図であり、トラフィックコーンが傾いて弧状枠体に乗る状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のトラフィックコーン設置回収装置の実施形態について説明する。図1から図5に示すように、実施形態のトラフィックコーン設置回収装置Aは、車両1の荷台11の右側の側枠12に取り付けられ、トラフィックコーン設置回収装置Aの本体の枠となる枠体本体21と、トラフィックコーンCを小径部側から把持する把持装置4と、枠体本体21に設置されて把持装置4を回動させてトラフィックコーンCのその上下を反転させる反転装置3と、反転装置3の前方下半分側に備えられ、トラフィックコーンCの放出を防止する弧状枠体5と、トラフィックコーン設置回収装置Aの後部に備えられ、回収するトラフィックコーンCの位置を合わせるゲート6と、を備える。実施形態のトラフィックコーン設置回収装置Aは、車両1が前進するにつれて、トラフィックコーンCを設置し、車両1が後退するにつれて、設置されたトラフィックコーンCを回収する。なお、本明細書において、トラフィックコーン設置回収装置Aの向きは、図1から図5に示すように、車両1に備え付けられた状態で、前進方向である運転席1a側を前とし、荷台11側を後とする。上下左右は、車両1の運転者が着座した状態から見た上下左右と同じとし、図示で使用する、FRは前、REは後、UPは上、DOは下、LEは左、RIは右を示す。
【0023】
反転装置3は、把持装置4を、把持装置4が固定されている反転フレーム33ごと前後方向(車両1の走行方向)に沿った鉛直面に沿って反転させる装置である。反転装置3は、図1に示すように、把持装置4がトラフィックコーンCを把持した際のトラフィックコーンCの先端部Ct近傍に回動軸31を備え、回動軸31を中心に、トラフィックコーンCを鉛直面に沿って上下に略半回転するように、把持装置4が固定された反転フレーム33ごと回動させる。反転装置3は、トラフィックコーンCを倒立状態で把持する状態を取る位置(図6)とトラフィックコーンCを正立状態で設置・回収する状態を取る位置(図8)との間を、トラフィックコーンCの基端部Cb(大径部側)が前側に弧を描くように回動し、倒立状態で供給されたトラフィックコーンC又は正立状態で回収したトラフィックコーンCの上下を反転させる。トラフィックコーンCを倒立状態で把持する状態(図6)では、反転装置3は、把持装置4の開口部43aがおよそ真上を向く位置(以下、回動上端位置と記載することがある。)である。トラフィックコーンCを正立状態で設置・回収する状態(図8)では、反転装置3は、把持装置4の開口部43aが真下から回動軸31を中心に20°回動上端位置(図6)方向に戻った位置(以下、回動下端位置と記載することがある。)である。真下から20°戻った位置で、トラフィックコーンCの基端部Cbの後側の端部が路面Rに接し、トラフィックコーンCの設置・回収が可能となるためである。回動下端位置は、後述する弧状枠体5の後端位置5bとおよそ同じになる。反転装置3の反転動力にはモータ32が使用される。トラフィックコーン設置回収装置Aの電源は、図示しない発電機によって賄われる。
【0024】
把持装置4は、図1図4及び図5に示すように、トラフィックコーンCを支持する支持部材41と、支持部材41に対して開閉しトラフィックコーンCを把持する把持部材42と、を備える。支持部材41と把持部材42は、それぞれの内側が高さ方向に沿って二分割した半円錐形状の凹形状を有し、閉じた状態では、支持部材41と把持部材42の内側が円錐形状の凹形状の挟み部43を形成し、大径部側に、開口した開口部43aが形成される。把持装置4は、円錐形状の凹形状の挟み部43が形成されているため、トラフィックコーンCの円錐形状の先端部Ct側(小径部側)の把持を容易なものとしている。
【0025】
支持部材41は、把持装置4に対して固定され、把持装置4が固定されている後述する反転装置3の反転フレーム33に対して固定されている。把持部材42は、図1及び図5に示すように、支持部材41と把持部材42のそれぞれの左側に設けられた回動軸44を中心に回動し、挟み部43を開閉する。把持装置4は、挟み部43を開いた状態で、トラフィックコーンCを設置又は回収し、挟み部43を閉じた状態で、トラフィックコーンCの先端側を把持する。把持部材42は、油圧シリンダ(図示せず)によって挟み部43を開閉する。
【0026】
車両1が前進するにつれてトラフィックコーンCを設置する際に、トラフィックコーンCを把持した把持装置4は、反転装置3によって、回動上端位置(図6)から回動下端位置(図7)に回動され、回動下端位置に到達したとき、把持部材42が後方に開放され、図8に示す如く、トラフィックコーンCを路面Rに設置する。
【0027】
支持部材41の内側には、トラフィックコーンCが当接したことを感知するセンサ46としての光センサが備えられている(図3)。車両1が後退するにつれて設置されたトラフィックコーンCを回収する際に、センサ46がトラフィックコーンCの当接を感知すると、把持装置4は、挟み部43を開いた状態から閉じた状態にするように把持部材42を回動させて、トラフィックコーンCの先端部Ct側を把持し、反転装置3によって、回動下端位置から回動上端位置に回動され、トラフィックコーンCが回収される。
【0028】
弧状枠体5は、把持装置4が反転装置3によって上下を反転される際に、トラフィックコーンCが把持装置4から外れて放出されるのを防止するガイドである。弧状枠体5は、図1に示すように、トラフィックコーンCの基端部Cbが反転装置3による回動により描く軌跡である上下の半円周方向のうち、トラフィックコーンCが自重によって落下するおそれがある、基端部Cbが描く軌跡の略下半分の外側に設けられている。具体的には、弧状枠体5は、反転装置3の回動軸31から水平方向前方に伸びる仮想の直線とトラフィックコーンCの基端部Cbの軌跡である円周の若干外側とが交差する位置(前端位置5a)から、トラフィックコーンCの基端部Cbの軌跡である円周の若干外側に沿って下後方に伸び、回動軸31の真下から回動軸を中心に上前方に20°戻った位置(後端位置5b)まで設けられている。弧状枠体5の内側5c(後面側)(図3図5)は、摩擦係数の低いフッ素樹脂板が接合され、トラフィックコーンCが当接したときの抵抗を小さくしている。弧状枠体5は、連結部材52を介して枠体本体21に連結されている。なお、反転装置3の回動範囲のうちの略上半分においては、トラフィックコーンCの先端部Ctが基端部Cbよりも下方に位置することとなり、トラフィックコーンCの尖った先端が、把持装置4の開口部43a側から、挟み部43の奥の狭窄された部分に侵入し、把持装置4から外れて放出されるおそれがないため、弧状枠体5は設けられていない。
【0029】
トラフィックコーンCは、把持装置4によって把持されるが、弧状枠体5が設けられていることによって、把持装置4から外れて放出されるのが防止される。このため、把持装置4によるトラフィックコーンCの把持は、トラフィックコーンCを弾性的に挟持することなく軽く把持することで足りるため、形状がほどほど統一されていれば、弾性率などの規格の異なるトラフィックコーンCであっても使用することができるものとなる。
【0030】
弧状枠体5の後端位置5bは、反転装置3の回動下端位置に相当し、トラフィックコーンCの設置の場又は回収の場となる。弧状枠体5の後端位置5bの下側に、補助輪53が取り付けられ、車両1の走行中に、弧状枠体5の下端部(後端位置5bにあたる部分)が路面Rに接触しても、走行の妨げとならないように構成されている。弧状枠体5の下端部は、連結部材52の取付位置の調整により、上下に昇降可能な構造となっている。
【0031】
枠体本体21は、図1に示すように、トラフィックコーン設置回収装置Aの本体となる矩形の骨組みからなる枠体であり、中央に、把持装置4を反転する反転装置3が設置され、前方下側に、弧状枠体5が連結され、後方に、後述するゲート6が連結される。枠体本体21の後方下側には、車両1の車速や走行距離を検知する補助輪25が取り付けられている。
【0032】
図2及び3に示すように、枠体本体21の上側の左側に、車両1の荷台11の側枠12に係合可能な車両側枠体22が取り付けられる。車両側枠体22は、下方が開放されたコ字形状をなし、コ字形状が側枠12を把持するように形成され、枠体本体21に対して上下方向の位置を調節して固定することができるように構成されている。具体的には、枠体本体21の上側の左側に、上下方向の複数のネジ穴からなるネジ穴群(図示せず)が前後に2列設けられ、車両側枠体22の右側の前後に、2列のネジ穴群と同じ間隔でネジ(図示せず)が突出し、側枠12の路面Rからの高さに応じて、ネジを適切な高さのネジ穴に結合させることにより、上下方向の位置を調節して固定される。これにより、トラフィックコーン設置回収装置Aは、荷台11の側枠12の路面Rからの高さに制限されることなく、種々の車両1に取り付けることができる。
【0033】
枠体本体21の下側と車両1のフレーム(シャーシ)との間は、図2及び図3に示すように、アーム24が連結されている。アーム24によって、枠体本体21つまりトラフィックコーン設置回収装置Aは、使用中(走行中)に発生する振動からのガタツキを抑制することができる。
【0034】
ゲート6は、図1及び図5に示すように、枠体本体21の後方に取り付けられ、下方が開放されたコ字形状をなし、左右にポール61をそれぞれ備える。ゲート6は、設置されたトラフィックコーンCを、車両1を後退させながら回収する際に、左右の位置を調整し、トラフィックコーンCを確実に回収することができるように誘導するものである。トラフィックコーンCの基端部Cbは、ゲート6の下側を通る。ゲート6は、ポール61の下端側に、後方に向けてそれぞれ左右の幅が拡幅するように、ガイド棒62が備えられている。ガイド棒62によって、トラフィックコーンCを回収する際に、トラフィックコーンCが設置された左右の位置のズレを吸収して整え、トラフィックコーンCを左右のポール61間に通すことにより、トラフィックコーン設置回収装置Aは、トラフィックコーンCを確実に回収することができる。
【0035】
図3及び図5に示すように、ゲート6の上側の左右方向の中心の鉛直方向に、ゲート6の左右の中心を示す赤色の中心指標63が設けられている。操作者(運転者)は、設置されたトラフィックコーンCを回収する際に、車両1のサイドミラ越しに、中心指標63と回収するトラフィックコーンCが重なって映って見えることを確認することにより、トラフィックコーンCを確実に回収することができる。
【0036】
トラフィックコーン設置回収装置Aは、反転装置3による反転、把持装置4による開閉、これらの動作を組み合わせることによって、トラフィックコーンCを路面Rに設置又は路面Rから回収させることができる。反転装置3による反転、把持装置4による開閉、これら動作は、車両1に取り付けられた操作盤16によって操作可能に制御されている。
【0037】
次に、実施形態のトラフィックコーン設置回収装置Aの動作について、トラフィックコーンCを路面Rに設置する動作と、トラフィックコーンCを路面Rから回収する動作と、に分けて説明する。
【0038】
(トラフィックコーンCを路面Rに設置する動作)
トラフィックコーンCを設置する動作は、車両1を前進させながら、図6図7そして図8の順に示すように、行なう。設置は、運転者と作業者の2名で行なう。車両1を運転する運転者が、トラフィックコーンCを設置する左右方向の位置を調整しつつハンドル操作を行ない、一定の速度となるようにアクセル操作を行なう。荷台11上の作業者が、操作盤16を用いて、トラフィックコーンCを設置する距離の間隔と車両1の速度から、設置する時間の間隔を定めて、トラフィックコーン設置回収装置Aを操作するとともに、トラフィックコーンCを把持装置4に把持させて供給する。
【0039】
反転装置3は、回動上端位置、つまり、トラフィックコーンCを倒立状態で把持する状態(図6)になるように、把持装置4を回動させる。次に、荷台11上の作業者が、倒立状態のトラフィックコーンCを把持装置4の開口部43aから投入し、トラフィックコーンCを把持装置4に把持させる。このとき、トラフィックコーンCの尖った先端が、把持装置4の開口部43a側から、挟み部43の奥の狭窄された部分に侵入し、挟み部43が円錐形状の凹形状であるため、先端と凹形状とが合致し、トラフィックコーンCは、把持装置4に把持される。
【0040】
トラフィックコーンCを把持した把持装置4は、反転装置3によって上下が反転される。このとき、開口部43a側(トラフィックコーンCの基端部Cb側)が回動軸31を中心に前側に弧を描いて下側に回動する。回動によって、開口部43a側が前側から下側に差し掛かったとき、トラフィックコーンCは、把持装置4の挟み部43から放出し得る状態となるが、トラフィックコーンCの基端部Cbが反転装置3の回動により描く軌跡に沿って、弧状枠体5が設けられているため、把持装置4からの放出が防止される。
【0041】
トラフィックコーン設置回収装置Aには、弧状枠体5が設けられているため、把持装置4がトラフィックコーンCを弾性的に挟持することなく把持することによって、トラフィックコーンCの放出が防止されるため、形状がほどほど統一されていれば、弾性率などの規格が異なるトラフィックコーンCであっても使用することができる。
【0042】
反転装置3の回動によって、把持装置4を、回動下端位置、つまり、トラフィックコーンCを正立状態で設置する状態(図7)の位置まで移動させる。このとき、トラフィックコーンCの基端部Cbの後側が路面Rに接する。これと同時に、把持装置4の把持部材42が操作盤16の制御によって回動し、トラフィックコーンCを把持している挟み部43の後方を開放する。トラフィックコーンCの基端部Cbの後側の端部が路面Rに接し、挟み部43の後方が開放されているため、トラフィックコーンCは、引きずられるように、路面に設置される(図8)。
【0043】
把持装置4が、回動上端位置、つまり、トラフィックコーンCを倒立状態で把持する状態(図6)になるように、反転装置3を回動させ、繰り返し、トラフィックコーンCを設置することによって、連続してトラフィックコーンCを路面Rに配置することができる。
【0044】
(トラフィックコーンCを路面Rから回収する動作)
トラフィックコーンCを回収する動作は、車両1を後退させながら、図8図9図10そして図6の順に示すように、路面Rから回収する。なお、図6は、トラフィックコーンCを路面Rに設置するために、上下を反転させたトラフィックコーンCを把持装置4に把持させた状態を示す図であるが、トラフィックコーンCを路面Rから回収した状態を示す図と同様となる。回収は、トラフィックコーンCを路面Rに設置する動作と同様に、運転者と作業者の2名で行なう。車両1を運転する運転者が、サイドミラ越しに、ゲート6の中心指標63と回収するトラフィックコーンCが重なるようにハンドル操作を行ないながら、車両1を後退させる。荷台11上の作業者が、操作盤16を用いてトラフィックコーン設置回収装置Aを操作するとともに、回収されたトラフィックコーンCを荷台11に積載する。
【0045】
回収されるトラフィックコーンCは、ゲート6を通過することにより、左右の位置が調整され、確実に、トラフィックコーン設置回収装置Aに回収される位置に調整される。このとき、トラフィックコーンCの位置がゲート6の中心からずれている場合であっても、後方(進行方向)に向けてそれぞれ左右の幅が拡幅するように備えられたガイド棒62によって、トラフィックコーンCは、ゲート6の中心に誘導される。
【0046】
ゲートを通過したトラフィックコーンCは、図9に示すように、小径部側の先端部Ctの前側が把持装置4の支持部材41に当接する。前側から先端部Ctを当接されたトラフィックコーンCは、図10に示すように、先端部Ct側が後方に傾くと同時に、基端部Cbの前側が上方に上がり、弧状枠体5に掬い上げられ得る状態となる。なお、弧状枠体5の後端位置5bは、トラフィックコーンCを掬い上げやすいように、最も下側の位置(補助輪53が路面Rに当接する位置)にする。このとき、弧状枠体5の下端部(後端位置5b)は、路面Rの直上に配置される。把持装置4は、トラフィックコーンCが支持部材41に当接すると、センサ46(図9)がトラフィックコーンCの当接を感知し、挟み部43を開いた状態から閉じた状態に把持部材42を回動させて、トラフィックコーンCの先端側を把持する(図7と同じ状態となる)。
【0047】
トラフィックコーンCを把持した把持装置4は、反転装置3によって上下が反転される。このとき、開口部43a側(トラフィックコーンCの基端部Cb側)が回動軸31を中心に前側に弧を描いて上側に回動する。開口部43a側の向きが前側から下側となる回動の位置では、トラフィックコーンCは、把持装置4の挟み部43から放出し得る状態となるが、トラフィックコーンCの基端部Cbが反転装置3の回動により描く軌跡に沿って、弧状枠体5が設けられているため、把持装置4からの放出が防止される。
【0048】
把持装置4が、回動上端位置、つまり、トラフィックコーンCを倒立状態で把持する状態(図6と同じ状態)まで回動され、トラフィックコーンCは、作業者によって引き上げられ、荷台11に積載される。
【0049】
把持装置4を、回動下端位置、つまり、つまり、トラフィックコーンCを正立状態で回収し得る状態(図8)になるように、反転装置3を回動させ、繰り返し、トラフィックコーンCを回収することができる。
【0050】
(その他実施形態)
実施形態のトラフィックコーン設置回収装置Aは、その構成を以下のような形態に変更しても実施することができる。
【0051】
実施形態のトラフィックコーン設置回収装置Aでは、反転装置3の回動下端位置(弧状枠体5の後端位置5b)は、把持装置4の開口部43aが真下から回動軸31を中心に倒立状態で把持する状態(図6)方向に20°方向に戻った位置としたが、弧状枠体5の後端位置は、回動軸31を中心に0~45°戻る角度の位置であれば、トラフィックコーンCの設置時に、基端部Cbの後側の端部を路面Rに接することができ、トラフィックコーンCを設置させることができる。戻る角度が0°未満(つまり、回動軸31の中心より後方に弧状枠体5を延設)の場合には、トラフィックコーンCの設置時に、基端部Cbの後側の端部を路面Rに接することができないおそれがある。一方、戻る角度が45°を超えると、設置時にトラフィックコーンCが傾き過ぎ、トラフィックコーンCが倒れてしまうおそれがある。より好ましくは、戻る角度は、5~35°であり、さらに好ましくは、15~25°である。
【0052】
実施形態のトラフィックコーン設置回収装置Aでは、支持部材41に備えられたトラフィックコーンCの当接を感知するセンサに、光センサを用いたが、センサは、トラフィックコーンCの当接を感知するものであれば使用することができ、例えば、圧力センサ、変位センサ、通電センサなども使用することができる。
【0053】
実施形態のトラフィックコーン設置回収装置Aでは、把持装置4は、支持部材41と把持部材42のそれぞれの左側に設けられた回動軸44を中心に回動し、挟み部43を開閉する構成としたが、回動軸44は、支持部材41と把持部材42のそれぞれの上側又は右側に設けても良い。
【0054】
実施形態のトラフィックコーン設置回収装置Aは、車両1の荷台11の右側の側枠12に取り付けられ、前進しながらトラフィックコーンCを設置し、後退しながら設置されたトラフィックコーンCを回収する構成としたが、もちろん、実施形態のトラフィックコーン設置回収装置Aについて、前後の構成の入れ替えや、左右の構成を入れ替え、とする構成としても良い。
【0055】
(その他の技術的思想)
以上のように構成された実施形態のトラフィックコーン設置回収装置Aから把握されるその他の技術的思想について、以下に記載する。
【0056】
上記トラフィックコーン設置回収装置Aにおいて、前記支持部材が内側に円錐形状の凹形状を有し、前記把持部材が内側に円錐形状の凹形状を有するものとすることができる。
【0057】
これによれば、把持部材の閉じた状態で、把持装置はトラフィックコーンの把持を容易なものとすることができる。
【0058】
上記トラフィックコーン設置回収装置Aにおいて、前記枠体本体の下側と前記車両のフレームとがアームによって連結されている構成とすることができる。
【0059】
これによれば、枠体本体の下側と車両のフレームとがアームによって連結されているため、枠体本体のガタツキを抑制することができる。
【0060】
上記トラフィックコーン設置回収装置Aを備える車両。これによれば、トラフィックコーンの設置及び回収を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0061】
1…車両、1a…運転席、3…反転装置、4…把持装置、5…弧状枠体、5a…前端位置、5b…後端位置、5c…内側、6…ゲート、11…荷台、12…側枠、16…操作盤、21…枠体本体、22…車両側枠体、24…アーム、25…補助輪、31…回動軸、33…反転フレーム、41…支持部材、42…把持部材、43…挟み部、43a…開口部、44…回動軸、46…センサ、52…連結部材、53…補助輪、61…ポール、62…ガイド棒、63…中心指標、A…トラフィックコーン設置回収装置、C…トラフィックコーン、Cb…基端部、Ct…先端部、R…路面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10