(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】車両用サイドミラー
(51)【国際特許分類】
B60R 1/07 20060101AFI20240308BHJP
B60R 1/06 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
B60R1/07
B60R1/06 D
(21)【出願番号】P 2020149040
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000147660
【氏名又は名称】株式会社ペンストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 慎治
(72)【発明者】
【氏名】大田垣 宏亨
(72)【発明者】
【氏名】河野 康之
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雅之
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-175260(JP,A)
【文献】特表2017-537014(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0194203(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109927631(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/06 - 1/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側部に配設される車両用サイドミラーにおいて、
車両に取り付けられるミラーベースと、
ミラーが固定されたミラーハウジングと、
前記ミラーハウジングを前記ミラーベースに対して回動させることによって格納状態と使用状態とに切り替える電動格納ユニットと、
前記ミラーの角度を調整する角度調整ユニットとを備え、
前記電動格納ユニットは、前記ミラーベースに固定されて上方へ延びる支軸と、該支軸に対して回動可能に支持される格納ユニットケーシングと、該格納ユニットケーシングに収容され、該格納ユニットケーシングを前記支軸の軸芯まわりに回動させる格納用電動モータとを備え、
前記支軸には、前記軸芯上に中心が位置する球面の一部で構成された支持面部が当該支軸の径方向外方へ膨出するように設けられ、
前記ミラーハウジングには、前記格納ユニットケーシングに固定されるブラケットが収容され
、
前記ミラーハウジングには、前記支持面部に沿うように形成された摺接面部を有する可動部材が固定され、
前記可動部材は、前記支軸に対して前記軸芯まわりに回動可能に、かつ、
前記支持面部の中心をとおり車幅方向に延びる軸周りに傾動可能に
前記支持面部によって支持され
、
前記角度調整ユニットは、調整ユニットケーシングと、該調整ユニットケーシングに対して進退動作する進退部材と、前記調整ユニットケーシングに収容され、前記進退部材を進退駆動する調整用電動モータとを備え、
前記調整ユニットケーシングと前記進退部材の先端部との一方が前記ブラケットに取り付けられ、他方が前記ミラーに取り付けられていることを特徴とする車両用サイドミラー。
【請求項2】
請求項
1に記載の車両用サイドミラーにおいて、
前記角度調整ユニットは、前記ミラーの左右方向の角度調整を行う左右方向角度調整ユニットと、前記ミラーの
上下方向の角度調整を行う上下方向角度調整ユニットとを含んでいることを特徴とする車両用サイドミラー。
【請求項3】
請求項
2に記載の車両用サイドミラーにおいて、
前記上下方向角度調整ユニットは、前記可動部材よりも上側に配置されていることを特徴とする車両用サイドミラー。
【請求項4】
請求項
2または
3に記載の車両用サイドミラーにおいて、
前記左右方向角度調整ユニットは、前記支軸よりも車幅方向外側に配置されていることを特徴とする車両用サイドミラー。
【請求項5】
請求項
1から
4のいずれか1つに記載の車両用サイドミラーにおいて、
前記支持面部は、前記支軸の上下方向中間部に設けられ、
前記可動部材は、前記支持面部に対して上から重なるように配置され、
前記格納ユニットケーシングは、前記可動部材の上側に配置され、前記支軸に取り付けられていることを特徴とする車両用サイドミラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両の側部に設けられる車両用サイドミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に自動車の側部にはサイドミラーが配設されている。この種のサイドミラーとしては、例えば特許文献1に開示されているように、ドアに固定されるミラーベースと、ミラーベースに対して支持されるミラーハウジングとを備えており、ミラーハウジングに、後方視界を確保するための鏡面を有するミラーが取り付けられている。また、ミラーハウジングには、当該ミラーハウジングを格納状態と使用状態とに切り替えるための電動格納ユニットが設けられるとともに、ミラーの角度調整を行うための角度調整ユニットも設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用サイドミラーの設計現場では、レギュレーションによって定められた後方視界要件を満たすことができる大きさの鏡面サイズが決定された上で、その鏡面サイズを有するミラーを囲むようにミラーハウジングの形状が決定される。このとき、特許文献1のようにミラーの角度調整を行う構造の場合、調整時にミラーを傾動させることになるので、ミラーの周縁部とミラーハウジングの内面との間に、ミラーの傾動を許容するための隙間を設けておく必要がある。しかも、この隙間はミラーの周囲全周に必要であるため、その隙間を見込んでミラーハウジングの形状を決定することになり、このことはミラーハウジングの大型化を招いてしまう。
【0005】
その一方で、車両のデザイン上の要求からサイドミラーを小型化したい場合や、空力性能の観点からサイドミラーを小型化したい場合、運転時の斜め前方の視界拡大のためにサイドミラーを小型化したい場合等があり、ミラーハウジングの小型化が望まれている。しかし、上述したようにミラーの角度調整を可能にするためにミラーの周囲全周に亘って隙間を確保しなければならず、ミラーハウジングの小型化が困難であった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ミラーの角度調整可能にしながら、ミラーハウジングの小型化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、車両の側部に配設される車両用サイドミラーにおいて、車両に取り付けられるミラーベースと、ミラーが固定されたミラーハウジングと、前記ミラーハウジングを前記ミラーベースに対して回動させることによって格納状態と使用状態とに切り替える電動格納ユニットと、前記ミラーの角度を調整する角度調整ユニットとを備え、前記電動格納ユニットは、前記ミラーベースに固定されて上方へ延びる支軸と、該支軸に対して回動可能に支持される格納ユニットケーシングと、該格納ユニットケーシングに収容され、該格納ユニットケーシングを前記支軸の軸芯まわりに回動させる格納用電動モータとを備え、前記支軸には、前記軸芯上に中心が位置する球面の一部で構成された支持面部が当該支軸の径方向外方へ膨出するように設けられ、前記ミラーハウジングには、前記格納ユニットケーシングに固定されるブラケットが収容され、前記ミラーハウジングには、前記支持面部に沿うように形成された摺接面部を有する可動部材が固定され、前記可動部材は、前記支軸に対して前記軸芯まわりに回動可能に、かつ、前記支持面部の中心をとおり車幅方向に延びる軸周りに傾動可能に前記支持面部によって支持され、前記角度調整ユニットは、調整ユニットケーシングと、該調整ユニットケーシングに対して進退動作する進退部材と、前記調整ユニットケーシングに収容され、前記進退部材を進退駆動する調整用電動モータとを備え、前記調整ユニットケーシングと前記進退部材の先端部との一方が前記ブラケットに取り付けられ、他方が前記ミラーに取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、ミラーハウジングに可動部材が固定されており、その可動部材が電動格納ユニットの支軸に対して軸芯まわりに回動可能になっているので、ミラーハウジングは支軸の軸芯まわりに回動可能に支持された状態になる。また、可動部材は支軸に対して車両前後方向に傾動可能になっているので、ミラーハウジングも車両前後方向に傾動可能な状態になる。
【0009】
また、例えば角度調整ユニットの調整ユニットケーシングをミラーに取り付け、進退部材の先端部をブラケットに取り付けた場合に、進退部材を進退させると、ブラケットが格納ユニットケーシングに固定されているので、ミラーに対して進退部材の進退方向の力が作用する。このミラーはミラーハウジングに固定されているので、進退部材の進退方向の力はミラーを介してミラーハウジングに作用する。ミラーハウジングは上述したように支軸に対して回動及び傾動可能な状態になっているので、ミラーハウジングが回動及び傾動する。
【0010】
つまり、ミラーをミラーハウジングに固定した状態にしておきながら、ミラーの角度調整が可能になるので、従来のようにミラーの周縁部とミラーハウジングとの間にミラーを傾動させるための隙間を設ける必要はなくなり、その結果、ミラーハウジングを小型化することができる。
【0011】
また、格納ユニットケーシングを支軸の軸芯まわりに回動させると、格納ユニットケーシングに固定されたブラケットが軸芯まわりに回動することになる。ブラケットには角度調整ユニットの進退部材の先端部が取り付けられているので、格納ユニットケーシングの回動力はブラケット及び角度調整ユニットを介してミラー及びミラーハウジングに作用し、これにより、ミラー及びミラーハウジングを支軸の軸芯まわりに回動させて格納状態と使用状態とに切り替えることができる。
【0012】
尚、角度調整ユニットの調整ユニットケーシングをブラケットに取り付け、進退部材の先端部をミラーに取り付けてもよい。また、ミラーの裏面にミラーホルダのような部材が設けられている場合、そのミラーホルダもミラーを構成する部材の一つとすることができ、調整ユニットケーシングまたは進退部材の先端部をミラーホルダに取り付けることができる。
【0013】
また、支軸の支持面部に可動部材の摺接面を当接させることで、可動部材を支持面部に沿って回動及び傾動させることができる。
【0014】
第2の発明は、前記角度調整ユニットは、前記ミラーの左右方向の角度調整を行う左右方向角度調整ユニットと、前記ミラーの左右方向の角度調整を行う上下方向角度調整ユニットとを含んでいることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、左右方向角度調整ユニット及び上下方向角度調整ユニットによってミラーの角度を任意の方向に調整できる。
【0016】
第3の発明は、前記上下方向角度調整ユニットは、前記可動部材よりも上側に配置されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、上下方向角度調整ユニットの進退部材の進退方向の力によって可動部材を傾動させると、ミラーの角度が上下方向に変化するので、上下方向の角度調整が可能になる。
【0018】
第4の発明は、前記左右方向角度調整ユニットは、前記支軸よりも車幅方向外側に配置されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、左右方向角度調整ユニットの進退部材の進退方向の力によって可動部材を軸芯まわりに回動させることができる。これにより、ミラーの角度が左右方向に変化するので、左右方向の角度調整が可能になる。
【0020】
第5の発明は、前記支持面部は、前記支軸の上下方向中間部に設けられ、前記可動部材は、前記支持面部に対して上から重なるように配置され、前記格納ユニットケーシングは、前記可動部材の上側に配置され、前記支軸に取り付けられていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、可動部材が支持面部と格納ユニットケーシングとの間に配置され、可動部材の下方への移動が支持面部によって規制され、可動部材の上方への移動が格納ユニットケーシングによって規制されるので、可動部材を所定位置で位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ミラーをミラーハウジングと共に動かして角度調整することができるので、ミラーの周縁部とミラーハウジングとの間にミラーを傾動させるための隙間を設けずに済み、ミラーハウジングを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態1に係る車両用サイドミラーを車両後側から見た図である。
【
図2】上記車両用サイドミラーを車幅方向外側から見た側面図である。
【
図3】上記車両用サイドミラーの分解斜視図である。
【
図4】ミラーハウジングを省略した車両用サイドミラーを車両前側から見た図である。
【
図5】可動部材を支軸に装着した状態を上方から見た斜視図である。
【
図6】電動格納ユニットと可動部材の縦断面図である。
【
図7】ミラー、角度調整ユニット及びブラケットの斜視図である。
【
図9】ミラー及び角度調整ユニットを前方から見た斜視図である。
【
図10】進退部材を後退させた状態の角度調整ユニットの断面図である。
【
図11】進退部材を進出させた状態の角度調整ユニットの断面図である。
【
図12】本発明の実施形態2に係る車両用サイドミラーを左右方向に延びる鉛直面で切断した場合の断面図である。
【
図13】実施形態2に係る車両用サイドミラーを前後方向に延びる鉛直面で切断した場合の断面図である。
【
図14】実施形態2に係る車両用サイドミラーを水平面で切断した場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る車両用サイドミラー1を車両後側から見た図である。車両用サイドミラー1は、例えば自動車の側部に配設されるドア(図示せず)の前端部に固定されて主に後方確認用として使用される、いわゆるドアミラーである。この実施形態では、車両の右側に設けられる車両用サイドミラー1について説明するが、図示しない左側に設けられる車両用サイドミラーは、右側のものと左右対称構造であることから説明を省略する。尚、この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車幅方向左側を単に「左」といい、車幅方向右側を単に「右」というものとする。
【0026】
図3に示すように、車両用サイドミラー1は、ミラーベース2と、ミラー3と、ミラーハウジング4と、電動格納ユニット5と、左右方向角度調整ユニット6と、上下方向角度調整ユニット7と、ブラケット8と、可動部材9とを備えている。ミラーベース2は、車両、即ちドアに対して回動不能に取り付けられ、ミラー3やミラーハウジング4等を支持する部材である。
【0027】
ミラー3は、後方視認用の鏡面を有するミラー本体30と、ミラーホルダ31とを有している。ミラーホルダ31はミラー3の一部を構成する部材である。ミラー本体30をミラーホルダ31から取り外した状態を示す
図7において、ミラーホルダ31は、ミラー本体30の前面が貼り付けられるミラー取付板部32を有している。ミラー取付板部32は上下方向に延びている。
図9に示すように、ミラー取付板部32の前面には、左右方向角度調整ユニット6が取り付けられる右側取付座33と、上下方向角度調整ユニット7が取り付けられる上側取付座34とが設けられている。ミラー取付板部32、右側取付座33及び上側取付座34は樹脂材により一体成形されている。右側取付座33は、ミラー本体30の左右方向中央部よりも右に偏位している。これにより、左右方向角度調整ユニット6は、支軸51よりも車幅方向外側に配置されることになる。また、上側取付座34は、ミラー本体30の上下方向中央部よりも上に偏位している。
【0028】
図1~
図3に示すように、ミラーハウジング4は、リヤ側カバー40と、フロント側カバー41とを有している。リヤ側カバー40とフロント側カバー41とは互いに結合されて一体化されている。リヤ側カバー40及びフロント側カバー41は共に樹脂材で構成することができ、車両用サイドミラー1の意匠面を形成する部材である。リヤ側カバー40の後端部には、ミラーホルダ31が嵌め込まれる枠部40aが形成されている。リヤ側カバー40は、枠部40aにおける左側(車幅方向内側)から前方へ延びる内方カバー部40bを有している。フロント側カバー41は、リヤ側カバー40の内方カバー部40bの縁部から右側(車幅方向外側)へ向けて延びるとともに、前方へ向けて膨出するように形成されている。リヤ側カバー40と、フロント側カバー41とで形成される空間に、電動格納ユニット5、左右方向角度調整ユニット6、上下方向角度調整ユニット7、ブラケット8及び可動部材9が収容されている。
【0029】
電動格納ユニット5は、ミラーハウジング4をミラーベース2に対して回動させることによって格納状態と使用状態とに切り替えるためのユニットである。電動格納ユニットは、ミラーベース2に固定されて上方へ延びる支軸51と、該支軸51に対して回動可能に支持される格納ユニットケーシング(回動ケーシング)50と、該格納ユニットケーシング50に収容され、該格納ユニットケーシング50を支軸51の軸芯Aまわりに回動させる格納用電動モータ52(
図3に破線で示す)とを備えている。格納ユニットケーシング50を支軸51の軸芯Aまわりに回動させることによってミラーハウジング4をミラーベース2に対して回動させることができる。
【0030】
図6に示すように、格納ユニットケーシング50の内部には、ミラーハウジング4に対して外部から大きな力が作用した際にミラーハウジング4の回動を許容するクラッチ機構53が設けられている。このクラッチ機構53の構造は従来から周知である。また、格納用電動モータ52による格納ユニットケーシング50の回動構造についても従来から周知であるため、詳細な説明は省略する。格納用電動モータ52は、車室内に設けられたスイッチ(図示せず)によって動作する点も従来から周知である。
【0031】
支軸51の基端部(下端部)は、ミラーベース2に対して回動不能となるように、締結部材等(図示せず)によって固定されている。支軸51の軸芯Aは上下方向に延びており、この軸芯Aは鉛直であってもよいし、鉛直線に対して傾斜していてもよい。軸芯Aは、格納ユニットケーシング50の回動中心である。支軸51とミラーベース2とを一体成形して1つの部材で構成してもよい。
【0032】
支軸51は、中空軸で構成することができる。支軸51の上側部分は、格納ユニットケーシング50に収容されている。すなわち、格納ユニットケーシング50は、支軸51の上側部分に配置され、当該支軸51に対して取り付けられている。格納ユニットケーシング50の支軸51への取付構造としては、例えば支軸51の上端部に嵌合させる止め輪(図示せず)等による取付構造や締結部材による取付構造を挙げることができる。このような取付構造を用いることにより、格納ユニットケーシング50から支軸51が抜けないように、かつ、格納ユニットケーシング50の支軸51に対する相対回動を阻害しないように格納ユニットケーシング50を取り付けることができる。
【0033】
支軸51の上下方向中間部には、支持面部51aが設けられている。支持面部51aは、可動部材9をその下方から支持する部分であり、支軸51の径方向外方へ膨出するように設けられている。支持面部51aは、軸芯A上に中心Bが位置する球面の一部で構成されており、下へ向かって拡径している。中心Bを通る水平方向の仮想軸は、ミラー3の傾動軸となり得る軸である。
【0034】
図5及び
図6に示すように、可動部材9は、略円形の周縁板部9aと、周縁部板部9aの内周部から上方へ向けて軸芯Aに接近する方向に延びる摺接面部9bと、摺接面部9bの内周部から上方へ向けて膨出する膨出部9cとを備えている。周縁板部9aは、支軸51の支持面部51aの下端部を周方向に囲むように形成されている。この周縁板部9aには、ミラーハウジング4のリヤ側カバー40が締結部材等によって固定されている。
【0035】
可動部材9の摺接面部9bは、支軸51の支持面部51aに対して上から重なり合うように配置されるとともに、当該支持面部51aに沿うように形成されている。摺接面部9bは支持面部51a上を摺動可能になっている。可動部材9は、支軸51に対して固定されておらず、支持面部51aによって下方から支持されているだけなので、支軸51に対して軸芯Aまわりに回動可能であるとともに、車両前後方向に傾動可能になっている。
【0036】
図5に示すように、可動部材9の膨出部9cの上壁部には、支軸51が挿通される支軸挿通孔9dが形成されている。
図6に示すように、膨出部9cの上壁部の上側に格納ユニットケーシング50が配置された状態で支軸51に対して相対的に回動可能に取り付けられている。可動部材9の上方への移動は、格納ユニットケーシング50によって阻止することができる。
【0037】
図6に示すように、支軸挿通孔9dは、前後方向に長い形状とされている。支軸挿通孔9dの幅(左右方向の寸法)は、支軸51における当該支軸挿通孔9d内に位置する部分の外径に近い寸法とされている。これにより、可動部材9は支軸51に対して左右方向には相対的に動き難くなる。また、支軸挿通孔9dの長さ(前後方向の寸法)は、支軸51における当該支軸挿通孔9d内に位置する部分の外径よりも長く設定されており、これにより、可動部材9は支軸51に対して前後方向に相対的に動くことができる。支軸挿通孔9dの長さは、後述するミラー3の上下方向の角度調整範囲を規定するものであり、従来の角度調整範囲を実現可能な長さにしておけばよい。したがって、支軸挿通孔9dは、可動部材9の支軸51に対する傾動方向を前後方向のみに限定して可動部材9の傾動を前後方向に案内する。
【0038】
図3に示すように、ミラーハウジング4には、例えば硬質樹脂材等からなるブラケット8が収容されている。
図8に示すように、ブラケット8は、格納ユニットケーシング50に固定される固定板部8aを備えている。固定板部8aは、格納ユニットケーシング50の後側部分に対して締結部材等によって固定されることにより、当該格納ユニットケーシング50と一体化されている。これにより、格納ユニットケーシング50の回動に伴ってブラケット8も軸芯Aまわりに回動させることが可能になる。なお、固定板部8aを格納ユニットケーシング50と一体成形してもよい。
【0039】
図8に示すように、固定板部8aの後面には、上側連結軸8bと、下側連結軸8cとが設けられている。上側連結軸8bは、上下方向角度調整ユニット7が連結される軸であり、ブラケット8の上部かつ左側に位置付けられて左右方向に延びている。上側連結軸8bの高さは、支持面部51aの中心B(
図6に示す)よりも高く設定されている。また、上側連結軸8bは、前後方向から見たときに、その一部が軸芯Aと重複するように配置されている。上側連結軸8bの左右方向両端部は、固定板部8aから後側へ突出する上側板部8d、8dによって支持されている。
【0040】
下側連結軸8cは、左右方向角度調整ユニット6が連結される軸であり、
図8に示すようにブラケット8の下部かつ右側に位置付けられて上下方向に延びている。下側連結軸8cの高さは、上側連結軸8bよりも低く設定されており、具体的には、支持面部51aの中心B(
図6に示す)と略同じ高さとされている。下側連結軸8cの左右方向の位置は、軸芯Aよりも右である。下側連結軸8cの上下方向両端部は、固定板部8aから後側へ突出する下側板部8e、8eによって支持されている。
【0041】
左右方向角度調整ユニット6と上下方向角度調整ユニット7とは同じ構造であるため、以下、左右方向角度調整ユニット6の詳細について説明する。
図10及び
図11に示すように、左右方向角度調整ユニット6は、調整ユニットケーシング60と、第1進退部材61と、第2進退部材62と、調整用電動モータ63とを備えている。調整ユニットケーシング60は、例えば硬質樹脂材からなる複数の部材を組み合わせて構成することができる。
図9に示すように、調整ユニットケーシング60は、ミラーホルダ31の右側取付座33に対して締結部材等により固定されている。これにより、調整ユニットケーシング60はミラーホルダ31に対して右に偏位した状態になるとともに、相対移動不能になる。
【0042】
図10に示すように、調整ユニットケーシング60の後壁部の内面には、外周面にネジ溝が形成されたネジ軸60aが設けられている。ネジ軸60aは調整ユニットケーシング60と一体化されており、調整ユニットケーシング60に対して相対的に回動不能かつ移動不能になっている。このネジ軸60aの延びる方向は前後方向とされている。ネジ軸60aは中空軸とすることができる。
【0043】
調整ユニットケーシング60の前壁部には、ネジ軸60aの先端面と対向する部分に貫通孔60bが形成されている。調整ユニットケーシング60の内部には、ネジ軸60aと略平行な支軸60cが設けられている。支軸60cには中間ギヤ60dが回転可能に支持されている。中間ギヤ60dは、ネジ軸60aと同様に前後方向に長く形成されている。
【0044】
調整用電動モータ63の出力軸にはウォームギヤ63aが固定されている。ウォームギヤ63aは、中間ギヤ60dに噛み合うように配置されている。調整用電動モータ63は、車室内に設けられたスイッチ(図示せず)によって動作する。
【0045】
第1進退部材61は、ネジ軸60aを囲む筒状をなし、前後方向に長く形成されている。第1進退部材61の後端部は開放されていて、この開放された部分からネジ軸60aを挿入することが可能になっている一方、前端部は閉塞されている。第1進退部材61の内周面には、ネジ軸60aのネジ溝に螺合する第1螺合部61aが該第1進退部材61の内方へ向けて突出するように形成されている。第1螺合部61aは、突出部や突起で構成することができ、周方向に連続して形成されていてもよいし、周方向に断続して形成されていてもよい。
【0046】
第1進退部材61の外周面には、ネジ溝61bが当該第1進退部材61の長手方向一端部近傍から他端部近傍に亘って形成されている。第1進退部材61の外周面の後端部には、調整用電動モータ63の回転力が中間ギヤ60dを介して伝達される従動ギヤ部61cが該第1進退部材61の径方向外方へ延出するように形成されている。従動ギヤ部61cは、第1進退部材61の周方向に連続しており、中間ギヤ60dに噛み合うように配置されている。従動ギヤ部61cは中間ギヤ60dに噛み合った状態を維持しながら、前後方向に相対的に移動可能になっている。
【0047】
第2進退部材62は、第1進退部材61を囲む筒状をなし、前後方向に長く形成されている。第2進退部材62の後端部は開放されていて、この開放された部分から第1進退部材61を挿入することが可能になっている一方、前端部は閉塞されている。第2進退部材62の内周面には、第1進退部材61のネジ溝61bに螺合する第2螺合部62aが該第2進退部材62の内方へ向けて突出するように形成されている。第2螺合部62aは、突出部や突起で構成することができ、周方向に連続して形成されていてもよいし、周方向に断続して形成されていてもよい。第2進退部材62は、調整ユニットケーシング60の貫通孔60bに挿通可能になっている。
【0048】
第1進退部材61及び第2進退部材62は円筒状とすることができる。第1進退部材61の軸芯と第2進退部材62の軸芯は、ネジ軸60aの軸芯上に配置される。
【0049】
第2進退部材62は、第1進退部材61に対する相対回動が阻止されている。図示しないが、例えば、第2進退部材62の外周面に軸方向に延びる溝を形成しておき、調整ユニットケーシング60の貫通孔60bの内周面に、前記溝に係合する突起を形成することで、第2進退部材62の回動を阻止しながら、軸方向への移動を許容することができる。
【0050】
したがって、調整用電動モータ63が回転するとウォームギヤ63aを介して中間ギヤ60dが回転し、中間ギヤ60dの回転力が第1進退部材61の従動ギヤ部61cに伝達され、これにより第1進退部材61が回転する。第1進退部材61が回転すると、第1螺合部61aがネジ軸60aのネジ溝に螺合しているので、進出方向である前方または後退方向である後方の一方に移動する。第1進退部材61の移動方向は調整用電動モータ63の回転方向によって変更できる。
【0051】
第1進退部材61が回転すると、第2進退部材62の第2螺合部62aが第1進退部材61のネジ溝61bに螺合しているので、進出方向である前方または後退方向である後方の一方に移動する。第2進退部材62の移動方向も調整用電動モータ63の回転方向によって変更できるが、第1進退部材61のネジ溝61bは、第1進退部材61が進出するときには第2進退部材62も進出し、第1進退部材61が後退するときには第2進退部材62も後退するように形成されている。
【0052】
つまり、第1進退部材61を回転させて第1進退部材61をネジ軸60aに対して進出させると、第2進退部材62を第1進退部材61に対して進出させることができるので、第2進退部材62の先端部の進出量は、第1進退部材61の進出量と第2進退部材62の進出量とを合わせた量になり、よってストローク量が多くなる。
【0053】
一方、進出方向と反対方向に第1進退部材61を回転させると、第1進退部材61が後退するとともに、第2進退部材62が第1進退部材61に対して後退していく。そして、ネジ軸60aが第1進退部材61に収容され、第1進退部材61が第2進退部材62に収容されることになるので、左右方向角度調整ユニット6のストローク方向(前後方向)の外寸が短くなる。
【0054】
第2進退部材62の前端部(先端部)には、球状部62cが前方へ突出するように設けられている。
図9に示すように、球状部62cには、下側ジョイント部材64が連結されている。下側ジョイント部材64の後端部には、球状部62cの外周面を覆うように形成され、当該球状部62cが嵌合する下側嵌合部64aが設けられている。下側嵌合部64aが球状部62cに嵌合した状態で、球状部62cの外周面を摺動可能になっており、これにより、下側ジョイント部材64は、球状部62cまわりに任意の方向に回動させることができるとともに、回転させることも可能になる。つまり、下側ジョイント部材64は、例えば上下方向に延びる軸(ミラー本体30の傾動中心線)まわりや左右方向に延びる軸まわりのいずれにも回動可能に第2進退部材62に連結される。このような連結構造は、ボールジョイント構造である。ボールジョイント構造では、上述した回動や回転、傾動等を許容しながら、第2進退部材62の進退動作に連動させて下側ジョイント部材64も進退させることができる。
【0055】
下側ジョイント部材64の前端部には、下側凹部64bが設けられている。下側凹部64bは左側へ向けて開放されており、この左側の開放部分からブラケット8の下側連結軸8c(
図8に示す)が挿入される。ブラケット8の下側連結軸8cが下側凹部64bに挿入された状態で両者が係合し、これにより、第2進退部材62の先端部は、下側ジョイント部材64を介してブラケット8に取り付けられている。連結された状態で、下側ジョイント部材64は下側連結軸8cまわりに回動可能である。また、第2進退部材62の進退方向の力は、下側ジョイント部材64を介してブラケット8に伝達される。下側連結軸8cは、ミラー本体30の左右方向の傾動中心線と平行である。
【0056】
図9に示すように、上下方向角度調整ユニット7も左右方向角度調整ユニット6と同様に、調整ユニットケーシング70と、第1進退部材(図示せず)と、第2進退部材72と、調整用電動モータ(図示せず)とを備えている。第2進退部材72には球状部72c(
図9に破線で示す)が設けられており、この球状部72cには、下側ジョイント部材64と同様に構成された上側ジョイント部材74が連結されている。上側ジョイント部材74の後端部には、球状部72cが嵌合する上側嵌合部74aが設けられている。上側ジョイント部材74は、例えば上下方向に延びる軸まわりや左右方向に延びる軸まわりのいずれにも回動可能に第2進退部材72に連結される。
【0057】
上側ジョイント部材74の前端部には、上側凹部74bが設けられている。上側凹部74bは上側へ向けて開放されており、この上側の開放部分からブラケット8の上側連結軸8b(
図8に示す)が挿入される。ブラケット8の上側連結軸8bが上側凹部74bに挿入された状態で両者が係合し、これにより、第2進退部材72の先端部は、上側ジョイント部材74を介してブラケット8に取り付けられている。連結された状態で、上側ジョイント部材74は上側連結軸8bまわりに回動可能である。また、第2進退部材72の進退方向の力は、上側ジョイント部材74を介してブラケット8に伝達される。上側連結軸8bは、ミラー本体30の上下方向の傾動中心線と平行である。
【0058】
(ミラーハウジングの格納動作)
使用状態にあるミラーハウジング4を格納させる際には、車室内のスイッチを操作し、電動格納ユニット5の格納用電動モータ52を格納方向に作動させる。支軸51はミラーベース2に固定されているので、格納ユニットケーシング50が支軸51の軸芯Aまわりに回動する。このとき、格納ユニットケーシング50にはブラケット8が固定されており、このブラケット8に左右方向角度調整ユニット6の第2進退部材62が下側ジョイント部材64を介して連結され、上下方向角度調整ユニット7の第2進退部材72が上側ジョイント部材74を介して連結されているので、ブラケット8、左右方向角度調整ユニット6及び上下方向角度調整ユニット7も軸芯Aまわりに回動する。さらに、左右方向角度調整ユニット6の調整ユニットケーシング60がミラー本体30に固定され、上下方向角度調整ユニット7の調整ユニットケーシング70がミラー本体30に固定されているので、ミラー3も軸芯Aまわりに回動し、これにより、ミラーハウジング4も軸芯Aまわりに回動する。このとき、
図5に示す可動部材9は、支軸51の支持面部51a(
図6に示す)上を摺動しながら軸芯Aまわりに回動する。なお、格納状態にあるミラーハウジング4を使用状態にする際には、車室内のスイッチを操作し、電動格納ユニット5の格納用電動モータ52を逆方向に回転させればよい。
【0059】
(ミラーの角度調整)
まず、ミラー3の左右方向の角度調整を行う場合について説明する。車室内のスイッチを操作し、左右方向角度調整ユニット6の調整用電動モータ63を回転させて第2進退部材62を進出させていくと、下側ジョイント部材64も進出し、これにより、ブラケット8を押す力が発生する。ブラケット8は、電動格納ユニット5の格納ユニットケーシング50に固定されているので、回動不能な状態になっており、このため、ブラケット8からの反力が第2進退部材62及び第1進退部材61を介して調整ユニットケーシング60に作用する。調整ユニットケーシング60は、ミラー3の右に偏位したところに固定されているので、ミラー3に対して支軸Aまわりの回動力が作用する。これにより、ミラ-3の右側が後に向けて回動ないし傾動していく。調整用電動モータ63を逆方向に回転させれば、第2進退部材62が後退するので、ミラ-3の右側が前に向けて回動していく。これにより、ミラー3の左右方向の角度調整が行える。
【0060】
次に、ミラー3の上下方向の角度調整を行う場合について説明する。車室内のスイッチを操作し、上下方向角度調整ユニット7の調整用電動モータ(図示せず)を回転させて第2進退部材72を進出させていくと、上側ジョイント部材74も進出し、これにより、ブラケット8を押す力が発生する。ブラケット8は、電動格納ユニット5の格納ユニットケーシング50に固定されているので、回動不能な状態になっており、このため、ブラケット8からの反力が上下方向角度調整ユニット7の第2進退部材72及び第1進退部材(図示せず)を介して調整ユニットケーシング70に作用する。調整ユニットケーシング70は、ミラー3の上下方向の回動時の中心となる中心B(
図6に示す)よりも上に固定されているので、ミラー3に対して中心Bまわりの回動力が作用する。これにより、ミラ-3の上側が後に向けて回動していく。調整ユニットケーシング70の調整用電動モータを逆方向に回転させれば、第2進退部材72が後退するので、ミラ-3の上側が後に向けて回動していく。これにより、ミラー3の上下方向の角度調整が行える。
【0061】
(各角度調整ユニットの進退部材の配置)
上下方向角度調整ユニット7の第2進退部材72の先端部である球状部72cは、該球状部72cが進退方向の中央位置にあるときに傾動中心Bの直上方に位置付けられている。これにより、第2進退部材72を進退させると、略水平な軸まわりにミラー3を傾動させることが可能になり、調整時の違和感が低減される。
【0062】
また、左右方向角度調整ユニット6の第2進退部材62の先端部である球状部62cは、該球状部62cが進退方向の中央位置にあるときに傾動中心Bよりも車幅方向外側において該傾動中心Bと略同じ高さに位置付けられている。これにより、第2進退部材62を進退させると、上下方向に延びる軸(軸芯A)まわりにミラーを回動させることが可能になり、調整時の違和感が低減される。
【0063】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態1によれば、ミラーハウジング4に可動部材9が固定されており、その可動部材9が電動格納ユニット5の支軸51に対して軸芯Aまわりに回動可能になっているので、ミラーハウジング4は支軸51の軸芯Aまわりに回動可能に支持された状態になる。また、可動部材9は支軸51に対して車両前後方向に傾動可能になっているので、ミラーハウジング4も車両前後方向に傾動可能な状態になる。
【0064】
また、左右方向角度調整ユニット6の調整ユニットケーシング60をミラー3に取り付け、第2進退部材62の先端部をブラケット8に取り付けた場合に、第2進退部材62を進退させると、ブラケット8が格納ユニットケーシング50に固定されているので、ミラー3に対して第2進退部材62の進退方向の力が作用する。このミラー3はミラーハウジング4に固定されているので、第2進退部材62の進退方向の力はミラー3を介してミラーハウジング4に作用する。ミラーハウジング4は上述したように支軸51に対して回動及び傾動可能な状態になっているので、ミラーハウジング4が左右方向に回動または傾動する。さらに、上下方向角度調整ユニット7の第2進退部材72を進退させると、ミラーハウジング4が上下方向に回動または傾動する。
【0065】
つまり、ミラー3をミラーハウジング4に固定した状態にしておきながら、ミラー3の角度調整が可能になるので、従来のようにミラー3の周縁部とミラーハウジング4との間にミラー3を傾動させるための隙間を設ける必要はなくなり、その結果、ミラーハウジング4を小型化することができる。
【0066】
また、上下方向角度調整ユニット7の第2進退部材72の先端部が、上下方向の傾動中心の直上方に位置付けられているので、第2進退部材72を進退させると、略水平な軸まわりにミラー3を傾動させることが可能になり、調整時の違和感が低減される。
【0067】
また、左右方向角度調整ユニット6の第2進退部材62の先端部が左右方向の傾動中心よりも車幅方向外側で、かつ、傾動中心と略同じ高さに位置付けられているので、第2進退部材62を進退させると、上下方向に延びる軸まわりにミラー3を回動させることが可能になり、調整時の違和感が低減される。
【0068】
また、左右方向角度調整ユニット6の第2進退部材62の先端部が下側ジョイント部材64を介してブラケット8に連結されることになる。この状態で第2進退部材62が進退動作してミラー3が傾動すると、ミラー3の傾動は回転運動の一部であるので、第2進退部材62の進退動作とは異なる運動形態になる。本実施形態では、第2進退部材62の先端部に下側ジョイント部材64が介在しており、この下側ジョイント部材64がミラー3の傾動中心線まわりに回動可能であるため、第2進退部材62のストローク量が多くなっても、ミラー3の傾動と第2進退部材62の進退動作との動きの差が下側ジョイント部材64の回動によって吸収され、第2進退部材62に無理な力が作用しにくくなる。
【0069】
上下方向角度調整ユニット7の第2進退部材72の先端部にも同様な上側ジョイント部材64が設けられているので、第2進退部材72に無理な力が作用しにくくなる。
【0070】
また、調整ユニットケーシング60のネジ軸60aに螺合する筒状の第1進退部材61と、第1進退部材61のネジ溝61bに螺合する筒状の第2進退部材62とを設け、第1進退部材61を回転駆動するようにしたので、左右方向角度調整ユニット6のストローク方向の外寸を短くしながらもストローク量を多く確保することができる。上下方向角度調整ユニット7についても同様である。尚、左右方向角度調整ユニット6と上下方向角度調整ユニット7とは同じ構造であってもよいし、異なっていてもよい。
【0071】
(実施形態2)
図12~
図14は、本発明の実施形態2に係る車両用サイドミラー1を示している。この実施形態2では、左右方向角度調整ユニット6及び上下方向角度調整ユニット7の取付構造が実施形態1のものとは異なっており、他の部分は若干の形状変更等を除いて実施形態1と同じである。以下、実施形態1と同じ部分には実施形態1と同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0072】
実施形態2では、左右方向角度調整ユニット6の調整ユニットケーシング60がブラケット8に固定され、また、上下方向角度調整ユニット7の調整ユニットケーシング70がブラケット8に固定されている。したがって、左右方向角度調整ユニット6の第2進退部材62及び上下方向角度調整ユニット7の第2進退部材72は後方へ進出することになる。
【0073】
また、ミラーホルダ31には、左右方向角度調整ユニット6の下側ジョイント部材64が連結される下側被連結部3aが設けられている。この下側被連結部3aは、実施形態1の下側連結軸8cと同様に構成することができる。さらに、ミラーホルダ31には、上下方向角度調整ユニット7の上側ジョイント部材74が連結される上側被連結部3bが設けられている。この上側被連結部3bは、実施形態1の上側連結軸8bと同様に構成することができる。
【0074】
この実施形態2によれば、実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。
【0075】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明は、例えば自動車等の車両の側部に設けられる車両用サイドミラーに適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 車両用サイドミラー
2 ミラーベース
3 ミラー
4 ミラーハウジング
5 電動格納ユニット
6 左右方向角度調整ユニット
7 上下方向角度調整ユニット
8 ブラケット
9 可動部材
9b 摺接面部
50 格納ユニットケーシング(回動ケーシング)
51 支軸
51a 支持面部
60 調整ユニットケーシング
60a ネジ軸
60d 中間ギヤ
61 第1進退部材
61a 第1螺合部
61b ネジ溝
61c 従動ギヤ部
62 第2進退部材
62a 第2螺合部
63 調整用電動モータ