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特許7450520接続方法および接続プログラム、ならびに自動販売機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】接続方法および接続プログラム、ならびに自動販売機
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/10 20180101AFI20240308BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20240308BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20240308BHJP
   H04W 12/06 20210101ALI20240308BHJP
【FI】
H04W76/10
H04W84/10 110
H04W88/06
H04W12/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020190881
(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公開番号】P2022079972
(43)【公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】桑原 博之
【審査官】伊東 和重
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-068338(JP,A)
【文献】特開2012-175148(JP,A)
【文献】特開2003-333052(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0124501(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動販売機または飲料供給装置である周辺機器と情報端末との間に通信接続を確立させる接続方法であって、
前記周辺機器は、第一通信モジュールと、第二通信モジュールと、を備え、前記第一通信モジュールは、前記第二通信モジュールより出力が大きく、
前記情報端末は、前記第一通信モジュールおよび前記第二通信モジュールと通信可能な端末側通信モジュールと、演算装置と、を備え、
前記周辺機器に前記第一通信モジュールから第一接続キーを含む第一パケットを送信させ、前記情報端末に当該第一パケットを受信させて前記第一接続キーを取得させるステップと、
前記情報端末が前記第一パケットを受信した後に、前記情報端末に前記端末側通信モジュールから応答パケットを送信させ、前記第一通信モジュールに当該応答パケットを受信させるステップと、
前記第一通信モジュールが前記応答パケットを受信した後に、前記周辺機器に前記第二通信モジュールから第二接続キーを含む第二パケットを送信させ、前記情報端末に当該第二パケットを受信させて前記第二接続キーを取得させるステップと、
前記演算装置に、前記第一接続キーと前記第二接続キーとの組合せが所定の条件を満たすか否かを判定する演算処理を実行させるステップと、
前記演算処理において前記第一接続キーと前記第二接続キーとの組合せが前記所定の条件を満たすと判定されたときに、前記第一通信モジュールと前記端末側通信モジュールとの間に通信接続を確立させるステップと、を含む接続方法。
【請求項2】
前記所定の条件は、前記第一接続キーおよび前記第二接続キーの一方を引数とする所定の関数演算の結果と、前記第一接続キーおよび前記第二接続キーの他方と、が一致することである請求項1に記載の接続方法。
【請求項3】
前記第一通信モジュールと前記端末側通信モジュールとの通信、および、前記第二通信モジュールと前記端末側通信モジュールとの通信は、Bluetooth(登録商標) Low Energyの無線通信規格に基づいて行われる請求項1または2に記載の接続方法。
【請求項4】
前記第一パケットは、前記第一通信モジュールが送信するアドバタイジングパケットであり、
前記第二パケットは、前記第二通信モジュールが送信するアドバタイジングパケットである請求項に記載の接続方法。
【請求項5】
前記周辺機器は、自動販売機であり、
前記情報端末は、ポイントプログラムに参加するための専用アプリケーションを記憶した記憶装置を備え、前記演算装置が前記専用アプリケーションを実行可能であり、
前記通信接続の確立後にさらに、前記自動販売機と前記情報端末との間の通信接続が確立された状態で、前記自動販売機から製品を購入すると、前記製品の購買情報が前記自動販売機から前記情報端末に送信され、前記情報端末の前記専用アプリケーションが受信した前記購買情報に基づいて使用者のポイント残高を更新する処理を実行するステップ、を含む請求項1~4のいずれか一項に記載の接続方法。
【請求項6】
自動販売機または飲料供給装置である周辺機器と情報端末との間に通信接続を確立することができる接続プログラムであって、
前記周辺機器は、第一接続キーを含む第一パケットを送信可能な第一通信モジュールと、第二接続キーを含む第二パケットを送信可能な第二通信モジュールと、を備え、前記第一通信モジュールは、前記第二通信モジュールより出力が大きく、
前記情報端末は、前記第一通信モジュールおよび前記第二通信モジュールと通信可能な端末側通信モジュールと、演算装置と、を備え、
前記演算装置によって実行されたときに、
前記情報端末が前記第一パケットを受信したときに、当該第一パケットに含まれる前記第一接続キーを取得する機能と、
前記情報端末の前記端末側通信モジュールが応答パケットを送信したときに、前記第一通信モジュールが当該応答パケットを受信する機能と、
前記第一通信モジュールが前記応答パケットを受信した後に、前記情報端末が前記第二パケットを受信したときに、当該第二パケットに含まれる前記第二接続キーを取得する機能と、
前記第一接続キーと前記第二接続キーとの組合せが所定の条件を満たすか否かを判定する機能と、
前記第一接続キーと前記第二接続キーとの組合せが前記所定の条件を満たすと判定したときに、前記第一通信モジュールと前記端末側通信モジュールとの間に通信接続を確立する機能と、を実行可能である接続プログラム。
【請求項7】
情報端末との間に通信接続を確立可能な自動販売機であって、
第一接続キーを含む第一パケットを送信可能な第一通信モジュールと、
第二接続キーを含む第二パケットを送信可能な第二通信モジュールと、
演算装置と、を備え、
前記第一通信モジュールは、前記第二通信モジュールより出力が大きく、
前記演算装置は、前記第一通信モジュールが前記第一接続キーを含む前記第一パケットを送信した後に、前記情報端末が送信した応答パケットを受信するように、さらに前記第一通信モジュールが前記応答パケットを受信した後に、前記第二通信モジュールが前記第二接続キーを含む前記第二パケットを送信するように制御可能であり、
前記演算装置は、前記第二接続キーと所定の条件とに基づいて、前記第一接続キーを生成する演算処理を実行可能に構成されている自動販売機。
【請求項8】
前記第一通信モジュールおよび前記第二通信モジュールは、いずれも近距離無線通信用のモジュールである請求項7に記載の自動販売機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周辺機器と情報端末との間に通信接続を確立させる接続方法および接続プログラム、ならびに上記接続方法および接続プログラムに係る周辺機器として動作可能な自動販売機、に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製品を購入した顧客に対して、製品と交換するなどの特典を受けることができるポイントを付与可能な自動販売機の利用が広がっている。かかる自動販売機では、製品を購入した顧客と、当該顧客が実際に行った取引の内容とを正確に関連付けて、当該取引の内容に対応したポイント付与処理が行われるようにする必要がある。
【0003】
たとえば、特開2011-238065号公報(特許文献1)には、情報端末と自動販売機との間で非接触通信による商品購入情報などの通信を行い、当該情報に基づいてポイントを付与するシステムが開示されている。また、特開2017-117281号公報(特許文献2)には、人を検知する検知部が自動販売機に設けられており、当該検知部が所定の範囲内に人を検知した場合にのみ自動販売機と情報端末との間に通信接続を確立するシステムが開示されている。特許文献2のシステムでは、検知部が人を検知した場合にのみ接続処理を行うことによって、自動販売機に接近する情報端末(顧客が所有するもの)と、その他の情報端末(取引と無関係の通行人などが所有するもの)とを区別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-238065号公報
【文献】特開2017-117281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術によっては、自動販売機に設けられた非接触通信用リーダーの通信圏内に情報端末を数センチメートル以内に近接させる必要があった。また、特許文献2の技術では、検知部が人を検知対象としており、通信接続を確立する相手(情報端末)を直接の検知対象としているわけではないため、誤った情報端末との間に通信接続を確立してしまうおそれがあった。
【0006】
そこで、周辺機器と情報端末とを近接させる操作を要さずに、特定の組合せの周辺機器と情報端末との間に通信接続を選択的に確立できる接続方法および接続プログラム、ならびに上記接続方法および接続プログラムに係る周辺機器として動作可能な自動販売機の実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る接続方法は、自動販売機または飲料供給装置である周辺機器と情報端末との間に通信接続を確立させる接続方法であって、前記周辺機器は、第一通信モジュールと、第二通信モジュールと、を備え、前記第一通信モジュールは、前記第二通信モジュールより出力が大きく、前記情報端末は、前記第一通信モジュールおよび前記第二通信モジュールと通信可能な端末側通信モジュールと、演算装置と、を備え、前記周辺機器に前記第一通信モジュールから第一接続キーを含む第一パケットを送信させ、前記情報端末に当該第一パケットを受信させて前記第一接続キーを取得させるステップと、前記情報端末が前記第一パケットを受信した後に、前記情報端末に前記端末側通信モジュールから応答パケットを送信させ、前記第一通信モジュールに当該応答パケットを受信させるステップと、前記第一通信モジュールが前記応答パケットを受信した後に、前記周辺機器に前記第二通信モジュールから第二接続キーを含む第二パケットを送信させ、前記情報端末に当該第二パケットを受信させて前記第二接続キーを取得させるステップと、前記演算装置に、前記第一接続キーと前記第二接続キーとの組合せが所定の条件を満たすか否かを判定する演算処理を実行させるステップと、前記演算処理において前記第一接続キーと前記第二接続キーとの組合せが前記所定の条件を満たすと判定されたときに、前記第一通信モジュールと前記端末側通信モジュールとの間に通信接続を確立させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る接続プログラムは、自動販売機または飲料供給装置である周辺機器と情報端末との間に通信接続を確立することができる接続プログラムであって、前記周辺機器は、第一接続キーを含む第一パケットを送信可能な第一通信モジュールと、第二接続キーを含む第二パケットを送信可能な第二通信モジュールと、を備え、前記第一通信モジュールは、前記第二通信モジュールより出力が大きく、前記情報端末は、前記第一通信モジュールおよび前記第二通信モジュールと通信可能な端末側通信モジュールと、演算装置と、を備え、前記演算装置によって実行されたときに、前記情報端末が前記第一パケットを受信したときに、当該第一パケットに含まれる前記第一接続キーを取得する機能と、前記情報端末の前記端末側通信モジュールが応答パケットを送信したときに、前記第一通信モジュールが当該応答パケットを受信する機能と、前記第一通信モジュールが前記応答パケットを受信した後に、前記情報端末が前記第二パケットを受信したときに、当該第二パケットに含まれる前記第二接続キーを取得する機能と、前記第一接続キーと前記第二接続キーとの組合せが所定の条件を満たすか否かを判定する機能と、前記第一接続キーと前記第二接続キーとの組合せが前記所定の条件を満たすと判定したときに、前記第一通信モジュールと前記端末側通信モジュールとの間に通信接続を確立する機能と、を実行可能であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る自動販売機は、情報端末との間に通信接続を確立可能な自動販売機であって、第一接続キーを含む第一パケットを送信可能な第一通信モジュールと、第二接続キーを含む第二パケットを送信可能な第二通信モジュールと、演算装置と、を備え、前記第一通信モジュールは、前記第二通信モジュールより出力が大きく、前記演算装置は、前記第一通信モジュールが前記第一接続キーを含む前記第一パケットを送信した後に、前記情報端末が送信した応答パケットを受信するように、さらに、前記第一通信モジュールが前記応答パケットを受信した後に、前記第二通信モジュールが前記第二接続キーを含む前記第二パケットを送信するように制御可能であり、前記演算装置は、前記第二接続キーと所定の条件とに基づいて、前記第一接続キーを生成する演算処理を実行可能に構成されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、周辺機器と情報端末とを近接させる操作を要さずに、かつ、特定の組合せの周辺機器と情報端末との間に通信接続を選択的に確立できる。さらに、二つの通信モジュールのうち、出力が大きい方の通信モジュール(第一通信モジュール)を用いた通信接続を確立できるので、周辺機器と情報端末との間の通信が安定しやすく、周辺機器の近傍に情報端末が存在するときにのみ第二通信モジュールが動作するようにでき、これによって周辺機器の電力を抑制しうる。
【0011】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0014】
本発明に係る接続方法は、一態様として、前記所定の条件は、前記第一接続キーおよび前記第二接続キーの一方を引数とする所定の関数演算の結果と、前記第一接続キーおよび前記第二接続キーの他方と、が一致することであることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、比較的実装が容易であり、かつ安全性が高い方法により、通信接続を確立すべき周辺機器と情報端末との組合せを特定できる。
【0016】
本発明に係る接続方法は、一態様として、前記第一通信モジュールと前記端末側通信モジュールとの通信、および、前記第二通信モジュールと前記端末側通信モジュールとの通信は、Bluetooth(登録商標) Low Energyの無線通信規格に基づいて行われることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、周辺機器および情報端末に、Bluetooth(登録商標) Low Energyの無線通信規格に基づく汎用の通信モジュールを使用できる。
【0018】
本発明に係る接続方法は、一態様として、前記第一パケットは、前記第一通信モジュールが送信するアドバタイジングパケットであり、前記第二パケットは、前記第二通信モジュールが送信するアドバタイジングパケットであることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、Bluetooth(登録商標) Low Energyの無線通信規格に基づく通信接続手順において通常送受信されるアドバタイジングパケットを使用するので、本発明に係る接続方法のために特別なパケットの送受信を追加する必要がない。
【0022】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】自動販売機の使用状況を示す図である。
図2】自動販売機およびスマートフォンの構成ブロック図である。
図3】自動販売機の通信圏を示す図である。
図4】第一通信モジュールの通信圏内に使用者が進入した状態を示す図である。
図5】第二通信モジュールの通信圏内に使用者が進入した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る接続方法、接続プログラム、および自動販売機の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、自動販売機1(周辺機器の例)と、当該自動販売機1において製品を購入しようとしている使用者Pが所持するスマートフォン2(情報端末の例)と、の間に通信接続を確立する接続方法に適用した例について説明する。
【0025】
〔システムの概要〕
まず、本実施形態に係る、自動販売機1およびスマートフォン2を含むシステムの概要について説明する。本実施形態では、自動販売機1において製品を購入した使用者Pに対して、製品と交換するなどの特典を受けることができるポイントを付与する。ここで、使用者Pに対してポイントを付与するにあたっては、実際に製品を購入した使用者Pを特定して当該使用者Pにポイントを付与することが必要となる。そこで本実施形態に係るシステムにおいては、自動販売機1と、使用者Pが所持するスマートフォン2と、の間に通信接続を確立し、当該通信接続に基づいて自動販売機1において使用者Pを認証する。なお、スマートフォン2には、自動販売機1との通信を行うことができるアプリケーション(接続プログラムの例)が、あらかじめインストールされている。
【0026】
上記の場合において、ポイントを付与する処理を適切に行うためには、複数の自動販売機1と複数のスマートフォン2とが互いの通信圏内に存在する場合であっても、実際に行われようとしている商品販売取引に関与する特定の自動販売機1aとスマートフォン2a(使用者Pa)との間に、選択的に通信接続を確立する必要がある。たとえば、図1に示すように、使用者Paが自動販売機1aから商品を購入しようとしている時に、その周囲には、実際に行われようとしている商品販売取引に関与しない他の自動販売機1b、および、他の人物Pb(スマートフォン2b)が存在しうる。ここで、スマートフォン2aを他の自動販売機1bと接続したり、自動販売機1aと他の人物Pbのスマートフォン2bと接続したりすることを避ける必要がある。
【0027】
〔ハードウェア構成〕
まず、本実施形態に係る自動販売機1およびスマートフォン2のハードウェア構成について説明する(図2)。
【0028】
(自動販売機の構成)
本実施形態に係る自動販売機1は、公知の近距離無線通信規格に基づく通信が可能な通信モジュールを二つ備える。以下では、これらの通信モジュールをそれぞれ、第一通信モジュール11および第二通信モジュール12と称する。ここで、第一通信モジュール11の通信圏は、第二通信モジュール12の通信圏より広い。このように、通信圏の広さが異なる二つの通信モジュールを備えることは、第一通信モジュール11と第二通信モジュール12との出力を異ならせたり、通信規格を異ならせたりする構成によって実現できる。
【0029】
また、自動販売機1は、第一通信モジュール11および第二通信モジュール12の制御を行う制御プログラムを実行可能な演算装置13、ならびに、当該制御プログラムを格納可能な記憶装置14をさらに備える。自動販売機1は、第一通信モジュール11および第二通信モジュール12、演算装置13、ならびに記憶装置14以外の部分については、公知の自動販売機と同様の構成要素を備えうる。すなわち、自動販売機1は、製品を貯蔵する貯蔵部、製品を排出する排出部、製品を展示する展示部、現金授受に係る処理を行うコインメックおよびビルバリデータ、電子マネー決済を行う電子マネー決済モジュール、などの構成要素を有しうる。なお、自動販売機1が備える構成要素は、上記の例に限定されない。
【0030】
本実施形態では、第一通信モジュール11および第二通信モジュール12による通信に係る近距離無線通信規格として、Bluetooth(登録商標) Low Energy(以下、BLEと称する。)が用いられている。BLEには、最大出力の違いによって三つのクラスが設定されているが、第一通信モジュール11は「クラス2」(最大出力2.5mW)のBLEモジュールであり、第二通信モジュール12は「クラス3」(最大出力1.0mW)のBLEモジュールである。第一通信モジュール11の通信圏A1は自動販売機1を中心とする半径約10mの領域であり、第二通信モジュールの通信圏A2は自動販売機1を中心とする半径約1mの領域である(図3)。
【0031】
第一通信モジュール11は、起動され、かつ通信接続が確立された相手機器が存在しない場合、アドバタイジング状態に制御され、アドバタイジングパケットAd1(第一パケットの例)を送信できる。同様に、第二通信モジュール12は、起動され、かつ通信接続が確立された相手機器が存在しない場合、アドバタイジング状態に制御され、アドバタイジングパケットAd2(第二パケットの例)を送信できる。
【0032】
演算装置13は、CPUなどの公知の演算装置として実装される。演算装置13は、第一通信モジュール11および第二通信モジュール12のそれぞれと電気的に接続されており、制御プログラムを実行して第一通信モジュール11および第二通信モジュール12を制御可能である。また、記憶装置14は、ハードディスクドライブなどの公知の記憶装置として実装される。記憶装置14には、上述の制御プログラムが格納されており、演算装置13は、記憶装置14から制御プログラムを読み込んでこれを実行する。
【0033】
(スマートフォンの構成)
本実施形態に係るスマートフォン2は、第一通信モジュール11および第二通信モジュール12と通信可能な(すなわち、BLE規格に基づく通信が可能な)端末通信モジュール21、本実施形態に係るポイントプログラムに参加するための専用アプリケーション(以下、専用アプリと称する。)を実行可能な演算装置22、ならびに、専用アプリを記憶可能な記憶装置23を備える。なお、スマートフォン2は、端末通信モジュール21、演算装置22、および記憶装置23以外の部分については、公知のスマートフォンと同様の構成要素を備えうる。すなわち、スマートフォン2は、携帯電話通信網や無線LANなどのネットワークに接続可能な通信モジュール、タッチパネルやスピーカーなどの入出力装置、上記の各構成要素に電力を供給可能なバッテリ、などの構成要素を有しうる。なお、スマートフォン2が備える構成要素は、上記の例に限定されない。
【0034】
端末通信モジュール21は、BLEに対応した近距離無線通信用のモジュールであり、BLE規格に適合する公知のモジュールとして実装される。端末通信モジュール21は、自動販売機1の第一通信モジュール11および第二通信モジュール12との通信を行うことができる。
【0035】
なお、演算装置22および記憶装置23は、それぞれ公知の演算装置(CPUなど)および記憶装置(半導体メモリなど)として実装される。
【0036】
〔ソフトウェア構成〕
次に、自動販売機1およびスマートフォン2のソフトウェア構成について説明する。ここで、自動販売機1とスマートフォン2との間のBLE規格に基づく通信において、スマートフォン2はセントラルとして機能し、自動販売機1はペリフェラルとして機能する。以下の説明では、自動販売機1の制御プログラムと、スマートフォン2の専用アプリとの動作を、自動販売機1とスマートフォン2との間の通信接続が確立され、当該通信接続が切断されるまでの手順に沿って説明しており、ステップごとに符号(#S10~#S80)を付している。各ステップにおける自動販売機1およびスマートフォン2の動作は、一連の説明の後に付した表1に要約している。
【0037】
なお、以下に説明するスマートフォン2の専用アプリの動作は、専用アプリがフォアグラウンドで実行されている状態で行われてもよいし、専用アプリがバックグラウンドで実行されている状態で行われてもよい。
【0038】
前述したように、第一通信モジュール11の通信圏A1は半径約10mの領域であり、第二通信モジュールの通信圏A2は半径約1mの領域である。ここで、通信圏A1および通信圏A2はいずれも自動販売機1をその中心とするので、通信圏A2は通信圏A1に包含されている(図3)。したがって、通信圏A1にスマートフォン2が存在しない場合、通信圏A2にもスマートフォン2が存在しない。そこで、制御プログラムは、通信圏A1にスマートフォン2が存在しない場合に、第一通信モジュール11のみを起動し、第二通信モジュール12を停止する待機状態を取る(#S10)。より具体的には、制御プログラムの動作により、第一通信モジュール11はアドバタイジング状態に制御され、第二通信モジュール12はスタンドバイ状態に制御される。このとき、アドバタイジング状態の第一通信モジュール11から送信されるアドバタイジングパケットAd1には、制御プログラムによって生成された第一接続キーK1が含まれている。
【0039】
通信圏A1にスマートフォン2が進入すると、第二通信モジュール12が起動される。具体的には、制御プログラムの動作により、第一通信モジュール11のアドバタイジングパケットAd1を受信したスマートフォン2がデバイス情報Dv1を送信し、第一通信モジュール11がこれを受信したとき(図4)に、第二通信モジュール12がスタンドバイ状態からアドバタイジング状態に遷移するように制御される(#S20、#S30)。なおこのとき、スマートフォン2がアドバタイジングパケットAd1を受信したときに、専用アプリは、第一接続キーK1を記憶装置23に記憶させる制御を行う(#S20)。
【0040】
第二通信モジュール12がアドバタイジング状態に遷移すると、制御プログラムは、第一通信モジュール11によるアドバタイジングパケットAd1の送信と、第二通信モジュール12によるアドバタイジングパケットAd2の送信とを交互に行うように制御する(#S30)。
【0041】
通信圏A2にスマートフォン2が進入すると、スマートフォン2(端末通信モジュール21)は、第二通信モジュール12のアドバタイジングパケットAd2を受信する(図5)。ここで、アドバタイジングパケットAd2には、制御プログラムによって生成された第二接続キーK2が含まれている。専用アプリは、アドバタイジングパケットAd2を受信したときに、第二接続キーK2を記憶装置23に記憶させるとともに、端末通信モジュール21にデバイス情報Dv2を送信させる制御を行う(#S40)。
【0042】
ここで、第一接続キーK1と第二接続キーK2とは、第二接続キーK2を引数とする所定の関数演算の結果が第一接続キーK1となる関係にある。自動販売機1の演算装置13は、第二接続キーK2を一定時間ごと(たとえば1分ごと)に自動的に更新する。これによって、誤接続や悪意を持った接続などを防止しうる。接続キーの更新は、制御プログラムの動作によって行われる。なお、第二接続キーK2が更新されるたびに所定の関数演算が実行されて、第一接続キーK1も更新される。
【0043】
この段階で、スマートフォン2の専用アプリは、第一接続キーK1および第二接続キーK2の双方を取得している。ここで、スマートフォン2の演算装置22は、第二接続キーK2を引数とする所定の関数演算を実行する。専用アプリは、当該関数演算の結果と、第一通信モジュール11から受信した第一接続キーK1とを比較する演算処理を、演算装置22に実行させる(#S40、所定の条件を満たすか否かを判定する演算処理の例)。ここで実行される関数演算は、自動販売機1の演算装置13によって第二接続キーK2から第一接続キーK1が生成される際に行われる関数演算と同一である。したがって、関数演算の結果と第一接続キーK1とが一致するとき、スマートフォン2が取得した第一接続キーK1および第二接続キーK2の双方は、同一の自動販売機1から送信されたものであることが保証される。
【0044】
関数演算の結果と第一接続キーK1とが一致したとき(第一接続キーと第二接続キーK2との組合せが所定の条件を満たすときの例)は、第一通信モジュール11を用いる経路によって自動販売機1とスマートフォン2との間に通信接続を確立する。すなわち、スマートフォン2(端末通信モジュール21)から自動販売機1(第一通信モジュール11)に対するデバイス情報Dv1の送信、第一通信モジュール11から端末通信モジュール21に対するスキャン要求パケットRq1の送信、および端末通信モジュール21から第一通信モジュール11に対する接続要求パケットC1の送信、が順次行われる(#S50、#S60)。なおこのとき、接続要求パケットC1には、スマートフォン2の使用者P2を特定する識別情報(ユーザーIDなど)が含まれている。この一連のパケットのやり取りによって、自動販売機1とスマートフォン2との間の通信接続が確立される(#S70)。
【0045】
自動販売機1とスマートフォン2との間の通信接続が確立された状態で、使用者Pが自動販売機1から製品を購入すると、当該製品の種類や価格などの情報(以下、購買情報という。)が、自動販売機1からスマートフォン2に送信される。専用アプリは、受信した購買情報に基づいて、サーバー(不図示)に記憶されている使用者Pのポイント残高を更新する処理を実行する。その後、自動販売機1とスマートフォン2との間の通信接続が解除される(#S80)。
【0046】
【表1】
【0047】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る接続方法、接続プログラム、および周辺機器のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0048】
上記の実施形態では、周辺機器の例として自動販売機1を示した。しかし、本発明における周辺機器は、自動販売機のほか、飲料供給装置(給茶機、ディスペンサー、ウォーターサーバー、コーヒーマシンなど)、券売機、自動預金預払機(ATM)、案内用情報端末、デジタルサイネージなどの、据付型の物品でありうる。
【0049】
上記の実施形態では、情報端末の例としてスマートフォン2を示した。しかし、本発明における情報端末は、スマートフォンのほか、パーソナルコンピュータやタブレット端末などであってもよい。
【0050】
上記の実施形態では、第一通信モジュール11、第二通信モジュール12、および端末通信モジュール21が、BLE規格に基づく通信が可能であるように構成された例について説明した。しかし、本発明において、第一通信モジュール、第二通信モジュール、および端末通信モジュールが用いる通信方式は特に限定されず、上記に例示したBluetooth(登録商標) Low Energyのほか、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)などであってもよい。また、第一通信モジュールと端末通信モジュールとの間の通信方式と、第二通信モジュールと端末通信モジュールとの間の通信方式とは、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0051】
上記の実施形態では、第一通信モジュール11が「クラス2」(最大出力2.5mW)のBLEモジュールであり、第二通信モジュール12が「クラス3」(最大出力1.0mW)のBLEモジュールである構成を例として説明した。しかし、本発明において、第一通信モジュールおよび第二通信モジュールの出力などの諸仕様は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0052】
上記の実施形態では、接続キーK1、K2が、それぞれ、アドバタイジングパケットAd1、Ad2に含まれる構成を例として説明した。しかし、本発明において第一パケットおよび第二パケットの態様は特に限定されない。これらのパケットの態様は、第一通信モジュール、第二通信モジュール、および端末通信モジュールが用いる通信方式に応じて適宜選択されうる。
【0053】
上記の実施形態では、第二接続キーK2を引数とする所定の関数演算の結果と、第一接続キーK1とが一致したときに、第一通信モジュール11を用いる経路によって自動販売機1とスマートフォン2との間に通信接続が確立される構成を例として説明した。しかし、本発明において、接続が確立される場合に第一接続キーと第二接続キーとの組合せが満たすべき所定の条件は、上記の態様に限定されない。
【0054】
また、確立される通信接続の経路も、限定されない。すなわち、第一接続キーと第二接続キーとの組合せが所定の条件を満たすときに、第二通信モジュールと端末側通信モジュールとの間に通信接続を確立するように構成してもよい。最終的に、第一通信モジュールおよび第二通信モジュールのどちらを経路として通信接続を確立するかは、第一通信モジュールおよび第二通信モジュールの仕様や、実施される通信の目的などの条件に応じて適宜決定される。
【0055】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、たとえば自動販売機とスマートフォンとの間に通信接続を確立する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 :自動販売機
11 :第一通信モジュール
12 :第二通信モジュール
13 :演算装置
14 :記憶装置
2 :スマートフォン
21 :近距離通信モジュール
22 :演算装置
23 :記憶装置
A1 :第一通信モジュール11の通信圏
A2 :第二通信モジュール12の通信圏
P :使用者
図1
図2
図3
図4
図5