(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
B62D 61/12 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
B62D61/12
(21)【出願番号】P 2020206225
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】井田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】平岡 実
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 竣也
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-1440(JP,A)
【文献】特開2020-1443(JP,A)
【文献】特開2000-127732(JP,A)
【文献】特開平9-142347(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181459(WO,A1)
【文献】特開昭61-229680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 61/00,63/02,
B60S 9/04,
B62B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、
前記車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行車輪と、
前記車両本体に支持されると共に、複数の前記走行車輪を前記車両本体に対する位置を個別に変更可能な状態で支持する支持機構と、
前記支持機構の動作を制御する制御装置と、
走行方向前側の前記支持機構の状態を取得する状態取得部と、
前記状態取得部が取得した前記支持機構の状態に基づいて路面の状態を検知する検知部と、を備え、
前記制御装置は、前記検知部が検知した路面の状態が変化したことに応じて、少なくとも走行方向後側の前記支持機構の状態を変化させ
、
前記制御装置は、路面の凹凸が増加したことを前記検知部が検知したことに応じて、車両上下方向における前記車両本体と前記走行車輪との間の距離が大きくなるように前記支持機構の状態を変化させる作業車。
【請求項2】
前記状態取得部は、走行方向前側の前記走行車輪が路面から受ける路面反力を走行方向前側の前記支持機構から取得し、
前記検知部は、前記状態取得部が取得する前記路面反力の増減頻度が増加したことに応じて、路面の凹凸が増加したことを検知する請求項
1に記載の作業車。
【請求項3】
前記支持機構は、前記走行車輪の位置の変更の動力源としての油圧シリンダと、前記油圧シリンダに供給される作動油の圧力を検知する圧力検知器と、を備えており、
前記状態取得部は、前記圧力検知器の出力に基づいて前記路面反力を取得する請求項
2に記載の作業車。
【請求項4】
車両本体と、
前記車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行車輪と、
前記車両本体に支持されると共に、複数の前記走行車輪を前記車両本体に対する位置を個別に変更可能な状態で支持する支持機構と、
前記支持機構の動作を制御する制御装置と、
走行方向前側の前記支持機構の状態を取得する状態取得部と、
前記状態取得部が取得した前記支持機構の状態に基づいて路面の状態を検知する検知部と、を備え、
前記制御装置は、前記検知部が検知した路面の状態が変化したことに応じて、少なくとも走行方向後側の前記支持機構の状態を変化させ、
前記支持機構は、前記走行車輪の空気圧を調整可能な調整機構を備え、
前記制御装置は、前記検知部が検知した路面の状態が変化したことに応じて、少なくとも走行方向後側の前記支持機構の前記調整機構を作動させて、当該支持機構が支持する前記走行車輪の空気圧を変化させ
る作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、不整地移動ローバーが開示されている。この不整地移動ローバーは4つの走行車輪を備えており、各走行車輪がリンク機構を介して車両本体に支持されている。リンク機構に電動モータが備えられ、電動モータの駆動力によりリンク機構が屈伸駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の不整地移動ローバーは、路面の状態を検知する手段を備えていない。また、特許文献1には、どのようにリンク機構を動作させて不整地環境を走破するのか、具体的な方法や構成は開示されていない。
【0005】
本発明の目的は、不整地の走破性を向上できる作業車を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決する手段として、本発明の作業車は、車両本体と、前記車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行車輪と、前記車両本体に支持されると共に、複数の前記走行車輪を前記車両本体に対する位置を個別に変更可能な状態で支持する支持機構と、前記支持機構の動作を制御する制御装置と、走行方向前側の前記支持機構の状態を取得する状態取得部と、前記状態取得部が取得した前記支持機構の状態に基づいて路面の状態を検知する検知部と、を備え、前記制御装置は、前記検知部が検知した路面の状態が変化したことに応じて、少なくとも走行方向後側の前記支持機構の状態を変化させ、前記制御装置は、路面の凹凸が増加したことを前記検知部が検知したことに応じて、車両上下方向における前記車両本体と前記走行車輪との間の距離が大きくなるように前記支持機構の状態を変化させることを特徴とする。
【0007】
本構成によれば、走行方向前側の支持機構の状態に基づいて路面の状態が検知され、検知された路面の状態に基づいて走行車輪の位置が変更される。走行車輪の位置が路面状態に応じた適切なものとなるから、作業車の不整地の走破性を向上させることができる。また、路面の検知が走行方向前側の支持機構の状態に基づいて行われるので、カメラやレーダー等により路面の状態を検知する形態に比べて、作業車の構成を簡素化できる上に、路面の状態の検知を確実且つ迅速に行うことができる。
本構成によれば、路面の凹凸が増加すると車両本体と走行車輪との上下方向の距離が大きくなる。すなわち、車両本体と路面との上下方向の距離が大きくなるので、路面と車両本体との接触が抑制され、作業車の不整地の走破性を向上させることができる。
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
本発明において、前記状態取得部は、走行方向前側の前記走行車輪が路面から受ける路面反力を走行方向前側の前記支持機構から取得し、前記検知部は、前記状態取得部が取得する前記路面反力の変動量が増加したことに応じて、路面の凹凸が増加したことを検知すると好適である。
【0019】
本構成によれば、路面の凹凸の増加を路面反力の増減頻度の増加に基づいて検知するので、路面の凹凸の増加を確実に検知することができる。
【0020】
本発明において、前記支持機構は、前記走行車輪の位置の変更の動力源としての油圧シリンダと、前記油圧シリンダに供給される作動油の圧力を検知する圧力検知器と、を備えており、前記状態取得部は、前記圧力検知器の出力に基づいて前記路面反力を取得すると好適である。
【0021】
本構成によれば、油圧シリンダに供給される作動油の圧力が検出され、その圧力に基づいて路面反力が取得されるので、油圧シリンダを動力源と路面反力の取得との両方に活用でき、作業車の構成を簡素化できる。
【0022】
本発明による別の作業車は、車両本体と、前記車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行車輪と、前記車両本体に支持されると共に、複数の前記走行車輪を前記車両本体に対する位置を個別に変更可能な状態で支持する支持機構と、前記支持機構の動作を制御する制御装置と、走行方向前側の前記支持機構の状態を取得する状態取得部と、前記状態取得部が取得した前記支持機構の状態に基づいて路面の状態を検知する検知部と、を備え、前記制御装置は、前記検知部が検知した路面の状態が変化したことに応じて、少なくとも走行方向後側の前記支持機構の状態を変化させ、前記支持機構は、前記走行車輪の空気圧を調整可能な調整機構を備え、前記制御装置は、前記検知部が検知した路面の状態が変化したことに応じて、少なくとも走行方向後側の前記支持機構の前記調整機構を作動させて、当該支持機構が支持する前記走行車輪の空気圧を変化させることを特徴とする。
【0023】
本構成によれば、走行方向前側の支持機構の状態に基づいて路面の状態が検知され、検知された路面の状態に基づいて走行車輪の位置が変更される。走行車輪の位置が路面状態に応じた適切なものとなるから、作業車の不整地の走破性を向上させることができる。また、路面の検知が走行方向前側の支持機構の状態に基づいて行われるので、カメラやレーダー等により路面の状態を検知する形態に比べて、作業車の構成を簡素化できる上に、路面の状態の検知を確実且つ迅速に行うことができる。
本構成によれば、走行方向前側の支持機構の状態に基づいて路面の状態が検知され、検知された路面の状態に基づいて走行車輪の空気圧が調整される。走行車輪の空気圧が路面状態に応じた適切なものとなるから、作業車の不整地の走破性を向上させることができる。例えば、路面の状態が上り坂や荒れ地等に変化した場合に走行車輪の空気圧を低下させて、走行車輪のグリップ力を向上させて、走破性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】作業車及び作業車の動作の概要を示す図である。
【
図2】作業車及び作業車の動作の概要を示す図である。
【
図3】作業車及び作業車の動作の概要を示す図である。
【
図4】作業車及び作業車の動作の概要を示す図である。
【
図9】旋回機構による左旋回状態を示す平面図である。
【
図10】旋回機構による右旋回状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る作業車の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。なお、以下の説明においては、図中に示される矢印FWの方向を「前」、矢印BKの方向を「後」、矢印RHの方向を「右」、矢印LHの方向を「左」、矢印UPの方向を「上」、矢印DWの方向を「下」とする。矢印FW及び矢印BKの延びる方向が「車両前後方向」に対応し、矢印RH及び矢印LHの延びる方向が「車両左右方向」に対応し、矢印UP及び矢印DWの延びる方向が「上下方向」に対応する。
【0026】
〔作業車及び作業車の動作の概要〕
図1、
図2、
図3、
図4に、作業車及び作業車の動作の概要が示されている。作業車は、車両本体1と、複数の走行車輪2と、支持機構Aと、制御装置Cと、状態取得部81(
図11)と、検知部82(
図11)と、を備える。
【0027】
走行車輪2は、車両本体1の左右両側における前後夫々に位置する。本実施形態では、作業車は、左前、右前、左後、及び右後の4つの走行車輪2を備える。
【0028】
支持機構Aは、車両本体1に支持されると共に、複数の走行車輪2を車両本体1に対する位置を個別に変更可能な状態で支持する。本実施形態では、作業車は、左前、右前、左後、及び右後の4つの支持機構Aを備える。
【0029】
具体的には、支持機構Aは、複数の屈折リンク機構4と、姿勢変更装置D(後述)と、を備える。姿勢変更装置Dは、複数の屈折リンク機構4の姿勢を個別に変更可能である。本実施形態では、姿勢変更装置Dは、走行車輪2の位置の変更の動力源としての油圧シリンダである。
【0030】
屈折リンク機構4の先端部に、走行車輪2及び油圧モータ6(後述)が設けられている。油圧モータ6は、走行車輪2を制御する。
【0031】
本実施形態では、作業車は、複数の補助車輪3を備える。本実施形態では、補助車輪3は、屈折リンク機構4の中間部(節)に設けられている。
【0032】
制御装置Cは、支持機構Aの動作を制御する。具体的には、制御装置Cは、油圧シリンダである姿勢変更装置Dと油圧モータ6とに作動油を供給し、作動油の流量及び圧力を制御することにより、姿勢変更装置D及び油圧モータ6の動作を制御する。
【0033】
状態取得部81は、走行方向前側の支持機構Aの状態を取得する。すなわち、車両走行方向が前進方向(機体前側方向)である場合には機体前側の支持機構Aの状態を取得し、車両走行方向が後進方向である場合には機体後側の支持機構Aの状態を取得し、車両走行方向が機体左側方向である場合には機体左側の支持機構Aの状態を取得し、車両走行方向が機体右側方向である場合には機体右側の支持機構Aの状態を取得する。例えば、状態取得部81は、後述するヘッド側圧力センサS1及びキャップ側圧力センサS2(圧力検知器の一例)等の出力に基づいて、走行方向前側の走行車輪2が路面から受ける路面反力CFを走行方向前側の支持機構Aから取得する。ヘッド側圧力センサS1及びキャップ側圧力センサS2は、姿勢変更装置Dの油圧シリンダの作動油の圧力を検出する。
【0034】
付言すると、作業車が「前」へ走行しているとき、左前及び右前の走行車輪2及び支持機構Aが「走行方向前側の走行車輪2及び支持機構A」であり、左後及び右後の走行車輪2及び支持機構Aが「走行方向後側の走行車輪2及び支持機構A」である。
【0035】
作業車が「後」へ走行しているとき、左後及び右後の走行車輪2及び支持機構Aが「走行方向前側の走行車輪2及び支持機構A」であり、左前及び右前の走行車輪2及び支持機構Aが「走行方向後側の走行車輪2及び支持機構A」である。
【0036】
作業車が「左」へ走行しているとき、左前及び左後の走行車輪2及び支持機構Aが「走行方向前側の走行車輪2及び支持機構A」であり、右前及び右後の走行車輪2及び支持機構Aが「走行方向後側の走行車輪2及び支持機構A」である。
【0037】
作業車が「右」へ走行しているとき、右前及び右後の走行車輪2及び支持機構Aが「走行方向前側の走行車輪2及び支持機構A」であり、左前及び左後の走行車輪2及び支持機構Aが「走行方向後側の走行車輪2及び支持機構A」である。
【0038】
検知部82は、状態取得部81が取得した支持機構Aの状態に基づいて路面の状態を検知する。そして制御装置Cは、検知部82が検知した路面の状態が変化したことに応じて、少なくとも走行方向後側の支持機構Aの状態を変化させる。
【0039】
図1に示されるように、制御装置Cは、検知部82が検知した路面の状態が上り坂に変化したことに応じて、車両本体1の重心位置Gが走行方向後寄りになるように支持機構Aの状態を変化させる。
【0040】
以下詳しく説明する。作業車が走行する際、状態取得部81は走行方向前側の支持機構Aの状態を経時的に取得し、検知部82は路面の状態を継続的に検知する。図中左の状態では、路面はほぼ水平である。制御装置Cは、車両本体1の重心位置Gが中央付近になるように支持機構Aを制御する。
【0041】
作業車が上り坂にさしかかると(
図1の中央の状態)、走行方向前側の走行車輪2が路面から受ける路面反力CFが増加する。状態取得部81は、圧力センサS1,S2の出力の変動に基づいて、路面反力CFの増加を検知する。検知部82は、状態取得部81が取得する路面反力CFが増加したことに応じて、路面の状態が上り坂に変化したことを検知する。そして制御装置Cは、車両本体1の重心位置Gが走行方向後寄りになるように支持機構Aの状態を変化させる(図中右の状態)。これにより、走行方向後側の走行車輪2のトラクションが大きくなり、上り坂を確実に走行することができる。
【0042】
図2に示されるように、制御装置Cは、検知部82が検知した路面の状態が下り坂に変化したことに応じて、車両本体1の重心位置Gが走行方向前寄りになるように支持機構Aの状態を変化させる。
【0043】
以下詳しく説明する。作業車が走行する際、状態取得部81は走行方向前側の支持機構Aの状態を経時的に取得し、検知部82は路面の状態を継続的に検知する。図中左の状態では、路面はほぼ水平である。制御装置Cは、車両本体1の重心位置Gが機体中央付近になるように支持機構Aを制御する。
【0044】
作業車が上り坂にさしかかると(
図2の中央の状態)、走行方向前側の走行車輪2が路面から受ける路面反力CFが減少する。状態取得部81は、圧力センサS1,S2の出力の変動に基づいて、路面反力CFの減少を検知する。検知部82は、状態取得部81が取得する路面反力CFが減少したことに応じて、路面の状態が下り坂に変化したことを検知する。そして制御装置Cは、車両本体1の重心位置Gが走行方向前寄りになるように支持機構Aの状態を変化させる(図中右の状態)。これにより、走行方向前側の走行車輪2のトラクションが大きくなり、下り坂を確実に走行することができる。
【0045】
図3に示されるように、制御装置Cは、路面の凹凸が増加したことを検知部82が検知したことに応じて、車両上下方向における車両本体1と走行車輪2との間の距離が大きくなるように支持機構Aの状態を変化させる。
【0046】
以下詳しく説明する。作業車が走行する際、状態取得部81は走行方向前側の支持機構Aの状態を経時的に取得し、検知部82は路面の状態を継続的に検知する。路面の状態が平坦で起伏が小さいとき、制御装置Cは、車両本体1と走行車輪2との上下方向の距離が距離H1となるように、支持機構Aを制御する(
図3の左の状態)。
【0047】
前側の走行車輪2が凹凸の大きい領域にさしかかると、前側の走行車輪2は路面に沿って上下動し、走行方向前側の走行車輪2が路面から受ける路面反力CFの増減頻度(所定時間あたりに変動量が所定値以上増減する回数)が増加する。状態取得部81は、圧力センサS1,S2の出力の変動に基づいて、路面反力CFの増減頻度の増加を検知する。検知部82は、状態取得部81が取得する路面反力CFの増減頻度が増加したことに応じて、路面の凹凸が増加したことを検知する。そして制御装置Cは、車両本体1と走行車輪2との距離が、距離H1よりも大きい距離H2となるように、支持機構Aを制御する(
図3の右の状態)。これにより、路面と車両本体1との上下方向の距離が大きくなり、走破性が向上する。
【0048】
なお、
図4に示されるように、制御装置Cは、検知部82が検知した路面の状態が変化したことに応じて、上述した車両本体1の重心位置Gを変化させる制御に代えて或いは加えて、少なくとも走行方向後側の支持機構Aの調整機構TPを作動させて、当該支持機構Aが支持する走行車輪2の空気圧を変化させてもよい。
【0049】
以下詳しく説明する。作業車が走行する際、状態取得部81は走行方向前側の支持機構Aの状態を経時的に取得し、検知部82は路面の状態を継続的に検知する。図中左の状態では、路面はほぼ水平である。制御装置Cは、走行車輪2の空気圧が所定の第一空気圧となるように、調整機構TPを作動させる。第一空気圧は、水平・平滑な路面を走行するのに適した、比較的高めの空気圧である。
【0050】
作業車が上り坂にさしかかると(
図4の中央の状態)、走行方向前側の走行車輪2が路面から受ける路面反力CFが増加する。状態取得部81は、圧力センサS1,S2の出力の変動に基づいて、路面反力CFの増加を検知する。検知部82は、状態取得部81が取得する路面反力CFが増加したことに応じて、路面の状態が上り坂に変化したことを検知する。そして制御装置Cは、調整機構TPを作動させて、走行車輪2の空気圧を第二空気圧へ変化させる(図中右の状態)。第二空気圧は、第一空気圧よりも低い空気圧であって、上り坂、下り坂、荒れ地等の不整地を走行するのに適した、比較的低めの空気圧である。これにより、走行車輪2のトラクションが大きくなり、不整地を確実に走行することができる。同様に、検知部82が路面の状態が下り坂に変化したこと、あるいは凹凸の多い路面に変化したことを検知すると、制御装置Cは、調整機構TPを作動させて、走行車輪2の空気圧を第二空気圧へ変化させる。
【0051】
〔作業車の構成の詳細〕
図5-10を参照しながら、作業車の構成の詳細について説明する。作業車は、上述の通り、車両本体1と、複数の走行車輪2と、支持機構Aと、制御装置Cと、を備える。
【0052】
〔車両本体〕
図5、
図6に示されるように、車両本体1は、矩形枠状の車体フレーム7、油圧供給源8、弁機構9、支持台10、油圧制御弁11、収納ケース12、及びECU13を備える。
【0053】
油圧供給源8は、例えば、エンジンあるいは電動モータ等の駆動手段(図示せず)によって駆動される油圧ポンプである。油圧供給源8は、車体フレーム7の下側に連結された支持台10により支持され、車両本体1の下腹部に位置する。油圧供給源8は、弁機構9を介して姿勢変更装置Dに作動油を送り出し供給する。そして、図示はしていないが、支持台10を車体フレーム7から取り外すことにより、油圧供給源8と支持台10とを連結した状態で一体的に、車両本体1から横側方にスライドさせて取り外すことが可能であり、再度、支持台10を車体フレーム7に取り付けることにより、横側方にスライドさせて装着することが可能である。
【0054】
弁機構9は、車体フレーム7の上側に載置支持される状態で備えられ、複数の油圧制御弁11を備えている。油圧制御弁11は、油圧シリンダである姿勢変更装置D及び油圧モータ6に対する作動油の給排あるいは流量・圧力の調節等を行う。弁機構9の上方は収納ケース12によって覆われている。収納ケース12の上側には、弁機構9の作動を制御するECU13(Electronic Control Unit)が備えられている。油圧制御弁11及びECU13により、制御装置Cが構成されている。
【0055】
車体フレーム7の上側には、例えば、車両本体1が転倒したような場合に、収納ケース12に収納される弁機構9や上方に備えられるECU13等を保護するための外装フレーム14が備えられている。外装フレーム14は、前後両側に備えられ、棒状体が平面視で略U字形に曲げられ、且つ、側面視で略L字形に曲げられた形状となっており、車体フレーム7の前端部と後端部とに左右両側端部が取り付け固定されている。前後の外装フレーム14は、上部側が互いに近接するように設けられ、弁機構9やECU13等の外周側を覆う形状となっている。
【0056】
〔支持機構〕
上述の通り、支持機構Aは、複数の屈折リンク機構4及び姿勢変更装置Dにより構成されている。
【0057】
4つの走行車輪2は、屈折リンク機構4を介して車両本体1に対して各別に昇降自在に支持されている。屈折リンク機構4は、旋回機構16を介して縦軸芯Y周りで回動可能に車体フレーム7に支持されている。
【0058】
旋回機構16には、車体フレーム7に連結されるとともに、屈折リンク機構4を揺動自在に支持する車体側支持部17(
図7,8参照)と、屈折リンク機構4を旋回操作させる旋回用油圧シリンダ(以下、旋回シリンダと称する)18とが備えられている。
【0059】
説明を加えると、
図7,
図8に示されるように、車体側支持部17は、連結部材20と、外方側枢支ブラケット21と、内方側枢支ブラケット22と、縦向きの回動支軸23と、を備える。車体側支持部17は、回動支軸23の縦軸芯Y周りで回動自在に屈折リンク機構4を支持している。
【0060】
連結部材20は、車体フレーム7における横側箇所に備えられた角筒状の前後向きフレーム体19に対して、横側外方から挟み込む状態で嵌め合い係合するとともに、取外し可能にボルト連結される。
【0061】
外方側枢支ブラケット21は、連結部材20の車体前後方向外方側箇所に位置する。内方側枢支ブラケット22は、連結部材20の車体前後方向の内方側箇所に位置する。縦向きの回動支軸23は、外方側枢支ブラケット21に支持される。
【0062】
屈折リンク機構4は、基端部24と、第一リンク25と、第二リンク26と、を備える。基端部24は、上下方向の位置が固定された状態で且つ縦軸芯Y周りで回動自在に車体側支持部17に支持される。第一リンク25は、一端部が基端部24の下部に横軸芯X1周りで回動自在に支持される。第二リンク26は、一端部が第一リンク25の他端部に横軸芯X2周りで回動自在に支持され且つ他端部に走行車輪2が支持される。
【0063】
説明を加えると、基端部24は、平面視で矩形枠状に設けられ、車体横幅方向内方側に偏倚した箇所において、回動支軸23を介して縦軸芯Y周りで回動自在に、車体側支持部17の外方側枢支ブラケット21に支持されている。旋回シリンダ18は、一端部が、内方側枢支ブラケット22に回動自在に連結され、他端部が、基端部24における回動支軸23に対して横方向に位置ずれした箇所に回動自在に連結されている。
【0064】
支持軸27が、第一リンク25の一端側に備えられている。支持軸27は、基端部24に対して回動自在な状態で、基端部24に支持されている。すなわち、第一リンク25は、基端部24の下部に対して、支持軸27の軸芯周りで回動自在に連結されている。
【0065】
図8に示されるように、第一リンク25は、基端側アーム部25bと他端側アーム部25aとを有している。第一リンク25の一端側箇所には、斜め上外方に向けて延びる基端側アーム部25bが一体的に形成されている。第一リンク25の他端側箇所には、斜め上外方に向けて延びる他端側アーム部25aが一体的に形成されている。
【0066】
図7に示されるように、第二リンク26は、左右一対の帯板状の板体26a,26bを備えて平面視で二股状に形成されている。第二リンク26の第一リンク25に対する連結箇所は一対の板体26a,26bが間隔をあけている。一対の板体26a,26bで挟まれた領域に、第一リンク25と連結するための連結支軸28が回動自在に支持されている。第二リンク26の第一リンク25に対する連結箇所とは反対側の揺動側端部には走行車輪2が支持されている。
図8に示されるように、第二リンク26の揺動側端部は車両本体1から離れる方向に略L字状に延びるL字状延設部26Aが形成され、L字状延設部26Aの延設側端部に走行車輪2が支持されている。
【0067】
図6に示されるように、走行車輪2は、屈折リンク機構4に対して左右方向の車体外方側に位置する状態で支持されている。具体的には、第二リンク26の揺動側端部において、左右方向の車体外方側に位置する状態で支持されている。油圧モータ6は、第二リンク26の揺動側端部において、左右方向の車体内方側(走行車輪2とは反対側)に位置する状態で支持されている。
【0068】
複数の屈折リンク機構4の夫々に対応して、屈折リンク機構4の姿勢を各別に変更可能な姿勢変更装置Dが備えられている。姿勢変更装置Dは、上述した旋回シリンダ18、第一油圧シリンダ29、及び第二油圧シリンダ30を含む。第一油圧シリンダ29は、車両本体1に対する第一リンク25の揺動姿勢を変更可能である。第二油圧シリンダ30は、第一リンク25に対する第二リンク26の揺動姿勢を変更可能である。第一油圧シリンダ29及び第二油圧シリンダ30は、夫々、第一リンク25の近傍に集約して配置されている。
【0069】
第一リンク25、第一油圧シリンダ29及び第二油圧シリンダ30が、平面視において、第二リンク26の一対の板体26a,26bの間に位置する状態で配備されている。第一油圧シリンダ29は、第一リンク25に対して車体前後方向内方側に位置して、第一リンク25の長手方向に沿うように設けられている。第一油圧シリンダ29の一端部が円弧状の第一連動部材31を介して基端部24の下部に連動連結されている。第一油圧シリンダ29の一端部は、別の第二連動部材32を介して第一リンク25の基端側箇所に連動連結されている。第一連動部材31及び第二連動部材32は、両側端部が夫々、相対回動可能に枢支連結されている。第一油圧シリンダ29の他端部は、第一リンク25に一体的に形成された他端側アーム部25aに連動連結されている。
【0070】
第二油圧シリンダ30は、第一油圧シリンダ29とは反対側、すなわち、第一リンク25に対して車体前後方向外方側に位置して、第一リンク25の長手方向に略沿うように設けられている。第二油圧シリンダ30の一端部が第一リンク25の基端側に一体的に形成された基端側アーム部25bに連動連結されている。第二油圧シリンダ30の他端部は、第三連動部材34を介して第二リンク26の基端側箇所に一体的に形成されたアーム部35に連動連結されている。第二油圧シリンダ30の他端部は、別の第四連動部材36を介して第一リンク25の揺動端側箇所にも連動連結されている。第三連動部材34及び第四連動部材36は、両側端部が夫々、相対回動可能に枢支連結されている。
【0071】
第二油圧シリンダ30の作動を停止した状態で第一油圧シリンダ29を伸縮操作すると、第一リンク25、第二リンク26及び走行車輪2の夫々が、相対的な姿勢を一定に維持したまま一体的に、基端部24に対する枢支連結箇所の横軸芯X1周りで揺動する。第一油圧シリンダ29の作動を停止した状態で第二油圧シリンダ30を伸縮操作すると、第一リンク25の姿勢が一定に維持されたまま、第二リンク26及び走行車輪2が、一体的に、第一リンク25と第二リンク26との連結箇所の横軸芯X2周りで揺動する。
【0072】
複数の屈折リンク機構4夫々の中間屈折部に自由回転自在に補助車輪3が支持されている。補助車輪3は走行車輪2と略同じ外径の車輪にて構成されている。第一リンク25と第二リンク26とを枢支連結する連結支軸28が、第二リンク26よりも車体横幅方向外方側に突出するように延長形成されている。連結支軸28の延長突出箇所に補助車輪3が回動自在に支持されている。
【0073】
図9,
図10に示されるように、屈折リンク機構4、走行車輪2、補助車輪3、第一油圧シリンダ29、及び、第二油圧シリンダ30の夫々が、一体的に、回動支軸23の縦軸芯Y周りで回動自在に外方側枢支ブラケット21に支持されている。そして、旋回シリンダ18を伸縮させることにより、それらが一体的に回動操作される。走行車輪2が前後方向に向く直進状態から左旋回方向及び右旋回方向に夫々、約45度ずつ旋回操作させることができる。
【0074】
油圧供給源8から、弁機構9を介して、複数の屈折リンク機構4の夫々の第一油圧シリンダ29及び第二油圧シリンダ30に、作動油が供給される。弁機構9では油圧制御弁11により作動油の給排が行われて、第一油圧シリンダ29及び第二油圧シリンダ30を伸縮操作させることができる。油圧制御弁11はECU13によって制御される。
【0075】
又、油圧モータ6に対応する油圧制御弁11により作動油の流量調整が行われることで、油圧モータ6すなわち走行車輪2の回転速度を変更することができる。油圧制御弁11は、手動操作にて入力される制御情報あるいは予め設定記憶されている制御情報等に基づいてECU13によって制御される。
【0076】
〔センサ〕
この作業車は種々のセンサを備える。具体的には、作業車は、
図5及び
図11に示されるように、4つの第二油圧シリンダ30の夫々について、ヘッド側圧力センサS1及びキャップ側圧力センサS2を備える。ヘッド側圧力センサS1は、第二油圧シリンダ30のヘッド側室の油圧を検出する。キャップ側圧力センサS2は、第二油圧シリンダ30のキャップ側室の油圧を検出する。各圧力センサS1,S2の検出結果はECU13に入力される。
【0077】
図11に示されるように、作業車は、4つの第一油圧シリンダ29及び4つの第二油圧シリンダ30の夫々について、伸縮操作量を検出可能なストロークセンサS3を備える。各油圧シリンダ29,30の伸縮操作量は、操作対象である第一リンク25及び第二リンク26の揺動位置に対応する検出値である。各ストロークセンサS3の検出結果はECU13に入力される。
【0078】
尚、各圧力センサS1,S2の取り付け位置は上記した位置に限られるものではない。各圧力センサS1,S2は、対応するキャップ側室又はヘッド側室の油圧を検出(推定)可能であればよく、弁機構9から対応するキャップ側室又はヘッド側室の間の配管に設けられてもよい。
【0079】
これらのセンサS1、S2の検出結果に基づいて、車両本体1を支持するために必要な推力が算出され、その結果に基づいて、それぞれの第二油圧シリンダ30への作動油の供給が制御される。
【0080】
図5,
図6、
図11に示されるように、車両本体1には、例えば、三軸加速度センサ等からなる加速度センサS4が備えられている。加速度センサS4の検出結果に基づき、車両本体1の前後左右の傾きが検知され、その結果に基づいて車両本体1の姿勢が制御される。つまり、車両本体1の姿勢が目標の姿勢となるよう、それぞれの第一油圧シリンダ29及び第二油圧シリンダ30への作動油の供給が制御される。
【0081】
図5、
図11に示されるように、走行車輪2には、油圧モータ6により駆動される走行車輪2の回転速度を検出する回転センサS5が備えられている。回転センサS5の検出結果はECU13に入力される。回転センサS5にて検出された走行車輪2の回転速度に基づいて、走行車輪2の回転速度が目標の値となるように、油圧モータ6への作動油の供給(流量)が制御される(流量制御による走行車輪2の回転速度制御)。
【0082】
図11に示されるように、作業車は、油圧モータ6に供給される作動油の圧力を検出する圧力センサS6を備える。圧力センサS6の検出結果はECU13に入力される。圧力センサS6にて検出された作動油の圧力に基づいて、走行車輪2の駆動トルクが目標の値となるように、油圧モータ6への作動油の供給(圧力)が制御される(圧力制御による走行車輪2の駆動トルク制御)。
【0083】
図11に示されるように、作業車は、4つの旋回シリンダ18の夫々について、伸縮操作量を検出可能なストロークセンサS7を備える。旋回シリンダ18の伸縮操作量は、操作対象である屈折リンク機構4の回動位置に対する検出値である。各ストロークセンサS7の検出結果はECU13に入力される。
【0084】
図11に示されるように、作業車は、走行車輪2及び補助車輪3の空気圧を調整する調整機構TPを備える。調整機構TPは、例えば、電動の空気ポンプ及び空気弁である。調整機構TPは、制御装置C(ECU13)により制御されて、走行車輪2及び補助車輪3の空気圧を増加又は減少させる。
【0085】
上述したように、本実施形態の作業車は、油圧駆動式の姿勢変更装置Dとしての旋回シリンダ18、油圧シリンダ29,30により屈折リンク機構4の姿勢を変更操作するよう構成され、かつ、走行駆動も油圧モータ6にて行うよう構成されているから、水分や細かな塵埃等による影響を受け難く、農作業に適している。
【0086】
〔ECU〕
図11に示されるように、ECU13は、状態取得部81、検知部82、機構制御部83及び走行制御部84を備えている。ECU13は、機能部に対応するプログラムを記憶するメモリ(HDDや不揮発性RAMなど。図示省略)と、当該プログラムを実行するCPU(図示省略)と、を備えている。プログラムがCPUにより実行されることにより、各機能部の機能が実現される。
【0087】
状態取得部81は、各センサの出力を監視し、当該出力に基づいて走行方向前側の支持機構Aの状態を取得する。例えば、状態取得部81は、ヘッド側圧力センサS1及びキャップ側圧力センサS2の出力に基づいて、走行車輪2及び支持機構Aが路面から受ける力(路面反力CF)を取得する。状態取得部81は、ストロークセンサS3の出力に基づいて、支持機構Aの姿勢(車両本体1に対する第一リンク25の角度、第一リンク25に対する第二リンク26の角度)を取得する。状態取得部81は、回転センサS5の出力に基づいて、油圧モータ6の回転数(すなわち走行車輪2の回転数)を取得する。状態取得部81は、圧力センサS6の出力に基づいて、油圧モータ6の回転トルク(すなわち走行車輪2の回転トルク)を取得する。状態取得部81は、ストロークセンサS7の出力に基づいて、支持機構Aの回動姿勢を取得する。
【0088】
検知部82は、状態取得部81が取得した支持機構Aの状態に基づいて路面の状態を検知する。例えば検知部82は、路面反力CFが増加したことに応じて路面の状態が上り坂に変化したことを検知し、路面反力CFが減少したことに応じて路面の状態が下り坂に変化したことを検知する。検知部82は、路面反力CFの増減頻度が増加したことに応じて路面の凹凸が増加したことを検知する。検知部82は、走行車輪2の回転数の変動量が所定の閾値より大きいことに応じて、路面が滑りやすい状態であること(または、路面の凹凸が大きい状態であること)を検知する。
【0089】
機構制御部83は、検知部82が検知した路面の状態が変化したことに応じて、油圧制御弁11を作動させて、少なくとも後側の支持機構Aの状態を変化させる。
【0090】
例えば、機構制御部83は、路面の状態が上り坂に変化したことに応じて、車両本体1の重心位置Gが走行方向後寄りになるように油圧制御弁11を作動させる。
図1の例では、機構制御部83は、油圧制御弁11を作動させて、走行方向前側の第一油圧シリンダ29及び前側の第二油圧シリンダ30を伸長させ、走行方向後側の第一油圧シリンダ29及び後側の第二油圧シリンダ30を収縮させる。そうすると、第一リンク25が横軸芯X1周りで揺動し、第二リンク26及び走行車輪2が横軸芯X2周りで揺動し、支持機構Aの姿勢が変化し、車両本体1の重心位置Gが作業車の全体において走行方向後寄りになる(図中右の状態)。なお、機構制御部83が、路面の状態が上り坂に変化したことに応じて、車両本体1の重心位置Gが走行方向後寄りになり、且つ車両本体1が水平姿勢を保つように油圧制御弁11を作動させるようにしてもよい。
【0091】
例えば、機構制御部83は、路面の状態が下り坂に変化したことに応じて、車両本体1の重心位置Gが走行方向前寄りになるように油圧制御弁11を作動させる。
図2の例では、機構制御部83は、油圧制御弁11を作動させて、走行方向前側の第一油圧シリンダ29及び前側の第二油圧シリンダ30を収縮させ、走行方向後側の第一油圧シリンダ29及び後側の第二油圧シリンダ30を伸長させる。そうすると、第一リンク25が横軸芯X1周りで揺動し、第二リンク26及び走行車輪2が横軸芯X2周りで揺動し、支持機構Aの姿勢が変化し、車両本体1の重心位置Gが作業車の全体において走行方向前寄りになる(図中右の状態)。なお、機構制御部83が、路面の状態が下り坂に変化したことに応じて、車両本体1の重心位置Gが走行方向前寄りになり、且つ車両本体1が水平姿勢を保つように油圧制御弁11を作動させるようにしてもよい。
【0092】
例えば、機構制御部83は、路面の凹凸が増加したことに応じて、車両上下方向における車両本体1と走行車輪2との間の距離が大きくなるように油圧制御弁11を作動させる。
図3の例では、機構制御部83は、油圧制御弁11を作動させて、前後の第一油圧シリンダ29及び前後の第二油圧シリンダ30を伸長させる。そうすると、第一リンク25が横軸芯X1周りで揺動し、第二リンク26及び走行車輪2が横軸芯X2周りで揺動し、支持機構Aの姿勢が変化し、車両本体1と走行車輪2との距離が、距離H1よりも大きい距離H2となる(図中右の状態)。
【0093】
例えば、機構制御部83は、路面の状態が上り坂あるいは下り坂に変化したことに応じて、あるいは凹凸が増加したことに応じて、支持機構Aの調整機構TPを作動させて、当該支持機構Aが支持する走行車輪2の空気圧を減少させるようにしてもよい。
【0094】
走行制御部84は、作業車の走行(前進、後進、停止、旋回)を制御する。具体的には、走行制御部84は、油圧制御弁11を作動させて油圧モータ6及び旋回シリンダ18への作動油の供給を制御する。例えば、走行制御部84は、人為入力された走行指示に基づいて、作業車の走行を制御する。走行制御部84が、設定された自動走行経路に沿って作業車が走行するように、油圧制御弁11を作動させて作業車の走行を制御してもよい。
【0095】
〔状態変更処理〕
図12のフローチャートを参照しながら、ECU13により実行される状態変更処理について説明する。状態変更処理は、作業車の走行中に繰り返し実行される。
【0096】
状態取得部81が前側の支持機構Aの状態を取得し、検知部82が路面の状態を検知する(ステップ#01)。
【0097】
検知部82は、路面の傾斜に変化があるか否かを判定する(ステップ#02)。路面の傾斜に変化があると判定されると(ステップ#02:Yes)、機構制御部83が姿勢変更装置Dを作動させて車両本体1の重心位置Gを変化させる(ステップ#03)。
【0098】
ステップ#02:Noの場合、又は、ステップ#03に続いて、検知部82は、路面の凹凸が増加したか否かを判定する(ステップ#04)。路面の凹凸が増加したと判断されると(ステップ#04:Yes)、機構制御部83が姿勢変更装置Dを作動させて、車両本体1と走行車輪2との距離を増加させる(ステップ#05)。
【0099】
ステップ#04:Noの場合、又は、ステップ#05に続いて、機構制御部83は、走行車輪2の空気圧の調整が必要か否かを判定する(ステップ#06)。例えば、機構制御部83は、路面の状態が上り坂に変化し傾斜が増加した場合に、空気圧の調整が必要と判定する。機構制御部83が、路面の状態が下り坂に変化し傾斜が減少した場合、路面が滑りやすい状態である場合、または、路面の凹凸が大きい場合に、空気圧の調整が必要と判定してもよい。
【0100】
空気圧の調整が必要と判定されると(ステップ#06:Yes)。機構制御部83が調整機構TPを作動させて、走行車輪2の空気圧を調整する(ステップ#07)。ステップ#06:Noの場合、又はステップ#07の終了後、状態変更処理は終了する。
【0101】
〔変形例〕
ECU13が、重量算出部を備えてもよい。重量算出部は、支持機構Aの状態に基づいて、車両本体1に積載された運搬物の重量や重量バランスを算出する。詳しくは、重量算出部は、各センサ(ヘッド側圧力センサS1、キャップ側圧力センサS2、ストロークセンサS3)の出力に基づいて、運搬物の重量や重量バランスを算出する。
【0102】
重量算出部による重量等の算出は、車両の停止時に行われてもよいし、車両の走行時に行われてもよい。重量算出部が、姿勢変更装置Dを作動させて車両本体1を上下動させ、その間の支持機構Aの状態変化(各センサの出力変化)に基づいて、重量等を算出してもよい。
【0103】
重量算出部の算出結果に基づいて、機構制御部83が支持機構Aの状態を制御してもよい。例えば、重量算出部が算出した重量・重量バランスに基づいて、機構制御部83が、油圧制御弁11の制御パラメータ(第一油圧シリンダ29及び第二油圧シリンダ30の制御パラメータ)を変更してもよい。
【0104】
重量算出部の算出結果に基づいて、走行制御部84が作業車の走行状態を制御してもよい。例えば、走行制御部84が、重量算出部が算出した重量バランスに基づいて容器の充填状況を推定し、空いていると推定された容器が収穫作業を行うオペレータに近づくよう、作業車の姿勢・向き等を制御してもよい。
【0105】
〔他の実施形態〕
(1)
図1-4には、制御装置Cが走行方向前側及び走行方向後側の支持機構Aの状態を変化させる態様が示されている。制御装置Cが、走行方向後側のみの支持機構Aの状態を変化させるよう構成されてもよい。
【0106】
(2)支持機構Aの態様は上述のものに限られない。例えば、支持機構Aが、1つのリンク、又は3つ以上のリンクを備える機構であってもよい。
【0107】
(3)姿勢変更装置Dの態様は上述のものに限られない。例えば、姿勢変更装置Dが、電動のアクチュエータを備えてもよい。
【0108】
(4)走行車輪2が、電動モータやエンジン等により駆動されてもよい。
【0109】
(5)作業車が、路面の状態を検知する検知装置を備えてもよい。検知装置は、例えば、カメラや超音波センサ、ミリ波レーダー等である。
【0110】
(6)
図1-4の図示例では、全ての走行車輪2が路面に接触している。前側の走行車輪2が路面と離間した状態で作業車が走行するよう、機構制御部83が支持機構Aを制御してもよい。この場合、前側の走行車輪2が障害物等に接触したことを高感度かつ高速に検知することができる。
【0111】
(7)検知部82が、路面が滑りやすい状態であること(または、路面の凹凸が大きい状態であること)を検知したことに応じて、機構制御部83が、走行車輪2の路面への押しつけ力が大きくなるように、姿勢変更装置Dを作動させてよい。例えば、機構制御部83が、第一油圧シリンダ29及び(または)第二油圧シリンダ30の推力が増加するように、油圧制御弁11を制御してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、凹凸の多い路面を走行するのに適した作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0113】
1 :車両本体
2 :走行車輪
81 :状態取得部
82 :検知部
A :支持機構
C :制御装置
CF :路面反力
G :重心位置
S1 :ヘッド側圧力センサ(圧力検知器)
S2 :キャップ側圧力センサ(圧力検知器)
TP :調整機構