(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
E02F 3/43 20060101AFI20240308BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
E02F3/43 F
E02F9/20 Q
(21)【出願番号】P 2020209183
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パンディ ジョツナ
(72)【発明者】
【氏名】塚田 庸子
(72)【発明者】
【氏名】一野瀬 昌則
(72)【発明者】
【氏名】堤 芳明
(72)【発明者】
【氏名】日暮 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】井村 進也
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-032329(JP,A)
【文献】特開2018-053677(JP,A)
【文献】国際公開第2019/009341(WO,A1)
【文献】再公表特許第2019/009341(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/43
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、一端側が前記車体に回動可能に取り付けられたリフトアームと、前記リフトアームの他端側に回動可能に取り付けられたバケットと、前記車体の加速度を検出する加速度センサと、掘削対象から前記リフトアームに作用する掘削反力を検出する掘削反力検出装置と、前記バケットおよび前記リフトアームの動作を制御する制御装置と、を備えた作業車両であって、
前記制御装置は、掘削対象への突入期間における前記加速度センサにより検出された前記加速度および前記掘削反力検出装置により検出された前記掘削反力に基づいて前記掘削対象を複数の類型に分類し、分類された前記類型に応じて前記制御の制御パラメータを設定し、設定された前記制御パラメータを用いて前記バケットおよび前記リフトアームの動作を制御することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記突入期間における前記加速度センサにより検出された前記加速度と前記掘削反力検出装置により検出された前記掘削反力との関係を示すマップであって、複数の前記類型に対応する複数の領域を含むマップを備え、
前記突入期間に記録した前記加速度および前記掘削反力が含まれる前記マップの前記領域を判定することにより、前記掘削対象の前記類型を判定することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記突入期間は、前記掘削対象へ向けて移動する前記車体の前記加速度が負になってからゼロ以上になるまでの期間であることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
前記リフトアームを動作させるリフトシリンダと、前記バケットを動作させるバケットシリンダと、を備え、前記制御装置は、前記リフトシリンダを駆動するためのリフトパイロット圧と前記バケットシリンダを駆動するためのバケットパイロット圧とを含む標準制御パラメータと、前記掘削対象の硬さに応じて複数の前記類型の各々に対応する複数の係数と、を備え、
前記掘削対象の前記類型に対応する前記係数を前記標準制御パラメータに乗じることで、前記類型に応じた前記制御パラメータを設定することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項5】
圧油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから吐出された圧油により前記リフトアームを動作させるリフトシリンダと、前記リフトシリンダの圧力を検出する圧力センサと、を備え、
前記制御装置は、前記圧力センサにより検出された前記圧力と前記リフトシリンダの断面積とに基づいて、前記掘削反力を算出することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホイールローダ等の掘削作業を行う作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダ等の作業車両により掘削対象となる物質の硬さを確定するための装置が開示されている。この装置は、作業機械の掘削パスの間に第一の信号を受取り、掘削パスの間に該第一の信号の関数として掘削対象となる物質の硬さを確定し、そして、掘削パスの間に掘削対象となる物質の硬さの関数としての出力信号を伝送する。この装置によれば、掘削対象となる物質の硬さを掘削パスの間に確定することができるので、掘削対象となる物質の硬さに応じて掘削作動特性を変更し、掘削効率を高めることが可能となる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、作業機械のバケットが掘削対象となる物質に接触してからバケットがチルトを開始するまでの比較的に長時間にわたって、第一の信号を受け取って掘削対象となる物質の硬さを確定する構成であるため、掘削対象となる物質の硬さが確定しないままバケットのチルト動作が開始されると、作業装置を動作させるためのパラメータが掘削対象に適した適切な値に変更されず、リフト動作およびチルト動作の効率が低下するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、従来の装置よりも掘削対象となる物質の硬さを短時間で判定することで、従来の装置よりも高い効率で掘削対象となる物質を掘削することができる作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、車体と、一端側が前記車体に回動可能に取り付けられたリフトアームと、前記リフトアームの他端側に回動可能に取り付けられたバケットと、前記車体の加速度を検出する加速度センサと、掘削対象から前記リフトアームに作用する掘削反力を検出する掘削反力検出装置と、前記バケットおよび前記リフトアームの動作を制御する制御装置と、を備えた作業車両であって、前記制御装置は、掘削対象への突入期間における前記加速度センサにより検出された前記加速度および前記掘削反力検出装置により検出された前記掘削反力に基づいて前記掘削対象を複数の類型に分類し、分類された前記類型に応じて前記制御の制御パラメータを設定し、設定された前記制御パラメータを用いて前記バケットおよび前記リフトアームの動作を制御することを特徴とする作業車両である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の上記一態様によれば、従来の装置よりも掘削対象となる物質の硬さを短時間で判定することで、従来の装置よりも高い効率で掘削対象となる物質を掘削することができる作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示に係る作業車両の一実施形態を示す側面図。
【
図2】
図1に示す作業車両に搭載された油圧装置の一部の概略的な回路図。
【
図3】
図1に示す作業車両に搭載された制御装置の機能ブロック図。
【
図4】
図3の制御装置によって実行される処理の一例を示すフロー図。
【
図5】
図4に示す制御が実行されたときの作業車両の状態を示すグラフ。
【
図6】
図5に示す突入期間の加速度と掘削反力との関係を示すマップ。
【
図7】
図5に示す突入期間の加速度と掘削反力との関係を示すマップ。
【
図8】
図5に示す突入期間の加速度と掘削反力との関係を示すマップ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示の作業車両の実施形態を説明する。
【0010】
図1は、本開示に係る作業車両の一実施形態を示す側面図である。
図2は、
図1に示す作業車両100に搭載された油圧装置130の一部の概略的な回路図である。
図3は、
図1に示す作業車両100に搭載された制御装置150の機能ブロック図である。なお、
図2では、流体の経路を実線、パイロット圧の経路を破線、電気信号の経路を点線で表示している。
【0011】
本実施形態の作業車両100は、たとえば、地表に堆積した砕石、土砂、鉱石などの掘削対象Odを掘削して、ダンプトラックなどの運搬車両の荷台に積み込むためのホイールローダである。作業車両100は、たとえば、互いにピン結合された前フレームと後フレームとを有した車体111と、作業機120と、油圧装置130と、検出装置140と、制御装置150と、を備えている。なお、作業車両100は、ホイールローダに限定されず、たとえば、ブルドーザやローディングショベルなど、他の作業車両や作業機械であってもよい。
【0012】
後フレームには、たとえば、車輪112と、キャビン113とを備えている。後フレームの建屋カバーの内部には、油圧装置130および制御装置150の他、図示を省略するエンジン、トランスミッション、および燃料タンクなどが搭載されている。車輪112は、たとえば、エンジンにトランスミッションを介して連結され、エンジンの回転によりトランスミッションを介して駆動されて車両110を走行させる。
【0013】
キャビン113は、車体111の前部の作業機120の後方に設けられた車室である。図示を省略するが、キャビン113の内部には、たとえば、オペレータが搭乗するための座席の他、操作レバー、ブレーキペダル、アクセルペダル、スピーカー、スイッチ、表示ランプ、計器類などが配置されている。本実施形態の作業車両100は、たとえば、キャビン113の内部に、制御装置150による制御P14を実行するための自動掘削スイッチ160と、表示装置170と、を備えている。
【0014】
作業機120は、たとえば、車体111の前部に取り付けられたリフトアーム121と、そのリフトアーム121の車体111に取り付けられた基端部と反対側の先端部に取り付けられたバケット122とを備え、掘削対象Odを掘削して持ち上げる。また、作業機120は、バケット122を駆動するためのベルクランク123と、バケットリンク124と、を備えている。なお、図示を省略するが、作業機120は、車体111の幅方向に間隔をあけて配置された左右一対のリフトアーム121を備えている。
【0015】
油圧装置130は、たとえば、車体111の内部に搭載されている。油圧装置130は、
図2に示すように、たとえば、リフトシリンダ131と、バケットシリンダ132と、ポンプ133と、制御弁134と、パイロットバルブ135と、リザーバ136と、パイロットポンプ137と、を備えている。
【0016】
リフトシリンダ131およびバケットシリンダ132は、たとえば、油圧シリンダである。ポンプ133およびパイロットポンプ137は、たとえば、エンジンによって駆動される油圧ポンプである。制御弁134は、たとえば、リフト制御弁134aと、バケット制御弁134bとを含む。パイロットバルブ135は、たとえば、リフトパイロットバルブ135aと、バケットパイロットバルブ135bとを含む。リザーバ136は、たとえば、作動油などの流体を貯留する。
【0017】
リフトシリンダ131は、たとえば、
図1に示すように、ピストンロッドの先端部がリフトアーム121の中間部の下端に連結され、ピストンロッドと反対側のシリンダチューブの基端部が車体111の前部に連結されている。なお、図示を省略するが、作業車両100は、たとえば、車体111の幅方向の両側に、左右一対のリフトシリンダ131を備えている。
【0018】
リフトシリンダ131は、その伸長時に、リフトアーム121を、車体111に取り付けられた回転軸を中心に上方に回転させる。これにより、リフトアーム121のリフト量が増加して、リフトアーム121の先端部のバケット122を持ち上げることができる。また、リフトシリンダ131は、その収縮時に、リフトアーム121を、車体111に取り付けられた回転軸を中心に下方に回転させる。これにより、リフトアーム121のリフト量が減少して、リフトアーム121の先端部に取り付けられたバケット122を下降させることができる。
【0019】
バケットシリンダ132は、
図1に示すように、たとえば、一対のリフトアーム121の間に配置されている。バケットシリンダ132は、たとえば、ピストンロッドの先端部がベルクランク123およびバケットリンク124を介してバケット122に連結され、ピストンロッドと反対側のシリンダチューブの基端部が車体111に連結されている。ベルクランク123は、たとえば、左右一対のリフトアーム121の中央部を連結する連結部に支持されている。
【0020】
バケットシリンダ132は、その伸長時に、ベルクランク123およびバケットリンク124を介して、バケット122を、リフトアーム121の先端部に取り付けられた回転軸を中心に上方に回転させる。これにより、バケット122のチルト量が増加して、バケット122の開口が上方を向き、バケット122によって掘削対象Odをすくい取ることができる。
【0021】
また、バケットシリンダ132は、その収縮時に、ベルクランク123およびバケットリンク124を介して、バケット122を、リフトアーム121に取り付けられた回転軸を中心に下方に回転させる。これにより、バケット122のチルト量が減少して、バケットの開口が下方を向き、バケット122によってすくい取った掘削対象Odを、バケット122の外側へダンプすることができる。
【0022】
ポンプ133は、
図2に示すように、リフトシリンダ131およびバケットシリンダ132を伸長および収縮させるための流体を送出する。ポンプ133は、たとえば、リザーバ136に貯留された作動油などの流体を、制御弁134を介してリフトシリンダ131およびバケットシリンダ132のシリンダチューブのボトム側に送出して、ピストンロッドを伸長させる。また、ポンプ133は、流体を制御弁134を介してリフトシリンダ131およびバケットシリンダ132のシリンダチューブのロッド側に送出して、ピストンロッドを収縮させる。
【0023】
制御弁134は、パイロットバルブ135によって生成されたリフトパイロット圧lppおよびバケットパイロット圧bppに応じて、リフトシリンダ131およびバケットシリンダ132へ供給される流体の流量を制御する。より具体的には、リフト制御弁134aは、リフトパイロットバルブ135aによって生成されたリフトパイロット圧lppに応じて、リフトシリンダ131のシリンダチューブのボトム側またはロッド側へ供給される流体の流量を制御する。また、バケット制御弁134bは、バケットパイロットバルブ135bによって生成されたバケットパイロット圧bppに応じて、バケットシリンダ132のシリンダチューブのボトム側またはロッド側へ供給される流体の流量を制御する。
【0024】
パイロットバルブ135は、制御弁134に接続され、制御装置150の制御に応じたリフトパイロット圧lppおよびバケットパイロット圧bppを生成する。より具体的には、リフトパイロットバルブ135aは、リフト制御弁134aに接続され、制御装置150から入力される制御信号lcsに応じたリフトパイロット圧lppを生成する。また、バケットパイロットバルブ135bは、バケット制御弁134bに接続され、制御装置150から入力される制御信号bcsに応じたバケットパイロット圧bppを生成する。
【0025】
より詳細には、リフトパイロットバルブ135aは、リフトシリンダ131のシリンダチューブのロッド側とボトム側のそれぞれにポンプ133から流体を供給するために、リフト制御弁134aの右側と左側のそれぞれのリフトパイロット圧lppを生成する。また、バケットパイロットバルブ135bは、バケットシリンダ132のシリンダチューブのロッド側とボトム側のそれぞれに、ポンプ133から流体を供給するために、バケット制御弁134bの右側と左側のそれぞれのバケットパイロット圧bppを生成する。なお、
図2には、リフト制御弁134aおよびバケット制御弁134bの左側へのパイロット圧を生成するパイロットバルブ135のみ記載している。省略しているが、右側へのパイロット圧を生成するパイロットバルブ135も存在する。
【0026】
パイロットポンプ137は、リザーバ136からパイロットバルブ135へ流体を送出し、パイロットバルブ135を介して制御弁134に入力されるリフトパイロット圧lppおよびバケットパイロット圧bppを生成する。より具体的には、パイロットポンプ137は、リフトパイロットバルブ135aとバケットパイロットバルブ135bのそれぞれに流体を送出して、リフト制御弁134aとバケット制御弁134bにそれぞれ入力されるリフトパイロット圧lppとバケットパイロット圧bppとを生成する。
【0027】
検出装置140は、少なくとも、圧力センサ142または力センサと、加速度センサ145と、を備え、少なくとも、車体111の加速度αおよび掘削対象Odからリフトアーム121に作用する掘削反力Fを検出する。本実施形態の作業車両100において、検出装置140は、たとえば、ストロークセンサ141と、角度センサ143と、速度センサ144とを含む。また、検出装置140は、たとえば、全球測位衛星システム(GNSS)など、車体111の位置を検出する位置センサを含んでもよい。
【0028】
ストロークセンサ141は、たとえば、リフトシリンダ131とバケットシリンダ132にそれぞれ設けられ、リフトシリンダ131とバケットシリンダ132のそれぞれのピストンロッドのストロークS1,S2を検出し、その検出結果を制御装置150へ送信する。
【0029】
圧力センサ142は、リフトシリンダ131とバケットシリンダ132のそれぞれに設けられ、リフトシリンダ131とバケットシリンダ132のそれぞれのシリンダチューブのボトム側の流体の圧力p1,p2を検出する油圧センサである。圧力センサ142は、その検出結果を制御装置150へ送信する。
【0030】
検出装置140は、たとえば、圧力センサ142によってリフトシリンダ131の内部の流体の圧力p1を検出することで、掘削対象Odからリフトアーム121に作用する掘削反力Fを検出することができる。なお、検出装置140は、たとえば、圧力センサ142に代えて、掘削対象Odからリフトアーム121に作用する掘削反力Fを検出するための力センサを備えてもよい。
【0031】
角度センサ143は、たとえば、リフトアーム121と車体111との連結部、およびリフトアーム121とベルクランク123との連結部にそれぞれ設けられている。角度センサ143は、たとえば、車体111に対するリフトシリンダ131の回転角度A1を検出し、その検出結果を検出装置140へ送信する。また、角度センサ143は、たとえば、リフトアーム121に対するベルクランク123の回転角度A2を検出し、その検出結果を検出装置140へ送信する。
【0032】
速度センサ144は、たとえば、車体111に搭載され、車体111の速度Vを検出して、検出結果を制御装置150へ送信する。速度センサ144は、たとえば、車輪112の角速度を測定して車体111の速度Vを算出して、検出結果を制御装置150へ送信する。加速度センサ145は、たとえば、車体111に搭載され、車体111の加速度αを検出して、検出結果を制御装置150へ送信する。また、速度センサ144は、たとえば、加速度センサ145によって検出された車体111の加速度αを積分することによって、作業車両100の速度Vを算出してもよい。
【0033】
制御装置150は、車体111に搭載されたファームウェアやマイクロコントローラなどのコンピュータシステムであり、バケット122およびリフトアーム121を駆動させて掘削対象Odを掘削する制御P14(
図4参照)を実行する。制御装置150は、たとえば、図示を省略する中央処理装置(CPU)などの演算装置、RAMおよびROMなどの記憶装置、その記憶装置に記憶されたプログラム、タイマーおよび入出力装置などを備えている。
【0034】
制御装置150は、たとえば、
図3に示すように、検出機能151と、自動掘削機能152とを備えている。これら制御装置150の各機能は、たとえば、制御装置150の演算装置によって記憶装置に記憶されたプログラムを実行することによって実現することができる。検出機能151は、検出装置140から入力される情報に基づいて、作業車両100の状態および掘削対象Odの物性を検出する。
【0035】
具体的には、検出機能151は、たとえば、ストロークセンサ141から入力されるリフトシリンダ131のストロークS1に基づいて、リフトアーム121のリフト量を算出して、自動掘削機能152へ出力する。リフト量は、たとえば、リフトシリンダ131が最も収縮した状態を基準とするリフトアーム121の回転角度または高さである。また、検出機能151は、たとえば、角度センサ143から入力される車体111に対するリフトアーム121の回転角度A1に基づいて、リフト量を算出してもよい。
【0036】
また、検出機能151は、たとえば、ストロークセンサ141から入力されるバケットシリンダ132のストロークS2に基づいて、バケット122のチルト量を算出し、自動掘削機能152へ出力する。ここで、チルト量は、たとえば、バケットシリンダ132が最も収縮した状態を基準とするバケット122の回転角度である。また、検出機能151は、たとえば、角度センサ143から入力されるリフトアーム121に対するベルクランク123の回転角度A2と車体111に対するリフトアーム121の回転角度A1に基づいて、チルト量を算出してもよい。
【0037】
また、検出機能151は、たとえば、リフト量およびチルト量、ならびに圧力センサ142から入力されるリフトシリンダ131およびバケットシリンダ132のボトム側の液体の圧力p1,p2に基づいて、作業機120に作用する荷重を算出してもよい。検出機能151は、たとえば、算出した荷重を自動掘削機能152へ出力する。
【0038】
また、検出機能151は、たとえば、圧力センサ142から入力されるリフトシリンダ131のボトム側の液体の圧力p1と、加速度センサ145から入力される車体111の加速度αに基づいて、掘削対象Odの物性を検出する。また、検出機能151は、たとえば、検出した掘削対象Odの物性に基づいて、掘削対象Odを複数の類型に分類し、その類型を自動掘削機能152へ出力するとともに、表示装置170に表示させる。
【0039】
また、検出機能151は、たとえば、ストロークセンサ141、圧力センサ142、角度センサ143、速度センサ144、および加速度センサ145から入力された情報を、作業車両100の状態として、自動掘削機能152へ出力してもよい。すなわち、検出機能151は、たとえば、検出装置140から入力されたストロークS1,S2、圧力p1,p2、回転角度A1,A2、速度V、および加速度αなどの情報を取得して、自動掘削機能152へ出力してもよい。
【0040】
自動掘削機能152は、たとえば、検出機能151から、リフトシリンダ131のシリンダチューブのボトム側の液体の圧力p1、および車体111の加速度αなどを含む作業車両100の状態に関する情報が入力される。自動掘削機能152は、たとえば、入力された情報に基づいて、リフトアーム121およびバケット122を駆動させて掘削対象Odを掘削する制御P14を実行する。
【0041】
自動掘削スイッチ160は、たとえば、作業車両100のキャビン113内に設置され、オペレータが押下することによってオンとオフが切り替えられる。自動掘削スイッチ160は、たとえば、検出機能151へオンまたはオフの状態を出力する。自動掘削スイッチ160のオンまたはオフの状態は、たとえば、検出機能151によって検出され、検出機能151から自動掘削機能152へ出力される。
【0042】
表示装置170は、たとえば、作業車両100のキャビン113内に設置されている。表示装置170は、たとえば、検出機能151から入力された掘削対象Odの類型を含む操作案内を表示して、オペレータに通知する。表示装置170は、たとえば、液晶表示装置、有機EL表示装置、タッチパネル装置などによって構成することができる。
【0043】
図4は、制御装置150によって実行される処理の一例を示すフロー図である。
図5は、
図4に示す各処理が実行されたときの作業車両100の状態を示すグラフである。
図5の各グラフの横軸は、時間t[s]である。また、
図5の各グラフの縦軸は、上から下へ、速度V[m/s]、加速度α[m/s
2]、およびリフトシリンダ131内の液体の圧力p1[Pa]である。
【0044】
以下、制御装置150によって実行される処理を詳細に説明する。制御装置150は、たとえば自動掘削機能152により、自動掘削スイッチ160がオンであるか否かの判定処理P1を実行する。この判定処理P1において、自動掘削スイッチ160がオフである場合、自動掘削機能152は、条件を満たさない(NO)と判定し、所定の周期で判定処理P1を繰り返し実行する。
【0045】
すなわち、自動掘削スイッチ160がオフの状態では、制御装置150による自動的な制御P14は実行されず、作業車両100は、オペレータによる手動操作に基づいて作動する。なお、作業車両100が自動掘削スイッチ160を有しない場合は、判定処理P1を省略することができる。
【0046】
一方、判定処理P1において、自動掘削スイッチ160がオンである場合、自動掘削機能152は、条件を満たす(YES)と判定する。この場合、自動掘削機能152は、たとえば、作業車両100の状態を「自動掘削オン」に変更する処理やキャビン113内の表示装置に自動掘削がオンであることを表示させる処理(図示を省略)などを実行し、さらに、次の判定処理P2を実行する。
【0047】
判定処理P2において、制御装置150は、たとえば自動掘削機能152により、所定の予備条件を満たすか否かを判定する。具体的には、自動掘削機能152は、たとえば、作業車両100の速度V、リフトアーム121のリフト量、およびバケット122のチルト量がそれぞれ所定の範囲内である場合に、予備条件を満たすことを判定する。
【0048】
より具体的には、予備条件を満たすための速度Vの所定の範囲は、たとえば、
図1に示すように、バケット122の爪先を掘削対象Odに突入させるのに必要な範囲に設定することができる。また、予備条件を満たすためのリフト量およびチルト量の所定の範囲は、たとえば、
図1に示すように、リフトアーム121が下降してバケット122の爪先が掘削対象Odを向いた状態になる範囲に設定することができる。
【0049】
また、予備条件は、たとえば、リフトシリンダ131のシリンダチューブのボトム側の流体の圧力p1が、所定の範囲であることを含んでもよい。また、予備条件は、リフトシリンダ131およびバケットシリンダ132のピストンロッドのストロークS1,S2が所定の範囲であることを含んでもよい。また、予備条件は、オペレータによるブレーキペダルの操作量が、所定の範囲であることを含んでもよい。
【0050】
また、予備条件は、オペレータによるアクセルペダルの操作量が、所定の範囲であることを含んでもよい。また、予備条件は、車体111のトランスミッションの変速ギヤが、所定の範囲であることを含んでもよい。また、予備条件は、リフトパイロット圧lppおよびバケットパイロット圧bppが、所定の範囲であることを含んでもよい。また、予備条件は、車体111のエンジンのトルクが、所定の範囲であることを含んでもよい。
【0051】
判定処理P2において、制御装置150は、自動掘削機能152により、作業車両100が予備条件を満たさない(NO)と判定すると、所定の周期で判定処理P2を繰り返し実行する。一方、たとえば、
図5に示す時刻t0において、作業車両100が予備条件を満たしたとする。この時刻t0から時刻t1までの間、作業車両100は、たとえば、リフトシリンダ131の圧力p1が最小値に維持され、リフトアーム121が下降してバケット122の爪先が掘削対象Odを向いた状態で、おおむね一定の速度Vで掘削対象Odに向けて走行している。
【0052】
すると、判定処理P2において、制御装置150は、自動掘削機能152により、作業車両100が予備条件を満たす(YES)と判定する。この場合、自動掘削機能152は、たとえば、作業車両100の状態を予備状態に変更する処理やキャビン113内の表示装置170に予備状態であることを表示させる処理(図示を省略)などを実行し、さらに、次の判定処理P3を実行する。
【0053】
判定処理P3において、制御装置150は、たとえば自動掘削機能152により、バケット122が掘削対象Odに突入を開始したか否かを判定する。具体的には、自動掘削機能152は、たとえば、作業車両100の掘削対象Odへ向けて移動する車体111の加速度αが負になったときに、突入を開始したことを判定する。なお、自動掘削機能152は、たとえば、リフトシリンダ131のシリンダチューブのボトム側の流体の圧力p1が所定の範囲である場合に、突入を開始したことを判定してもよい。
【0054】
図5に示す例では、時刻t0から時刻t1の前までの間は、作業車両100は、おおむね一定の速度Vで掘削対象Odへ向けて走行し、加速度αは、おおむねゼロである。そのため、判定処理P3において、制御装置150は、たとえば自動掘削機能152により、突入を開始していない(NO)と判定する。この場合、自動掘削機能152は、たとえば、所定の周期で判定処理P3を繰り返し実行する。なお、突入開始の誤判定を防止するために、加速度αが所定の負のしきい値以下になったときに、突入を開始したことを判定してもよい。
【0055】
図5に示す例では、時刻t1の直前で、作業車両100は、バケット122の爪先が掘削対象Odに突入し、速度Vが減少して加速度αが負になっている。すると、判定処理P3において、制御装置150は、たとえば自動掘削機能152により、突入を開始した(YES)と判定する。また、自動掘削機能152は、突入を開始した時刻t1から突入を完了する時刻t2までの間の突入期間Ph1において、リフトシリンダ131の内部の流体の圧力p1と車体111の加速度αとを計測して記録する処理P4を実行する。
【0056】
図5に示す突入期間Ph1において、作業車両100は、たとえば、
図1に示すように下方に位置するバケット122の爪先を進行方向の前方へ向けた状態で前進し、掘削対象Odにバケット122を差し込みながら減速している。また、時刻t1後の突入期間Ph1において、掘削対象Odからの掘削反力Fがリフトシリンダ131に作用することで、リフトシリンダ131の内部の液体の圧力p1が時間の経過とともに増加している。
【0057】
この突入期間Ph1において、制御装置150は、たとえば、自動掘削機能152により、圧力p1と加速度αとを計測して記録する処理P4を実行するとともに、突入が完了したか否かの判定処理P5を実行する。この判定処理P5において、制御装置150は、たとえば、自動掘削機能152により、バケット122が掘削対象Odへの突入を開始して車体111の加速度αが負になってからゼロ以上になったか否かを判定する。
【0058】
図5に示す例において、時刻t1で突入を開始してから時刻t2までの間は、車体111の加速度αが負になり、車体111の速度Vが減少している。したがって、この突入期間Ph1では、判定処理P5において、制御装置150は、たとえば自動掘削機能152により、突入が完了していない(NO)と判定する。この場合、制御装置150は、たとえば、自動掘削機能152によって圧力p1と加速度αとを計測して記録する処理P4を継続しつつ、判定処理P5を所定の周期で繰り返し実行する。
【0059】
図5に示す例では、時刻t2において、バケット122を掘削対象Odに突入させた状態で作業車両100の減速が終了し、車体111の速度Vおよび加速度αがゼロになっている。すると、判定処理P5において、制御装置150は、たとえば自動掘削機能152により、突入が完了した(YES)と判定する。このとき、作業車両100のバケット122は、たとえば、掘削対象Odに対して、十分に差し込まれた状態になっている。次に、制御装置150は、たとえば検出機能151により、掘削対象Odの類型を判定する処理P6を実行する。
【0060】
この処理P6において、制御装置150は、たとえば、検出機能151により、作業機120による掘削対象Odの掘削時に、掘削対象Odからリフトアーム121に作用する反力である掘削反力F[N]を算出する。具体的には、検出機能151は、たとえば、リフトシリンダ131の内部の流体の圧力p1[Pa]、すなわちリフトシリンダ131のシリンダチューブのボトム側の液体の圧力に、そのシリンダチューブの断面積Sa[m2]を乗じて、掘削反力F[N]を算出する。
【0061】
なお、リフトシリンダ131のシリンダチューブの断面積Saは、あらかじめ記憶装置に記憶されている。検出機能151は、圧力センサ142からリフトシリンダ131の圧力p1を取得するとともに、記憶装置からリフトシリンダ131のシリンダチューブの断面積Saを取得して、掘削反力F[N]を算出する。
【0062】
図6から
図8は、
図5に示す突入期間Ph1の車体111の加速度αと掘削反力Fとの関係を示すマップM1,M2,M3である。これらのマップM1,M2,M3は、たとえば、様々な大きさの作業車両100によって、様々な物性の掘削対象Odを掘削することで得られたデータに基づいて作成され、制御装置150を構成する記憶装置に記憶されている。
【0063】
図6のマップM1は、たとえば、横軸を掘削反力F[N]、縦軸を加速度α[m/s
2]とするグラフであり、点線、破線、および実線は、それぞれ、小型の作業車両、中型の作業車両、および大型の作業車両の掘削反力Fと加速度αとの関係の一例を示している。
図6に示すように、同じ物性の掘削対象Odを掘削する場合、作業車両100の大きさおよび重量が大きいほど、加速度αの減少量に対する掘削反力Fの増加量は大きくなる。換言すると、同じ加速度αでも、作業車両100の大きさおよび重量が大きいほど、リフトアーム121に作用する掘削対象Odからの掘削反力Fが大きくなる。
【0064】
しかし、リフトアーム121に作用する掘削反力Fと、車体111の加速度αとは、作業車両100の大きさおよび重量によらず比例関係にある。また、同じ大きさおよび重量の作業車両100では、掘削対象Odの物性に応じて、掘削反力Fおよび加速度αが変化する。したがって、作業車両100の大きさおよび重量によらず、掘削反力Fと加速度αとの関係に基づいて、掘削対象Odの物性を判定することができる。
【0065】
図7に示すマップM2は、横軸を掘削反力F[N]、縦軸を加速度α[m/s
2]とするグラフによって構成され、実線は、大型の作業車両の掘削反力Fと加速度αとの関係の一例を示している。
図7では、一つの直線を示しているが、この直線は、たとえば下上の二点鎖線の間で変化してもよい。
図7のマップM2は、リフトアーム121に作用する掘削反力Fおよび車体111の加速度αの範囲が異なる複数の領域H,M,Sを含んでいる。掘削反力Fおよび加速度αは、領域Hにおいて比較的に大きく、領域Mにおいて中程度であり、領域Sにおいて比較的に小さくなっている。
【0066】
図8に示すマップM3は、横軸を掘削反力F[N]、縦軸を加速度α[m/s
2]とするグラフによって構成され、リフトシリンダ131に作用する掘削反力Fおよび車体111の加速度αの範囲が異なる複数の領域H,M,Sが示されている。掘削反力Fおよび加速度αは、領域Hにおいて比較的に大きく、領域Mにおいて中程度であり、領域Sにおいて比較的に小さくなっている。
【0067】
図7および
図8に示すマップM2,M3において、領域Hは、たとえば、大礫など、比較的に硬い掘削対象Od、または、比較的に密度が高い掘削対象Odを含む、類型Aの掘削対象Odに対応している。また、領域Mは、たとえば、礫岩など、中程度の硬さの掘削対象Od、または、中程度の密度の掘削対象Odを含む、類型Bの掘削対象Odに対応している。また、領域Sは、たとえば、砂/シルトなど、比較的に軟らかい掘削対象Od、または、比較的に密度が低い掘削対象Odを含む、類型Cの掘削対象Odに対応している。なお、掘削対象Odの硬さは、たとえば、掘削対象Odを構成する材料の弾性波速度に基づいて判定することができる。具体的には、弾性波速度が高いほど硬い材料と言うことができる。
【0068】
すなわち、制御装置150は、
図7または
図8に示すような、突入期間Ph1の車体111の加速度αとリフトアーム121に作用する掘削反力Fとの関係を示すマップM2,M3を備えている。マップM2,M3は、複数の類型A,B,Cに対応する複数の領域H,M,Sを含む。マップM2,M3は、たとえば、制御装置150を構成する記憶装置に記憶されている。この場合、
図4に示す処理P6において、制御装置150は、突入期間Ph1に記録した加速度αおよび掘削反力Fが含まれるマップM2,M3の領域H,M,Sを判定することにより、掘削対象Odの類型A,B,Cを判定する。
【0069】
より具体的には、
図4に示す処理P6において、たとえば、制御装置150の検出機能151は、処理P4で記録された加速度αおよび掘削反力Fが、
図7または
図8に示す領域Hに含まれる場合、掘削対象Odが、大礫などの硬い材料を含む類型Aであることを判定する。また、検出機能151は、処理P4で記録された加速度αおよび掘削反力Fが、
図7または
図8に示す領域Mに含まれる場合、掘削対象Odが、礫岩などの中程度の硬さの材料を含む類型Bであることを判定する。
【0070】
また、検出機能151は、処理P4で記録された加速度αおよび掘削反力Fが、
図7または
図8に示す領域Sに含まれる場合、掘削対象Odが、砂/シルトなどの軟らかい材料を含む類型Cであることを判定する。また、検出機能151は、処理P4で記録された加速度αおよび掘削反力Fが、
図7または
図8に示すいずれの領域H,M,Sにも含まれない場合、掘削対象Odが類型Dであることを判定する。検出機能151は、たとえば、掘削対象Odの類型A,B,CまたはDを、自動掘削機能152および表示装置170へ出力し、処理P6を終了する。
【0071】
次に、制御装置150は、たとえば自動掘削機能152により、掘削対象Odが類型Aであるか否かの判定処理P7を実行する。この判定処理P7において、自動掘削機能152は、検出機能151から入力された掘削対象Odの類型が、類型Aである(YES)と判定すると、類型A用の設定を行う処理P8を実行する。この処理P8において、自動掘削機能152は、制御P14における制御パラメータを、類型Aの掘削対象Odに応じて設定する。
【0072】
より具体的には、制御装置150は、たとえば、制御P14における標準制御パラメータと、掘削対象Odの複数の類型A,B,Cの各々に対応する複数の係数とを備えている。これら標準制御パラメータおよび複数の係数は、たとえば、制御装置150を構成する記憶装置に記憶されている。標準制御パラメータは、たとえば、リフトシリンダ131を駆動するためのリフトパイロット圧lppと、バケットシリンダ132を駆動するためのバケットパイロット圧bppを含む。
【0073】
作業機120による掘削対象Odの掘削時に、掘削対象Odが最も硬い材料を含む類型Aである場合、最も大きい掘削反力Fがリフトアーム121に作用する。また、掘削対象Odが類型Aの材料よりも軟らかい中程度の硬さの材料を含む類型Bである場合、類型Aよりも小さい掘削反力Fがリフトアーム121に作用する。また、掘削対象Odが最も軟らかい材料を含む類型Cである場合、類型Bよりも小さい掘削反力Fがリフトアーム121に作用する。そのため、標準制御パラメータの係数は、たとえば、類型A用の係数が最も大きくされ、類型B用の係数は類型A用の係数よりも小さくされ、類型C用の係数は類型B用の係数よりも小さくされている。
【0074】
図4に示す類型A用の設定を行う処理P8において、自動掘削機能152は、たとえば、制御P14における標準制御パラメータの係数として、記憶装置から類型A用の係数を取得する。その後、自動掘削機能152は、処理P8で取得した類型Aの掘削対象Odに対応する係数を制御P14の標準制御パラメータに乗じることで、類型Aに応じた制御パラメータを設定する。その後、制御装置150は、設定した制御パラメータを用いて、制御P14を実行する。
【0075】
一方、掘削対象Odが類型Aであるか否かの判定処理P7において、自動掘削機能152は、検出機能151から入力された掘削対象Odの類型が、類型Aではない(NO)と判定すると、掘削対象Odが類型Bであるか否かの判定処理P9を実行する。この判定処理P9において、自動掘削機能152は、検出機能151から入力された掘削対象Odの類型が、類型Bである(YES)と判定すると、類型B用の設定を行う処理P10を実行する。
【0076】
この処理P10において、自動掘削機能152は、たとえば、制御P14における標準制御パラメータの係数として、記憶装置から類型B用の係数を取得する。その後、自動掘削機能152は、処理P10で取得した類型Bの掘削対象Odに対応する係数を制御P14の標準制御パラメータに乗じることで、類型Bに応じた制御パラメータを設定する。その後、制御装置150は、設定した制御パラメータを用いて、制御P14を実行する。
【0077】
一方、掘削対象Odが類型Bであるか否かの判定処理P9において、自動掘削機能152は、検出機能151から入力された掘削対象Odの類型が、類型Bではない(NO)と判定すると、掘削対象Odが類型Cであるか否かの判定処理P11を実行する。この判定処理P11において、自動掘削機能152は、検出機能151から入力された掘削対象Odの類型が、類型Cである(YES)と判定すると、類型C用の設定を行う処理P12を実行する。
【0078】
この処理P12において、自動掘削機能152は、たとえば、制御P14における標準制御パラメータの係数として、記憶装置から類型C用の係数を取得する。その後、自動掘削機能152は、処理P12で取得した類型Cの掘削対象Odに対応する係数を制御P14の標準制御パラメータに乗じることで、類型Cに応じた制御パラメータを設定する。その後、制御装置150は、設定した制御パラメータを用いて、制御P14を実行する。
【0079】
一方、掘削対象Odが類型Cであるか否かの判定処理P11において、自動掘削機能152は、検出機能151から入力された掘削対象Odの類型が、類型Cではない(NO)と判定すると、標準設定を行う処理P13を実行する。この処理P13において、自動掘削機能152は、制御P14の標準制御パラメータを、類型Dに応じた制御パラメータに設定する。その後、制御装置150は、設定した制御パラメータを用いて、制御P14を実行する。
【0080】
制御P14において、制御装置150は、たとえば、自動掘削機能152により、設定された制御パラメータに基づいて、リフトアーム121をリフトさせ、バケットシリンダ132をチルトさせることで、掘削対象Odを自動的に掘削する。
【0081】
図5に示す例において、制御装置150は、時刻t1から時刻t2までの突入期間Ph1の完了後の処理P8、処理P10、処理P12または処理P13により、掘削対象Odの類型に応じた制御パラメータの係数を取得する。そして、制御装置150は、時刻t2から時刻t3までの掘削期間Ph2に、掘削対象Odの類型に応じて設定された制御パラメータを用いて、制御P14を実行する。
【0082】
具体的には、制御装置150は、たとえば、時刻t2後の掘削期間Ph2に制御P14を開始する。すると、制御装置150は、自動掘削機能152により、掘削対象Odの類型に対応する係数を、制御P14の標準制御パラメータに乗じることで、掘削対象Odの類型に応じた制御パラメータを設定する。そして、自動掘削機能152は、設定した制御パラメータを用いて、制御P14を実行する。
【0083】
より具体的には、掘削対象Odが、大礫などの硬い材料を含む類型Aである場合、制御装置150は、他の類型B,Cの掘削対象Odよりも大きい係数を、標準制御パラメータに乗じることで、類型Aの掘削対象Odに適した制御パラメータを算出する。そして、類型Aの掘削対象Odに適した制御パラメータを用いて制御P14を実行する。
【0084】
制御P14の制御パラメータは、たとえば、リフトパイロット圧lppとバケットパイロット圧bppである。制御装置150は、たとえば、類型Aの掘削対象Odに適したリフトパイロット圧lppとバケットパイロット圧bppを算出し、そのリフトパイロット圧lppおよびバケットパイロット圧bppに応じた制御信号lcs,bcsを、
図2に示すパイロットバルブ135に出力する。
【0085】
リフトパイロットバルブ135aは、制御装置150からの制御信号lcsに基づいて、類型Aの掘削対象Odの掘削に適したリフトパイロット圧lppを生成する。これにより、
図2に示すリザーバ136からポンプ133によって送出された流体が、リフト制御弁134aを介して所定の流量でリフトシリンダ131のシリンダチューブのボトム側へ流入する。その結果、制御装置150は、リフトシリンダ131のピストンロッドのストロークを増加させ、
図1に示すリフトアーム121のリフト量を増加させ、類型Aの掘削対象Odに適した制御P14を行うことができる。
【0086】
バケットパイロットバルブ135bは、制御装置150からの制御信号bcsに基づいて、類型Aの掘削対象Odの掘削に適したバケットパイロット圧bppを生成する。これにより、
図2に示すリザーバ136からポンプ133によって送出された流体が、バケット制御弁134bを介して所定の流量でバケットシリンダ132のシリンダチューブのボトム側へ流入する。その結果、制御装置150は、バケットシリンダ132のピストンロッドのストロークを増加させ、
図1に示すバケット122のチルト量を増加させ、類型Aの掘削対象Odに適した制御P14を行うことができる。
【0087】
同様に、掘削対象Odが他の類型B,Cである場合にも、制御装置150は、各類型に応じて設定された係数を、標準制御パラメータに乗じることで、掘削対象Odに適した制御パラメータを算出する。そして、制御装置150は、各類型の掘削対象Odに適した制御パラメータを用いて制御P14を実行する。したがって、制御装置150は、各類型の掘削対象Odに適した制御P14を行うことができる。制御P14の完了後、制御装置150は、
図4に示す処理フローを終了する。
【0088】
以上のように、本実施形態の作業車両100は、車体111と、一端側がその車体111に回動可能に取り付けられたリフトアーム121と、そのリフトアーム121の他端側に回動可能に取り付けられたバケット122と、を備えている。また、作業車両100は、車体111の加速度αを検出する加速度センサと、掘削対象Odからリフトアーム121に作用する掘削反力Fを検出する掘削反力検出装置としての圧力センサ142と、バケット122およびリフトアーム121の動作を制御する制御装置150と、を備えている。そして、制御装置150は、掘削反力Fが増加する掘削対象Odへの突入期間Ph1における加速度センサ145により検出された加速度αおよび圧力センサ142により検出された掘削反力Fに基づいて掘削対象Odを複数の類型A,B,Cに分類し、分類された類型A,B,Cに応じて制御P14の制御パラメータを設定し、設定された制御パラメータを用いて制御P14を実行してバケット122およびリフトアーム121の動作を制御する。
【0089】
この構成により、本実施形態の作業車両100は、従来の装置よりも掘削対象Odとなる物質の硬さを短時間で判定し、従来の装置よりも高い効率で掘削対象Odとなる物質を掘削することができる。より具体的には、従来の装置では、物質状態が確定しないままバケットがチルト動作を開始すると、作業装置を動作させるためのパラメータが掘削対象に適した適切な値に変更されず、リフト動作およびチルト動作の効率が低下するおそれがある。
【0090】
これに対し、本実施形態の作業車両100において、制御装置150は、バケット122を掘削対象Odに突入させる突入期間Ph1の加速度αおよび掘削反力Fに基づいて、掘削対象Odを物性に応じた類型A,B,C,Dに分類することができる。また、掘削対象Odの類型A,B,C,Dは、加速度αと掘削反力Fのみで簡単に判定することができる。したがって、掘削対象Odを硬さなどの物性に基づく類型A,B,C,Dに分類するために要する時間を削減することができ、従来の装置よりも掘削対象Odとなる物質の硬さなどの物性を短時間で判定することができる。
【0091】
また、本実施形態の作業車両100において、制御装置150は、掘削対象Odの類型A,B,Cに応じて設定された制御パラメータを用いて、制御P14を実行する。これにより、制御装置150は、掘削対象Odの物性に基づく類型A,B,Cに適した制御P14を実行することができ、バケット122およびリフトアーム121を効率よく駆動させて、異なる物性の掘削対象Odの掘削を高い効率で行うことが可能になる。
【0092】
また、本実施形態の作業車両100において、制御装置150は、突入期間Ph1における加速度センサ145により検出された加速度αと掘削反力検出装置としての圧力センサ142により検出された掘削反力Fとの関係を示すマップM2,M3であって、複数の類型A,B,Cに対応する複数の領域H,M,Sを含むマップM2,M3を備えている。制御装置150は、突入期間Ph1に記録した加速度αおよび掘削反力Fが含まれるマップM2,M3の領域H,M,Sを判定することにより、掘削対象Odの類型A,B,Cを判定する。この構成により、突入期間Ph1に記録した加速度αおよび掘削反力Fに基づいて、掘削対象Odの類型A,B,Cを容易かつ短時間に判定することが可能になる。
【0093】
また、本実施形態の作業車両100において、突入期間Ph1は、掘削対象Odへ向けて移動する車体111の加速度αが負になってからゼロ以上になるまでの期間である。この構成により、制御装置150は、車体111の加速度αに基づいて、突入期間Ph1の開始と終了を判定することが可能になる。なお、制御装置150は、リフトシリンダ131の内部の流体の圧力p1に基づいて、突入期間Ph1の開始と終了を判定してもよい。
【0094】
また、本実施形態の作業車両100は、リフトアーム121を動作させるリフトシリンダ131と、バケット122を動作させるバケットシリンダ132と、を備えている。また、制御装置150は、リフトシリンダ131を駆動するためのリフトパイロット圧lppとバケットシリンダ132を駆動するためのバケットパイロット圧bppとを含む標準制御パラメータと、掘削対象Odの硬さに応じて複数の類型A,B,Cの各々に対応する複数の係数と、を備えている。そして、制御装置150は、掘削対象Odの類型A,B,Cに対応する係数を標準制御パラメータに乗じることで、類型A,B,Cに応じた制御パラメータを設定する。この構成により、掘削対象Odの類型A,B,Cに適した制御P14の制御パラメータを設定することができ、制御P14において掘削対象Odの掘削を効率よく行うことが可能になる。
【0095】
また、本実施形態の作業車両100は、圧油を吐出する油圧ポンプとしてのポンプ133と、そのポンプ133から吐出された圧油によりリフトアーム121を動作させるリフトシリンダ131と、リフトシリンダ131の圧力p1を検出する圧力センサ142と、を備えている。そして、制御装置150は、圧力センサ142により検出された圧力p1とリフトシリンダ131の断面積とに基づいて、掘削反力Fを算出する。この構成により、作業車両100が一般的に備えている圧力センサ142を用いて、掘削反力Fを検出することが可能になる。
【0096】
以上説明したように、本実施形態によれば、従来の装置よりも掘削対象Odの物性を短時間で判定し、従来の装置よりも高い効率で掘削対象Odの掘削を行うことができる作業車両100を提供することができる。
【0097】
以上、図面を用いて本開示に係る作業車両の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。たとえば、前述の実施形態では、掘削対象Odを三つの類型A,B,Cに分類する例を説明したが、掘削対象Odの類型は、たとえば、二つでもよく、四つ以上の複数であってもよい。掘削対象Odの類型の数を増加させることで、あらゆる掘削対象Odをいずれかの類型に分類することが可能になる。また、掘削対象Odの類型の判定は、掘削サイクルごとに行ってもよい。また、掘削対象Odの類型が掘削サイクル間で頻繁に変化する場合でも、制御装置150は、制御パラメータの係数を変更することで、掘削対象Odの類型に適した制御P14を容易に実行することができる。
【符号の説明】
【0098】
100 作業車両、111 車体、121 リフトアーム、122 バケット、131 リフトシリンダ、133 ポンプ(油圧ポンプ)、140 検出装置、142 圧力センサ(掘削反力検出装置)、145 加速度センサ、150 制御装置、A 類型、B 類型、C 類型、F 掘削反力、H 領域、M 領域、M2 マップ、M3 マップ、Od 掘削対象、p1 圧力、P14 制御、Ph1 突入期間、S 領域、α 加速度