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  • 特許-防音材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】防音材
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20240308BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20240308BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20240308BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20240308BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20240308BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
G10K11/16 110
G10K11/168
B32B5/18
B32B5/24 101
B32B7/12
B32B5/26
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020533499
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(86)【国際出願番号】 JP2019029506
(87)【国際公開番号】W WO2020026994
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2018146130
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】松本 憲和
(72)【発明者】
【氏名】酒井 章子
(72)【発明者】
【氏名】大谷 憲司
(72)【発明者】
【氏名】宮田 照久
【審査官】佐久 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-294619(JP,A)
【文献】特開2005-227747(JP,A)
【文献】特開2018-092132(JP,A)
【文献】特開2017-167251(JP,A)
【文献】特開2005-208494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/00-13/00
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材からなる表皮層と、表皮層に積層された、空隙が連通している多孔質材からなる裏面層と、該表皮層と裏面層との間に積層された、接合材からなる接合層とを、備えた防音材であって、
前記繊維材は、1~10μmの平均繊維径および5~200cm/cm・secの通気量を有し、
前記裏面層は32~300cm /cm ・secの通気量を有し、
前記接合層は、前記表皮層と前記裏面層とが対面する面全体に対して50~95%の接合面積率を有する防音材。
【請求項2】
前記接合層は、前記表皮層と前記裏面層とが対面する面全体に対して60~95%の接合面積率を有する請求項1に記載の防音材。
【請求項3】
前記接合材は、塗工された粘着剤又は両面粘着テープである請求項1又は2に記載の防音材。
【請求項4】
前記塗工された粘着剤又は両面粘着テープの粘着剤は、25℃におけるせん断貯蔵弾性率が1.0×10~1.0×10Paの範囲である請求項3に記載の防音材。
【請求項5】
前記接合層は、複数の棒状層を形成する請求項1に記載の防音材。
【請求項6】
前記複数の棒状層は、縞模様を形成する請求項5に記載の防音材。
【請求項7】
隣り合った棒状層同士の間隔は、1mm以上である請求項6に記載の防音材。
【請求項8】
前記表皮層は、10~100cm/cm・secの通気量を有する請求項1~5のいずれか一項に記載の防音材。
【請求項9】
前記裏面層は繊維材であって、前記繊維材の目付は、100~300g/mである請求項1~8のいずれか一項に記載の防音材。
【請求項10】
前記防音材の総厚さは、5~15mmである請求項1~9のいずれか一項に記載の防音材。
【請求項11】
前記防音材は、JIS A1405-2に準拠して測定した垂直入射吸音率が、1/3オクターブバンドの中心周波数2000、2500、3150および4000Hzの全てにおいて55%以上である請求項1~10のいずれか一項に記載の防音材。
【請求項12】
前記防音材は、JIS A1405-2に準拠して測定した垂直入射吸音率が、1/3オクターブバンドの中心周波数1600、2000、2500、3150および4000Hzの全てにおいて55%以上である請求項1~10のいずれか一項に記載の防音材。
【請求項13】
前記防音材は、JIS A1405-2に準拠して測定した垂直入射吸音率が、1/3オクターブバンドの中心周波数1250、1600、2000、2500、3150、4000Hzの全てにおいて55%以上である請求項1~10のいずれか一項に記載の防音材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防音材に関し、特に、実用上、有効な高いレベルの吸音率を有し、さらに吸音可能な周波数領域が拡大された防音材に関する。
【背景技術】
【0002】
都市化の進行、又は行政サービスの効率化等のため、近年、人々が狭い地域に密集して生活する傾向が明確になっている。人口密度が高くなると、生活、労働、娯楽等の活動が接近して行われることになり、生活者が騒音に接する頻度及び騒音の種類が増加する。騒音が多い環境下でも快適な生活環境を確保するために、生活の場面で遭遇する生活騒音を全般的に遮断することが可能な防音材が求められている。また、生活騒音の発音体である各種機器等の小型・軽量化に伴い、これらに使用される防音材に対しても薄膜・軽量化が求められている。
【0003】
生活騒音は、例えば、輸送機器、建設機械・機器、電子・電気機器、家電などから発せられ、種類が多様であり、低周波数から高周波数にわたって幅広い周波数の音が含まれる。
【0004】
騒音・異音などを遮断する防音方法の一つとして、吸音がある。ここで、「吸音」とは、音を吸収することで音の反射を抑える方法のことを指し、吸収によって反射する音の大きさが小さいほど、吸音性が高い。吸音のメカニズムは、一般的にフェルト、グラスウール、ロックウールなどの繊維材料の骨格部分とその間の空隙から構成される材料に音が入射した際に、音波の持つエネルギーの一部が、空隙中で骨格部分の周壁との摩擦や粘性抵抗、さらに骨格の振動などによって、熱エネルギーに変換されることで、吸音するものである。音は、音波の粒子速度が大きい位置で、音エネルギーの消費が最大になるので、例えば、剛壁から粒子速度の大きいλ/4等の位置まで防音材があると吸音率が高くなる。そのため、例えば、剛壁に貼り付けた材料は、高周波になるほど、吸音率が高く、又、防音材料の厚さが大きい程、低周波側の吸音率を高くすることができる。
【0005】
特許文献1には自動車のエンジンルームなどの騒音を車室内に伝播しないようにする超軽量な防音材が記載されている。この防音材は、熱可塑性フェルト等の通気性の材質でなる吸音層と、軽量な発泡体または薄いフィルム体等でなる通気性の共振層とが、接着層により所定の接着強度および接着面積となるように接着された積層体からなるものである。
【0006】
特許文献1の防音材は、通気性の共振層と吸音層との間にある接着層の利用によって、通気性の超軽量な共振層と吸音層との界面での共振現象を発現させて吸音しており、接着面積や吸音層の密度によって、バネマス系共振や剛性の調整を行い、界面において吸音する音の周波数や吸音率を制御している。しかしながら、この防音材は、低~高周波領域での吸音率のバランス制御(吸音特性の広帯域化)や薄膜化については、まだ改善の余地があり、吸音可能な周波数領域が十分広いとは言えない。
【0007】
特許文献2には自動車の内装用などに好適な吸音材が記載されている。この吸音材は、部分熱圧着後、更にカレンダー加工されたスパンボンド法による熱可塑性合成長繊維不織布からなる表面材と合成繊維不織布からなる裏面材との接合不織布である。
【0008】
特許文献2の吸音材は、表面材の平均繊維径を10~30μmとし、さらに裏面材を厚くすることにより、中程度の周波数領域(2000~4000Hz)にかけて、高い吸音率を有している。しかしながら、この吸音材は、全厚が薄くなると、特に2000Hzの吸音率が低下する傾向にあった。つまり、特許文献2の吸音材は、今後、要求が大きくなる薄膜・軽量化に応えるために厚さをより薄くした場合には、2000Hz以下の周波数領域の吸音率について、まだ改善の余地があり、吸音可能な周波数領域が十分広いとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2005-208494号公報
【文献】特開2006-28709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、薄さを維持しながら、実用上、有効な高いレベルの吸音率を有し、さらに吸音可能な周波数領域が拡大された防音材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、特定の平均繊維径を有する繊維から構成された、特定の通気量を有する繊維材からなる表皮層と、空隙が連通している多孔質材からなる裏面層とを、接合層により所定の接合面積率となるように、部分的に接合されてなる積層体であれば、積層体の総厚さを薄くしても、実用上、有効な高いレベルの吸音率を有し、さらに吸音可能な周波数帯域が拡大された防音材として有効であることを見出し、本発明を成すに至った。
【0012】
本発明は、繊維材からなる表皮層と、表皮層に積層された、空隙が連通している多孔質材からなる裏面層と、該表皮層と裏面層との間に積層された、接合材からなる接合層とを、備えた防音材であって、
前記繊維材は、1~10μmの平均繊維径および5~200cm/cm・secの通気量を有し、
前記接合層は、前記表皮層と前記裏面層とが対面している面全体に対して50~95%の接合面積率を有する防音材を提供する。
【0013】
ある一形態においては、前記接合層は、前記表皮層と前記裏面層とが対面している面全体に対して60~95%の接合面積率を有する。
【0014】
ある一形態においては、前記接合材は、塗工された粘着剤又は両面粘着テープである。
【0015】
ある一形態においては、前記塗工された粘着剤又は両面粘着テープの粘着剤は、25℃におけるせん断貯蔵弾性率が1.0×10~1.0×10Paの範囲である。
【0016】
ある一形態においては、前記接合層は、複数の棒状層から形成されている。
【0017】
ある一形態においては、前記複数の棒状層は、縞模様を形成する。
【0018】
ある一形態においては、隣り合った棒状層同士の間隔は1mm以上である。
【0019】
ある一形態においては、前記表皮層は、10~100cm/cm・secの通気量を有する。
【0020】
ある一形態においては、前記裏面層は繊維材であって、前記繊維材の目付は、100~300g/mである。
【0021】
ある一形態においては、前記防音材の総厚さは、5~15mmである。
【0022】
ある一形態においては、前記防音材は、JIS A1405-2に準拠して測定した垂直入射吸音率が、1/3オクターブバンドの中心周波数2000、2500、3150および4000Hzの全てにおいて55%以上である。
【0023】
ある一形態においては、前記防音材は、JIS A1405-2に準拠して測定した垂直入射吸音率が、1/3オクターブバンドの中心周波数1600、2000、2500、3150および4000Hzの全てにおいて55%以上である。
【0024】
ある一形態においては、前記防音材は、JIS A1405-2に準拠して測定した垂直入射吸音率が、1/3オクターブバンドの中心周波数1250、1600、2000、2500、3150、4000Hzの全てにおいて55%以上である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の防音材は薄く実用性に優れ、吸音可能な周波数領域が拡大されているので、多様な生活騒音を有効に吸音することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の一実施形態である防音材の構成を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、本発明の接合層の構造の一例を模式的に示す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[防音材の構成]
図1は、本発明の一実施形態である防音材の構成を模式的に示す斜視図である。防音材10は、繊維材からなる表皮層11と、空隙が連通している多孔質材からなる裏面層13と、接合層12とを備えた積層構成を有する。防音材10は、例えば、輸送機器、建設機械・機器、電子・電気機器、家電などの発音体から発せられる音を吸音するための部材として用いられる。
【0028】
<接合層>
接合層12は表皮層11と裏面層13とを接合するための層であり、表皮層11と裏面層13とが積層される際に、両層の間に接合材を使用して、後述する所定の接合面積率の範囲となるように形成する。上記接合材としては、形状及び寸法を容易、正確に実現することができて、連通した空隙を実質的に有しない材料を使用する。
【0029】
接合材は、例えば、粘着剤、接着剤等を含む材料を使用することができる。具体的には、塗工された粘着剤、塗工された接着剤、又はこれらをテープ状、シート状、粉末状に加工したもの等が挙げられる。中でも、作業性、生産性、寸法精度の観点から、塗工された粘着剤又は両面粘着テープ(基材を有しない基材レス両面粘着テープも含む)により接合層12を形成するのが好ましい。
【0030】
上記の塗工された粘着剤又は両面粘着テープに使用される粘着剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知の粘着剤を使用することができる。例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤やエチレン-酢酸ビニル共重合体系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、汎用性、厚さの可変領域の広さ、表皮層と裏面層を過度に拘束しない等の観点から、ゴム系粘着剤又はアクリル系粘着剤が好ましい。上記粘着剤の25℃におけるせん断貯蔵弾性率(G’)は、1.0×10~1.0×10Paの範囲であることが好ましい。上記せん断貯蔵弾性率を、このような範囲とすることにより、表皮層11と裏面層13の音の振動による変形や変位はある程度可能であり、該境界層で音を反射させる硬質部分を生じさせず、音波をある程度通過させることができ、表皮層11、裏面層13および防音材10全体としての吸音機構を問題なく機能させることができる。上記粘着剤の25℃におけるせん断貯蔵弾性率(G’)は、好ましくは5.0×10~8.0×10Paの範囲であり、より好ましくは1.0×10~6.0×10Paの範囲である。
【0031】
上記接合層12は、上述したように表皮層11と裏面層13とを接合し固定するための機能を有するが、ここで、本発明者らは、特定の平均繊維径を有する繊維から構成された、特定の通気量を有する繊維材からなる表皮層11と、空隙が連通している多孔質材からなる裏面層13を用いた場合に、該表皮層11と該裏面層13とを接合材により部分的に接合、すなわち、接合面積率が、表皮層11と裏面層13とが対面する面全体に対して50~95%の範囲となるように接合すれば、従来の防音材と比較して、防音材の厚さが薄くても、垂直入射吸音率が最大となる周波数(吸音ピーク周波数)を低周波数方向へシフトすることができる一方で、意外にも、該吸音ピーク周波数に対して低周波数側の帯域および高周波数側の帯域においても垂直入射吸音率が極端に低下することなく、比較的大きな値を維持することを見出した。すなわち、実使用において吸音可能な周波数帯域が拡大するという効果を奏することを見出した。
【0032】
上記効果を奏するメカニズムの詳細は定かではないが、以下のように推察される。まず、ベースとなる空隙が連通している多孔質材料からなる裏面層13の吸音特性は、周波数の増加とともに吸音率が高くなり、ある周波数でほぼ一定値に達するが、その吸音率は全体的に高いものではない。一方、1~10μmの平均繊維径および5~200cm/cm・secの通気量を有する構造の繊維材からなる表皮層11は、比較的緻密な構造であるため、共鳴型吸音機構と多孔質型吸音機構とを複合した吸音特性を有し、繊維と振動空気(音波)とが接触する面積や流れ抵抗も比較的大きくなる傾向があり、中~高周波数帯域の吸音率を増大させる効果を有する。したがって、音波が入射する側から表皮層、裏面層の順に接合層で接合せずに単に重ね合わせると、裏面層13のみの吸音特性に対して、中~高周波数帯域の吸音率が増大する。しかしながら、2500Hz以下の周波数帯域の吸音率は依然として低い。そこで、2500Hz以下の周波数帯域の吸音率を増大させるために、表皮層11と裏面層13とを粘着剤等の接合層12により全面接合し、接合界面における膜振動型吸音機構を利用し、吸音ピーク周波数を低周波数方向へシフトさせると、確かに吸音ピーク周波数は低周波数方向へシフトし、吸音ピーク周波数近傍の吸音率も増大するが、今度は逆に高周波数帯域の吸音率が低下してしまう。本発明では、接合層12により、表皮層11と裏面層13とを全面接合するのではなく、接合層12に比較的大きな開口率となるように開口部14を設けることにより、表皮層11で吸音されずに透過した音波を、空隙が連通している多孔質材料からなる裏面層13に侵入させることにより、裏面層13の骨格に該侵入した音波を伝達して振動させ、音エネルギーを効率よく熱エネルギーに変換することができるため、上記の低下した高周波数帯域の吸音率を高くすることができる。また、特に、接合層12を、粘弾性を有する粘着剤とした場合には、表皮層11と裏面層13とは過度に拘束されないため、表皮層11と裏面層13の音の振動による変形や変位はある程度可能であり、該境界層で音を反射させる硬質部分を生じさせず、音波をある程度通過させることができ、表皮層11、裏面層13および防音材10全体としての吸音機構を問題なく機能させることができる。さらに、このような開口部14を設けることにより接合層12と裏面層13と開口部14を有する積層構造部分は、通気性の開口部14のトータルの開口率(開口率=100%-接合面積率)が5~50%である穴あき粘弾性皮膜(接合層12)の背面に、空気層の代わりに直接結合された空隙が連通している多孔質材料(裏面層13)を備えたヘルムホルツの共鳴器型吸音機構を有する吸音層の一種と捉えることができるので、吸音ピーク周波数を低周波数側へシフトさせる機能をある程度維持することができる。なお、接合層12の接合面積率を大きくすることは、接合層12の面密度が大きくなること、および接合層の開口率が小さくなることを意味しており、面密度が大きくなればピーク吸音周波数は、膜振動型機構および共鳴機型吸音機構に基づき低周波数方向へシフトすると考える。
【0033】
以上の結果、本発明の防音材10は、それぞれの吸音メカニズムが相乗的に発現し、防音材10の総厚さが薄くても実使用において有効な高いレベルの吸音率を有し、さらに吸音可能な周波数帯域が拡大するという効果を奏したものと推察する。
【0034】
本発明の防音材10において、上記接合面積率は、表皮層11と裏面層13とが対面する面全体に対して、50~95%の範囲であり、好ましくは60~95%の範囲であり、より好ましくは65~95%の範囲である。上記結合面積率が50%未満であると、防音材の2000Hz以下の周波数帯域の吸音率が低下するおそれがある。一方、上記結合面積率が95%を超えると、防音材10の高周波数帯域の吸音率、例えば、3150Hz以上の吸音率が低下するおそれがある。本発明の防音材10は、上記接合層12の接合面積率が50~95%の範囲においては、接合面積を増大させることにより、防音材10の総厚さが一定であっても、その吸音ピークの周波数を低周波数方向へシフトさせることが可能となる場合がある。
【0035】
上記接合層12の形状は、上記接合面積率が、表皮層11と裏面層13とが対面する面全体に対して、50~95%の範囲となるように、すなわち、上記通気性の開口部14のトータルの開口率が5~50%の範囲となるように、接触面の一部に通気性の開口部14を形成するものであれば特に限定されない。例えば、線状、ドット状、パンチングシート状(シートに穴を開けた形状)等の形状が挙げられる。上記通気性の開口部14は接触面全体に均一に複数形成されることが好ましい。
【0036】
図2は、本発明の接合層の構造の一例を模式的に示す水平断面図である。作業性、加工性の観点から、好ましい一形態において、接合層12は、例えば、複数の棒状層である。棒状層とは所定の幅を有する直線状の層をいう。棒状である接合層を、表皮層11と裏面層13とが対面する面全体に均一に形成した場合、複数の棒状層は縞模様を形成する。縞模様とは、直線を一定間隔で平行に並べた線条文をいう。その結果、隣り合った2つの棒状層の間に上記通気性の開口部14が形成される。
【0037】
上記棒状層の幅は、上記接合面積率及び所望とする吸音特性の他、使用する防音材のサイズ、棒状層の数等を考慮して適宜決定されるが、好ましくは1mm以上である。上記棒状層の幅が1mm未満であると、形状および寸法を正確に維持、加工することが困難となるおそれがある。一方、上記棒状層の幅の上限は、本発明の効果を妨げない限りにおいては、特に限定されるものではないが、後述する垂直入射吸音率の測定に供する試料内(直径28.8mm)において、少なくとも複数の開口部14を有するように設定するのが好ましく、例えば14mm以下とするのが好ましい。また、上記複数の棒状層の各々の幅は同じであっても、異なっていても良い。
【0038】
上記の隣り合った棒状層同士の間隔は、上記接合面積率及び吸音特性の他、使用する防音材のサイズ、棒状層の数等を考慮して適宜決定されるが、好ましくは1mm以上である。隣り合った棒状層同士の間隔が1mm未満であると、形状および寸法を正確に維持、加工することが困難となるおそれや、隣り合う棒状同志が接触し、開口部が形成されなくなるおそれがある。一方、上記隣り合った棒状層同士の間隔の上限は、本発明の効果を妨げない限りにおいては、特に限定されるものではないが、後述する垂直入射吸音率の測定に供する試料内(直径28.8mm)において、少なくとも複数の開口部14を有するように設定するのが好ましく、例えば6mm以下とするのが好ましい。また、上記複数の棒状層同士の間隔は、同じであっても、異なっていても良い。
【0039】
上記接合層12の厚さは、本発明の効果を妨げない限りにおいては、特に限定されるものではないが、0.025~3mmの範囲であることが好ましい。上記接合層12の厚さが0.025mm未満であると、防音材10の吸音率が全体的に低下するおそれや表皮層11と裏面層13との接合強度が低下するおそれがある。一方、上記接合層の厚さが3mmを超えると、接合面積が大きい場合、高周波数帯域の吸音率が低下するおそれがあり、また、防音材10の厚さや重量が大きくなり、薄型・軽量化にそぐわない。また、上記接合層12の密度は、本発明の効果を妨げない限りにおいては、特に限定されるものではないが、軽量化の観点から、1.0~1.5g/cmの範囲であることが好ましい。
【0040】
一般的に、グラスウール等の多孔質材のみからなる防音材は、周波数の増加とともに吸音率が大きくなり、ある周波数でほぼ一定値に達するが、その厚さを大きくすることにより、2000~4000Hzの周波数帯域(中~高周波数帯域)の吸音率を増大させると共に、付随的に2000Hz以下の周波数帯域(中~低周波数帯域)の吸音率もある程度のレベルまで持ち上げ、吸音材として有効な周波数帯域を拡げることができる。すなわち、防音材の厚さを制御することにより有効な吸音周波数帯域を制御している。しかしながら、このような制御方法においては、防音材を取り付けるスペースが制限される場合や防音材をより薄く、又はより軽くしたい場合には、所望の設計(例えば、薄型・軽量化と有効な吸音周波数帯域の拡大との両立)を十分に満足できないといった問題が起こる。本発明の防音材10は、上述したように、防音材10の総厚さが同じ場合、上記接合層12の接合面積率を50~95%の範囲で制御することにより、吸音材として有効な吸音周波数帯域を拡げることができるため、上記課題に対して、有効な解決手段を提供することができる。そして、後述する特定の表皮材11を併用することにより、防音材10の総厚さを従来品より薄くした場合においても、吸音材として有効な吸音周波数帯域を拡げることができる。
【0041】
<表皮層>
上記表皮層11の繊維材は、1~10μmの範囲の平均繊維径および5~200cm/cm・secの範囲の通気量を有する。繊維材とは、繊維によってその形状が支持されており、繊維と繊維の間に空間を有し、気体がその空間を通過することができる材料をいう。繊維材は、好ましくはシート状である。不織布、織布及び編み物はここでいう繊維材に含まれる。反対に、樹脂発泡体又は樹脂フィルム材は、仮に通気性を有する材料であってもここでいう繊維材に含まれない。なお、ここでいう繊維の平均繊維径とは、顕微鏡で500倍の拡大写真を取り、その中からスケールで繊維の直径方向の長さを100本分測定し、その平均値を求め、小数点以下1桁を四捨五入したものを意味する。
【0042】
上記表皮層11を構成する繊維の平均繊維径および繊維材の通気量をそれぞれ上記範囲とすることにより、上記表皮層11の繊維材は比較的緻密な構造を有しやすくなり、共鳴型吸音機構と多孔質型吸音機構とを複合したような吸音効果、すなわち、中~高周波数帯域の吸音率を増大させる効果を有する。併せて、付随的に2000Hz以下の周波数帯域(中~低周波数帯域)の吸音率もある程度のレベルまで持ち上げることができる。したがって、上述したように、該表皮層11を、接合層12を介して裏面層13の上に接合した場合、接合層12と裏面層13との積層部分における接合面積率の増大に伴い高周波数側の帯域の吸音率は低下する傾向にあるが、表皮層11の特性によっても、この現象をカバーすることができ、その結果、本発明の防音材10は、厚さが薄くても実使用において吸音可能な周波数帯域が拡大するという効果を奏することができる。
【0043】
本実施の形態において、上記表皮層11の繊維材としては、特に限定されるものではないが、合成繊維からなる不織布を用いることが好ましい。上記不織布を構成する繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ナイロン6、ナイロン66、共重合ポリアミド等のポリアミド系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル、脂肪族ポリエステル等のポリエステル系繊維、アクリル系繊維、アラミド繊維、鞘がポリエチレン、ポリプロピレンまたは共重合ポリエステルで芯がポリプロピレンまたはポリエステルなどで構成された芯鞘構造等の複合繊維、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等の生分解性繊維等の熱可塑性合成繊維を用いることができる。これらの繊維は単独でまたは2種以上を混合して用いることができ、また、扁平糸などの異形断面繊維、捲縮繊維、割繊繊維などを混合または積層して用いることもできる。これらの中でも、特に、汎用性、耐熱性、難燃性等の観点から、ポリエステル系繊維が好ましい。
【0044】
上記表皮層11の繊維材を構成する繊維の平均繊維径は、1~10μmの範囲であり、好ましくは2~9μmの範囲であり、より好ましくは2~6μmの範囲である。上記表皮層11を構成する繊維の繊維径は、小さな空隙を有する構造とし、中~高周波数帯域の吸音率を増大させ、併せて2000Hz以下の周波数帯域(中低音帯域)の吸音率もできるだけ増大させるために、小さくすることが好ましい。上記繊維材を構成する繊維の繊維径は同一であっても良いし、異なっていても良い。繊維径が異なる場合は、平均繊維径が1~10μmの範囲となるように、例えば平均繊維径が10μm以上の太い繊維と平均繊維径が10μm未満の細い繊維を混繊したものを繊維材として供しても構わない。上記繊維材を構成する繊維の平均繊維径が1μm未満であると、強度、剛性、取扱性等が低下するおそれがあり、さらに価格面でも不利となるおそれがある。一方、上記平均繊維径が10μmを超えると中~高周波数帯域の吸音率が低下するともに、2000Hz以下の周波数帯域(中~低周波数帯域)の吸音率も低下するおそれがある。
【0045】
上記表皮層11の繊維材の通気量は、5~200cm/cm・secの範囲であり、好ましくは10~100cm/cm・secの範囲であり、より好ましくは20~80cm/cm・secの範囲である。上記表皮層11の通気量が5cm/cm・sec未満であると、中~高周波数帯域での吸音率が低下するおそれがある。一方、上記表皮層11の通気量が200cm/cm・secを超えると、2000Hz以下の周波数帯域(中低音帯域)での吸音率が低下するおそれがある。
【0046】
上記表皮層11の厚さは、0.01~5mmの範囲が好ましく、0.05~4mmの範囲がより好ましい。また、上記表皮層11の目付は、5~300g/mの範囲が好ましく、15~100g/mの範囲がより好ましい。またさらに、上記表皮層11の平均みかけ密度は、0.01~1.0g/cmの範囲が好ましく、0.02~1.0g/mの範囲がより好ましい。
【0047】
上記表皮層11の厚さ、平均みかけ密度および目付を、このような構成とすることにより、繊維材を透過する音波の音エネルギーを、空隙入口近傍部での空気摩擦と繊維骨格の内壁との粘性摩擦等により、より効果的に消耗することができる。上記表皮層11の厚さが0.01未満、平均みかけ密度が0.01g/cm未満、また目付が5g/m未満であると、強度、剛性、繊維密度等が低下し、取扱性および吸音効果が低下するおそれがある。一方、上記表皮層11の厚さが5mmを超え、平均みかけ密度が1.0g/mを超え、また、目付が300g/mを超えると、強度、繊維密度は大きくなるが、剛性が大きすぎて裁断性、取扱性が低下するおそれがある。また、薄型・軽量化にそぐわない。
【0048】
上記表皮層11の繊維材の製造方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の湿式法、乾式法又は紡糸直結(スパンボンド、メルトブロー等)による不織布の製造方法等が挙げられる。これらの中でも、繊維材の強度、取扱性、細孔の均一性の観点から、例えば、経糸と緯糸とがほぼ直交するように配列された経緯直交不織布又は経糸の一方向のみに配列された不織布の製造方法、又は、太い繊維と細い繊維がバインダーにより繊維間結合された不織布の製造方法が好ましいが、これらは一例にすぎず、これらに限定されるものではない。
【0049】
上記経緯直交不織布は、先ず、ポリエステル等上述した原料樹脂から直接紡糸した繊維を、延伸した後、縦、横それぞれの方向に繊維が配列した2種類のウェブに加工・準備し、次いでこの2種のウェブを配列した繊維が直交するように積層し、熱エンボスによるポイント熱融着で接合することで製造される。また、縦・横ウェブを積層する方法として、熱エンボス以外にも、エマルションで含侵接着する方法、ウォータージェットで短繊維を絡めて複合化し一体化する方法が挙げられる。また、同様に縦方向のみに繊維配列した不織布も製造可能であり、この不織布を繊維材として供しても構わない。このような方法により製造された不織布は、従来のスパンボンド法により製造された不織布とは異なり、縦横それぞれの方向又は縦方向に、あらかじめ延伸された平均繊維径が数μmの極細繊維が配列されているので、荷重を掛けた時の変形が小さく、形態を維持できるので、低目付であっても張力を必要とする二次加工(ロール・ツー・ロール加工)等が容易にできる。これらの不織布の引張強度(ASTM D882に準拠)は、MD方向において、20~300N/50mmの範囲であることが好ましい。
【0050】
上記太い繊維と細い繊維がバインダーにより繊維間結合された不織布は、先ず、ポリエステル等上述した原料樹脂から溶融紡糸又は湿式紡糸した繊維径の異なる繊維を、例えば繊維長10mm以下のフロック状にカットし、バインダーとなるポリビニルアルコール系等の繊維とともに混繊、均一分散した懸濁液を作製した後、通常の抄紙法により製造される。繊維径の異なる繊維は、同じ材質であっても良いし、異なる材質であっても良い。シート化に際しては、湿式法である上記抄紙法以外に、短繊維をカード機と空気流によるウエッバー(エアーレイド法)等によりシート化する乾式法を用いても構わない。繊維の配列はクロス、ランダムのいずれであっても良い。
【0051】
<裏面層>
上記裏面層13は、空隙が連通している多孔質材からなる。空隙が連通している多孔質材としては、吸音材として使用されるものであれば限定されるものではないが、フェルト、合成繊維からなる不織布(ニードルパンチによる合成繊維の混合品又は合成繊維100 %のフェルトを含む)等の繊維材や連続気泡を有するフォーム材等が挙げられる。
【0052】
上記繊維材としては、例えば、綿、羊毛、木毛、クズ繊維等を熱硬化性樹脂でフェルト状に加工したもの(一般名:レジンフェルト);ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維フェルト、ナイロン系繊維フェルト、ポリエチレン系繊維フェルト、ポリプロピレン系繊維フェルト、アクリル系繊維フェルト、鞘がポリエチレン、ポリプロピレンまたは共重合ポリエステルで芯がポリプロピレンまたはポリエステルなどで構成された芯鞘構造を有する複合繊維フェルト、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等の生分解性繊維フェルト等の合成繊維系フェルト;シリカ-アルミナセラミックスファイバーフェルト、シリカ繊維フェルト、グラスウール、ロックウール、岩綿長繊維等の無機繊維系フェルトが挙げられる。また、上記連続気泡を有するフォーム材としては、例えば、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、フェノールフォーム、メラミンフォーム;ニトリルブタジエンラバー、クロロプレンラバー、スチレンラバー、シリコーンゴム、ウレタンゴム、EPDM等のゴムを連通気泡状に発泡させたもの、又はこれらを発泡後にクラッシング加工等を施しフォ-ムセルに孔を明けて連通気泡化したもの等が挙げられる。これらの中でも、汎用性の観点から、合成繊維系フェルトが好ましく、さらに、耐熱性、難燃性等の観点から、ポリエステル系繊維フェルトがより好ましい。
【0053】
上記裏面層13として繊維材を用いる場合、上記繊維材を構成する繊維の平均繊維径は、10~30μmの範囲にあることが好ましい。また、上記繊維材の厚さは、5~15mmの範囲が好ましい。裏面層13に用いる繊維材を構成する繊維の平均繊維径は、表皮層11に用いる繊維材を構成する繊維の平均繊維径と同じ方法で求めることが出来る。
さらに、上記繊維材の目付は、50~1500g/mの範囲が好ましく、100~300g/mの範囲がより好ましく、200~280g/mの範囲が特に好ましい。またさらに、上記繊維材の平均見かけ密度は、0.01~0.1g/cmの範囲が好ましい。
【0054】
上記裏面層13として連続気泡を有するフォーム材を用いる場合、上記フォーム材の厚さは、5~15mmの範囲が好ましい。また、上記フォーム材の目付は、50~4500g/mの範囲が好ましく、100~2000g/mの範囲がより好ましく、100~1000g/mの範囲が特に好ましい。また、上記フォーム材の平均見かけ密度は、0.01~0.3g/cmの範囲が好ましい。
【0055】
上記裏面層13を上述した繊維材または連続気泡を有するフォーム材で構成することにより、表皮層11の繊維材により吸収されずに透過した音波を、効率よく裏面層13の繊維材又は連続気泡を有するフォーム材に伝達させ、音波のエネルギーの一部を、骨格部分の周壁との摩擦や粘性抵抗、さらに骨格の振動などによって、熱エネルギーに変換させることができる。上記裏面層13において、繊維材の繊維の平均繊維径、厚さ、目付および平均見かけ密度が上記範囲未満であると、吸音率が全体的に低下するおそれがある。一方、繊維の平均繊維径、厚さ、目付および平均見かけ密度が上記範囲を超えると、薄膜・軽量化にそぐわない。同様に、連続気泡を有するフォーム材の厚さ、目付および平均見かけ密度が上記範囲未満であると、吸音率が全体的に低下するおそれがある。一方、連続気泡を有するフォーム材の厚さ、目付および平均見かけ密度が上記範囲を超えると、薄膜・軽量化にそぐわない。
【0056】
上記裏面層13の通気量は、特に限定されるものではないが、表皮層11の通気量と同等以上であることが好ましく、具体的には、5~1000cm/cm・secの範囲であることが好ましく、100~300cm/cm・secの範囲であることがより好ましい。上記裏面層13の通気量が5cm/cm・sec未満であると、防音材10の吸音率が全体的に低下するおそれがある。一方、上記裏面層13の通気量が1000cm/cm・secを超えると、取り扱性や機械的強度が低下するおそれがある。上記裏面層13の通気量を、このような構成とすることにより、表皮層11の繊維材により吸収されずに透過した音波を、効率よく裏面層13の繊維材又は連続気泡を有するフォーム材に伝達させ、音波のエネルギーの一部を、骨格部分の周壁との摩擦や粘性抵抗、さらに骨格の振動などによって、熱エネルギーに変換させることができる。
【0057】
上記裏面層13に用いる合成繊維系フェルトの製造方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の製造方法が挙げられる。具体的は、乾式法(カーディング法又はエアーレイド法)により、上述した合成繊維を解繊混合し、フェルト振分機で層上積層されたフェルト状マットに成型し、フェルトの保形性、層状剥離性を防止するため、ニードルパンチ法により層間縫合を施すことにより、合成繊維系フェルトを得ることができる。ニードルパンチ法以外に、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、水流交絡法等を用いて層間縫合、繊維間結合を行っても良い。
【0058】
上記裏面層13に用いる連続気泡を有するフォーム材の製造方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の製造方法が挙げられる。例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを、触媒、発泡剤、整泡剤等と混合し、泡化反応と樹脂化反応を同時に行うことによりウレタンフォーム材を得ることができる。また、あらかじめ独立気泡タイプのポリオレフィン系フォーム材を製造し、これに対して、異方向に回転する2本のロール間隙を通過させて圧縮する圧縮処理を行うことにより、気泡膜を破裂させて気泡を連通化させる方法により連続気泡ポリオレフィン系フォーム材を得ることもできる。
【0059】
<防音材>
本発明の防音材10は、繊維材からなる表皮層11と、空隙が連通している多孔質材からなる裏面層13とを接合層12により接合して得られる。表皮層11と裏面層13の結合方法としては、前述したように、該両層を、塗工された粘着剤又は両面粘着テープ(基材を有しない基材レス両面粘着テープも含む)を用いて、所定の接合面積率となるように貼り合わせる方法が好ましい。具体的には、表皮層11又は裏面層13のいずれか一方の面に、所定の幅にスリットされた両面粘着テープ(基材レス両面テープも含む)、パンチングされた両面テープ又は離型フィルムにストライプ状やドット状に粘着剤を塗工したシート等により接合層12を所定の接合面積率となるように貼り合わせ、又は転写した後、両層を圧着・接合すれば良い。表皮層11と裏面層13との圧着は、常温の環境下において、非加熱で行うことができる。しかしながら、必要に応じて加熱しながら圧着を行うこともできる。
【0060】
本発明の防音材10の厚さは、5~23mmの範囲が好ましく、吸音特性を確保しながら薄型・軽量化を図る観点から、5~15mmの範囲がより好ましい。上記防音材10の厚さが5mm未満であると、吸音率が全体的に低下するおそれがある。一方、上記防音材10の厚さが23mmを超えると、薄型・軽量化にそぐわない。
【0061】
本発明の防音材10は、JIS A1405-2
に準拠して測定した垂直入射吸音率が、1/3オクターブバンドの中心周波数2000、2500、3150および4000Hzの全てにおいて55%以上であることが好ましく、1/3オクターブバンドの中心周波数1600、2000、2500、3150および4000Hzの全てにおいて55%以上であることがより好ましく、1/3オクターブバンドの中心周波数1250、1600、2000、2500、3150、4000Hzの全てにおいて55%以上であることが特に好ましい。
【0062】
防音材の中程度の周波数領域(2000~4000Hz)における吸音率は、防音材の厚みを大きくし、表面材の平均みかけ密度を増加させることによって向上させることができるが、一方においてコスト高、嵩高になるなどの問題を生じる。本発明では、防音材の厚みおよび接触面積等を上記範囲とすることにより、吸音可能な周波数領域を広範囲に確保しつつ、巻取加工性、裁断加工性、重ね梱包や運搬時等の取扱性に優れた防音材を得ることができる。
【実施例
【0063】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、実施例および比較例の各特性値については、下記の方法により測定した。
【0064】
(1)吸音率
JIS A 1405-2に準拠した音響インピーダンス管(内径:29.0mm)を用いて、1/3オクターブバンド中心周波数1000~4000Hzの周波数範囲で垂直入射吸音率を測定した。具体的には、1000、1250、1600、2000、2500、3150,4000Hzの垂直入射吸音率を測定した。測定は、背後空気層を取らない剛壁密着で行った。防音材として実用上有効か否かについての判定を以下の基準に従い評価した。
【0065】
【0066】
(2)平均繊維径
顕微鏡で500倍の拡大写真を取り、100本の繊維を任意に選び出し、その平均値を求め、小数点以下1桁を四捨五入し、平均繊維径を求めた。
【0067】
(3)通気量
JIS L 1096に準拠したフラジール形通気性試験機により測定した。フラジール形通気性試験機は、大栄科学精器製作所社製のDAP-360(製品型番)を使用した。測定条件は、差圧125Pa、測定孔径70mmとし、3箇所以上を測定し、その平均値で求めた。
【0068】
(4)表皮層と裏面層の厚さ
JIS-L-1913-B法に準じて測定した。荷重に関しては、表皮層の場合は20kPa、裏面層の場合は0.02kPaの荷重とし、3箇所以上測定し、その平均値で求めた。
【0069】
(5)表皮層と裏面層の目付
JIS-L-1913に準じて測定した。
【0070】
(6)接合層の厚さ
ダイヤルゲージにて、測定子の径10mm、終圧0.8Nで3箇所以上測定し、その平均値で求めた。
【0071】
(7)接合材の貯蔵弾性率(G’)
接合層に用いた材料について、厚さ500μmの試料を準備し、株式会社日立ハイテクサイエンス社製の粘弾性測定装置DMA6100(製品名)を用いて、動的粘弾性を測定し、貯蔵弾性率を求めた。測定条件は、周波数1Hzのせん断ひずみを与えながら、昇温速度5℃/分とし、-80℃から80℃まで温度を変化させ、貯蔵弾性率(G’)を測定し、25℃における値を求めた。
【0072】
<実施例1>
(表皮層)
表皮層として、21cm/cm・secの通気量、20g/mの目付、0.33g/cmの平均見かけ密度及び0.06mmの厚さを有するポリエステル繊維材を準備した。このポリエステル繊維材は、繊維の平均繊維径が3μmであり、繊維が縦方向に配列している。
【0073】
(裏面層)
裏面層として、165cm/cm・secの通気量、200g/mの目付、0.02g/cmの平均見かけ密度及び10mmの厚さを有するポリエステル繊維フェルトを準備した。このポリエステル繊維フェルトの繊維の平均繊維径は19μmである。
【0074】
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5938スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:0.5mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.5×10Pa)を幅5mmおよび幅6mmの棒状に裁断した。裏面層のフェルトを広げその表面に、棒状の粘着テープを、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン/スペース/ライン=6mm/5.9mm/5mm/5.9mm/6mmとなるように平行に配置・貼合した。
【0075】
次いで、裏面層に配置・貼合された粘着テープの離型紙を剥がした後、その上に、表皮層の繊維材を広げて載せ、常温環境下で圧着して、両層を接合させることにより防音材を得た。この防音材を、図1に示す通り、直径28.8mmの円状に切断して、吸音率の測定に供した。
【0076】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、直径28.8mmの吸音率の測定試料において、表皮層と裏面層との接合部分を示す水平断面図は図2に示した通りの形状であり、粘着テープにより形成された接合層の接合面積率は52%であった。
【0077】
<実施例2>
接合方法を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5938スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:0.5mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.5×10Pa)を幅4.8mmの棒状に裁断した。裏面層のフェルトを広げその表面に、棒状の粘着テープを、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン/スペース/ライン/スペース/ライン=4.8mm/2.4mm/4.8mm/4.8mm/4.8mm/2.4mm/4.8mmとなるように平行に配置・貼合した。
【0078】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、直径28.8mmの吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の接合面積率は62%であった。
【0079】
<実施例3>
接合方法を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5938スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:0.5mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.5×10Pa)を幅4.8mmの棒状に裁断した。裏面層のフェルトを広げその表面に、棒状の粘着テープを、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン/スペース/ライン/スペース/ライン/スペース/ライン=4.8mm/1.2mm/4.8mm/1.2mm/4.8mm/1.2mm/4.8mm/1.2mm/4.8mmとなるように平行に配置・貼合した。
【0080】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、直径28.8mmの吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の接合面積率は81%であった。
【0081】
<実施例4>
接合方法を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5938スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:0.5mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.5×10Pa)を幅6.3mmおよび幅13.6mmの棒状に裁断した。裏面層のフェルトを広げその表面に、棒状の粘着テープを、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン/スペース/ライン=6.3mm/1.3mm/13.6mm/1.3mm/6.3mmとなるように平行に配置・貼合した。
【0082】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、直径28.8mmの吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の接合面積率は90%であった。
【0083】
<実施例5>
接合方法を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5938スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:0.5mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.5×10Pa)を幅13.85mmの棒状に裁断した。裏面層のフェルトを広げその表面に、棒状の粘着テープを、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン=13.85mm/1.1mm/13.85mmとなるように平行に配置・貼合した。
【0084】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、直径28.8mmの吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の接合面積率は95%であった。
【0085】
<実施例6>
裏面層を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
(裏面層)
裏面層として、32cm/cm・secの通気量、250g/mの目付、0.03g/cmの平均見かけ密度および厚さ10mmの連続気泡を有するポリウレタン系フォーム材を準備した。
【0086】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、直径28.8mmの吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の接合面積率は52%であった。
【0087】
<実施例7>
表皮層を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
(表皮層)
表皮層として、10μmの平均繊維径、80cm/cm・secの通気量、94g/mの目付、0.02g/cmの平均見かけ密度及び4mmの厚さを有するアクリル/ポリエステル混合繊維材を準備した。このアクリル/ポリエステル混合繊維材は、アクリル繊維とポリエステル繊維の混合比率がアクリル繊維/ポリエステル繊維=63/37(質量比)であり、繊維の配列はランダムである。このアクリル/ポリエステル混合繊維材の繊維の平均繊維径は10μmであった。
【0088】
得られた防音材の総厚さは、14.5mmであった。また、直径28.8mmの吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の接合面積率は52%であった。
【0089】
<実施例8>
表皮層を下記とした以外は、実施例2と同様にして防音材を得た。
(表皮層)
表皮層として、80cm/cm・secの通気量、94g/mの目付、0.02g/cmの平均見かけ密度及び4mmの厚さを有するアクリル/ポリエステル混合繊維材を準備した。このアクリル/ポリエステル混合繊維材は、アクリル繊維とポリエステル繊維の混合比率がアクリル繊維/ポリエステル繊維=63/37(質量比)であり、繊維の配列はランダムである。このアクリル/ポリエステル混合繊維材の繊維の平均繊維径は10μmであった。
【0090】
得られた防音材の総厚さは、14.5mmであった。また、直径28.8mmの吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の接合面積率は62%であった。
【0091】
<実施例9>
表皮層を下記とした以外は、実施例3と同様にして防音材を得た。
(表皮層)
表皮層として、80cm/cm・secの通気量、94g/mの目付、0.02g/cmの平均見かけ密度及び4mmの厚さを有するアクリル/ポリエステル混合繊維材を準備した。このアクリル/ポリエステル混合繊維材は、アクリル繊維とポリエステル繊維の混合比率がアクリル繊維/ポリエステル繊維=63/37(質量比)であり、繊維の配列はランダムである。このアクリル/ポリエステル混合繊維材の繊維の平均繊維径は10μmであった。
【0092】
得られた防音材の総厚さは、14.5mmであった。また、直径28.8mmの吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の接合面積率は81%であった。
【0093】
<実施例10>
裏面層を下記とした以外は、実施例3と同様にして防音材を得た。
(裏面層)
裏面層として、265cm/cm・secの通気量、100g/mの目付、0.02g/cmの平均見かけ密度及び5mmの厚さを有するポリエステル繊維フェルトを準備した。このポリエステル繊維フェルトの繊維の平均繊維径は19μmであった。
【0094】
得られた防音材の総厚さは、5.6mmであった。また、直径28.8mmの吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の接合面積率は81%であった。
【0095】
<実施例11>
裏面層を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
(裏面層)
裏面層として、113cm/cm・secの通気量、280g/mの目付、0.02g/cmの平均見かけ密度及び14mmの厚さを有するポリエステル繊維フェルトを準備した。このポリエステル繊維フェルトの繊維の平均繊維径は19μmであった。
【0096】
得られた防音材の総厚さは、14.6mmであった。また、直径28.8mmの吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の接合面積率は52%であった。
【0097】
<実施例12>
裏面層を下記とした以外は、実施例2と同様にして防音材を得た。
(裏面層)
裏面層として、113cm/cm・secの通気量、280g/mの目付、0.02g/cmの平均見かけ密度及び14mmの厚さを有するポリエステル繊維フェルトを準備した。このポリエステル繊維フェルトの繊維の平均繊維径は19μmであった。
【0098】
得られた防音材の総厚さは、14.6mmであった。また、直径28.8mmの吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の接合面積率は62%であった。
【0099】
<実施例13>
表皮層を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
(表皮層)
表皮層として、9cm/cm・secの通気量、60g/mの目付、0.12g/cmの平均見かけ密度及び0.5mmの厚さを有するアクリル/ポリエステル混合繊維材を準備した。このアクリル/ポリエステル混合繊維材は、アクリル繊維とポリエステル繊維の混合比率がアクリル繊維/ポリエステル繊維=80/20(質量比)であり、繊維の配列はランダムである。このアクリル/ポリエステル混合繊維材の繊維の平均繊維径は6μmであった。
【0100】
得られた防音材の総厚さは、11.0mmであった。また、直径28.8mmの吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の接合面積率は52%であった。
【0101】
<実施例14>
表皮層を下記とした以外は、実施例3と同様にして防音材を得た。
(表皮層)
表皮層として、190cm/cm・secの通気量、85g/mの目付、0.14g/cmの平均見かけ密度及び0.6mmの厚さを有するポリエステル繊維材を準備した。このポリエステル繊維材は、繊維の配列はランダムである。このポリエステル繊維材の繊維の平均繊維径は10μmであった。
【0102】
得られた防音材の総厚さは、11.1mmであった。また、直径28.8mmの吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の接合面積率は81%であった。
【0103】
<実施例15>
接合方法を下記とした以外は、実施例2と同様にして防音材を得た。
(接合方法)
アクリル系粘着剤を使用した新タック化成社製基材レス両面粘着テープ「KF4#100」(商品名、基材:なし、粘着テープ厚さ:0.1mm、両面セパ付、粘着剤の貯蔵弾性率:1.1×10Pa)を幅4.8mmの棒状に裁断した。裏面層のフェルトを広げその表面に、軽剥離側のPETセパを剥がした棒状の粘着テープを、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン/スペース/ライン/スペース/ライン=4.8mm/2.4mm/4.8mm/4.8mm/4.8mm/2.4mm/4.8mmとなるように平行に配置・貼合した。
【0104】
次いで、裏面層に配置・貼合された粘着テープの重剥離側のPETセパを剥がした後、その上に、表皮層の繊維材を広げて載せ、常温環境下で圧着して、両層を接合させることにより防音材を得た。
【0105】
得られた防音材の総厚さは、10.2mmであった。また、直径28.8mmの吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の接合面積率は62%であった。
【0106】
<実施例16>
接合方法を下記とした以外は、実施例2と同様にして防音材を得た。
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5933スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:3.0mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.6×10Pa)を幅4.8mmの棒状に裁断した。裏面層のフェルトを広げその表面に、棒状の粘着テープを、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン/スペース/ライン/スペース/ライン=4.8mm/2.4mm/4.8mm/4.8mm/4.8mm/2.4mm/4.8mmとなるように平行に配置・貼合した。
【0107】
得られた防音材の総厚さは、12.1mmであった。また、直径28.8mmの吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の接合面積率は62%であった。
【0108】
<実施例17>
裏面層と接合層を下記とした以外は、実施例8と同様にして防音材を得た。
(裏面層)
裏面層として、110cm/cm・secの通気量、300g/mの目付、0.02g/cmの平均見かけ密度及び15mmの厚さを有するポリエステル繊維フェルトを準備した。このポリエステル繊維フェルトの繊維の平均繊維径19μmであった。
【0109】
(接合層)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5933スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:3.0mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.6×10Pa)を準備した。
【0110】
得られた防音材の総厚さは、22.0mmであった。また、直径28.8mmの吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の接合面積率は62%であった。
【0111】
<比較例1>
表皮層および接合層を用いなかった以外は、実施例1と同様にして裏面層のみからなる防音材を得た。
【0112】
<比較例2>
表皮層を下記とした以外は、実施例3と同様にして防音材を得た。
(表皮層)
表皮層として、197cm/cm・secの通気量、85g/mの目付、0.14g/cmの平均見かけ密度及び0.6mmの厚さを有するポリエステル繊維材を準備した。このポリエステル繊維材の繊維の平均繊維径は17μmであった。
【0113】
得られた防音材の総厚さは、11.1mmであった。また、直径28.8mmの吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の接合面積率は81%であった。
【0114】
<比較例3>
表皮層を下記とした以外は、実施例3と同様にして防音材を得た。
(表皮層)
表皮層として、0.2cm/cm・secの通気量、66g/mの目付、0.03g/cmの平均見かけ密度及び2mmの厚さを有する独立気泡タイプのポリエチレンフォーム材を準備した。
【0115】
得られた防音材の総厚さは、12.5mmであった。また、直径28.8mmの吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の接合面積率は81%であった。
【0116】
<比較例4>
接合方法を下記とした以外は、実施例3と同様にして防音材を得た。
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5938スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:0.5mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.5×10Pa)を100mm×100mmの大きさに裁断した。裏面層のフェルトを広げその表面に、上記粘着テープを配置・貼合した。
【0117】
次いで、裏面層に配置・貼合された粘着テープの離型紙を剥がした後、その上に、表皮層の繊維材を広げて載せ、常温環境下で圧着して、両層を接合させることにより防音材を得た。この防音部材において、表皮層と裏面層が粘着テープにより全面接合されている部分を、直径28.8mmの円状に切断して、吸音率の測定に供した。
【0118】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、直径28.8mmの吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の接合面積率は100%であった。
【0119】
<比較例5>
接合方法を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5938スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:0.5mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.5×10Pa)を幅4.8mmの棒状に裁断した。裏面層のフェルトを広げその表面に、棒状の粘着テープを、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン/スペース/ライン=4.8mm/7.2mm/4.8mm/7.2mm/4.8mmとなるように平行に配置・貼合した。
【0120】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、直径28.8mmの吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の接合面積率は43%であった。
【0121】
<比較例6>
実施例1で用いた表皮層と裏面層とを、粘着テープで接合せずに、単に重ね合わせたものを防音材とした。防音材の総厚さは、10.1mmであった。また、直径28.8mmの吸音率の測定試料において、接合面積率は0%であった。
【0122】
実施例1~17、比較例1~6の各防音材について、その構成と共に垂直入射吸音率の測定結果を表1~4に示した。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】
【0126】
【表4】
【0127】
表1~3から明らかなように、本発明の実施例1~17の全ての防音材は、総厚さが5~23mmの範囲で薄いにもかかわらず、垂直入射吸音率が1/3オクターブバンドの中心周波数2000、2500、3150および4000Hzの全てにおいて55%以上と実用上、有効な高いレベルとなっており、特に、実施例3~5、実施例12、13および実施例17は、吸音材として有効な吸音周波数帯域も拡大していることが分かる。
【0128】
以下、実施例を詳細に比較する。実施例1~5において、接合面積率が81~95%である実施例3~5は、接合面積率が52~62%である実施例1および2と比較して、吸音材として有効な吸音周波数帯域(垂直入射吸音率が55%以上の周波数帯域)がより拡大していることが分かる。また、接合面積率が62%である実施例2は、接合面積率が52%である実施例1と比較して、吸音率がわずかではあるが全体的に高くなっている。
【0129】
また、裏面層の材質がポリウレタン系フォームである実施例6とポリエステル繊維フェルトである実施例1を比較すると、裏面層の材質が連続気泡を有するフォーム材であっても繊維材であっても、いずれも、吸音材として有効な吸音周波数帯域(垂直入射吸音率が55%以上の周波数帯域)を確保していることが分かる。
【0130】
また、実施例11と実施例12を比較した場合、接合面積率が62%の実施例12は、接合面積率が52%の実施例11よりも、吸音材として有効な吸音周波数帯域(垂直入射吸音率が55%以上の周波数帯域)がより拡大していることが分かる。
【0131】
また、表皮層の通気量が21cm/cm・sec、接合面積率が52%の実施例1および表皮層の通気量が80cm/cm・sec、接合面積率が52%の実施例7は、表皮層の通気量が9cm/cm・sec、接合面積率が52%の実施例13と比較して、吸音率が相対的に高いことが分かる。同様に、表皮層の通気量が21cm/cm・sec、接合面積率が81%の実施例3および表皮層の通気量が80cm/cm・sec、接合面積率が81%の実施例9は、表皮層の通気量が190cm/cm・sec、接合面積率が81%の実施例14と比較して、吸音率が相対的に高いことが分かる。
【0132】
またさらに、裏面層の目付が200g/m、接合面積率が81%の実施例3は、裏面層の目付が100g/m、接合面積率が81%の実施例10と比較して、相対的に吸音率が高く、吸音材として有効な吸音周波数帯域(垂直入射吸音率が55%以上の周波数帯域)もより拡大していることが分かる。同様に、裏面層の目付が280g/m、接合面積率が52%の実施例11およびは、裏面層の目付が280g/m、接合面積率が62%の実施例12は、裏面層の目付が200g/m、接合面積率が52%の実施例1および裏面層の目付が200g/m、接合面積率が62%の実施例2と比較して、相対的に吸音率が高く、特に実施例12は、吸音材として有効な吸音周波数帯域(垂直入射吸音率が55%以上の周波数帯域)もより拡大していることが分かる。
【0133】
またさらに、接合面積率が62%で、接合材の種類や厚さを変えた実施例2、実施例15および実施例16は、いずれも、良好な吸音特性を示しており、特に接合材の厚さが3mmである実施例16は、吸音材として有効な吸音周波数帯域(垂直入射吸音率が55%以上の周波数帯域)もより拡大していることが分かる。
【0134】
またさらに、接合材の厚さが3mm、裏面層の厚さが15mmの実施例17は、接合材の厚さが0.5mm、裏面層の厚さが10mmの実施例8と比較して、接合材および裏面層の厚さがそれぞれ厚くなった効果により、吸音材として有効な吸音周波数帯域(垂直入射吸音率が55%以上の周波数帯域)も相対的に良好であることが分かる。したがって、適用する防音材の総厚さが15mmを超えても良い場合には、例えば、実施例17の構成を選択し、適用する防音材の総厚さが15mm以下の要望の場合は、例えば、実施例8の構成、あるいは実施例1~7、実施例9~16の構成を選択すれば良い。
【0135】
これに対し、表3~4から明らかなように、本願発明の請求範囲を満足していない比較例1~6の全ての防音材は、実施例1~17と比較して、相対的に吸音率が低く、また、吸音材として有効な吸音周波数帯域(垂直入射吸音率が55%以上の周波数帯域)が狭い、又は低~高周波数帯域のバランスが劣ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明は、薄さを維持しながら、実用上、有効なレベルの高い吸音率を有し、さらに吸音可能な周波数領域が拡大された防音材を提供できる。
【符号の説明】
【0137】
10、20 防音材
11 表皮層
12 接合層
13 裏面層
14 通気性の開口部
図1
図2