(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】デンタルインプラントアナログ
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
(21)【出願番号】P 2020534944
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2018086641
(87)【国際公開番号】W WO2019122354
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-20
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514240460
【氏名又は名称】イーロス メドゥテック ピノール アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】ヘンレク アナスン
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-533229(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0216980(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0071418(KR,A)
【文献】特表平11-501856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い円柱状の本体を備えるデンタルインプラントアナログ(5)であって、反対側に面する第1面と第2面を有し、前記第1面は、使用時に前記デンタルインプラントアナログと患者の歯の物理的模型の1つまたは複数の面との積極的な位置合わせのための基準面であり、前記デンタルインプラントアナログは、患者の歯群の前記物理的模型の貫通孔内に引っ張ることによって挿入されるように設けられており、患者の歯の前記物理的模型の前記1つまたは複数の面は、前記貫通孔を囲んでおり、前記デンタルインプラントアナログは、前記第1面から前記貫通孔に挿入されるように設けられており、前記デンタルインプラントアナログは、
遠位端部(3)と、
近位端部(1)であって、前記近位端部は、前記デンタルインプラントアナログの長手方向軸に沿った少なくとも1つの内部穴(4)を有し、前記少なくとも1つの内部穴は、めねじを備える近位端部と、
前記遠位端部と前記近位端部との間に位置する中央部または中間部(2)と、をさらに備え、
前記近位端部は、切削手段を有し、前記切削手段は、前記デンタルインプラントアナログが引っ張ることによって挿入されるときに、患者の歯群の前記物理的模型の前記貫通孔の内部面に存在する余分な材料を掻き落とすように設けられており、これにより、前記デンタルインプラントアナログが患者の歯群の前記物理的模型の前記貫通孔に確実にぴったりと嵌り、前記切削手段は、切削刃(11)であることを特徴とするデンタルインプラントアナログ。
【請求項2】
前記遠位端部は前記第2面を有し、前記近位端部は前記第1面を有することを特徴とする請求項1に記載のデンタルインプラントアナログ。
【請求項3】
前記デンタルインプラントアナログは、
回転防止手段(7)と、
案内手段(8,9,10)と、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のデンタルインプラントアナログ。
【請求項4】
前記回転防止手段は、前記めねじを備える前記少なくとも1つの内部穴を囲む突出部および/またはリセスを含み、前記の突出部および/またはリセスは、使用時に患者の歯群の前記物理的模型の前記貫通孔に設けられた相補的なリセスおよび/または突出部(12)と係合し、患者の歯群の前記物理的模型内における前記デンタルインプラントアナログの望ましくない回転を防止することを特徴とする請求項
3に記載のデンタルインプラントアナログ。
【請求項5】
前記回転防止手段は、前記案内手段を含むことを特徴とする請求項
3に記載のデンタルインプラントアナログ。
【請求項6】
前記近位端部は、前記回転防止手段と前記案内手段を含むことを特徴とする請求項
3に記載のデンタルインプラントアナログ。
【請求項7】
前記中間部は、前記案内手段を含むことを特徴とする請求項
3に記載のデンタルインプラントアナログ。
【請求項8】
前記案内手段は、環状のリップ部(9)を有し、前記リップ部は、患者の歯群の前記物理的模型の前記貫通孔に設けられた1つまたは複数の相補的な突出部(15)と係合するように設けられており、前記1つまたは複数の相補的な突出部とのスナップフィットを提供することを特徴とする請求項
3に記載のデンタルインプラントアナログ。
【請求項9】
前記環状のリップ部(9)は、前記長手方向軸に沿って前記めねじを備える前記少なくとも1つの内部穴を囲む円状のリップ部を含み、前記環状のリップ部(9)は、傾斜した係合用の上面を有する三角形の要素を含むことを特徴とする請求項8に記載のデンタルインプラントアナログ。
【請求項10】
前記環状のリップ部(9)は、前記長手方向軸に沿って前記めねじを備える前記少なくとも1つの内部穴を囲む円状のリップ部を含み、前記環状のリップ部(9)は、傾斜した係合用の上面を有する三角形の要素を含み、
前記傾斜した上面は、使用時にスナップフィット方式で患者の歯群の前記物理的模型の前記貫通孔に設けられた前記1つまたは複数の相補的な突出部と係合することを特徴とする請求項8に記載のデンタルインプラントアナログ。
【請求項11】
前記中間部は、切削手段を含むことを特徴とする請求項1に記載のデンタルインプラントアナログ。
【請求項12】
前記遠位端部は、切削手段を含むことを特徴とする請求項1に記載のデンタルインプラントアナログ。
【請求項13】
インプラントアナログのキット(16)であって、
請求項1に記載のデンタルインプラントアナログと、
第1端部(18,22)と第2端部(17,21)を有する要素と、を有し、前記第1端部は、前記少なくとも1つの内部穴の前記めねじと係合するように設けられたおねじを備えることを特徴とするインプラントアナログのキット。
【請求項14】
前記要素は、前記第2端部(17)に引張工具(19)と係合するように設けられた係合面を有する細長い要素であることを特徴とする請求項13に記載のインプラントアナログのキット。
【請求項15】
前記要素は、ねじ(20)であり、前記第2端部(21)は、締付工具の突起またはリセスと噛み合うように設けられた係合面を有することを特徴とする請求項13に記載のインプラントアナログのキット。
【請求項16】
患者の歯群の物理的模型と請求項1に記載のデンタルインプラントアナログの組合せであって、患者の歯群の前記物理的模型は、基部面と、基部面とは反対側の歯肉部と、前記基部面から前記基部面とは反対側の歯肉部まで延びる貫通孔と、を有し、前記貫通孔は、前記少なくとも1つの内部穴を囲む相補的な突出部および/またはリセスと係合する1つまたは複数のリセスおよび/または突出部を含み、患者の歯群の前記物理的模型の前記貫通孔に設けられた前記1つまたは複数の突出部は、1つまたは複数のウェッジ要素を含み、患者の歯群の前記物理的模型の前記貫通孔に設けられた前記1つまたは複数の突出部は、前記貫通孔の内部面に設けられた1つまたは複数の凹部であることを特徴とする組合せ。
【請求項17】
前記1つまたは複数の凹部は、前記貫通孔の前記内部面に設けられた溝であることを特徴とする請求項16に記載の組合せ。
【請求項18】
請求項
14に記載のインプラントアナログのキットを使用して、デンタルインプラントアナログを患者の歯群の物理的模型に配置する方法であって、前記方法は、
請求項1に記載のデンタルインプラントアナログを、患者の歯群の前記物理的模型の基部面から前記基部面とは反対側の歯肉面まで延びる貫通孔の前記歯肉面を通して挿入し、
前記要素の前記第1端部を、前記基部面から前記基部面とは反対側の歯肉面まで延びる前記貫通孔の前記基部面を通して挿入し、
前記要素の前記第1端部の前記おねじを、前記少なくとも1つの内部穴の前記めねじと係合させ、
前記要素または前記引張工具の端面と、前記デンタルインプラントアナログの前記第1面が接触して、前記端面と前記
第1面が、前記貫通孔を囲む患者の歯の前記物理的模型の前記1つまたは複数の面と一致するまで、前記デンタルインプラントアナログを所定位置に引っ張ることを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デンタルインプラントアナログ、デンタルインプラントアナログを含むインプラントアナログのキット、患者の歯群の物理的模型とデンタルインプラントアナログの組合せ、およびデンタルインプラントアナログを患者の歯群の物理的模型に配置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の歯群の物理的模型では、要求される技術的公差、つまり、物理的模型の異なる物理的寸法の設計値と実際値との許容差が非常に小さい。
【0003】
低コストな付加製造技術などの低コストな印刷機は、設計寸法から実質的に外れた物理的寸法を有する物理的模型を製造するおそれがあるため、このような水準の公差は必ずしも得られない。
【0004】
このため、インプラントアナログが対応する物理的模型にぴったりと嵌らないか、あるいは物理的模型内の貫通孔の寸法および形状に大幅な変形を伴ってぴったりと嵌るという不利益が生じる。また、物理的模型に高い圧力が加わることと、これに対応する変形により、インプラントの配置が不正確になり、これによってインプラントアナログの配置が不正確になり、歯の復元処置に直接影響が及ぼされる。
【0005】
従って、僅かに不正確な寸法を有する患者の歯の物理的模型であっても確実にぴったりと嵌るインプラントアナログが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、患者の歯の物理的模型の寸法が僅かに不正確であっても、正確に配置することができるインプラントアナログを提供することである。
本発明の目的は、従来技術の上述の不利益や難点を全体としてまたは部分的に解消することである。
本発明の目的は、さらに、従来技術の代替品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的およびいくつかの他の目的は、細長い円柱状の本体を備えるデンタルインプラントアナログであって、反対側に面する第1面と第2面を有し、第1面は、使用時にインプラントアナログと患者の歯の物理的模型の1つまたは複数の面との積極的な位置合わせのための基準面であるデンタルインプラントアナログを提供する本発明の第1態様によって達成される。
【0008】
インプラントアナログの位置合わせのために外部の基準面を使用することで、面のアクセスのしやすさおよび視認性がより良好となり、内部面で生じるおそれがある障害を避けることができる。
【0009】
積極的な位置合わせ(active alignment)は、引張り、押込み、ねじ込みなどの直接的な動作によって達成される位置合わせとして定義される。
【0010】
位置合わせは、第1面が患者の歯の物理的模型の1つまたは複数の面と重なるときに達成される。
【0011】
いくつかの実施形態では、インプラントアナログは、患者の歯群の物理的模型の貫通孔に挿入され、患者の歯の物理的模型の1つまたは複数の面が貫通孔を囲む。
【0012】
積極的な位置合わせは、患者の歯群の物理的模型の貫通孔を囲む1つまたは複数の面と行われてもよい。
【0013】
いくつかの他の実施形態では、インプラントアナログは、使用時に第1面から貫通孔に挿入される。
【0014】
第1面は、基準面で、使用時に貫通孔に最初に挿入される面であり、つまり、他の面または物が貫通孔に挿入される前に挿入される面である。実際に、基準面としての第1面は、貫通孔への挿入方向に沿って先頭にある。
【0015】
いくつかの実施形態では、デンタルインプラントアナログは、遠位端部と、近位端部と、遠位端部と近位端部との間に位置する中央部または中間部と、をさらに備える。いくつかの他の実施形態では、近位端部は、インプラントアナログの長手方向軸に沿った少なくとも1つの内部穴を有し、この少なくとも1つの内部穴はめねじを備える。
【0016】
いくつかの他の実施形態では、遠位端部が第1面を有し、近位端部が反対側の第2面を有してもよい。
【0017】
いくつかの他の実施形態では、遠位端部が第2面を有し、近位端部が第1面を有してもよい。
【0018】
第2面は、細長いデンタルインプラントアナログの反対側の端部に設けることができるので反対側である。
【0019】
いくつかの実施形態では、デンタルインプラントアナログは、回転防止手段および/または案内手段および/または切削手段をさらに備える。
【0020】
回転防止手段は、めねじを備える少なくとも1つの内部穴を囲む突出部および/またはリセスを含んでもよく、これらの突出部および/またはリセスは、使用時に患者の歯群の物理的模型の貫通孔に設けられた、すなわち貫通孔の内部面に設けられた相補的なまたは対応するリセスおよび/または突出部と係合する。回転防止手段が設けられていることにより、患者の歯群の物理的模型内におけるデンタルインプラントアナログの望ましくない回転が防止される。
【0021】
いくつかの実施形態では、回転防止手段は、互いに反対側に位置する2つのリセス、すなわちアナログの中心軸に対して反対側の位置に設けられた2つのリセスであり、使用時にインプラントアナログの望ましくない横移動を防止する。
【0022】
回転防止手段は近位端部に設けることができ、すなわち、近位端部は回転防止手段を含んでもよい。
【0023】
回転防止手段は、案内手段を含みうる。
【0024】
回転防止手段は、インプラントアナログをセンタリングして患者の歯群の物理的模型の貫通孔内に正確に案内する機能をさらに有することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、近位端部は案内手段をさらに含む。
【0026】
案内手段は、インプラントアナログの近位端部に設けられた物理的模型の相補的な突出部と噛み合う1つのリセスであってもよく、リセスと突出部が噛み合う挿入方向が1つしかないようにリセスによって正しい挿入方向が提供される。
リセスは案内機能を有し、物理的模型の1つの突出部のみがインプラントアナログのリセスと相補的であるため、特定の1つの方向にしか挿入できず、挿入の方向性を提供する。
【0027】
案内手段は、インプラントアナログの他の部分に設けることもできる。
【0028】
いくつかの実施形態では、案内手段は中間部に設けられており、すなわち、中間部が案内手段を含んでいる。
【0029】
いくつかの実施形態では、案内手段は、環状のリップ部を有し、このリップ部は、使用時に患者の歯群の物理的模型の貫通孔、すなわちその内部面に設けられた1つまたは複数の相補的な突出部と係合し、1つまたは複数の相補的な突出部とのスナップフィットを提供する。
【0030】
環状のリップ部と1つまたは複数の相補的な突出部との係合により、インプラントが正確な位置に固定され、インプラントの望ましくない取外しが防止される。
【0031】
環状のリップ部は、長手方向軸に沿っためねじを備える少なくとも1つの内部穴を囲む円状のリップ部を含んでもよい。
【0032】
環状のリップ部は、傾斜した係合用の上面を有するウェッジやウェッジリップなどの三角形の要素を含んでもよい。
【0033】
傾斜した上面は、使用時には、スナップフィット方式で患者の歯群の物理的模型の貫通孔に設けられた1つまたは複数の相補的な突出部と係合可能である。
【0034】
切削手段は、インプラントアナログの異なる部分に設けてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、近位端部は切削手段をさらに含む。
【0036】
いくつかの他の実施形態では、中間部が切削手段を含む。
【0037】
いくつかの他の実施形態では、遠位端部が切削手段を含む。
【0038】
切削手段があることで、物理的模型の対応する突出部の表面に存在する余分な材料が切削、あるいは掻くことなどによって除去され、患者の歯群の物理的模型の貫通孔内において確実にセンタリングされてぴったりと嵌る(tight fit)。
これにより、インプラントが、設計寸法から実質的に外れた物理的寸法を有する物理的模型にぴったりと嵌るようになる。
また、これにより、物理的模型の変形を引き起こすおそれがある過剰な圧力を物理的模型に加えることなく、インプラントを所定位置に引っ張ることができる。
【0039】
切削手段は、使用時に患者の歯群の物理的模型の貫通孔の内部面に存在する余分な材料を除去することができ、これにより、インプラントアナログが患者の歯群の物理的模型の貫通孔に確実にぴったりと嵌る。
【0040】
余分な材料は、インプラントが物理的模型にぴったりと嵌ることを妨げる過剰な材料である。
【0041】
切削手段は、切削刃であってもよい。
【0042】
切削刃は、切削機能を有する刃面である。
【0043】
切削刃は、切削機能を有する鋭い端部、すなわち、物理的模型の変形を引き起こすおそれがある過剰な圧力を物理的模型に加えることなく、インプラントアナログが公差の小さい物理的模型に確実にぴったりと嵌るようにする端部である。
【0044】
従って、本発明の一態様は、細長い円柱状の本体を備えるデンタルインプラントアナログであって、反対側に面する第1面と第2面を有し、第1面は、使用時にインプラントアナログと患者の歯の物理的模型の1つまたは複数の面との積極的な位置合わせのための基準面であり、インプラントアナログは、使用時に患者の歯群の物理的模型の貫通孔内に引っ張るか、または押し込むことによって挿入され、患者の歯の物理的模型の1つまたは複数の面は、貫通孔を囲んでおり、デンタルインプラントアナログは、遠位端部と、近位端部と、遠位端部と近位端部との間に位置する中央部または中間部と、をさらに備え、近位端部は、切削手段を有し、切削手段は、使用時に患者の歯群の物理的模型の貫通孔の内部面に存在する余分な材料を掻き落とし、これにより、インプラントアナログが患者の歯群の物理的模型の貫通孔に確実にぴったりと嵌り、切削手段は、切削刃であるデンタルインプラントアナログに関する。
【0045】
従って、切削手段および切削刃は、セルフタッピングねじではなく、インプラントアナログが貫通孔内に引っ張られるか、もしくは押し込まれることによって挿入されるときに、患者の歯群の物理的模型の貫通孔の内部面上の余分な材料を掻くことによって除去する切削刃である。
【0046】
いくつかの実施形態では、インプラントアナログは、回転防止機能を有する、互いに反対側に位置する2つのリセスを含む。互いに反対側に位置する2つのリセスは、それぞれ鋭い切削刃を有しうる。インプラントアナログは、物理的模型の相補的な突出部と噛み合って正しい挿入方向を提供する、案内機能を有する他のリセスをさらに含むことができる。この第3のリセスは、互いに反対側に位置する2つのリセスと共に回転防止機能のつり合いと物理的模型内におけるインプラントアナログのセンタリングを提供する。互いに反対側に位置する2つのリセスは、使用時にインプラントアナログを物理的模型の貫通孔に挿入するときに、物理的模型の貫通孔の内部面に存在する過剰な材料であって、物理的模型の貫通孔内で反対側に位置する2つの相補的な突出部の面上に存在する過剰な材料を、切削および/または掻くことによって除去する切削刃などの切削要素をそれぞれさらに有する。
【0047】
他の態様では、本発明は、細長い円柱状の本体を備えるデンタルインプラントアナログであって、遠位端部と、近位端部と、遠位端部と近位端部との間に位置する中央部または中間部と、をさらに備え、近位端部は、アナログの長手方向軸に沿った少なくとも1つの内部穴を有し、少なくとも1つの内部穴はめねじを備え、インプラントアナログは、回転防止手段と、案内手段と、切削手段と、をさらに備えるデンタルインプラントアナログに関する。
【0048】
第2態様では、本発明は、インプラントアナログのキットであって、第1態様に係るデンタルインプラントアナログと、第1端部と第2端部を有する要素と、を有し、第1端部は、少なくとも1つの内部穴のめねじと係合するように設けられたおねじを備えるインプラントアナログのキットに関する。
【0049】
いくつかの実施形態では、上記要素は、第1端部が少なくとも1つの内部穴のめねじと係合した状態で、デンタルインプラントアナログを所定位置に引っ張る締付工具である。
【0050】
いくつかの他の実施形態では、上記要素は、第2端部に引張工具または押込工具と係合するように設けられた係合面を有する細長いピンなどの細長い要素である。
【0051】
引張工具またはプラーは、デンタルインプラントアナログと係合した細長いピンを引っ張ることにより、デンタルインプラントアナログを所定位置に引っ張る機能を有する工具である。
【0052】
いくつかの他の実施形態では、上記要素はねじであり、第2端部は、締付工具の突起またはリセスと噛み合うように設けられた係合面を有する。
【0053】
第3態様では、本発明は、患者の歯群の物理的模型と本発明の第1態様に係るインプラントアナログの組合せであって、患者の歯群の物理的模型は、基部面と、基部面とは反対側の歯肉部と、基部面から基部面とは反対側の歯肉部まで延びる貫通孔と、を有し、貫通孔は、少なくとも1つの内部穴を囲む相補的な突出部および/またはリセスと係合する1つまたは複数のリセスおよび/または突出部を含む組合せに関する。
【0054】
いくつかの実施形態では、患者の歯群の物理的模型の貫通孔に設けられた1つまたは複数の突出部は、1つまたは複数のウェッジ要素を含む。
【0055】
いくつかの他の実施形態では、患者の歯群の物理的模型の貫通孔に設けられた1つまたは複数の突出部は、貫通孔の内部面に設けられた1つまたは複数の凹部である。
【0056】
1つまたは複数の凹部は、貫通孔の内部面に設けられた溝であってもよい。
【0057】
溝は、貫通孔の内部面に形成された長くて狭い凹部である。
【0058】
第4態様では、本発明は、本発明の第2態様に係るインプラントアナログのキットを使用して、デンタルインプラントアナログを患者の歯群の物理的模型に配置する方法であって、この方法は、本発明の第1態様に係るデンタルインプラントアナログを、患者の歯群の物理的模型の基部面から基部面とは反対側の歯肉面まで延びる貫通孔の歯肉面を通して挿入し、要素の第1端部を、基部面から基部面とは反対側の歯肉面まで延びる貫通孔の基部面を通して挿入し、要素の第1端部のおねじを、少なくとも1つの内部穴のめねじと係合させ、要素、引張工具または押込工具の端面と、インプラントアナログの底面などの第1面が接触して、端面と底面が、貫通孔を囲む物理的模型の基部面などの患者の歯の物理的模型の1つまたは複数の面と一致するまで、デンタルインプラントアナログを所定位置に引っ張るか、押し込むか、あるいはねじ込むことを含む方法に関する。
【0059】
従って、アナログの位置決めは、アナログの面と、引張工具、押込工具、または締付工具の対応する面とが接触し、患者の歯の物理的模型の適切な外側面と一致したときに達成される。
【0060】
接触は、面接触である。
要素、つまり引張工具または押込工具の端面と、インプラントアナログの第1面との接触は、第1面が貫通孔を囲む患者の歯の物理的模型の対応する1つまたは複数の面と一致したとき、例えばアナログの底面が物理的模型の基部面と重なるときに起こる。
【0061】
本発明の第1、第2および他の態様および実施形態は、他のいずれの態様または実施形態とも組み合わせることができる。本発明のこれらのそして他の態様および実施形態は、以下で説明する実施形態を参照することによって明らかになる。
【0062】
続いて、図面を参照して、本発明に係るデンタルインプラントアナログ、デンタルインプラントアナログを含むインプラントアナログのキット、患者の歯群の物理的模型とデンタルインプラントアナログの組合せ、およびデンタルインプラントアナログを患者の歯群の物理的模型に配置する方法をより詳細に説明する。図面は、本発明の一実施形態を示しており、添付の請求の範囲に含まれる他の可能な実施形態に対して限定的に解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態に係るインプラントアナログを示す3次元の図である。
【
図2】本発明の他のいくつかの実施形態に係るインプラントアナログを示す3次元の図である。
【
図3A】本発明のいくつかの実施形態に係る患者の歯の物理的模型内の貫通孔を示す三次元の図である。
【
図3B】本発明のいくつかの実施形態に係る患者の歯の物理的模型内の貫通孔を示す三次元の図である。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態に係る、物理的模型の貫通孔に挿入されてインプラントアナログと係合する細長いピンを示す断面図である。
【
図5】インプラントアナログに固定された細長いピンと係合し、インプラントアナログを物理的模型の貫通孔内の所定位置に引っ張る引張工具を示す断面図である。
【
図6A】締付工具であるインプラントアナログと係合する要素を示す断面図である。
【
図6B】締付工具であるインプラントアナログと係合する要素を示す三次元の図である。
【
図7A】ねじであるインプラントアナログと係合する要素がインプラントアナログと係合した状態を示す断面図である。
【
図7B】ねじであるインプラントアナログと係合する要素を単独で示す三次元の図である。
【
図8】本発明の一形態に係る方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1,
図2は、近位端部1、中間部2、および遠位端部3を備えるインプラントアナログ5の三次元の図である。
インプラントアナログは、アナログの長手方向軸に沿った内部穴4によって特徴づけられている。本実施形態では、アナログは、中間部に環状のリップ部9を有しており、リップ部9は、傾斜した上面を有する複数の三角形のウェッジを含む。
【0065】
近位端部1は、案内機能を有する1つのリセス8と、回転防止機能を有し、互いに反対側に位置する2つのリセス7を備える。互いに反対側に位置する2つのリセス7は、それぞれ鋭い切削刃11を有する。
内部穴4は、めねじ6を備える。
インプラントアナログ5は、面取りされた縁10などの他の案内手段も有している。
【0066】
図3A,
図3Bは、患者の歯の物理的模型の貫通孔を示す3次元の図であり、貫通孔は突出部15,12を有している。
インプラントアナログが貫通孔に挿入されると、環状のリップ部9の三角形のウェッジが、貫通孔の内部面に設けられた相補的な突出部15にスナップフィット方式で係合し、アナログを孔に固定する。
2つの突出部12は、リセス7と相補的であり、物理的模型の孔に挿入されたアナログの望ましくない回転を防止する。
鋭い切削刃11は、アナログの挿入時に余分な材料を取り除き、確実にぴったりと嵌るようにする。
リセス8は、突出部24と相補的であり、挿入が確実に正しい方向で行われるようにする。
【0067】
図4は、物理的模型16の貫通孔に入ってインプラントアナログと係合する細長いピン17の断面を示している。細長いピン17は、おねじが設けられた端部を備え、この端部は、インプラントアナログの内部穴のめねじを備える端部と係合する。
【0068】
図5に示すように係合されると、インプラントアナログは、引張工具19によって物理的模型16内の所定位置に配置される。
【0069】
図6A,
図6Bは、インプラントアナログと係合する要素が締付工具14である実施形態を示している。この実施形態では、インプラントアナログは、工具14を締めることによって所定位置に正確に引っ張られる。
【0070】
図7A,
図7Bは、インプラントアナログと係合する要素がねじ20である実施形態を示している。
【0071】
ねじ20は、インプラントアナログの孔のめねじと係合するおねじ22を備える。ねじ20は、さらに、締付工具の突起またはリセスと噛み合うように設けられた係合面21を有する第2端部を備える。
【0072】
図8は、本発明の第2形態に係るインプラントアナログのキットを使用して、患者の歯群の物理的模型にデンタルインプラントアナログを配置する方法23のフローチャートである。
方法23は、(S1)本発明の第1形態に係るデンタルインプラントアナログを、患者の歯群の物理的模型の基部面から基部面とは反対側の歯肉面まで延びる貫通孔の歯肉面を通して挿入し、(S2)要素の第1端部を、基部面から基部面とは反対側の歯肉面まで延びる貫通孔の基部面を通して挿入し、(S3)要素の第1端部のおねじと少なくとも1つの内部穴のめねじとを係合させ、(S4)要素、引張工具または押込工具の端面と、インプラントアナログの底面などの第1面が接触して、端面と底面が貫通孔を囲む物理的模型の基部面などの患者の歯の物理的模型の1つまたは複数の面と一致するまで、デンタルインプラントアナログを所定位置に引っ張るか、押し込むか、ねじ込むことを含む。
【0073】
本発明を特定の実施形態に関して説明したが、開示した実施形態に限定して解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の請求の範囲によって定められる。請求項において、“comprising”や“comprises”は、他の可能な要素またはステップを除外するものではない。また、“a”や“an”などの冠詞は、複数を除外すると解釈されるべきではない。図に示した要素に関する請求項における参照符号の使用も、発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。さらに、異なる請求項に記載された個々の特徴は、有利に組み合わせることができ、これらの特徴が別の請求項に記載されていることによって、特徴の組合せやその利点が除外されるものではない。