IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社KDDI研究所の特許一覧

特許7450573位置推定装置、位置推定方法及びコンピュータプログラム
<>
  • 特許-位置推定装置、位置推定方法及びコンピュータプログラム 図1
  • 特許-位置推定装置、位置推定方法及びコンピュータプログラム 図2
  • 特許-位置推定装置、位置推定方法及びコンピュータプログラム 図3
  • 特許-位置推定装置、位置推定方法及びコンピュータプログラム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】位置推定装置、位置推定方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/27 20150101AFI20240308BHJP
   H04B 17/30 20150101ALI20240308BHJP
   G01S 5/02 20100101ALN20240308BHJP
【FI】
H04B17/27
H04B17/30
G01S5/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021043607
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143207
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-02-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省「異システム間の周波数共用技術の高度化に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】國澤 良雄
(72)【発明者】
【氏名】松野 宏己
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-100929(JP,A)
【文献】特開2018-179919(JP,A)
【文献】特開2012-103191(JP,A)
【文献】特開2008-241278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/27
H04B 17/30
G01S 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電波センサーがそれぞれに測定した電波の受信情報に基づいて前記電波を送信する無線局の位置を推定する位置推定装置において、
センサーネットワークに接続されている選択候補の各電波センサーの配置を示す電波センサー配置情報を記憶する電波センサー配置情報記憶部と、
選択候補の電波センサーが測定する前記電波の受信情報を取得する電波センサーデータ取得部と、
前記電波センサーデータ取得部が取得した前記電波の受信情報に基づいて前記電波を送信する無線局の位置を推定する推定部と、
を備え、
前記電波センサーデータ取得部は、全ての選択候補の電波センサーの受信情報が示す受信電力のうち最大受信電力の電波センサー及び最大受信電力の電波センサーの周辺の各電波センサーが測定する前記電波の第1の受信情報を取得し、
前記推定部は、前記電波の第1の受信情報に基づいて前記無線局の第1の推定位置を推定し、
前記電波センサーデータ取得部は、前記無線局の第1の推定位置を中心にした所定サイズのデータ取得範囲内に配置された選択候補の電波センサーが測定する前記電波の第2の受信情報を取得し、
前記推定部は、前記電波の第2の受信情報に基づいて前記無線局の第2の推定位置を推定し、
前記無線局の第2の推定位置は、次回の前記電波の第2の受信情報の取得の際に前記無線局の第1の推定位置として使用され、
前記所定サイズは、前記無線局の第2の推定位置の変位量、又は前記無線局の予め想定した最大の変位量に基づいている、
位置推定装置。
【請求項2】
前記電波センサーデータ取得部は、前記無線局の推定位置が変位した距離に応じて前記データ取得範囲のサイズを変える、
請求項1に記載の位置推定装置。
【請求項3】
前記電波センサーデータ取得部は、前記無線局の推定位置を中心にした所定半径の円内に配置された選択候補の電波センサーが測定する前記電波の受信情報を取得する、
請求項1又は2のいずれか1項に記載の位置推定装置。
【請求項4】
前記電波センサーデータ取得部は、前記無線局の推定位置が変位した距離に応じて前記円の半径を変える、
請求項3に記載の位置推定装置。
【請求項5】
複数の電波センサーがそれぞれに測定した電波の受信情報に基づいて前記電波を送信する無線局の位置を推定する位置推定装置が実行する位置推定方法であって、
前記位置推定装置が、センサーネットワークに接続されている選択候補の各電波センサーの配置を示す電波センサー配置情報を記憶する電波センサー配置情報記憶ステップと、
前記位置推定装置が、選択候補の電波センサーが測定する前記電波の受信情報を取得する電波センサーデータ取得ステップと、
前記位置推定装置が、前記電波センサーデータ取得ステップが取得した前記電波の受信情報に基づいて前記電波を送信する無線局の位置を推定する推定ステップと、
を含み、
前記電波センサーデータ取得ステップは、全ての選択候補の電波センサーの受信情報が示す受信電力のうち最大受信電力の電波センサー及び最大受信電力の電波センサーの周辺の各電波センサーが測定する前記電波の第1の受信情報を取得し、
前記推定ステップは、前記電波の第1の受信情報に基づいて前記無線局の第1の推定位置を推定し、
前記電波センサーデータ取得ステップは、前記無線局の第1の推定位置を中心にした所定サイズのデータ取得範囲内に配置された選択候補の電波センサーが測定する前記電波の第2の受信情報を取得し、
前記推定ステップは、前記電波の第2の受信情報に基づいて前記無線局の第2の推定位置を推定し、
前記無線局の第2の推定位置は、次回の前記電波の第2の受信情報の取得の際に前記無線局の第1の推定位置として使用され、
前記所定サイズは、前記無線局の第2の推定位置の変位量、又は前記無線局の予め想定した最大の変位量に基づいている、
位置推定方法。
【請求項6】
複数の電波センサーがそれぞれに測定した電波の受信情報に基づいて前記電波を送信する無線局の位置を推定する位置推定装置のコンピュータに、
センサーネットワークに接続されている選択候補の各電波センサーの配置を示す電波センサー配置情報を記憶する電波センサー配置情報記憶ステップと、
選択候補の電波センサーが測定する前記電波の受信情報を取得する電波センサーデータ取得ステップと、
前記電波センサーデータ取得ステップが取得した前記電波の受信情報に基づいて前記電波を送信する無線局の位置を推定する推定ステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラムであり、
前記電波センサーデータ取得ステップは、全ての選択候補の電波センサーの受信情報が示す受信電力のうち最大受信電力の電波センサー及び最大受信電力の電波センサーの周辺の各電波センサーが測定する前記電波の第1の受信情報を取得し、
前記推定ステップは、前記電波の第1の受信情報に基づいて前記無線局の第1の推定位置を推定し、
前記電波センサーデータ取得ステップは、前記無線局の第1の推定位置を中心にした所定サイズのデータ取得範囲内に配置された選択候補の電波センサーが測定する前記電波の第2の受信情報を取得し、
前記推定ステップは、前記電波の第2の受信情報に基づいて前記無線局の第2の推定位置を推定し、
前記無線局の第2の推定位置は、次回の前記電波の第2の受信情報の取得の際に前記無線局の第1の推定位置として使用され、
前記所定サイズは、前記無線局の第2の推定位置の変位量、又は前記無線局の予め想定した最大の変位量に基づいている、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置推定装置、位置推定方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異なる無線通信システム間で同じ周波数帯(共用周波数帯)を共用するための周波数共用技術が検討されている。例えば、既存の無線通信システム(1次事業者システム)に割り当てられている周波数帯(共用周波数帯)を他の無線通信システム(2次事業者システム)が二次的に利用する場合、2次事業者システムは1次事業者システムの既存の無線局に対する共用周波数帯の電波干渉を回避するように運用することが求められる。既存の無線局に対する共用周波数帯の電波干渉を回避するためには、当該既存の無線局の位置を把握することが効率的な回避策をとるために好ましい。しかし、一般に、異なる無線通信システム間では、相手の無線通信システムの無線局の位置が不明である。このため、例えば非特許文献1に記載された技術では、既存の無線局に対する共用周波数帯の電波干渉を回避するために、複数の電波センサーが測定した共用周波数帯の受信電力情報から既存の無線局が存在する位置を推定している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】“ダイナミック周波数共用のための複数無線局の位置推定に関する一検討”、2020年 電子情報通信学会総合大会、通信講演論文集1、B-17-13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した非特許文献1に記載された技術では、多数の電波センサーからセンサーネットワークを介して測定データを常時収集すると、収集データ量が膨大になってセンサーネットワークに過大な負荷がかかり、許容範囲を超える測定データの欠落や遅延が発生し、既存の無線局の位置の推定に必要な測定データが不十分になる可能性があった。
【0005】
また、既存の無線局が固定局や低速の移動局である場合には、複数の電波センサーの測定データを集約することによって既存の無線局の位置の推定精度を向上させることが考えられる。しかしながら、共用周波数帯の電波伝搬特性やフェージング等の影響によって共用周波数帯の電波が想定以上に遠くまで伝搬すると、不要な電波センサーの測定データまでも集約してしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、複数の電波センサーが測定した電波の受信情報に基づいて当該電波を送信する無線局の位置を推定するときの推定精度の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、複数の電波センサーがそれぞれに測定した電波の受信情報に基づいて前記電波を送信する無線局の位置を推定する位置推定装置において、センサーネットワークに接続されている選択候補の各電波センサーの配置を示す電波センサー配置情報を記憶する電波センサー配置情報記憶部と、選択候補の電波センサーが測定する前記電波の受信情報を取得する電波センサーデータ取得部と、前記電波センサーデータ取得部が取得した前記電波の受信情報に基づいて前記電波を送信する無線局の位置を推定する推定部と、を備え、前記電波センサーデータ取得部は、全ての選択候補の電波センサーの受信情報が示す受信電力のうち最大受信電力の電波センサー及び最大受信電力の電波センサーの周辺の各電波センサーが測定する前記電波の第1の受信情報を取得し、前記推定部は、前記電波の第1の受信情報に基づいて前記無線局の第1の推定位置を推定し、前記電波センサーデータ取得部は、前記無線局の第1の推定位置を中心にした所定サイズのデータ取得範囲内に配置された選択候補の電波センサーが測定する前記電波の第2の受信情報を取得し、前記推定部は、前記電波の第2の受信情報に基づいて前記無線局の第2の推定位置を推定し、前記無線局の第2の推定位置は、次回の前記電波の第2の受信情報の取得の際に前記無線局の第1の推定位置として使用され、前記所定サイズは、前記無線局の第2の推定位置の変位量、又は前記無線局の予め想定した最大の変位量に基づいている、位置推定装置である。
(2)本発明の一態様は、前記電波センサーデータ取得部は、前記無線局の推定位置が変位した距離に応じて前記データ取得範囲のサイズを変える、上記(1)の位置推定装置である。
(3)本発明の一態様は、前記電波センサーデータ取得部は、前記無線局の推定位置を中心にした所定半径の円内に配置された選択候補の電波センサーが測定する前記電波の受信情報を取得する、上記(1)又は(2)のいずれかの位置推定装置である。
(4)本発明の一態様は、前記電波センサーデータ取得部は、前記無線局の推定位置が変位した距離に応じて前記円の半径を変える、上記(3)の位置推定装置である。
【0008】
(5)本発明の一態様は、複数の電波センサーがそれぞれに測定した電波の受信情報に基づいて前記電波を送信する無線局の位置を推定する位置推定装置が実行する位置推定方法であって、前記位置推定装置が、センサーネットワークに接続されている選択候補の各電波センサーの配置を示す電波センサー配置情報を記憶する電波センサー配置情報記憶ステップと、前記位置推定装置が、選択候補の電波センサーが測定する前記電波の受信情報を取得する電波センサーデータ取得ステップと、前記位置推定装置が、前記電波センサーデータ取得ステップが取得した前記電波の受信情報に基づいて前記電波を送信する無線局の位置を推定する推定ステップと、を含み、前記電波センサーデータ取得ステップは、全ての選択候補の電波センサーの受信情報が示す受信電力のうち最大受信電力の電波センサー及び最大受信電力の電波センサーの周辺の各電波センサーが測定する前記電波の第1の受信情報を取得し、前記推定ステップは、前記電波の第1の受信情報に基づいて前記無線局の第1の推定位置を推定し、前記電波センサーデータ取得ステップは、前記無線局の第1の推定位置を中心にした所定サイズのデータ取得範囲内に配置された選択候補の電波センサーが測定する前記電波の第2の受信情報を取得し、前記推定ステップは、前記電波の第2の受信情報に基づいて前記無線局の第2の推定位置を推定し、前記無線局の第2の推定位置は、次回の前記電波の第2の受信情報の取得の際に前記無線局の第1の推定位置として使用され、前記所定サイズは、前記無線局の第2の推定位置の変位量、又は前記無線局の予め想定した最大の変位量に基づいている、位置推定方法である。
【0009】
(6)本発明の一態様は、複数の電波センサーがそれぞれに測定した電波の受信情報に基づいて前記電波を送信する無線局の位置を推定する位置推定装置のコンピュータに、センサーネットワークに接続されている選択候補の各電波センサーの配置を示す電波センサー配置情報を記憶する電波センサー配置情報記憶ステップと、選択候補の電波センサーが測定する前記電波の受信情報を取得する電波センサーデータ取得ステップと、前記電波センサーデータ取得ステップが取得した前記電波の受信情報に基づいて前記電波を送信する無線局の位置を推定する推定ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムであり、前記電波センサーデータ取得ステップは、全ての選択候補の電波センサーの受信情報が示す受信電力のうち最大受信電力の電波センサー及び最大受信電力の電波センサーの周辺の各電波センサーが測定する前記電波の第1の受信情報を取得し、前記推定ステップは、前記電波の第1の受信情報に基づいて前記無線局の第1の推定位置を推定し、前記電波センサーデータ取得ステップは、前記無線局の第1の推定位置を中心にした所定サイズのデータ取得範囲内に配置された選択候補の電波センサーが測定する前記電波の第2の受信情報を取得し、前記推定ステップは、前記電波の第2の受信情報に基づいて前記無線局の第2の推定位置を推定し、前記無線局の第2の推定位置は、次回の前記電波の第2の受信情報の取得の際に前記無線局の第1の推定位置として使用され、前記所定サイズは、前記無線局の第2の推定位置の変位量、又は前記無線局の予め想定した最大の変位量に基づいている、コンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の電波センサーが測定した電波の受信情報に基づいて当該電波を送信する無線局の位置を推定するときの推定精度の向上を図ることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る位置推定装置の構成例を示すブロック図である。
図2】一実施形態に係る電波センサーデータ取得方法の手順の例を示すフローチャートである。
図3】一実施形態に係るデータ取得範囲決定方法の例1の説明図である。
図4】一実施形態に係るデータ取得範囲決定方法の例2の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係る位置推定装置の構成例を示すブロック図である。図1において、位置推定装置1は、複数の電波センサー3がそれぞれに測定した電波の受信情報に基づいて当該電波を送信する無線局の位置を推定する。当該電波は、例えば共用周波数帯の電波である。当該無線局は、例えば、共用周波数帯を送信する既存の無線局である。当該無線局は、送信局であってもよく、又は送受信局であってもよい。本実施形態では、電波センサー3が測定する電波の例として共用周波数帯の電波を挙げて説明する。また、位置の推定対象の無線局の例として共用周波数帯を送信する既存の無線局(送信局や送受信局)を挙げて説明する。以下、共用周波数帯の電波を共用電波と称する場合がある。
【0013】
位置推定装置1は、電波センサー配置情報記憶部11と、電波センサーデータ取得部12と、推定部13とを備える。
【0014】
位置推定装置1の各機能は、位置推定装置1がCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、位置推定装置1として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。例えば、位置推定装置1は、インターネット等の通信ネットワークに接続されるサーバコンピュータを使用して構成されてもよい。また、位置推定装置1の各機能はクラウドコンピューティングにより実現されてもよい。また、位置推定装置1は、単独のコンピュータにより実現するものであってもよく、又は位置推定装置1の機能を複数のコンピュータに分散させて実現するものであってもよい。
【0015】
電波センサー配置情報記憶部11は、選択候補の各電波センサーの配置を示す電波センサー配置情報を記憶する。電波センサー配置情報は、選択候補群30に属する各電波センサー3の配置を示す情報である。電波センサー配置情報は、2次元配置情報(緯度、経度)であってもよく、又は3次元配置情報(緯度、経度、高度)であってもよい。
【0016】
電波センサーデータ取得部12は、無線局の推定位置を中心にした所定サイズのデータ取得範囲内に配置された選択候補の電波センサー3が測定する共用電波の受信情報を取得する。電波センサーデータ取得部12は、電波センサー配置情報記憶部11に記憶される電波センサー配置情報から、選択候補の各電波センサー3の配置を認識する。共用電波の受信情報は、共用電波の受信電力を示す受信電力情報を含む情報である。受信電力情報は、例えばRSSI(Received Signal Strength Indicator:受信信号強度)である。
【0017】
選択候補群30に属する電波センサー3は、センサーネットワークNWに接続されている。電波センサー3は、自己が測定した共用電波の受信情報を、センサーネットワークNWを介して提供する。電波センサーデータ取得部12は、電波センサー3から提供される共用電波の受信情報を、センサーネットワークNWを介して取得する。なお、電波センサーデータ取得部12は、電波センサー3から直接的に共用電波の受信情報を取得してもよく、又は例えばセンサーデータ収集サーバ等の他の装置(図示せず)を介して共用電波の受信情報を取得してもよい。
【0018】
推定部13は、電波センサーデータ取得部12が取得した共用電波の受信情報に基づいて、無線局の位置を推定する。
【0019】
推定部13が無線局の位置を推定する方法として、例えば非特許文献1に記載されるように、電波センサーデータ取得部12が取得した共用電波の受信情報(共用電波の受信電力)及び当該受信情報を測定した電波センサー3の位置から算出される重心に基づいて、無線局の位置を推定してもよい。また、電波センサーデータ取得部12が取得した共用電波の受信情報が示す最大受信電力の電波センサー3の位置に基づいて無線局の位置を推定してもよい。
【0020】
推定部13は、無線局の位置の推定結果を示す推定位置情報20を出力する。推定位置情報20は、例えば、推定位置情報20が示す推定位置に基づいた共用電波の電波干渉の回避策の立案に利用される。
【0021】
次に図2を参照して本実施形態に係る電波センサーデータ取得方法を説明する。図2は、本実施形態に係る電波センサーデータ取得方法の手順の例を示すフローチャートである。以下、共用電波の受信情報を単に受信情報と称する場合がある。また共用電波の受信電力を単に受信電力と称する場合がある。また電波センサー3は、選択候補群30に属する電波センサー3である。
【0022】
(ステップS1) 電波センサーデータ取得部12は、変数N,rを各所定値に設定する。また電波センサーデータ取得部12は、変数nを初期値「1」に設定する。
【0023】
(ステップS2) 電波センサーデータ取得部12は、全ての電波センサー3の受信情報が示す受信電力のうち最大受信電力の電波センサー3を1個目の電波センサー3に設定し、当該1個目の電波センサー3から受信情報を取得する。
【0024】
(ステップS3) 電波センサーデータ取得部12は、変数nに1を加算する。
【0025】
(ステップS4) 電波センサーデータ取得部12は、1個目の電波センサー3からの距離が「n-1」番目に近い電波センサー3をn個目の電波センサー3に設定し、当該n個目の電波センサー3から受信情報を取得する。
【0026】
(ステップS5) 電波センサーデータ取得部12は、「n=N」になるまでステップS3-S5を繰り返す。つまり、ステップS5において「n<N」である間は(ステップS5、YES)ステップS3-S5を繰り返し、「n=N」になったら(ステップS5、NO)ステップS6に進む。これにより、1個目の電波センサー3からの距離が短い順にN個目までの各電波センサー3から受信情報が取得される。この後、ステップS6に進む。
【0027】
(ステップS6) 推定部13は、電波センサーデータ取得部12が1個目からN個目までの各電波センサー3から取得したN個の受信情報に基づいて、無線局の位置を推定する。この推定結果の推定位置は推定位置情報20として出力される。この推定結果の推定位置は、無線局の推定位置の初期値である。推定位置の初期値を初期推定位置と称する。
【0028】
(ステップS7) 電波センサーデータ取得部12は、ステップS6で推定された無線局の初期推定位置に基づいて、データ取得範囲を決定する。
【0029】
(ステップS8) 電波センサーデータ取得部12は、データ取得範囲内に配置された電波センサー3が測定する受信情報を取得する。
【0030】
(ステップS9) 推定部13は、ステップS8で電波センサーデータ取得部12が取得した受信情報に基づいて、無線局の位置を推定する。この推定結果の推定位置は推定位置情報20として出力される。
なお、ステップS9の後も無線局の位置の推定を継続する場合には、ステップS9の推定結果の推定位置を初期推定位置としてステップS7に戻ることにより、ステップS7-S9を繰り返す。
【0031】
(データ取得範囲決定方法の例1)
図3を参照して本実施形態に係るデータ取得範囲決定方法の例1を説明する。図3は、本実施形態に係るデータ取得範囲決定方法の例1の説明図である。図3には、時刻「t0-1」における無線局の推定位置P(t0-1)と、時刻「t0」における無線局の初期推定位置P(t0)とが示される。データ取得範囲決定方法の例1では、初期推定位置P(t0)を中心にした所定半径rの円C(t0)内をデータ取得範囲に決定する。これにより、電波センサーデータ取得部12は、円C(t0)内に配置された選択候補の電波センサー3が測定する受信情報を取得する。推定部13は、当該取得された受信情報に基づいて、時刻「t0」における無線局の位置を推定する。この推定結果の推定位置が、時刻「t0」における推定位置情報20として出力される。なお、所定半径rは、無線局が移動する変位として想定される長さよりも大きく設定してもよい。
【0032】
(データ取得範囲決定方法の例2)
図4を参照して本実施形態に係るデータ取得範囲決定方法の例2を説明する。図4は、本実施形態に係るデータ取得範囲決定方法の例2の説明図である。データ取得範囲決定方法の例2では、上記したデータ取得範囲決定方法の例1において、無線局の推定位置が変位した距離に応じてデータ取得範囲の円の半径を変える。図4には、時刻「t0」における無線局の初期推定位置としてP(t0)とP’(t0)との2通りが示されている。図4において、時刻「t0-1」における無線局の推定位置P(t0-1)から時刻「t0」における無線局の初期推定位置に変位した距離(推定位置P(t0-1)から時刻「t0」における初期推定位置までの距離)が長いほど、データ取得範囲の円の半径rが大きくなる。図4の例では、初期推定位置P’(t0)の方が初期推定位置P(t0)よりも、推定位置P(t0-1)から変位した距離が長い。したがって、初期推定位置P’(t0)の方が初期推定位置P(t0)よりもデータ取得範囲の円の半径rが大きくなる。これにより、初期推定位置P’(t0)の場合のデータ取得範囲の円C’(t0)は、初期推定位置P(t0)の場合のデータ取得範囲の円C(t0)よりも半径r(円のサイズ)が大きい。なお、図4の例では、各初期推定位置P(t0),P’(t0)に対応する半径rを推定位置P(t0-1)から変位した各距離δ,δ’に等しくしているが、「r=αδ、αは所定の係数」として半径rを推定位置P(t0-1)から変位した距離δに比例した大きさにしてもよい。
【0033】
データ取得範囲決定方法の例2によれば、無線局の推定位置が変位した距離に応じてデータ取得範囲の円の半径が変わるので、当該円の半径が固定され場合に比べて、受信情報が取得される範囲を効率的な大きさにすることができる。
【0034】
なお、上記したデータ取得範囲決定方法の例1,例2においては、データ取得範囲の形状を円形状にしたが、これに限定されない。データ取得範囲の形状は、円形状や楕円形状や多角形状などであってもよい。
【0035】
また、上記したデータ取得範囲決定方法の例2においては、無線局の推定位置が変位した距離に応じて、当該距離が長いほどデータ取得範囲のサイズを大きくするものであればよい。
【0036】
なお、電波センサーデータ取得部12は、データ取得範囲内に配置された選択候補の電波センサー3のうち、全ての電波センサー3が測定する受信情報を取得してもよく、又は一部の電波センサー3が測定する受信情報のみを取得してもよい。一部の電波センサー3が測定する受信情報のみを取得する場合、初期推定位置から所定範囲(例えば所定の距離以内の範囲)に配置された電波センサー3に限定して受信情報を取得してもよい。
【0037】
本実施形態によれば、無線局の推定位置を中心にした所定サイズのデータ取得範囲内に配置された選択候補の電波センサー3が測定する電波の受信情報が取得されるので、不要な電波センサー3が測定した電波の受信情報が無線局の位置の推定に使用されることを抑制することができる。これにより、複数の電波センサー3が測定した電波の受信情報に基づいて当該電波を送信する無線局の位置を推定するときの推定精度の向上を図ることができるという効果が得られる。
【0038】
本実施形態によれば、例えば共用周波数帯を送信する既存の無線局の位置を高精度に推定可能となるので、共用周波数帯を二次的に利用するときに当該既存の無線局に対する電波干渉を回避する範囲である保護領域を過剰に設定することなく的確に設定することができ、共用周波数帯の周波数利用効率を向上させることができるという効果が得られる。
【0039】
本実施形態によれば、センサーネットワークNWを介して測定データを収集する対象の電波センサー3を適切に限定して収集データ量を抑制することができる。これにより、センサーネットワークNWにかかる負荷の増大が抑制されるので、許容範囲を超える測定データの欠落や遅延を防止し、既存の無線局の位置の推定精度の劣化を防ぐ効果が得られる。
【0040】
また、本実施形態によれば、共用周波数帯を利用する異システムとの連携が不要である。また、ベースバンド信号復調、到来方向や時間差測定などの複雑な機能が不要である。
【0041】
なお、これにより、例えば異システム間の周波数共用における総合的なサービス品質の向上を実現することができることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0043】
また、上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0044】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…位置推定装置、3…電波センサー、11…電波センサー配置情報記憶部、12…電波センサーデータ取得部、13…推定部、30…選択候補群、NW…センサーネットワーク
図1
図2
図3
図4