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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B62D 61/12 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
B62D61/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021101774
(22)【出願日】2021-06-18
(65)【公開番号】P2023000770
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】井田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】平岡 実
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 竣也
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-111986(JP,A)
【文献】特開2020-001444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 61/12
B60K 1/00- 6/12, 7/00- 8/00
B60K 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、
複数の車輪と、
前記車両本体に対して前記車輪を支持させる複数の支持脚と、が備えられ、
複数の前記支持脚の夫々に、前記車両本体に対して左右方向に沿う横軸心回りで揺動可能に一端部が連結された第一リンクと、その第一リンクの他端部に備えた関節部と、前記関節部を介して前記第一リンクに連結される第二リンクと、が備えられ、
前記車輪が、前記関節部と、前記第二リンクの前記関節部に連結された側とは反対側の端部と、に設けられ、
前記車両本体に対して前記第一リンクを揺動駆動可能な第一駆動機構と、前記第一リンクに対して前記第二リンクを揺動駆動可能な第二駆動機構と、が備えられ、
前記第一駆動機構及び前記第二駆動機構を各別に駆動して前記支持脚の姿勢を制御する支持脚姿勢制御手段が備えられ、
前記支持脚姿勢制御手段は、前記車両本体の前部に支持されている前記支持脚に備えた前記車輪のうち、進行方向での前方に位置する前記車輪が接地して後方に位置する前記車輪が浮上するとともに、前記車両本体の後部に支持されている前記支持脚に備えた前記車輪のうち、進行方向での後方に位置する前記車輪が接地して前方に位置する前記車輪が浮上する第一接地モードと、
前記車両本体の前部及び後部に支持されている前記支持脚に備えた前記車輪のうち、進行方向での後方に位置する前記車輪が接地して前方に位置する前記車輪が浮上する第二接地モードと、
前記車両本体の前部及び後部に支持されている前記支持脚に備えた前記車輪のうち、進行方向での前方に位置する前記車輪が接地して後方に位置する前記車輪が浮上する第三接地モードと、に制御モードを切り換え可能に構成されており、
前記車輪に対する前進方向における走行抵抗を検出する走行抵抗検出センサが備えられ、
前記走行抵抗検出センサは、前記車輪を支持する軸受け部に生じた歪みに基づいて前記走行抵抗を検出する作業車。
【請求項2】
前記走行抵抗検出センサは、前記軸受け部に設けられている請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記走行抵抗検出センサの検出結果に基づいて、前進方向における走行抵抗が所定値以上である前記車輪を所定高さまで浮上させるように構成されている請求項1または2に記載の作業車。
【請求項4】
前記第一駆動機構は、前記車両本体に対する前記第一リンクの揺動姿勢を変更可能な第一油圧シリンダを備え、前記第二駆動機構は、前記第一リンクに対する前記第二リンクの揺動姿勢を変更可能な第二油圧シリンダを備えている請求項1に記載の作業車。
【請求項5】
前記第一油圧シリンダ及び前記第二油圧シリンダは、前記第一リンクの長手方向に伸縮方向を沿わせて配設されている請求項4に記載の作業車。
【請求項6】
前記支持脚に設けられる前記車輪のうち、前記関節部よりも前記車両本体から遠い側の端部に設けられる前記車輪が駆動輪であり、前記関節部に設けられる前記車輪が遊転輪である請求項1~5のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項7】
前記支持脚姿勢制御手段における前記制御モードの切換操作を、人為的に行うためのモード切換操作部が備えられている請求項1~6のいずれか一項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段差のある路面や階段などが存在する不整地を走行するのに適した作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、不整地移動装置が開示されている。この不整地移動装置は4つの走行車輪を備えており、各走行車輪が屈折リンク機構を介して車両本体に支持されている。屈折リンク機構に電動モータが備えられ、電動モータの駆動力により屈折リンク機構が屈伸駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-142347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の不整地移動装置では、屈折リンク機構が屈伸駆動することが記載されているものの、どのようにリンク機構を動作させて不整地を走行するのか、具体的な方法や構成は開示されていない。例えば、走行車輪の半径を超える段差が存在する場合に、段差を乗り越えることが可能であるのか否か、可能であるとすればどのようにして行うのかのかに関する技術については開示されていない。
【0005】
本発明は、段差のある路面等の不整地を走行可能な作業車を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決する手段として、本発明の作業車は、
車両本体と、
複数の車輪と、
前記車両本体に対して前記車輪を支持させる複数の支持脚と、が備えられ、
複数の前記支持脚の夫々に、前記車両本体に対して左右方向に沿う横軸心回りで揺動可能に一端部が連結された第一リンクと、その第一リンクの他端部に備えた関節部と、前記関節部を介して前記第一リンクに連結される第二リンクと、が備えられ、
前記車輪が、前記関節部と、前記第二リンクの前記関節部に連結された側とは反対側の端部と、に設けられ、
前記車両本体に対して前記第一リンクを揺動駆動可能な第一駆動機構と、前記第一リンクに対して前記第二リンクを揺動駆動可能な第二駆動機構と、が備えられ、
前記第一駆動機構及び前記第二駆動機構を各別に駆動して前記支持脚の姿勢を制御する支持脚姿勢制御手段が備えられ、
前記支持脚姿勢制御手段は、前記車両本体の前部に支持されている前記支持脚に備えた前記車輪のうち、進行方向での前方に位置する前記車輪が接地して後方に位置する前記車輪が浮上するとともに、前記車両本体の後部に支持されている前記支持脚に備えた前記車輪のうち、進行方向での後方に位置する前記車輪が接地して前方に位置する前記車輪が浮上する第一接地モードと、
前記車両本体の前部及び後部に支持されている前記支持脚に備えた前記車輪のうち、進行方向での後方に位置する前記車輪が接地して前方に位置する前記車輪が浮上する第二接地モードと、
前記車両本体の前部及び後部に支持されている前記支持脚に備えた前記車輪のうち、進行方向での前方に位置する前記車輪が接地して後方に位置する前記車輪が浮上する第三接地モードと、に制御モードを切り換え可能に構成されており、
前記車輪に対する前進方向における走行抵抗を検出する走行抵抗検出センサが備えられ、
前記走行抵抗検出センサは、前記車輪を支持する軸受け部に生じた歪みに基づいて前記走行抵抗を検出することを特徴とする。
【0007】
本構成によれば、支持脚姿勢制御手段による制御モードを適宜に切り換えることで、それぞれの支持脚に備えた車輪のうちで、接地すべき車輪と浮上すべき車輪とを適宜に選択することができる。
つまり、接地状態で段差に突き当たって、その段差を乗り越えることができない状態にあった車輪を、接地位置から浮上する方向へ移動させて段差を乗り越えさせることが可能となる。そして、段差を乗り越えた車輪を上の段の踏面に接地させ、引き続いて乗り越え手前位置にある後続の車輪を浮上させて段差を乗り越えさせることができる。このように、段差に突き当たった位置ある車輪を順次浮上させながら段差を乗り越えさせることができるので、階段などの段差がある不整地を走行させることが可能となる。
本発明において、前記走行抵抗検出センサは、前記軸受け部に設けられていると好適である。
本発明において、前記走行抵抗検出センサの検出結果に基づいて、前進方向における走行抵抗が所定値以上である前記車輪を所定高さまで浮上させるように構成されていると好適である。
本構成によれば、前進方向における走行抵抗が所定値以上である車輪を所定高さまで浮上させて、走行抵抗の低減する位置に移動させ、段差のある不整地での走行を行い易くできる。
【0008】
本発明において、前記第一駆動機構は、前記車両本体に対する前記第一リンクの揺動姿勢を変更可能な第一油圧シリンダを備え、前記第二駆動機構は、前記第一リンクに対する前記第二リンクの揺動姿勢を変更可能な第二油圧シリンダを備えていると好適である。
【0009】
本構成によれば、第一駆動機構及び第二駆動機構として油圧シリンダが用いられている。これにより、支持脚の揺動駆動を強力に行えるものでありながら構造簡単に構成し易い。
【0010】
本発明において、前記第一油圧シリンダ及び前記第二油圧シリンダは、前記第一リンクの長手方向に伸縮方向を沿わせて配設されていると好適である。
【0011】
本構成によれば、第一油圧シリンダも前記第二油圧シリンダも、第二リンクよりは車両本体に近い位置の第一リンクの長手方向に伸縮方向を沿わせて配設されているので、油圧配管長の節約を図かり得るとともに、他物との接触を避けやすいところの車両本体近くにまとめてコンパクトに配設し易い。
【0012】
本発明において、前記支持脚に設けられる前記車輪のうち、前記関節部よりも前記車両本体から遠い側の端部に設けられる前記車輪が駆動輪であり、前記関節部に設けられる前記車輪が遊転輪であると好適である。
【0013】
本構成によれば、支持脚において車両本体から遠い側の端部に駆動輪が設けられることで、車両本体の走行姿勢を安定させながら駆動し易い。
【0014】
【0015】
【0016】
本発明において、前記支持脚姿勢制御手段における前記制御モードの切換操作を、人為的に行うためのモード切換操作部が備えられていると好適である。
【0017】
本構成によれば、支持脚姿勢制御手段における制御モードの切換操作を人為的に行うことができる。このように人為操作を行うことが可能な構成を採用することにより、不整地における走行路面の状態や段差度合いを確認して人為的に制御モードの切換操作を行うことができるので、不整地の状況に適した制御状態を得やすい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】作業車の全体側面図である。
図2】作業車の全体平面図である。
図3】屈折リンク機構の側面図である。
図4】制御ブロック図である。
図5】作業車における段差制御部による動作形態を示す説明図である。
図6】作業車における段差制御部による動作形態を示す説明図である。
図7】作業車における段差制御部による動作形態を示す説明図である。
図8】作業車における段差制御部による動作形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る作業車の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。なお、以下の説明においては、図中に示される矢印Fの方向が「前」、矢印Bの方向が「後」、矢印Rの方向が「右」、矢印Lの方向が「左」、矢印Uの方向が「上」、矢印Dの方向が「下」、を示している。
【0020】
〔作業車の構成の詳細〕
図1及び図2に示されるように、作業車は、略矩形枠状の車両本体1と、走行駆動用の複数の車輪2と、車両本体1に対して車輪2を支持させる複数の支持機構Aと、制御装置Cと、を備える。
【0021】
〔車両本体〕
図1図2に示されるように、車両本体1は、矩形枠状の車体フレーム7、油圧供給源8、支持台10、収納ケース11を備える。収納ケース11に、ECU5、弁機構9、及び車両本体1の外部に備えた走行指令用の送信機からの信号を受信してECU5に入力するための走行指令入力部12が内装されている。
【0022】
油圧供給源8は、例えば、エンジンあるいは電動モータ等の駆動手段(図示せず)によって駆動される油圧ポンプ及び作動油タンクである。油圧供給源8は、車体フレーム7の下側に連結された支持台10により支持され、車両本体1の下腹部に位置する。油圧供給源8は、弁機構9を介して支持脚姿勢制御手段4としての第一駆動機構4A及び第二駆動機構4Bに作動油を送り出し供給する。そして、図示はしていないが、支持台10を車体フレーム7から取り外すことにより、油圧供給源8と支持台10とを連結した状態で一体的に、車両本体1から横側方にスライドさせて取り外すことが可能であり、再度、支持台10を車体フレーム7に取り付けることにより、横側方にスライドさせて装着することが可能である。
【0023】
弁機構9は、車体フレーム7の上側に載置支持される状態で備えられ、複数の油圧制御弁(図示せず)を備えている。油圧制御弁は、油圧シリンダである第一駆動機構4A及び第二駆動機構4B、及び油圧モータ6に対する作動油の給排あるいは流量・圧力の調節等を行う。弁機構9の上方は収納ケース11によって覆われている。収納ケース11の上側には、弁機構9の作動を制御するECU5(Electronic Control Unit)が備えられている。弁機構9及びECU5により、制御装置Cが構成されている。
【0024】
車体フレーム7の上側には、例えば、車両本体1が転倒したような場合に、収納ケース11に収納される走行指令入力部12や、弁機構9、及び上方に備えられるECU5等を保護するための外装フレーム13が備えられている。外装フレーム13は、左右両側に備えられた棒状体が平面視で略U字形に曲げられた形状となっており、車体フレーム7に取り付け固定されている。左右の外装フレーム13は、前後の端部が互いに近接するように設けられ、弁機構9やECU5等の外周側を囲む形状となっている。
【0025】
〔支持機構〕
上述の通り、支持機構Aは、屈折リンク機構によって構成された支持脚3、及びその支持脚3の姿勢を制御する支持脚姿勢制御手段4を備えている。
【0026】
支持機構Aに支持される車輪2は、支持脚3を介して車両本体1に対して各別に昇降自在に支持されている。
支持脚3は、車両本体1の前部における左右両側、及び後部における左右両側、の計4箇所に設けられている。夫々の支持脚3には、車両本体1に対して左右方向に沿う横軸心x1回りで揺動可能に一端部が連結された第一リンク30と、その第一リンク30の他端部に備えた関節部31と、関節部31を介して第一リンク30に連結される第二リンク32と、が備えられている。関節部31には、前記横軸心x1と平行な横軸心x2が備えられており、この横軸心x2回りで第二リンク32が第一リンク30に対して揺動可能に連結されている。
【0027】
各支持脚3につき、車輪2は、関節部31と、第二リンク32の関節部31に連結された側とは反対側の端部と、の二箇所に設けられている。支持脚3に設けられる車輪2のうち、関節部31よりも車両本体1から遠い側の端部に設けられる車輪2が油圧モータ6で駆動回転される駆動輪20であり、関節部31に設けられる車輪2が遊転輪21である。
【0028】
関節部31よりも車両本体1から遠い側の端部に設けられた駆動輪20は、第二リンク32に対して、上下軸心y1回りで向き変更可能に取り付けられている。この駆動輪20の上下軸心y1回りでの向き変更は、第二リンク32に沿って配設された操舵用油圧シリンダ40の伸縮作動によって行われる。
【0029】
図1乃至図3に示されるように、複数の支持脚3の夫々に対応して、支持脚3の姿勢を各別に変更可能な支持脚姿勢制御手段4が備えられている。
支持脚姿勢制御手段4は、第一駆動機構4A及び第二駆動機構4Bを備えている。
【0030】
第一駆動機構4Aは、第一リンク30の長さ方向に沿って配設された第一油圧シリンダ41と、車体フレーム7に近い側おける第一油圧シリンダ41の端部(上端部)を、車体フレーム7と第一リンク30とにわたって連結する連動部材41a,41bと、を備えている。第一油圧シリンダ41の他端部(下端部)は、第一リンク30に対して、下方の横軸心x2から前後方向で離れた位置に連結されている。
したがって、第一油圧シリンダ41を伸縮作動させることにより、第一リンク30を上方の横軸心x1回りで揺動作動させることができる。
【0031】
第二駆動機構4Bは、第一リンク30の長さ方向に沿って配設された第二油圧シリンダ42と、車体フレーム7に近い側おける第二油圧シリンダ42の端部(上端部)を、第一リンク30に対して、上方の横軸心x1から前後方向で離れた位置に連結されている。そして、第二油圧シリンダ42の他端部(下端部)は、第一リンク30と第二リンク32とにわたって設けた連動部材42a,42bに連結されている。
したがって、第一油圧シリンダ41を伸縮作動させることにより、第二リンク32を下方の横軸心x2回りで揺動作動させることができる。
【0032】
上述したように、第一油圧シリンダ41及び第二油圧シリンダ42は、その伸縮方向が第一リンク30の長手方向に沿う状態で、いずれもが第一リンク30の近辺に集約して配置されている。
【0033】
〔センサ〕
この作業車は種々のセンサを備える。具体的には、図1及び図3に示されるように、4つの第二油圧シリンダ42の夫々に、ヘッド側圧力センサS1及びキャップ側圧力センサS2を備える。ヘッド側圧力センサS1は、第二油圧シリンダ42のヘッド側室の油圧を検出する。キャップ側圧力センサS2は、第二油圧シリンダ42のキャップ側室の油圧を検出する。各圧力センサS1,S2の検出結果はECU5に入力される。
【0034】
作業車は、4つの第一油圧シリンダ41及び4つの第二油圧シリンダ42の夫々について、伸縮操作量を検出可能なストロークセンサS3(図4参照)を備える。各油圧シリンダ41,42の伸縮操作量は、操作対象である第一リンク30及び第二リンク32の揺動位置に対応する検出値である。各ストロークセンサS3の検出結果はECU5に入力される。
さらに作業車には、操舵用油圧シリンダ40の伸縮操作量を検出可能なストロークセンサS5が備えられている。このストロークセンサS5によって駆動輪20の上下軸心y1回りでの操舵角度を検出することができる。ストロークセンサS5の検出結果はECU5に入力される。
【0035】
尚、各圧力センサS1,S2の取り付け位置は上記した位置に限られるものではない。
各圧力センサS1,S2は、対応するキャップ側室又はヘッド側室の油圧を検出(推定)可能であればよく、弁機構9から対応するキャップ側室又はヘッド側室の間の配管に設けられてもよい。
【0036】
これらの圧力センサS1、S2の検出結果に基づいて、車両本体1を支持するために必要な推力が算出され、その結果に基づいて、それぞれの第二油圧シリンダ42への作動油の供給が制御される。
【0037】
図1図4に示されるように、車両本体1には、例えば、三軸加速度センサ等からなる加速度センサS4が備えられている。加速度センサS4の検出結果に基づき、車両本体1の前後進移動方向、及び前後左右の傾きが検知される。その結果に基づいて車両本体1の姿勢が制御される。つまり、車両本体1の姿勢が目標の姿勢となるよう、それぞれの第一油圧シリンダ41及び第二油圧シリンダ42への作動油の供給が制御される。
【0038】
車両本体1を支持する各支持脚3に備えた車輪2、つまり、関節部31に設けた遊転輪21と、第二リンク32における関節部31に連結された側とは反対側の端部に設けた駆動輪20と、の夫々を軸支する軸受部には、車輪2に作用する走行抵抗を検出するための走行抵抗検出センサS6が設けられている。
この走行抵抗検出センサS6は、車両本体1の前進または後進作動中に、駆動輪20や遊転輪21が、段差の大きい階段の蹴上げ部分に当接して階段を乗り越えられない状態となったことを検出するものである。つまり、走行抵抗検出センサS6は、蹴上げ部分に当接した走行中の駆動輪20や遊転輪21の車軸を支持する軸受部に生じた歪みを走行抵抗として電気的に検出するものであり、歪みゲージ等によって構成されている。
【0039】
この走行抵抗検出センサS6を備えることにより、車両本体1の前後左右のいずれの支持脚3に備えた駆動輪20に対して、又は遊転輪21に対して、前方からの抵抗が作用したのか、後方からの抵抗が作用したのか、を検出することができる。なお、本実施形態では駆動輪20の軸受け部に設けた走行抵抗検出センサS6で走行抵抗を検出する場合について説明するが,走行抵抗の検出方法はこれに限らず、例えば、各支持却3に対応する油圧回路に設けた圧力センサ(走行抵抗検出センサ)によって検出してもよい。
この走行抵抗の検出結果がECU5の段差制御部53に伝えられ、段差制御部53から支持脚姿勢制御手段4に制御信号が出力される。支持脚姿勢制御手段4からの指令に基づいて、いずれかの支持脚3における第一油圧シリンダ41及び第二油圧シリンダ42が作動され、駆動輪20を浮上させるのか、下降させるのか、遊転輪21を浮上させるのか、下降させるのか、の各制御が行われることになる。
上記の走行抵抗検出センサS6やストロークセンサS3、その走行抵抗検出センサS6やストロークセンサS3の検出結果に基づく指令を受けて作動する弁機構9内の油圧制御弁等も支持脚姿勢制御手段4として機能するものである。
【0040】
上述したように、本実施形態の作業車は、油圧シリンダ41,42により支持脚3の姿勢を変更操作するよう構成され、かつ、走行駆動も油圧モータ6にて行うよう構成されているから、水分や細かな塵埃等による影響を受け難く、農作業に適している。
【0041】
〔ECU〕
図4に示されるように、ECU5は、状態取得部50、走行制御部51、姿勢制御部52、及び段差制御部53を備えている。ECU5は、機能部に対応するプログラムを記憶する不揮発性メモリ(EEPROMなど。図示省略)と、当該プログラムを実行するCPU(図示省略)と、を備えている。
【0042】
状態取得部50は、車両本体1の外部に備えた走行指令用の送信機からの信号を受信してECU5に入力するための走行指令入力部12から、車両本体1の走行方向に関する指令を取得する。
また、状態取得部50は、各センサの出力を監視し、当該出力に基づいて走行方向前側の支持機構Aの状態を取得する。例えば、状態取得部50は、ヘッド側圧力センサS1及びキャップ側圧力センサS2の出力に基づいて、車輪2及び支持機構Aが路面から受ける力(路面反力)を取得する。状態取得部50は、ストロークセンサS3の出力に基づいて、支持機構Aの姿勢(車両本体1に対する第一リンク30の角度、第一リンク30に対する第二リンク32の角度)を取得する。状態取得部50は、ストロークセンサS5の出力に基づいて、駆動輪20の操舵角度の情報を取得する。さらに、状態取得部50は、走行抵抗検出センサS6の出力に基づいて、駆動輪20又は遊転輪21に作用する走行抵抗の発生情報を取得する。
【0043】
状態取得部50で取得した検出情報は、走行制御部51、姿勢制御部52、段差制御部53に伝えられる。走行制御部51では、受信した走行方向に関する情報に基づいて車両本体1の走行方向や走行ルートが決定される。姿勢制御部52では、受信した走行姿勢に関する情報に基づいて、水平方向に沿う姿勢が指令されると、車両本体1を水平姿勢等の基準姿勢となるように制御する。段差制御部53では、受信した走行姿勢に関する情報に基づいて、車輪2が階段などの段差部に到達したことが検出されると、姿勢制御部52での姿勢制御に優先して、段差部を昇降するに適した状態となるように支持機構Aに作動指令を出力する。
【0044】
段差制御部53において車輪2が階段などの段差部に到達したことの検出は、駆動輪20又は遊転輪21に作用する走行抵抗の発生情報に基づいて行われる。つまり、油圧モータ6で駆動される駆動輪20が前進移動している状態で、例えば駆動輪20が段差部の蹴上げ部に当接し、段差を乗り越えることができない状態であると、走行抵抗検出センサS6が駆動輪20の前進方向移動に対する走行抵抗が発生したことを検出する。
この走行抵抗の発生情報に基づいて、蹴上げ部に当接している車輪を浮上する方向へ移動させながら段差を乗り越えるように、弁機構9の作動を制御し、支持脚姿勢制御手段4による階段昇降制御が行われる。
【0045】
上記の走行制御部51、姿勢制御部52、段差制御部53からの指令は弁機構9に伝達され、弁機構9に備えた油圧制御弁の作動で、油圧モータ6や支持脚姿勢制御手段4が操作される。つまり、油圧モータ6の駆動や操舵用油圧シリンダ40の作動による操向操作が行われる。また、第一駆動機構4Aの第一油圧シリンダ41、及び第二駆動機構4Bの第二油圧シリンダ42を伸縮操作させての車両本体1の姿勢制御や、階段昇降制御も行われる。
【0046】
〔階段昇降制御〕
段差制御部53からの指令による支持脚姿勢制御手段4の作動を、図5乃至図8の記載に基づいて説明する。
図5には、水平な地面を走行してきた車両本体1に備えた駆動輪20及び遊転輪21のうち、前後両端部の駆動輪20が地面に接して、中間の遊転輪21が地面よりも上方に浮上して走行している状態が実線で示されている。この状態が支持脚姿勢制御手段4による第一接地モードである。
【0047】
図5に示す実線では、水平な地面を走行してきた車両本体1の前端に位置する駆動輪20が、階段の蹴上げ部に当接した状態である。このとき階段の段差が駆動輪20の半径よりも大であると、このまま車両本体1が直進しようしても駆動輪20は段差を乗り越えることができない。
この状態では、車両本体1が前進状態で蹴上げ部に当接していることにより、駆動輪20の軸受け部に設けてある走行抵抗検出センサS6が、駆動輪20の前進に対して所定値以上の走行抵抗が働いていることを検出する。
【0048】
走行抵抗検出センサS6から駆動輪20の前進方向における走行抵抗が所定値以上であることの検出情報が状態取得部50を経て段差制御部53に伝えられると、同図に仮想線で示すように、進行方向の前部に位置する支持脚3が屈折する。つまり、車両本体1の前部及び後部に支持されている支持脚3に備えた車輪2のうち、進行方向での後方に位置する車輪2(車両本体1の前部の支持脚3部分では遊転輪21、車両本体1の後部の支持脚3部分では駆動輪20)が接地して前方に位置する車輪2(車両本体1の前部の支持脚3部分では駆動輪20、車両本体1の後部の支持脚3部分では遊転輪21)が浮上する第二接地モードとなる。
【0049】
図6に示すように、第二接地モードのままで車両本体1が前進すると、同図に実線で示すように、車両本体1の前端に位置する駆動輪20が、一段上の階段の蹴上げ部に当接した状態となる。
この状態においても、車両本体1が前進状態で蹴上げ部に当接しているので、前端の駆動輪20の軸受け部に設けてある走行抵抗検出センサS6が、駆動輪20の前進に対して所定以上の走行抵抗が働いていることを検出する。この検出情報が状態取得部50を経て段差制御部53に伝えられると、第二接地モードのままで、同図に仮想線で示すように駆動輪20の前進方向における走行抵抗が所定値よりも小さくなる位置にまで駆動輪20を浮上させる。なお、上述したように、走行抵抗の検出方法は、駆動輪20の軸受け部に設けた走行抵抗検出センサS6で検出する方法に限らず、他の方法で検出してもよい。
このようにして、駆動輪20が二段目の階段の踏み面に達すると、車両本体1をさらに前進させることができる。このようにして、順次、車両本体1の前部に支持された支持脚3に備えた駆動輪20の高さを変更しながら階段を昇ることができる。
【0050】
図7に示す実線は、車両本体1の前部に支持された支持脚3に備えた車輪2のうち、遊転輪21が階段の蹴上げ部に当接した状態を示している。
この状態では、車両本体1の前部に支持された支持脚3に備えた車輪2のうちの遊転輪21が前進状態で蹴上げ部に当接しているので、遊転輪21の軸受け部に設けてある走行抵抗検出センサS6が、遊転輪21の前進に対して所定以上の走行抵抗が働いていることを検出する。この検出情報が状態取得部50を経て段差制御部53に伝えられると、同図に仮想線で示すように、車両本体1の前部及び後部に支持されている支持脚3に備えた車輪2のうち、進行方向での前方に位置する車輪2(車両本体1の前部の支持脚3部分では駆動輪20)が接地して後方に位置する車輪2(車両本体1の前部の支持脚3部分では遊転輪21)が浮上する第三接地モードとなる。
【0051】
この図7に示すように車両本体1が階段を昇りつつある過程では、車両本体1の前部及び後部に支持されている支持脚3に備えた車輪2のうち、進行方向での前方に位置する車輪2において、車両本体1の後部の支持脚3部分の遊転輪21は浮上し、車両本体1の後部の支持脚3部分の駆動輪20は接地している。図示はしないが、この第三接地モードにおいて、車両本体1が階段を下りつつある過程では、車両本体1の後部の支持脚3部分で遊転輪21が接地し、車両本体1の後部の支持脚3部分で駆動輪20が浮上する状態となる。
【0052】
図8に示す実線は、車両本体1の後部に支持された支持脚3に備えた車輪2のうち、駆動輪20が階段の蹴上げ部に当接した状態を示している。
この状態では、車両本体1の後部に支持された支持脚3に備えた車輪2のうちの駆動輪20が前進状態で蹴上げ部に当接しているので、その駆動輪20の軸受け部に設けてある走行抵抗検出センサS6が、駆動輪20の前進に対して所定以上の走行抵抗が働いていることを検出する。この検出情報が状態取得部50を経て段差制御部53に伝えられると、同図に仮想線で示すように、車両本体1の前部及び後部に支持されている支持脚3に備えた車輪2のうち、進行方向での前方に位置する車輪2(車両本体1の後部の支持脚3部分では遊転輪21)が接地して後方に位置する車輪2(車両本体1の後部の支持脚3部分では駆動輪20)が浮上する第三接地モードとなる。
【0053】
上述したように、前進状態で蹴上げ部に当接した車輪2に作用する走行抵抗が所定値以上であることが走行抵抗検出センサS6で検出されると、その検出された位置の車輪2に対する走行抵抗が解消されるように制御モードが切り換えられる。つまり、蹴上げ部に対向している位置の車輪2を浮上させ、その浮上させるにあたって反力受けとなる位置の車輪2は接地させるように作動させて、階段の昇降制御が行われる。
【0054】
〔別実施形態〕
以下に、別実施形態を示す。下記の各別実施形態は、矛盾が生じない限り、複数組み合わせて用いてもよい。なお、本発明の範囲は、これら実施形態の内容に限定されるものではない。
【0055】
(1)上述した実施形態において、支持脚3として、第一リンク30、関節部31、及び第二リンク32を備えた構造のものを例示したが、必ずしも、この構造に限られるものではない。
例えば、支持脚3として、3つ以上のリンクを備える機構であってもよい。この場合、支持脚姿勢制御手段4においても、リンク数に対応した駆動機構や制御形態を備えるようにするとよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0056】
(2)上述した実施形態においては、関節部31に遊転輪21を設け、第二リンク32の端部に駆動輪20を設けた構造のものを例示したが、必ずしも、この構造に限られるものではない。
例えば、関節部31と第二リンク32の端部との両方に駆動輪20を設けた構造のものであってもよい。
また、駆動輪20の駆動源として油圧モータ6を用いたものに限らず、電動モータを用いたものや、エンジン等により駆動されるものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0057】
(3)上述した実施形態においては、支持脚姿勢制御手段4の第一駆動機構4A及び第二駆動機構4Bとして、第一油圧シリンダ41、第二油圧シリンダ42を用いた構造のものを例示したが、必ずしも、この構造に限られるものではない。
例えば、第一駆動機構4Aや第二駆動機構4Bとして、電動シリンダ等の電動で駆動されるアクチュエータを用いたり、軽量であれば空気圧シリンダを用いたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0058】
(4)上述した実施形態では、段差制御部53による制御モードの切り換えのための情報を得る手段として、車輪2の前進方向移動に対する走行抵抗が発生したことを検出する歪みゲージなどによる走行抵抗検出センサS6を用いて、その走行抵抗検出センサS6からの情報が入力されるようにしたものを例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。
例えば、車輪2が段差部に近接したことを検出する接触センサや、超音波センサ、あるいはミリ波レーダー等であっても良く、カメラで検出した映像からAIが判断するようにしたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0059】
(5)上述した実施形態では、車輪2の前進方向移動に対する走行抵抗が発生したことを検出する走行抵抗検出センサS6を用いて、その走行抵抗の発生情報に基づいて、段差制御部53が接地モードを自動切り換えするように構成された構造のものを例示したが、必ずしもこの構造に限られるものではない。
例えば、走行抵抗検出センサS6を用いるのではなく、車両本体1に走行指令を行う送信機に、走行抵抗検出センサS6に代えて、支持脚姿勢制御手段4の第一駆動機構4A及び第二駆動機構4Bの動作をコントロールするための昇降指令を出力するためのモード切換操作部(図示せず)を設け、走行抵抗が発生したか否かに関わらず、人為操作によって任意のタイミングで第一駆動機構4A及び第二駆動機構4Bを作動させて、階段の乗り越えを行えるようにしてもよい。
この場合、送信機から車両本体1側の段差制御部53への指令を無線によって送信するものに限らず、車両本体1側の受信部と送信機側のモード切換操作部とを有線で接続したものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、凹凸の多い路面を走行するのに適した各種の作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 :車両本体
2 :車輪
3 :支持脚
4 :支持脚姿勢制御手段
4A :第一駆動機構
4B :第二駆動機構
20 :駆動輪
21 :遊転輪
30 :第一リンク
31 :関節部
32 :第二リンク
41 :第一油圧シリンダ
42 :第二油圧シリンダ
x1 :横軸心
S6 :走行抵抗検出センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8