(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】CD66cに特異的に結合する抗体およびその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240308BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20240308BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240308BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240308BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240308BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240308BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240308BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240308BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240308BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240308BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240308BHJP
C12N 5/20 20060101ALN20240308BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/30
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/04
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021118114
(22)【出願日】2021-07-16
(62)【分割の表示】P 2019547056の分割
【原出願日】2017-11-14
【審査請求日】2021-08-13
(31)【優先権主張番号】10-2016-0151359
(32)【優先日】2016-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCLRF KCLRF-BP-00230
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522387607
【氏名又は名称】クンホ、エイチティー、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Kumho HT, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ユン、サンスン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、クォンピョ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソスル
(72)【発明者】
【氏名】ジ、ギルヨン
(72)【発明者】
【氏名】リム、ヨンフン
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0212095(US,A1)
【文献】特表2015-518826(JP,A)
【文献】特開2009-106280(JP,A)
【文献】Acta Biochim Biophys Sin (2014) Vol.46, pp.283-290
【文献】Cancer Res (2005) Vol.65, No.19, pp.8809-8817
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または、
(ii)配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗-CD66c抗体またはその抗原結合断片
。
【請求項2】
前記抗原結合断片は、前記抗-CD66c抗体のscFv、(scFv)2、Fab、Fab’またはF(ab’)2である、請求項1に記載の抗-CD66c抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
請求項
1に記載の抗-CD66c抗体またはその抗原結合断片を含む、癌および癌転移から選択された疾病の予防または治療のための薬学組成物。
【請求項4】
前記癌は、CD66c陽性の固形癌である、請求項
3に記載の薬学組成物。
【請求項5】
前記固形癌は、CD66c陽性の肺癌、大腸癌、胃癌、肝癌、乳癌、または前立腺癌である、請求項
4に記載の薬学組成物。
【請求項6】
PD-1またはPD-L1結合抑制剤をさらに含む、請求項
3に記載の薬学組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする、核酸。
【請求項8】
請求項
7に記載の核酸を含む、組換えベクター。
【請求項9】
請求項
8に記載の組換えベクターを含む、組換え細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗-CD66c抗体およびその癌治療用途に関するものであって、具体的にCD66cを特異的に認識する抗体を用いてT-細胞活性化、または体液性免疫反応を誘導することができ、CD66cを認識して結合する抗体、前記抗体または抗原結合断片をコーディングする核酸分子、前記核酸分子を含むベクターおよび宿主細胞および前記抗体または抗原結合断片のCD66c関連疾病、例えば固形癌の軽減、予防、治療または診断用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CD66cはCEACAM6(Carcinoembryonic antigen-related cell adhesion molecule 6)またはNCA(non-specific cross-reacting glycoprotein antigen)-90とも知られており、肺癌、すい臓癌、乳癌、直腸癌、肝癌などの患者で血液内のCD66cの量が高く示されると知られている。前記CD66cは細胞接着(cell adhesion)に関連した重要な蛋白質であって、好中性白血球(neutrophils)の場合、サイトカイン(cytokine)によって活性化された内皮細胞(endothelial cell)との接着に関与すると知られている。
【0003】
また正常細胞の場合、細胞接着が行われない場合に細胞自滅が行われ、このような作用をアノイキス(anoikis)という。しかし、腫瘍細胞の場合、このようなアノイキスに対して抵抗力を有しており、これによって癌発生と癌転移が促進される。前記CD66cはアノイキスを抑制するという報告があり、CD66cの発現を調節することによって癌細胞の悪性表現型(malignant phenotype)が変わるという報告もある。
【0004】
またCD66c遺伝子を低分子干渉RNA(small interfering RNA)を用いてサイレンシング(silencing)させて蛋白質の発現を抑制した場合、アノイキスが増加してin vivo上で癌転移が抑制されるという実験結果も報告されている。結局、CD66cの機能を抑制することが癌転移を抑制するのに重要な作用を果たすことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一例は、CD66cに結合する抗体およびその抗原結合断片に関するものである。
【0006】
本発明の一例は、前記抗体または抗原結合断片をコーディングする核酸分子、前記核酸分子を含むベクターおよび宿主細胞に関するものである。
【0007】
本発明の一例は、前記抗体、核酸分子、ベクター、および/または宿主細胞を含むCD66c関連疾患の探知または診断方法、または診断キットに関するものである。
【0008】
本発明の一例は、前記抗体、核酸分子、ベクター、および/または宿主細胞を含むCD66c関連疾患の予防、治療、または軽減用組成物または用途に関するものである。
【0009】
本発明の一例は、前記抗体、核酸分子、ベクター、および/または宿主細胞を含む組成物をCD66c関連疾患を有する対象に投与する段階を含む、CD66c関連疾患の予防、治療、または軽減方法に関するものである。
【0010】
本発明の一例は、前記抗体、核酸分子、ベクター、および/または宿主細胞を含む癌および癌転移関連疾患の予防または治療用組成物、または方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、CD66cを認識して結合する抗体、前記抗体または抗原結合断片をコーディングする核酸分子、前記核酸分子を含むベクターおよび宿主細胞および前記抗体またはその抗原結合断片のCD66c陽性の固形癌の軽減、予防、治療または診断用途に関するものである。
【0012】
CD66c(Cluster of Differentiation 66c)はCEACAM 6(carcinoembryonic antigen-related cell adhesion molecule 6)またはNCA(non-specific cross-reacting glycoprotein antigen)-90とも知られている蛋白質であって、細胞接着(cell adhesion)に関連した重要な蛋白質と知られており、これに限定されないが、好ましくは配列番号1のアミノ酸配列(Genebank Protein No.AAH05008)で表示できる。
【0013】
一例は、CD66cを特異的に認知する抗CD66c抗体を提供する。本発明による抗-CD66c抗体は、体液性および細胞-媒介免疫反応を誘導する。本発明による抗CD66c抗体は、CD66c(Cluster of Differentiation 66c)のエピトープ(epitope)を特異的に認識して、CD66c抗原を効果的に検出することができる。
【0014】
本明細書で“抗体”とは、免疫系内で抗原の刺激によって作られる物質を意味するものであって、その種類は特に制限されない。前記抗体は、非自然的に生成されたもの、例えば、組換えまたは合成的に生成されたものであり得る。前記抗体は、動物抗体(例えば、マウス抗体など)、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体であり得る。前記抗体は、単クローン抗体または多クローン抗体であり得る。
【0015】
また本明細書で抗体は、特別な言及がない限り、抗原結合能を保有した抗体の抗原結合断片も含むと理解できる。本明細書で“相補性決定領域(Complementarity-determining regions、CDR)”とは、抗体の可変部位のうちの抗原との結合特異性を付与する部位を意味する。前述の抗体の抗原結合断片は、前記相補性決定領域を一つ以上含む抗体断片であり得る。
【0016】
本発明の一例は、CD66cを特異的に認識またはCD66cに特異的に結合する抗CD66c抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0017】
本発明による抗-CD66cはCD66cを特異的に認識および/または結合し、抗体はマウス抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体を含む。本発明でキメラ抗体は、可変領域配列が一つの種に由来し、不変領域配列が他の種に由来した抗体、例えば、可変領域配列がマウス抗体に由来し、不変領域配列がヒト抗体に由来した抗体を意味する。本発明でヒト化抗体とはヒトで免疫性が少ないながら非ヒト抗体の活性を保有する抗体を意味する。これは、例えば、非ヒトCDR領域を維持させ、抗体の残り部分をヒト対応部(counterparts)で置換することによって製造できる。例えば、下記文献が参照される:Morrison et al、Proc.Natl.Acad.ScL USA、81:6851-6855(1984);Morrison and Oi、Adv.Immunol.、44:65-92(1988);Verhoeyen et al、Science、239:1534-1536(1988);Padlan、Molec.Immun.、28:489-498(1991);Padlan、Molec.Immun.、31(3):169-217(1994)。
【0018】
本発明で抗体切片は抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含んでCD66cエピトープを選択的に認識することができるものであればこれに制限がないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、dsFvおよびCDRからなる群より選択されたものであり得る。特に、前記scFvは前記重鎖可変部位(VH)および軽鎖可変部位(VL)をリンカーポリペプチドで連結して単鎖(single chain)に作った抗体切片である。
【0019】
本発明によるマウス抗体またはキメラ抗体の一例は、配列番号1~3のアミノ酸配列を含むVH領域のCDRを決定するアミノ酸配列および配列番号4~6のアミノ酸配列を含むVL領域のCDRを決定するアミノ酸配列からなる群より選択された1種以上のアミノ酸配列を含む抗体またはその抗原結合断片であり得る。前記マウス抗体またはキメラ抗体の一例によるCDR配列と可変領域配列を下記表1に整理する。
【0020】
具体的に、本発明の抗体の一例は、VH領域のCDRを決定するアミノ酸配列として配列番号1(CDR1)、配列番号2(CDR2)および配列番号3(CDR3)および/またはVL領域のCDRを決定するアミノ酸配列である配列番号4(CDR1)、配列番号5(CDR2)および配列番号6(CDR3)のアミノ酸配列を含む。
【0021】
前記マウス抗体またはキメラ抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含むVH領域および配列番号8のアミノ酸配列を含むVL領域を含むものであってもよい。
【0022】
本発明によるマウス抗体またはキメラ抗体を有効成分として含む癌および癌転移から選択された疾病の予防または治療用薬学組成物、キットまたは治療方法に関するものである。本発明によるマウス抗体またはキメラ抗体、例えば寄託番号KCLRF-BP-00230のハイブリドーマから生産された抗-CD66c抗体のCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含む抗-CD66c抗体またはその抗原結合断片を含む癌および癌転移から選択された疾病の予防または治療用薬学組成物に関するものである。前記ハイブリドーマ細胞は韓国細胞株銀行(Korean Cell Line Research Foundation、KCLRF)に‘8F5’として2010年2月22日付で寄託番号KCLRF-BP-00230で寄託されたものであり、KR10-1214177登録公報に詳しく記載されている。
【0023】
前記癌はCD66c陽性の固形癌であってもよく、例えば、CD66c陽性の肺癌、大腸癌、胃癌、肝癌、乳癌、または前立腺癌であってもよく、好ましくは大腸癌、胃癌または肝癌であってもよい。前記癌および癌転移の予防、抑制、または治療用途は例えば、固形癌または固形癌細胞の大きさを減少させるか腫瘍退化を誘導または促進することができる。
【0024】
本発明は前記マウス抗体またはキメラ抗体を用いて抗-CD66c抗体8F5のアミノ酸配列とヒト抗体配列をフレームワーク配列に基づいて製造する。ヒト化組換え抗体候補の中から発現程度と凝集(aggregation)有無、細胞結合程度を基準にして、ヒト化候補抗体の中から発現が正常に行われ、蛋白質自体の不安定性によって形成される凝集(aggregation)が少なく、またターゲット抗原陽性の細胞に結合する能力がキメラ抗体と類似したヒト化抗体候補を選別する。具体的に細胞結合様相はキメラ抗体と類似した水準であって抗体陽性率(% gated)と蛍光平均値(mean)をかけ、これをキメラ抗体と相対比較して±20%範囲内に含まれる候補抗体を選別する(実施例2)。したがって、本発明で選定された抗体群は通常ヒト化抗体生成時、ヒト化抗体のフレームワーク領域(framework region)にマウス抗体CDR部位配列を挿入した時に元の蛋白質構造の変更で抗体結合力が急激に低下するという結果を考慮した時、非常に優れたヒト化抗体を選別したと言える。
【0025】
好ましくは、キメラ抗体と比較して細胞結合力を基準にして高い結合力を示す5種類のヒト化組換え抗体を選択し、これらをELISA方法でCD66c抗原および類似CD66抗原に対する結合力分析を実施する。
【0026】
また、本願発明によるヒト化抗体はキメラ抗体に比べて優れた安定性を示し、例えばANS反応性変異%が200%未満で安定した抗体であり、200%未満は変化が非常に微小であると見なされ、それ以上は有意義な蛋白質構造変更が行われANS反応性が観察されたと解釈できる。したがって、本発明によるヒト化抗体はキメラ抗体と比較して類似した抗原結合力および細胞結合力を有し、抗体蛋白質自体の物理的安定性が増加し、このような事実は治療用抗体のドラッガビリティ(druggability)の面で非常に優れた特定と言える。
【0027】
ANS試薬に対する抗体の蛍光値変異率は、低温条件(例、4℃)で測定した蛍光値と、高温条件(例、62℃)で測定した蛍光値の差(difference)を、低温条件で測定した蛍光値で割った値を意味する。
【0028】
[数式]
蛍光値変異率=(高温条件で測定した蛍光値-低温条件で測定した蛍光値)/(低温条件で測定した蛍光値)
【0029】
具体的な抗体蛍光値変異率を得る方法として、冷蔵条件(4℃)および62℃温度でそれぞれ4時間放置した後にANS試薬反応性を蛍光リーダーで分析して蛍光値で表示し、前記数式を用いて蛍光値変異率を測定することができる。
【0030】
本発明によるヒト化抗体の一例は配列番号9~13のアミノ酸配列を含む重鎖または軽鎖可変領域のCDRを決定するアミノ酸配列からなる群より選択された1種以上のアミノ酸配列を含むことができ、追加的にマウス抗体またはキメラ抗体の一例は配列番号1~3のアミノ酸配列を含むVH領域のCDRを決定するアミノ酸配列および配列番号4~6のアミノ酸配列を含むVL領域のCDRを決定するアミノ酸配列からなる群より選択された1種以上のアミノ酸配列を含む抗体であり得る。
【0031】
具体的に、ヒト化抗体の一例は、配列番号1または9のアミノ酸配列を含むVH領域のCDR1を決定するアミノ酸配列、配列番号2または10のアミノ酸配列を含むVH領域のCDR2を決定するアミノ酸配列、配列番号3のアミノ酸配列を含むVH領域のCDR3を決定するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域であり得る。
【0032】
また、ヒト化抗体の一例は、配列番号4、11または12のアミノ酸配列を含むVL領域のCDR1を決定するアミノ酸配列、配列番号5のアミノ酸配列を含むVL領域のCDR2を決定するアミノ酸配列、配列番号6または配列番号13のアミノ酸配列を含むVL領域のCDR3を決定するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域であり得る。
【0033】
ヒト化抗体の一例は配列番号7および配列番号14~18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域からなる群より選択された重鎖可変領域と、配列番号8および配列番号19~21のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域からなる群より選択された軽鎖可変領域を含むことができ、但し、配列番号7および配列番号8を含む抗体は除外される。
【0034】
前記ヒト化抗体の一例によるCDR配列と可変領域配列を下記表1に整理する。
【表1】
【0035】
本発明によるヒト化抗体の一例のフレームワーク配列を下記表3および4に示し、前記抗体は重鎖可変領域のフレームワーク1~4、および軽鎖可変領域のフレームワーク1~4からなる群より選択された1種以上のフレームワークを含む抗体であり得る。
【0036】
具体的に、重鎖可変領域でフレームワーク1のアミノ酸配列は配列番号23~27を含むことができ、フレームワーク2のアミノ酸配列は配列番号32~37を含むことができ、フレームワーク3のアミノ酸配列は配列番号43~47を含むことができ、およびフレームワーク4のアミノ酸配列は配列番号53~57を含むことができる。
【0037】
軽鎖可変領域でフレームワーク1のアミノ酸配列は配列番号29~31を含むことができ、フレームワーク2のアミノ酸配列は配列番号39~41を含むことができ、フレームワーク3のアミノ酸配列は配列番号49~51を含むことができ、およびフレームワーク4のアミノ酸配列は配列番号59~61を含むことができる。前記ヒト化抗体の一例によるフレームワーク配列を下記表に示す。
【0038】
【0039】
【0040】
前記ヒト化抗体は、配列番号14~18のアミノ酸配列からなる群より選択されるVH領域および配列番号19~21のアミノ酸配列からなる群より選択されたVL領域を含むものであり得る。具体的に、前記ヒト化抗体の例は、配列番号15のアミノ酸配列を含むVH領域および配列番号21のアミノ酸配列からなる群より選択されたVL領域を含む抗体(Vk8+VH6)、配列番号18のアミノ酸配列を含むVH領域および配列番号21のアミノ酸配列からなる群より選択されたVL領域を含む抗体(Vk8+VH11)、配列番号16のアミノ酸配列を含むVH領域および配列番号19のアミノ酸配列からなる群より選択されたVL領域を含む抗体(Vk5+VH7)、配列番号17のアミノ酸配列を含むVH領域および配列番号20のアミノ酸配列からなる群より選択されたVL領域を含む抗体(Vk7+VH6)、配列番号15のアミノ酸配列を含むVH領域および配列番号20のアミノ酸配列からなる群より選択されたVL領域を含む抗体(Vk7+VH10)、配列番号16のアミノ酸配列を含むVH領域および配列番号20のアミノ酸配列からなる群より選択されたVL領域を含む(Vk7+VH7)、配列番号14のアミノ酸配列を含むVH領域および配列番号20のアミノ酸配列からなる群より選択されたVL領域を含む抗体(Vk7+VH5)、および配列番号16のアミノ酸配列を含むVH領域および配列番号21のアミノ酸配列からなる群より選択されたVL領域を含む抗体(Vk8+VH7)であり得る。前記抗体の具体的な組み合わせおよびアミノ酸配列は下記表6に示す。前記抗体の好ましい一例は、配列番号15のアミノ酸配列を含むVH領域および配列番号21のアミノ酸配列を含むVL領域を含む抗体(Vk8+VH6)、配列番号18のアミノ酸配列を含むVH領域および配列番号21のアミノ酸配列からなる群より選択されたVL領域を含む抗体(Vk8+VH11)、配列番号16のアミノ酸配列を含むVH領域および配列番号19のアミノ酸配列からなる群より選択されたVL領域を含む抗体(Vk5+VH7)、配列番号17のアミノ酸配列を含むVH領域および配列番号20のアミノ酸配列からなる群より選択されたVL領域を含む抗体(Vk7+VH6)、配列番号15のアミノ酸配列を含むVH領域および配列番号20のアミノ酸配列からなる群より選択されたVL領域を含む抗体(Vk7+VH10)であり得る。
【0041】
前記ヒト化抗体はマウス抗体やキメラ抗体とは異なり、人体投与時、免疫原性の原因を大幅に減らす差別性以外にも安定性の面でキメラ8F5抗体より10倍以上の高い安定性を示した。具体的には、高い温度、例えば温度62℃でANS結合による蛍光値変異率が200%未満で、安定性が高い。
【0042】
具体的な苛酷条件で抗体物性の変異によってキメラ8F5抗体は1,406%のANS反応性変化を示した反面、ヒト化抗体は114%、133%程度の相対的に微小な変化を示し、非常に蛋白質の面で安定化されたことが分かる。
【0043】
前記キメラ8F5およびヒト化抗体はT細胞の活性化を増加させ、これはT細胞活性因子による活性化増大および互いに異なるヒトの同種樹状細胞とT細胞混合によるT細胞活性条件でも活性増大を示す場合が挙げられる。このようなT細胞活性化誘導は、癌細胞との共同培養時に癌細胞の死滅を誘導し、多様な癌細胞との共同培養条件でT細胞活性化誘導する場合が挙げられる。
【0044】
本発明による抗体またはその断片は、腫瘍退縮(tumorregression)活性および腫瘍細胞株に対して直接的な抑制効果を有する。本明細書で腫瘍の退縮は腫瘍大きさの減少および/または腫瘍細胞の成長阻害、中断または減少などを誘導または促進することを含む。腫瘍の大きさ減少は例えば、本発明の抗体またはその断片を含む組成物を処理する前を100%を基準にして、前記抗体またはその断片を含む組成物を投与した場合に得られた腫瘍の大きさが97%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下の大きさを有する場合などが挙げられる。
【0045】
本発明による抗体は、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC、Antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)と補体系依存(CDC、omplement-dependent cytotoxicity)を有する。
【0046】
用語、“CDR(complementarity determining region)”は免疫グロブリン重鎖および軽鎖の高可変領域(hypervariable region)のアミノ酸配列を意味する。重鎖および軽鎖はそれぞれ3個のCDRを含むことができる(CDRH1、CDRH2、CDRH3およびCDRL1、CDRL2、CDRL3)。前記CDRは抗体が抗原またはエピトープに結合することにおいて主要な接触残基を提供することができる。一方、本明細書において、用語、“特異的に結合”または“特異的に認識”は当業者に通常公知されている意味と同一なものであって、抗原および抗体が特異的に相互作用して免疫学的反応をすることを意味する。
【0047】
用語、“抗原結合断片”は免疫グロブリン全体構造に対するその断片であって、抗原が結合できる部分を含むポリペプチドの一部を意味する。例えば、scFv、(scFv)2、scFv-Fc、Fab、Fab’またはF(ab’)2であってもよいが、これに限定されない。
【0048】
CD66C抗体または抗体切片は、多様な標識基(labeling agent)、毒性物質または抗腫瘍剤と結合することができる。当該技術分野において周知の方法によって本発明の抗体は前記標識基、毒素、または抗腫瘍剤と結合できることは当業者に明らかである。このような結合は、抗体または抗原の発現後、付着部位に化学的に行うことも可能であり、或いはDNAレベルで本発明の抗体または抗原内に結合産物を操作して入れてもよい。次いで、本明細書において以下に記載する適切な宿主系においてDNAを発現させ、そして発現させた蛋白質を回収して、必要によって再生させる。結合は当該技術水準において知られたリンカーを通じて達成してもよい。特にこの技術と共に酸性条件或いは還元条件下でまたは特定プロテアーゼに対する露出時に毒素または抗腫瘍剤を放出する、多様なリンカーを用いることができる。特定様態においては標識基、毒素、または抗腫瘍剤を多様な長さのスペーサーアームによって結合させて潜在的な立体障害を減少させることが好ましい場合もある。
【0049】
前記標識基としては、放射線同位元素、ハプテン、蛍光物質、クロモゲン(chromogen)および染色物質からなる群より選択された物質で標識でき、具体的に、フラグ(FLAG)、GFP、YFP、RFP、dトマト(dTomato)、チェリー(cherry)、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7、DNP、AMCA、ビオチン、ジゴキシゲニン、タムラ(Tamra)、テキサスレッド、ローダミン、アレクサフルオロ(Alexafluors)、FITC、TRITCより選択される。或いは標識基は例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、または131Iなどの放射性同位体であってもよい。適切な標識基の新たな例は、酵素基(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、西洋ワサビガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリフォスファターゼ)、化学発光基、ビオチニル基、または第2のレポーターによって認識される、予め決定されたポリペプチドエピトープである。
【0050】
前記毒性物質としては、細胞または生物に対して毒性を有する任意の化合物に関する。したがって、毒素は例えば、放射線同位元素、小分子、ペプチド、または蛋白質であってもよい。抗体或いは抗体切片は、毒性物質と結合されて融合蛋白(fusion protein)を形成することができる。毒素蛋白質としてはリシン(ricin)、サポリン(saporin)、ゲロニン(gelonin)、モモルジン(momordin)、ジフテリア毒素、または緑膿菌毒素(pseudomonas toxin)であってもよく、放射線同位元素としては131I、188Rhと90Yがあるが、これに限定されるのではない。
【0051】
前記“抗腫瘍剤”との用語は、本発明によれば、組織の異常増殖を停止させるかまたは遅延させるか、いずれか一つが可能な薬剤を特定する。したがって、抗腫瘍剤は特に癌を治療する時に有用である。抗腫瘍剤は、血管新生阻害剤、DNA挿入剤或いはDNA架橋剤、DNA合成阻害剤、DNA-RNA転写制御因子、酵素阻害剤、遺伝子制御因子、微小管阻害剤、またはその他の抗腫瘍剤であり得る。
【0052】
本発明は、本発明による抗体をコードする核酸分子に関する。本発明の抗体をコードする、本発明の核酸分子は例えばDNA、cDNA、RNAまたは合成によって産生されるDNA或いはRNA、或いはこれらの核酸分子のいずれか一つを単独でまたは組み合わせて含んだ組換え技術によって産生されるキメラ核酸分子であってもよい。核酸分子はまた、遺伝子全体或いはその相当部分、またはその断片および誘導体に対応するゲノムDNAであってもよい。抗体のアミノ酸配列中の一つのアミノ酸が置換されているこれら配列をコードする核酸を含むのに必要な単一または複数のヌクレオチド置換、欠失または付加をヌクレオチド配列が含有してもよい。本発明の特に好ましい実施形態においては、核酸分子はcDNA分子である。
【0053】
本発明の一実施形態はまた、核酸分子が発現可能な形態で含まれたベクターにも関する。本発明のベクターは例えば、ファージベクター、プラスミドベクター、ウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターであってもよい。レトロウイルスベクターは複製可能であってもよく、或いは複製欠損であってもよい。後者の場合、ウイルス増殖は一般に補完宿主/細胞(complementing host/cells)で発生する。
【0054】
前記に引用する核酸分子を他のポリヌクレオチドという翻訳融合が発生するように、ベクター内に挿入することができる。一般にベクターは1以上の複製起点(ori)およびクローニングまたは発現に関する遺伝系(inheritance systems for cloning or expression)、宿主の選択のための1以上のマーカ、例えば抗生物質耐性および1以上の発現カセットを含むことができる。適切な複製起点(ori)には例えばCol E1、SV40ウイルスおよびM13の複製起点が含まれる。
【0055】
本明細書において前述の核酸分子は、宿主への直接導入、或いはリポソーム、ファージベクターまたはウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター)を通じた導入のために設計されてもよい。また、バキュロウイルスシステム、またはワクシニアウイルス或いはセムリキ森林熱ウイルスに基づいたシステムを本発明の核酸分子のための真核生物発現システムとして用いることができる。
【0056】
本発明の他の実施形態は、本発明のベクターを含む非ヒト宿主に関する。前記宿主は原核細胞または真核細胞であってもよい。宿主細胞中に存在する本発明のポリヌクレオチドまたはベクターは宿主細胞のゲノム内に結合されていてもよく、或いは染色体外に維持されていてもよく、いずれであってもよい。
【0057】
本発明はまた、本発明の抗体を生産するのに用いられ得る、本発明の1以上の核酸分子を含む遺伝子移植非ヒト動物にも関する。ヤギ、牛、馬、ラット、マウス、ウサギ、ハムスターまたはその他の哺乳動物の組織、または牛乳、血液或いは小便などの体液において抗体を生産して、これらから回収することも可能である。
【0058】
また、本発明は、CD66Cを選択的に認知する物質を生産する方法と、抗体を生産する生産株を提供する。CD66Cの抗原決定部位に対する抗体または抗体切片は、CD66C蛋白質、CD66Cの抗原決定部位、CD66Cの抗原決定部位を含むCD66C蛋白質一部、またはCD66Cの抗原決定部位を発現する細胞を抗原として用いて通常の方法で製造可能である。一例として、CD66C抗体製造方法は、(a)CD66C蛋白質、CD66Cの抗原決定部位、CD66Cの抗原決定部位を含むCD66C蛋白質一部、またはCD66Cの抗原決定部位を発現する細胞を動物に注入して免疫化させる段階、(b)CD66Cに特異的な抗体を生産する脾臓細胞を収得する段階および(c)前記脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合させて、CD66Cに対する抗体を生産するハイブリドーマ細胞を選別する段階を含むCD66C抗体を生産する生産株製造方法を通じて実施可能である。前記生産株は生体外(in vitro)で培養するか、生体内に注入して抗体を分離することができる。一例として、マウスの腹腔内に挿入して腹水から分離、精製する。単クローン抗体の分離および精製は培養上澄み液または腹水をイオン交換クロマトグラフィー(DEAEまたはDE52など)、抗免疫グロブリンカラムまたはプロテインAカラムなどのアフィニティークロマトグラフィーを用いて実施することができる。
【0059】
本発明による抗体が結合する抗原決定部位は、固形癌特異的な発現を示す。したがって、抗-CD66C抗体は腫瘍細胞の検出に有用に使用できるだけでなく、毒性物質を含ませて腫瘍細胞のみ特異的に細胞殺傷(cytotoxicity)させることができる。
【0060】
他の例は、本発明による抗体のCD66cを含む固形癌の検出のためのマーカとしての用途を提供する。抗原決定部位と相互作用する物質を含む固形癌の癌幹細胞検出用組成物を提供する。前記相互作用する物質は、CD66Cに位置する抗原決定部位と相互作用可能な全ての物質、例えば、化学物質(small molecular chemical)、抗体、抗体の抗原結合断片、アプタマーなどからなる群より選択された1種以上であり得る。
【0061】
他の実施形態において、本発明は、本発明の抗体、本発明の核酸分子、本発明のベクターまたは本発明の宿主を含む診断組成物に関する。本明細書において用いられる組成物とは、本発明の少なくとも一つの抗体、核酸分子、ベクターおよび/または宿主を含む組成物を定義するものである。
【0062】
本発明の診断組成物は、多様な細胞、組織または他の適切な試料における、CD66Cの好ましくない発現または過剰発現の検出として、試料を本発明の抗体と接触させることおよび試料においてCD66Cの存在を検出することを含む検出に有用である。したがって、本発明の診断組成物を以下で定義する発病または疾患状態を評価するために用いてもよい。特に、CD66Cを発現する、癌細胞などの悪性細胞を本発明の抗体、抗体断片または誘導体でターゲッティングしてもよい。本発明の抗体が結合した細胞は、したがって補体系などの免疫系機能によって、または細胞媒介性細胞毒性によって攻撃され、したがってCD66Cの好ましくない発現または過剰発現を示す細胞の数が減少するか、またはこのような細胞が根絶される。
【0063】
本発明の一様態においては、本発明の抗体、抗体断片または誘導体を標識基に結合させる。このような抗体は、診断アプリケーションに特に適合する。
【0064】
本発明の診断組成物は単独活性薬剤として投与することができ、または他の薬剤と組み合わせて投与されてもよい。
【0065】
腫瘍細胞検査方法は、(a)CD66C抗体を腫瘍細胞を含む試料に反応させ、(b)前記抗体に対して陽性反応を示す試料を腫瘍と判断することである。前記試料はリンパ液、骨髄、血液または血球であってもよいが、これに限定されるのではない。前記腫瘍細胞は、好ましくは乳癌、肺癌、大腸癌、胃癌、前立腺癌、または肝癌細胞であり得る。
【0066】
前記CD66C抗体を用いて腫瘍細胞を検査する場合、前記CD66C抗体は、抗原-抗体反応性を確認できる物質で標識されたものであり得る。使用可能な前記物質としては放射性同位元素、蛍光物質、発光物質、クロモゲン(chromogen)、またはその他の染色物質などがある。
【0067】
また、本発明のCD66C抗体は、固形癌を診断するための診断キットとして提供されてもよい。前記診断キットはCD66C抗体以外に、抗原-抗体反応検出手段を含むことができる。前記検出手段は、フローサイトメトリー、免疫組織化学染色、酵素結合免疫吸着分析(enzyme linked immunosorbent assay:ELISA)、放射線免疫測定法(radioimmunoassay:RIA)、酵素免疫分析(enzyme immunoassay:EIA)、蛍光免疫分析(Floresence immunoassay:FIA)および発光免疫分析(luminescence immunoassay:LIA)からなる群より選択された方法を実施するための通常の物質であってもよい。即ち、標識手段としては、酵素の場合、HRP(horse radish peroxidase)があり、蛍光物質としてはFITC(Fluoresceinthiocarbamyl ethylenediamine)が、発光物質としてはルミノール(luminol)、イソルミノールおよびルシゲニン(lucigenin)が、放射線同位元素としては125I、3H、14Cおよび131Iがあるが、これに限定されるのではない。前記標識手段による標識の有無は、酵素の基質や、蛍光、発光または放射線を測定するための道具を用いて確認可能である。一例として、CD66C抗体はELISAキットまたはストリップキットに製造できる。
【0068】
一実施形態で、本発明は、本発明の抗体、本発明の核酸分子、本発明のベクターまたは本発明の宿主に関するものである。本発明の一実施形態によれば、本発明の抗体、本発明の核酸分子、本発明のベクターまたは本発明の宿主は、癌または癌転移、例えば固形癌を治療または阻害することに用いるためのものである。本発明の核酸分子、本発明のベクターまたは本発明の宿主の有効量を投与の必要がある対象に投与することによって癌または癌転移、例えば固形癌を治療または阻害するための方法である。
【0069】
本発明による“固形癌”との用語は、嚢胞または液体領域を通常は含まない組織の異常な塊りを定義するものである。固形癌は陽性(癌でない)または悪性(しばしば当該技術分野において癌と称される)を全て含む。本発明による抗体を適用可能な固形癌の例は、肉腫、神経膠腫、癌腫、中皮腫、リンパ腫、腎臓腫瘍、肺腫瘍、乳房腫瘍、子宮頚部腫瘍、卵巣腫瘍、結腸直腸腫瘍、肝臓腫瘍、前立腺腫瘍、膵臓腫瘍および頭頚部腫瘍から選択され、好ましくは、乳癌、肺癌、大腸癌、胃癌、前立腺癌、または肝癌である。前記乳癌は好ましくは、三重陰性乳癌(Triple-negative breast cancers(TNBC))も含み、前記三重陰性乳癌はHER2、エストロゲン受容体(estrogen receptor)(ER)、およびプロゲステロン受容体(progesterone receptor)(PR)を含む三つの乳癌診断マーカによっても全て陰性と検出される乳癌であって、検出が非常に難しいという問題点がある。
【0070】
前記固形癌の治療効果は、癌細胞(特に、癌幹細胞)またはこれを含む癌組織の成長抑制(量的減少)、死滅(apoptosis)効果だけでなく、移動(migration)、浸湿(invasion)、転移(metastasis)などを抑制してこれによる癌の悪化を抑制する効果を含む。
【0071】
本発明による抗体はPD-1またはPD-L1の結合環を抑制する抑制剤と併用処理して効果を極大化するために、実施例7のように癌細胞と免疫細胞の共同培養時にT細胞活性化を誘導してサイトカインを分泌させ、癌細胞および免疫細胞表面のPD-L1蛋白質水準を増加させた。これは、PD-1またはPD-L1結合抑制剤と本発明の抗体との併用処理時により高い抗癌効果を得ることを期待することができる。免疫チェックポイント抑制剤としてPD-1およびPD-L1に対する抗体治療剤が承認されて臨床に適用されている。前記組成物はPD-1またはPD-L1結合抑制剤を追加的に含んでもよい。
【0072】
本明細書で、“対象”または“患者”は、固形癌の軽減、予防および/または治療を必要とする患者を意味するものであって、全ての哺乳類、例えば人間、猿などの霊長類、マウス、ラットなどのげっ歯類であってもよく、固形癌を患っているか固形癌の症状を持っているか、固形癌発病の危険がある患者であってもよい。
【0073】
本発明による抗体或いは抗体切片の投与は、許容された全ての薬物投与方法によって施行できる。具体的に例えば、CD66C抗体を有効成分として含む治療剤を腫瘍細胞を有する対象、即ち、人間または動物に経口または非経口、好ましくは非経口で投与するのである。前記治療剤は薬理学的に許容可能な賦形剤を含んでもよく、その投与量は患者の状態によって適切に調節することが好ましいが、一例として、1日3mg~6,000mgであってもよい。治療剤の剤形は、液剤、散剤、乳剤、懸濁剤または注射剤であってもよいが、これに限定されるのではない。
【0074】
本発明は、CD66c抗原決定部位に対する抗体、抗体切片(F(ab’)2、FabおよびFvなど)、およびリガンドからなる群より選択された抗体を用いて急性白血病、母細胞危機が発生した慢性白血病およびリンパ芽球性リンパ腫を治療する方法を提供する。
【0075】
抗体或いは抗体切片は、好ましくは単クローンまたは多クローン抗体からなる群より選択され、好ましくはヒトと動物に由来したものである。前記CD66C抗体または抗体切片は、前記で言及した毒素物質がさらに含まれたものであってもよい。毒素物質は、抗体に融合、接合、結合、またはリンクされてもよく、これは公知の技術で実施可能である。
【0076】
本発明の医薬組成物は、単独活性薬剤として投与してもよく、またはその他の薬剤と組み合わせて、好ましくは当該技術分野において問題の疾患の治療に適したのが知られているものと組み合わせて投与してもよい。また、本発明の抗体を投与する方法は、他の抗ガン治療、例えば化学的療法、放射線療法、細胞治療剤と並行して行うことができる。前記化学的療法または細胞治療剤に使用される多様な固形癌治療抗ガン剤は知られた抗ガン剤を使用することができる。
【0077】
他の例は、CD66C、具体的にCD66Cの非触媒的領域に位置する原決定部位に候補化合物を接触させる段階、および前記抗原決定部位に結合する候補化合物を選択して固形癌治療剤候補物質に決定する段階を含む、固形癌の治療剤または阻害剤のスクリーニング方法を提供する。他の例で、前記のようにスクリーニングされた固形癌治療剤を有効成分として含む固形癌の治療用薬学組成物を提供する。
【0078】
前記候補化合物は、人工的に合成されるか天然の各種化合物、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド構造体または蛋白質構造体(例えば、抗体、抗体の抗原結合断片、ぺプチボディ、ナノボディ、など)、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、アンチセンス-RNA、shRNA(short hairpin RNA)、siRNA(small interference RNA)、アプタマー、天然物抽出物などからなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0079】
前記候補化合物と抗原決定部位の結合は候補化合物と抗原決定部位の複合体形成を確認することによって行うことができ、これは当業界に公知された多様な方法を通じて行うことができる。例えば、通常の酵素反応、蛍光、発光および/または放射線検出を通じて測定でき、具体的に、免疫クロマトグラフィー(Immunochromatography)、免疫組織化学染色(Immunohistochemistry)、酵素結合免疫吸着分析(enzyme linked immunosorbent assay:ELISA)、放射線免疫測定法(radioimmunoassay:RIA)、酵素免疫分析(enzyme immunoassay:EIA)、蛍光免疫分析(Floresence immunoassay:FIA)、発光免疫分析(luminescence immunoassay:LIA)、ウエスタンブロッティング(Western blotting)などからなる群より選択された方法によって測定できるが、これに制限されるわけではない。
【発明の効果】
【0080】
本発明はCD66cを認識して結合する抗体、前記抗体または抗原結合断片をコーディングする核酸分子、前記核酸分子を含むベクターおよび宿主細胞および前記抗体またはその抗原結合断片のCD66c関連疾病、例えば固形癌の軽減、予防、治療または診断用途に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】
図1は、マウス8F5抗体から抗体遺伝子をクローニングしてキメラ組換え抗体で発現させて、CD66c抗原陽性のA549細胞表面に結合するのを示す結果である。
【
図2a】
図2a~
図2cは、96種のヒト化組換え抗体の中から1次選定された8種のヒト化組換え抗体に対するHPLC分析結果であって、各抗体別に左側OD220nm、右側OD280nm分析した結果を示している。抗体の凝集(aggregation)および切片などの抗体由来不純物を含むか否かを示す結果である。
【
図2b】
図2a~
図2cは、96種のヒト化組換え抗体の中から1次選定された8種のヒト化組換え抗体に対するHPLC分析結果であって、各抗体別に左側OD220nm、右側OD280nm分析した結果を示している。抗体の凝集(aggregation)および切片などの抗体由来不純物を含むか否かを示す結果である。
【
図2c】
図2a~
図2cは、96種のヒト化組換え抗体の中から1次選定された8種のヒト化組換え抗体に対するHPLC分析結果であって、各抗体別に左側OD220nm、右側OD280nm分析した結果を示している。抗体の凝集(aggregation)および切片などの抗体由来不純物を含むか否かを示す結果である。
【
図3a】
図3a~
図3eは、96種のヒト化組換え抗体の中から1次選定された8種のヒト化組換え抗体に対するCD66c抗原陽性細胞表面結合を確認した結果であって、キメラ抗体と比較して類似した程度の細胞表面結合を示す。
【
図3b】
図3a~
図3eは、96種のヒト化組換え抗体の中から1次選定された8種のヒト化組換え抗体に対するCD66c抗原陽性細胞表面結合を確認した結果であって、キメラ抗体と比較して類似した程度の細胞表面結合を示す。
【
図3c】
図3a~
図3eは、96種のヒト化組換え抗体の中から1次選定された8種のヒト化組換え抗体に対するCD66c抗原陽性細胞表面結合を確認した結果であって、キメラ抗体と比較して類似した程度の細胞表面結合を示す。
【
図3d】
図3a~
図3eは、96種のヒト化組換え抗体の中から1次選定された8種のヒト化組換え抗体に対するCD66c抗原陽性細胞表面結合を確認した結果であって、キメラ抗体と比較して類似した程度の細胞表面結合を示す。
【
図3e】
図3a~
図3eは、96種のヒト化組換え抗体の中から1次選定された8種のヒト化組換え抗体に対するCD66c抗原陽性細胞表面結合を確認した結果であって、キメラ抗体と比較して類似した程度の細胞表面結合を示す。
【
図4a】
図4aおよび
図4bは、96種のヒト化組換え抗体の中から選定された5種のヒト化組換え抗体に対するCD66c抗原に対する結合力をELISAを通じて確認した結果であって、
図4aはCECACAM6(CD66c)抗原に対する結果であり、
図4bはCEACAM1(CD66a)抗原に対する結果である。
【
図4b】
図4aおよび
図4bは、96種のヒト化組換え抗体の中から選定された5種のヒト化組換え抗体に対するCD66c抗原に対する結合力をELISAを通じて確認した結果であって、
図4aはCECACAM6(CD66c)抗原に対する結果であり、
図4bはCEACAM1(CD66a)抗原に対する結果である。
【
図5a】
図5aおよび
図5bは、96種のヒト化組換え抗体の中から選定された5種のヒト化組換え抗体に対する苛酷温度条件での抗体安定性を確認した結果である。
【
図5b】
図5aおよび
図5bは、96種のヒト化組換え抗体の中から選定された5種のヒト化組換え抗体に対する苛酷温度条件での抗体安定性を確認した結果である。
【
図6a】
図6a~
図6dは、CHOで発現させたヒト化組換え抗体のCD66c抗原陽性細胞A549の細胞表面結合を示した結果である。
【
図6b】
図6a~
図6dは、CHOで発現させたヒト化組換え抗体のCD66c抗原陽性細胞A549の細胞表面結合を示した結果である。
【
図6c】
図6a~
図6dは、CHOで発現させたヒト化組換え抗体のCD66c抗原陽性細胞A549の細胞表面結合を示した結果である。
【
図6d】
図6a~
図6dは、CHOで発現させたヒト化組換え抗体のCD66c抗原陽性細胞A549の細胞表面結合を示した結果である。
【
図7a】
図7aは、大腸癌細胞LS174T細胞とヒトCD8+T細胞を共同培養した条件でキメラ8F5抗体を処理した時、CD8+T細胞が活性化されてIFNγ(IFNgamma)とパーフォリン(perforin)を分泌させる結果である。
【
図7b】
図7bは、
図7aと同様な条件で大腸癌細胞LS174Tがキメラ8F5抗体処理時に細胞死滅が増加するのを示す結果である。
【
図8】
図8は、CD8+T細胞と多様な癌細胞との共同培養条件でキメラ8F5抗体を処理する場合のみに選択的にIFNγ分泌が増加するのを示す結果であって、胃癌細胞であるNCI-N87細胞、SNU-719細胞と肝癌細胞であるPLC/PRF/5細胞に対する結果である。
【
図9a】
図9a~
図9cは、CD66c抗原がT細胞活性を抑制することができるのを示す結果であって、
図9aはT細胞活性に対する因子としてIFNγの細胞質内量をフローサイトメーター(Flow cytometer)で測定した結果であり、
図9bと
図9cはELISPOTでIFNγの分泌を測定した結果である。
図9bと
図9cの場合、互いに異なる供給源のCD66c抗原を使用した場合にも同様にT細胞活性を抑制するのを同一に示す結果である。
【
図9b】
図9a~
図9cは、CD66c抗原がT細胞活性を抑制することができるのを示す結果であって、
図9aはT細胞活性に対する因子としてIFNγの細胞質内量をフローサイトメーター(Flow cytometer)で測定した結果であり、
図9bと
図9cはELISPOTでIFNγの分泌を測定した結果である。
図9bと
図9cの場合、互いに異なる供給源のCD66c抗原を使用した場合にも同様にT細胞活性を抑制するのを同一に示す結果である。
【
図9c】
図9a~
図9cは、CD66c抗原がT細胞活性を抑制することができるのを示す結果であって、
図9aはT細胞活性に対する因子としてIFNγの細胞質内量をフローサイトメーター(Flow cytometer)で測定した結果であり、
図9bと
図9cはELISPOTでIFNγの分泌を測定した結果である。
図9bと
図9cの場合、互いに異なる供給源のCD66c抗原を使用した場合にも同様にT細胞活性を抑制するのを同一に示す結果である。
【
図10a】
図10aおよび
図10bは、付着されたOKT3抗体によるT細胞活性化条件でキメラ8F5抗体が活性化を増加させて、CD69、CD107、CD25などの様々な活性化細胞表面マーカ蛋白質を増加させるのを示す結果である。
【
図10b】
図10aおよび
図10bは、付着されたOKT3抗体によるT細胞活性化条件でキメラ8F5抗体が活性化を増加させて、CD69、CD107、CD25などの様々な活性化細胞表面マーカ蛋白質を増加させるのを示す結果である。
【
図11a】
図11aおよび
図11bは、互いに異なるヒトの樹状細胞とPBMCを混合するMLR(Mixed Lymphocytes Reaction)条件でキメラ8F5抗体がCD4、CD8陽性細胞を活性化させることを示す結果である。
【
図11b】
図11aおよび
図11bは、互いに異なるヒトの樹状細胞とPBMCを混合するMLR(Mixed Lymphocytes Reaction)条件でキメラ8F5抗体がCD4、CD8陽性細胞を活性化させることを示す結果である。
【
図12a】
図12aは、実際胃癌患者の腹水から胃癌細胞を分離してヒトPBMCと共同培養時にキメラ8F5抗体を処理すればIFNγ分泌が増加するのをELISPOTで測定した結果である。
【
図12b】
図12bと
図12cは、CD66c抗原陽性の胃癌患者3人に対する追加的なELISPOT実験を行って類似した結果を示すのを示している。
【
図12c】
図12bと
図12cは、CD66c抗原陽性の胃癌患者3人に対する追加的なELISPOT実験を行って類似した結果を示すのを示している。
【
図13a】
図13aおよび
図13bは、ヒトPBMCとA549非小細胞肺癌細胞と共同培養してキメラ8F5抗体を処理すれば、PBMCとA549癌細胞それぞれの表面でPD-L1抗原の発現が増加するのを示す結果である。
【
図13b】
図13aおよび
図13bは、ヒトPBMCとA549非小細胞肺癌細胞と共同培養してキメラ8F5抗体を処理すれば、PBMCとA549癌細胞それぞれの表面でPD-L1抗原の発現が増加するのを示す結果である。
【
図14a】
図14aおよび
図14bは、ヒト化組換え抗体もキメラ8F5抗体と類似したパターンでA549癌細胞とヒトPBMCの共同培養時、IFNγ分泌を増加させることによって、類似した程度の抗体機能があるのを示す結果である。
【
図14b】
図14aおよび
図14bは、ヒト化組換え抗体もキメラ8F5抗体と類似したパターンでA549癌細胞とヒトPBMCの共同培養時、IFNγ分泌を増加させることによって、類似した程度の抗体機能があるのを示す結果である。
【
図15a】
図15aおよび
図15bは、ヒト化8F5抗体がLS-174-T大腸癌細胞またはA549非小細胞肺癌細胞とヒトPBMC共同培養時、癌細胞死滅機能があるのを示す結果である。
【
図15b】
図15aおよび
図15bは、ヒト化8F5抗体がLS-174-T大腸癌細胞またはA549非小細胞肺癌細胞とヒトPBMC共同培養時、癌細胞死滅機能があるのを示す結果である。
【
図16a】
図16a~
図16gは、キメラ8F5抗体を用いたNOD/SCIDマウス動物モデルを用いたIn Vivo抗癌効能を示す結果であり、
図16cはヒト化8F5抗体を用いたNOD/SCIDマウス動物モデルを用いたIn Vivo抗癌効能を示す結果である。
図16dと
図16e~
図16gはNSG免疫欠乏マウスで互いに異なるヒトPBMCを効能細胞にしてヒト化8F5抗体のIn Vivo抗癌効能を示す結果である。
【
図16b】
図16a~
図16gは、キメラ8F5抗体を用いたNOD/SCIDマウス動物モデルを用いたIn Vivo抗癌効能を示す結果であり、
図16cはヒト化8F5抗体を用いたNOD/SCIDマウス動物モデルを用いたIn Vivo抗癌効能を示す結果である。
図16dと
図16e~
図16gはNSG免疫欠乏マウスで互いに異なるヒトPBMCを効能細胞にしてヒト化8F5抗体のIn Vivo抗癌効能を示す結果である。
【
図16c】
図16a~
図16gは、キメラ8F5抗体を用いたNOD/SCIDマウス動物モデルを用いたIn Vivo抗癌効能を示す結果であり、
図16cはヒト化8F5抗体を用いたNOD/SCIDマウス動物モデルを用いたIn Vivo抗癌効能を示す結果である。
図16dと
図16e~
図16gはNSG免疫欠乏マウスで互いに異なるヒトPBMCを効能細胞にしてヒト化8F5抗体のIn Vivo抗癌効能を示す結果である。
【
図16d】
図16a~
図16gは、キメラ8F5抗体を用いたNOD/SCIDマウス動物モデルを用いたIn Vivo抗癌効能を示す結果であり、
図16cはヒト化8F5抗体を用いたNOD/SCIDマウス動物モデルを用いたIn Vivo抗癌効能を示す結果である。
図16dと
図16e~
図16gはNSG免疫欠乏マウスで互いに異なるヒトPBMCを効能細胞にしてヒト化8F5抗体のIn Vivo抗癌効能を示す結果である。
【
図16e】
図16a~
図16gは、キメラ8F5抗体を用いたNOD/SCIDマウス動物モデルを用いたIn Vivo抗癌効能を示す結果であり、
図16cはヒト化8F5抗体を用いたNOD/SCIDマウス動物モデルを用いたIn Vivo抗癌効能を示す結果である。
図16dと
図16e~
図16gはNSG免疫欠乏マウスで互いに異なるヒトPBMCを効能細胞にしてヒト化8F5抗体のIn Vivo抗癌効能を示す結果である。
【
図16f】
図16a~
図16gは、キメラ8F5抗体を用いたNOD/SCIDマウス動物モデルを用いたIn Vivo抗癌効能を示す結果であり、
図16cはヒト化8F5抗体を用いたNOD/SCIDマウス動物モデルを用いたIn Vivo抗癌効能を示す結果である。
図16dと
図16e~
図16gはNSG免疫欠乏マウスで互いに異なるヒトPBMCを効能細胞にしてヒト化8F5抗体のIn Vivo抗癌効能を示す結果である。
【
図16g】
図16a~
図16gは、キメラ8F5抗体を用いたNOD/SCIDマウス動物モデルを用いたIn Vivo抗癌効能を示す結果であり、
図16cはヒト化8F5抗体を用いたNOD/SCIDマウス動物モデルを用いたIn Vivo抗癌効能を示す結果である。
図16dと
図16e~
図16gはNSG免疫欠乏マウスで互いに異なるヒトPBMCを効能細胞にしてヒト化8F5抗体のIn Vivo抗癌効能を示す結果である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これは例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を制限しようとするのではない。
【実施例】
【0083】
<実施例1>抗-CD66cキメラ抗体の製造
1.1.抗-CD66c抗体遺伝子配列クローニング
8F5抗体遺伝子はMouse Ig-Primer Set(Millipore、Cat.#:69831)を用いてクローニングした。8F5ハイブリドーマから分離したRNAからMouse Ig-Primer Setを用いてPCRを行い、これをpGem-Tベクター(Promega、Cat.#:A3600)に挿入した後、シークエンシングを通じてDNA塩基配列を確認し、IMGT site(www.imgt.org)を通じてマウス抗体遺伝子を確認した。分析された8F5抗体重鎖および軽鎖可変領域配列は以下の通りである。
【0084】
【0085】
1-2.キメラ抗体製造
前記製作された抗-CD66cマウス抗体8F5のアミノ酸配列に基づいて、抗-CD66cキメラ抗体を製作した。
【0086】
1-2-1.プラスミド製作
抗-CD66cキメラ抗体の発現のために、重鎖発現用プラスミドと軽鎖発現用プラスミドをそれぞれ製作した。軽鎖発現用プラスミドはpOptiVEC(Invitrogen社)ベクターを使用し、重鎖発現用プラスミドはpcDNA3.3(Invitrogen社)ベクターを使用した。
【0087】
追加的なアミノ酸の挿入なく抗体それぞれの可変領域コーディングcDNAと不変領域コーディングcDNAを連続的なアミノ酸配列として発現されるようにするために、前記クローニングした可変領域のコーディング塩基配列と知られたヒト(human)IgG1不変領域(重鎖)およびカッパ(kappa)不変領域(軽鎖)コーディング塩基配列を連結した遺伝子切片それぞれを合成(Bioneer社)した。このように合成した重鎖および軽鎖発現遺伝子は制限酵素Xho IとSal Iに切断した後、軽鎖遺伝子切片はpOptiVecベクターに、重鎖遺伝子切片はpcDNA3.3ベクターにそれぞれライゲーション(ligation)して完全な抗体発現用プラスミドを製作した(pcDNA3.3-anti-CD66c重鎖発現プラスミドおよびpOptiVEC-anti-CD66c軽鎖発現プラスミド)。
【0088】
1-2-2.形質転換
前記製作されたpcDNA3.3-anti-CD66c重鎖発現プラスミドとpOptiVEC-anti-CD66c軽鎖発現プラスミドをCHO細胞由来のDG44細胞(Invitrogen)にトランスフェクション(transfection)させ形質転換過程を行った。
【0089】
先ず、トランスフェクション(transfection)3日前に浮遊状態のDG44細胞を5%FBSが含まれているMEMa培地に適応させることにより付着状態細胞に変換させて形質転換効率を高めることができるように適応させた。形質転換はViaFect transfection regent(Promega、Cat.#:E4981)を使用して6ウェルプレート(well plate)で行った。形質転換1日前に1×105cells/wellの濃度で継代培養して付着状態で適応されたDG44細胞を準備し、形質転換に使用されたDNAの量はpcDNA3.3-anti-CD66c重鎖発現プラスミドとpOptiVEC-anti-CD66c軽鎖発現プラスミドそれぞれ2ug、1.5ugずつ1.5:1比率の組み合わせで使用した。形質転換は48時間行った。形質転換された細胞群を分析するために、フローサイトメーター(flow cytometer)を用いた。
図1のようにキメラ抗体の発現はA549非小細胞肺癌細胞株で確認した。
図1は、マウス8F5抗体から抗体遺伝子をクローニングしてキメラ組換え抗体frで発現させて、CD66c抗原陽性のA549細胞表面に結合するのを示す結果である。
【0090】
<実施例2>ヒト化抗-CD66c単クローン抗体の製作
2.1 In silico Humanizationによる組換え抗体配列選定 マウスCD66c抗体、8F5(重鎖アミノ酸配列:7 重鎖コーディングDNA:SEQ ID NO:62;軽鎖アミノ酸配列:SEQ ID NO:8;軽鎖コーディングDNA:SEQ ID NO:63)の重鎖、軽鎖それぞれのCDR部位配列(CDRH1:ASGYSFTDYTMN)SEQ ID NO:1、CDRH2:SEQ ID NO:2(LINPFHGGTVSNQRFKV);CDRH3:SEQ ID NO:3(VRGDPVRHYYALAY);CDRL1:SEQ ID NO:4(GASENVYGTL);CDRL2:SEQ ID NO:5(GATNLAD);CDRL3:SEQ ID NO:6(VATYYCQNVLSAPYT)をできるだけ類似するように維持して抗原結合力が同等であるか優れていれば、ヒト抗体遺伝子をコーディングしている生殖細胞系列(germline)の配列を基盤にしてフレームワーク領域(Framework region)に対する部位配列を組換えたヒト化抗体配列をin silico方法で選別した。マウスCD66c抗体8F5の重鎖、軽鎖それぞれ配列と最も類似性が高くてヒト化組換え抗体配列の主鎖(backbone)として使用したヒト抗体生殖細胞系列(Germline)遺伝子は下記表5の通りである。前記マウスCD66c抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域のアミノ酸配列と核酸配列、そして重鎖可変領域と軽鎖可変領域のCDR配列を下記表6に示す。
【0091】
【0092】
上記ヒト抗体生殖細胞系列(Germline)遺伝子配列を用いて選定したヒト化8F5抗体配列として、重鎖可変領域12種、軽鎖可変領域8種を選別し、該当配列は下記表3の通りであり、前記選別されたヒト化抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域のアミノ酸配列、CDR配列およびフレームワーク配列を下記表6~表8に示し、キメラ抗体とヒト化抗体の重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列を表1に示した。マウス抗体とヒト化抗体は重鎖CDR3と軽鎖CDR2の配列が同一であるのが好ましい。下記表6で太字および下線で表示した部分はCDR抗体配列である。表7で太字および下線で表示した部分は変更されたアミノ酸を示す。
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
2.2 ヒト化組換え抗体の発現および分析
選別された抗体配列はそれぞれヒトIgG1重鎖不変領域とカッパ(kappa)軽鎖不変領域と連結してヒトIgG1形態に293細胞で発現させた。トランスフェクション(Transfection)した後、7日後に培養液はKanCap A resin(Kaneca社)を用いてヒト化組換え抗体を精製した。
【0097】
精製した抗体はOD280nm測定で定量し、SDS-PAGEを行った。また、Sepax Zenix-C SEC-300 size exclusion column(Sepax technologies社)でHPLCを行って280nmと220nmで分析することによって、抗体の純度および凝集(aggregation)の有無を分析した(
図2a~
図2c)。
【0098】
2.3 ヒト化組換え抗体の細胞結合および抗原結合分析
2-3-1 細胞結合分析
発現させた96種のヒト化組換え抗体をそれぞれ同量(1ug)をCD66c陽性細胞であるA549非小細胞肺癌細胞株が入っている試験管に入れて4℃で30分間反応させた後にPBSで水洗し、FITC-conjugated goat anti-Human IgG(ダイノナ株式会社(DiNona Inc)、Korea)を入れて4℃で15分間培養した。再びPBSで水洗した後、フローサイトメーター(Stratedigm、S1000EXi)で分析してその結果を下記に記載した。
【0099】
96種のヒト化組換え抗体候補の中から発現程度と凝集(aggregation)の有無、細胞結合程度を基準にして8種を一次に選定した(表9および表10、
図3a~
図3e)。下記表9および表10は1次選定された抗CD66cヒト化抗体およびキメラ8F5の分析結果であって、表10はフローサイトメーター(Flow cytometer)の分析結果を示す。
【0100】
【0101】
【0102】
前記選定された8種の抗体は発現程度と凝集(aggregation)有無、細胞結合程度を表9に示し、具体的に1次選定された8種抗体に対する発現程度と分子量を整理したものである。また、表10のフローサイトメトリー結果を見れば、8種のヒト化組換え抗体がキメラ抗体に比べて±20%の細胞結合力を示してキメラ抗体と非常に類似した細胞結合力を示すのを確認した。これによって96種のヒト化候補抗体の中から発現が正常に行われ、蛋白質自体の不安定性によって形成される凝集(aggregation)が少なく、またターゲット抗原陽性の細胞に結合する能力がキメラ抗体と類似したヒト化抗体8種を1次選別した。
【0103】
特に細胞株結合力は数値上では差があるように見えるが、
図3のように実際の細胞結合様相はキメラ抗体と類似した水準であって抗体陽性率(%gated)と蛍光平均値(mean)をかけてこれをキメラ抗体と相対比較して±20%範囲内に含まれる8種を選別したのであって、通常ヒト化抗体生成時、ヒト化抗体のフレームワーク領域(framework region)にマウス抗体CDR部位配列を挿入した時に元の蛋白質構造の変更で抗体結合力が急激に低下するという結果を考慮したとき、非常に優れたヒト化抗体を選別したと言える。
【0104】
2-3-2 抗原結合分析
前記のように選定した8種ヒト化組換え抗体の中から、キメラ抗体に比べて細胞結合力を基準にして高い結合力を示す5種類のヒト化組換え抗体を選択し、これらをELISA方法でCD66c抗原および類似CD66抗原に対する結合力分析を実施した。
【0105】
【0106】
抗原CD66c(CEACAM6;SinoBiological社)とCEACAM1抗原(SinoBiological社)を96ウェルプレートにウェル当り100ngずつコーティングした後、ブロッキング(blocking)した。一次抗体量は10ug/mlから3倍ずつ希釈して37℃温度で1時間結合させ、二次抗体としてgoat anti-Human Ig-HRP接合体(Jackson ImmunoResearch社)を1:10000で希釈して37℃温度で30分間結合させた。各段階の間は3回ずつ水洗過程を経てTMB反応した。1N H2SO4溶液でTMB溶液と同量(100ul)処理して反応中止した後、450nmでOD値を測定した。
【0107】
前記実験結果として96種のヒト化組換え抗体の中から選定された5種のヒト化組換え抗体に対するCD66c抗原に対する結合力を
図4a、表12および
図4b、表13に示し、
図4aと表12はCECACAM6(CD66c)抗原に対する結果であり、
図4bと表13はCEACAM1(CD66a)抗原に対する結果である。
【0108】
図4a、表12および
図4b、表13の抗原に対する結合力結果から、CEACAM6に対しては全ての抗体がキメラ抗体と類似した結合様相を示し、CEACAM1に対しては弱い結合と結合しないグループとに両分された。
【0109】
【0110】
【0111】
2.4 ヒト化組換え抗体の安定性分析
前記抗原および細胞結合様相を通じて選定した、前記実施例3.3の5種のヒト化組換え抗体を高い温度条件に放置して抗体の安定性の有無を分析する実験を行った。
【0112】
安定性測定は8-アニリノ-1-ナフタレンスルホン酸(8-anilino-1-naphthalenesulfonic acid)(以下、ANS;Sigma社)を用いた結合実験を通じて確認した。ANSは、蛋白質変性時に露出される疎水性部位に結合する時とそうでない時との蛍光波長が異なるためこのような波長変化を測定することによって蛋白質の変性有無を確認することができる化合物である。
【0113】
ヒト化組換え抗体をPBS(phosphate buffered saline)を用いて0.2mg/ml濃度に全て合わせた後、苛酷条件として50℃温度で4時間放置した。0.2mg/mlのANS溶液を、測定するための抗体希釈液500ul当り20ulを入れて混合した後、5分後に蛍光リーダーで360nm励起(excitation)、460nm放出(emission)条件で分析した。追加的に70℃温度で30分間さらに放置した条件でもANS試薬反応を測定した。
【0114】
前記表11に示した5種のヒト化組換え抗体に対する苛酷温度条件での抗体安定性を確認した結果を
図5aおよび
図5bに示した。即ち、苛酷条件として50℃温度で4時間抗体を放置した後にANS試薬反応性を蛍光で測定し、追加的に70℃温度で30分間さらに放置した条件でもANS試薬反応を測定した結果を示す。
図5aの実験結果に示したように、50℃温度で4時間放置条件では5種の抗体大部分がANS反応が微小であったが、70℃温度で追加30分放置条件では大部分抗体の蛍光値が大きく増加した。その中ではprotein ID:3058組換え抗体が最も低い蛍光値増加傾向を示して、5種類の組換えヒト化抗体の中で最も温度変化に対して安定した結果を示した。
【0115】
また、ANS試薬反応性変化率を測定するために、冷蔵条件(4±2℃)および62℃温度でそれぞれ4時間放置した後にANS試薬反応性を前記と同様な方法で蛍光リーダーで分析した。また、ANS試薬に対する抗体の蛍光値変異率は、低温条件(例、4℃)で測定した蛍光値と、高温条件(例、62℃)で測定した蛍光値との差(difference)を、低温条件で測定した蛍光値で割った値を意味する。
【0116】
[数式]
蛍光値変異率=(高温条件で測定した蛍光値-低温条件で測定した蛍光値)/(低温条件で測定した蛍光値)
【0117】
図5bのように苛酷条件の温度(50℃)から温度をさらに上げた62℃温度で4時間放置後、ANS試薬反応性を確認した。5種が組換えヒト化抗体とキメラ抗体の両方とも冷蔵条件ではANS反応値が微小であったが、温度を上昇することによってANS蛍光値が増加した。しかし、キメラ8F5は62℃温度条件保管実験によってANS試薬反応性が1,406%まで増加し、同時に沈殿物が発生して不安定な結果を示した。しかし、ヒト化抗体5種はキメラ抗体よりANS試薬反応性変化が顕著に低く測定され、沈殿物が発生しなかった。特に、Protein ID 3019ヒト化抗体とProtein ID 3058ヒト化抗体はそれぞれ114%、133%にANS反応性の変化が測定されて最も安定した抗体と評価された。ANS試薬反応性が大きくなるという意味は蛋白質構造上内側に配置されていた疎水性アミノ酸の露出が増加するという意味であり、これは蛋白質構造の変性とこれによる蛋白質凝集(aggregate)、即ち、沈殿物生成の原因になる。本発明によるヒト化抗体はANS反応性変異%が200%未満で安定した抗体であり、200%未満は変化が非常に微小であると見なされ、それ以上は有意義な蛋白質構造変更が行われANS反応性が観察されたと解釈できる。したがって、本発明によるヒト化抗体はキメラ抗体に比べて類似した抗原結合力および細胞結合力を有し、抗体蛋白質自体の物理的安定性が増加し、このような事実は治療用抗体のドラッガビリティ(druggability)の面で非常に優れた特徴と言える。
【0118】
2.5 ヒト化組換え抗体のCHO細胞発現および分析
前記実施例2.3で選定された5種のヒト化組換え抗体を実際大部分の治療用抗体を発現させるために使用するCHO細胞に発現させて分析した。選定された5種のヒト化組換え抗体を構成するための軽鎖および重鎖可変領域DNA配列をコドン最適化過程を経た後、合成してヒトIgG1不変領域遺伝子とoverlay PCR方法で連結してXhoIとEcoRI遺伝子切片でpcDNA3.4ベクター(Life Technology社)にクローニングした。前記表11は、CHO細胞発現のために選別されたヒト化抗体の軽鎖および重鎖組み合わせを示す。
【0119】
可変-不変領域遺伝子PCRのために使用したDNA primer配列は下記表14の通りである。
【0120】
【0121】
5種のヒト化組換え抗体はExpiCHO(trademark) Expression System Kit(ThermoFisher社;Cat.No:A29133)を用いて一過性トランスフェクション(Transient transfection)させ、発現させた抗体は
図6a~
図6cのようにCD66c陽性細胞であるA549非小細胞肺癌細胞株に結合させてフローサイトメーター(Flow cytometer)で分析した。5種類ヒト化組換え抗体は全てキメラ抗体と類似した結合力を示した。前記測定したフローサイトメーター(Flow cytometer)蛍光値をCHO培養液の抗体発現量で割って、相対的な抗体発現量に対する細胞表面結合力(relative cell binding)を表示したものを図式化すれば
図6dの通りであった。したがって、ヒト化組換え抗体はCHO細胞でも適切に発現されるのを確認した。抗体の細胞表面結合力を求め、これを100%にして相対的な変化を示したものが
図6dである。
【0122】
<実施例3>キメラ8F5抗体によるT細胞活性および癌細胞死滅
3.1.CD8+T細胞と癌細胞LS174Tの共同培養に続くT細胞活性サイトカイン分析および癌細胞の生存率(viability)分析
CD8+T細胞はヒト血液細胞からMagniSort(registered trademark)Human CD8 T cell Enrichment Kit(Ebioscience、cat.#:8804-6812-74)を用いて分離した。6ウェルプレートの各ウェルにCD8+T細胞は1×10
6個の細胞を、大腸癌癌細胞であるLS174Tは2×10
5個の細胞を同時に入れて、ウェル当り2mlの量(volume)になるように10%FBS/RPMI培地にして培養した。この時、キメラ8F5抗体は20ug/mlになるように処理した。培養後、3日と5日目に培養液を各100ulずつ取って培養液のIFNγとパーフォリン(perforin)分泌量をHuman CD8+ T-Cell Magnetic Bead Panel(Millipore、Cat.#:HCD8MAG-15K)キットを用いて測定した。培養7日目に大腸癌細胞LS174Tを分離して7-AADで染色後、フローサイトメーター(Flow cytometer)で細胞の生存率(viability)を測定した。
図7aは大腸癌細胞株であるLS174T細胞とヒトCD8+T細胞を共同培養した条件でキメラ8F5抗体を処理した時、CD8+T細胞が活性化されてIFNγとパーフォリン(perforin)を分泌させる結果であり、
図7bは
図7aと同一の条件で大腸癌細胞LS174Tがキメラ8F5抗体処理時、細胞死滅が増加するのを示す結果である。
【0123】
図7aのグラフに示したように、大腸癌細胞LS174T細胞とヒトCD8+T細胞を共同培養した条件でキメラ8F5抗体を処理した時、CD8+T細胞が活性化されIFNγとパーフォリン(perforin)の分泌が増加し、LS174T細胞は細胞死滅が増加した。
【0124】
3.2.CD8+T細胞と多様な癌細胞の共同培養に続くT細胞活性分析
実施例3.1のようにCD8+T細胞を分離して、多様な癌細胞と共同培養条件でキメラ8F5抗体によるT細胞活性をELISOT方法で確認した。Human IFNgamma ELISPOT Ready-SET-Go!(Ebioscience;Cat.#:88-7386-21)キットを用いてIFNγを分析した。各ウェル当り100ulの体積(volume)でCD8+T細胞は2.5×104、癌細胞は5×103細胞を共に入れて3日間培養後、キットで提示する方法でIFNγ分泌する細胞spotsを検出した。
【0125】
図8はCD8+T細胞と多様な癌細胞との共同培養条件でキメラ8F5抗体を処理する場合のみに選択的にIFNγ分泌が増加するのを示す結果であって、胃癌細胞であるNCI-N87細胞、SNU-719細胞と肝癌細胞であるPLC/PRF/5細胞に対する結果である。
【0126】
図8に示したように、CD8+T細胞と多様な癌細胞との共同培養条件でキメラ8F5抗体を処理する場合のみに選択的にIFNγ分泌が増加するのを示した。
【0127】
<実施例4>CD66c抗原によるT細胞活性抑制
癌細胞とCD8+T細胞の共同培養時、8F5抗体によるT細胞活性が実際8F5抗体の抗原であるCD66c抗原によるものか確認するために、ヒトPBMCを分離してOKT3抗体によるT細胞活性がCD66c抗原によって抑制できるか確認した。
【0128】
具体的に、T細胞の細胞内IFNγ(intracytosolic staining)を染色してフローサイトメーター(Flow cytometer)で確認する方法と、ELISPOTでIFNγを分析する二つの方法で確認した。抗体処理はOKT3である場合は1ug/mlとし、CD66c抗原は10ug/mlで処理した。T細胞内IFNγを染色するためにBrefeldin A Solution(1000X)(EBioscience、Cat.#:00-4506-51)を1Xになるように希釈して染色する3時間前に事前処理し、Anti-Human IFNgamma PE(EBioscience、Cat.#:12-7319-41)とFITC Mouse Anti-Human TCR-α/β(BD Biosciences;Cat.#:347773)で染色してフローサイトメーター(Flow cytometer)mで分析した。
【0129】
図9a~
図9cはCD66c抗原がT細胞活性を抑制することができるのを示す結果であって、
図9aはT細胞活性に対する因子としてIFNγの細胞質内量をフローサイトメーター(Flow cytometer)で測定した結果であり、
図9bと
図9cはELISPOTでIFNγの分泌を測定した結果である。
図9bと
図9cの場合、互いに異なる供給源のCD66c抗原を使用した場合にも同様にT細胞活性を抑制するのを同一に示す結果である。
【0130】
図9aのように、CD66c抗原を同時処理する場合、IFNγ陽性T細胞が15.55%から8.87%に減少することによって、CD66抗原によってT細胞の活性が抑制される結果を示した。
【0131】
実施例3.2のようにELISPOT方法でヒトPBMCのIFNγ生成増加または抑制を追加的に確認し、CD66c抗原はダイノナ内部的に製作および生産した抗原と外部で購入した抗原(Sino Biological Inc.、Cat.#:10823-H08H-50)を10ug/mlを投与した。この実験でもまたCD66c抗原を処理した二つの場合ともIFNγ陽性spot数を顕著に落とす結果を示した(
図9b、9c)。
【0132】
<実施例5>キメラ8F5抗体によるT細胞の活性化誘導
5.1.T細胞活性化の増加
OKT3抗体によるT細胞の活性化をキメラ8F5抗体がどんな影響を与えるか確認するために、0.3mg/ml濃度でOKT3抗体を付着させた35-mmdish条件でヒトPBMCを2×10
6細胞を入れて3日間培養した。この時、キメラ8F5抗体は20ug/mlになるように処理し、3日後、CD4+T細胞とCD8+T細胞をAnti-Human CD69 PE(Ebioscience、Cat.#:12-0699-41)、Anti-Human CD107a(LAMP-1)PE(Ebioscience、Cat.#:12-1079-41)、Anti-Human CD25 APC(Ebioscience、Cat.#:17-0259-41)で染色した。Anti-CD4-APCおよびAnti-CD8-FITCはダイノナで製造した試薬で染色して各CD4およびCD8グループをフローサイトメーター(Flow cytometer)上でゲーティング(gating)して分析した。
図10aおよび
図10bは付着されたOKT3抗体によるT細胞活性化条件でキメラ8F5抗体が活性化を増加させてCD69、CD107、CD25などの様々な活性化細胞表面マーカ蛋白質を増加させるのを示す結果である。
【0133】
図10aの結果に示したように、CD4およびCD8陽性細胞で全てキメラ8F5抗体投与時、活性化標識マーカであるCD69陽性比率が増加し、
図10bの結果のようにCD8陽性細胞ではまた他の活性化マーカであるCD107とCD25陽性比率が増加した。このようなT細胞活性化条件でキメラ8F5抗体がT細胞活性化を増加させた結果は、実施例3で記述している結果がT細胞自体の活性化増加による結果として反映されたことを意味し、また実施例4で記述したように、CD66c抗原のT細胞活性抑制現象を抗CD66c抗体として戻すことができ、これによりT細胞活性を維持または強化して癌細胞死滅を招くことができるのを示す。
【0134】
5.2.MLRでのT細胞活性化増加
キメラ8F5抗体処理によるT細胞活性化を追加的に確認するためにMLR(Mixed Lymphocyte Reaction)実験を行った。まず、ヒトPBMCを分離して培養皿に付着された細胞のみIL-4(5×10
3unit/ml、JWCreagene)とGM-CSF(5×10
3unit/ml、JWCreagene)を3日間隔で二回処理して樹状細胞(Dendritic cell)に分化させた。その後、他のヒトのPBMCと共にPBMC:DC比率が5:1になるように混合して5日間培養した。PBMC細胞数は、12ウェルプレートの場合、ウェル当り1.4×10
6細胞を使用した。5日後、細胞は分離してCD4-FITC/CD107-PE/CD25-APCまたはCD8-FITC/CD107-PE/CD25-APCで染色してフローサイトメーター(Flow cytometer)分析を行った。
図11aおよび
図11bは互いに異なるヒトの樹状細胞とPBMCを混合するMLR(Mixed Lymphocytes Reaction)条件でキメラ8F5抗体がCD4、CD8陽性細胞を活性化させるのを示す結果である。
【0135】
図11aおよび
図11bのようにMLR条件でもキメラ8F5抗体投与によって、CD4およびCD8陽性細胞でCD25またはCD107の陽性比率が顕著に増加した。
【0136】
結果的に、これはOKT3によるT細胞活性化および同種免疫細胞によるT細胞活性化条件の両方でキメラ8F5抗体がT細胞活性化自体を増加させることができるという結果を示し、これによりT細胞が癌細胞を死滅させるようにキメラ8F5抗体が作用するという点が追加的に分かる。
【0137】
<実施例6>キメラ8F5抗体による胃癌患者PBMC活性化
胃癌患者とPBMC共同培養時キメラ8F5抗体によるPBMC活性化を評価しようとした。実験室で培養している癌細胞でない実際胃癌患者の腹水から癌細胞を分離して、キメラ8F5抗体投与時免疫細胞活性化されるかどうかを確認した。胃癌患者の腹水サンプルはソウル峨山病院で獲得し、腹水サンプルからCD66c陽性が確認されたサンプルの胃癌細胞と同一患者の血液からPBMCを分離して実施例3.2のようにELISPOT試験を行った。
【0138】
図12aは実際胃癌患者の腹水から胃癌細胞を分離してヒトPBMCと共同培養時キメラ8F5抗体を処理すればIFNγ分泌が増加するのをELISPOTで測定した結果である。
図12bと
図12cはCD66c抗原陽性の胃癌患者3人に対する追加的なELISPOT実験を行って類似した結果を示すのを示している。
【0139】
キメラ8F5抗体を投与した場合、陽性対照群で処理したT細胞活性化誘導抗体であるOKT抗体を投与した水準と同様にIFNγ陽性spotが増加した(
図12a)。これは、キメラ8F5抗体の処理が自己免疫細胞の活性化を誘導したのを示す結果である。
【0140】
互いに異なる胃癌患者の腹水からCD66c陽性の胃癌細胞を追加的に分離して、正常人の血液から分離したPBMCと混合して同一な条件で実施例3.2のようにELISPOT試験を行った。
図12bの結果のように、程度の差はあるが、キメラ8F5抗体処理時、IFNγ陽性が増加した。
【0141】
<実施例7>キメラ8F5抗体によってPD-L1発現量増加
癌細胞とPBMC共同培養時キメラ8F5抗体によってPD-L1発現量増加を評価しようとした。癌細胞LS-174-T(大腸癌細胞株)、NCI-N87(胃癌細胞株)A549(非小細胞肺癌細胞株)とPBMC共同培養時、キメラ8F5抗体による免疫チェックポイント関連蛋白質の変化を確認するためにPD-L1の細胞表面変化を観察した。6ウェルプレート上で各ウェル当り癌細胞:PBMC=1:3の比率で(0.5×106cells:1.5×106cells)混合して24時間培養し、この時、抗体は20ug/mlで処理した。癌細胞およびPBMC細胞表面のPD-L1はAnti-Human CD274(PD-L1、B7-H1)PE(Ebioscience、Cat.#:12-5983-41)で染色し、癌細胞とPBMCを区分するためにCD45-FITC(ダイノナ)を同時染色した。
【0142】
図13aおよびヒトPBMCとA549非小細胞肺癌細胞と共同培養してキメラ8F5抗体を処理すれば、PBMCとA549癌細胞それぞれの表面でPD-L1抗原の発現が増加するのを示す結果であり、
図13bはA549、NCI-N87、LS-174-T細胞株のPD-L1抗原発現増加を表で示した結果である。
【0143】
図13aおよび
図13bのように、キメラ8F5抗体投与によって癌細胞およびPBMCの両方ともでPD-L1細胞表面水準が増加したことが分かる。これはキメラ8F5抗体によって免疫細胞が活性化されたのを間接的に証明することであり、今後、PD-1/PD-L1に対する抑制剤との併用治療が可能であるのを示す。
【0144】
<実施例8>ヒト化8F5抗体によるPBMC活性化
癌細胞とPBMC共同培養時ヒト化8F5抗体によるPBMC活性化を評価しようとした。即ち、表11のように選定されたヒト化8F5抗体の中から5種類を選定して、実施例3.2のようにELISPOT試験を行った。同時培養した癌細胞はA549非小細胞癌細胞株(lung adenocarcinoma細胞株)を使用し、投与した抗体の濃度は20ug/mlである。3日後、IFNγ陽性spotを確認した時、
図14のように試験した5種類全てのヒト化8F5抗体がキメラ8F5抗体と同様な水準でIFNγ陽性spotを増加させたことが分かり、一部はキメラ8F5抗体よりさらに多くの程度の増加傾向を示した。したがって、機能的にヒト化8F5抗体はキメラ8F5抗体と非常に類似しているのを確認することができた。
【0145】
図14aおよび
図14bはヒト化組換え抗体もキメラ8F5抗体と類似したパターンでA549癌細胞とヒトPBMC共同培養時、IFNγ分泌を増加させることによって、類似した程度の抗体機能があるのを示す結果である。
【0146】
<実施例9>ヒト化8F5抗体による癌細胞の死滅化
9-1:癌細胞とCD3+T細胞の共同培養
癌細胞とCD3陽性T細胞との共同培養時ヒト化8F5抗体による癌細胞の死滅化を評価しようとした。大腸癌細胞株(Colon cancer cell line)であるLS-174-T細胞とヒトのCD3陽性T細胞を共同培養する条件で抗体処理時、活性化されたT細胞によって癌細胞が死滅するかをin vitro上で確認した。
【0147】
具体的に、96ウェルプレート条件で癌細胞:T細胞(またはPBMC)を1×10
4cells:1×10
5cellsの比率でウェル当り100ulの体積で共同培養し、10ug/mlの各抗体を処理して3日後に癌細胞死滅化程度をEz-Cytox(デイルバイオテック、EZ-1000)assay kitを用いて測定した。抗体はヒト化8F5抗体(protein ID:3019(表11、E3)、PD-1(pembrolizumab同一配列抗体)、PD-L1(atezolizumab同一配列抗体)、CEACAM6(Bayer社の抗CEACAM6抗体と同一配列抗体)をそれぞれ処理して測定した。
図15aは前記死滅化実験の結果であり、本発明によるヒト化8F5抗体が最も高い癌細胞死滅効果を示した。
【0148】
9-2:癌細胞とPBMCの共同培養
癌細胞とPBMC共同培養時ヒト化8F5(protein ID:3019)抗体による癌細胞の死滅化を評価しようとした。
【0149】
具体的に、前記実施例9-1と実質的に同一の方法で評価を行い、但し、大腸癌細胞株(Colon cancer cell line)であるLS-174-T細胞とヒトのCD3陽性T細胞を共同培養する条件の代わりに、A549(lung adenocarcinoma細胞株)細胞株と互いに異なる二人のPBMC(Donor1、Donor2)を使用して前記のような条件の実験を行った。
図15bの実験結果で示したように、ヒト化8F5抗体(protein ID:3019;E3、lgG1)を処理したウェルの癌細胞が二種類のPBMC条件で全て最も高い癌細胞死滅効果を示した(
図15b)。
【0150】
<実施例10>マウス動物モデルを用いた抗癌効能評価
10-1:NOD/SCIDマウスモデルを用いたキメラ8F5抗体の抗癌効能評価 キメラ8F5抗体のIn vivo免疫抗癌効果を確認するために、免疫欠乏マウスであるNOD/SCIDマウスを用いた。従来の先行特許(大韓民国:10-1214177;米国:8404812)ではNudeマウスを用いて抗癌効果を示したが、Nudeマウスを用いた動物実験セットは抗癌効果を示す免疫細胞がヒト由来でないマウス免疫細胞を効能細胞として用いたものであって、実際ヒトで候補抗体が治療的効能を示すことができるのを立証するのに限界がある。したがって、実質的なヒト免疫細胞による動物実験内癌細胞死滅に対する抗体の抗癌効果を評価するために、マウスT細胞をはじめとする免疫細胞が欠乏されているNOD/SCIDマウスを動物実験に使用した。
【0151】
NOD/SCIDマウス免疫細胞によるAsialo GM1抗体をマウスに癌細胞およびヒトPBMC投与1日前に投与してマウス内に残留するマウスナチュラルキラー(NK)細胞を除去し、その翌日に癌細胞とPBMCをマウスに注射した。大腸癌細胞であるLS-174-T細胞はマウス当り5×106細胞数を皮下(Subcutaneous)に注入し、PBMCは1×107細胞数を腹腔(intraperitoneal)に注入した。細胞注入後、4日後に10mg/kgの容量で抗体を静脈注射し、その後皮下注入癌細胞の癌腫瘍塊(tumor mass)の大きさを観察および測定した。
【0152】
図16aは大腸癌細胞であるLS-174-T細胞を、
図16bは非小細胞肺癌細胞であるA549細胞を用いたNOD-SCIDマウス移植モデルとキメラ8F5抗体を使用した。
【0153】
図16aはキメラ8F5抗体を用いたヒトPBMCを注入したヒト化条件のマウス動物モデルを用いたIn Vivo抗癌効能を示す結果である。互いに異なるヒトのPBMCを投与した時、全て同じ傾向でキメラ8F5抗体投与群が最も高い抗癌効果(Tumor growth inhibition;TGI)を示し、第1の実験セットの場合40%の抗癌効果を、第2の実験セットの場合46%の抗癌効果を示した。
図16aは大腸癌細胞であるLS-174-T細胞を、
図16bは非小細胞肺癌細胞であるA549細胞を用いた移植モデルを使用した。両方の場合ともキメラ8F5抗体投与群が最も高い抗癌効果を示した。PD-1抗体(Nivolumab抗体配列同一抗体)投与群は抗癌効果が無いか非常に微小であったが、これは癌細胞表面のPD-L1抗原発現水準が非常に弱くて反応しなかったと判断される。
【0154】
結果的に、ヒト免疫細胞とキメラ8F5抗体によって生体内抗癌効果を示すことができるのを大腸癌および肺癌動物モデルで確認した。
【0155】
10-2:NOD/SCIDマウスLS-174-Tモデルを用いたヒト化8F5抗体の抗癌効能評価
実施例10-1と実質的に同一の方法で動物モデルを用いた抗癌効能を評価したが、但し、大腸癌細胞であるLS-174-T細胞を用いたNOD-SCIDマウス移植モデルとヒト化8F5抗体(protein ID:3019、表11)を使用し、実験結果を
図16cに示した。
【0156】
同一NOD-SCIDマウスに大腸癌細胞であるLS-174-T細胞株移植モデルでヒト化8F5抗体(protein ID:3019)を投与した実験セットでも同じ類型の抗癌効果を確認した(
図16c)。
【0157】
10-3:NSGマウスLS-174-Tモデルを用いたヒト化8F5抗体の抗癌効能評価
実施例10-1と10-2で使用したNOD/SCIDマウスより免疫欠乏程度がさらに深刻なNSGマウスを用いた動物実験を行った。NSGマウスはNOD/SCIDマウスでIL2レセプターガンマ(IL2Rγ)遺伝子に突然変異を誘導してNOD/SCIDマウスに残留するNK細胞の活性を完全に除去したマウスであって、これは微量残留するマウス免疫細胞による影響を完全に除去してひたすら一由来免疫細胞による影響を評価するためである。
【0158】
大腸癌細胞であるLS-174-T細胞を用いたNSGマウス移植モデルとヒト化8F5抗体(protein ID:3019、表11)、Bayer社のCEACAM6抗体、Merck社のCEACAM1抗体を使用し、実験結果を
図16dおよび16eに示した。
図16dと
図16gはNSG免疫欠乏マウスで互いに異なるヒトPBMCを効能細胞にしてヒト化8F5抗体のIn Vivo抗癌効能を示す結果である。
【0159】
NSGマウスLS-174-Tモデルで投与した抗体は、ヒト化8F5抗体(protein ID:3019)、Bayer社のCEACAM6抗体、Merck社のCEACAM1抗体であって、これらに対する抗癌効果を互いに比較した。ヒト化8F5と類似したターゲットに対する他の抗体を比較した時、ヒト化8F5抗体が最も優れた抗癌効果を示した。
【0160】
図16dは互いに異なる5人のヒトPBMCを効能細胞として使用した実験に対する平均値を示す実験結果であって、ヒト化8F5抗体(protein ID:3019)投与群が比較群に比べて最も高い腫瘍成長抑制効果を示した。
図16e~
図16gは実験に互いに異なるヒト(3人)PBMC注入による各抗体の抗癌効果を一人のPBMC別にグラフ化したものであって、ヒト化8F5抗体投与群(protein ID:3019;P+E3)が最も高い抗癌効果を示すのを三人の互いに異なるPBMC投与群で確認し、残り2人の実験セットでも類似した結果を確認した。
【配列表】