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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】電力調整装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20240308BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240308BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20240308BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240308BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/14 130
H02J7/00 P
H02J7/00 X
H02J13/00 311R
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021177700
(22)【出願日】2021-10-29
(65)【公開番号】P2023066865
(43)【公開日】2023-05-16
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】古川 公彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 憲令
(72)【発明者】
【氏名】湯郷 政樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 昂章
(72)【発明者】
【氏名】乾 真也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 桂一
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-013634(JP,A)
【文献】特開2021-150988(JP,A)
【文献】国際公開第2019/215817(WO,A1)
【文献】特開2020-115704(JP,A)
【文献】特開2022-116975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20-6/547
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
B60W 10/00
B60W 10/02
B60W 10/06
B60W 10/08
B60W 10/10
B60W 10/18
B60W 10/26
B60W 10/28
B60W 10/30-20/50
G06Q 10/00-10/10
G06Q 30/00-30/08
G06Q 50/00-50/20
G06Q 50/26-99/00
G16Z 99/00
H01M 8/04-8/0668
H01M 10/42-10/48
H02J 3/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に接続された複数の電動車両の車両情報を取得する処理と、
前記車両情報を基に、予め定められた特性に応じた複数のグループに前記電動車両を分ける処理と、
前記電力系統の電力需要調整時に前記電動車両の充放電の負担を前記グループ毎に調整する処理と
が実行されるように構成され
前記電動車両に対して、必要充電量が設定できるように構成されており、
前記車両情報には、前記電動車両に搭載された車載電池の最大充電容量が含まれており、
前記電動車両を分ける処理では、前記車載電池の最大充電容量から前記必要充電量を引いた余裕容量に基づいて、前記電力系統に接続された前記複数の電動車両が前記複数のグループに分けられる、電力調整装置。
【請求項2】
前記車両情報には、電動車両の分類情報が含まれており、
前記電動車両を分ける処理では、前記分類情報を基に、BEVのグループとBEVを除くグループとに、前記複数の電動車両が分けられる、請求項に記載された電力調整装置。
【請求項3】
電力系統に接続された複数の電動車両の車両情報を取得する処理と、
前記車両情報を基に、予め定められた特性に応じた複数のグループに前記電動車両を分ける処理と、
前記電力系統の電力需要調整時に前記電動車両の充放電の負担を前記グループ毎に調整する処理と
が実行されるように構成され
前記車両情報には、電動車両の分類情報が含まれており、
前記電動車両を分ける処理では、前記分類情報を基に、BEVのグループとBEVを除くグループとに、前記複数の電動車両が分けられ、
前記電力系統の電力需要調整が下げDRであるときに、前記BEVのグループよりも、前記BEVを除くグループの放電が優先されるように構成された、
電力調整装置。
【請求項4】
電力系統に接続された複数の電動車両の車両情報を取得する処理と、
前記車両情報を基に、予め定められた特性に応じた複数のグループに前記電動車両を分ける処理と、
前記電力系統の電力需要調整時に前記電動車両の充放電の負担を前記グループ毎に調整する処理と
が実行されるように構成され
前記車両情報には、電動車両の分類情報が含まれており、
前記電動車両を分ける処理では、前記分類情報を基に、BEVのグループとBEVを除くグループとに、前記複数の電動車両が分けられ、
前記電力系統の電力需要調整が上げDRであるときに、前記BEVのグループよりも、前記BEVを除くグループの充電が優先されるように構成された、電力調整装置。
【請求項5】
電力系統に接続された複数の電動車両の車両情報を取得する処理と、
前記車両情報を基に、予め定められた特性に応じた複数のグループに前記電動車両を分ける処理と、
前記電力系統の電力需要調整時に前記電動車両の充放電の負担を前記グループ毎に調整する処理と
が実行されるように構成され
前記車両情報には、電動車両の分類情報が含まれており、
前記電動車両を分ける処理では、前記分類情報を基に、BEVのグループとBEVを除くグループとに、前記複数の電動車両が分けられ、
前記電力系統の電力需要調整が上げDRであるときに、前記BEVを除くグループよりも、前記BEVのグループの充電が優先されるように構成された、電力調整装置。
【請求項6】
前記BEVを除くグループには、車両駆動用の車載電池と内燃機関とを備え、前記内燃機関によって発電された電気が前記車載電池に充電されるように構成された電動車両と、燃料電池が搭載された燃料電池車とが含まれる、請求項2~5までの何れか一項に記載された電力調整装置。
【請求項7】
前記電動車両に対して、必要充電量が設定できるように構成されており、
前記車両情報には、前記電動車両に搭載された車載電池の最大充電容量が含まれており、
前記電動車両を分ける処理では、前記車載電池の最大充電容量から前記必要充電量を引いた余裕容量に基づいて、前記電力系統に接続された前記複数の電動車両が前記複数のグループに分けられる、請求項3から6までの何れか一項に記載された電力調整装置。
【請求項8】
前記電動車両の車両情報を記憶する記憶部を有する、請求項1から7までの何れか一項に記載された電力調整装置。
【請求項9】
前記記憶部には、前記電動車両が所属したグループが記憶される、請求項に記載された電力調整装置。
【請求項10】
前記車両情報には、前記電動車両に搭載された車載電池の充放電能力が含まれており、
前記電動車両を分ける処理では、前記車載電池の充放電能力に基づいて、前記複数のグループに前記電動車両が分けられる、請求項1からまでの何れか一項に記載された電力調整装置。
【請求項11】
前記車両情報には、前記電動車両に搭載された車載電池の最大充電容量が含まれており、
前記電動車両を分ける処理では、車載電池の最大充電容量に基づいて、前記複数のグループに電動車両が分けられる、請求項1から10までの何れか一項に記載された電力調整装置。
【請求項12】
前記車両情報には、前記電動車両に搭載された車載電池の劣化度が含まれており、
前記電動車両を分ける処理では、前記車載電池の劣化度に基づいて、前記電力系統に接続された前記複数の電動車両が前記複数のグループに分けられる、請求項1から11までの何れか一項に記載された電力調整装置。
【請求項13】
前記車両情報には、前記電動車両に搭載された車載電池の温度情報が含まれており、
前記電動車両を分ける処理では、前記車載電池の温度に基づいて、電力系統に接続された前記複数の電動車両が前記複数のグループに分けられる、請求項1から12までの何れか一項に記載された電力調整装置。
【請求項14】
前記電動車両毎に、前記電力系統の電力需要調整時に積極的に参加させることを設定できるように構成されており、
前記電動車両を分ける処理では、前記電力系統の電力需要調整時に積極的に参加させることが設定されているか否かで、前記電力系統に接続された前記複数の電動車両が前記複数のグループに分けられる、請求項1から13までの何れか一項に記載された電力調整装置。
【請求項15】
前記調整する処理では、前記電力系統の電力需要調整が上げDRであるときと下げDRであるときとで、前記グループ間の前記電力需要の負担が異なる、請求項1から14までの何れか一項に記載された電力調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-115704号公報には、送受電システムにおける送受電管理装置(管理サーバ)が開示されている。同公報で開示される送受電管理装置(管理サーバ)は、需要情報取得部と、選択部と、通知制御部とを備えている。需要情報取得部は、電力網における電力需要を示す情報を取得する。選択部は、電力需要に応じて、蓄積されているエネルギー量が予め定められた蓄積量より大きく、かつ、蓄積可能なエネルギー量が予め定められた蓄積可能量より大きい駆動用電源を備える車両を、電力網との間で送受電させる車両として選択する。通知制御部は、選択部がした選択を選択した車両のユーザへ通知する。
【0003】
管理サーバは、バッテリの残容量及び空き容量がそれぞれ予め定められた容量値より大きい車両のユーザに、電力網に接続するよう促す。バッテリの残容量及び空き容量が大きい車両によれば、例えば、電力需要に対して発電設備の供給電力が不足する場合に電力網に電力供給することができる。電力需要に対して発電設備の供給電力が余剰となる場合に余剰電力を吸収することもできる。そのため、より少数の車両によって、電力網において電力需要が大きい場合と電力需要が小さい場合との両方の場合に対応することができる。そのため、電力アグリゲータは少数の車両を管理することで、車両と電力網との間で送受電可能な容量を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-115704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、いわゆるV2G(Vehicle to Grid)は、電動車両の蓄電池に蓄積されている電気エネルギーを、「スマートグリッド」と呼ばれる次世代電力網に送ることである。スマートグリッドに電動車両を接続することで、電動車両に蓄積した電力をほかの場所でも使えるようになる。V2Gでは、電動車両を「乗り物」としてだけではなく、電力の需要と供給のバランスを助ける「インフラ」として活用することができる。本発明者は、V2Gに電動車両を参加させる技術において、電動車両をより適切に制御し、電動車両への電力需要の分担をより最適化したいと考えている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示される電力調整装置は、電力系統に接続された複数の電動車両の車両情報を取得する処理と、車両情報を基に、予め定められた特性に応じた複数のグループに電動車両を分ける処理と、電力系統の電力需要調整時に電動車両の充放電の負担をグループ毎に調整する処理とが実行されるように構成されていてもよい。かかる構成によって、電動車両をより適切に制御し、電動車両への電力需要の分担をより最適化できる。
【0007】
電力調整装置は、電動車両の車両情報を記憶する記憶部を有していてもよい。記憶部には、電動車両が所属したグループが記憶されてもよい。
【0008】
車両情報には、電動車両に搭載された車載電池の充放電能力が含まれていてもよい。この場合、電動車両を分ける処理では、車載電池の充放電能力に基づいて、複数のグループに電動車両が分けられるとよい。また、車両情報には、電動車両の分類情報が含まれていてもよい。この場合、電動車両を分ける処理では、分類情報を基に、BEVのグループとBEVを除くグループとに、複数の電動車両が分けられてもよい。
【0009】
BEVを除くグループには、車両駆動用の車載電池と内燃機関とを備え、内燃機関によって発電された電気が車載電池に充電されるように構成された電動車両と、燃料電池が搭載された燃料電池車とが含まれてもよい。この場合、電力調整装置は、電力系統の電力需要調整が下げDRであるときに、BEVのグループよりも、BEVを除くグループの放電が優先されるように構成されてもよい。また、電力調整装置は、電力系統の電力需要調整が上げDRであるときに、BEVのグループよりも、BEVを除くグループの充電が優先されるように構成されてもよい。また、電力調整装置は、電力系統の電力需要調整が上げDRであるときに、BEVを除くグループよりも、BEVのグループの充電が優先されるように構成されてもよい。
【0010】
また、車両情報には、電動車両に搭載された車載電池の最大充電容量が含まれていてもよい。この場合、電動車両を分ける処理では、車載電池の最大充電容量に基づいて、複数のグループに電動車両が分けられてもよい。
【0011】
また、電力調整装置は、電動車両に対して、必要充電量が設定できるように構成されていてもよい。そして、車両情報には、電動車両に搭載された車載電池の最大充電容量が含まれてもよく、電動車両を分ける処理では、車載電池の最大充電容量から必要充電量を引いた余裕容量に基づいて、電力系統に接続された複数の電動車両が複数のグループに分けられてもよい。
【0012】
また、車両情報には、電動車両に搭載された車載電池の劣化度が含まれていてもよい。電動車両を分ける処理では、車載電池の劣化度に基づいて、電力系統に接続された複数の電動車両が複数のグループに分けられてもよい。また、車両情報には、電動車両に搭載された車載電池の温度情報が含まれていてもよい。電動車両を分ける処理では、車載電池の温度に基づいて、電力系統に接続された複数の電動車両が複数のグループに分けられてもよい。
【0013】
また、電力調整装置は、電動車両毎に、電力系統の電力需要調整時に積極的に参加させることを設定できるように構成されていてもよい。この場合、電動車両を分ける処理では、電力系統の電力需要調整時に積極的に参加させることが設定されているか否かで、電力系統に接続された複数の電動車両が複数のグループに分けられてもよい。
【0014】
また、調整する処理では、電力系統の電力需要調整が上げDRであるときと下げDRであるときとで、グループ間の電力需要の負担が異なっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、V2Gシステム10の概要を示す模式図である。
図2図2は、アグリゲーションコーディネータ11からの電力需要Dxの変化を示す模式的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、ここで開示の実施の形態を説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特にここでの開示を限定することを意図したものではない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、V2Gシステム10の概要を示す模式図である。V2Gシステム10には、図1に示されているように、アグリゲーションコーディネータ11、電力系統12(grid)、需要家13、発電設備14、リソースアグリゲータ16、V2G機器V1~V3が含まれている。V2G機器V1~V3に接続された電動車両は、それぞれグループG1~G3に分けられて、V2G機器V1~V3を通じてリソースアグリゲータ16によって制御される。
【0018】
アグリゲーションコーディネータ11は、リソースアグリゲータ16が制御した電力量を束ね、一般送配電事業者や小売電気事業者と直接電力取引を行う事業者である。アグリゲーションコーディネータ11は、例えば、電力会社がこれを担う。
【0019】
電力系統12は、電力を需要家の受電設備に供給するための、発電・変電・送電・配電を統合したシステムである。電力系統には、例えば、発電所からの送電系統や、送電系統から末端の需要家に対して電力を供給する配電系統などが含まれうる。リソースアグリゲータ16が関与する電力系統12は、スマートグリッド(次世代送電網)である。スマートグリッドとは、電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化できる送電網である。スマートグリッドでは、専用の機器やソフトウェアが、送電網の一部に組み込まれている。そのため、スマートグリッドでは、送電の拠点が分散され、需要家と供給側との双方から電力のやりとりができるように構成されている。
【0020】
需要家13は、電気の供給を受けて使用している者をいう。発電設備14は、地域の太陽光発電や、風力発電や、小型水力発電や、燃料電池などである。需要家側エネルギーリソースの保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させることは、デマンドリスポンス(DR)と称される。需要家13にとってのデマンドリスポンスは、需要制御のパターンによって、需要を減らす(抑制する)「下げDR」、需要を増やす(創出する)「上げDR」の二つに区分される。
【0021】
リソースアグリゲータ16は、一般には、電力の需要家とVPPサービス契約を直接締結してリソース制御を行う事業者である。ここで、バーチャルパワープラント(VPP)とは、一般的には、需要家、電力系統に直接接続されている発電設備や蓄電設備の保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、発電所と同等の機能を提供することである。
【0022】
この実施形態では、リソースアグリゲータ16は、電動車両をエネルギーリソースとして利用し、デマンドリスポンス(DR)に寄与する。電動車両をエネルギーリソースとして利用する場合には、リソースアグリゲータ16は、電力系統で電力が余っているときには、電動車両に電力を貯め、電力系統で電力が不足するときには、電動車両に貯められた電力を電力系統に送る。このことで、電動車両が接続されたマイクログリッド(電力網)の電力需要が調整されうる。
【0023】
V2G機器V1~V3は、電動車両を電力系統12に接続するための機器である。なお、図1では、V2G機器V1~V3は、3つ図示されているだけであるが、当然ながらこれに限定されない。リソースアグリゲータ16が関与する電力系統12には、複数のV2G機器V1~V3が接続されており、V2G機器V1~V3を通じて複数の電動車両が電力系統12に接続される。この実施形態では、複数の電動車両が、BEVのグループG1と、BEVを除くグループG2,G3に分かれており、それぞれV2G機器V1~V3を通じて電力系統12に接続されている。V2G機器V1~V3は、各電動車両を電力系統12に接続している。図1では、複数の電動車両が属するグループG1~G3に対して、それぞれ1つのV2G機器V1~V3があるように描かれているが、実際を必ずしも反映していない。V2G機器V1~V3は、例えば、1つのV2G機器に一台の電動車両が接続されているとよい。複数の電動車両が属するグループG1~G3では、それぞれ電動車両の数に応じた複数台のV2G機器がある。なお、電動車両のグループ分けは、リソースアグリゲータ16の制御に関わるグループ分けである。電動車両のグループ分けは、例えば、リソースアグリゲータ16が、V2G機器V1~V3を通じて行なうことができる。
【0024】
リソースアグリゲータ16は、V2Gシステム10を管理する管理するサーバ60を備えている。サーバ60は、アグリゲーションコーディネータ11,V2G機器V1~V3,需要家13および発電設備14に、通信ネットワークを通じて通信可能に接続されている。通信ネットワークNWは、有線であるか無線であるかを問わず、インターネットのような通信ネットワークでもよいし、電力網を活用した電力線通信を利用した通信ネットワークでもよい。サーバ60は、例えば、リソースアグリゲータ16が管理する設備に設けられる。サーバ60は、通信ネットワークNWを通じて国内で機能するように構成されているとよく、サーバ60自体は、国外に設置されていてもよい。サーバ60は、一台のコンピュータで実現されていてもよいし、複数台のコンピュータの協働処理で実現されていてもよい。サーバ60の各種処理は、サーバ60だけでなく、アグリゲーションコーディネータ11のコンピュータや、需要家13のコンピュータや、発電設備14のコンピュータや、V2G機器V1~V3や、電動車両のコンピュータなどとの協働処理で実現されうる。V2G機器V1~V3や電動車両のコンピュータなどには、リソースアグリゲータ16に対応する所要のソフトウェアが組み込まれているとよい。
【0025】
アグリゲーションコーディネータ11は、図1に示されているように、リソースアグリゲータ16に電力需要に対して調整する制御を要求する(D1)。リソースアグリゲータ16は、アグリゲーションコーディネータ11との契約に沿って、かかる制御要求に応える(R1)。リソースアグリゲータ16に対して求められる調整は、電力需要を減らす(抑制する)「下げDR」、電力需要を増やす(創出する)「上げDR」の2つである。
【0026】
ところで、V2G機器V1~V3を通じて電力系統12に接続される電動車両には、いわゆるプラグインハイブリッド車両(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、プラグインレンジエクステンダー式のEV(RexEV:Range Extender Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)、純電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)などのいろいろな種類がある。これらの電動車両は、車載電池に求められる性能が異なる。また、電動車両には、バスやトラックのような車種も含まれうる。プラグイン機能が付属しないハイブリッド車両は、車載電池を有するが、V2Gシステムへは接続できない。これら、電動車両には、それぞれに合った特性を有する電池が搭載される傾向がある。
【0027】
例えば、プラグイン機能が付属しないハイブリッド車両に搭載される車載電池では、車載電池がリチウムイオン二次電池である場合には、高出力での充放電に対してもリチウムが析出しにくいことや、内部抵抗が低いことなど、所要の特性を有している。これらの特性は、例えば、活物質や活物質層の密度や電解液などの工夫によって実現されている。車載電池に関して、高出力での充放電が可能な特性を有する電池を高出力型と称する。高出力型であるか否かは、例えば、車載電池が許容する電流量で評価されうる。また、このような車載電池では、例えば、一セル当たりに120~250A程度の電流量が許容されうる。
【0028】
プラグイン機能が付属しないハイブリッド車両の駆動用電源として用いられるリチウムイオン二次電池の典型例として、正極活物質にニッケルマンガンコバルトを含有する、いわゆるNMC三元系のリチウム含有遷移金属複合酸化物が用いられ、かつ、負極活物質にグラファイトが用いられたり、電解液にエチレンカーボネートやエチルメチルカーボネートが用いられたりする。例えば、ハイブリッド車両に搭載されている大型の角形電池では、二次電池の劣化を抑制しつつ、30Itで120A程度の充放電電流が実現されうる。今後、さらに研究が進むことによって、ハイブリッド車両の駆動用電源はさらに進化し、さらに高い電流値での充電が可能になることが期待されている。ここで、Itは、It(A)=定格容量(Ah)/1(h)で定義される。
【0029】
これに対して、純電気自動車は、発電機を備えていない。車載電池の充電容量が高ければ高いほど、1回の充電で走行できる航続距離が長くなる。このため、車載電池は、回生エネルギーを回収する性能よりも高容量であることが求められる傾向がある。純電気自動車の駆動用電源として用いられるリチウムイオン二次電池は、正極活物質や負極活物質の密度を高めたり、構造が見直されたりすることなどでさらに高容量化が図られている。
【0030】
高容量である特性に特化した高容量型の電池では、ハイレートでの充放電によって劣化が進みやすく、大きな電流値での充電が制限される傾向がある。このため、例えば、回生エネルギーが得られた場合でも充電が制限される場合が多くなる。例えば、純電気自動車に搭載されている大型の角形電池では、二次電池の劣化が抑制されるように、3Itで150A程度に充放電電流の上限値が抑えられる。今後、さらに研究が進むことによって、純電気自動車の駆動用電源はさらに進化し、さらに高い電流値での充電が可能になることが期待されるが、現状では、プラグイン機能が付属しないハイブリッド車両に比べて、容量あたりの電流値の上限が低く抑えられる傾向がある。
【0031】
プラグインハイブリッド車両やプラグインレンジエクステンダー式のEVは、内燃機関と発電機を備えている。燃料電池車は、燃料電池を備えている。燃料電池車は、外部電源へ接続する機能(プラグイン)を付属させることができ、外部電源へ接続する機能が付属されることでV2Gシステムへ参加させることが可能である。これらは、走行中にでも電動車両において発電して車載電池に充電できる。他方で、燃費を向上させるため、回生エネルギーは積極的に充電したい。このため、プラグイン機能が付属したハイブリッド車両やレンジエクステンダー式のEVや燃料電池車の車載電池は、高容量であることと、ハイレートで充電できることをバランスよく両立させるが求められる傾向がある。以下、プラグイン機能が付属したハイブリッド車両やレンジエクステンダー式のEVや燃料電池車は、適宜に、プラグインハイブリッド車両等、とする。プラグインハイブリッド車両等とで、車載電池の特性が異なる場合がある。また、車種や年式によっても、搭載されている車載電池の特性が異なりうる。
【0032】
リソースアグリゲータ16は、アグリゲーションコーディネータ11からの電力需要の要求に応じて、V2G機器V1~V3に制御信号を送り、V2G機器V1~V3に接続された電動車両の充放電を制御する。アグリゲーションコーディネータ11からの電力需要の要求は、時間毎に刻々と変化する。また、V2G機器V1~V3を通じて電力系統12に接続された電動車両の数なども変化する。アグリゲーションコーディネータ11からの電力需要の要求が急激に大きくなるような場合もある。
【0033】
アグリゲーションコーディネータ11からの電力需要Dxを調整する際に、V2Gシステムに参加する電動車両の数が少ない場合などには、電動車両から大きな電力を放電したり、電動車両に大きな電力を充電したりする必要が生じうる。このとき、V2G機器V1~V3を通じて電力系統12に接続された複数の電動車両が同じ条件で充放電するように制御することは、電動車両に搭載された車載電池の劣化が小さく抑えるとの観点で、必ずしも適当でない。また、電力需要Dxの細かい変動に合わせて、車載電池への入出力を細かく変化させることは、電流値によっては車載電池にとって劣化要因となり得る。さらに車載電池の性能は、使用により劣化するので、劣化の度合いは、電動車両によってそれぞれ異なる。また、ユーザが電動車両に必要とする充電量も様々であり、V2Gシステムへの参加に対するユーザのニーズもそれぞれ異なる。このようなことに、本発明者は気付いた。そこで、V2Gシステムに参加する複数の電動車両が、電力需要をより適切に分担しうる電力調整装置62を提案する。
【0034】
電力調整装置62は、コンピュータによって実現されうる。電力調整装置62の各処理や機能は、電力調整装置62を構成するコンピュータの演算装置(プロセッサ、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-processing unit)とも称される)や記憶装置(メモリーやハードディスクなど)によって処理される。例えば、電力調整装置62の各構成は、コンピュータによって具現化されるデータを予め定められた形式で記憶するデータベース、データ構造、予め定められたプログラムに従って所定の演算処理を行う処理モジュールなどとして、または、それらの一部として具現化されうる。電力調整装置62の各処理や機能は、複数のコンピュータの協働処理によって具現化されてもよい。図1に示されているように、電力調整装置62は、リソースアグリゲータ16が管理するサーバ60の一部機能として実現されうる。
【0035】
電力調整装置62は、以下の処理A~Cが実行されるように構成されている。
処理Aは、電力系統12に接続された複数の電動車両の車両情報を取得する処理である。
処理Bは、車両情報を基に、予め定められた特性に応じた複数のグループG1~G3に電動車両を分ける処理である。
処理Cは、電力系統12の電力需要調整時に電動車両の充放電の負担をグループG1~G3毎に調整する処理である。
【0036】
この電力調整装置62によれば、複数の電動車両が特性に応じたグループG1~G3に分けられる。そして、V2Gシステムに参加する際の充放電の負担がグループG1~G3毎に調整される。このため、V2Gシステムに複数の電動車両が参加する場合に、グループG1~G3毎に電力需要をより適切に分担させることができる。これにより、例えば、グループG1~G3毎に、車載電池の性能や特性、ユーザのニーズなどを合わせることで、車載電池の性能劣化を抑制したり、ユーザのニーズに合わせて電動車両をV2Gシステムに参加させたりすることができ、車載電池をより適切に制御できたり、電力需要の分担をより最適化できたりする。以下、各処理の具体例を説明する。
【0037】
処理Aでは、電力系統12に接続された複数の電動車両の車両情報が取得される。取得される車両情報は、例えば、処理Bにおける電動車両のグループ分けに寄与する情報が含まれているとよい。ここでは、処理Cにおいて、電力系統12の電力需要調整時に電動車両の充放電の負担がグループ毎に調整される。このため、電動車両の充放電の負担を調整する上で意義のある情報が含まれているとよい。また、処理Aでは、車種もしくは車台番号など車が特定できる情報を車両情報として取得するなどして、純電気自動車であるか、プラグインが付属したハイブリッド車両等であるかを区別するようにしてもよい。純電気自動車は、自車内で発電ができないため、所要の充電量を確保するニーズがある。このため、V2Gシステムに参加する際に充電されている量を確保するとの制約がある。プラグインハイブリッド車両は、自車で発電が可能である。プラグインハイブリッド車両では、燃費向上などを考慮すると、V2Gシステムに参加する際に必要量が充電されていることが望ましい。しかしながら、純電気自動車に比べてV2Gシステムに参加する際に絶対的な制約は小さい。
【0038】
電池情報の取得方法としては、例えば、V2G機器V1~V3を通じて電動車両のECUなどの制御装置から、電動車両に記憶された情報を取得する方法が挙げられる。
【0039】
この場合、取得される車両情報は、車種情報(車種もしくは車台番号など車が特定できる情報)でもよい。この場合、リソースアグリゲータ16は、これらの車種情報に基づいて、リソースアグリゲータ16が管理している情報(データベース)から電池情報を検索したり、取得したりすることができる。また、取得される車両情報は、電池情報(メーカ・型番・電池種類・劣化状態等)でもよい。この場合、リソースアグリゲータ16は、リソースアグリゲータ16が管理している情報から電池情報を検索したり、取得したりすることができる。また、取得される車両情報は、車両毎に設定されたIDなどでもよい。この場合、IDは、リソースアグリゲータ16が車両に割り当てた契約番号でもよい。この場合、リソースアグリゲータ16は、電動車両がV2G機器V1~V3を通じてV2Gシステムに接続された時に、契約番号に基づき車載電池の電池情報を検索したり、取得したりすることができる。
【0040】
電力調整装置62は、電動車両の車両情報を記憶する記憶部62aを有していてもよい。この場合、車両情報が取得された電動車両については、記憶部62aで記憶されるように構成されていてもよい。また、記憶部62aには、複数の電動車両の車両情報が予め記憶されていてもよい。複数の電動車両の車両情報が記憶部62aに記憶されている場合には、処理Aでは、記憶部62aから複数の電動車両の車両情報が取得されるとよい。記憶部62aに記憶されていない電動車両の車両情報は、電動車両との通信によって取得されるように構成されているとよい。記憶部62aには、処理Bで、複数の電動車両をグループ分けする際に所属させるグループG1~G3を特定する情報が含まれていてもよい。所属させるグループG1~G3を特定する情報が記憶部62aに含まれていることによって処理Bが容易になる。例えば、一度、グループ分けされた電動車両は、その際に所属したグループG1~G3が記憶部62aに記憶されているとよい。
【0041】
処理Bでは、車両情報を基に、電動車両の予め定められた特性に応じた複数のグループG1~G3に電動車両を分けられる。例えば、処理Aで取得される車両情報には、電動車両に搭載された車載電池の充放電能力が含まれていてもよい。そして、処理Bでは、車載電池の充放電能力に基づいて、複数のグループG1~G3に電動車両が分けられるとよい。この場合、処理Cにおいて、電力系統12の電力需要調整時に電動車両の充放電の負担がグループG1~G3毎に調整される。車載電池の充放電能力に基づいて、電動車両が複数のグループG1~G3に分けられているので、車載電池の劣化が抑制される。
【0042】
このように車両情報には、電動車両の分類情報が含まれている。電動車両を分ける処理には、分類情報を基に、BEVのグループG1と、BEVを除くグループG2,G3とに分ける処理が含まれうる。この場合、純電気自動車であるか否かでグループG1~G3が分けられる。処理Cでは、それぞれのグループG1~G3に適した制御が施される。この場合、リソースアグリゲータ16は、例えば、純電気自動車であるグループG1には、デマンドリスポンスに対して安定して一定の電流値で充電や放電を行なう役割を担わせることができる。純電気自動車でない車両には、短期的なデマンドリスポンスの調整に寄与させる役割を担わせることができる。BEVを除くグループG2,G3には、車両駆動用の車載電池と内燃機関とを備え、内燃機関によって発電された電気が車載電池に充電されるように構成された電動車両と、燃料電池が搭載された燃料電池車が含まれる。BEVを除くグループには、例えば、プラグインハイブリッド車両等が含まれ、純電気自動車と区別される。
【0043】
例えば、図2は、アグリゲーションコーディネータ11からの電力需要Dxの変化を示す模式的なグラフである。アグリゲーションコーディネータ11からの電力需要Dxは、図2に示されているように刻々と変化する。図2に示された例では、例えば、一日でも深夜から早朝(例えば、午前0時から6時)は、電力需要Dxが小さい。夜明け頃(例えば、午前6時頃)から電力需要Dxが拡大し、夕食の時間に掛けて電力需要Dxがピークを迎える。そして就寝する時間帯から徐々に電力需要Dxは減少していく。また、W1の部分が拡大して示されているように、電力需要Dxは、詳細に見ると小刻みに変動している。さらに、電力需要Dxの変化(実負荷変動)は、周期毎に分解して捉えることができる。例えば、図2に示されているように、電力需要Dxは、長周期成分D1と、短周期成分D2と、極短周期成分D3に分解して捉えられる。例えば、長周期成分D1を30分間隔で電力需要の変化を捉えた波形とし、短周期成分D2を5分間隔で電力需要の変化を捉えた波形とし、さらに極短周期成分D3を10秒間隔で電力需要の変化を捉えた波形とするなどして考えることができる。ここで、電力需要Dxの変動の波を捉える周期は、任意に設定できる。
【0044】
この場合、リソースアグリゲータ16は、BEVのグループG1など、比較的高容量の車載電池を備えた電動車両のグループが長周期成分D1を担うように制御するとよい。長周期成分D1を担う場合には、電動車両への入出力は緩やかに変化させるとよい。このため、高容量型の特性を有するBEVの車載電池でも劣化が抑えられる。BEVを除くグループG2,G3など、回生エネルギーを回収する性能により優れた車載電池を備えた電動車両のグループは、短周期成分D2や極短周期成分D3などを担うように制御するとよい。図1に示された形態では、BEVを除くグループは、回生エネルギーを回収する性能、換言すると、高出力型の特性に応じて、グループがさらに細分化され、短周期成分D2を担うグループG2と、極短周期成分D3を担うグループG3とに分けられている。このように、BEVのグループG1やBEVを除くグループG2,G3は、種々の特性に応じて、さらに細分化されていてもよい。そして、電力調整装置62は、各グループに対してそれぞれの特性に応じて、電力需要Dxの分担を調整してもよい。これにより、各電動車両を特性やニーズに応じて適切に、V2Gシステムに参加させることができる。
【0045】
例えば、電力調整装置62は、電力系統12の電力需要調整が「下げDR」であるときに、BEVのグループG1よりも、BEVを除くグループG2,G3の放電が優先されるように構成されていてもよい。「下げDR」であるときは、電力需要を抑制する調整が必要である。この場合、V2Gシステムでは、リソースアグリゲータ16は、電動車両への充電を抑え、かつ、電動車両から放電することによって、デマンドリスポンスに応えることができる。このとき、例えば、BEVを除くグループG2,G3は、自車での発電が可能であり、BEVのグループG1よりも必要な充電量が低く設定できる。このため、BEVを除くグループG2,G3は、下げDRに対して優先して放電するように制御されてもよい。
【0046】
また、電力調整装置62は、電力系統12の電力需要調整が「上げDR」であるときには、BEVのグループG1よりも、BEVを除くグループG2,G3の充電が優先されるように構成されてもよい。「上げDR」であるときは、電力需要を創出する調整が必要である。この場合、V2Gシステムでは、リソースアグリゲータ16は、電動車両へ充電し、需要を創出することによって、デマンドリスポンスに応えることができる。このとき、BEVのグループG1よりも、BEVを除くグループG2,G3の充電が優先されるように構成されていてもよい。これにより、デマンドリスポンスに対するBEVを除くグループG2,G3の利用頻度を上げることができる。これにより、例えば、BEVのグループG1のデマンドリスポンスに対する制御への参加を抑制でき、BEVのグループG1の車載電池の劣化を抑制できる。
【0047】
なお、この場合でも、BEVのグループG1は、デマンドリスポンスに対して一定の電流値で安定して充放電するように利用されうる。BEVを除くグループG2,G3は、BEVのグループG1の充放電でカバー仕切れない電力需要調整が生じた場合に対応するようにするとよい。この場合、BEVのグループG1がデマンドリスポンスに対してベースとなる充放電を担い、かつ、BEVを除くグループG2,G3が短期的な電力需要の増減部分を担うようにしてもよい。この場合、BEVのグループG1の充放電における電流値を安定させることができる。このため、BEVのグループG1の充放電の電流値が変動することに起因する劣化を抑制することができる。BEVを除くグループG2,G3では、充放電の電流値が変動するが、BEVを除くグループG2,G3は、いわゆる高出力型の電池が搭載されている傾向が高い。このため、BEVのグループG1よりも充放電の電流値の変動に対して劣化しにくい。このように、電力系統12の短期的な電力需要の増減に対して、BEVを除くグループG2,G3の充放電で対応するように構成されていてもよい。
【0048】
他方で、電力系統12の電力需要調整が上げDRであるときに、BEVを除くグループG2,G3よりも、BEVのグループG1の充電が優先されるように構成されてもよい。BEVを除くグループG2,G3は、自車での発電が可能であり、BEVのグループG1よりも必要な充電量が低く設定できる。また、ハイレートでの充放電が繰り返されることに対して劣化しにくい。これに対して、BEVのグループG1は、自車での発電ができないため、必要な充電量が高く設定される。このため、BEVのグループG1は、電力需要調整が上げDRであるときに優先して充電されるとよい。これにより、BEVのグループG1では必要な充電量が確保されやすくなる。
【0049】
車両情報には、電動車両に搭載された車載電池の最大充電容量が含まれていてもよい。電動車両を分ける処理には、車載電池の最大充電容量に基づいて、複数のグループに電動車両を分ける処理が含まれていてもよい。この場合、例えば、純電気自動車でも、小型で近距離移動の用途で、車載電池の容量が小さいものがある。このような純電気自動車を、大型で車載電池の容量が大きいものと区別して異なるグループとしてもよい。大型で車載電池の容量が大きい電動車両は、例えば、デマンドリスポンスに対して安定して一定の電流値で充電したり、放電したりするのに適正している。これに対して、車載電池の容量が小さい車両は、例えば、短期的なデマンドリスポンスの調整に寄与するように利用するのに適している。また、車載電池の最大充電容量で分けることに変えて、電動車両の大きさ、例えば、車両重量で分けたり、満充電でのEV走行可能な距離で分けたりしてもよい。
【0050】
例えば、電力調整装置62は、電動車両に対して必要充電量を設定できるように構成されていてもよい。必要充電量は、電動車両において必要とされる充電量である。必要充電量は、電力調整装置62や電動車両に予め設定できるように構成されているとよい。必要充電量は、例えば、電動車両のユーザが任意に設定できるとよい。この場合、電力調整装置62は、車載電池の最大充電容量から必要充電量を引いた容量の大きさを得ることができる。ここでは、車載電池の最大充電容量からユーザが必要な充電量を引いた容量を、余裕容量という。電動車両を分ける処理では、各電動車両の余裕容量に基づいて、電力系統に接続された複数の電動車両が複数のグループに分けられるようにしてもよい。
【0051】
この場合、必要充電量が、例えば、車載電池のSOC50%であるとすると、余裕容量は、車載電池の最大充電容量であるSOC100%から車載電池のSOC50%の容量を引いた充電量となる。また、車載電池の最大充電容量は、車載電池が劣化することを考慮すると変化しうる。例えば、SOH90%であれば、車載電池の最大充電容量は、初期の満充電容量の90%となる。この場合、必要充電量が、例えば、車載電池の初期の満充電容量に対する50%であるとすると、余裕容量は、初期の満充電容量の40%として得られる。このように、余裕容量を基に、電力系統に接続された複数の電動車両が複数のグループに分けることによって、リソースアグリゲータ16は、車載電池をエネルギーリソースとして利用する際の容量の大きさで、電動車両をグループ分けすることができる。リソースアグリゲータ16は、例えば、余裕容量が大きい車両には、安定的にV2Gシステムに参加できるように制御し、余裕容量が小さい車両には、主にデマンドリスポンスの変動量を分担して吸収するように制御してもよい。
【0052】
また、車両情報には、電動車両に搭載された車載電池の劣化度が含まれていてもよい。車載電池の劣化度は、電動車両のECU(電子制御装置)などで、評価されうる。車載電池の劣化度は、健全度や劣化状態を表す指標であり、SOH(State of Health)とも称される。車載電池の劣化度は、車載電池の初期の満充電容量(Ah)を100%とした際の、劣化時の満充電容量(Ah)の割合で表されうる。この場合、車載電池がSOH50%となった場合には、満充電の状態にしても初期の半分の容量しか持たない電池になっている。電動車両を分ける処理では、車載電池の劣化度に基づいて、電力系統12に接続された複数の電動車両のグループに分けられてもよい。
【0053】
車両情報には、電動車両に搭載された車載電池の温度情報が含まれていてもよい。この場合、車載電池の温度情報は、例えば、電動車両のECUなどで検知されているとよく、電力調整装置62は、V2G機器V1~V3を通じてV2G機器V1~V3に接続された電動車両から、車載電池の温度情報が取得されるとよい。電動車両を分ける処理では、車載電池の温度に基づいて、電力系統に接続された複数の電動車両が複数のグループに分けられるとよい。この場合、電動車両に搭載された車載電池の温度は、直射日光が当たる場所に電動車両が置かれている場合など、環境温度に応じて刻々と変化しうる。このため、電力調整装置62は、V2G機器V1~V3を通じて所定のタイミングで、車載電池の温度情報を更新し、適宜に、電動車両のグループを変更するように構成されていてもよい。この場合、温度が高い電動車両のグループや、寒冷地で外に置かれて極度に冷えた車載電池のグループに対しては、充放電を控えたり、温度に対して適正なSOCに調整したりするとよい。
【0054】
また、極度に冷えた車載電池のグループに対しては、さらに、車載電池を温めるようにヒーターの有無でグループを分けてもよい。この場合、車載電池を温めるようにヒーターを有するグループでは、V2G機器V1~V3を通じて、車載電池を温めるようにヒーターを作動させてもよい。また、温度が高い電動車両のグループに対しては、さらに車載電池を冷やす冷却装置の有無でグループを分けてもよい。この場合、車載電池を冷やす冷却装置を有するグループでは、V2G機器V1~V3を通じて、車載電池を冷やすように冷却装置を作動させてもよい。これにより、劣化を抑制するのに適切な温度に車載電池を調整しつつ、電動車両をV2Gシステムに参加させることができる。この場合、V2G機器V1~V3や電動車両は、かかる制御が可能なように、対応したソフトウェアが組み込まれているとよい。
【0055】
また、電力調整装置62は、電動車両毎に、電力系統12の電力需要調整時に電動車両を積極的に参加させることを設定できるように構成されていてもよい。かかる設定は、電力調整装置62に記憶されるように構成されていてもよい。また、かかる設定は、電動車両にインストールされた対応するソフトウェアの機能によって、電動車両の制御装置(ECU)などに記憶されるように構成されていてもよい。この場合、電動車両を分ける処理では、電力系統12の電力需要調整時に積極的に参加させることが設定されているか否かで、電力系統12に接続された複数の電動車両が複数のグループに分けられるとよい。このように、複数の電動車両が、電力系統12の電力需要調整時に積極的に参加させることが設定されているか否かによって分けられる。リソースアグリゲータ16は、電力系統12の電力需要調整時に積極的に参加させることが設定されているグループに対しては、例えば、車載電池の状態を鑑みて許容される場合には、常時、電力系統12の電力需要調整に参加させるように制御してもよい。電力系統12の電力需要調整時に積極的に参加させることが設定されていないグループは、電力系統12の電力需要調整時に積極的に参加させることが設定されているグループで、電力需要調整が賄えないときに、電力需要調整に参加させるように制御してもよい。
【0056】
このように、電動車両を分ける処理は、例えば、上記のようにいくつかの分け方がある。これらの分け方は、階層的に組み合わせてもよい。例えば、図1に示されているように、複数の電動車両をまずは、BEVのグループG1と、BEVを除くグループG2,G3とに分け、さらにそれぞれのグループを、車載電池の劣化度で分けてもよい。さらにそれぞれのグループを電動車両の余裕容量に基づいて複数のグループに分けてもよい。このように、分け方を階層的に組み合わせることによって、電動車両をより具体的に精度良く分けることができる。そして、リソースアグリゲータ16は、それぞれの電動車両をより適切な制御できる。また、グループの分け方、分ける手順などは、上記に限定されない。
【0057】
調整する処理Cでは、電力系統12の電力需要調整が上げDRであるときと下げDRであるときとで、グループ間の電力需要の負担が異なるように構成されているとよい。これによって、グループ毎に、電力需要の負担が適切に調整されるので、各グループの車載電池の劣化が抑制されやすい。
【0058】
以上、ここでの開示について、種々説明した。特に言及されない限りにおいて、ここで挙げられた実施形態などはここでの開示を限定しない。また、ここでの開示の実施形態は、種々変更でき、特段の問題が生じない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適宜に組み合わされうる。
【符号の説明】
【0059】
10 V2Gシステム
11 アグリゲーションコーディネータ
12 電力系統
13 需要家
14 発電設備
16 リソースアグリゲータ
60 サーバ
62 電力調整装置
62a 記憶部
D1 長周期成分
D2 短周期成分
D3 極短周期成分
Dx 電力需要
G1-G3 グループ
図1
図2