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特許7450592癌治療におけるFGFR2阻害剤単独または免疫刺激剤との組み合わせ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】癌治療におけるFGFR2阻害剤単独または免疫刺激剤との組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240308BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240308BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240308BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20240308BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20240308BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240308BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20240308BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240308BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240308BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240308BHJP
   A61P 15/14 20060101ALI20240308BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240308BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240308BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20240308BHJP
   C07K 14/71 20060101ALI20240308BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20240308BHJP
   C12Q 1/6841 20180101ALI20240308BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240308BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240308BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240308BHJP
   C12N 15/52 20060101ALN20240308BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K38/17
A61K47/64
A61K47/60
A61K45/06 ZNA
A61P35/00
A61P13/10
A61P1/04
A61P43/00 121
A61P37/04
A61P15/14
C07K19/00
C07K16/00
C07K16/30
C07K14/71
C07K14/705
C12Q1/6841 Z
G01N33/53 Y
G01N33/53 M
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/52 Z
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021195960
(22)【出願日】2021-12-02
(62)【分割の表示】P 2018526590の分割
【原出願日】2016-11-22
(65)【公開番号】P2022046480
(43)【公開日】2022-03-23
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】62/258,731
(32)【優先日】2015-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/314,174
(32)【優先日】2016-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/379,094
(32)【優先日】2016-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515302853
【氏名又は名称】ファイヴ プライム セラピューティクス インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピアース, クリステン
(72)【発明者】
【氏名】パワーズ, ジェニン
(72)【発明者】
【氏名】パレンシア, セルバンド
(72)【発明者】
【氏名】シコルスキ, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ゴーダッシ, マジッド
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナン, カルティーク
【審査官】平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/017600(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/112900(WO,A1)
【文献】特表2013-534922(JP,A)
【文献】国際公開第2013/154206(WO,A1)
【文献】特許第7349787(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K39/00~39/44
45/00
A61P 1/00~43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者からの腫瘍試料において、胃癌又は膀胱癌がFGFR2-IIIbを過剰発現するかどうかを腫瘍試料の細胞における2+又は3+の免疫組織化学(IHC)シグナルにより決定することによって、非フコシル化抗FGFR2-IIIb抗体を用いた治療に対して応答する胃癌又は膀胱癌患者を同定することを助けるための方法であって、
治療が、PD-1抗体又は抗PD-L1抗体を投与することをさらに含み、
前記抗FGFR2-IIIb抗体が、(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(iii)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域、並びに(iv)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(vi)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域を含む、方法。
【請求項2】
少なくとも10%の腫瘍細胞、例えば、少なくとも20%、30%、40%、又は50%の腫瘍細胞が、2+又は3+のFGFR2-IIIb IHCシグナルを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
試料において、FGFR2遺伝子が増幅されているかどうかを決定することを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
a)癌が、胃癌であって、かつ、癌が少なくとも10%の腫瘍細胞において2+若しくは3+のFGFR2-IIIb IHCシグナルを有する;
b)癌が胃癌であって、かつ、癌が少なくとも10%の腫瘍細胞において3+のFGFR2-IIIb IHCシグナルを有する;
c)癌が胃癌であって、癌が少なくも10%の腫瘍細胞において3+のFGFR2-IIIb IHCシグナルを有し、かつFGFR2遺伝子が増幅されている;
d)癌が胃癌であって、癌が少なくも10%の腫瘍細胞において3+のFGFR2-IIIbI HCシグナルを有し、かつFGFR2遺伝子が増幅されていない;
e)癌が胃癌であって、かつ癌が少なくも10%の腫瘍細胞において2+のFGFR2-IIIbI HCシグナルを有する;
h)癌が膀胱癌であって、かつ癌が20又はそれ以上のHスコアを有する;
i)癌が膀胱癌であって、かつ癌が10~19のHスコアを有する;又は
j)癌が膀胱癌であって、かつ癌が10未満のHスコアを有する、
請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗FGFR2-IIIb抗体が、以下の特性の1つ以上を有する:
a.ヒトFGFR2-IIIbに、ヒトFGFR2-IIIcに対するよりも高い親和性で結合する、又はヒトFGFR2-IIIcに検出可能に結合しない;
b.ヒトFGF2のヒトFGFR2に対する結合を阻害する;
c.ヒトFGF7のヒトFGFR2に対する結合を阻害する;
d.マウス腫瘍モデルにおけるヒト腫瘍の増殖を阻害する;
e.ADCC活性を誘発する;並びに
.対照と比較して、マウス腫瘍モデルにおける腫瘍組織中のPD-L1陽性細胞、NK細胞、CD3+陽性T細胞、CD4+陽性T細胞、CD8+陽性T細胞、及びマクロファージの1つ以上の数を増加させることができる、
請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗FGFR2-IIIb抗体が
.配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;又は
.配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖
を含む、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗FGFR2-IIIb抗体が、ヒト化されているか、又はFab、Fv、scFv、Fab’、及び(Fab’)から選択される抗原結合断片である、請求項又はに記載の方法。
【請求項8】
前記抗FGFR2-IIIb抗体が、以下の特性の1つ以上を有する:
a.Asn297位のフコースを欠いている;
b.κ軽鎖定常領域を含む;
.Asn297位でフコシル化された同じアミノ酸配列を有する抗体と比較して、インビトロでの増強されたADCC活性を有する;並びに
.Asn297位でフコシル化された同じアミノ酸配列を有する抗体と比較して、FcガンマRIIIAに対する増強された親和性を有する、
請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
治療が、前記抗FGFR2-IIIb抗体を、少なくとも0.1、0.3、0.5、1、2、3、4、5、6、10、15、20、25、若しくは30mg/kgの用量、又は、6~10mg/kg、10~15mg/kg、若しくは6~15mg/kg等のそれらのmg/kg用量のいずれか2つで囲まれた範囲の用量で投与することを含む、請求項1~の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
胃癌又は膀胱癌患者が非フコシル化抗FGFR2-IIIb抗体を用いた治療に応答するかどうかを決定するためのキットであって、キットが、患者からの腫瘍試料において、胃癌又は膀胱癌がFGFR2-IIIbを過剰発現するかどうかを免疫組織化学(IHC)によって決定するための薬剤を含み、治療が、PD-1抗体又は抗PD-L1抗体を投与することをさらに含み、前記抗FGFR2-IIIb抗体が、(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(iii)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域、並びに(iv)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(vi)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、以下の3つの米国特許仮出願:2015年11月23日に出願された米国特許仮出願第62/258,731号、2016年3月28日に出願された同第62/314,174号、及び2016年8月24日に出願された同第62/379,094号の利益を主張するものであり、当該出願は、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、電子形式における配列表と一緒に出願されている。配列表は、2016年11月17日に作成され、103,517バイトのサイズである「2016-11-17_01134-0046-00PCT_SeqList_ST25.txt」と題されたファイルとして提供されている。電子形式の配列表の情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0003】
本出願は、癌の治療における線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)阻害剤の使用、場合によっては、PD-1またはPD-L1の阻害剤などの免疫刺激剤との組み合わせに関する。
【背景技術】
【0004】
線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーメンバーは、様々な程度で異なるFGFRに結合する異なるFGFにより、4種の公知のチロシンキナーゼ受容体である線維芽細胞増殖因子受容体1~4(FGFR1~4)、及びそれらのアイソフォームに結合する(Zhang et al.,J.Biol.Chem.281:15694,2006)。ヒトFGFR2のタンパク質配列は、例えば、GenBankローカスAF487553に提供されている。各FGFRは、3種の免疫グロブリン(Ig)様ドメイン(D1、D2及びD3)を含む細胞外ドメイン(ECD)、一回膜貫通へリックス、及び細胞内触媒キナーゼドメインからなる(Mohammadi et al.,Cytokine Growth Factor Revs,16:107,2005)。FGFは、主に受容体のD2及びD3における領域を介して受容体に結合する。D1及びD2の間のリンカーには、「アシッド・ボックス(acid box)」(AB)と呼ばれる連続した酸性アミノ酸のストレッチがある。D1及びABを含む領域は、リガンドへの結合により緩和される、受容体の自己制御に関与すると考えられている。
【0005】
FGFRは、様々なアイソフォームをもたらす、そのmRNAの複数の選択的スプライシングにより特徴づけられる(Ornitz et al.,J.Biol.Chem.271:15292,1996;FGFR2及びそのアイソフォームについてSwiss-Prot P21802及びアイソフォームP21802-1からP21802-20も参照されたい)。とりわけ、3種全てのIgドメインを含むフォーム(αアイソフォーム)、またはD1を含まず、D2及びD3ドメインの2種のIgドメインのみを含むフォーム(βアイソフォーム)がある。FGFR1~FGFR3において、全てのフォームが、IIIaと示されるD3の前半部分を含むが、2つの代替的エクソンがD3の後半部分に使用されることができ、これにより、IIIb及びIIIcフォームが得られる。FGFR2について、これらは、それぞれ、FGFR2-IIIb及びFGFR2-IIIc(または、単にFGFR2b及びFGFR2c)と示され;対応するベータフォームは、FGFR2(ベータ)IIIb及びFGFR2(ベータ)IIIcと示される。FGFR2-IIIc(K-sam-Iとも示される)は、FGF1及びFGF2の両方によく結合するもののKGFファミリーメンバーには結合しないが、FGFR2(K-sam-IIとも示される)のFGFR2-IIIbフォームは、FGF1及びKGFファミリーメンバー(FGF7、FGF10、及びFGF22)の両方に対し高親和性受容体である(Miki et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:246,1992)。実に、FGFR2IIIbが、KGFファミリーメンバーに対する唯一の受容体であり(Ornitz et al.,1996,op.cit.)、そのため、KGFRと示されている。
【0006】
FGFR及びそのアイソフォームは、様々な組織において、異なる発現をする。FGFR2-IIIb(ならびに、FGFR1及びFGFR3のIIIbフォーム)は、上皮組織に発現するが、FGFR2-IIIcは、間葉組織に発現する(Duan et al.,J.Biol.Chem.267:16076,1992;Ornitz et al.,1996,op.cit.)。これらの受容体の特定のFGFリガンドは、反対の発現パターンを有する。従って、FGF7(KGF)、FGF10、及びFGF22を含むKGFサブファミリーメンバーはFGFR2-IIIbのみに結合し(Zhang et al.,op.cit.)、かつ、間葉組織に発現し、よって、上皮細胞のパラクラインエフェクターであってもよい(Ornitz et al.,1996,op.cit.)。一方、FGF4サブファミリーメンバーFGF4~6は、FGFR2-IIIcに結合し、かつ、上皮及び間葉系の両方において発現し、よって、オートクラインまたはパラクライン機能のいずれかを有していてもよい。FGFR2のアイソフォーム及びそのリガンドの発現パターンのために、FGFR2は、上皮-間葉相互作用における役割を果たし(Finch et al.,Dev.Dyn.203:223,1995)、そのため、マウスにおけるFGFR2-IIIbのノックアウトが、胚性の欠陥及び死亡を引き起こす(De Moerlooze et al.,Development 127:483,2000)。
【0007】
KGF(FGF7)及びKGFR(FGFR2-IIIb)は、多くの膵癌において、過剰発現しており(Ishiwata et al.,Am.J.Pathol.153:213,1998)、それらの共発現は、予後の悪さと相関している(Cho et al.,Am.J.Pathol.170:1964,2007)。FGFR2遺伝子の体細胞突然変異は、子宮内膜(子宮)癌の大規模パネルの12%に見出され、様々な試験ケースにおいて、腫瘍細胞生存のために必須あった(Dutt et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105:8713,2008)。2種の腫瘍において、FGFR2突然変異は、アペール症候群に関連する、同じS252W置換であることが見出された。FGFR2の増幅と過剰発現は、予後が著しく悪い、未分化型びまん性胃癌と関連し、小分子化合物によるFGFR2活性の阻害は、そのような癌細胞の増殖を強く阻害した(Kunii et al.,Cancer Res.68:2340,2008;Nakamura et al.,Gastroenterol.131:1530,2006)。
【0008】
FGFR2の阻害剤は、抗体及びFGFR2 ECDドメインまたはFGFR2 ECD融合分子を含んでもよい。例えば、米国特許第8,101,723B2号には、例えば、ヒトFGFR2-IIIbに結合するが、FGFR2-IIIcにあまりよく結合しないかまたは結合しない、及びその逆も同様である、モノクローナル抗体が記載されている。米国特許公開第2015-0050273A1号には、FGFR2-IIIbに結合する、ある特定の非フコシル化抗体が記載されている。米国特許公開第US2013-0324701A1号には、例えば、FGFR2-IIIcの細胞外ドメイン及び融合パートナーを含む、特定のFGFR2 ECD融合分子が記載されている。追加のFGFR ECD融合分子が、米国特許第8,338,569B2号に記載されている。
【0009】
癌の遺伝子変化は、抗腫瘍免疫を媒介することができる多様なセットの抗原を提供する。T細胞受容体(TCR)を介した抗原認識によってT細胞応答が開始され、これは、活性化シグナルと阻害シグナルの間のバランスによって調節される。阻害シグナル、すなわち、「免疫チェックポイント」とは、自己免疫を防止することにより正常組織に重要な役割を果たす。免疫チェックポイントタンパク質の上方調節により、癌は抗腫瘍免疫を回避することができ得る。2つの免疫チェックポイントタンパク質は、臨床癌免疫療法、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)及びプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)の焦点となっている。抗CTLA-4抗体及び抗PD-1抗体は、転移性黒色腫の治療のために承認されており、他の癌について現在臨床試験中である。PD-1のリガンドに向けた抗PD-L1抗体についても、現在臨床開発中である。
【0010】
FGFRシグナル伝達の阻害は、抗腫瘍免疫を改善し、乳癌の転移を損なうことが報告されている(例えば、T.Ye et al.,Breast Cancer Res.Treat.143:435-446(2014)を参照されたい)。抗FGFR2抗体は、例えば、胃癌のモデルでも試験されている。しかしながら、FGFR2阻害剤をPD-1またはPD-L1阻害剤などの免疫チェックポイント阻害剤と同時投与することが腫瘍モデルにおける治療をさらに改善させるかどうかは未知であった。本明細書の発明者らは、FGFR2阻害抗体とPD-1阻害抗体の組み合わせが、マウス乳房腫瘍モデルにおいて少なくとも相加効果を示すことを実証した。本発明者らは、FGFR2阻害抗体のみによる治療が、マウス乳房腫瘍モデルにおける腫瘍組織中のPD-L1発現細胞、NK細胞、ならびにCD3+、CD8+、及びCD4+T細胞の増加につながり、腫瘍組織中のリンパ系細胞対骨髄系細胞の比の増加をもたらすことをさらに示す。加えて、単独で与えられたFGFR2阻害剤は、ヒト膀胱癌対象にも恩恵を与えている。本明細書の結果は、総合すれば、FGFR2阻害剤が腫瘍微小環境を変化させることで、単独またはPD-1/PD-L1阻害剤と組み合わせて殺腫瘍免疫応答を増強し得ることを示している。
【発明の概要】
【0011】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤と組み合わせて、抗FGFR2抗体またはFGFR2 ECDまたはFGFR2 ECD融合分子などのFGFR2阻害剤を対象に投与することを含む、対象における癌の治療方法を提供する。いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、PD-1融合分子、またはPD-1ポリペプチドなどのPD-1/PD-L1阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は、「他の免疫刺激剤との組み合わせ」と題された以下の節に記載の薬剤の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、FGFR2阻害剤は、抗体である。いくつかの実施形態では、FGFR2阻害剤は、FGFR2-IIIbを認識する抗体である。いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに、FGFR2-IIIbよりも低い親和性で結合する、またはFGFR2-IIIcに検出可能に結合しない。いくつかの実施形態では、FGFR2阻害剤は、FGFR2 ECDである。いくつかの実施形態では、FGFR2阻害剤は、FGFR2 ECD、及び、Fcドメイン、アルブミン、またはポリエチレングリコール(PEG)などの融合パートナーを含むFGFR2 ECD融合分子である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤がPD-1/PD-L1阻害剤を含む場合、PD-1/PD-L1阻害剤は、抗体である。いくつかの実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、PD-1ポリペプチドであるが、いくつかの実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、PD-1融合分子である。
【0012】
本明細書に記載の方法及び組成物の実施形態のいずれかでは、PD-1/PD-L1阻害剤は、以下の特徴を有してもよい。いくつかの実施形態では、阻害剤は、ニボルマブ、ピディリズマブ、及びペンブロリズマブから選択される抗体の重鎖及び軽鎖CDRを含む抗PD-1抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ピディリズマブ、及びペンブロリズマブから選択される抗体の重鎖及び軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ピディリズマブ、及びペンブロリズマブから選択される。いくつかの実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、BMS-936559、MPDL3280A(アテゾリズマブ)、MEDI4736、及びMSB0010718C(アベルマブ)から選択される抗体の重鎖及び軽鎖CDRを含む。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、BMS-936559、MPDL3280A、MEDI4736、及びMSB0010718Cから選択される抗体の重鎖及び軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、BMS-936559、MPDL3280A、MEDI4736、及びMSB0010718Cから選択される。いくつかの実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、融合分子である。いくつかの実施形態では、融合分子は、AMP-224である。いくつかの実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、AUR-012などのPD-1ポリペプチドである。
【0013】
抗PD-1抗体を伴う本明細書に記載の組成物または方法のいずれかでは、抗PD-1抗体は、ヒト化抗体であってもよい。本明細書に記載の組成物または方法のいずれかでは、抗PD-1抗体は、Fab、Fv、scFv、Fab’、及び(Fab’)から選択されてもよい。本明細書に記載の組成物または方法のいずれかでは、抗PD-1抗体は、キメラ抗体であってもよい。本明細書に記載の組成物または方法のいずれかでは、抗PD-1抗体は、IgA、IgG、及びIgDから選択されてもよい。本明細書に記載の組成物または方法のいずれかでは、抗PD-1抗体は、IgGであってもよい。本明細書に記載の方法のいずれかでは、抗体は、IgG1またはIgG2であってもよい。
【0014】
本明細書に記載の組成物または方法のいずれかでは、FGFR2阻害剤は、以下の特徴を有してもよい。いくつかの実施形態では、阻害剤は、FGFR2抗体である。いくつかの実施形態では、FGFR2抗体は、FGFR2-IIIb抗体(本明細書で、αFGFR2bとも表記される)である。いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに、FGFR2-IIIcよりも高い親和性で結合する、またはあるいは、FGFR2-IIIcに検出可能に結合しない。いくつかの実施形態では、抗体は、FGF2及び/またはFGF7のFGFR2への結合を阻害する。
【0015】
いくつかの実施形態では、FGFR2抗体は、米国特許第8,101,723B2号に記載される、モノクローナル抗体GAL-FR21、GAL-FR22、またはGAL-FR23の重鎖及び軽鎖超可変領域(HVR)H1、H2、H3、L1、L2、及びL3アミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体重鎖可変領域は、(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2;及び(iii)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み;軽鎖可変領域は、(iv)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(v)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(vi)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、FGFR2抗体は、その重鎖可変ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列に少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である、または配列番号4のアミノ酸配列を含む、FGFR2-IIIb抗体を含む。いくつかの実施形態では、FGFR2抗体は、軽鎖可変ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列に少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である、または配列番号5のアミノ酸配列を含む、FGFR2-IIIb抗体を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号4のアミノ酸配列に少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である、または配列番号4のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号5のアミノ酸配列に少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である、または配列番号5のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、FGFR2抗体は、重鎖が、配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である、または配列番号2のアミノ酸配列を含む、FGFR2-IIIb抗体を含む。いくつかの実施形態では、FGFR2抗体は、軽鎖が、配列番号3のアミノ酸配列に少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である、または配列番号3のアミノ酸配列を含む、FGFR2-IIIb抗体を含む。いくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である、または配列番号2のアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号3のアミノ酸配列に少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である、または配列番号3のアミノ酸配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体重鎖可変領域は、(i)配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR1;(ii)配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR2;及び(iii)配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR3を含み;軽鎖可変領域は、(iv)配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1;(v)配列番号45のアミノ酸配列を含むCDR2;及び(vi)配列番号46のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、FGFR2抗体は、重鎖可変ドメインが、配列番号39のアミノ酸配列に少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である、または配列番号39のアミノ酸配列を含む、FGFR2-IIIb抗体を含む。いくつかの実施形態では、FGFR2抗体は、軽鎖可変ドメインが、配列番号43のアミノ酸配列に少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である、または配列番号43のアミノ酸配列を含む、FGFR2-IIIb抗体を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号39のアミノ酸配列に少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である、または配列番号39のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号43のアミノ酸配列に少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である、または配列番号43のアミノ酸配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、FGFR2抗体は、非フコシル化されている。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297でのフコースを欠いている。いくつかの実施形態では、抗体は、カッパ軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、非フコシル化抗体は、Asn297でフコシル化されている同じアミノ酸配列を有する抗体と比較して、インビトロ及び/またはインビボでの増強されたADCC(抗体依存性細胞傷害性)活性を有する。いくつかの実施形態では、非フコシル化抗体は、Asn297位でフコシル化されている同じアミノ酸配列を有する抗体と比較して、FcガンマRIIIAに対して増強された親和性を有する。いくつかの実施形態では、非フコシル化抗体は、対照と比較して(例えば、FGFR2を標的にしない対照抗体と比較して)、マウス異種移植及び/または同系腫瘍モデルにおける腫瘍組織中のPD-L1陽性細胞、NK細胞、CD3+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、及びマクロファージの1つ以上の数を増加させることができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、FGFR2阻害剤は、FGFR2 ECD融合分子などのFGFR2 ECDである。FGFR2 ECD融合分子は、Fcドメイン、アルブミン、またはPEGなどの融合パートナーを含んでもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、FGFR2阻害剤は、FGFR2、ならびに活性化突然変異を有するFGFR2突然変異体、例えば、いくつかの癌細胞で見られるFGFR2-S252W突然変異に結合することができる。
【0022】
FGFR2抗体を伴う本明細書に記載の組成物または方法のいずれかでは、FGFR2抗体は、ヒト化抗体であってもよい。本明細書に記載の組成物または方法のいずれかでは、FGFR2抗体は、Fab、Fv、scFv、Fab’、及び(Fab’)から選択されてもよい。本明細書に記載の組成物または方法のいずれかでは、FGFR2抗体は、キメラ抗体であってもよい。本明細書に記載の組成物または方法のいずれかでは、FGFR2抗体は、IgA、IgG、及びIgDから選択されてもよい。本明細書に記載の組成物または方法のいずれかでは、FGFR2抗体は、IgGであってもよい。本明細書に記載の方法のいずれかでは、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、FGFR2阻害剤は、少なくとも0.1、0.3、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、20、または30mg/kgの用量で、またはこれらの用量のいずれか2つで囲まれた範囲で投与される。いくつかの実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、少なくとも0.1、0.3、0.5、1、2、3、4、5、もしくは10mg/kgの用量で、またはこれらの用量のいずれか2つで囲まれた範囲、例えば、0.5~10mg/kgの範囲で投与される。いくつかの実施形態では、FGFR2阻害剤及び少なくとも1つの免疫刺激剤、例えば、PD-1/PD-L1阻害剤は、1、2、3、4、または5週間に少なくとも1回投与される。
【0024】
いくつかの実施形態では、癌は、FGFR2遺伝子増幅の存在下または不在下のいずれかで、FGFR2IIIbを過剰発現する。いくつかの実施形態では、FGFR2IIIb過剰発現は、免疫組織化学(IHC)によって決定される。例えば、過剰発現は、少なくとも10%の腫瘍細胞中、例えば、少なくとも20%、30%、40%、または50%の腫瘍細胞中で1+、2+、または3+のIHCシグナルによって決定されてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、癌は、胃癌、乳癌、非小細胞肺癌、黒色腫、頭頸部の扁平上皮癌、卵巣癌、膵癌、腎細胞癌、肝細胞癌、膀胱癌、胆管癌、食道癌(胃食道接合部腺癌を含む)、及び子宮内膜癌から選択される。いくつかの実施形態では、癌は、外科手術、化学療法、放射線療法、またはそれらの組み合わせから選択される治療後の再発または進行である。いくつかの実施形態では、対象は、PD-1/PD-L1阻害剤に不十分なレスポンダーである。いくつかの実施形態では、対象は、PD-1/PD-L1阻害剤療法を予め受けている。
【0026】
いくつかの実施形態では、癌の治療方法は、白金剤、パクリタキセル、ABRAXANE(登録商標)、ドセタキセル、ゲムシタビン、カペシタビン、イリノテカン、エピルビシン、FOLFOX、FOLFIRI、ロイコボリン、フルオロウラシル、マイトマイシンC、及びドキソルビシン塩酸塩から選択される少なくとも1つの追加の治療剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、白金剤は、シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチンから選択される。いくつかの実施形態では、癌の治療方法は、パクリタキセルを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、癌の治療方法は、シスプラチン及び/または5-FUを投与することをさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、FGFR2阻害剤及びPD-1/PD-L1阻害剤は、同時または順次に投与される。いくつかの実施形態では、FGFR2阻害剤及び免疫刺激剤は、同時に投与される。いくつかの実施形態では、1つ以上の用量の免疫刺激剤をFGFR2阻害剤の投与前に投与する。いくつかの実施形態では、対象は、FGFR2阻害剤の投与前に完全な免疫刺激剤療法過程を受けた。いくつかの実施形態では、FGFR2阻害剤は、第2の免疫刺激剤療法過程中に投与される。いくつかの実施形態では、対象が、FGFR2阻害剤の投与前に少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つの用量の免疫刺激剤を受けた。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの用量の免疫刺激剤は、FGFR2阻害剤と同時に投与される。いくつかの実施形態では、1つ以上の用量のFGFR2阻害剤を免疫刺激剤の投与前に投与する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫刺激剤の投与前に少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つの用量のFGFR2阻害剤を受けてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの用量のFGFR2阻害剤は、免疫刺激剤と同時に投与される。
【0028】
いくつかの実施形態では、マウス異種移植及び/または同系腫瘍モデルにおけるFGFR2阻害剤及びPD-1/PD-L1阻害剤の投与は、腫瘍増殖の付加的または相乗的阻害のいずれかをもたらす。いくつかの実施形態では、モデルは、乳癌モデルである。いくつかの実施形態では、モデルは、4T1細胞を含む。
【0029】
上記実施形態の方法のいずれかでは、FGFR2阻害剤とPD-1/PD-L1阻害剤の組み合わせは、マウス異種移植及び/または同系腫瘍モデルにおける腫瘍増殖を少なくとも1週、10日間、または2週間の期間にわたって、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%阻害し得る。上記実施形態の方法のいずれかでは、FGFR2阻害剤と免疫刺激剤、例えば、PD-1/PD-L1阻害剤の組み合わせの対象への投与は、対象における少なくとも1つの腫瘍体積を、例えば、少なくとも1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、または1年の期間にわたって少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%減少し得る。
【0030】
上記実施形態の方法のいずれかでは、異種移植及び/または同系腫瘍モデルにおけるFGFR2阻害剤の投与は、対照と比較して、腫瘍組織中のNKp46+細胞などのNK細胞の増加、PD-L1発現細胞の増加、F480+マクロファージなどのマクロファージの増加、CD3+、CD8+、及びCD4+T細胞の1つ以上の増加、及び/またはリンパ系細胞対骨髄系細胞の比の増加を、少なくとも1日、少なくとも4日、少なくとも1週、少なくとも10日、または少なくとも2週の期間にわたって、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%示し得る。いくつかの実施形態では、マウス同系腫瘍モデルは、4T1乳腺腫瘍モデルである。いくつかの実施形態では、対照は、モデルにおける腫瘍増殖を阻害しないビヒクルまたはIg-Fc分子または別の化合物である。
【0031】
また、本明細書で提供されるのは、癌を有する対象の腫瘍組織中のNK細胞、PD-L1陽性細胞、及び/またはCD3+、CD8+、及び/またはCD8+T細胞及び/またはマクロファージの数を増加させる方法、及び/または、前段落に記載されるFGFR2抗体のいずれかなどのFGFR2阻害抗体の有効量を、癌を有する対象に投与することを含む、前記対象の腫瘍組織中のリンパ系細胞対骨髄系細胞の比を増加させる方法である。対照と比較して、腫瘍組織中のCD3+、CD8+、及びCD4+T細胞の1つ以上の増加、及び/またはリンパ系細胞対骨髄系細胞の比の増加は、少なくとも1日、少なくとも4日、少なくとも1週、少なくとも10日、または少なくとも2週の期間にわたって、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%である。いくつかの実施形態では、抗体は、以下の特性の1つ以上を有してもよい:(a)Asn297位でフコースを欠いている;(b)κ軽鎖定常領域を含む;(c)IgG1重鎖定常領域を含む;(d)Asn297位でフコシル化されている同じアミノ酸配列を有する抗体と比較して、増強されたADCC活性をインビトロで有する;及び(e)Asn297位でフコシル化されている同じアミノ酸配列を有する抗体と比較して、FcガンマRIIIAに対して増強された親和性を有する。いくつかの実施形態では、非フコシル化抗体は、対照と比較して(例えば、FGFR2を標的にしない対照抗体と比較して)、マウス異種移植及び/または同系腫瘍モデルにおける腫瘍組織中のPD-L1陽性細胞、NK細胞、CD3+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、及びマクロファージの1つ以上の数を増加させることができる。いくつかの実施形態では、方法は、対象における腫瘍増殖を阻害する、または少なくとも1つの腫瘍体積を減少させる。いくつかの実施形態では、対象が、乳癌、胃癌、非小細胞肺癌、黒色腫、頭頸部の扁平上皮癌、卵巣癌、膵癌、腎細胞癌、肝細胞癌、膀胱癌、胆管癌、食道癌(胃食道接合部腺癌を含む)、及び子宮内膜癌を罹患している。いくつかの実施形態では、方法は、FGFR2抗体の投与後、対象から少なくとも1つの腫瘍試料を得て、試料中のNK細胞、PD-L1陽性細胞、及び/またはCD3+、CD8+、及び/またはCD4+T細胞の数を決定すること、ならびに、これらの種類の細胞の1つ以上の数がFGFR2抗体投与前の試料に対してまたは対象由来の非腫瘍試料に対して増加している場合、PD-1/PD-L1阻害剤を対象に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、FGFR2抗体の投与後、対象から少なくとも1つの腫瘍試料を得て、試料中のリンパ系細胞対骨髄系細胞の比を決定すること、及び、比がFGFR2抗体投与前の試料に対してまたは対象からの非腫瘍試料に対して増加している場合、少なくとも1つを対象に投与することをさらに含む。これらの方法のうちの少なくとも1つの免疫刺激剤、例えば、少なくとも1つのPD-1/PD-L1阻害剤は、前段落に記載されるもの、または「他の免疫刺激剤との組み合わせ」と題された以下の節に記載されるもののいずれかであってもよい。いくつかの実施形態では、患者は、FGFR2阻害剤、PD-1/PD-L1阻害剤、及び少なくとも1つの他の免疫刺激剤の組み合わせを投与してもよい。
【0032】
また、本明細書で提供されるのは、FGFR2阻害剤を対象に投与すること、及び、対象が、対照に対して、例えば、FGFR2抗体投与前の試料に対して、または対象からの非腫瘍試料に対して、NK細胞、PD-L1陽性細胞、マクロファージ、CD3+T細胞、CD8+T細胞、及び/またはCD4+T細胞の数が増加していると判断される場合、PD-1/PD-L1阻害剤などの少なくとも1つの免疫刺激剤を対象に投与することを含む、対象における癌の治療方法である。また、本明細書で提供されるのは、FGFR2阻害剤を対象に投与すること、及び、対象が、対照に対して、例えば、FGFR2抗体投与前の試料に対して、または対象からの非腫瘍試料に対して、リンパ系細胞対骨髄系細胞の比が増加していると判断される場合、PD-1/PD-L1阻害剤などの少なくとも1つの免疫刺激剤を対象に投与することを含む、対象における癌の治療方法である。そのような方法では、FGFR2阻害剤及び免疫刺激剤は、前段落に記載されるもの、または「他の免疫刺激剤との組み合わせ」と題された以下の節に記載されるもののいずれかであってもよい。さらに、FGFR2及び免疫刺激剤の投与は、少なくとも1用量のFGFR2阻害剤が投与されるまで免疫刺激剤の投与を開始しない前述の方法に従ってもよい。そのような場合、NK細胞、PD-L1陽性細胞、マクロファージ、CD3+、CD8+、及び/またはCD4+T細胞、リンパ系、及び/または骨髄系細胞の数を決定する試験は、例えば、FGFR2阻害剤の投与開始後であるが、FGFR2と免疫刺激剤の併用投与の開始前に行ってもよい。
【0033】
本明細書に記載のFGFR2阻害剤のいずれか、及び本明細書に記載の免疫刺激剤のいずれかを含む組成物も提供される。そのような組成物では、FGFR2阻害剤及び少なくとも1つの免疫刺激剤は、別々の容器もしくは同じ容器の別々の区画に位置してもよく、またはあるいは、同じ容器もしくは区画に一緒に混合されてもよい。そのような組成物は、例えば、上述の癌のいずれなど癌の治療に使用してもよい。いくつかの実施形態では、癌の治療で使用するための説明書などの取扱説明書も含み得る。
【0034】
また、本明細書で提供されるのは、FGFR2阻害剤を投与することを含み、阻害剤は、増強されたADCC活性を有するFGFR2抗体である、癌対象の腫瘍組織中のPD-L1陽性細胞、NK細胞、マクロファージ、CD3+T細胞、CD4+T細胞、及びCD8+T細胞の1つ以上の数を増加させる方法である。いくつかのそのような実施形態では、免疫刺激剤は、FGFR2抗体と共に投与されない。いくつかのそのような実施形態では、マウス異種移植及び/または同系腫瘍モデルにおけるFGFR2抗体の投与は、対照と比較して、腫瘍組織中のPD-L1陽性細胞、NK細胞、マクロファージ、CD3+T細胞、CD8+T細胞、及びCD4+T細胞の1つ以上の数を増加させる、及び/または腫瘍組織中のリンパ系細胞対骨髄系細胞の比を増加させる。いくつかのそのような実施形態では、対象は、乳癌、胃癌、非小細胞肺癌、黒色腫、頭頸部の扁平上皮癌、卵巣癌、膵癌、腎細胞癌、肝細胞癌、膀胱癌、胆管癌、食道癌(胃食道接合部腺癌を含む)、または子宮内膜癌、例えば、膀胱癌を罹患している。
【0035】
上記方法では、FGFR2抗体は、以下の特性の1つ以上を有してもよいFGFR2-IIIb抗体であり得る:(a)FGFR2-IIIbに、FGFR2-IIIcよりも高い親和性で結合する、またはFGFR2-IIIcに検出可能に結合しない;(b)FGF2及び/またはFGF7のヒトFGFR2への結合を阻害する;(c)マウス異種移植及び/または同系腫瘍モデルにおけるヒト腫瘍の増殖を阻害する;(d)ADCC活性を誘発する;(e)増強されたADCC活性を有する;及び(f)非フコシル化される。
【0036】
上記方法のいくつかの実施形態では、、FGFR2抗体は、重鎖及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2;及び(iii)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み;ならびに軽鎖可変領域は、(iv)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(v)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(vi)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0037】
場合によっては、FGFR2抗体の重鎖可変ドメインは、配列番号4のアミノ酸配列に少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、及び/またはFGFR2抗体の軽鎖可変ドメインは、配列番号5のアミノ酸配列に少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。場合によっては、FGFR2抗体の重鎖可変ドメインは、配列番号4のアミノ酸配列を含み、及び/またはFGFR2抗体の軽鎖可変ドメインは、配列番号5のアミノ酸配列を含む。場合によっては、FGFR2抗体の重鎖は、配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、及び/またはFGFR2抗体の軽鎖は、配列番号3のアミノ酸配列に少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。場合によっては、FGFR2抗体の重鎖は、配列番号2のアミノ酸配列を含み、及び/またはFGFR2抗体の軽鎖は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。場合によっては、FGFR2抗体は、キメラ、ヒト化、またはヒトである。いくつかの実施形態では、FGFR2抗体は、Fab、Fv、scFv、Fab’、及び(Fab’)から選択される。いくつかの実施形態では、FGFR2抗体は、以下の特性の1つ以上を有する:(a)Asn297位でフコースを欠いている;(b)κ軽鎖定常領域を含む;(c)IgG1重鎖定常領域を含む;(d)Asn297位でフコシル化されている同じアミノ酸配列を有する抗体と比較して、増強されたADCC活性をインビトロで有する;及び(e)Asn297位でフコシル化されている同じアミノ酸配列を有する抗体と比較して、FcガンマRIIIAに対して増強された親和性を有する。いくつかの実施形態では、非フコシル化抗体は、対照と比較して(例えば、FGFR2を標的にしない対照抗体と比較して)、マウス異種移植及び/または同系腫瘍モデルにおける腫瘍組織中のPD-L1陽性細胞、NK細胞、CD3+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、及びマクロファージの1つ以上の数を増加させることができる。
【0038】
この概要節に記載される方法または使用のいずれかでは、癌は、FGFR2遺伝子の増幅の存在下または不在下のいずれかでFGFR2IIIbを過剰発現すると予め判断されていてもよい。あるいは、この概要節に記載される方法または使用のいずれかでは、方法は、癌がFGFR2IIIbを過剰発現するかどうか判断する、及び/またはFGFR2遺伝子が腫瘍細胞で増幅されるかどうか判断するために、例えば、FGFR2阻害剤の投与前に対象の癌を試験することをさらに含んでもよい。いずれの場合でも、FGFR2IIIbは、免疫組織化学(IHC)によって任意に決定されてもよく、FGFR2遺伝子増幅は、例えば、FGFR2遺伝子座及びFGFR2遺伝子が位置する染色体10セントロメアのプローブを用いて、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)によって任意に決定されてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも10%の腫瘍細胞、例えば、少なくとも20%、30%、40%、または50%の腫瘍細胞中で1+、2+、または3+のIHCシグナルは、FGFR2IIIbの過剰発現を示す。いくつかの実施形態では、FGFR2対染色体10セントロメア(CEN10)の2以上の比は、FGFR2遺伝子増幅を示す。
【0039】
患者が胃癌または膀胱癌を罹患しているいくつかの実施形態では、対象は、以下のプロファイルの1つを有すると予め決定されていてもよく、またはあるいは、治療方法は、患者がFGFR2発現/遺伝子増幅に対して以下のプロファイルの1つに適合するかどうかを決定することを含み、以下のプロファイルは、治療に対して期待される応答性のレベルを示し得る:a)胃癌対象の場合には、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナル;b)胃癌対象の場合には、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナル、ならびにFGFR2遺伝子の増幅;c)胃癌対象の場合には、FGFR2遺伝子を増幅せずに、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナル;d)胃癌対象の場合には、少なくとも10%の腫瘍細胞中で1+または2+のIHCシグナル;e)膀胱癌対象の場合には、少なくとも10%の腫瘍細胞中で1+のIHCシグナル;f)膀胱癌対象の場合には、少なくとも10%の腫瘍細胞中で2+のIHCシグナル;g)膀胱癌対象の場合には、20を超えるHスコア;h)膀胱癌対象の場合には、10~19のHスコア;i)膀胱癌対象の場合には、10未満のHスコア。
【0040】
本開示は、上述のFGFR2阻害剤、治療、及び使用のいずれかに対する応答性を決定する方法も提供する。そのような方法は、癌がFGFR2IIIbを過剰発現するかどうか判断する、及び/またはFGFR2遺伝子が腫瘍細胞で増幅されるかどうか判断するために、対象の癌を試験することを含んでもよい。FGFR2IIIbの過剰発現は、免疫組織化学(IHC)によって任意に決定されてもよく、FGFR2遺伝子増幅は、例えば、FGFR2遺伝子座及びFGFR2遺伝子が位置する染色体10セントロメアのプローブを用いて、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)によって任意に決定されてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも10%の腫瘍細胞、例えば、少なくとも20%、30%、40%、または50%の腫瘍細胞中で1+、2+、または3+のIHCシグナルは、FGFR2IIIbの過剰発現を示す。いくつかの実施形態では、FGFR2対染色体10セントロメア(CEN10)の2以上の比は、FGFR2遺伝子増幅を示す。
【0041】
患者が胃癌または膀胱癌を罹患しているいくつかの実施形態では、方法は、患者の癌が、治療またはFGFR2阻害剤組成物に対する応答性を示し得る以下のカテゴリーの1つに該当するかどうかを決定することを含んでもよい:a)胃癌対象の場合には、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナル;b)胃癌対象の場合には、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナル、ならびにFGFR2遺伝子の増幅;c)胃癌対象の場合には、FGFR2遺伝子を増幅せずに、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナル;d)胃癌対象の場合には、少なくとも10%の腫瘍細胞中で1+または2+のIHCシグナル;e)膀胱癌対象の場合には、少なくとも10%の腫瘍細胞中で1+のIHCシグナル;f)膀胱癌対象の場合には、少なくとも10%の腫瘍細胞中で2+のIHCシグナル;g)膀胱癌対象の場合には、20を超えるHスコア;h)膀胱癌対象の場合には、10~19のHスコア;i)膀胱癌対象の場合には、10未満のHスコア。
【0042】
上記の一般的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも、単なる例示及び説明のためのものであり、特許請求の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本明細書で使用される節の見出しは、組織的な目的のみのためであり、記載される主題をいかようにも限定することを意図していない。特許出願及び刊行物を含む本明細書で引用する全ての参考文献は、任意の目的のために参照によりそれら全体を本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】Ig-Fc対照、配列番号6~11の重鎖及び軽鎖HVRを含む、非フコシル化抗FGFR2b抗体(抗FGFR2)、またはエフェクター機能を排除するために、アミノ酸297位でNがQで置換された(その突然変異の描写について以下の配列表における配列番号12を参照)以外は同じアミノ酸配列を有する抗FGFR2b抗体(抗FGFR2-N297Q)で処置後のBALB/cマウスにおける移植乳腺4T1腫瘍細胞体積の変化を示す。図1a及び図1bの両方に示すように、抗FGFR2抗体のみが、4T1腫瘍増殖阻害を示した。統計的有意性(P<0.05=;P<0.01=**;P<0.001=***;P<0.001=****)は、一元配置分散分析の後、Tukeyの多重比較検定によって決定された。
図2a】1日目、ビヒクル対照もしくは抗FGFR2の単回投与処置の1日後(図2a及び2c)、または4日目、0日目及び3日目にビヒクル対照もしくは抗FGFR2を与えた2つの処置の2番目の1日後(図2b及び2d)のいずれかにおける、細胞核のDAPI染色と比較した、NKp46(図2a~2b)またはPD-L1(図2c~2d)のいずれかの存在について4T1腫瘍細胞の染色の結果を示す。各画像を異なる腫瘍から撮影し、10倍対物レンズを用いて画像を収集した。抗FGFR2による処置は、1日目及び4日目の両方において、ビヒクルと比較して、4T1腫瘍におけるNKp46+細胞の数を増加させ(図2a~2b)、1日目及び4日目の両方において、ビヒクルと比較してPD-L1+細胞の数を増加させた(図2c~2d)。
図2b】1日目、ビヒクル対照もしくは抗FGFR2の単回投与処置の1日後(図2a及び2c)、または4日目、0日目及び3日目にビヒクル対照もしくは抗FGFR2を与えた2つの処置の2番目の1日後(図2b及び2d)のいずれかにおける、細胞核のDAPI染色と比較した、NKp46(図2a~2b)またはPD-L1(図2c~2d)のいずれかの存在について4T1腫瘍細胞の染色の結果を示す。各画像を異なる腫瘍から撮影し、10倍対物レンズを用いて画像を収集した。抗FGFR2による処置は、1日目及び4日目の両方において、ビヒクルと比較して、4T1腫瘍におけるNKp46+細胞の数を増加させ(図2a~2b)、1日目及び4日目の両方において、ビヒクルと比較してPD-L1+細胞の数を増加させた(図2c~2d)。
図2c】1日目、ビヒクル対照もしくは抗FGFR2の単回投与処置の1日後(図2a及び2c)、または4日目、0日目及び3日目にビヒクル対照もしくは抗FGFR2を与えた2つの処置の2番目の1日後(図2b及び2d)のいずれかにおける、細胞核のDAPI染色と比較した、NKp46(図2a~2b)またはPD-L1(図2c~2d)のいずれかの存在について4T1腫瘍細胞の染色の結果を示す。各画像を異なる腫瘍から撮影し、10倍対物レンズを用いて画像を収集した。抗FGFR2による処置は、1日目及び4日目の両方において、ビヒクルと比較して、4T1腫瘍におけるNKp46+細胞の数を増加させ(図2a~2b)、1日目及び4日目の両方において、ビヒクルと比較してPD-L1+細胞の数を増加させた(図2c~2d)。
図2d】1日目、ビヒクル対照もしくは抗FGFR2の単回投与処置の1日後(図2a及び2c)、または4日目、0日目及び3日目にビヒクル対照もしくは抗FGFR2を与えた2つの処置の2番目の1日後(図2b及び2d)のいずれかにおける、細胞核のDAPI染色と比較した、NKp46(図2a~2b)またはPD-L1(図2c~2d)のいずれかの存在について4T1腫瘍細胞の染色の結果を示す。各画像を異なる腫瘍から撮影し、10倍対物レンズを用いて画像を収集した。抗FGFR2による処置は、1日目及び4日目の両方において、ビヒクルと比較して、4T1腫瘍におけるNKp46+細胞の数を増加させ(図2a~2b)、1日目及び4日目の両方において、ビヒクルと比較してPD-L1+細胞の数を増加させた(図2c~2d)。
図3】4日目のマウス4T1腫瘍におけるNKp46+細胞の数に対する抗FGFR2暴露の効果の分析を示す。抗FGFR2による処置は、ビヒクル対照と比較して、腫瘍におけるNK細胞を増加させ、t検定によるPは、<0.05であった。
図4】Ig-Fc対照、抗PD-1抗体、非フコシル化抗FGFR2b抗体(抗FGFR2と指定)による処置後、及び抗PD-1抗体と非フコシル化抗FGFR2b抗体の併用処置後の雌BALB/cマウスにおける移植乳腺4T1腫瘍体積の変化を示す。各グラフでは、腫瘍体積を平均mm+/-SEMで示す。図4aに示すように、抗FGFR2(10mg/kg BIW)及び抗PD1抗体(5mg/kg BIW)の組み合わせは、18日目まで、対照及びいずれかの抗体のみと比較して、4T1腫瘍の増殖の有意な阻害をもたらした。図4bに示すように、腫瘍移植後の18日目に、組み合わせは、Ig-Fc対照または抗PD1抗体と比較して、4T1腫瘍における増殖の統計的に有意な阻害を示した。統計的有意性は、一元配置分散分析の後、Tukeyの多重比較検定によって決定された。
図5】1日目(図5a)、ビヒクル対照もしくは抗FGFR2もしくは抗FGFR2 N297Qの単回投与処置の1日後、または4日目、0日目及び3日目にビヒクル対照もしくは抗FGFR2を与えた2つの処置の2番目の1日後(図5b)のいずれかにおける、NKp46細胞またはPD-L1+細胞またはCD3+T細胞のいずれかの存在について4T1腫瘍細胞の染色の結果を示す。各画像を異なる腫瘍から撮影し、10倍対物レンズを用いて画像を収集した。抗FGFR2による処置は、1日目及び4日目の両方において、ビヒクルと比較して、4T1腫瘍におけるNKp46+細胞の数を増加させ、1日目及び4日目の両方において、ビヒクルと比較してPD-L1+細胞の数を増加させ、目に見える細胞の数は、1日目よりも4日目に多かった。CD3+T細胞は、抗FGFR2による処置後の4日目までに腫瘍にも浸潤した。
図6-1】細胞核のDAPI染色に隣接する、治療プロトコルの4日目のCD3+及びCD8+T細胞(図6a)またはCD3+及びCD4+T細胞(図6b)の存在について、4T1腫瘍細胞の染色の結果を示す。画像は、抗FGFR2による処置が、ビヒクル対照、及び抗FGFR2 N297Qによる処置と比較して、4日目までに腫瘍組織中の3種類全てのT細胞の数の増加をもたらしたことを示す。
図6-2】細胞核のDAPI染色に隣接する、治療プロトコルの4日目のCD3+及びCD8+T細胞(図6a)またはCD3+及びCD4+T細胞(図6b)の存在について、4T1腫瘍細胞の染色の結果を示す。画像は、抗FGFR2による処置が、ビヒクル対照、及び抗FGFR2 N297Qによる処置と比較して、4日目までに腫瘍組織中の3種類全てのT細胞の数の増加をもたらしたことを示す。
図7】それぞれ、1日目及び4日目の4T1同系腫瘍モデルにおける腫瘍細胞のFACS分析の結果を示す。CD3+T細胞は、CD45+生単細胞のパーセンテージとして処置群ごとに提供する。図に示すように、抗FGFR2群は、4日目までのビヒクル対照及び抗FGFR2 N297Q群の両方と比較して、CD3+T細胞のパーセンテージの増加を示した。また、増加は、P≦0.01を示す**記号で示すように、スチューデントT検定に従って統計的に有意であった。
図8】それぞれ、1日目及び4日目の4T1同系腫瘍モデルにおける腫瘍細胞のFACS分析の結果を示す。CD8+T細胞は、CD45+生単細胞のパーセンテージとして処置群ごとに提供する。図に示すように、抗FGFR2群は、4日目までのビヒクル対照及び抗FGFR2 N297Q群の両方と比較して、CD8+T細胞のパーセンテージの増加を示した。また、増加は、P≦0.01を示す**記号で示すように、スチューデントT検定に従って統計的に有意であった。
図9】それぞれ、1日目及び4日目の4T1同系腫瘍モデルにおける腫瘍細胞のFACS分析の結果を示す。CD4+T細胞は、CD45+生単細胞のパーセンテージとして処置群ごとに提供する。図に示すように、抗FGFR2群は、4日目までのビヒクル対照及び抗FGFR2 N297Q群の両方と比較して、CD4+T細胞のパーセンテージの増加を示した。また、増加は、P≦0.5を示す記号で示すように、スチューデントT検定に従って統計的に有意であった。
図10-1】4日目での4T1同系腫瘍モデルにおける腫瘍細胞のFACS分析のさらなる結果を示す。図10aでは、NKp46+細胞は、CD45+生単細胞のパーセンテージとして処置群ごとに提供する。図は、スチューデントT検定に従って、他の群と比較して、抗FGFR2群におけるNKp46+細胞の統計的に有意な増加を示し、ここで、は、P≦0.5を示し、**は、P≦0.01を示し、***は、P≦0.001を示す。図10b及び10cは、骨髄系細胞は抗FGFR2群において有意に減少するが、リンパ系細胞は有意に増加することを示すため、他の群と比較して、リンパ系細胞対骨髄系細胞の比は、抗FGFR2による処置後の4日目に増加することを示す。
図10-2】4日目での4T1同系腫瘍モデルにおける腫瘍細胞のFACS分析のさらなる結果を示す。図10aでは、NKp46+細胞は、CD45+生単細胞のパーセンテージとして処置群ごとに提供する。図は、スチューデントT検定に従って、他の群と比較して、抗FGFR2群におけるNKp46+細胞の統計的に有意な増加を示し、ここで、は、P≦0.5を示し、**は、P≦0.01を示し、***は、P≦0.001を示す。図10b及び10cは、骨髄系細胞は抗FGFR2群において有意に減少するが、リンパ系細胞は有意に増加することを示すため、他の群と比較して、リンパ系細胞対骨髄系細胞の比は、抗FGFR2による処置後の4日目に増加することを示す。
図11】ビヒクル対照(上パネル)、抗FGFR2抗体(中パネル)、または抗FGFR2-N297Q抗体(下パネル)による処置後1日目または4日目のマウス同系腫瘍モデルにおける4T1腫瘍組織の染色を示す。画像は、F480+マクロファージの腫瘍組織への浸潤を見つけるための抗F480抗体での染色、及び細胞核の対応するDAPI染色を示す。図から分かるように、抗FGFR2の処置後、F480+マクロファージは、対照と比較して(4日目の上及び中パネルと比較して)、はるかに多数である。対照と抗FGFR2-N297Qパネルの間の差は、(4日目の上及び下パネルを比較して)観察されなかった。10倍対物レンズを用いて画像を収集した。
図12】様々な抗体:対照抗体(Fc-G1抗体)(上パネル)、ウサギ抗アシアロGM1抗体-NKp46細胞の数を減少させることを意図した(2番目のパネル)、抗FGFR2抗体(3番目のパネル)、及び抗FGFR2抗体+抗アシアロGM1抗体の組み合わせ(下パネル)による処置後の4日目のマウス同系腫瘍モデルにおける4T1腫瘍組織の染色を示す。組織を、NKp46の試薬またはDAPIで染色し、細胞核を染色した(それぞれ、左及び右パネル)。抗アシアロGM1抗体を1.25mg/kgで投与し、抗FGFR2抗体を10mg/kgで投与した。10倍対物レンズを用いて画像を収集した。4つの異なるNKp46染色パネルで分かるように、抗アシアロGM1抗体は、腫瘍組織中のNKp46細胞で枯渇したが、抗FGFR2抗体は、NKp46細胞の数を増加させた(上及び3番目の左パネルを比較)。抗アシアロGM1抗体と組み合わせた抗FGFR2抗体は、(対照と比較していないが)抗アシアロGM1抗体のみと比較して、NKp46細胞の数を増加させた。これは、NKp46細胞が競合抗体の存在によって枯渇している場合でも、抗FGFR2抗体が、腫瘍組織中のNKp46細胞の数を増加させることができることを示す(上、2番目、及び下の左パネルを比較)。
図13】対照抗体(Fc-G1抗体)(上パネル)、ウサギ抗アシアロGM1抗体(2番目のパネル)、抗FGFR2抗体(3番目のパネル)、及び抗FGFR2抗体+抗アシアロGM1抗体の組み合わせ(下パネル)による処置後の4日目のマウス同系腫瘍モデルにおける、CD3+T細胞の染色、及び4T1腫瘍組織の細胞核の対応するDAPI染色を示す。抗アシアロGM1抗体を1.25mg/kgで投与し、抗FGFR2抗体を10mg/kgで投与した。10倍対物レンズを用いて画像を収集した。図の4つの左パネルを比較することで分かるように、抗FGFR2抗体による処置は、腫瘍組織中のCD3+T細胞の数を増加させたが、抗アシアロGM1抗体と一緒に投与した場合には増加しなかった。
図14】対照抗体(Fc-G1抗体)(上パネル)、ウサギ抗アシアロGM1抗体(2番目のパネル)、抗FGFR2抗体(3番目のパネル)、及び抗FGFR2抗体+抗アシアロGM1抗体の組み合わせ(下パネル)による処置後の4日目のマウス同系腫瘍モデルにおける、PD-L1陽性細胞の染色、及び4T1腫瘍組織の細胞核の対応するDAPI染色を示す。抗アシアロGM1抗体を1.25mg/kgで投与し、抗FGFR2抗体を10mg/kgで投与した。10倍対物レンズを用いて画像を収集した。図の4つの左パネルを比較することで分かるように、抗FGFR2抗体による処置は、腫瘍組織中のPD-L1陽性細胞の数を増加させたが、抗アシアロGM1抗体と一緒に投与した場合には増加しなかった。
図15】リン酸緩衝生理食塩水(PBS)対照、抗FGFR2抗体、抗アシアロGM1抗体、または抗FGFR2と抗アシアロGM1抗体の組み合わせの接種後のマウスにおける4T1同所性腫瘍の増殖を示す。図15aは、接種後12日目及び15日目の腫瘍体積を示す。図15bは、接種後15日目の個々のマウスにおける腫瘍体積のプロットを示す。図は、スチューデントT検定に従って、対照及び抗アシアロGM1群と比較して、抗FGFR2群における腫瘍体積の統計的に有意な減少を示し、ここで、は、P≦0.5を示し、**は、P≦0.01を示し、ならびに抗FGFR2抗体のみを受けた群と、抗FGFR2と抗アシアロGM1抗体の組み合わせを受けた群の間の腫瘍体積の統計的に有意な変化を示す。
図16-1】ビヒクル対照または抗FGFR2抗体の接種後の、腫瘍細胞による接種後27日目までのSCIDマウスにおける4T1同所性腫瘍の増殖を示す。図16aは、経時的な腫瘍体積を示す。グラフの下の矢印は、接種後12日目及び15日目のビヒクルまたは20mg/kg抗FGFR2抗体のいずれかの投与を示す。アスタリスク()は、P≦0.5レベルでのスチューデントT検定に従って、ビヒクルまたは抗FGFR2抗体下の腫瘍増殖間の統計的に有意な差を示す。図16bは、接種後19日目の各群の個々のマウスにおける腫瘍体積を示す。アスタリスク()は、P≦0.5レベルでのスチューデントT検定に従って、2つの群の腫瘍増殖間の統計的に有意な差を示す。図16cは、接種後23日目の各群の個々のマウスにおける腫瘍体積を示す。アスタリスク()は、P≦0.5レベルでのスチューデントT検定に従って、2つの群の腫瘍増殖間の統計的に有意な差を示す。図16dは、接種後27日目の各群の個々のマウスにおける腫瘍体積を示す。
図16-2】ビヒクル対照または抗FGFR2抗体の接種後の、腫瘍細胞による接種後27日目までのSCIDマウスにおける4T1同所性腫瘍の増殖を示す。図16aは、経時的な腫瘍体積を示す。グラフの下の矢印は、接種後12日目及び15日目のビヒクルまたは20mg/kg抗FGFR2抗体のいずれかの投与を示す。アスタリスク()は、P≦0.5レベルでのスチューデントT検定に従って、ビヒクルまたは抗FGFR2抗体下の腫瘍増殖間の統計的に有意な差を示す。図16bは、接種後19日目の各群の個々のマウスにおける腫瘍体積を示す。アスタリスク()は、P≦0.5レベルでのスチューデントT検定に従って、2つの群の腫瘍増殖間の統計的に有意な差を示す。図16cは、接種後23日目の各群の個々のマウスにおける腫瘍体積を示す。アスタリスク()は、P≦0.5レベルでのスチューデントT検定に従って、2つの群の腫瘍増殖間の統計的に有意な差を示す。図16dは、接種後27日目の各群の個々のマウスにおける腫瘍体積を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
定義
特に明示しない限り、本発明に関連して使用する科学用語及び技術用語は、当業者に一般に理解される意味を有するものとする。また、文脈からそうでないことが求められない限り、単数形には複数形が含まれ、複数形には単数形が含まれるものとする。
【0045】
組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織の培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)、酵素反応、ならびに精製法に関連して使用される代表的な技法は、当該技術分野において公知である。多くのそのような技法及び手順は、とりわけ、例えば、Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))に記載されている。さらに、化学合成、化学分析、薬学的な調製、処方、及び送達、ならびに患者の治療のための代表的な技法も当該技術分野において公知である。
【0046】
本出願において、「または」の使用は、特に指定のない限り「及び/または」を意味する。多項従属請求項に関して、「または」の使用は、複数の先行する独立請求項または従属請求項を択一的にのみ引用する。また、「要素」または「構成要素」などの用語は、特に指定のない限り、1つのユニットを含む要素及び構成要素と複数のサブユニットを含む要素及び構成要素との双方を包含する。
【0047】
以下の用語は、本開示に従って使用する場合、他に指示がない限り以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0048】
用語「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」とは、区別なく使用してもよく、ヌクレオチドのポリマーを指す。このようなヌクレオチドのポリマーは、天然及び/または非天然のヌクレオチドを含んでもよく、DNA、RNA、及びPNAを含んでもよいが、これらに限定されない。「核酸配列」とは、核酸分子またはポリヌクレオチドを含むヌクレオチドの直鎖配列を指す。
【0049】
用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」とは、アミノ酸残基のポリマーを指すのに区別なく用いられ、最短の長さに限定されない。そのようなアミノ酸残基のポリマーは、天然または非天然アミノ酸残基を含んでもよく、アミノ酸残基のペプチド、オリゴペプチド、ダイマー、トリマー、及び多量体を含んでもよいが、これらに限定されない。完全長タンパク質及びその断片の両方が、定義により含まれる。その用語は、例えば、グリコシル化、シアル化、アセチル化、リン酸化などのポリペプチドの発現後修飾も含む。さらに、本発明の目的のために、「ポリペプチド」とは、タンパク質が所望の活性を維持する範囲で、天然型の配列に対する欠失、付加、置換(天然では通常保存的)などの修飾を含むタンパク質を指す。これらの修飾は、部位特異的突然変異形成による意図的なものであってもよく、または、タンパク質を産生する宿主の突然変異もしくはPCR増幅時のエラーによる偶発的なものであってもよい。
【0050】
「FGFR2」とは、IIIa、IIIb、及びIIIcスプライシングフォームなどの、その代替的にスプライシングされたフォームのいずれかを含む、線維芽細胞増殖因子受容体2を指す。用語「FGFR2」とは、野生型FGFR2及び天然突然変異型、例えば、いくつかの癌細胞で見られるFGFR2-S252WなどのFGFR2活性化突然変異型を包含する。「FGFR2-IIIb」または「FGFR2b」とは、区別なく用いられ、線維芽細胞増殖因子受容体2IIIbスプライシングフォームを指す。例示的なヒトFGFR2-IIIbは、2013年7月7日付GenBank受託番号NP_075259.4に示される。非限定的な例示的な成熟ヒトFGFR2-IIIbアミノ酸配列は、配列番号1で示される。「FGFR2-IIIc」または「FGFR2c」とは、区別なく用いられ、線維芽細胞増殖因子受容体2IIIcスプライシングフォームを指す。例示的なヒトFGFR2-IIIcは、2013年7月7日付GenBank受託番号NP_000132.3に示される。非限定的な例示的な成熟ヒトFGFR2-IIIcアミノ酸配列は、配列番号12で示される。
【0051】
「FGFR2 ECD」とは、天然及び遺伝子操作されたその変異体を含む、FGFR2の細胞外ドメインを指す。FGFR2 ECDの非限定例としては、配列番号13~23、29、及び32が挙げられる。「FGFR2 ECD融合分子」とは、FGFR2 ECD及び融合パートナー、例えば、Fcドメイン、アルブミン、またはPEGを含む分子を指す。融合パートナーは、例えば、FGFR2 ECDのN末端もしくはC末端に、または内部の位置で共有結合されてもよい。FGFR2 ECD融合分子の非限定例としては、配列番号30、31、及び33が挙げられる。
【0052】
「FGFR2阻害剤」は、FGF1、FGF7、及び/またはFGF2などのそのリガンドの1つ以上へのFGFR2の結合を阻害するFGFR2、例えば、FGFR2 ECDまたはFGFR2 ECD融合分子に結合する抗体などの分子を指す。いくつかの実施形態では、FGFR2阻害剤は、FGFR2、ならびに活性化突然変異を有するFGFR2突然変異体、例えば、FGFR2-S252Wに結合することができる。
【0053】
本明細書で使用する場合、用語「免疫刺激剤」とは、共刺激分子を含む、免疫刺激分子のアゴニストとして作用すること、または共阻害分子を含む免疫阻害分子のアンタゴニストとして作用することのいずれかによって、免疫系を刺激する分子を指す。免疫刺激剤は、抗体もしくは抗体断片、他のタンパク質、もしくはワクチンなどの生物製剤であってもよく、または小分子薬であってもよい。
【0054】
用語「プログラム細胞死タンパク質1」及び「PD-1」とは、CD28ファミリーに属する免疫阻害性受容体を指す。PD-1は、インビボでは以前に活性化されたT細胞上で主に発現され、2つのリガンド、PD-L1とPD-L2とに結合する。本明細書で使用する場合、用語「PD-1」とは、ヒトPD-1(hPD-1)、hPD-1の変異体、アイソフォーム、及び種ホモログ、ならびにhPD-1と少なくとも1つの共通のエピトープを有するアナログを含む。完全なhPD-1配列は、GenBank受託番号U64863の下に見出すことができる。いくつかの実施形態では、PD-1は、配列番号34(シグナル配列を含む前駆体)または配列番号35(シグナル配列を含まない成熟型)のアミノ酸配列を有するヒトPD-1である。
【0055】
用語「プログラム細胞死1リガンド1」及び「PD-L1」とは、PD-1への結合の際にT細胞活性化及びサイトカイン分泌を下方調節するPD-1(他方は、PD-L2である)のための2つの細胞表面糖タンパク質リガンドの1つを指す。本明細書で使用する場合、用語「PD-L1」とは、ヒトPD-L1(hPD-L1)、hPD-L1の変異体、アイソフォーム、及び種ホモログ、ならびにhPD-L1と少なくとも1つの共通のエピトープを有するアナログを含む。完全なhPD-L1配列は、GenBank受託番号Q9NZQ7の下に見出すことができる。いくつかの実施形態では、PD-L1は、配列番号37(シグナル配列を含む前駆体)または配列番号38(シグナル配列を含まない成熟型)のアミノ酸配列を有するヒトPD-L1である。
【0056】
用語「PD-1/PD-L1阻害剤」とは、PD-1/PD-L1シグナル伝達経路を破壊する部分を指す。いくつかの実施形態では、阻害剤は、PD-1及び/またはPD-L1に結合することにより、PD-1/PD-L1シグナル伝達経路を阻害する。いくつかの実施形態では、阻害剤はPD-L2にも結合する。いくつかの実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、PD-1の、PD-L1及び/またはPD-L2への結合を阻害する。非限定的な例示的なPD-1/PD-L1阻害剤としては、PD-1に結合する抗体;PD-L1に結合する抗体;AMP-224などのPD-1融合分子;及びAUR-012などのPD-1ポリペプチドが挙げられる。
【0057】
用語「PD-1を阻害する抗体」とは、PD-1またはPD-L1に結合することによって、PD-1及び/またはPD-L1シグナル伝達を阻害する抗体を指す。いくつかの実施形態では、PD-1を阻害する抗体は、PD-1に結合し、PD-L1及び/またはPD-L2の、PD-1への結合を遮断する。いくつかの実施形態では、PD-1を阻害する抗体は、PD-L1に結合し、PD-1のPD-L1への結合を遮断する。PD-L1に結合するPD-1を阻害する抗体を、抗PD-L1抗体と呼ぶことができる。PD-1に結合するPD-1を阻害する抗体を、抗PD-1抗体と呼ぶことができる。
【0058】
FGFR2抗体、FGFR2 ECD、及びFGFR2 ECD融合分子を参照すると、リガンド「の結合を遮断する」または「の結合を阻害する」という用語は、FGF1またはFGF2などのFGFR2とFGFR2リガンドの相互作用を阻害する能力を指す。そのような阻害は、例えば、FGFR2上の重複結合部位、及び/またはリガンド親和性を変化させる抗体により誘導されたFGFR2の立体配座の変化のため、または、例えば、FGFR2 ECDまたはFGFR2 ECD融合分子の場合、FGFR2リガンドへの結合に競合することによって、リガンド結合との直接干渉を含む、任意の機序を介して生じ得る。
【0059】
抗PD-1抗体、及びPD-1融合分子、またはポリペプチドを参照すると、PD-L1、及びその文法上の変異体などのリガンド「の結合を遮断する」または「の結合を阻害する」という用語は、PD-1とPD-L1などのPD-1リガンドの相互作用を阻害する能力を指す。そのような阻害は、例えば、PD-1上の重複結合部位、及び/またはリガンド親和性を変化させる抗体により誘導されたPD-1の立体配座の変化のため、または、PD-1リガンドとの結合に競合することによって、リガンド結合との直接干渉を含む、任意の機序を介して生じ得る。
【0060】
本明細書で使用する場合、用語「抗体」とは、重鎖の少なくとも超可変領域(HVR)H1、H2、及びH3と、軽鎖のL1、L2、及びL3とを含む分子であって、抗原に結合することができる分子を指す。用語「抗体」とは、限定されるものではないが、Fv、単鎖Fv(scFv)、Fab、Fab’、及び(Fab’)などの、抗原に結合することができる断片を含む。用語「抗体」とはまた、限定されるものではないが、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、及びマウス、ヒト、カニクイザルなどの様々な種の抗体も含む。小分子薬、二重特異性抗体及び多重特異性抗体などの他の分子にコンジュゲートした抗体も含む。
【0061】
用語「重鎖可変領域」とは、重鎖HVR1、フレームワーク(FR)2、HVR2、FR3、及びHVR3を含む領域を指す。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域はまた、少なくともFR1の一部及び/または少なくともFR4の一部を含む。
【0062】
用語「重鎖定常領域」とは、少なくとも3つのC1、C2、及びC3の重鎖定常ドメインを含む領域を指す。非限定的例示的な重鎖定常領域は、γ、δ、及びαを含む。非限定的例示的な重鎖定常領域は、ε及びμを含む。各重鎖定常領域は、抗体アイソタイプに対応する。例えば、γ定常領域を含む抗体が、IgG抗体であり、δ定常領域を含む抗体が、IgD抗体であり、α定常領域を含む抗体が、IgA抗体である。さらに、μ定常領域を含む抗体が、IgM抗体であり、ε定常領域を含む抗体が、IgE抗体である。特定のアイソタイプは、サブクラスにさらに分類され得る。例えば、IgG抗体は、IgG1(γ定常領域を含む)、IgG2(γ定常領域を含む)、IgG3(γ定常領域を含む)、及びIgG4(γ定常領域を含む)抗体を含むがこれらに限定されず;IgA抗体は、IgA1(α定常領域を含む)及びIgA2(α定常領域を含む)抗体を含むがこれらに限定されず;IgM抗体は、IgM1及びIgM2を含むがこれに限定されない。
【0063】
用語「重鎖」とは、リーダー配列を伴うかまたは伴わずに、少なくとも重鎖可変領域を含むポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、重鎖は、少なくとも重鎖定常領域の一部を含む。用語「完全長重鎖」とは、リーダー配列を伴うかまたは伴わずに、重鎖可変領域、及び重鎖定常領域を含むポリペプチドを指す。
【0064】
用語「軽鎖可変領域」とは、軽鎖HVR1、フレームワーク(FR)2、HVR2、FR3、及びHVR3を含む領域を指す。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域はまた、FR1及び/またはFR4を含む。
【0065】
用語「軽鎖定常領域」とは、軽鎖定常ドメインCを含む領域を指す。非限定的例示的な軽鎖定常領域は、λ及びκを含む。
【0066】
用語「軽鎖」とは、リーダー配列を伴うかまたは伴わずに、少なくとも軽鎖可変領域を含む、ポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、軽鎖は、少なくとも軽鎖定常領域の一部を含む。用語「完全長軽鎖」とは、リーダー配列を伴うかまたは伴わずに、軽鎖可変領域、及び軽鎖定常領域を含むポリペプチドを指す。
【0067】
用語「超可変領域」または「HVR」とは、配列が超可変であるか、及び/または構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する抗体可変ドメインの各領域を指す。一般的に、天然型4鎖抗体は、Vに3つ(H1、H2、H3)、及びVに3つ(L1、L2、L3)の6つのHVRを含む。HVRは、一般的に超可変ループ由来及び/または「相補性決定領域」(CDR)由来のアミノ酸残基を含み、後者は、配列可変性が最高であり、及び/または抗原認識に関与している。例示的な超可変ループは、アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)で生じる(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987)。)例示的なCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3)は、アミノ酸残基L1の24~34、L2の50~56、L3の89~97、H1の31~35B、H2の50~65、及びH3の95~102に生じる(Kabat et al.,Sequences of Proteinsof ImmunologicalInterest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))。超可変領域(HVR)、及び相補性決定領域(CDR)との用語は両方とも、抗原結合領域を形成する可変領域の部分を指す。
【0068】
「親和性」または「結合親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の総和の強度を指す。いくつかの実施形態では、「結合親和性」とは、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映している本質的な結合親和性を指す。そのパートナーYに対する分子Xの親和性は、一般的に解離定数(K)で表すことができる。
【0069】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」または「ADCC」とは、特定の細胞傷害性細胞(例えば、NK細胞、好中球、及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcRs)に結合した、分泌されたIgが、細胞傷害性エフェクター細胞が抗原保有標的細胞に特異的に結合し、続いてサイトトキシンにより標的細胞を殺傷することを可能にする、細胞傷害の形態を指す。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcRの発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-92(1991)の464頁の表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号または米国特許第6,737,056号(Presta)に記載されているようなインビトロADCCアッセイを実施してもよい。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞は、PBMC及びNK細胞を含む。代替的または追加的に、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al.Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:652-656(1998)において開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評価され得る。Fc領域アミノ酸が改変された追加的抗体、及び増強されたまたは低下したADCC活性は、例えば、米国特許第7,923,538号及び米国特許第7,994,290号に記載されている。
【0070】
アッセイで使用されるそのような抗体及び親抗体の量が本質的に同じである場合、「増強されたADCC活性」を有する抗体は、親抗体と比較して、インビトロまたはインビボでADCCの媒介に関してより有効な抗体を指し、抗体及び親抗体は、少なくとも1つの構造的態様において異なる。いくつかの実施形態では、抗体及び親抗体は、同じアミノ酸配列を有するが、親抗体がフコシル化されているのに対し、抗体は、非フコシル化されている。いくつかの実施形態では、ADCC活性は、米国公開番号2015-0050273-A1に開示されるようなインビトロのADCCアッセイを使用して決定されるが、例えば、動物モデルなどの、他のアッセイまたはADCC活性を決定するための方法が企図される。いくつかの実施形態では、増強されたADCC活性を有する抗体はまた、FcガンマRIIIAに対して増強された親和性を有する。いくつかの実施形態では、増強されたADCC活性を有する抗体は、FcガンマRIIIA(V158)に対して増強された親和性を有する。いくつかの実施形態では、増強されたADCC活性を有する抗体は、FcガンマRIIIA(F158)に対して増強された親和性を有する。
【0071】
「FcガンマRIIIAに対して増強された親和性」とは、FcガンマRIIIAに対する、親抗体より高い親和性を有する抗体を指し(いくつかの例では、Cd16aとも呼ばれる)、抗体及び親抗体は、少なくとも1つの構造的態様において異なる。いくつかの実施形態では、抗体及び親抗体は、同じアミノ酸配列を有するが、親抗体がフコシル化されているのに対し、抗体は、非フコシル化されている。FcガンマRIIIAに対する親和性を決定するための、任意の好適な方法が、使用されてもよい。いくつかの実施形態では、FcガンマRIIIAに対する親和性は、米国公開番号2015-0050273-A1に記載される方法によって決定される。いくつかの実施形態では、FcガンマRIIIAに対して増強された親和性を有する抗体はまた、増強されたADCC活性を有する。いくつかの実施形態では、FcガンマRIIIAに対して増強された親和性を有する抗体は、FcガンマRIIIA(V158)に対して増強された親和性を有する。いくつかの実施形態では、FcガンマRIIIAに対して増強された親和性を有する抗体は、FcガンマRIIIA(F158)に対して増強された親和性を有する。
【0072】
本明細書で使用する場合、「キメラ抗体」とは、第1の種(例えば、マウス、ラット、カニクイザルなど)に由来する少なくとも1つの可変領域、及び第2の種(例えば、ヒト、カニクイザルなど)に由来する少なくとも1つの定常領域を含む抗体を指す。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、少なくとも1つのマウス可変領域、及び少なくとも1つのヒト定常領域を含む。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、少なくとも1つのカニクイザル可変領域、及び少なくとも1つのヒト定常領域を含む。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、少なくとも1つのラット可変領域、及び少なくとも1つのマウス定常領域を含む。いくつかの実施形態では、キメラ抗体の全ての可変領域は、第1の種に由来し、キメラ抗体の全ての定常領域は、第2の種に由来する。
【0073】
本明細書で使用する場合、「ヒト化抗体」とは、非ヒト可変領域のフレームワーク領域における少なくとも1つのアミノ酸が、ヒト可変領域に由来する対応するアミノ酸と置換された、抗体を指す。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つのヒト定常領域、またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、Fab、scFv、(Fab’)などである。
【0074】
本明細書で使用する場合、「ヒト抗体」とは、ヒトで産生された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含む非ヒト動物、例えば、Xenoマウス(登録商標)で産生された抗体、及びインビトロ法、例えば、ファージディスプレイを用いて選択される抗体であって、抗体レパートリーがヒト免疫グロブリン配列に基づく抗体を指す。
【0075】
「非フコシル化」抗体または「フコースを欠く」抗体は、定常領域のグリコシル化においてフコースを欠いている、IgG1またはIgG3アイソタイプ抗体を指す。最大2Gal残基により終了される主要なフコシル化二分岐複合オリゴ糖グリコシル化のように、IgG1またはIgG3のグリコシル化は、Asn297(N297)で生じる。いくつかの実施形態では、非フコシル化抗体は、Asn297でのフコースを欠いている。これらの構造は、末端Gal残基の量によって、G0、G1(α1,6またはα1,3)またはG2グリカン残基と規定される。例えば、Raju,T.S.,BioProcess Int.1:44-53(2003)を参照されたい。抗体FcのCHO型グリコシル化は、例えば、Routier,F.H.,Glycoconjugate J.14:201-207(1997)に記載されている。抗体の集団内で、集団の抗体の<5%がAsn297でフコースを含む場合に、抗体は、非フコシル化されていると考えられる。
【0076】
「エフェクター機能」とは、抗体のアイソタイプにより変わる、抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指す。抗体のエフェクター機能の例としては、以下のものが挙げられる:C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);貪食;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;ならびにB細胞の活性化。
【0077】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」または「ADCC」とは、特定の細胞傷害性細胞(例えば、NK細胞、好中球、及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcRs)に結合した、分泌されたIgが、細胞傷害性エフェクター細胞が抗原保有標的細胞に特異的に結合し、続いてサイトトキシンにより標的細胞を殺傷することを可能にする、細胞傷害の形態を指す。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcRの発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)の464頁の表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号または米国特許第6,737,056号(Presta)に記載されているようなインビトロADCCアッセイを実施してもよい。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞は、PBMC及びNK細胞を含む。代替的または追加的に、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al.Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:652-656(1998)において開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評価され得る。Fc領域アミノ酸が改変された追加的抗体、及び増強されたまたは低下したADCC活性は、例えば、米国特許第7,923,538号及び米国特許第7,994,290号に記載されている。
【0078】
アッセイで使用されるそのような抗体及び親抗体の量が本質的に同じである場合、「増強されたADCC活性」を有する抗体は、親抗体と比較して、インビトロまたはインビボアッセイでADCCの媒介に関してより有効な抗体を指し、ここで、抗体及び親抗体は、ADCC活性を変えるように設計された少なくとも1つの構造変化を除いて同じ配列を有する。いくつかの実施形態では、抗体及び親抗体は、Fcドメインにおける突然変異、例えば、親抗体がフコシル化されている場合に非フコシル化を引き起こすアミノ酸置換を除いて同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、ADCC活性は、本明細書で開示されるインビトロのADCCアッセイを使用して決定されるが、例えば、動物モデルなどの、他のアッセイまたはADCC活性を決定するための方法が企図される。いくつかの実施形態では、増強されたADCC活性を有する抗体は、FcガンマRIIIAに対して増強された親和性を有する。いくつかの実施形態では、増強されたADCC活性を有する抗体は、FcガンマRIIIA(V158)に対して増強された親和性を有する。いくつかの実施形態では、増強されたADCC活性を有する抗体は、FcガンマRIIIA(F158)に対して増強された親和性を有する。
【0079】
「FcガンマRIIIAに対して増強された親和性」とは、FcガンマRIIIAに対する、親抗体より高い親和性を有する抗体を指し(いくつかの例では、Cd16aとも呼ばれる)、抗体及び親抗体は、少なくとも1つの構造的態様において異なる。いくつかの実施形態では、抗体及び親抗体は、同じアミノ酸配列を有するが、親抗体がフコシル化されているのに対し、抗体は、非フコシル化されている。FcガンマRIIIAに対する親和性を決定するための、任意の好適な方法が、使用されてもよい。いくつかの実施形態では、FcガンマRIIIAに対する親和性は、本明細書に記載される方法によって決定される。いくつかの実施形態では、FcガンマRIIIAに対して増強された親和性を有する抗体は、増強されたADCC活性を有する。いくつかの実施形態では、FcガンマRIIIAに対して増強された親和性を有する抗体は、FcガンマRIIIA(V158)に対して増強された親和性を有する。いくつかの実施形態では、FcガンマRIIIAに対して増強された親和性を有する抗体は、FcガンマRIIIA(F158)に対して増強された親和性を有する。
【0080】
用語「リーダー配列」とは、哺乳動物細胞からのポリペプチドの分泌を促進する、ポリペプチドのN末端に位置するアミノ酸残基の配列を指す。哺乳動物細胞からポリペプチドを移動する際に、リーダー配列を切断して成熟タンパク質を形成してもよい。リーダー配列は、天然でも合成でもよく、またリーダー配列は、それらを付与するタンパク質に対して異種でも同種でもよい。非限定的な例示的なリーダー配列には、異種タンパク質に由来するリーダー配列も含まれる。いくつかの実施形態では、抗体は、リーダー配列を欠いている。いくつかの実施形態では、抗体は、少なくとも1つのリーダー配列を含み、これは、天然抗体リーダー配列及び異種リーダー配列から選択してもよい。
【0081】
用語「ベクター」とは、クローン化ポリヌクレオチドを含有するように操作することができるポリヌクレオチド、または宿主細胞で増殖させることができるポリヌクレオチドを表すために使用される。ベクターは、以下の要素のうちの1つ以上を含んでもよい:複製起点、目的のポリペプチドの発現を調節する1つ以上の調節配列(例えば、プロモーター及び/またはエンハンサー)、及び/または1つ以上の選択可能なマーカー遺伝子(例えば、抗生物質抵抗性遺伝子、及び比色分析に使用することができる遺伝子、例えば、β-ガラクトシダーゼ)。用語「発現ベクター」とは、宿主細胞で目的のポリペプチドを発現するために使用するベクターを指す。
【0082】
「宿主細胞」とは、ベクターもしくは単離されたポリヌクレオチドのレシピエントにすることができる、またはそれらのレシピエントにされている細胞を指す。宿主細胞は、原核細胞であっても真核細胞であってもよい。例示的な真核細胞としては、霊長類または非霊長類の動物細胞などの哺乳動物細胞、酵母などの真菌細胞、植物細胞、及び昆虫細胞が挙げられる。非限定的な例示的な哺乳動物細胞としては、NSO細胞、PER.C6(登録商標)細胞(Crucell社)、ならびに293細胞及びCHO細胞及びそれらの誘導体、例えば、それぞれ293-6E細胞及びDG44細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
本明細書で使用する場合、用語「単離された」とは、自然界で典型的には認められる構成要素のうちの少なくとも一部から分離した分子を指す。例えば、ポリペプチドは、それが産生された細胞の構成要素のうちの少なくとも一部から分離されている場合に、「単離された」とみなされる。ポリペプチドが発現後に細胞によって分泌される場合、それを産生した細胞からポリペプチドを含有する上清を物理的に分離することは、ポリペプチドを「単離すること」とみなされる。同様に、ポリヌクレオチドは、自然界で典型的にはより大きいポリヌクレオチド(例えば、DNAポリヌクレオチドの場合、ゲノムDNAまたはミトコンドリアDNA)の中に認められるが、これらのより大きいポリペプチドの一部でないときに、または、例えば、RNAポリヌクレオチドの場合、ポリヌクレオチドが産生された細胞の構成要素のうちの少なくとも一部から分離しているときに、「単離された」とみなされる。従って、宿主細胞内のベクターに含まれるDNAポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチドが自然界でそのベクター中で認められない限り、「単離された」とみなすことができる。
【0084】
用語「上昇したレベル」とは、癌または本明細書に記載の他の状態に罹患していない個体または複数の個体などの、対照中の同じ組織と比較して対象の特定の組織中でのタンパク質のレベルがより高いことを意味する。上昇したレベルは、タンパク質の、発現の増加、安定性の増加、分解の減少、分泌の増加、クリアランスの減少などの任意の機構の結果であってもよい。
【0085】
タンパク質または細胞型に対して、「減少させる」(reduce/reduces)または「増加させる」(increase/increases)は、対象の特定の組織中、例えば、腫瘍中のタンパク質または細胞型のレベルを少なくとも10%変化させることを意味する。いくつかの実施形態では、FGFR2またはPD-1/PD-L1阻害剤などの薬剤は、対象の特定の組織中、例えば、腫瘍中のタンパク質または細胞型のレベルを、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%増加または減少させる。いくつかの実施形態では、タンパク質または細胞型のレベルは、FGFR2もしくはPD-1/PD-L1阻害剤などの薬剤と接触させる前のタンパク質のレベルに対して、または対照処置のレベルに対して減少または増加している。
【0086】
用語「対象」及び「患者」とは、本明細書において、ヒトを指して区別なく使用される。いくつかの実施形態では、齧歯類、真猿類、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、哺乳類実験動物、哺乳類家畜、哺乳類スポーツ動物、及び哺乳類ペットを含むがこれらに限定されない他の哺乳動物を治療する方法も提供される。
【0087】
本明細書で使用する場合、用語「試料」とは、例えば、物理的、生化学的、化学的、及び/または生理学的な特徴に基づいて特徴付けられる、定量化される、及び/または同定される、細胞実体及び/または他の分子実体を含む対象から得られるかまたは対象に由来する組成物を指す。例示的な試料は、組織試料である。
【0088】
用語「癌」とは、制御不能な細胞増殖、抑制不能な細胞成長、及びアポトーシスによる減少した細胞死に関連する悪性増殖性疾患を指す。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が挙げられるが、これらに限定されない。このような癌のより具体的な非限定的な例としては、扁平上皮癌、小細胞肺癌、下垂体癌、食道癌(胃食道接合部腺癌を含む)、星状細胞腫、軟部組織肉腫、非小細胞肺癌(扁平上皮細胞非小細胞肺癌を含む)、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化管癌、膵癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、腎細胞癌、肝癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝臓癌、脳癌、子宮内膜癌、精巣癌、胆管癌、胆嚢癌、胃癌、黒色腫、及び種々の種類の頭頸部癌(頭頸部の扁平上皮癌を含む)が挙げられる。
【0089】
いくつかの実施形態では、癌は、胃癌(胃食道癌を含む)である。いくつかの実施形態では、癌は、膀胱癌である。本明細書で定義される膀胱癌は、膀胱癌(urinary bladder cancer)(UBC)、及び尿路上皮癌(UC)としても知られる移行上皮癌(TCC)、ならびに膀胱に発生する非移行上皮癌などの疾患の形態を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、癌は、FGFR2遺伝子増幅を含むが、いくつかの実施形態では、癌は、FGFR2増幅を含まない。いくつかの実施形態では、増幅が生じる場合、FGFR2増幅は、FGFR2:CEN10(染色体10セントロメア)の比が>3である。いくつかの実施形態では、FGFR2増幅は、FGFR2:CEN10の比が≧2である。他の実施形態では、しかしながら、FGFR2レベルは、FGFR2:CEN10の比が1~2であり、これは、FGFR2が増幅されないことを示す。いくつかの実施形態では、突然変異または転座は、FGFR2遺伝子増幅を引き起こし得る。遺伝子増幅は、例えば、蛍光インサイチュハイブリダイゼーションアッセイ(FISH)を用いて決定してもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、癌がFGFR2遺伝子増幅を含む場合、癌は、FGFR2-IIIbを過剰発現する。いくつかの実施形態では、FGFR2増幅を含む癌は、FGFR2-IIIcよりもFGFR2-IIIbを大幅に過剰発現する。いくつかの実施形態では、FGFR2増幅を含む癌は、FGFR2-IIIc発現の正規化レベルよりも2倍、3倍、5倍、または10倍以上多い正規化レベルでFGFR2-IIIbを発現する。いくつかの実施形態では、発現レベルは、GUSBに正規化される。いくつかの実施形態では、癌は、FGFR2-IIIbを過剰発現するが、FGFR2遺伝子増幅を含まない。
【0092】
いくつかの実施形態では、癌は、FGFR2-IIIbタンパク質過剰発現などのFGFR2を含むが、いくつかの他の実施形態では、癌は、FGFR2またはFGFR2-IIIbタンパク質過剰発現を含まない。FGFR2-IIIbタンパク質過剰発現は、免疫組織化学(IHC)などの抗体ベース方法を含むが、これらに限定されない当該技術分野の任意の適切な方法によって決定されてもよい。いくつかの実施形態では、IHC染色は、当該技術分野の方法に従って採点される。用語「FGFR2-IIIbタンパク質過剰発現」及び「FGFR2IIIb過剰発現」などは、そのような上昇したレベルの原因(すなわち、上昇したレベルが、翻訳の増加及び/またはタンパク質の分解の減少、他の機序、または機序の組み合わせの結果であるかどうか)に関わらず、FGFR2-IIIbタンパク質の上昇したレベルを意味する。
【0093】
IHCによるFGFR2またはFGFR2IIIb発現のレベルは、腫瘍試料にIHCスコアを0~3のスケールで与えることによって決定されてもよい。本明細書で、「0」のスコアは、反応性が観察されない場合、または腫瘍細胞の<10%でしか膜反応性がない場合に与えられ;「1+」のスコアは、腫瘍細胞の少なくとも10%において微かなまたは僅かな知覚膜反応性がある場合、または細胞が膜の一部にのみ反応性である場合に与えられ;「2+」のスコアは、腫瘍細胞の少なくとも10%において弱~中程度の完全な側底膜または横膜反応性がある場合に与えられ;及び「3+」のスコアは、腫瘍細胞の少なくとも10%において強い完全な側底膜または横膜反応性がある場合に与えられる。いくつかの実施形態では、IHCによる腫瘍細胞の1+、2+、または3+染色は、FGFR2IIIb過剰発現を示す。いくつかの実施形態では、IHCによる腫瘍細胞の2+または3+染色は、FGFR2IIIb過剰発現を示す。いくつかの実施形態では、IHCによる腫瘍細胞の3+染色は、FGFR2IIIb過剰発現を示す。いくつかの実施形態では、胃癌または膀胱癌は、FGFR2遺伝子増幅を含む。いくつかの実施形態では、FGFR2遺伝子増幅を含む胃癌または膀胱癌は、FGFR2-IIIbを過剰発現する。いくつかの実施形態では、FGFR2増幅を含む胃癌または膀胱癌は、FGFR2-IIIcよりもFGFR2-IIIbを大幅に過剰発現する。いくつかの実施形態では、胃癌または膀胱癌は、FGFR2-IIIbを過剰発現するが、FGFR2遺伝子増幅を含まない。いくつかの実施形態では、FGFR2増幅を含む胃癌または膀胱癌は、FGFR2-IIIc発現の正規化レベルよりも2倍、3倍、5倍、または10倍以上多い正規化レベルでFGFR2-IIIbを発現する。いくつかの実施形態では、発現レベルは、GUSBに正規化される。いくつかの実施形態では、過剰発現は、mRNA過剰発現である。いくつかの実施形態では、過剰発現は、タンパク質過剰発現である。
【0094】
本明細書で使用する場合、「治療」とは、目的が、標的化された病状または障害を防止する、または減速させる(少なくする)ことである、治療的処置と予防的または保存的手段との両方を指す。ある特定の実施形態では、用語「治療」とは、ヒトを含む哺乳動物における疾患のための治療剤の任意の投与または適用を包含し、疾患または疾患の進行を阻害する、または減速させること;例えば、縮小を引き起こす、または失われた、失われる、もしくは欠陥している機能を回復させる、もしくは修復することにより、疾患を部分的または完全に軽減すること;非効率的なプロセスを刺激すること;または重症度が減少した疾患安定期を引き起こすことを含む。用語「治療」とはまた、任意の表現型特性の重症度を減少させること、及び/またはその特性の発生率、程度、もしくは尤度を減少させることも含む。治療を必要とするものは、既に障害を有するもの、ならびに障害を有する傾向があるもの、または障害を防止すべきであるものを含む。
【0095】
用語「有効量」または「治療的有効量」とは、対象における疾患または障害を治療するのに有効な薬物の量を指す。ある特定の実施形態では、有効量は、所望の治療的または予防的結果を達成するのに必要な用量及び期間で有効な量を指す。本発明のFGFR2阻害剤及び/またはPD-1/PD-L1阻害剤の治療的有効量は、個体の病状、年齢、性別、及び体重などの因子、ならびに抗体または複数の抗体が個体において所望の応答を惹起する能力に応じて変化してもよい。治療的有効量は、治療的に有益な作用が抗体または複数の抗体の任意の毒性作用または有害作用を上回る量を包含する。いくつかの実施形態では、「有効量」という表現は、癌を治療するのに有効である抗体の量を指す。
【0096】
1つ以上のさらなる治療剤「との組み合わせ」投与は、任意の順序での、同時の(並行した)、及び連続した(順次的な)投与を含む。
【0097】
「薬学的に許容される担体」とは、治療剤とともに用いられ、対象に投与される「薬学的組成物」を共に構成する、当該技術分野で一般的な毒性のない固体、半固体、もしくは液体の充填剤、希釈剤、封入材料、配合助剤、または担体を指す。薬学的に許容される担体は、レシピエントに対し、その使用される用量及び濃度において非毒性であり、かつ、製剤の他の成分と適合性を有する。薬学的に許容される担体は、使用される製剤のために好適である。例えば、治療剤を経口投与する場合、担体は、ゲルカプセルであってもよい。治療剤を皮下投与する場合、担体は、理想的には皮膚に対して非刺激性であり、注射部位反応を発生させない。
【0098】
追加の定義を以下のセクションで提供する。
【0099】
例示的なFGFR2阻害剤
本明細書に記載の方法及び組成物のFGFR2阻害剤は、FGFR2抗体、FGFR2 ECD、またはFGFR2 ECD融合分子であってもよい。
【0100】
例示的なFGFR2抗体
FGFR2抗体を伴う本明細書に記載の組成物または方法のいずれかでは、FGFR2抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはヒト抗体であってもよい。本明細書に記載の組成物または方法のいずれかでは、FGFR2抗体は、Fab、Fv、scFv、Fab’、及び(Fab’)2から選択されてもよい。本明細書に記載の組成物または方法のいずれかでは、FGFR2抗体は、IgA、IgG、及びIgDから選択されてもよい。本明細書に記載の組成物または方法のいずれかでは、FGFR2抗体は、IgGであってもよい。本明細書に記載の方法のいずれかでは、抗体は、IgG1またはIgG3であってもよい。
【0101】
例示的なFGFR2抗体は、FGFR2-IIIbに結合する抗体を含む。いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに、FGFR2-IIIbに結合するよりも低い親和性で結合する。いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに検出可能に結合しない。
【0102】
本明細書の実施形態で使用するための例示的なFGFR2-IIIb抗体は、参照により本明細書に具体的に組み込まれる、2012年1月24日に発行された米国特許第8,101,723B2号に記載されるHuGAL-FR21抗体である。米国特許第8,101,723B2号の図13及び14は、参照により本明細書に組み込まれる、HuGAL-FR21の可変領域及び完全長の成熟抗体鎖のアミノ酸配列を示す。抗体HuGAL-FR21の重鎖可変領域配列は、参照により本明細書に具体的に組み込まれる米国特許第8,101,723B2号の図13において下線で示される。いくつかの実施形態では、抗体は、非フコシル化されている。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297でのフコースを欠いているIgG1またはIgG3抗体である。本明細書の実施形態で使用され得る追加の抗体には、ある特定の非フコシル化FGFR2-IIIb抗体を記載し、かつ、参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2015-0050273-A1号に記載されるものが含まれる。
【0103】
いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR;例えば、CDR)を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、非フコシル化されている。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297でのフコースを欠いているIgG1またはIgG3抗体である。
【0104】
いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、重鎖可変領域を含む少なくとも1つの重鎖及び重鎖定常領域の少なくとも一部、ならびに軽鎖可変領域を含む少なくとも1つの軽鎖及び軽鎖定常領域の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、各重鎖が重鎖可変領域及び重鎖定常領域の少なくとも一部を含む、2つの重鎖、ならびに、各軽鎖が軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域の少なくとも一部を含む、2つの軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、非フコシル化されている。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297でのフコースを欠いているIgG1またはIgG3抗体である。
【0105】
いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む6つのHVRを含む。いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、前述のような6つのHVRを含み、FGFR2-IIIbに結合する。いくつかの実施形態では、FGFR-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに結合しない。いくつかの実施形態では、抗体は、非フコシル化されている。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297でのフコースを欠いているIgG1またはIgG3抗体である。
【0106】
一態様では、FGFR2-IIIb抗体は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む6つのHVRを含むFGFR2-IIIb抗体と競合する。いくつかの実施形態では、抗体は、非フコシル化されている。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297でのフコースを欠いているIgG1またはIgG3抗体である。
【0107】
いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2;及び(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、非フコシル化されている。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297でのフコースを欠いているIgG1またはIgG3抗体である。
【0108】
いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL HVR配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、非フコシル化されている。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297でのフコースを欠いているIgG1またはIgG3抗体である。
【0109】
いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、(a)(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(iii)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含むVHドメイン;及び(b)(i)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVLHVR配列を含むVLドメイン、を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、非フコシル化されている。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297でのフコースを欠いているIgG1またはIgG3抗体である。
【0110】
いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、配列番号4のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。ある特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含むFGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、そのようなFGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに結合せずに、FGFR2-IIIbに選択的に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号4において、合計1から10のアミノ酸が、置換、挿入、及び/または欠失している。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVR外の(すなわち、FR内の)領域で生じる。必要に応じて、FGFR2-IIIb抗体は、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号5のVH配列を含む。特定の実施形態では、VHは、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2;及び(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、非フコシル化されている。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297でのフコースを欠いているIgG1またはIgG3抗体である。
【0111】
いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、配列番号5のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含むFGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに結合せずに、FGFR2-IIIbに選択的に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号5において、合計1から10のアミノ酸が、置換、挿入、及び/または欠失している。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVR外の(すなわち、FR内の)領域で生じる。必要に応じて、FGFR2-IIIb抗体は、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号4のVL配列を含む。特定の実施形態では、VLは、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される1つ、2つ、または3つのHVR配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、非フコシル化されている。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297でのフコースを欠いているIgG1またはIgG3抗体である。
【0112】
いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、配列番号4のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列、及び配列番号5のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含み、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含むFGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、そのようなFGFR2-IIIbは、FGFR2-IIIcに結合せずに、FGFR2-IIIbに選択的に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号4において、合計1から10のアミノ酸が、置換、挿入、及び/または欠失している。ある特定の実施形態では、配列番号5において、合計1から10のアミノ酸が、置換、挿入、及び/または欠失している。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVR外の(すなわち、FR内の)領域で生じる。必要に応じて、FGFR2-IIIb抗体は、一方または両方の配列の翻訳後修飾を含む、配列番号4のVH配列及び配列番号5のVL配列を含む。特定の実施形態では、VHは、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2;及び(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含み;ならびにVLは、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される1つ、2つ、または3つのHVR配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、非フコシル化されている。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297でのフコースを欠いているIgG1またはIgG3抗体である。
【0113】
いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、上記で提供された実施形態のいずれかにあるVH、及び上記で提供された実施形態のいずれかにあるVLを含む。一実施形態では、抗体は、それらの配列の翻訳後修飾を含む、それぞれ配列番号4及び配列番号5であるVH及びVLを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、非フコシル化されている。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297でのフコースを欠いているIgG1またはIgG3抗体である。
【0114】
いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、配列番号2のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖配列を含む。ある特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する重鎖配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含むFGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、そのようなFGFR2-IIIbは、FGFR2-IIIcに結合せずに、FGFR2-IIIbに選択的に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号2において、合計1から10のアミノ酸が、置換、挿入、及び/または欠失している。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVR外の(すなわち、FR内の)領域で生じる。必要に応じて、FGFR2-IIIb抗体重鎖は、その配列の翻訳後修飾を含む、配列番号2におけるVH配列を含む。特定の実施形態では、重鎖は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2;及び(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、非フコシル化されている。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297でのフコースを欠いているIgG1またはIgG3抗体である。
【0115】
いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、配列番号3のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖を含む。ある特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する軽鎖配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIb結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、そのようなFGFR2-IIIbは、FGFR2-IIIcに結合せずに、FGFR2-IIIbに選択的に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号3において、合計1から10のアミノ酸が、置換、挿入、及び/または欠失している。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVR外の(すなわち、FR内の)領域で生じる。必要に応じて、FGFR2-IIIb抗体軽鎖は、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号3のVL配列を含む。特定の実施形態では、軽鎖は、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される1つ、2つ、または3つのHVR配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、非フコシル化されている。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297でのフコースを欠いているIgG1またはIgG3抗体である。
【0116】
いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体は、配列番号2のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖配列、及び配列番号3のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖配列を含む。ある特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する重鎖配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、そのようなFGFR2-IIIbは、FGFR2-IIIcに結合せずに、FGFR2-IIIbに選択的に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する軽鎖配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、そのようなFGFR2-IIIbは、FGFR2-IIIcに結合せずに、FGFR2-IIIbに選択的に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、配列番号2において、合計1から10のアミノ酸が、置換、挿入、及び/または欠失している。ある特定の実施形態では、配列番号3において、合計1から10のアミノ酸が、置換、挿入、及び/または欠失している。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVR外の(すなわち、FR内の)領域で生じる。必要に応じて、FGFR2-IIIb抗体重鎖は、その配列の翻訳後修飾を含む、配列番号2におけるVH配列を含み、FGFR2-IIIb抗体軽鎖は、その配列の翻訳後修飾を含む、配列番号3におけるVL配列を含む。特定の実施形態では、重鎖は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2;及び(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含み;かつ軽鎖は、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される1つ、2つ、または3つのHVR配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、非フコシル化されている。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297でのフコースを欠いているIgG1またはIgG3抗体である。
【0117】
追加の例示的なFGFR2抗体は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,101,723B2号に記載されるGAL-FR22及びGAL-FR23抗体である。GAL-FR22の軽鎖及び重鎖可変領域は、例えば、特許第8,101,723B2号において配列番号7及び8として提供されるが、KabatCDR、ならびに軽鎖及び重鎖可変領域は、参照により本明細書に組み込まれる、その特許の図16にも提供される。GAL-FR21、GAL-FR22、及びGAL-FR23を産生しているハイブリドーマは、米国菌培養収集所、私書箱1549、マナッサ、VA、USA、20108に、それぞれ、ATCC番号9586(2008年11月6日)、ATCC番号9587(2008年11月6日)、及びATCC番号9408(2008年8月12日)として寄託している。従って、いくつかの実施形態では、FGFR2抗体は、これら3つのハイブリドーマ株の1つから得られた抗体のアミノ酸配列を含む抗体である。
【0118】
GAL-FR22の重鎖及び軽鎖可変領域は、配列番号39及び43としても本明細書に示されているが、KabatCDRは、配列番号40~42及び44~46として本明細書に示されている。従って、いくつかの実施形態では、FGFR2-IIIb抗体重鎖可変領域は、(i)配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR1;(ii)配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR2;及び(iii)配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR3を含み;軽鎖可変領域は、(iv)配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR1;(v)配列番号45のアミノ酸配列を含むCDR2;及び(vi)配列番号46のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、FGFR2抗体は、重鎖可変ドメインが、配列番号39のアミノ酸配列に少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である、または配列番号39のアミノ酸配列を含む、FGFR2-IIIb抗体を含む。いくつかの実施形態では、FGFR2抗体は、軽鎖可変ドメインが、配列番号43のアミノ酸配列に少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である、または配列番号43のアミノ酸配列を含む、FGFR2-IIIb抗体を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号39のアミノ酸配列に少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である、または配列番号39のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号43のアミノ酸配列に少なくとも95%、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である、または配列番号43のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297でのフコースを欠いているIgG1またはIgG3抗体である。
【0120】
非フコシル化FGFR2抗体
いくつかの実施形態では、FGFR2抗体、例えば、前述のようなFGFR2-IIIb抗体は、Fc領域に(直接または間接的に)結合したフコースを欠いた炭水化物構造を有する(すなわち、非フコシル化抗体)。すなわち、抗体は、非フコシル化されている。いくつかの実施形態では、非フコシル化抗体は、Asn297でのフコースを欠いているIgG1またはIgG3抗体である。
【0121】
本明細書で、抗体は、複数のそのような抗体が少なくとも95%の非フコシル化抗体を含む場合、非フコシル化されているとみなされる。フコースの量は、Asn297に結合する全糖構造体の総量に対するAsn297における糖鎖内のフコースの平均量(例えば、複合体、ハイブリッド及び高マンノース構造)を計算することにより決定されてもよい。抗体におけるフコースを検出する非限定的な例示的な方法としては、MALDI-TOF質量分析(例えば、WO2008/077546を参照されたい)、蛍光標識された遊離オリゴ糖のHPLC法(例えば、Schneider et al.,“N-Glycan analysis of monoclonal antibodies andotherglycoproteinsusing UHPLC with fluorescence detection,” Agilent Technologies,Inc.(2012);Lines,J.Pharm.Biomed.Analysis,14:601-608(1996);Takahasi,J.Chrom.,720:217-225(1996)を参照されたい)、蛍光標識された遊離オリゴ糖のキャピラリー電気泳動法(例えば、Ma et al.,Anal.Chem.,71:5185-5192(1999)を参照されたい)、及び単糖組成物測定のための、パルスドアンペロメトリ検出を伴うHPLC(例えば、Hardy,et al.,AnalyticalBiochem.,170:54-62(1988)を参照されたい)が挙げられる。
【0122】
Asn297は、Fc領域(Fc領域残基のEU番号付け)で約297位に位置するアスパラギン残基を指すが;しかしながら、所与の抗体配列では、Asn297は、297位の±3残基上流または下流のアミノ酸に位置してもよく、すなわち、抗体の軽微な配列変異に起因して、294位と300位の間に位置してもよい。本明細書に記載のFGFR2-IIIb抗体において、Asn297は、次の配列、
に見出され、かつ、下記配列の表で、配列番号2に太字及び下線で示される。
【0123】
フコシル化変異体は、ADCC機能を改善させてもよい。例えば、米国特許公開第2003/0157108号(Presta,L.);US2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。「非フコシル化」または「フコース欠損」抗体に関連する出版物の例としては、US2003/0157108;WO2000/61739;WO2001/29246;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;WO2003/085119;WO2003/084570;WO2005/035586;WO2005/035778;WO2005/053742;WO2002/031140;Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004);Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。非フコシル化抗体を産生する能力を有する細胞株の例としては、タンパク質フコシル化を欠損しているLec13CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);米国特許公開第US2003/0157108 A1号、Presta,L;及びWO2004/056312 A1、Adams et al.,特に実施例11)、及び機能的アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8を欠く細胞株などのノックアウト細胞株、例えば、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004);Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006);及びWO2003/085107号を参照されたい)が挙げられる。
【0124】
本明細書のFGFR2抗体はまた、例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分された、二分岐オリゴ糖を有してもよい。このような抗体は、フコシル化を減少させ、及び/またはADCC機能を改善していてもよい。そのような抗体の例は、例えば、WO2003/011878(Jean-Mairet et al.);米国特許第6,602,684号(Umana et al.);及びUS2005/0123546(Umana et al.)に記載されている。いくつかの実施形態では、FGFR2抗体は、Fc領域に結合したオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を有する。このような抗体は、CDC機能が改善されていてもよい。このような抗体は、例えば、WO1997/30087(Patel et al.);WO1998/58964(Raju,S.);及びWO1999/22764(Raju,S.)に記載されている。
【0125】
本発明のいくつかの実施形態では、非フコシル化FGFR2抗体は、フコースを含む同じアミノ酸配列を有する抗体より効果的に、ヒトエフェクター細胞の存在下でADCCを媒介する。一般的に、ADCC活性は、米国特許公開第2015-0050273A1号に開示されるインビトロADCCアッセイを用いて決定されてもよいが、例えば、動物モデルなどにおけるADCC活性を決定するための他のアッセイまたは方法も考えられる。
【0126】
いくつかの実施形態では、FGFR2抗体は、配列番号2及び3の重鎖及び軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、配列番号2及び3の重鎖及び軽鎖配列を含む抗体は、非フコシル化されている。
【0127】
FGFR2 ECD及びFGFR2 ECD融合分子
いくつかの実施形態では、FGFR2阻害剤は、FGFR2 ECD融合分子などのFGFR2 ECDである。FGFR2 ECD融合分子は、ポリマー、ポリペプチド、親油性部分、及びスクシニル基などの融合パートナーを含んでもよい。例示的なポリペプチド融合パートナーとしては、血清アルブミン及び抗体Fcドメインが挙げられる。さらなる例示的なポリマー融合パートナーとしては、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール、例えば、分枝鎖及び/または直鎖を有するポリエチレングリコールが挙げられる。ある特定の例示的な融合パートナーとしては、限定されるものではないが、免疫グロブリンFcドメイン、アルブミン、及びポリエチレングリコールが挙げられる。ある特定の例示的なFcドメインのアミノ酸配列を配列番号24~26に示す。
【0128】
例示的なFGFR2 ECD及びFGFR2 ECD融合分子としては、PCT公開第WO2007/014123号に記載されるものが挙げられる。FGFR2 ECD及びFGFR2 ECD融合分子は、FGFR2-IIIbまたはFGFR2-IIIc BCDのものを含む、天然のECDアミノ酸配列を含んでもよい。あるいは、FGFR2 ECD及びFGFR2 ECD融合分子は、C末端から数えて1つ以上及び最大22個のアミノ酸残基がC末端欠失しているFGFR2 ECDを含んでもよく、FGFR2 ECDは、そのFGFリガンド結合活性のうちの少なくとも1つを保持している。いくつかの実施形態では、FGFR2 ECDは、C末端で最大22個のアミノ酸が欠失している。いくつかの実施形態では、欠失は、天然の完全長FGFR2-IIIbのアミノ酸残基357で、または天然の完全長FGFR2-IIIcのアミノ酸残基359で、バリン残基まで拡張していないかまたはバリン残基を含まない。
【0129】
例えば、いくつかの実施形態では、FGFR2 ECDまたはFGFR2 ECD融合分子は、配列番号14のアミノ酸配列を含むが、アミノ酸残基が、アミノ末端及び/またはカルボキシ末端から欠失しており、得られた分子は、FGF2に結合することができる。いくつかの実施形態では、FGFR2 ECDまたはFGFR2 ECD融合分子は、配列番号14のアミノ酸配列に対応するが、最後の3つのカルボキシ末端アミノ酸残基であるYLEが欠失している配列番号15のアミノ酸配列を含む。そのような変異体のさらなる例としては、天然のFGFR2-IIIbまたはFGFR2-IIIc配列と比較して、C末端の4個のアミノ酸残基を欠失させたもの(配列番号16)、C末端の5個のアミノ酸残基を欠失させたもの(配列番号17)、C末端の8個のアミノ酸残基を欠失させたもの(配列番号18)、C末端の9個のアミノ酸残基を欠失させたもの(配列番号19)、C末端の10個のアミノ酸残基を欠失させたもの(配列番号20)、C末端の14個のアミノ酸残基を欠失させたもの(配列番号21)、C末端の15個のアミノ酸残基を欠失させたもの(配列番号22)、C末端の16個のアミノ酸残基を欠失させたもの(配列番号23)、C末端の17個のアミノ酸残基を欠失させたもの(配列番号24)が挙げられる。上記のFGFR2 ECD断片のいずれかは、FGFR2 ECD融合分子を形成するために、上述の融合パートナーのいずれかと結合していてもよい。
【0130】
ある特定の実施形態では、FGFR2 ECD配列内の少なくとも1つのアミノ酸は、ポリペプチド中のその部位におけるグリコシル化を防止するように突然変異している。グリコシル化され得る非限定的な例示的なFGFR2 ECDアミノ酸は、配列番号28のN62、N102、N207、N220、N244、N276、N297、及びN310を含む。
【0131】
追加の例示的なFGFR2 ECD及びFGFR2 ECD融合分子としては、PCT公開番号WO2010/017198に記載されるものが挙げられる。本明細書で挙げられるのは、FGFR2 ECDの「酸ボックス」領域において突然変異があるFGFR2 ECD及びFGFR2 ECD融合分子である。そのようなFGFR2 ECD酸性領域ムテインは、FGFR2 ECDまたはFGFR2 ECD融合分子のいずれかとして使用してもよい。ある特定の実施形態では、FGFR2 ECDまたはFGFR2 ECD融合分子は、FGFR2ショート酸ボックスの代わりにFGFR1ショート酸ボックスを含む。例えば、FGFR2 ECD残基111~118(配列番号28)は、FGFR1 ECD残基105~112(配列番号29)と置き換えられてもよい。いくつかの実施形態では、FGFR2 ECDまたはFGFR2 ECD融合分子は、配列番号30のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、FGFR2 ECDまたはFGFR2 ECD融合分子は、配列番号31~34のいずれかのアミノ酸配列を含む。また、配列番号30などの「酸ボックス」突然変異体FGFR2 ECD配列のいずれかは、上述のC末端欠失FGFR2 ECD配列(配列番号15~24)のいずれかと組み合わせてもよく、1つ以上の融合分子(例えば、配列番号32~34)に任意に結合してもよい。
【0132】
ある特定の実施形態では、FGFR2 ECDまたはFGFR2 ECD融合分子は、シグナルペプチドを欠いている。ある特定の実施形態では、FGFR2 ECDは、天然のFGFR2シグナルペプチド及び/または異種シグナルペプチド、例えば、FGFR1、FGFR3、またはFGFR4由来のものから選択され得る、少なくとも1つのシグナルペプチドを含む。
【0133】
FGFR2 ECD融合分子の場合、融合パートナーは、ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかに結合させることができる。ある特定の実施形態では、ポリペプチド及び融合パートナーは、共有結合している。融合パートナーもポリペプチド(「融合パートナーポリペプチド」)である場合、ポリペプチド及び融合パートナーポリペプチドは、連続するアミノ酸配列の一部であり得る。そのような場合、ポリペプチド及び融合パートナーポリペプチドは、ポリペプチドと融合パートナーポリペプチドの両方をコードするコード配列から単一のポリペプチドとして翻訳させてもよい。ある特定の実施形態では、FGFR2 ECD融合分子は、FGFR2 ECDまたはFGFR2 ECD酸性領域ムテインと融合パートナーの間に「GS」リンカーを含有する。ある特定の実施形態では、ポリペプチド及び融合パートナーは、他の手段を介して、例えば、ペプチド結合以外の化学結合などを介して共有結合している。ある特定の実施形態では、ポリペプチド及び融合パートナーは、非共有結合している。ある特定のそのような実施形態では、それらは、例えば、結合対を使用して結合させてもよい。例示的な結合対としては、限定されるものではないが、ビオチン及びアビジンまたはストレプトアビジン、抗体及びその抗原などが挙げられる。
【0134】
例示的なPD-1/PD-L1阻害剤
例示的なPD-1/PD-L1阻害剤としては、抗PD-1抗体及び抗PD-L1抗体などのPD-1を阻害する抗体が挙げられる。そのような抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体、マウス抗体、ヒト抗体、ならびに本明細書で考察される重鎖及び/または軽鎖CDRを含む抗体であってもよい。PD-1/PD-L1阻害剤としては、AMP-224などの、PD-1のPD-L1への結合を遮断する融合分子、及びPD-L1に結合するためにPD-1と競合し得るAUR-012などの阻害PD-1ポリペプチドも挙げられる。
【0135】
例示的なPD-1/PD-L1抗体
PD-1は、活性化されたT及びB細胞によって発現される重要な免疫チェックポイント受容体であり、免疫抑制を媒介する。PD-1は、CD28、CTLA-4、ICOS、PD-1、及びBTLAを含む、CD28ファミリーの受容体のメンバーである。PD-1のための2つの細胞表面糖タンパク質リガンド、プログラム死リガンド-1(PD-L1)、及びプログラム死リガンド-2(PD-L2)が同定されている。これらのリガンドは、抗原提示細胞ならびに多くのヒト癌上で発現され、PD-1への結合の際にT細胞活性化及びサイトカイン分泌を下方調節することが示されている。PD-1/PD-L1相互作用の阻害は、前臨床モデルにおいて強力な抗腫瘍活性を媒介する。
【0136】
高い親和性でPD-1に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体(HuMAb)が、米国特許第8,008,449号に開示されている。他の抗PD-1 mAbは、例えば、米国特許第6,808,710号、同第7,488,802号、同第8,168,757号、及び同第8,354,509号、ならびにPCT公開番号WO2012/145493に記載されている。米国特許第8,008,449号に開示された抗PD-1 HuMAbの各々は、(a)Biacoreバイオセンサーシステムを使用する表面プラズモン共鳴により決定された場合、1×10-7M以下のKでヒトPD-1に結合する;(b)ヒトCD28、CTLA-4、またはICOSに実質的に結合しない;(c)混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてT細胞増殖を増加させる;(d)MLRアッセイにおいてインターフェロン-γ産生を増加させる;(e)MLRアッセイにおいてIL-2分泌を増加させる;(f)ヒトPD-1及びカニクイザルPD-1に結合する;(g)PD-L1及び/またはPD-L2の、PD-1への結合を阻害する;(h)抗原特異的記憶応答を刺激する;(i)抗体応答を刺激する;及び/または(j)インビボで腫瘍細胞増殖を阻害する。本発明で使用可能な抗PD-1抗体は、ヒトPD-1に特異的に結合する抗体を含み、前記特徴(a)~(j)の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つを示す。
【0137】
一実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブである。ニボルマブ(「オプジーボ(登録商標)」としても知られ、以前は5C4、BMS-936558、MDX-1106またはONO-4538と指称された)は、PD-1リガンド(PD-L1及びPD-L2)との相互作用を選択的に阻止することで、抗腫瘍T細胞機能の下方制御を遮断する完全ヒトIgG4(S228P)PD-1免疫チェックポイント阻害剤抗体である(米国特許第8,008,449号;Wang et al.,2014 Cancer Immunol Res.2(9):846-56)。
【0138】
別の実施形態では、抗PD-1抗体は、ペンブロリズマブである。ペンブロリズマブ(「KEYTRUDA(登録商標)」、ランブロリズマブ及びMK-3475としても知られる)は、ヒト細胞表面受容体PD-1(プログラム死-1またはプログラム細胞死-1)に対するヒト化モノクローナルIgG4抗体である。ペンブロリズマブは、例えば、米国特許第8,900,587号に記載され、アドレス:http://www.cancer.gov/drugdictionary?cdrid=695789によるサイトもまた参照されたい(最終アクセス:2014年12月14日)。ペンブロリズマブは、再発性または難治性黒色腫の治療のために、FDAにより承認されている。
【0139】
他の実施形態では、抗PD-1抗体は、MEDI0608(以前はAMP-514)であり、これは、PD-1受容体に対するモノクローナル抗体である。MEDI0608は、例えば、米国特許第8,609,089B2号またはインターネットサイト:http://www.cancer.gov/drugdictionary?cdrid=756047に記載されている(最終アクセス2014年12月14日)。
【0140】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ピディリズマブ(CT-011)であり、これは、ヒト化モノクローナル抗体である。ピディリズマブは、米国特許第8,686,119B2号またはWO2013/014668A1号に記載されている。
【0141】
本開示の方法において使用し得る抗PD-1抗体はまた、ヒトPD-1に特異的に結合し、ヒトPD-1への結合についてニボルマブと交差競合する、単離された抗体を含む(例えば、米国特許第8,008,449号;WO2013/173223号を参照されたい)。抗原への結合について抗体が交差競合する能力は、これらの抗体が抗原の同じエピトープ領域に結合し、他の交差競合抗体が当該特定エピトープ領域に結合するのを立体的に妨げることを示す。これらの交差競合抗体は、PD-1の同じエピトープ領域へ結合する事実により、ニボルマブに極めて類似する機能的特性を有すると予測される。交差競合抗体は、Biacore分析、ELISAアッセイ、またはフローサイトメトリーのような標準的PD-1結合アッセイにおいてニボルマブに対して交差競合する能力に基づき、容易に同定できる(例えば、WO2013/173223号を参照されたい)。
【0142】
ある特定の実施形態では、ニボルマブとヒトPD-1の結合について交差競合する、またはヒトPD-1のニボルマブと同じエピトープ領域に結合する抗体は、モノクローナル抗体である。ヒト対象への投与のために、これらの交差競合抗体は、キメラ抗体であってもよく、またはヒト化もしくはヒト抗体であってもよい。
【0143】
本発明の方法で使用し得る抗PD-1抗体は、上記抗体の抗原結合部分も含む。例としては、(i)V、V、C及びCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結した2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;(iii)V及びCH1ドメインからなるFd断片;及び(iv)抗体の単一アームのV及びVドメインからなるFv断片が挙げられる。
【0144】
PD-1/PD-L1阻害剤である非限定的な例示的な融合分子は、AMP-224(Amplimmune、GlaxoSmithKline)である。PD-1/PD-L1阻害剤である非限定的な例示的なポリペプチドは、AUR-012である。
【0145】
例示的な抗体定常領域
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のFGFR2または抗PD-1もしくは抗PD-L1抗体は、1つ以上のヒト定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト重鎖定常領域は、IgA、IgG、及びIgDから選択されるアイソタイプのものである。いくつかの実施形態では、ヒト軽鎖定常領域は、κ及びλから選択されるアイソタイプのものである。
【0146】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ヒトIgG定常領域を含む。いくつかの実施形態では、エフェクター機能が望ましい場合、ヒトIgG1重鎖定常領域またはヒトIgG3重鎖定常領域を含む抗体が選択される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ヒトIgG1定常領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ヒトIgG1定常領域を含み、N297は、フコシル化されていない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ヒトIgG1定常領域及びヒトκ軽鎖を含む。
【0147】
明示的に述べられない限りまたは当業者に公知でない限り、本明細書及び請求項を通じて、免疫グロブリン重鎖における残基のナンバリングは、本明細書に参照として明示的に引用される、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)におけるEUインデックスのものである。「KabatにおけるEUインデックス」は、ヒトIgGl EU抗体の残基ナンバリングを指す。
【0148】
ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、野生型IgGまたは野生型抗体のFc領域と比較して、少なくとも1つのアミノ酸置換を有する変異体Fc領域を含む。ある特定の実施形態では、変異体Fc領域は、野生型抗体のFc領域において2つ以上のアミノ酸置換を有する。ある特定の実施形態では、変異体Fc領域は、野生型抗体のFc領域において3つ以上のアミノ酸置換を有する。ある特定の実施形態では、変異体Fc領域は、本明細書に記載の少なくとも1つ、2つ、または3つ以上のFc領域アミノ酸置換を有する。ある特定の実施形態では、本明細書の変異体Fc領域は、天然配列Fc領域及び/または親抗体のFc領域と少なくとも約80%の相同性を有するであろう。ある特定の実施形態では、本明細書の変異体Fc領域は、天然配列Fc領域及び/または親抗体のFc領域と少なくとも約90%の相同性を有するであろう。ある特定の実施形態では、本明細書の変異体Fc領域は、天然配列Fc領域及び/または親抗体のFc領域と少なくとも約95%の相同性を有するであろう。
【0149】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少するように改変される。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作成または削除されるようにアミノ酸配列を変えることによって簡便に達成することができる。
【0150】
抗体がFc領域を含む場合には、それに結合する炭水化物を変えることができる。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN-結合により一般的に結合した分岐鎖、二分岐オリゴ糖を含んでいる。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えば、二分岐オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合した、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、シアル酸、ならびにフコースを含み得る。いくつかの実施形態では、本発明の抗体におけるオリゴ糖の修飾は、ある特定の改善された特性を有する抗体を作成するために行われ得る。
【0151】
抗体はまた、アミノ末端リーダー伸長を有し得る。例えば、アミノ末端リーダー配列の1つ以上のアミノ酸残基は、抗体の任意の1つ以上の重鎖または軽鎖のアミノ末端に存在する。例示的なアミノ末端リーダー伸長は、抗体の一方または両方の軽鎖に存在する、3つのアミノ酸残基、VHSを含むまたはからなる。
【0152】
ヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドのインビボまたは血清半減期は、例えば、変異体Fc領域を有するポリペプチドが投与されるトランスジェニックマウス、ヒト、または非ヒト霊長類において評価することができる。例えば、Petkova et al.International Immunology 18(12):1759-1769(2006)も参照されたい。
【0153】
例示的なキメラ抗体
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるFGFR2または抗PD-1もしくは抗PD-L1抗体は、キメラ抗体である。ある特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.,(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類由来の可変領域)及びヒト定常領域を含む。さらなる例では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のものから変更された「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
【0154】
非限定的な例示的なキメラ抗体としては、本明細書に記載の重鎖HVR1、HVR2、及びHVR3、及び/または軽鎖HVR1、HVR2、及びHVR3配列を含むFGFR2またはPD-1/PD-L1のいずれかに対するキメラ抗体を含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のキメラ抗体は、1つ以上のヒト定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト重鎖定常領域は、IgA、IgG、及びIgDから選択されるアイソタイプのものである。いくつかの実施形態では、ヒト軽鎖定常領域は、κ及びλから選択されるアイソタイプのものであるである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のキメラ抗体は、ヒトIgG定常領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のキメラ抗体は、ヒトIgG4重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のキメラ抗体は、ヒトIgG4定常領域及びヒトκ軽鎖を含む。
【0156】
上述のように、エフェクター機能が望ましいかどうかは、抗体を対象とした特定の治療方法に依存し得る。従って、いくつかの実施形態では、エフェクター機能が望ましい場合、ヒトIgG1重鎖定常領域またはヒトIgG3重鎖定常領域を含むキメラ抗体が選択される。いくつかの実施形態では、エフェクター機能が望ましくない場合、ヒトIgG4またはIgG2重鎖定常領域を含むキメラ抗体が選択される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のキメラ抗体は、ヒトIgG1定常領域を含み、N297は、フコシル化されていない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のキメラ抗体は、ヒトIgG1定常領域及びヒトκ軽鎖を含む。
【0157】
例示的なヒト化抗体
いくつかの実施形態では、FGFR2またはPD-1/PD-L1に結合するヒト化抗体が使用される。ヒト化抗体は、治療用抗体に対する免疫応答をもたらし、かつ治療の効果を低下させることができる、非ヒト抗体に対するヒト免疫応答(例えば、ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答)を、低下させまたは除去するので、ヒト化抗体は、治療用分子として有効である。
【0158】
ある特定の実施形態では、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、ヒトに対する免疫原性を低下させるために、親の非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持したまま、ヒト化される。一般的に、ヒト化抗体は、HVRまたはCDR(またはその一部)が非ヒト抗体に由来し、かつ、FR(またはその一部)がヒト抗体配列に由来する、1つ以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体はまた、任意で、ヒト定常領域の少なくとも一部をも含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性または親和性を回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)から対応する残基に置換されている。
【0159】
ヒト化抗体、及びヒト化抗体を作製する方法は、例えば、Almagro and Fransson,(2008)Front.Biosci.13:1619-1633に概説され、例えば、Riechmann et al.,(1988)Nature 332:323-329;Queen et al.,(1989)Proc.Natl Acad.Sci.USA 86:10029-10033;米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号;Kashmiri et al.,(2005)Methods36:25-34(SDR(a-CDR)グラフティングを記載);Padlan,(1991)Mol.Immunol.28:489-498(「表面再構成」を記載);Dall’Acqua et al.,(2005)Methods 36:43-60(「FRシャフリング」を記載);ならびにOsbourn et al.,(2005)Methods 36:61-68及びKlimka et al.,(2000)Br.J.Cancer,83:252-260(FRシャフリングに対する「ガイデッド・セレクション(guided selection)」アプローチを記載)にさらに記載されている。
【0160】
ヒト化に使用されてもよいヒトフレームワーク領域は、「ベストフィット」法(例えば、Sims et al.(1993)J.Immunol.151:2296を参照されたい)を使用して選択されるフレームワーク領域;軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285;及びPresta et al.(1993)J.Immunol.,151:2623を参照されたい);ヒト成熟(体細胞突然変異した)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,(2008)Front.Biosci.13:1619-1633を参照されたい);及びFRライブラリーのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,(1997)J.Biol.Chem.272:10678-10684及びRosok et al.,(1996)J.Biol.Chem.271:22611-22618を参照されたい)を含むが、これらに限定されない。
【0161】
いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、1つ以上のヒト定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト重鎖定常領域は、IgA、IgG、及びIgDから選択されるアイソタイプのものである。いくつかの実施形態では、ヒト軽鎖定常領域は、κ及びλから選択されるアイソタイプのものである。
【0162】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヒト化抗体は、ヒトIgG定常領域を含む。いくつかの実施形態では、エフェクター機能が望ましい場合、抗体は、ヒトIgG1重鎖定常領域またはヒトIgG3重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヒト化抗体は、ヒトIgG1定常領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヒト化抗体は、ヒトIgG1定常領域を含み、N297は、フコシル化されていない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヒト化抗体は、ヒトIgG1定常領域及びヒトκ軽鎖を含む。
【0163】
ヒト抗体
ヒトFGFR2またはPD-1/PD-L1抗体は、任意の適切な方法によって作製することができる。非限定的な例示的な方法としては、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むトランスジェニックマウスでヒト抗体を作製することが挙げられる。例えば、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551-55(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255-8(1993);Lonberg et al.,Nature 368:856-9(1994);ならびに米国特許第5,545,807号;同第6,713,610号;同第6,673,986号;同第6,162,963号;同第5,545,807号;同第6,300,129号;同第6,255,458号;同第5,877,397号;同第5,874,299号;及び同第5,545,806号を参照されたい。
【0164】
非限定的な例示的な方法としては、ファージディスプレイライブラリーを使用してヒト抗体を作製することも挙げられる。例えば、Hoogenboom et al.,J.Mol.Biol.227:381-8(1992);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-97(1991);及びPCT公開番号WO99/10494を参照されたい。
【0165】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体は、1つ以上のヒト定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト重鎖定常領域は、IgA、IgG、及びIgDから選択されるアイソタイプのものである。いくつかの実施形態では、ヒト軽鎖定常領域は、κ及びλから選択されるアイソタイプのものであるである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヒト抗体は、ヒトIgG定常領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヒト抗体は、ヒトIgG4重鎖定常領域を含む。いくつかのそのような実施形態では、本明細書に記載のヒト抗体は、ヒトIgG4定常領域におけるS241P突然変異を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヒト抗体は、ヒトIgG4定常領域及びヒトκ軽鎖を含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、エフェクター機能が望ましい場合、ヒトIgG1重鎖定常領域またはヒトIgG3重鎖定常領域を含むヒト抗体が選択される。いくつかの実施形態では、エフェクター機能が望ましくない場合、ヒトIgG4またはIgG2重鎖定常領域を含むヒト抗体が選択される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヒト化抗体は、ヒトIgG1定常領域を含み、N297は、フコシル化されていない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヒト化抗体は、ヒトIgG1定常領域及びヒトκ軽鎖を含む。
【0167】
例示的な抗体コンジュゲート
いくつかの実施形態では、FGFR2またはPD-1/PD-L1抗体は、標識及び/または細胞傷害性剤にコンジュゲートされる。本明細書で使用する場合、標識は、抗体の検出を促進する、及び/または抗体が結合する分子の検出を促進する部分である。非限定的な例示的な標識としては、限定されるものではないが、放射性同位体、蛍光基、酵素基、化学蛍光基、ビオチン、エピトープタグ、金属結合性タグなどが挙げられる。当業者は、意図される用途に応じて適切な標識を選択することができる。
【0168】
本明細書で使用する場合、細胞傷害性剤は、1つ以上の細胞の増殖能を低減させる部分である。細胞が増殖しにくくなると、例えば、細胞がアポトーシスを受けるか、そうでなければ死滅する、細胞が細胞周期を進行できない、及び/または分裂しない、細胞が分化するなどの理由で、細胞は増殖能を低減させる。非限定的な例示的な細胞傷害性剤としては、限定されるものではないが、放射性同位体、毒素、及び化学療法剤が挙げられる。当業者は、意図される用途に応じて適切な細胞傷害性を選択することができる。
【0169】
いくつかの実施形態では、標識及び/または細胞傷害性剤は、インビトロで化学的方法を用いて抗体にコンジュゲートされる。コンジュゲーションの非限定的な例示的な化学的方法は、当該技術分野で公知であり、例えば、Thermo Scientific Life Science Research Produces(以前はPierce;Rockford、IL)、Prozyme(Hayward、CA)、SACRI Antibody Services(Calgary、Canada)、AbD Serotec(Raleigh、Nc)などから市販されているサービス、方法、及び/または試薬が挙げられる。いくつかの実施形態では、標識及び/または細胞傷害性剤がポリペプチドである場合、標識及び/または細胞傷害性剤は、少なくとも1つの抗体鎖を有する同じ発現ベクターから発現され、抗体鎖に融合された標識及び/または細胞傷害剤を含むポリペプチドを産生することができる。当業者であれば、意図される用途に応じて標識及び/または細胞傷害性剤を抗体にコンジュゲートさせるための適切な方法を選択することができる。
【0170】
抗体をコードする核酸分子
抗体の1つ以上の鎖をコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子が提供される。いくつかの実施形態では、核酸分子は、抗体の重鎖または軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチド及び軽鎖をコードするポリヌクレオチドの両方を含む。いくつかの実施形態では、第1の核酸分子は、重鎖をコードする第1のポリヌクレオチドを含み、第2の核酸分子は、軽鎖をコードする第2のポリヌクレオチドを含む。
【0171】
いくつかのそのような実施形態では、重鎖及び軽鎖は、2つの別個のポリペプチドとして、1つの核酸分子または2つの別個の核酸分子から発現される。いくつかの実施形態では、例えば、抗体がscFvである場合、単一のポリヌクレオチドは、一緒に連結された重鎖及び軽鎖の両方を含む単一のポリペプチドをコードする。
【0172】
いくつかの実施形態では、抗体の重鎖または軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、翻訳された場合、重鎖または軽鎖のN末端に位置するリーダー配列をコードするヌクレオチド配列を含む。上で議論されるように、リーダー配列は、天然の重鎖もしくは軽鎖リーダー配列であってもよく、または別の異種リーダー配列であってもよい。
【0173】
核酸分子は、当該技術分野で慣用の組み換えDNA技術を用いて構築することができる。いくつかの実施形態では、核酸分子は、選択された宿主細胞における発現に適した発現ベクターである。
【0174】
抗体の発現及び産生
ベクター
抗体重鎖及び/または軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。抗体重鎖及び/または軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含むベクターもまた提供される。このようなベクターとしては、限定されるものではないが、DNAベクター、ファージベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、ベクターは、重鎖をコードする第1のポリヌクレオチド配列及び軽鎖をコードする第2のポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、重鎖及び軽鎖は、2つの別個のポリペプチドとしてベクターから発現される。いくつかの実施形態では、重鎖及び軽鎖は、例えば、抗体がscFvである場合、単一のポリペプチドの一部として発現される。
【0175】
いくつかの実施形態では、第1のベクターは、重鎖をコードする第1のポリヌクレオチドを含み、第2のベクターは、軽鎖をコードする第2のポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、第1のベクター及び第2のベクターは、同様の量(同様のモル量または類似の質量の量など)で宿主細胞にトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、第1のベクターと第2のベクターが5:1~1:5の間のモル比または質量比で、宿主細胞にトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、重鎖をコードするベクター及び軽鎖をコードするベクターについて1:1と1:5の間の質量比が使用される。いくつかの実施形態では、重鎖をコードするベクター及び軽鎖をコードするベクターについて1:2の質量比が使用される。
【0176】
いくつかの実施形態では、CHOもしくはCHO由来の細胞、またはNSO細胞におけるポリペプチドの発現に最適化されたベクターが選択される。例示的なそのようなベクターは、例えば、Running Deer et al.,Biotechnol.Prog.20:880-889(2004)に記載される。
【0177】
いくつかの実施形態では、ヒトを含む動物における抗体重鎖及び/または抗体軽鎖のインビボ発現のためにベクターが選択される。いくつかのそのような実施形態では、ポリペプチドの発現は、組織特異的様式で機能するプロモーターの制御下にある。例えば、肝臓特異的プロモーターは、例えば、PCT公開番号WO2006/076288に記載されている。
【0178】
宿主細胞
様々な実施形態では、抗体重鎖及び/または軽鎖は、原核細胞、例えば、細菌細胞において;または真核細胞において、例えば(酵母のような)真菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞などにおいて発現され得る。そのような発現は、例えば、当該技術分野で公知の手順に従って実施され得る。ポリペプチドを発現するために使用され得る例示的な真核細胞としては、限定されるものではないが、COS細胞(COS7細胞を含む);293細胞(293-6E細胞を含む);CHO細胞(CHO-S及びDG44細胞を含む);PER.C6(登録商標)細胞(Crucell);及びNSO細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗体重鎖及び/または軽鎖は、酵母において発現され得る。例えば、米国公開番号US2006/0270045(A1)を参照されたい。いくつかの実施形態では、特定の真核宿主細胞は、抗体重鎖及び/または軽鎖に対する所望の翻訳後修飾を行う能力に基づいて選択される。例えば、いくつかの実施形態では、CHO細胞は、293細胞で産生された同じポリペプチドよりも高いレベルのシアル化を有するポリペプチドを産生する。
【0179】
1つ以上の核酸の所望の宿主細胞への導入は、限定されるものではないが、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染などを含む任意の方法によって達成することができる。非限定的な例示的な方法は、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,3rd ed.Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)に記載されている。核酸は、任意の適切な方法に従って、所望の宿主細胞において一過性にまたは安定的にトランスフェクトされ得る。
【0180】
いくつかの実施形態では、任意の適切な方法に従って、ポリペプチドをコードする1つ以上の核酸分子で遺伝子操作またはトランスフェクトされた動物において、1つ以上のポリペプチドをインビボで産生させることができる。
【0181】
抗体の精製
抗体は、任意の適切な方法によって精製することができる。そのような方法としては、限定されるものではないが、親和性マトリックスまたは疎水性相互作用クロマトグラフィーの使用が挙げられる。適切な親和性リガンドには、抗体定常領域に結合する抗原及びリガンドが含まれる。例えば、定常領域に結合し、抗体を精製するために、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、または抗体アフィニティーカラムを使用することができる。疎水性相互作用クロマトグラフィー、例えば、ブチルまたはフェニルカラムも、いくつかのポリペプチドを精製するのに適している。ポリペプチドを精製する多くの方法が、当該技術分野で公知である。
【0182】
抗体の無細胞産生
いくつかの実施形態では、抗体は無細胞系で産生される。非限定的な例示的な無細胞系は、例えば、Sitaraman et al.,Methods Mol.Biol.498:229-44(2009);Spirin,Trends Biotechnol.22:538-45(2004);Endo et al.,Biotechnol.Adv.21:695-713(2003)に記載される。
【0183】
治療的組成物及び方法
癌の治療方法
いくつかの実施形態では、有効量の本明細書に記載のFGFR2阻害剤を投与することを含む、癌を治療するための方法が提供される。いくつかのそのような実施形態は、FGFR2阻害剤を投与することを含み、阻害剤が増強されたADCC活性を有するFGFR2抗体である、癌対象の腫瘍組織中のPD-L1陽性細胞、NK細胞、CD3+T細胞、CD4+T細胞、及びCD8+T細胞の1つ以上の数を増加させる方法を含む。いくつかのそのような実施形態では、免疫刺激剤は、FGFR2抗体と一緒に投与されない。
【0184】
いくつかの他の実施形態では、有効量のFGFR2阻害剤及び有効量の少なくとも1つの免疫刺激剤を投与することを含む、癌を治療する方法を提供する。例示的な実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤は、PD-1/PD-L1阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、FGFR2阻害剤及び少なくとも1つの免疫刺激剤、例えば、PD-1/PD-L1阻害剤は同時に投与される。いくつかの実施形態では、FGFR2阻害剤及び少なくとも1つの免疫刺激剤、例えば、PD-1/PD-L1阻害剤は、順次投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3用量、少なくとも5用量、または少なくとも10用量のFGFR2阻害剤を、少なくとも1つの免疫刺激剤、例えば、PD-1/PD-L1阻害剤の投与前に投与する。いくつかの実施形態では、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3用量、少なくとも5用量、または少なくとも10用量の少なくとも1つの免疫刺激剤、例えば、PD-1/PD-L1阻害剤をFGFR2阻害剤の投与前に投与する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤、例えば、PD-1/PD-L1阻害剤の最終投与を、FGFR2阻害剤の初回投与の少なくとも1、2、3、5、もしくは10日、または1、2、3、5、12、または24週間前に投与する。いくつかの他の実施形態では、FGFR2阻害剤の最終投与を、少なくとも1つの免疫刺激剤、例えば、PD-1/PD-L1阻害剤の初回投与の少なくとも1、2、3、5、もしくは10日、または1、2、3、5、12、または24週間前に投与する。いくつかの実施形態では、対象は、PD-1/PD-L1阻害剤療法を受けたかまたは受けており、FGFR2阻害剤は、治療レジメンに加えられる。
【0185】
いくつかの実施形態では、癌は、胃癌、乳癌、扁平上皮癌、小細胞肺癌、下垂体癌、食道癌(胃食道接合部腺癌を含む)、星状細胞腫、軟部組織肉腫、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化管癌、膵癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、腎細胞癌、肝癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝臓癌、脳癌、子宮内膜癌、精巣癌、胆管癌、胆嚢癌、胃癌、黒色腫、及び種々の種類の頭頸部癌から選択される。いくつかの実施形態では、肺癌は、非小細胞肺癌または肺扁平上皮癌腫である。いくつかの実施形態では、白血病は、急性骨髄性白血病または慢性リンパ性白血病である。いくつかの実施形態では、乳癌は、浸潤性乳癌である。いくつかの実施形態では、卵巣癌は、卵巣漿液性嚢胞腺癌である。いくつかの実施形態では、腎臓癌は、腎臓腎淡明細胞癌である。いくつかの実施形態では、大腸癌は、結腸腺癌である。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、膀胱尿路上皮癌腫である。いくつかの実施形態では、癌は、膀胱癌、子宮頸癌(例えば、扁平上皮細胞子宮頸癌)、頭頸部扁平上皮癌腫、直腸腺癌、非小細胞肺癌、子宮内膜癌、前立腺腺癌、大腸癌、卵巣癌(例えば、漿液性上皮性卵巣癌)、及び黒色腫から選択される。いくつかの実施形態では、癌は、胃癌(胃食道癌を含む)または膀胱癌(例えば、移行上皮癌、尿路上皮癌としても知られる)である。
【0186】
いくつかの実施形態では、癌は、FGFR2遺伝子増幅を含むが、いくつかの実施形態では、癌は、FGFR2増幅を含まない。いくつかの実施形態では、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)を使用して、例えば、FGFR2遺伝子座及び染色体10セントロメアに対するプローブで遺伝子増幅を評価する。いくつかの実施形態では、増幅が生じる場合、FGFR2増幅は、FGFR2:CEN10(染色体10セントロメア)の比が>3である。いくつかの実施形態では、FGFR2増幅は、FGFR2:CEN10の比が≧2である。他の実施形態では、しかしながら、FGFR2レベルは、FGFR2:CEN10の比が1~2であり、これは、FGFR2が増幅されないことを示す。
【0187】
いくつかの実施形態では、癌がFGFR2遺伝子増幅を含む場合、癌は、FGFR2-IIIbを過剰発現する。いくつかの実施形態では、FGFR2増幅を含む癌は、FGFR2-IIIcよりもFGFR2-IIIbを大幅に過剰発現する。いくつかの実施形態では、癌は、遺伝子増幅を含まないが、FGFR2-IIIbを過剰発現する。いくつかの実施形態では、FGFR2増幅を含む癌は、FGFR2-IIIc発現の正規化レベルよりも2倍、3倍、5倍、または10倍以上多い正規化レベルでFGFR2-IIIbを発現する。いくつかの実施形態では、発現レベルは、GUSBに正規化される。いくつかの実施形態では、癌は、FGFR2-IIIbを過剰発現するが、FGFR2遺伝子増幅を含まない。いくつかの実施形態では、胃癌または膀胱癌は、FGFR2遺伝子増幅を含む。いくつかの実施形態では、胃癌または膀胱癌は、FGFR2-IIIbを過剰発現するFGFR2遺伝子増幅を含む。
【0188】
いくつかの実施形態では、FGFR2増幅を含む胃癌または膀胱癌は、FGFR2-IIIcよりもFGFR2-IIIbを大幅に過剰発現する。いくつかの実施形態では、胃癌または膀胱癌は、遺伝子増幅を含まないが、FGFR2-IIIbを過剰発現する。いくつかの実施形態では、FGFR2増幅を含む胃癌または膀胱癌は、FGFR2-IIIc発現の正規化レベルよりも2倍、3倍、5倍、または10倍以上多い正規化レベルでFGFR2-IIIbを発現する。いくつかの実施形態では、発現レベルは、GUSBに正規化される。いくつかの実施形態では、胃癌または膀胱癌は、FGFR2-IIIbを過剰発現するが、FGFR2遺伝子増幅を含まない。いくつかの実施形態では、過剰発現は、mRNA過剰発現である。いくつかの実施形態では、過剰発現は、タンパク質過剰発現である。いくつかの実施形態では、点突然変異または転座は、FGFR2の過剰発現を引き起こし得る。FGFR2種の発現レベルは、例えば、IHCを用いて決定してもよい。
【0189】
いくつかの実施形態では、FGFR2過剰発現は、免疫組織化学(IHC)によって決定される。例えば、過剰発現は、少なくとも10%の腫瘍細胞中、例えば、少なくとも20%、30%、40%、または50%の腫瘍細胞中で1+、2+、または3+のIHCシグナルによって決定されてもよい。例えば、いくつかのそのような実施形態では、癌は、胃癌であり、治療される患者は、例えば、少なくとも10%の腫瘍細胞中(例えば、細胞膜中)で、FGFR2bに対して3+のIHCシグナルを有してもよい。いくつかの実施形態では、胃癌患者は、少なくとも10%の腫瘍細胞中で2+または3+シグナルを有してもよい。いくつかの実施形態では、胃癌患者は、少なくとも10%の腫瘍細胞中で少なくとも1+シグナルを有してもよい。
【0190】
いくつかの実施形態では、FGFR2過剰発現は、「Hスコア」として報告されてもよい。例えば、いくつかのそのような実施形態では、腫瘍は、膀胱癌腫瘍である。Hスコアを決定するため、最初の膜染色強度は、例えば、IHCを介して固定視野で細胞について決定し、0、1+、2+、または3+のスコアを得てもよく、Hスコアは、以下の式を用いて算出することができる:1×(1+のIHC強度で視覚化した細胞の%)+2×(2+のIHC強度で視覚化した細胞の%)+3×(3+のIHC強度で視覚化した細胞の%)。理論的には、Hスコアは、0~300の範囲に広がってもよく、視野中の全細胞が3+のIHC染色を有する場合、300に等しい。いくつかの実施形態では、治療される患者は、>20、例えば、>30、>40、>50、もしくは>100、または20~300、20~100、20~50、20~40、もしくは20~30の範囲のFGFR2、例えば、FGFR2b(例えば、FGFR2IIIb)の開始Hスコアを有する。いくつかの実施形態では、患者は、>10のHスコアを有し、または10~20もしくは15~20の範囲内である。他の実施形態では、患者は、0~10のHスコアを有し、これは、FGFR2過剰発現の欠如を示し得る。いくつかのそのような実施形態では、患者は、膀胱癌患者である。
【0191】
いくつかの実施形態では、癌は、FGFR2IIIbを過剰発現し、及び/または
FGFR2遺伝子増幅を運ぶことがすでに決定されている。他の実施形態では、本明細書の方法はまず、治療を行う前にFGFR2IIIb発現とFGFR2遺伝子増幅状態のいずれかまたは両方を評価する。さらに、本開示は、癌患者におけるFGFR2IIIb発現及び/またはFGFR2遺伝子増幅を評価することを含む、FGFR2阻害剤のいずれかに対する応答性を決定する方法、上述の治療及び使用を提供する。
【0192】
患者が胃癌または膀胱癌を罹患しているいくつかの実施形態では、方法は、患者の癌が、治療またはFGFR2阻害剤組成物に対する応答性を示し得る以下のカテゴリーの1つに該当するかどうかを決定することを含んでもよい:a)胃癌対象の場合には、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナル;b)胃癌対象の場合には、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナル、ならびにFGFR2遺伝子の増幅;c)胃癌対象の場合には、FGFR2遺伝子を増幅せずに、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナル;d)胃癌対象の場合には、少なくとも10%の腫瘍細胞中で1+または2+のIHCシグナル;e)膀胱癌対象の場合には、少なくとも10%の腫瘍細胞中で1+のIHCシグナル;f)膀胱癌対象の場合には、少なくとも10%の腫瘍細胞中で2+のIHCシグナル;g)膀胱癌対象の場合には、20を超えるHスコア;h)膀胱癌対象の場合には、10~19のHスコア;i)膀胱癌対象の場合には、10未満のHスコア。
【0193】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、対象は、PD-1/PD-L1阻害剤に「不十分なレスポンダー」である。PD-1/PD-L1阻害剤に不十分なレスポンダーである対象は、PD-1/PD-L1阻害剤に以前に応答していてもよく、PD-1/PD-L1阻害剤にあまり応答しなくなっていてもよく、または対象は、PD-1/PD-L1阻害剤に応答したことがなくてもよい。PD-1/PD-L1阻害剤に対する不十分な応答とは、標準用量のPD-1/PD-L1阻害剤の後に改善することが期待される状態の態様が改善しない、及び/または標準用量より多く投与された場合にのみ改善が生じることを意味する。いくつかの実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤に不十分なレスポンダーは、標準用量を少なくとも2週間、少なくとも3つ週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、または少なくとも12週間受けた後にPD-1/PD-L1阻害剤に対する不十分な応答を経験したかまたは経験している。「標準」用量は、医療専門家によって決定され、対象の年齢、体重、健康歴、疾患の重篤度、投与頻度などに依存し得る。いくつかの実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤に不十分なレスポンダーは、抗PD-1抗体及び/または抗PD-L1抗体に対する不十分な応答を経験したかまたは経験している。いくつかの実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤に不十分なレスポンダーは、AMP-224に対する不十分な応答を経験したかまたは経験している。いくつかの実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤に不十分なレスポンダーは、ニボルマブ、ピディリズマブ、及びペンブロリズマブから選択されるPD-1/PD-L1阻害剤に対する不十分な応答を経験したかまたは経験している。
【0194】
上記実施形態の方法のいずれかでは、FGFR2阻害剤と少なくとも1つの免疫刺激剤、例えば、PD-1/PD-L1阻害剤の組み合わせは、マウス腫瘍モデルおける腫瘍増殖を少なくとも1週、10日間、または2週間の期間にわたって、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%阻害し得る。上記実施形態の方法のいずれかでは、FGFR2阻害剤とPD-1/PD-L1阻害剤の組み合わせの対象への投与は、対象における少なくとも1つの腫瘍体積を、例えば、少なくとも1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、または1年の期間にわたって少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%減少し得る。
【0195】
FGFR2抗体は、NK細胞、PD-L1発現細胞、マクロファージ、ならびにCD3+、CD8+、及びCD4+T細胞の数を増加させ、腫瘍におけるリンパ系細胞対骨髄系細胞の比も増加させる
上記実施形態の方法のいずれかでは、FGFR2阻害剤の投与は、異種移植または同系腫瘍モデルなどのマウス腫瘍モデルから採取した腫瘍における対照と比較して、NKp46+細胞などのNK細胞の増加、PD-L1発現細胞の増加、CD3+、CD8+、及び/またはCD4+T細胞の増加、マクロファージの増加、及び/またはリンパ系細胞対骨髄系細胞の比の増加を少なくとも1日、4日、1週、10日、または2週の期間にわたって、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%示し得る。いくつかの実施形態では、マウス腫瘍モデルは、4T1腫瘍モデルである。
【0196】
本明細書の実施例で提供されるデータは、非フコシル化抗FGFR2b抗体によるマウス同系腫瘍モデルの処置は、腫瘍増殖を阻害しながら、ネズミ腫瘍組織中のNKp46+細胞の数を増加させることを示す。N297に突然変異を有し、ADCC活性が欠如している抗体(抗FGFR2-N297Q)による同様の処置は、NK細胞の増加を示さず、腫瘍増殖に影響を与えなかった(以下の実施例2a~bを参照)。
【0197】
本明細書の実施例で提供されるデータは、非フコシル化FGFR2抗体によるマウス同系モデルの処置が、腫瘍組織中のPD-L1陽性細胞の数を増加させることも示す(実施例2aを参照)。これは、FGFR2阻害剤を癌治療のためのPD-1/PD-L1阻害剤とうまく組み合わせることができ、特許請求された組み合わせが、腫瘍体積または腫瘍増殖の阻害と組み合わせて少なくとも付加的効果、場合によっては、相乗的効果を有し得ることを示唆している。さらに、本明細書のデータは、非フコシル化FGFR2抗体によるマウス同系腫瘍モデルの処置が、腫瘍組織中のCD3+、CD8+、及びCD4+T細胞の数も増加させ、リンパ系細胞対骨髄系細胞の比を増加させることを示す。エフェクター機能を防ぐように設計された、N297Q突然変異を含有するFGFR2抗体ではそのような結果は観察されなかった(実施例2bを参照)。本明細書のさらなるデータは、非フコシル化FGFR2抗体によるマウス同系腫瘍モデルの処置が、腫瘍組織中のマクロファージの数も増加させることを示す(実施例2cを参照)。これらのデータは、非フコシル化抗FGFR2抗体で観察された腫瘍増殖の阻害が、NK細胞媒介性ADCC活性によって一部促進されることを示唆している。加えて、データは、このADCC活性が、腫瘍内にT細胞の浸潤をもたらし得る、腫瘍中のPD-L1発現細胞を増加させ得ることを示唆している。リンパ系細胞対骨髄系細胞の比の増加は、非フコシル化FGFR2抗体が、腫瘍微小環境を変化させることで、単剤として、ならびにPD-1阻害剤と組み合わせて使用した場合に、強力な抗腫瘍活性を有し得ることをさらに示唆している。
【0198】
従って、また、本明細書で含まれるのは、有効量のFGFR2阻害剤、例えば、FGFR2抗体、例えば、FGFR2増強されたADCC活性を有する抗体を対象に投与することを含む、前記対象の腫瘍組織中のNK細胞、PD-L1陽性細胞、マクロファージ、CD3+、CD8+、及び/またはCD4+T細胞の数、及び/またはリンパ系細胞対骨髄系細胞の比を増加させる方法である。いくつかの実施形態では、FGFR2抗体を投与する場合、抗体は、非フコシル化されており、例えば、N297位で非フコシル化されている。いくつかの実施形態では、増加は、対照、例えば、処置前の腫瘍組織または非腫瘍組織と比較した場合、少なくとも1日、4日、1週、10日、または2週の期間後に観察され得、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の増加であり得る。FGFR2阻害剤は、例えば、本明細書の他の箇所に記載される投与条件下で投与されてもよい。
【0199】
また、本明細書で含まれるのは、有効量の、ADCC活性、例えば、増強されたADCC活性を有する抗体を対象に投与することを含む、前記対象の腫瘍組織中のNK細胞、PD-L1陽性細胞、マクロファージ、CD3+、CD8+、及び/またはCD4+T細胞の数、及び/またはリンパ系細胞対骨髄系細胞の比を増加させる方法である。いくつかの実施形態では、抗体は、N297位での非フコシル化により増強されたADCC活性を有する。いくつかの実施形態では、増加は、対照、例えば、処置前の腫瘍組織または非腫瘍組織と比較した場合、少なくとも1日、4日、1週、10日、または2週の期間後に観察され得、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の増加であり得る。一般的に、そのような抗体は、1用量あたり約10μg/kg体重~約100mg/kg体重の範囲の量で投与され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、1用量あたり約50μg/kg体重~約5mg/kg体重の範囲の量で投与され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、1用量あたり約100μg/kg体重~約10mg/kg体重の範囲の量で投与され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、1用量あたり約100μg/kg体重~約20mg/kg体重の範囲の量で投与され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、1用量あたり約0.5mg/kg体重~約20mg/kg体重の範囲の量で投与され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、0.1~10mg/kgの用量で、例えば、0.1、0.3、0.5、1、2、3、4、5、もしくは10mg/kgの用量で、または前述の数のいずれか2つで囲まれた用量範囲内で投与される。
【0200】
本出願はまた、例えば、抗体が、対象の少なくとも1つの腫瘍に対してそのような効果を有しているかどうか決定するために、ADCC活性または増強されたADCC活性を有する抗体の投与前及び/または投与後に、対象の腫瘍組織中のNK細胞、PD-L1陽性細胞、マクロファージ、CD3+、CD8+、及び/またはCD4+T細胞の数、及び/またはリンパ系細胞対骨髄系細胞の比を決定する方法を含む。本出願はまた、FGFR2阻害剤を単独またはPD-1/PD-L1阻害剤との組み合わせの一部のいずれかとして投与前及び/または投与後に、対象の腫瘍組織中のNK細胞、PD-L1陽性細胞、CD3+、CD8+、及び/またはCD4+T細胞の数を決定する、及び/または対象の腫瘍組織中のリンパ系細胞対骨髄系細胞の比を決定する方法を含む。また、本明細書で含まれるのは、FGFR2及びPD-1/PD-L1阻害剤の併用処置を受けている対象の腫瘍組織中のNK細胞、PD-L1陽性細胞、CD3+、CD8+、及び/またはCD4+T細胞の数を決定する、及び/または対象の腫瘍組織中のリンパ系細胞対骨髄系細胞の比を決定する方法を含む。
【0201】
NK細胞、PD-L1陽性細胞、マクロファージ、CD3+、CD8+、及び/またはCD4+T細胞の数を決定すること、及び/またはリンパ系細胞対骨髄系細胞の比を決定することは、例えば、組織の生検を介して、またはそのような試験のための腫瘍から試料を得るいくつかの他の方法を介して行ってもよい。そのような生検または他の試料は、一般的に、ADCC活性を有する抗体またはFGFR2阻害剤の最初の投与後の、例えば、1、2、3、4、7、17、30.45、または90日目に採取してもよい。NK細胞、PD-L1陽性細胞、マクロファージ、CD3+、CD8+、及び/またはCD4+T細胞の数、及び/またはリンパ系細胞対骨髄系細胞の比は、例えば、対照、例えば、処置前の腫瘍試料、または非腫瘍組織からの試料を比較して決定してもよい。いくつかの実施形態では、数は、CD45+単細胞などの特定の細胞型のパーセンテージとして表してもよい。いくつかの実施形態では、特定の細胞型の数は、FACS分析によって決定されてもよい。
【0202】
いくつかの実施形態では、NK細胞、PD-L1陽性細胞、マクロファージ、CD3+、CD8+、及び/またはCD4+T細胞、及び/またはリンパ系細胞対骨髄系細胞の比の増加が、対照と比較してそのような試験で観察される場合、対象にPD-1/PD-L1阻害剤をさらに投与してもよい。いくつかの実施形態では、増加が観察されない場合、または有意な増加が観察されない場合、FGFR2阻害剤またはADCC活性を有する抗体の投与量を増加させてもよい。
【0203】
いくつかの実施形態では、NK細胞、PD-L1陽性細胞、マクロファージ、CD3+、CD8+、及び/またはCD4+T細胞、及び/またはリンパ系細胞対骨髄系細胞の比の増加のそのような評価を使用して、PD-1/PD-L1阻害剤との併用処置を与えるかどうか、またはPD-1/PD-L1阻害剤を加えずに処置を継続するかどうかを決定してもよい。例えば、FGFR2阻害剤の投与後、対象由来の腫瘍試料は、対照と比較して、NK細胞、PD-L1陽性細胞、マクロファージ、CD3+、CD8+、及び/またはCD4+T細胞の数、及び/またはリンパ系細胞対骨髄系細胞の比について評価してもよく、これらの種類の細胞のいずれかまたは両方の増加が試料で観察される場合、PD-1/PD-L1阻害剤は、本明細書に記載の実施形態の方法にいずれかに従って、FGFR2阻害剤と一緒に投与してもよい。
【0204】
投与の経路、担体、追加の薬学的組成物
様々な実施形態では、抗体は、限定されないが、経口、動脈内、非経口、鼻腔内、静脈内、筋肉内、心臓内、脳室内、気管内、口腔、直腸、腹腔内、皮内、局所、経皮、及び髄腔内を含む種々の経路によって、または移植もしくは吸入によってインビボで投与され得る。主題の組成物は、限定されないが、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、溶液、坐剤、浣腸剤、注射剤、吸入剤、及びエアゾールを含む、固体、半固体、液体または気体形態の製剤に製剤化することができる。抗体をコードする核酸分子は、文献(例えば、Tang et al.,Nature 356:152-154(1992)を参照されたい)に記載されているように、金微粒子上にコーティングされ、粒子照射装置または「遺伝子銃」によって皮内送達され得る。適切な製剤及び投与の経路は、意図される用途に応じて選択され得る。
【0205】
様々な実施形態では、抗体を含む組成物は、多種多様な薬学的に許容される担体を含む製剤で提供される(例えば、Gennaro,Remington:The Science and Practice of Pharmacy with Facts and Comparisons:Drugfacts Plus,20th ed.(2003);Ansel et al.,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,7th ed.,Lippencott Williams and Wilkins(2004);Kibbe et al.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,3rd ed.,Pharmaceutical Press(2000)を参照されたい)。ビヒクル、アジュバント、及び希釈剤を含む種々の薬学的に許容される担体が利用可能である。さらに、種々の薬学的に許容される補助物質、例えば、Ph調節剤及び緩衝剤、浸透圧調節剤、安定剤、湿潤剤なども利用可能である。非限定的な例示的な担体としては、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0206】
様々な実施形態では、抗体を含む組成物は、それらを水性または非水性溶媒中に、例えば、植物性もしくは他の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステル、またはプロピレングリコールなどの中に、必要に応じて、慣用の添加剤、例えば、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤、及び防腐剤とともに、溶解、懸濁、または乳化させることによって、皮下投与を含む注射用に製剤化され得る。様々な実施形態では、組成物は、例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などのような加圧された許容可能な噴霧剤を使用して、吸入用に製剤化され得る。組成物はまた、様々な実施形態では、生分解性または非生分解性ポリマーなどの徐放性マイクロカプセルに製剤化することもできる。非限定的な例示的な生分解性製剤としては、ポリ乳酸-グリコール酸ポリマーが挙げられる。非限定的な例示的な非生分解性製剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。そのような製剤を製造するある特定の方法は、例えば、EP1125584A1に記載されている。
【0207】
1つ以上の容器を含む医薬パック及びキットであって、それぞれが抗体または抗体の組み合わせの1つ以上の用量を含むものも提供される。いくつかの実施形態では、単位用量が提供され、ここで単位用量は、1つ以上の追加の薬剤を伴うかまたは伴わずに、抗体または抗体の組み合わせを含む組成物の所定量を含有する。いくつかの実施形態では、そのような単位用量は、注射用の単回使用プレフィルドシリンジで供給される。様々な実施形態では、単位用量で含有される組成物は、生理食塩水、スクロースなど;リン酸塩などの緩衝液を含むことができ;及び/または安定かつ効果的なpH範囲内で製剤化され得る。あるいは、いくつかの実施形態では、組成物は、適切な液体、例えば、滅菌水の添加時に再構成され得る凍結乾燥粉末として提供され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、限定されないが、スクロース及びアルギニンを含む、タンパク質凝集を阻害する1つ以上の物質を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、ヘパリン及び/またはプロテオグリカンを含む。
【0208】
薬学的組成物は、特定の適応症の治療または予防に有効な量で投与される。治療的有効量は、典型的には、治療されている対象の体重、彼もしくは彼女の身体もしくは健康状態、治療される状態の広範さ、または治療される対象の年齢に依存する。一般的に、抗体は、1用量あたり約10μg/kg体重~約100mg/kg体重の範囲の量で投与され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、1用量あたり約50μg/kg体重~約5mg/kg体重の範囲の量で投与され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、1用量あたり約100μg/kg体重~約10mg/kg体重の範囲の量で投与され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、1用量あたり約100μg/kg体重~約20mg/kg体重の範囲の量で投与され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、1用量あたり約0.5mg/kg体重~約20mg/kg体重の範囲の量で投与され得る。
【0209】
いくつかの実施形態では、抗体または融合分子またはポリペプチドなどのPD-1/PD-L1阻害剤は、0.1~100mg/kgの用量で、例えば、0.1、0.3、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、もしくは30mg/kgの用量で、または前述の数のいずれか2つで囲まれた用量範囲内で投与される。いくつかの実施形態では、抗体または融合分子またはECDポリペプチドなどのFGFR2阻害剤は、0.1、0.3、0.5、1、2、3、4、5、もしくは10mg/kgの用量で、または前述の数のいずれか2つで囲まれた用量範囲内で投与される。
【0210】
抗体組成物は、必要に応じて対象に投与され得る。投与頻度の決定は、治療されている状態、治療されている対象の年齢、治療されている状態の重篤度、治療されている対象の一般的な健康状態などの考慮に基づいて主治医などの当業者によってなされ得る。いくつかの実施形態では、抗体の有効用量が、対象に1回以上投与される。様々な実施形態では、抗体の有効用量は、1ヶ月に1回、1ヶ月に1回未満、例えば2ヶ月毎または3ヶ月毎に投与される。他の実施形態では、抗体の有効用量は、例えば、3週間毎、2週間毎、または毎週など、1ヶ月に1回より多く投与される。いくつかの実施形態では、抗体の有効用量は、1、2、3、4または5週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体の有効用量は、週に2回または3回投与される。抗体の有効用量は、対象に少なくとも1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体の有効用量は、少なくとも1ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、または少なくとも1年間の期間を含み複数回投与されてもよい。
【0211】
本明細書に記載されるFGFR2阻害剤及び本明細書に記載されるPD-1/PD-L1阻害剤を含む組成物も提供される。いくつかの実施形態では、FGFR2阻害剤及びPD-1/PD-L1阻害剤は、例えば、それらが一緒に混合されないように、別々の容器内または単一容器の別々の区画内に含まれる。いくつかの実施形態では、FGFR2阻害剤及びPD-1/PD-L1阻害剤は、同じ容器または区画に存在することで、一緒に混合されてもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、癌治療で使用するための説明書を含む。
【0212】
他の免疫刺激剤との組み合わせ
いくつかの実施形態では、FGFR2阻害剤は、PD-1/PD-L1阻害剤以外の少なくとも1つの免疫刺激剤と組み合わされる。あるいは、いくつかの実施形態では、FGFR2阻害剤とPD-1/PD-L1阻害剤の組み合わせは、有効量の少なくとも1つの追加の免疫刺激剤とさらに組み合わてもよい。
【0213】
免疫刺激剤は、例えば、小分子薬または生物製剤を含み得る。生物学的免疫刺激剤の例としては、限定されるものではないが、抗体、抗体断片、受容体の断片、または、例えば、受容体-リガンド結合を遮断するリガンドポリペプチド、ワクチン及びサイトカインが挙げられる。
【0214】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤は、免疫刺激分子、例えば、共刺激分子のアゴニストを含むが、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤は、免疫阻害分子、例えば、共阻害分子のアンタゴニストを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤は、T細胞などの免疫細胞で見られる、免疫刺激分子、例えば、共刺激分子のアゴニストを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤は、T細胞などの免疫細胞で見られる、免疫阻害分子、例えば、共阻害分子のアンタゴニストを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤は、NK細胞などの自然免疫に関与する細胞で見られる、免疫刺激分子、例えば、共刺激分子のアゴニストを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤は、NK細胞などの自然免疫に関与する細胞で見られる、免疫阻害分子、例えば、共阻害分子のアゴニストを含む。いくつかの実施形態では、組み合わせは、処置対象における抗原特異的T細胞応答を増強し、及び/または対象における自然免疫応答を増強する。
【0215】
いくつかの実施形態では、FGFR2阻害剤と少なくとも1つの免疫刺激剤の組み合わせは、FGFR2阻害剤単独の投与と比較して、マウス異種移植及び/または同系腫瘍モデルなどの動物癌モデルにおける抗腫瘍応答の改善をもたらす。いくつかの実施形態では、FGFR2阻害剤と少なくとも1つの免疫刺激剤の組み合わせは、いずれかの薬物単独の投与と比較して、マウス異種移植及び/または同系腫瘍モデルなどの動物癌モデルにおける付加的または相乗的応答をもたらす。
【0216】
FGFR2阻害剤、PD-1/PD-L1阻害剤、及び少なくとも1つの追加の免疫刺激剤の組み合わせを伴う実施形態では、組み合わせは、FGFR2阻害剤単独の投与と比較して、マウス異種移植及び/または同系腫瘍モデルなどの動物癌モデルにおける抗腫瘍応答の改善をもたらす。いくつかの実施形態では、FGFR2阻害剤と追加の治療薬の組み合わせは、個々の治療薬単独の投与と比較して、マウス異種移植及び/または同系腫瘍モデルなどの動物癌モデルにおける付加的または相乗的応答をもたらす。
【0217】
ある特定の実施形態では、免疫刺激剤は、免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)のメンバーであるである刺激分子または阻害分子を標的にする。例えば、免疫刺激剤は、ポリペプチドのB7ファミリーの別のメンバーを標的にする(または、に特異的に結合する)薬剤であってもよい。免疫刺激剤は、膜結合リガンドのTNFファミリーのメンバー、またはTNFファミリーのメンバーに特異的に結合する共刺激受容体もしくは共阻害性受容体を標的にする薬剤であってもよい。免疫刺激剤によって標的にされ得る例示的なTNF及びTNFRファミリーメンバーとしては、CD40及びCD40L、OX-40、OX-40L、GITR、GITRL、CD70、CD27L、CD30、CD30L、4-1BBL、CD137(4-1BB)、TRAIL/Apo2-L、TRAILR1/DR4、TRAILR2/DR5、TRAILR3、TRAILR4、OPG、RANK、RANKL、TWEAKR/Fn14、TWEAK、BAFFR、EDAR、XEDAR、TACI、APRIL、BCMA、LTβR、LIGHT、DcR3、HVEM、VEGI/TL1A、TRAMP/DR3、EDAR、EDA1、XEDAR、EDA2、TNFR1、リンホトキシンα/TNFβ、TNFR2、TNFα、LTβR、リンホトキシンα 1β2、FAS、FASL、RELT、DR6、TROY、ならびにNGFRが挙げられる。
【0218】
いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は、(i)CTLA4、LAG-3、TIM3、ガレクチン9、CEACAM-1、BTLA、CD69、ガレクチン-1、TIGIT、CD113、GPR56、VISTA、B7-H3、B7-H4、2B4、CD48、GARP、PD1H、LAIR1、TIM-1、TIM-4、及びILT4などのT細胞活性化を阻害する(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)タンパク質のアンタゴニストを含んでもよく、及び/または、(ii)B7-2、CD28、4-1BB(CD137)、4-1BBL、ICOS、ICOS-L、OX40、OX40L、GITR、GITRL、CD70、CD27、CD40、CD40L、DR3、及びCD28HなどのT細胞活性化を刺激するタンパク質のアゴニストを含んでもよい。
【0219】
いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は、T細胞活性化を阻害する薬剤を含んでもよく、またはT細胞活性化を阻害するサイトカイン(例えば、IL-6、IL-10、TGF-β、VEGF、及び他の免疫抑制サイトカイン)のアンタゴニストであり、いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は、T細胞活性化を刺激するIL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-21、及びIFNα(例えば、サイトカイン自体)などのサイトカインのアゴニストである薬剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は、CXCR2(例えば、MK-7123)、CXCR4(例えば、AMD3100)、CCR2、またはCCR4(モガムリズマブ)などのケモカインのアンタゴニストを含んでもよい。
【0220】
いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は、NK細胞上に阻害性受容体のアンタゴニスト、またはNK細胞上に活性化受容体のアゴニストを含んでもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤は、KIRのアンタゴニストである。
【0221】
免疫刺激剤は、TGF-βシグナル伝達を阻害する薬剤、腫瘍抗原提示を増強する薬剤、例えば、樹状細胞ワクチン、GM-CSF分泌細胞性ワクチン、CpGオリゴヌクレオチド、及びイミキモド、または腫瘍細胞の免疫原性を増強する治療剤(例えば、アントラサイクリン)も含み得る。
【0222】
免疫刺激剤は、ある特定のワクチン、例えば、メソテリン標的ワクチンまたは弱毒化リステリア癌ワクチン、例えば、CRS-207も含み得る。
【0223】
免疫刺激剤は、Treg細胞を枯渇または遮断する治療、例えば、CD25に特異的に結合する薬剤も含み得る。
【0224】
免疫刺激剤は、インドールアミンジオキシゲナーゼ(IDO)、ジオキシゲナーゼ、アルギナーゼ、または一酸化窒素シンテターゼなどの代謝酵素を阻害する薬剤も含み得る。
【0225】
免疫刺激剤は、アデノシンの形成を阻害する、またはアデノシンA2A受容体を阻害する薬剤も含み得る。
【0226】
免疫刺激剤は、T細胞アネルギーまたは疲弊を回復/予防する薬剤、及び腫瘍部位での自然免疫活性化及び/または炎症を誘発する薬剤も含み得る。
【0227】
いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は、CD40アゴニスト、例えば、CD40アゴニスト抗体を含み得る。FGFR2阻害剤とPD-1/PD-L1阻害剤の組み合わせはさらに、免疫経路の複数の要素を標的にするコンビナトリアルアプローチと組み合わせることができ、例えば、以下の1つ以上と組み合わせることができる:腫瘍抗原提示を増強する少なくとも1つの薬剤(例えば、樹状細胞ワクチン、GM-CSF分泌細胞性ワクチン、CpGオリゴヌクレオチド、イミキモド);例えば、CTLA4経路の阻害及び/またはTregもしくは他の免疫抑制細胞の枯渇もしくは遮断による負の免疫制御を阻害する少なくとも1つの薬剤;例えば、CD-137、OX-40及び/またはGITR経路を刺激する及び/またはT細胞エフェクター機能を刺激するアゴニストで、正の免疫制御を刺激する治療;抗腫瘍T細胞の出現頻度を全身性に増加させる少なくとも1つの薬剤;例えば、CD25のアンタゴニスト(例えば、ダクリズマブ)の使用によりまたはエクスビボ抗CD25ビーズ枯渇により、腫瘍におけるTregなどのTregを枯渇または阻害する治療;腫瘍におけるサプレッサー骨髄細胞の機能に影響する少なくとも1つの薬剤;腫瘍細胞の免疫原性を増強させる治療(例えば、アントラサイクリン);遺伝子修飾した細胞、例えば、キメラ抗原受容体により修飾された細胞を含む養子T細胞またはNK細胞移入(CAR-T治療);インドールアミンジオキシゲナーゼ(IDO)、ジオキシゲナーゼ、アルギナーゼ、または一酸化窒素シンテターゼなどの代謝酵素を阻害する少なくとも1つの薬剤;T細胞アネルギーまたは疲弊を回復/予防する少なくとも1つの薬剤;腫瘍部位での自然免疫活性化及び/または炎症を誘発する治療;免疫刺激性サイトカインの投与または免疫抑圧的サイトカインの遮断。
【0228】
例えば、少なくとも1つの免疫刺激剤は、1つ以上の正の共刺激受容体を連結する作動剤;阻害性受容体を介してシグナル伝達を減弱させる1つ以上のアンタゴニスト(遮断剤)、例えば、腫瘍微小環境内の異なる免疫抑制経路に打ち勝つアンタゴニスト;抗腫瘍免疫細胞の出現頻度を全身性に増加させる1つ以上の薬剤、例えば、Tregを枯渇または阻害する(例えば、CD25を阻害することで)T細胞;IDOなどの代謝酵素を阻害する1つ以上の薬剤;T細胞アネルギーまたは疲弊を回復/予防する1つ以上の薬剤;及び腫瘍部位で自然免疫活性化及び/または炎症を誘発する1つ以上の薬剤を含んでもよい。
【0229】
一実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤は、アンタゴニストCTLA4抗体などのCTLA4アンタゴニストを含む。適当なCTLA4抗体としては、例えば、YERVOY(イピリムマブ)またはトレメリムマブが挙げられる。
【0230】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤は、アンタゴニストLAG-3抗体などのLAG-3アンタゴニストを含む。適当なLAG-3抗体としては、例えば、BMS-986016(WO10/19570、WO14/08218)、またはIMP-731もしくはIMP-321(WO08/132601、WO09/44273)が挙げられる。
【0231】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤は、アゴニストCD137抗体などのCD137(4-1BB)アゴニストを含む。適当なCD137抗体としては、例えば、ウレルマブまたはPF-05082566(WO12/32433)が挙げられる。
【0232】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤は、アゴニストGITR抗体などのGITRアゴニストを含む。適当なGITR抗体としては、例えば、TRX-518(WO06/105021、WO09/009116)、MK-4166(WO11/028683)またはWO2015/031667に開示されるGITR抗体が挙げられる。
【0233】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤は、アゴニストOX40抗体などのOX40アゴニストを含む。適当なOX40抗体としては、例えば、MEDI-6383、MEDI-6469、またはMOXR0916(RG7888;WO06/029879)が挙げられる。
【0234】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤は、アゴニストCD27抗体などのCD27アゴニストを含む。適当なCD27抗体としては、例えば、バルリルマブ(CDX-1127)が挙げられる。
【0235】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤は、B7H3を標的にするMGA271を含む(WO11/109400)。
【0236】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤は、リリルマブなどのKIRアンタゴニストを含む。
【0237】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤は、IDOアンタゴニストを含む。IDOアンタゴニストとしては、例えば、INCB-024360(WO2006/122150、WO07/75598、WO08/36653、WO08/36642)、インドキシモド、NLG-919(WO09/73620、WO09/1156652、WO11/56652、WO12/142237)またはF001287が挙げられる。
【0238】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤は、Toll様受容体アゴニスト、例えば、TLR2/4アゴニスト(例えば、Bacillus Calmette-Guerin);TLR7アゴニスト(例えば、Hiltonolまたはイミキモド);TLR7/8アゴニスト(例えば、レシキモド);またはTLR9アゴニスト(例えば、CpG7909)を含む。
【0239】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤は、TGF-β阻害剤、例えば、GC1008、LY2157299、TEW7197、またはIMC-TR1を含む。
【0240】
さらなる併用療法
抗体は、単独で、または他の治療様式を伴って投与され得る。それらは、他の治療様式、例えば、外科手術、化学療法、放射線療法、または別の治療用抗体などの生物製剤の投与の前に、実質的に同時に、またはその後に提供され得る。いくつかの実施形態では、癌は、外科手術、化学療法、及び放射線療法、またはそれらの組み合わせから選択される治療の後に再発または進行した。
【0241】
癌の治療のために、阻害剤は、化学療法剤、増殖阻害剤、抗血管新生剤、及び/または抗腫瘍性組成物などの1つ以上の追加の抗癌剤と併せて投与してもよい。本発明の抗体と組み合わせて使用することができる化学療法剤、増殖阻害剤、抗血管新生剤、抗癌剤、及び抗腫瘍性組成物の非限定例としては、以下の定義に提供される。
【0242】
「化学療法剤」とは、癌の治療において有用な化学的化合物である。化学療法剤の例としては、限定されるものではないが、チオテパ及びCytoxan(登録商標)シクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、イムプロスルファン及びピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ、カルボクオン、メツレドーパ、及びウレドーパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド及びトリメチロロメラミンなどのエチレンイミン及びメチルアメラミン;アセトゲニン(特に、ブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成アナログトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチンなどのニトロソウレア;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンガンマ1I及びカリケアマイシンオメガI1(例えば、Agnew,Chem Intl.Ed.Engl.,33:183-186(1994)を参照されたい)などの抗生物質;ジネマイシンAなどのジネマイシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウトラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、Adriamycin(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンなど)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸アナログ;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジンアナログ;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フォリン酸などの葉酸補給剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシン及びアンサミトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、Taxol(登録商標)パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、Abraxane(登録商標)クレモホールフリー、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(American PharmaceuticalPartners,Schaumberg,Illinois)、及びTaxoterer(登録商標)ドセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer,Antony,France);クロラムブシル;Gemzar(登録商標)ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチンなどの白金アナログ;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;Navelbine(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(カンプトサール、CPT-11)(イリノテカンと5-FU及びロイコボリンとの治療レジメンを含む);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;コンブレタスタチン;ロイコボリン(LV);オキサリプラチン治療レジメン(FOLFOX)などのオキサリプラチン;細胞増殖を減少させるPKC-アルファ、Raf、H-Ras、EGFR(例えば、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))及びVEGF-Aの阻害剤、ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体が挙げられる。
【0243】
さらなる非限定的な例示的な化学療法剤としては、例えば、タモキシフェン(Nolvadex(登録商標)タモキシフェンなど)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びFareston(登録商標)トレミフェンなどの、抗エストロゲン剤及び選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)などの癌に対するホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤;例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、Megase(登録商標)酢酸メゲストロール、Aromasin(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタン、ファドロゾール、Rivisor(登録商標)ボロゾール、Femara(登録商標)レトロゾール、及びArimidex(登録商標)アナストロゾールなどの副腎におけるエストロゲン産生を調節するアロマターゼ酵素を阻害するアロマターゼ阻害剤;ならびにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリンなどの抗アンドロゲン剤;ならびにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、例えば、PKC-アルファ、Ralf及びH-Rasなどの、異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの;VEGF発現阻害剤(例えば、Angiozyme(登録商標)リボザイム)及びHER2発現阻害剤などのリボザイム;遺伝子療法ワクチンなどのワクチン、例えば、Allovectin(登録商標)ワクチン、Leuvectin(登録商標)ワクチン、及びVaxid(登録商標)ワクチン;Proleukin(登録商標)rIL-2;Lurtotecan(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;Abarelix(登録商標)rmRH;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体が挙げられる。
【0244】
「抗血管新生剤」または「血管新生阻害剤」とは、血管新生、脈管形成、または望ましくない血管透過性を、直接的または間接的に阻害する、低分子量物質、ポリヌクレオチド(例えば、阻害的RNA(RNAiもしくはsiRNA)など)、ポリペプチド、単離されたタンパク質、組み換えタンパク質、抗体、またはそのコンジュゲートもしくは融合タンパク質を指す。抗血管新生剤は、血管新生因子またはその受容体に結合し、その血管新生活性を遮断する薬剤を含むことが理解されるべきである。例えば、抗血管新生剤は、血管新生剤に対する抗体または他のアンタゴニスト、例えば、VEGF-Aに対する抗体(例えば、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))またはVEGF-A受容体(例えば、KDR受容体もしくはFlt-1受容体)に対する抗体、Gleevec(登録商標)(イマチニブメシル酸塩)などの抗PDGFR阻害剤、VEGF受容体シグナル伝達を遮断する低分子(例えば、PTK787/ZK2284、SU6668、Sutent(登録商標)/SU11248(スニチニブリンゴ酸塩)、AMG706、または例えば、国際特許出願第WO2004/113304号に記載のもの)である。抗血管新生剤はまた、天然の血管新生阻害剤、例えば、アンギオスタチン、エンドスタチンなども含む。例えば、Klagsbrun and D’Amore(1991)Annu.Rev.Physiol.53:217-39;Streit and Detmar(2003)Oncogene 22:3172-3179(例えば、悪性メラノーマにおける抗血管新生療法を列挙する表3);Ferrara&Alitalo(1999)Nature Medicine 5(12):1359-1364;Tonini et al.(2003)Oncogene 22:6549-6556(例えば、既知の抗血管新生因子を列挙する表2);及びSato(2003)Int.J.Clin.Oncol.8:200-206(例えば、臨床治験において使用される抗血管新生剤を列挙する表1)を参照されたい。
【0245】
本明細書で使用する場合、「増殖阻害剤」とは、インビトロまたはインビボで細胞(VEGFを発現する細胞など)の増殖を阻害する化合物または組成物を指す。従って、増殖阻害剤は、S期にある細胞(VEGFを発現する細胞など)のパーセンテージを有意に減少させるものであってもよい。増殖阻害剤の例としては、限定されるものではないが、G1停止及びM期停止を誘導する薬剤などの、細胞周期進行を遮断する(S期以外の場所で)薬剤が挙げられる。古典的なM期ブロッカーとしては、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン、ならびにドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンなどのトポイソメラーゼII阻害剤が挙げられる。G1を停止させる薬剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、及びara-CなどのDNAアルキル化剤はまた、S期停止にも波及する。さらなる情報を、Mendelsohn and Israel,eds.,The Molecular Basis of Cancer,Chapter 1,entitled「Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs」,Murakami et al.(W.B.Saunders,Philadelphia,1995)、例えば、p.13に見出すことができる。タキサン(パクリタキセル及びドセタキセル)は、両方ともイチイに由来する抗癌薬である。ヨーロッパイチイに由来するドセタキセル(Taxotere(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(Taxol(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)の半合成アナログである。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリンダイマーからの微小管の集合を促進し、脱ポリマー化を防止することによって微小管を安定化し、細胞における有糸分裂の阻害をもたらす。
【0246】
用語「抗腫瘍性組成物」とは、少なくとも1つの活性治療剤を含む癌を治療するのに有用な組成物を指す。治療剤の例としては、限定されるものではないが、例えば、化学療法剤、増殖阻害剤、細胞傷害性剤、放射線療法において使用される薬剤、抗血管新生剤、PD-1/PD-L1阻害剤とは別の他の癌免疫治療剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、ならびに抗HER-2抗体、抗CD20抗体、上皮増殖因子受容体(EGFR)アンタゴニスト(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)、HER1/EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、血小板由来増殖因子阻害剤(例えば、Gleevec(登録商標)(イマチニブメシル酸塩))、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、CTLA-4阻害剤(例えば、抗CTLA抗体イピリムマブ(YERVOY(登録商標)))、PD-L2阻害剤(例えば、抗PD-L2抗体)、TIM3阻害剤(例えば、抗TIM3抗体)、サイトカイン、以下の標的ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR-ベータ、BlyS、APRIL、BCMA、PD-L2、CTLA-4、TIM3、もしくはVEGF受容体、TRAIL/Apo2、及び他の生物活性剤及び有機化学剤などのうちのの1つ以上に結合するアンタゴニスト(例えば、中和抗体)などの、癌を治療するための他の薬剤が挙げられる。その組み合わせも本発明に含まれる。
【0247】
具体的な実施形態
本開示のある特定の具体的な実施形態には、以下のものが含まれる:
【0248】
1.線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)阻害剤、及び少なくとも1つの免疫刺激剤、例えば、少なくとも1つのプログラム細胞死1(PD-1)/プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)阻害剤を対象に投与することを含む、対象における癌の治療方法。
【0249】
2.少なくとも1つの免疫刺激剤が、PD-1/PD-L1阻害剤であり、PD-1/PD-L1阻害剤が、抗体である、実施形態1に記載の方法。
【0250】
3.PD-1/PD-L1阻害剤が、抗PD-1抗体である、実施形態2に記載の方法。
【0251】
4.抗PD-1抗体が、ニボルマブ、ピディリズマブ、及びペンブロリズマブから選択される抗体の重鎖及び軽鎖CDRを含む、実施形態3に記載の方法。
【0252】
5.抗PD-1抗体が、ニボルマブ、ピディリズマブ、及びペンブロリズマブから選択される抗体の重鎖及び軽鎖可変領域を含む、実施形態4に記載の方法。
【0253】
6.抗PD-1抗体が、ニボルマブ、ピディリズマブ、及びペンブロリズマブから選択される、実施形態5に記載の方法。
【0254】
7.PD-1/PD-L1阻害剤が、抗PD-L1抗体である、実施形態2に記載の方法。
【0255】
8.抗PD-L1抗体が、BMS-936559、MPDL3280A、MEDI4736、及びMSB0010718Cから選択される抗体の重鎖及び軽鎖CDRを含む、実施形態7に記載の方法。
【0256】
9.抗PD-L1抗体が、BMS-936559、MPDL3280A、MEDI4736、及びMSB0010718Cから選択される抗体の重鎖及び軽鎖可変領域を含む、実施形態8に記載の方法。
【0257】
10.抗PD-L1抗体が、BMS-936559、MPDL3280A、MEDI4736、及びMSB0010718Cから選択される、実施形態9に記載の方法。
【0258】
11.少なくとも1つの免疫刺激剤が、PD-1/PD-L1阻害剤であり、PD-1/PD-L1阻害剤が、PD-1融合分子である、実施形態1に記載の方法。
【0259】
12.融合分子が、AMP-224である、実施形態11に記載の方法。
【0260】
13.少なくとも1つの免疫刺激剤が、PD-1/PD-L1阻害剤であり、PD-1/PD-L1阻害剤が、AUR-012などのPD-1ポリペプチドである、実施形態1に記載の方法。
【0261】
14.FGFR2阻害剤が、FGFR2抗体である、実施形態1~13のいずれか1項に記載の方法。
【0262】
15.FGFR2抗体が、FGFR2-IIIb抗体である、実施形態14に記載の方法。
【0263】
16.FGFR2-IIIb抗体が、以下の特性の1つ以上を有する:
a.FGFR2-IIIbに、FGFR2-IIIcよりも高い親和性で結合する、またはFGFR2-IIIcに検出可能に結合しない;
b.FGF2のヒトFGFR2への結合を阻害する;
c.FGF7のヒトFGFR2への結合を阻害する;
d.マウス腫瘍モデルにおけるヒト腫瘍の増殖を阻害する;
e.ADCC活性を誘発する;
f.増強されたADCC活性を有する;
g.非フコシル化される;ならびに
h.対照と比較して、マウス腫瘍モデルにおける腫瘍組織中のPD-L1陽性細胞、NK細胞、CD3+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、及びマクロファージの1つ以上の数を増加させることができる、実施形態15に記載の方法。
【0264】
17.FGFR2抗体が、重鎖及び軽鎖可変領域を含み、
重鎖可変領域が、
(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1;
(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2;及び
(iii)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3;
を含み、
軽鎖可変領域が、
(iv)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1;
(v)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び
(vi)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含む、実施形態15または実施形態16に記載の方法。
【0265】
18.FGFR2抗体の重鎖可変ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列に少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、実施形態17に記載の方法。
【0266】
19.FGFR2抗体の軽鎖可変ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列に少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、実施形態17または18に記載の方法。
【0267】
20.FGFR2抗体の重鎖可変領域が、配列番号4のアミノ酸配列を含む、実施形態17~19のいずれか1項に記載の方法。
【0268】
21.FGFR2抗体の軽鎖可変領域が、配列番号5のアミノ酸配列を含む、実施形態17~20のいずれか1項に記載の方法。
【0269】
22.FGFR2抗体の重鎖が、配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、実施形態17に記載の方法。
【0270】
23.FGFR2抗体の軽鎖が、配列番号3のアミノ酸配列に少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、実施形態17または22に記載の方法。
【0271】
24.FGFR2抗体の重鎖が、配列番号2のアミノ酸配列を含む、実施形態17、22または23のいずれか1項に記載の方法。
【0272】
25.FGFR2抗体の軽鎖が、配列番号3のアミノ酸配列を含む、実施形態17または22~24のいずれか1項に記載の方法。
【0273】
26.FGFR2抗体が、キメラ、ヒト化、またはヒトである、実施形態15~25のいずれか1項に記載の方法。
【0274】
27.FGFR2抗体が、Fab、Fv、scFv、Fab’、及び(Fab’)から選択される、実施形態15~26のいずれか1項に記載の方法。
【0275】
28.FGFR2抗体が、以下の特性の1つ以上を有する:
a.Asn297位でフコースを欠いている;
b.κ軽鎖定常領域を含む;
c.IgG1重鎖定常領域を含む;
d.Asn297位でフコシル化されている同じアミノ酸配列を有する抗体と比較して、増強されたADCC活性をインビトロで有する;
e.Asn297位でフコシル化されている同じアミノ酸配列を有する抗体と比較して、FcガンマRIIIAに対して増強された親和性を有する;ならびに
f.対照と比較して、マウス腫瘍モデルにおける腫瘍組織中のPD-L1陽性細胞、NK細胞、CD3+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、及びマクロファージの1つ以上の数を増加させることができる、実施形態17~27のいずれか1項に記載の方法。
【0276】
29.FGFR2阻害剤が、FGFR2細胞外ドメイン(ECD)またはFGFR2 ECD融合分子である、実施形態1~13のいずれか1項に記載の方法。
【0277】
30.FGFR2阻害剤が、FGFR2 ECDと、Fcドメイン、アルブミン、及びポリエチレングリコールから選択される少なくとも1つの融合パートナーとを含むFGFR2 ECD融合分子である、実施形態29に記載の方法。
【0278】
31.FGFR2 ECDまたはFGFR2 ECD融合分子が、配列番号13~33または29~33のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、実施形態30に記載の方法。
【0279】
32.FGFR2阻害剤及び免疫刺激剤が、同時または順次に投与される、実施形態1~31のいずれか1項に記載の方法。
【0280】
33.1つ以上の用量の免疫刺激剤をFGFR2阻害剤の投与前に投与する、実施形態32に記載の方法。
【0281】
34.対象が、FGFR2阻害剤の投与前に完全な免疫刺激剤療法過程を受けた、実施形態33に記載の方法。
【0282】
35.FGFR2阻害剤が、第2の免疫刺激剤療法過程中に投与される、実施形態34に記載の方法。
【0283】
36.対象が、FGFR2阻害剤の投与前に少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つの用量の少なくとも1つの免疫刺激剤を受けた、実施形態33~35のいずれか1項に記載の方法。
【0284】
37.少なくとも1つの用量の少なくとも1つの免疫刺激剤が、FGFR2阻害剤と同時に投与される、実施形態33~36のいずれか1項に記載の方法。
【0285】
38.1つ以上の用量のFGFR2阻害剤を免疫刺激剤の投与前に投与する、実施形態32に記載の方法。
【0286】
39.対象が、少なくとも1つの免疫刺激剤の投与前に少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つの用量のFGFR2阻害剤を受けた、実施形態38に記載の方法。
【0287】
40.少なくとも1つの用量のFGFR2阻害剤が、免疫刺激剤と同時に投与される、実施形態38または実施形態39に記載の方法。
【0288】
41.FGFR2阻害剤が、少なくとも0.1、0.3、0.5、1、2、3、4、5、6、10、15、20、25、もしくは30mg/kgの用量で、または6~10mg/kg、10~15mg/kg、もしくは6~15mg/kgなどのmg/kg用量のいずれか2つで囲まれた範囲で投与される、実施形態1~40のいずれか1項に記載の方法。
【0289】
42.少なくとも1つの免疫刺激剤が、PD-1/PD-L1阻害剤を含む、実施形態32~41のいずれか1項に記載の方法。
【0290】
43.PD-1/PD-L1阻害剤が、少なくとも0.1、0.3、0.5、1、2、3、4、5、または10mg/kgの用量で投与される、実施形態42に記載の方法。
【0291】
44.FGFR2阻害剤及び免疫刺激剤が、1、2、3、4、または5週間に1回投与される、実施形態1~43のいずれか1項に記載の方法。
【0292】
45.癌が、乳癌、胃癌、非小細胞肺癌、黒色腫、頭頸部の扁平上皮癌、卵巣癌、膵癌、腎細胞癌、肝細胞癌、膀胱癌、胆管癌、食道癌、及び子宮内膜癌から選択される、実施形態1~44のいずれか1項に記載の方法。
【0293】
46.癌が、外科手術、化学療法、放射線療法、またはそれらの組み合わせから選択される治療後の再発または進行である、実施形態1~45のいずれか1項に記載の方法。
【0294】
47.(a)癌が、FGFR2遺伝子増幅の存在下もしくは不在下のいずれかで、FGFR2IIIbを過剰発現することが予め決定されている、または(b)方法が、癌がFGFR2IIIbを過剰発現するかどうかを決定するさらなる工程を含み、FGFR2遺伝子が腫瘍細胞中で増幅されるかどうかを決定するさらなる工程も任意に含む、実施形態1~46のいずれか1項に記載の方法。
【0295】
48.FGFR2IIIb過剰発現が、免疫組織化学(IHC)によって決定される、実施形態47に記載の方法。
【0296】
49.過剰発現が、少なくとも10%の腫瘍細胞中、例えば、少なくとも20%、30%、40%、または50%の腫瘍細胞中で1+、2+、または3+のIHCシグナルによって決定される、実施形態48に記載の方法。
【0297】
50.FGFR2遺伝子増幅が、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)を用いて、FGFR2対染色体10セントロメア(CEN10)の比を得ることによって決定され、FISHによって決定されたFGFR2/CEN10比が2以上である場合には、FGFR2遺伝子が増幅したと見なされる、実施形態47~49のいずれか1項に記載の方法。
【0298】
51.癌が、胃癌または膀胱癌である、実施形態47~50のいずれか1項に記載の方法。
【0299】
52.a)癌が、胃癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナルを有し;
b)癌が、胃癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナルを有し、FGFR2遺伝子が増幅され;
c)癌が、胃癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナルを有し、FGFR2遺伝子が増幅されず;
d)癌が、胃癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で1+もしくは2+のIHCシグナルを有し;
e)癌が、膀胱癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で1+のIHCシグナルを有し;
f)癌が、膀胱癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で2+のIHCシグナルを有し;
g)癌が、膀胱癌であり、癌が、20以上のHスコアを有し;
h)癌が、膀胱癌であり、癌が、10~19のHスコアを有し;または
i)癌が、膀胱癌であり、癌が、<10のHスコアを有する、実施形態48~50のいずれか1項に記載の方法。
【0300】
53.対象が、PD-1/PD-L1阻害剤に不十分なレスポンダーである、実施形態1~52のいずれか1項に記載の方法。
【0301】
54.癌のマウス腫瘍モデルにおけるFGFR2阻害剤及びPD-1/PD-L1阻害剤の投与が、腫瘍増殖の付加的または相乗的阻害のいずれかをもたらす、実施形態1~53のいずれか1項に記載の方法。
【0302】
55.癌が、乳癌であり、マウス腫瘍モデルが、4T1細胞を含む、実施形態54に記載の方法。
【0303】
56.マウス腫瘍モデルにおけるFGFR2阻害剤の投与が、対照と比較して、腫瘍組織中のNK細胞の数を増加させる、実施形態1~55のいずれか1項に記載の方法。
【0304】
57.マウス腫瘍モデルにおけるFGFR2阻害剤の投与が、対照と比較して、腫瘍組織中のPD-L1陽性細胞の数を増加させる、実施形態1~56のいずれか1項に記載の方法。
【0305】
58.マウス腫瘍モデルにおけるFGFR2阻害剤の投与が、対照と比較して、腫瘍組織中のCD3+、CD8+、及び/またはCD4+T細胞の数を増加させる、実施形態1~57のいずれか1項に記載の方法。
【0306】
59.マウス腫瘍モデルにおけるFGFR2阻害剤の投与が、対照と比較して、腫瘍組織中のリンパ系細胞対骨髄系細胞の比を増加させる、実施形態1~58のいずれか1項に記載の方法。
【0307】
60.実施形態14~31のいずれか1項に記載のFGFR2阻害剤、及び実施形態2~13のいずれか1項に記載の少なくとも1つの免疫刺激剤、例えば、少なくとも1つのPD-1/PD-L1阻害剤を含む、組成物。
【0308】
61.FGFR2阻害剤及び少なくとも1つの免疫刺激剤が、別々の容器または区画内に含まれる、実施形態60に記載の組成物。
【0309】
62.癌治療で使用するための説明書をさらに含む、実施形態60または61に記載の組成物。
【0310】
63.癌治療で使用するための、実施形態60~62のいずれか1項に記載の組成物。
【0311】
64.癌が、乳癌、胃癌、非小細胞肺癌、黒色腫、頭頸部の扁平上皮癌、卵巣癌、膵癌、腎細胞癌、肝細胞癌、膀胱癌、胆管癌、食道癌、及び子宮内膜癌から選択される、実施形態63に記載の組成物。
【0312】
65.癌が、FGFR2遺伝子増幅の存在下または不在下のいずれかで、FGFR2IIIbを過剰発現する、実施形態63~64のいずれか1項に記載の組成物。
【0313】
66.FGFR2IIIb過剰発現が、免疫組織化学(IHC)によって決定される、実施形態65に記載の組成物。
【0314】
67.過剰発現が、少なくとも10%の腫瘍細胞中、例えば、少なくとも20%、30%、40%、または50%の腫瘍細胞中で1+、2+、または3+のIHCシグナルによって決定される、実施形態66に記載の組成物。
【0315】
68.癌が、2以上の、FISHによって決定されたFGFR2/CEN10比を有する、実施形態63~67のいずれか1項に記載の組成物。
【0316】
69.癌が、胃癌または膀胱癌である、実施形態63~68のいずれか1項に記載の組成物。
【0317】
70.a)癌が、胃癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナルを有し;
b)癌が、胃癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナルを有し、FGFR2遺伝子が増幅され;
c)癌が、胃癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナルを有し、FGFR2遺伝子が増幅されず;
d)癌が、胃癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で1+もしくは2+のIHCシグナルを有し;
e)癌が、膀胱癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で1+のIHCシグナルを有し;
f)癌が、膀胱癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で2+のIHCシグナルを有し;
g)癌が、膀胱癌であり、癌が、20以上のHスコアを有し;
h)癌が、膀胱癌であり、癌が、10~19のHスコアを有し;または
i)癌が、膀胱癌であり、癌が、<10のHスコアを有する、実施形態63~69のいずれか1項に記載の組成物。
【0318】
71.有効量のFGFR2阻害剤を対象に投与することを含む、癌を有する対象の腫瘍組織中のNK細胞及び/またはPD-L1陽性細胞の数を増加させる方法。
【0319】
72.FGFR2阻害剤が、実施形態14~31のいずれか1項に記載の阻害剤である、実施形態71に記載の方法。
【0320】
73.方法が、腫瘍増殖を阻害する、または対象における少なくとも1つの腫瘍体積を減少させる、実施形態71または72に記載の方法。
【0321】
74.癌が、乳癌、胃癌、非小細胞肺癌、黒色腫、頭頸部の扁平上皮癌、卵巣癌、膵癌、腎細胞癌、肝細胞癌、膀胱癌、胆管癌、食道癌、及び子宮内膜癌から選択される、実施形態73に記載の方法。
【0322】
75.(a)癌が、FGFR2遺伝子増幅の存在下もしくは不在下のいずれかで、FGFR2IIIbを過剰発現することが予め決定されている、または(b)方法が、癌がFGFR2IIIbを過剰発現するかどうかを決定するさらなる工程を含み、FGFR2遺伝子が腫瘍細胞中で増幅されるかどうかを決定するさらなる工程も任意に含む、実施形態71~74のいずれか1項に記載の方法。
【0323】
76.FGFR2IIIb過剰発現が、免疫組織化学(IHC)によって決定される、実施形態75に記載の方法。
【0324】
77.過剰発現が、少なくとも10%の腫瘍細胞中、例えば、少なくとも20%、30%、40%、または50%の腫瘍細胞中で1+、2+、または3+のIHCシグナルによって決定される、実施形態76に記載の方法。
【0325】
78.FGFR2遺伝子増幅が、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)を用いて、FGFR2対染色体10セントロメア(CEN10)の比によって決定され、FISHによって決定されたFGFR2/CEN10比が2以上である場合には、FGFR2遺伝子が増幅したと見なされる、実施形態75~77のいずれか1項に記載の方法。
【0326】
79.癌が、胃癌または膀胱癌である、実施形態75~78のいずれか1項に記載の方法。
【0327】
80.a)癌が、胃癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナルを有し;
b)癌が、胃癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナルを有し、FGFR2遺伝子が増幅され;
c)癌が、胃癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナルを有し、FGFR2遺伝子が増幅されず;
d)癌が、胃癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で1+もしくは2+のIHCシグナルを有し;
e)癌が、膀胱癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で1+のIHCシグナルを有し;
f)癌が、膀胱癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で2+のIHCシグナルを有し;
g)癌が、膀胱癌であり、癌が、20以上のHスコアを有し;
h)癌が、膀胱癌であり、癌が、10~19のHスコアを有し;または
i)癌が、膀胱癌であり、癌が、<10のHスコアを有する、実施形態75~79のいずれか1項に記載の方法。
【0328】
81.方法が、FGFR2抗体の投与後、対象から少なくとも1つの腫瘍試料を得て、試料中のNK細胞及び/またはPD-L1陽性細胞及び/またはCD8+T細胞の数を決定すること、ならびに、NK細胞及び/またはPD-L1陽性細胞及び/またはCD8+T細胞の数がFGFR2抗体投与前の試料に対して増加している場合、少なくとも1つのPD-1/PD-L1阻害剤などの少なくとも1つの免疫刺激剤を対象に投与することをさらに含む、実施形態71~80のいずれか1項に記載の方法。
【0329】
82.FGFR2阻害剤を対象に投与すること、ならびに、対象が、FGFR2抗体投与前の試料に対してNK細胞及び/またはPD-L1陽性細胞及び/またはCD8+T細胞の数が増加していると判断される場合、少なくとも1つのPD-1/PD-L1阻害剤などの少なくとも1つの免疫刺激剤を対象に投与することを含む、対象における癌の治療方法。
【0330】
83.FGFR2阻害剤が、実施形態14~31のいずれか1項に記載の阻害剤である、実施形態82に記載の方法。
【0331】
84.少なくとも1つの免疫刺激剤が、実施形態2~13のいずれか1項に記載の少なくとも1つのPD-1/PD-L1阻害剤を含む、実施形態82または83に記載の方法。
【0332】
85.FGFR2阻害剤及び少なくとも1つの免疫刺激剤が、実施形態38または39に記載の方法に従って投与される、実施形態82~84のいずれか1項に記載の方法。
【0333】
86.増強されたADCC活性を有するFGFR2抗体であるFGFR2阻害剤を投与することを含む、癌対象の腫瘍組織中のPD-L1陽性細胞、NK細胞、CD3+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、及びマクロファージの1つ以上の数を増加させる方法。
【0334】
87.抗体が、実施形態15~28のいずれか1項に記載の抗体である、実施形態86に記載の方法。
【0335】
88.マウス腫瘍モデルにおけるFGFR2抗体の投与により、対照と比較して、腫瘍組織中のPD-L1陽性細胞、NK細胞、CD3+T細胞、CD8+T細胞、CD4+T細胞、及びマクロファージの1つ以上の数を増加させる、及び/または腫瘍組織中のリンパ系細胞対骨髄系細胞の比を増加させる、実施形態86または87に記載の方法。
【0336】
89.対象が、乳癌、胃癌、非小細胞肺癌、黒色腫、頭頸部の扁平上皮癌、卵巣癌、膵癌、腎細胞癌、肝細胞癌、膀胱癌、胆管癌、食道癌、または子宮内膜癌を罹患している、実施形態86~88のいずれか1項に記載の方法。
【0337】
90.(a)癌が、FGFR2遺伝子増幅の存在下もしくは不在下のいずれかで、FGFR2IIIbを過剰発現することが予め決定されている、または(b)方法が、癌がFGFR2IIIbを過剰発現するかどうかを決定するさらなる工程を含み、FGFR2遺伝子が腫瘍細胞中で増幅されるかどうかを決定するさらなる工程も任意に含む、実施形態86~89のいずれか1項に記載の方法。
【0338】
91.FGFR2IIIb過剰発現が、免疫組織化学(IHC)によって決定される、実施形態90に記載の方法。
【0339】
92.過剰発現が、少なくとも10%の腫瘍細胞中、例えば、少なくとも20%、30%、40%、または50%の腫瘍細胞中で1+、2+、または3+のIHCシグナルによって決定される、実施形態91に記載の方法。
【0340】
93.FGFR2遺伝子増幅が、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)を用いて、FGFR2対染色体10セントロメア(CEN10)の比によって決定され、FISHによって決定されたFGFR2/CEN10比が2以上である場合には、FGFR2遺伝子が増幅したと見なされる、実施形態90~92のいずれか1項に記載の方法。
【0341】
94.対象が、胃癌または膀胱癌を罹患している、実施形態89~93のいずれか1項に記載の方法。
【0342】
95.a)癌が、胃癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナルを有し;
b)癌が、胃癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナルを有し、FGFR2遺伝子が増幅され;
c)癌が、胃癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナルを有し、FGFR2遺伝子が増幅されず;
d)癌が、胃癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で1+もしくは2+のIHCシグナルを有し;
e)癌が、膀胱癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で1+のIHCシグナルを有し;
f)癌が、膀胱癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で2+のIHCシグナルを有し;
g)癌が、膀胱癌であり、癌が、20以上のHスコアを有し;
h)癌が、膀胱癌であり、癌が、10~19のHスコアを有し;または
i)癌が、膀胱癌であり、癌が、<10のHスコアを有する、実施形態90~94のいずれか1項に記載の方法。
【0343】
96.FGFR2抗体が、毎週、2週間毎、3週間毎、または月1回、少なくとも0.1、0.3、0.5、1、2、3、4、5、6、10、15、20、25、もしくは30mg/kgの用量で、または6~10mg/kg、10~15mg/kg、もしくは6~15mg/kgなどのmg/kg用量のいずれか2つで囲まれた範囲で投与される、実施形態86~95のいずれか1項に記載の方法。
【0344】
97.胃癌または膀胱癌患者が、FGFR2阻害剤による治療に応答するかどうかの決定方法であって、
胃癌または膀胱癌がIHCによってFGFR2IIIbを過剰発現するかどうかを決定することを含み、
過剰発現が、癌の少なくとも10%の腫瘍細胞、例えば、少なくとも20%、30%、40%、または50%の腫瘍細胞中で1+、2+、または3+のIHCシグナルによって決定される、前記方法。
【0345】
98.FGFR2遺伝子が、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)を用いて、FGFR2対染色体10セントロメア(CEN10)の比を得ることによって増幅されるかどうかを決定することをさらに含み、
FISHによって決定されたFGFR2/CEN10比が2以上である場合、FGFR2遺伝子が増幅したと見なされる、実施形態97に記載の方法。
【0346】
99.a)癌が、胃癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナルを有し;
b)癌が、胃癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナルを有し、FGFR2遺伝子が増幅され;
c)癌が、胃癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+のIHCシグナルを有し、FGFR2遺伝子が増幅されず;
d)癌が、胃癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で1+もしくは2+のIHCシグナルを有し;
e)癌が、膀胱癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で1+のIHCシグナルを有し;
f)癌が、膀胱癌であり、癌が、少なくとも10%の腫瘍細胞中で2+のIHCシグナルを有し;
g)癌が、膀胱癌であり、癌が、20以上のHスコアを有し;
h)癌が、膀胱癌であり、癌が、10~19のHスコアを有し;または
i)癌が、膀胱癌であり、癌が、<10のHスコアを有する場合、
患者が、FGFR2IIIb抗体治療に応答すると決定される、実施形態97または98に記載の方法。
【0347】
100.FGFR2阻害剤が、実施形態14~31のいずれか1項に記載の阻害剤である、実施形態97~99のいずれか1項に記載の方法。
【0348】
101.治療が、少なくとも0.1、0.3、0.5、1、2、3、4、5、6、10、15、20、25、もしくは30mg/kgの用量で、または6~10mg/kg、10~15mg/kg、もしくは6~15mg/kgなどのmg/kg用量のいずれか2つで囲まれた範囲でFGFR2阻害剤を投与することを含む、実施形態97~100のいずれか1項に記載の方法。
【0349】
102.治療が、実施形態71、82、または86に記載の方法を行うことを含む、実施形態97~101のいずれか1項に記載の方法。
【0350】
103.治療が、少なくとも1つの免疫刺激剤を対象に投与することをさらに含む、実施形態97~101のいずれか1項に記載の方法。
【0351】
104.少なくとも1つの免疫刺激剤が、実施形態2~13のいずれか1項に記載の免疫刺激剤を含む、実施形態103に記載の方法。
【0352】
治療が、実施形態32~44のいずれか1項に記載の方法に従ってFGFR2阻害剤及び少なくとも1つの免疫刺激剤を投与することを含み、または治療が、実施形態60~62のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、実施形態103に記載の方法。
【実施例
【0353】
下記に説明する実施例は、純粋に本発明の例示を目的とし、決して本発明を制限するとみなすべきものではない。これらの実施例は、下記の実験が実施された全てまたは唯一の実験であることを示すものではない。使用する数字(例えば、量や温度など)に関して正確性を確保するよう努力しているが、ある程度の実験誤差及び偏差は考慮すべきである。特に指示のない限り、部は質量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
【0354】
実施例1:ADCC活性は、4T1マウス乳腫瘍モデルにおける腫瘍増殖阻害に必要である
70匹の8週齢の雌BALB/cマウス(IACUCカテゴリー:AUP 2011 #01-03)をCharles River Laboratories(Wilmington、MA、USA)から購入した。動物を到着時に少なくとも3日間順応させて、食料と水に自由にアクセスできるように1ケージあたり5匹の動物を収容した。一度順応させると、動物の体重を測り、腫瘍細胞移植前に剃った。
【0355】
マウス株BALB/cfC3H由来の乳腫瘍株4T1を腫瘍モデルとして使用し、ATCC(Manassas、VA、USA:カタログ番号CRL-2539)から得た。10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを有するRPMI 1640培地(Mediatech、Inc.、Manassas、VA、USA;Cat.No.10-041-CV)中で37℃にて細胞を培養した。
【0356】
マウスの頭部から4番目の乳腺乳頭(乳頭)下に5×10個の4T1細胞を同所注射によって各マウスに接種した。その後、マウス腫瘍体積及び体重は、腫瘍体積が100mm+/-25mmを測定するまで定期的に監視した。腫瘍が100mm+/-25mmに到達すると、マウスを腫瘍サイズに従って投与のための4つの群に分類した。第1群には、20mg/kgのFc-G1抗体を投与し(腹腔内(IP)、2週間に1回(BIW))、第2群には、20mg/kgの、配列番号6~11の重鎖及び軽鎖HVRを有する非フコシル化FGFR2抗体(抗FGFR2)を投与し(IP、BIW)、ならびに第3群には、20mg/kgの、この分子がADCC活性を刺激できないようにするN297Q突然変異を有するFGFR2抗体(抗FGFR2-N297Q)を投与した(IP、BIW)。
【0357】
全体として、抗FGFR2による処置は、FcG1対照と比較して、腫瘍増殖の約30%阻害(P<0.001)をもたらすが、抗FGFR2-N297Qによる処置は、対照と比較して、腫瘍増殖を阻害しなかった(図1a~bを参照)。これらのデータは、抗FGFR2腫瘍増殖阻害の機序としてADCCの役割を支援する。
【0358】
実施例2a:抗FGFR2抗体への暴露は、腫瘍組織内のNK細胞の増加、及びPD-L1発現細胞の増加をもたらす
免疫組織化学分析では、前述のような同所注射によって5×10個の4T1細胞をBALB/cfC3Hマウスに接種した。腫瘍が100mm+/-25mmに到達すると(0日目)、マウスを腫瘍サイズに従って2つの投与群に分類した:ビヒクルまたは10mg/kgの抗FGFR2(IP)。各群を、(a)0日目に1用量もしくは2用量を受けたマウスまたは(b)3日目に1用量もしくは2用量を受けたマウスに細分し、1日目または4日目にそれぞれ投与した24時間後にマウスを安楽死させ、組織学またはFACS分析用に処理した。
【0359】
組織学では、1日目及び4日目に、それぞれ第1及び第2処置の24時間後にマウスをCOで安楽死させた後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4で灌流させた。簡潔に言えば、マウスの胸部を迅速に開き、20ゲージの針を備えたシリンジを使用して、左心室の切開を介して、40mLのPBSを大動脈に注入した。右心房の開口部を介して血液及びPBSを外に出した。4T1同所性腫瘍を除去し、4℃で10%中性緩衝ホルマリン中に浸漬した。2時間後、組織をPBSで3回濯いだ後、PBS中の30%スクロース中に一晩移した。翌日、腫瘍をOCT化合物中で凍結し、-80℃で保存した。
【0360】
各腫瘍の20μm厚の連続切片に切った。切片をスーパーフロストプラススライド(VWR)上で1~2時間乾燥させた。0.3% Triton X-100を含有するPBSで試験片を透過処理し、室温で1時間、PBS 0.3% Triton X-100(ブロッキング溶液)中の5%ヤギ正常血清でインキュベートし、非特異的抗体結合を遮断した。1時間後、ブロッキング溶液を除去し、切片を一次抗体中で一晩インキュベートした。NK細胞を検出するため、ブロッキング溶液中で1:500に希釈したラット抗NKp46(CD335;Biolegend、cat#137602)で切片をインキュベートした。PD-L1を検出するため、ブロッキング溶液中で1:500に希釈したラット抗PD-L1(eBioscience、cat#14-5982-82)で切片をインキュベートした。NK細胞及びPD-L1染色は、両方の一次抗体がラット中で生成されたため、連続切片で行った。陰性対照試験片のみの二次抗体は、一次抗体ではなく5%正常血清中でインキュベートした。
【0361】
翌日、試験片を0.3% Triton X-100を含有するPBSで濯いだ後、PBS中で1:400に希釈したAlexa Fluor 594標識ヤギ抗ラット(Jackson Immuno Research、cat#112-585-167)二次抗体、及びAlexa Fluor 488標識ヤギ抗ウサギ(Jackson Immuno Research、cat#111-545-144)二次抗体で室温にて4時間インキュベートした。試験片を0.3% Triton X-100を含有するPBSで濯いだ後、1%パラホルムアルデヒド(PFA)中で固定し、PBSでもう一度濯ぎ、DAPIを含むベクタシールド(Vector、H-1200)でマウントした。DAPIを使用して、細胞核を標識した。
【0362】
AxioCam(登録商標)HRcカメラを備えたZeiss Axiophot(登録商標)2+蛍光顕微鏡で試験片を調べた。腫瘍内のNKp46+及びPD-L1+細胞の量及び分布を示す実験群ごとの代表的な画像を収集し、図2a~2dに示す。
【0363】
ビヒクルを注入したマウス由来の4T1腫瘍では、最小限に散在したNKp46+NK細胞を検出し、これらの細胞のほとんどは、腫瘍周辺に位置していた(図2a)。比較すると、10mg/kgで抗FGFR2による1日の処置後、NKp46+NK細胞がより多数であった。これらの細胞のほとんどは腫瘍端で見つかったが、いくつかは腫瘍の中心に浸潤していた(図2aを参照)。第2用量の抗FGFR2の4日後に同様の結果が観察された(図2b)。
【0364】
PD-L1染色により、ビヒクルで1日処置した4T1腫瘍では、PD-L1免疫反応性は、腫瘍内の少数の細胞でしか見られないことが分かった(図2c)。これに対して、1用量の抗FGFR2の24時間後、PD-L1陽性細胞が腫瘍の中心内でより多数であった(図2c)。処置を開始した4日後に同様の結果が観察された(図2d)。
【0365】
NK細胞の増加を定量化するための直交アッセイとして、前述のように2用量の生理食塩水または10mg/Kgの抗FGFR2を受けた4T1担癌マウスでFACSを行った。FACS分析では、腫瘍を1~2mm片に切り、振盪培養器中の10% FBS、50U/mL DNAse I、及び250U/mLコラゲナーゼIを有するDMEM(Worthington Biochemical Corporation、Lakewood、NJ)に30分間、37℃で載置した。70μmナイロンメッシュストレーナーに細胞を通過させ、単細胞懸濁液を、標準プロトコルに従って、BD Biosciences(San Jose、CA):CD45(clone 30-F11)及びCD11b(1D3);Affymtrix eBioscience(San Diego、CA):CD16/32(FC受容体ブロック、93)、CD335(NKp46、29A1.4)、CD8a(53.67)、及びCD3e(145-2C11);R&D Systems(Minneapolis、MN):EphA2(233720);またはThermoFisher Scientific(Grand Island、NY):Live/Dead Aquaから購入した抗体で染色した。細胞を固定し、翌日、BD LSRII上で獲得した。以下のゲーティング戦略:CD45+EphA2-、一重項(FSC-H対FSC-A)、生細胞(生/死陰性)、及びCD11b-によりFlowJo(V10、Ashland、OR)を用いて結果を分析し、生きたリンパ球を単離した。NK細胞をNKp46+CD3-としてゲーティングし、CD45+生きた単細胞のパーセントとして表した。
【0366】
図3に示すように、抗FGFR2で処置した腫瘍は、生理食塩水対照で処置した腫瘍と比較して、NK細胞の増加を示した。
【0367】
実施例2b:抗FGFR2抗体及び非抗FGFR2 N297Qへの暴露は、腫瘍組織内のNK細胞、T細胞の増加、及びPD-L1発現細胞の増加をもたらす
上述した実施例1と同様に、BALB/cfC3Hマウスに同所注射によって5×10個の4T1細胞を接種した。腫瘍が100mm+/-25mmに到達すると(0日目)、マウスを腫瘍サイズに従って3つの投与群に分類した:ビヒクル(対照群)、10mg/kgの非フコシル化抗FGFR2抗体(IP)(抗FGFR2群)、及び10mg/kgの抗FGFR2 N297Q抗体(抗FGFR2 N297Q群)。N297Q修飾は、抗体のエフェクター機能を排除することを意図する抗体のFcドメインにおける突然変異である。
【0368】
各群を、(a)0日目に1用量もしくは2用量を受けたマウスまたは(b)3日目に1用量もしくは2用量を受けたマウスに細分し、1日目または4日目にそれぞれ投与した24時間後にマウスを安楽死させ、組織学またはFACS分析用に処理した。
【0369】
組織学では、1日目及び4日目に、それぞれ第1及び第2処置の24時間後にマウスをCOで安楽死させた後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4で灌流させた。簡潔に言えば、マウスの胸部を迅速に開き、20ゲージの針を備えたシリンジを使用して、左心室の切開を介して、40mLのPBSを大動脈に注入した。右心房の開口部を介して血液及びPBSを外に出した。4T1同所性腫瘍を除去し、4℃で10%中性緩衝ホルマリン中に浸漬した。2時間後、組織をPBSで3回濯いだ後、PBS中の30%スクロース中に一晩移した。翌日、腫瘍をOCT化合物中で凍結し、-80Cで保存した。
【0370】
各腫瘍の20μm厚の連続切片に切った。切片をスーパーフロストプラススライド(VWR)上で1~2時間乾燥させた。0.3% Triton X-100を含有するPBSで試験片を透過処理し、室温で1時間、PBS 0.3% Triton X-100(ブロッキング溶液)中の5%ヤギ正常血清でインキュベートし、非特異的抗体結合を遮断した。1時間後、ブロッキング溶液を除去し、切片を一次抗体中で一晩インキュベートした。NK細胞を検出するため、ブロッキング溶液中で1:500に希釈したラット抗NKp46(CD335;Biolegend、cat#137602)で切片をインキュベートした。PD-L1を検出するため、ブロッキング溶液中で1:500に希釈したラット抗PD-L1(eBioscience、cat#14-5982-82)で切片をインキュベートした。CD3+T細胞を検出するため、ブロッキング溶液中で1:500に希釈したハムスター抗CD3抗体(BD biosciences、cat#553058)で切片をインキュベートした。CD4+T細胞を検出するため、ブロッキング溶液中で1:500に希釈したラット抗CD4抗体(AbD Serotec、cat#MCA4635)で切片をインキュベートした。CD8+T細胞を検出するため、ブロッキング溶液中で1:500に希釈したラット抗CD8抗体(Abcam、cat#ab22378)で切片をインキュベートした。NK細胞及びPD-L1染色は、両方の一次抗体がラット中で生成されたため、連続切片で行った。CD3及びCD4陽性細胞を同じ切片で一緒に染色した。CD3及びCD8染色はまた、同じ切片で行った。陰性対照試験片のみの二次抗体は、一次抗体ではなく5%正常血清中でインキュベートした。
【0371】
翌日、試験片を0.3% Triton X-100を含有するPBSで濯いだ後、PBS中で1:400に希釈したAlexa Fluor 594標識ヤギ抗ラット(Jackson Immuno Research、cat#112-585-167)二次抗体、及びAlexa Fluor 488標識ヤギ抗ハムスター(Jackson Immuno Research、cat#127-545-160)二次抗体で室温にて4時間インキュベートした。試験片を0.3% Triton X-100を含有するPBSで濯いだ後、1%パラホルムアルデヒド(PFA)中で固定し、PBSでもう一度濯ぎ、DAPIを含むベクタシールド(Vector、H-1200)でマウントした。DAPIを使用して、細胞核を標識した。
【0372】
AxioCam(登録商標)HRcカメラを備えたZeiss Axiophot(登録商標)2+蛍光顕微鏡で試験片を調べた。腫瘍内のNKp46+及びPD-L1+細胞の量及び分布を示す実験群ごとの代表的な画像を収集し、図5a~5bに示す。
【0373】
ビヒクルまたは抗FGFR2 N297Qを注入したマウス由来の4T1腫瘍では、最小限に散在したNKp46+NK細胞を処置の1日後に検出し、これらの細胞のほとんどは、腫瘍周辺に位置していた(図5a)。比較すると、10mg/kgで抗FGFR2による1日の処置後、NKp46+NK細胞がより多数であった。これらの細胞のほとんどは腫瘍端で見つかったが、いくつかは腫瘍の中心に浸潤していた(図5aを参照)。第2用量の抗FGFR2の4日後に同様の結果が観察された(図5b)。
【0374】
PD-L1染色により、ビヒクルまたは抗FGFR2 N297Qで1日処置した4T1腫瘍では、PD-L1免疫反応性は、腫瘍内の少数の細胞でしか見られないことが分かった(図5a)。これに対して、1用量の抗FGFR2の24時間後、PD-L1陽性細胞が腫瘍の中心内でより多数であった。処置を開始した4日後に同様の結果が観察された(図5b)。
【0375】
CD3、CD8、及びCD4染色により、ビヒクルまたは抗FGFR2 N297Qで1日または4日処置した腫瘍では、T細胞浸潤は、腫瘍の周辺のみに残されていることが分かった。これに対して、4日目に、抗FGFR2で処置した腫瘍は、腫瘍の中心内にCD3、CD8、及びCD4陽性T細胞の浸潤をもたらした(図6a~6b)。
【0376】
NK細胞の増加を定量化するための直交アッセイとして、前述のように2用量の生理食塩水または10mg/Kgの抗FGFR2もしくは抗FGFR2 N297Qを受けた4T1担癌マウスでFACSを行った。FACS分析では、腫瘍を1~2mm片に切り、振盪培養器中の10% FBS、50U/mL DNAse I、及び250U/mLコラゲナーゼIを有するDMEM(Worthington Biochemical Corporation、Lakewood、NJ)に30分間、37℃で載置した。70μmナイロンメッシュストレーナーに細胞を通過させ、単細胞懸濁液を、標準プロトコルに従って、BD Biosciences(San Jose、CA):CD45(clone 30-F11)CD4、(GK1.5)及びCD11b(1D3);Affymtrix eBioscience(San Diego、CA):CD16/32(FC受容体ブロック、93)、CD335(NKp46、29A1.4)、CD8a(53.67)、及びCD3e(145-2C11);R&D Systems(Minneapolis、MN):EphA2(233720);またはThermoFisher Scientific(Grand Island、NY):Live/Dead Aquaから購入した抗体で染色した。細胞を固定し、翌日、BD LSRII上で獲得した。以下のゲーティング戦略:CD45+EphA2-、一重項(FSC-H対FSC-A)、生細胞(生/死陰性)、及びCD11b-によりFlowJo(V10、Ashland、OR)を用いて結果を分析し、生きたリンパ球を単離した。NK細胞は、NKp46+CD3-としてゲーティングした。CD4及びCD8T細胞は、CD3+細胞でゲーティングし、各サブセットは、CD45+生きた単細胞のパーセントとして表した。
【0377】
図10aに示すように、抗FGFR2で処置した腫瘍は、生理食塩水対照または抗FGFR2 N297Qで処置した腫瘍と比較して、NK細胞の増加を示した。加えて、CD3、CD8、及びCD4 T細胞は、第2用量(図7~9)の24時間後に上昇し、ビヒクルまたは抗FGFR2 N297Qと比較して、抗FGFR2処置でリンパ系細胞対骨髄系細胞の比が優先的に増加した(図10b~c)。
【0378】
実施例2c:抗FGFR2抗体及び非抗FGFR2 N297Q抗体への暴露は、腫瘍組織内のF480+マクロファージを増加させる
4T1腫瘍中のマクロファージを検出するため、ブロッキング溶液中で1:500に希釈したラット抗F480抗体(Bio-Rad AbD Serotec Inc、cat# MCA497R)で切片をインキュベートした。NK細胞、PD-L1、及びF480染色は、これら全ての一次抗体がラット中で生成されたため、連続切片で行った。
【0379】
対照で処置したマウス由来の4T1腫瘍では、豊富なF480+マクロファージが、腫瘍全体に検出された(図11、上パネル)。比較すると、10mg/kgの抗FGFR2による4日間の処置後、腫瘍内で検出されたF480+細胞の数は増加した(図11、中パネル)。この効果は、10mg/kgの抗FGFR2抗体で1日処置した4T1担癌マウス、または抗FGFR2-N297Q突然変異体抗体で1日もしくは4日処置した4T1担癌マウスでは見られなかった(図11、下パネル)。
【0380】
実施例3:乳房4T1同系腫瘍モデルにおけるFGFR2抗体とPD-1抗体の組み合わせ
この実施例では、非フコシル化FGFR2抗体(抗FGFR2)と抗PD-1抗体(Bio X Cell、West Lebanon、NH、USA、クローンRMP1-14)の組み合わせの抗腫瘍効果は、免疫適格マウスにおける乳癌の4T1同系ネズミモデルで評価した。4T1モデルは、FGFR2-IIIbの適度な過剰発現を示すが、FGFR2増幅されない。
【0381】
70匹の8週齢の雌BALB/cマウスをCharles River Laboratories(Wilmington、MA、USA)から購入した。動物を到着時に少なくとも3日間順応させて、食料及び水に自由にアクセスできるように1ケージあたり5匹の動物を収容した。一度順応させると、動物の体重を測り、腫瘍細胞移植前に剃った。
【0382】
マウス株BALB/cfC3H由来の乳腫瘍株4T1を腫瘍モデルとして使用し、ATCC(Manassas、VA、USA:カタログ番号CRL-2539)から得た。10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを有するRPMI 1640培地(Mediatech、Inc.、Manassas、VA、USA;Cat.No.10-041-CV)中で37℃にて細胞を培養した。
【0383】
マウスの頭部から4番目の乳腺乳頭(乳頭)下に5×10個の4T1細胞を同所注射によって各マウスに接種した。その後、マウス腫瘍体積及び体重は、腫瘍体積が150mm+/-25mmを測定するまで定期的に監視した。腫瘍が150mm+/-25mmに到達すると、マウスを腫瘍サイズに従って投与のための4つの群に分類した。第1群には、10mg/kgのIg-FC対照を投与し(腹腔内(IP)、2週間に1回(BIW))、第2群には、5mg/kgの抗PD-1抗体(IP、0、3、及び7日目)を投与し、第3群には10mg/kgのFGFR2抗体を投与し(IP、BIW)、ならびに第4群には、それぞれ5及び10mg/kgの抗PD-1とFGFR2抗体の組み合わせを投与した。
【0384】
腫瘍体積は、移植後12日目(投与0日目)、移植後15日目、及び移植後18日目に測定した。図4a及びbは、18日目までに、FGFR2抗体は、Ig-FC対照群と比較して、マウスにおける4T1腫瘍体積を有意に減少させたことを示す(t検定によって、それぞれ、P<0.001またはP=0.01)。FGFR2抗体と抗PD-1抗体の組み合わせは、FGFR2抗体のみと比較して、18日目までに腫瘍体積をさらに減少させた(それぞれ、P=0.08)(図4a~bを参照)。FGFR2抗体と抗PD-1抗体の組み合わせは、抗PD-1抗体のみと比較して、18日目までに腫瘍体積をさらに減少させた(P<0.01)。
【0385】
全体として、FGFR2抗体による処置は、IgFCと比較して、腫瘍増殖の約25%阻害をもたらしたが、抗PD-1抗体による処置は、対照と比較して、腫瘍増殖の0%阻害をもたらした。抗FGFR2と抗PD-1抗体の両方による処理は、腫瘍増殖を約40%阻害した。これは、併用処置が少なくとも相加的な利益を有することを示している。
【0386】
以下の表は、Fc-G1対照と比較した部分腫瘍体積(FTV)の分析を示す。
a:FTV=部分腫瘍体積=平均TV処置/平均TV対照
b:腫瘍細胞移植後の日数
c:期待値=(平均FTV薬物1)×(平均FTV薬物2)
d:観測値=薬物1+薬物2の組み合わせに対する平均FTV
e:報告値=期待値(c)÷観測値(d);値>1は相乗的応答を示すが、値=1は相加的応答を示し、値<1は拮抗応答を示す
【0387】
本実験は、NK細胞枯渇腫瘍組織に対する抗FGFR2抗体の効果を試験した。マウス株BALB/cfC3H由来の乳腫瘍株4T1を腫瘍モデルとして使用し、ATCC(Manassas、VA、USA:カタログ番号CRL-2539)から得た。10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを有するRPMI 1640培地(Mediatech、Inc.、Manassas、VA、USA;Cat.No.10-041-CV)中で37℃にて細胞を培養した。
【0388】
マウスの頭部から4番目の乳腺乳頭(乳頭)下に5×10個の4T1細胞を同所注射によって各マウスに接種した。その後、マウス腫瘍体積及び体重は、腫瘍体積が100mm+/-25mmを測定するまで定期的に監視した。腫瘍が125mm+/-25mmに到達すると、マウスを腫瘍サイズに従って投与のための4つの群に分類した(0日目)。1群には、10mg/kgのヒトFc-G1対照抗体(0日目及び3日目に腹腔内(IP))を投与した。2群には、50mg/kgのウサギ抗アシアロGM1抗体(Wako Chemicals、Osaka、Japan)、BalbCマウス由来のNK細胞を枯渇させるように設計された抗体を0日目に静脈内に1回投与した。3群には、10mg/kgの抗FGFR2(0日目及び3日目にIP)を投与した。4群には、50mg/kgのウサギ抗アシアロGM1抗体(0日目)を、10mg/kgの抗FGFR2(0日目及び3日目にIP)と組み合わせて投与した。
【0389】
組織学では、4日目に、第2処置の24時間後にマウスをCOで安楽死させた後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4で灌流させた。簡潔に言えば、マウスの胸部を迅速に開き、20ゲージの針を備えたシリンジを使用して、左心室の切開を介して、40mLのPBSを大動脈に注入した。右心房の開口部を介して血液及びPBSを外に出した。4T1同所性腫瘍を除去し、4℃で10%中性緩衝ホルマリン中に浸漬した。2時間後、組織をPBSで3回濯いだ後、PBS中の30%スクロース中に一晩移した。翌日、腫瘍をOCT化合物中で凍結し、-80Cで保存した。
【0390】
各腫瘍の20μm厚の連続切片に切った。切片をスーパーフロストプラススライド(VWR)上で1~2時間乾燥させた。0.3% Triton X-100を含有するPBSで試験片を透過処理し、室温で1時間、PBS 0.3% Triton X-100(ブロッキング溶液)中の5%ヤギ正常血清でインキュベートし、非特異的抗体結合を遮断した。1時間後、ブロッキング溶液を除去し、切片を一次抗体中で一晩インキュベートした。NK細胞を検出するため、ブロッキング溶液中で1:500に希釈したラット抗NKp46(CD335;Biolegend、cat#137602)で切片をインキュベートした。PD-L1を検出するため、ブロッキング溶液中で1:500に希釈したラット抗PD-L1(eBioscience、cat#14-5982-82)で切片をインキュベートした。CD3+T細胞を検出するため、ブロッキング溶液中で1:500に希釈したハムスター抗CD3抗体(BD biosciences、cat#553058)で切片をインキュベートした。NK細胞及びPD-L1染色は、これら全ての一次抗体がラット中で生成されたため、連続切片で行った。陰性対照試験片のみの二次抗体は、一次抗体ではなく5%正常血清中でインキュベートした。
【0391】
翌日、試験片を0.3% Triton X-100を含有するPBSで濯いだ後、PBS中で1:400に希釈したAlexa Fluor 594標識ヤギ抗ラット(Jackson Immuno Research、cat#112-585-167)二次抗体、及びAlexa Fluor 488標識ヤギ抗ハムスター(Jackson Immuno Research、cat#127-545-160)二次抗体で室温にて4時間インキュベートした。試験片を0.3% Triton X-100を含有するPBSで濯いだ後、1%パラホルムアルデヒド(PFA)中で固定し、PBSでもう一度濯ぎ、DAPIを含むベクタシールド(Vector、H-1200)でマウントした。DAPIを使用して、細胞核を標識した。
【0392】
AxioCam(登録商標)HRcカメラを備えたZeiss Axiophot(登録商標)2+蛍光顕微鏡で試験片を調べた。腫瘍内のNKp46+、CD3+、及びPD-L1+細胞の量及び分布を示す実験群ごとの代表的な画像を収集し、図12~14に示す。
【0393】
Fc-G1対照抗体を注入したマウス由来の4T1腫瘍では、最小限に散在したNKp46+NK細胞を腫瘍内に検出した(図12、上パネル)。50mg/kg用量のウサギ抗アシアロGM1抗体の投与は、対照と比較して、NKp46+NK細胞の数を減少させた(図12、2番目のパネル)。10mg/kgの抗FGFR2による4日間の処置後、NKp46+NK細胞がより多数であった(図12を参照、3番目のパネル)。しかしながら、この増加は、抗FGFR2をウサギ抗アシアロGM1抗体及び抗FGFR2と組み合わせた場合には観察されなかった。併用処置後、NKp46+NK浸潤細胞の数は、対照と同等であった(図12、4番目のパネル)。
【0394】
CD3染色により、対照で4日間処置した4T1腫瘍では、僅かにまばらなCD3+T細胞が腫瘍内で見られ、これらのほとんどは、腫瘍周辺に位置していた(図13、上パネル)。50mg/kg用量のウサギ抗アシアロGM1抗体による処置は、対照と比較して、CD3+T細胞の数に影響を与えなかった(図13、2番目のパネル)。10mg/kgの抗FGFR2による4日間の処置後、CD3+T浸潤細胞の数は、対照と同等であった(図13、3番目のパネル)。比較すると、抗FGFR2をウサギ抗アシアロGM1抗体と組み合わせた場合、CD3+T浸潤細胞の数は、対照と同等であった(図13、4番目のパネル)。
【0395】
PD-L1染色により、対照で4日間処置した4T1腫瘍では、PD-L1免疫反応性は、腫瘍内のまばらな細胞でしか見られなかった(図14、上パネル)。ウサギ抗アシアロGM1抗体による処置は、PD-L1免疫反応性に影響を与えなかった(図14、2番目のパネル)。抗FGFR2のみによる処置は、PD-L1陽性細胞の数を増加させたが(図14、3番目のパネル)、抗FGFR2をウサギ抗アシアロGM1抗体と組み合わせて与えた場合、PD-L1染色は、対照と同様であった(図14、4番目のパネル)。
【0396】
実施例4b:抗FGFR2抗体から腫瘍増殖の阻害は、NK細胞枯渇剤の存在下で減衰される
本実験は、4T1同系腫瘍モデルにおける抗FGFR2有効性に対するNK細胞を枯渇させる効果を試験した。マウス株BALB/cfC3H由来の乳腫瘍株4T1を腫瘍モデルとして使用し、ATCC(Manassas、VA、USA:カタログ番号CRL-2539)から得た。10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを有するRPMI 1640培地(Mediatech、Inc.、Manassas、VA、USA;Cat.No.10-041-CV)中で37℃にて細胞を培養した。
【0397】
マウスの頭部から4番目の乳腺乳頭(乳頭)下に5×10個の4T1細胞を同所注射によって各マウスに接種した。その後、マウス腫瘍体積及び体重は、腫瘍体積が100mm+/-25mmを測定するまで定期的に監視した。腫瘍が100mm+/-25mmに到達すると、マウスを腫瘍サイズに従って投与のための4つの群に分類した(0日目)。1群には、対照としてPBSを投与した(0日目及び3日目に腹腔内(IP))。2群には、50mg/kgのウサギ抗アシアロGM1抗体(Wako Chemicals、Osaka、Japan)、BalbCマウス由来のNK細胞を枯渇させるように設計された抗体を0日目に静脈内に1回投与した。3群には、10mg/kgの抗FGFR2(0日目及び3日目にIP)を投与した。4群には、50mg/kgのウサギ抗アシアロGM1抗体(0日目)を、10mg/kgの抗FGFR2(0日目及び3日目にIP)と組み合わせて投与し、腫瘍体積を隔週で監視した。
【0398】
全体として、抗FGFR2による処置は、PBS対照群及び抗アシアロGM1抗体群(P<0.05)と比較して、腫瘍増殖の約35%阻害(P<0.01)をもたらす。抗アシアロGM1抗体による処置は、PBS対照群と比較して、腫瘍負荷に対する効果は無かった。抗アシアロGM1抗体と抗FGFR2の組み合わせは、抗FGFR2群(P<0.05)と比較して、腫瘍増殖阻害の減衰をもたらした。これは、NK細胞及びADCC活性が4T1同系腫瘍モデルにおける腫瘍増殖阻害を促進するのに不可欠であることを示唆している。組織学データと組み合わせて、抗FGFR2は、自然及び適応免疫系を通じた腫瘍微小環境の改変を介して4T1腫瘍負荷を阻害する。
【0399】
実施例4c:抗FGFR2駆動腫瘍増殖阻害は、適応免疫系を欠いたCB17 SCIDマウスで鈍くなる
8週齢の雌CB17 SCIDマウスをCharles River Laboratories(Wilmington、MA、USA)から購入した。動物を到着時に少なくとも3日間順応させて、食料及び水に自由にアクセスできるように1ケージあたり5匹の動物を収容した。一度順応させると、動物の体重を測り、腫瘍細胞移植前に剃った。
【0400】
マウス由来の同系乳房腫瘍株4T1を腫瘍モデルとして使用し、ATCC(Manassas、VA、USA:カタログ番号CRL-2539)から得た。10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを有するRPMI 1640培地(Mediatech、Inc.、Manassas、VA、USA;Cat.No.10-041-CV)中で37℃にて細胞を培養した。
【0401】
マウスの頭部から4番目の乳腺乳頭(乳頭)下に5×10個の4T1細胞を同所注射によって各マウスに接種した。その後、マウス腫瘍体積及び体重は、腫瘍体積が80mm+/-25mmを測定するまで定期的に監視した。12日目に、腫瘍が80mm+/-25mmに到達すると、マウスを腫瘍サイズに従って投与のための2つの群に分類した。第1群には、ビヒクル対照を投与し、第2群には、20mg/Kgの非フコシル化抗FGFR2抗体を投与した(12日目及び15日目に腹腔内(IP))。
【0402】
BalbCマウス(実施例1)における腫瘍体積の約30%減少(P<0.001)に対して、抗FGFR2抗体による処置は、自然免疫系(NK細胞及びマクロファージ)を有するが、適応免疫細胞成分(T細胞及びB細胞)を欠いているCB17 SCIDマウスにおいて、ビヒクル対照と比較して、腫瘍増殖の約20%阻害(P<0.05)をもたらす。
【0403】
これらのデータは、抗FGFR2抗体が、自然免疫細胞を刺激して、腫瘍細胞死滅を即時に開始することができることを示唆しているが、CB17 SCIDマウスは、適応免疫系に関与することができないようであるため、抗FGFR2抗体治療に対する鈍い応答を示す。これは、抗FGFR2抗体が自然及び適応免疫系と協調して動作し、腫瘍微小環境の変化をもたらし、免疫適格マウスにおいて持続的な腫瘍増殖阻害をもたらすことをさらに示している。
【0404】
実施例5:抗FGFR2抗体で処置した、固形腫瘍が進行した癌患者の非盲検第I相試験
配列番号6~11の重鎖及び軽鎖HVRを含む非フコシル化FGFR2抗体の用量漸増研究では、任意の局所進行性または転移性の固形腫瘍またはリンパ腫を有し、かつ、標準治療が使い尽された約30人の患者を、抗体で28日サイクルにて2週間毎に治療する。研究のパート1Aでは、患者の6つのコホートに、用量漸増研究において6つの異なる用量レベル:0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、6mg/kg、10mg/kg、及び15mg/kgを投与する。28日サイクルにおける用量制限毒性のいずれかの発生について患者を評価する。臨床的に必要であれば、さらに28日サイクルを続けてもよい。
【0405】
パート1Bでは、さらなる安全性及び有効性評価を、最大で30人の胃癌患者、及び/またはFGFR2遺伝子を増幅するかもしくはFGFR2bタンパク質を過剰発現することが知られている患者で行う。このパートの対象は、パート1Aにおける6つのコホートの現在の最大用量レベルを下回る1用量レベル、すなわち、0.3、1、3、または10mg/kgを最初に受け、最大耐量がパート1Aで同定されない場合に、可能であれば、パート1Bで15mg/kgに増加させる。
【0406】
研究のパート1A及び1Bで参照用量が同定されると、パート2を開始する。パート2は、組織学的に文書化された胃癌もしくは胃食道癌または他の組織学的もしくは細胞学的に確認された固形腫瘍型を有する:(a)FGFR2増幅を伴うFGFR2b過剰発現;(b)FGFR2増幅を伴わないFGFR2b過剰発現、または(c)FGFR2b非過剰発現を有する、及び標準治療後に進行しているかもしくは標準治療に適していない局所再発もしくは転移性疾患を有する、及びRECISTバージョン1.1によって定義される測定可能な疾患も有する患者を含む。患者を3つのコホートにグループ分けする。約30人の患者は、(IHC分析によって3+と決定された)FGFR2b過剰発現、及び(FISH分析によって決定された、FGFR2対CEN10の比が≧2)FGFR2遺伝子増幅の両方を伴う胃癌を有する。約30人の患者は、FGFR2b過剰発現(IHC 3+)を伴うが、FGFR2b遺伝子増幅(おおよそ1のFISH比)の不在下の胃癌を有する。約10人の患者は、FGFR2b過剰発現(0~2+のIHC分析)を有さない。
【0407】
研究の詳細な目的、プロトコル、及び選択/除外基準は以下の通りである:
【0408】
主な目的は、固形腫瘍が進行した患者における抗体の用量漸増の安全性プロファイルを評価し、最大耐量(MTD)及び推奨用量(RD)を決定すること(パート1A);ならびに本明細書で「胃癌」と総称される胃癌または胃食道癌が進行した患者における抗体の用量漸増の安全性プロファイルを評価すること(パート1B)である。副次的な目的は、(a)胃癌患者及び他の固形腫瘍患者において静脈内投与された抗体の単回及び複数回投与のPKプロファイルを特徴付けること;(b)投与された抗体への長期暴露の安全性及び忍容性を評価すること;(c)FGFR2b選択された胃癌を有する患者における客観的奏効率(ORR)を評価すること(パート2のみ);ならびに(d)FGFR2b選択された胃癌を有する患者の応答における奏効期間を評価すること(パート2のみ)である。
【0409】
いくつかの探索的な目的は、FGFR2増幅の存在下または不在下のいずれかにおいて、FGFR2bを過剰発現する胃腫瘍を有する患者における安定した疾病率及び期間を評価すること(パート2のみ);FGFR2増幅の存在下または不在下のいずれかにおいて、FGFR2bを過剰発現する胃腫瘍を有する患者における無増悪生存期間(PFS)を評価すること(パート2のみ);ならびに(c)腫瘍組織中のFGFR2b過剰発現及びFGFR2増幅の程度と臨床成果の間の関連を探ることである。
【0410】
これは、3つのパートの非盲検の安全性、忍容性、及びPK研究である。患者は、研究のパート1(AまたはB)またはパート2のいずれかに登録されるが、パート1及び2の両方には登録されない。最長で28日(4週間)の初期スクリーニング期間後、患者を28日サイクルで2週間毎に抗体で治療する。パート1Aでは、登録された各患者の安全性評価及び用量制限毒性の発生(DLT観察期間)について28日間観察する。追加処置は、臨床的に必要な場合、その後の28日サイクルで2週間毎に投与してもよい(延長治療期間)。パート1Bでは、患者を、現在のパート1AのDLTクリア用量レベルで、28日サイクルで2週間毎に治療する。パート2では、患者を、パート1A及び1Bで得られたデータの評価後に選択された推奨用量(RD)で、28日サイクルで2週間毎に抗FGFR2抗体で治療する。
【0411】
パート1Aは、標準治療が使い尽された任意の局所進行性または転移性の固形腫瘍またはリンパ腫を有する患者における用量漸増研究である。おおよそ6用量コホートが予想され、最低で3人の患者が各コホートで登録される。予想される用量レベルは、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、6mg/kg、10mg/kg、及び15mg/kgである。安全性及びPKパラメーターの検証は、最適な標的暴露に到達するために、代替用量レベルまたは投与レジメン(例えば、低頻度の投与)でコホートを追加する決定を通知し得る。全ての用量漸増決定は、DLT、全体的な安全性、及び忍容性の評価に基づいており、各コホートに登録された最後の患者が最初の治療サイクルを完了した後に行われるであろう。用量漸増の決定は、スポンサー及び治験責任医師からなるコホート審査委員会(CRC)によって合意されるであろう。最大耐量(MTD)は、サイクル1(安全性及びPK評価期間)の間に33%未満の患者がDLTを経験する最大用量として定義される。DLTが3人の患者のうちの1人に観察された場合、3人の追加の患者が同じ用量レベルで登録されるであろう。用量レベルで治療された3~6人の患者のうち2人がDLTを経験するまで、用量漸増を続けてもよい。その後、次の低用量がMTDと見なされる。あるいは、最後のクリア用量レベルと33%を超えるDLTをもたらす用量レベルの間の中間用量は、MTDに到達したと結論を下す前に探ってもよい。MTDまたはRDに到達すると、3~10人の追加の胃癌患者を、パート2を開始する前に追加し、この用量レベルで安全性及びPKをさらに探ってもよい。
【0412】
以下のアルゴリズムが、パート1Aの用量漸増決定に使用される:
【0413】
MTDは同定されないが、薬物暴露が非臨床薬理学データまたは臨床PKプロファイルに基づいて必要と見なされたものを超える事象では、スポンサー及び治験責任医師は、用量漸増を中止することを決定してもよい。
【0414】
サイクル1(安全性及びPK評価期間)の完了時に、パート1Aの患者は、サイクル2の1日目から開始される任意の延長治療期間に参加してもよい。抗FGFR2抗体は、疾患の進行、許容できない毒性、患者もしくは医師の中止の決定、死亡、または研究の終了まで、4週間のサイクルで2週間毎に投与される。
【0415】
パート1Bの目的は、パート2を開始する前に胃癌患者における抗FGFR2抗体の安全性をさらに評価し、そのPKを評価することである。いくつかの抗体(例えば、ベバシズマブ及びトラスツズマブ)のクリアランスは、他の固形腫瘍を有する患者よりも胃癌患者においてより迅速であることが示されている。登録された患者は、腫瘍を遡及的に試験する胃癌患者、または、FGFR2遺伝子を増幅するかもしくはFGFR2bタンパク質を過剰発現することが知られている患者であってもよい。パート1A用量漸増による千鳥状の場合には、パート1Bの患者は、パート1Aで研究されているコホートの現在の最大用量レベルを下回る1用量レベルで登録される。例えば、パート1Aで研究されている現在の用量レベルが3mg/kgである場合、パート1B患者の登録は、1mg/kgの用量レベルであり;パート1Aで研究されている現在の用量レベルが6mg/kgである場合、パート1B患者の登録は、3mg/kgの用量レベルであろう。
【0416】
パート1Bでは、おおよそ3人の患者を各用量レベルで登録し、スポンサー及び治験責任医師による選択によって、1用量コホートあたり最大で6人の患者を登録してもよい。用量漸増は、パート1AでMTDが同定されない場合、パート1Bで15mg/kgまで継続してもよい。
【0417】
パート2における登録は、全体的な安全性、忍容性、PK、及び非臨床データから外挿された有効な曝露の推定値に基づいて、推奨用量(RD)がCRCによって同定された場合に開始される。RDは、パート1Aで同定されたMTDと同じである場合もあれば、そうでない場合もある。例えば、MTDに達していない場合、またはMTDでの曝露が有効性のために必要であると考えられるレベルよりもはるかに高い場合、またはパート1B患者からのデータもしくはパート1(A及びB)の両方からのその後の治療サイクルが安全性プロファイルにおいてさらなる洞察を提供する場合、RDは、MTDよりも高用量ではないが異なる用量であり得る。RDが確立されると、FGFR2b発現に基づいて選択された胃癌を有する患者を研究のパート2に登録する。抗体治療から臨床的利益の最大の可能性を有する選択された癌患者集団における安全性及び予備的有効性をさらに特徴付けるために、パート2患者を登録し、治療する。治療は、疾患の進行、許容できない毒性、患者もしくは医師の中止の決定、死亡、または研究の終了まで継続してもよい。
【0418】
パート1(AまたはB)またはパート2に登録する患者は、以下の全ての選択基準を満たさなければならない:
1)任意の研究特有の評価の前に、機関審査委員会/独立倫理委員会が承認したインフォームドコンセント形式を理解し署名する;
2)少なくとも3ヵ月の平均余命;
3)0~1のECOGパフォーマンスステータス;
4)台湾の患者を除いて、インフォームドコンセント形式に署名した時点で年齢≧18歳、患者の年齢は、インフォームドコンセント形式に署名した時点で≧20歳である必要がある;
5)性的に活発な患者(すなわち、12カ月連続の無月経によって定義された閉経を経験していないか、または永続的な避妊手術をしていない妊娠可能性のある女性、及び永続的な避妊手術をしていない男性)、2つの効果的な避妊方法を使用する意欲、そのうちの1つは、抗FGFR2抗体の最終投与後から6ヶ月まで、物理的障壁法(コンドーム、ペッサリー、または子宮頚部/ボルトキャップ)でなければならない。他の効果的な避妊方法は、スクリーニングの少なくとも6ヶ月前に永続的な避妊(子宮摘出及び/または両側卵巣摘出、または手術による両側卵管結紮、または精管切除)である。妊娠可能性のある女性患者は、研究の少なくとも90日前から安定した経口避妊薬治療または子宮内またはインプラント装置を使用しているか、生き方として性交を避ける必要がある。
6)以下の臨床検査値によって確認された十分な血液学的及び生物学的機能:
a)骨髄機能
i)ANC≧1.5×10/L
ii)血小板>100×10/L
iii)ヘモグロビン≧9g/dL
b)肝機能
i)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)≦3×正常上限(ULN);肝転移がある場合、≦5×ULN
ii)ビリルビン≦1.5×ULN
c)腎機能
i)血清クレアチニン≦1.5×ULN
7)FGFR2b発現及びFGFR2増幅(パート1A患者ごとに任意)の決定のために利用可能な腫瘍組織。
【0419】
研究のパート1A(用量漸増)に登録する患者も、以下の選択基準を満たさなければならない:
8)局所再発または転移性であり、かつ、標準治療後に進行しているかまたは標準治療に適していない組織学的または細胞学的に確認された固形腫瘍またはリンパ腫;
9)測定可能または測定不能な疾患。
【0420】
研究のパート1Bに登録する患者も、以下の選択基準を満たさなければならない:
10)組織学的に文書化された胃癌または胃食道癌;
11)FGFR2b発現及びFGFR2増幅のプロスペクティブまたはレトロスペクティブな決定のための腫瘍組織;
12)標準治療後に進行しているかまたは標準治療に適していない局所再発または転移性疾患;
13)RECISTバージョン1.1によって定義される測定可能な疾患。
【0421】
研究のパート2(用量拡大)に登録する患者も、以下の選択基準を満たさなければならない:
14)以下のものを有する組織学的に文書化された胃癌または胃食道癌
a)FGFR2増幅を伴うFGFR2b過剰発現、または
b)FGFR2増幅を伴わないFGFR2b過剰発現、または
c)FGFR2b非過剰発現;
15)標準治療後に進行しているかまたは標準治療に適していない局所再発または転移性疾患;
16)RECISTバージョン1.1によって定義される測定可能な疾患。
【0422】
パート1(AまたはB)またはパート2に登録する患者は、以下のいずれかの基準が適用される場合、除外される:
1)未処置または症候性の中枢神経系(CNS)転移。無症候性CNS転移を有する患者は、少なくとも4週間臨床的に安定しており、かつ、CNS疾患に関連する症状を管理するための外科手術、放射線療法、または任意のコルチコステロイド療法などの介入を必要としない限り適任である。
2)以下のいずれかを含む、心臓機能障害または臨床的に有意な心臓疾患:
a)抗体の初回スケジュール投与の≦6ヵ月前の不安定な狭心症
b)抗体の初回スケジュール投与の≦6ヵ月前の急性心筋梗塞
3)QTcセグメント>470ミリ秒
4)公知のヒト免疫不全ウイルス(HIV)もしくは後天性免疫不全症候群(AIDS)に関連する病気、または慢性B型もしくはC型肝炎の病歴。
5)抗体の初回投与の≦14日前(韓国の患者では≦28日前)に任意の抗癌治療による治療、または治験薬による別の治療的臨床研究への参加。
6)前治療からの継続的な副作用>NCI CTCAEグレード1。
a)網膜疾患、または網膜疾患もしくは剥離の病歴、または眼科医の意見における、網膜剥離のリスクの増加
b)網膜静脈閉塞症(RVO)、または中心性漿液性網膜症の現在の証拠または既往歴。
c)研究1日目前の1ヵ月以内に診断された緑内障
d)緑内障の継続的な医学療法。
e)黄斑変性の前眼内注射またはレーザー治療。
f)角膜欠陥、角膜潰瘍、角膜炎、円錐角膜、角膜移植の病歴、または、眼科医の意見において、抗FGFR2抗体治療にリスクをもたらし得る角膜の他の公知の異常。
g)EGFRまたはALK TKIを受けていない、それぞれ、エクソン19または21のEGFR突然変異またはALK増幅を有するNSCLC患者(パート1Aのみ)。
h)抗HER2標的治療を受けていない、HER2過剰発現を有する胃癌及び乳癌患者。
i)大手術は、抗FGFR2抗体の投与≦28日前には許されない。全ての場合において、患者は、治療投与前に十分に回復し、安定していなければならない。
j)妊娠中または授乳中の女性;妊娠可能性のある女性は、研究中に妊娠を検討してはならない。
k)臨床研究と相容れない任意の重篤または不安定な付随する全身性疾患(例えば、薬物乱用、精神障害、または制御不能な併発疾患、例えば、活動性感染症、動脈血栓症、及び症候性肺塞栓症)の存在。
l)研究参加に関連したリスクを増加し得る、または研究結果の解釈を妨害し得る、及び治験責任医師の意見において、研究への患者のエントリーを不適切にさせる任意の他の状態の存在。
7)ポリソルベートを含む抗FGFR2抗体製剤の成分に対する公知のアレルギーまたは過敏症。
8)以下のものを除く、以前の悪性腫瘍の病歴:
a)治療的に処置された非黒色腫皮膚癌、または
b)再発の証拠無しに5年以上前に治療的に処置された固形腫瘍または
c)治験責任医師の意見において、研究治療効果の決定に影響を及ぼさない他の悪性腫瘍の病歴。
9)パート1B及び2(用量拡大)では、FGF-FGFR経路の任意の選択的阻害剤(例えば、AZD4547、BGJ398、JNJ-42756493、BAY1179470)による前治療。
【0423】
これらの選択基準または除外基準の免除は認められない。
【0424】
パート2には、以下の研究コホートA、C、D、E、及びFが関与する。コホートAには、IHC 3+≧10%腫瘍膜染色と定義される、強いFGFR2b過剰発現を伴う胃癌を有する約30人の患者が関与する。コホートCには、IHC=0と定義されるFGFR2b過剰発現を伴わない約10~30人の胃癌患者が関与する。コホートD~Fも含まれ得る。コホートDには、IHC 2+≧10%及び/またはIHC 3+<10%腫瘍膜染色と定義される、中程度のFGFR2b過剰発現を伴う胃癌を有する約30人の患者が関与する。コホートEには、IHC 1+及び/またはIHC 2+<10%腫瘍膜染色と定義される、低FGFR2b過剰発現を伴う胃癌を有する約30人の患者が関与する。コホートFには、検査した腫瘍型ごとに約30人の非胃の固形腫瘍患者が関与する。膀胱癌患者の場合、2つのサブグループが存在する。サブグループ1は、10~19のFGFR2bのHスコアを有し、サブグループ2は、20以上のFGFR2bのHスコアを有する。
【0425】
研究投薬:抗FGFR2抗体は、研究場所で投与するための静脈内バッグに希釈するための無菌バイアルで供給される。パート1Aでは、患者は、2用量の抗FGFR2抗体を2週間間隔で受ける。初回サイクルの終わりまでに疾患の進行なく許容される場合、患者は、延長治療期間で研究を継続する資格があり、疾患の進行または研究離脱の他の原因があるまで、抗FGFR2抗体を2週間毎に受ける。
【0426】
用量調節:用量減少は、スポンサーとの協議及び承認後に、パート1AにおいてDLT期間を超えて治療中の患者、または、パート1Bもしくは2における任意の患者に対して許可し得る。患者は、有害事象または他の事象に対して最大2連続の用量(用量間で最大6週間)を見逃してもよく;有害事象または他の事象に対して6週間を超える追加投与の省略は、研究のスポンサーによって許可されない限り、研究から患者の除去を必要とする。パート1(A及びB)及びパート2における患者ごとの開始用量を上回る患者内用量漸増は、許可されない。関連しない理由により患者の用量を減少させる場合、最初に割り当てられた用量への用量漸増は、スポンサーとの協議及び承認後に生じ得る。
【0427】
併用薬物療法:支持療法(例えば、制吐剤;疼痛管理のための鎮痛剤)は、研究者の裁量かつ施設の手順に従って使用してもよい。造血刺激剤は、必要であれば使用してもよい。あらゆる種類の併用抗癌治療は、乳癌または前立腺癌のための黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)調節剤などの慢性維持療法を除いては許可されない。慢性維持療法は、患者がこれらの薬剤を使用しており、かつ、1)継続使用が腫瘍測定のさらなる減少をもたらす可能性が低く、2)患者に対する標準治療を考えられる場合には継続してもよい。
【0428】
離脱:患者は、以下のいずれかが適用される場合、プロトコル規定治療を中止しなければならない:
・患者の要請または法的に認定された代理人からの要請による同意の撤回;
・患者の疾患の進行;孤立疾患の進行にもかかわらず臨床的利益を受けている患者は、医療用監視との協議後に研究を継続してもよい;
・患者に許容できない安全上のリスクをもたらすであろう任意の事象;
・臨床状態の評価に有意な程度で影響を及ぼす併発疾患;
・研究中の任意の時点で陽性妊娠検査;
・スポンサーまたはその認定代理人の特定の要請(例えば、研究が患者の安全上の理由のために終了した場合)。
【0429】
薬物動態評価:パート1A及び1Bに登録された患者は、サイクル1中の1日目、2日目、4日目、及び8日目に血清抗FGFR2抗体濃度を測定するために採血される。加えて、サイクル1の15日目、及びサイクル2~5の1日目、及びサイクル5から開始して1つおきのサイクルの1日目での注入の前と終わりの両方に、ならびに治療の終わりに血液試料を回収する。パート2の患者では、サイクル1の血液試料を1日目の注入の前と終わりの両方に、及び8日目に回収する。サイクル1の15日目、及びサイクル2~5の1日目、及びサイクル5から開始して1つおきのサイクルの1日目での注入の前と終わりの両方に、ならびに治療の終わりに血液試料を回収し、FGFR2増幅を伴うかまたは伴わずにFGFR2bを過剰発現する腫瘍を有する選択された胃癌患者のPKを探る。標準PKパラメーターは、血清抗FGFR2抗体濃度-時間データに基づいて決定される。
【0430】
免疫原性:研究における全患者は、抗FGFR2抗体に対する抗体を測定するためにサイクル1~5及びサイクル5から1つおきのサイクルの1日目の投与前に血液試料を回収される。
【0431】
有効性評価:有効性対策としては、臨床検査及び適切なイメージング技術、好ましくは、RECISTあたり適当なスライス厚を有する胸部、腹部、及び骨盤のコンピューター断層撮影(CT)スキャンからなる腫瘍評価が含まれ;他の評価(核磁気共鳴画像[MRI])、X線、陽電子放出断層撮影(PET)、及び超音波)は、必要に応じて行ってもよい。腫瘍評価は、スクリーニング時に行った後、初回投与から6週間毎に24週間行い、その後、おおよそ12週間毎に行う。最初の完全奏効(CR)または部分奏効(PR)が一度指摘されたら、確認スキャンを4~6週間後に行わなければならない。
【0432】
安全評価:安全対策としては、AE、血液学、臨床化学、検尿、バイタルサイン、体重、併用薬/手順、ECOGパフォーマンスステータス、対象の身体検査、ECG、眼科/網膜検査、及び抗FGFR2抗体用量の変更が含まれる。
【0433】
本研究で計画された総登録は、おおよそ100~130人の患者であり:おおよそ20~30人の患者がパート1Aに登録される。パート1Bでは、胃癌を有する最大で30人の患者が登録される。パート2では、以下のうちの1つ以上の登録によって探索活動を調べる:
・コホートA:FGFR2b過剰発現(IHC 3+)及びFGFR2増幅(FISH≧2比)の両方を伴う胃癌を有するおおよそ30人の患者;
・コホートB:FGFR2選択の予測重要性の特徴付けを助けるために、FGFR2増幅(FISH比=1)の不在下でFGFR2b過剰発現(IHC 3+)を伴う胃癌を有するおおよそ30人の患者。
・コホートC:IHC=0~2+と定義されるFGFR2b過剰発現を伴わない約10~30人の胃癌患者。
・コホートD:IHC 2+≧10%及び/またはIHC 3+<10%腫瘍膜染色と定義される、中程度のFGFR2b過剰発現を伴う胃癌を有する約30人の患者。
・コホートE:IHC 1+及び/またはIHC 2+<10%腫瘍膜染色と定義される、低FGFR2b過剰発現を伴う胃癌を有する約30人の患者。
・コホートF:検査した腫瘍型ごとに約30人の非胃の固形腫瘍患者。膀胱癌患者の場合、2つのサブグループが存在する。サブグループ1は、10~19のFGFR2bのHスコアを有し、サブグループ2は、20以上のFGFR2bのHスコアを有する。
【0434】
実施例6:抗FGFR2抗体による膀胱癌患者の治療
本実施例は、彼の主治医に血尿を提示後、2014年7月に膀胱癌と診断されている、上記研究(実施例5を参照)に登録された76歳の男性の、実施例5に記載される研究の配列番号6~11の重鎖及び軽鎖HVRを含む非フコシル化FGFR2抗体による治療について述べる。患者は、診断膀胱鏡検査及び生検を行い、その後、原発腫瘍の切除を行った。彼は、T2、N2、M0としてステージ診断され(腫瘍は筋肉壁に浸潤し、6つサンプリングしたリンパ節のうちの3つが陽性であった)、ステージ4の対象とされた。彼は、補助療法において4サイクルのゲムシタビン及びシスプラチン(SOC)を受けた。2015年3月には、補助化学療法終了の約6ヵ月後に、患者は、日常的サーベイランスのPET及びCTを受けた。骨盤及び後腹膜において複数の拡大したリンパ節がCTにより示された一方、これらは代謝的に活性であり、かつ、再発の転移性膀胱癌(UBC)と一致することがPETにより確認された。患者は、おおよそ2週間毎に3mg/kgの用量で抗FGFR2抗体を受け始めた。その後、サイズが最も大きいリンパ節と全体的なリンパ節腫脹を追跡した。2015年4月における初期スクリーニング及び抗FGFR2初回投与の際には、最も大きいリンパ節は、18×12mmであった。6週間後、最も大きいリンパ節は、15×11mmと測定され、12週間後、サイズは9×7mmになり、約1/2に退縮した。2014年8月には、目立ったリンパ節腫脹は観察されなかった。その後の再ステージングスキャンにより目立ったリンパ節腫脹はないことが確認され、2015年11月に行ったPETにより異常な代謝活性は示されなかった。患者は、抗FGFR2抗体療法を現在も継続している。
【0435】
実施例7:FGFR2b過剰発現に対する膀胱癌試料の免疫組織化学分析
膀胱癌集団におけるFGFR2b過剰発現の頻度を評価するため、免疫組織化学(IHC)を使用した。免疫組織化学(IHC)は、GAL-FR21のネズミ可変領域を含むネズミαFGFR2b抗体を用いて、正常膀胱及びアーカイブ尿路上皮癌(UC)試料で行った(米国特許第8,101,723B2号を参照)。422個のホルマリン固定パラフィン包埋UC切片(原発及び転移の両方、全切片、または組織マイクロアレイフォーマットにおける)を染色し、発色基質を用いて検出した。膜性腫瘍細胞染色強度を0~3のスケールでスコア付けし、「0」のスコアは、反応性が観察されない場合、または腫瘍細胞の<10%でしか膜反応性がない場合に与えられ;「1+」のスコアは、腫瘍細胞の少なくとも10%において微かなもしくは僅かな知覚膜反応性がある場合、または細胞が膜の一部にのみ反応性である場合に与えられ;「2+」のスコアは、腫瘍細胞の少なくとも10%において弱~中程度の完全な側底膜または横膜反応性がある場合に与えられ;及び「3+」のスコアは、腫瘍細胞の少なくとも10%において強い完全な側底膜または横膜反応性がある場合に与えられる。腫瘍細胞の≧10%において1+の膜反応性がある腫瘍は、本実験で陽性と考えた。
【0436】
正常膀胱は、移行上皮の弱い染色(<1+)を有する。しかしながら、422個のアーカイブ原発UC試料のIHC分析により、FGFR2bが少なくとも1+の発現強度で試料の>10%において過剰発現されることが示された。
【0437】
さらに、外科切除由来の抗FGFR2応答性の膀胱癌患者(実施例6を参照)の原発腫瘍試料は、15%の2+IHC染色、及び35%の1+FPR2-D抗体染色を有した。これは、胃癌患者由来の以前のデータと対照的であり、3+染色を有する患者腫瘍試料を選択し、客観的応答が見られた。抗FGFR2抗体に対するこの患者の応答(実施例6を参照)、及びUC試料における陽性IHC染色は、膀胱癌が抗FGFR2抗体治療に敏感になり得る追加の兆候であることを集合的に示唆している。
【0438】
実施例8:固形腫瘍が進行した患者における、ニボルマブと併用した抗FGFR2抗体の非盲検の第I相試験
固形腫瘍が進行した患者におけるニボルマブと併用した配列番号6~11の重鎖及び軽鎖HVRを含む非フコシル化FGFR2抗体の安全性、忍容性、薬物動態(PK)、薬力学(PD)、及び予備的有効性を評価するために、2パート、非盲検、多施設、用量漸増、及び用量拡大の研究を行う。研究の各パートは、3期間:スクリーニング(最長で28日)、治療、及びフォローアップ(最長で100日)からなる。抗FGFR2抗体及びニボルマブは、各14日間治療サイクルの1日目に与える。抗FGFR2抗体を30分かけてIV注入として投与し、30分試験を行った後、ニボルマブを30分かけてIV注入として投与する。任意のグレード3または高い注入反応が、提案された注入速度でいずれかの薬物の注入中に観察される場合、注入速度は、本研究の期間中、現在及びその後の全患者に対して60分に延長される。研究の治療及びフォローアップ期間の完了後、全患者の生存率を追跡する。
【0439】
研究は、パート1用量漸増及びパート2用量拡大を含む。パート1は、胃癌または胃食道接合部癌(胃癌と総称される)を有する患者における、ニボルマブと併用した抗FGFR2抗体の2つの計画された投与コホートからなる。表現型の特徴は、この研究の用量漸増パートに研究エントリーする必要はないが、遡及的に行われる。この表現型の特徴は、免疫組織化学(IHC)によるFGFR2b及びPD-L1の発現の分析が含まれるが、これらに限定されない。パート1に登録された各患者は、安全性評価及び用量制限毒性の発生(DLT観察期間)について28日間(または2つの14日サイクルの完了時に)観察される。パート1に登録された任意の患者において遅延DLT(治験薬の投与の4~6週間後に生じる任意のAEと定義される)の最初の発生時に、現在進行中のDLT期間とその後のDLT期間は全て、パート1に登録された残りの患者とその後の患者の全員について、42日(または3つの14日サイクルの完了時に)に拡大される。追加処置は、臨床的に必要な場合、その後の14日サイクルで2週間毎に投与してもよい(延長治療期間)。
【0440】
パート2は、胃癌が進行した患者における2つの拡大コホートからなる。研究のパート2への登録は、検証されたアッセイを用いた、FGFR2b発現のプロスペクティブIHC分析を必要とする。その腫瘍がIHCによってFGFR2bに対して陽性である患者は、他の適格基準を満たす限り、登録を許可される。研究のパート2における2コホートは、患者の腫瘍におけるFGFR2bのIHC陽性レベルによって定義される。コホート2aは、腫瘍が少なくとも10%の腫瘍細胞中で1+または2+の強度で染色する患者を含む。コホート2bは、腫瘍が少なくとも10%の腫瘍細胞中で3+の強度で染色する患者を含む。これらのコホートの各々のオープニングは、スポンサーの裁量であろう。研究のパート2用量拡大部分は、非盲検である。適格基準の全てを満たす患者は、パート1で得られたデータの評価後に選択された推奨用量(RD)で、3mg/kgのニボルマブと併用した抗FGFR2抗体で、14日サイクルで2週間毎に治療される。患者は、研究のパート1またはパート2のいずれかに登録されるが、両方には登録されない。
【0441】
パート1では、2用量コホートは、最低6人の胃癌患者が各コホートに登録されることが予想される。計画された用量レベルは、以下の通りである;最初の患者は、用量レベル1に登録される:
用量レベル-1:6mg/kgの抗FGFR2抗体+3mg/kgのニボルマブ(q2w)
用量レベル1:10mg/kgの抗FGFR2抗体+3mg/kgのニボルマブ(q2w)
用量レベル2:15mg/kgの抗FGFR2抗体+3mg/kgのニボルマブ(q2w)
【0442】
全ての用量漸増決定は、DLT、全体的な安全性、及び忍容性の評価に基づいており、各コホートに登録された最後の患者が所定のDLT観察期間を完了した後に行われるであろう。用量漸増の決定は、スポンサー及び治験責任医師からなるコホート審査委員会(CRC)によって合意されるであろう。安全性及びPKパラメーターの検証は、最適な標的暴露に到達するために、代替用量レベルでコホートを追加する決定を通知し得る。用量レベル-1は、低用量の抗FGFR2抗体の検討を必要とする用量レベル1でDLTが観察される場合にのみ問い合わせる。観察されたDLT≦1の最高用量レベルは、第2相推奨用量(RP2D)と見なされる。追加の8人の患者は、RP2Dの同定後に研究のパート1に登録される。従って、パート1の登録は、おおよそ20人の患者であろう。
【0443】
DLT観察期間の完了時に、パート1の患者は、サイクル2の1日目から始まる任意の延長治療期間に参加してもよい。抗FGFR2抗体は、疾患の進行、許容できない毒性、患者もしくは医師の中止の要請、死亡、または研究の終了まで、4週間のサイクルで2週間毎に同じ用量レベルでニボルマブと併用して投与され続ける。
【0444】
ニボルマブと併用した抗FGFR2抗体の安全性及び有効性をさらに特徴付けるため、パート2には、おおよそ40人の胃癌が進行した患者を登録し、2コホート内で、1コホートあたり20人の患者である。これらの2コホートは、FGFR2bに対する腫瘍のIHC陽性の程度が異なるであろう。腫瘍が中央判定(低または中程度の過剰発現)によって腫瘍細胞の≧10%において1+または2+とスコア付けされる患者は、コホート2Aに置かれ;腫瘍が腫瘍細胞の≧10%において3+とランク付けされる患者は、コホート2Bに登録されるであろう。パート2の登録は、推奨用量(RD)が全体的な安全性及び忍容性に基づいてCRCによって同定された時に開始される。RDは、パート1で同定されたMTDと同じであっても同じでなくてもよい。抗FGFR2抗体は、疾患の進行、許容できない毒性、患者もしくは医師の中止の要請、死亡、または研究の終了まで、4週間のサイクルで2週間毎にRDでニボルマブと併用して投与されるであろう。
【0445】
最初の20人の患者の登録及び評価後、さらなる探求に値する十分な活性が観察される場合、1コホートあたり別の20人の患者の登録を受け付ける。各コホートのオープニング及び20人の患者のいずれかのコホートへの追加は、スポンサーの裁量で行われるであろう。
【0446】
パート2に登録された患者は、検証された免疫組織化学(IHC)アッセイを用いて、PD-L1発現を遡及的に試験された腫瘍組織(アーカイブ及び/または最近)を有するであろう。原発腫瘍部位または転移性部位での生検は、選択された腫瘍マーカーの免疫浸潤及び発現を調べるために、治療前及び治療中に(実現可能として)得られる。任意の生検は、応答及び/または進行した腫瘍について、耐性機序を理解するために治療時または治療後に得てもよい。
【0447】
抗FGFR2抗体の用量減少は、プロトコルに概説されたガイドラインあたり、パート1においてDLT期間を超えて治療中の患者、またはパート2における任意の患者に対して許可してもよい。
【0448】
北米及び欧州から最大でおおよそ60人の対象が、本研究に登録されることが計画される。これは、パート1用量漸増における20人の患者と、パート2用量拡大におけるおおよそ40人の患者を含む。
【0449】
選択基準
パート1またはパート2に登録する患者は、以下の全ての選択基準を満たさなければならない:
1.任意の研究特有の評価の前に、機関審査委員会/独立倫理委員会が承認したインフォームドコンセント形式を理解し署名する
2.少なくとも3ヵ月の平均余命
3.0~1のECOGパフォーマンスステータス
4.インフォームドコンセント形式に署名した時点で年齢≧18歳
5.性的に活発な患者(すなわち、12カ月連続の無月経によって定義された閉経を経験していないか、または永続的な避妊手術をしていない妊娠可能性のある女性、及び永続的な避妊手術をしていない男性)、2つの効果的な避妊方法を使用する意欲、そのうちの1つは、抗FGFR2抗体の最終投与後から6ヶ月まで、物理的障壁法(コンドーム、ペッサリー、または子宮頚部/ボルトキャップ)でなければならない。他の効果的な避妊方法は、スクリーニングの少なくとも6ヶ月前に永続的な避妊(子宮摘出及び/または両側卵巣摘出、または手術による両側卵管結紮、または精管切除)である。妊娠可能性のある女性患者は、研究の少なくとも90日前から安定した経口避妊薬治療または子宮内またはインプラント装置を使用しているか、生き方として性交を避ける必要がある。
6.以下の臨床検査値によって確認された十分な血液学的及び生物学的機能:
a)骨髄機能
・ANC≧1.5×10/L
・血小板>100×10/L
・ヘモグロビン≧9g/dL
b)肝機能
・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)≦3×正常上限(ULN);肝転移がある場合、≦5×ULN
・ビリルビン≦1.5×ULN
c)腎機能
・血清クレアチニン≦1.5×ULN
7.局所再発または転移性であり、かつ、標準治療後に進行しているかまたは標準治療に適していない組織学的または細胞学的に確認された胃癌または胃食道癌。
研究のパート1(用量漸増)に登録する患者も、以下の選択基準を満たさなければならない:
7.測定可能または評価可能な疾患
研究のパート2(用量拡大)に登録する患者も、以下の選択基準を満たさなければならない:
8.RECISTバージョン1.1によって定義される測定可能な疾患
9.検証されたIHCアッセイによって決定されるFGFR2b発現の腫瘍陽性
10.PD-L1発現のレトロスペクティブ決定のための(アーカイブまたは最近の)腫瘍組織
【0450】
除外基準
パート1またはパート2に登録する患者は、以下のいずれかの基準が適用される場合、除外される:
1.未処置または症候性の中枢神経系(CNS)転移。無症候性CNS転移を有する患者は、少なくとも4週間臨床的に安定しており、かつ、CNS疾患に関連する症状を管理するための外科手術、放射線療法、または任意のコルチコステロイド療法などの介入を必要としない限り適任である。
2.以下のいずれかを含む、心臓機能障害または臨床的に有意な心臓疾患:
〇抗FGFR2抗体の初回スケジュール投与の≦6ヵ月前の不安定な狭心症
〇抗FGFR2抗体の初回スケジュール投与の≦6ヵ月前の急性心筋梗塞
3.QTcセグメント>470ミリ秒
4.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)1型もしくは2型または公知の後天性免疫不全症候群(AIDS)の検査で陽性の公知の病歴
5.急性または慢性感染を示すB型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)または検出可能なC型肝炎ウイルスリボ核酸(HCV RNA)の陽性検査
6.スクリーニング時の潜在性結核(TB)に対する陽性検査(Quantiferon検査)または活動性TBの証拠
7.症候性間質肺疾患または炎症性肺炎
8.活性な、公知の、または疑われる自己免疫疾患。I型糖尿病、ホルモン補充のみを必要とする甲状腺機能低下症、全身治療を必要としない皮膚障害(例えば、白斑、乾癬、または脱毛症)、または外部トリガーの不在下で再発しないと予想される状態を有する患者は、登録を許可される。
9.クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む制御不能な炎症性GI疾患
10.以前の生物学的製剤に対する抗薬物抗体、重度のアレルギー、アナフィラキシー、または他の注入関連反応の病歴
11.ステロイドまたは局所吸収ステロイドなどの全身薬物療法の免疫抑制用量(用量>10mg/日のプレドニゾンまたは1日当量)は、腫瘍関連AE治療の場合を除いて、研究薬物投与の少なくとも2週間前に中止しなければならない。治療の2週間以内にコルチコステロイド(吸入または局所ステロイド及び副腎交換ステロイド用量>10mg/日のプレドニゾン当量)または他の免疫抑制薬物療法のいずれかの慢性全身治療を必要とする状態の患者は、(神経膠腫を有する患者を除いて)活動型自己免疫疾患の不在下に許可される。
12.研究薬物投与の4週間以内に感染症の予防のための非腫瘍学ワクチン療法(例えば、HPVワクチン)。不活化季節性インフルエンザワクチンは、治療前かつ制限なしの治療中に患者に与えることができる。生ウイルスを含むインフルエンザワクチン、または他の臨床的に必要な場合、感染症(すなわち、ニューモバックス、水痘など)に対するワクチン接種は許可してもよいが、スポンサーの医療用監視と協議しなければならず、ワクチンの投与前及び投与後に研究薬物の休薬期間を必要とし得る。
13.研究薬物投与の初回投与の≦14日前に任意の抗癌治療による治療、または治験薬による別の治療的臨床研究への参加。
14.前治療からの継続的な急性の副作用>NCI CTCAEグレード1。
15.抗HER2標的治療を受けていない、HER2過剰発現を有する胃癌患者。
16.大手術は、FPA144の投与≦28日前には許されない。全ての場合において、患者は、治療投与前に十分に回復し、安定していなければならない。
17.妊娠中または授乳中の女性;妊娠可能性のある女性は、研究中に妊娠を検討してはならない。
18.臨床研究と相容れない任意の重篤または不安定な付随する全身性疾患(例えば、薬物乱用、精神障害、または制御不能な併発疾患、例えば、活動性感染症、動脈血栓症、及び症候性肺塞栓症)の存在。
19.研究参加に関連したリスクを増加し得る、または研究結果の解釈を妨害し得る、及び治験責任医師の意見において、研究への患者のエントリーを不適切にさせる任意の他の状態の存在。
20.抗FGFR2抗体またはニボルマブ製剤、例えば、ポリソルベートの成分に対する公知のアレルギーまたは過敏症。
21.FGF-FGFR経路の任意の選択的阻害剤(例えば、AZD4547、BGJ398、JNJ-42756493、BAY1179470)による前治療。
22.以前の悪性腫瘍の病歴:
a)治療的に治療された非黒色腫皮膚癌または
b)再発の証拠無しに5年以上前に治療的に治療された固形腫瘍または
c)治験責任医師の意見において、研究治療効果の決定に影響を及ぼさない他の悪性腫瘍の病歴。
【0451】
薬物動態分析の場合、血液試料は、全患者から回収されるであろう。標準PKパラメーターは、抗FGFR2抗体濃度-時間データに基づいて決定される。また、血液試料は、抗FGFR2抗体及びニボルマブに対する抗薬物抗体(ADA)を評価するためにも回収されるであろう。
【0452】
有効性対策としては、臨床検査及び適切なイメージング技術、好ましくは、RECIST 1.1あたり適当なスライス厚を有する胸部、腹部、及び骨盤のコンピューター断層撮影(CT)スキャンを含む腫瘍評価が含まれ;他の評価(核磁気共鳴画像[MRI])、X線、陽電子放出断層撮影(PET)、及び超音波)は、必要に応じて行ってもよい。腫瘍評価は、スクリーニング時に行った後、初回投与から6週間毎に24週間行い、その後、おおよそ12週間毎に行う。最初の完全奏効(CR)または部分奏効(PR)が一度指摘されたら、確認スキャンを4~6週間後に行わなければならない。
【0453】
実現可能として必須な腫瘍生検は、パート2における全患者に対する治療前、及び治療中の15日目または29日目のいずれかで行われるであろう。各時点の実現可能性は、治験責任医師によって評価され、患者の安全性の考慮を含むべきである。患者はまた、文書化された腫瘍応答の際の任意の治療中生検、及び/またはスポンサーとの協議後の文書化された腫瘍進行の際の任意の治療後生検を有し得る。
【0454】
最大でおおよそ60人の対象の試料サイズは、パート1における用量漸増の研究設計、及びパート2の治療アームにおける20人の患者/アームに基づいている。本研究のパート2における各個々のアームは、Simonの二段階設計を進めるであろう。PD-L1発現に対して未選択の、進行した胃癌において単剤療法としてニボルマブの観察された推定応答速度は、12%であり;抗FGFR2抗体に対するORRは、腫瘍で観察されるFGFR2bの発現レベルに応じて異なってもよい。コホート2Aでは、抗FGFR2抗体に対する推定ORRは、0%である。コホート2Bでは、抗FGFR2抗体単剤療法に対する推定ORRは、30%である。したがって、コホート2Aは、最初の20人の患者のうちで応答が観察されるのが<2人である場合、20人の患者拡大を登録しない。コホート2Bでは、登録された最初の20人の患者のうちで客観的奏効を達成するのが<6人の患者である場合、20人の患者拡大は開放されない。
【0455】
配列表
以下の表は、本明細書で参照されたある特定の配列の一覧を提供する。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図11
図12
図13
図14
図15
図16-1】
図16-2】
【配列表】
0007450592000001.app