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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】発光デバイス
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/852 20230101AFI20240308BHJP
   H10K 50/19 20230101ALI20240308BHJP
   H10K 50/125 20230101ALI20240308BHJP
   H10K 50/816 20230101ALI20240308BHJP
   H10K 50/818 20230101ALI20240308BHJP
   H10K 50/826 20230101ALI20240308BHJP
   H10K 50/828 20230101ALI20240308BHJP
   H10K 102/10 20230101ALN20240308BHJP
   H10K 102/20 20230101ALN20240308BHJP
【FI】
H10K50/852
H10K50/19
H10K50/125
H10K50/816
H10K50/818
H10K50/826
H10K50/828
H10K102:10
H10K102:20
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021503230
(86)(22)【出願日】2020-02-24
(86)【国際出願番号】 IB2020051515
(87)【国際公開番号】W WO2020178660
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2019041455
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 剛吉
(72)【発明者】
【氏名】植田 藍莉
(72)【発明者】
【氏名】大澤 信晴
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-092887(JP,A)
【文献】特開2017-208334(JP,A)
【文献】特開2006-324016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00 - 50/88
H10K 59/00 - 59/95
H10K 102/10
H10K 102/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を射出する機能を有する発光デバイスであって、
前記発光デバイスは、中間層と、第1の発光ユニットと、第2の発光ユニットと、第1の電極と、第2の電極と、反射性の膜と、を有し、
前記中間層は、前記第1の発光ユニットおよび前記第2の発光ユニットの一方に電子を供給し、他方に正孔を供給する機能を備え、
前記第1の発光ユニットは、前記第1の電極および前記中間層の間に挟まれる領域を有し、
前記第1の発光ユニットは、第1の発光層を有し、
前記第1の発光層は、第1の発光材料を含み、
前記第2の発光ユニットは、前記中間層および前記第2の電極の間に挟まれる領域を有し、
前記第2の発光ユニットは、第2の発光層を有し、
前記第2の発光層は、第2の発光材料を含み、
前記発光デバイスからの射出される光のスペクトルは、極大を第1の波長に有し、
前記第1の波長における、前記反射性の膜の反射率は、前記第2の電極の反射率より高く、
前記第1の電極は、前記第1の発光ユニットおよび前記反射性の膜の間に挟まれる領域を有し、
前記第1の波長における、前記第1の電極の透過率は、前記第2の電極の透過率より高く、
前記第2の電極は、前記第1の波長の光の一部を透過し、他の一部を反射し、
前記第2の電極と前記反射性の膜との間の距離を第2の距離としたとき、前記第2の距離は、1.8を乗じると、前記第1の波長の0.3倍以上0.6倍以下の範囲に含まれる、発光デバイス。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2の発光層と前記第1の発光層との間の距離を第1の距離D1としたとき、
前記第1の距離D1と前記第1の波長EL1とは、式(i)に示す関係を満たす、発光デバイス。
(6.3×10-3)×EL1≦D1≦(81.3×10-3)×EL1 (i)
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
溶液中の前記第1の発光材料の発光スペクトルは、極大を第2の波長に有し、
溶液中の前記第2の発光材料の発光スペクトルは、極大を第3の波長に有し、
前記第1の波長と前記第2の波長との間の差は、100nm以下であり、
前記第1の波長と前記第3の波長との間の差は、100nm以下である、発光デバイス。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記第2の発光層は、前記第1の発光材料を含む、発光デバイス。
【請求項5】
光を射出する機能を有する発光デバイスであって、
前記発光デバイスは、中間層と、第1の発光ユニットと、第2の発光ユニットと、第1の電極と、第2の電極と、を有し、
前記中間層は、前記第1の発光ユニットおよび前記第2の発光ユニットの一方に電子を供給し、他方に正孔を供給する機能を備え、
前記第1の発光ユニットは、前記第1の電極および前記中間層の間に挟まれる領域を有し、
前記第1の発光ユニットは、第1の発光層を有し、
前記第1の発光層は、第1の発光材料を含み、
前記第2の発光ユニットは、前記中間層および前記第2の電極の間に挟まれる領域を有し、
前記第2の発光ユニットは、第2の発光層を有し、
前記第2の発光層は、第2の発光材料を含み、
前記発光デバイスからの射出される光のスペクトルは、極大を第1の波長に有し、
前記第1の波長における、前記第1の電極の反射率は、前記第2の電極の反射率より高く、
前記第1の波長における、前記第2の電極の透過率は、前記第1の電極の透過率より高く、
前記第2の電極は、前記第1の波長の光の一部を透過し、他の一部を反射し、
前記第1の電極と前記第2の電極の間の距離を第2の距離としたとき、前記第2の距離は、1.8を乗じると、前記第1の波長の0.3倍以上0.6倍以下の範囲に含まれ
前記第2の発光層と前記第1の発光層との間の距離を第1の距離D1としたとき、
前記第1の距離D1と前記第1の波長EL1とは、式(i)に示す関係を満たす、発光デバイス。
(6.3×10 -3 )×EL1≦D1≦(81.3×10 -3 )×EL1 (i)
【請求項6】
光を射出する機能を有する発光デバイスであって、
前記発光デバイスは、中間層と、第1の発光ユニットと、第2の発光ユニットと、第1の電極と、第2の電極と、を有し、
前記中間層は、前記第1の発光ユニットおよび前記第2の発光ユニットの一方に電子を供給し、他方に正孔を供給する機能を備え、
前記第1の発光ユニットは、前記第1の電極および前記中間層の間に挟まれる領域を有し、
前記第1の発光ユニットは、第1の発光層を有し、
前記第1の発光層は、第1の発光材料を含み、
前記第2の発光ユニットは、前記中間層および前記第2の電極の間に挟まれる領域を有し、
前記第2の発光ユニットは、第2の発光層を有し、
前記第2の発光層は、第2の発光材料を含み、
前記発光デバイスからの射出される光のスペクトルは、極大を第1の波長に有し、
前記第1の波長における、前記第1の電極の反射率は、前記第2の電極の反射率より高く、
前記第1の波長における、前記第2の電極の透過率は、前記第1の電極の透過率より高く、
前記第2の電極は、前記第1の波長の光の一部を透過し、他の一部を反射し、
前記第1の電極と前記第2の電極の間の距離を第2の距離としたとき、前記第2の距離は、1.8を乗じると、前記第1の波長の0.3倍以上0.6倍以下の範囲に含ま
溶液中の前記第1の発光材料の発光スペクトルは、極大を第2の波長に有し、
溶液中の前記第2の発光材料の発光スペクトルは、極大を第3の波長に有し、
前記第1の波長と前記第2の波長との間の差は、100nm以下であり、
前記第1の波長と前記第3の波長との間の差は、100nm以下である、発光デバイス。
【請求項7】
光を射出する機能を有する発光デバイスであって、
前記発光デバイスは、中間層と、第1の発光ユニットと、第2の発光ユニットと、第1の電極と、第2の電極と、を有し、
前記中間層は、前記第1の発光ユニットおよび前記第2の発光ユニットの一方に電子を供給し、他方に正孔を供給する機能を備え、
前記第1の発光ユニットは、前記第1の電極および前記中間層の間に挟まれる領域を有し、
前記第1の発光ユニットは、第1の発光層を有し、
前記第1の発光層は、第1の発光材料を含み、
前記第2の発光ユニットは、前記中間層および前記第2の電極の間に挟まれる領域を有し、
前記第2の発光ユニットは、第2の発光層を有し、
前記第2の発光層は、第2の発光材料を含み、
前記発光デバイスからの射出される光のスペクトルは、極大を第1の波長に有し、
前記第1の波長における、前記第1の電極の反射率は、前記第2の電極の反射率より高く、
前記第1の波長における、前記第2の電極の透過率は、前記第1の電極の透過率より高く、
前記第2の電極は、前記第1の波長の光の一部を透過し、他の一部を反射し、
前記第1の電極と前記第2の電極の間の距離を第2の距離としたとき、前記第2の距離は、1.8を乗じると、前記第1の波長の0.3倍以上0.6倍以下の範囲に含ま
前記第2の発光層は、前記第1の発光材料を含む、発光デバイス。
【請求項8】
請求項6または請求項7において、
前記第2の発光層と前記第1の発光層との間の距離を第1の距離D1としたとき、
前記第1の距離D1と前記第1の波長EL1とは、式(i)に示す関係を満たす、発光デバイス。
(6.3×10-3)×EL1≦D1≦(81.3×10-3)×EL1 (i)
【請求項9】
請求項5または請求項7において、
溶液中の前記第1の発光材料の発光スペクトルは、極大を第2の波長に有し、
溶液中の前記第2の発光材料の発光スペクトルは、極大を第3の波長に有し、
前記第1の波長と前記第2の波長との間の差は、100nm以下であり、
前記第1の波長と前記第3の波長との間の差は、100nm以下である、発光デバイス。
【請求項10】
請求項5、請求項6、請求項8および請求項9のいずれか一において、
前記第2の発光層は、前記第1の発光材料を含む、発光デバイス。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一において、
前記中間層と前記第1の発光層との間の距離は、5nm以上であり、
前記中間層と前記第2の発光層との間の距離は、5nm以上である、発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、発光デバイス、発光装置、発光モジュール、電子機器または照明装置に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、それらの駆動方法、または、それらの製造方法、を一例として挙げることができる。
【背景技術】
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス(EL:Electro Luminescence)現象を利用した発光デバイス(有機ELデバイス、有機EL素子ともいう)の研究開発が盛んに行われている。有機ELデバイスの基本的な構成は、一対の電極間に発光性の有機化合物を含む層(以下、発光層とも記す)を挟んだものである。この有機ELデバイスに電圧を印加することにより、発光性の有機化合物からの発光を得ることができる。
【0004】
発光性の有機化合物としては、例えば、三重項励起状態を発光に変換できる化合物(燐光性化合物、燐光材料ともいう)が挙げられる。特許文献1では、燐光材料として、イリジウムなどを中心金属とする有機金属錯体が開示されている。
【0005】
また、個人認証、不良解析、医療診断、セキュリティ関連など、様々な用途でイメージセンサが用いられている。イメージセンサは、用途に応じて、用いる光源の波長が使い分けられている。イメージセンサでは、例えば、可視光、X線などの短波長の光、近赤外光などの長波長の光など、様々な波長の光が用いられている。
【0006】
発光デバイスは、表示装置に加え、上記のようなイメージセンサの光源としての応用も検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-137872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一態様は、利便性または信頼性に優れた新規な発光デバイスを提供することを課題の一とする。または、新規な発光デバイスまたは新規な半導体装置を提供することを課題の一とする。
【0009】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の一態様は、中間層と、第1の発光ユニットと、第2の発光ユニットと、を有する。
【0011】
中間層は第1の発光ユニットおよび第2の発光ユニットの間に挟まれる領域を備え、中間層は第1の発光ユニットおよび第2の発光ユニットの一方に電子を供給し、他方に正孔を供給する機能を備える。
【0012】
第1の発光ユニットは第1の発光層を備え、第1の発光層は第1の発光材料を含む。
【0013】
第2の発光ユニットは第2の発光層を備え、第2の発光層は第2の発光材料を含む。
【0014】
第2の発光層は第1の発光層との間に第1の距離D1を備える。第1の距離D1は、5nm以上65nm以下である。
【0015】
これにより、光を射出する複数の領域(具体的には、複数の発光層)を、互いに近づけることができる。または、光学設計が容易になる。または、光学設計の自由度が高まる。または、効率よく光を取り出すための光学設計が容易になる。または、効率よく光を取り出すことができる。または、中間層の使用に伴う駆動電圧の上昇を、抑制することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な発光デバイスを提供することができる。
【0016】
(2)また、本発明の一態様は、中間層と、第1の発光ユニットと、第2の発光ユニットと、第1の電極と、第2の電極と、光を射出する機能と、を有する。
【0017】
中間層は、第1の発光ユニットおよび第2の発光ユニットの一方に電子を供給し、他方に正孔を供給する機能を備える。
【0018】
第1の発光ユニットは第1の電極および中間層の間に挟まれる領域を備え、第1の発光ユニットは第1の発光層を備え、第1の発光層は、第1の発光材料を含む。
【0019】
第2の発光ユニットは中間層および第2の電極の間に挟まれる領域を備え、第2の発光ユニットは第2の発光層を備え、第2の発光層は第2の発光材料を含む。
【0020】
射出する光は、極大を第1の波長EL1に有するスペクトルを備える。
【0021】
第1の電極は、第1の波長EL1において、第2の電極より高い反射率を備える。
【0022】
第2の電極は、第1の波長EL1において、第1の電極より高い透過率を備え、第2の電極は、第1の波長EL1において、一部を透過し、他の一部を反射する。また、第2の電極は、第1の電極との間に第2の距離D2を備える。
【0023】
第2の距離D2は、1.8を乗じると、波長EL1の0.3倍以上0.6倍以下の範囲に含まれる。
【0024】
(3)また、本発明の一態様は、中間層と、第1の発光ユニットと、第2の発光ユニットと、第1の電極と、第2の電極と、反射性の膜と、光を射出する機能と、を有する。
【0025】
中間層は、第1の発光ユニットおよび第2の発光ユニットの一方に電子を供給し、他方に正孔を供給する機能を備える。
【0026】
第1の発光ユニットは第1の電極および中間層の間に挟まれる領域を備え、第1の発光ユニットは第1の発光層を備え、第1の発光層は、第1の発光材料を含む。
【0027】
第2の発光ユニットは中間層および第2の電極の間に挟まれる領域を備え、第2の発光ユニットは第2の発光層を備え、第2の発光層は第2の発光材料を含む。
【0028】
射出する光は、極大を第1の波長に有するスペクトルを備える。
【0029】
反射性の膜は、第1の波長において、第2の電極より高い反射率を備える。
【0030】
第1の電極は、第1の発光ユニットおよび反射性の膜の間に挟まれる領域を備え、第1の電極は、第1の波長において、第2の電極より高い透過率を備える。
【0031】
第2の電極は、第1の波長において、一部を透過し、他の一部を反射する。
【0032】
第2の電極は、前記反射性の膜との間に第2の距離を備え、
第2の距離は、1.8を乗じると、第1の波長の0.3倍以上0.6倍以下の範囲に含まれる。
【0033】
これにより、光学設計が容易になる。または、効率よく光を取り出すための光学設計が容易になる。または、効率よく光を取り出すことができる。または、射出する光のスペクトルの半値幅を、狭くすることができる。または、微小共振器構造を構成できる。または、中間層の使用に伴う駆動電圧の上昇を、抑制することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な発光デバイスを提供することができる。
【0034】
(4)また、本発明の一態様は、第2の発光層が、第1の発光層との間に第1の距離D1を備える上記の発光デバイスである。
【0035】
第1の距離D1は、第1の波長EL1との間に、式(i)に示す関係を備える。
【0036】
【数1】
【0037】
これにより、光を射出する複数の領域を、互いに近づけることができる。または、光学設計が容易になる。または、光学設計の自由度が高まる。または、効率よく光を取り出すための光学設計が容易になる。または、効率よく光を取り出すことができる。または、中間層の使用に伴う駆動電圧の上昇を、抑制することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な発光デバイスを提供することができる。
【0038】
(5)また、本発明の一態様は、第1の発光材料が、溶液において、極大を第2の波長PL1に有する第1の発光スペクトルを備える上記の発光デバイスである。
【0039】
また、第2の発光材料は、溶液において、極大を第3の波長PL2に有する第2の発光スペクトルを備える。
【0040】
第1の波長EL1は、第2の波長PL1との間に、100nm以下の差を備え、第1の波長EL1は、第3の波長PL2との間に、100nm以下の差を備える。
【0041】
これにより、発光デバイスの発光効率を高めることができる。または、効率よく光を取り出すことができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な発光デバイスを提供することができる。
【0042】
(6)また、本発明の一態様は、第2の発光層が、第1の発光材料を含む上記の発光デバイスである。
【0043】
これにより、発光デバイスの発光効率を高めることができる。または、高い輝度を得ることができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な発光デバイスを提供することができる。
【0044】
(7)また、本発明の一態様は、中間層が第1の発光層との間に第3の距離D31を備え、第2の発光層との間に第4の距離D32を備える上記の発光デバイスである。
【0045】
なお、第3の距離D31は、5nm以上であり、第4の距離D32は、5nm以上である。
【0046】
これにより、例えば、発光層を中間層から遠ざけることができる。または、例えば、発光層の中間層への接近に伴う発光効率の低下を、抑制することができる。または、発光デバイスの発光効率を高めることができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な発光デバイスを提供することができる。
【0047】
なお、本明細書において、EL層とは発光デバイスの一対の電極間に設けられた層を示すものとする。従って、電極間に挟まれた発光材料である有機化合物を含む発光層はEL層の一態様である。
【0048】
また、本明細書において、物質Aを他の物質Bからなるマトリクス中に分散する場合、マトリクスを構成する物質Bをホスト材料と呼び、マトリクス中に分散される物質Aをゲスト材料と呼ぶものとする。なお、物質A並びに物質Bは、それぞれ単一の物質であっても良いし、2種類以上の物質の混合物であっても良いものとする。
【0049】
なお、本明細書中において、発光装置とは画像表示デバイスまたは光源(照明装置含む)を指す。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光デバイスが形成された基板にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0050】
本発明の一態様によれば、利便性または信頼性に優れた新規な発光デバイスを提供することができる。または、新規な発光デバイス、または、新規な半導体装置を提供することができる。
【0051】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1Aおよび図1Bは、実施の形態に係る発光デバイスの構成を説明する図である。
図2は、実施の形態に係る発光デバイスの構成を説明する図である。
図3A乃至図3Cは、実施の形態に係る発光装置の構成を説明する図である。
図4Aおよび図4Bは、実施の形態に係る発光装置の構成を説明する図である。
図5A乃至図5Eは、実施の形態に係る電子機器の構成を説明する図である。
図6は、実施例に係る発光デバイスの構成を説明する図である。
図7Aおよび図7Bは、実施例に係る発光デバイスの構成を説明する図である。
図8は、発光デバイス1の電流密度-放射発散度特性を示す図である。
図9は、発光デバイス1の電圧-電流密度特性を示す図である。
図10は、発光デバイス1の電流密度-放射束特性を示す図である。
図11は、発光デバイス1の電圧-放射発散度特性を示す図である。
図12は、発光デバイス1の電流密度-外部量子効率特性を示す図である。
図13は、発光デバイス1の発光スペクトルを示す図である。
図14は、発光デバイス2の電流密度-放射発散度特性を示す図である。
図15は、発光デバイス2の電圧-電流密度特性を示す図である。
図16は、発光デバイス2の電流密度-放射束特性を示す図である。
図17は、発光デバイス2の電圧-放射発散度特性を示す図である。
図18は、発光デバイス2の電流密度-外部量子効率特性を示す図である。
図19は、発光デバイス2の発光スペクトルを示す図である。
図20は、発光デバイス3の電流密度-放射発散度特性を示す図である。
図21は、発光デバイス3の電圧-電流密度特性を示す図である。
図22は、発光デバイス3の電流密度-放射束特性を示す図である。
図23は、発光デバイス3の電圧-放射発散度特性を示す図である。
図24は、発光デバイス3の電流密度-外部量子効率特性を示す図である。
図25は、発光デバイス3の発光スペクトルを示す図である。
図26は、実施例に係る発光デバイスの構成を説明する図である。
図27は、実施例に係る発光デバイスの計算結果を説明する図である。
図28は、構造式(100)に示す有機金属錯体の紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトルである。
図29は、構造式(100)に示す有機金属錯体の発光スペクトルである。
図30は、発光デバイス4の電流密度-放射発散度特性を示す図である。
図31は、発光デバイス4の電圧-電流密度特性を示す図である。
図32は、発光デバイス4の電流密度-放射束特性を示す図である。
図33は、発光デバイス4の電圧-放射発散度特性を示す図である。
図34は、発光デバイス4の電流密度-外部量子効率特性を示す図である。
図35は、発光デバイス4の発光スペクトルを示す図である。
図36は、発光デバイス4の相対強度の角度依存性を示す図である。
図37は、発光デバイス4の規格化フォトン強度の角度依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明の一態様の発光デバイスは、中間層と、第1の発光ユニットと、第2の発光ユニットと、を有する。中間層は、第1の発光ユニットおよび第2の発光ユニットの間に挟まれる領域を備え、中間層は、第1の発光ユニットおよび第2の発光ユニットの一方に電子を供給し、他方に正孔を供給する機能を備える。第1の発光ユニットは第1の発光層を備え、第1の発光層は第1の発光材料を含み、第2の発光ユニットは第2の発光層を備え、第2の発光層は第2の発光材料を含み、第2の発光層は第1の発光層との間に第1の距離を備え、第1の距離は、5nm以上65nm以下である。
【0054】
これにより、光を射出する複数の領域を、互いに近づけることができる。または、光学設計が容易になる。または、光学設計の自由度が高まる。または、効率よく光を取り出すための光学設計が容易になる。または、効率よく光を取り出すことができる。または、中間層104の使用に伴う駆動電圧の上昇を、抑制することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な発光デバイスを提供することができる。
【0055】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0056】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光デバイスの構成について、図1を参照しながら説明する。
【0057】
図1は本発明の一態様の発光デバイスの構成を説明する図である。図1Aは本発明の一態様の発光デバイスの断面図であり、図1Bは本発明の一態様の発光デバイスの発光スペクトルを説明する模式図である。
【0058】
なお、本明細書において、1以上の整数を値にとる変数を符号に用いる場合がある。例えば、1以上の整数の値をとる変数pを含む(p)を、最大p個の構成要素のいずれかを特定する符号の一部に用いる場合がある。また、例えば、1以上の整数の値をとる変数mおよび変数nを含む(m,n)を、最大m×n個の構成要素のいずれかを特定する符号の一部に用いる場合がある。
【0059】
<発光デバイスの構成例1.>
本実施の形態で説明する発光デバイスは、中間層104と、発光ユニット103aと、発光ユニット103bと、を有する(図1A参照)。
【0060】
《中間層の構成例1.》
中間層104は発光ユニット103aおよび発光ユニット103bの間に挟まれる領域を備える。また、中間層104は発光ユニット103aまたは発光ユニット103bの一方に電子を供給し、他方に正孔を供給する機能を備える。例えば、陽極側に配置される発光ユニット103aに電子を供給し、陰極側に配置される発光ユニット103bに正孔を供給する。なお、中間層104は、例えば、電荷発生層と言い換えることができる。
【0061】
《発光ユニットの構成例1.》
発光ユニット103aは発光層113aを備え、発光層113aは第1の発光材料を含む。なお、発光ユニット103aは、一方から注入された電子が他方から注入された正孔と再結合する領域を備える。また、複数の発光ユニットおよび中間層を備える構成をタンデム型の発光デバイスという場合がある。また、第1の発光材料は電子と正孔の再結合により生じるエネルギーを光として放出する。
【0062】
発光ユニット103bは発光層113bを備え、発光層113bは第2の発光材料を含む。
【0063】
《発光層の構成例1.》
発光層113bは発光層113aとの間に距離D1を備える。また、距離D1は5nm以上65nm以下である。なお、好ましくは、距離D1は5nm以上50nm以下であり、より好ましくは、5nm以上40nm以下である。また、距離D1は、好ましくは10nm以上である。
【0064】
これにより、光を射出する複数の領域(例えば、発光層113aおよび発光層113b)を、互いに近づけることができる。または、光学設計が容易になる。または、光学設計の自由度が高まる。または、効率よく光を取り出すための光学設計が容易になる。または、効率よく光を取り出すことができる。または、中間層104の使用に伴う駆動電圧の上昇を、抑制することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な発光デバイスを提供することができる。
【0065】
<発光デバイスの構成例2.>
また、本実施の形態で説明する発光デバイスは、電極101と、電極102と、光を射出する機能と、を有する(図1A参照)。
【0066】
《発光スペクトル》
本発明の一態様の発光デバイスが射出する光は、例えば、極大を第1の波長EL1に有するスペクトルを備える(図1B参照)。なお、当該スペクトルが複数の極大を備える場合は、最も強度の強い極大の波長を波長EL1にする。
【0067】
《電極101および電極102の構成例1.》
電極101は、波長EL1において、電極102より高い反射率を備える。
【0068】
電極102は、波長EL1において、電極101より高い透過率を備え、電極102は、波長EL1において、光の一部を透過し、他の一部を反射する。
【0069】
電極102は、電極101との間に距離D2を備える。距離D2は、1.8を乗じると、波長EL1の0.3倍以上0.6倍以下の範囲に含まれる。
【0070】
例えば、距離D2が180nmである場合、(1.8×180)nmは324nmである。また、波長EL1が800nmである場合、(0.3×800)nmは240nmであり、(0.6×800)nmは480nmである。したがって、324nmは240nm以上480nm以下の範囲に含まれる。
【0071】
これにより、光学設計が容易になる。または、効率よく光を取り出すための光学設計が容易になる。または、効率よく光を取り出すことができる。または、射出する光のスペクトルの半値幅を、狭くすることができる。または、微小共振器構造を構成できる。または、中間層104の使用に伴う駆動電圧の上昇を、抑制することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な発光デバイスを提供することができる。
【0072】
なお、波長EL1の光に対して透光性を備える導電膜と、波長EL1の光に対して反射性を備える膜を、発光デバイスに用いることができる。
【0073】
例えば、波長EL1の光に対して透光性を備える導電膜を電極101に用いて、波長EL1の光に対して反射性を備える第1の膜を、発光層113aとの間に当該電極101を挟むように、配置することができる。言い換えると、反射性の第1の膜は、発光層113aとの間に透光性を備える導電膜を挟む。または、透光性を備える導電膜は電極101の機能に加え、電極102および反射性の第1の膜の間の距離を調整する機能を備える。このような構成においては、電極102は、反射性の第1の膜との間に距離D2を備える。
【0074】
また、波長EL1の光に対して透光性を備える導電膜を電極102に用い、波長EL1の光に対して反射性を備える第2の膜を、発光層113bとの間に当該電極102を挟むように、配置することができる。言い換えると、反射性の第2の膜は、発光層113bとの間に透光性を備える導電膜を挟む。または、透光性を備える導電膜は電極102の機能に加え、電極101および反射性の第2の膜の間の距離を調整する機能を備える。このような構成においては、反射性の第2の膜は、電極101との間に距離D2を備える。
【0075】
<発光デバイスの構成例3.>
また、本実施の形態で説明する発光デバイスは、距離D1が、波長EL1との間に、式(i)に示す関係を備える(図1A参照)。
【0076】
【数2】
【0077】
例えば、波長EL1が800nmである場合、(6.3×10-3)×800nmは5.04nmであり、(81.3×10-3)×800nmは65.04nmである。したがって、波長EL1が800nmである場合、好適な距離D1は、5.04nm以上65.04nm以下の範囲に含まれる。
【0078】
これにより、光を射出する複数の領域を、互いに近づけることができる。または、光学設計が容易になる。または、光学設計の自由度が高まる。または、効率よく光を取り出すための光学設計が容易になる。または、効率よく光を取り出すことができる。または、中間層104の使用に伴う駆動電圧の上昇を、抑制することができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な発光デバイスを提供することができる。
【0079】
《発光材料》
第1の発光材料は、溶液において、極大を波長PL1に有する第1の発光スペクトルを備える(図1B参照)。なお、当該スペクトルが複数の極大を備える場合は、最も強度の強い極大の波長を波長PL1にする。また、第1の発光スペクトルは、例えば、ジクロロメタンを溶媒に用い、第1の発光材料を溶質に用いる溶液において、測定することができる。なお、溶媒としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の溶媒を用いることができる。
【0080】
第2の発光材料は、溶液において、極大を波長PL2に有する第2の発光スペクトルを備える。なお、当該スペクトルが複数の極大を備える場合は、最も強度の強い極大の波長を波長PL2にする。
【0081】
《発光スペクトル》
波長EL1は、波長PL1との間に、100nm以下の差を備える。また、波長EL1は、波長PL2との間に、100nm以下の差を備える。例えば、波長EL1が800nmであり、波長PL1および波長PL2が780nmである場合、波長EL1は、波長PL1との間に、20nmの差を備える。
【0082】
これにより、発光デバイスの発光効率を高めることができる。または、効率よく光を取り出すことができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な発光デバイスを提供することができる。
【0083】
《発光層の構成例2.》
発光層113bは、第1の発光材料を含む。また、第1の発光材料と同じ材料を、第2の発光材料に用いることができる。
【0084】
これにより、発光デバイスの発光効率を高めることができる。または、高い輝度を得ることができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な発光デバイスを提供することができる。
【0085】
《中間層の構成例1.》
中間層104は、発光層113aとの間に距離D31を備え、中間層104は、発光層113bとの間に距離D32を備える(図1A参照)。また、距離D31は5nm以上であり、距離D32は5nm以上である。
【0086】
これにより、例えば、発光層113aを中間層104から遠ざけることができる。または、例えば、発光層113aの中間層104への接近がもたらす発光効率の低下を、抑制することができる。または、発光デバイスの発光効率を高めることができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な発光デバイスを提供することができる。
【0087】
《中間層104の構成例2.》
正孔輸送性材料とアクセプター性材料(電子受容性材料)とを含む構成を、中間層104に用いることができる。または、電子輸送性材料とドナー性材料とを含む構成を、中間層104に用いることができる。
【0088】
具体的には、発光ユニットに用いることができる材料(正孔輸送性材料、アクセプター性材料、電子輸送性材料、及びドナー性材料)を、中間層104に用いることができる。なお、発光ユニットに用いることができる材料については、後述する発光ユニットの構成例の説明を参照することができる。
【0089】
複数の発光ユニットの間に中間層104を挟む構成にすることで、中間層104を用いない構成と比較して、駆動電圧の上昇を抑制することができる。または、消費電力を抑制することができる。
【0090】
《電極101および電極102の構成例2.》
電極101と電極102は、好ましくは、1×10-2Ωcm以下の抵抗率を備える。なお、図2に示す発光デバイスにおいて、電極101は基板上にスパッタリング法により形成される。また、電極102は発光ユニット上にスパッタリング法や真空蒸着法により形成される。
【0091】
また、電極101と電極102の少なくとも一方は、発光デバイスが射出する光に対して透光性を有する。例えば、発光デバイスが射出する光に対し5%以上の透過率を備える。
【0092】
また、例えば、発光デバイスが射出する光に対し20%以上95%以下、好ましくは40%以上70%以下の反射率を備える。
【0093】
単数または複数の導電性材料を、電極101及び電極102に、単層または積層として用いることができる。電極101及び電極102を形成する材料としては、以下に示す材料を適宜組み合わせて用いることができる。例えば、金属、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物などを適宜用いることができる。具体的には、In-Sn酸化物(ITOともいう)、In-Si-Sn酸化物(ITSOともいう)、In-Zn酸化物、In-W-Zn酸化物が挙げられる。その他、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)などの金属、及びこれらを適宜組み合わせて含む合金を用いることもできる。その他、上記例示のない元素周期表の第1族または第2族に属する元素(例えば、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr))、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)などの希土類金属及びこれらを適宜組み合わせて含む合金、グラフェン等を用いることができる。
【0094】
《発光ユニットの構成例2.》
本実施の形態で説明する発光デバイスは、発光ユニット103aおよび発光ユニット103bを備える。
【0095】
発光ユニット103aは、正孔注入層111a、正孔輸送層112a、発光層113a、電子輸送層114aおよび電子注入層115aを備えることができる。
【0096】
また、発光ユニット103bは、正孔輸送層112b、発光層113b、電子輸送層114bおよび電子注入層115bを備えることができる。なお、発光ユニット103aに用いることができる材料を、発光ユニット103bに用いることができる。
【0097】
なお、本実施の形態で示す発光デバイスの作製には、蒸着法などの真空プロセスや、スピンコート法やインクジェット法などの溶液プロセスを用いることができる。蒸着法を用いる場合には、スパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、分子線蒸着法、真空蒸着法などの物理蒸着法(PVD法)や、化学蒸着法(CVD法)等を用いることができる。特にEL層に含まれる機能層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層)及び電荷発生層については、蒸着法(真空蒸着法等)、塗布法(ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法等)、印刷法(インクジェット法、スクリーン(孔版印刷)法、オフセット(平版印刷)法、フレキソ(凸版印刷)法、グラビア法、マイクロコンタクト法等)などの方法により形成することができる。
【0098】
また、機能層及び電荷発生層の材料は、それぞれ、上述の材料に限定されない。例えば、機能層の材料として、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)、中分子化合物(低分子と高分子の中間領域の化合物:分子量400乃至4000)、無機化合物(量子ドット材料等)等を用いてもよい。なお、量子ドット材料としては、コロイド状量子ドット材料、合金型量子ドット材料、コア・シェル型量子ドット材料、コア型量子ドット材料などを用いることができる。
【0099】
[正孔注入層及び正孔輸送層]
例えば、正孔注入層111aは、陽極から発光ユニット103aに正孔を注入する層であり、正孔注入性の高い材料を含む層である。なお、電極101を陽極に用いることができる。例えば、図2に示す発光デバイスにおいて、電極101上に正孔注入層111a及び正孔輸送層112aが真空蒸着法により順次積層形成される。
【0100】
正孔注入性の高い材料としては、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の遷移金属酸化物、フタロシアニン(略称:HPc)や銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物等を用いることができる。
【0101】
正孔注入性の高い材料としては、4,4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’-ビス(N-{4-[N’-(3-メチルフェニル)-N’-フェニルアミノ]フェニル}-N-フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等を用いることができる。
【0102】
正孔注入性の高い材料としては、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)等を用いることができる。または、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(略称:PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物等を用いることもできる。
【0103】
正孔注入性の高い材料としては、正孔輸送性材料とアクセプター性材料(電子受容性材料)とを含む複合材料を用いることもできる。この場合、アクセプター性材料により正孔輸送性材料から電子が引き抜かれて正孔注入層111aで正孔が発生し、正孔輸送層112aを介して発光層113aに正孔が注入される。なお、正孔注入層111aは、正孔輸送性材料とアクセプター性材料とを含む複合材料からなる単層で形成してもよく、正孔輸送性材料とアクセプター性材料とをそれぞれ別の層で積層して形成してもよい。
【0104】
正孔輸送層112aは、正孔注入層111aによって、電極101から注入された正孔を発光層113aに輸送する層である。正孔輸送層112は、正孔輸送性材料を含む層である。正孔輸送層112aに用いる正孔輸送性材料は、特に正孔注入層111aのHOMO準位と同じまたは近いHOMO準位を有するものを用いることが好ましい。
【0105】
正孔注入層111aに用いるアクセプター性材料としては、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を用いることができる。具体的には、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムが挙げられる。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。その他、キノジメタン誘導体、クロラニル誘導体、ヘキサアザトリフェニレン誘導体などの有機アクセプターを用いることができる。電子吸引基(ハロゲン基やシアノ基)を有するものとしては、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT-CN)、1,3,4,5,7,8-ヘキサフルオロテトラシアノ-ナフトキノジメタン(略称:F6-TCNNQ)等を挙げることができる。特に、HAT-CNのように複素原子を複数有する縮合芳香環に電子吸引基が結合している化合物が、熱的に安定であり好ましい。また、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基やシアノ基)を有する[3]ラジアレン誘導体は、電子受容性が非常に高いため好ましく、具体的にはα,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,6-ジクロロ-3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンアセトニトリル]などが挙げられる。
【0106】
正孔注入層111a及び正孔輸送層112aに用いる正孔輸送性材料としては、10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質が好ましい。なお、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものも用いることができる。
【0107】
正孔輸送性材料としては、π電子過剰型複素芳香族化合物(例えばカルバゾール誘導体、チオフェン誘導体、フラン誘導体など)や芳香族アミン化合物(芳香族アミン骨格を有する化合物)等の正孔輸送性の高い材料が好ましい。
【0108】
カルバゾール誘導体(カルバゾール骨格を有する化合物)としては、ビカルバゾール誘導体(例えば、3,3’-ビカルバゾール誘導体)、カルバゾリル基を有する芳香族アミン化合物等が挙げられる。
【0109】
ビカルバゾール誘導体(例えば、3,3’-ビカルバゾール誘導体)としては、具体的には、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)、9,9’-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール、9,9’-ビス(1,1’-ビフェニル-3-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール、9-(1,1’-ビフェニル-3-イル)-9’-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:mBPCCBP)、9-(2-ナフチル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:βNCCP)などが挙げられる。
【0110】
カルバゾリル基を有する芳香族アミン化合物としては、具体的には、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、N-(4-ビフェニル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9-フェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCBiF)、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、4-フェニルジフェニル-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)アミン(略称:PCA1BP)、N,N’-ビス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N,N’-ジフェニルベンゼン-1,3-ジアミン(略称:PCA2B)、N,N’,N’’-トリフェニル-N,N’,N’’-トリス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)ベンゼン-1,3,5-トリアミン(略称:PCA3B)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-アミン(略称:PCBASF)、PCzPCA1、PCzPCA2、PCzPCN1、3-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA1)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA2)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-(1-ナフチル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzTPN2)、2-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:PCASF)、N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-(4-フェニル)フェニルアニリン(略称:YGA1BP)、N,N’-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニル-9,9-ジメチルフルオレン-2,7-ジアミン(略称:YGA2F)、4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)などが挙げられる。
【0111】
カルバゾール誘導体としては、上記に加えて、3-[4-(9-フェナントリル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPPn)、3-[4-(1-ナフチル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPN)、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、1,3,5-トリス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)等が挙げられる。
【0112】
チオフェン誘導体(チオフェン骨格を有する化合物)及びフラン誘導体(フラン骨格を有する化合物)としては、具体的には、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)等が挙げられる。
【0113】
芳香族アミン化合物としては、具体的には、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα-NPD)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-N-{9,9-ジメチル-2-[N’-フェニル-N’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9H-フルオレン-7-イル}フェニルアミン(略称:DFLADFL)、N-(9,9-ジメチル-2-ジフェニルアミノ-9H-フルオレン-7-イル)ジフェニルアミン(略称:DPNF)、2-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:DPASF)、2,7-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:DPA2SF)、4,4’,4’’-トリス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:1’-TNATA)、TDATA、m-MTDATA、N,N’-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、DPAB、DNTPD、DPA3B等が挙げられる。
【0114】
正孔輸送性材料としては、PVK、PVTPA、PTPDMA、Poly-TPDなどの高分子化合物を用いることもできる。
【0115】
正孔輸送性材料は、上記に限られることなく公知の様々な材料を1種または複数種組み合わせて、正孔注入層111a及び正孔輸送層112aに用いることができる。
【0116】
[発光層]
発光層113aは、発光材料を含む層である。例えば、図2に示す発光デバイスにおいて、発光層113aは正孔輸送層112a上に真空蒸着法により形成される。
【0117】
本発明の一態様の発光デバイスは、発光材料として、発光性の有機化合物を有する。当該発光性の有機化合物は、近赤外光を発する。具体的には、発光性の有機化合物が発する光の最大ピーク波長は、780nmより大きく900nm以下である。
【0118】
発光性の有機化合物として、例えば、実施の形態1に示す有機金属錯体を用いることができる。また、発光性の有機化合物として、後述する実施例に示す有機金属錯体を用いることもできる。
【0119】
発光層113aは、1種または複数種の発光材料を有することができる。
【0120】
発光層113aは、発光材料(ゲスト材料)に加えて、1種または複数種の有機化合物(ホスト材料、アシスト材料等)を有していてもよい。1種または複数種の有機化合物としては、本実施の形態で説明する正孔輸送性材料及び電子輸送性材料の一方または双方を用いることができる。また、1種または複数種の有機化合物として、バイポーラ性材料を用いてもよい。
【0121】
発光層113aに用いることができる発光材料として、特に限定は無く、一重項励起エネルギーを近赤外光領域の発光に変える発光材料、または三重項励起エネルギーを近赤外光領域の発光に変える発光材料を用いることができる。
【0122】
一重項励起エネルギーを発光に変える発光材料としては、蛍光を発する物質(蛍光材料)が挙げられ、例えば、ピレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン誘導体、フルオレン誘導体、カルバゾール誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、フェナントレン誘導体、ナフタレン誘導体などが挙げられる。
【0123】
三重項励起エネルギーを発光に変える発光材料としては、例えば、燐光を発する物質(燐光材料)や熱活性化遅延蛍光を示す熱活性化遅延蛍光(Thermally activated delayed fluorescence:TADF)材料が挙げられる。
【0124】
燐光材料としては、例えば、4H-トリアゾール骨格、1H-トリアゾール骨格、イミダゾール骨格、ピリミジン骨格、ピラジン骨格、またはピリジン骨格を有する有機金属錯体(特にイリジウム錯体)や、電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属錯体(特にイリジウム錯体)や、白金錯体、希土類金属錯体等が挙げられる。
【0125】
また、本発明の一態様の発光デバイスは、近赤外光を発する発光材料以外の発光材料を有していてもよい。本発明の一態様の発光デバイスは、例えば、近赤外光を発する発光材料に加えて、可視光(赤色、青色、緑色など)を発する発光材料を有していてもよい。
【0126】
発光層113aに用いる有機化合物(ホスト材料、アシスト材料等)としては、発光材料のエネルギーギャップより大きなエネルギーギャップを有する物質を、一種もしくは複数種選択して用いることができる。
【0127】
発光層113aに用いる発光材料が蛍光材料である場合、発光材料と組み合わせて用いる有機化合物としては、一重項励起状態のエネルギー準位が大きく、三重項励起状態のエネルギー準位が小さい有機化合物を用いるのが好ましい。
【0128】
一部上記の具体例と重複するが、発光材料(蛍光材料、燐光材料)との好ましい組み合わせという観点から、以下に有機化合物の具体例を示す。
【0129】
発光材料が蛍光材料である場合、発光材料と組み合わせて用いることができる有機化合物としては、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ジベンゾ[g,p]クリセン誘導体等の縮合多環芳香族化合物が挙げられる。
【0130】
蛍光材料と組み合わせて用いる有機化合物(ホスト材料)の具体例としては、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:PCzPA)、3,6-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:DPCzPA)、PCPN、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、N,N-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:CzA1PA)、4-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、N,9-ジフェニル-N-{4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]フェニル}-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPBA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、6,12-ジメトキシ-5,11-ジフェニルクリセン、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、CzPA、7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzPA)、6-[3-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン(略称:2mBnfPPA)、9-フェニル-10-{4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)-ビフェニル-4’-イル}-アントラセン(略称:FLPPA)、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、9,9’-ビアントリル(略称:BANT)、9,9’-(スチルベン-3,3’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’-(スチルベン-4,4’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、1,3,5-トリ(1-ピレニル)ベンゼン(略称:TPB3)、5,12-ジフェニルテトラセン、5,12-ビス(ビフェニル-2-イル)テトラセンなどが挙げられる。
【0131】
発光材料が燐光材料である場合、発光材料と組み合わせて用いる有機化合物としては、発光材料の三重項励起エネルギー(基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差)よりも三重項励起エネルギーの大きい有機化合物を選択すればよい。
【0132】
励起錯体を形成させるべく複数の有機化合物(例えば、第1のホスト材料、及び第2のホスト材料(またはアシスト材料)等)を発光材料と組み合わせて用いる場合は、これらの複数の有機化合物を燐光材料(特に有機金属錯体)と混合して用いることが好ましい。
【0133】
このような構成とすることにより、励起錯体から発光材料へのエネルギー移動であるExTET(Exciplex-Triplet Energy Transfer)を用いた発光を効率よく得ることができる。なお、複数の有機化合物の組み合わせとしては、励起錯体が形成しやすいものが好ましく、正孔を受け取りやすい化合物(正孔輸送性材料)と、電子を受け取りやすい化合物(電子輸送性材料)とを組み合わせることが特に好ましい。なお、正孔輸送性材料及び電子輸送性材料の具体例については、本実施の形態で示す材料を用いることができる。この構成により、発光デバイスの高効率、低電圧、長寿命を同時に実現できる。
【0134】
発光材料が燐光材料である場合に発光材料と組み合わせて用いることができる有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、亜鉛やアルミニウム系の金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体等が挙げられる。
【0135】
なお、上記のうち、正孔輸送性の高い有機化合物である芳香族アミン化合物(芳香族アミン骨格を有する化合物)、カルバゾール誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体(チオフェン誘導体)、ジベンゾフラン誘導体(フラン誘導体)の具体例としては、上記に示した正孔輸送性材料の具体例と同じものが挙げられる。
【0136】
電子輸送性の高い有機化合物である、亜鉛やアルミニウム系の金属錯体の具体例としては、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等が挙げられる。
【0137】
この他、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。
【0138】
電子輸送性の高い有機化合物である、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体の具体例としては、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、3-(4-tert-ブチルフェニル)-4-(4-エチルフェニル)-5-(4-ビフェニリル)-1,2,4-トリアゾール(略称:p-EtTAZ)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs、バソフェナントロリン(略称:Bphen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBphen)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、2-[4-(3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzPDBq-III)、7-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq-II)、及び6-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDBTPDBq-II)などが挙げられる。
【0139】
電子輸送性の高い有機化合物である、ジアジン骨格を有する複素環化合物、トリアジン骨格を有する複素環化合物、ピリジン骨格を有する複素環化合物の具体例としては、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス[3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)、4,6-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mCzP2Pm)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、9-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-2,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:mPCCzPTzn-02)、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などが挙げられる。
【0140】
電子輸送性の高い有機化合物としては、ポリ(2,5-ピリジンジイル)(略称:PPy)、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(ピリジン-3,5-ジイル)](略称:PF-Py)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(2,2’-ビピリジン-6,6’-ジイル)](略称:PF-BPy)のような高分子化合物を用いることもできる。
【0141】
TADF材料とは、三重項励起状態をわずかな熱エネルギーによって一重項励起状態にアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態からの発光(蛍光)を効率よく呈する材料のことである。また、熱活性化遅延蛍光が効率良く得られる条件としては、三重項励起準位と一重項励起準位のエネルギー差が0eV以上0.2eV以下、好ましくは0eV以上0.1eV以下であることが挙げられる。また、TADF材料における遅延蛍光とは、通常の蛍光と同様のスペクトルを持ちながら、寿命が著しく長い発光をいう。その寿命は、10-6秒以上、好ましくは10-3秒以上である。
【0142】
TADF材料としては、例えば、フラーレンやその誘導体、プロフラビン等のアクリジン誘導体、エオシン等が挙げられる。また、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。金属含有ポルフィリンとしては、例えば、プロトポルフィリン-フッ化スズ錯体(略称:SnF(Proto IX))、メソポルフィリン-フッ化スズ錯体(略称:SnF(Meso IX))、ヘマトポルフィリン-フッ化スズ錯体(略称:SnF(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル-フッ化スズ錯体(略称:SnF(Copro III-4Me))、オクタエチルポルフィリン-フッ化スズ錯体(略称:SnF(OEP))、エチオポルフィリン-フッ化スズ錯体(略称:SnF(Etio I))、オクタエチルポルフィリン-塩化白金錯体(略称:PtClOEP)等が挙げられる。
【0143】
その他にも、2-(ビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール-11-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:PIC-TRZ)、PCCzPTzn、2-[4-(10H-フェノキサジン-10-イル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PXZ-TRZ)、3-[4-(5-フェニル-5,10-ジヒドロフェナジン-10-イル)フェニル]-4,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール(略称:PPZ-3TPT)、3-(9,9-ジメチル-9H-アクリジン-10-イル)-9H-キサンテン-9-オン(略称:ACRXTN)、ビス[4-(9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン(略称:DMAC-DPS)、10-フェニル-10H,10’H-スピロ[アクリジン-9,9’-アントラセン]-10’-オン(略称:ACRSA)、等のπ電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有する複素環化合物を用いることができる。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環のドナー性とπ電子不足型複素芳香環のアクセプター性が共に強くなり、一重項励起状態と三重項励起状態のエネルギー差が小さくなるため、特に好ましい。
【0144】
なお、TADF材料を用いる場合、他の有機化合物と組み合わせて用いることもできる。特に、上述したホスト材料、正孔輸送性材料、電子輸送性材料と組み合わせることができる。
【0145】
また、上記の材料は、低分子材料や高分子材料と組み合わせることにより発光層113aの形成に用いることができる。また、成膜には、公知の方法(蒸着法や塗布法や印刷法など)を適宜用いることができる。
【0146】
[電子輸送層]
電子輸送層114aは、電子注入層115aによって、電極102から注入された電子を発光層113aに輸送する層である。なお、電子輸送層114aは、電子輸送性材料を含む層である。電子輸送層114aに用いる電子輸送性材料は、1×10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質が好ましい。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものも用いることができる。例えば、図2に示す発光デバイスにおいて、電子輸送層114aは発光層113a上に形成される。
【0147】
電子輸送性材料としては、キノリン骨格を有する金属錯体、ベンゾキノリン骨格を有する金属錯体、オキサゾール骨格を有する金属錯体、チアゾール骨格を有する金属錯体等の他、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、キノリン配位子を有するキノリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、その他含窒素複素芳香族化合物を含むπ電子不足型複素芳香族化合物等の電子輸送性の高い材料を用いることができる。
【0148】
電子輸送性材料の具体例としては、上記に示した材料を用いることができる。
【0149】
[電子注入層]
電子注入層115aは、電子注入性の高い物質を含む層である。例えば、図2に示す発光デバイスにおいて、電子注入層115aは電子輸送層114a上に真空蒸着法により形成される。
【0150】
電子注入層115aには、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、リチウム酸化物(LiO)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウム(ErF)のような希土類金属化合物を用いることができる。また、電子注入層115aにエレクトライドを用いてもよい。エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。なお、上述した電子輸送層114aを構成する物質を用いることもできる。
【0151】
また、電子注入層115aに、電子輸送性材料とドナー性材料(電子供与性材料)とを含む複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性及び電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層114aに用いる電子輸送性材料(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0152】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0153】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置の構成について、図3および図4を参照しながら説明する。
【0154】
図3は本発明の一態様の発光装置の構成を説明する図である。図3Aは本発明の一態様の発光装置の上面図であり、図3Bは、図3Aに示す切断線X1-Y1および切断線X2-Y2における発光装置の断面図である。
【0155】
図4は本発明の一態様の発光装置の構成を説明する図である。図4Aは本発明の一態様の発光装置の上面図であり、図4Bは、図4Aに示す切断線A-A’における発光装置の断面図である。
【0156】
<発光装置の構成例1>
図3A乃至図3Cに示す発光装置は、例えば、照明装置に用いることができる。発光装置は、ボトムエミッション、トップエミッション、デュアルエミッションのいずれであってもよい。
【0157】
図3Bに示す発光装置は、基板490a、基板490b、導電層406、導電層416、絶縁層405、有機ELデバイス450(第1の電極401、EL層402、及び第2の電極403)、及び接着層407を有する。有機ELデバイス450は、発光素子、有機EL素子、発光デバイスなどということもできる。EL層402は、発光層に、発光性の有機化合物として、実施の形態1に示す有機金属錯体を有することが好ましい。
【0158】
有機ELデバイス450は、基板490a上の第1の電極401と、第1の電極401上のEL層402と、EL層402上の第2の電極403とを有する。基板490a、接着層407、及び基板490bによって、有機ELデバイス450は封止されている。
【0159】
第1の電極401、導電層406、導電層416の端部は絶縁層405で覆われている。導電層406は第1の電極401と電気的に接続し、導電層416は第2の電極403と電気的に接続する。第1の電極401を介して絶縁層405に覆われた導電層406は、補助配線として機能し、第1の電極401と電気的に接続する。有機ELデバイス450の電極と電気的に接続する補助配線を有すると、電極の抵抗に起因する電圧降下を抑制できるため、好ましい。導電層406は、第1の電極401上に設けられていてもよい。また、絶縁層405上等に、第2の電極403と電気的に接続する補助配線を有していてもよい。
【0160】
基板490a及び基板490bには、それぞれ、ガラス、石英、セラミック、サファイア、有機樹脂などを用いることができる。基板490a及び基板490bに可撓性を有する材料を用いると、表示装置の可撓性を高めることができる。
【0161】
発光装置の発光面には、光取り出し効率を高めるための光取り出し構造、ゴミの付着を抑制する帯電防止膜、汚れを付着しにくくする撥水性の膜、使用に伴う傷の発生を抑制するハードコート膜、衝撃吸収層等を配置してもよい。
【0162】
絶縁層405に用いることのできる絶縁材料としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウムなどの無機絶縁材料が挙げられる。
【0163】
接着層407としては、紫外線硬化型等の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型接着剤を用いることができる。これら接着剤としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、イミド樹脂、PVC(ポリビニルクロライド)樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート)樹脂等が挙げられる。特に、エポキシ樹脂等の透湿性が低い材料が好ましい。また、二液混合型の樹脂を用いてもよい。また、接着シート等を用いてもよい。
【0164】
図3Cに示す発光装置は、バリア層490c、導電層406、導電層416、絶縁層405、有機ELデバイス450、接着層407、バリア層423、及び基板490bを有する。
【0165】
図3Cに示すバリア層490cは、基板420、接着層422、及びバリア性の高い絶縁層424を有する。
【0166】
図3Cに示す発光装置では、バリア性の高い絶縁層424とバリア層423との間に、有機ELデバイス450が配置されている。したがって、基板420及び基板490bに比較的防水性の低い樹脂フィルムなどを用いても、有機ELデバイスに水などの不純物が入り込み寿命が低減することを、抑制することができる。
【0167】
基板420及び基板490bには、それぞれ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン、アラミド等)、ポリシロキサン樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ABS樹脂、セルロースナノファイバー等を用いることができる。基板420及び基板490bには、可撓性を有する程度の厚さのガラスを用いてもよい。
【0168】
バリア性の高い絶縁層424としては、無機絶縁膜を用いることが好ましい。無機絶縁膜としては、例えば、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。また、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜、及び酸化ネオジム膜等を用いてもよい。また、上述の絶縁膜を2以上積層して用いてもよい。
【0169】
バリア層423には、少なくとも1層の無機膜を有することが好ましい。例えば、バリア層423には、無機膜の単層構造や、無機膜と有機膜との積層構造を適用することができる。無機膜としては、上記無機絶縁膜が好適である。当該積層構造としては、例えば、酸化窒化シリコン膜と、酸化シリコン膜と、有機膜と、酸化シリコン膜と、窒化シリコン膜と、を順に形成する構成などが挙げられる。保護層を無機膜と有機膜との積層構造とすることで、有機ELデバイス450に入り込みうる不純物(代表的には、水素、水など)を好適に抑制することができる。
【0170】
バリア性の高い絶縁層424及び有機ELデバイス450は、可撓性を有する基板420上に直接形成することができる。この場合、接着層422は不要である。また、絶縁層424及び有機ELデバイス450は、硬質基板上に剥離層を介して形成した後、基板420に転置することができる。例えば、剥離層に、熱、力、レーザ光などを与えることにより、硬質基板から絶縁層424及び有機ELデバイス450を剥離した後、接着層422を用いて基板420を貼り合わせることで、基板420に転置してもよい。剥離層としては、例えば、タングステン膜と酸化シリコン膜とを含む無機膜の積層構造や、ポリイミド等の有機樹脂膜等を用いることができる。硬質基板を用いる場合、樹脂基板などに比べて、高温をかけて絶縁層424を形成することができるため、絶縁層424を緻密で極めてバリア性の高い絶縁膜とすることができる。
【0171】
<発光装置の構成例2>
本発明の一態様の発光装置は、パッシブマトリクス型またはアクティブマトリクス型とすることができる。アクティブマトリクス型の発光装置について図4を用いて説明する。
【0172】
図4A図4Bに示すアクティブマトリクス型の発光装置は、画素部302、回路部303、回路部304a、及び回路部304bを有する。
【0173】
回路部303、回路部304a、及び回路部304bは、それぞれ、走査線駆動回路(ゲートドライバ)または信号線駆動回路(ソースドライバ)として機能することができる。または、外付けのゲートドライバまたはソースドライバと、画素部302と、を電気的に接続する回路であってもよい。
【0174】
第1の基板301上には、引き回し配線307が設けられる。引き回し配線307は、外部入力端子であるFPC308と電気的に接続される。FPC308は、回路部303、回路部304a、及び回路部304bに外部からの信号(例えば、ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等)や電位を伝達する。また、FPC308にはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていてもよい。図4A図4Bに示す構成は、発光デバイス(または発光装置)及びFPCを有する発光モジュールということもできる。
【0175】
画素部302は、有機ELデバイス317、トランジスタ311、及びトランジスタ312を有する画素を、複数有する。トランジスタ312は、有機ELデバイス317が有する第1の電極313と電気的に接続されている。トランジスタ311は、スイッチング用トランジスタとして機能する。トランジスタ312は、電流制御用トランジスタとして機能する。なお、各画素が有するトランジスタの数は、特に限定されることはなく、必要に応じて適宜設けることができる。
【0176】
回路部303は、トランジスタ309、トランジスタ310等を含む、複数のトランジスタを有する。回路部303は、単極性(N型またはP型のいずれか一方のみ)のトランジスタを含む回路で形成されてもよいし、N型のトランジスタとP型のトランジスタを含むCMOS回路で形成されてもよい。また、外部に駆動回路を有する構成としてもよい。
【0177】
本実施の形態の発光装置が有するトランジスタの構造は特に限定されない。例えば、プレーナ型のトランジスタ、スタガ型のトランジスタ、逆スタガ型のトランジスタ等を用いることができる。また、トップゲート型またはボトムゲート型のいずれのトランジスタ構造としてもよい。または、チャネルが形成される半導体層の上下にゲートが設けられていてもよい。
【0178】
トランジスタに用いる半導体材料の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体、結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、または一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
【0179】
トランジスタの半導体層は、金属酸化物(酸化物半導体ともいう)を有することが好ましい。または、トランジスタの半導体層は、シリコンを有していてもよい。シリコンとしては、アモルファスシリコン、結晶性のシリコン(低温ポリシリコン、単結晶シリコンなど)などが挙げられる。
【0180】
半導体層は、例えば、インジウムと、M(Mは、ガリウム、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、スズ、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、及びマグネシウムから選ばれた一種または複数種)と、亜鉛と、を有することが好ましい。特に、Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、及びスズから選ばれた一種または複数種であることが好ましい。
【0181】
特に、半導体層として、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物(IGZOとも記す)を用いることが好ましい。
【0182】
半導体層がIn-M-Zn酸化物の場合、In-M-Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットは、Inの原子数比がMの原子数比以上であることが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:3、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=5:1:7、In:M:Zn=5:1:8、In:M:Zn=6:1:6、In:M:Zn=5:2:5等が挙げられる。
【0183】
回路部303、回路部304a、回路部304bが有するトランジスタと、画素部302が有するトランジスタは、同じ構造であってもよく、異なる構造であってもよい。回路部303、回路部304a、回路部304bが有する複数のトランジスタの構造は、全て同じであってもよく、2種類以上あってもよい。同様に、画素部302が有する複数のトランジスタの構造は、全て同じであってもよく、2種類以上あってもよい。
【0184】
第1の電極313の端部は、絶縁層314により覆われている。なお、絶縁層314には、ネガ型の感光性樹脂、ポジ型の感光性樹脂(アクリル樹脂)などの有機化合物や、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン等の無機化合物を用いることができる。絶縁層314の上端部または下端部には、曲率を有する曲面を有するのが好ましい。これにより、絶縁層314の上層に形成される膜の被覆性を良好なものとすることができる。
【0185】
第1の電極313上にはEL層315が設けられ、EL層315上には第2の電極316が設けられる。EL層315は、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層等を有する。
【0186】
複数のトランジスタ及び複数の有機ELデバイス317は、第1の基板301、第2の基板306、及びシール材305によって、封止されている。第1の基板301、第2の基板306、及びシール材305で囲まれた空間318は、不活性気体(窒素やアルゴン等)や有機物(シール材305を含む)で充填されていてもよい。
【0187】
シール材305には、エポキシ樹脂やガラスフリットを用いることができる。なお、シール材305には、できるだけ水分や酸素を透過しない材料を用いることが好ましい。シール材としてガラスフリットを用いる場合には、接着性の観点から第1の基板301及び第2の基板306はガラス基板であることが好ましい。
【0188】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0189】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光デバイスを用いることができる電子機器について図5を用いて説明する。
【0190】
図5Aは指の静脈を対象とした生体認証機器であり、筐体911、光源912、検知ステージ913等を有する。検知ステージ913に指を載せることにより静脈の形状を撮像することができる。検知ステージ913の上部には近赤外光を発する光源912が設置され、下部には撮像装置914が設置される。検知ステージ913は近赤外光を透過する材料で構成されており、光源912から照射され、指を透過した近赤外光を撮像装置914で撮像することができる。なお、検知ステージ913と撮像装置914の間に光学系が設けられていてもよい。上記機器の構成は、手のひらの静脈を対象とした生体認証機器に利用することもできる。
【0191】
本発明の一態様の発光デバイスを、光源912に用いることができる。本発明の一態様の発光デバイスは、湾曲した形状に設置することができ、対象物に対して均一性よく光を照射することができる。特に波長760nm以上900nm以下に最も強いピーク強度を有する近赤外光を発する発光デバイスであることが好ましい。指や手のひらなどを透過した光を受光して画像化することで静脈の位置を検出することができる。当該作用は生体認証として利用することができる。また、グローバルシャッタ方式と組み合わせることで、被写体に動きがあっても精度の高いセンシングが可能となる。
【0192】
また、光源912は、図5Bに示す発光部915、916、917のように、複数の発光部を有することができる。発光部915、916、917のそれぞれは、発光する波長が異なっていてもよい、また、それぞれを別のタイミングで照射することもできる。したがって、照射する光の波長や角度を変えることにより異なる画像を連続して撮像することができるため、複数の画像を認証に利用し、高いセキュリティ実現することができる。
【0193】
図5Cは手のひらの静脈を対象とした生体認証機器であり、筐体921、操作ボタン922、検知部923、近赤外光を発する光源924等を有する。検知部923上に手をかざすことにより手のひらの静脈の形状を認識することができる。また、操作ボタンにより暗証番号などを入力することもできる。検知部923の周囲には光源924が配置され対象物(手)を照射する。そして、対象物からの反射光が検知部923に入射される。本発明の一態様の発光デバイスを、光源924に用いることができる。検知部923直下には撮像装置925が配置され、対象物の像(手の全体像)を取り込むことができる。なお、検知部923と撮像装置925の間に光学系が設けられていてもよい。上記機器の構成は、指の静脈を対象とした生体認証機器に利用することもできる。
【0194】
図5Dは非破壊検査機器であり、筐体931、操作パネル932、搬送機構933、モニタ934、検知ユニット935、近赤外光を発する光源938等を有する。本発明の一態様の発光デバイスを、光源938に用いることができる。被検査部材936は搬送機構933で検知ユニット935の直下に運搬される。被検査部材936には光源938から近赤外光が照射され、その透過光を検知ユニット935内に設けられた撮像装置937で撮像する。撮像された画像は、モニタ934に映し出される。その後、筐体931の出口まで運搬され、不良品が分別されて回収される。近赤外光を用いた撮像により、非検査部材内部の欠陥や異物などの不良要素を非破壊で高速に検出することができる。
【0195】
図5Eは携帯電話機であり、筐体981、表示部982、操作ボタン983、外部接続ポート984、スピーカ985、マイク986、第1のカメラ987、第2のカメラ988等を有する。当該携帯電話機は、表示部982にタッチセンサを備える。筐体981及び表示部982は可撓性を有する。電話を掛ける、或いは文字を入力するなどのあらゆる操作は、指やスタイラスなどで表示部982に触れることで行うことができる。第1のカメラ987では可視光画像を取得することができ、第2のカメラ988では赤外光画像(近赤外光画像)を取得することができる。図5Eに示す携帯電話機または表示部982は、本発明の一態様の発光デバイスを有していてもよい。
【0196】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【実施例1】
【0197】
本実施例では、本発明の一態様の発光デバイス1の構造、作製方法、及び特性について、図6および図8乃至図13を用いて説明する。
【0198】
本実施例で作製した発光デバイス1は、中間層816と、発光ユニット802aと、発光ユニット802bと、電極801と電極803と、光を射出する機能と、を有する(図6参照)。
【0199】
中間層816は発光ユニット802aおよび発光ユニット802bの間に挟まれる領域を備え、中間層816は発光ユニット802aまたは発光ユニット802bの一方に電子を供給し、他方に正孔を供給する機能を備える。
【0200】
発光ユニット802aは電極801および中間層816間に挟まれる領域を備え、発光ユニット802aは発光層813aを備える。また、発光層813aは第1の発光材料を含む。なお、ビス{4,6-ジメチル-2-[3-(3,5-ジメチルフェニル)-2-ベンゾ[g]キノキサリニル-κN]フェニル-κC}(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト-κO,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dmdpbq)(dpm)])(構造式(100))を第1の発光材料に用いた。なお、[Ir(dmdpbq)2(dpm)]の合成例は、参考例で後述する。
【0201】
発光ユニット802bは中間層816および電極803の間に挟まれる領域を備え、発光ユニット802bは発光層813bを備える。また、発光層813bも第1の発光材料を含む。発光層813bは発光層813aとの間に距離D1を備える。距離D1は、5nm以上65nm以下である。なお、発光デバイス1において、距離D1は(15+0.1+5+10)nm=30.1nmであった(表1参照)。
【0202】
作製した発光デバイス1が射出する光のスペクトルは、極大を波長802nmに備える(図13参照)。なお、(6.3×10-3)×802nm=5.05nmであり、また、(81.3×10-3)×802nm=65.2nmである。したがって、距離D1(=30.1nm)は、5.05nm以上65.2nm以下の範囲に含まれる。
【0203】
電極801は、波長802nmにおいて、電極803より高い反射率を備える。また、電極803は、波長802nmにおいて、電極801より高い透過率を備え、光の一部を透過し、他の一部を反射する。
【0204】
電極803は、電極801との間に距離D2を備える。距離D2は、1.8を乗じると、波長802nmの0.3倍以上0.6倍以下の範囲に含まれる。なお、発光デバイス1は、反射性の第1の膜を備え、反射性の第1の膜は発光層813aとの間に透光性を備える導電膜を挟む。具体的には、銀(Ag)とパラジウム(Pd)と銅(Cu)の合金(Ag-Pd-Cu(APC))の膜を備え、当該APCの膜は発光層813aとの間に10nmのITSOを挟む。この構成において、距離D2は(10+20+20+15+15+0.1+5+10+15+20+45+1)nm=176.1nmであった。したがって、距離D2(=176.1nm)に、1.8を乗じた値は、(1.8×176.1=)316.98nmであり、当該値は(0.3×802=)240.6nm以上(0.6×802=)481.2nm以下の範囲に含まれる。
【0205】
また、第1の発光材料は、溶液において、極大を波長PL1に有する発光スペクトルを備え、波長EL1は、第2の波長PL1との間に、100nm以下の差を備える。
【0206】
第1の発光材料に用いた[Ir(dmdpbq)(dpm)]は、ジクロロメタン溶液において、極大を波長807nmに有する発光スペクトルを備える(図28参照)。したがって、発光デバイス1が射出する光のスペクトルが備える極大の波長802nmは、溶液において観測できる、第1の発光材料の発光スペクトルの極大波長807nmとの間に、5nmの差を備える。
【0207】
発光デバイス1の具体的な構成について表1に示す。また、本実施例で用いた材料の化学式を以下に示す。
【0208】
【表1】
【0209】
【化1】
【0210】
《発光デバイス1の作製》
本実施例で示す発光デバイス1は、図6に示すように基板800上に第1の電極801が形成され、第1の電極801上に発光ユニット802a(正孔注入層811a、正孔輸送層812a、発光層813a、電子輸送層814a、及び電子注入層815a)、中間層816、及び発光ユニット802b(正孔輸送層812b、発光層813b、電子輸送層814b、及び電子注入層815b)が順次積層され、発光ユニット802b上に第2の電極803が積層された構造を有する。
【0211】
まず、基板800上に第1の電極801を形成した。電極面積は、4mm(2mm×2mm)とした。基板800には、ガラス基板を用いた。第1の電極801は、銀(Ag)とパラジウム(Pd)と銅(Cu)の合金(Ag-Pd-Cu(APC))をスパッタリング法により、100nmの膜厚で成膜して形成し、ITSOをスパッタリング法により、10nmの膜厚で成膜して形成した。なお、本実施例において、第1の電極801は、陽極として機能する。
【0212】
ここで、前処理として、基板の表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。その後、10-4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度放冷した。
【0213】
次に、第1の電極801上に正孔注入層811aを形成した。正孔注入層811aは、真空蒸着装置内を10-4Paに減圧した後、1,3,5-トリ(ジベンゾチオフェン-4-イル)ベンゼン(略称:DBT3P-II)と酸化モリブデンとを、DBT3P-II:酸化モリブデン=2:1(重量比)とし、膜厚が20nmになるように共蒸着して形成した。
【0214】
次に、正孔注入層811a上に正孔輸送層812aを形成した。正孔輸送層812aは、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)を用い、膜厚が20nmになるように蒸着して形成した。
【0215】
次に、正孔輸送層812a上に発光層813aを形成した。ホスト材料として、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)を用い、アシスト材料として、PCBBiFを用い、ゲスト材料(燐光材料)として、ビス{4,6-ジメチル-2-[3-(3,5-ジメチルフェニル)-2-ベンゾ[g]キノキサリニル-κN]フェニル-κC}(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト-κO,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dmdpbq)(dpm)])(構造式(100))を用い、重量比が2mDBTBPDBq-II:PCBBiF:[Ir(dmdpbq)(dpm)]=0.7:0.3:0.1となるように共蒸着した。なお、膜厚は、15nmとした。
【0216】
次に、発光層813a上に電子輸送層814aを形成した。電子輸送層814aは、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBphen)の膜厚が15nmになるように順次蒸着して形成した。
【0217】
次に、電子輸送層814a上に電子注入層815aを形成した。電子注入層815aは、酸化リチウム(LiO)を用い、膜厚が0.1nmになるように蒸着して形成した。
【0218】
次に、電子注入層815a上に中間層816を形成した。中間層816は、DBT3P-IIと酸化モリブデンとを、DBT3P-II:酸化モリブデン=2:1(重量比)とし、膜厚が5nmになるように共蒸着して形成した。
【0219】
次に、中間層816上に正孔輸送層812bを形成した。正孔輸送層812bは、PCBBiFを用い、膜厚が10nmになるように蒸着して形成した。
【0220】
次に、正孔輸送層812b上に発光層813bを形成した。ホスト材料として、2mDBTBPDBq-IIを用い、アシスト材料として、PCBBiFを用い、ゲスト材料(燐光材料)として、[Ir(dmdpbq)(dpm)]を用い、重量比が2mDBTBPDBq-II:PCBBiF:[Ir(dmdpbq)(dpm)]=0.7:0.3:0.1となるように共蒸着した。なお、膜厚は、15nmとした。
【0221】
次に、発光層813b上に電子輸送層814bを形成した。電子輸送層814bは、2mDBTBPDBq-IIの膜厚が20nm、NBphenの膜厚が45nmになるように順次蒸着して形成した。
【0222】
次に、電子輸送層814b上に電子注入層815bを形成した。電子注入層815bは、フッ化リチウム(LiF)を用い、膜厚が1nmになるように蒸着して形成した。
【0223】
次に、電子注入層815b上に第2の電極803を形成した。第2の電極803は、銀(Ag)とマグネシウム(Mg)とを、Ag:Mg=10:1(体積比)とし、膜厚が30nmになるように共蒸着して形成した。なお、本実施例において、第2の電極803は、陰極として機能する。
【0224】
次に、第2の電極803上にバッファ層804を形成した。バッファ層804は、DBT3P-IIを用い、膜厚が100nmになるように蒸着して形成した。
【0225】
以上の工程により、基板800上に発光デバイス1を形成した。また、上述した作製方法における蒸着工程では、全て抵抗加熱法による蒸着法を用いた。
【0226】
また、上記に示すように作製した発光デバイスは、別の基板(図示せず)により封止される。なお、別の基板(図示せず)を用いた封止の際は、窒素雰囲気のグローブボックス内において、紫外光により固化する接着剤を塗布した別の基板(図示せず)を基板800上に固定し、基板800上に形成された発光デバイスの周囲に接着剤が付着するよう基板同士を接着させた。封止時には365nmの紫外光を6J/cm照射し接着剤を固化し、80℃にて1時間熱処理することにより接着剤を安定化させた。
【0227】
なお、発光デバイス1には、微小共振器構造が適用されている。発光デバイス1は、一対の反射電極(APC膜とAg:Mg膜)間の光学距離が、ゲスト材料の発光の最大ピーク波長に対して、およそ1/2波長となるように作製した。
【0228】
《発光デバイス1の動作特性》
発光デバイス1の動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0229】
図8に、発光デバイス1の電流密度-放射発散度特性を示す。図9に、発光デバイス1の電圧-電流密度特性を示す。図10に、発光デバイス1の電流密度-放射束特性を示す。図11に、発光デバイス1の電圧-放射発散度特性を示す。図12に、発光デバイス1の電流密度-外部量子効率特性を示す。なお、放射発散度、放射束、及び外部量子効率は、発光デバイスの配光特性がランバーシアン型と仮定して、放射輝度を用いて算出した。
【0230】
表2に8.9W/sr/m付近における発光デバイス1の主な初期特性値を示す。
【0231】
【表2】
【0232】
図8乃至図12及び表2に示すように、発光デバイス1は、良好な特性を示すことがわかった。発光デバイス1は、例えば、同じ電流密度において、後述する発光デバイス2および発光デバイス3より高い放射輝度で、発光した。また、発光デバイス1は、例えば、同じ電流密度において、発光デバイス2および発光デバイス3より高い外部量子効率を備える。また、発光デバイス1の駆動電圧は、例えば、同じ電流密度において、発光デバイス3より低い。
【0233】
また、発光デバイス1に10mA/cmの電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを、図13に示す。発光スペクトルの測定には、近赤外分光放射計(SR-NIR、トプコン社製)を用いた。図13に示すように、発光デバイス3は、発光層813a及び発光層831bに含まれる[Ir(dmdpbq)(dpm)]の発光に由来して、802nm付近に最大ピークを有する発光スペクトルを示した。
【0234】
また、微小共振器構造を採用したことによって、発光スペクトルは狭線化され、半値幅は35nmを示していた。発光デバイス1は、760nm以上900nm以下の光を効率よく発しており、センサ用途などの光源として効果が高いといえる。
【0235】
(参考例1)
本参考例では、作製した発光デバイス2の構造、作製方法、及び特性について、図7Aおよび図14乃至図19を用いて説明する。
【0236】
本参考例で作製した発光デバイス2は、発光ユニット802、電極801と電極803と、光を射出する機能と、を有する(図7参照)。なお、発光デバイス2は、発光ユニットを1つ備える点が、発光デバイス1とは異なる。
【0237】
発光ユニット802は電極801および電極803の間に挟まれる領域を備え、発光ユニット802は発光層813を備える。また、発光層813は第1の発光材料を含む。なお、[Ir(dmdpbq)(dpm)]を第1の発光材料に用いた。
【0238】
作製した発光デバイス2が射出する光のスペクトルは、極大を波長798nmに備える(図19参照)。
【0239】
発光デバイス2の具体的な構成について、表3に示す。
【0240】
【表3】
【0241】
《発光デバイス2の作製》
本実施例で示す発光デバイス2は、図7Aに示すように基板800上に第1の電極801が形成され、第1の電極801上に正孔注入層811、正孔輸送層812、発光層813、電子輸送層814、及び電子注入層815が順次積層され、電子注入層815上に第2の電極803が積層された構造を有する。
【0242】
まず、基板800上に第1の電極801を形成した。電極面積は、4mm(2mm×2mm)とした。基板800には、ガラス基板を用いた。第1の電極801は、銀(Ag)とパラジウム(Pd)と銅(Cu)の合金(Ag-Pd-Cu(APC))をスパッタリング法により、100nmの膜厚で成膜して形成し、ITSOをスパッタリング法により、10nmの膜厚で成膜して形成した。なお、本実施例において、第1の電極801は、陽極として機能する。
【0243】
ここで、前処理として、基板の表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。その後、10-4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度放冷した。
【0244】
次に、第1の電極801上に正孔注入層811を形成した。正孔注入層811は、真空蒸着装置内を10-4Paに減圧した後、DBT3P-IIと酸化モリブデンとを、DBT3P-II:酸化モリブデン=2:1(重量比)とし、膜厚が25nmになるように共蒸着して形成した。
【0245】
次に、正孔注入層811上に正孔輸送層812を形成した。正孔輸送層812は、PCBBiFを用い、膜厚が20nmになるように蒸着して形成した。
【0246】
次に、正孔輸送層812上に発光層813を形成した。ホスト材料として、2mDBTBPDBq-IIを用い、アシスト材料として、PCBBiFを用い、ゲスト材料(燐光材料)として、[Ir(dmdpbq)(dpm)]を用い、重量比が2mDBTBPDBq-II:PCBBiF:[Ir(dmdpbq)(dpm)]=0.7:0.3:0.1となるように共蒸着した。なお、膜厚は、40nmとした。
【0247】
次に、発光層813上に電子輸送層814を形成した。電子輸送層814は、2mDBTBPDBq-IIの膜厚が20nm、NBphenの膜厚が75nmになるように順次蒸着して形成した。
【0248】
次に、電子輸送層814上に電子注入層815を形成した。電子注入層815は、フッ化リチウム(LiF)を用い、膜厚が1nmになるように蒸着して形成した。
【0249】
次に、電子注入層815上に第2の電極803を形成した。第2の電極803は、銀(Ag)とマグネシウム(Mg)とを、Ag:Mg=10:1(体積比)とし、膜厚が30nmになるように共蒸着して形成した。なお、本実施例において、第2の電極803は、陰極として機能する。
【0250】
次に、第2の電極803上にバッファ層804を形成した。バッファ層804は、DBT3P-IIを用い、膜厚が100nmになるように蒸着して形成した。
【0251】
以上の工程により、基板800上に発光デバイス2を形成した。また、上述した作製方法における蒸着工程では、全て抵抗加熱法による蒸着法を用いた。
【0252】
また、発光デバイス2は、別の基板(図示せず)により封止される。封止の方法は、発光デバイス1と同様であり、実施例1を参照できる。
【0253】
《発光デバイス2の動作特性》
発光デバイス2の動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0254】
図14に、発光デバイス2の電流密度-放射発散度特性を示す。図15に、発光デバイス2の電圧-電流密度特性を示す。図16に、発光デバイス2の電流密度-放射束特性を示す。図17に、発光デバイス2の電圧-放射発散度特性を示す。図18に、発光デバイス2の電流密度-外部量子効率特性を示す。なお、放射発散度、放射束、及び外部量子効率は、発光デバイスの配光特性がランバーシアン型と仮定して、放射輝度を用いて算出した。
【0255】
表4に4.9W/sr/m付近における発光デバイス2の主な初期特性値を示す。
【0256】
【表4】
【0257】
また、発光デバイス2に10mA/cmの電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを、図19に示す。発光スペクトルの測定には、近赤外分光放射計(SR-NIR、トプコン社製)を用いた
【0258】
(参考例2)
本参考例では、作製した発光デバイス3の構造、作製方法、及び特性について、図7Bおよび図20乃至図25を用いて説明する。
【0259】
本参考例で作製した発光デバイス3は、中間層816と、発光ユニット802aと、発光ユニット802bと、電極801と電極803と、光を射出する機能と、を有する(図7B参照)。なお、発光デバイス3は、発光デバイス1より長い距離を、発光層813bおよび発光層813aの間に備える点が、発光デバイス1とは異なる。また、発光デバイス3は、発光デバイス1より長い距離を、電極801および電極803の間に備える点が、発光デバイス1とは異なる。
【0260】
中間層816は発光ユニット802aおよび発光ユニット802bの間に挟まれる領域を備え、中間層816は発光ユニット802aまたは発光ユニット802bの一方に電子を供給し、他方に正孔を供給する機能を備える。
【0261】
発光ユニット802aは電極801および中間層816間に挟まれる領域を備え、発光ユニット802aは発光層813aを備える。また、発光層813aは第1の発光材料を含む。
【0262】
発光ユニット802bは中間層816および電極803の間に挟まれる領域を備え、発光ユニット802bは発光層813bを備える。また、発光層813bも第1の発光材料を含む。発光層813bは発光層813aとの間に距離D1を備える。なお、発光デバイス3において、距離D1は(20+90+0.1+2+10+60)nm=182.1nmであった(表5参照)。
【0263】
作製した発光デバイス2が射出する光のスペクトルは、極大を波長799nmに備える(図25参照)。
【0264】
電極801は、波長EL1において、電極803より高い反射率を備える。また、電極803は、波長EL1において、電極801より高い透過率を備え、光の一部を透過し、他の一部を反射する。
【0265】
本参考例で用いる発光デバイス3の具体的な構成について表5に示す。また、本参考例で用いる材料の化学式を以下に示す。
【0266】
【表5】
【0267】
【化2】
【0268】
《発光デバイス3の作製》
本実施例で示す発光デバイス3は、図7Bに示すように基板800上に第1の電極801が形成され、第1の電極801上に発光ユニット802a(正孔注入層811a、正孔輸送層812a、発光層813a、電子輸送層814a、及び電子注入層815a)、中間層816、及び発光ユニット802b(正孔注入層811b、正孔輸送層812b、発光層813b、電子輸送層814b、及び電子注入層815b)が順次積層され、発光ユニット802b上に第2の電極803が積層された構造を有する。
【0269】
まず、基板800上に第1の電極801を形成した。電極面積は、4mm(2mm×2mm)とした。基板800には、ガラス基板を用いた。第1の電極801は、銀(Ag)とパラジウム(Pd)と銅(Cu)の合金(Ag-Pd-Cu(APC))をスパッタリング法により、100nmの膜厚で成膜して形成し、ITSOをスパッタリング法により、10nmの膜厚で成膜して形成した。なお、本実施例において、第1の電極801は、陽極として機能する。
【0270】
ここで、前処理として、基板の表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。その後、10-4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度放冷した。
【0271】
次に、第1の電極801上に正孔注入層811aを形成した。正孔注入層811aは、真空蒸着装置内を10-4Paに減圧した後、DBT3P-IIと酸化モリブデンとを、DBT3P-II:酸化モリブデン=2:1(重量比)とし、膜厚が10nmになるように共蒸着して形成した。
【0272】
次に、正孔注入層811a上に正孔輸送層812aを形成した。正孔輸送層812aは、PCBBiFを用い、膜厚が30nmになるように蒸着して形成した。
【0273】
次に、正孔輸送層812a上に発光層813aを形成した。ホスト材料として、2mDBTBPDBq-IIを用い、アシスト材料として、PCBBiFを用い、ゲスト材料(燐光材料)として、有機金属錯体である、[Ir(dmdpbq)(dpm)]を用い、重量比が2mDBTBPDBq-II:PCBBiF:[Ir(dmdpbq)(dpm)]=0.7:0.3:0.1となるように共蒸着した。なお、膜厚は、40nmとした。
【0274】
次に、発光層813a上に電子輸送層814aを形成した。電子輸送層814aは、2mDBTBPDBq-IIの膜厚が20nm、NBphenの膜厚が90nmになるように順次蒸着して形成した。
【0275】
次に、電子輸送層814a上に電子注入層815aを形成した。電子注入層815aは、酸化リチウム(LiO)を用い、膜厚が0.1nmになるように蒸着して形成した。
【0276】
次に、電子注入層815a上に中間層816を形成した。中間層816は、銅フタロシアニン(CuPc)を用い、膜厚が2nmになるように蒸着して形成した。
【0277】
次に、中間層816上に正孔注入層811bを形成した。正孔注入層811bは、DBT3P-IIと酸化モリブデンとを、DBT3P-II:酸化モリブデン=2:1(重量比)とし、膜厚が10nmになるように共蒸着して形成した。
【0278】
次に、正孔注入層811b上に正孔輸送層812bを形成した。正孔輸送層812bは、PCBBiFを用い、膜厚が60nmになるように蒸着して形成した。
【0279】
次に、正孔輸送層812b上に発光層813bを形成した。ホスト材料として、2mDBTBPDBq-IIを用い、アシスト材料として、PCBBiFを用い、ゲスト材料(燐光材料)として、本発明の一態様の有機金属錯体である、[Ir(dmdpbq)(dpm)]を用い、重量比が2mDBTBPDBq-II:PCBBiF:[Ir(dmdpbq)(dpm)]=0.7:0.3:0.1となるように共蒸着した。なお、膜厚は、40nmとした。
【0280】
次に、発光層813b上に電子輸送層814bを形成した。電子輸送層814bは、2mDBTBPDBq-IIの膜厚が20nm、NBphenの膜厚が65nmになるように順次蒸着して形成した。
【0281】
次に、電子輸送層814b上に電子注入層815bを形成した。電子注入層815bは、フッ化リチウム(LiF)を用い、膜厚が1nmになるように蒸着して形成した。
【0282】
次に、電子注入層815b上に第2の電極803を形成した。第2の電極803は、銀(Ag)とマグネシウム(Mg)とを、Ag:Mg=10:1(体積比)とし、膜厚が20nmになるように共蒸着して形成した。なお、本実施例において、第2の電極803は、陰極として機能する。
【0283】
次に、第2の電極803上にバッファ層804を形成した。バッファ層804は、DBT3P-IIを用い、膜厚が110nmになるように蒸着して形成した。
【0284】
以上の工程により、基板800上に発光デバイス3を形成した。また、上述した作製方法における蒸着工程では、全て抵抗加熱法による蒸着法を用いた。
【0285】
また、発光デバイス3は、別の基板(図示せず)により封止される。封止の方法は、発光デバイス1と同様であり、実施例1を参照できる。
【0286】
なお、発光デバイス3には、微小共振器構造が適用されている。発光デバイス3は、一対の反射電極(APC膜とAg:Mg膜)間の光学距離が、ゲスト材料の発光の最大ピーク波長に対して、およそ1波長となるように作製した。
【0287】
《発光デバイス3の動作特性》
発光デバイス3の動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0288】
図20に、発光デバイス3の電流密度-放射発散度特性を示す。図21に、発光デバイス3の電圧-電流密度特性を示す。図22に、発光デバイス3の電流密度-放射束特性を示す。図23に、発光デバイス3の電圧-放射発散度特性を示す。図24に、発光デバイス3の電流密度-外部量子効率特性を示す。なお、放射発散度、放射束、及び外部量子効率は、発光デバイスの配光特性がランバーシアン型と仮定して、放射輝度を用いて算出した。
【0289】
表6に6.8W/sr/m付近における発光デバイス3の主な初期特性値を示す。
【0290】
【表6】
【0291】
また、発光デバイス3に10mA/cmの電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを、図25に示す。発光スペクトルの測定には、近赤外分光放射計(SR-NIR、トプコン社製)を用いた。
【実施例2】
【0292】
本実施例では、本発明の一態様の発光デバイス11乃至発光デバイス20の構造、計算値を用いた計算及び計算結果について、図26および図27を用いて説明する。
【0293】
図26は本発明の一態様の発光デバイスおよび参考例のデバイスの構成を説明する図である。
【0294】
図27は本発明の一態様の発光デバイスおよび参考例のデバイスについて行った計算結果を説明する図である。具体的には、2つの発光層の間の距離D1に依存して、外部量子効率が変化する様子を説明する図である。
【0295】
<発光デバイスの構成例>
本発明の一態様の発光デバイスは、中間層104と、発光ユニット103aと、発光ユニット103bと、電極101と、電極102と、光を射出する機能と、を有する(図26参照)。
【0296】
中間層104は、発光ユニット103aまたは発光ユニット103bの一方に電子を供給し、他方に正孔を供給する機能を備える。
【0297】
《発光層113a》
発光ユニット103aは電極101および中間層104の間に挟まれる領域を備える。発光ユニット103aは発光層113aを備え、発光層113aは第1の発光材料を含む。本実施例では、発光層113aの厚さを10nmとし、[Ir(dmdpbq)2(dpm)]を第1の発光材料に用いた。
【0298】
《発光層113b》
発光ユニット103bは中間層104および電極102の間に挟まれる領域を備える。発光ユニット103bは発光層113bを備え、発光層113bは、第2の発光材料を含む。本実施例では、発光層113bの厚さを10nmとし、第1の発光材料と同一の材料を、第2の発光材料に用いた。
【0299】
本発明の一態様の発光デバイスは、極大を波長EL1に有するスペクトルを備える光を射出する。本実施例では、800nm近傍に極大を有するスペクトルを備える光を射出する。
【0300】
《電極101》
電極101は、波長EL1において、電極102より高い反射率を備える。本実施例では、厚さ100nmの銀を電極101に用いた。
【0301】
《電極102》
電極102は、波長EL1において、電極101より高い透過率を備える。電極102は、波長EL1において、一部を透過し、他の一部を反射する。本実施例では、厚さおよそ30nmの銀を電極102に用いた。また、本発明の一態様の発光デバイスは、厚さおよそ100nmの保護層105を備える。なお、保護層105は電極102に接する。
【0302】
また、電極102は、電極101との間に距離D2を備える。距離D2は、1.8を乗じると、波長EL1の0.3倍以上0.6倍以下の範囲に含まれる。本実施の形態では、距離D2に134nm以上266nm以下の範囲の距離を用いた。
【0303】
なお、発光層113bは発光層113aとの間に距離D1を備える。本実施の形態では、10nm以上90nm以下の範囲の距離を距離D1に用いた。
【0304】
具体的には、発光デバイス12の距離D1に10nmを適用し、発光デバイス13の距離D1に20nmを適用し、発光デバイス14の距離D1に30nmを適用し、発光デバイス15の距離D1に40nmを適用し、発光デバイス16の距離D1に50nmを適用し、発光デバイス17の距離D1に60nmを適用し、発光デバイス18の距離D1に70nmを適用し、発光デバイス19の距離D1に80nmを適用し、発光デバイス20の距離D1に90nmを適用した。
【0305】
また、発光層113aは、電極101との間に距離D33を備える。また、発光層113bは、電極102との間に距離D34を備える。
【0306】
距離D1のそれぞれについて、距離D33、距離D34、電極102の厚さおよび保護層105の厚さを、計算機を用いて最適化した。これにより、距離D1のそれぞれについて、発光デバイスから光を取り出す効率の大小を比較した。
【0307】
《計算方法》
本実施例では、有機デバイスシミュレータ(semiconducting emissivethin film optics simulator:setfos;サイバネットシステム株式会社製)を用いて計算を行った。
【0308】
当該計算では、発光デバイスを構成する各層の膜厚、屈折率n、及び消衰係数k、発光材料の発光スペクトル(フォトルミネッセンス(PL)スペクトル)の実測値、並びに、発光位置を入力し、パーセルファクターを乗じ、励起子の放射崩壊レートの変調を考慮した、正面方向の発光強度及びピーク波形を算出した。
【0309】
各層の屈折率nは1.8、消衰係数kは0と仮定した。反射電極および半反射電極に用いた銀(Ag)はHandbook of Optical Constants of Solids Volume 1 355-356ページに記載されている値を用いた。
【0310】
発光材料の発光スペクトルは、検出器として近赤外分光放射計(SR-NIRトプコン社製)、励起光として紫外発光LED(日亜化学工業社製NSCU033B)、バンドパスフィルターとしてUV U360(エドモンドオプティクス社製)、ロングパスフィルターとしてSCF-50S-42L(シグマ光機社製)を用いて測定した。
【0311】
赤外光の発光スペクトルの測定には、石英基板上に2mDBTBPDBq-II、PCBBiF、及び、ビス{4,6-ジメチル-2-[3-(3,5-ジメチルフェニル)-2-ベンゾ[g]キノキサリニル-κN]フェニル-κC}(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト-κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dmdpbq)2(dpm)])を、重量比0.7:0.3:0.1、膜厚は50nmになるように真空蒸着法を用いた共蒸着により成膜した膜を使用した。
【0312】
計算に用いた発光スペクトルを、図29に示す。図29において、横軸は波長(単位:nm)を示し、縦軸はエネルギーベースの規格化強度(任意単位:a.u.)を示す。
【0313】
発光位置は発光層の中心と仮定した。
【0314】
発光量子収率、励起子生成確率、再結合確率は100%と仮定した。すなわち、計算により得られた外部量子効率(ランバーシアン仮定)は、正面の発光強度からランバーシアン配光を仮定して算出した光取り出し効率を示す。
【0315】
計算では、目的となる光学距離と近い値の膜厚を入力し、外部量子効率(ランバーシアン仮定)が最大になる、正孔輸送層、電子輸送層、半反射電極、保護層の膜厚を求めた。
【0316】
電極間の光学距離がλ付近となるデバイスは、中間層の膜厚も求めた。
【0317】
《結果》
計算結果を表7、表8および図27に示す。本発明の一態様の発光デバイスは、距離D1が5nm以上65nm以下である場合に、後述する参考例3の発光デバイス21より高い効率で、光を射出した。
【0318】
【表7】
【0319】
【表8】
【0320】
(参考例3)
参考例の発光デバイス21は、距離D2(395nm=90+10+193+10+92)に1.8を乗じると、射出する光のスペクトルの極大波長797nmの0.89倍であり、極大波長の0.3倍以上0.6倍以下の範囲に含まれない点が、本発明の一態様の発光デバイスとは異なる。
【0321】
(合成例1)
本実施例では、本発明の一態様の有機金属錯体の合成方法について説明する。本実施例では、実施の形態1の構造式(100)で表されるビス{4,6-ジメチル-2-[3-(3,5-ジメチルフェニル)-2-ベンゾ[g]キノキサリニル-κN]フェニル-κC}(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト-κO,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dmdpbq)(dpm)])の合成方法について説明する。
【0322】
【化3】
【0323】
<ステップ1;2,3-ビス-(3,5-ジメチルフェニル)-2-ベンゾ[g]キノキサリン(略称:Hdmdpbq)の合成>
まず、ステップ1では、本発明の一態様の有機化合物であり、構造式(200)に示す、Hdmdpbqを合成した。3,3’,5,5’-テトラメチルベンジル3.20g、2,3-ジアミノナフタレン1.97g、エタノール60mLを、還流管を付けた三口フラスコに入れ、内部を窒素置換した後、90℃で7時間半撹拌した。所定時間経過後、溶媒を留去した。その後、トルエンを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的物を得た(黄色固体、収量3.73g、収率79%)。ステップ1の合成スキームを(a-1)に示す。
【0324】
【化4】
【0325】
ステップ1で得られた黄色固体の核磁気共鳴分光法(H-NMR)による分析結果を下記に示す。このことから、本実施例において、構造式(200)に示すHdmdpbqが得られたことがわかった。
【0326】
得られた物質のH NMRデータを以下に示す。
H-NMR.δ(CDCl):2.28(s,12H),7.01(s,2H),7.16(s,4H),7.56-7.58(m,2H),8.11-8.13(m,2H),8.74(s,2H).
【0327】
<ステップ2;ジ-μ-クロロ-テトラキス{4,6-ジメチル-2-[3-(3,5-ジメチルフェニル)-2-ベンゾ[g]キノキサリニル-κN]フェニル-κC}ジイリジウム(III)(略称:[Ir(dmdpbq)Cl])の合成>
次に、ステップ2では、本発明の一態様の複核錯体であり、構造式(210)に示す、[Ir(dmdpbq)Cl]を合成した。2-エトキシエタノール15mL、水5mL、ステップ1で得たHdmdpbq1.81g、及び、塩化イリジウム水和物(IrCl・HO)(フルヤ金属社製)0.66gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz 100W)を2時間照射し、反応させた。所定時間経過後、得られた残渣をメタノールで吸引ろ過、洗浄し、目的物を得た(黒色固体、収量1.76g、収率81%)。ステップ2の合成スキームを(a-2)に示す。
【0328】
【化5】
【0329】
<ステップ3;[Ir(dmdpbq)(dpm)]の合成>
そして、ステップ3では、本発明の一態様の有機金属錯体であり、構造式(100)に示す、[Ir(dmdpbq)(dpm)]を合成した。2-エトキシエタノール20mL、ステップ2で得た[Ir(dmdpbq)Cl]1.75g、ジピバロイルメタン(略称:Hdpm)0.50g、及び、炭酸ナトリウム0.95gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz 100W)を3時間照射した。得られた残渣を、メタノールで吸引ろ過した後、水、メタノールで洗浄した。得られた固体を、ジクロロメタンを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した後、ジクロロメタンとメタノールの混合溶媒にて再結晶することにより、目的物を得た(暗緑色固体、収量0.42g、収率21%)。得られた暗緑色固体0.41gを、トレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.7Pa、アルゴンガスを流量10.5mL/minで流しながら、300℃で暗緑色固体を加熱した。昇華精製後、暗緑色固体を収率78%で得た。ステップ3の合成スキームを(a-3)に示す。
【0330】
【化6】
【0331】
ステップ3で得られた暗緑色固体の核磁気共鳴分光法(H-NMR)による分析結果を下記に示す。このことから、本実施例において、構造式(100)に示す[Ir(dmdpbq)(dpm)]が得られたことがわかった。
【0332】
得られた物質のH NMRデータを以下に示す。
H-NMR.δ(CDCl):0.75(s,18H),0.97(s,6H),2.01(s,6H),2.52(s,12H),4.86(s,1H),6.39(s,2H),7.15(s,2H),7.31(s,2H),7.44-7.51(m,4H),7.80(d,2H),7.86(s,4H),8.04(d,2H),8.42(s,2H),8.58(s,2H).
【0333】
次に、[Ir(dmdpbq)(dpm)]のジクロロメタン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを測定した。
【0334】
吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用い、ジクロロメタン溶液(0.010mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用い、窒素雰囲気下でジクロロメタン脱酸素溶液(0.010mmol/L)を石英セルに入れ、密栓し、室温で測定を行った。
【0335】
得られた吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果を図7に示す。横軸は波長、縦軸は吸収強度及び発光強度を表す。図28における細い実線は吸収スペクトルを示し、太い実線は発光スペクトルを示す。図28に示す吸収スペクトルは、ジクロロメタン溶液(0.010mmol/L)を石英セルに入れて測定した吸収スペクトルから、ジクロロメタンのみを石英セルに入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた結果を示す。
【0336】
図28に示すように、本発明の一態様の有機金属錯体である、[Ir(dmdpbq)(dpm)]は、807nmに発光ピークを示し、ジクロロメタン溶液からは近赤外の発光が観測された。
【0337】
なお、本実施例は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【実施例3】
【0338】
本実施例では、本発明の一態様の発光デバイス4の構造、作製方法、及び特性について、図6および図30乃至図35を用いて説明する。
【0339】
なお、発光デバイス4は、正孔注入層811a、正孔輸送層812a、中間層816、正孔輸送層812bおよび電子輸送層814bの構成が、表1を用いて説明する発光デバイス1とは異なる。ここでは、異なる部分について詳細に説明し、同様の構成を用いることができる部分について上記の説明を援用する。また、発光デバイス4において、距離D1は(15+0.1+5+5)nm=25.1nmであった(表9参照)。
【0340】
作製した発光デバイス4が射出する光のスペクトルは、極大を波長803nmに備える(図35参照)。なお、(6.3×10-3)×803nm=5.06nmであり、また、(81.3×10-3)×803nm=65.6nmである。したがって、距離D1(=25.1nm)は、5.06nm以上65.6nm以下の範囲に含まれる。
【0341】
発光デバイス4は、反射性の第1の膜を備え、反射性の第1の膜は発光層813aとの間に透光性を備える導電膜を挟む。具体的には、銀(Ag)とパラジウム(Pd)と銅(Cu)の合金(Ag-Pd-Cu(APC))の膜を備え、当該APCの膜は発光層813aとの間に10nmのITSOを挟む。この構成において、距離D2は(10+10+32.5+15+15+0.1+5+5+15+20+52.5+1)nm=181.1nmであった。したがって、距離D2(=181.1nm)に、1.8を乗じた値は、(1.8×181.1=)325.98nmであり、当該値は(0.3×803=)240.9nm以上(0.6×803=)481.8nm以下の範囲に含まれる。
【0342】
発光デバイス4の具体的な構成について表9に示す。
【0343】
【表9】
【0344】
《発光デバイス4の作製》
正孔注入層811aは、真空蒸着装置内を10-4Paに減圧した後、PCBBiFとNDP-9(分析工房株式会社、材料シリアル番号:1S20170124)とを、PCBBiF:NDP-9=1:0.1(重量比)とし、膜厚が10nmになるように共蒸着して形成した。
【0345】
正孔輸送層812aは、PCBBiFを用い、膜厚が32.5nmになるように蒸着して形成した。
【0346】
中間層816は、PCBBiFとNDP-9とを、PCBBiF:NDP-9=1:0.1(重量比)とし、膜厚が5nmになるように共蒸着して形成した。
【0347】
正孔輸送層812bは、PCBBiFを用い、膜厚が5nmになるように蒸着して形成した。
【0348】
電子輸送層814bは、2mDBTBPDBq-IIの膜厚が20nm、NBphenの膜厚が52.5nmになるように順次蒸着して形成した。
【0349】
《発光デバイス4の動作特性》
発光デバイス4の動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0350】
図30に、発光デバイス4の電流密度-放射発散度特性を示す。図31に、発光デバイス4の電圧-電流密度特性を示す。図32に、発光デバイス4の電流密度-放射束特性を示す。図33に、発光デバイス4の電圧-放射発散度特性を示す。図34に、発光デバイス4の電流密度-外部量子効率特性を示す。なお、放射発散度、放射束、及び外部量子効率は、発光デバイスの配光特性がランバーシアン型と仮定して、放射輝度を用いて算出した。
【0351】
表10に8.1W/sr/m付近における発光デバイス4の主な初期特性値を示す。
【0352】
【表10】
【0353】
図30乃至図34及び表10に示すように、発光デバイス4は、良好な特性を示すことがわかった。発光デバイス4は、例えば、同じ電流密度において、前述する発光デバイス2および発光デバイス3より高い放射輝度で、発光した。また、発光デバイス4は、例えば、同じ電流密度において、発光デバイス2および発光デバイス3より高い外部量子効率を備える。また、発光デバイス4の駆動電圧は、例えば、同じ電流密度において、発光デバイス3より低い。
【0354】
また、発光デバイス4に10mA/cmの電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを、図35に示す。発光スペクトルの測定には、近赤外分光放射計(SR-NIR、トプコン社製)を用いた。図35に示すように、発光デバイス4は、発光層813a及び発光層831bに含まれる[Ir(dmdpbq)(dpm)]の発光に由来して、803nm付近に最大ピークを有する発光スペクトルを示した。
【0355】
また、微小共振器構造を採用したことによって、発光スペクトルは狭線化され、半値幅は35nmを示していた。発光デバイス4は、760nm以上900nm以下の光を効率よく発しており、センサ用途などの光源として効果が高いといえる。
【0356】
≪発光デバイス3の視野角特性≫
次に、発光デバイス4のELスペクトルの視野角特性を調べた。
【0357】
まず、発光デバイス4の正面方向のELスペクトルと、斜め方向のELスペクトルを測定した。具体的には、発光デバイス4の発光面に垂直な方向を0°として、-80°から80°まで10°ごとの計17点で、発光スペクトルを測定した。測定には、マルチチャンネル分光器(浜松ホトニクス社製、PMA-12)を用いた。当該測定結果から、各角度における、発光デバイス4のELスペクトル及びフォトン強度比を得た。
【0358】
図36に、発光デバイス4における、0°から60°までのELスペクトルを示す。
【0359】
図37に、発光デバイス4における、正面におけるフォトン強度を基準とした、各角度におけるフォトン強度を示す。
【0360】
図36及び図37に示すように、発光デバイス4は、視野角依存性が大きく、正面方向に強く発光が放射されていることがわかった。これは、微小共振器構造を採用したことにより、正面方向の発光が強められた一方で、斜め方向の発光が弱められたためである。このように、正面方向の発光が強い視野角特性は、静脈センサなどのセンサ用途の光源として好適である。
【0361】
例えば、本明細書等において、XとYとが接続されている、と明示的に記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが機能的に接続されている場合と、XとYとが直接接続されている場合とが、本明細書等に開示されているものとする。したがって、所定の接続関係、例えば、図または文章に示された接続関係に限定されず、図または文章に示された接続関係以外のものも、図または文章に開示されているものとする。
【0362】
ここで、X、Yは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。
【0363】
XとYとが直接的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)が、XとYとの間に接続されていない場合であり、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)を介さずに、XとYとが、接続されている場合である。
【0364】
XとYとが電気的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、スイッチは、オンオフが制御される機能を有している。つまり、スイッチは、導通状態(オン状態)、または、非導通状態(オフ状態)になり、電流を流すか流さないかを制御する機能を有している。または、スイッチは、電流を流す経路を選択して切り替える機能を有している。なお、XとYとが電気的に接続されている場合は、XとYとが直接的に接続されている場合を含むものとする。
【0365】
XとYとが機能的に接続されている場合の一例としては、XとYとの機能的な接続を可能とする回路(例えば、論理回路(インバータ、NAND回路、NOR回路など)、信号変換回路(DA変換回路、AD変換回路、ガンマ補正回路など)、電位レベル変換回路(電源回路(昇圧回路、降圧回路など)、信号の電位レベルを変えるレベルシフタ回路など)、電圧源、電流源、切り替え回路、増幅回路(信号振幅または電流量などを大きく出来る回路、オペアンプ、差動増幅回路、ソースフォロワ回路、バッファ回路など)、信号生成回路、記憶回路、制御回路など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、一例として、XとYとの間に別の回路を挟んでいても、Xから出力された信号がYへ伝達される場合は、XとYとは機能的に接続されているものとする。なお、XとYとが機能的に接続されている場合は、XとYとが直接的に接続されている場合と、XとYとが電気的に接続されている場合とを含むものとする。
【0366】
なお、XとYとが電気的に接続されている、と明示的に記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の素子又は別の回路を挟んで接続されている場合)と、XとYとが機能的に接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の回路を挟んで機能的に接続されている場合)と、XとYとが直接接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の素子又は別の回路を挟まずに接続されている場合)とが、本明細書等に開示されているものとする。つまり、電気的に接続されている、と明示的に記載されている場合は、単に、接続されている、とのみ明示的に記載されている場合と同様な内容が、本明細書等に開示されているものとする。
【0367】
なお、例えば、トランジスタのソース(又は第1の端子など)が、Z1を介して(又は介さず)、Xと電気的に接続され、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)が、Z2を介して(又は介さず)、Yと電気的に接続されている場合や、トランジスタのソース(又は第1の端子など)が、Z1の一部と直接的に接続され、Z1の別の一部がXと直接的に接続され、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)が、Z2の一部と直接的に接続され、Z2の別の一部がYと直接的に接続されている場合では、以下のように表現することが出来る。
【0368】
例えば、「XとYとトランジスタのソース(又は第1の端子など)とドレイン(又は第2の端子など)とは、互いに電気的に接続されており、X、トランジスタのソース(又は第1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yの順序で電気的に接続されている。」と表現することができる。または、「トランジスタのソース(又は第1の端子など)は、Xと電気的に接続され、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)はYと電気的に接続され、X、トランジスタのソース(又は第1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yは、この順序で電気的に接続されている」と表現することができる。または、「Xは、トランジスタのソース(又は第1の端子など)とドレイン(又は第2の端子など)とを介して、Yと電気的に接続され、X、トランジスタのソース(又は第1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yは、この接続順序で設けられている」と表現することができる。これらの例と同様な表現方法を用いて、回路構成における接続の順序について規定することにより、トランジスタのソース(又は第1の端子など)と、ドレイン(又は第2の端子など)とを、区別して、技術的範囲を決定することができる。
【0369】
または、別の表現方法として、例えば、「トランジスタのソース(又は第1の端子など)は、少なくとも第1の接続経路を介して、Xと電気的に接続され、前記第1の接続経路は、第2の接続経路を有しておらず、前記第2の接続経路は、トランジスタを介した、トランジスタのソース(又は第1の端子など)とトランジスタのドレイン(又は第2の端子など)との間の経路であり、前記第1の接続経路は、Z1を介した経路であり、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)は、少なくとも第3の接続経路を介して、Yと電気的に接続され、前記第3の接続経路は、前記第2の接続経路を有しておらず、前記第3の接続経路は、Z2を介した経路である。」と表現することができる。または、「トランジスタのソース(又は第1の端子など)は、少なくとも第1の接続経路によって、Z1を介して、Xと電気的に接続され、前記第1の接続経路は、第2の接続経路を有しておらず、前記第2の接続経路は、トランジスタを介した接続経路を有し、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)は、少なくとも第3の接続経路によって、Z2を介して、Yと電気的に接続され、前記第3の接続経路は、前記第2の接続経路を有していない。」と表現することができる。または、「トランジスタのソース(又は第1の端子など)は、少なくとも第1の電気的パスによって、Z1を介して、Xと電気的に接続され、前記第1の電気的パスは、第2の電気的パスを有しておらず、前記第2の電気的パスは、トランジスタのソース(又は第1の端子など)からトランジスタのドレイン(又は第2の端子など)への電気的パスであり、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)は、少なくとも第3の電気的パスによって、Z2を介して、Yと電気的に接続され、前記第3の電気的パスは、第4の電気的パスを有しておらず、前記第4の電気的パスは、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)からトランジスタのソース(又は第1の端子など)への電気的パスである。」と表現することができる。これらの例と同様な表現方法を用いて、回路構成における接続経路について規定することにより、トランジスタのソース(又は第1の端子など)と、ドレイン(又は第2の端子など)とを、区別して、技術的範囲を決定することができる。
【0370】
なお、これらの表現方法は、一例であり、これらの表現方法に限定されない。ここで、X、Y、Z1、Z2は、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。
【0371】
なお、回路図上は独立している構成要素同士が電気的に接続しているように図示されている場合であっても、1つの構成要素が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合もある。例えば配線の一部が電極としても機能する場合は、一の導電膜が、配線の機能、及び電極の機能の両方の構成要素の機能を併せ持っている。したがって、本明細書における電気的に接続とは、このような、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合も、その範疇に含める。
【符号の説明】
【0372】
11:発光デバイス、12:発光デバイス、13:発光デバイス、14:発光デバイス、15:発光デバイス、16:発光デバイス、17:発光デバイス、18:発光デバイス、19:発光デバイス、20:発光デバイス、101:電極、102:電極、103a:発光ユニット、103b:発光ユニット、104:中間層、105:保護層、111a:正孔注入層、112:正孔輸送層、112a:正孔輸送層、112b:正孔輸送層、113a:発光層、113b:発光層、114a:電子輸送層、114b:電子輸送層、115a:電子注入層、115b:電子注入層、301:基板、302:画素部、303:回路部、304a:回路部、304b:回路部、305:シール材、306:基板、307:配線、308:FPC、309:トランジスタ、310:トランジスタ、311:トランジスタ、312:トランジスタ、313:電極、314:絶縁層、315:EL層、316:電極、317:有機ELデバイス、318:空間、400:分子量、401:電極、402:EL層、403:電極、405:絶縁層、406:導電層、407:接着層、416:導電層、420:基板、422:接着層、423:バリア層、424:絶縁層、450:有機ELデバイス、490a:基板、490b:基板、490c:バリア層、800:基板、801:電極、802:発光ユニット、802a:発光ユニット、802b:発光ユニット、803:電極、804:バッファ層、811:正孔注入層、811a:正孔注入層、811b:正孔注入層、812:正孔輸送層、812a:正孔輸送層、812b:正孔輸送層、813:発光層、813a:発光層、813b:発光層、814:電子輸送層、814a:電子輸送層、814b:電子輸送層、815:電子注入層、815a:電子注入層、815b:電子注入層、816:中間層、831b:発光層、911:筐体、912:光源、913:検知ステージ、914:撮像装置、915:発光部、916:発光部、917:発光部、921:筐体、922:操作ボタン、923:検知部、924:光源、925:撮像装置、931:筐体、932:操作パネル、933:搬送機構、934:モニタ、935:検知ユニット、936:被検査部材、937:撮像装置、938:光源、981:筐体、982:表示部、983:操作ボタン、984:外部接続ポート、985:スピーカ、986:マイク、987:カメラ、988:カメラ
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37