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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】GLP-1分泌促進用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20240308BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240308BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240308BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240308BHJP
   A61K 31/702 20060101ALI20240308BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240308BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240308BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240308BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240308BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240308BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240308BHJP
   A61P 5/50 20060101ALI20240308BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240308BHJP
   A23L 27/00 20160101ALN20240308BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L2/00 F
A23L2/52
A23L33/105
A61K9/10
A61K31/702
A61K45/00
A61K47/14
A61K47/24
A61K47/26
A61P3/04
A61P3/10
A61P5/50
A61P43/00 111
A23L27/00 101A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021516178
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2020017399
(87)【国際公開番号】W WO2020218379
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2019086867
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100135943
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 規樹
(72)【発明者】
【氏名】浦井 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】長尾 浩二
(72)【発明者】
【氏名】横尾 芳明
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0237901(US,A1)
【文献】国際公開第2017/018404(WO,A1)
【文献】特開平01-176443(JP,A)
【文献】特開昭59-139309(JP,A)
【文献】RIPKEN, D. et al.,Steviol Glycoside Rebaudioside A Induces Glucagon-like Peptide-1 and Peptide YY Release in a Porcine,J. Agric. Food Chem.,2014年,Vol. 62,pp. 8365-8370
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両親媒性のGLP-1分泌促進成分と乳化剤とを含む乳化粒子を含む組成物であって、
前記乳化剤が、水中油型乳化剤であり、
前記乳化粒子に前記GLP-1分泌促進成分が組み込まれており、
前記乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、酵素処理レシチン、ショ糖脂肪酸エステルおよび有機酸モノグリセリドからなる群から選択される少なくとも1種を含む、組成物。
【請求項2】
前記GLP-1分泌促進成分がレバウジオシドAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記乳化剤のHLB値が7~18である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記乳化剤の親水基が、甘味成分由来である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1つの乳化剤を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記乳化剤の親水基が、リン酸基を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記GLP-1分泌促進成分に対する前記乳化剤の割合が、0.02~50質量%である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記乳化剤を0.1~5質量%の割合で含有する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記GLP-1分泌促進成分を1~20質量%の割合で含有する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
糖代謝改善用、食欲抑制用または糖尿病もしくは肥満症の予防もしくは改善用である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物を含有する、飲料。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物を含有する、食品。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物を含有する、医薬組成物。
【請求項14】
水中油型の乳化剤と、両親媒性のGLP-1分泌促進成分と、水性媒体とを混合して混合物を調製する工程、および、該混合物に油脂を加えて攪拌する工程を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両親媒性のGLP-1分泌促進成分と乳化剤とを含む乳化粒子を含有する、GLP-1分泌促進用組成物などに関する。
【背景技術】
【0002】
GLP-1[グルカゴン様ペプチド-1(Glucagon-like peptide-1)]は、消化管粘膜上皮などから分泌されるホルモンである。GLP-1の作用として、インスリン合成や分泌の刺激、グルカゴン分泌の阻害、食物摂取阻害、高血糖症の低減などが知られている。GLP-1の分泌を活性化することで、これらの作用の向上が期待できる。
【0003】
特許文献1には、新規なGLP-1分泌促進成分としてゴーヤに含まれる11種類のクルビタン型トリテルペン類が記載されている。また、特許文献2には、ステビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドDにGLP-1の分泌を促進させる性質がある旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/159725号
【文献】国際公開第2017/018404号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
より優れたGLP-1分泌促進成分の開発が期待されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、以下を提供する。
[1]両親媒性のGLP-1分泌促進成分と乳化剤とを含む乳化粒子を含む組成物であって、
前記乳化剤が、水中油型乳化剤であり、
前記乳化粒子に前記GLP-1分泌促進成分が組み込まれている、GLP-1分泌促進用組成物。
[2]前記GLP-1分泌促進成分がレバウジオシドAである、上記[1]に記載の組成物。
[3]前記乳化剤のHLB値が7~18である、上記[1]または[2]に記載の組成物。
[4]前記乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、酵素処理レシチン、ショ糖脂肪酸エステルおよび有機酸モノグリセリドからなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の組成物。
[5]前記乳化剤の親水基が、甘味成分由来である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の組成物。
[6]前記乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1つの乳化剤を含む、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の組成物。
[7]前記乳化剤の親水基が、リン酸基を含む、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の組成物。
[8]前記GLP-1分泌促進成分に対する前記乳化剤の割合が、0.02~50質量%である、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の組成物。
[9]前記乳化剤を0.1~5質量%の割合で含有する、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の組成物。
[10]前記GLP-1分泌促進成分を1~20質量%の割合で含有する、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の組成物。
[11]糖代謝改善用、食欲抑制用または糖尿病もしくは肥満症の予防もしくは改善用である、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の組成物。
[12]上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の組成物を含有する、飲料。
[13]上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の組成物を含有する、食品。
[14]上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の組成物を含有する、医薬組成物。
[15]水中油型の乳化剤と、両親媒性のGLP-1分泌促進成分と、水性媒体とを混合して混合物を調製する工程、および、該混合物に油脂を加えて攪拌する工程を含む、GLP-1分泌促進成分が組み込まれた乳化粒子の製造方法。
[16]レバウジオシドAと水中油型の乳化剤とを含む乳化粒子を含有し、
前記乳化粒子に前記レバウジオシドAが組み込まれている、組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、両親媒性のGLP-1分泌促進成分と水中油型の乳化剤を使用し、乳化粒子にGLP-1分泌促進成分を組み込むことで、GLP-1分泌促進成分のGLP-1分泌促進効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実験例1における各種甘味料のGLP-1分泌量を示すグラフである。
図2】実験例2で得られたレバウジオシドC(以下、レバウジオシドをRebと略称することがある。)含有試料の濃度とGLP-1分泌量の関係を示すグラフである。
図3】実験例3で得られたステビオシド含有試料の濃度とGLP-1分泌量の関係を示すグラフである。
図4】実験例4で得られたレバウジオシドA含有試料の濃度とGLP-1分泌量の関係を示すグラフである。
図5】実験例5で得られたRebA乳化物含有試料の濃度とGLP-1分泌量の関係を示すグラフである。
図6】実験例6における、各種甘味料の有する表面張力を示すグラフである。
図7】実験例7における、RebAの香味特性を示すグラフである。
図8】実験例8~13で得られた各種試料の濃度とGLP-1分泌量の関係を示すグラフである。
図9】実験例8で得られたRebA含有試料の濃度とGLP-1分泌量の関係を示すグラフである。
図10】実験例9で得られたRebA乳化物含有試料の濃度とGLP-1分泌量の関係を示すグラフである。
図11】実験例10で得られた乳化粒子含有試料の濃度とGLP-1分泌量の関係を示すグラフである。
図12】実験例11で得られた、RebA含有試料と乳化粒子含有試料の混合液の濃度とGLP-1分泌量の関係を示すグラフである。
図13】実験例12で得られたグリセリン含有試料の濃度とGLP-1分泌量の関係を示すグラフである。
図14】実験例13で得られたMCTオイル含有試料の濃度とGLP-1分泌量の関係を示すグラフである。
図15】実験例15~20で得られた各種試料の細胞毒性(死細胞を指標)を示すグラフである。aは投与から2時間後、bは24時間後の結果である。
図16】実験例21~31で得られた各種試料のGLP-1分泌量を示すグラフである。aは投与から2時間後、bは24時間後の結果である。
図17】実験例32で得られた各ステビオール配糖体の分配比率と、試験中の様子を示す写真である。
図18】実験例32において、試験後のRebA含有溶液の状態を示す写真である。
図19】実験例33における、保管温度の香味特性への影響を示す図である。
図20】実験例33における、振動環境下での安定性を示す図である。
図21】実験例33における、乳化による甘味強度の低下度合いを示す図である。
図22】実験例34における、GLP-1分泌量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者の研究により、RebA等のGLP-1分泌促進成分をミセル等の乳化粒子に組み込むことで、より優れたGLP-1分泌促進能が実現できることがわかった。
【0010】
また、GLP-1分泌促進成分が組み込まれている乳化粒子を含む組成物は、保管後、特に高温条件、酸性条件、振動環境などの過酷な環境下で保管した後も、乳化状態が維持されており、また、高温保管後の味の劣化が少なく、保管安定性に優れる傾向にあることがわかった。
【0011】
<GLP-1分泌促進成分>
GLP-1分泌促進成分とは、それ自体がヒトまたはGLP-1分泌能を有する非ヒト動物の細胞に作用してGLP-1の分泌量を増加させる性質(以下、GLP-1分泌促進能と呼ぶ。)を有する物質または組成物を意味する。
【0012】
GLP-1分泌促進能を有する物質または組成物をGLP-1分泌細胞に与えると、GLP-1分泌量が多くなる。GLP-1分泌量の多少は、実験例と同様の方法により確認される。即ち、被験物質または組成物を含んでいるサンプルと、被験物質または組成物を含んでいない点以外は同じ組成の無刺激陰性対照サンプルを用意し、同じ条件下で両サンプルを、GLP-1分泌能を有するヒト結腸由来細胞(例えばH716)に与え、無刺激陰性対照サンプルと比べてGLP-1分泌量の多い/少ないを確認する。なお、本明細書において、陰性対照を「陰性コントロール」と呼ぶことがある。
【0013】
本発明で使用するGLP-1分泌促進成分は、両親媒性である。「両親媒性」は、「分子および原子団で、水との親和性が大きい部分(親水基)と親和性が小さい部分(疎水基)の両方をもち合わせていること」という意味である(参照:デジタル大辞泉)。
【0014】
両親媒性のGLP-1分泌促進成分は、水よりも小さな表面張力を有する傾向にある。
【0015】
両親媒性のGLP-1分泌促進成分は、GLP-1分泌促進能を有する配糖体甘味料を含むことが好ましい。配糖体甘味料は、好適にはGLP-1分泌促進能を有するステビオール配糖体またはモグロシド(以下、モグロシドをMogと略称することがある。)を含み、より好適には、レバウジオシドA、レバウジオシドB、ステビア抽出物、ラムノースが結合した構造を有するステビオール配糖体、ステビオシドおよびモグロシドVを含み、さらに好適には、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、ステビオシドおよびモグロシドVを含む。
【0016】
上記した配糖体甘味料は、好適には、以下のいずれかの表面張力Q(mN/m)を有する。
Q=40~70、45~65、40~60、50~70、58~63、59~62、60~61、50~63、51~63、52~63、53~63、54~63、55~63、56~63、57~63、59~63、60~63、58~62、58~61、58~60
【0017】
表面張力Qは、プレート法により測定される。例えば、被験物質である配糖体甘味料を、ショ糖換算でBrix10となるような量で配合し、水溶液を調製する。調製した水溶液の表面張力を、自動表面張力計(CBVP-Z型、協和界面科学社製)を用いたプレート法によって測定する。
【0018】
飲食品への適用などの観点から、GLP-1分泌促進能を有する配糖体甘味料としては、ステビオール配糖体が好ましい。
【0019】
配当体甘味料以外の両親媒性のGLP-1分泌促進成分として、タンパク質や糖タンパク質があげられる。例えば、カゼイン、カゼイン塩もしくはホエータンパク質を含む乳タンパク質、卵黄タンパク質、卵白タンパク質、大豆タンパク質、小麦タンパク質、エンドウ豆タンパク質、ムチン、プロテオグリカンまたはこれらの加工品などをあげることができる。
【0020】
本発明において、両親媒性のGLP-1分泌促進成分としては、レバウジオシドAが最も好適である。レバウジオシドA自身が持つGLP-1分泌促進能を、乳化粒子への組込により、効果的に向上させることができるためである。その理由は定かではないが、本発明者らは次のように推測している。
【0021】
レバウジオシドAは、アグリコンであるステビオールに4つのグルコースが結合した構造を有している。ステビオール配糖体としては、レバウジオシドA以外にも様々な種類が存在する。ここに、一例として、後述の実験例32(分配比率について)で使用したステビオール配糖体の構造を示す。
【化1】
【0022】
本発明者らが、レバウジオシドAと他のステビオール配糖体の分配比率を測定したところ、レバウジオシドAと他のステビオール配糖体とは、グルコースの結合位置と数がわずかに違うだけであるにも関わらず、驚くべきことに、レバウジオシドAを使用した系においてのみ、水性媒体中に有機溶媒が分散する乳化現象が起こり、有機層と水層を分離することができないという結果が得られた。即ち、レバウジオシドAは、単に両親媒性を示すにとどまらず、他のステビオール配糖体よりもはるかに優れた乳化能を示すのである。
【0023】
また、表面張力に関する研究も行ったところ、RebAの界面活性作用が他の配糖体よりも高いことがわかった。このRebAの表面張力の低さと、ステビオール骨格の13位と19位にグルコースが付加しているという構造上の特徴とに起因して、RebAは、相対的に疎水性部分と親水性部分をもつ両親媒性的になりやすいと考えられる。したがって、レバウジオシドAは、乳化粒子のコアの外側に存在するシェルに組み込まれる傾向にあり、これによってGLP-1分泌促進能の素晴らしい向上が実現されるものと推察される。
【0024】
<乳化剤>
本発明で使用する乳化剤は、水中油型乳化剤である。
【0025】
水中油型乳化剤においては、HLB値が7~18、9~18、11~18、13~18、15~18、7~17、7~15、7~13、7~11、7~9、9~16、11~14のいずれかであることが好ましい。
【0026】
本発明において、HLB値は、グリフィン法で算出される。
【0027】
本発明においては、限定されずに、既知の水中油型乳化剤を使用することができる。例えば、水中油型乳化剤としては、HLB値が上記のいずれかの値であるという条件の下、モノグリセリド、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル等のグリセリン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ショ糖脂肪酸エステル;プロピレングリコール脂肪酸エステル;ステアロイル乳酸塩;ポリソルベート;植物レシチン、卵黄レシチン、分別レシチン、酵素処理レシチン等のレシチン類;キラヤ抽出物、ユッカフォーム抽出物;植物性ステロール;スフィンゴ脂質;胆汁末;動物性ステロール等があげられる。
【0028】
好適には、水中油型乳化剤は、HLB値が上記のいずれかの値であるという条件の下、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、酵素処理レシチン、ショ糖脂肪酸エステルおよび有機酸モノグリセリドからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0029】
あるいは、使用する乳化剤が、HLB値が上記のいずれかの値であるという条件の下、親水基が甘味成分由来である乳化剤を含むことが好ましく、特に、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1つの乳化剤を含むことが好ましい。
【0030】
さらにまた、乳化剤が、HLB値が上記のいずれかの値であるという条件の下、親水基がリン酸基を含む乳化剤を含むことが好ましく、特に、レシチン類を含むことが好ましい。
【0031】
<組成物>
本発明の組成物においては、GLP-1分泌促進成分が乳化粒子に組み込まれている。
【0032】
本発明において「乳化粒子」とは、乳化剤由来の分子またはイオンが集まってつくるコロイド粒子を意味する。乳化剤の分野においては、コロイド粒子は、大きさによってミセル、ナノエマルション、エマルション等と呼び分けることがあるが(参照:Toshiyuki Suzuki, J.Soc.Cosmet.Jpn., Vol.44, No.2, 2010)、本発明における「乳化粒子」はこれら全てを含む。
【0033】
「GLP-1分泌促進成分が乳化粒子に組み込まれている」とは、組成物に含まれる少なくとも一部の乳化粒子に、少なくとも一部のGLP-1分泌促進成分由来の分子またはイオンが組み込まれていることを意味する。「組み込まれている」とは、乳化粒子の内部にGLP-1分泌促進成分由来の分子またはイオンの少なくとも一部分が存在し、あるいは、乳化粒子に接触していることを意味する。「乳化粒子の内部」は、乳化粒子のコアまたはコアの外側に位置し、主に乳化剤の親水基から疎水基にかけての部分により構成されているシェルを意味する。GLP-1分泌促進成分が両親媒性であることなどを考慮すると、GLP-1分泌促進成分は、主に、乳化粒子のシェルに存在し、または接触する傾向にあると推察される。GLP-1分泌促進成分が乳化粒子に組み込まれているとき、乳化粒子と水性媒体とを分画すると、乳化粒子側の画分にGLP-1分泌促進成分も含まれる傾向にある。
【0034】
好適には、GLP-1分泌促進成分の乳化粒子への組み込み率は、10~90%である。組込率は、下記式で表される。
組み込み率(%)=(乳化粒子に組み込まれたGLP-1分泌促進成分の量/組成物中の全GLP-1分泌促進成分の量)×100
組込率の算出にあたっては、乳化組成物から乳化粒子に組み込まれたGLP-1分泌促進成分と組み込まれていないGLP-1分泌促進成分を分離すればよく、具体的には乳化組成物に対しフィルター濾過、遠心濾過、カラム分離等の分離操作を行う。
【0035】
分離操作として、好適には、フィルターろ過を行う。
【0036】
乳化粒子の平均粒子径は、好適には、保管する前(例えば製造から半日以内)の段階において、0.05~0.5、0.07~0.5、0.05~0.4、0.05~0.3、0.05~0.2、0.05~0.1、0.1~0.4、0.2~0.3、0.07~0.15、0.07~0.12または0.07~0.09μmである。
【0037】
乳化粒子の平均粒子径は、長期保管後でもあまり変化しない傾向にある。例えば、本発明のGLP-1分泌促進組成物を調整後4℃で2か月保管する場合、保管前後での平均粒子径の変化率R(R=保管後の平均粒子径/保管前の平均粒子径×100-100)は、マイナス40%~プラス40%、マイナス37%~プラス37%、マイナス35%~プラス35%、マイナス20%~プラス20%またはマイナス12%~プラス12%である。
【0038】
乳化粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法で測定することができる。例えば、後述の実施例に示すように、サンプルを、レーザー散乱強度が1%程度になるようにイオン交換水で適宜希釈し、希釈したサンプルをレーザー回折散乱式粒度分布測定器(スペクトリス株式会社 マルバーン・パナリティカル事業部)で測定し、乳化粒子の平均粒子径を求めることができる。
【0039】
GLP-1分泌促進成分に対する乳化剤の割合(質量%)は、好適には、0.02~50、0.07~50、0.1~50、0.4~50、0.7~50、1~50、5~50、10~50、20~50、30~50、40~50、0.02~40、0.02~30、0.02~20、0.02~10、0.02~5、0.02~1、0.07~40、0.1~30、0.4~20、0.7~10、1~5、1~100、5~100、9~100、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~40、1~30、1~20、1~10、5~99、5~90、5~80、5~70、5~60、5~50、5~40、5~30、5~20、5~10、10~50、20~50、30~50、40~50、5~40または10~30質量%である。
【0040】
あるいは、GLP-1分泌促進成分に対する乳化剤の割合(質量%)は、好適には、5~200、7~200、9~200、10~200、30~200、50~200、70~200、90~200、110~200、130~200、150~200、170~200、5~180、5~160、5~140、5~120、5~100、5~80、5~60、5~40、5~30、5~20、7~180、9~160、10~140、30~120、50~100、10.0~180、10.0~160、10.0~140、10.0~120、10.0~100、10.0~80または10.0~60質量%である。
【0041】
本発明の組成物における乳化剤の含有割合(質量%)は、好適には、質量基準で、0.1~5、0.1~4、0.1~3、0.1~2、0.1~1、0.3~5、0.5~5、0.7~5、0.9~5、1.1~5、2.1~5、3.1~5、4.1~5、0.3~4、0.5~3、0.7~2、0.9~1、0.3~5、0.5~5.0、0.7~5.0、0.9~5.0、1~5.0、1.5~5.0、2~5.0、2.5~5.0、3~5.0、3.5~5.0、4~5.0、4.5~5.0、0.1~4、0.1~3、0.1~2、0.1~1、0.1~0.8、0.1~0.6、0.1~0.4、0.1~0.2、0.2~4.5、0.3~4.0、0.4~3.5、0.5~3.0、0.6~2.5、0.7~2.0、0.8~1.5または0.9~1.0質量%である。
【0042】
あるいは、本発明の組成物における乳化剤の含有割合(質量%)は、好適には、質量基準で、0.001~1、0.001~0.5、0.001~0.25、0.001~0.2、0.01~1、0.01~0.5、0.01~0.25、0.01~0.2、0.1~1、0.1~10、0.4~10、0.7~10、1~10、3~10、5~10、7~10、0.1~8、0.1~6、0.1~4、0.1~2、1~8、1~7、1~6、3~10、3~7、3~6または5~7%である。
【0043】
本発明の組成物におけるGLP-1分泌促進成分の含有割合(質量%)は、好適には、0.1~50、1~20、0.1~40、0.1~30、0.1~20、0.1~10、0.1~5、0.1~1、0.4~50、0.7~50、1~50、5~50、10~50、20~50、30~50、40~50、0.4~40、0.7~30、1~20、5~10、2~15、2~10、2~5、5~20、8~20、11~20、14~20、17~20、5~15または8~10質量%である。
【0044】
または、本発明の組成物におけるGLP-1分泌促進成分の含有割合は、好適には、質量基準で、1~500,000、1~400,000、1~300,000、1~200,000、1~100,000、1~80,000、1~60,000、1~40,000、1~20,000、1~10,000、1~8,000、1~6,000、1~4,000、1~2,000、1~1,000、1~500、50~500,000、100~500,000、500~500,000、1,000~500,000、1,500~500,000、3,000~500,000、4,500~500,000、6,000~500,000、7,500~500,000、9,000~500,000、10,000~500,000、50,000~500,000、100,000~500,000、200,000~500,000、300,000~500,000、400,000~500,000、50~400,000、100~300,000、500~200,000、1,000~100,000、1,500~80,000、3,000~60,000、4,500~40,000、6,000~20,000または7,500~10,000ppmである。あるいは、好適には、質量基準で、25~550、30~550、35~550、40~550、45~550、50~550、55~550、20~540、25~540、30~540、35~540、40~540、45~540、50~540、55~540、20~530、25~530、30~530、35~530、40~530、45~530、50~530、55~530、20~520、25~520、30~520、35~520、40~520、45~520、50~520、55~520、20~510、25~510、30~510、35~510、40~510、45~510、50~510、55~510、20~505、25~505、30~505、35~505、40~505、45~505、50~505、55~505、20~500、25~500、30~500、35~500、40~500、45~500、50~500、55~500、20~495、25~495、30~495、35~495、40~495、45~495、50~495、55~495、20~490、25~490、30~490、35~490、40~490、45~490、50~490または55~490ppmである。あるいは、好適には、質量基準で、1~1500、1~1200、5~1200、1~1000、5~1000、10~1000、1~900、5~900、10~900、15~900、20~900、25~900、30~900、35~900、40~900、45~900、50~900、55~900、1~800、5~800、10~800、15~800、20~800、25~800、30~800、35~800、40~800、45~800、50~800、55~800、1~700、5~700、10~700、15~700、20~700、25~700、30~700、35~700、40~700、45~700、50~700、55~700、1~600、5~600、10~600、15~600、20~600、25~600、30~600、35~600、40~600、45~600、50~600、55~600、1~550、1~540、1~530、1~520、1~510、1~505、1~500、1~495、1~490、5~550、5~540、5~530、5~520、5~510、5~505、5~500、5~495、5~490、10~550、10~540、10~530、10~520、10~510、10~505、10~500、10~495、10~490、15~550、15~540、15~530、15~520、15~510、15~505、15~500、15~495または15~490ppmである。
【0045】
または、本発明の組成物におけるGLP-1分泌促進成分の含有割合は、好適には、質量基準で、0.1~25,000、1~25000、10~25000、0.1~2500、1~2500または10~2500ppmである。
【0046】
本発明の組成物のGLP-1分泌促進能は、GLP-1分泌促進成分単体に比べて増加している。本発明の組成物のGLP-1分泌促進能がGLP-1分泌促進成分単体に比べて増加しているか否かは、次の方法で確認される。即ち、本発明の組成物と、有効成分としてGLP-1分泌促進成分しか配合していない点以外は同じである比較対象組成物を調製する。本発明の組成物と比較対象組成物とをGLP-1分泌能を有する細胞に与え、GLP-1分泌量を測定する。本発明の組成物を与えたときのGLP-1分泌量のほうが比較対象組成物を与えたときよりも多い場合には、GLP-1分泌促進能が向上したと判断する。好適には、GLP-1分泌促進能は、GLP-1分泌促進成分単体に比べて1.05倍以上、より好適には1.1倍以上、特に好適には1.2~100倍、最も好適には2~50倍に増加している。
【0047】
本発明の組成物は、GLP-1分泌促進成分と乳化剤以外の他の成分を含んでよい。
【0048】
他の成分は、本発明の組成物の用途などに応じて適宜決定されるが、例えば甘味料、賦形剤、結合剤、崩壊剤、コーティング剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤、安定化剤、吸収促進剤、pH調製剤、防腐剤、抗酸化剤、香料、ビタミン類、微量金属成分等などがあげられる。
【0049】
他の甘味料は、天然甘味料、糖アルコール、人工甘味料等であってよい。例えば、グルコース;フルクトース;マルトース;スクロース;ラクトース;希少糖;アスパルテーム、ネオテーム、アリテームなどのペプチド系甘味料;スクラロースなどのショ糖誘導体;アセスルファムK、サッカリン、アドバンテーム、チクロ、ズルチン等の合成甘味料;モネリン、クルクリン、ブラゼイン、ソーマチンなどの植物性のタンパク質系甘味料;タウマリン;ネオヘスペリジンジヒドロカルコン;エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール等の糖アルコール;高果糖液糖;果糖ブドウ糖液糖;ブドウ糖果糖液糖;オリゴ糖;はちみつ;サトウキビ搾汁液(黒糖蜜);砂糖(白糖、三温糖、黒糖、和三盆等);メープルシロップ;モラセス(糖蜜);水飴などがあげられる。
【0050】
また、他の成分としては、油脂等の乳化粒子の中心部(コア)に選択的に存在しうる成分が好適に使用される。油脂としては、C6~C12の脂肪酸により構成されるMCTオイルが好ましい。
【0051】
乳化粒子の中心部(コア)に選択的に存在しうる成分は、GLP-1分泌促進成分に対して0.5~500質量%の量で含まれることが好ましい。
【0052】
あるいは、乳化粒子の中心部(コア)に選択的に存在しうる成分は、GLP-1分泌促進成分に対して100~400、150~400、200~400、250~400、300~400、350~400、100~350、100~300、100~250、150~250、100~200、100~150、190~300または240~300質量%の量で含まれることが好ましい。
【0053】
さらにまた、他の成分として、グリセリン等の水性基剤を使用することが好ましい。
【0054】
水性基剤は、GLP-1分泌促進成分に対して2~600質量%の量で含まれることが好ましい。
【0055】
あるいは、水性基剤は、GLP-1分泌促進成分に対して2~2100、100~2100、200~2100、300~2100、400~2100、500~2100、600~2100、700~2100、800~2100、900~2100、1000~2100、100~2000、100~1800、100~1600、100~1400、100~1200、100~1000、100~800、100~700、100~600、100~500、200~1800、300~1600、400~1400、500~1200、600~1000、490~2100、490~1900、490~1700、490~1500、490~1300、490~1100、490~900、490~700、490~600、490~560、490~550、490~540または490~530質量%の量で含まれることが好ましい。
【0056】
後で詳述するが、本発明の組成物を飲食品とする場合、他の成分として食品添加剤を含んでよい。食品添加剤としては、例えば、賦形剤(例えば、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、セルロース、乳糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、アルファー化デンプン、カゼイン、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムなど)、結合剤(例えば、アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなど)、崩壊剤(例えば、セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプンなど)、流動化剤(例えば、軽質無水ケイ酸など)、油脂(例えば、大豆油、ゴマ油、オリーブ油、亜麻仁油、エゴマ油、ナタネ油、ココナッツ油、トウモロコシ油などの植物油または動物・魚由来の油)、栄養素(例えば、各種ミネラル、各種ビタミン、アミノ酸)、香料、甘味料、矯味剤、着色料、溶媒(例えば、エタノール)、塩類、pH調節剤、緩衝剤、抗酸化剤、安定化剤、ゲル化剤、増粘剤、滑沢剤、カプセル化剤、懸濁剤、コーティング剤、防腐剤、乳化剤などがあげられる。食品添加剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて含んでもよい。
【0057】
本発明の組成物の一例としては、GLP-1分泌促進成分としてRebA、水中油型乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、酵素処理レシチン、ショ糖脂肪酸エステルおよび有機酸モノグリセリドからなる群から選択される少なくとも1種、乳化粒子の中心部(コア)に選択的に存在しうる成分としてC6~C12の脂肪酸により構成されるMCTオイル、水性基剤としてグリセリン、および、分散媒として水性媒体、特に水を含むものがあげられる。特に、GLP-1分泌促進成分としてRebA、水中油型乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、乳化粒子の中心部(コア)に選択的に存在しうる成分としてC6~C12の脂肪酸により構成されるMCTオイル、水性基剤としてグリセリン、および、分散媒として水を含むものがあげられる。
【0058】
さらに、本発明の組成物の一例としては、GLP-1分泌促進成分としてRebA、水中油型乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、酵素処理レシチン、ショ糖脂肪酸エステルおよび有機酸モノグリセリドからなる群から選択される少なくとも1種、乳化粒子の中心部(コア)に選択的に存在しうる成分としてC6~C12の脂肪酸により構成されるMCTオイル、水性基剤としてグリセリン、および、分散媒として水性媒体、特に水を含み、水中油型乳化剤の含有割合が、GLP-1分泌促進成分の0.02~50質量%であり、乳化粒子の中心部(コア)に選択的に存在しうる成分の含有割合が、GLP-1分泌促進成分の0.5~500質量%であり、水性基剤の含有割合が、GLP-1分泌促進成分の2~600質量%であるものがあげられる。特に、GLP-1分泌促進成分としてRebA、水中油型乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、乳化粒子の中心部(コア)に選択的に存在しうる成分としてC6~C12の脂肪酸により構成されるMCTオイル、水性基剤としてグリセリン、および、分散媒として水を含み、水中油型乳化剤の含有割合が、GLP-1分泌促進成分の0.02~50質量%であり、乳化粒子の中心部(コア)に選択的に存在しうる成分の含有割合が、GLP-1分泌促進成分の2~600質量%であり、水性基剤の含有割合が、GLP-1分泌促進成分の2~600質量%であるものがあげられる。
【0059】
本発明の組成物の別の一例としては、GLP-1分泌促進成分としてRebA、水中油型乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、酵素処理レシチン、ショ糖脂肪酸エステルおよび有機酸モノグリセリドからなる群から選択される少なくとも1種、乳化粒子の中心部(コア)に選択的に存在しうる成分としてC6~C12の脂肪酸により構成されるMCTオイル、水性基剤としてグリセリン、および、分散媒として水性媒体、特に水を含み、水中油型乳化剤の含有割合が、GLP-1分泌促進成分の5~200質量%であり、乳化粒子の中心部(コア)に選択的に存在しうる成分の含有割合が、GLP-1分泌促進成分の100~400質量%であり、水性基剤の含有割合が、GLP-1分泌促進成分の2~2,100質量%であるものがあげられる。特に、GLP-1分泌促進成分としてRebA、水中油型乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、乳化粒子の中心部(コア)に選択的に存在しうる成分としてC6~C12の脂肪酸により構成されるMCTオイル、水性基剤としてグリセリン、および、分散媒として水を含み、水中油型乳化剤の含有割合が、GLP-1分泌促進成分の5~200質量%であり、乳化粒子の中心部(コア)に選択的に存在しうる成分の含有割合が、GLP-1分泌促進成分の100~400質量%であり、水性基剤の含有割合が、GLP-1分泌促進成分の2~2,100質量%であるものがあげられる。
【0060】
本発明の組成物は、任意の形状であってよく、例えば、固体状(例えば、粉末状)、ゲル状または液状であってもよい。
【0061】
本発明の組成物は、GLP-1分泌促進の用途に適用することができる。
【0062】
例えば、本発明の組成物は、血糖値上昇抑制用、食欲抑制用、過食抑制用、糖代謝の改善用、糖尿病の予防または治療用、肥満症の予防または治療用、体重の低減用、及び体脂肪率の低減用から選択される少なくとも1つの用途に使用することができる。好適には、糖代謝改善用、食欲抑制用および糖尿病もしくは肥満症の予防もしくは改善用から選択される少なくとも1つの用途に使用することができる。
【0063】
また、胃内容排出の促進、胃酸分泌の抑制、肝糖放出抑制、心筋保護、学習記憶能向上、食後高血糖(隠れ糖尿病)の予防または治療、潰瘍性大腸炎の予防または治療等の目的で使用することもできる。
【0064】
また、アテローム性動脈硬化などの血管性疾患、神経変性疾患、非アルコール性肝炎、かんぱん、喘息の予防または治療用に使用することもできる(参照:Young-Sun Lee et al., "Anti-Inflammatory Effects of GLP-1-Based Therapies beyond Glucose Control", Mediators of Inflammation Volume 2016, Article ID 3094642, 11 pages)。
【0065】
あるいは、本発明の組成物は、苦味低減用または甘味倍率低減用の組成物とすることもできる。例えばGLP-1分泌促進成分が配糖体甘味料を含んでいる場合に、当該配糖体甘味料の持つ苦みや甘味倍率を、乳化粒子への組み込みにより低減するという目的に使用することもできる。
【0066】
本発明の組成物は、それ自体を直接ヒトまたはGLP-1分泌能を有する非ヒト動物に使用(摂取、服用または投与)することができる。
【0067】
直接ヒトまたは非ヒト動物に使用する場合の本発明の組成物の態様としては、血糖値上昇抑制用、食欲抑制用、過食抑制用、糖代謝改善用、糖尿病の予防もしくは治療用、肥満症の予防もしくは治療用、体重低減用、体脂肪率低減用、胃内容物排出促進用、胃酸分泌抑制用、肝糖放出抑制用、心筋保護用、学習記憶能向上用、血管性疾患の予防もしくは治療用、神経変性疾患の予防もしくは治療用、非アルコール性肝炎の予防もしくは治療用、かんぱんの予防もしくは治療用、または喘息の予防もしくは治療用の食品、例えば麺類(そば、うどん、中華麺、即席麺など)、豆腐、菓子類(飴、ガム、チョコレート、スナック菓子、ビスケット、クッキー、グミなど)、パン類、水産または畜産加工食品(かまぼこ、ハム、ソーセージなど)、乳製品(発酵乳など)、油脂および油脂加工食品(サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング、ファットスプレッドなど)、調味料(ソース、たれなど)、調理品または半調理品(チャンプルなど)、レトルト食品(カレー、シチュー、丼、お粥、雑炊など)、冷菓(アイスクリーム、シャーベット、かき氷など)、粉末食品(粉末飲料、粉末スープ等)、経腸流動食などがあげられる。また、上述した用途の食品には、いわゆる健康食品の他、特定保健用食品、栄養機能食品などの保健機能食品、サプリメント(栄養補助食品)、飼料も含まれる。
また、血糖値上昇抑制用、食欲抑制用、過食抑制用、糖代謝改善用、糖尿病の予防もしくは治療用、肥満症の予防もしくは治療用、体重低減用、体脂肪率低減用、胃内容物排出促進用、胃酸分泌抑制用、肝糖放出抑制用、心筋保護用、学習記憶能向上用、血管性疾患の予防もしくは治療用、神経変性疾患の予防もしくは治療用、非アルコール性肝炎の予防もしくは治療用、かんぱんの予防もしくは治療用、または喘息の予防もしくは治療用の飲料、例えば茶飲料、清涼飲料、炭酸飲料(ノンアルコールビールを含む)、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料、ジュース、ドリンク剤、アルコール飲料、加工乳、調製豆乳などがあげられる。
【0068】
本発明の組成物を製剤化して使用する場合、剤形としては、例えば、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、ドライシロップ剤、被覆錠剤、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、カプセル剤、ソフトカプセル剤、シロップ剤、経腸栄養剤などがあげられる。
【0069】
<製造方法>
本発明の組成物は、その用途、組成等に応じた既知の方法により製造される。
【0070】
好適には、水中油型の乳化剤と、両親媒性のGLP-1分泌促進成分と、水性媒体とを混合して混合物を調製する工程、および、得られた混合物に油脂などの乳化粒子のコアに包含されうる成分を加えて攪拌する工程を経て製造される。撹拌は、ホモミキサー等を使用し、油脂などが乳化粒子のコアに包含されるように、混合よりも激しい条件で高速攪拌することが好ましい。
【0071】
混合よりも激しい条件で高速攪拌するにあたって、攪拌速度は、好適には、5,000~10,000、5,000~8,000または8,000~10,000rpmである。
【0072】
したがって、本発明の一側面は、水中油型の乳化剤と、両親媒性のGLP-1分泌促進成分と、水性媒体とを混合して混合物を調製する工程、および、得られた混合物に油脂を加えて攪拌する工程を含むGLP-1分泌促進用組成物の製造方法、および、前記方法により製造される、両親媒性のGLP-1分泌促進成分と水中油型乳化剤とを含む乳化粒子を含み、該乳化粒子に前記GLP-1分泌促進成分が組み込まれている組成物に関する。
【0073】
別の態様として、本発明の組成物は、水中油型の乳化剤と、水性媒体とを混合して混合物を調製する工程、および、得られた混合物に、両親媒性のGLP-1分泌促進成分と、油脂などの乳化粒子のコアに包含されうる成分を加えて攪拌する工程を経て製造することも可能である。撹拌は、ホモミキサー等を使用し、油脂などが乳化粒子のコアに包含されるように、混合よりも激しい条件で高速攪拌することが好ましい。混合よりも激しい条件で高速攪拌するにあたって、攪拌速度は、好適には、5,000~10,000、5,000~8,000または8,000~10,000rpmである。
【0074】
<応用>
本発明の組成物は、飲料、食品、医薬組成物等に含有させた状態で、経口、経鼻、経腸等の経路または経管による経路にて使用することもできる。
【0075】
本発明の組成物を飲食品に添加して(または含有させて)用いる場合、飲食品の種類は、特に限定されない。食品としては、例えば、麺類(そば、うどん、中華麺、即席麺など)、豆腐、菓子類(飴、ガム、チョコレート、スナック菓子、ビスケット、クッキー、グミなど)、パン類、水産または畜産加工食品(かまぼこ、ハム、ソーセージなど)、乳製品(発酵乳など)、油脂および油脂加工食品(サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング、ファットスプレッドなど)、調味料(ソース、たれなど)、調理品または半調理品(チャンプルなど)、レトルト食品(カレー、シチュー、丼、お粥、雑炊など)、冷菓(アイスクリーム、シャーベット、かき氷など)、粉末食品(粉末飲料、粉末スープ等)、経腸流動食などがあげられる。また、いわゆる健康食品の他、特定保健用食品、栄養機能食品などの保健機能食品、サプリメント(栄養補助食品)、飼料なども含まれる。
飲料としては、例えば茶飲料、清涼飲料、炭酸飲料(ノンアルコールビールを含む)、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料、ジュース、ドリンク剤、アルコール飲料、加工乳、調製豆乳などがあげられる。
【0076】
飲食品は、本発明の組成物を含んでいる限り、他の成分を含んでいてもよい。この場合の他の成分の例としては、<組成物>の項で示した他の成分の例と同じものをあげることができる。
【0077】
本発明において、GLP-1分泌促進成分の摂取量(服用量、投与量)は特に限定されず、対象年齢、体重、健康状態などに応じて適宜選択できる。
【0078】
本発明は、治療的用途(医療用途)または非治療用途のいずれにも使用または適用できる。具体的には、医薬品、医薬部外品、化粧品などに分類されるか否かによらず、GLP-1の分泌を促進する機能やGLP-1の分泌促進に起因する機能を明示的にまたは暗示的に訴求するあらゆる組成物または飲食品として使用または適用できる。また、本発明を使用した製品には、GLP-1の分泌を促進する機能やGLP-1の分泌促進に起因する機能を表示してもよい。このような表示としては、特に限定されないが、GLP-1の分泌促進機能や、GLP-1の分泌促進に起因する機能、例えば、血糖値上昇抑制機能、食欲抑制機能、過食抑制機能、糖代謝の改善機能、糖尿病の予防または治療機能、肥満症の予防または治療機能、体重の低減機能、体脂肪率の低減機能、胃内容排出促進機能、胃酸分泌抑制機能、肝糖放出抑制機能、心筋保護機能、学習記憶能向上機能、血管性疾患の予防または治療機能、神経変性疾患予防または治療機能、非アルコール性肝炎の予防または治療機能、かんぱんの予防または治療機能、喘息の予防または治療機能、あるいはこれらと同視できる表示などがあげられる。
【0079】
本発明の組成物の使用のタイミングは、特に限定されるものではなく、例えば、食前、食中、食間、食後、就寝前などであってよい。
【0080】
本発明の一側面は、両親媒性のGLP-1分泌促進成分と乳化剤とを含む乳化粒子を含む組成物であって、前記乳化剤が水中油型乳化剤であり、前記乳化粒子に前記GLP-1分泌促進成分が組み込まれており、GLP-1分泌の促進により改善しうる疾患の処置に使用される組成物に関する。また、本発明の一側面は、両親媒性のGLP-1分泌促進成分と乳化剤とを含む乳化粒子を含む組成物であって、前記乳化剤が水中油型乳化剤であり、前記乳化粒子に前記GLP-1分泌促進成分が組み込まれている組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、対象においてGLP-1の分泌を促進する、または、対象においてGLP-1の分泌促進により改善しうる疾患を治療する方法に関する。さらにまた、本発明の一側面は、両親媒性のGLP-1分泌促進成分と乳化剤とを含む乳化粒子を含む組成物であって、前記乳化剤が水中油型乳化剤であり、前記乳化粒子に前記GLP-1分泌促進成分が組み込まれている組成物の、GLP-1分泌の促進により改善しうる疾患を治療するための医薬の製造への使用に関する。なお、上記した各側面は、本明細書に記載の様々な特徴を有してよい。
【0081】
疾患には、高血糖症、過食症、胃酸過多症、糖尿病、肥満症、血管性疾患、神経変性疾患、非アルコール性肝炎、かんぱん、喘息などが含まれる。
【0082】
本明細書において、用語「対象」は、GLP-1分泌能を有する任意の生物個体、好ましくは動物、さらに好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトの個体を意味する。対象は健常(例えば、特定の又は任意の疾患を有しない)であっても、何らかの疾患に罹患していてもよいものとするが、GLP-1の分泌促進により改善しうる疾患の処置等が企図される場合には、典型的には当該疾患に罹患しているか、罹患するリスクを有する対象を意味する。
本明細書において、用語「処置」は、疾患の治癒、一時的寛解又は予防などを目的とする医学的に許容される全ての種類の予防的及び/又は治療的介入を包含するものとする。例えば、「処置」は、疾患の進行の遅延又は停止、病変の退縮又は消失、当該疾患発症の予防又は再発の防止などを含む、種々の目的の医学的に許容される介入を包含する。したがって、本発明の組成物は、疾患の治療及び/又は予防に用いることができる。
【0083】
また、本発明の一側面は、GLP-1分泌促進成分を乳化粒子に取り込む(乳化する)ことを含む、GLP-1分泌促進成分のGLP-1分泌促進能の増加方法に関する。
【実施例
【0084】
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、実験例14は欠番である。
<実験例1>
RebA、RebB、RebM、RebN、RebD、RebC、MogVおよびステビオシドがGLP-1分泌促進効果を有するかを検討した。具体的には、以下の手順により、GLP-1分泌量を測定し、コントロールであるno sampleよりも分泌量の多かったものをGLP-1分泌促進効果ありと判定した。
【0085】
(各被験物質の調整)
各被験物質(B,C,D,E,F,G,I,J)を、PBS(Thermo Fisher Scientific)(Cat. No. 14190250)を用いて溶解し、ストック液を得た。ストック液の濃度を以下に示す。
B(RebA);5mM,C(RebB);1M,D(RebM);2.5mM,
E(RebN);1M,F(RebD);2.5mM,G(RebC);2.5mM,
I(MogV);1M,J(ステビオシド);1M
【0086】
(GLP-1の定量)
H716(ATCC)(Cat.No.ATCC(登録商標)CCL-251)をRPMI1640(10%FBS(Thermo Fisher Scientific)(Cat.No.10439024),1mM Sodium Pyruvate)で、37℃、5%COのインキュベーター中で培養した。
前培養を2週間行い、細胞を十分に起眠した後、細胞のストックを作製した。
細胞を96wellのプレートに1well当たり2×10cells/90μL(high)で播種した(N=4)。このとき培地に含まれるFBSを0.5%に下げ、細胞の増殖を抑制した。
24時間後、最高濃度のサンプル(即ち、ストック液)を10μLずつ加えた。
さらに24時間後にGLP-1の定量を行った。具体的手順は、PerkinElmer社提供のHuman GLP-1(7-36 amide)Immunoassay kit(Cat.No.AL359)(Lot number 2361115)ユーザーガイドに従った。なお、陰性コントロール(no sample)としてはPBSを使用した。
【0087】
結果を図1に示した。図1によれば、no sampleよりもGLP-1分泌量が有意に多かったのは、RebA、RebB、RebC、MogV、ステビオシドであった。
【0088】
<実験例2>
RebC20mgに対し、21μLのDMSO(富士フイルム和光純薬社製、型番:037-24053)を加えた後、ボルテックスにより攪拌し、数時間静置してRebC濃度1,000mMのストック液を得た。得られたストック液とPBSを用い、10mM溶液を作製した。
10mM溶液を、1%DMSO含有PBSを用いて必要に応じて希釈し、試料G-1mM~試料G-10mMを得た。表1には、RebCの濃度を記載した。
【0089】
<実験例3>
ステビオシド15mgに対し、12.4μLのDMSO(富士フイルム和光純薬社製、型番:037-24053)を加えた後、ボルテックスにより攪拌し、ステビオシド濃度150mMのストック液を得た。得られたストック液とPBSを用い、15mM溶液を作製した。
15mM溶液を、1%DMSO含有PBSを用いて必要に応じて希釈し、試料J-0.1mM~試料J-15mMを得た。表1には、ステビオシドの濃度を記載した。
【0090】
<実験例4>
RebA20mgに対し、8.27μLのDMSO(富士フイルム和光純薬社製、型番:037-24053)を加えた後、74.5μLのPBSを加えてボルテックスにより攪拌し、RebA濃度250mMのストック液を得た。得られたストック液とPBSを用い、25mM溶液を作製した。
25mM溶液を、1%DMSO含有PBSを用いて必要に応じて希釈し、試料B-1mM~試料B-25mMを得た。表1には、RebAの濃度を記載した。
【0091】
<実験例5>
グリセリン490g、RebA100g、及びポリグリセリン脂肪酸エステル10gを混合し、70℃で昇温溶解して水系混合溶液とした。この水系混合溶液に油脂としてMCTオイル300gを添加し、ホモミキサー(特殊機化工業製)にて回転数8000rpmで乳化した。攪拌終了後40℃まで冷却し、水100gを加えて、RebA加工液を得た。
得られたRebA加工液241.8μLに対し、10μLのDMSO(富士フイルム和光純薬社製、型番:037-24053)及び748.2μLのPBSを加えてボルテックスにより攪拌し、RebA濃度25mMのストック液を得た。
ストック液を、1%DMSO含有PBSを用いて必要に応じて希釈し、試料B加工-0.25mM~試料B加工-25mMを得た。表1には、RebAの濃度を記載した。
【0092】
<GLP-1分泌量の測定>
表1に示す条件の下、実験例2~5で得られた試料を培地に添加し、得られた培地にて細胞を培養し、2時間後のGLP-1分泌量を測定した。具体的な手順は次の通りである。
H716(ヒト結腸由来細胞)をRPMI1640(Thermo Fisher Scientific製、型番:61870-036)(10%FBS(Hyclone製、型番:SH30396.03),1mM Sodium Pyruvate)で、37℃、5%COのインキュベーター中で培養した。
前培養を2週間行い、細胞を十分に起眠した後、細胞のストックを作製した。
細胞を96wellプレートに1well当たり2×10cells/90μLで播種した。このとき培地に含まれるFBSを0.5%に下げ、細胞の増殖を抑制した。
24時間後、各試料を10μLずつ加えた(試料Bはn=3~4、試料B加工、試料G、試料Jはn=4)。培地中の最終濃度は、表1の「サンプルF.C.(mM)」の欄に示した。
添加から所定の時間(2時間)経過後、96wellプレートを回収した。
回収した96wellプレートを300g×5分遠心し、上清を回収した。
Human GLP-1(7-36amide) Immunoassay kit(PerkinElmer社製、型番:AL359C)を用いて回収した上清中のGLP-1を定量し、結果を図2~5に示した。図2~5には、無刺激性コントロール(陰性対照)として1%DMSO含有溶液のGLP-1分泌量と、陽性コントロールとしてPMA(富士フイルム和光純薬社製、型番:162-23591)の水系溶液のGLP-1分泌量も載せた。PMAの水系溶液は、PMA1mgに対し16.21μLのDMSOを加えてストック液を調製し、該ストック液にPBSを添加して1mM溶液を作製し、これを1%DMSO含有PBSで希釈することで得られた。
【0093】
以下に表1を示す。表1における陽性対照は、陽性コントロールとも呼ばれる。陰性対照は、陰性コントロールとも呼ばれる。
【表1】
【0094】
<実験例6:表面張力の測定>
GLP-1分泌促進効果と乳化剤の表面張力との間に相関関係があるか否かを調べるべく、次の手順で実験を行った。
RebA、RebD、及びRebM(市販品)それぞれを配合した水溶液を調製した。RebA、RebD、及びRebMの配合量は、ショ糖換算でBrix10に揃えた。即ち、RebA 333ppm、RebD 351ppm、RebM 351ppmとした。得られた水溶液の表面張力を、自動表面張力計(CBVP-Z型、協和界面科学株式会社製)を用いたプレート法によって測定した。水を対照として、同様に試験した。結果を図6に示した。
【0095】
<実験例7:香味特性の評価>
RebAの乳化組成物の香味特性を、次の手順により評価した。
RebAを純水に溶解し、100ppm及び300ppmの水溶液を作成し、コントロールとした。次に実験例5で作製したRebA加工液を純水に添加し、同様に100ppmおよび300ppmの水溶液を作製した。よく訓練された官能パネラー7人により、コントロールを3点として、0.5点刻みにてRebA加工液添加水溶液の香味評価を実施し、平均値として図に示した。なお、香味評価は、甘味強度、甘味後引き、苦味強度で評価を行った。
結果を図7に示した。
【0096】
<実験例8>
RebA20mgに対し、8.27μLのDMSO(富士フイルム和光純薬社製、型番:037-24053)を加えた後、74.43μLのPBSを加えてボルテックスにより攪拌し、RebA濃度250mMのストック液を得た。得られたストック液とPBSを用い、50mM溶液を作製した。
50mM溶液を、1%DMSO含有PBSを用いて希釈し、試料B-1mM~試料B-25mMを得た。表2には、RebAの濃度を記載した。
【0097】
<実験例9>
グリセリン490g、RebA100g、及びポリグリセリン脂肪酸エステル10gを混合し、70℃で昇温溶解して水系混合溶液とした。この水系混合溶液に油脂としてMCTオイル300gを添加し、ホモミキサー(特殊機化工業製)にて回転数8000rpmで乳化した。攪拌終了後40℃まで冷却し、水100gを加えて、RebA加工液を得た。
得られたRebA加工液241.8μLに対し、10μLのDMSO(富士フイルム和光純薬社製、型番:037-24053)及び748.2μLのPBSを加えてボルテックスにより攪拌し、RebA濃度25mMのストック液を得た。
ストック液を、1%DMSO含有PBSを用いて必要に応じて希釈し、試料B加工-1mM~試料B加工-25mMを得た。表2には、RebAの濃度を記載した。
【0098】
<実験例10>
RebA100gを使用せず、グリセリン490g、ポリグリセリン脂肪酸エステル10g、MCTオイル300gおよび水200gを使用した点以外は、実験例9のRebA加工液の調整と同様にして、C溶液を得た。
得られたC溶液483.5μLに対し、DMSO(富士フイルム和光純薬社製、型番:037-24053)10μL及びPBS 506.5μLを加えてボルテックスにより攪拌し、RebA相当濃度50mMのストック液を得た。
得られたストック液を、1%DMSO含有PBSを用いて希釈し、試料C-1mM~試料C-25mMを得た。表2には、RebA相当濃度を記載した。RebA相当濃度とは、ある試料C中のグリセリン、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びMCTオイルの濃度と、実験例9のある試料B加工中のグリセリン、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びMCTオイルの濃度が同じ場合の、当該試料B加工中のRebAの濃度を意味する。
【0099】
<実験例11>
実験例8と同様にして、試料B+Cの2倍の濃度のRebAを含む試料Bを得た。即ち、試料B-2mM、試料B-5mM、試料B-10mM、試料B-20mM、試料B-30mM、試料B-40mM、試料B-50mMを得た。ハイフンの後ろの濃度は、RebAの濃度を示す。
実験例10と同様にして、試料B+Cの2倍の濃度のポリグリセリン脂肪酸エステルなどを含む試料Cを得た。即ち、試料C-2mM、試料C-5mM、試料C-10mM、試料C-20mM、試料C-30mM、試料C-40mM、試料C-50mMを得た。ハイフンの後ろの濃度は、RebA相当濃度を示す。
同じ濃度の試料Bと試料C(例えば試料B-2mMと試料C-2mM)を等量ずつ混和し、試料B+C-1mM~試料B+C-25mMを得た。表2には、RebAの濃度を記載した。
【0100】
<実験例12>
グリセリン118.5μLに対し、10μLのDMSO(富士フイルム和光純薬社製、型番:037-24053)及び871.5μLのPBSを加えてボルテックスにより攪拌し、RebA相当濃度25mMのストック液を得た。
得られたストック液を、1%DMSO含有PBSを用いて必要に応じて希釈し、試料D-1mM~試料D-25mMを得た。表2には、RebA相当濃度を記載した。RebA相当濃度とは、ある試料D中のグリセリン濃度と、実験例9のある試料B加工中のグリセリン濃度が同じ場合の、当該試料B加工中のRebAの濃度を意味する。
【0101】
<実験例13>
MCTオイル72.5μLに対し、10μLのDMSO(富士フイルム和光純薬社製、型番:037-24053)及び917.5μLのPBSを加えてボルテックスにより攪拌し、RebA相当濃度25mMのストック液を得た。
得られたストック液を、1%DMSO含有PBSを用いて必要に応じて希釈し、試料E-1mM~試料E-25mMを得た。表2には、RebA相当濃度を記載した。RebA相当濃度とは、ある試料E中のMCTオイルの濃度と、実験例9のある試料B加工中のMCTオイルの濃度が同じ場合の、当該試料B加工中のRebAの濃度を意味する。
【0102】
<GLP-1分泌量の測定>
表2に示す条件の下、上記実験例8~13で得られた試料を培地に添加し、得られた培地にて細胞を培養し、2時間後のGLP-1分泌量を測定した。具体的な手順は次の通りである。
H716(ヒト結腸由来細胞)をRPMI1640(Thermo Fisher Scientific社製、型番:61870-036)(10%FBS(Hyclone製、型番:SH30396.03),1mM Sodium Pyruvate)で、37℃、5%COのインキュベーター中で培養した。
前培養を2週間行い、細胞を十分に起眠した後、細胞のストックを作製した。
細胞を96wellプレートに1well当たり2×10cells/90μLで播種した。このとき培地に含まれるFBS(Hyclone社製、型番:SH30396.03)を0.5%に下げ、細胞の増殖を抑制した。
24時間後、各試料を10μLずつ加えた(n=3~4)。培地中の最終濃度は、表2の「サンプルF.C.」の欄に示した。
添加から所定の時間(2時間)経過後、96wellプレートを回収した。
回収した96wellプレートを300g×5分遠心し、上清を回収した。
PerkinElmer社製Human GLP-1(7-36amide) Immunoassay kitを用いて、回収した上清中のGLP-1を定量した。このとき、検量線のスタンダードの範囲は30~100,000pg/mLであり、100,000pg/mLより大きい値でエラーとなるものがあったため、100,000pg/mL以上と考えられる値を100,000pg/mLとして算出した。
スミルノフ・グラブス検定により外れ値(p<0.01)を除外した。
結果を図8に示した。図8には、無刺激性コントロールとして1%DMSO含有溶液のGLP-1分泌量と、陽性コントロールとしてPMA(富士フイルム和光純薬社製、型番:162-23591)の水系溶液のGLP-1分泌量も載せた。PMAの水系溶液は、PMA1mgに対し16.21μLのDMSOを加えてストック液を調製し、該ストック液にPBSを添加して1mM溶液を作製し、これを1%DMSO含有PBSで希釈することで得られた。
【0103】
次に、確認のために、別のプレートでもGLP-1分泌量の測定を行った。具体的には、図8と同じ培養上清を用い、試料B~Dを1枚のアッセイプレートで、試料Eをもう1枚のアッセイプレートでGLP-1量の測定を行った。2時間後の培養上清を同一アッセイプレートで測定した結果を図9~14に示す。用いた各試料の濃度は、図9~14中に記載する。なお、図11、13、14記載のC、D、Eの濃度は、RebA相当濃度である。
検量線の範囲は30~100,000pg/mLであったが、今回は100,000pg/mLより大きい値でエラーとなる数値がなかったため、100,000pg/mLより大きい値については理論値として算出した。
【0104】
以下に表2を示す。表2における陽性対照は、陽性コントロールとも呼ばれる。陰性対照は、陰性コントロールとも呼ばれる。
【表2】
【0105】
<実験例15>
RebA36.3mgに対し、9.4μLのDMSO(富士フイルム和光純薬社製、型番:037-24053)を加えた後、929.0μLのPBSを加えてボルテックスにより攪拌し、RebA濃度40mMのストック液を得た。
得られたストック液とPBSを、1%DMSO含有PBSを用いて希釈し、試料B-0.31mM~試料B-20mMを得た。表3には、RebAの濃度を記載した。
【0106】
<実験例16>
グリセリン490g、RebA100g、及びポリグリセリン脂肪酸エステル10gを混合し、70℃で昇温溶解して水系混合溶液とした。この水系混合溶液に油脂としてMCTオイル300gを添加し、ホモミキサー(特殊機化工業製)にて回転数8000rpmで乳化した。攪拌終了後40℃まで冷却し、水100gを加えて、RebA加工液を得た。
得られたRebA加工液193.4μLに対し、10μLのDMSO(富士フイルム和光純薬社製、型番:037-24053)及び796.6μLのPBSを加えてボルテックスにより攪拌し、RebA濃度20mMのストック液を得た。
ストック液を、1%DMSO含有PBSを用いて必要に応じて希釈し、試料B加工-0.31mM~試料B加工-20mMを得た。表3には、RebAの濃度を記載した。
【0107】
<実験例17>
RebA100gを使用せず、グリセリン490g、ポリグリセリン脂肪酸エステル10g、MCTオイル300gおよび水200gを使用した点以外は、実験例16のRebA加工液の調整と同様にして、C溶液を得た。
C溶液386.8μLに対し、10μLのDMSO(富士フイルム和光純薬社製、型番:037-24053)及び603.2μLのPBSを加えてボルテックスにより攪拌し、RebA相当濃度40mMのストック液を得た。
ストック液を、1%DMSO含有PBSを用いて希釈し、試料C-0.31mM~試料C-20mMを得た。表3には、RebA相当濃度を記載した。RebA相当濃度とは、ある試料C中のポリグリセリン脂肪酸エステルの濃度と、実験例16のある試料B加工中のポリグリセリン脂肪酸エステルの濃度が同じ場合の、当該試料B加工中のRebAの濃度を意味する。
【0108】
<実験例18>
実験例15と同様にして、試料B+Cの2倍の濃度のRebAを含む試料Bを得た。即ち、試料B-0.62mM、試料B-2.5mM、試料B-10mM、試料B-40mMを得た。ハイフンの後ろの濃度は、RebAの濃度を示す。
実験例17と同様にして、試料B+Cの2倍の濃度のポリグリセリン脂肪酸エステルを含む試料Cを得た。即ち、試料C-0.62mM、試料C-2.5mM、試料C-10mM、試料C-40mMを得た。ハイフンの後ろの濃度は、RebA相当濃度を示す。
同じ濃度の試料Bと試料C(例えば試料B-0.62mMと試料C-0.62mM)を等量ずつ混和し、試料B+C-0.31mM~試料B+C-20mMを得た。表3には、RebAの濃度を記載した。
【0109】
<実験例19>
グリセリン94.8μLに対し、10μLのDMSO(富士フイルム和光純薬社製、型番:037-24053)及び895.2μLのPBSを加えてボルテックスにより攪拌し、RebA相当濃度20mMのストック液を得た。
得られたストック液を、1%DMSO含有PBSを用いて必要に応じて希釈し、試料D-0.31mM~試料D-20mMを得た。表3には、RebA相当濃度を記載した。RebA相当濃度とは、ある試料D中のグリセリンの濃度と、実験例16のある試料B加工中のグリセリンの濃度が同じ場合の、当該試料B加工中のRebAの濃度を意味する。
【0110】
<実験例20>
MCTオイル58.0μLに対し、10μLのDMSO(富士フイルム和光純薬社製、型番:037-24053)及び932.0μLのPBSを加えてボルテックスにより攪拌し、RebA相当濃度20mMのストック液を得た。
得られたストック液を、1%DMSO含有PBSを用いて必要に応じて希釈し、試料E-0.31mM~試料E-20mMを得た。表3には、RebA相当濃度を記載した。RebA相当濃度とは、ある試料E中のMCTオイルの濃度と、実験例16のある試料B加工中のMCTオイルの濃度が同じ場合の、当該試料B加工中のRebAの濃度を意味する。
【0111】
<細胞毒性>
表3に示す条件の下、上記実験例15~20で得られた試料を培地に添加し、得られた培地にて細胞を培養し、2時間後と24時間後の細胞毒性を測定した。具体的な手順は次の通りである。
H716細胞をRPMI1640(Thermo Fisher Scientific社製、型番:61870-036)(10%FBS(Gibco製、型番:SH102770),1mM Sodium Pyruvate)で37℃、5%CO下でインキュベーター内にて培養した。H716細胞は96wellプレートに2×10cells/90μL/well(死細胞評価用)及び48wellプレートに4×10cells/180μL/well(形態観察用)で播種した。プレートに播種した際の培地中FBSは0.5%とした。細胞播種24時間後、各濃度の試料を10μL/well(96wellプレート)または20μL/well(48wellプレート)加えた。培地中の最終濃度は、表3の「サンプルF.C.」の欄に示した。試料添加2時間後では各試料の最も高い濃度(表3記載の#1、#6、#10、#14、#18、#22、#26、#30)について評価した。
【0112】
(死細胞を指標とした評価)
試料添加2時間後及び24時間後、細胞を100×gで5分間遠心し上清を除去した。Propidium iodide溶液(0.66μg/mL,PBSにて1:1500希釈)を50μL/wellずつ添加し、室温で15分間静置して死細胞の染色を行った。ピペッティングにより細胞を懸濁した後、顕微鏡下で位相差画像及び蛍光画像を撮影した。ImageJにて位相差画像を基に細胞総数を、蛍光画像を基に死細胞数を計測した。計測した細胞数を用いて死細胞率を算出した。
死細胞率(%)=死細胞数/細胞総数×100
各試料添加時の死細胞率は、細胞播種24時間後の未添加時における死細胞率を0%、70%エタノールを添加し氷上で30分以上静置した際の死細胞率を100%として補正した。結果を図15に示す。図15aは、2時間後の結果を示し、図15bは24時間後の結果を示す。
【0113】
2時間後の結果を示す図15aから、全ての試料において細胞死は誘導されていなかったことがわかる。
【0114】
また、24時間後の結果を示す図15bから理解されるとおり、試料B+C(RebA濃度2mM)を添加したときの死細胞率が最も高かったが、PMAの最も低濃度と同等の死細胞率であった。試料B+C以外については、陰性対照(-)(陰性コントロールとも呼ぶ。)と同等か陰性対照よりも低い死細胞率であった。よって、試料B+Cで細胞死が誘導された可能性は低く、他の試料において細胞死は誘導されていなかった。
【0115】
(細胞形態を指標とした評価)
試料添加2時間後及び24時間後、細胞を顕微鏡下で撮影し、形態変化の有無を確認した。試料B加工、C及びB+Cは白濁しているため0.5mM及び2mM添加時の顕微鏡下での判定が難しいが、その他の試料についてはH716細胞に添加しても、細胞の収縮や破裂などの形態変化は見られなかった。
【0116】
以下に表3を示す。表3における陽性対照は、陽性コントロールとも呼ばれる。陰性対照は、陰性コントロールとも呼ばれる。
【表3】
【0117】
<実験例21>
RebA134.3mgに対し、34.7μLのDMSO(富士フイルム和光純薬社製、型番:037-24053)を加えた後、3438μLのPBSを加えてボルテックスにより攪拌し、RebA濃度40mMのストック液を得た。
得られたストック液を、1%DMSO含有PBSを用いて希釈し、試料B-1mM~試料B-20mMを得た。表4には、RebAの濃度を記載した。
【0118】
<実験例22>
RebA100gを水100gに代替した点、並びに、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル10gに代えてショ糖脂肪酸エステル10gを使用した点以外は、実験例16のRebA加工液の調整と同様にしてC-1溶液を得た。具体的には、グリセリン490g、ショ糖脂肪酸エステル10g(三菱ケミカルフーズ製 HLB=16)を混合し70℃で昇温溶解して水系混合溶液とした。この水系混合溶液に油脂としてMCTオイル300gを添加し、ホモミキサー(特殊機化工業製)にて回転数8000rpmで乳化した。攪拌終了後40℃まで冷却し、水200gを加えて、C-1溶液を得た。
得られたC-1溶液580.2μLに対し、15μLのDMSO(富士フイルム和光純薬社製、型番:037-24053)及び904.8μLのPBSを加えてボルテックスにより攪拌し、RebA相当濃度40mMのストック液を得た。
得られたストック液を1%DMSO含有PBSを用いて希釈し、試料C-1-1mM~試料C-1-20mMを得た。表4には、RebA相当濃度を記載した。RebA相当濃度とは、ある試料C-1中のグリセリンおよび乳化剤の濃度と、実験例25のある試料B+C-1中のグリセリンおよび乳化剤の濃度が同じ場合の、当該試料B+C-1中のRebAの濃度を意味する。
【0119】
<実験例23>
ショ糖脂肪酸エステル(三菱ケミカルフーズ製 HLB=16)10gに代えて酵素分解レシチン(太陽化学製 HLB=12.0)10gを用いた点以外は実験例22と同様にして、試料C-2-1mM~試料C-2-20mMを得た。表4には、RebA相当濃度を記載した。RebA相当濃度とは、ある試料C-2中のグリセリンおよび乳化剤の濃度と、実験例26のある試料B+C-2中のグリセリンおよび乳化剤の濃度が同じ場合の、当該試料B+C-2中のRebAの濃度を意味する。
【0120】
<実験例24>
ショ糖脂肪酸エステル(三菱ケミカルフーズ製 HLB=16)10gに代えて有機酸モノグリセリド(太陽化学製 HLB=9.0)10gを用いた点以外は実験例22と同様にして、試料C-3-1mM~試料C-3-20mMを得た。表4には、RebA相当濃度を記載した。RebA相当濃度とは、ある試料C-3中のグリセリンおよび乳化剤の濃度と、実験例27のある試料B+C-3中のグリセリンおよび乳化剤の濃度が同じ場合の、当該試料B+C-3中のRebAの濃度を意味する。
【0121】
<実験例25>
実験例21と同様にして、試料B+C-1の2倍の濃度のRebAを含む試料Bを得た。即ち、試料B-2mM、試料B-5mM、試料B-10mM、試料B-20mM、試料B-30mM、試料B-40mMを得た。ハイフンの後ろの濃度は、RebAの濃度を示す。
実験例22と同様にして、試料B+C-1の2倍の濃度のショ糖脂肪酸エステルを含むC-1試料を得た。即ち、試料C-1-2mM、試料C-1-5mM、試料C-1-10mM、試料C-1-20mM、試料C-1-30mM、試料C-1-40mMを得た。ハイフンの後ろの濃度は、RebA相当濃度を示す。
同じ濃度の試料Bと試料C(例えば試料B-1-2mMと試料C-1-2mM)を等量ずつ混和し、試料B+C-1-1mM~試料B+C-1-20mMを得た。表4には、RebAの濃度を記載した。
【0122】
<実験例26>
ショ糖脂肪酸エステル(三菱ケミカルフーズ製 HLB=16)10gに代えて酵素分解レシチン(太陽化学製 HLB=12.0)10gを用いた点以外は実験例25と同様にして、試料B+C-2-1mM~試料B+C-2-20mMを得た。表4には、RebAの濃度を記載した。
【0123】
<実験例27>
ショ糖脂肪酸エステル(三菱ケミカルフーズ製 HLB=16)10gに代えて有機酸モノグリセリド(太陽化学製 HLB=9.0)10gを用いた点以外は実験例25と同様にして、試料B+C-3-1mM~試料B+C-3-20mMを得た。表4には、RebAの濃度を記載した。
【0124】
<実験例28>
ショ糖脂肪酸エステル13.1mgに対し339μLのDMSO(富士フイルム和光純薬社製、型番:037-24053)を加えてボルテックスし、さらにDMSOで20倍希釈して、RebA相当濃度2,000mMのストック液を得た。得られたストック液にPBSを配合し、20mM溶液を得た。
得られた20mM溶液を、1%DMSO含有PBSを用いて必要に応じて希釈し、試料G-1-1mM~試料G-1-20mMを得た。表4には、RebA相当濃度を記載した。RebA相当濃度とは、ある試料G-1中のショ糖脂肪酸エステルの濃度と、実験例25のある試料B+C-1中のショ糖脂肪酸エステルの濃度が同じ場合の、当該試料B+C-1中のRebAの濃度を意味する。
【0125】
<実験例29>
酵素分解レシチン20.9mgに対して540μLのPBSを加えてボルテックスし、さらにDMSO(富士フイルム和光純薬社製、型番:037-24053)で20倍希釈して、RebA相当濃度2,000mMのストック液を得た。ストック液にPBSとDMSOを配合し、20mM溶液(1%DMSO)を作製した。
得られた20mM溶液を、1%DMSO含有PBSを用いて必要に応じて希釈し、試料G-2-1mM~試料G-2-20mMを得た。表4には、RebA相当濃度を記載した。RebA相当濃度とは、ある試料G-2中の酵素分解レシチンの濃度と、実験例26のある試料B+C-2中の酵素分解レシチンの濃度が同じ場合の、当該試料B+C-2中のRebAの濃度を意味する。
【0126】
<実験例30>
有機酸モノグリセリドを60℃で溶解し、35.0mgに対し905μLのDMSOを加えてボルテックスし、さらにDMSOで20倍希釈し、RebA相当濃度2,000mMのストック液を得た。ストック液にPBSを配合して20mM溶液を得た。
得られた20mM溶液を、1%DMSO含有PBSを用いて必要に応じて希釈し、試料G-3-1mM~試料G-3-20mMを得た。表4には、RebA相当濃度を記載した。RebA相当濃度とは、ある試料G-3中の有機酸モノグリセリドの濃度と、実験例27のある試料B+C-3中の有機酸モノグリセリドの濃度が同じ場合の、当該試料B+C-3中のRebAの濃度を意味する。
【0127】
<実験例31>
ポリグリセリン脂肪酸エステルを60℃で溶解し、50μLに対し259μLのDMSO(富士フイルム和光純薬社製、型番:037-24053)を加えた後、984μLのPBSを加えてボルテックスし、RebA相当濃度400mMのストック液を得た。
得られたストック液とPBSを用いて、20mM溶液を調製した。得られた20mM溶液を、1%DMSO含有PBSを用いて必要に応じて希釈し、試料G-4-1mM~試料G-4-20mMを得た。表4には、RebA相当濃度を記載した。RebA相当濃度とは、ある試料G-4中のポリグリセリン脂肪酸エステルの濃度と、実験例25~27のある試料B+C中の乳化剤の濃度が同じ場合の、当該試料B+C中のRebAの濃度を意味する。
【0128】
<GLP-1分泌量>
上記実験例21~31で得られた試料を細胞に与えて2時間後と24時間後のGLP-1分泌量を測定した。具体的な手順は次の通りである。
H716細胞をRPMI1640(Thermo Fisher Scientific社製、型番:61870-036)(10%FBS(Gibco製、型番:SH102770),1mM Sodium Pyruvate)で37℃、5%CO下でインキュベーター内にて培養した。H716細胞は96wellプレートに2×10cells/90μL/well播種した。プレートに播種した際の培地中FBSは0.5%とした。
細胞播種24時間後、表4に示すとおり、実験例21~31で得られた試料を培地に10μL/well加えた。培地中の最終濃度は、表4の「サンプルF.C.」の欄に示した。
試料の添加から2時間後及び24時間後、96well plateを300×gで5分間遠心し、培養上清を回収した。
Human GLP-1(7-36amide)Immunoassay kit(PerkinElmer社製、型番:AL359C)を用いて回収した培養上清中のGLP-1を定量した。定量値について、検量線の範囲を超えてエラーとなった値は除外した。また、統計解析ソフトRを用いてBox plotを作成し、第一四分位より小さいまたは第三四分位より大きい値が1.5四分位範囲以上の場合を外れ値として除外した。
結果を図16に示した。図16には、無刺激性コントロールとして1%DMSO含有溶液のGLP-1分泌量と、陽性コントロールとしてPMA(富士フイルム和光純薬社製、162-23591)の水系溶液のGLP-1分泌量も載せた。PMAの水系溶液は、PMA1mgに対し16.21μLのDMSOを加えてストック液を調製し、該ストック液にPBSを添加して1mM溶液を作製し、これを1%DMSO含有PBSで希釈することで得られた。
【0129】
以下に表4を示す。表4における陽性対照は、陽性コントロールとも呼ばれる。陰性対照は、陰性コントロールとも呼ばれる。
【表4】
【0130】
<実験例32>
ステビオシド、RebA、RebD、RebMの分配比率を測定した。参考のために、ステビオシド、RebA、RebD、RebMの構造式を以下に示す。
【化2】
具体的には、以下の操作を行った。
純水とトルエンを約100mLずつ分液ロートに入れた後、各ステビオール配糖体を30mg添加した。液が漏れないように密閉し、振とう機により約30分振とう攪拌後分液ロートを静置した。分配比率は、液層が2層に分離した場合、それぞれの層からサンプリングを実施し、LCMSにて測定を行った。
測定結果と試験中の写真を図17に示す。試験後のRebA含有液の写真を図18に示す。
【0131】
<実験例33>
1.サンプル調製
以下の手順でサンプルSA-70A、SA-70B、SA-200A、SA-200B、SA-206A、SA-206B、SA-207A、SA-207Bを用意した。なお、末尾がAであるサンプルは、水系にRebAを溶解させた調製したサンプルである。末尾がBであるサンプルは、油系にRebAを分散させて調製したサンプルである。
【0132】
(SA-70A)
グリセリン487g、RebA103gおよびポリグリセリン脂肪酸エステル10g(太陽化学株式会社製、HLB=16.7)を混合し、70℃で昇温溶解して水系混合溶液を得た。この水系混合溶液に油脂としてMCT300gを添加し、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)にて回転数8000rpmで乳化した。攪拌終了後40℃まで冷却し、水100gを加え乳化組成物SA-70Aを得た。
【0133】
(SA-70B)
グリセリン487gおよびポリグリセリン脂肪酸エステル10g(太陽化学株式会社製、HLB=16.7)を混合し、70℃で昇温溶解して水系混合溶液を得た。また、MCT300gおよびRebA103gを室温で混合し油系混合溶液を得た。水系混合溶液に油系混合溶液を添加し、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)にて回転数8000rpmで乳化した。攪拌終了後40℃まで冷却し、水100gを加え乳化組成物SA-70Bを得た。
【0134】
(SA-200A)
グリセリン567g、RebA103gおよびポリグリセリン脂肪酸エステル30g(太陽化学株式会社製、HLB=16.7)を混合し、70℃で昇温溶解して水系混合溶液とした。この水系混合溶液に油脂としてMCT200gを添加し、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)にて回転数8000rpmで乳化した。攪拌終了後40℃まで冷却し、水100gを加え乳化組成物SA-200Aを得た。
【0135】
(SA-200B)
グリセリン567gおよびポリグリセリン脂肪酸エステル30g(太陽化学株式会社製、HLB=16.7)を混合し、70℃で昇温溶解して水系混合溶液とした。また、MCT200gおよびRebA103gを室温で混合し油系混合溶液を得た。水系混合溶液に油系混合溶液を添加し、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)にて回転数8000rpmで乳化した。攪拌終了後40℃まで冷却し、水100gを加え乳化組成物SA-200Bを得た。
【0136】
(SA-206A)
グリセリン537g、RebA103gおよびポリグリセリン脂肪酸エステル60g(太陽化学株式会社製、HLB=16.7)を混合し、70℃で昇温溶解して水系混合溶液とした。この水系混合溶液に油脂としてMCT200gを添加し、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)にて回転数8000rpmで乳化した。攪拌終了後40℃まで冷却し、水100gを加えて予備乳化組成物を得た後、更に湿式微粒化装置にて圧力150MPaで微細乳化を加えて乳化組成物SA-206Aを得た。
【0137】
(SA-206B)
グリセリン578gおよびポリグリセリン脂肪酸エステル55g(太陽化学株式会社製、HLB=16.7)を混合し、70℃で昇温溶解して水系混合溶液とした。また、MCT182gおよびRebA94gを室温で混合し油系混合溶液を得た。水系混合溶液に油系混合溶液を添加し、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)にて回転数8000rpmで乳化した。攪拌終了後40℃まで冷却し、水91gを加えて予備乳化組成物を得た後、更に湿式微粒化装置にて圧力150MPaで微細乳化を加えて乳化組成物SA-206Bを得た。
【0138】
(SA-207A)
グリセリン706g、RebA34gおよびポリグリセリン脂肪酸エステル60g(太陽化学株式会社製、HLB=16.7)を混合し、70℃で昇温溶解して水系混合溶液とした。この水系混合溶液に油脂としてMCT100gを添加し、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)にて回転数8000rpmで乳化した。攪拌終了後40℃まで冷却し、水100gを加えて予備乳化組成物を得た後、更に湿式微粒化装置にて圧力150MPaで微細乳化を加えて乳化組成物SA-207Aを得た。
【0139】
(SA-207B)
グリセリン706gおよびポリグリセリン脂肪酸エステル60g(太陽化学株式会社製、HLB=16.7)を混合し、70℃で昇温溶解して水系混合溶液とした。また、MCT100gおよびRebA34gを室温で混合し油系混合溶液を得た。水系混合溶液に油系混合溶液を添加し、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)にて回転数8000rpmで乳化した。攪拌終了後40℃まで冷却し、水100gを加えて予備乳化組成物を得た後、更に湿式微粒化装置にて圧力150MPaで微細乳化を加えて乳化組成物SA-207Bを得た。
【0140】
2.乳化安定性の評価
上述の1.で調整されたサンプルを用いて、安定性の評価を行った。具体的な手順は次のとおりである。
【0141】
2.1調整直後の乳化粒子径の測定
調製直後の各サンプル中の乳化粒子の平均粒子径を測定した。具体的には、調製直後の各サンプルを、レーザー散乱強度が1%程度になるようにイオン交換水で適宜希釈し、その後、レーザー回折散乱式粒度分布測定器(スペクトリス株式会社 マルバーン・パナリティカル事業部)で測定した。
【0142】
2.2冷蔵保管後の乳化粒子径の測定
各サンプルを、冷蔵庫(4℃)内で2カ月間静置した。その後、2.1と同様にして、乳化粒子径を測定した。
【0143】
結果を下記表に示す。
【表5】
【0144】
3.香味特性の評価
上述の1.で調整されたサンプルを用いて、香味特性を評価した。具体的には、以下の手順で評価をおこなった。
RebAを純水に溶解し、RebA濃度が467ppmである水溶液を作成し、コントロールとした。次に、1.で調整された各サンプルに純水を添加し、RebA濃度が467ppmの水溶液を作製した。よく訓練された官能パネラー7人により、コントロールを3点として、0.5点刻みにて各水溶液の香味評価を実施し、平均値を算出した後、順位付けを行った。香味評価は、甘味強度、甘味後引き、苦味強度で評価を行った。同じ点数のものは同じ順位とした。順位を下記表の各評価項目の欄に示した。下記表のtotalの欄には、順位の和を示した。
【表6】
【0145】
4.保管後の各種特性の評価
1.で調整されたサンプルを用いて、保管後の乳化安定性、香味特性、振動安定性を評価した。具体的には、以下の手順で評価をおこなった。
16990.3mgのサンプルSA-70Aに、純水を3,483ml添加し、評価用液70Aを得た。サンプルSA-70Aに替えてサンプルSA-206Aを用いた点以外は、同様にして、評価用液206Aを得た。各評価用液の組成は以下のとおりである。
【表7】
得られた評価用液70Aと評価用液206Aを、庫内温度5℃の冷蔵庫に4週間静置した。また、別の評価用液70Aと評価用液206Aを55℃の恒温保管庫で4週間静置した。
また、無水クエン酸を用いて、評価用液70Aと評価用液206AのpHを2.5に調整し、庫内温度5℃の冷蔵庫に4週間静置した。無水クエン酸を用いて、別の評価用液70Aと評価用液206AのpHを2.5に調製し、55℃の恒温保管庫で4週間静置した。
【0146】
4-1.保管後の乳化安定性
4週間静置後の評価用液の液面の外観を観察した。結果を下記表に示した。
【表8】

【0147】
4-2.保管温度の香味特性への影響
また、静置温度の香味への影響を確認した。具体的には以下の手順で確認した。
pH調製なし・静置温度5℃の評価用液70Aをコントロールとした。コントロールの評価を5点と定めた場合の、pH調製なし・静置温度55℃の評価用液70Aの香味を、0.5点刻みで評価した。パネラーは、よく訓練された官能パネラー4人であった。各パネラーの評価の平均値を算出した。
同様にして、pH調製なし・静置温度5℃の評価用液206Aをコントロールとし、pH調製なし・静置温度55℃の評価用液206Aの香味を、0.5点刻みで評価した。
同様にして、pH2.5・静置温度5℃の評価用液70Aをコントロールとし、pH2.5・静置温度55℃の評価用液70Aの香味を、0.5点刻みで評価した。
同様にして、pH2.5・静置温度5℃の評価用液206Aをコントロールとし、pH2.5・静置温度55℃の評価用液206Aの香味を、0.5点刻みで評価した。
【0148】
結果を図19に示す。また、パネラーのコメントを以下に記載する。
70A、pH調製なし;
苦みの角が取れてまろやか、ミルキー、ややクリア。まろやかになって苦みが減った。ミルキーさが増した。飲みやすくなっている。少しフレッシュな感が少ないが、クリティカルな劣化はない。
206A、pH調製なし;
苦みの角が取れてまろやか、ミルキー、ややクリア。まろやかになって苦みが減った。ミルキーさが増した。甘さ変わらず。変化なし。少しフレッシュな感が少ないが、クリティカルな劣化はない。
70A、pH2.5;
酸味が抑えられる。酸味が増した。とげがある。まろやかな酸味になった。良い。ややまろやかになり、酸味のとげが減る。
206A、pH2.5;
酸味が抑えられる。酸味が増した。でも飲みやすくなった。変化なし。若干苦みが減っている。良い。ややまろやかになり、酸味のとげが減る。
【0149】
4-3.振動加速試験
5℃で4週間静置後の評価用液について、分光光度計(島津社製 UV1800 UV spectrophotometer)により波長680nmにおける吸光度を測定した。
次に、評価用液を3000rpmで30分遠心した。遠心後の評価用液について、波長680nmにおける吸光度を測定した。遠心前後の吸光度の差Δabsを算出し、Δabsが0.02以下のものは、振動時の乳化安定性に優れているとして、「良好」と評価した。
結果を図20に示す。
【0150】
5.甘味強度の低下度合い
上述の1.で調整されたサンプルSA-70AおよびSA-206Aを用いて、乳化による甘味強度の低下度合いを評価した。具体的には、以下の手順で評価をおこなった。
RebAを純水に溶解して467ppmの水溶液を作成し、コントロールとした。次に、1.で調整された各サンプルを純水に添加し、RebA濃度が467ppmの水溶液を作製した。よく訓練された官能パネラー4人に、各水溶液が、ショ糖水溶液のBrix2,5,8,11,14のどの甘味強度に近いかを選択させた。各パネラーの評価結果の平均値を算出した。結果を図21に示す。
【0151】
<実験例34>
実験例33の「4.保管後の各種特性の評価」と同様にして、評価用液70Aおよび評価用液206Aを得た。
得られた評価用液70Aと評価用液206AをDMSO含有PBSで希釈し、下記表の添加濃度の欄に示すRebA濃度の希釈液を調整した。
また、別の評価用液70Aと評価用液206Aを55℃の恒温保管庫で4週間静置した。静置後の評価用液70Aと評価用液206AをDMSO含有PBSで希釈し、下記表の添加濃度の欄に示すRebA濃度の希釈液を調整した。
なお、無刺激性コントロール(陰性対照)として1%DMSO含有溶液を調製した。また、陽性コントロールとしてPMA(富士フイルム和光純薬社製、型番:162-23591)を、下記表の添加濃度の欄に示す濃度となるように1%DMSOで希釈したものを調整した。
【表9】
【0152】
上記表に示す条件の下、希釈液No.1~27を培地に添加し、得られた培地にて細胞を培養した。具体的な手順は次の通りである。
H716細胞をRPMI1640(Thermo Fisher Scientific社製、型番:61870-036)(10%FBS(Gibco製、型番:SH102770),1mM Sodium Pyruvate)で37℃、5%CO下でインキュベーター内にて培養した。H716細胞は96wellプレートに2×10cells/90μL/wellで播種した。プレートに播種した際の培地中FBSは0.5%とした。細胞播種から24時間経過後、希釈液No.1~27を10μL/wellの量でウェルに加えた。希釈液添加後の培地中のRebA最終濃度(No.2,3の場合はPMA濃度)は、上記表の「Final conc(mM)」の欄に示した。
【0153】
希釈液添加から2時間後と24時間後の細胞生存率を確認した。いずれのサンプルでも問題なかった。
【0154】
希釈液の添加から2時間後及び24時間後、96well plateを300×gで5分間遠心し、培養上清を回収した。
Human GLP-1(7-36amide)Immunoassay kit(PerkinElmer社製、型番:AL359C)を用いて、回収した培養上清中のGLP-1を定量した。定量値について、検量線の範囲を超えてエラーとなった値は除外した。また、統計解析ソフトRを用いてBox plotを作成し、第一四分位より小さいまたは第三四分位より大きい値が1.5四分位範囲以上の場合を外れ値として除外した。
結果を図22に示した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22