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特許7450621アクティブ装用デバイス、その制御デバイス、制御方法およびコンピュータ可読媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】アクティブ装用デバイス、その制御デバイス、制御方法およびコンピュータ可読媒体
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/72 20060101AFI20240308BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20240308BHJP
   A61H 1/02 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
A61F2/72
B25J11/00 Z
A61H1/02 G
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021533708
(86)(22)【出願日】2019-12-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 SE2019051248
(87)【国際公開番号】W WO2020122792
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】1851567-6
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】519452091
【氏名又は名称】テンド アー・ベー
【氏名又は名称原語表記】Tendo AB
【住所又は居所原語表記】Ideon Science Park, Scheelevaegen 15, 223 63 Lund, Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ソフィー ヴォーゲ
(72)【発明者】
【氏名】ロビン グスタフソン
(72)【発明者】
【氏名】ポントゥス レンマーカー
(72)【発明者】
【氏名】サラヴト ケヴィセット ニルスン
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-240285(JP,A)
【文献】国際公開第2018/050191(WO,A1)
【文献】特表2018-519004(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0106881(US,A1)
【文献】特開平05-111881(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0291731(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0112448(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0235484(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/72
B25J 11/00
A61H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間対象者の手(1)の1つ以上の指(1A~1N)に取り付けられたアクティブ装用デバイス(2)を制御する方法であって、前記アクティブ装用デバイス(2)が、プロセッサ(62)と、前記1つ以上の指(1A~1N)の中のそれぞれの指を動かすためのアクチュエータ(21)のそれぞれのセットを備え、前記方法が、
前記プロセッサ(62)が、前記人間対象者に取り付けられたまたは埋め込まれた1つ以上の生体電気センサ(10)から1つ以上の生体電気信号を取得するステップ(401)と、
前記プロセッサ(62)が、物体(8)への前記それぞれの指(1A~1N)の意図された適用力を予測するために前記1つ以上の生体電気信号を処理するステップ(410)と、
前記プロセッサ(62)が、前記アクチュエータ(21)のそれぞれのセットおよび/または前記それぞれの指(1A~1N)に関連する力測定デバイス(22)から、力信号を取得するステップ(412)と、
前記プロセッサ(62)が、前記意図された適用力と前記力信号との間の瞬時の差の関数として、前記アクチュエータ(21)のそれぞれのセットのための制御信号のそれぞれのセットを生成するステップ(413、414)と、
を含
前記方法が、前記プロセッサ(62)が、前記それぞれの指(1A~1N)の意図された指の動きを判定するステップ(408)をさらに含み、
前記制御信号のそれぞれのセットが、前記意図された指の動きの関数としてさらに生成され、
少なくとも2つの事前定義されたグリップの中から意図されたグリップを判定することにより、前記意図された指の動きが、前記人間対象者の前記手(1)の2つ以上の指に対して集合的に判定され、
前記事前定義されたグリップのそれぞれが、前記それぞれの指(1A~1N)の事前定義された動きの軌道に対応する、
方法。
【請求項2】
前記力信号が、前記それぞれの指(1A~1N)と前記物体(8)との間の実際の接触力を表す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、
前記プロセッサ(62)が、前記それぞれの指(1A~1N)の前記意図された指の動きに基づいて、前記アクチュエータ(21)のそれぞれのセットの中から1つ以上の選択されたアクチュエータを識別するステップ(411)と、
前記プロセッサ(62)が、前記1つ以上の選択されたアクチュエータのための前記制御信号のそれぞれのセットを生成するステップ(412、413)と、
をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記制御信号のそれぞれのセットは、前記それぞれの指(1A~1N)に前記意図された指の動きを実行させ、前記意図された適用力を加えさせるように生成される、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記事前定義されたグリップの1つが、前記それぞれの指(1A~1N)が弛緩状態および/または静止状態にある事前定義された動きの軌道に対応する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記事前定義されたグリップが、
前記手(1)の親指(1A)および人差し指(1B)の先端が前記物体(8)と係合するように動かされるピンチグリップ(G1)、
前記手(1)の少なくとも人差し指(1B)が曲げられ、前記手(1)の親指(1A)の先端が横方向に動かされ、かつ前記親指(1A)の前記先端と曲げられた前記人差し指(1B)との間で前記物体(8)と係合する横方向グリップ(G3)、
前記手(1)の前記指(1A~1E)のうちの1つ以上が動かされて、前記物体(8)を前記手(1)の手のひらの上に押し付ける円筒形グリップ(G4)、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記意図された指の動きを判定するステップは、パターン認識アルゴリズム(50)によって前記1つ以上の生体電気信号を処理するステップ(407)を含む、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、
前記プロセッサ(62)が、前記1つ以上の生体電気信号から信号特徴を抽出するステップ(403)と、
前記プロセッサ(62)が、前記信号特徴を含む入力値に対して前記パターン認識アルゴリズム(50)を動作させるステップ(407、408)であって、前記パターン認識アルゴリズム(50)に前記入力値を処理させ、前記それぞれの指(1A~1N)の前記意図された指の動きを判定させる、ステップと、
をさらに含む、請求項記載の方法。
【請求項9】
前記パターン認識アルゴリズム(50)が、前記それぞれの指(1A~1N)の少なくとも1つの候補指動作を出力し、前記意図された指の動きを前記判定するステップは、前記プロセッサ(62)が、前記それぞれの指(1A~1N)の実際の動きを表す位置信号に対して前記少なくとも1つの候補指動作を検証するステップをさらに含む、請求項または記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、
前記プロセッサ(62)が、前記力信号から力値を求めるステップ(405)と、
前記プロセッサ(62)が、前記パターン認識アルゴリズム(50)に対するさらなる入力値として前記力値を提供するステップ(407)と、
をさらに含む、請求項または記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、
前記プロセッサ(62)が、前記アクティブ装用デバイス(2)内または前記人間対象者上の慣性センサ(26)から慣性信号を取得するステップ(404)と、
前記プロセッサ(62)が、前記慣性信号から慣性値を求めるステップと、
前記プロセッサ(62)が、前記パターン認識アルゴリズム(50)に対するさらなる入力値として前記慣性値を提供するステップ(407)と、
をさらに含む、請求項から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、
前記プロセッサ(62)が、前記アクチュエータ(21)のそれぞれのセットおよび/または前記それぞれの指(1A~1N)に関連するそれぞれの位置測定デバイス(24)からそれぞれの位置信号を取得するステップ(406)と、
前記プロセッサ(62)が、前記それぞれの位置信号から位置値を求めるステップであって、前記位置値が前記それぞれの指(1A~1N)の瞬時の位置を示す、ステップと、
前記プロセッサ(62)が、前記パターン認識アルゴリズム(50)に対するさらなる入力値として前記位置値を提供するステップ(407)と、
をさらに含む請求項から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記パターン認識アルゴリズムは、前記それぞれの指(1A~1N)の前記意図された指の動きを判定するために前記入力値を処理するように訓練されている人工ニューラルネットワーク(50)を含む、請求項から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記人工ニューラルネットワーク(50)は、前記意図された指の動きを示す出力データを提供するように構成された出力層(A)を有し、前記方法が、前記それぞれの指(1A~1N)の実際の動きを表すそれぞれの位置信号を取得するステップと、前記それぞれの位置信号の関数として、前記出力層(A)の1つ以上の重み係数を変更するステップと、をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、
前記プロセッサ(62)が、前記アクティブ装用デバイス(2)内または前記人間対象者上の慣性センサ(26)から慣性信号を取得するステップと、
前記プロセッサ(62)が、外乱状態を検出するために前記慣性信号を処理するステップと、
前記外乱状態が検出された場合に、前記プロセッサ(62)が、少なくとも前記制御信号のそれぞれのセットを生成する前記ステップを無効化するステップと、
をさらに含む、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記力信号は、前記アクチュエータ(21)のセット内の1つ以上の可動要素の測定された向きおよび/または測定された位置に基づいてアルゴリズム的に計算される、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記力信号は、前記アクチュエータ(21)のセットにより前記それぞれの指(1A~1N)に加えられる力と、前記人間対象者によって前記それぞれの指(1A~1N)に加えられる筋力とを表す、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
コンピュータ可読媒体であって、プロセッサ(62)によって実行される際に、前記プロセッサ(62)に、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法を実行させるためのコンピュータ命令を含む、コンピュータ可読媒体。
【請求項19】
人間対象者の手(1)の1つ以上の指(1A~1N)に取り付けられたアクティブ装用デバイス(2)用の制御デバイスであって、前記アクティブ装用デバイス(2)が、前記1つ以上の指(1A~1N)の中のそれぞれの指を動かすためのアクチュエータ(21)のそれぞれのセットを備え、前記制御デバイスが、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法を実行するように構成されている、制御デバイス。
【請求項20】
人間対象者の前記手(1)の1つ以上の指(1A~1N)に取り付けられるように構成されたアクティブ装用デバイスであって、前記1つ以上の指(1A~1N)の中のそれぞれの指を動かすためのアクチュエータ(21)のそれぞれのセットと、請求項19記載の制御デバイスとを備える、アクティブ装用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装用デバイスの分野に関し、具体的には、アクティブ装用デバイスを制御するための技術に関する。
【0002】
背景技術
装用デバイスは、神経筋および骨格系の構造的および機能的特性を変更するように設計され、かつ個人の身体に適合された、外部から適用されるデバイスである。装用デバイスの1つのクラスは、個人の運動活動を強化または支援する目的で、マイクロプロセッサなどによって電力供給および制御される電気機械デバイスである。このタイプの装用デバイスはまた、アクティブ装具または外骨格としても知られている。
【0003】
アクティブ装用デバイスは、例えば、怪我、神経筋疾患もしくは神経障害、機能的衰弱、または先天性障害の結果として、1つ以上の肢を動かす能力または2つ以上の肢の動きを調整する能力を完全にまたは部分的に失った個人の運動活動を回復または少なくとも改善するために使用されうる。例えば、腕および/または手またはその部分に対して外部から適用されるいわゆる上肢(または上部四肢)装用デバイス、および運動関連作業における動作支援のための下肢装用デバイスが存在する。
【0004】
アクティブ装用デバイスは、1つ以上の肢に動きを与えるように動作可能な複数のアクチュエータを備える。例えば、アクチュエータは、例えば米国特許出願公開第2015/0148728号明細書に例示されているサーボモータ、例えば米国特許第5800561号明細書に例示されているガス作動ピストン、例えば米国特許出願公開第2010/0041521号明細書に例示されている人工腱と電気モータとの組み合わせ、または例えば米国特許第9387112号明細書および国際公開第2018/138537号に例示されている選択的加熱用の形状記憶材料を含みうる。
【0005】
個人が肢に結合された十分な神経学的活動を行っている場合、アクティブ装用デバイスは、関連する筋肉の電気的活動を検出するように構成された1つ以上の生体電気センサからの生体電気信号に基づいて制御されうる。このような生体電気センサには、いわゆる筋電図(EMG)センサが含まれ、これは個人の皮膚に埋め込み可能(筋肉内筋電図、iEMG)であるか、または適用可能(表面筋電図、sEMG)である。EMGセンサは、筋細胞が電気的または神経学的にアクティブ化された際に、筋細胞によって生成された電位を検出する。したがって、アクティブ装用デバイス用の制御デバイスは、装着者の関連する筋細胞のアクティブ化に基づいて、意図された肢の動きを推測するように構成されうる。
【0006】
国際公開第2018/050191号は、生体電気センサではなく力センサ(FSR)に基づいて、アクティブ外骨格の装着者の意図を推測することを提案している。FSRは上肢の周りに取り付けられ、放射状に向けられた筋肉の圧力を測定する。FSRからの力信号は、機械学習アルゴリズムによって処理されて、腕または脚の動きと力との両方に関する人間の意図を検出する。外骨格用のコントローラは、機械学習アルゴリズムから基準トルクを受け取り、速度制御用のフィードバックループに対する入力として基準速度を生成する。外骨格用の制御信号は、基準速度と測定されたフィードバック値との差として計算される誤差信号に基づいて生成される。
【0007】
現在のアクティブ装用デバイスは、健康な個人の動きを適切に模倣することができないという問題を抱えている。一般に、装用デバイスのアクチュエータを動作させて四肢に自然な動きを与えることは困難である。これは、四肢が外部物体と相互作用する必要がある場合、例えば、装用デバイスが手に配置されて、2本以上の指で物体をグリップするように動作する場合に、特に顕著である。装着者の観点からは、このような手の装具は、日常生活動作中に物体を安全に摘まんだり、掴んだり、解放したりする能力を装着者に提供すべきである。
【0008】
発明の概要
本発明の目的は、先行技術の1つ以上の制限を少なくとも部分的に克服することである。
【0009】
さらなる目的は、装着者の意図に対する対応が改善されたアクティブ装用デバイスを制御する技術を提供することである。
【0010】
これらの目的の1つ以上、ならびに以下の説明から現れうるさらなる目的は、装用デバイスを制御する方法、コンピュータ可読媒体、アクティブ装用デバイス用の制御デバイス、およびその実施形態が従属請求項によって定義されている独立請求項によるアクティブ装用デバイスによって、少なくとも部分的に達成される。
【0011】
本発明の第1の態様は、人間対象者の1つ以上の肢に取り付けられたアクティブ装用デバイスを制御する方法である。アクティブ装用デバイスは、1つ以上の肢の中でそれぞれの肢を動かすためのアクチュエータのそれぞれのセットを備える。方法は、人間対象者に取り付けられたまたは埋め込まれた1つ以上の生体電気センサから1つ以上の生体電気信号を取得することと、物体へのそれぞれの肢の意図された適用力を予測するために1つ以上の生体電気信号を処理することと、アクチュエータのそれぞれのセットおよび/またはそれぞれの肢に関連する力測定デバイスから力信号を取得することと、意図された適用力と力信号との間の瞬時の差の関数として、アクチュエータのそれぞれのセットのための制御信号のそれぞれのセットを生成することと、を含む。
【0012】
第1の態様により、アクティブ装用デバイスを制御して、装着者上または装着者内で検出される生体電気信号に基づいて1つ以上の肢を作動させることを可能にする。第1の態様は、装着者の意図と、物体に関する装用デバイスによる結果として生じる肢の動きとの間の改善された対応が、装着者の意図された適用力を判定し、これに応じて装用デバイスを制御することによって達成されうるという洞察に基づく。具体的には、肢と物体との間の十分に制御された相互作用をもたらす装用デバイスの能力が、意図された適用力と、それぞれの肢の測定された(実際の)適用力を表す力信号との間の瞬時の差に基づいて、それぞれの肢用のアクチュエータのセットを制御することによって達成されることが見いだされた。力信号は、装用デバイスに含まれうる、力測定デバイスによって提供される。第1の態様によれば、意図された力は、生体電気信号に基づいて判定され、これにより、装用デバイスを、装着者の意図に従って直感的かつ自動的に制御されることが可能になる。
【0013】
力測定デバイスは、任意のタイプのものであってもよく、実際の適用力を直接的または間接的に測定してもよい。実際の適用力は、肢によって物体上に加えられる総力、または装用デバイスによって肢に提供される力でありうる。したがって、実際の適用力は、少なくとも、アクチュエータのセットを介して装用デバイスにより肢に提供される力を表し、任意選択手段としては、装着者によって肢に加えられる筋力を含みうる。1つの実施例では、力測定デバイスは、肢と物体との間の接触力を測定するために、肢に配置された力またはひずみセンサである。別の実施例では、力測定デバイスは、適用力に対応するか、またはこれを表す力を測定するためにアクチュエータ内に配置された力またはひずみセンサである。さらに別の実施例では、力測定デバイスは、アクチュエータ内の1つ以上の可動要素、例えば、駆動軸、ギア、ばねなどの、測定された向き/位置に基づいて適用力を計算するために、ソフトウェアおよび/またはハードウェアに実装されている計算モジュールでありうる。
【0014】
それぞれの肢の動きは、制御信号のセットに従って動作するアクチュエータのセットによってもたらされる。本明細書で使用される場合、装用デバイスによって制御される各肢は、たとえ1つのアクチュエータが2つの肢(または3つ以上の肢)に動きを与えるように配置されていると考えられる場合でも、肢に動きを与えるためのアクチュエータのそれぞれのセットに関連付けられていると見なされる。このような実施形態では、このようなアクチュエータのそれぞれは、2つの肢のそれぞれに1つずつ、アクチュエータの2つのセットに含まれると見なされる。したがって、アクチュエータの異なるセットは、含まれるアクチュエータに関して重複しうる。
【0015】
アクチュエータのそれぞれのセットは、任意のタイプであってよく、サーボモータ、DCモータ、空気圧アクチュエータ、ロータリモータ、リニアモータ、形状記憶合金、導電性ポリマー、電気活性ポリマー、静電デバイス、およびそれらの組み合わせを含みうる。異なるタイプのアクチュエータを、異なる動きおよび/または異なる肢に使用してもよい。制御信号のセットによって作動されると、アクチュエータのセットは、電源によって供給される位置エネルギー(例えば、電気、圧縮ガス、流体圧力など)を、機械的エネルギーに変換する。機械的エネルギーは、例えば、人工腱、ギア、ヒンジなどによって、任意の方法で肢に伝達することができる。
【0016】
以下では、第1の態様の様々な実施形態が定義される。これらの実施形態は、前述の技術的効果および利点のうちの少なくともいくつか、ならびに例えば、以下の詳細な説明を考慮して、当業者によって容易に理解されるような追加の技術的効果および利点を提供する。
【0017】
一実施形態では、方法は、それぞれの肢の意図された肢の動きを判定することをさらに含み、制御信号のそれぞれのセットは、意図された肢の動きの関数としてさらに生成される。
【0018】
一実施形態では、方法は、それぞれの肢の意図された肢の動きに基づいて、アクチュエータのそれぞれのセットの中から1つ以上の選択されたアクチュエータを識別することと、1つ以上の選択されたアクチュエータ用の制御信号のそれぞれのセットを生成することと、をさらに含む。
【0019】
一実施形態では、制御信号のそれぞれのセットは、それぞれの肢に意図された肢の動きを実行させ、意図された適用力を加えるように生成される。
【0020】
一実施形態では、意図された肢の動きは、少なくとも2つの事前定義された肢の動きの中で判定され、事前定義された肢の動きのそれぞれは、それぞれの肢の事前定義された動きの軌道に対応する。
【0021】
一実施形態では、事前定義された肢の動きの1つは、それぞれの肢が弛緩状態および/または静止状態にある事前定義された動きの軌道に対応する。
【0022】
一実施形態では、意図された肢の動きは、人間対象者の2つ以上の肢に対して集合的に判定される。
【0023】
一実施形態では、前記意図された肢の動きを判定することは、パターン認識アルゴリズムによって1つ以上の生体電気信号を処理することを含む。
【0024】
一実施形態では、方法は、1つ以上の生体電気信号から信号特徴を抽出することと、信号特徴を含む入力値に対してパターン認識アルゴリズムを動作させて、パターン認識アルゴリズムに入力値を処理させ、それぞれの肢の意図された肢の動きを判定させることと、をさらに含む。
【0025】
一実施形態では、パターン認識アルゴリズムは、それぞれの肢の少なくとも1つの候補肢動作を出力し、前記意図された肢の動きを判定することは、それぞれの肢の実際の動きを表す位置信号に対して少なくとも1つの候補肢動作を検証することをさらに含む。
【0026】
一実施形態では、方法は、力信号から力値を判定することと、パターン認識アルゴリズム用のさらなる入力値として力値を提供することと、をさらに含む。
【0027】
一実施形態では、方法は、アクティブ装用デバイス内または人間対象者上の慣性センサから慣性信号を取得することと、慣性信号から慣性値を求めることと、パターン認識アルゴリズム用のさらなる入力値として慣性値を提供することと、をさらに含む。
【0028】
一実施形態では、方法は、アクチュエータのそれぞれのセットおよび/またはそれぞれの肢に関連するそれぞれの位置測定デバイスからそれぞれの位置信号を取得することと、それぞれの位置信号から位置値を求めることであって、位置値がそれぞれの肢の瞬時の位置を示す、ことと、パターン認識アルゴリズム用のさらなる入力値として位置値を提供することと、をさらに含む。
【0029】
一実施形態では、パターン認識アルゴリズムは、それぞれの肢の意図された肢の動きを判定するために入力値を処理するように訓練されている人工ニューラルネットワークを含む。
【0030】
一実施形態では、方法は、意図された肢の動きを示す出力データを提供するように構成された出力層を有する人工ニューラルネットワークをさらに含み、前記方法は、それぞれの肢の実際の動きを表すそれぞれの位置信号を取得することと、それぞれの位置信号の関数として、出力層の1つ以上の重み係数を変更することと、をさらに含む。
【0031】
一実施形態では、方法は、アクティブ装用デバイス内または人間対象者上の慣性センサから慣性信号を取得することと、外乱状態を検出するために慣性信号を処理することと、外乱状態が検出された場合に、少なくとも制御信号のそれぞれのセットを生成するステップを無効化することと、をさらに含む。
【0032】
一実施形態では、それぞれの肢は、人間対象者の手の指である。
【0033】
一実施形態では、それぞれの肢は、人間対象者の手のそれぞれの指であり、意図された肢の動きは、手の1つ以上の指によって形成される意図されたグリップに対応する。
【0034】
本発明の第2の態様は、プロセッサによって実行される際に、プロセッサに、第1の態様およびその実施形態のうちのいずれかの方法を実行させるためのコンピュータ命令を含むコンピュータ可読媒体である。
【0035】
第3の態様は、人間対象者の1つ以上の肢に取り付けられたアクティブ装用デバイス用の制御デバイスである。アクティブ装用デバイスは、1つ以上の肢の中でそれぞれの肢を動かすためのアクチュエータのそれぞれのセットを備え、制御デバイスは、第1の態様またはその実施形態のうちのいずれかの方法を実行するように構成されている。
【0036】
本発明の第4の態様は、人間対象者の1つ以上の肢に取り付けられるように構成されたアクティブ装用デバイスである。アクティブ装用デバイスは、1つ以上の肢の中でそれぞれの肢を動かすためのアクチュエータのそれぞれのセットと、第3の態様の制御デバイスと、を備える。
【0037】
本発明のさらに他の目的、特徴、実施形態、態様、および利点は、以下の詳細な説明から、添付の特許請求の範囲から、ならびに図面から明らかにすることができる。
【0038】
ここで、本発明の実施形態を、添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】人間対象者の手の上に配置されたアクティブ装具の概略図である。
図2A】アクティブ装具を使用することによって達成されうるグリップの実施例を示す図である。
図2B】アクティブ装具を使用することによって達成されうるグリップの実施例を示す図である。
図2C】アクティブ装具を使用することによって達成されうるグリップの実施例を示す図である。
図2D】アクティブ装具を使用することによって達成されうるグリップの実施例を示す図である。
図3A】アクティブ装具の制御システムのブロック図である。
図3B】単一の指を制御するための、図3Aの制御システムの詳細なブロック図である。
図4】アクティブ装具を制御するための方法のフローチャートである。
図5】アクティブ装具を装着している人間対象者の意図されたグリップを判定するための人工ニューラルネットワークの概略図である。
図6】アクティブ装具を動作させるための制御デバイスのブロック図である。
【0040】
発明を実施するための形態
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して以下でより完全に説明され、そこでは本発明の全てではないが、いくつかの実施形態が示される。実際に、本発明は多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たしうるように提供される。同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0041】
また、可能であれば、本明細書に記載および/または企図される本発明の実施形態のいずれかの利点、特徴、機能、デバイス、および/または動作態様のうちのいずれかは、本明細書に記載および/または企図される本発明の他の実施形態のいずれかに含まれうるし、かつ/またはその逆でありうることが理解されよう。加えて、可能であれば、本明細書において単数形で表現された用語は、特に明記しない限り、複数形も含み、かつ/またはその逆を意味する。本明細書で使用される場合、「少なくとも1つ」は「1つ以上」を意味するものとし、これらのフレーズは交換可能であることを意図している。したがって、「a」および/または「an」という用語は、たとえ「1つ以上」または「少なくとも1つ」というフレーズもまた本明細書で使用されている場合でも、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味するものとする。本明細書で使用される場合、明示的な言語または必要な含意のために文脈が別の方法で必要とする場合を除いて、「備える(comprise)」という単語、または「備える(comprises)」もしくは「備えている(comprising)」などの変形は、包括的意味で使用され、すなわち、記載された特徴の存在を特定するが、本発明の様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在または追加を排除するものではない。本明細書で使用される場合、アイテムの「セット」は、1つ以上のアイテムの提供を含意することを意図している。
【0042】
本明細書で使用される場合、「装用デバイス」または「装具」は、神経筋および骨格系の構造的および機能的特徴を変更するように設計され、かつ個人の身体に適合されている、外部から適用されるデバイスを指す。装具の装着者は、1つ以上の肢を動かすことができないか、または1つ以上の肢の動きを制御またはもたらす能力が損なわれている可能性がある。したがって、装具は、1つ以上の肢の動きを実行、安定化、または支援するように、ならびに肢が物体と相互作用する力を強化するように構成されうる。装具は、上腕、前腕、手、指、指骨などのいずれかの上肢、または大腿、下脚、足、つま先、もしくは指骨などのいずれかの下肢を含むがこれらに限定されない、任意の肢または四肢の組み合わせに対して構成されうる。このような各肢は、肩関節、肘関節、手首、指関節、股関節、膝関節、足首、またはつま先関節などの、1つ以上の関節に関連して動かされる。
【0043】
以下では、装用デバイスは、個人の手の上に装着されるように構成され、かつ制御された肢の動きを1つ以上の指に与えるように動作可能な手の装具として例示される。手の装具の文脈では、1つ以上の肢のこのような制御された肢の動きは、「グリップ」と呼ばれうる。手の装具は、1つ以上の指が関与するグリップを実行、安定化、または支援し、かつ/または物体と接触するグリップを強化することができる。
【0044】
図1は、指グローブとして構成されたカバーまたはシース3Aを含む例示的な装具2を装着している手1の斜視図である。シース3Aは、親指1Aおよび人差し指1B上に配置され、個人の手のひらおよび手の甲と係合している。この実施例では、装具2は、指1A,1Bのそれぞれに対して制御された動きを与えるように構成されている。図1には示されていないが、シース3Aはまた、または代替的に、中指1C、薬指1D、および小指1Eのいずれか1つに装着されるように構成可能であり、装具2は、指1A~1Eのうちのいずれか1つまたはそれらの任意の組み合わせの動きを制御するように構成されうる。
【0045】
図示されている実施例では、手の装具2は、人工腱4として機能するコードまたはラインを含む。腱4は、指1A,1Bの遠位部分上でシース3に固定され、チャネルおよび/またはガイド(図示せず)内で制御モジュール5まで延在するように配置されている。制御モジュール5は、電源、1つ以上のアクチュエータ、および指1A,1Bを動かして1つ以上の事前定義されたグリップを達成するようにそれぞれの腱4に定義された動きを与えるための制御用電子機器を含む。それぞれのアクチュエータは、1つ以上の腱4が固定されている巻線デバイス、例えばコードリールに接続された1つ以上のギアを備えた電気モータを含みうる。実装形態に応じて、装具2は各指に対して1つ以上のアクチュエータを含まれてよく、かつ/または1つのアクチュエータは2つ以上の指に延在している腱4に取り付けられてもよいことが理解されよう。図1の実施例では、3つの腱4が親指1Aおよび制御モジュール5のそれぞれのアクチュエータ(図示せず)に取り付けられており、このアクチュエータは、親指1Aに所望の動きを与えるように、それぞれの腱4を選択的に引っ張るように動作可能である。人差し指1Bは、図1に示される1つの腱4によって曲げ動作に制御されうる。任意選択手段として、人差し指1Bの裏側にさらなる腱(図示せず)を配置して、真直ぐにする動作を指1Bに与えることができる。
【0046】
制御モジュール5は、バンドまたはストラップ3Bによって個人の前腕6上に配置されている。破線で示されるように、生体電気センサ10のセットは、前腕6と接触するように配置されている。図1には4つのセンサ10が示されているが、任意の数のセンサ10が使用されうる。生体電気センサ10は、装具2によって制御される指を動かすのに関連する、前腕6上の骨格筋によって生成される電気的活動を検出するように構成された電極の形態であってもよい。センサ10は、皮膚と接触して配置されるか、または埋め込まれうる。以下の実施例では、生体電気センサ10は、いわゆるEMG(筋電図)センサであり、生体電気信号はEMG信号である。図示されている実施例では、センサ10は、前腕6の皮膚上に適用するためにバンド3Bに統合されている。制御モジュール5は、個人の身体上のどこにでも配置することができ、制御モジュール5は、2つ以上のデバイス、例えば、電源、アクチュエータデバイス、および制御デバイス(図6の60を参照)に物理的に分離することができることに留意されたい。センサ10は、代替的または追加的に、個人の他の前腕上に配置されてもよく、これにより、個人が左前腕の筋活動によって右手1上の装具2を制御すること、またはその逆が可能になる。あるいは、センサ10は、指の動きと物理的に無関係な筋肉の活動を測定するように構成されてもよく、装具2は、このような筋肉活動に基づいて指を動かすように構成されてもよい。例えば、装具2は、手首の角度に応じて1つ以上のグリップを達成しうる。
【0047】
装具2は、アクチュエータを介して動作可能であって、異なる状態を達成することができ、各状態は事前定義されたグリップに対応する。本明細書で使用される場合、「グリップ」は、1つ以上の指1A~1Eがアクティブに動作させられて、物体、例えば外部物体または身体部分に力を加えるアクティブグリップを含むだけではなく、指1A~1Eが弛緩および/または静止して、いかなる力も加えないパッシブグリップも含む。したがって、パッシブグリップは、「オープングリップ」または「弛緩グリップ」である。オープングリップでの指1A~1Eの配置は、例えば、アクチュエータを切り離すことによって、装着者に任せることができ、装着者が任意の弛緩グリップを達成することが可能になる。あるいは、弛緩グリップ内の指1A~1Eの配置は、アクチュエータによって、かつ/またはシース3Aの設計によって設定されうる。異なるグリップの実施例が図2A図2Dに示されており、ここでは、提示を明確にするために装具が省略されている。図2Aは、オープン(弛緩)グリップG0を示している。図2Bは、親指1Aおよび人差し指1Bの先端が物体8と係合するように動かされるピンチグリップG1を示している。図2Cは、少なくとも人差し指1Bが曲げられ、親指1Aの先端が横方向に動かされ、かつ親指1Aの先端と曲げられた人差し指1Bとの間で物体8と係合する横方向グリップG3を示している。図2Dは、指1A~1Eのうちの1つ以上が動かされて、物体8を手のひらの上に押し付ける円筒形グリップG4を示している。
【0048】
本発明の実施形態は、異なるグリップを達成するときに健康な個人の指の動きをより良く模倣するように装具2を動かす技術を含む。当該一実施形態は、生体電気センサ10からの信号に基づいて、意図されたグリップ、および意図されたグリップに関与する各指1A~1Eの意図されたグリップ力を判定することを含む。意図されたグリップは、事前定義された(所定の)グリップのセットの中から、例えば、図2A図2Dに例示されるように判定可能であり、ここで事前定義された各グリップは、それぞれの指1A~1Eの事前定義された動きの軌道に関連付けられ、これにより装具2のアクチュエータの中から1つ以上の選択されたアクチュエータを作動させる。意図されたグリップ力は、意図されたグリップに関与するそれぞれの指1A~1Eの実際の接触力に基づいて、選択されたアクチュエータを制御するための1つ以上の設定点を定義する。これによって、選択されたアクチュエータを動作させて、良好に制御された自然な方法で、意図されたグリップ力を用いて意図されたグリップを達成することが可能である。
【0049】
以下の説明は図1に示されるような装具2に言及しうるが、本発明の実施形態は、いずれかの特定のタイプの装具、またはその構造的構成に限定されない。
【0050】
図3Aは、1A~1Nによって概略的に示されかつ指定された、複数の肢(指)に取り付けられた装具の制御システムのブロック図である。制御システムは、EMGセンサ10のセットから受信されるEMG信号[S(t)]のセットに対して動作して、1つ以上の指1A~1Nを選択的に作動させる。制御システムは、指1A~1Nの意図された力データ
【数1】
を判定するためにEMG信号[S(t)]を処理するように構成された、力予測モジュール12を含む。意図された力データ
【数2】
は、各指1A~1Nに対する意図された力値を含みうる。制御システムは、指1A~1Nの意図されたグリップデータ
【数3】
を判定するためにEMG信号[S(t)]を処理するように構成されたグリップ予測モジュール14をさらに含む。実装形態に応じて、グリップデータ
【数4】
は、選択されたグリップを表すインデックス、または1つ以上の候補グリップに対するそれぞれの確率値を含みうる。調整モジュール16は、意図された力データ
【数5】
およびグリップデータ
【数6】
に対して動作して、それぞれの指1A~1Nを動かすための1つ以上のアクチュエータをそれぞれ含む、指コントローラ18A~18N用の意図された力信号F(t)…F(t)を生成する。意図された力信号F(t)…F(t)が生成されて、指コントローラ18A~18Nに1つ以上の指1A~1Nの所望の動きを与えさせる。それぞれの指コントローラ18A~18Nのうちの1つ以上のアクチュエータは、事前定義された2次元(2D)の指の動きを与えるように構成された範囲において、例えば、指を曲げてその遠位部分を2D平面内で動かすことによって、指コントローラは、意図された力信号のみに対して動作可能となる。指コントローラが2つ以上の自由度(DOF)を有する場合、例えば、手根中手(CMC)関節に対して親指を2つ以上の方向に動かすように動作可能であることによって、調整モジュール16はさらに、意図されたグリップを示すグリップ信号を提供し、指コントローラに、意図されたグリップに従ってそのアクチュエータを選択的に運動させることができる。図3Aでは、このようなグリップ信号G(t)は、調整モジュール16によって指コントローラ18Aに提供される。
【0051】
力予測モジュール12は、1つ以上のEMG信号[S(t)]に基づいて1つ以上の力関連パラメータを評価(計算)し、その関数として意図された力データ
【数7】
を判定するように構成されうる。このような力関連パラメータは、時間領域、周波数領域、もしくは時間周波数領域、またはそれらの任意の組み合わせを表しうる。力関連パラメータの例には、ウィルソン振幅、分散、平均絶対値、波形長、ヒストグラム、平均頻度、エントロピー、勾配などが含まれるが、これらに限定されない。これらおよび他の潜在的な力関連パラメータは、7期学会論文集(2010)1~9に掲載された、Mathiesenらによる論文“Prediction of grasping force based on features of surface and intramuscular EMG”、およびそこに列挙された引用例で定義されており、それらの全ては、この参照により本明細書に組み込まれる。例えば、この論文は、ウィルソン振幅と意図された力との間の線形関係を示している。
【0052】
グリップ予測モジュール14は、それぞれが事前定義されたグリップを表す1つ以上の事前定義されたクラスに信号特徴を割り当てることによって、1つ以上のEMG信号[S(t)]に基づいて複数のグリップ関連信号特徴を評価(計算)し、信号特徴に対してパターン認識アルゴリズムを動作させてグリップデータ
【数8】
を判定するように構成可能である。このような信号特徴は当該技術分野で周知であり、時間領域、周波数領域、もしくは時間周波数領域、またはそれらの任意の組み合わせを表しうる。信号特徴の例は、Mathiesenらによる上記の論文に記載されている。適切に定義されている場合、パターン認識アルゴリズムにより、一貫性のある堅牢なグリップ予測が確実にされる。パターン認識アルゴリズムは、例えば、センサ10の数、事前定義されたグリップの数、装具によって制御される指の数、それぞれの指の自由度などに応じて、複雑さの範囲が単純なものから高度なものにまでわたりうる。パターン認識アルゴリズムの例には、評価ルールの単純な組み合わせ、ベイズ分類器、線形判別分析(LDA)、サポートベクターマシン(SVM)、ガウス混合モデル(GMM)、二次分類器、カーネル密度推定、判定ツリー、人工ニューラルネットワーク(ANN)、リカレントニューラルネットワーク(RNN)、および長短期記憶(LSTM)が含まれるが、これらに限定されない。より詳細な実施例が、図5を参照して以下に与えられている。
【0053】
図3Bには、加算ユニット19、アクチュエータコントローラ20、およびアクチュエータ21を備える、指コントローラ18Aの構造がより詳細に示されている。加算ユニット19は、調整モジュール16から意図された力信号F(t)、および力測定デバイス22から測定された力信号
【数9】
を受信し、信号F(t)と
【数10】
との間の瞬時の差に対応する差または誤差信号e(t)を出力するように構成されている。測定された力信号
【数11】
は、実際の力値の時系列であり、それぞれが、指1Aと、指1Aによって接触またはグリップされた物体との間に発生する瞬時の適用力(接触力)を表す。力測定デバイス22は、例えば、圧電センサ、力検出抵抗器(FSR)、ロードセルなどの形態で、シース3A(図1)に配置されるか、または指1Aに取り付けられうる。あるいは、力測定デバイス22は、アクチュエータ21に含まれるか、またはアクチュエータ21に関連付けられて、例えば、腱(図1の4)に加えられる力、駆動軸のひずみまたはトルクなどを測定することによって、適用力を間接的に測定することができる。さらなる代替では、力測定デバイス22は、アクチュエータ21、例えば上記の巻線デバイスの1つ以上の構成要素の向きおよび/または位置を測定し、これに基づいて加えられた力をアルゴリズム的に計算することができる。アクチュエータコントローラ20は、誤差信号e(t)を受信し、かつアクチュエータ21用の制御信号u(t)を生成するように構成されており、アクチュエータ21は対応する動きを指1Aに与えるように構成されている。指コントローラ18は、2つ以上のアクチュエータ21を含むことができ、アクチュエータコントローラ20は、誤差信号e(t)を最小化するように、各アクチュエータ21用のそれぞれの制御信号を生成するように構成されうる。アクチュエータコントローラ20は、比例(P)、積分(I)、および微分(D)制御、またはそれらの任意の組み合わせを含む、任意の利用可能な制御アルゴリズムを実装することができる。図3Bの実施例では、アクチュエータコントローラ20はまた、調整モジュール16からグリップ信号G(t)を受信するように構成されている。グリップ信号G(t)に基づいて、アクチュエータコントローラ20は、適切なロジックによって、意図されたグリップを形成するためにアクチュエータ21のどれがアクティブに制御されるべきかを推測するように動作可能である。
【0054】
図3Bはまた、破線の矢印によって、グリップ予測モジュール14が、力測定デバイス22から力信号
【数12】
を受信し、ならびに位置測定デバイス24から位置信号
【数13】
を受信するように構成可能であることを示している。位置信号
【数14】
は、位置値の時系列であり、それぞれが指1Aの瞬時の位置を表す。この文脈において、「位置」は、事前定義された基準に関連する、指または指の一部、例えば指骨の位置を定義する任意のメトリックまたはメトリックの組み合わせを指す。基準は、例えば、手1または装具2上で事前定義された位置を有する座標系であってよく、例えばデカルト座標系、極座標系、円筒座標系または球座標系である。一実施例では、位置測定デバイス24は、アクチュエータ21の1つ以上の構成要素の現在の向きまたは位置に基づいて、かつ/または例えば、シース3Aに配置された、指1A上の1つ以上の慣性センサからの信号に基づいて、位置をアルゴリズム的に計算するように構成されている。
【0055】
図3Bはさらに、破線矢印によって、グリップ予測モジュール14が、例えば、1つ以上の加速度計および/またはジャイロスコープを含む、1つ以上の慣性センサ26から1つ以上の慣性信号I(t)を受信するように構成されうることを示している。慣性信号I(t)は、加速度、角速度、向きなどのうちの1つ以上を示しうる。慣性センサ26は、1つ以上の指コントローラ18A~18N内、および/もしくは1つ以上の指1A~1N、手1、シース3A、または装具2の装着者の他の場所上に配置することができる。
【0056】
図3Aの指コントローラ18B~18Nは、上述のように指コントローラ18Aに対応して構成されうる。
【0057】
図4は、装具を制御するための方法400の一実施形態を示している。方法400は、図1の手の装具2について、図3A図3Bの制御システムを参照して例示されている。図示されている実施形態では、方法400は、3つのサブシーケンス400A、400B、および400Cに分割される。サブシーケンス400Aでは、意図されたグリップを予測するものであり、モジュール14によって実行される。サブシーケンス400Bは、意図された力を予測するものであり、モジュール12によって実行される。サブシーケンス400Cは、動作させるべき装具内のアクチュエータを選択し、選択されたアクチュエータを制御して意図されたグリップを実行するものである。サブシーケンス400Cは、モジュール16および指コントローラ18A~18Nによって実行されうる。方法400は、連続する時間ステップにおいて繰り返し実行されうるが、時間ステップは、サブシーケンス400A~400Cの間で異なりうる。
【0058】
ステップ401では、EMG信号[S(t)]が、EMGセンサ10から取得される。EMG信号[S(t)]、またはそのそれぞれのサブセットは、サブシーケンス400Aおよびサブシーケンス400Bによって処理される。サブシーケンス400Aでは、例えば、当技術分野で周知のように、増幅、ノイズ低減のためのフィルタリング、正規化、および整流によって、1つ以上のEMG信号[S(t)]が前処理される(ステップ402A)。ステップ403では、複数のEMG信号特徴が、例えばモジュール14を参照して上記で例示したように、前処理されたEMG信号において時間ウィンドウ内で抽出される。ステップ404~406は任意選択手段であり、意図されたグリップの予測を改善するために含めることができる。ステップ404では、1つ以上の慣性信号特徴が、慣性信号I(t)から抽出される。慣性信号特徴は、1つ以上の方向の線形加速度、1つ以上の方向の線速度、1つ以上の配向角度、1つ以上の方向の角速度、1つ以上の方向の角加速度などを含むがこれらに限定されない、任意のタイプの慣性パラメータを表しうる。ステップ405では、1つ以上の力の特徴が、それぞれの指について測定された力信号から抽出される(図3B
【数15】
を参照)。力の特徴は、個々の力値、力値の時間平均、時間ウィンドウ内の最大または最小の力値、勾配、分散などを含みうる。ステップ406では、それぞれの指について測定された位置信号から、1つ以上の位置特徴が抽出される(図3B
【数16】
を参照)。位置特徴は、個々の位置値、位置値の時間平均、時間ウィンドウ内の最大または最小の位置値、勾配、分散などを含みうる。ステップ407では、ステップ403~406によって得られた特徴が、例えばモジュール14を参照して上記で例示したように、任意のタイプであってよいパターン認識アルゴリズムに対する入力値(本明細書では「特徴セット」とも称される)として提供される。ステップ407で、パターン認識アルゴリズムは、意図されたグリップを判定するためにステップ408によって使用されるグリップデータ[G(t)]を出力する(図3A図3B)。グリップデータ[G(t)]が異なる事前定義されたグリップ(候補グリップ)の確率を含む場合、ステップ408は、最も高い確率を有するグリップを選択しうる。変形例(図示せず)では、ステップ408は、グリップデータ[G(t)]と、ステップ410(下記)によって判定される意図された力データ[F(t)]との組み合わせに基づいて、意図されたグリップを判定しうる。
【0059】
図5は、ステップ407で使用可能であり、かつ図3A図3Bのグリップ予測モジュール14の一部であってよい、パターン認識デバイス50の実施例を示している。図示されている実施例では、パターン認識デバイス50は、到来する特徴セットを、例えば図2A図2DのグリップG0~G3に対応する
【数17】
によって示される4つの候補グリップに分類するように訓練されている人工ニューラルネットワーク(ANN)を含む。実装形態に応じて、ANN50は、各特徴セットに対して
【数18】
の中で単一の予測グリップ、または
【数19】
のそれぞれに対する確率値を示しうる。ANNは周知であるため、これ以上詳細には説明しない。ANN50は、入力層Aと出力層Aとの間に任意の数の隠れ層を有しうることに留意されたい。さらに、(図5では円で表されている)各ニューロンには、それぞれの重み、および任意選択手段としてそれぞれのバイアスが割り当てられ、図5は、層Aにおいてニューロンによって適用される重みを[w1,i]で、また層Aにおいてニューロンによって適用される重みを[wn,i]で、集合的に示している。任意の従来の活性化関数が、それぞれの層に対して使用されうる。図5には示されていないが、それぞれの層の全てのニューロンは、隣接する層の全てのニューロンに接続されている。図5はまた、それぞれのステップ403~406に従って特徴を抽出するための特徴抽出モジュール53~56を示している。図示されている実施例では、前処理されたEMG信号S1~S4がモジュール53によって処理されて、EMG特徴のセットがANN50に提供され、指1A,1Bについて測定された力信号
【数20】
がモジュール54によって処理されて、力の特徴のセットがANN50に提供され、指1A,1Bについて測定された位置信号
【数21】
がモジュール55によって処理されて、位置特徴のセットがANN50に提供され、指1A,1Bについての慣性信号I,Iがモジュール56によって処理されて、慣性特徴のセットがANN50に提供される。従来の実装形態では、特徴セットには、EMG信号特徴のみが含まれる。洞察をともなう推論により、本発明者らは、改善されたグリップ予測が、例えば、予測のロバスト性および精度に関して、力の特徴、位置の特徴、慣性の特徴、またはそれらの任意の組み合わせを含むように特徴セットを拡張することによって、達成することができることを見いだした。力の特徴、位置の特徴、および慣性の特徴の値は、異なるグリップ間で異なる場合があるため、意図されたグリップへの特徴セットの改善された分類を可能にすることが理解されよう。拡張された特徴セットは、ANNだけでなく、全てのタイプのパターン認識アルゴリズムに適用可能である。
【0060】
本発明者らはさらに、パターン認識アルゴリズムに関係なく、候補グリップの中に弛緩グリップ
【数22】
を含めることによって、ユーザが装具2を制御し、自然にかつ直感的にアクティブグリップを解放できることを見いだした。
【0061】
図4のサブシーケンス400Bに戻ると、例えば、増幅によって、またノイズ低減のためのフィルタリングによって、1つ以上のEMG信号[S(t)]が(ステップ402Bで)前処理される。ステップ410では、各指に対する意図された力が、例えばモジュール12を参照して上記で例示されたように、前処理されたEMG信号の時間ウィンドウ内の信号値に対して計算される。したがって、ステップ410は、意図された力データ[F(t)]をもたらす。
【0062】
サブシーケンス400Cでは、ステップ411で、意図されたグリップを実行するために動作させるべきアクチュエータが選択される。指コントローラの全てのアクチュエータが事前定義された全てのグリップに対して動作させられる場合、ステップ411は省略されうる。ステップ412は、意図されたグリップに関与するそれぞれの指に対する実際の適用力の現在値を取得する。前述のことから理解されるように、ステップ412では、それぞれの測定された力信号から現在値が取得されうる(図3B
【数23】
を参照)。現在値は、単一の力値、または測定された力信号の力値の時間平均でありうる。ステップ413では、意図された力と現在値との間の差値(瞬時の力の差)が計算される。差値は、図3Bの誤差信号e(t)で信号値を形成する。ステップ414では、制御値が、事前定義された制御アルゴリズムに従って、差値の関数として、それぞれの選択されたアクチュエータに対して生成される。制御値は、図3Bの制御信号u(t)で信号値を形成する。
【0063】
方法400が繰り返し実行されて、指の漸進的な動きによって意図されたグリップを達成していくことが理解される。サブシーケンス400Aによるグリップ予測、およびサブシーケンス400Bによる力予測は、同時に実行可能であるが、同時の実行は必須ではない。装具2は、アクチュエータからの抵抗なしに、装着者がこのような能力を有するものと仮定して、装着者が自身の指を動かすことを可能にするように構成されうることも理解されるべきである。例えば、装具は、装着者が自身の指を意図されたグリップに向かってまたは意図されたグリップが達成されるように動かすことを可能にするハンドグリップ強化具であってよく、この装具は、意図された力に従って意図されたグリップを強化する。したがって、前述の力ベースの動作制御は、意図されたグリップへの動作の一部の間にのみ実行されうる。別の実施例では、意図された非弛緩グリップが検出されたが意図された力がない場合、装具は、それにもかかわらず、例えば、調整モジュール16が、事前定義された値で意図された力信号F(t)…F(t)を生成することによって、指を意図されたグリップに向かって動かすことができる。動作中に意図された力が検出された場合、調整モジュール16は、意図された力で意図されたグリップを達成するべく、意図された力を反映するために意図された力信号F(t)…F(t)を生成するように切り替えることができる。例えば、装具が単一のグリップを実行するように構成されている場合、サブシーケンス400Aによるグリップ予測を省略することも考えられる。
【0064】
装着者が自身の指を動かし始めている間にそれぞれの指の瞬時の位置が測定される場合(図3B
【数24】
を参照)、パターン認識アルゴリズムの出力を検証するために、それぞれの指の1つ以上の測定された位置が分析可能となることが理解されよう。このような検証は、1つ以上の位置特徴が特徴セットに含まれる場合(ステップ406および図5を参照)、パターン認識アルゴリズムに効果的に組み込まれる。代替的または追加的に、方法400は、測定された位置をパターン認識アルゴリズムの出力と照合し、かつ測定された位置と、パターン認識アルゴリズムによって予測されるグリップの動きの軌道との間に不一致がある場合に、サブシーケンス400Cに進行することを控えるステップを含みうる。さらなる代替手段では、ANN50の1つ以上の重み係数が、測定された位置の関数として変更されうる(
【数25】
を参照)。このような一実施形態では、方法400は、瞬時の指の位置に基づいて、出力層Aの1つ以上の重み係数[wn,j]を変更し、これにより測定された位置信号と一致する動きの軌道で、意図されたグリップに向かってANN50の予測を駆動するステップを含む。
【0065】
生体電気信号は、通常、弱くてノイズが多いため、外乱の影響を受けやすい。例えば、装着者の身体または身体部分の突然の動きは、生体電気信号[S(t)]を歪め、装具の動作を妨害しうる。いくつかの実施形態では、方法400は、外乱状態、例えば、速度、位置、または向きの突然の変化の検出のために慣性信号I(t)を処理するステップと、外乱状態が検出された場合に少なくともステップ414を無効化するステップと、を含みうる。一実施例では、外乱状態の検出により、装具2の動作が一時的に中断させられうる。別の実施例では、ステップ414は、外乱が治まるまで、または所定の期間、最新の意図された力信号F(t)…F(t)を使用するステップに置き換えることができ、その結果、装具2の動作は、外乱の間、安全な方法で継続する。
【0066】
本発明の実施形態をさらに例示するために、図2A図2Dを参照する。以下の実施例では、装具2は、それぞれの指コントローラ18A~18Eによって、指1B~1Eをそれぞれのデフォルト軌道に沿って、すなわち事前定義された2D動作で動かし、かつ3つの異なる動きの軌道に沿って親指1Aを動かすように構成されていると仮定している。制御システムが、装着者が第1の力でピンチグリップG1に到達しようとしていることを検出した場合、装具は、親指1Aおよび人差し指1Bに対する第1の力が測定されるまで、選択されたアクチュエータを動作させて、ピンチグリップG1に関連する第1の軌道上で親指1Aを動かし、かつそのデフォルト軌道上で人差し指1Bを動かす。次いで、制御システムが、装着者が弛緩グリップG0を達成しようとしていることを検出した場合、装具は、装着者が指を弛緩グリップG0に動かすことができるようにアクチュエータを解放するか、または選択されたアクチュエータを動作させて指を弛緩グリップG0に動かすことを可能にする。制御システムが、装着者が親指1Aに対する第1の力および他の指1B~1Eに対する第2の力で横方向グリップG2を達成しようとしていることを検出した場合、装具は、第1の力が親指1Aに対して測定され、かつ第2の力が指1B-1Eに対して測定されるまで、選択されたアクチュエータを動作させて、指1B~1Eをそれぞれのデフォルト軌道上で動かし、かつ横方向グリップG2に関連する第2の軌道上で親指1Aを動かす。制御システムが、装着者が全ての指1A~1Eに対して第1の力で円筒形グリップG3を達成しようとしていることを検出した場合、装具は、全ての指1A~1Eに対して第1の力が測定されるまで、選択されたアクチュエータを動作させて、指1B~1Eをそれぞれのデフォルト軌道上で動かし、円筒形グリップG3に関連する第3の軌道上で親指1Aを動かす。
【0067】
図6は、本発明の実施形態による制御デバイス60の概略図である。デバイス60は、任意の1つもしくは複数の適切なプロトコルに従ってデータ通信用の1つ以上のインタフェースを定義する通信モジュール61を備える。示されるように、デバイス60は、通信モジュール61を介して、生体電気センサ10、力測定デバイス22、位置測定デバイス24、慣性センサ26、およびアクチュエータ21用の出力制御信号から、データを入力することができる。デバイス60は、1つ以上のプロセッサ62、例えば、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはこれらの任意の組み合わせをさらに備える。デバイス60は、システムメモリ63をさらに含み、システムメモリ63は、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、およびフラッシュメモリなどの揮発性および/または不揮発性メモリの形態のコンピュータメモリを含みうる。メモリ63は、デバイス60に、本明細書で論じられる方法論のいずれか1つを実行させるためのコンピュータ命令64(例えば、ソフトウェアまたはプログラムコード)を記憶しうる。命令64は、有形の(非一時的な)製品(例えば、磁気媒体、光学媒体、読み取り専用メモリ、フラッシュメモリ、デジタルテープなど)または伝搬信号でありうる、コンピュータ可読媒体65上でデバイス60に供給されうる。プロセッサ62によって実行されると、命令64は、プロセッサ62に、本明細書で論じられる方法論のうちのいずれか1つを実行させうる。この文脈では、前述のモジュール12、14、16、18A~18Eのいずれもが、命令64を実行するプロセッサ62によって実施されうることが理解されるべきである。しかしながら、1つ以上のモジュール12、14、16、18A~18Eは、専用のハードウェアによってのみ実施されることもまた考えられうる。
【0068】
本発明が、現在、最も実用的で好ましい実施形態であると考えられているものに関連して説明されてきたが、本発明は、開示された実施形態に限定されるべきではなく、逆に、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれる様々な修正および均等の配置をカバーすることを意図していることが理解されるべきである。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5
図6