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特許7450622新規のコンジュゲートされた核酸分子及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】新規のコンジュゲートされた核酸分子及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20240308BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240308BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240308BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240308BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20240308BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240308BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P35/00
A61K47/54
A61K48/00
A61K31/713
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021534234
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 EP2019086672
(87)【国際公開番号】W WO2020127965
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】18306829.5
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18306826.1
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19202834.8
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19202837.1
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】317016006
【氏名又は名称】ヴァレリオ・セラピューティクス
【氏名又は名称原語表記】VALERIO THERAPEUTICS
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・スプロート
(72)【発明者】
【氏名】クリステル・ザンダネル
(72)【発明者】
【氏名】フランソワーズ・ボノ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・シモン
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-521072(JP,A)
【文献】特表2005-508634(JP,A)
【文献】国際公開第2017/148976(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/158809(WO,A1)
【文献】特表2014-516977(JP,A)
【文献】特表2013-534521(JP,A)
【文献】Nucleic Acids Research,2000年,Vol.28, No.9,p.1859-1863
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/113
A61P 43/00
A61K 45/00
A61P 35/00
A61K 47/54
A61K 48/00
A61K 31/713
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1A】
【化1B】
【化1C】
【化1D】
【化1E】
【化1F】
からなる群から選択され、
ヌクレオチド間連結「s」がホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、イタリックのUが2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノウリジンであり、イタリックのGが2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノグアノシンであり、イタリックのCが2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノシチジンである、コンジュゲートされた核酸分子又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
【化2A】
【化2B】
【化2C】
からなる群から選択され、
ヌクレオチド間連結「s」がホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、イタリックのUが2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノウリジンであり、イタリックのGが2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノグアノシンであり、イタリックのCが2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノシチジンである、請求項に記載のコンジュゲートされた核酸分子又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコンジュゲートされた核酸分子又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項4】
加の治療剤を更に含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
追加の治療剤が、免疫調節剤、T細胞ベースのがん免疫療法、遺伝子改変されたT細胞若しくは操作されたT細胞、又は従来の化学療法、放射線療法、若しくは血管新生阻害剤、HDAC阻害剤、又は標的免疫毒素から選択される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
追加の治療剤が、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)、養子細胞移入(ACT)、キメラ抗原受容体細胞(CAR-T細胞)、又はベリノスタットから選択される、請求項4又は5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
薬物としての使用のための、請求項3から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
がんの治療における使用のための、請求項3から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
加の治療剤と組み合わせて使用される、請求項又はに記載の医薬組成物。
【請求項10】
追加の治療剤が、免疫調節剤、T細胞ベースのがん免疫療法、遺伝子改変されたT細胞若しくは操作されたT細胞、又は従来の化学療法、放射線療法、若しくは血管新生阻害剤、HDAC阻害剤、又は標的免疫毒素から選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
追加の治療剤が、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)、養子細胞移入(ACT)、キメラ抗原受容体細胞(CAR-T細胞)、又はベリノスタットから選択される、請求項9又は10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
がんの治療におけるNAD+合成の欠如を有する腫瘍細胞に対する標的効果のための使用のための、請求項から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
腫瘍細胞が、ERCC1若しくはATMの欠如又はIDHの変異から選択されるDNA修復経路の欠如を更に有する、請求項12に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医学、特に腫瘍学の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
DNA損傷応答(DDR)はDNAの傷害を検出し、その修復を促進する。DNAの傷害の型には広い多様性があるので、ミスマッチ修復(MMR)、塩基切除修復(BER)、ヌクレオチド切除修復(NER)、一本鎖切断修復(SSB)、及び二本鎖切断修復(DSB)等の多数の大きく区別できるDNA修復機構が必要である。例えば、SSBの修復には本質的にポリアデニルリボースポリメラーゼ(PARP)が関与する一方、DNAにおけるDSBを修復するには2つの主要な機構、即ち非相同末端結合(NHEJ)及び相同組換え(HR)が用いられる。NHEJにおいてはDSBがKuタンパク質によって認識され、これが次にプロテインキナーゼDNA-PKcsに結合してこれを活性化し、エンドプロセシング酵素の動員及び活性化がもたらされる。治療によって誘導されたDNAの損傷を修復するがん細胞の能力は、治療の有効性に影響を与えることが実証されてきた。
【0003】
このことが、DNA修復経路及びタンパク質を標的として、伝統的な遺伝毒性治療(化学療法、放射線療法)に対する感受性を増大する抗がん剤を開発することに繋がってきた。がん療法に対する合成の致死的なアプローチにより、がん細胞を特異的に標的とする一方、非がん細胞には傷害を与えず、それにより治療に付随する毒性を低減する新規な機構が提供されてきた。
【0004】
これらの合成の致死的なアプローチの中でも、Dbait分子は二本鎖DNAの傷害を模倣する核酸分子である。これらはDNA損傷シグナル伝達酵素であるPARP及びDNA-PKの「おとり」として作用し、「偽の」DNA損傷シグナルを誘導して、究極的にはDSB及びSSB経路に関与する多くのタンパク質の損傷部位への動員を阻害する。
【0005】
Dbait分子はPCT特許出願、WO2005/040378、WO2008/034866、WO2008/084087、及びWO2017/013237に広範に記載されている。Dbait分子は、その治療活性に必要ないくつかの特徴、例えばKuを含むKuタンパク質複合体とDNA-PKcsタンパク質との適切な結合を可能にするために十分である限り、変動してもよい最小の長さによって定義され得る。即ち、そのようなKu複合体への結合を確実にし、DNA-PKcsの活性化を可能にするために、Dbait分子の長さは20bp、好ましくは約32bpより長くなくてはならない。
【0006】
そのようなDbait分子を用いる治療のための可能性のある予測バイオマーカーを特徴解析した。Dbait分子に対する感受性はまさに、PCT特許出願WO2018/162439に記載された小核(MN)を伴う細胞の高い自発的頻度に随伴していた。種々の組織からの43種の固形腫瘍細胞株並びに細胞由来及び患者由来の異種移植片の16種のモデルにおけるバリデーションに続くDbait分子による治療のための予測マーカーとして、MNの高い基礎的レベルを提案した。
【0007】
更に、小核(MN)がDMAの損傷によって誘導される免疫応答の一部として重要なプラットフォームを提供することが最近提案された(Gekara J Cell Biol. 2017年10月2日;216(10):2999~3001頁)。最近の研究によって、DNAの損傷によって誘導される免疫活性化におけるMNの形成の役割が実証された。興味あることに、サイトゾルDNA感知経路はまさに、DNAの損傷と先天免疫との間の主要なリンクとして現れてきた。DNAは通常、核及びミトコンドリアに存在し、したがって、細胞質中におけるDNAの存在は免疫応答を誘発する危険随伴分子パターン(DAMP)として働く。環状グアノシン一リン酸(GMP)-アデノシン一リン酸(AMP)シンターゼ(cGAS)は、DNAをDAMPとして検出し、I型インターフェロン及び他のサイトカインを誘導するセンサーである。DNAは配列に依存せずにcGASに結合し、この結合はcGASの触媒中心のコンフォメーション変化を誘導し、それによりこの酵素はグアノシン三リン酸(GTP)及びATPを二次メッセンジャー環状GMP-AMP(cGAMP)に変換することができる。このcGAMP分子はアダプタータンパク質、即ちIFN遺伝子の刺激剤、即ちSTINGのための内因性高親和性リガンドである。STING経路の活性化は、次いで、例えば炎症性サイトカインの刺激であるIP-10(CXCL10としても知られている)並びにCCL5又は受容体NGK2及びPD-L1を含み得る。
【0008】
最近の証拠は、抗腫瘍免疫応答の誘導におけるSTING(インターフェロン遺伝子の刺激剤)経路の関与を示している。したがって、STINGアゴニストは現在、がん療法の新たなクラスとして広範に開発されている。がん細胞におけるSTING依存性経路の活性化は、免疫細胞による腫瘍の浸潤及び抗がん免疫応答の調節をもたらし得ることが示されてきた。
【0009】
STINGは、先天免疫シグナル伝達(細菌又はウイルス等の病原体を含むがこれらに限定されない環境からの攻撃と闘う迅速で非特異的な免疫応答)を容易にする小胞体アダプターである。STINGはNF-kB、STAT6、及びIRF3転写経路を活性化してI型インターフェロン(例えばIFN-α及びIFN-β)の発現を誘導し、発現後に強力な抗ウイルス状態を発揮することが報告された。しかし、これまでに開発されたSTINGアゴニストは全ての細胞型においてSTING経路を活性化することができ、樹状細胞におけるそれらの活性化にリンクした重大な副作用を誘発することがある。その帰結として、STINGアゴニストは局所投与されている。
【0010】
したがって、腫瘍細胞中でSTING経路を特異的に活性化する方法を発見する真のニーズが存在する。
【0011】
したがって、がん治療のための療法、特にいくつかの機構、特にDNA修復経路及びSTING経路活性化剤に依拠する薬物、並びにより多くの患者及びより広範囲のがんについて作用するチェックポイント阻害剤を助け得る薬物に対するニーズがなお存在する。
【0012】
がん細胞は、急速な増殖を支持するための特有のエネルギー代謝を有する。正常な酸素条件下での嫌気的解糖に対する選好性は、がん代謝の特有の特質であり、Warburg効果と命名されている。解糖の強化はまた、がん細胞の分裂の建築ブロックとしてのヌクレオチド、アミノ酸、脂質、及び葉酸の生成を支持する。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)は、解糖を含むいくつかの代謝経路における酸化還元反応を媒介する補酵素である。NADレベルの増大は解糖を促進し、がん細胞にエネルギーを与える。これに関連し、NADレベルの枯渇は、引き続いて解糖、トリカルボン酸(TCA)サイクル、及び酸化的リン酸化等のエネルギー産生経路の阻害によってがん細胞の増殖を抑制する。NADはまた、いくつかの酵素の基質として働き、これらの酵素によってDNAの修復、遺伝子の発現、及びストレス応答を調節する。このように、NADの代謝はエネルギー代謝を超えてがんの発症機序に関与していると考えられ、特にDNA修復遺伝子の欠如(例えばERCC1及びATMの欠如)又はIDH(イソシトレート脱水素酵素)の変異によるNADの欠如を呈するがん細胞におけるがん治療のための有望な治療目標と考えられる。
【0013】
治療に対するがん細胞の耐性を出現させることなく、がん細胞集団に成功裏に対処する新規の治療方法に対するニーズもなお存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】WO2005/040378
【文献】WO2008/034866
【文献】WO2008/084087
【文献】WO2017/013237
【文献】WO2018/162439
【文献】WO2009/126933
【文献】WO2007/040469
【文献】WO2008/022309
【文献】US2004/242582
【文献】米国特許第8,008,449号
【文献】WO2006/121168
【文献】WO2009/114335
【文献】米国特許第8,354,509号
【文献】WO2009/101611
【文献】米国特許第8,609,089号
【文献】米国公開第2010028330号
【文献】米国公開第20120114649号
【文献】米国特許第9,205,148号
【文献】WO2012/145493
【文献】WO2015/112800
【文献】WO2016/092419
【文献】WO2015/085847
【文献】WO2014/179664
【文献】WO2014/194302
【文献】WO2014/209804
【文献】WO2015/200119
【文献】米国特許第8,735,553号
【文献】米国特許第7,488,802号
【文献】米国特許第8,927,697号
【文献】米国特許第8,993,731号
【文献】米国特許第9,102,727号
【文献】米国特許第8,907,053号
【文献】WO2010/027827
【文献】WO2011/066342
【文献】WO2013/079174
【文献】米国特許第8,779,108号
【文献】米国特許第7,943,743号
【文献】WO2015/081158
【文献】WO2015/181342
【文献】WO2014/100079
【文献】WO2016/000619
【文献】WO2014/022758
【文献】WO2014/055897
【文献】WO2015/061668
【文献】WO2013/079174
【文献】WO2012/145493
【文献】WO2015/112805
【文献】WO2015/109124
【文献】WO2015/195163
【文献】米国特許第8,168,179号
【文献】米国特許第8,552,154号
【文献】米国特許第8,460,927号
【文献】米国特許第9,175,082号
【文献】WO2015/116539
【文献】米国特許第9,505,839号
【文献】WO2008/132601
【文献】米国特許第9,244,059号
【文献】WO2008/132601
【文献】WO2010/019570
【文献】WO2014/140180
【文献】WO2015/116539
【文献】WO2015/200119
【文献】WO2016/028672
【文献】米国特許第9,244,059号
【文献】米国特許第9,505,839号
【文献】WO2016/161270
【文献】WO2016/111947
【文献】WO2016/071448
【文献】WO2016/144803
【文献】米国特許第8,552,156号
【文献】米国特許第8,841,418号
【文献】米国特許第9,163,087号
【文献】WO2009/077483
【文献】米国特許第7,879,985号
【文献】WO2018/035330
【文献】WO2009/077483
【文献】WO2010/017103
【文献】WO2017/081190
【文献】WO2018/035330
【文献】WO2018/148447
【文献】WO2010/080124
【文献】WO2017/083545
【文献】WO2017/083612
【文献】WO2017/157895
【文献】WO2014/140904
【文献】WO2018/073648
【文献】WO2008/084106
【文献】WO2014/055648
【文献】WO2005/003168
【文献】WO2005/009465
【文献】WO2006/072625
【文献】WO2006/072626
【文献】WO2007/042573
【文献】WO2008/084106
【文献】WO2010/065939
【文献】WO2012/071411
【文献】WO2012/160448
【非特許文献】
【0015】
【文献】Gekara J Cell Biol. 2017年10月2日;216(10):2999~3001頁
【文献】Goldsteinら、Ann. Rev. Cell Biol. 1985 1:1~39頁
【文献】Leamon & Lowe, Proc Natl Acad Sci USA. 1991, 88: 5572~5576頁
【文献】Vangveravongら、Bioorg. Med. Chem (2006)
【文献】Hamid, O.ら、(2013) New England Journal of Medicine 369 (2): 134~44頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、DNA修復経路を標的とし、具体的にはがん細胞におけるSTING経路を刺激する新規のコンジュゲートされた核酸分子を提供する。より具体的には、核酸分子はDNA-PKを何ら活性化せずにPARPを活性化することができる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、二本鎖核酸部分、ループによって一緒に連結されている第1の鎖の5'末端及び相補鎖の3'末端、並びに任意選択でループに連結されたエンドサイトーシスを容易にする分子を含むコンジュゲートされた核酸分子であって、
- 二本鎖核酸部分の長さが10~20塩基対であり、
- 二本鎖核酸部分の配列がヒトゲノム中の任意の遺伝子と80%未満の配列同一性を有し、
- 二本鎖核酸部分がデオキシリボヌクレオチド及び核酸分子のヌクレオチドの総数に対して30%までのリボヌクレオチド又は修飾されたデオキシリボヌクレオチドを含み、
- ループが以下の式:
-O-P(X)OH-O-{[(CH2)2-O]g-P(X)OH-O}r-K-O-P(X)OH-O-{[(CH2)2-O]h-P(X)OH-O-}s (I)
(ここでr及びsは独立に整数0又は1であり、g及びhは独立に1~7の整数であり、合計g+hは4~7であり、
Kは
【0018】
【化1】
【0019】
であり、i、j、k、及びlは独立に0~6、好ましくは1~3の整数である)、
又は
-O-P(X)OH-O-[(CH2)d-C(O)-NH]b-CHR-[C(O)-NH-(CH2)e]c-O-P(X)OH-O- (II)
(ここでb及びcは独立に0~4の整数であり、合計b+cは3~7であり、
d及びeは独立に1~3、好ましくは1~2の整数であり、Rは-Lf-Jであり、
XはO又はSであり、Lはリンカーであり、fは0又は1である整数であり、Jはエンドサイトーシスを容易にする分子又は水素である)
のうち1つから選択される構造を有する、コンジュゲートされた核酸分子に関する。
【0020】
核酸分子は、以下の配列:
【0021】
【化2】
【0022】
のうち1つ、又は1~3個のヌクレオチドがリボヌクレオチド又は修飾されたデオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチドによって置換された配列を含み得る。
【0023】
エンドサイトーシスを容易にする分子は、コレステロール、一本鎖又は二本鎖の脂肪酸、受容体媒介エンドサイトーシスを可能にする細胞受容体を標的とするリガンド、又はトランスフェリンからなる群から選択することができる。
【0024】
より具体的には、エンドサイトーシスを容易にする分子はコレステロールである。
【0025】
或いは、エンドサイトーシスを容易にする分子は、シグマ-2受容体(σ2R)のリガンドである。例えば、シグマ-2受容体(σ2R)のリガンドは以下の式
【0026】
【化3】
【0027】
を含み、ここでnは1~20の整数である。
【0028】
一態様では、核酸分子の二本鎖部分の遊離末端に位置するヌクレオチドの1つ、2つ、又は3つのヌクレオチド間連結は、好ましくは両方の鎖に、ホスホロチオエート連結等の修飾されたホスホジエステル骨格を有し得る。例えば、1~3個のチミンを2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノウリジンで置き換えることができ、又は1~3個のグアノシンを2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノグアノシンで置き換えることができ、又は1~3個のシチジンを2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノシチジンで置き換えることができる。
【0029】
ループは式(I)を有してよく、Kは
【0030】
【化4】
【0031】
である。
【0032】
任意選択で、fは1であり、L-Jは-C(O)-(CH2)m-NH-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-J、-C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-J、C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-J、-C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-J及び-C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-Jからなる群において選択され、mは0~10の整数であり、nは0~15の整数であり、pは0~3の整数である。
【0033】
任意選択で、ループは式(I)
-O-P(X)OH-O-{[(CH2)2-O]g-P(X)OH-O}r-K-O-P(X)OH-O-{[(CH2)2-O]h-P(X)OH-O-}s (I)
を有し、XはSであり、rは1であり、gは6であり、sは0であり、Kは
【0034】
【化5】
【0035】
であり、fは1であり、LはC(O)-(CH2)5-NH-[(CH2)2-O]3-(CH2)2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-[(CH2)2-O]3-(CH2)3-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]5-CH2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]9-CH2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]13-CH2-C(O)-J、又は-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-Jである。
【0036】
任意選択で、fは1であり、L-Jは-C(O)-(CH2)m-NH-[C(O)]t-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-[C(O)]v-J又は-C(O)-(CH2)m-NH-[C(O)-CH2-O]t-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-[C(O)]v-Jであり、mは0~10の整数であり、nは0~15の整数であり、pは0~4の整数であり、t及びvは整数0又は1であり、t及びvのうち少なくとも1つは1である。
【0037】
1つの特定の態様では、Lは-C(O)-(CH2)m-NH-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-J、-C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-J、C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-J、-C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-J及び-C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-Jからなる群において選択することができ、mは0~10の整数であり、nは0~15の整数であり、pは0~3の整数である。
【0038】
極めて特定の態様では、Lは-C(O)-(CH2)5-NH-[(CH2)2-O]3-(CH2)2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-[(CH2)2-O]3-(CH2)3-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]5-CH2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]9-CH2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]13-CH2-C(O)-J、又は-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-Jからなる群において選択することができる。
【0039】
特定の態様では、コンジュゲートされた核酸分子は、
【0040】
【化6A】
【0041】
【化6B】
【0042】
【化6C】
【0043】
【化6D】
【0044】
【化6E】
【0045】
【化6F】
【0046】
からなる群から選択されるか、又はその薬学的に許容される塩であり、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、イタリックのUは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノウリジンであり、イタリックのGは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノグアノシンであり、イタリックのCは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノシチジンである。
【0047】
本発明はまた、本開示によるコンジュゲートされた核酸分子を含む医薬組成物に関する。任意選択で、医薬組成物は好ましくは免疫チェックポイント阻害剤(ICI)等の免疫調節剤、養子細胞移入(ACT)等のT細胞ベースのがん免疫療法、キメラ抗原受容体細胞(CAR-T細胞)等の遺伝子改変されたT細胞若しくは操作されたT細胞、又は従来の化学療法、放射線療法、若しくは血管新生阻害剤、HDAC阻害剤(ベリノスタット等)、又は標的免疫毒素から選択される追加の治療剤を更に含む。
【0048】
本発明はまた、薬物としての使用のため、特にがんの治療における使用のための、本開示によるコンジュゲートされた核酸分子又は医薬組成物に関する。本発明は更に、治療有効量の本発明によるコンジュゲートされた核酸分子又は医薬組成物を繰り返し又は長期的に投与する工程を含む、それを必要とする対象におけるがんを治療する方法に関する。任意選択で、本方法は繰り返しサイクルの治療、好ましくは少なくとも2サイクルの投与、更により好ましくは少なくとも3サイクル又は4サイクルの投与を含む。
【0049】
本発明によるコンジュゲートされた核酸分子の繰り返し投与又は長期的投与は、治療に対する耐性をがん細胞に発現させない。これは、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)等の免疫調節剤と組み合わせて、又は養子細胞移入(ACT)を含むT細胞ベースのがん免疫療法、キメラ抗原受容体細胞(CAR-T細胞)等の遺伝子改変されたT細胞若しくは操作されたT細胞と組み合わせて、用いることができる。
【0050】
したがって、コンジュゲートされた核酸分子又は医薬組成物は、好ましくは免疫チェックポイント阻害剤(ICI)等の免疫調節剤、養子細胞移入(ACT)等のT細胞ベースのがん免疫療法、キメラ抗原受容体細胞(CAR-T細胞)等の遺伝子改変されたT細胞若しくは操作されたT細胞、又は従来の化学療法、放射線療法、若しくは血管新生阻害剤、HDAC阻害剤(ベリノスタット等)、又は標的免疫毒素から選択される追加の治療剤と組み合わせた、がんの治療における使用のためのものである。
【0051】
特定の態様では、本発明はまた、NAD+合成の欠如を有する腫瘍の患者のための可能な選択戦略又は臨床的層化戦略のための方法に関する。これらの患者、特にDNA修復経路の両方の欠如(例えばERCC1及びATMの欠如)又はIDHの変異を有する腫瘍の患者は、本発明による薬物治療のより良いレスポンダーとなり得る。
【0052】
特定の態様では、コンジュゲートされた核酸分子又は医薬組成物は、がんの治療におけるNAD+合成の欠如を有する腫瘍細胞に対する標的効果のための使用のためのものである。より詳細には、腫瘍細胞はERCC1若しくはATMの欠如又はIDHの変異から選択されるDNA修復経路の欠如を更に有する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1A】OX-401誘導標的関与。増加する用量のOX401又はAsiDNA(商標)で細胞を24時間処理し、H2AXリン酸化(γH2AX)によるDNA-PKの活性化について評価した。***, p<0.001。
図1B】OX-401誘導標的関与。増加する用量のOX401又はAsiDNA(商標)で細胞を24時間処理し、細胞のPAR化(ポリ(ADP-リボース)(PAR)ポリマーの検出による)を測定することによるPARPの超活性化について評価した。***, p<0.001。
図2A】OX401は腫瘍特異的細胞毒性を呈する。腫瘍細胞を、OX401又はAsiDNA(商標)で処理し、XTTアッセイを用いて細胞の生存率を評価した。細胞の生存率は生存している処理細胞の、生存している非処理細胞に対する比として計算した。IC50はGraphPadPrismソフトウェアを用い、用量応答曲線に従って計算した。
図2B】OX401は腫瘍特異的細胞毒性を呈する。非腫瘍細胞を、OX401又はAsiDNA(商標)で処理し、XTTアッセイを用いて細胞の生存率を評価した。細胞の生存率は生存している処理済み細胞の、生存している非処理細胞に対する比として計算した。IC50はGraphPadPrismソフトウェアを用い、用量応答曲線に従って計算した。
図3】OX401は腫瘍免疫応答を誘発する。OX401又はAsiDNA(商標)で長期間処理したMDA-MB-231細胞を、(A)小核陽性細胞の%、(B)分泌されたCCL5及びCXCL10ケモカインのELISAアッセイを用いた量並びに(C)ウェスタンブロットによる全PD-L1のレベル、並びに(D)フローサイトメトリー解析による表面随伴PD-L1のレベルについて評価した。cGAMP、STINGアゴニスト、**, p<0.01。
図4】OX402はPARPの活性化を誘導する。増加する用量のOX402で細胞を24時間処理し、細胞のPAR化(ポリ(ADP-リボース)(PAR)ポリマーの検出による)を測定することによるPARPの超活性化について評価した。
図5】OX401は腫瘍細胞中におけるPAR化及び効率的なNAD+枯渇を誘導する。OX401(5μM)で細胞を48時間、7日、又は13日処理し、PAR化タンパク質のウェスタンブロット解析(A、D)、NAD+細胞内レベル(B、E)、及び細胞の生存率(C、F)によって、PARPの超活性化について評価した。NAD+及び生存率の%は処理細胞の非処理細胞(NT)に対する比として表わす。(A、B、C) MDA-MB-231腫瘍細胞、(D、E、F) MRC5肺線維芽細胞。
図6】OX401は相同組換え修復経路を無効にする。OX401(5μM)で細胞を48時間処理し、(A)H2AXのリン酸化形(γH2AX)を検出するフローサイトメトリー、又は(B)γH2AX増殖巣を検出する免疫蛍光を用いて、DSBのレベルを評価した。(C-D)OX401(5μM)ありとなしで、オラパリブ(olaparib)(5μM)と48時間処理した後の相同組換え経路の有効性を、(C)DSBの部位へのRad51タンパク質の動員の検出、及び(D)Rad51増殖巣の定量によって解析した。***, p<0.001。
図7】OX401で処理した腫瘍細胞は耐性を発現しない。(A)タラゾパリブ(Talazoparib)(2μM)又はOX401(1.5μM)で細胞を処理し、毎回の処理及び増幅サイクルの後に計数した。(B)処理した細胞の数を未処理細胞の平均数で除すことによって細胞の生存率を推定し、それぞれの処理期間の後に決定した。(C)タラゾパリブへの耐性は、増加する用量のタラゾパリブで処理した4日後にXTTアッセイを用いて、単離した3つの集団(Tal1、Tal2、及びTal3)をU937親細胞と比較してバリデートした。生存パーセンテージは非処理条件で正規化した。
図8】OX401は抗腫瘍免疫応答を強化する。OX401(5μM)ありとなしでTリンパ球と48時間共培養したMDA-MB-231細胞(エフェクター細胞と標的腫瘍細胞との比は4:1)を、(A)腫瘍細胞の増殖、(B)ELISAアッセイを用いる分泌されたGranzyme B酵素の量、及び(C、D)ウェスタンブロットによるSTING経路の活性化(C)又は分泌されたCCL5ケモカインを定量するELISAアッセイ(D)について評価した。LTa、活性化されたTリンパ球;MDA、MDA-MB-231腫瘍細胞。
図9】OX401、OX402、OX406、OX407、OX408、OX410、及びOX411のPARP-1との会合の速度(kon)及び相互作用の強さ(KD)。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明は、特異的にPARPを標的として活性化し、細胞NADの顕著な下方制御を誘導し、それにより、特にDNA修復遺伝子の欠如(例えばERCC1及びATMの欠如)又はIDH(イソシトレート脱水素酵素)変異によるNADの欠如を呈するがん細胞におけるがんの治療に特に応用される、コレステロール-核酸コンジュゲート等の、エンドサイトーシスを容易にする分子にコンジュゲートされた新規の核酸分子に関する。
【0055】
本発明は、DDR機構を標的とし、がんの最適の治療のために免疫チェックポイント療法(ICT)との組合せを可能にするSTINGアゴニストでもある、コレステロール-核酸コンジュゲート等の、エンドサイトーシスを容易にする分子にコンジュゲートされた新規の核酸分子に関する。
【0056】
したがって、本発明者らは驚くべきことに、以下のことを見出した。
1) 本発明のコンジュゲートされた核酸分子による、DNA-PKの活性化を伴わないPARPの活性化は、単独の使用により、Dbait分子と比較して小核、細胞質クロマチン断片(CCF)、及び細胞毒性を有するがん細胞の増加に繋がる。
2) がん細胞における小核(MN)及び細胞質クロマチン断片(CCF)の特異的な増加は、炎症性サイトカイン(CXCL10及びCCL5)の放出並びにがん細胞上におけるPD-L1及びNKG2sの発現の増大によって示されるように、STING経路活性化の早期の増大に繋がる。これらの効果はがん細胞に特異的である。そのようながん細胞特異性は、その後の有害な可能性のある副作用を伴う全身的かつ広範な炎症を排除する。
3) DNA修復経路の阻害並びに小核及びCCFの生成によるSTING経路の活性化は、特に先天免疫活性化によって腫瘍細胞中のSTING経路を特異的に活性化する極めて魅力的な方法を表わす。
【0057】
これらの観察に基づき、本発明は
- 以下に記載するコンジュゲートされた核酸分子、
- 特にがんの治療における使用のための、以下に記載するコンジュゲートされた核酸分子及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物、
- 薬物としての使用のための、特にがんの治療における使用のための、以下に記載するコンジュゲートされた核酸分子、
- 特にがんの治療における使用のための薬物の製造のための、以下に記載するコンジュゲートされた核酸分子の使用、
- 本明細書に開示する有効量のコンジュゲートされた核酸分子を投与する工程を含む、それを必要とする患者におけるがんを治療する方法、
- 特にがんの治療における使用のための以下に記載するコンジュゲートされた核酸分子、さらなる治療剤、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物、
- 特にがんの治療における同時、個別、又は連続的な使用のための組合せ調製物としての、(a)以下に開示するコンジュゲートされた核酸分子、及び任意選択で(b)さらなる治療剤を含む製品又はキット、
- 特にがんの治療における同時、個別、又は連続的な使用のための、(a)以下に開示するヘアピン核酸分子、(b)さらなる治療剤を含む、組み合わされた調製物、
- さらなる治療剤と組み合わされたがんの治療における使用のための、以下に記載するコンジュゲートされた核酸分子を含む医薬組成物、
- さらなる治療剤と組み合わされたがんの治療のための医薬の製造のための、以下に記載するコンジュゲートされた核酸分子を含む医薬組成物の使用、
- a)有効量の以下に開示するコンジュゲートされた核酸分子及びb)有効量のさらなる治療剤を投与する工程を含む、それを必要とする患者におけるがんを治療する方法、
- 本明細書に開示するコンジュゲートされた核酸分子を含む有効量の医薬組成物及び有効量のさらなる治療剤を投与する工程を含む、それを必要とする患者におけるがんを治療する方法、
- 有効量の以下に開示するコンジュゲートされた核酸分子を投与する工程を含む、それを必要とする患者における治療用抗腫瘍剤によるがんの治療の有効性を増大し、又は治療用抗腫瘍剤による治療に対する腫瘍の感受性を増強させる方法、
- 好ましくは少なくとも2回の投与サイクル、更により好ましくは少なくとも3回又は4回の投与サイクルの繰り返し治療サイクルによって、繰り返し又は長期的に、本明細書で開示するコンジュゲートされた核酸分子を投与する工程を含む、がんを治療する方法、
- NAD+合成における欠如、及び任意選択でERCC1若しくはATMの欠如又はIDH変異から選択されるDNA修復経路の欠如を有する腫瘍細胞を有する患者におけるがんを治療する方法
に関する。
【0058】
定義
本明細書全体の中では常に、「がんの治療」等は、本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わされた調製物に関して述べられ、a)がんを治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わされた調製物を投与する工程を含む方法、b)がんの治療における使用のための本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わされた調製物、c)がんの治療のための医薬の製造のための本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わされた調製物の使用、並びに/又はd)がんの治療における使用のための本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わされた調製物を意味する。
【0059】
本発明の文脈の中では、用語「治療」は、治療的、症状的、又は予防的な処置を意味する。本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わされた調製物は、がんの進行の初期及び末期の段階を含むがん又は腫瘍が存在するヒトにおいて用いることができる。本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わされた調製物は、がんを有する患者を必ずしも治癒させないが、疾患の進行を遅延し若しくは遅らせ、又は疾患のさらなる進行を防止し、それにより患者の病態を改善することになる。特に、本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わされた調製物は、哺乳動物宿主における腫瘍の進行を低減させ、腫瘍の負荷を低減させ、腫瘍の減縮を生成し、並びに/又は転移の発生及びがんの再発を防止する。がんの治療においては、本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わされた調製物は、治療有効量で投与される。
【0060】
用語「キット」、「製品」、又は「組み合わされた調製物」は、本明細書で使用される場合、上で定義した組合せの相手(a)及び(b)が独立に、又は組合せの相手(a)及び(b)の区別できる量の異なる固定された組合せを用いることによって、即ち同時に若しくは異なる時点で、投薬することができるという意味で、特に「パーツのキット」を定義する。「パーツのキット」の部品は、同時に、又は時系列的に互い違いに、即ち異なる時点で、「パーツのキット」の任意の部品について同等の若しくは異なる時間間隔で、投与することができる。組み合わされた調製物で投与されるべき組合せの相手(a)の全量の、組合せの相手(b)に対する比は、変動し得る。組合せの相手(a)及び(b)は、同一経路又は異なる経路によって投与することができる。
【0061】
「有効量」は、単独で、又は医薬組成物、キット、製品、若しくは組み合わされた調製物の他の活性成分と組み合わせて、ヒトを含む哺乳動物におけるがんの有害な影響を防止し、除去し、又は低減する本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わされた調製物の量を意味する。投与される用量は、患者、病理学、投与の様式等に従って当業者によって適合され得ることが理解される。
【0062】
用語「STING」は、TMEM173、ERIS、MITA、MPYS、SAVI、又はNET23としても知られる、インターフェロン遺伝子受容体の刺激剤(STtimulator of INterferon Genes receptor)を指す。本明細書で使用される場合、用語「STING」及び「STING受容体」は相互交換可能に使用され、STINGの異なるアイソフォーム及びバリアントを含む。ヒトの最長のアイソフォームであるSTINGアイソフォーム1についてのmRNA及びタンパク質の配列は、NCBI参照配列[NM_198282.3]及び[NP_938023.1]を有する。より短いアイソフォームであるヒトのSTINGアイソフォーム2についてのmRNA及びタンパク質の配列は、NCBI参照配列[NM_001301738.1]及び[NP_001288667.1]を有する。
【0063】
用語「STING活性化剤」は、本明細書で使用される場合、STING経路を活性化することができる分子を指す。STING経路の活性化は、例えばIFN-α、IFN-βを含む1型インターフェロン、3型インターフェロン、例えばIFN-λ等のインターフェロン類、IP-10(CXCL10としても知られているインターフェロン-γ誘導タンパク質)、PD-L1、TNF、IL-6、CXCL9、CCL4、CXCL11、NKG2Dリガンド(MIC A/B)、CCL5、CCL3、又はCCL8を含む炎症性サイトカインの刺激を含み得る。STING経路の活性化は、TANK結合キナーゼ(TBK)1リン酸化、インターフェロン制御因子(IRF)の活性化(例えばIRF3の活性化)、IP-10の分泌、又はその他の炎症性タンパク質及びサイトカインの刺激をも含み得る。STING経路の活性化は、例えばインターフェロン刺激アッセイ、リポーター遺伝子アッセイ(例えばhSTING wtアッセイ又はTHP-1デュアルアッセイ)、TBK-1活性化アッセイ、IP-10アッセイ、又は当業者には既知のその他のアッセイを用いて検出される、STING経路の活性化を刺激する化合物の能力によって決定され得る。STING経路の活性化は、STING又はSTING経路によって活性化されるタンパク質をコードする遺伝子の転写のレベルを増大させる化合物の能力によっても決定され得る。そのような活性化は、例えばRNAseqアッセイを用いて検出され得る。
【0064】
STING経路の活性化は、インターフェロン刺激アッセイ、hSTING wtアッセイ、THP-1デュアルアッセイ、TANK結合キナーゼ1(TBK1)アッセイ、インターフェロン-γ誘導タンパク質10(IP-10)分泌アッセイ、又はPD-L1アッセイから選択される1つ又は複数の「STINGアッセイ」によって決定することができる。
【0065】
より具体的には、分子がSTING発現細胞中で未処理のSTING発現細胞中より少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、又はそれ以上、1つ又は複数のSTING依存性サイトカインの産生を刺激することができるならば、その分子はSTING活性化剤である。好ましくは、STING依存性サイトカインは、インターフェロン、1型インターフェロン、IFN-α、IFN-β、3型インターフェロン、IFN-λ、CXCL10(IP-10)、PD-L1、TNF、IL-6、CXCL9、CCL4、CXCL11、NKG2Dリガンド(MIC A/B)、CCL5、CCL3、又はCCL8、より好ましくはCCL5又はCXCL10から選択される。
【0066】
コンジュゲートされた核酸分子
本発明によるコンジュゲートされた核酸分子のいくつかのさらなる利点は、これらがオリゴヌクレオチドの固相合成を用いるのみで1つの分子として合成でき、それにより低いコスト及び高い製造スケールが可能になるという事実に基づいている。
【0067】
本発明のコンジュゲートされた核酸分子は、二本鎖核酸部分、ループによって一緒に連結されている第1の鎖の5'末端及び相補鎖の3'末端、並びに任意選択でループに連結されたエンドサイトーシスを容易にする分子を含む。二本鎖核酸部分の他の末端は遊離している。
【0068】
本発明によるコンジュゲートされた核酸分子は、その治療活性に必要ないくつかの特徴、例えばその最短及び最長の長さ、少なくとも1つの遊離末端の存在、及び二本鎖部分、好ましくは二本鎖DNA部分の存在によって定義され得る。
【0069】
コンジュゲートされた核酸分子はPARP-1タンパク質を活性化することができる。他方、コンジュゲートされた核酸分子はDNA-PKを活性化しない。
【0070】
本発明は、本発明のコンジュゲートされた核酸分子の薬学的に許容される塩にも関する。
【0071】
核酸分子
コンジュゲートされた核酸分子の長さは、それがPARP(PARP-1)タンパク質との適切な結合及びその活性化を可能にするために十分であり、かつKuを含むKuタンパク質複合体とDNA-PKcsタンパク質との適切な結合を可能にするには不十分である限り、変動してよい。そのようなKu複合体への結合を確実にし、DNA-PKcsの活性化を可能にするためには、コンジュゲートされた核酸分子の長さは20bp、好ましくは32bpより長くなくてはならないことが示されているので、長さは20bpまでである。更に、PARPの適切な結合及び活性化を可能にするために、コンジュゲートされた核酸分子の長さは8bpより長くなくてはならないことが示されている。
【0072】
二本鎖核酸部分の長さは10~20塩基対である。多くとも20bpの長さは、分子がDNA-PKの活性化を可能にすることを防止する。特定の態様では、二本鎖核酸部分の長さは11~19塩基対である。例えば、長さは11~19bp、12~19bp、13~19bp、14~19bp、15~19bp、16~19bp、12~16bp、12~17bp、12~18bp、13~16bp、13~17bp、13~18bp、14~16bp、14~17bp、14~18bp、15~16bp、15~17bp、又は15~18bpであってよい。極めて特定の態様では、二本鎖核酸部分の長さは16bpである。「bp」は、その分子が指示された長さの二本鎖部分を含むことを意図している。
【0073】
核酸分子の効果はその配列に依存しない。したがって、核酸分子は以下の式
【0074】
【化7】
【0075】
を含むものとして定義することができ、ここで
Nはヌクレオチド、「a」は5~15の整数であり、2つの鎖は互いに相補的である。
【0076】
【化8】
【0077】
はヌクレオチドがループに連結されていることを示す。特定の態様では、「a」は6~14の整数である。別の特定の態様では、「a」は6~14、7~14、8~14、9~14、10~14、11~14、6~13、7~13、8~13、9~13、10~13、11~13、6~12、7~12、8~12、9~12、又は10~12の整数であってよい。
【0078】
好ましくは、核酸分子の配列は非ヒト由来である(即ち、それらのヌクレオチド配列及び/又はコンフォメーションはそのままでヒト細胞中に存在しない)。コンジュゲートされた核酸分子は、好ましくは、既知の遺伝子、プロモーター、エンハンサー、5'-又は3'-上流配列、エクソン、イントロン等との顕著な程度の配列相同性又は同一性を有しない。換言すれば、コンジュゲートされた核酸分子はヒトゲノム中の任意の遺伝子と80%又は70%未満、更には60%又は50%未満の配列同一性を有する。配列同一性を決定する方法は当技術で公知であり、例えばBLASTN 2.2.25を含む。例えば、同一性パーセンテージはHuman Genome Build 37(参照GRCh37.p2及び代替アセンブリー)によって決定することができる。コンジュゲートされた核酸分子は、厳格な条件下ではヒトゲノムDNAとハイブリダイズしない。典型的な厳格な条件とは、完全に相補的な核酸と部分的に相補的な核酸との区別を可能にする条件である。
【0079】
更に、周知のトール様受容体(TLR)媒介免疫反応を回避するために、コンジュゲートされた核酸分子の配列は5'-CpG-3'を欠いていることが好ましい。
【0080】
コンジュゲートされた核酸分子は、二本鎖切断の模倣として、1つの遊離末端を有さなければならない。前記遊離末端は、遊離平滑末端又は5'-/3'-突出末端であってよい。「遊離末端」は、本明細書では5'末端及び3'末端の両方を有する核酸分子、特に二本鎖核酸部分を指す。
【0081】
例えば、本発明による分子の二本鎖核酸部分又は核酸は、以下の配列(配列番号1)
【0082】
【化9】
【0083】
を含むか、これで構成される。
【0084】
特定の実施形態では、コンジュゲートされた核酸分子は、配列番号1と同じヌクレオチド配列を含む二本鎖部分を有する。任意選択で、コンジュゲートされた核酸分子は、配列番号1と同じヌクレオチド組成を有するが、ヌクレオチド配列は異なっている。即ち、コンジュゲートされた核酸分子は、6A、7C、2G、及び1Tを含む二本鎖部分の1つの鎖を含む。好ましくは、コンジュゲートされた核酸分子の配列は、5'-CpG-3'ジヌクレオチドを何ら含まない。或いは、二本鎖部分は、配列番号1の少なくとも9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、又は16個の連続したヌクレオチドを含む。より特定の実施形態では、二本鎖部分は、配列番号1の9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、又は16個の連続したヌクレオチドからなる。
【0085】
別の特定の態様では、本発明による分子の二本鎖核酸部分又は核酸は、以下の配列(配列番号2)
【0086】
【化10】
【0087】
を含むか、これで構成される。
【0088】
特定の実施形態では、コンジュゲートされた核酸分子は、配列番号2と同じヌクレオチド配列を含む二本鎖部分を有する。任意選択で、コンジュゲートされた核酸分子は、配列番号2と同じヌクレオチド組成を有するが、ヌクレオチド配列は異なっている。即ち、コンジュゲートされた核酸分子は、5A、3C、及び2Gを含む二本鎖部分の1つの鎖を含む。好ましくは、コンジュゲートされた核酸分子の配列は、5'-CpG-3'ジヌクレオチドを何ら含まない。
【0089】
二本鎖核酸部分は、特にこれらを分解から保護するために、修飾されたホスホジエステル骨格を有するヌクレオチドを含み得る。好ましくは、修飾されたホスホジエステル骨格を有するヌクレオチドは、核酸分子の二本鎖部分の遊離末端に位置している。一態様では、核酸分子の二本鎖部分の遊離末端に位置するヌクレオチドの1個、2個、又は3個のヌクレオチド間連結は、好ましくは両方の鎖の上に、修飾されたホスホジエステル骨格を有する。或いは、好ましいコンジュゲートされた核酸分子は、鎖の末端に3'-3'ヌクレオチド連結を有する。
【0090】
特定の実施形態では、核酸分子は以下の式
【0091】
【化11】
【0092】
を含むと定義することができ、
ここで、下線を付したヌクレオチドNのヌクレオチド間連結は修飾されたホスホジエステル骨格を有する。
【0093】
例えば、本発明による分子の二本鎖核酸部分又は核酸は、以下の配列(配列番号1)
【0094】
【化12】
【0095】
を含むか、これで構成され、
ここで下線を付したヌクレオチドNのヌクレオチド間連結は修飾されたホスホジエステル骨格を有する。
【0096】
別の特定の態様では、本発明による分子の二本鎖核酸部分又は核酸は、以下の配列(配列番号2)
【0097】
【化13】
【0098】
を含むか、これで構成され、
ここで下線を付したヌクレオチドNのヌクレオチド間連結は修飾されたホスホジエステル骨格を有する。
【0099】
修飾されたホスホジエステル骨格はホスホロチオエート骨格であってよい。
【0100】
修飾されたホスホジエステル連結がホスホロチオエート連結である場合には、分子は以下の
【0101】
【化14】
【0102】
であってよい。
【0103】
代替の態様では、二本鎖核酸部分は、分子の3'末端の最後の2つのヌクレオチドにおいて、分子の5'末端の最後の2つのヌクレオチドにおいて、又は分子の3'末端及び5'末端の両方の最後の2つのヌクレオチドにおいて、1つの修飾されたホスホジエステル連結、例えばホスホロチオエート連結を含み得る。
【0104】
例えば、二本鎖核酸部分は、以下の
【0105】
【化15】
【0106】
から選択される部分を含むか、これで構成される。
【0107】
修飾されたホスホジエステル連結がホスホロチオエート連結である場合には、分子は以下の
【0108】
【化16】
【0109】
であってよい。
【0110】
別の代替の態様では、二本鎖核酸部分は、分子の3'末端の最後の3つのヌクレオチドにおいて、又は分子の5'末端の最後の4つのヌクレオチドにおいて、3つの修飾されたホスホジエステル連結、例えばホスホロチオエート連結を含み得る。
【0111】
例えば、二本鎖核酸部分は、以下の
【0112】
【化17】
【0113】
から選択される部分を含むか、これで構成される。
【0114】
修飾されたホスホジエステル連結がホスホロチオエート連結である場合には、分子は以下の
【0115】
【化18】
【0116】
であってよい。
【0117】
二本鎖核酸部分は、本質的にデオキシリボヌクレオチドを含む。しかし、これはいくつかのリボヌクレオチド又は修飾されたデオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチドを含んでもよい。一態様では、二本鎖核酸部分は、デオキシリボヌクレオチドのみを含む。別の態様では、二本鎖核酸部分は、デオキシリボヌクレオチド及び核酸分子のヌクレオチドの総数に対して30、20、15、若しくは10%までのリボヌクレオチド又は修飾されたデオキシリボヌクレオチドを含む。特定の態様では、二本鎖核酸部分は、デオキシリボヌクレオチドのみを含む第1の鎖と、リボヌクレオチド又は修飾されたデオキシリボヌクレオチドを含む相補鎖とを含む。一実施形態によれば、コンジュゲートされた核酸分子は、リボースの2位に対応する修飾を含む。例えば、コンジュゲートされた核酸分子は、例えば2'-デオキシ、2'-デオキシ-2'-フルオロ、2'-O-メチル、2'-O-メトキシエチル(2'-O-MOE)、2'-O-アミノプロピル(2'-O-AP)、2'-O-ジメチルアミノエチル(2'-O-DMAE)、2'-O-ジメチルアミノプロピル(2'-O-DAMP)、2'-O-ジメチルアミノエチロキシエチル(2'-O-DMAEOE)、若しくは2'-O-N-メチルアセトアミド(2'-O-NMA)修飾を有する少なくとも1つの2'-修飾ヌクレオチド、又は例えば2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(FANA)を含み得る。しかし、そのような2'-修飾ヌクレオチドは、好ましくは鎖の5'又は3'末端に位置しない。
【0118】
特定の態様では、コンジュゲートされた核酸分子は、少なくとも1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(FANA)を有する。FANAはDNA様構造をとり、対象とするタンパク質によるコンジュゲートされた核酸分子の変更されない認識をもたらす。FANAは以下のピリミジン2'-フルオロアラビノヌクレオシド及びプリン2'-フルオロアラビノヌクレオシドを含む。
9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン (2'-FANA-A)、
9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)グアニン (2'-FANA-G)、
1-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)シトシン (2'-FANA-C)、
1-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)ウラシル (2'-FANA-U)。
【0119】
例えば、本発明による分子の二本鎖核酸部分又は核酸は、以下の配列(配列番号1)
【0120】
【化19】
【0121】
を含むか、これで構成され、
ここでUは1-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)ウラシル(2'-F-ANA-U)又は2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノウリジンである。特に、二本鎖核酸部分は以下の配列(配列番号1)
【0122】
【化20】
【0123】
及びより具体的には
【0124】
【化21】
【0125】
を含むか、これで構成される。
【0126】
別の例では、本発明による分子の二本鎖核酸部分又は核酸は、以下の配列(配列番号1)
【0127】
【化22】
【0128】
を含むか、これで構成され、
ここでGは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノグアノシンである。特に、二本鎖核酸部分は、以下の配列(配列番号1)
【0129】
【化23】
【0130】
及びより具体的には
【0131】
【化24】
【0132】
を含むか、これで構成される。
【0133】
別の例では、本発明による分子の二本鎖核酸部分又は核酸は、以下の配列(配列番号1)
【0134】
【化25】
【0135】
を含むか、これで構成され、
ここでCは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノシチジンである。特に、二本鎖核酸部分は、以下の配列(配列番号1)
【0136】
【化26】
【0137】
及びより具体的には
【0138】
【化27】
【0139】
を含むか、これで構成される。
【0140】
ループ
ループは、二本鎖部分の第1の鎖の5'末端及び相補鎖の3'末端、並びに任意選択でエンドサイトーシスを容易にする分子に連結されている。
【0141】
ループは好ましくは10~100原子、好ましくは15~25原子の鎖を含む。
【0142】
ループは2~10個のヌクレオチドを、好ましくは3、4、又は5個のヌクレオチドを含み得る。非ヌクレオチドループは、塩基不含ヌクレオチド、ポリエーテル、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド、炭水化物、脂質、ポリ炭化水素、又はその他のポリマー化合物(例えば2~10個のエチレングリコール単位、好ましくは4、5、6、7、又は8個のエチレングリコール単位を有するもののようなオリゴエチレングリコール類)を非包括的に含む。一実施形態では、ループは、N-(5-ヒドロキシメチル-6-ホスホヘキシル)-11-(3-(6-ホスホヘキシルチオ)スクシンイミド))ウンデカミド、1,3-ビス-[5-ヒドロキシペンチルアミド]プロピル-2-(6-ホスホヘキシル)、ヘキサエチレングリコール、テトラデオキシチミジレート(T4)、1,19-ビス(ホスホ)-8-ヒドラザ-2-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカン、及び2,19-ビス(ホスホル)-8-ヒドラザ-1-ヒドロキシ-4-オキサ-9-オキソ-ノナデカンからなる群から選択することができる。
【0143】
エンドサイトーシスを容易にする分子は、任意選択でリンカーを介してループにコンジュゲートされる。エンドサイトーシスを容易にする分子をループに共有結合させるために、当技術で既知の任意のリンカーを使用することができる。例えば、WO09/126933は、38~45頁に便利なリンカーの広範な総説を提供している。リンカーは非包括的に脂肪族鎖、ポリエーテル、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド、炭水化物、脂質、ポリ炭化水素、又はその他のポリマー化合物(例えば2~10個のエチレングリコール単位、好ましくは3、4、5、6、7、又は8個のエチレングリコール単位、更により好ましくは6個のエチレングリコール単位を有するもののようなオリゴエチレングリコール類)であってよく、並びに化学的若しくは酵素的に切断され得る任意の結合、例えばジスルフィド連結、保護されたジスルフィド連結、酸に不安定な連結(例えばヒドラゾン連結)、エステル連結、オルソエステル連結、ホスホンアミド連結、生体切断可能なペプチド連結、アゾ連結、又はアルデヒド連結を組み込んでもよい。そのような切断可能なリンカーは、WO2007/040469の12~14頁、WO2008/022309の22~28頁に詳細に記載されている。
【0144】
エンドサイトーシスを容易にする分子は、当業者には既知の任意の手段により、任意選択でオリゴエチレングリコールスペーサーを介して、ループに結合される。
【0145】
特定の実施形態では、エンドサイトーシスを容易にする分子とループとの間のリンカーは、C(O)-NH-(CH2-CH2-O)n又はNH-C(O)-(CH2-CH2-O)nを含み、ここでnは1~10の整数であり、好ましくは、nは3、4、5、及び6からなる群から選択される。極めて特定の実施形態では、リンカーはCO-NH-(CH2-CH2-O)4(カルボキサミドトリエチレングリコール)である。
【0146】
別の特定の実施形態では、エンドサイトーシスを容易にする分子とループ分子との間のリンカーは、ジアルキルジスルフィド{例えば(CH2)p-S-S-(CH2)q、ここでp及びqは1~10、好ましくは3~8の整数、例えば6}である。
【0147】
別の特定の実施形態では、ループはオリゴヌクレオチドの固相合成に適合するように開発されてきた。したがって、核酸分子の合成の間にループを組み込み、それにより合成を容易にし、そのコストを低減させることが可能である。
【0148】
ループは以下の式
-O-P(X)OH-O-{[(CH2)2-O]g-P(X)OH-O}r-K-O-P(X)OH-O-{[(CH2)2-O]h-P(X)OH-O-}s (I)
(ここでr及びsは独立に整数0又は1であり、g及びhは独立に1~7の整数であり、合計g+hは4~7であり、
Kは
【0149】
【化28】
【0150】
であり、
i、j、k、及びlは独立に0~6、好ましくは1~3の整数である)、
又は
-O-P(X)OH-O-[(CH2)d-C(O)-NH]b-CHR-[C(O)-NH-(CH2)e]c-O-P(X)OH-O- (II)
(ここでb及びcは独立に0~4の整数であり、合計b+cは3~7であり、
d及びeは独立に1~3、好ましくは1~2の整数であり、
Rは-Lf-Jである)
のうち1つから選択される構造を有することができ、
ここでXはO又はSであり、Lはリンカー、好ましくは直鎖状アルキレン及び/又は任意選択でアミノ、アミド、及びオキソから選択される1つ若しくはいくつかの基によって中断されているオリゴエチレングリコールであり、fは整数0又は1であり、Jはエンドサイトーシスを容易にする分子又はHである。
【0151】
JがHの場合、分子はエンドサイトーシスを容易にする分子にコンジュゲートされた分子を調製するためのシントンとして用いることができる。或いは、分子はエンドサイトーシスを容易にする分子にコンジュゲートすることなく、薬物として用いることもできる。
【0152】
特定の例では、分子は
【0153】
【化29】
【0154】
であり得る。
【0155】
第1の態様では、ループは式(I)
-O-P(X)OH-O-{[(CH2)2-O]g-P(X)OH-O}r-K-O-P(X)OH-O-{[(CH2)2-O]h-P(X)OH-O-}s (I)
による構造を有する。
【0156】
XはO又はSである。Xは式(I)における-O-P(X)OH-O-のそれぞれの出現ごとにOとSの間で変動し得る。好ましくは、XはSである。
【0157】
合計g+hは好ましくは5~7、特に6である。したがって、rが0であれば、hは5~7であってよい(sを1として)。gが1であれば、hは4~6であってよい(r及びsを1として)。gが2であれば、hは3~5であってよい(r及びsを1として)。gが3であれば、hは2~4であってよい(r及びsを1として)。gが4であれば、hは1~3であってよい(r及びsを1として)。gが5であれば、hは1~2であってよい(rを1、sを0又は1として)。又はgが6又は7であれば、sは0である(rを1として)。
【0158】
好ましくは、i及びjは同じ整数であってよく、異なっていてもよい。i及びjは整数1、2、3、4、5、又は6から選択され、好ましくは1、2、又は3、更に詳細には1又は2、特に1であってよい。
【0159】
好ましくは、k及びlは同じ整数である。一態様では、k及びlは1、2、又は3から選択される整数であり、好ましくは1又は2、より好ましくは2である。
【0160】
したがって、Kは
【0161】
【化30】
【0162】
であってよい。
【0163】
好ましい態様では、Kは
【0164】
【化31】
【0165】
である。
【0166】
一特定態様では、ループは式(I)
-O-P(X)OH-O-{[(CH2)2-O]g-P(X)OH-O}r-K-O-P(X)OH-O-{[(CH2)2-O]h-P(X)OH-O-}s (I)
を有し、
ここでXはSであり、rは1であり、gは6であり、sは0であり、Kは
【0167】
【化32】
【0168】
である。
【0169】
特定の態様では、fは1であり、L-Jは-C(O)-(CH2)m-NH-[C(O)]t-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-[C(O)]v-J又は-C(O)-(CH2)m-NH-[C(O)-CH2-O]t-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-[C(O)]v-Jであり、mは0~10の整数であり、nは0~15の整数であり、pは0~4の整数であり、t及びvは整数0又は1であり、t及びvのうち少なくとも1つは1である。
【0170】
より詳細には、fは1であり、L-Jは-C(O)-(CH2)m-NH-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-J、-C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-J、C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-J、-C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-J及び-C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-Jからなる群において選択され、mは0~10の整数であり、nは0~15の整数であり、pは0~3の整数である。
【0171】
任意選択で、fは1であり、L-Jは-C(O)-(CH2)5-NH-[(CH2)2-O]3-13-CH2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-[(CH2)2-O]3-13-CH2-J、C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]3-13-CH2-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-[(CH2)2-O]3-13-CH2-C(O)-J及び-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]3-13-CH2-C(O)-J又は-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-Jからなる群において選択される。
【0172】
例えば、fは1であってよく、L-Jは-C(O)-(CH2)5-NH-[(CH2)2-O]3-(CH2)2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-[(CH2)2-O]3-(CH2)3-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]5-CH2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]9-CH2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]13-CH2-C(O)-J、又は-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-Jからなる群から選択される。
【0173】
極めて特定の態様では、fは1であり、L-Jは-C(O)-(CH2)m-NH-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-Jであり、mは0~10、好ましくは4~6の整数、特に5であり、nは0~6の整数であり、pは0~2の整数である。特定の態様では、mは5であり、n及びpは0である。別の特定の態様では、mは5であり、nは3であり、pは2である。
【0174】
本開示の第2の態様では、ループは式(II)
-O-P(X)OH-O-[(CH2)d-C(O)-NH]b-CHR-[C(O)-NH-(CH2)e]c-O-P(X)OH-O- (II)
による構造を有し、
XはO又はSであり、b及びcは独立に0~4の整数であり、合計b+cは3~7であり、d及びeは独立に1~3、好ましくは1~2の整数であり、
Rは-(CH2)1-5-C(O)-NH-Lf-J又は-(CH2)1-5-NH-C(O)-Lf-Jであり、
Lはリンカー、好ましくは直鎖状アルキレン又はオリゴエチレングリコールであり、fは整数0又は1であり、Jはエンドサイトーシスを容易にする分子である。
【0175】
b及び/又はcが2以上の場合、d及びeは[(CH2)d-C(O)-NH]又は-[C(O)-NH-(CH2)e]のそれぞれの出現ごとに異なってよい。
【0176】
一態様では、d及びeが2の場合には、合計b+cは3~5、特に4である。例えば、bが0でcは3~5、bが1でcは2~4、bが2でcは1~3、又はbが3~5でcは0である。
【0177】
一態様では、d及びeが1の場合には、合計b+cは4~7、特に5又は6である。例えば、bが0でcは3~6、bが1でcは2~5、bが2でcは1~4、又はbが3~6でcは0である。
【0178】
一態様では、b、c、d、及びeは、ループが10~100原子、好ましくは15~25原子を含むように選択される。
【0179】
非包括的な例のリストでは、ループは以下の1つであってよい。
-O-P(X)OH-O-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-CHR-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-O-P(X)OH-O-
-O-P(X)OH-O-(CH2)2-C(O)-NH-CHR-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-O-P(X)OH-O-
-O-P(X)OH-O-CHR-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-O-P(X)OH-O-
-O-P(X)OH-O-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-CHR-C(O)-NH-(CH2)2-O-P(X)OH-O-
-O-P(X)OH-O-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-CHR-O-P(X)OH-O-
-O-P(X)OH-O-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)-C(O)-NH-CHR-C(O)-NH-(CH2)-C(O)-NH-(CH2)2-O-P(X)OH-O-
-O-P(X)OH-O-(CH2)-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-CHR-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)-O-P(X)OH-O-、又は
-O-P(X)OH-O-(CH2)-C(O)-NH-(CH2)-C(O)-NH-CHR-C(O)-NH-(CH2)-C(O)-NH-(CH2)-O-P(X)OH-O-
【0180】
特定の態様では、ループは以下の
-O-P(X)OH-O-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-CHR-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-O-P(X)OH-O-
であってよく、
ここでRはLf-Jであり、Lはリンカー、好ましくは直鎖状アルキレン及び/又は任意選択でアミノ、アミド、及びオキソから選択される1つ若しくはいくつかの基によって中断されているオリゴエチレングリコールであり、fは整数0又は1である。
【0181】
好ましくは、XはSである。
【0182】
Lは-(CH2)1-5-C(O)-J、好ましくは-CH2-C(O)-J又は-(CH2)2-C(O)-Jであってよい。
【0183】
或いは、L-Jは-(CH2)4-NH-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-Jであってよく、nは0~6の整数、pは0~2の整数である。特定の態様では、nは3であり、pは2である。
【0184】
エンドサイトーシスを容易にする分子
本発明の核酸分子は、任意選択で上の式でJと称されるエンドサイトーシスを容易にする分子にコンジュゲートされる。したがって、第1の態様では、Jはエンドサイトーシスを容易にする分子である。代替の態様では、Jは水素である。
【0185】
エンドサイトーシスを容易にする分子は、コレステロール、一本鎖又は二本鎖の脂肪酸、又は葉酸及び葉酸誘導体若しくはトランスフェリン等の細胞受容体を標的として受容体媒介エンドサイトーシスを可能にするリガンド等の親油性分子であってよい(Goldsteinら、Ann. Rev. Cell Biol. 1985 1:1~39頁; Leamon & Lowe、Proc Natl Acad Sci USA. 1991, 88: 5572~5576頁)。脂肪酸は飽和又は不飽和でよく、C4~C28、好ましくはC14~C22、更により好ましくはC18、例えばオレイン酸又はステアリン酸であってよい。特に、脂肪酸はオクタデシル又はジオレオイルであってよい。脂肪酸は、グリセロール、ホスファチジルコリン、又はエタノールアミン等の適切なリンカーで連結され、又はコンジュゲートされた核酸分子に結合するために用いられるリンカーによって一緒に連結された、二重鎖形態として見出され得る。本明細書で使用される場合、用語「フォレート」は葉酸塩及び葉酸塩誘導体を意味し、プトレイン酸誘導体及び類似物を含む。本発明における使用に適した葉酸の類似物及び誘導体は、それだけに限らないが、葉酸代謝拮抗薬、ジヒドロフォレート、テトラヒドロフォレート、フォリン酸、プテロポリグルタミン酸、1-デアザ-、3-デアザ-、5-デアザ-、8-デアザ-、10-デアザ-、1,5-デアザ-、5,10-ジデアザ-、8,10-ジデアザ-、及び5,8-ジデアザ-フォレート、葉酸代謝拮抗薬、並びにプトレイン酸誘導体を含む。さらなるフォレート類似物は、US2004/242582に記載されている。
【0186】
したがって、エンドサイトーシスを容易にする分子は、一本鎖又は二本鎖の脂肪酸、葉酸塩、及びコレステロールからなる群から選択され得る。より好ましくは、エンドサイトーシスを容易にする分子は、ジオレオイル、オクタデシル、葉酸、及びコレステロールからなる群から選択される。最も好ましい実施形態では、エンドサイトーシスを容易にする分子は、コレステロールである。
【0187】
したがって、1つの好ましい実施形態では、コンジュゲートされた核酸分子(OX401とも称する)は、以下の式
【0188】
【化33】
【0189】
を有し、
ここでヌクレオチド間連結「s」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指す。
【0190】
別の特定の実施形態では、コンジュゲートされた核酸分子(OX402とも称する)は以下の式
【0191】
【化34】
【0192】
を有し、
ここでヌクレオチド間連結「s」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指す。
【0193】
更に別の好ましい実施形態では、コンジュゲートされた核酸分子は以下の式
【0194】
【化35】
【0195】
を有し、
ここでヌクレオチド間連結「s」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指す。
【0196】
他の好ましい実施形態では、コンジュゲートされた核酸分子は以下の式
- OX-406
【0197】
【化36】
【0198】
- OX407
【0199】
【化37】
【0200】
- OX-408
【0201】
【化38】
【0202】
- OX-410
【0203】
【化39】
【0204】
及び
- OX-411
【0205】
【化40】
【0206】
のいずれかを有し、
ここでヌクレオチド間連結「s」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、イタリックのUは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノウリジンであり、イタリックのGは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノグアノシンであり、イタリックのCは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノシチジンである。
【0207】
或いは、エンドサイトーシスを容易にする分子は、トコフェロール、ガラクトース及びマンノース等の糖及びそのオリゴサッカライド、RGD及びボンベシン等のペプチド、並びにインテグリン等のタンパク質であってもよい。
【0208】
シグマ-2受容体リガンド
特定の態様では、エンドサイトーシスを容易にする分子は、がん細胞を標的とするために選択される。即ち、これはがん細胞内で特異的に発現され、又は正常細胞と比較してがん細胞内で過剰発現される受容体のリガンドであるように選ばれる。
【0209】
このような関係で、エンドサイトーシスを容易にする分子は、シグマ-2受容体(σ2R)のリガンドであってよい。
【0210】
用語「シグマ-2受容体(σ2R)」は、悪性がん細胞(例えば乳がん、卵巣がん、肺がん、脳腫瘍、膀胱がん、結腸がん、及び黒色腫)において高度に発現していることが見出されたシグマ受容体サブタイプを指す。シグマ-2受容体は、P450タンパク質と最も一般的に会合している脂質ラフトに位置するチトクローム関連タンパク質であり、PGRMC1複合体、EGFR、mTOR、カスパーゼ、及び種々のイオンチャネルに結合している。
【0211】
用語「シグマ-2受容体(σ2R)リガンド」は、高い選択性及び親和性でσ2Rに結合し、次いでエンドサイトーシスによって内在化される合成又は非合成のアゴニスト化合物を指す。σ2Rアゴニストは腫瘍細胞の増殖を阻害し、がん細胞におけるアポトーシスを誘導する。
【0212】
1つの好ましい態様では、シグマ-2受容体(σ2R)リガンドは、アザビシクロノナン類似体、より詳細には以下の式
【0213】
【化41】
【0214】
特に
【0215】
【化42】
【0216】
を含む、Vangveravongら、Bioorg. Med. Chem (2006)に記載されたN-置換-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-3α-イルカルバメート類似体であり、
ここでnは1~20の整数である。任意選択で、nは1~10、2~9、3~8、4~7、又は5~6の整数である。
【0217】
第1の特定の態様では、σ2Rリガンドは以下の式
【0218】
【化43】
【0219】
を有し、
ここでnは1~20の整数である。任意選択で、nは1~10、2~9、3~8、4~7、又は5~6の整数である。
【0220】
特定の実施形態では、σ2RリガンドはSV119(n=6)と称され、以下の式
【0221】
【化44】
【0222】
を有する。
【0223】
更に別の特定の実施形態では、σ2RリガンドはSW43(n=10)と称され、以下の式
【0224】
【化45】
【0225】
を有する。
【0226】
別の実施形態では、σ2RリガンドはN-置換-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-3α-イルカルバメート類似体であり、以下の式
【0227】
【化46】
【0228】
を有し、
ここでnは1~20の整数であり、mは1~10の整数である。
【0229】
特定の実施形態では、σ2Rリガンドは以下の式
【0230】
【化47】
【0231】
を有する。
【0232】
σ2Rリガンドはカルボキシ基又はアミノ基によって、任意選択でリンカーを介して、ループを通して核酸分子にコンジュゲートされる。
【0233】
したがって、1つの好ましい実施形態では、コンジュゲートされた核酸分子は以下の式
【0234】
【化48】
【0235】
を有し、
ここでヌクレオチド間連結「s」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指す。
【0236】
したがって、別の好ましい実施形態では、コンジュゲートされた核酸分子は以下の式
【0237】
【化49】
【0238】
を有し、
ここでヌクレオチド間連結「s」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指す。
【0239】
したがって、更に別の好ましい実施形態では、コンジュゲートされた核酸分子(OX405とも称される)は以下の式
【0240】
【化50】
【0241】
を有し、
ここでヌクレオチド間連結「s」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指す。
【0242】
更に別の好ましい実施形態では、コンジュゲートされた核酸分子(OX407とも称する)は以下の式
【0243】
【化51】
【0244】
を有し、
ここでヌクレオチド間連結「s」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指す。
【0245】
他の好ましい実施形態では、コンジュゲートされた核酸分子は以下の式
【0246】
【化52】
【0247】
(上記化合物はOX403とも称される)
【0248】
【化53】
【0249】
(上記化合物はOX404とも称される)
のいずれかを有し、
ここでヌクレオチド間連結「s」は、ホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指す。
【0250】
核酸分子の治療上の使用
本発明によるコンジュゲートされた核酸分子は、PARPを活性化することができる。これらはがん細胞内における小核及び細胞毒性の増大をもたらす。これらはがん細胞に対する特異性を示し、それにより副作用が排除され又は限定され得る。更に、がん細胞における小核の特異的な増大は、STING経路の早期の活性化をもたらす。
【0251】
したがって、本発明によるコンジュゲートされた核酸分子は、薬物として、特にがんの治療のために用いることができる。
【0252】
したがって、本発明は、薬物としての使用のための本発明によるコンジュゲートされた核酸分子に関する。本発明は更に、特にがんの治療における使用のための本発明によるコンジュゲートされた核酸分子を含む医薬組成物に関する。
【0253】
本明細書で意図する医薬組成物は、活性成分に加えて薬学的に許容される担体を含み得る。用語「薬学的に許容される担体」は、活性成分の生物学的活性の効果を妨害せず、これが投与される宿主に対して有毒でない任意の担体(例えば支持体、物質、溶媒、その他)を包含することを意味する。例えば、非経口投与のためには、活性化合物は生理食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン、及びリンゲル液等のビヒクル中で注射用の単位用量形態で処方され得る。
【0254】
医薬組成物は、薬学的に適合する溶媒中の溶液として、又は好適な薬学的溶媒若しくはビヒクル中のエマルジョン、懸濁液、若しくは分散液として、又は当技術で既知の方法で固体ビヒクルを含むピル、錠剤、若しくはカプセルとして、処方することができる。経口投与に適した本発明の製剤は、それぞれが所定量の活性成分を含むカプセル、サシェット、錠剤、又はトローチとしての不連続単位の形態で、粉末又は顆粒の形態で、水性液体若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液の形態で、又は水中油エマルジョン若しくは油中水エマルジョンの形態であってよい。非経口投与に適した製剤は、好ましくは受容者の血液と等張の、活性成分の無菌の油性若しくは水性の調製物を含むことが好都合である。そのような製剤はそれぞれ、例えば安定剤、抗酸化剤、結合剤、染料、乳化剤、又は香味物質等の他の薬学的に適合した非毒性の補助剤を含むこともできる。本発明の製剤は、そのため薬学的に許容される担体及び任意選択で他の治療用成分と併せて、活性成分を含む。担体は、製剤の他の成分と適合し、その受容者に対して有害でないという意味で、「許容され」なければならない。医薬組成物は、好適な無菌溶液の注射若しくは静脈内注入によって、又は消化管による経口用量として、有利に適用される。これらの化学療法剤の大部分の安全かつ効果的な投与の方法は、当業者には既知である。更に、これらの投与は標準的な文献に記載されている。
【0255】
本発明に記載した医薬組成物及び製品、キット、又は組み合わせた調製物は、対象におけるがんの治療のために用いることができる。
【0256】
用語「がん」及び「がん性」は、典型的には制御されない細胞の増殖によって特徴付けられる哺乳動物における生理学的状態を指し又は記述する。がんの例は、それだけに限らないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫(髄芽腫及び網膜芽腫を含む)、肉腫(脂肪肉腫及び滑膜細胞肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍(カルシノイド腫瘍、ガストリノーマ、及びアイレット細胞がんを含む)、中皮腫、神経鞘腫(聴神経腫を含む)、髄膜腫、腺癌、黒色腫、及び白血病又はリンパ性悪性疾患を含む固形腫瘍及び血液がんを含む。そのようながんのより詳細な例は、扁平細胞がん(例えば上皮扁平細胞がん)、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺癌、及び肺の扁平癌腫を含む肺がん、腹膜のがん、肝細胞がん、胃腸がんを含む消化器がん、膵がん、膠芽腫、神経芽腫、頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、尿道がん、ヘパトーマ、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、内膜又は子宮の癌腫、唾液腺癌腫、腎臓又は腎のがん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝癌、肛門癌、陰茎癌、精巣がん、食道がん、胆管の腫瘍、並びに頭頚部がんを含む。さらなるがんの適応症を本明細書に開示する。
【0257】
特定の実施形態では、「がん」は、例えばERCC1若しくはATMの欠如から選択されるNAD+の枯渇を有する腫瘍細胞、又はIDHの変異を有するがん細胞を指す。
【0258】
極めて特定の実施形態では、NAD+の合成の欠如を示す腫瘍を有する患者、特にNAD+の枯渇を有する腫瘍を有する患者について、臨床的な層化又はより良いレスポンダーの選択が可能である。
【0259】
最適の用量を決定することは一般に、本発明の治療の何らかのリスク又は有害な副作用に対して治療による利点のレベルのバランスをとることを含む。選択される用量レベルは、それだけに限らないが、コンジュゲートされた核酸分子の活性、投与の経路、投与の時間、化合物の排泄の速度、治療の継続期間、組み合わせて用いられる他の薬物、化合物、及び/又は材料、並びに患者の年齢、性別、体重、病態、一般的健康状態、及び以前の病歴を含む種々の因子に依存することになる。コンジュゲートされた核酸分子の量及び投与の経路は究極的には医師の裁量によるが、一般に用量は所望の効果を達成する作用部位における局所濃度を達成することになる。
【0260】
本明細書で開示するコンジュゲートされた核酸分子の投与経路は、経口、非経口、静脈内、腫瘍内、皮下、頭蓋内、動脈内、局所、直腸内、経皮、皮内、経鼻、筋肉内、腹腔内、骨内、その他であってよい。好ましい実施形態では、コンジュゲートされた核酸分子は、治療すべき腫瘍の部位付近に投与又は注射すべきである。
【0261】
例えば、コンジュゲートされた核酸分子の効果的な量は、0.01~1000mg、例えば好ましくは0.1~100mgであってよい。もちろん、用量及びレジメンは、化学療法及び/又は放射線療法のレジメンを考慮して、当業者によって適合させることができる。
【0262】
本発明によるコンジュゲートされた核酸分子は、さらなる治療剤と組み合わせて用いることができる。さらなる治療剤は、例えば免疫チェックポイント阻害剤等の免疫調節剤、養子細胞移入(ACT)を含むT細胞ベースのがん免疫療法、キメラ抗原受容体細胞(CAR-T細胞)等の遺伝子改変されたT細胞若しくは操作されたT細胞、従来の化学療法、放射線療法、若しくは血管新生阻害剤、HDAC阻害剤(ベリノスタット等)、又は標的免疫毒素であってよい。
【0263】
免疫調節剤/免疫チェックポイント阻害剤(ICI)との組合せ
本発明者らは、STING経路の活性化及びPD-L1の発現の増大によって示唆される、コンジュゲートされた核酸分子と、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)、好ましくはPD-1/PD-L1経路の阻害剤等の免疫調節剤との組合せの高い抗腫瘍治療有効性を実証した。即ち本発明は、本発明のコンジュゲートされた核酸分子を、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)等の免疫調節剤とともに、その前に、又はその後に、患者に投与する組合せ治療を提供する。
【0264】
したがって、本発明は、より詳細にはがんの治療における使用のための、本発明のコンジュゲートされた核酸分子及び免疫調節剤を含む医薬組成物に関する。本発明はまた、同時の、個別の、又は連続的な使用のための、より詳細にはがんの治療における使用のための、組み合わされた調製物としての本発明のコンジュゲートされた核酸分子及び免疫調節剤を含む製品に関する。好ましい実施形態では、免疫調節剤はPD-1/PD-L1経路の阻害剤である。
【0265】
本発明はまた、本発明のコンジュゲートされた核酸分子を1つ又は複数の免疫調節剤(例えば共刺激性分子の活性化剤又は免疫チェックポイント分子の阻害剤のうち1つ又は複数)と組み合わせて、それを必要とする患者に投与することによる、がんを治療する方法を提供する。好ましい実施形態では、免疫調節剤はPD-1/PD-L1経路の阻害剤である。
【0266】
共刺激性分子の活性化剤
ある特定の実施形態では、免疫調節剤は共刺激性分子の活性化剤である。一実施形態では、共刺激性分子のアゴニストは、OX40、CD2、CD27、CDS、ICAM-1、LFA-1 (CD11a/CD18)、ICOS (CD278)、4-1 BB (CD137)、GITR、CD30、CD40、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3又はCD83リガンドのアゴニスト(例えばアゴニスト性抗体若しくはその抗原結合性断片、又は可溶性融合物)から選択される。
【0267】
免疫チェックポイント分子の阻害剤
ある特定の実施形態では、免疫調節剤は免疫チェックポイント分子の阻害剤である。一実施形態では、免疫調節剤はPD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、TIM-3、LAG-3、NKG2D、NKG2L、KIR、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4及び/又はTGFRベータの阻害剤である。一実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤はPD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3若しくはCTLA-4、又はそれらの任意の組合せを阻害する。用語「阻害」又は「阻害剤」は、ある種のパラメーター、所与の分子、例えば免疫チェックポイント阻害剤の例えば活性の低減を含む。例えば、活性、例えばPD-1又はPDーL1の活性の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、又はそれ以上の阻害がこの用語に含まれる。即ち、阻害は100%である必要はない。
【0268】
阻害分子の阻害はDNA、RNA、又はタンパク質のレベルで実施することができる。一部の実施形態では、阻害性核酸(例えばdsRNA、siRNA、又はshRNA)を用いて阻害性分子の発現を阻害することができる。他の実施形態では、阻害性シグナルの阻害剤は、ポリペプチド、例えば可溶性リガンド(例えばPD-1 Ig又はCTLA-4 Ig)、又は阻害性分子に結合する抗体若しくはその抗原結合性断片、例えばPD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、TIM-3、LAG-3、NKG2D、NKG2L、KIR VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4及び/若しくはTGFRベータ、又はそれらの組合せに結合する抗体又はその断片(本明細書で「抗体分子」とも称する)である。
【0269】
一実施形態では、抗体分子は完全な抗体又はその断片(例えばFab、F(ab')2、Fv、又は一本鎖Fv断片(scFv))である。更に他の実施形態では、抗体分子は、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、及びIgEの重鎖定常領域から選択され、特に例えばIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4の重鎖定常領域から選択され、より詳細にはIgG1又はIgG4(例えばヒトIgG1又はIgG4)の重鎖定常領域から選択される重鎖定常領域(Fc)を有する。一実施形態では、重鎖定常領域はヒトIgG1又はヒトIgG4である。一実施形態では、定常領域は、抗体分子の特性を改変するように(例えばFc受容体との結合、抗体のグリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞の機能、又は補体の機能のうち1つ又は複数を増大させ又は低減させるように)変化し、例えば変異する。ある特定の実施形態では、抗体分子は二重特異性又は多重特異性抗体分子の形態である。
【0270】
PD-1阻害剤
一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートされた核酸分子はPD-1阻害剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、PDR001 (Novartis社)、Nivolumab (Bristol-Myers Squibb社)、Pembrolizumab (Merck & Co社)、Pidilizumab (CureTech社)、MEDI0680 (Medimmune社)、REGN2810 (Regeneron社)、TSR-042 (Tesaro社)、PF-06801591 (Pfizer社)、BGB-A317 (Beigene社)、BGB-108 (Beigene社)、INCSHR1210 (Incyte社)、又はAMP-224 (Amplimmune社)から選択される。
【0271】
例示的なPD-1阻害剤
一部の実施形態では、抗PD-1抗体はNivolumab (CAS Registry Number: 946414-94-4)である。Nivolumabの代替の名称はMDX-1106、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558又はOPDIVO(登録商標)を含む。NivolumabはPD1を特異的にブロックする完全にヒトのIgG4モノクローナル抗体である。Nivolumab(クローン5C4)及びその他のPD1と特異的に結合するヒトモノクローナル抗体は米国特許第8,008,449号及びPCT公開番号WO2006/121168に開示されており、これらは参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0272】
他の実施形態では、抗PD-1抗体はPembrolizumabである。Pembrolizumab (商品名KEYTRUDA、以前はLambrolizumab、Merck 3745、MK-3475又はSCH-900475としても知られている)は、PD-1に結合するヒト化IgG4モノクローナル抗体である。Pembrolizumabは、例えばHamid, O.ら、(2013) New England Journal of Medicine 369 (2): 134~44頁、PCT公開番号WO 2009/114335、及び米国特許第8,354,509号に開示されており、これらは参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0273】
一部の実施形態では、抗PD-1抗体はPidilizumabである。Pidilizumab (CT-011; CureTech社)はPD1に結合するヒト化IgG1 kモノクローナル抗体である。Pidilizumab及びその他のヒト化抗PD-1モノクローナル抗体はPCT公開番号WO2009/101611に開示されており、これは参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0274】
その他の抗PD-1抗体は米国特許第8,609,089号、米国公開第2010028330号、及び/又は米国公開第20120114649号に開示されており、これらは参照により全体として本明細書に組み込まれる。その他の抗PD-1抗体はAMP514 (Amplimmune社)を含む。
【0275】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子は、AMP-514としても知られるMEDI0680 (Medimmune社)である。MEDI0680及びその他の抗PD-1抗体は米国特許第9,205,148号及びWO 2012/145493に公開されており、これらは参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0276】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子はREGN2810(Regeneron社)である。
【0277】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子はPF-06801591(Pfizer社)である。
【0278】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子はBGB-A317又はBGB-108 (Beigene社)である。
【0279】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子は、INCSHR01210又はSHR-1210としても知られるINCSHR1210 (Incyte社)である。
【0280】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子はANB011としても知られるTSR-042(Tesaro社)である。
【0281】
更に知られている抗PD-1抗体は、WO2015/112800、WO2016/092419、WO2015/085847、WO2014/179664、WO2014/194302、WO2014/209804、WO2015/200119、米国特許第8,735,553号、米国特許第7,488,802号、米国特許第8,927,697号、米国特許第8,993,731号、及び米国特許第9,102,727号に記載されているものを含み、これらは参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0282】
一実施形態では、抗PD-1抗体は、本明細書に記載した抗PD-1抗体の1つと同じPD-1上のエピトープとの結合について競合し、及び/又はこれに結合する抗体である。
【0283】
一実施形態では、PD-1阻害剤は、例えば参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第8,907,053号に記載されたPD-1シグナル伝達経路を阻害するペプチドである。一部の実施形態では、PD-1阻害剤はイムノアドヘシン(例えば定常領域(例えば免疫グロブリン配列のFc領域)に融合したPD-L1又はPD-L2の細胞外又はPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、例えば参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2010/027827及びWO2011/066342に開示されているAMP-224 (B7-DCIg (Amplimmune社)である。
【0284】
PD-L1阻害剤
ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤はPD-L1の阻害剤である。一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートされた核酸分子は、PD-L1阻害剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、PD-L1阻害剤はFAZ053 (Novartis社)、Atezolizumab (Genentech/Roche社)、Avelumab (Merck Serono社及びPfizer社)、Durvalumab (Medlmmune社/AstraZeneca社)、又はBMS-936559 (Bristol-Myers Squibb社)から選択される。
【0285】
例示的なPD-L1阻害剤
一実施形態では、PD-L1阻害剤は抗PD-L1抗体分子である。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子は、MSB0010718Cとしても知られるAvelumab (Merck Serono社及びPfizer社)である。Avelumab及びその他の抗PD-L1抗体は、参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2013/079174に開示されている。
【0286】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子は、MEDI4736としても知られるDurvalumab (Medlmmune社/AstraZeneca社)である。Durvalumab及びその他の抗PD-L1抗体は、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第8,779,108号に記載されている。
【0287】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子は、MDX-1105又は12A4としても知られるBMS-936559 (Bristol-Myers Squibb社)である。BMS-936559及びその他の抗PD-L1抗体は、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第7,943,743号及びWO2015/081158に開示されている。
【0288】
更に知られている抗PD-L1抗体は、例えば参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2015/181342、WO2014/100079、WO2016/000619、WO2014/022758、WO2014/055897、WO2015/061668、WO2013/079174、WO2012/145493、WO2015/112805、WO2015/109124、WO2015/195163、米国特許第8,168,179号、米国特許第8,552,154号、米国特許第8,460,927号、及び米国特許第9,175,082号に記載されているものを含む。
【0289】
一実施形態では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載した抗PD-L1抗体の1つと同じPD-L1上のエピトープとの結合について競合し、及び/又はこれに結合する抗体である。
【0290】
LAG-3阻害剤
ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤はLAG-3の阻害剤である。一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートされた核酸分子はLAG-3阻害剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、LAG-3阻害剤は、LAG525 (Novartis社)、BMS-986016 (Bristol-Myers Squibb社)、又はTSR-033 (Tesaro社)から選択される。
【0291】
例示的なLAG-3阻害剤
一部の実施形態では、LAG-3阻害剤は抗LAG-3抗体分子である。一実施形態では、LAG-3阻害剤は、BMS986016としても知られるBMS-986016 (Bristol-Myers Squibb社)である。BMS-986016及びその他の抗LAG-3抗体は、参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2015/116539及び米国特許第9,505,839号に開示されている。
【0292】
一実施形態では、抗LAG-3抗体は、TSR-033 (Tesaro社)である。
【0293】
一実施形態では、抗LAG-3抗体分子は、IMP731又はGSK2831781 (GSK社及びPrima BioMed社)である。IMP731及びその他の抗LAG-3抗体は、参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2008/132601及び米国特許第9,244,059号に開示されている。
【0294】
更に知られている抗LAG-3抗体は、例えば参照により全体として本明細書に組み込まれるWO 2008/132601、WO2010/019570、WO2014/140180、WO2015/116539、WO2015/200119、WO2016/028672、米国特許第9,244,059号、米国特許第9,505,839号に記載されているものを含む。
【0295】
TIM-3阻害剤
ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤はTIM-3の阻害剤である。一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートされた核酸分子は、TIM-3阻害剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、TIM-3阻害剤は、MGB453 (Novartis社)又はTSR-022 (Tesaro社)である。
【0296】
例示的なTIM-3阻害剤
一実施形態では、抗TIM-3抗体分子はTSR-022 (AnaptysBio社/Tesaro社)である。
【0297】
一実施形態では、抗TIM-3抗体は、APE5137又はAPE5121である。APE5137、APE512、及びその他の抗TIM-3抗体は、参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2016/161270に開示されている。
【0298】
更に知られている抗TIM-3抗体は、例えば参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2016/111947、WO2016/071448、WO2016/144803、米国特許第8,552,156号、米国特許第8,841,418号、及び米国特許第9,163,087号に記載されているものを含む。
【0299】
NKG2D阻害剤
ある特定の実施形態では、NKD2D/NKG2DL経路の阻害剤は、NKG2Dの阻害剤である。一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートされた核酸分子は、NKG2D阻害剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、NKG2Dの阻害剤は、抗NKG2D抗体NNC0142-0002 (NN 8555、IPH2301又はJNJ-4500としても知られている)等の抗NKG-2D抗体分子である。
【0300】
例示的なNKG2D阻害剤
一実施形態では、抗NKG-2D抗体分子は、参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2009/077483及び米国特許第7,879,985号に記載されているNNC0142-0002(Novo Nordisk社)である。
【0301】
別の実施形態では、抗NKG2D抗体分子は、参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2018/035330に開示されているJNJ-64304500 (Janssen社)である。
【0302】
一部の実施形態では、抗NKG2D抗体は、米国特許第7,879,985号に記載されているように産生され、単離され、構造的及び機能的に特徴解析されたヒトモノクローナル抗体16F16、16F31、MS、及び21F2である。更に知られている抗NKG2D抗体は、例えば参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2009/077483、WO2010/017103、WO2017/081190、WO2018/035330及びWO2018/148447に記載されているものを含む。
【0303】
一部の他の実施形態では、NKG2D阻害剤はイムノアドヘシン(例えば定常領域(例えば参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2010/080124、WO2017/083545及びWO2017/083612に開示されている免疫グロブリン配列のFc領域)に融合したNKG2DLの細胞外又はNKG2D結合部分を含むイムノアドヘシン)である。
【0304】
NKG2DL阻害剤
一部の実施形態では、NKG2D/NKG2DL経路の阻害剤は、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、又はRAET1ファミリーのメンバー等のNKG2DLの阻害剤である。一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートされた核酸分子はNKG2DL阻害剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、NKG2DL阻害剤は抗MICA/B抗体等の抗NKG2DL抗体分子である。
【0305】
例示的なMICA/MICB阻害剤
一実施形態では、抗MICA/B抗体分子は、参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2017/157895に開示されているIPH4301 (Innate Pharma社)である。
【0306】
更に知られている抗MICA/B抗体は、参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2014/140904及びWO2018/073648に記載されているものを含む。
【0307】
KIR阻害剤
ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤はKIRの阻害剤である。一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートされた核酸分子は、KIR阻害剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、KIR阻害剤はLirilumabである(以前はBMS-986015又はIPH2102とも称された)。
【0308】
例示的なKIR阻害剤
一実施形態では、抗KIR抗体分子は、参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2008/084106及びWO2014/055648に開示されているLirilumab (Innate Pharma社/AstraZeneca社)である。
【0309】
更に知られている抗KIR抗体は、例えば参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2005/003168、WO2005/009465、WO2006/072625、WO2006/072626、WO2007/042573、WO2008/084106、WO2010/065939、WO2012/071411及びWO2012/160448に記載されているものを含む。
【0310】
従来の化学療法、放射線療法、血管新生阻害剤、又はヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDACi)との組合せ
本発明はまた、本発明のコンジュゲートされた核酸分子が、手術若しくは放射線治療と同時に、その前に、若しくはその後に用いられ、又は従来の化学療法、放射線療法、若しくは血管新生阻害剤、HDAC阻害剤(ベリノスタット等)、若しくは標的免疫毒素とともに、その前に、若しくはその後に患者に投与される組合せ治療を提供する。
【0311】
本発明はまた、本発明のコンジュゲートされた核酸分子を、従来の化学療法、放射線療法、若しくは血管新生阻害剤、又はHDACi、又は標的免疫毒素と組み合わせて、それを必要とする患者に投与することによる、がんを治療する方法を提供する。本発明はまた、より詳細にはがんの治療における使用のための、本発明のコンジュゲートされた核酸分子及び従来の化学療法、放射線療法、若しくは血管新生阻害剤、又はHDACi、又は標的免疫毒素を含む医薬組成物に関する。本発明はまた、同時の、分離された、若しくは連続的な使用のための、より詳細にはがんの治療における使用のための組み合わせた調製物としての、本発明のコンジュゲートされた核酸分子及び従来の化学療法、放射線療法、若しくは血管新生阻害剤、又はHDACi、又は標的免疫毒素を含む製品に関する。
【0312】
本発明のさらなる態様及び利点を以下の実験の部に開示する。これは説明的なものであり、本出願の範囲を限定しないとみなされたい。本明細書でいくつかの参照文献を引用するが、これらの引用した参照文献のそれぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0313】
(実施例1)
例示的な核酸分子の合成
(実施例1-1)
OX401の合成
OX401の合成は、固相ホスホロアミダイト化学(dA(Bz); dC(Bz); dG(Ibu); dT (-))、HEG及びChol6ホスホロアミダイトを用いる標準的な固相DNA合成に基づいた。
【0314】
脱トリチル化工程はトルエン中3%のDCAで実施し、酸化はピリジン/水(9/1)中50mMのヨウ素で実施し、硫化はピリジン/ACN(1/1)中50mMのDDTTで実施した。キャッピングは2,6-ルチジン/ACN(40/60)中20%のAc2OとともにACN中20%のNMIで行なった。切断及び脱保護はそれぞれ、ホスフェート/チオホスフェート上のシアノエチル保護基を除去するために25分間、ACN中20%のジエチルアミンで、及び45℃で18時間、濃縮アンモニア水で実施した。
【0315】
粗溶液を調製用AEX-HPLCカラム(TSKゲルSuperQ 5PW20)に装荷した。次いで20体積%のアセトニトリルを含むpH12の臭化ナトリウムの塩勾配で溶出して精製を実施した。分画をプールした後、再生セルロース上のTFFによって脱塩を実施した。
【0316】
OX401の純度:AEX-HPLCにより91.8%、ESI-MSによる分子量:11046.5Da
HEGホスホロアミダイト(ヘキサエチレングリコールホスホロアミダイト)
【0317】
【化54】
【0318】
(No CLP-9765、ChemGenes Corp社)
【0319】
Chol6 ホスホロアミダイト
【0320】
【化55】
【0321】
(N° 51230、AM Chemicals社)
【0322】
(実施例1-2)
OX402の合成
合成、切断、及び脱保護の工程はOX401と同一である。
【0323】
粗溶液を調製用AEX-HPLCカラムに装荷した。次いで20体積%のアセトニトリルを含むpH8の臭化ナトリウムの塩勾配で溶出して精製を実施した。分画をプールした後、安定化セルロース上のSECによって脱塩を実施した。
【0324】
OX402の純度:AEX-HPLCにより92.2%、ESI-MSによる分子量:7340.7Da
【0325】
(実施例1-3)
骨格=OX499の合成
OX499の合成は、dC(Bz)及びNH2-C6ホスホロアミダイトの代わりにdC(Ac)を用いたことを除いて、OX401と同じプロトコルに基づいた。
【0326】
切断及び脱保護は、それぞれACN中20%のジエチルアミン及びAMA(NH3、メチルアミン)で実施した。
【0327】
粗溶液を最初に調製用AEX-HPLCカラムを用いてpH12で、次いでRP-HPLCによりpH7で精製した。分画をプールした後、安定化セルロース上のSECによって脱塩を実施した。
【0328】
OX499の純度:AEX-HPLCにより95.7%、ESI-MSによる分子量:10637.0Da
【0329】
(実施例1-4)
OX403の合成
OX499とカップリングする前に、最初にSV119(0.123mmol)を9単位(1.2eq)の活性化PEGとコンジュゲートさせた。最終のコンジュゲートされた化合物OX403を、RPカラムを用いて精製した。
【0330】
(実施例1-5)
OX404の合成
合成はOX403と同じ合成経路に従って実施した。
【0331】
(実施例1-6)
OX406の合成
合成、切断、脱保護、及び精製(AEX-HPLCカラム)の工程はOX401のものと同一である。
OX406の純度:AEX-HPLCにより96.5%、ESI-MSによる分子量:11054.3Da
【0332】
(実施例1-7)
OX407の合成
合成、切断、脱保護、及び精製(AEX-HPLCカラム)の工程はOX401のものと同一である。
OX407の純度:AEX-HPLCにより95.7%、ESI-MSによる分子量:10966.2Da
【0333】
(実施例1-8)
OX408の合成
合成、切断、脱保護、及び精製(AEX-HPLCカラム)の工程はOX401のものと同一である。
OX408の純度:AEX-HPLCにより88.4%、ESI-MSによる分子量:10982.2Da
【0334】
(実施例1-9)
OX410の合成
合成、切断、脱保護、及び精製の工程はOX401のものと同一である。
粗溶液を最初に調製用AEX-HPLCカラムで、次いでRP-HPLCカラムで精製した。
OX410の純度:AEX-HPLCにより83.6%、ESI-MSによる分子量:11051.3Da
【0335】
(実施例1-10)
(OX411)の合成
合成、切断、脱保護、及び精製の工程はOX401のものと同一である。
粗溶液を最初に調製用AEX-HPLCカラムで、次いでRP-HPLCカラムで精製した。
OX411の純度:AEX-HPLCにより83.1%、ESI-MSによる分子量:11051.3Da
【0336】
(実施例2)
OX401はPARPを超活性化するが、DNA-PKを活性化しない。
材料及び方法
細胞培養
トリプルネガティブの乳がん細胞株MDA-MB-231をATCCから購入し、供給者の指示書に従って増殖させた。手短に述べれば、10%のウシ胎児血清(FBS)を添加したL15 Leibovitz培地中でMDA-MB-231細胞を増殖させ、CO2 0%、37℃の湿潤雰囲気中で維持した。
【0337】
ELISA-抗PAR化
ポリ(ADP-リボース)(PAR)ポリマーを検出するために、サンドイッチELISAを用いた。1mMのPMSF(フェニルメタンスルホニルフルオリド、Sigma社)を添加したTissue Protein Extraction (T-PER) Buffer (Thermo Scientific社)中で細胞を煮沸した。次いでELISAアッセイの前に細胞抽出物をSuperblock Buffer (Thermo Scientific社)中に希釈した。96ウェルのポリスチレンプレート(Thermo Scientific社、Pierce White Opaque)を、捕捉抗体(4μg/mlのマウス抗PAR、Trevigen社、4335)を含む100μl/ウェルの炭酸塩緩衝液(1.5g/lの炭酸ナトリウムNa2CO3、3g/lのNaHCO3)で、4℃で一夜コートし、その後、プレートをPBST溶液で洗浄した。次いでウェルをSuperblockで、37℃で1時間、オーバーコートした。次に10μlの細胞抽出液を65μLのSuperblockに加え、各ウェルにトリプリケートで添加し、4℃で一夜インキュベートし、その後でプレートをPBST溶液で洗浄した。次に検出抗体(ウサギ抗PAR、Trevigen 4336、PBS/2%ミルク/1%マウス血清中で1/1000に希釈)を加え、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、二次抗体HRPコンジュゲート抗ウサギ(Abcam社、ab97085、PBS/2%ミルク/1%マウス血清中で1/5000に希釈)を各ウェルに1時間添加した。読み出しのため、75μlの酵素基質(Supersignal Pico、Pierce社)を各ウェルに加えた。直ちに化学発光読み取りを決定した。
【0338】
ELISA-抗γH2AX
ヒストンH2AXのリン酸化形(γH2AX)を検出するために、サンドイッチELISAを用いた。1mMのPMSF(フェニルメタンスルホニルフルオリド、Sigma社)を添加したTissue Protein Extraction (T-PER) Buffer (Thermo Scientific社)中で細胞を煮沸した。次いでELISAアッセイの前に細胞抽出物をSuperblock Buffer (Thermo Scientific社)中に希釈した。96ウェルのポリスチレンプレート(Thermo Scientific社、Pierce White Opaque)を、捕捉抗体(4μg/mlのマウス抗γH2AX、Millipore社05-636)を含む100μl/ウェルの炭酸塩緩衝液(1.5g/lの炭酸ナトリウムNa2CO3、3g/lのNaHCO3)で、4℃で一夜コートし、その後、プレートをPBST溶液で洗浄した。次いでウェルをSuperblockで、37℃で1時間、オーバーコートした。次に50μlの細胞抽出液を各ウェルにトリプリケートで添加し、25℃で2時間インキュベートし、その後でプレートをPBST溶液で洗浄した。次に検出抗体(ウサギ抗H2AX、Abcam ab11175、PBS/2%ミルク中で1/500に希釈)を加え、25℃で1時間インキュベートした。洗浄後、抗ウサギ二次抗体HRPコンジュゲート(Abcam社、ab97085、PBS/2%ミルク中で1/20000に希釈)を各ウェルに25℃で1時間添加した。読み出しのため、75μlの酵素基質(Supersignal Pico、Pierce社)を各ウェルに加えた。直ちに化学発光読み取りを決定した。
【0339】
統計解析
全ての統計解析は、両側スチューデントt検定で実施した。
【0340】
結果
本発明者らは、最初にDNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)及びポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)の活性をモニターすることによって、MDA-MB-231細胞におけるOX401の活性を解析した。両方の酵素はAsiDNA(商標)DNA部分との相互作用の後で活性化されてそれらの標的を改変し、これは二本鎖切断を模倣している。AsiDNAで処理したMDA-MB-231細胞は、処理後にそれぞれDNA-PK及びPARPの活性化によるヒストンH2AXの用量依存性リン酸化(γH2AX)及びポリ(ADP-リボース)(PAR)ポリマーの集積(PAR化)を示した(図1A図1B)。OX401で処理した細胞はAsiDNA(商標)と比較してDNA-PK酵素と相互作用せず、これを活性化しなかった(図1A)。しかし、OX401はPARP酵素を高度に超活性化し、AsiDNA(商標)より2倍高い用量依存性PAR化を誘導した(図1B)。即ち、本発明者らはOX401によって誘導される偽のDNA損傷シグナル伝達(PAR化)によって示されるMDA-MB-231細胞における標的関与を観察した。
【0341】
(実施例3)
OX401は特異的抗腫瘍活性を呈する。
材料及び方法
細胞培養
細胞培養はトリプルネガティブの乳がん細胞株MDA-MB-231、組織球性リンパ腫細胞株U937、及び非腫瘍乳腺細胞株MCF-10Aを用いて実施した。細胞は供給者の指示書に従って増殖させた。CO2 0%で維持したMDA-MB-231細胞株を除いて、細胞株はCO2 5%、37℃の湿潤雰囲気中で維持した。
【0342】
薬物処理及び細胞生存の測定
MDA-MB-231(5×103細胞/ウェル)、MCF-10A(5×103細胞/ウェル)、及びU937(2×104細胞/ウェル)を96ウェルプレートに播種し、+37℃で24時間インキュベートして、4~7日間、増加する濃度の薬物を添加した。薬物への曝露の後、XTTアッセイ(Sigma Aldrich社)を用いて細胞の生存率を測定した。手短に述べれば、細胞培養液を含む各ウェルにXTT溶液を直接加え、細胞を37℃で5時間インキュベートし、マイクロプレートリーダー(BMG Fluostar、Galaxy社)を用いて490nm及び690nmの吸光度を読み取った。細胞の生存率は、生存している処理済み細胞の生存している模擬処理細胞に対する比として計算した。IC50(これは細胞の50%が生存する用量を表わす)は、各細胞株について生存パーセンテージを薬物濃度のLogに対してプロットすることにより、GraphPad Prismソフトウェア(バージョン5.04)を用いる非線形回帰モデルによって計算した。
【0343】
結果
OX401はAsiDNA(商標)と比較してPARP標的関与のみを誘導し、DNA-PKを誘導しないので、これが興味ある抗腫瘍活性を呈することを確認することが望まれた。腫瘍(MDA-MB-231、U937)及び非腫瘍(MCF-10A)細胞を、AsiDNA(黒色)又はOX401(暗灰色)で処理し、処理後4日(U937)又は7日(MDA-MB-231及びMCF-10A)で、XTTアッセイを用いて生存率を測定した(図2)。AsiDNA(商標)の3分の1と低いOX401のIC50値によって示されるように、OX401はAsiDNA(商標)より高い抗腫瘍活性を呈した(図2A)。MCF-10A非腫瘍細胞はOX401に対して感受性がなく、OX401の腫瘍特異性が強調された(図2B)。非腫瘍細胞に対して何ら影響がないことから、正常組織におけるOX401治療の非毒性及び高い安全性が予測される。
【0344】
(実施例4)
OX401は腫瘍免疫応答を誘導する。
材料及び方法
細胞培養
細胞培養はトリプルネガティブの乳がん細胞株MDA-MB-231及び非腫瘍乳腺細胞株MCF-10Aを用いて実施した。細胞は供給者の指示書に従って増殖させた。CO2 0%で維持したMDA-MB-231細胞株を除いて、細胞株はCO2 5%、37℃の湿潤雰囲気中で維持した。
【0345】
OX401又はAsiDNA(商標)による長期処理
6ウェルの培養プレートに適切な密度で細胞を播種し、37℃で24時間インキュベートした後、OX401及びAsiDNA(商標)を5μMの濃度で添加した。処理後7日目に細胞を収穫し、洗浄して薬物を除去し、7日間の回復のために再び6ウェルの培養プレートに播種した。1週間の処理/1週間の放出が1つの処理サイクルを構成する。各処理サイクルの後、さらなる解析を実施した(小核の定量、ウェスタンブロット、ELISA、フローサイトメトリー)。
【0346】
ウェスタンブロット解析
OX401又はAsiDNA(商標)(5μM)で1サイクル処理した細胞を収穫し、適切な密度で播種し、次いで48時間再処理した。次に、プロテアーゼ阻害剤及びホスファターゼ阻害剤を含むRIPA緩衝液(150mMのNaCl、50mMのトリス-塩基、5mMのEDTA、1%のNP-40、0.25%のデオキシコレート、pH 7.4) (Roche Applied Science社、Germany)中で細胞を溶解した。タンパク質濃度はBCAタンパク質アッセイ(Thermo Fisher Scientific社、USA)を用いて測定した。SDS-PAGE(12%ゲル)を用いて等しい量(15μg)のタンパク質を電気泳動し、ニトロセルロース膜に移し、Tween 1%のTBS中5%のスキムミルクで室温1時間ブロックし、次いで一次抗体と4℃で一夜インキュベートした。TBS/Tween 1%で洗浄した後、膜を二次抗体と室温で1時間インキュベートした。結合した抗体を、Enhanced Chemiluminescenceウェスタンブロット基質キット(Ozyme社、USA)を用いて検出した。ウェスタンブロットは以下の抗体を用いて行なった。一次モノクローナルウサギ抗sting(希釈1/1000、CST-13647)、一次モノクローナルマウス抗PD-L1(希釈1/1000、abcam社ab238697)、一次モノクローナルマウス抗βアクチン(希釈1/10,000、Sigma社A1978)、二次ヤギ抗ウサギIgG、HRPコンジュゲート(希釈1/2000、Millipore社12-348)、及び二次ヤギ抗マウスIgG、HRPコンジュゲート(希釈1/2000、Millipore社、12-349)。
【0347】
細胞表面PD-L1を検出するためのフローサイトメトリー
OX401又はAsiDNA(商標)(5μM)で1サイクル処理した細胞を収穫し、適切な密度で6ウェルプレートに播種し、次いで48時間再処理した。次に細胞をPBSで洗浄し、抗PD-L1モノクローナル抗体Alexa Fluor 488コンジュゲート(CST-14772)と4℃で1時間インキュベートした。次に細胞をPBSで洗浄し、Guava easyCyte(Merck社)を用いて蛍光強度を決定した。データはFlowJoソフトウェア(Tree Star、CA)を用いて解析した。
【0348】
小核の定量
小核は染色体の切断又は紡錘体の損傷に起因する。小核は細胞分裂の後に娘細胞の核で生じ、細胞質の中で単一又は多重の小核を形成する。OX401又はAsiDNA(商標)(5μM)で1サイクル処理した細胞を、ペトリ皿のカバースリップの上で増殖させた。次いで細胞をPFA(4%)で固定し、Triton(0.5%)で透徹し、DAPI(0.5mg/mL)で染色した。小核の頻度は、小核を有する細胞の細胞の総数に対するパーセンテージとして推定した。各条件について少なくとも1000個の細胞を解析した。
【0349】
CCL5ケモカインを検出するためのELISA
OX401又はAsiDNA(商標)(5μM)で1サイクル処理した細胞を収穫し、適切な密度で6ウェルプレートに播種し、次いで48時間再処理した。次いで細胞培養上清を2,000×gで10分遠心分離してデブリを除去した。キット(Human SimpleStep ELISA Kit、Abcam社ab174446)に含まれる96ウェルのプレートストリップは、直ちに使用可能で供給される。それぞれの上清50μlを50μlの抗体カクテルとともにデュプリケートで各ウェルに添加し、400rpmに設定したプレートシェーカーの上で、室温で1時間インキュベートした。その後、プレートを1Xの洗浄緩衝液PTで洗浄した。次いで100μlのTMB基質を各ウェルに加え、400rpmに設定したプレートシェーカーの上、暗中で10分、インキュベートした。次いでプレートシェーカー上で1分、100μlの停止液を各ウェルに加え、450nmにおける吸光度を決定した。
【0350】
CXCL10(IP-10)ケモカインを検出するためのELISA
OX401又はAsiDNA(商標)(5μM)で1サイクル処理した細胞を収穫し、適切な密度で6ウェルプレートに播種し、次いで48時間再処理した。次いで細胞培養上清を1,000×gで10分遠心分離してデブリを除去した。キット(IP-10 (CXCL10) Human ELISA Kit、Abcam社ab83700)に含まれる96ウェルのプレートストリップは、直ちに使用可能で供給される。それぞれの上清100μlをデュプリケートで各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートし、プレートを1×洗浄緩衝液PTで洗浄した。次いで50μlのビオチニル化抗IP-10を各ウェルに加えて1時間インキュベートした後、プレートを1Xの洗浄緩衝液PTで洗浄した。次いで100μlの1Xストレプトアビジン-HRP溶液を各ウェルに加え、30分間インキュベートし、1Xの洗浄緩衝液PTで洗浄した。次いで100μlのChromogen TMB基質溶液を各ウェルに加え、暗所で10~20分インキュベートした。100μlの停止剤を各ウェルに加え、450nmにおける吸光度を直ちに決定した。
【0351】
統計解析
全ての統計解析は、両側スチューデントt検定で実施した。
【0352】
結果
OX401は二本鎖DNAであるので、これが先天免疫回路によって認識されるかという疑いがあった。インターフェロン遺伝子の刺激剤(STING)は、外因性及び内因性のサイトゾルDNAの両方を感知し、I型インターフェロン及び炎症促進性サイトカイン応答を誘発するサイトゾル性受容体である。したがって、本発明者らはOX401で処理した細胞におけるSTING経路の活性化を評価した。興味深いことに、OX401はSTING経路によって外因性DNAとは認識されず、ケモカインの直接誘導も、インターフェロンサイトカインの直接誘導も、誘発しなかった(データは示していない)。
【0353】
OX401による短期間の処理は抗腫瘍免疫応答を直接誘導しなかったので、本発明者らは長期の処理が修復されなかったDNA構造の集積によって間接的にSTING依存性免疫応答を誘発し得るとの仮説を立てた。この仮説と一致することに、OX401によって長期(1週間の処理/1週間の放出の1サイクル)に処理した細胞は、未処理の細胞又はAsiDNA(商標)処理した細胞と比較して、小核を有する細胞のパーセントの有意な2倍の増加を示した(図3A)。小核の増加とSTING経路の活性化との間のリンクを検証するために、本発明者らはCCL5及びCXCL10標的ケモカインの放出を解析した。興味あることに、OX401で長期に処理した細胞は、未処理の細胞より2倍多いCCL5及び1.5倍多いCXCL10を分泌した(図3B)。AsiDNAで処理した細胞はCCL5又はCXCL10のより多い分泌を示さなかった(図3B)。腫瘍細胞におけるSTING経路の活性化の帰結の中には、おそらく免疫システムに対して保護する反応であるPD-L1(プログラム死リガンド1)の上方制御がある。本発明者らは、長期に処理した細胞における全PD-L1又は細胞表面随伴PD-L1のレベルを解析した。OX401で処理した細胞は、AsiDNA(商標)で処理した細胞の親細胞と比較して、全レベルのPD-L1(図3C)及び膜随伴PD-L1(図3D)の高い増加を示した。
【0354】
総合すると、これらの結果は、OX401が小核によって誘導される集積によって間接的なSTING経路の活性化を誘発し、抗PD-L1療法との併合治療のために道を拓くことを実証している。
【0355】
(実施例6)
薬学的特性/PK/PD実験
マウスにおける静脈内(iv)経路による用量2mgのOX401の注射は、HPLC法によって測定して8μMの最大血漿中濃度(CMAX)をもたらす。予期しないことに、このCmaxはAsiDNAを用いる同じ実験条件で得られたCmaxより40倍高い。
【0356】
(実施例7)
OX402はPARPを超活性化する-より小さいがOX401と同様に活性である。
材料及び方法
細胞培養
トリプルネガティブの乳がん細胞株MDA-MB-231をATCCから購入し、供給者の指示書に従って増殖させた。手短に述べれば、10%のウシ胎児血清(FBS)を添加したL15 Leibovitz培地中でMDA-MB-231細胞を増殖させ、CO2 0%、37℃の湿潤雰囲気中で維持した。
【0357】
ELISA 抗PAR化
ポリ(ADP-リボース)(PAR)ポリマーを検出するために、サンドイッチELISAを用いた。1mMのPMSF(フェニルメタンスルホニルフルオリド、Sigma社)を添加したTissue Protein Extraction (T-PER) Buffer (Thermo Scientific社)中で細胞を煮沸した。次いでELISAアッセイの前に細胞抽出物をSuperblock Buffer (Thermo Scientific社)中に希釈した。96ウェルのポリスチレンプレート(Thermo Scientific社、Pierce White Opaque)を、捕捉抗体(4μg/mlのマウス抗PAR、Trevigen社4335)を含む100μl/ウェルの炭酸塩緩衝液(1.5g/lの炭酸ナトリウムNa2CO3、3g/lのNaHCO3)で、4℃で一夜コートし、その後、プレートをPBST溶液で洗浄した。次いでウェルをSuperblockで、37℃で1時間、オーバーコートした。次に10μlの細胞抽出液を65μLのSuperblockに加え、各ウェルにトリプリケートで添加し、4℃で一夜インキュベートし、その後でプレートをPBST溶液で洗浄した。次に検出抗体(ウサギ抗PAR、Trevigen社4336、PBS/2%ミルク/1%マウス血清中で1/1000に希釈)を加え、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、二次抗体HRPコンジュゲート抗ウサギ(Abcam社、ab97085、PBS/2%ミルク/1%マウス血清中で1/5000に希釈)を各ウェルに1時間添加した。読み出しのため、75μlの酵素基質(Supersignal Pico、Pierce社)を各ウェルに加えた。直ちに化学発光読み取りを決定した。
【0358】
結果
本発明者らはまた、PARPを活性化し、偽の損傷シグナル伝達を誘導(PAR化)するために必要な最小の配列長さを解析した。MDA-MB-231細胞を10塩基対(bp)の分子であるOX402で24時間処理し、抗PAR化ELISAアッセイを用いてPARPの活性化をモニターした。OX402で処理したMDA-MB-231細胞は、PARPの関与及び活性化によって惹起される用量依存性PAR化を示した(図4)。即ち、10bpの分子はPARPをハイジャックして活性化するために十分である。
【0359】
(実施例8)
OX401は細胞内NAD+の枯渇を誘導する。
PARPタンパク質は高い親和性でDSBに結合する。結合すると、PARPは自己「PAR化」され、PAR化と称されるポリ(ADP-リボース) (PAR)のポリマーの付加によって他の標的タンパク質を活性化する。OX401によって処理したMDA-MB-231細胞及びMRC5細胞におけるPARP活性化の速度を、タンパク質のPAR化をモニタリングすることによって研究した。
【0360】
材料及び方法
細胞培養
細胞培養はトリプルネガティブの乳がん細胞株MDA-MB-231及び非腫瘍MRC5初代肺線維芽細胞を用いて実施した。全ての細胞株はATCCから購入し、MDA-MB-231(37℃、CO2 0%)を除いてCO2 5%、37℃の湿潤雰囲気中で供給者の指示書に従って増殖させた。
【0361】
OX401による細胞処理及び生存率の評価
MDA-MB-231細胞又はMRC5細胞を適切な密度で直径60mmの培養プレートに播種し、37℃で一夜インキュベートした。次いで細胞を5μMのOX401で48時間、7日、及び13日処理し、その後で洗浄し、収穫し、トリパンブルー(4%)細胞染色アッセイ及びさらなる解析のためにEve自動細胞カウンター(VWR社)を用いて計数した。
【0362】
NAD+の細胞内レベルの測定
NAD含量はNAD/NADH-Glo Assayキット(Promega社、G9071)を用い、メーカーの指示書に従って決定した。アッセイの原理はトランスフォーメーションの連続からなっている。最初に、NADサイクリング酵素がNAD+をNADHに改変し、これがリダクターゼによって基質をルシフェリンに変換するために用いられる。次に、ルシフェラーゼがルシフェリンを用いて光を生成する。そのため生成される発光は細胞内に存在するNAD+の量に比例する。
【0363】
手短に述べれば、OX401(5μM)で48時間、7日、又は13日処理したMDA-MB-231細胞又はMRC5細胞を収穫し、96ウェルプレートに播種した(5×104細胞/ウェル)。次いで1% DTAB緩衝液を用いて細胞を溶解し、25μLの0.4M HClを各ウェルに加え、60℃で15分及び室温で10分インキュベートした。25μLの検出試薬Trizma及び100μLのNAD検出試薬を各ウェルに加えた。得られる発光シグナルをマイクロプレートリーダー(Enspire(商標)Perkin-Almer社)で測定した。
【0364】
ウェスタンブロット解析
OX401(5μM)で48時間、7日、又は13日処理したMDA-MB-231細胞又はMRC5細胞を収穫し、プロテアーゼ及びホスファターゼの阻害剤を含むRIPA緩衝液(150mMのNaCl、50mMのトリス-塩基、5mMのEDTA、1%のNP-40、0.25%のデオキシコレート、pH 7.4) (Roche Applied Science社、Germany)中で細胞を溶解した。タンパク質濃度はBCAタンパク質アッセイ(Thermo Fisher Scientific社、USA)を用いて測定した。SDS-PAGE(12%ゲル)を用いて等しい量(15μg)のタンパク質を電気泳動し、ニトロセルロース膜に移し、Tween 1%のTBS中5%のスキムミルクで室温1時間ブロックし、次いで一次抗体と4℃で一夜インキュベートした。TBS/Tween 1%で洗浄した後、膜を二次抗体と室温で1時間インキュベートした。結合した抗体を、Enhanced Chemiluminescenceウェスタンブロット基質キット(Ozyme社、USA)を用いて検出した。ウェスタンブロットは以下の抗体を用いて行なった。抗Pan-ADPリボース結合試薬(希釈1/1,500、Millipore社、MABE1016)、一次モノクローナルマウス抗βアクチン(希釈1/10,000、Sigma社A1978)、二次ヤギ抗ウサギIgG、HRPコンジュゲート(希釈1/2,000、Millipore社12-348)、及び二次ヤギ抗マウスIgG、HRPコンジュゲート(希釈1/2,000、Millipore社、12-348)。
【0365】
結果
OX401(5μM)で処理したMDA-MB-231細胞は、処理後にPAR化されたタンパク質の集積を示し、処理後7日でpicとなった(図5A)。その標的タンパク質のPAR化のためのPARPによる基質としてニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)が用いられるので、OX401処理の後の細胞内NAD+レベルを分析した。OX401はMDA-MB-231細胞において高いNAD+の消費を誘導し、処理後7日で非処理細胞と比較して最大55%のNAD+レベルを示し、これは処理後13日まで維持された(図5B)。OX401によって誘導されるこの顕著なNAD+の欠如を前提として、本発明者らは、腫瘍細胞はOX401処理によってNAD+レベルのホメオスタシスを制御し維持することができず、細胞死に導かれるという仮説を立てた。この仮説を検定するため、本発明者らはOX401処理におけるMDA-MB-231細胞の生存率を解析した。OX401処理後48時間では細胞の生存率に対する影響は観察されず、これはその時点でのNAD+レベルの減少が極めて低いことと一致している。処理後7日及び13日で細胞の生存率に対する顕著な影響が観察され(非処理細胞と比較してそれぞれ57%及び32%の生存率)、細胞の生存率に対するNAD+レベルの重要性が検証された(図5C)。OX401で処理したMRC5非腫瘍細胞ではNAD+の枯渇も細胞死も観察されなかった(図5D図5F)ので、これらの影響の全ては腫瘍細胞に特異的であった。
【0366】
総合すると、これらの結果は、OX401による長期の処理がPARPの超活性化とNAD+の消費の両方を誘導することを示している。細胞の生存に適合する閾値未満へのNAD+レベルのOX401に誘導される急激な低下は、細胞のNAD+補充能力を凌駕し、大量の腫瘍細胞の死を誘発することになる。
【0367】
(実施例10)
OX401は相同組換え(HR)修復経路を撹乱する。
OX401はPARPを眩惑して偽のDNA損傷PAR化シグナル伝達を誘導するので、本発明者らはOX401がDNA損傷の急速な集積を誘発することができるかを試験した。
【0368】
相同組換え(HR)修復経路は、遺伝的安定性及び不変のDNA情報を維持するために必須の、過誤のない修復経路である。HRは、大量の細胞エネルギーを消費する、よく組織化された多ステップの機構である。OX401はNAD+の高い消費を誘発し、したがって腫瘍細胞における代謝の不均衡を誘導するので(実施例9)、本発明者らは、OX401がエネルギーに極めて依存してHR修復機構を撹乱し得るという仮説を立てた。この仮説を検定するため、HR修復の有効性(DSBの部位へのRad51タンパク質の動員を検出することによる)をOX401処理の後に解析した。
【0369】
材料及び方法
細胞培養
細胞培養はトリプルネガティブの乳がん細胞株MDA-MB-231を用いて実施した。完全L15 Leibovitz培地中で細胞を増殖させ、CO2 0%、37℃の湿潤雰囲気中で維持した。
【0370】
相同組換え経路活性の解析
免疫染色のため、細胞を5×105細胞の濃度でカバースリップ(Menzel社、Braunschweig、Germany)の上に播種し、37℃で1日インキュベートする。次いで細胞をオラパリブ(olaparib) (5μM)±OX401 (5μM)で処理する。処理後48時間で、細胞を4%のパラホルムアルデヒド/リン酸緩衝食塩液(PBS 1×)で20分固定し、0.5% Triton X-100で10分透徹し、2%ウシ血清アルブミン/PBS 1×でブロックし、一次抗体と4℃で1時間インキュベートする。全ての二次抗体は希釈1/200、室温(RT)、45分で用い、DNAは4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)で染色した。以下の抗体を用いた。一次モノクローナルマウス抗ホスホ-H2AX (Millipore社、Guyancourt、France)、抗Rad51ウサギ抗体(Merk Millipore社、Darmstadt、Allemagne)、Alexa-633にコンジュゲートした二次ヤギ抗マウスIgG(Molecular Probes社、Eugene、OR、USA)、及びAlexa-488にコンジュゲートした二次ヤギ抗ウサギIgG(Molecular Probes社、Eugene、OR、USA)。
【0371】
薬物によって誘導されたDNA損傷のフローサイトメトリーによる解析
細胞をOX401(5μM)又はオラパリブ(Olaparib) (5μM)で48時間処理し、次いで固定して、冷(-20℃)70%エタノールで少なくとも2時間透徹した。PBSで洗浄した後、細胞を更にPBS中0.5%のTritonで室温、20分透徹し、PBSで洗浄し、PBS中2%のBSA中の抗γ-H2AX抗体(05-636 Millipore社)とインキュベートした。PBSで洗浄した後、細胞をAlexa-Fluor 488コンジュゲート二次抗体とインキュベートした。Guava EasyCyteサイトメーター(Luminex社)を用いて蛍光強度を決定した。データはFlowJoソフトウェア(Tree Star社、CA)を用いて解析した。
【0372】
結果
予想されたように、オラパリブはMDA-MB-231細胞において処理の48時間後に二本鎖切断(DSB)の集積を誘導した。これはフローサイトメトリーによって測定されたヒストンH2AXの高いリン酸化(γH2AX)(図6A)、又は免疫蛍光によるγH2AX増殖巣の検出(図6B)によって示された。対照的に、OX401はγH2AX DSBバイオマーカーの増加を誘導せず、したがって直接DSB集積を誘発しなかった(図6A図6B)。
【0373】
オラパリブ(5μM)で48時間処理したMDA-MB-231細胞は、Rad51増殖巣と共局在化したγH2AX増殖巣の集積を示し、オラパリブによって誘導されたDSBのHR修復経路による修復を示した(図6C)。OX401(5μM)の添加は、オラパリブによって誘導されたRad51増殖巣の形成を顕著に低減させ(図6C図6D)、OX401がおそらく代謝の不均衡に続くエネルギーの枯渇によってHR経路を効果的に撹乱することを示している。
【0374】
(実施例11)
腫瘍細胞はOX401に対する耐性を獲得しない。
がんがCharles Darwinの自然淘汰の概念において説明された進化の過程に支配されていることは、現在受け入れられている。自然淘汰は、自然がある種の身体的属性、即ち表現型を子孫に伝えて、その生命体が環境により良く「適合」するように選択するプロセスである。標的治療の選択圧の下で、がん細胞の耐性集団は、治療によって誘導される新たな環境に適合した「耐性クローン」を生じるように絶えず進化する。腫瘍細胞は抗がん治療への耐性を発現するために大量のエネルギーを必要とすることもよく確立されている。OX401はNAD+の枯渇及び代謝の不均衡を誘導するので(実施例8)、本発明者らは細胞がOX401への耐性を発現するか否かを試験した。
【0375】
材料及び方法
細胞培養
細胞培養はリンパ腫細胞株U937を用いて実施した。10%のFBS及び1%のペニシリン/ストレプトマイシンを添加した完全RPMI培地中で細胞を増殖させ、CO2 5%、37℃の湿潤雰囲気中で維持した。この細胞株は、OX401とタラゾパリブ(talazoparib)の両方に対する高い感受性によって選択した。
【0376】
獲得耐性の選択
耐性を選択するための処理の繰り返しサイクルのため、U937細胞を適切な密度(2×105細胞/mL)で播種し、37℃で24時間培養した後、非処理細胞と比較して10~20%の生存率に対応する用量で薬物を添加した。耐性は、2μMのタラゾパリブ又は1.5μMのOX401の下で選択した。処理後4日目に細胞を収穫し、洗浄し、0.4%のトリパンブルー(Eve(商標)計数スライド、NanoEnTek社)で染色した後で計数した。計数後、細胞を適切な培養プレートに播種し、3~7日、回復させた(薬物なしの期間)。次に別の処理/回復のサイクルを4サイクルまで開始した。
【0377】
獲得耐性の不可逆性-細胞生存率の測定
獲得耐性の不可逆性を評価するため、U937親細胞及び耐性細胞を96ウェルプレートに播種(2×104細胞/ウェル)し、増加する濃度のタラゾパリブで4日間処理した。薬物への曝露の後、XTTアッセイ(Sigma Aldrich社)を用いて細胞の生存率を測定した。手短に述べれば、細胞培養液を含む各ウェルにXTT溶液を直接加え、細胞を37℃で5時間インキュベートした後、マイクロプレートリーダー(BMG Fluostar、Galaxy社)を用いて490nm及び690nmの吸光度を読み取った。細胞の生存率は、生存している処理済み細胞の生存している模擬処理細胞に対する比として計算した。IC50(これは細胞の50%が生存する用量を表わす)は、各細胞株について生存パーセンテージを薬物濃度のLogに対してプロットすることにより、GraphPad Prismソフトウェア(バージョン5.04)を用いる非線形回帰モデルによって計算した。
【0378】
結果
OX401又はタラゾパリブによる処理のサイクルをU937細胞について実施した。タラゾパリブで処理した細胞は増幅期間の間に回復した。一方、OX401で処理した細胞は薬物がない増幅期間の間に増殖しなかった(図7A)。タラゾパリブで処理した細胞は処理サイクルの間に獲得耐性を発現し、細胞の生存率は第1サイクルの後の10%から処理の第4サイクル(処理開始後33日)後の生存率50%超まで発展した(p<0.01) (図7B)。タラゾパリブに対する不可逆的耐性状態を評価するため、耐性細胞を増加する用量のタラゾパリブに供し、親細胞と比較したそれらの感受性を解析した。タラゾパリブに感受性の親細胞は2μMと低いIC50を示した。Tal1、Tal2、及びTal3の耐性集団は4μMを超える高いIC50を示した(図7C)。
【0379】
(実施例12)
OX401は抗腫瘍免疫応答を増幅する。
以前の実験(図3)で、本発明者らはOX401による長期の処理がCCL5及びCXCL10ケモカインの分泌の増加を伴って、小核によって誘導されるSTING経路の活性化を呈することを示した。これらの抗腫瘍免疫効果の効果を試験するため、腫瘍細胞と新たに単離したT細胞との共培養を実施し、T細胞によって誘導される細胞毒性効果を評価した。
【0380】
材料及び方法
細胞培養
細胞培養はトリプルネガティブの乳がん細胞株MDA-MB-231及び頸部腫瘍細胞株HeLaを用いて実施した。細胞はATCCから購入し、供給者の指示書に従って増殖させた。細胞はCO2 5%、37℃の湿潤雰囲気中で維持した。
【0381】
PBMCの単離
健常ドナーのバフィーコートはEFS血液センター(Paris、France)から購入した。EasySep Direct Human PBMC Isolationキット(19654、Stemcell社、France)を用い、メーカーのプロトコルに従ってPBMCを単離した。単離したPBMCを凍結培地(10%のDMSO及び90%のFBS)中で5×107細胞/mlの濃度に調節し、これから1mlのアリコートを凍結バイアルに分注して、必要になるまで液体窒素中、-196℃で保存した。
【0382】
PBMCからTリンパ球の単離
EasySep Human T cell Isolationキット(17951、Stemcell社、France)を用い、メーカーのプロトコルに従ってPBMCからTリンパ球を単離した。単離したT細胞を106細胞/mlの濃度でImmunoCult-XF T細胞増殖培地(10981、Stemcell社、France)中に懸濁し、さらなる実験の前に、ImmunoCult Human CD3/CD28/CD2 T細胞アクチベーター(10970、Stemcell社、France)を用いて24時間活性化した。
【0383】
腫瘍細胞とTリンパ球の共培養
MDA-MB-231細胞を12ウェルの細胞培養プレート(5×104細胞/ウェル)又は直径60mmの細胞培養プレート(106細胞/プレート)に播種し、37℃で24時間インキュベートした。OX401(5μM)ありとなしで、活性化T細胞を腫瘍細胞にエフェクター対ターゲットの比を4:1として加えた。共培養を37℃で48時間インキュベートした。インキュベーションの終わりに、それぞれの細胞型(付着性腫瘍細胞又は懸濁T細胞)を計数し、サイトカイン放出分析のために上清を収穫した。
【0384】
ウェスタンブロット解析
Tリンパ球ありとなしでOX401(5μM)によって処理した細胞を収穫し、プロテアーゼ及びホスファターゼの阻害剤を含むRIPA緩衝液(150mMのNaCl、50mMのトリス-塩基、5mMのEDTA、1%のNP-40、0.25%のデオキシコレート、pH 7.4) (Roche Applied Science社、Germany)中で溶解した。タンパク質濃度はBCAタンパク質アッセイ(Thermo Fisher Scientific社、USA)を用いて測定した。SDS-PAGE(12%ゲル)を用いて等しい量(15μg)のタンパク質を電気泳動し、ニトロセルロース膜に移し、Tween 1%のTBS中5%のスキムミルクで室温1時間ブロックし、次いで一次抗体と4℃で一夜インキュベートした。TBS/Tween 1%で洗浄した後、膜を二次抗体と室温で1時間インキュベートした。結合した抗体を、Enhanced Chemiluminescenceウェスタンブロット基質キット(Ozyme社、USA)を用いて検出した。ウェスタンブロットは以下の抗体を用いて行なった。一次モノクローナルウサギ抗sting(希釈1/1000、CST-13647)、一次モノクローナルマウス抗PD-L1(希釈1/1,000、abcam社、ab238697)、一次モノクローナルマウス抗βアクチン(希釈1/10,000、Sigma社A1978)、二次ヤギ抗ウサギIgG、HRPコンジュゲート(希釈1/2,000、Millipore社12-348)、及び二次ヤギ抗マウスIgG、HRPコンジュゲート(希釈1/2,000、Millipore社、12-349)。
【0385】
CCL5ケモカインを検出するためのELISA
Tリンパ球ありとなしで、細胞をOX401(5μM)で48時間処理した。次いで細胞培養上清を2,000×gで10分遠心分離してデブリを除去した。キット(Human SimpleStep ELISA Kit、Abcam社ab174446)に含まれる96ウェルのプレートストリップは、直ちに使用可能で供給される。それぞれの上清50μlを50μlの抗体カクテルとともにデュプリケートで各ウェルに添加し、400rpmに設定したプレートシェーカーの上で、室温で1時間インキュベートし、その後プレートを1×洗浄緩衝液PTで洗浄した。次いで100μlのTMB基質を各ウェルに加えて、400rpmに設定したプレートシェーカーの上で、暗所で10分インキュベートした。次いでプレートシェーカー上で1分、100μlの停止液を各ウェルに加え、450nmにおける吸光度を決定した。
【0386】
Granzyme B酵素を検出するためのELISA
Tリンパ球ありとなしで、細胞をOX401(5μM)で48時間処理した。次いで細胞培養上清を2,000×gで10分遠心分離してデブリを除去した。キット(Human SimpleStep Granzyme B ELISA Kit、Abcam社ab235635)に含まれる96ウェルのプレートストリップは、直ちに使用可能で供給される。それぞれの上清50μlを50μlの抗体カクテルとともにデュプリケートで各ウェルに添加し、400rpmに設定したプレートシェーカーの上で、室温で1時間インキュベートし、その後プレートを1×洗浄緩衝液PTで洗浄した。次いで100μlのTMB基質を各ウェルに加えて、400rpmに設定したプレートシェーカーの上で、暗所で10分インキュベートした。次いでプレートシェーカー上で1分、100μlの停止液を各ウェルに加え、450nmにおける吸光度を決定した。
【0387】
結果
MDA-MB-231腫瘍細胞の生存率の減少(T細胞なしの場合のMDA-MB-231細胞と比較して50%の生存率)によって明らかなように、新たに活性化されたT細胞は共培養の開始後48時間及び72時間で抗腫瘍細胞毒性効果を誘発した(図8A)。共培養にOX401を加えると、T細胞誘導抗腫瘍細胞毒性が更に増大した(T細胞なしの非OX401処理MDA-MB-231細胞と比較して20%の生存率)(図8A)。興味あることに、細胞毒性T細胞は、OX401で処理したMDA-MB-231腫瘍細胞の存在下でより高い量のGranzyme Bを分泌し(図8B)、これはより高い細胞毒性効率(図8A)と一致していた。より高い免疫細胞の動員及び抗腫瘍細胞毒性を誘発するSTING経路の活性化の重要性を考慮して、本発明者らはOX401の存在下又は非存在下での腫瘍細胞/免疫細胞の共培養におけるこの経路を解析した。48時間の共培養の後、OX401で処理した腫瘍細胞におけるSTINGタンパク質のレベルのより高い増大が観察された(図8C)。これはより高いIRF3タンパク質のリン酸化(図8C)及び分泌されたCCL5ケモカインの増大(図8D)を伴っており、持続するSTING経路の活性化を示した。
【0388】
総合すると、これらの知見は、より高いSTING経路の活性化、おそらく腫瘍細胞付近へのT細胞のより良い動員を刺激することを介する、抗腫瘍細胞毒性T細胞のOX401による高い増強効果を実証するものである。
【0389】
(実施例13)
会合の速度(kon)及び相互作用の強さ(KD)
材料及び方法
本発明による様々な分子とヒトポリ[ADP-リボース]ポリメラーゼ1タンパク質(PARP-1) (115kDa)の相互作用を、GE Healthcare Life Sciences社のBiacore T100装置を用いるSPR手法によって特徴解析した。PARP1-Hisを、カルボキシメチル化チップの表面に固定化した抗His抗体に捕捉した。
【0390】
結果
会合の速度(kon)並びに相互作用の強さ(KD)を、図9に報告する。
【0391】
ホスホロチオエート連結等の修飾されたホスホジエステル骨格(OX401)又はホスホロチオエート連結とFANA修飾の両方(OX410、OX411)を3'及び/又は5'鎖の最初の3つのヌクレオチドに有するOX401、OX410、及びOX411は、PARP-1に対して同様の親和性(KD)及び会合の速度(kon)を有する。3'及び/又は5'鎖の最初の3つのヌクレオチドにホスホロチオエート連結を有するOX402は、PARP-1に対して上記の分子と同様の会合の親和性を有するが、PARP-1との会合の速度は上記の分子より低い。
【0392】
3'鎖に2つのFANA修飾を有するOX406では、会合の強さが大きいようである。
【0393】
ホスホロチオエート修飾の数を単一のヌクレオチドまで低減(OX407及びOX408)させると、相互作用の強さ(KD値の低下)及び会合の速度(kon)が顕著に増大する。
【0394】
この一連の実験から、3'及び/又は5'鎖の最初の3つのヌクレオチドの化学的修飾は、相互作用の強さ(KD)及び会合の速度(kon)を調節することによって、コンジュゲートされた核酸分子のPARPとの相互作用に強い影響を及ぼすことが明白になり、DNA修復経路阻害剤の潜在的な候補として、したがってがんの治療における強い利点が確認された。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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