(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】コーティングライン用の安定剤の製品寿命を延長するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
C23C 2/00 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
C23C2/00
(21)【出願番号】P 2021544283
(86)(22)【出願日】2019-01-31
(86)【国際出願番号】 US2019015959
(87)【国際公開番号】W WO2020159505
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】503404132
【氏名又は名称】クリーブランド-クリフス スティール プロパティーズ、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ニードリングハウス、ジョイス、シー.
(72)【発明者】
【氏名】カドッテ、ダニエル、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】サージョン、ウィリアム、エフ.、ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ウェブ、トニー、リー、ザ・セカンド
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/190131(WO,A1)
【文献】特開2017-067289(JP,A)
【文献】特表2018-503039(JP,A)
【文献】特開平01-316443(JP,A)
【文献】実開昭57-074978(JP,U)
【文献】特開平03-126854(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0111777(US,A1)
【文献】米国特許第05571328(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1587068(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0032906(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00-2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラーアセンブリであって、前記ローラーアセンブリは溶融金属中に浸漬するように構成されるものであり、前記ローラーアセンブリは、
(a)ロール部分と、前記ロール部分から軸方向に延びる少なくとも1つのジャーナルとを有するローラーであって、前記少なくとも1つのジャーナルが実質的に円筒形である、前記ローラーと、
(b)ローラースリーブを通って延びるボアを有するローラースリーブであって、前記ローラースリーブの前記ボアが実質的に円筒形であり、前記ローラースリーブが前記少なくとも1つのジャーナルの周りに配置されており、前記ローラースリーブの前記ボアの内面が、少なくとも1つのジャーナルの外面との間に
機械的結合を伴わないクリアランスフィットを規定する大きさであり、
前記ローラースリーブのボアの実質的に連続した滑らかな内面と前記少なくとも1つのジャーナルの実質的に連続した滑らかな外面との間の係合を介して前記ローラースリーブと前記少なくとも1つのジャーナルを同時に回転させることができ、前記ローラースリーブと前記少なくとも1つのジャーナルが回転しているときに、
前記クリアランスフィットが前記ローラースリーブと前記少なくとも1つのジャーナルとの間の滑りを防止するような大きさである、前記ローラースリーブと、および
(c)その中に開口部を画定するベアリングブロックであって、前記ローラースリーブが、前記ベアリングブロックと前記少なくとも1つのジャーナルとの間の前記ベアリングブロックの開口部内に配置される、前記ベアリングブロックと、
を有する、ローラーアセンブリ。
【請求項2】
請求項1記載のローラーアセンブリにおいて、前記ローラースリーブと前記少なくとも1つのジャーナルが回転しているときに、前記ローラースリーブのボアと前記少なくとも1つのジャーナルとの間のクリアランスが維持される、ローラーアセンブリ。
【請求項3】
請求項2記載のローラーアセンブリにおいて、前記クリアランスが0.001インチ~0.012インチの間である、ローラーアセンブリ。
【請求項4】
請求項2記載のローラーアセンブリにおいて、前記クリアランスが0.006インチより小さい、ローラーアセンブリ。
【請求項5】
請求項2記載のローラーアセンブリにおいて、前記クリアランスが0.004インチ以下である、ローラーアセンブリ。
【請求項6】
請求項1記載のローラーアセンブリにおいて、前記クリアランスフィットが、前記ローラーアセンブリが溶融金属中に浸漬されても維持される、ローラーアセンブリ。
【請求項7】
請求項1記載のローラーアセンブリにおいて、前記クリアランスフィットは、前記ローラースリーブと前記少なくとも1つのジャーナルとの間への溶融金属の侵入を防止する大きさである、ローラーアセンブリ。
【請求項8】
請求項1記載のローラーアセンブリにおいて、前記ローラースリーブはセラミック材料を有する、ローラーアセンブリ。
【請求項9】
請求項
8記載のローラーアセンブリにおいて、前記セラミック材料は炭化ケイ素を有する、ローラーアセンブリ。
【請求項10】
請求項1記載のローラーアセンブリにおいて、前記ベアリングブロックはセラミック材料を有する、ローラーアセンブリ。
【請求項11】
請求項
10記載のローラーアセンブリにおいて、前記セラミック材料は炭化ケイ素を有する、ローラーアセンブリ。
【請求項12】
請求項
8記載のローラーアセンブリにおいて、前
記ローラースリーブの前記セラミックは少なくとも約5%の炭化ケイ素を有する、ローラーアセンブリ。
【請求項13】
請求項
10記載のローラーアセンブリにおいて、前
記ベアリングブロックの前記セラミックは少なくとも約5%の炭化ケイ素を有する、ローラーアセンブリ。
【請求項14】
請求項
1記載のローラーアセンブリにおいて、前
記ローラースリーブは
炭化ケイ素を有し、前記ベアリングブロックは炭化ケイ素を有し、および前記ローラースリーブは前
記ベアリングブロックよりも多量の炭化ケイ素を有する、ローラーアセンブリ。
【請求項15】
鋼コーティングラインにおけるローラーアセンブリを操作するための方法であって、
ローラーのジャーナルをセラミックローラースリーブのボア内に配置する工程であって、前記ジャーナルの外面が実質的に滑らかであり、前記ローラースリーブの前記ボアの内面が実質的に滑らかであり、前記ローラースリーブの前記ボアの内面が
、ジャーナルの外面との間に
機械的結合を伴わないクリアランスフィットを規定する大きさであり、
前記ローラースリーブのボアの実質的に連続した滑らかな内面と前記ジャーナルの実質的に連続した滑らかな外面との間の係合を介して前記ローラースリーブと前
記ジャーナルを同時に回転させることができ、前記ローラースリーブと前
記ジャーナルが回転しているときに、
前記クリアランスフィットが前記ローラースリーブと
前記ジャーナルとの間の滑りを防止するような大きさである、前記配置する工程と、
前記ローラースリーブをセラミックベアリングブロックの開口部内に配置する工程と、
前記ジャーナルおよび前記ローラースリーブを前記ベアリングブロック内で一緒に回転させる工程と
を有する、方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法において、前記ローラースリーブと前記ジャーナルが回転しているときに、前記ローラースリーブのボアと前記ジャーナルとの間のクリアランスが維持される、方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法において、前記クリアランスが0.001インチ~0.012インチの間である、方法。
【請求項18】
請求項16記載の方法において、前記クリアランスが0.006インチより小さい、方法。
【請求項19】
請求項16記載の方法において、前記クリアランスが0.004インチ以下である、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
コーティングとは、鋼の製造において、細長い鋼板やストリップなどの鋼基材の表面に薄い金属コーティング(例えば、アルミニウム、亜鉛、およびそれらの合金)を施す一般的なプロセスである。本明細書では、細長い鋼板またはストリップは互換性があるものとして使用され、そのことは理解されていると解すべきである。コーティングプロセスは、一般的に、細長い鋼板を一連のロールアセンブリに通して、鋼板に様々な処理プロセスを施す連続コーティングラインに組み込むことができる。このプロセスのコーティング部分では、鋼板の表面をコーティングするために溶融金属の槽を介して鋼板が操作される。
【0002】
鋼板の操作を助けるために、様々な部品が溶融金属槽内に配置されている場合がある。これらの部品の中には、部品の連続的な動きや溶融金属の存在による過酷な環境のために、摩耗するものがある。摩耗が許容できないレベルに達すると、連続コーティングラインが停止し、そこにある部品が再加工される。この作業は、一般的にコストの増加と製造の遅れをもたらす。しかし、金属浴に浸された様々な部品の寿命を延ばすことで、これらのコストや遅延を減らすことができる。
【0003】
そのため、摩耗しやすい部品の全体的な耐用年数を向上させるために、コーティングラインに様々な特徴を持たせることが望ましい場合がある。このような課題を解決するために、セラミックや耐火物でできたローラースリーブをローラージャーナルに機械的に固定することで、摩耗を防ぐことができる。また、セラミックや耐火物で作られたローラーインサートをローラージャーナルの外面に貼り付けて摩耗を防ぐこともできる。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許出願公開第2018/002796号明細書
(特許文献2) 米国特許第5,072,689号明細書
(特許文献3) 国際公開第2016/103044号
【発明の概要】
【0004】
溶融金属槽内で回転するロールの鋼ジャーナルは、アルミ化処理のための溶融金属槽内で使用されると、少なくともいくらかの摩耗や化学腐食を受ける。ある状況下では、この摩耗や化学腐食により、そのようなローラーのデューティーサイクルが低下する可能性がある。そのため、コーティングプロセスで使用される鋼ジャーナルで発生する摩耗や化学腐食を低減することが望まれる。
【0005】
セラミックや耐火性材料は、溶融金属に囲まれた環境での耐摩耗性や耐薬品性に優れている。しかし、溶融金属の中に沈んでいるローラーアセンブリにセラミックまたは耐火性材料を組み込むことには課題があった。そこで、本願発明は、ジャーナルとベアリングブロックの間にあるローラーアセンブリに、セラミックまたは耐火性材料を組み込むための構造および/または方法に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図は、実施形態を示しており、上に示した一般的な説明、および下に示した実施形態の詳細な説明と合わせて、本開示の原理を説明する役割を果たす。
【
図1】
図1は、鋼の連続処理ラインのコーティング部分の概略図を示す。
【
図2】
図2は、
図1のコーティング部分に容易に組み込むことができるロールアセンブリの透視図を示す。
【
図3】
図3は、
図2のロールアセンブリのベアリングブロックの透視図を示す。
【
図4】
図4は、
図2のロールアセンブリのロールの正面図を示す。
【
図5】
図5は、
図2のロールアセンブリのローラースリーブの透視図を示す。
【
図7】
図7は、
図4のロールと
図5のローラースリーブとの間の結合部分の正面断面図を示す。
【
図8】
図8は、
図4のスタブロールに容易に組み込むことができる代替ジャーナルおよびローラースリーブの側面断面図を示す。
【
図9】
図9は、
図8のジャーナルとローラースリーブの透視図を示す。
【
図10】
図10は、
図4のロールに容易に組み込むことができる別の代替ジャーナルの透視図を示しており、
図10は、
図4のロールに容易に組み込むことができる別の代替ジャーナルの透視図を示す。
【
図11】
図11は、
図4のロールに容易に組み込むことができる、さらに別の代替ジャーナルの透視図を示す。
【
図12】
図12は、
図1のコーティング部分に容易に組み込むことができる別のロールアセンブリの透視図を示す。
【
図19】
図19は、
図12のロールアセンブリに容易に組み込むことができる別のローラースリーブの透視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本出願は、一般に、溶融金属内に浸漬されたロールアセンブリ内にセラミックまたは耐火性材料を組み込むための構造および/または方法に関するものである。いくつかの例では、ジャーナルとベアリングブロックの間にセラミックまたは耐火性材料を組み込むことが含まれる。このような構成では、セラミックまたは耐火性材料の存在により、ベアリングブロックに対するジャーナルの相対的な回転によって生じるジャーナルの摩耗が減少することが分かっている。さらに、セラミックや耐火性材料の存在は、溶融金属からの化学腐食を受けるジャーナルの傾向を減少させる可能性がある。
【0008】
図1は、連続鋼処理ラインなどの鋼処理ライン(2)のコーティング部分(10)の概略断面図を示す。図示していないが、進入前に、鋼板(60)は、鋼製処理ライン(2)の他の部分で様々な他の鋼製処理操作を受けてもよいことを理解すべきである。例えば、鋼板(60)は、熱間または冷間還元圧延、様々な熱処理、酸洗、および/またはその他の処理を受けてもよい。あるいは、いくつかの例では、コーティング部分(10)が独立したコーティングラインとして構成されるように、他の鋼処理操作を排除してもよい。
【0009】
図示された実施形態では、コーティング部分(10)は、溶融槽(20)、スナウト(30)、1つまたはそれ以上のロールアセンブリ(40、50、70)を含む。理解されるように、コーティング部分(10)は、一般に、鋼板(60)をコーティングするために、細長い鋼板(60)を受けるように構成される。溶融槽(20)は、アルミニウム、亜鉛、および/またはそれらの合金などの溶融金属(22)を受けるように構成された固体の壁によって規定される。スナウト(30)は、溶融金属(22)内に部分的に浸漬されるように構成されている。したがって、スナウト(30)は、一般に、溶融金属(22)に入る間、鋼板(60)の周りに気密シールを提供する。いくつかの例では、スナウト(30)は、鋼板(60)の溶融金属(22)への進入中に発生する可能性のある化学的酸化反応を制限するために、水素および/または窒素などの保護ガスまたは還元ガスで満たされる。
【0010】
1つまたはそれ以上のロールアセンブリ(40、50、70)は、コーティング部分(10)を通して鋼板(60)を支持するために、溶融槽(20)に相対的に配置される。例えば、ポットまたはシンクロールアセンブリ(70)は、ポットロールアセンブリ(70)が回転し、それによって鋼板(60)を溶融槽(20)の外に向けるように一般的に構成されるように、溶融金属(22)内に沈められてもよい。次いで、1つまたはそれ以上の安定化および矯正ロールアセンブリ(40)は、鋼板(60)が溶融金属(22)から出るときに鋼板(60)を安定化させるために、溶融槽(20)に対して配置されてもよい。例えば、安定化および矯正ロールアセンブリ(40)は、鋼板(60)がエアナイフ(35)に入るときに鋼板(60)を位置決めするために使用されてもよい。また、安定化および矯正ロールアセンブリ(40)は、鋼板(60)の形状を改善するために使用されてもよい。次に、デフレクタロールアセンブリ(50)は、鋼板(60)がコーティングされた後、鋼板(60)を鋼処理ライン(2)の他の部分に方向転換するように一般的に構成されてもよい。本実施例のコーティング部分(10)は、ポットロールアセンブリ(70)、安定化および矯正ロールアセンブリ(40)、およびデフレクタロールアセンブリ(50)のそれぞれを1つだけ備えて示されているが、いくつかの他のバージョンでは、任意の適切な数のロールアセンブリ(40、50、70)が使用されてもよい。
【0011】
図1Aは、安定化および矯正ロールアセンブリ(40)が省略されたコーティング部分(10)の代替構成を示す図である。安定器および修正ロールアセンブリ(40)の代わりに、またはそれに代えて、
図1Aに示す代替構成は、溶融槽(20)内に完全に配置された2つのシンクロールアセンブリ(42)を含む。シンクロールアセンブリ(42)は、一般に、本明細書に記載された他のロールアセンブリと同様に動作する。例えば、シンクロールアセンブリ(42)は、一般に、コーティングプロセスの様々な部分を通じて鋼板(60)を操作するように構成されている。本実施例では、シンクロールアセンブリ(42)は、溶融金属(22)内で鋼板(60)を操作して、鋼板(60)の完全なコーティングを促進する。シンクロールアセンブリ(42)は、さらに、溶融金属(22)を通る移動経路の量を増加させる。この特徴により、一般に、鋼板(60)が溶融金属(22)内に配置される時間が長くなる。鋼板(60)がシンクロールアセンブリ(42)を通過すると、その後、鋼板(60)は、ポットロールアセンブリ(70)およびデフレクタロールアセンブリ(50)によって、所望の方向に方向転換され得る。
図1および1Aはいずれも、コーティング部分(10)の個別の構成を示しているが、他の例では、コーティング部分(10)は、
図1および1Aに示した構成から様々な要素を組み合わせた他の代替構成を含むことを理解すべきである。
【0012】
以下では、耐火性セラミック材料を有するローラースリーブを組み込んだロールアセンブリについて、より詳しく説明する。このようなローラースリーブは、ロールアセンブリの摩耗、腐食、および/または摩滅を低減することができるので、このようなローラースリーブは、連続コーティングラインの任意の1つまたはそれ以上のロールアセンブリに組み込まれてもよいことを理解すべきである。これらのロールアセンブリは、上述したように、任意の安定化および矯正ロールアセンブリ(40)、シンクロールアセンブリ(42)、デフレクタロールアセンブリ(50)、および/またはポットロールアセンブリ(70)を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0013】
図2を参照すると、ロールアセンブリ(100)は、2つのベアリングブロック(72)と、ロール(80)と、各ベアリングブロック(72)とロール(80)との間に配置されたローラースリーブ(90)とを有する。各ベアリングブロック(72)は、一般に、ベアリングブロック(72)に対するロール(80)の回転を促進するために、ロール(80)の少なくとも一部を受けるように構成されている。図示していないが、各ベアリングブロック(72)は、一般的に、各ベアリングブロック(72)を溶融槽(20)内の所定の位置に保持するために、固定具または他の構造体に結合されていることを理解すべきである。
【0014】
例示的なベアリングブロック(72)は、
図3に最もよく見られる。見て分かるように、ベアリングブロック(72)は、概ね八角形の本体(74)を含む。本体(74)の八角形の形状は、一般的に、ベアリングブロック(72)を溶融槽(20)内に配置するために、固定具または他の構造体がベアリングブロック(72)に取り付けられる面を提供するように構成されている。本実施例の本体(72)は八角形の構造で示されているが、他の実施例では、正方形、六角形、三角形、円形などの他の適切な構造を使用してもよいことを理解すべきである。
【0015】
本体(74)に使用される特定の形状にかかわらず、本体(74)は、ベアリングブロック(72)の中心を通る受入ボア(76)を規定する。受入ボア(76)は、一般に、円筒形の形状によって規定される。以下に詳細に説明するように、受入ボア(76)は、ローラースリーブ(90)およびロール(80)の少なくとも一部を受容して、ローラースリーブ(90)がボア(76)内で自由に回転できるように構成されている。
【0016】
ベアリングブロック(72)は、高い強度を有し、高温での摩耗に強いセラミック材料を有する。このセラミック材料は、さらに、低い熱膨張係数、熱衝撃に対する耐性、溶融金属による濡れに対する耐性、腐食に対する耐性を有し、溶融した非鉄金属に対して実質的に化学的に不活性であってもよい。一例として、適切なセラミック材料には、SiAlONセラミックとして知られるクラスのセラミックが含まれる。SiAlONセラミックは、溶融アルミニウムを取り扱う際に使用される高温耐火性材料である。SiAlONセラミックは、一般に、良好な熱衝撃性、高温での高い強度、溶融アルミニウムによる卓越した耐湿性、および溶融非鉄金属の存在下での高い耐腐食性を示す。本実施例のベアリングブロック(72)は、Saint-Gobain High-Performance Refractories製のCRYSTON CN178で構成されているが、多数のSiAlONクラスのセラミックを使用することができる。
【0017】
ロール(80)は、
図4に示されている。見てわかるように、ロール(80)は、ロール部分(82)と、ロール部分(82)の各側面から延びるジャーナル(86)とを含む。一般に、ロール部分(82)およびジャーナル(86)は、鋼または別の金属合金からなる。ロール部分(82)は、概ね細長い円筒形の形状からなる。ロール部分(82)の円筒形の形状は、一般に、鋼板(60)を受け入れて、鋼板(60)の少なくとも一部がロール部分(82)の少なくとも一部に巻き付くことを可能にするように構成されている。したがって、ロール部分(82)の幅が鋼板(60)よりも広くなるように、ロール部分(82)の幅が鋼板(60)の幅に一般的に対応していることを理解すべきである。これは、コーティング部分(10)を通るストリップトラッキングを補うことができる。
【0018】
上述したように、各ジャーナル(86)は、ロール部分(82)から外側に向かって延びている。各ジャーナル(86)は、ロール部分(82)によって規定される外径よりも小さい外径を有する概ね円筒形の形状からなる。各ジャーナル(86)は、それぞれのベアリングブロック(72)のボア(76)によって受け入れられる大きさである。しかし、以下でより詳細に説明するように、各ジャーナル(86)は、ベアリングボック(72)とジャーナル(86)との間に配置されたローラースリーブ(90)のための空間を可能にするために、ベアリングボック(72)のボア(76)に対して一般的に小さいサイズである。
【0019】
一実施形態では、各ジャーナル(86)は、各ジャーナル(86)の外面に配置されたスレッディング(88)をさらに含む。以下でより詳細に説明するように、スレッディング(88)は、一般に、各ローラースリーブ(90)を各ジャーナル(86)に結合するために、各それぞれのローラースリーブ(90)の対応する特徴部に係合するように構成されている。本実施例では、各ジャーナル(86)のスレッディング(88)は、スタブロール(80)の回転を考慮して方向付けられている。例えば、一方のジャーナル(86)が右スレッディングを含む場合、反対側のジャーナル(86)は左スレッディングを含む。スレッディング(88)のこの構成は、スタブロール(80)が鋼板(60)とロール部分(82)との間の摩擦によって回転する際に、各ローラースリーブ(90)が緩んだり、そうでなければねじが外れたりするのを防ぐ。いくつかの例では、スレッディング(88)は、以下でより詳細に説明するように、ローラースリーブ(90)の内部形状の変化に対応するために、丸みを帯びたピークを含んでいてもよい。
【0020】
例示的なローラースリーブ(90)が、
図5および6に示されている。ローラースリーブ(90)は、一般に、それぞれのジャーナル(86)とそれぞれのベアリングブロック(72)との間に耐久性のある非反応性バリアを提供するように構成されている。理解されるように、ローラースリーブ(90)は、一般に、ローラースリーブ(90)がベアリングブロック(72)内で相対的に回転するように、ジャーナル(86)と一緒に回転する。したがって、各ローラースリーブ(90)の外面の一部は、ベアリングブロック(72)のボア(76)の内面の一部と直接接触している。これにより、ローラースリーブ(90)は、ローラーや転動体を用いることなく、各ジャーナル(86)と平面ベアリングを形成することができる。それにより、各ジャーナル(86)およびローラースリーブ(90)は、固定されたベアリングブロック(72)内で一緒に回転することができる。
【0021】
ローラースリーブ(90)は、概ね円筒形の本体(92)を有する。図示された実施形態では、本体(92)の少なくとも1つの側面は、面取りまたは斜角のエッジ(94)を含む。エッジ(94)は、一般的に、それぞれのジャーナル(86)とロール部分(82)との間の界面に接触するように構成されている。エッジ(94)は、一般的に面取りまたは斜角された形状を有していることが示されているが、フィレット形状、正方形形状、J溝など、他の任意の適切な形状を使用してもよいことを理解されたい。
【0022】
本体(92)には、ローラースリーブ(90)を貫通する円筒形のボア(96)が設けられている。ボア(96)の内部には、ボア(96)の長さに沿って少なくとも部分的に延びるスレッディング(98)が設けられている。スレッディング(98)は、それぞれのジャーナル(86)の外径に設けられたスレッディング(88)と係合するように構成されている。したがって、ボア(96)内のスレッディングは、ローラースリーブ(90)をそれぞれのジャーナル(86)に機械的に固定するように構成されていることを理解されたい。
【0023】
ボア(96)の内径は、一般に、各ジャーナル(86)の外径に対応している。しかし、
図7に最もよく見られるように、本実施例では、ボア(96)の内径とジャーナル(86)の外径との間に所定のクリアランス(d)が含まれている。当初、このクリアランス(d)は、ジャーナル(86)の熱膨張率とローラースリーブ(90)の熱膨張率との差に由来し、ジャーナル(86)とローラースリーブ(90)の両方がディップタンク(20)の温度に近づくと、このクリアランス(d)が実質的になくなるという理論があった。しかし、本実施例では、ボア(96)とジャーナル(86)の間のクリアランス(d)は、意外にもジャーナル(86)とローラースリーブ(90)の熱膨張率にのみ結びついているわけではない。特に、溶融槽(20)の温度におけるジャーナル(86)とローラースリーブ(90)との間のいくらかのクリアランス(d)は、アルミ化処理中のローラースリーブ(90)の耐久性を向上させるのに有益であることが判明した。したがって、本実施例では、アルミ化処理を通して、ボア(96)の内径とジャーナル(86)の外径との間に少なくともいくらかのクリアランス(d)が維持されることを理解すべきである。いくつかの例では、適切なクリアランス(d)は、約0.220インチであってもよい。他の例では、クリアランス(d)は、約0.220インチから0.200インチの間であってもよい。いくつかの例では、スレッディング(88)の幅が、いくつかの幅のクリアランスも提供することができる。これらの例では、この幅のクリアランスは、約0.005インチから約0.030インチの間で変化してもよい。
【0024】
上述したボア(96)の内径とジャーナル(86)の外径との間のクリアランス(d)は、ローラースリーブ(90)の耐久性向上に有益であると説明したが、本実施例では、このクリアランス(d)も制限されることを理解すべきである。例えば、ボア(96)の内径とジャーナル(86)の外径との間のクリアランス(d)が大きすぎると、溶融アルミニウム(22)の何らかの濡れが発生し、それによって溶融アルミニウム(22)がボア(96)の内径とジャーナル(86)の外径との間のクリアランス(d)に輸送される可能性がある。これは、ローラースリーブ(90)の材料に少なくとも部分的に依存する可能性があるが、本実施例では、ボア(96)の内径とジャーナル(86)の外径との間のクリアランス(d)は、クリアランス(d)への溶融アルミニウム(22)の輸送を最小化または防止するように制限されていることを理解すべきである。
【0025】
ローラースリーブ(90)は、強度が高く、高温での摩耗に強いセラミック材料を有する。このセラミック材料は、さらに、低い熱膨張係数、熱衝撃に対する耐性、溶融金属による濡れに対する耐性、腐食に対する耐性を有し、溶融金属に対して実質的に化学的に不活性であってもよい。例として、適切なセラミック材料には、SiAlONセラミックと呼ばれるクラスのセラミックがある。上述したように、SiAlONセラミックは、溶融アルミニウムを取り扱う際に使用される可能性のある高温耐火性材料である。SiAlONセラミックは、一般に、良好な熱衝撃性、高温での高い強度、溶融アルミニウムによる卓越した濡れ性、および溶融非鉄金属の存在下での高い耐食性を示す。本実施例のローラースリーブ(90)は、Saint-Gobain Ceramics製のADVANCER(登録商標)窒化物結合炭化ケイ素を有するが、SiAlONクラスのセラミックを多数使用してもよい。
【0026】
例示的な使用では、鋼板(60)がロールアセンブリ(100)に巻き付けられる。鋼板(60)とロール(80)のロール部分(82)との間の摩擦により、鋼板(60)がロールアセンブリ(100)に対して相対的に移動すると、ロール(80)が回転する。ロール(80)の回転は、各ジャーナル(86)の対応する回転を引き起こし、これはまた、スレッディング(88、98)間の係合を介して各ローラースリーブ(90)の回転を引き起こす。各ジャーナル(86)の反対側のスレッディング(88)により、各ローラースリーブ(90)は、各ジャーナル(86)の回転により、各各ジャーナル(86)に固定されたままとなる。いくつかの例では、ジャーナル(86)のスレッディング(88)の一部だけが、ある時点でローラースリーブ(90)のスレッディング(98)に接触することがあることを理解すべきである。例えば、動作中に、鋼板(60)がロール(80)を特定の方向に引っ張ることがある。これにより、ジャーナル(86)とローラースリーブ(90)が正確に同軸上に配置されないようなクリアランスにより、ジャーナル(86)がローラースリーブ(90)内で横方向に移動することになる。このとき、クリアランス(d)の大きさによっては、ジャーナル(86)のスレッディング(88)の片側が、ローラースリーブ(90)のスレッディング(98)から外れることがある。いくらかの離脱が発生しても、ジャーナル(86)とローラースリーブ(90)の反対側のスレッディング(88,98)が完全に係合しているため、スレッディング(88,98)の結合機能は依然として保持されて得る。このように、各ジャーナル(86)および各ローラースリーブ(90)は、それぞれのベアリングブロック(72)内で一緒に回転し、各ベアリングブロック(72)は、ロール(80)の軸方向の位置を固定する。ローラースリーブ(90)および/またはロールアセンブリ(100)のためのさらに他の適切な構成は、本明細書の教示を考慮して、当業者には明らかであろう。
【0027】
例えば、
図8および
図9は、上述のロールアセンブリ(100)に容易に組み込むことができる例示的な代替ジャーナル(186)およびローラースリーブ(190)を示している。本明細書で特に言及しない限り、ジャーナル(186)およびローラースリーブ(190)はそれぞれ、上述のジャーナル(86)およびローラースリーブ(90)と実質的に同様であると理解されたい。本実施例のジャーナル(186)は、概ね正方形の横方向の断面からなる。以下でより詳細に説明するように、この概ね正方形の形状は、ジャーナル(186)がローラースリーブ(190)と係合することを可能にし、それによって、それぞれのベアリングブロック(72)に対するローラースリーブ(190)の回転を誘発する。理解されるように、この構成は、ジャーナル(86)のスレッディング(88)と同様の構造をジャーナル(186)から省略することを可能にする。
【0028】
ローラースリーブ(190)は、ジャーナル(186)に適合するように構成された円筒形の本体(192)を有する。本体(192)は、ローラースリーブ(190)を完全に貫通して延びるボア(196)を規定する。本実施例のボア(196)は、上述したジャーナル(186)の形状に概ね対応する正方形状の横方向の断面を規定する。
【0029】
本実施例のボア(196)は、一般的にジャーナル(186)を受容する大きさである。本実施例のボア(196)は、一般的にジャーナル(186)を受容する大きさであるが、本実施例では、ボア(196)は、ローラースリーブ(90)およびジャーナル(86)に関して上述した類似性のように、ジャーナル(186)の外側に対して少なくともいくつかのクリアランスを提供する大きさでもあることを理解されたい。上述したクリアランス(d)と同様に、ローラースリーブ(90)およびジャーナル(86)に関連するクリアランスは、一般的に、溶融槽(20)内で遭遇する熱によるローラースリーブ(190)および/またはジャーナル(86)の膨張にもかかわらず、コーティング手順を通して維持されるように構成されている。また、上述したように、ローラースリーブ(190)とジャーナル(186)に関連するクリアランスは、クリアランスによって規定される空洞への溶融金属(22)の輸送を最小化または防止するような大きさになっている。
【0030】
上述したように、ジャーナル(186)とローラースリーブ(190)のボア(196)によって規定された対応する正方形の形状は、ジャーナル(186)がローラースリーブ(190)に回転運動を伝えることを可能にするように一般的に構成されている。ここでは、対応する正方形の形状が示されているが、多数の代替的な断面形状を使用することができることを理解されたい。例えば、いくつかの例では、ジャーナル(186)およびローラースリーブ(190)のボア(196)は、対応する三角形、卵形、または長方形の形状を規定する。他の例では、ジャーナル(186)とローラースリーブ(190)のボア(196)の両方が、概ね円筒形の形状を規定するが、ジャーナル(186)からローラースリーブ(190)への回転の伝達を依然として可能にするために、鍵をかけることもできる。もちろん、ジャーナル(186)およびローラースリーブ(190)のボア(196)のための多数の代替形状は、本明細書の教示を考慮して、当業者には明らかであろう。いずれの場合も、ジャーナルに対するローラースリーブの動きを制限して、両部品がボアと一緒に回転することを可能にする、スレッディングまたは他の機械的ロック構成の機械的ロック機能がある。
【0031】
図10は、上述のロールアセンブリ(100)に容易に組み込むことができる代替のジャーナル(286)を示す。上述のジャーナル(86)とは異なり、本実施例のジャーナル(286)は、ローラースリーブ(90)と同様の構造で使用するように構成されていない。代わりに、ジャーナル(86)は、ジャーナル(286)の外面の周りに長手方向に配向された一連の円筒形セラミックインサート(290)を一体化している。インサート(290)を受容するために、ジャーナル(286)は、インサート(290)を受容するように構成された複数のチャネル(図示せず)を含むように機械加工される。しかしながら、ジャーナル(286)の外面のチャネルは、各インサート(290)の一部がジャーナル(286)の外面から突出するように、各インサート(290)の一部のみを収容する大きさである。したがって、各インサート(290)は、ベアリングブロック(72)の内部に係合するように構成されており、それによって、ジャーナル(286)の外面をベアリングブロック(72)の内部から分離することを理解されたい。
【0032】
ジャーナル(286)とインサート(290)の間の結合は、任意の適切な手段によって行うことができる。例えば、本実施例では、インサート(290)は、超音波溶接、摩擦溶接、はんだ付け、および/または、異種材料の溶接または結合に適した他のプロセスによって、ジャーナル(286)に溶接または結合される。あるいは、いくつかの例では、インサート(290)は、機械的なファスナによってジャーナル(286)に固定される。さらに他の例では、ジャーナル(286)およびインサート(290)のチャネルは、スライドインまたはスナップフィットを提供するための相補的な結合機能を含んでもよい。もちろん、他の例では、インサート(290)は、本明細書の教示を考慮して当業者に明らかになるであろう任意の他の適切な手段によってジャーナル(286)に結合されてもよい。
【0033】
いくつかの例では、インサート(290)をジャーナル(286)に完全に組み込むことが望ましい場合がある。例えば、
図11は、ロールアセンブリ(100)のロール(80)に容易に組み込むことができる代替のジャーナル(386)を示している。上述したインサート(290)と同様の構造を別個の構成要素として含む代わりに、ジャーナル(386)自体が、ローラースリーブ(90)に関して上述した特性と一致するセラミック材料を有する。本実施例では、ジャーナル(386)は、ロール部分(82)と一体ではなく、ロール(80)のロール部分(82)に取り外し可能に結合されている。したがって、本実施例のジャーナル(386)は、スタブロール(80)のロール部分(82)内に穿設され得る対応する開口部内に収まるように構成されたローラープラグ(388)を含む。図示していないが、本実施例では、ジャーナル(386)は、一連のピンまたは他の機械的留め具によってロール(80)に機械的にロックされていることを理解すべきである。
【0034】
他の例では、ロール(80)全体がセラミック材料を有することができ、これにより、ジャーナル(386)をロール部分(82)から分離する必要がなくなる。もちろん、ジャーナル(286)の様々な代替構成は、本明細書の教示を考慮して、当業者に明らかになり得る。
【0035】
図12~17は、上述のコーティングラインに容易に組み込むことができる例示的な代替ロールアセンブリ(470)を示す。本明細書で特に言及しない限り、ロールアセンブリ(470)は、上述のロールアセンブリ(100)と実質的に類似していることを理解されたい。
図12に見られるように、ロールアセンブリ(470)は、2つのベアリングブロック(472)、ロール(480)、および各ベアリングブロック(472)とロール(480)との間に配置されたローラースリーブ(490)を含む。各ベアリングブロック(472)は、一般に、ベアリングブロック(472)に対するロール(480)の回転を促進するために、ロール(480)の少なくとも一部を受けるように構成されている。図示していないが、各ベアリングブロック(472)は、一般的に、各ベアリングブロック(472)を溶融槽(20)内の所定の位置に保持するために、固定具または他の構造体に結合されていることを理解すべきである。
【0036】
例示的なベアリングブロック(472)は、
図13で最もよく見られる。見て分かるように、ベアリングブロック(472)は、概ね八角形の本体(474)を含む。本体(474)の八角形の形状は、一般的に、固定具または他の構造体がベアリングブロック(472)に取り付けて、ベアリングブロック(472)を溶融槽(20)内に配置するための表面を提供するように構成されている。本実施例の本体(472)は八角形の構造で示されているが、他の実施例では、正方形、六角形、三角形、円形などの他の適切な構造を使用してもよいことを理解すべきである。本体(474)に使用される特定の形状にかかわらず、本体(474)は、ベアリングブロック(472)の中心を通る受入ボア(476)を規定する。受入ボア(476)は、一般に、円筒形の形状によって規定される。以下でより詳細に説明されるように、受入ボア(476)は、ローラースリーブ(490)およびロール(480)の少なくとも一部を受容して、ローラースリーブ(490)がボア(476)内で自由に回転することを可能にするように構成される。
【0037】
図14に示すように、ロール(480)は、ロール部分(482)と、ロール部分(482)の各側面から延びるジャーナル(486)とを有する。一般に、ロール部分(482)およびジャーナル(486)は、鋼または他の金属合金からなる。いくつかのバージョンでは、ロール(480)は、複合材料または他の適切な材料から形成されてもよい。ロール部分(482)は、概ね細長い円筒形の形状を有する。ロール部分(482)の円筒形の形状は、概して、鋼板(60)を受け入れて、鋼板(60)の少なくとも一部がロール部分(482)の少なくとも一部の周りに巻き付くことを可能にするように構成されている。
【0038】
上述したように、各ジャーナル(486)は、ロール部分(482)から外側に向かって延びている。各ジャーナル(486)は、ロール部分(482)によって規定される外径よりも小さい外径を有する概ね円筒形の形状を有する。本実施形態では、各ジャーナル(486)は、各ジャーナル(486)の長さに沿って各ジャーナル(486)の外周に関する実質的に円形のプロファイルを維持するために、各ジャーナル(486)の外面が機械的ロック機能から解放されるような、実質的に連続した滑らかな外面を有する。それにより、ジャーナル(486)の実質的に滑らかな外面は、ロック機能を含むジャーナルよりも製造コストが高くなる可能性がある。各ジャーナル(486)は、それぞれのベアリングブロック(472)のボア(476)に受け入れられるサイズである。しかしながら、以下でより詳細に説明するように、各ジャーナル(486)は、ベアリングブロック(472)のボア(476)に対して一般的にサイズが小さく、ベアリングブロック(472)とジャーナル(486)との間に配置されたローラースリーブ(490)のためのスペースを確保する。
【0039】
例示的なローラースリーブ(490)が、
図15~17に示されている。ローラースリーブ(490)は、概して、それぞれのジャーナル(486)とそれぞれのベアリングブロック(472)との間に耐久性のある非反応性バリアを提供するように構成されている。見られるように、ローラースリーブ(490)は、ローラースリーブ(490)を通って延びる円筒形のボア(496)を規定する概ね円筒形の本体(492)を有する。本実施形態のボア(496)の内部は、各ボア(496)の長さに沿って各ボア(496)の内周に関する実質的に円形のプロファイルを維持するために、各ボア(496)の内周が機械的ロック機能から解放されるような、実質的に連続した滑らかな内面からなる。ボア(496)の滑らかな内面は、それによって、ロック機能を含むボアよりも製造コストが高くなる可能性がある。ボア(496)の内径は、より詳細に後述するように、各ジャーナル(486)の外径に概ね対応している。したがって、ローラースリーブ(490)は、ジャーナル(486)がローラースリーブ(490)のボア(496)内に受容されるように、ジャーナル(486)に対して配置される。各ジャーナル(486)と対応するボア(496)との間の嵌め合いおよび各ジャーナル(486)の重量により、ジャーナル(486)とローラースリーブ(490)とがロック機構で機械的に結合されていなくても、ローラースリーブ(490)はジャーナル(486)と概ね同時に回転する。これにより、ローラースリーブ(490)がベアリングブロック(472)内で相対的に回転し、ジャーナル(486)の摩耗を防ぐことができる。
【0040】
ローラースリーブ(490)の本体(492)の少なくとも一方の側は、面取りまたは斜角されたエッジ(494)を含んでもよい。エッジ(494)は、概して、それぞれのジャーナル(486)とロール部分(482)との間の界面に接するように構成されている。エッジ(494)は、一般的に面取りまたは斜角された形状を有することが示されているが、フィレット形状、四角い形状、J溝など、他の任意の適切な形状を使用してもよいことを理解されたい。
【0041】
ベアリングブロック(472)およびローラースリーブ(490)は、セラミックから作られてもよい。例えば、ベアリングブロック(472)およびローラースリーブ(490)はそれぞれ、耐衝撃性、耐摩耗性、および/または耐熱衝撃性を有する耐火性セラミック材料を有し得る。このような耐火性材料は、炭化ケイ素(SiC)、アルミナ(Al2O3)、溶融シリカ(SiO2)、またはそれらの組み合わせを有し得る。いくつかのバージョンでは、耐火性セラミック材料は、約5%から約100%の炭化ケイ素および/またはアルミナを有する。
【0042】
例として、適切な耐火性セラミック材料には、SiAlONセラミックとして知られるクラスのセラミックが含まれ得る。SiAlONセラミックは、溶融金属を取り扱う際に使用される可能性のある高温耐火性材料である。SiAlONセラミックは、一般に、良好な熱衝撃性、高温での高い強度、溶融アルミニウムによる湿潤に対する卓越した耐性、および溶融金属の存在下での高い耐食性を示す。このようなSiAlONセラミックは、マサチューセッツ州ウースターのSaint-Gobain High-Performance Refractories製のCRYSTON CN178を有し得るが、多数のSiAlONクラスのセラミックが使用されてもよい。
【0043】
他の適切な耐火性セラミック材料としては、約73%のAl2O3と約8%のSiCを有するセラミックが挙げられる。このセラミックは、オハイオ州フレモントのWahl Refractory Solutionsが製造したGemStone(登録商標)404Aを有し得る。別の実施形態では、より多量のSiC、例えば約70%のSiCを有する、より硬いセラミックを使用してもよい。いくつかのバージョンでは、ステンレス鋼線の針を、材料の約0.5重量%~約30重量%など、セラミック材料に加えてもよい。このようなセラミックは、マサチューセッツ州ウースターのSaint-Gobain Ceramics製のADVANCER(登録商標)窒化物結合炭化ケイ素、または同じくマサチューセッツ州ウースターのSaint-Gobain Ceramics製のHexology(登録商標)炭化ケイ素を有し得る。その他の適切な耐火性材料は、本明細書の内容を考慮して、当業者であれば明らかになるであろう。
【0044】
各ベアリングブロック(472)および/またはローラースリーブ(490)は、耐火性セラミック材料を鋳造する工程によって作られてもよい。他のいくつかのバージョンでは、ベアリングブロック(472)および/またはローラースリーブ(490)は、液体セラミックを型に流し込む工程と、熱を用いてセラミックを焼いて水分を除去する工程とによって作られてもよい。その後、ベアリングブロック(472)および/またはローラースリーブ(490)の外面を研磨して、滑らかな外面を提供してもよい。ロールアセンブリ(480)の構成要素を製造するためのさらに他の適切な方法は、本明細書の教示を考慮して、当業者には明らかであろう。
【0045】
したがって、ベアリングブロック(472)およびローラースリーブ(490)は、同じ耐火性材料から作られてもよいし、異なる耐火性材料から作られてもよい。一実施形態では、ベアリングブロック(472)は、GemStone(登録商標)404Aなど、約73%のAl2O3と約8%のSiCとを有するキャスタブルセラミックを有し、一方、ローラースリーブ(490)は、約70%のSiCなど、より多量のSiCを有するより硬いセラミックを有してもよい。このようなセラミックは、ADVANCER(登録商標)窒化物結合炭化ケイ素を有し得る。これにより、ベアリングブロック(472)がローラースリーブ(490)よりも先に摩耗する可能性がある。これは、ローラースリーブ(490)に比べてベアリングブロック(472)を交換する方がコスト的に有利であるため、好ましい場合がある。他のいくつかのバージョンでは、ベアリングブロック(472)は、ADVANCER(登録商標)セラミックを有してもよく、および/または、ローラースリーブは、GemStone(登録商標)404Aセラミックを有し得る。
【0046】
したがって、ローラースリーブ(490)は、ジャーナル(486)とベアリングブロック(472)との間に配置されて、それぞれのジャーナル(486)とそれぞれのベアリングブロック(472)との間に耐久性のある非反応性のバリアを提供してもよい。
図18を参照すると、本実施例では、ボア(496)の内径とジャーナル(486)の外径との間に所定のクリアランス(d)が設けられている。当初、このクリアランス(d)は、ジャーナル(486)の熱膨張率とローラースリーブ(490)の熱膨張率との差から導き出され、ジャーナル(486)とローラースリーブ(490)の両方がディップタンク(20)の温度に近づくと、このクリアランス(d)は実質的になくなるという理論があった。しかしながら、本実施例では、ボア(496)とジャーナル(486)との間のクリアランス(d)は、意外にも、ジャーナル(486)とローラースリーブ(490)の熱膨張率にのみ結びついているわけではない。特に、溶融槽(20)の温度におけるジャーナル(486)とローラースリーブ(490)の間のいくらかのクリアランス(d)は、コーティング手順中のローラースリーブ(490)の耐久性を向上させるのに有益であることが分かった。したがって、本実施例では、コーティング手順の間、ボア(496)の内径とジャーナル(486)の外径との間に少なくともいくらかのクリアランス(d)が維持されてもよいことが理解されるべきである。
【0047】
上述したボア(496)の内径とジャーナル(486)の外径との間のクリアランス(d)は、ローラースリーブ(490)の耐久性向上に有益であると説明したが、本実施例では、このクリアランス(d)も制限されることを理解すべきである。例えば、ボア(496)の内径とジャーナル(486)の外径との間のクリアランス(d)が大きすぎると、溶融アルミニウム(22)の何らかの濡れが発生し得、それによって溶融金属(22)がボア(496)の内径とジャーナル(486)の外径との間のクリアランス(d)に輸送される可能性がある。これは、ローラースリーブ(490)の材料に少なくとも部分的に依存する可能性があるが、本実施例では、ボア(496)の内径とジャーナル(486)の外径との間のクリアランス(d)は、クリアランス(d)への溶融金属(22)の輸送を最小化または防止するように制限されていることを理解すべきである。また、ボア(496)とジャーナル(486)との間のクリアランス(d)は、鋼板(60)とロール部分(482)との間の摩擦によってロール(480)が回転する際に、ローラースリーブ(490)とジャーナル(486)との間の滑りを防止するために制限されてもよい。
【0048】
したがって、ローラースリーブ(490)のボア(496)の内径は、ジャーナル(486)の外径に対応した大きさとなっており、ジャーナル(486)とローラースリーブ(490)との間にクリアランスフィットを提供している。このようなクリアランスフィットは、ジャーナル(486)の熱膨張に伴うローラースリーブ(490)の割れを防止するのに十分な最小クリアランス(d)と、クリアランス(d)内への溶融金属(22)の輸送を防止するため、および/またはローラースリーブ(490)とジャーナル(486)との間の滑りを防止するための最大クリアランス(d)とを有していてもよい。いくつかの例では、動作温度における適切なクリアランス(d)は、約0.001インチから0.012インチの間であってもよい。
【0049】
例示的な使用では、鋼板(60)は、ロールアセンブリ(470)に巻き付けられる。鋼板(60)とロール(480)のロール部分(482)との間の摩擦により、鋼板(60)がロールアセンブリ(470)に対して相対的に移動すると、ロール(480)が回転する。ロール(480)の回転は、各ジャーナル(486)の対応する回転を引き起こし、これは、ローラースリーブ(490)のボア(496)の実質的に連続した滑らかな内面とジャーナル(486)の実質的に連続した滑らかな外面との間の係合を介して、各ローラースリーブ(490)の回転も引き起こす。各ジャーナル(486)と対応するボア(496)との間の適合性および各ジャーナル(486)の重量により、ジャーナル(486)とローラースリーブ(490)とがロック機構で機械的に結合されていなくても、ローラースリーブ(490)は一般にジャーナル(486)と同時に回転する。ローラースリーブ(490)および/またはロールアセンブリ(470)のさらに他の適切な構成は、本明細書の教示を考慮して、当業者には明らかであろう。
【0050】
例えば、
図19~22は、ローラースリーブ(590)が、ローラースリーブ(590)の端部の上部および下部部分から内側に延びる一対のノッチ(598)を有することを除いて、ローラースリーブ(490)と同様のローラースリーブ(590)の別の実施形態を示している。図示された実施形態では、ローラースリーブ(590)は、ローラースリーブ(590)の上部および下部にある2つのノッチ(598)を有するが、ローラースリーブ(590)は、ローラースリーブ(590)の任意の適切な位置に配置された任意の適切な数のノッチ(598)を有してもよい。したがって、ローラースリーブ(590)は、
図23に示すように、ローラースリーブ(590)がジャーナル(586)の自由端にノッチ(598)を設けてジャーナル(586)について配置されるように、ジャーナル(586)と組み合わされてもよい。次に、バー(599)を、ローラースリーブ(590)の自由端に沿ってローラースリーブ(590)のノッチ(598)内に挿入してもよい。バー(599)は、ジャーナル(586)の自由端と固定され、それにより、バー(599)を介してジャーナル(586)とローラースリーブ(590)を機械的に結合してもよい。
【0051】
実施例
以下の実施例は、本明細書の教示を組み合わせたり適用したりすることができる様々な非網羅的な方法に関するものである。以下の実施例は、本願または本願の後続出願においていつでも提示される可能性のある任意の請求項の範囲を制限することを意図していないことを理解すべきである。免責事項は意図されていない。以下の実施例は、単に例示を目的としているに過ぎない。本明細書の様々な教示は、多数の他の方法で配置され、適用され得ることが企図されている。また、いくつかのバリエーションでは、以下の実施例で言及されている特定の機能を省略することができることも考えられる。したがって、本発明者または本発明者の利益継承者によって後にそのように明示されない限り、以下で言及される態様または特徴のいずれも重要ではないとみなされるべきである。本出願または本出願に関連した後続の出願において、以下で言及されている以外の追加的な特徴を含む請求項が提示された場合、それらの追加的な特徴は、特許性に関連する理由で追加されたとは見なされないものとする。
【0052】
上述のジャーナル(86)およびローラースリーブ(90)を評価して、所望のクリアランス(d)を特定するために一連の試験を行った。この一連の試験は、以下の実施例で詳細に説明する。以下の実施例は、単に例示を目的としたものであり、他の実施例では、本明細書の教示に鑑みて当業者が理解するように、様々な代替特性を使用することができることを理解すべきである。
【0053】
実施例1
最初の試験では、上述のジャーナル(86)と同様の構造を試験して、ジャーナルの熱膨張係数の測定値を確立した。試験されたジャーナルは、スタブロールの端部に対応するハブに取り付けられたジャーナルで構成されるように、スタブロールのモックアップ部分として準備された。ジャーナルが室温(例えば、約70°F)にある間に、ジャーナルの外径、ねじ山、ねじ山の根元など、すべての表面の測定値を取得した。その後、ジャーナルを1,350°Fの温度に加熱した。加熱後すぐに、ジャーナルが加熱された状態で同じ測定を行った。室温での測定値と、ジャーナルが加熱された状態での測定値を比較した。そして、この比較をもとに、ジャーナルの熱膨張係数を実験的に算出した。その結果、ジャーナルの実験的な熱膨張係数は9.1×10-6in/in/°Fと算出された。この計算に基づいて、ジャーナル(86)とローラースリーブ(90)の間の望ましいクリアランス(d)は、約0.020インチであると仮定された。
【0054】
実施例2
2回目の試験では、実験に基づいた熱膨張係数と、ジャーナル(86)とローラースリーブ(90)との間の対応する仮定された望ましいクリアランス(d)(実施例1で特定)が、動作温度下での検証のために試験された。上述のローラースリーブ(90)と同様のローラースリーブが、St.Gobain Ceramicsから提供された。ローラースリーブの内径は先細りになっており、若干のバリが見られた。また、ローラースリーブは若干の直径差があった。しかし、試験は続けられた。
【0055】
試験の前に、ジャーナルの機械加工を行った。ジャーナルは、ローラースリーブの内径とジャーナルの外径の間のクリアランスを少なくとも0.042インチに調整するように機械加工された。このクリアランスは、高温(例えば、1,150°F)でのジャーナルとローラースリーブの間のサイズがほぼ合うように設定された。
【0056】
機械加工後、ローラースリーブとジャーナルを嵌合した。嵌合後、ローラースリーブの直径差の特性のため、ジャーナルの外径周辺の局所的な領域にクリアランスがほとんどまたはまったく存在しないことが確認された。クリアランスを改善し、全体的に緩くフィットさせるために、ローラースリーブをジャーナルから約1/4回転緩めた。この構成では、ローラースリーブとジャーナルは炉内熱処理された。
【0057】
熱処理は、ローラースリーブおよびジャーナルを、毎時150°Fで1,150°Fに嵌合するように加熱する工程を含んだ。ローラースリーブとジャーナルのアセンブリを500°Fと900°Fで炉から取り出し、クリアランスを観察した。500°Fでは、4インチ×4インチの細長い木製ブロックでアセンブリを軽く叩いた後、「まだ十分なクリアランス」があることが確認された。一方、900°Fでは、目視ではクリアランスが確認できないことがわかった。さらに、ローラースリーブが欠けて目に見える亀裂を形成していることも確認された。この段階で、ジャーナルの外径をさらに0.030インチから0.040インチ小さくすることで、欠け落ちや亀裂を回避できるのではないかという仮説を立てた。
【0058】
熱処理が完了した後、ローラースリーブにさらなる切りくずが観察された。このテストは、取り付け時の作業性を向上させるためにも、また操作中にローラースリーブが破損する可能性を回避するためにも、クリアランスが必要であることを示唆した。さらに、ローラースリーブやジャーナルのネジ山を機械加工して、ネジ山の深さの1/2だけ噛み合わせることで、ローラースリーブの耐久性が向上する可能性があると仮定された。試験時のネジ山の深さは0.200インチであった。したがって、仮説に基づくネジ山の深さの減少を適用すると、ネジ山のうち0.100インチだけが互いに噛み合うことで、ローラースリーブの追加の耐久性が達成される可能性がある。これに基づいて、ローラースリーブとジャーナルの両方のネジ山から最大0.060インチの材料を除去して、所望のフィット感を提供できることが示唆された。
【0059】
実施例3
実施例2で上述した試験の後、in situ試験を行った。このin situ試験では、上述したスタブロールアセンブリ(70)と同様のスタブロールアセンブリが準備された。スタブロールアセンブリ(70)と同様に、スタブロールアセンブリは、2つのジャーナルが含まれていた。しかし、2つのジャーナルは、1つのジャーナルが対照ジャーナルとして構成され、もう1つのジャーナルが試験ジャーナルとして構成されるように準備された。対照ジャーナルは、対照ジャーナルを介して金属ジャーナルとベアリングブロックの構成が形成されるように、標準的な慣行に従って準備された。試験ジャーナルは、ジャーナル(86)に関して上述したように準備され、上述したローラースリーブ(90)と同様のローラースリーブを含んでいた。
【0060】
試験ジャーナルと対応するローラースリーブは両方とも、試験ジャーナルと対応するローラースリーブとの間に0.220インチの最大クリアランスを提供するよう構成された。温度を上げて操作する際に、ジャーナルとローラースリーブの間のサイズ適合は必要ではなく、有害になる可能性があると仮定された。代わりに、操作中にスタブロールにかかる力は、ジャーナルのねじ山の片側がローラースリーブのねじ山に係合するだけでよいという仮説が立てられた。言い換えれば、ジャーナルの片側で完全な噛み合いが起こり、ジャーナルの反対側で限定的な噛み合いが起こる可能性があるため、合計で1/2のネジ山の噛み合いしか必要とされないということである。しかし、スタブロールアセンブリの操作時に発生する負荷を支えるためには、ある程度のクリアランスの制限が依然として望ましい。さらに、ジャーナルとローラースリーブの間に溶融アルミニウムが浸透するのを避けるためにも、クリアランスにはある程度の制限があることが依然として望ましい。そこで、試験ジャーナルとそれに対応するローラースリーブは両方とも、最大クリアランスが0.220インチになるように構成された。試験を開始する前に、ローラースリーブの一部が欠けた。そのため、試験中、ローラースリーブは試験ジャーナルを部分的にしか覆っていなかった。
【0061】
その後、スタブロールをアルミ溶湯槽に投入し、鋼板のアルミ化を行った。スタブロールアセンブリを使用して、合計583,521フィートの鋼板を処理した。スタブロールアセンブリを取り外すと、ベアリングブロックの外側に破断が見られた。スタブロール固定具からベアリングブロックを取り外すと、ベアリングブロックは4つの部分に分離した。分離した際、各破断面はアルミニウム金属で完全に被覆されていた。このコーティングパターンから、ベアリングブロックの破壊は熱衝撃による冷却時ではなく、使用中に発生したものと考えられる。嵌合する2つの破断面には大きな空隙があった。したがって、ベアリングブロックの亀裂は、ローラースリーブと試験ジャーナルの組み合わせの使用とは無関係であると判断された。
【0062】
ローラースリーブは、溝がなく、一般に厚さの損失が限られていることによって示されるように、目に見える摩耗が限られていることを示した。試験前に欠けたローラースリーブの部分は、欠けた面積のいくらかの増加を示した。しかし、この欠け落ちはローラースリーブの長さに沿って広がることはなく、ローラースリーブの保守性に影響を与えるものではなかった。対照ジャーナルと比較すると、ローラースリーブは一般的に摩耗が少なく、対照ジャーナルは典型的な摩耗が見られた。定量的には、ベアリングブロックの内径測定値(試験前と試験後)、対照ジャーナルの外径、および摩耗の様子に関する一般的な観察結果を比較すると、対照ジャーナルの摩耗率に比べてローラースリーブの摩耗率は大幅に減少した。
【0063】
実施例4
上述のジャーナル(86)と同様の別のジャーナルが準備された。このジャーナルは、上述のローラースリーブ(90)と同様のローラースリーブに結合したときに、0.220インチ+0インチ/0.005インチのクリアランスを提供するように準備されている。ジャーナルのねじ山は、ローラースリーブの不規則な内径形状に対応できるよう、丸みを帯びたピークを提供するよう機械加工された。ジャーナルとローラースリーブの間の横方向の動きの測定値が取得された。この測定の結果、0.020インチから0.040インチの横方向の動きがあり、0.060インチから0.155インチも許容できると考えられる。
【0064】
実施例5
上述のロールアセンブリ(470)と同様のロールアセンブリを準備し、in situ試験を行った。ロールアセンブリ(470)と同様に、このロールアセンブリは2つのジャーナルを含み、それぞれが上述のローラースリーブ(490)と同様のローラースリーブを有する。試験では、ローラースリーブはADVANCER(登録商標)材料で作られ、ベアリングブロックはGemStone(登録商標)404A材料で作られた。各ジャーナルと対応するローラースリーブは、いずれも、溶融槽の温度でジャーナルと対応するローラースリーブの間に0.040インチの最大クリアランスを提供するように構成された。その後、ロールアセンブリを予熱し、鋼板のアルミ化に使用する溶融アルミニウム槽に5日12時間かけて挿入し、1.9MMフィートの鋼を走らせた。スタブロールアセンブリを取り外したところ、ジャーナルが対応するローラースリーブ内で回転していることがわかり、これは、ジャーナルとローラースリーブの間のクリアランスが大きすぎることを示している。
【0065】
実施例6
別のin situ試験を行うために、上述のロールアセンブリ(470)と同様のロールアセンブリを準備した。ロールアセンブリ(470)と同様に、このロールアセンブリは2つのジャーナルを含み、それぞれが上述のローラースリーブ(490)と同様のローラースリーブを有した。試験では、ローラースリーブはADVANCER(登録商標)材料で作られ、ベアリングブロックはGemStone(登録商標)404A材料で作られた。各ジャーナルと対応するローラースリーブはいずれも、動作温度においてジャーナルと対応するローラースリーブの間に0.006インチの最大クリアランスを提供するように構成された。その後、ロールアセンブリは予熱され、鋼板のアルミ化に使用するための溶融アルミニウム槽に挿入された。このロールアセンブリを使用して、合計733,895フィートの鋼板が処理された。ロールアセンブリを取り外すと、各ベアリングブロックの摩耗は最小限であり、ブロック1の摩耗は0.140インチ、ブロック2の摩耗は0.085インチであった。また、各ローラースリーブの摩耗も少なく、スリーブ1では直径0.005インチ、スリーブ2では直径0.024インチが除去された。各ローラースリーブは、ハンマーで軽く叩くだけで、対応するジャーナルから簡単に取り外すことができた。ローラースリーブ1内のジャーナルには回転の兆候は見られなかったが、ローラースリーブ2内のジャーナルにはわずかに回転の兆候が見られ、ジャーナルとローラースリーブの間にクリアランスが大きすぎる可能性があることを示している。
【0066】
実施例7
別のin situ試験を行うために、上述のロールアセンブリ(470)と同様のロールアセンブリを準備した。ロールアセンブリ(470)と同様に、このロールアセンブリは2つのジャーナルを含み、それぞれが上述のローラースリーブ(490)と同様のローラースリーブを有する。この試験では、ローラースリーブはADVANCER(登録商標)材料で作られ、ベアリングブロックはGemStone(登録商標)404A材料で作られた。各ジャーナルと対応するローラースリーブは、いずれも動作温度でジャーナルと対応するローラースリーブの間に0.004インチの最大クリアランスを提供するように構成された。次に、ロールアセンブリを予熱し、溶融アルミニウム浴に挿入して鋼板のアルミニウム化に7日間使用し、3MMフィートの鋼を走らせた。この試験は成功したと見なされた。
【0067】
実施例8
別のin situ試験を行うために、上述のロールアセンブリ(470)と同様のロールアセンブリを準備した。ロールアセンブリ(470)と同様に、このロールアセンブリは2つのジャーナルを含み、それぞれが上述のローラースリーブ(490)と同様のローラースリーブを有する。試験では、ローラースリーブはADVANCER(登録商標)材料で作られ、ベアリングブロックはGemStone(登録商標)404A材料で作られた。各ジャーナルと対応するローラースリーブは、いずれも動作温度でジャーナルと対応するローラースリーブの間に0.004インチの最大クリアランスを提供するように構成された。次に、ロールアセンブリを予熱し、溶融アルミニウム浴に挿入して鋼板のアルミニウム化に7日間使用し、3MMフィートの鋼を走らせた。ロールアセンブリを取り外すと、ローラースリーブの1つは、直径の損失が約0.021インチと良好な状態であった。この試験は成功したとみなされた。
【0068】
実施例9
別のin situ試験を行うために、上述のロールアセンブリ(470)と同様のロールアセンブリを準備した。ロールアセンブリ(470)と同様に、このロールアセンブリは2つのジャーナルを含み、それぞれが上述のローラースリーブ(490)と同様のローラースリーブを有する。試験では、ローラースリーブはADVANCER(登録商標)材料で作られ、ベアリングブロックはGemStone(登録商標)404A材料で作られた。各ジャーナルと対応するローラースリーブは、いずれも動作温度でジャーナルと対応するローラースリーブの間に0.004インチの最大クリアランスを提供するように構成された。次に、ロールアセンブリを予熱し、溶融アルミニウム浴に挿入して、鋼板のアルミニウム化に4日23.5時間使用し、2.3MMフィートの鋼を走らせた。この試験は成功したとみなされた。両方のローラースリーブは無傷のままで、ジャーナルはローラースリーブ内で回転しなかった。ロールアセンブリを取り外すと、ローラースリーブの摩耗率は、ストリップのMMフィートあたり0.010インチであると測定された。ベアリングブロックの計算上の摩耗率は、ストリップのMMフィートあたり0.04インチから0.09インチであると決定された。
【0069】
実施例10
熱膨張試験では、上述のローラースリーブ(490)と同様のローラースリーブを、室温でジャーナル上に配置し、約0.027インチのクリアランスを確保した。この試験では、ローラースリーブはADVANCER(登録商標)材料で作られ、ジャーナルは鋼で作られた。その後、ローラースリーブとジャーナルを、1時間あたり100°F以下の熱速度で1300°Fまで加熱した。4時間の浸漬後、ローラースリーブを目視で検査し、ローラースリーブに亀裂がないことを確認した。次に、ローラースリーブとジャーナルを1350°Fに加熱し、2時間の浸漬時間を設けた。ローラースリーブを目視で検査し、ローラースリーブに亀裂がないことを確認した。このプロセスを1400°F、1450°F、1550°Fなどで最大1700°Fまで繰り返した。試験中、ローラースリーブに亀裂は見られなかった。これにより、このような材料とクリアランスを有するジャーナルとローラースリーブの間の熱膨張は、ローラースリーブの故障を引き起こさないと決定された。
【0070】
実施例11
ローラーアセンブリであって、前記ローラーアセンブリは溶融金属中に浸漬するように構成されるものであり、前記ローラーアセンブリは、(a)ロール部分と、前記ロール部分から軸方向に延びる少なくとも1つのジャーナルとを有するローラーであって、前記少なくとも1つのジャーナルが実質的に円筒形である、ローラーと;(b)ローラースリーブを通って延びるボアを有するローラースリーブであって、前記ローラースリーブが実質的に円筒形であり、前記ローラースリーブが前記ジャーナルの周りに配置されている、ローラースリーブと;および(c)その中に開口部を画定するベアリングブロックであって、前記ローラースリーブが、前記ベアリングブロックと前記少なくとも1つのジャーナルとの間の前記ベアリングブロックの開口部内に配置される、ベアリングブロックと、を有する、ローラーアセンブリ。
【0071】
実施例12
実施例11のローラーアセンブリにおいて、前記ローラースリーブと前記少なくとも1つのジャーナルは、前記ベアリングブロックに対して一緒に回転するように構成されている、ローラーアセンブリ。
【0072】
実施例13
実施例11または12のローラーアセンブリにおいて、前記ローラースリーブの前記ボアは、前記ボアの内面と前記少なくとも1つのジャーナルの外面との間にクリアランスフィットを提供する大きさである、ローラーアセンブリ。
【0073】
実施例14
実施例13のローラーアセンブリにおいて、前記クリアランスフィットが、前記ローラーアセンブリが溶融金属中に浸漬されても維持される、ローラーアセンブリ。
【0074】
実施例15
実施例13または14のローラーアセンブリにおいて、前記クリアランスフィットは、前記ローラースリーブと前記少なくとも1つのジャーナルとの間への溶融金属の侵入を防止する大きさである、ローラーアセンブリ。
【0075】
実施例16
実施例11~15のいずれかのローラーアセンブリにおいて、前記ローラースリーブはセラミック材料を有する、ローラーアセンブリ。
【0076】
実施例17
実施例16のローラーアセンブリにおいて、前記セラミック材料は炭化ケイ素を有する、ローラーアセンブリ。
【0077】
実施例18
実施例11~17のいずれかのローラーアセンブリにおいて、前記ベアリングブロックは、セラミック材料を有する、ローラーアセンブリ。
【0078】
実施例19
実施例18のローラーアセンブリにおいて、前記セラミック材料は炭化ケイ素を有する、ローラーアセンブリ。
【0079】
実施例20
ローラーアセンブリであって、前記ローラーアセンブリは溶融金属中に浸漬するように構成されるものであり、前記ローラーアセンブリは、(a)ロール部分と、前記ロール部分の反対側の端部から突出した2つのジャーナルとを有するローラーであって、各ジャーナルが実質的に連続した滑らかな外面を有する、ローラーと、(b)一対のローラースリーブであって、各ローラースリーブは、対応するジャーナルを受け入れるように構成されたローラースリーブを通って延びるボアを有し、各ローラースリーブのボアは、実質的に連続した滑らかな内面を有している、一対のローラースリーブと、(c)一対のベアリングブロックであって、各ベアリングブロックは、その中に開口部を規定し、前記各ベアリングブロックの開口部は、対応するローラースリーブと前記ローラースリーブ内に配置された対応するジャーナルを受け入れるように構成されている、一対のベアリングブロックと、を有する、ローラーアセンブリ。
【0080】
実施例21
実施例20のローラーアセンブリにおいて、前記各ローラースリーブのボアは、前記ボアの内面と対応するジャーナルの外面との間にクリアランスを提供する大きさである、ローラーアセンブリ。
【0081】
実施例22
実施例21のローラーアセンブリにおいて、前記クリアランスは、前記ローラーアセンブリが溶融金属に浸漬されても維持される、ローラーアセンブリ。
【0082】
実施例23
実施例21または22のローラーアセンブリにおいて、前記クリアランスは、前記ローラースリーブと対応する前記ジャーナルとの間に溶融金属が侵入するのを防止する大きさである、ローラーアセンブリ。
【0083】
実施例24
実施例21~23のいずれかローラーアセンブリにおいて、前記クリアランスは、約0.001インチから約0.012インチの間である、ローラーアセンブリ。
【0084】
実施例25
実施例20~24のいずれかのローラーアセンブリであって、前記各ローラースリーブはセラミックである、ローラーアセンブリ。
【0085】
実施例26
実施例25のローラーアセンブリにおいて、前記各ローラースリーブの前記セラミックは、少なくとも約5%の炭化ケイ素を有する、ローラーアセンブリ。
【0086】
実施例27
実施例20~26のいずれかのローラーアセンブリにおいて、前記各ベアリングブロックがセラミックである、ローラーアセンブリ。
【0087】
実施例28
実施例27のローラーアセンブリにおいて、前記各ベアリングブロックの前記セラミックは、少なくとも約5%の炭化ケイ素を有する、ローラーアセンブリ。
【0088】
実施例29
実施例20~28のいずれかのローラーアセンブリにおいて、前記各ローラースリーブは、前記各ベアリングブロックよりも多量の炭化ケイ素を有する、ローラーアセンブリ。
【0089】
実施例30
鋼コーティングラインにおけるローラーアセンブリを操作するための方法であって、ローラーのジャーナルをセラミックローラースリーブのボア内に配置する工程であって、前記ジャーナルの外面が実質的に滑らかであり、前記ローラースリーブの前記ボアの内面が実質的に滑らかである、配置する工程と、前記ローラースリーブをセラミックベアリングブロックの開口部内に配置する工程と、前記ジャーナルおよび前記ローラースリーブを前記ベアリングブロック内で一緒に回転させる工程とを有する、方法。
【0090】
本発明の様々な実施形態を示し、説明してきたが、本明細書に記載された方法およびシステムのさらなる適応は、本発明の範囲を逸脱することなく、当業者による適切な変更によって達成され得る。そのような潜在的な改変のいくつかが言及されており、他のものも当業者には明らかであろう。例えば、上述した例、実施形態、幾何学的形状、材料、寸法、比率、ステップなどは例示であり、必須ではない。したがって、本発明の範囲は、提示される可能性のある任意の請求項の観点から考慮されるべきであり、明細書および図面に示され、記載された構造および操作の詳細に限定されないと理解される。