(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】キュービット格子における低減された周波数衝突のための量子コード
(51)【国際特許分類】
G06N 10/70 20220101AFI20240308BHJP
G06N 10/20 20220101ALI20240308BHJP
【FI】
G06N10/70
G06N10/20
(21)【出願番号】P 2021562060
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 EP2020058801
(87)【国際公開番号】W WO2020216578
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-08-24
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】クロス、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】シャンベラン、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ガンベッタ、ジェイ、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ハーツバーグ、ジャレッド
(72)【発明者】
【氏名】ヨーデル、テオドール
(72)【発明者】
【氏名】ジュウ、グアンユ
【審査官】多賀 実
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-516383(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0044543(US,A1)
【文献】米国特許第9978020(US,B1)
【文献】Daniel Litinski et al.,"Combining Topological Hardware and Topological Software: Color Code Quantum Computing with Topological Superconductor Networks",arXiv.org [online],arXiv:1704.01589v2,Cornell University,2017年,pp.1-24,[2023.07.12 検索], インターネット:<URL: https://arxiv.org/abs/1704.01589v2>
【文献】James R. Wootton,"Demonstrating non-Abelian braiding of surface code defects in a five qubit experiment",arXiv.org [online],arXiv:1609.07774v3,Cornell University,2017年,pp.1-6,[2023.07.12 検索], インターネット:<URL: https://arxiv.org/abs/1609.07774v3>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 10/00-10/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子コンピュータであって、
量子プロセッサと、誤り訂正デバイスとを備え、前記量子プロセッサは、
六角格子パターンの六角形の頂点にそれぞれが実質的に位置するように、前記六角格子パターンに配置された第1の複数のキュービットと、
前記六角格子パターンの六角形の辺に実質的に沿ってそれぞれが配置された第2の複数のキュービットとを備え、
前記第1の複数のキュービットのそれぞれは、前記第2の複数のキュービットの3つの最近接キュービットに結合され、
前記第2の複数のキュービットのそれぞれは、前記第1の複数のキュービットの2つの最近接キュービットに結合され、
前記第2の複数のキュービットのそれぞれは、制御周波数での制御キュービットであり、
前記第1の複数のキュービットのそれぞれは、制御キュービットが各第1の目標周波数目標キュービットを第2の目標周波数目標キュービットに結合するように、第1の目標周波数または第2の目標周波数の1つでの目標キュービットであり、
前記誤り訂正デバイスは、データ誤りを検出し訂正するように、前記第1および第2の複数のキュービットの前記六角格子パターンに対して動作するように構成される、量子コンピュータ。
【請求項2】
前記第1の複数のキュービットは、補助キュービットであり、前記第2の複数のキュービットは、部分的にデータ・キュービットおよび部分的に補助キュービットである、請求項1に記載の量子コンピュータ。
【請求項3】
前記誤り訂正デバイスは、2つまたは4つのデータ・キュービットが関わる位相反転誤りを測定するXタイプ・ゲージ回路を備える、請求項2に記載の量子コンピュータ。
【請求項4】
前記Xタイプ・ゲージ回路は、入力として目標キュービットと制御キュービットとを有する2キュービット・ゲートを含み、
前記2キュービット・ゲートのそれぞれに対して、前記第1の複数のキュービットの1つは前記目標キュービットであり、前記第2の複数のキュービットの1つは前記制御キュービットである、
請求項3に記載の量子コンピュータ。
【請求項5】
前記誤り訂正デバイスは、2つのデータ・キュービットが関わるビット反転誤りを測定するZタイプ・ゲージ回路を備える、請求項3又は請求項4に記載の量子コンピュータ。
【請求項6】
前記誤り訂正デバイスは、複数の論理キュービットを、前記第1および第2の複数のキュービットの対応する複数にエンコードする、請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の量子コンピュータ。
【請求項7】
前記誤り訂正デバイスは、2つのデータ・キュービットが関わるビット反転誤りを測定するZタイプ・ゲージ回路を備える、請求項2乃至請求項6のいずれかに記載の量子コンピュータ。
【請求項8】
前記Zタイプ・ゲージ回路は、入力として目標キュービットと制御キュービットとを有する2キュービット・ゲートを含み、
前記2キュービット・ゲートのそれぞれに対して、前記第1の複数のキュービットの1つは前記目標キュービットであり、前記第2の複数のキュービットの1つは前記制御キュービットである、
請求項7に記載の量子コンピュータ。
【請求項9】
変形六角格子パターンに配置された複数の結合されたキュービットを備える量子プロセッサ上のデータ処理を訂正する方法であって、
複数の論理キュービットを、前記複数の結合されたキュービットの対応する複数にエンコードすることと、
前記複数の結合されたキュービットの2つまたは4つのデータ・キュービットが関わる位相反転誤りのXタイプ・ゲージ測定を行うこととを含み、
変形六角格子パターンに配置された前記複数の結合されたキュービットは、
前記六角格子パターンの六角形の頂点にそれぞれが実質的に位置するように、前記六角格子パターンに配置された第1の複数のキュービットと、
前記六角格子パターンの六角形の辺に実質的に沿ってそれぞれが配置された第2の複数のキュービットとを備え、
前記第1の複数のキュービットのそれぞれは、前記第2の複数のキュービットの3つの最近接キュービットに結合され、
前記第2の複数のキュービットのそれぞれは、前記第1の複数のキュービットの2つの最近接キュービットに結合され、
前記第2の複数のキュービットのそれぞれは、制御周波数での制御キュービットであり、
前記第1の複数のキュービットのそれぞれは、制御キュービットが各第1の目標周波数目標キュービットを第2の目標周波数目標キュービットに結合するように、第1の目標周波数または第2の目標周波数の1つでの目標キュービットである、方法。
【請求項10】
前記複数の結合されたキュービットの2つのデータ・キュービットが関わるビット反転誤りのZタイプ・ゲージ測定を行うことをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
Zタイプ・ゲージ測定を行うことは、入力として目標キュービットと制御キュービットとを有する2キュービット・ゲートを含んだZタイプ・ゲージ回路を用いることを含み、
前記2キュービット・ゲートのそれぞれに対して、前記第1の複数のキュービットの1つは前記目標キュービットであり、前記第2の複数のキュービットの1つは前記制御キュービットである、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の複数のキュービットは、補助キュービットであり、前記第2の複数のキュービットは、部分的にデータ・キュービットおよび部分的に補助キュービットである、請求項9乃至請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記Xタイプ・ゲージ測定を行うことは、入力として目標キュービットと制御キュービットとを有する2キュービット・ゲートを含んだXタイプ・ゲージ回路を用いることを含み、
前記2キュービット・ゲートのそれぞれに対して、前記第1の複数のキュービットの1つは前記目標キュービットであり、前記第2の複数のキュービットの1つは前記制御キュービットである、
請求項9乃至請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
コンピュータ・プログラムであって、変形六角格子パターンに配置された複数の結合されたキュービットを備える量子プロセッサによって実行されたとき、前記量子プロセッサに、
複数の論理キュービットを、前記複数の結合されたキュービットの対応する複数にエンコードすることと、
前記複数の結合されたキュービットの2つまたは4つのデータ・キュービットが関わる位相反転誤りのXタイプ・ゲージ測定を行うこととを行わせ、
変形六角格子パターンに配置された前記複数の結合されたキュービットは、
前記六角格子パターンの六角形の頂点にそれぞれが実質的に位置するように、前記六角格子パターンに配置された第1の複数のキュービットと、
前記六角格子パターンの六角形の辺に実質的に沿ってそれぞれが配置された第2の複数のキュービットとを備え、
前記第1の複数のキュービットのそれぞれは、前記第2の複数のキュービットの3つの最近接キュービットに結合され、
前記第2の複数のキュービットのそれぞれは、前記第1の複数のキュービットの2つの最近接キュービットに結合され、
前記第2の複数のキュービットのそれぞれは、制御周波数での制御キュービットであり、
前記第1の複数のキュービットのそれぞれは、制御キュービットが各第1の目標周波数目標キュービットを第2の目標周波数目標キュービットに結合するように、第1の目標周波数または第2の目標周波数の1つでの目標キュービットである、コンピュータ・プログラム。
【請求項15】
前記コンピュータ
・プログラムは、前記量子プロセッサによって実行されたとき、前記量子プロセッサに、前記複数の結合されたキュービットの2つのデータ・キュービットが関わるビット反転誤りのZタイプ・ゲージ測定をさらに行わせる、請求項14に記載のコンピュータ・プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の特許請求される実施形態は、量子コンピュータ、関連する方法、およびコンピュータ実行可能コードに関し、より詳細には、キュービットの六角格子を有する量子コンピュータ、関連する方法、およびコンピュータ実行可能コードに関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導キュービット・デバイスは、製造の時点で決定される周波数を有することができる。周波数の配置は、ゲート動作の品質に、延いては量子計算に影響を及ぼす。いくつかのタイプの周波数衝突は、ゲートまたはキュービットを使用不能にさせ得る。受け入れられない周波数をデバイスが有するチップは使用できず、良品のチップの歩留まりを低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さらに、ゲート動作および他のノイズ源によって導入される誤りをさらに低減するために、量子情報をエンコードすることが必要になり得る。エンコーディングは、論理(エンコードされた)キュービットの歩留まりが高くなるように選択されなければならない。既存のシステムおよび方法により、低減された周波数衝突を通して歩留まりを改善しながら、量子情報をエンコードすることは可能ではない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態によれば、量子コンピュータは量子プロセッサを含む。量子プロセッサは、六角格子パターンの六角形の頂点にそれぞれが実質的に位置するように、六角格子パターンに配置された第1の複数のキュービットと、六角格子パターンの六角形の辺に実質的に沿ってそれぞれが配置された第2の複数のキュービットとを含む。第1の複数のキュービットのそれぞれは、第2の複数のキュービットの3つの最近接キュービットに結合され、第2の複数のキュービットのそれぞれは、第1の複数のキュービットの2つの最近接キュービットに結合される。第2の複数のキュービットのそれぞれは、制御周波数での制御キュービットである。第1の複数のキュービットのそれぞれは、制御キュービットが各第1の目標周波数目標キュービットを第2の目標周波数目標キュービットに結合するように、第1の目標周波数または第2の目標周波数の1つでの目標キュービットである。量子コンピュータは、データ誤りを検出し訂正するように、第1および第2の複数のキュービットの六角格子パターンに対して動作するように構成された、誤り訂正デバイスを含む。
【0005】
本発明の実施形態によれば、変形六角格子(modified hexagonal lattice)パターンに配置された複数の結合されたキュービットを備える量子プロセッサ上のデータ処理を訂正する方法は、複数の論理キュービットを、複数の結合されたキュービットの対応する複数にエンコードすることと、複数の結合されたキュービットの2つまたは4つのデータ・キュービットが関わる位相反転誤りのXタイプ・ゲージ測定を行うこととを含む。変形六角格子パターンに配置された複数の結合されたキュービットは、六角格子パターンの六角形の頂点にそれぞれが実質的に位置するように、六角格子パターンに配置された第1の複数のキュービットと、六角格子パターンの六角形の辺に実質的に沿ってそれぞれが配置された第2の複数のキュービットとを含む。第1の複数のキュービットのそれぞれは、第2の複数のキュービットの3つの最近接キュービットに結合され、第2の複数のキュービットのそれぞれは、第1の複数のキュービットの2つの最近接キュービットに結合される。第2の複数のキュービットのそれぞれは、制御周波数での制御キュービットである。第1の複数のキュービットのそれぞれは、制御キュービットが各第1の目標周波数目標キュービットを第2の目標周波数目標キュービットに結合するように、第1の目標周波数または第2の目標周波数の1つでの目標キュービットである。
【0006】
本発明の実施形態によれば、コンピュータ実行可能媒体は、変形六角格子パターンに配置された複数の結合されたキュービットを備える量子プロセッサによって実行されたとき、量子プロセッサに、複数の論理キュービットを、複数の結合されたキュービットの対応する複数にエンコードすることと、複数の結合されたキュービットの2つまたは4つのデータ・キュービットが関わる位相反転誤りのXタイプ・ゲージ測定を行うこととを行わせる。変形六角格子パターンに配置された複数の結合されたキュービットは、六角格子パターンの六角形の頂点にそれぞれが実質的に位置するように、六角格子パターンに配置された第1の複数のキュービットと、六角格子パターンの六角形の辺に実質的に沿ってそれぞれが配置された第2の複数のキュービットとを含む。第1の複数のキュービットのそれぞれは、第2の複数のキュービットの3つの最近接キュービットに結合され、第2の複数のキュービットのそれぞれは、第1の複数のキュービットの2つの最近接キュービットに結合される。第2の複数のキュービットのそれぞれは、制御周波数での制御キュービットである。第1の複数のキュービットのそれぞれは、制御キュービットが各第1の目標周波数目標キュービットを第2の目標周波数目標キュービットに結合するように、第1の目標周波数または第2の目標周波数の1つでの目標キュービットである。
【0007】
量子コンピュータ、方法、およびコンピュータ実行可能媒体は、周波数衝突の確率の低減の目的を達成し、したがって論理キュービットのためのチップ歩留まりを増加させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の実施形態による、複数のデータ・キュービット(
図1の斜め縞模様)の単一のキュービットにおけるいずれの誤りも訂正し、1つの論理キュービットをエンコードする例示のハイブリッド・サブシステム・コードの概略図である。この例は、9個のデータ・キュービットおよび14個の補助キュービットの合計23個のキュービットを有する。
【
図2】この発明の実施形態による、例示のハイブリッド・サブシステム・コードにおける23個のキュービットへの周波数割り当ての例の概略図である。
【
図3】この発明の実施形態による、ラベル付けされたキュービットの役割を有するXタイプ測定回路の例の概略図である。
【
図4】この発明の実施形態による、ラベル付けされたキュービットの役割を有するZタイプ測定回路の例の概略図である。
【
図5】この発明の実施形態による誤り訂正格子、および従来の誤り訂正格子に対するゼロ衝突歩留まりの比較を示す図である。
【
図6】7つの交差共鳴(cross-resonance)ゲート衝突タイプの定義を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態による量子コンピュータの概略図である。
【
図8】本発明の実施形態によるデータ処理を訂正する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、この発明の実施形態による、重い(heavy)六角格子上にマッピングされた量子コードのファミリの1つのメンバを示す。円形は物理キュービット・デバイスを示す。直線はデバイスの間の接続、すなわちどのデバイスが互いに相互作用し得るかを示す。六角格子の頂点および辺上のキュービットのこの配置を「重い六角形」と呼ぶ。
【0010】
物理キュービットの集合は論理キュービットをエンコードする。論理キュービットは、誤り訂正コードによって保護されたヒルベルト空間の部分空間である。物理キュービットには、それらの機能に基づいてデータまたは補助の2つのタイプの1つが割り当てられる。データ・キュービット(データ・キュービット100、102、104、106など、
図1の六角形の辺上の斜め縞模様の円)は、単一の論理キュービットの量子状態を共同でエンコードする。補助キュービット(補助キュービット108、110、112、および114などの、
図1の白いおよび斑点で覆われた円)は、誤りの存在を明らかにするオペレータ(operator)を測定するために用いられる。新たなコードを、ハイブリッド・サブシステム・コードと呼ぶ。これは、表面コードのXタイプ・スタビライザ(stabilizer)およびベーコン・ショア・コードのZタイプ・ゲージ・オペレータを用いるので、いわゆるベーコン・ショア・コードのゲージ固定(gauge-fixing)である。
【0011】
Xタイプ・ゲージ測定(
図1の横縞模様の領域、例えば、領域116、118であり、また
図3を参照)は、2つまたは4つのデータ・キュービットが関わり、ランダムであるが相関した結果を生じ、それらは位相反転誤りを検出するために縦の列に沿って組み合わされる。Zタイプ・ゲージ・オペレータ測定(
図1の縦縞模様の領域、例えば、領域120、122であり、また
図4を参照)は、2つのデータ・キュービットが関わり、ランダムであるが相関した結果を生じ、それらはビット反転誤りを検出するために、
図1の白い空間の周りでペアに組み合わされる。格子および測定オペレータ(量子コード)は、検出可能および訂正可能な誤りの数を増加させるように、横および縦に拡張され得る。
【0012】
交差共鳴相互作用は、2キュービット量子ゲートを適用するために用いられる。これらのゲートに対する入力キュービットは、制御キュービットおよび目標キュービットと呼ばれる。制御キュービットは、目標キュービットの周波数で駆動される。制御キュービットは、グラフの次数2の頂点となるように選択され(すなわち厳密に2つの隣接体(neighbor)を有するキュービット、例えば、
図1のデータ・キュービット104および補助キュービット108)、その結果隣接した目標キュービットに対して2つだけの駆動周波数が必要となる。制御キュービットの周波数は、両方の目標キュービット周波数と異なっていなければならず、したがって合計3つの周波数が用いられる。周波数は、2キュービット・ゲートを最適化し、衝突確率を低減するように選択される。より少ない周波数を有することで、周波数の間のより大きな間隔を可能にし、それによって周波数衝突の可能性を減少させる。
【0013】
図2は、この発明の実施形態による例示のハイブリッド・サブシステム・コードにおける、23個のキュービットに対する周波数割り当ての例の概略図である。
図2の補助キュービット200、202、およびデータ・キュービット204、206など、六角形の辺上のキュービットは制御キュービットとして割り当てられ、周波数C(C=control)が与えられる。
図2の補助キュービット208、210など、六角形の頂点におけるキュービットは目標キュービットとして割り当てられ、交互の周波数T1およびT2(T=target)が与えられる。周波数割り当ては、より大きなコードおよび格子に自然な形で一般化する。
【0014】
各XタイプおよびZタイプ・オペレータは、
図3および
図4に概略的に例示されるそれぞれの量子回路を用いて測定され得る。回路は通常の意味でのフォールトトレラントである。ゲートが故障し、誤りを導入した場合、それらの誤りが他のキュービットには広がらないか、または「フラグ測定」は誤りが訂正され得るように、どのようにそれが広がったかを検出する。
【0015】
CNOTゲートの制御および目標キュービットは、周波数割り当てによって示唆される役割に一致するように、交換され、単一キュービット・アダマール・ゲートによって共役にされ得る。
【0016】
Z測定回路は、その例が
図4に示され、2つのデータ・キュービット400、402のパリティを計算し、測定する。2つのデータ・キュービット400、402は補助キュービット404に結合され、これは測定される。単一の障害は、回路内の最大でも1つのデータ・キュービットに影響し得ることを示すことができる。
【0017】
X測定回路は、4つのデータ・キュービット300、302、304、306のXタイプ・パリティを計算し、測定する。格子接続性により、障害はデータ・キュービットのペアに広がるX誤りに繋がり得る。2つのフラグ・キュービット308、310の測定は、これらの事象が生じたとき検出することができ、その結果Zタイプ・パリティ測定は正しく解釈され、誤りは訂正され得ることを示すことができる。回路は、2つのフラグ・キュービット308、310と、2つのフラグ・キュービット308、310に結合された補助キュービット312とを測定する。
【0018】
図5は、この発明の実施形態による誤り訂正格子に対する、および従来の誤り訂正格子に対するゼロ衝突歩留まりの比較を示す。我々は期待される歩留まりを調べるためにモンテ・カルロシミュレーションを用いた。デバイス周波数は、所与の平均および分散を有する正規分布からサンプルされた。周波数衝突条件およびタイプのセットが定義され、1つまたは複数の衝突が起きる場合はチップ・サンプルは不合格とされた。シミュレーション結果に基づいて、設定周波数の15~20MHz精度に対して、重い六角格子上のハイブリッド・コード(実線の曲線)は、正方形格子上の標準表面コード(破線の曲線)と比べて約10倍高い頻度でゼロ衝突チップをもたらした。
【0019】
図6は、7つの交差共鳴ゲート衝突タイプの定義を示す。本明細書で開示される格子幾何形状は、これらの周波数衝突を軽減するのに役立つ。
【0020】
したがって、本発明の実施形態は、量子プロセッサと、誤り訂正デバイスとを含む量子コンピュータを対象とする。
図7は、本発明の実施形態による量子コンピュータ700の概略図である。量子コンピュータ700は、量子プロセッサ702と、誤り訂正デバイス704とを含む。量子プロセッサ702は、六角格子パターンの六角形の頂点にそれぞれが実質的に位置するように、六角格子パターンに配置された第1の複数のキュービットを含む。例えば、キュービット706、708、および710は、
図7に例示される六角格子パターンの六角形の頂点に実質的に位置する。量子プロセッサ700は、六角格子パターンの六角形の辺に実質的に沿ってそれぞれが配置された第2の複数のキュービットを含む。例えば、キュービット712、714、および716は、六角格子パターンの六角形の辺にそれぞれが実質的に沿って配置される。第1の複数のキュービットのそれぞれは、第2の複数のキュービットの3つの最近接キュービットに結合される。例えば、キュービット708は、第1のキュービット712、第2のキュービット714、および第3のキュービット716に結合される。第2の複数のキュービットのそれぞれは、第1の複数のキュービットの2つの最近接キュービットに結合される。例えば、キュービット712は、第1のキュービット706および第2のキュービット708に結合される。第2の複数のキュービットのそれぞれは、制御周波数での制御キュービットであり、第1の複数のキュービットのそれぞれは、第1の目標周波数または第2の目標周波数の1つでの目標キュービットである。制御キュービットは、各第1の目標周波数目標キュービットを第2の目標周波数目標キュービットに結合する。誤り訂正デバイス704は、データ誤りを検出し訂正するように、第1および第2の複数のキュービットの六角格子パターンに対して動作するように構成される。
【0021】
本発明の実施形態によれば、第1の複数のキュービットは、補助キュービットであり、第2の複数のキュービットは、部分的にデータ・キュービットおよび部分的に補助キュービットである。いくつかの実施形態において、誤り訂正デバイスは、2つまたは4つのデータ・キュービットが関わる位相反転誤りを測定するXタイプ・ゲージ回路を含む。Xタイプ・ゲージ回路は、入力として目標キュービットと制御キュービットとを有する2キュービット・ゲートを含む。2キュービット・ゲートのそれぞれに対して、第1の複数のキュービットの1つは目標キュービットであり、第2の複数のキュービットの1つは制御キュービットである。
図3は、Xタイプ・ゲージ回路の例の概略図である。
【0022】
いくつかの実施形態において、誤り訂正デバイスは、2つのデータ・キュービットが関わるビット反転誤りを測定するZタイプ・ゲージ回路を含む。Zタイプ・ゲージ回路は、入力として目標キュービットと制御キュービットとを有する2キュービット・ゲートを含む。2キュービット・ゲートのそれぞれに対して、第1の複数のキュービットの1つは目標キュービットであり、第2の複数のキュービットの1つは制御キュービットである。
図4は、Zタイプ・ゲージ回路の例の概略図である。
【0023】
いくつかの実施形態において、誤り訂正デバイスは、複数の論理キュービットを、第1および第2の複数のキュービットの対応する複数にエンコードする。例えば、量子コンピュータ700は、第1および第2の複数のキュービットを備えた23個のキュービットを含むことができ、23個のキュービットは、第1の論理ビットをエンコードする。量子コンピュータ700は、追加の論理ビットをエンコードする、23個のキュービットの追加のセットを含み得る。
【0024】
図8は、本発明の実施形態によるデータ処理を訂正する方法800を示すフローチャートである。この発明の実施形態による、変形六角格子パターンに配置された複数の結合されたキュービットを含んだ量子プロセッサ上のデータ処理を訂正する方法800は、802で複数の論理キュービットを、複数の結合されたキュービットの対応する複数にエンコードすることを含む。方法は、804で複数の結合されたキュービットのうちの2つまたは4つのデータ・キュービットが関わる位相反転誤りのXタイプ・ゲージ測定を行うことを含む。複数の結合されたキュービットは、上記で述べられたように変形六角格子パターンに配置される。
【0025】
方法800は、複数の結合されたキュービットのうちの2つのデータ・キュービットが関わるビット反転誤りのZタイプ・ゲージ測定を行うことをさらに含むことができる。
【0026】
この発明の実施形態によれば、コンピュータ実行可能媒体は、変形六角格子パターンに配置された複数の結合されたキュービットを備える量子プロセッサによって実行されたとき、量子プロセッサに、複数の論理キュービットを、複数の結合されたキュービットの対応する複数にエンコードすることと、複数の結合されたキュービットのうちの2つまたは4つのデータ・キュービットが関わる位相反転誤りのXタイプ・ゲージ測定を行うこととを行わせる。複数の結合されたキュービットは、上記で述べられたように変形六角格子パターンに配置される。
【0027】
コンピュータ実行可能媒体は、量子プロセッサに、複数の結合されたキュービットのうちの2つのデータ・キュービットが関わるビット反転誤りのZタイプ・ゲージ測定をさらに行わせることができる。
【0028】
この発明のいくつかの実施形態は、変形六角格子上の結合されたデバイスの配置を対象とする。格子上のあらゆるデバイスは、最大でも3つの隣接体に結合される。変形または「重い」格子とは、辺および頂点上の追加のデバイスを指す。
【0029】
この発明のいくつかの実施形態は、重い八角格子に合わせられた量子コードのファミリを対象とする。量子コードは、誤りが検出され訂正され得るように、論理キュービットを、ノイズのある物理キュービットの集合にエンコードする。サブシステム量子コードのこのファミリは、表面コードのZタイプ・スタビライザと、ベーコン・ショア・コードのXタイプ・スタビライザとを用いる。格子に適応するのは、ベーコン・ショア・コードのゲージ固定である。
【0030】
この発明のいくつかの実施形態は、物理キュービットへの周波数の割り当てを対象とする。割り当ては、3つの周波数だけが必要となるように2キュービット・ゲートに適用されることを可能にし、周波数の間の合計の間隔を増加させ、周波数衝突を減少させる。
【0031】
この発明のいくつかの実施形態は、六角格子に合わせられた誤りシンドローム測定の方法を対象とする。シンドロームは、Xタイプ・ゲージ・オペレータおよびZタイプ・ゲージ・オペレータ測定の結果から計算される。方法は、格子上の使用可能な相互作用を利用する。方法はフォールトトレラントであり、これを達成するためにいわゆるフラグ・キュービットを用いる。
【0032】
いくつかの実施形態は、周波数衝突の確率を低減することができ、したがって論理キュービットに対するチップ歩留まりを増加させる。複数のキュービットが3つの周波数の1つを有するので、各周波数の間の間隔はより大きくなることができ、周波数衝突の可能性を低減し、したがってキュービット・チップ歩留まりを増加させる。
【0033】
本発明の様々な実施形態の説明は、例示のために提示されたが、網羅的であること、または開示される実施形態に限定されることを意図するものではない。述べられる実施形態の範囲から逸脱せずに、当業者には多くの変更形態および変形形態が明らかになるであろう。本明細書で用いられる専門用語は、実施形態の原理、実用的な応用例、または市場で見出される技術に対する技術的改良を最もよく説明するために、または他の当業者が本明細書で開示される実施形態を理解することを可能にするように選択されている。