IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社インフォマティクスの特許一覧 ▶ ユアサ商事株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社錢高組の特許一覧

特許7450660コンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラム
<>
  • 特許-コンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラム 図1
  • 特許-コンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラム 図2A
  • 特許-コンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラム 図2B
  • 特許-コンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラム 図2C
  • 特許-コンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラム 図2D
  • 特許-コンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラム 図3
  • 特許-コンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラム 図4
  • 特許-コンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラム 図5A
  • 特許-コンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラム 図5B
  • 特許-コンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラム 図6
  • 特許-コンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラム 図7
  • 特許-コンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラム 図8
  • 特許-コンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラム 図9
  • 特許-コンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】コンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/08 20060101AFI20240308BHJP
   E04F 21/24 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
E04G21/08 ESW
E04F21/24
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022075159
(22)【出願日】2022-04-28
(65)【公開番号】P2023163927
(43)【公開日】2023-11-10
【審査請求日】2023-08-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399105715
【氏名又は名称】株式会社インフォマティクス
(73)【特許権者】
【識別番号】000223285
【氏名又は名称】ユアサ商事株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000148346
【氏名又は名称】株式会社錢高組
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金野 幸治
(72)【発明者】
【氏名】寒川 朝則
(72)【発明者】
【氏名】北田 昂大
(72)【発明者】
【氏名】安部 剛
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-174971(JP,A)
【文献】特開2021-050570(JP,A)
【文献】特開2021-161846(JP,A)
【文献】特開2020-139386(JP,A)
【文献】特開2020-060018(JP,A)
【文献】特開2019-035265(JP,A)
【文献】特許第7012980(JP,B1)
【文献】特開2015-032131(JP,A)
【文献】特開2016-166478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/08
E04F 21/24
G01B 11/00
G06Q 50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイブレータと、作業者端末と、を含むコンクリート締固め管理システムであって、
前記バイブレータは、
フレッシュコンクリート内に挿入される振動体と、
前記フレッシュコンクリートに埋没しない位置に固定される3DARマーカと、
前記振動体を作動又は停止させるとともに、前記振動体が作動しているか否かを前記作業者端末に通知するスイッチと、を有し、
前記作業者端末は、
カメラと、
デプスセンサと、
前記3DARマーカを前記カメラで撮影し、前記撮影された映像に基づいて前記3DARマーカの位置及び姿勢を認識し、前記3DARマーカの位置及び姿勢に基づいて前記振動体の位置を算定し、前記スイッチからの通知に基づいて前記振動体が作動しているか否かを判定するバイブレータ認識部と、
前記バイブレータを挿入すべき位置を示すオブジェクトを、コンクリート打設現場に重畳して視認できるよう透過型ディスプレイに表示する作業指示部と、
前記バイブレータ認識部により算定された前記振動体の位置が、前記オブジェクトが示す範囲におさまっているか判定し、
前記フレッシュコンクリート上面の高さを前記デプスセンサで測定し、前記フレッシュコンクリート上面の高さと、前記バイブレータ認識部により算定された前記振動体の位置と、に基づいて前記振動体の挿入深さを算定し、
前記振動体が作動しているか否かの判定結果と、前記振動体の挿入深さの算定結果と、に基づいて締固め作業の実施時間を算定し、
前記判定結果、前記振動体の挿入深さ、又は前記締固め作業の実施時間の少なくとも1つを前記透過型ディスプレイに表示する作業状況表示部と、を有する
コンクリート締固め管理システム。
【請求項2】
前記作業指示部は、型枠面を示すオブジェクトを、前記コンクリート打設現場に重畳して視認できるよう前記透過型ディスプレイに表示し、
前記作業状況表示部は、前記フレッシュコンクリート上面の高さをデプスセンサで測定し、前記フレッシュコンクリート上面の高さと、前記型枠面の高さと、に基づいてコンクリート打設深さを算定し、前記判定結果、前記振動体の挿入深さ、又は前記締固め作業の実施時間の少なくとも1つと共に又はこれらに代えて前記コンクリート打設深さを表示する
請求項1記載のコンクリート締固め管理システム。
【請求項3】
前記作業状況表示部は、前記型枠面の高さと、前記バイブレータ認識部により算定された前記振動体の位置と、に基づいて前記振動体の高さを算定し、前記判定結果、前記振動体の挿入深さ、前記締固め作業の実施時間、又は前記コンクリート打設深さの少なくとも1つと共に又はこれらに代えて前記振動体の高さを表示する
請求項2記載のコンクリート締固め管理システム。
【請求項4】
前記バイブレータは、振動波形を計測し、計測結果を前記作業者端末に通知する振動センサをさらに有し、
前記バイブレータ認識部は、前記振動センサからの通知に基づいて前記振動波形が所定の特性を有しているか否かを判定し、
前記作業状況表示部は、前記振動波形が所定の特性を有しているか否かの判定結果に基づいて前記締固め作業の実施時間を算定し、前記判定結果、前記振動体の挿入深さ、又は前記締固め作業の実施時間の少なくとも1つと共に又はこれらに代えて、前記締固め作業の実施時間を表示する
請求項1記載のコンクリート締固め管理システム。
【請求項5】
前記バイブレータにおいて、
前記振動体はスティック状の部材により筐体に接続されており、
前記3DARマーカは前記筐体に取り付けられている
請求項1記載のコンクリート締固め管理システム。
【請求項6】
前記バイブレータにおいて、
前記振動体はホース状の部材により支持されており、
前記3DARマーカと、前記振動体と前記3DARマーカとのオフセットを一定に保つためのホース固定治具と、が前記ホース状の部材に取り付けられている
請求項1記載のコンクリート締固め管理システム。
【請求項7】
メラにより撮影された、バイブレータのフレッシュコンクリートに埋没しない位置に固定された3DARマーカの映像に基づいて前記3DARマーカの位置及び姿勢を認識し、前記3DARマーカの位置及び姿勢に基づいて前記バイブレータの振動体の位置を算定し、前記振動体を作動又は停止させるスイッチからの通知に基づいて前記振動体が作動しているか否かを判定するバイブレータ認識ステップと、
前記バイブレータを挿入すべき位置を示すオブジェクトを、コンクリート打設現場に重畳して視認できるよう透過型ディスプレイに表示する作業指示ステップと、
前記バイブレータ認識ステップで算定された前記振動体の位置が、前記オブジェクトが示す範囲におさまっているか判定し、
デプスセンサにより測定された、前記フレッシュコンクリート上面の高さに基づいて、前記フレッシュコンクリート上面の高さと、前記バイブレータ認識ステップで算定された前記振動体の位置と、に基づいて前記振動体の挿入深さを算定し、
前記振動体が作動しているか否かの判定結果と、前記振動体の挿入深さの算定結果と、に基づいて締固め作業の実施時間を算定し、
前記判定結果、前記振動体の挿入深さ、又は前記締固め作業の実施時間の少なくとも1つを前記透過型ディスプレイに表示する作業状況表示ステップと、を有する
コンクリート締固め管理方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラムに関し、特にバイブレータを使用した締固め工程を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の施工における重要な工程として、フレッシュコンクリートを型枠内に流し込み(打ち込み)、そのフレッシュコンクリートに振動を与える(締固め)工程がある。締固めにより、流し込み時にフレッシュコンクリートに混入した気泡を取り除き、フレッシュコンクリートを均質化し、型枠の隅々にまでフレッシュコンクリートを充填することができる。近年では、打ち込んだフレッシュコンクリート内部にバイブレータを挿入することにより締固めを行う方法が広く採用されている。
【0003】
典型的なバイブレータは、例えば棒型又はヘラ型等の形状を有する振動体を備えている。作業者は、型枠内に打ち込まれたフレッシュコンクリートに振動体を挿入し、所定の時間にわたり振動を与える。これを複数箇所で繰り返し実施することで、できるだけ均等な締固めを行うことができる。振動体の締固め影響範囲(以下、挿入エリアと呼ぶ)、深さ及び時間等については事前に指示されることが多いが、実際は作業者によるばらつきが生じがちである。特に挿入深さについては、作業者はフレッシュコンクリートに挿入された振動体の先端を目視確認することができないため、自身の感覚や経験に大いに依存しつつ決定している。そのため、コンクリートの品質管理という観点では、作業者によるばらつきを抑制することが課題となっていた。
【0004】
関連技術として特許文献1乃至5がある。特許文献1乃至3には、型枠周辺にARマーカを設置すること、ARマーカと締固め作業中のバイブレータとをカメラで撮像すること、その映像を使用してバイブレータの位置を算定し、締固めを行った箇所を特定することを特徴とするシステムが記載されている。
【0005】
特許文献4には、バイブレータの位置をGPSにより取得すること、作業員が装着したヘッドマウントディスプレイを使用して、当該位置にバイブレータの拡張現実画像を表示することを特徴するシステムが記載されている。
【0006】
特許文献5には、型枠周辺にARマーカを設置すること、バイブレータにスマートフォン等の端末装置を治具で固定し、端末装置のカメラでARマーカと施工現場とを撮影すること、撮影した施工現場の画像にバイブレータの拡張現実画像を重畳して端末装置等の画面に表示すること、締固め作業の実施時間をカウントして画面に表示することを特徴とするシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2021-161845号公報
【文献】特開2021-161846号公報
【文献】特開2021-161847号公報
【文献】特開219-035265号公報
【文献】特許第7012980号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1乃至3記載の手法では、ARマーカと締固め作業中のバイブレータとを同時かつ継続して撮像可能な位置に予めカメラを設置する工程が必要である。この工程には相応の時間、手間及びコストがかかる。またこの手法では、フレッシュコンクリート内に挿入された振動体の位置は、バイブレータの構成要素のうち映像から視認できる部分(例えば振動体に接続されたホース)の直下にあるものと推定される。しかしこの手法では、例えばフレッシュコンクリートの上面に対し振動体が斜めに(垂直でない角度で)挿入されている場合に、振動体の正しい位置を推定できない。加えて、このシステムは作業者に対し振動体を挿入すべき位置、深さ及び時間等を指示するための構成、並びに管理者に対し振動体を挿入した位置、深さ及び時間等を報告するための構成などは備えていない。
【0009】
特許文献4記載の手法は、フレッシュコンクリート内に挿入された振動体がGPSユニットを内蔵することを前提としている。しかし、振動体をフレッシュコンクリート内に挿入してしまうと、GPSユニットが衛星からの信号を受信できず位置測定が難しくなることが考えられる。また、GPSによる位置検出では数メートルの誤差が生じると言われており、この手法で振動体の位置を正確に再現することには限界がある。加えて、このシステムも作業者に対し振動体を挿入すべき位置、深さ及び時間等を指示するための構成、並びに管理者に対し振動体を挿入した位置、深さ及び時間等を報告するための構成などは備えていない。
【0010】
特許文献5記載の手法では、バイブレータにスマートフォン等の端末装置を取り付ける必要がある。しかしながら、作業者の手が端末装置のカメラ部を覆ってしまうと必要な情報が取得できなくなる。また、ARマーカを型枠の天端等の数カ所に配置する必要がある。この工程には相応の時間、手間及びコストがかかる。さらに、ホース式のような変形しやすい構造を有するバイブレータにおいては、端末装置とバイブレータ先端との位置関係は一定しないことが多く、端末装置の位置や姿勢だけに基づいて実際のバイブレータ先端の位置を特定することは困難である。加えて、バイブレータ先端が実際にフレッシュコンクリート内に挿入されていることを判定するために、バイブレータ先端に電極を有するセンサを備える必要がある。そのため、専用のバイブレータを用いるか、一般的なバイブレータを用いる場合にはセンサを後付けするために余分な手間とコストをかける必要が生じる。
【0011】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、バイブレータを使用した締固め工程を支援するためのコンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施の形態によれば、コンクリート締固め管理システムは、バイブレータと、作業者端末と、を含むコンクリート締固め管理システムであって、前記バイブレータは、フレッシュコンクリート内に挿入される振動体と、前記フレッシュコンクリートに埋没しない位置に固定される3DARマーカと、前記振動体を作動又は停止させるとともに、前記振動体が作動しているか否かを前記作業者端末に通知するスイッチと、を有し、前記作業者端末は、前記3DARマーカをカメラで撮影し、前記撮影された映像に基づいて前記3DARマーカの位置及び姿勢を認識し、前記3DARマーカの位置及び姿勢に基づいて前記振動体の位置を算定し、前記スイッチからの通知に基づいて前記振動体が作動しているか否かを判定するバイブレータ認識部と、前記バイブレータを挿入すべき位置を示すオブジェクトを、コンクリート打設現場に重畳して視認できるよう透過型ディスプレイに表示する作業指示部と、前記バイブレータ認識部により算定された前記振動体の位置が、前記オブジェクトが示す範囲におさまっているか判定し、前記フレッシュコンクリート上面の高さをデプスセンサで測定し、前記フレッシュコンクリート上面の高さと、前記バイブレータ認識部により算定された前記振動体の位置と、に基づいて前記振動体の挿入深さを算定し、前記振動体が作動しているか否かの判定結果と、前記振動体の挿入深さの算定結果と、に基づいて締固め作業の実施時間を算定し、前記判定結果、前記振動体の挿入深さ、又は前記締固め作業の実施時間の少なくとも1つを前記透過型ディスプレイに表示する作業状況表示部と、を有する。
一実施の形態によれば、前記作業指示部は、型枠面を示すオブジェクトを、前記コンクリート打設現場に重畳して視認できるよう前記透過型ディスプレイに表示し、前記作業状況表示部は、前記フレッシュコンクリート上面の高さをデプスセンサで測定し、前記フレッシュコンクリート上面の高さと、前記型枠面の高さと、に基づいてコンクリート打設深さを算定し、前記判定結果、前記振動体の挿入深さ、又は前記締固め作業の実施時間の少なくとも1つと共に又はこれらに代えて前記コンクリート打設深さを表示する。
一実施の形態によれば、前記作業状況表示部は、前記型枠面の高さと、前記バイブレータ認識部により算定された前記振動体の位置と、に基づいて前記振動体の高さを算定し、前記判定結果、前記振動体の挿入深さ、前記締固め作業の実施時間、又は前記コンクリート打設深さの少なくとも1つと共に又はこれらに代えて前記振動体の高さを表示する。
一実施の形態によれば、前記バイブレータは、振動波形を計測し、計測結果を前記作業者端末に通知する振動センサをさらに有し、前記バイブレータ認識部は、前記振動センサからの通知に基づいて前記振動波形が所定の特性を有しているか否かを判定し、前記作業状況表示部は、前記振動波形が所定の特性を有しているか否かの判定結果に基づいて締固め作業の実施時間を算定し、前記判定結果、前記振動体の挿入深さ、又は前記締固め作業の実施時間の少なくとも1つと共に又はこれらに代えて、前記締固め作業の実施時間を表示する。
一実施の形態によれば、前記バイブレータにおいて、前記振動体はスティック状の部材により筐体に接続されており、前記3DARマーカは前記筐体に取り付けられている。
請求項1記載のコンクリート締固め管理システム。
一実施の形態によれば、前記バイブレータにおいて、前記振動体はホース状の部材により支持されており、前記3DARマーカと、前記振動体と前記3DARマーカとのオフセットを一定に保つためのホース固定治具と、が前記ホース状の部材に取り付けられている。
一実施の形態によれば、コンクリート締固め管理方法は、バイブレータのフレッシュコンクリートに埋没しない位置に固定された3DARマーカをカメラで撮影し、前記撮影された映像に基づいて前記3DARマーカの位置及び姿勢を認識し、前記3DARマーカの位置及び姿勢に基づいて前記バイブレータの振動体の位置を算定し、前記振動体を作動又は停止させるスイッチからの通知に基づいて前記振動体が作動しているか否かを判定するバイブレータ認識ステップと、前記バイブレータを挿入すべき位置を示すオブジェクトを、コンクリート打設現場に重畳して視認できるよう透過型ディスプレイに表示する作業指示ステップと、前記バイブレータ認識部により算定された前記振動体の位置が、前記オブジェクトが示す範囲におさまっているか判定し、前記フレッシュコンクリート上面の高さをデプスセンサで測定し、前記フレッシュコンクリート上面の高さと、前記バイブレータ認識ステップで算定された前記振動体の位置と、に基づいて前記振動体の挿入深さを算定し、前記振動体が作動しているか否かの判定結果と、前記振動体の挿入深さの算定結果と、に基づいて締固め作業の実施時間を算定し、前記判定結果、前記振動体の挿入深さ、又は前記締固め作業の実施時間の少なくとも1つを前記透過型ディスプレイに表示する作業状況表示ステップと、を有する。
一実施の形態によれば、プログラムは、上記方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、バイブレータを使用した締固め工程を支援するためのコンクリート締固め管理システム、コンクリート締固め管理方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】コンクリート締固め管理システム1のハードウェア構成例を示す図である。
図2A】バイブレータ10の一例を示す図である。
図2B】バイブレータ10の一例を示す図である。
図2C】ホース固定治具18の一例を示す図である。
図2D】ホース固定治具18の一例を示す図である。
図3】作業者端末20の一例を示す図である。
図4】管理者端末30の一例を示す図である。
図5A】作業者端末20及び管理者端末30の機能構成を示すブロック図である。
図5B】作業者端末20及び管理者端末30の機能構成を示すブロック図である。
図6】作業指示部202が表示する画面の一例である。
図7】作業指示部202によるコンクリート打設深さの算出処理を示す図である。
図8】作業指示部202が表示する画面の一例である。
図9】作業状況表示部203が表示する画面の一例である。
図10】コンクリート締固め管理システム1の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施の形態1にかかるコンクリート締固め管理システム1のハードウェア構成を示す図である。コンクリート締固め管理システム1は、バイブレータ10、作業者端末20、管理者端末30を含む。
【0016】
図2Aは、バイブレータ10の一例である軽便型(ハンディタイプ)バイブレータを示す図である。バイブレータ10は、典型的には振動体11、接続部12、動力源13、スイッチ14及び3DARマーカ15を備える。
【0017】
振動体11は、例えば棒型又はヘラ型等の形状を有し、動力源13から与えられる動力により所定の振動数で振動する。
【0018】
動力源13は、例えば商用電源又はバッテリー等で駆動するモータ131を筐体130に内蔵している。
【0019】
接続部12は、振動体11と動力源13とを接続するスティック状の部材である。モータ131の回転運動は、動力源13又は振動体11内に備えられたカム等の機構によって往復運動に変換される。これにより振動体11が振動する。
【0020】
スイッチ14は、ON状態においてはモータ131を駆動させ、OFF状態においてはモータ131を停止させる。加えて、スイッチ14はいわゆるスマートスイッチ機能を有し、ON又はOFFのいずれの状態であるかをBluetooth(登録商標)通信等により作業者端末20に通知することができる。
【0021】
3DARマーカ15は、例えば6面体等の立体形状をしたARマーカである。3DARマーカ15は、例えば動力源13の筐体130の外装等、外部から容易に視認できる位置に取り付けられる。3DARマーカ15は、作業者端末20により、バイブレータ10の位置及び向きを把握するために用いられる。
【0022】
なお3DARマーカ15は、以下のような形態であっても良い。3DARマーカ15は6面体に限らず、球体等任意の立体形状であっても良い。又は、バイブレータ10の周囲4面にそれぞれQRコード(登録商標)等を貼り付けておき、これを3DARマーカ15として利用しても良い。あるいは、バイブレータ10の外形を3Dモデルとして予め作成及び記憶しておき、この3Dモデルと一致する物体が現実空間内に発見された場合に、その物体(すなわちバイブレータ10自体)を3DARマーカ15として使用しても良い(オブジェクトマーカ)。
【0023】
図2Bは、バイブレータ10の他の例(ホース型)を示す図である。バイブレータ10は、典型的には振動体11、接続部12、スイッチ14、3DARマーカ15、把手17及びホース固定治具18を備える。
【0024】
振動体11は、例えば棒型又はヘラ型等の形状を有し、図示しない動力源から与えられる動力により所定の振動数で振動する。
【0025】
接続部12は、一端に振動体11が接続されたホース状の部材である。一般に、接続部12は可撓性を有する。接続部12の他端は図示しない動力源に接続されており、動力源が発生する動力は接続部12を介して振動体11に伝達されて、振動体11が振動する。
【0026】
接続部12の途中には、把手17が設けられる。この例では、接続部12が止め金具181を介してホース固定治具18に固定され、さらに把手7がホース固定治具18に取り付けられることで、接続部12と把手17とが結合されている。把手17には、スイッチ14が備えられていても良い。スイッチ14は、ON状態において動力源を駆動させ、OFF状態においては動力源を停止させる。また、スイッチ14はいわゆるスマートスイッチ機能を有する。
【0027】
また、接続部12の途中には、3DARマーカ15が設けられる。この例では、接続部12が止め金具181を介してホース固定治具18に固定され、さらに3DARマーカ15がARマーカ固定金具182を介してホース固定治具18に取り付けられることで、接続部12と3DARマーカ15とが結合されている。3DARマーカ15は、外部から容易に視認できる位置に取り付けられる。
【0028】
図2Cは、ホース固定治具18の一例を示す図である。ホース固定治具18は、半円状の断面を有する細長い鋼材等であり、典型的にはステンレス鋼で製作される。ホース固定治具18には止め金具181、ARマーカ固定金具182、把手17が取り付けられる。止め金具181及びARマーカ固定金具182は、ホース(すなわち接続部12)の外周を締め付けて固定するホースバントとしての機能を有する。加えて、ARマーカ固定金具182は、3DARマーカ15を作業者端末20から認識可能な位置に固定する。
【0029】
図2Dは、ホース固定治具18の他の例を示す図である。ホース固定治具18は、細長い平板状の鋼材等であり、典型的にはステンレス鋼で製作される。ホース固定治具18には、同じく鋼材等で作られた補強プレート183が設けられ、曲げ剛性が担保される。ホース固定治具18には1以上の止め金具181、ARマーカ固定金具182が取り付けられる。なお本図では省略されているが、ホース固定治具18には把手17が取り付けられていても良い。止め金具181は、ホース(すなわち接続部12)を挟み込んで固定する機能を有する。ARマーカ固定金具182は、3DARマーカ15を作業者端末20から認識可能な位置に固定する。
【0030】
このように、ホース固定治具18は十分な剛性を有しており、これが可撓性を有する接続部12を支持する構造とすることで、3DARマーカ15と振動体11との相対位置(オフセット)が常に一定に保たれるようにする。換言すれば、ホース固定治具18の剛性により、3DARマーカ15から振動体11にかけてのオフセットの変化が、後述のバイブレータ認識部201による振動体11の位置検出に支障をきたさない程度(望ましくは検出誤差の範囲内)に抑制される。そのため、図2Aに示す軽便型バイブレータと同様の仕組みで、バイブレータ10の位置及び向きを把握すること(センシング)が可能となる。また、ホース固定治具18は、把手17から3DARマーカ15、振動体11にかけてのオフセットも一定に保つ。そのため、作業者は把手17を把持して振動体11の位置を定めることが容易になる。
【0031】
バイブレータ10の典型的な使用方法について説明する。
作業者は、動力源13の筐体130に設けられた取手132を把持して、接続部12の先端に取り付けられた振動体11をフレッシュコンクリート内に挿入する。作業者が筐体130に設けられたスイッチ133をオンにし、モータ131を駆動させると、フレッシュコンクリート内で振動体11が振動する。
【0032】
図3は、作業者端末20の一例を示す図である。作業者端末20は、典型的には頭部装着型の筐体にカメラ21、デプスセンサ22、慣性センサ23、処理部24、通信部25及び透過型ディスプレイ26等を備える。いわゆるHMD(Head Mounted Display)であり、例えばHololens(登録商標)等が含まれる。
【0033】
カメラ21は、現実世界の映像を撮影する。典型的には、作業者端末20を装着した作業者の視界に相当する範囲を、所定のフレームレートで撮影する。
【0034】
デプスセンサ22は、現実空間に存在する物体に赤外光等を照射し、反射してくるまでの時間を計測することで物体までの距離を測定する。デプスセンサ22は、物体上の多数の点に対して測距を行う(スキャンする)ことで3次元点群データを取得することができる。3次元点群データは、現実世界に存在する物体の形状を示す情報となる。
【0035】
慣性センサ23は、加速度又は角速度等を計測するセンサである。加速度又は角速度等は、例えば作業者端末20の移動量、移動方向、移動速度、姿勢(傾き、すなわち視線の向き)等を算出するために使用される。
【0036】
処理部24は、CPU(Central processing unit)241、メモリ242等を備えた情報処理装置であり、メモリ242に格納されたプログラムをCPU241が実行することにより所定の機能を実現する。
【0037】
通信部25は、バイブレータ10又は管理者端末30等の外部機器との通信を行う。
【0038】
透過型ディスプレイ26は、処理部24が出力する情報を表示する。作業者端末20を装着した作業者は、透過型ディスプレイ26を通して現実世界を視認するのと同時に、透過型ディスプレイ26に表示された情報を視認することができる。
【0039】
作業者端末20の基本的な機能について説明する。
作業者端末20は、作業者の周囲の現実空間に静止座標系を設定する機能を有する。ここでいう静止座標系とは、現実空間内に固定された原点及び座標軸を有する(作業者端末20が動いても原点及び座標軸が変化しない)座標系のことである。静止座標系の原点及び座標軸は、例えば現実空間内にARマーカなどの基準物を設置することにより定義できる。この場合、カメラ21が現実空間内に置かれたARマーカを撮影する。ARマーカは、典型的には所定のパターンがプリントされた平板であり、そのパターンには原点の位置と座標軸の向きを示す情報がエンコードされている。又は、3次元の物体をARマーカとして使用することもできる(3DARマーカ)。処理部24は、撮影画像に含まれたARマーカを認識及び解析し、静止座標系の原点と座標軸を定める。又は、作業者端末20の起動時の位置を原点とすることもできる。作業者端末20は、典型的には起動時に静止座標系を設定する。
【0040】
また、作業者端末20は、現実空間における自己の位置を常に認識することができる。例えばSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等の公知技術により、カメラ21又はデプスセンサ22が取得した情報に基づいて、現実世界の地図を生成すると同時に自己位置を認識することができる。認識した自己位置は、静止座標系の座標として出力することができる。
【0041】
また、作業者端末20は、任意のオブジェクトを現実空間に重畳させて表示する機能を有する。ここでいうオブジェクトとは、処理部24が生成する像であって、例えば文字、2次元画像、3次元モデル等が含まれる。処理部24は、透過型ディスプレイ26にオブジェクトを表示させる。これにより、作業者端末20を頭部に装着した作業者は、透過型ディスプレイ26を通して現実世界を視認するのと同時に、透過型ディスプレイ26に表示されたオブジェクトを視認できる。このとき処理部24は、オブジェクトを静止座標系の所定の座標に配置する。すなわち、作業者端末20を頭部に装着した作業者が立ち位置や姿勢を変えたとしても、処理部24はその変化をSLAMや慣性センサ23等で検出し、その変化に応じて透過型ディスプレイ26上でのオブジェクトの表示位置等を変化させる。これにより、作業者にとっては、現実空間内の所定の位置にオブジェクトがずっと変わらず配置されているように見える。
【0042】
また、作業者端末20は、現実空間内に存在する物体の形状を把握する機能を有する。具体的にはデプスセンサ22が、現実空間をスキャンし、物体の形状を示す3次元点群データを取得する。処理部24は、3次元点群データからポリゴンメッシュを形成することで、物体の表面を認識及び再現することができる。
【0043】
図4は、管理者端末30の一例を示す図である。管理者端末30は、典型的には板状の筐体に処理部31、通信部32及びタッチパネル方式のディスプレイ33等を内蔵したいわゆるタブレットコンピュータである。
【0044】
処理部31は、CPU(Central processing unit)311、メモリ312等を備えた情報処理装置であり、メモリ312に格納されたプログラムをCPU311が実行することにより所定の機能を実現する。
【0045】
通信部32は、バイブレータ10又は作業者端末20等の外部機器との通信を行う。
【0046】
ディスプレイ33は、処理部31が出力する情報を表示する。
【0047】
図5A及び図5Bは、作業者端末20及び管理者端末30の機能構成を示すブロック図である。
作業者端末20は、バイブレータ認識部201、作業指示部202、作業状況表示部203を有する。これらの構成要素は、処理部24のCPU241がメモリ242に格納されたプログラムを実行することにより論理的に実現される。
【0048】
バイブレータ認識部201は、現実空間に存在するバイブレータ10の位置及び姿勢(傾き)を認識する。バイブレータ認識部201は、カメラ21の撮影画像から、バイブレータ10の外装に固定された3DARマーカ15を検出し、3DARマーカ15の位置及び姿勢を認識する。またバイブレータ認識部201は、3DARマーカ15と振動体11先端との相対位置を示すオフセットを予め保持している。したがってバイブレータ認識部201は、3DARマーカ15の位置及び姿勢と、3DARマーカ15と振動体11先端との相対位置を示すオフセットに基づき、振動体11先端の座標を算出することができる。
【0049】
ここでバイブレータ認識部201は、3DARマーカ15の形状及びサイズ(例えば1辺10cmの6面体である等)に関する情報を予め保持しているものとする。バイブレータ認識部201は、カメラ21の撮影画像内に3DARマーカ15を検出した場合、それを静止座標系の中で例えば1辺10cmの6面体として認識する。すなわち、1辺10cmの6面体が静止座標系のどの座標に、どれほどの傾きをもって存在しているかを認識することができる。したがって、バイブレータ認識部201は、3DARマーカ15と振動体11先端との相対位置を示すオフセットが既知であれば、静止座標系における振動体11先端の座標も算出できることになる。
【0050】
また、バイブレータ認識部201は、バイブレータ10の作動状況を認識する。バイブレータ10のスイッチ14は、ON又はOFFのいずれの状態であるかをBluetooth(登録商標)通信等により作業者端末20に通知する。バイブレータ認識部201は、通信部25を介してこの通知を受信し、バイブレータ10が作動中であるか否かを判定する。
【0051】
作業指示部202は、コンクリート打設現場のどの位置にバイブレータ10を挿入するべきかを指示する情報を、透過型ディスプレイ26に表示する。図6は、作業指示部202が表示する指示の一例である。作業指示部202は、例えばバイブレータ10挿入エリアを示すオブジェクトを、現実世界のコンクリート打設現場に重畳して表示する。図6の例では、挿入エリアを示す3次元の直方体オブジェクトを複数並べて表示している。なお、挿入エリアは直方体以外の形状のオブジェクト、例えば立方体や円柱等によって表現されても良い。作業者は、これらの挿入エリア、すなわち図6で直方体オブジェクトにより示された領域に順次バイブレータ10を挿入していくことで、作業漏れがなく効率の良い締固め作業を実施できる。なお作業指示部202は、バイブレータ10挿入エリアの位置を示す情報、すなわち挿入エリアを示すオブジェクトを配置すべき座標を予めメモリ242に格納しているものとする。また作業指示部202は、予めメモリ242に格納された図面データを現場に重畳表示しても良い。現場への図面情報や他のオブジェクトの重畳表示は、特許6438995号をはじめとする公知技術により実現可能である。
【0052】
また作業指示部202は、フレッシュコンクリートを打設すべき深さ、バイブレータ10を挿入すべき深さ、角度及び時間等を指示する情報を、同様に透過型ディスプレイ26に表示しても良い。なお作業指示部202は、これらの情報を予めメモリ242に格納しているものとする。
【0053】
作業状況表示部203は、締固め作業の進行状況を示す情報(以下、単に作業状況という)を生成し、透過型ディスプレイ26に表示する。作業状況には、例えばフレッシュコンクリート打設深さ、振動体11の挿入深さ(振動体11のコンクリートへの挿入深さ、すなわちフレッシュコンクリート上面から振動体11先端までの垂直方向距離)、振動体11の高さ(型枠面から振動体11先端までの垂直方向距離)、位置(指示された挿入エリアに振動体11が挿入されているか否か)、中心距離(指示された挿入エリアの中心点から振動体11先端までの水平方向距離)、角度、時間(振動体11がフレッシュコンクリートに挿入されてからの作動時間)等を含みうるがこの限りではない。これらの情報は、例えば以下に示す方法で生成できる。なお以下でいう「高さ」は、いずれも現実空間に予め配置されたARマーカが定義する静止座標系原点を基準としている。
【0054】
コンクリート打設深さ:図7に示すように、作業指示部202は、予めメモリ242に格納された図面データをコンクリート打設現場に重畳表示する。図面データには型枠面(打設されるフレッシュコンクリートの底にあたる面)の高さH1を示すオブジェクト(線分)が含まれている。作業状況表示部203は、デプスセンサ22により、打設されたフレッシュコンクリート上面の高さH2を計測する。作業状況表示部203は、フレッシュコンクリート上面の高さと、型枠面の高さとの差分を計算し、コンクリート打設深さD1として出力する。コンクリート打設深さは、典型的には文字情報として透過型ディスプレイ26に表示される。
【0055】
振動体11の挿入深さ(振動体11のコンクリートへの挿入深さ):バイブレータ認識部201が、3DARマーカ15の位置及び姿勢(傾き)ならびに予め定められたオフセットに基づき、振動体11先端の座標を算出する。作業状況表示部203は、まず振動体11がフレッシュコンクリートに挿入しているか、換言すればフレッシュコンクリートと振動体11先端とが干渉しているか(フレッシュコンクリート上面の高さH2>振動体11先端の高さであるか)を判定する。干渉している場合、フレッシュコンクリート上面の高さと、振動体11先端の高さとの差分を計算し、振動体11の挿入深さ(振動体11のコンクリートへの挿入深さ)として出力する。振動体11の挿入深さ(振動体11のコンクリートへの挿入深さ)は、典型的には文字情報として透過型ディスプレイ26に表示される。
【0056】
振動体11の高さ:バイブレータ認識部201が、3DARマーカ15の位置及び姿勢(傾き)ならびに予め定められたオフセットに基づき、振動体11先端の座標を算出する。作業状況表示部203は、振動体11先端の高さと、型枠面の高さH1との差分を計算し、振動体11の高さとして出力する(なお振動体11先端の高さ>型枠面の高さH1である)。振動体11の高さは、典型的には文字情報として透過型ディスプレイ26に表示される。
【0057】
振動体11の位置:図8に示すように、作業指示部202は、例えばバイブレータ10の挿入エリア、すなわち締固めのためにバイブレータ10の振動体11を挿入すべき位置を示す3次元オブジェクトOBJを、現実世界のコンクリート打設現場に重畳して表示する。バイブレータ認識部201が、3DARマーカ15の位置及び姿勢(傾き)ならびに予め定められたオフセットに基づき、振動体11先端の座標Pを算出する。作業状況表示部203は、振動体11の先端Pが、作業指示部202が指示する挿入エリアにおさまっているか判定する。すなわち、振動体11先端Pの座標が、挿入エリアを示す3次元オブジェクトOBJの内部にあるかを判定する。判定結果として、挿入エリアにおさまっている場合は例えば「OK」を、そうでなければ「NG」を出力する。位置に関する判定結果は、典型的には文字情報として透過型ディスプレイ26に表示される。
【0058】
振動体11の中心距離:図8に示すように、作業状況表示部203は、振動体11の先端と、挿入エリアの中心点との水平方向の距離D2を算出し、これを中心距離とする。挿入エリアの中心点とは、例えば挿入エリアを示す3次元オブジェクトOBJの重心Q1である。又は、3次元オブジェクトを構成する面のうち、最も上方に位置する水平面の中心点Q2(立方体であれば天端にあたる長方形の対角線の交点、円柱であれば天端にあたる円の中心点)を挿入エリアの中心点とみなしても良い。中心距離は、典型的には文字情報として透過型ディスプレイ26に表示される。
【0059】
振動体11の角度:バイブレータ認識部201は、振動体11の軸とフレッシュコンクリート上面とのなす角度を算出して出力する。作業状況表示部203は、典型的には文字情報として透過型ディスプレイ26に角度を表示する。
【0060】
この計算を行うため、バイブレータ認識部201は、3DARマーカに対する振動体11の相対的な傾きを予め保持しているものとする。すなわち、振動体11は典型的には棒型又はヘラ型等の形状を有しているところ、その棒型又はヘラ型等の形状の軸にあたる直線が、3DARマーカに対しどの程度傾いているかを示す情報を保持しているものとする。これにより、バイブレータ認識部201は、静止座標系における3DARマーカ15の姿勢(傾き)を検出することで、間接的に、静止座標系における振動体11の軸にあたる直線の傾きを算出することが可能となる。バイブレータ認識部201は、この直線と、フレッシュコンクリート上面にあたる平面との角度を計算する。
【0061】
振動体11の挿入時間(以下、単に時間ともいう):作業状況表示部203が、フレッシュコンクリートに挿入された振動体11の挿入深さ(振動体11のコンクリートへの挿入深さ)が0を超えるか判定する。また、バイブレータ認識部201から通知されたバイブレータ10の作動状況がON(作動中)であるか判定する。好ましくは、振動体11の先端がいずれかの挿入エリアにおさまっているか判定しても良い。いずれの条件もYESである場合、すなわち作動中のバイブレータ10がフレッシュコンクリートに挿入されている場合、好ましくは所定の挿入エリア内でそれがなされている場合、作業状況表示部203はそれらの条件が満足されている間の経過時間を累計して出力する。この時間は、典型的には文字情報として透過型ディスプレイ26に表示される。
【0062】
図9に示すように、作業状況表示部203は、締固め作業の作業状況を色やグラフ等を用いて可視化することができる。この例では、作業状況のうち時間を色により可視化している。作業指示部202は、各挿入エリアにおける締固め作業実施時間の規定値(例えば10秒以上など)を予め保持しているものとする。作業状況表示部203は、各挿入エリアにおける作業時間の累計が規定値以上となった場合、その挿入エリアを示すオブジェクトを「合格」を示す色(例えば青)で彩色する。その他の場合は、作業時間の累計の規定値に対する割合に応じて、その挿入エリアを示すオブジェクトを異なる色で彩色する。例えば作業時間の累計が規定値未満3割以上であれば黄、3割未満であれば赤で彩色する。このとき、作業時間の累計を示す文字をオブジェクト近傍に表示しても良い。
【0063】
また作業状況表示部203は、フレッシュコンクリート打設深さ、振動体11の挿入深さ(振動体11のコンクリートへの挿入深さ)、型枠面から振動体11までの高さ、角度及び時間等に関する作業状況を、同様に色やグラフ等を用いて可視化しても良い。
【0064】
作業状況表示部203は、生成した作業状況をメモリ242内の記憶領域に格納する。必要に応じ、作業状況の統計値を計算し格納しても良い。例えば、フレッシュコンクリート打設深さの最大値、各挿入エリアにおいて実施された締固め作業における振動体11の挿入深さ(振動体11のコンクリートへの挿入深さ)の最小値、平均値又は最大値、型枠面から振動体11までの高さの最小値、平均値又は最大値、中心距離の最小値、平均値又は最大値、位置の判定結果、角度の最小値、平均値又は最大値、及び時間の累計等を格納できる。
【0065】
また、作業状況表示部203は、作業中に透過型ディスプレイ26に表示された可視化情報と、その時にカメラ21が撮影した現実世界の映像と、を格納しても良い。例えば図9に示すような、締固め作業の実施時間を色を用いて表現した情報を、その時の現実世界の映像とセットにして保存することができる。
【0066】
作業状況表示部203は、生成した作業状況、作業状況の統計値、作業中に透過型ディスプレイ26に表示された可視化情報、その時にカメラ21が撮影した現実世界の映像等を、通信部32を介して管理者端末30の作業状況表示部303に送信しても良い。送信は、これらの情報が生成されたなら直ちに、すなわちリアルタイムに実行される。
【0067】
管理者端末30は、作業実績表示部301、作業状況表示部303を有する。この構成要素は、処理部31のCPU311がメモリ312に格納されたプログラムを実行することにより論理的に実現される。
【0068】
作業実績表示部301は、通信部32を介して作業者端末20と通信を行い、作業状況表示部203によってメモリ242内の記憶領域に格納された過去の作業状況、作業状況の統計値、作業中に透過型ディスプレイ26に表示された可視化情報、その時にカメラ21が撮影した現実世界の映像等を取得する。作業実績表示部301は、管理者の要求に応じ、取得した作業状況等をディスプレイ33に表示する。例えば図9に示すような、締固め作業の実施時間を色を用いて表現した情報を、その時の現実世界の映像に重畳して表示することができる。また、フレッシュコンクリート打設深さや、各挿入エリアにおける各種作業状況(振動体11の挿入深さ(振動体11のコンクリートへの挿入深さ)、型枠面から振動体11までの高さ、中心距離、位置、角度及び時間等)を文字情報としてディスプレイ33に表示しても良い。
【0069】
作業状況表示部303は、通信部32を介して作業者端末20と通信を行い、作業者端末20の作業状況表示部203が生成する作業状況、作業状況の統計値、作業中に透過型ディスプレイ26に表示されている可視化情報、現在カメラ21が撮影している現実世界の映像等をリアルタイムに取得する。作業状況表示部303は、管理者の要求に応じ、ディスプレイ33に表示する。例えば図9に示すような、現時点での締固め作業の実施時間を色を用いて表現した情報を、現在の現実世界の映像に重畳して表示することができる。また、現時点でのフレッシュコンクリート打設深さや、各挿入エリアにおける各種作業状況(振動体11の挿入深さ(振動体11のコンクリートへの挿入深さ)、型枠面から振動体11までの高さ、中心距離、位置、角度及び時間等)を文字情報としてディスプレイ33に表示しても良い。
【0070】
図10のフローチャートを用いて、コンクリート締固め管理システム1の動作について時系列で説明する。
【0071】
S101:起動
作業者は、作業者端末20を頭部に装着し、プログラムを起動する。作業者端末20は、現実空間に静止座標系を設定し、SLAM機能の動作を開始する。
【0072】
S102:図面データの読み込み及び配置
作業指示部202が、メモリ242に予め格納された図面データを読み出し、現場に重畳表示する。すなわち、静止座標系に図面データを配置する。また、作業指示部202は、バイブレータ10挿入エリアを示すオブジェクトを静止座標系に配置する。配置された図面及びオブジェクトは透過型ディスプレイ26に表示される。これにより、作業員は、現実空間に重畳表示された図面及びオブジェクトを視認できるようになる。
【0073】
S103:3DARマーカ認識
バイブレータ認識部201は、カメラ21の撮影画像を取得し、その画像から、バイブレータ10の外装に固定された3DARマーカ15を検出し、3DARマーカ15の位置及び姿勢を認識する。
【0074】
S104:振動体11の位置算定
バイブレータ認識部201は、3DARマーカ15の位置及び姿勢と、3DARマーカ15と振動体11先端との相対位置を示すオフセットとに基づき、振動体11先端の座標を算出する。
【0075】
S105:振動体11の作動開始検知
バイブレータ認識部201は、例えばスイッチ14の状態を示す信号を受信して、バイブレータ10の作動状況を認識する。作動中である場合、すなわち振動体11が振動を開始している場合、S106に遷移する。
【0076】
S106:作業状況表示
作業状況表示部203は、フレッシュコンクリート上面と振動体11先端とが干渉しているか判定する。干渉している場合、振動体11の挿入深さ(振動体11のコンクリートへの挿入深さ)を算出し透過型ディスプレイ26に表示する。また、指示された挿入エリアに振動体11が挿入されているか否か、挿入角度、挿入時間等を算出及び表示しても良い。
【0077】
S107:振動体11の作動終了検知、作業結果保存
バイブレータ認識部201は、例えばスイッチ14の状態を示す信号を受信して、バイブレータ10が停止したことを認識する。作業状況表示部203は、S106で取得した作業状況や、作業状況の統計値をメモリ242内の記憶領域に保存する。また、例えば管理者端末30の要求に応じ、保存した作業状況等を管理者端末30に送信する。
【0078】
S108:作業結果閲覧
管理者端末30の作業実績表示部301は、作業者端末20から作業状況等を取得しディスプレイ33に表示する。または、作業状況表示部303が、S106と並行して作業状況表示部203が生成する作業状況等をリアルタイムに受信し、ディスプレイ33に表示しても良い。
【0079】
<他の実施形態>
バイブレータ10は、振動センサ16を備えても良い。振動センサ16は、測定結果をBluetooth(登録商標)通信等により作業者端末20に通知できるものとする。この場合、作業者端末20のバイブレータ認識部201は、通信部25を介して受信した振動測定結果を解析し、バイブレータ10の作動状態を判定することが可能である。例えばバイブレータ認識部201は、振動波形に対し高速フーリエ変換(fast Fourier transform,FFT)を行って幾つかの周波数成分に分解する。所定の周波数帯における振動レベルが所定の閾値を超える場合、バイブレータ認識部201は、バイブレータ10がフレッシュコンクリートに挿入されていると判定する。作業状況表示部203は、この状態が維持された時間の累計値を、締固め作業の実施時間として扱うことができる。
【0080】
<効果>
実施の形態によれば、バイブレータ10には3DARマーカ15が取り付けられ、フレッシュコンクリートに埋没する振動体11の位置は3DARマーカ15からのオフセットとして表される。3DARマーカ15は、作業者端末20によって常に視認可能な位置に設置されるから、振動体11が埋没してもトラッキングを継続できる。また作業者端末20は、その固有の機能により3DARマーカ15の位置及び姿勢を常に認識できるから、そこから固定的にオフセットされた振動体11の位置も常に正確に算定できる。これにより、例えばフレッシュコンクリートの上面に対し振動体11が斜めに(垂直でない角度で)挿入されている場合等であっても、振動体11の正しい位置を算定することができる。
【0081】
ここで、バイブレータ10がホース式のような変形しやすい構造を有する場合であっても、ホース固定治具18等によって3DARマーカ15と振動体11とのオフセットは一定に保たれるので、常に振動体11の正しい位置を算定することが可能である。
【0082】
実施の形態によれば、作業者端末20の作業指示部202は、振動体11を挿入すべき位置、深さ、角度及び時間等に関する指示を、現実空間に重畳して透過型ディスプレイ26に表示する。これにより、経験の少ない作業者であっても一定の品質を確保しながら締固め作業を進めることができる。
【0083】
実施の形態によれば、作業者端末20は、デプスセンサ22によりフレッシュコンクリートの上面を認識することができる。これにより、バイブレータ10自体に特別なセンサ等がなくても、振動体11の挿入を検知することや、振動体11の挿入深さ、角度、時間等の作業状況を算定することが可能となる。また、作業者端末20は、型枠面を含む図面データを施工現場に重畳することができる。これにより、コンクリート打設深さ、振動体11の深さ等の作業状況を算定することが可能となる。作業者端末20は、バイブレータ10を挿入すべき位置を示す挿入エリアを施工現場に重畳して表示することができる。これにより、振動体11の位置の適否判定や、中心距離等の作業状況を算定することが可能となる。これらの作業状況は、作業者端末20の透過型ディスプレイ26や管理者端末30のディスプレイ33にリアルタイムに表示される。よって、作業者はこれらを確認しつつ正確、均質かつ効率的に締固め作業を実施できる。また、管理者は作業の進行状況をリアルタイムで確認することが可能となる。
【0084】
実施の形態によれば、管理者端末30の作業実績表示部301は、作業者端末20が蓄積した過去の作業状況等を取得し、作業実績としてディスプレイ33に表示する。これにより、従来は管理者が手作業で作成していた品質管理の記録を、効率的かつ自動的に残すことが可能となる。
【0085】
本発明を構成する各処理手段は、ハードウェアにより構成されるものであってもよく、任意の処理をCPUにコンピュータプログラムを実行させることにより実現するものであってもよい。また、コンピュータプログラムは、様々なタイプの一時的又は非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。一時的なコンピュータ可読媒体は、例えば有線又は無線によりコンピュータに供給される電磁的な信号を含む。
【符号の説明】
【0086】
1 コンクリート締固め管理システム
10 バイブレータ
11 振動体
12 接続部
13 動力源
130 筐体
131 モータ
14 スイッチ
15 3DARマーカ
16 振動センサ
17 把手
18 ホース固定治具
181 止め金具
182 ARマーカ固定金具
183 補強プレート
20 作業者端末
21 カメラ
22 デプスセンサ
23 慣性センサ
24 処理部
241 CPU
242 メモリ
25 通信部
26 透過型ディスプレイ
201 バイブレータ認識部
202 作業指示部
203 作業状況表示部
30 管理者端末
31 処理部
311 CPU
312 メモリ
32 通信部
33 ディスプレイ
301 作業実績表示部
303 作業状況表示部
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10