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  • 特許-物理的な3D解剖学的構造モデルの製造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】物理的な3D解剖学的構造モデルの製造
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20240308BHJP
   A61B 6/00 20240101ALI20240308BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20240308BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20240308BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20240308BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240308BHJP
   G06T 17/10 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
A61B6/03 560G
A61B6/03 573
A61B6/00 530Z
A61B6/00 550A
G01T1/161 A
G01T1/161 B
A61B5/055 390
A61B5/055 380
B33Y50/00
G06T7/00 612
G06T17/10
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022143389
(22)【出願日】2022-09-09
(62)【分割の表示】P 2018543706の分割
【原出願日】2017-02-13
(65)【公開番号】P2022176214
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】16156094.1
(32)【優先日】2016-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ヴォットマイアー ジェロエン
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-265462(JP,A)
【文献】特開2015-213749(JP,A)
【文献】特開2015-092999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
A61B 5/055
G01T 1/161
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的な3D解剖学的モデルを製造するための3Dモデルデータを供給するシステムであって、
解剖学的構造の3次元画像データを収集するイメージングシステムと、
前記収集された3次元画像データを、幾何学的情報並びに付加の物質及び/又は機能情報を含む3Dモデルデータに再構成する再構成器と、
前記物理的な3D解剖学的モデルを製造する装置に前記3Dモデルデータを供給する3Dモデル供給ユニットと、
前記再構成器の再構成入力パラメータを供給するパラメータ供給器であって、前記再構成器の再構成入力パラメータは、鮮鋭なエッジを生じさせる専用の平滑化アルゴリズムを用いることによって最大のジオメトリ精度のために最適化される、パラメータ供給器と、
を有するシステム。
【請求項2】
前記パラメータ供給器は、少なくとも1つの選択可能なプリセットパラメータ設定を可能にする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記イメージングシステムが更に、前記解剖学的構造の物質情報を得るように構成される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記物質情報は、物質組成、物質密度又は有孔率のような物質の構造分布、放射線吸収又は反射特性のような物質エネルギー情報、血液又は造影剤灌流特性のような物質内における他の物質の灌流、硬組織物質及び軟組織物質の又はそれらの間のコントラストのような組織コントラスト情報、又は温度情報のうちの1つ又は複数を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記イメージングシステムは、コンピュータトモグラフィイメージングシステム、スペクトル3DX線イメージングシステム又は位相コントラストX線イメージングシステムのような3DX線イメージングシステム、磁気共鳴イメージングシステム、超音波イメージングシステム、ポジトロンエミッショントモグラフィイメージングシステム、シングルフォトンエミッションコンピュータトモグラフィシステム、又はそれらの組み合わせである、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
物理的な3D解剖学的構造モデルを製造する装置であって、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシステムから受け取られる3Dモデルデータに基づいて前記物理的な解剖学的構造モデルを製造するように構成される、装置。
【請求項7】
前記3Dモデルデータ内の物質特性及び/又は機能特性に基づいて製造出力を適応させるように構成される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記製造出力は、個々の異なるカラー、カラーグレード、個々の異なる材料パラメータに関する透明レベル、スチフネス又は硬度のような機械的特性のバリエーション、及び/又は超音波反射、透過又はX線吸収のようなイメージング特性を含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
3Dプリンタを有する、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
システムが、物理的な3D解剖学的構造モデルを製造するための3Dモデルデータを供給する方法であって、前記システムは、医用イメージングシステムと、再構成器と、3Dモデル供給ユニットと、パラメータ供給器とを有し、
前記医用イメージングシステムが解剖学的構造の3次元画像データを収集する、ステップと、
前記再構成器が、前記収集された3次元画像データを、幾何学的情報並びに付加の物質及び/又は機能情報を含む3Dモデルデータに再構成するステップと、
前記3Dモデル供給ユニットが、前記物理的な3D解剖学的構造モデルを製造する装置に前記3Dモデルデータを供給するステップと、
前記パラメータ供給器が、前記再構成器の再構成入力パラメータを供給するステップと
を有し、前記再構成器の再構成入力パラメータが、鮮鋭なエッジを生じさせる専用の平滑化アルゴリズムを用いることによって最大のジオメトリ精度のために最適化される、方法。
【請求項11】
前記医用イメージングシステムは更に、前記物理的な3D解剖学的構造モデルの物質情報及び/又は機能情報を得るように構成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記物質情報は、物質組成、物質密度のような物質の構造分布、放射線吸収又は反射特性のような物質エネルギー情報、血液又は造影剤灌流特性のような物質内における他の物質の灌流、硬組織物質及び軟組織物質の又はそれらの間のコントラストのような組織コントラスト情報、又は温度情報のうちの1つ又は複数を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記物理的な3D解剖学的構造モデルは、物質及び/又は情報を含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
物理的な3D解剖学的構造モデルを製造する方法であって、
請求項10乃至13のいずれか1項に記載の方法の各ステップと、
好適には3Dプリンティングによって、前記3Dモデルデータに基づいて前記物理的な解剖学的構造モデルを製造するステップと、
を有する方法。
【請求項15】
コンピュータ上でランされるとき、請求項10乃至13のいずれか1項に記載の各ステップ及び好適には請求項14に記載の製造するステップを実施する、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、物理的な3D解剖学的構造モデルを製造するための3Dモデルパラメータを提供するシステム及び方法、物理的な3D解剖学的構造モデルを製造する装置及び方法、並びにコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
インプラント(例えば頭蓋骨部、臀部、膝、歯のインプラント)のために又は患者のスタディのために使用される解剖学的モデルが、知られており、例えば彫刻、鋳造物、エッチングなどのさまざまな態様で製造されている。近年、解剖学的部分は、3Dプリンティングによっても製造されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
すべての製造技法において、患者の関心のある解剖学的構造の適切な解剖学的データであって、製造される解剖学的モデルの基礎をなすのに十分正確であり且つ信頼できる解剖学的データを得ることが重要である。通常、DICOMデータライブラリは、解剖学的データを得るために使用されるが、これは、特定の患者に関する個人化された解剖学的モデルの適合を保証しない。国際公開第2015/074158A1号公報は、患者の関心のある解剖学的構造の幾何学的情報を得るためにコンピュータトモグラフィイメージングを使用することを開示している。
【0004】
幾何学的データ(DICOMライブラリ又はCTスキャンから)は、モデルを製造するために直接又は間接的に使用されることができるデータに変換される。例えば、幾何学的データは、製造装置(例えば3Dプリンタ)に直接供給されることができる3D CADデータに変換される。代替として、幾何学的データは、別の装置によって最初に処理され、そののち、3Dモデル製造プロセスにおいて使用されることができる。
【0005】
しかしながら、ほとんどのスキャナは、最大限の可能な幾何学的精度を得るようには作動されないので、医用イメージングから再現可能な且つ正確な幾何学的データを得ることは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の欠点に対処し、解剖学的モデルのより正確で汎用性の高い製造を可能にすることを目的とする。
【0007】
本発明による実施形態は、物理的な3D解剖学的モデルを製造するための3Dモデルパラメータを供給するシステムに方向付けられる。システムは、解剖学的構造の3次元画像データを収集するように構成されるイメージングシステムと、収集された3次元画像データを、3Dモデルパラメータに再構成する再構成器と、物理的な3D解剖学的モデルを製造する装置に3Dモデルパラメータを直接又は間接的に供給する3Dモデル供給ユニット23と、を有する。最適化されたパラメータを供給するパラメータ供給器は、最大のジオメトリ精度のために最適化されるイメージングシステムのイメージング収集パラメータ及び/又は再構成器の再構成入力パラメータを供給する。これは、高い幾何学的な正確さを有するモデルを製造することを可能にする。
【0008】
本システムの好適な実施形態において、パラメータ供給器は、少なくとも1つの選択可能なプリセットパラメータ設定として実現される。これは、本発明の迅速な実現のために最適化されたパラメータを選択することを必要とするユーザに対し、仕事の容易さを提供する。
【0009】
本発明の好適な実施形態において、システムは更に、解剖学的構造の物質情報を得るように構成される。好適には、物質情報は、物質組成、例えば物資密度又は有孔率のような物質の構造分布、放射線吸収又は反射特性のような物質エネルギー情報、例えば血液又は造影剤の灌流特性のような物質内における他の物質の灌流、硬組織及び軟組織物質のコントラスト又はそれらの間のコントラストのような組織コントラスト情報、又は温度情報、の1又は複数を含む。この付加情報は、単に幾何学的情報を用いる場合よりも、一層汎用性の高い解剖学的モデルを得るために使用されることができる。
【0010】
好適な実施形態において、イメージングシステムは、例えばコンピュータトモグラフィイメージングシステム、好適にはスペクトル3D X線イメージングシステム又は位相コントラストX線イメージングシステムのような3D X線イメージングシステム、磁気共鳴イメージングシステム、超音波イメージングシステム、ポジトロンエミッショントモグラフィーイメージングシステム、シングルフォトンミッショントモグラフィシステム、又はそれらの組み合わせである。
【0011】
本発明は更に、物理的な3D解剖学的構造モデルを製造する装置に方向付けられ、かかる装置は、本発明によるシステムから受け取られる3Dモデルパラメータに基づいて物理的な解剖学的構造モデル13を製造するように構成される。より正確な解剖学的モデルが、このような装置を用いて得られる。
【0012】
装置は、3Dモデルパラメータ内の物質及び/又は機能特性に基づいて製造出力を適応させるように構成される。前記製造出力は、好適には、個々の異なるカラー、カラーグレード、個々の異なる物質パラメータに関する透明性レベル、スチフネス又は硬度のような機械的特性のバリエーション、及び/又は超音波反射、透過率又はX線吸収のようなイメージング特性を含む。もし存在する場合には、付加の特性が、解剖学的モデルの正確さ及び/又は融通性を改善することができる。
【0013】
装置は、好適には3Dプリンタであり、特に、本発明のすべての利点を有する解剖学的モデルを得るのに適した汎用性の高い製造装置である。
【0014】
本発明は更に、システム及び装置に対応する方法、並びに前記方法を実施するコンピュータプログラム製品に方向付けられる。
【0015】
本発明の更に他の見地及び実施形態は、以下の詳細な説明を読み理解することにより当業者によって理解される。多数の付加の利点及び利益は、好適な実施形態の以下の詳細な説明を読むことにより当業者に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】解剖学的構造の3Dパラメータを生成し、前記解剖学的構造を製造し、前記解剖学的挿入物を使用することを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、添付の図面によって説明される。
【0018】
本発明は、さまざまなコンポーネント及びコンポーネントの取り合わせ、並びにさまざまなプロセス処理及びプロセス処理の取り合わせの形を取ることができる。図面は、好適な実施形態を示すためにだけあり、本発明を制限するものとして解釈されるべきでない。よりよく視覚化するために、特定の特徴が省かれることができ、又は寸法は、一定の縮尺で描かれていない。
【0019】
本発明は、図1を使用して説明され、図1は、解剖学的挿入物を製造するために医用イメージングを使用することの非常に概略的で基本的な全体図である。この非限定的な例において、解剖学的モデルは、骨挿入物(bone insert)であり、製造は、3Dプリンティングによって実施される。しかしながら、当業者であれば、この例を、他の製造技法及び/又は適切な解剖学的モデル(例えば、他の骨構造だけでなく、完全な又は部分的な脳、心臓、脈管系又は器官モデルも含む)に如何にして適応させるかが分かる。同じ図が、モデルが得られた後の最終ステップ(107)を単に使用しないことにより、非挿入の解剖学的モデルを如何にして得るかを示す。
【0020】
物理的な解剖学的モデルは、患者の身体への埋め込みのために、一般の又は患者特有の解剖学的問題の研究のために、介入治療計画のために、又は教育的理由のために、使用されることができる。明らかに、モデルは、それらが実際の解剖学的構造に基づく場合に最も現実的であり、埋め込み又は患者特有の問題の研究の場合、これは一層重要である。解剖学的モデルの幾何学的な正確さは、モデルが、例えば骨挿入物として又は臀部、膝又は人工歯根のような交換インプラントとして身体に埋め込まれる場合に、特に重要である。解剖学的モデルがあまりに大きい又は小さい場合、わずかであっても、適合は貧弱になりえ、それにより不快さ又はインプラントに非最適の機能を引き起こし、及び/又は、外科医は、介入中にジオメトリを補正することを必要とし、これは、プロシージャを延長し、患者にリスクを加える。
【0021】
通常、幾何学的な正確さを達成するために、患者内の関心のある解剖学的構造は、医用イメージャによって医学的にスキャンされる。様々なタイプの医用イメージャが、解剖学的構造、要求される正確さ、及び/又は取得され得る他の機能情報又は物質情報に依存して、使用されることができる。
【0022】
図1において、例えば破裂、先天性異常又は疾患により欠けている部分11をもつ骨10が、医用イメージャ20によってスキャンされる(102)。この例において、医用イメージャは、ソース及び検出器を有するイメージングシステム20、例えばX線コンピュータトモグラフィ(CT)である。代替として、例えば磁気共鳴(MR)イメージングシステム、ポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)、シングルフォトンエミッションコンピュータトモグラフィ(SPECT)又は場合によっては超音波イメージャのような、他のタイプのイメージャも同様に使用されることができる。医用イメージャのタイプは、関心のある解剖学的構造に基づいて選択される。例えば骨のような固い構造の場合、X線イメージング、特にCアームX線又はCTイメージングのような3DX線イメージングが特に適切である。より軟組織の間でコントラストを得るために、MR、又は位相コントラストX線、又はCTイメージングがより適切でありうる。画像品質があまり重要でない又は他の機能情報が視覚化されるべきである場合、超音波が選択肢になりうる。
【0023】
例えば、脳構造の場合、MRが好適なモダリティである。この場合、脳の正確なジオメトリは、インプラントのためではなく、介入の正確な計画及び準備のために使用される実際の物理的なモデルのために、使用される。例えば、適用されなければならない外科ツール及びプロシージャのための正しい判断を行うために、腫瘍の正確な位置及びボリュームが表示されなければならない。例えば骨構造及び関節のような固い解剖学的構造の場合、CTイメージングが、好適な技法であり、なぜなら、それは、硬組織及び軟組織の間の最適化されたコントラストを可能にするからである。
【0024】
しかしながら、医用イメージャは、最大の幾何学的精度を有する画像を得るために最適に調整されない場合が多く、多くの場合、医用画像の幾何学的情報は、いくらか実際的な状況から逸れていることがある。この理由で、患者は、再度スキャンされなければならず、それにより、不便さ、時間遅延、及び場合によっては増大される放射線被曝をもたらし、又は、解剖学的モデルは、補正された幾何学的なデータに基づいて作り直されなければならず、又は、モデル自体が、材料を加え又は除去することにより補正されることを必要とする。何度かの繰り返しが、許容できる解剖学的モデルを得るために必要でありえ、その結果、モデルを得るための時間を長くし、増大された材料使用をもたらす。
【0025】
例えば、抽出された医用イメージングモデルの精度は、医用イメージャのタイプ及びモデル、スキャンのパラメータ設定に依存するが、更には、再構成パラメータ及びフィルタパラメータにも依存する。更に、パラメータ設定は、関心のある解剖学的構造に依存し、又はそれに関して最適化される。モデルの精度が常に同じではなく、数ミリメートルの逸脱が発生することがあるので、これは、特に解剖学的モデルが身体に後で挿入される場合、大きい不利益であり、かかる逸脱は、解剖学的モデルを製造することにおける不十分な正確さである。例えば、骨インプラントのための正確なジオメトリは、既存の骨構造の正確な測定を必要とする。数ミリメートルの不一致は、製造された解剖学的挿入物のフィッットを困難にし、又は全く不適切なものとすることがあり、それにより、製造後の補正又は挿入物の破棄を必要とする。
【0026】
本発明は、最大のジオメトリ精度のために最適化された収集パラメータ及び/又は再構成パラメータにより解剖学的構造の3次元画像データ24を生成するようにイメージングシステム20を構成することによって、上記の問題に対する解決策を提供する。最大のジオメトリ精度は、本願の文脈において、ジオメトリ情報が、他のパラメータを犠牲にしても、使用される医用イメージャによって可能とされる最大のジオメトリ精度で収集されることであると理解されるべきである。画像パラメータ選択ユニットは、イメージングシステムの最適化されたイメージング収集パラメータ及び/又は再構成器の最適化された再構成入力パラメータを選択するように構成される。これは、最適化されたスキャン収集パラメータ(例えば、放射線線量又は分布は、フィルタ最適化、検出器感度、その他)において、及び/又は最適化され又は幾何学的な情報を得るために完全に特化される再構成モデルの入力パラメータにおいて、実現されることができる。本発明の実施形態は、スキャンデータを得るためのスキャン及び収集パラメータの最適化された設定に方向付けられ、かかるパラメータは、最大の幾何学的な正確さのために収集データを最適に再構成し処理するために、幾何学的な正確さ及び/又は設定に関して最適化される。本発明の一実施形態において、収集パラメータ及び/又は再構成パラメータは、鮮鋭なエッジを有するイメージングデータを得るように最適化される。これは、ハードエッジを結果的に生じさせることが知られている収集パラメータを使用することによって、又は専用の平滑化アルゴリズム若しくは非平滑化アルゴリズムを使用することによって、実現されることができる。一般に、エッジは、このような平滑化アルゴリズムによって改善された視覚化のためにイメージングにおいて平滑化されるが、平滑化は、幾何学的情報を判定することを困難にし、複数の平滑化アルゴリズムがあるので、1つの平滑化アルゴリズムから得られる幾何学的情報は、別の平滑化アルゴリズムが使用される場合と同じ幾何学的データを生じさせることができない。
【0027】
例えば、骨インプラントのための正確なジオメトリは、実在する骨構造の正確な測定を必要とする。従って、医用イメージャ(例えばCTイメージングシステム)のスキャン収集パラメータが、骨構造対組織について最大コントラストを有するように最適化されることができる(kV及び/又はmAで最適される設定)。再構成パラメータ及びフィルタリングパラメータは、選択された関心領域の正確なセグメント化及びジオメトリ抽出を可能にするために、正確に骨体組織のインタフェースのところで最善のコントラストを得るように最適化されることができる。
【0028】
関心のある解剖学的構造の動きは、精度の低いジオメトリデータにつながることがある。従って、スキャン中の関心のある解剖学的構造の移動のため、動きアーチファクト及び/又は不完全さの低減のための付加の努力がなされることができる。高い空間解像度及び最適化された動き補正と高い時間解像度を組み合わせることは、ジオメトリデータの高い精度をもたらす。
【0029】
各々のスキャナモダリティ、タイプ及びモデル、又は特に異なる個々の製造業者から個別のスキャナは、異なる最適化された設定を有することがあり、例えば3Dプリンティングサービスのような製造サービスプロバイダは、標準プロトコルのどれが使用されるべきかスキャン用のガイドラインを提供するだけであるので、最適化されたパラメータが、(例えばユーザが選択することができるプリセットされたオプションとして)特定のスキャナのユーザに利用可能であることが非常に有利である。これは、例えば「3Dモデルのための処理」ボタン、又は最大のジオメトリ精度を達成するために最適化された設定をイメージャに使用させるプロトコルをアクティブにする選択可能な予め規定された設定のような、制御ソフトウェア又はハードウェアの可視の特徴21を提供することによって、実現されることができる。
【0030】
特定のスキャナのための最適化された収集プロトコルを決定するために、正確に寸法設計された3次元ファントムによる専用のジオメトリ較正が、プロトコル設定を較正し検証するために、使用されることができる。これは、特別な材料選択のために最適化されることもできる。
【0031】
解剖学的構造又は関心領域のインタフェースにおける空間解像度の適応は、3D CADデータフォーマットに変換される最善のデータを提供するように最適化されることができ、3D CADデータフォーマットは、製造装置へ伝達するために解剖学的モデルのモデリング及び製作のために使用される(例えばSTLフォーマット)。
【0032】
例えば3Dプリンティング会社のような、解剖学的モデルを製造する外部のサービスプロバイダは、データの最適化及び多様性を知ることなしに、データセットがイメージング装置から到来するときに彼らが受け取るデータセットを使用することしかできず、従って、医用イメージャから出力される幾何学的情報を標準化することが有利でありえ、それにより、かかる幾何学的情報は、任意の製造サービスプロバイダによって直接使用されることができる。
【0033】
本発明の洞察は、ほとんどのスキャナモダリティ又は各々のスキャナモダリティのバリエーションが、単なる幾何学的情報だけでなく、物質情報を提供することも可能であり、この付加の物質情報が、物理的な解剖学的モデルの精度及び品質を改善するために有利に使用されるだけでなく、付加情報を提供し又は解剖学的構造の特定のファセットを強調表示するために、物理的な解剖学的モデルにおいてこの付加の物質情報が使用されることである。
【0034】
例えば、あるモダリティは、特に幾何学的情報の他に機能的な対象(例えば腫瘍)の物質情報を得るために適切である。この情報は、例えば物理的なモデル内の機能的な対象(又は解剖学的対象の前部)の物質情報を強調表示し又はカラーグレーディングすることによって、又は機能的な対象の抽出された別のバージョンを提供することによって、解剖学的モデルを製造する際に使用されることができ、これは、特に、機能的な対象が、関心のある解剖学的構造(例えば肝臓内の腫瘍、肺、脳、その他)内に埋め込まれており、研究される必要がある場合に有用である。特に関心のある実施形態は、透明な材料で主解剖学的モデルを、及びカラー材料でその中の機能的な対象(例えば腫瘍及び供給血管)を製造し、腫瘍に向かう及び腫瘍内の血液透過を表示するためにカラーグレーディングを使用する。例えば、灌流イメージングにおいて、実際の血流情報は、高いジオメトリ精度を有するカラーマッピングのために使用されることができる。
【0035】
更に、付加の物質データがジオメトリ情報と組み合わされて使用される場合、解剖学的モデルの柔軟性は、オリジナルの解剖学的構造(例えば器官)に従って製造されることができる。一実施形態において、物質パラメータのマッピングは、専用のセグメント化された器官領域にマッピングされる。これは、3Dモデルデータ(例えばCADモデル)内のセグメント化された領域に、(例えばスペクトルCTを通じて)測定された特性を自動的にマッピングすることを可能にする。これは、正確な「ルックアンドフィール」モデルが、特定の目的のために、例えば、外科医がトレーニングのためにモデルの組織を切断するために、その後の実際の介入プロシージャにおけるものと同じ触覚経験(「感覚(フィーリング)」)をもつために、作られることにつながる。
【0036】
付加の物質情報は、埋め込まれることが予定される解剖学的モデルの場合にも関心があり、例えば、解剖学的モデルの安定性を評価するために、算出された骨構造密度が使用される。概して、このデータは更に、イメージングの間、解剖学的構造の向き及び位置(例えば医用イメージャにおける患者支持体上の患者の位置)に依存することができる。更に、この情報は、利用可能であり、好適に使用される。他の、更の無意識の解剖学的動き(例えば心拍の位相及び/又は肺の呼吸位相)が知られており、最善の位相が、データ収集のために選択されることができる。
【0037】
X線イメージング及び特にCTイメージングは、特に幾何学的情報のほかに物質情報を得るために有用である。定量的なX線又はCTイメージングによって、物質密度又は有孔率に関する情報及び物質のX線吸収情報が、(例えば、関心のある解剖学的構造のためのハウンズフィールドユニット値を解析することによって)得られることができる。kエッジX線又はCTイメージングの場合、関心のある解剖学的構造の中の造影剤灌流及びフロー情報が決定されることができる。X線及びCTイメージングは、特に硬組織の解剖学的構造をイメージングするのに適するが、位相コントラストX線又はCTイメージングの場合、改善された軟組織コントラストが得られ、これは、幾何学的情報を改善するだけでなく、軟組織の解剖学的構造のためのX線又はCTイメージングを使用することを可能にする。暗視野X線及びCTイメージングは、物質構造及び組織又は骨密度に関する付加情報を提供することができる。一実施形態において、解剖学的モデルは、CTイメージング情報に基づくものであり、この場合、解剖学的モデルは、ハウンズフィールドユニット情報に基づいて製造され、例えば低いハウンズフィールドユニット値を有する領域についてはより透明な色及び高いハウンズフィールドユニット値を有する領域についてはより暗い色といようなハウンズフィールド値に基づく色情報を用いて、プリンティングし又は他のやり方で製造される。
【0038】
MRイメージングは、特に軟組織又は放射線感受性のある解剖学的構造について、組織のさまざまな物質特性を提供することができる。PET及びSPECTイメージングは特に、上述されるように、腫瘍のような機能的対象の物質情報を得るために有用である。超音波が、あまり高くない解像度を提供し、このことは、上述したイメージングモダリティと同様に精確な幾何学的情報を得るためにはその使用を制限するが、あるケースでは、超音波は、幾何学的情報を得ることに十分適しており、関心のある解剖学的構造の透過、反射及び温度のような付加情報が、同時に得られることができる。当業者に利用可能な他のモダリティが同様に企図され、複数の異なるモダリティの組み合わせも企図される。
【0039】
本発明により物理的な3D解剖学的モデルを製造するための3Dモデルパラメータを供給するシステム、及び物理的な3D解剖学的構造モデルを製造する装置は、1つの組み合わされたシステムに統合されることができる。
【0040】
製造されるモデルの品質は、3Dモデルパラメータに依存する。外部の製造サービスサブライヤは、イメージング装置の製造業者のみがこのデータを提供することに影響を与えるシステムから実際に出力されるDICOMデータに関してのみ動作する。前記データの標準化は、より高品質のモデルを与え、異なるイメージングデータに基づくモデル間のより良好な比較を可能にするために、非常に有利である。データの最適化された処理、輸送及び記憶の利用可能性は、好適には標準化された「拡張DICOM」又はその他の形式で、イメージング装置から利用可能な幾何学的な及び付加の物質情報データに結びつけられ、かかる標準化された形式は、物質情報データをセグメント化、製造目的で最適化されるCAD処理のために利用可能にする。製造ハードウェアに対する改善されたデータ伝送及び潜在的な新しいデータインタフェースは、解剖学的モデルの物質特性と同様に処理、物質混合及びカラーを制御する。
【0041】
付加の物質情報は、実施されたスキャンの大部分に関してなんらかの方法で本質的に利用可能であるが、従来の技術は、解剖学的モデルの製造において使用されない。従って、付加の物質情報は、本発明の利点は、モデルの品質を改善するだけでなく、このような物理的な解剖学的モデルが、処置又は研究のために医師に提供され、更なるスキャン又はテストは必要でなくなるという可能性を拡張する。医師にとって、この付加の物質情報の物理的表現を有することは、非常に関心の高いことである。
【0042】
図1において、パラメータ供給器21から最適化された収集パラメータ又は再構成パラメータを供給(101)し、関心のある解剖学的構造をスキャニング(102)したのち、得られた3D画像データは、再構成器22によって3Dモデルデータ24に再構成され、かかる3Dモデルデータ24は、幾何学的情報を含むが、好適には、付加の物質情報及び/又は機能情報を更に含む。次いで、再構成されたデータは、3Dモデル供給器23によって処理され(104)、3Dモデル供給器23は、例えば、特定の関心領域12をセグメント化し又はインプラントを製造するために幾何学的情報25を取得し、3D画像データを3Dモデル製造のための入力データに変換する。3D製造入力データは、例えば3Dプリンタのような3D製造装置30に伝送され(105)、3D製造装置30は、幾何学的データ及び任意には付加の物質情報を使用して解剖学的モデルを製造する(106)。解剖学的モデル13は、研究のために、又は例えば本発明を例示するために図1において使用される例示的な骨10の欠けている部分11のための骨挿入物として埋め込まれるために、使用されることができる(107)。
【0043】
3D製造のための及びインプラント外科手術のための最適化された物質処理は、非常に価値ある付加情報を提供し、そのような付加情報は、一方では、医師のために視覚化されることができ、他方では、3D対象のより正確なモデリングのために使用される改良されたCADデータファイルにおいて使用されることができる。物質情報は更に、身体インタフェース物質を最適化するために又はそれに適応するように、使用されることができる。最適化されたイメージングパラメータ及び結果的に得られる画像データ24の別の応用は、これらは工業検査のために使用されることができることである。
【0044】
純粋な幾何学的情報に並ぶ付加の物質情報の使用は更に、ユーザに利用可能にされる予め決められた最適化された設定から利益を得るが、最適化された設定がなくとも利点が本質的に存在する。
【0045】
本発明による解剖学的モデルの製造のための装置30は、好適には3Dプリンタを含む。3Dプリンティングは、広範囲の物質の汎用性の高い製造技法であり、異なる解剖学的部分又は異なる解剖学的領域の異なる物質特性を製造するために異なるカラー、カラーグレード、透明性レベル、又は異なる材料を使用して、本発明の利点の多く又はすべてが実現されることを可能にする。例えば、更に、血流、腫瘍濃度、ホットスポットのような機能特性が、異なる色で着色された部分又はカラーグレーディングにマッピングされることができる。
【0046】
更に、スチフネス又は硬度のような解剖学的モデルの機械的特性のバリエーションが、実現されることができる。更に、超音波反射、透過、X線吸収のようなイメージング特性は、視覚的に又は機械的に、モデル内において表現されることができる。
【0047】
最適化されたスキャンパラメータは、コンピュータソフトウエアにおいて好適に実現され、かかるソフトウェアは、好適には更に解剖学的モデルを製造するための命令を装置に提供することを含む。
【0048】
本発明は、図面及び上述の記述において詳細に図示され記述されているが、このような図示及び記述は、説明的又は例示的なものであり、制限的なものとして考えられるべきでなく、本発明は、開示される実施形態に制限されない。
【0049】
開示される実施形態に対する他の変更例は、図面、開示及び添付の請求項の検討から、請求項に記載の本発明を実施する際に当業者によって理解され、実現されることができる。請求項において、「有する、含む(comprising)」という語は、他の構成要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数性を除外しない。単一のプロセッサ又は他のユニットは、請求項に列挙されるいくつかのアイテムの機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示さない。コンピュータプログラムは、例えば他のハードウェアと共に又はその一部として供給される光学記憶媒体又はソリッドステート媒体のような適切な媒体に記憶され/配布されることができるが、他の形態で、例えばインターネット又は他のワイヤード又はワイヤレス通信システムを通じて、配布されることもできる。請求項における任意の参照符号は、請求項の範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。
図1