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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】無線送電のシステム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/60 20160101AFI20240308BHJP
   H02J 50/30 20160101ALI20240308BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/30
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022203034
(22)【出願日】2022-12-20
(62)【分割の表示】P 2020518087の分割
【原出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2023051990
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】62/564,428
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513314090
【氏名又は名称】ワイ-チャージ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】アルパート、 オータル
(72)【発明者】
【氏名】ゴラン、 リオール
(72)【発明者】
【氏名】モール、 オリ
(72)【発明者】
【氏名】サギ、 ラン
(72)【発明者】
【氏名】ナミアス、 オメル
(72)【発明者】
【氏名】アシュシュ、 ヨーラム
(72)【発明者】
【氏名】ビダーマン、 ヨアブ
(72)【発明者】
【氏名】ミルズ-レビン、 ゾーハル
(72)【発明者】
【氏名】ロッシュ、 ヤン
(72)【発明者】
【氏名】コンフォーティ、 エヤル
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-516334(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156465(WO,A1)
【文献】特開2015-231314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/60
H02J 50/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光パワーのビームを遠隔空間に伝送する無線送電のシステムであって、
ビーム生成器ユニット、ビーム偏向ユニット及び送信器制御ユニットを含む送信器であって、前記ビーム生成器ユニットは、少なくとも一つの第1ビーム放出状態及び少なくとも一つの第2ビーム放出状態を有するビームを生成するべく適合され、前記少なくとも一つの第2ビーム放出状態はそれぞれが前記少なくとも一つの第1ビーム放出状態のいずれの最高ビーム放出レベルよりも高いビーム放出レベルを有し、前記送信器制御ユニットは機能モニタユニットを有し、前記送信器制御ユニットは(i)前記無線送電のシステムが前記少なくとも一つの第2ビーム放出状態で動作するときに前記無線送電のシステムの安全性を確保することと(ii)安全関連事象に応答する少なくとも2つの方法を使用することとを行うべく構成される、送信器と、
前記光パワーを受信する受信器であって、パワー変換デバイスを組み入れる受信器と、
受信器機能モニタユニットを有する受信器制御ユニットと、
前記送信器からのビームの人アクセス可能ビーム放出レベルを示す信号を前記送信器制御ユニットに与えるべく構成される少なくとも2つのセンサと、
前記無線送電のシステムが第1ビーム放出状態にあるか又は第2ビーム放出状態にあるかを示すべく構成される少なくとも一つの放出状態センサと
を含み、
前記無線送電のシステムが前記少なくとも一つの第2ビーム放出状態において動作している場合に前記少なくとも2つの方法はそれぞれが、
(a)前記無線送電のシステムを前記少なくとも一つの第1ビーム放出状態に切り替えるステップと、
(b)前記無線送電のシステムが前記少なくとも一つの第2ビーム放出状態に切り替わるのを防止するステップと
を行うように適合され、さらに随意的に、
(c)前記無線送電のシステムが前記少なくとも一つの第2ビーム放出状態ではなくなっていることを、前記少なくとも一つの放出状態センサを使用して検証するステップを行うようにも適合される、無線送電のシステム。
【請求項2】
さらに、
(i)前記送信器制御ユニットの機能モニタユニットからの信号が機能故障を示す事象、
(ii)前記受信器機能モニタユニットからの信号が受信器機能故障を示す事象、及び
(iii)前記少なくとも2つのセンサ間の不整合が故障を示す事象
のいずれかの事象を検出した場合に前記少なくとも2つのセンサのいずれもが人アクセス可能ビーム放出の可能性を示す信号を与えないときに前記少なくとも2つの方法を使用するべく構成される、請求項1に記載の無線送電のシステム。
【請求項3】
前記防止するステップは、
(i)切り替えを前記少なくとも一つの第2ビーム放出状態を許容しない状態に維持すること、
(ii)前記少なくとも一つの第2ビーム放出状態に切り替える命令を含まないコードを実行すること、又は
(iii)ビームシャッターを閉又は部分的に閉に維持すること
のいずれかによって行われる、請求項1に記載の無線送電のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも2つの方法のうちの第1の方法が、前記切り替えるステップ又は前記防止するステップのいずれかを行うことができない場合に前記少なくとも2つの方法のうちの第2の方法が使用される、請求項1に記載の無線送電のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも2つの方法が実質的に同時に使用される、請求項1に記載の無線送電のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも2つの方法はそれぞれが、前記無線送電のシステムを異なる第1ビーム放出状態にする、請求項1に記載の無線送電のシステム。
【請求項7】
前記異なる第1ビーム放出状態のうちの一方はゼロビーム放出状態である、請求項6に記載の無線送電のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線レーザ給電システムに関し、とりわけ安全システムを有する無線レーザ電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスを充電するべく無線電力を伝送するシステムが存在する。これらのシステ
ムは潜在的にユーザを様々なフィールド(すなわちRF、レーザ、磁気、電気又は超音波
)に暴露するので、そのようなフィールドへのユーザ暴露を防止するように設計されるあ
る種の安全システムを必要とする。
【0003】
そのようなフィールドへの人の暴露は、以下のような様々な基準、規則及び法律によっ
て規制される。
すなわち、米国連邦規則集、タイトル21、ボリューム8、チャプターI、サブチャプ
ターJパート1040、ANSIZ136.1、IEC60825規格シリーズ、並びに
国際非電離放射線委員会の推奨及び勧告、である。
【0004】
世界的に有名な専門家の知識豊富な意見を表すこれらの公報に見られるような、公衆被
ばくに対して安全とみなされる放射線レベルは、ほとんどの用途に必要とされる数ワット
の電力の送達を許容するにも不十分である。例えば、そのような安全レベルは、ほとんど
の携帯型電子デバイスにとって十分に高いとはいえないので、十分な電力を与えるには、
人、動物及び物体のビームへの暴露を回避する手段を取る必要がある。例えば、10Wh
の電池を有する携帯電話機を2時間にわたって空状態から完全充電状態まで充電する場合
、少なくとも5ワットの電力を当該電池に伝送する必要がある。その結果、少なくとも5
Wの電力を送信器から受信器まで、典型的には当該送信器から受信器へのエネルギービー
ムによって搬送する必要がある。送信器から受信器まで伝送される必要があるエネルギー
の量は高くなる。変換効率が100%をかなり下回るのが典型的だからである。
【0005】
かかる電力レベルは、様々な基準、規則及び法律により許容されるレベルを実質的に超
える。ただし、そのようなレベルの電力であっても、ビームによる被害を受ける恐れのあ
る人又は他の物に被害を引き起こし得ないことを保証する信頼できる安全システムが組み
入れられればこの限りでない。
【0006】
例えば、
米国連邦規則集(CFR)、タイトル21、ボリューム8、チャプターI、サブチャプタ
ーJパート1040(2014年4月改定)が、発光製品(レーザ製品)の性能基準を扱
っている。
【0007】
不可視波長に対しては、クラスI、クラスIII-b及びクラスIVのレーザ(クラス
II、IIa及びIIIaは、例えば可視レーザのような400nmから710nmのレ
ーザ用である)。
【0008】
不可視波長のうち、クラスIは、一般公衆使用に対して安全とみなされ、クラスIII
b及びIVは安全でないとみなされる。
【0009】
米国CFR21、ボリューム8、チャプターI、サブチャプターJパート1040によ
れば、クラスIレーザに対するMPE(最大許容暴露値)は、0.1~60秒の暴露に対
し、図1のグラフに示される。ここでわかることは、
1.最大許容暴露レベルは一般に、波長とともに増加し、暴露持続時間とともに減少する
ということである。
2.人がビームに暴露されて0.1秒後にレーザがオフにされたとしても、米国CFR2
1~1040によれば、1.25W以下の光が2.5μm超過の波長で伝送され、これよ
り短い波長ではずっと小さくなり得る。報告義務のある高信頼性システムがなければ、数
ミリワットのレーザ出力が許容されるだけであり、これは、電気に変換し直すと、ほとん
どの携帯型電子デバイスを充電するのに必要とされる電力よりも著しく少ない電力を供給
することとなる(例えば携帯電話機は完全充電に1から15Wを必要とする)。業界周知
であるが、レーザ光は、指紋及びほこりにより散乱され、透明な表面により反射又は散乱
される。1~12Wの電力を使用して充電される典型的な電話機に対してのように高電力
が伝送される場合、レーザから電力への変換非効率性(効率は典型的に50%未満である
)を考慮すると2~24Wのレーザ出力が必要となる。
【0010】
したがって、そのような典型的な電話機を充電するには、クラスIVレーザに対応する
出力を有するレーザが必要となる。クラスIVレーザは、主要ビームからの散乱放射であ
っても危険とみなされる。米国CFR21、ボリューム8、チャプターI、サブチャプタ
ーJパート1040によれば、0.5秒を超える暴露のための0.5Wを超える400n
mから1400nmのレーザは通常クラスIVレーザとみなされ、レーザの安全性を確保
するべく特別に設計された吸収要素からの散乱を例外として、かかるレーザからの散乱放
射であっても危険となり得る。かかるレーザは、多くの安全機能を有することが要求され
、キーロック、警告ラベルのような予防的な警告及び制限機能が必要とされるので、レー
ザの使用者は、安全ゴーグルを装着し、適切な訓練を受けるのが通常である。ここで、警
告ラベルの一例を示す図2を参照する。
【0011】
他方、このような高出力レーザに、当該高出力への人のアクセスを許容しない安全シス
テムが装備されていれば、それは、当該出力が高くてもクラスIレーザとなり得る。例え
ば、高出力レーザが、当該レーザビームへのアクセスを許容しない保護ハウジングに封じ
込まれている場合、それは、クラスIレーザ製品とみなされ、公衆用途に適切とされ得る
。例えば、オフィスレーザプリンタは、クラスIレーザ製品となるのが典型的であるが、
埋め込まれた高出力レーザを有している。このレーザビームは、アクセス不可能エンクロ
ージャの中に封止されているので、アクセスすることができない。
【0012】
したがって、柔軟、包括的かつ頑丈な安全システムがなければ、クラスIIIb又はク
ラスIVのレーザは、公衆用途に適切とはいえない。毎日の環境においてレーザを使用し
て電力伝送を許容するには、包括的な安全システムが必要とされるという一般的な合意が
存在する。本願の出願日において、そのようなシステムはまだ商品化されていないようで
ある。公衆用途に設計されたシステムは、問題を特定して当該問題に応答するべく、訓練
を受けたプロフェッショナルに頼ることができないという点で、訓練を受けたプロフェッ
ショナルによる操作のために設計されたシステムとは異なる。公衆に高出力レーザの使用
を許容するには、人々、動物及び物体を潜在的に有害な放射レベルに暴露するのを高信頼
性で防止する安全システムを整える必要がある。
【0013】
先行技術には、ユーザを非安全な放射レベルに暴露するのを防止するべく設計されたそ
のようなシステムが多く存在する。しかしながら、先行技術のシステムは、安全システム
自体の信頼性又は機能性を確保するべく整えられたシステム又は方法を有しない。すなわ
ち、先行技術のシステムは、準最適な条件であっても、高信頼性かつフェイスセーフの作
業を保証するようには見えない。先行技術のシステムは、安全システムが実際に予測どお
りに動くことを検証するサブシステムが装備されているようには見えない。さらに、先行
技術のシステムは、安全システムにおける所定のコンポーネントへの損傷又はその誤動作
を特定するように、及びそれに対して適切に応答するように装備されていない。最後に、
先行技術のシステムは、個別に又は組み合わせて潜在的危険性を表し得る様々な変化する
環境因子及び内部因子又は状況を考慮に入れることがない。
【0014】
MPEを超える前に高出力ビームがオフにされるのを許容するべく十分迅速な応答時間
を可能とするか又は人、動物及び物体のビームへのアクセスを許容しない、様々な安全シ
ステムが存在し得る。いくつかの先行技術システムは、潜在的な物体又は人を検出する方
向に向けられるビーム内の潜在的な物体又は人の検出を目的とする安全及び危険検出シス
テムを含み、かかる物体が検出されると、ビームは迅速にオフにされ又はビームが減衰さ
れる。典型的に、かかる安全システムは、潜在的に危険な状況からのマージンを与えるべ
く配列される。
【0015】
ユーザを非安全な放射レベルに暴露するのと防止するべく設計される安全システムを含
む先行技術システムが記載されている。わずかな例として以下が含まれる。
【0016】
本願と共通の発明者を有する「無線レーザ電力送信器」との特許文献1において、電力
伝送前に受信器からの確認安全信号を待つシステムが記載される。この安全信号は、安全
条件が実際に満たされていることを示す(例えば、レーザが受信器により受信されてきた
ことを示す。これは、送信器と受信器との間に物体が置かれていないことを示す)。
【0017】
特許文献2又は特許文献3のようないくつかの先行技術文献において、安全システムは
、所与の構成においてシステムから潜在的に放出され得る放射のレベルを、時には安全マ
ージンを有して安全基準により設定されるアクセス可能な放出限度と比較する。かかるし
きい値を超えるとビーム放出が終了する。
【0018】
いくつかの先行技術のシステムは、安全を保証するべく複合的なシステムを使用する。
例えば特許文献2は、ソフトウェア及びコンピュータハードウェアを使用して、ビームを
操作するのが安全か否かを決定するべく複合的な計算を行う。しかしながら、システムが
複合的になればなるほど、故障、誤動作、異常及びバグを被りやすくなる。
【0019】
ハードウェア及びソフトウェアが複合的になると、高信頼性のコンポーネントの選択が
ますます困難となり、複合的なアルゴリズム及びソフトウェアの検証も疑わしくなる。受
信器から安全確認信号(「OK信号」)を受信する(そうすると、安全マージンを維持す
ることによっては、予測不能な相互作用をしかねない製造者が異なる送信器と受信器との
間の、電力ビームアプリケーションでの安全な動作を保証することができない)。
【0020】
先行技術の安全システムは多くの場合、「ビームの中の物体を検出すること」に焦点を
当てるので、システム内又は周囲環境内のいずれかに存在し得る多量の自然なばらつき、
因子及び問題を考慮に入れることができない。例えば、上述した特許文献3において、送
信器は、続けてビームをオンにする前に、受信器がレーザビーム受信に成功したことを示
す確認信号を待つ。ビームがブロックされると、受信器は、確認信号をオフにしてビーム
をオフにする。かかるシステムは、例えばビームが受信器に到達していない場合に、具体
的な潜在的危険を検出することができる。
【0021】
特許文献2のような先行技術のシステムは、CPU及びカメラ並びに画像処理プログラ
ムを使用する複合的なシステムであるが、当該システムがバグ及び誤動作に応答できると
の表示は与えられない。
例えば引用文献3の図10のステップ139、140において、一定の先行技術がコント
ローラの使用を示唆するが、このコントローラは、「連続ポンプ電力を使用して利得媒体
をオンにし続けること」を決定し、その時点でコントローラが故障又は誤動作すれば、レ
ーザがオンのままとなり、システムは、通常はコントローラにより行われる安全機能を無
視する。
【0022】
いくつかの先行技術のシステムは、通常はレーザへの電力をオフにすることにより、
又はレーザドライバに出力を下げるようにと指令するコードを送信することにより、オフ
状態であることが典型的な低放出状態に切り替わる。いくつかの先行技術のシステムは、
ビーム経路における物体を示すのが典型的な、センサからの潜在的危険の表示のときに、
低放出状態に変わる。しかしながら、この低状態に切り替える一面的な方法では、信頼性
がないことが多く、スイッチ自体に生じる故障に対する回復力はない。
【0023】
安全問題に関連し得る他の先行技術のシステムは、特許文献4~27を含む。
【0024】
したがって、公衆にアクセス可能なかつプロフェッショナルのオペレータの監督なしの
場所において、システムの安全な動作を許容するレベルまでの信頼性のあるフェイルセー
フ動作を確保する新しいシステムが必要とされている。
【0025】
このセクションで及び本明細書の他のセクションで言及される各公報の開示は、それぞ
れにおいてその全体がここに参照により組み入れられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【文献】米国特許出願公開第2010/0320362(A1)号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0019693(A1)号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0320362(A1)号明細書
【文献】米国特許第5,260,639(A)号明細書
【文献】米国特許第6,407,535(B1)号明細書
【文献】国際公開第1998/013909(A2)号
【文献】米国特許第6,633,026(B2)号明細書
【文献】米国特許第8,748,788(B2)号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0019693(A1)号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0320362(A1)号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0019693(A1)号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0012819(A1)号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0194207(A1)号明細書
【文献】米国特許第6,407,535(B1)号明細書
【文献】米国特許第6,534,705(B2)号明細書
【文献】米国特許第6,633,026(B2)号明細書
【文献】米国特許出願公開第2006/0266917(A1)号明細書
【文献】米国特許第6,967,462(B1)号明細書
【文献】米国特許第6,534,705(B2)号明細書
【文献】米国特許第8,399,824(B2)号明細書
【文献】米国特許第8,532,497(B2)号明細書
【文献】米国特許第8,600,241(B2)号明細書
【文献】米国特許第5,771,114(A)号明細書
【文献】米国特許第6,222,954(B1)号明細書
【文献】米国特許第8,022,346(B2)号明細書
【文献】米国特許第8,399,824(B2)号明細書
【文献】米国特許第8,532,497(B2)号明細書
【非特許文献】
【0027】
【文献】D. Aslam et. Al, Physical Science International Journal,4(7):962-972,2014
【文献】Edmund B Nightingale, John (JD) Douceur, Vince Orgovan, in Proceedings of EuroSys. 2011, ACM, April 1, 2011
【発明の概要】
【0028】
本開示のシステムは、複合的な電子サブコンポーネントを利用する安全システムを含む
信頼性のあるフェイルセーフな電力伝送システムを与える点で、先行技術のシステムと異
なる。このシステムは、公衆環境において起こり得るシステム内の様々な誤動作、さらに
様々な「故障」又は潜在的危険因子の双方に対して回復力がある。このようなシステムは
、従来型先行技術安全システムよりも完全に、ユーザ、動物及び資産に対する潜在的危険
を低減し、一般に、通常動作及び故障動作の双方において放出レベルが安全しきい値を超
えないことを保証する。このような保証は、プロフェッショナルの介入又は監督に頼るこ
とのない自動的な態様で可能とされる。
【0029】
以下の3つの指針によって、本開示のシステムが既存の先行技術システムから差別化さ
れる。
1.本開示のシステムは自己診断性であり、先行技術システムによっては一般に対処され
ない複数タイプのエラー、問題、誤動作、故障、異常及びバイアスを検出してこれらに応
答する。例えば、本開示のシステムの一例は、そのコンポーネントの一つにおける誤動作
を検出又は予測することができ、値又は機能がその公称の値又は機能から変化しているコ
ンポーネントを検出することができ、これらの故障に対し、安全システム動作を維持する
態様で自動的に応答する。
2.本開示のシステムは、かかるエラー、問題、誤動作、故障、異常及びバイアスから安
全に回復できるように作られる。
3.本開示のシステムは、ビーム近傍の物体の検出に加え、人アクセス可能放出とも称さ
れる放射線への人アクセス可能性が安全限界を超えることを推定することもできる。潜在
的に危険な人アクセス可能放出との用語は、安全限界を超える人アクセス可能放出を記載
するべく本開示全体にわたって使用される。本開示のシステムは、損失、誤構成、ほこり
、コンポーネント誤作動、ノイズ、バイアス、及びコンポーネントの経年劣化のような現
実の問題又はばらつきが、現実のシステムにおいては不可避であるとの事実を考慮に入れ
る。例えば、表面からの反射により、システムからの連続的な「漏洩」が与えられ、これ
は監視及び追跡する必要がある。さらに、本開示のシステムは、多数の測定値、データ点
又は計算結果を使用して多数の固有因子又は環境因子の複合リスクを推定することができ
る。すなわち、システムは、一つのセンサ又は因子が高リスクを示さないときであっても
、2つ以上のセンサ又は因子により示される複合リスクが安全確保のためのアクションを
余儀なくさせるか否かを決定することができる。そのリスクは、一つ以上のセンサからの
データの予測される通常範囲からの逸脱に基づいて決定することができる。よって、現行
の安全システムは、典型的には多数のデータ点及び洗練されたアルゴリズムを使用するこ
とにより、潜在的に危険な人アクセス可能放出の尤度を推定するという概念を使用して作
られている。
【0030】
現行のシステムの実装の一例は、少なくとも一つの送信器及び少なくとも一つの受信器
を有するのが典型的な無線送電システムである。このシステムはまた、外部制御ユニット
、さらなる送信器、電力中継器も含み、フェイルセーフ動作のための機能の多くは、送信
器、受信器及び外部モジュールの間で異なる態様で割り当てられる。
【0031】
送信器は、ビームを放出するビーム生成器、典型的には受信器の方向にビームを変更さ
せるビーム偏向ユニット、を有する。
【0032】
送信器はまた、コントローラ又は送信器制御ユニット、及び少なくとも一つのセンサを
含むのが典型的である。
【0033】
受信器はまた、コントローラ又は受信器制御ユニットと、システムの安全動作に関する
情報を与えるべく使用され得る少なくとも一つの受信器センサとを含み得る。いくつかの
実装において、例えば、反射器が受信器に組み入れられている場合、受信器センサは部分
的に、受信器の外側に実装され、送信器は、受信器データの一部を遠隔から測定すること
ができる。
【0034】
受信器はまた典型的に、電圧変換回路又は最大電力点を追跡及び追従可能な回路あり又
はなしで、光電池のような電力変換素子も含む。
【0035】
本開示のシステムは、少なくとも2つのセンサを使用する。これらは、人アクセス可能
放射がしきい値を超える潜在性の評価を決定するべく受信器に、送信器に、又はシステム
の他のいずれかの場所に位置決めすることができる。センサとの用語は、本開示全体を通
して使用されるように、人アクセス可能放射の潜在性の評価の決定に関連するデータを生
成する少なくとも一つのコンポーネントではあるが多くの場合には複数のコンポーネント
、並びに当該データの処理に使用されてしきい値を超える人アクセス可能放射の潜在性を
示す出力を得るアルゴリズム及びコンポーネント、を記載する。センサの例は、追跡セン
サ、位置センサ、タイマ、時間クロック、方向センサ、受信器配向センサ、温度センサ、
送信器放出電力センサ、受信器受信電力センサ、通信リンク、波長センサ、送信器衝撃セ
ンサ、受信器衝撃センサ、ビーム形状センサ、コンピュータメモリに格納された時刻及び
場所に関連する一組のデータ、湿度センサ、ガスセンサ、距離センサ、光センサ、ウォッ
チドッグ回路、並びに通信手段を経由した制御センターからの表示、としてよい。同じパ
ラメータを測定する2つのセンサが存在する場合がある。または、これらのセンサは異な
る比較可能パラメータを測定し得る。例えば、レーザダイオードに供給される電流が、レ
ーザドライバのための制御ワードと比較され、及びレーザダイオードから放出される光出
力と比較される。この例では、これらの3つの値はすべて、本質的に対応する値を与える
べきである。異なるセンサからのデータを入力して比較可能な結果を与えるべく、数式が
使用される場合がある。例えば、受信器における電流と電圧との積を温度依存効率で割っ
たものが、レーザから放出される出力と比較される。システムは、当該システムが高放出
状態にあるか又は低放出状態にあるかを決定するべく一つ以上の放出状態センサを有して
よい。これらの状態はここで定義される。送信器は、少なくとも2つの状態となり得る。
一つは低放出状態であり、他方の一つ以上の状態は高放出状態である。
【0036】
低放出状態とは、本開示全体にわたって使用される用語であり、既知のシステムがしき
い値未満の人アクセス可能放出を有する状態を記述する。このしきい値は、少なくとも一
つの既知の安全基準により定義される値よりも低いのが典型的である。基準との用語は、
その広い意味でここに使用され、とりわけ、安全関連の公告、規則、基準、勧告及び法律
を含む。低放出状態は典型的に、その安全性又は低い人アクセス可能放出を達成するべく
複合性及び可能なエラー/故障/異常/誤動作/バグが生じやすいコンポーネントに大き
く依存してはならない。人アクセス可能放出がしきい値を下回る確率を高くして低いアク
セス可能放出を有することによりシステムを安全にする多くの異なる態様が存在する。低
放出状態又は安全状態の最も簡単な例は、レーザがオフにされる場合であるが、本開示の
実装の他例は、低出力レーザ動作、ビームが長時間同じ場所に存在しないようにする高速
走査ビームを含む。レーザは「ビームブロック」を標的とし、例えばシャッターによって
ブロックされる。拡散器がビームの中に加えられてビームは分割され、多数のビームにな
る。
【0037】
高放出状態とは、本開示全体にわたって使用される用語であり、システムが低放出状態
において許容可能な最も高い放出よりも高い放出を有する状態を記述するべく使用される
。典型的に、高放出状態は、一定の安全しきい値を下回る人アクセス可能放出を有する。
ただし、送信器からの全体的な放出は、低放出状態のものよりも高い。これらの高い放出
は通常、安全システムによって保護される。高放出状態は典型的に、低放出状態のものよ
りも高いエネルギーを受信器に伝送するべく使用される。典型的な高放出状態の一例は、
送信器からのビームが有する状態であり、そのようなビームの一部が受信器を標的とし、
そのようなビームは受信器によってほぼ完全に吸収される。安全システムは、いずれのビ
ームにも物体が見出されないことと、放出が安全限界を上回らないこととを保証しようと
試みるので、人アクセス可能放出は低いが放出は高いこととなる。しかしながら、かかる
安全システムは通常、複合的な手段を使用して動作し、CPU若しくはコントローラ、又
はここで複合電子システムと記載されるASICシステムまわりに作られるのが典型的で
ある。
【0038】
複合電子サブシステムは、多数の電子コンポーネント、典型的には少なくとも数十万の
コンポーネントを含んでさらにはコード又はスクリプトを実行するのが典型的なサブシス
テムを記述するべく本開示全体にわたって使用される用語である。かかる複合電子サブシ
ステムの例は、プロセッサ、コントローラ、ASIC、及び埋め込みコンピュータである
。かかるシステムは、非常に多数の可能な状態を有し、当該製品において可能な状態すべ
てを試験するのはほぼ不可能である。例えば、プロセッサは108個以上のトランジスタ
を有し得るので、例えば、通過するガンマ粒子が、当該送信器のトランジスタにランダム
信号の放出を生じさせ得る。プロセッサは、そのようなランダム信号が発生する場合に非
常に多数の状態にあり、その結果は予測不能となり、非特許文献1の記事に記載されるよ
うに、試験することが又はシミュレーションすることさえ、極めて困難となり得る。
【0039】
混乱を回避するべく、本開示において使用される故障という言葉は、当該用語の一般的
解釈である永続的な故障に加え、複合システムにおいて生じることが知られる異常として
も知られる一次的な故障を含むことも意味する。
【0040】
例えば、テキサスインスツルメンツ社が提供するTMS320LF24xxのようない
くつかのコントローラは、MTBF(平均故障間隔)が非常に長い。MTBFは、コンポ
ーネント寿命を試験すること、通常はコンポーネントが永続的に故障するまでに経過する
時間を加速させることによって試験される。かかる試験は、局所的な加熱又は導体内のノ
イズに起因し得る一時的な故障は考慮しないのが典型的である。他例として、セルラー電
話システムを考える。用語MTBFにおいて使用される故障の意味が、電話機を使用不能
にする事象、例えば電話機の発火を含む一方、ここで使用される言葉である故障はさらに
、続くのが非常に短い期間の、通話の中断、又はシステムを「ハング」させるソフトウェ
ア故障も含む。さらに、このような一のコンポーネントの故障が、冷却ファン若しくは電
源のような他のコンポーネントの故障の結果として、又は環境温度の上昇の結果として生
じ得る。
【0041】
非特許文献2においては、合計積算CPU時間の5日間を積算してCPUに対して故障
率が測定され、約0.3%であることが見出された。第2故障の確率はかなり高い。
【0042】
上記文献における故障の測定に加え、かかるシステムはまた、ソフトウェアバグ、メモ
リリーク、メモリ故障、ソフトウェア及びハードウェアの異常、並びに他の様々な問題の
ような他のエラーも起こしやすい。
【0043】
本開示のシステムは、その安全レベルに寄与する要素の多様性及び相互作用ゆえに、と
りわけ、先行技術と比較して、かかる故障、バグ、メモリリーク、ガンマ粒子通過、及び
ノイズによって引き起こされる問題に対して弾力的である。
【0044】
本開示のシステムはまた典型的に、少なくとも一つの機能モニタシステムを有する。送
信器に関連付けられる送信器機能モニタユニットと、受信器に関連付けられる受信器機能
モニタユニットとが存在し得る。機能モニタシステムは、複合電子サブシステムをモニタ
するシステムを記載するべく本開示全体にわたって使用される用語である。いくつかの機
能モニタシステムは、システムをリセットするべくカウントダウンによって動作し得る。
このとき、コントローラは、当該カウントダウンを、その終了前にリセットしなければな
らず、当該カウントダウンが良好な動作状態にあることを示す。カウントダウンが終了す
ると、機能モニタは再起動信号をコントローラに送信し得る。他の機能モニタシステムは
、複合コンポーネントの「健康」を決定するべく熱放出又は統計解析のような他の信号に
依存する。いくつかの場合、信号機能モニタは、頑丈な機能モニタシステムをもたらすべ
く使用される。
【0045】
機能モニタシステムは、例えば、短時間インターバル後に繰り返してリセットする必要
があるカウントダウンタイマによって、又は内部安全性チェックの結果となることが多い
複合コンポーネントから出力される「良好な健康状態の」信号によって、実装することが
できる。いくつかの場合、「良好な作動状態」の検証は、2つのコンポーネント間の「会
話」の形態をとることがある。例えば、機能モニタは、複合コンポーネントにタスクを実
行するように要求し、その出力を既知の出力と対比して検証する。または、温度、RF放
出、電圧のようなコントローラの性能シグネチャ、若しくは動作状態を示す他のシグネチ
ャを測定することにより、又は当該コンポーネントからの出力の統計を計算して「健康な
シグネチャ」と比較することにより、検証する。一基本例は、「出力信号が一定ではない
が入力信号に応答していることをチェックすること」である。
【0046】
機能モニタは、送信器又は受信器におけるコントローラのような複合コンポーネントを
チェックし得る。このようなチェックは、周期的チェックを行うタイマに基づいてのよう
な周期的なもの、例えば毎秒のチェックとなり得る。代替的に、このようなチェックは、
例えば、レーザが固有ワット数を超えるたびのような、又は安全機能を果たすべく複合コ
ンポーネントを使用する前のような、特定の動作前又は後に行ってよい。チェックは、タ
イマボタンの押圧、固有ミラー位置のような外部信号に基づいて、若しくは(例えば連続
的に)最後のチェックの終了時に、外部トリガにより、又はランダムなインターバルで、
トリガされ得る。
【0047】
各動作において、機能モニタは少なくとも、
1.コントローラ若しくは複合コンポーネントからのOK信号の存在、
2.CPU/コントローラ/複合コンポーネントからの任意信号の存在、
3.シグネチャ(例えば、正しい電流、電圧、温度、又はかかるパラメータの異なる組み
合わせ及び関係等)、
4.CPU/コントローラからの有効な応答(例えばping)、又は
5.コントローラ/CPU/複合コンポーネントの出力の統計フィンガープリント
の少なくとも一部をチェックするのが典型的である。
【0048】
他のチェックも想定してよい。
【0049】
機能モニタは典型的に、複合コンポーネントの誤動作を検出する能力を特徴とする。典
型的に、かかる機能モニタは、少ないリスクの誤検出という代償を払ってでも、誤動作を
高確率で検出するように構成される。
【0050】
複合コンポーネントの動作における故障、異常又は誤動作の可能性が機能モニタシステ
ムから示されると、機能モニタは、当該システムを任意の関連する高放出状態に切り替わ
るのを防止する。これは、高放出状態の方が複合安全システムに、複合コンポーネントに
、又は固有の複合コンポーネントに、依存するのが典型的であり、コントローラは通常、
これらの高放出状態において多くの安全関連動作を行うからである。その複合性ゆえに、
高放出状態は、故障による悪影響を受けやすく、人々、動物又は資産に潜在的な危険をも
たらす。したがって、システムが、そのような状況において低放出状態を維持することが
安全となる。低放出状態の人アクセス可能放出が、しきい値未満であることと、かかる低
放出を維持する上でシステムが、故障が検出されたコンポーネントに依存する可能性が低
いこととの双方が理由である。問題の箇所が特定されたコンポーネントがどれかが正確に
わからない場合であっても、システムが高放出状態に切り替わるのを防止することは依然
として有利である。問題のあるコンポーネントから低放出状態が悪影響を受ける可能性は
小さいからである。多くの状況において、機能モニタはまた、そのような切替が要求され
る場合にはシステムを低放出状態に切り替えさせるが、いくつかの冗長なシステムにおい
ては、このようなアクションを迅速にとる必要はない。機能モニタはさらに、当該問題を
さらに修正又は特定すること、例えば自己試験、再起動、ユーザ、操作者若しくは製造者
への信号送信、事象のログへの登録、又は外部制御ユニットへの状況の通信、を目的とす
るアクションを引き起こし得る。または、システムの動作パラメータの少なくともいくつ
かを改変し得る。
【0051】
現行のシステムはまた、安全上の危険検出、人アクセス可能放出がしきい値を上回る可
能性のような安全関連事象への応答、及び安全システムにおける誤動作疑惑への応答の方
法において、先行技術のシステムと異なる。
【0052】
本開示のシステムは、低放出状態に切り替わり、その後、新規な実装において、システ
ムが低放出状態から高放出状態に切り替わるのを防止する。この防止は、当該防止を引き
起こす状況が変更されて実際に変更されたのを検証するチェックをシステムが行ったか、
又は人が始めたリセット若しくは遠隔サーバからの割り込みのようなシステムへの外部介
入が生じたか、のいずれかに至るまで続く。開示のシステムの一例は、上述した誤動作及
び異常の検出に加え、一定の安全関連事象又は可能ではあるが一定ではない誤動作におい
て、以下の条件の少なくとも一方が満たされる場合、低状態から高状態への切り替わりを
防止する。
1.センサの少なくとも一部分が、システムからの人アクセス可能放出が所定のしきい値
を超える可能性を示す信号を与えるとの条件。当該一つ又は複数のセンサは、潜在的に危
険な人アクセス可能放出状況に特有のデータを与える。かかる信号は、多数のセンサから
のデータの組み合わされた結果となり得る。このような事象において、システムはまた、
当該システムが即座に低放出状態に切り替わるようにするのが通常である。
2.少なくとも2つのセンサから生じる結果間の不整合が、これらのセンサがいずれも個
別にはシステムからの潜在的な人アクセス可能放出を示さない場合であっても、検出され
るとの条件。これは、これらのセンサの一つに関する問題、又は当該センサが責任を負う
コンポーネントに関する問題を示し得る状況である。かかる場合、低放出状態への切り替
えが随意的又は必要となり得るが、低状態から高状態への切り替えの防止が必須となる。
【0053】
本開示の文脈において人アクセス可能放出は、人体の任意部分によって、又は猫、犬、
魚、家畜、ねずみ、とかげ、鏡、スプーン、紙、ガラス、及び金属物体、並びに反射体の
ような、人が住む場所に見出されるペット及び物体によって妨害され得る製品からの電磁
放出として定義される。
【0054】
潜在的に危険な人アクセス可能放出とは、人若しくは物体に害を引き起こし得る人アク
セス可能放出を記述するべく本開示全体にわたって使用される用語であり、又は既知の安
全しきい値の例えば10%、25%又は50%よりも大きなしきい値を超える。
【0055】
可能性との用語は、本開示全体にわたって使用されるように、発生の正の潜在性を記述
するべく使用される。可能性のレベルは、システム動作の文脈において決定されることが
仮定される。よって、例えば、高放出状態にあるレーザ出力レベルが人及び資産に重篤な
リスクをもたらすシステムにおいて、例えば高出力UVレーザが使用されているとすれば
、故障感受性がかなり高いシステムを使用する必要がある。他方、不注意の被ばくが生じ
ても軽微な皮膚やけどしかもたらさない低出力の赤外レーザが使用される場合、システム
は、かかる故障を示すことに対してそれほどの責任を負わないようにチューニングされ得
る。また、連続的に動作し得るシステムにおいて又は人々が通り過ぎる環境において、「
高い」とみなされる可能性のレベルは、原子炉内部のような密封されたアクセス不可能エ
リアにおいて動作するシステムと比べて低くなり得る。「高い可能性」とみなされるレベ
ルを上昇又は低下させる一つのさらなる理由は、近隣にいる人がリスクを見たり感じたり
することにより回避する能力、及びそのようなリスクを回避する能力にある。すなわち、
「高い可能性」のレベルは、一般大衆がアクセスできない環境において実験室作業者又は
技術者のような訓練を受けた人員により操作されるように設計されたシステムにとって、
家庭環境における一般大衆、ましてや子供のような、訓練を受けていない人員の使用が意
図されるシステムとは異なる。
【0056】
指標信号との用語は、合理的な動作条件のもとで人アクセス可能放出と相関し得る信号
を記述するべく、本開示全体にわたって使用される。
【0057】
測定間の不整合というフレーズは、本開示の文脈では、一つの測定から生じる結果が、
非正常な態様で他の測定から生じる結果とは異なる状態を記述するべく使用される。これ
は、システムの誤動作と相関し得る。このような結果は、例えばセンサからの直接的な測
定値、又は測定値を組み入れた計算結果のいずれかとなり得る。
【0058】
本開示のシステムは、先行技術のシステムよりも、安全事象に応答し及び安全システム
の故障の示唆に応答する頑丈かつ高信頼性の方法に従う。本開示のシステムの一例は、少
なくとも2つの独立した、又はほぼ独立した、安全関連事象に応答する方法を含む。各方
法は、必要に応じてシステムを低放出状態に切り替えてよく、その後、システムが高放出
状態に切り替わることを防止する。この防止は、高放出状態動作を許容しない状態にスイ
ッチを維持することによって、高放射状態に切り替える命令を含まないコードを実行する
ことによって、シャッターを閉又は部分的に閉に維持することによって、又は当業者に知
られる任意の他の手段によって、達成することができる。システムは、当該システムが低
放出状態にあるか又は高放出状態に切り替わる能力がないことを保証する。これは、低放
出状態に切り替わった後に、高放出状態に切り替わることから防止することを意味する。
かかる防止は、第1の方法を使用することによって行われるのが好ましく、その後、例え
ばセンサを使用して、当該システムが実際に既に高放出状態ではなくなっていることが検
証される。代替的又は付加的に、システムは、高放出状態に切り替わる能力がないことを
検証してよい。第1の方法が上記切り替え又は防止のステップの一方又は双方を行うこと
ができない場合、システムが低放出状態にあること又は高放出状態へと切り替わり得ない
ことを保証するべく第2の方法が使用される。代替的に、第2の方法は、第1の方法の結
果にかかわらず、第1の方法と同時に又は実質的に同時に使用することができる。多くの
状況において、双方の切り替わりが、システムを同じ低放出状態にもたらすことはなく、
この場合、低レーザ出力及びオフのような少なくとも2つの異なる低放出状態が存在する
こととなる。典型的には、例えば、他方の低放出状態よりも短い回復時間を与えるのが好
ましい一方の低放出状態が存在する。これは、第1の切り替わりを使用した後に達成され
るものとなるのが典型的である。すなわち、本システムは、先行技術のシステムよりも切
り替わりの誤動作に対して弾力的である。
【0059】
冗長な安全システムにおける誤動作の検出時の低放出状態への迅速な切り替わりは必要
とされず、アドバイスさえされない場合もある。例えば、送信器が、2つのカメラを含む
冗長な安全システムにより保護されたビームによって受信器に給電することができる。こ
れらのカメラは、ビーム経路にある物体を検出するが、一方のカメラは、例えば、通り過
ぎる車のミラーが日光を投影してセンサを一時的に光であふれさせることにより一時的故
障状態になってもよい。この状況において、ビームを迅速にオフにする必要はない。第2
のカメラにより保護されるからである。しかしながら、こうした場合には、当該問題が解
消するまでシステムが低状態から高状態に切り替わるのが許容されるべきではない。本開
示のシステムは、このような区別をして適切かつ効率的に応答することができる。
【0060】
よって、本開示に記載されるデバイスの実装の一例に従って与えられるのは、光パワー
のビームを遠隔空間の中に伝送する無線送電システムである。このシステムは、
(i)ビーム生成器ユニット、ビーム偏向ユニット、及び送信器制御ユニットを含む送信
器であって、当該送信器は少なくとも一つの低放出状態及び少なくとも一つの高放出状態
を有し、各高放出状態は当該低放出状態の最高放出よりも高い放出を有する送信器と、
(ii)当該光パワーを受信する受信器であって、パワー変換デバイスを組み入れる受信
器と、
(iii)受信器制御ユニットと、
(iv)受信器制御ユニット故障の検出時に当該送信器が少なくとも一つの低放出状態か
ら当該少なくとも一つの高放出状態のいずれかへ切り替わるのを防止するべく適合される
受信器機能モニタユニットと、
(v)送信器制御ユニット故障の検出時に当該送信器が少なくとも一つの低放出状態から
当該少なくとも一つの高放出状態のいずれかへ切り替わるのを防止するべく適合される送
信器機能モニタユニットと、
(vi)当該無線送電システムからの人アクセス可能放出が所定レベルよりも大きい可能
性を示す信号を与えるべく構成される少なくとも2つのセンサと
を含み、
当該送信器制御ユニットは、当該無線送電システムからの人アクセス可能放出が当該所定
レベルよりも大きい可能性を示す信号の少なくとも一つを受信するときに、当該送信器が
少なくとも一つの低放出状態から当該高放出状態のいずれかへ切り替わるのを防止するべ
く適合され、
当該送信器制御ユニットは、当該少なくとも2つのセンサがいずれも、当該無線送電シス
テムからの人アクセス可能放出が当該所定レベルよりも大きい可能性を示す信号を与えな
い場合、当該センサの少なくとも2つから生じた結果間の不整合を検出すると、当該送信
器が少なくとも一つの低放出状態から当該少なくとも一つの高放出状態のいずれかへ切り
替わるのを防止するべく適合され、
当該送信器制御ユニットはさらに、少なくとも第1の方法及び第2の方法を実装し、第1
の方法及び第2の方法の双方を実質的に同時に使用するか又は第1の方法を使用した後に
第2の方法を使用するかのいずれかにより、当該送信器が少なくとも一つの低放出状態か
ら当該高放出状態のいずれかへ切り替わるのを防止するべく構成される。
【0061】
かかるシステムにおいて、無線送電システムからの人アクセス可能放出が所定レベルよ
りも大きい可能性を示す信号のうち少なくとも一つを送信器が受信する場合、第2の方法
は、第1の方法の後に使用してもよい。さらに、(i)送信器機能モニタユニットが送信
器制御ユニット故障を検出、(ii)受信器機能モニタユニットが受信器制御ユニット故
障を検出、及び(iii)送信器制御ユニットが当該センサのうち少なくとも2つから生
じる結果間の不整合を検出、のうち少なくとも一つの場合、第2の方法は、第1の方法の
後に使用してもよい。
【0062】
このような上述したシステムはいずれも、少なくとも一つの放出状態センサを含んでよ
く、送信器の構成のうちのいずれかが、当該放出状態センサのうち少なくとも一つからの
結果に基づいてよい。かかる状況において、第1の方法を使用した後に第2の方法を使用
することはさらに、第1の方法を使用した後に、少なくとも一つの放出状態センサを使用
して送信器が高放出状態で動作しているか否かをチェックし、その後、当該送信器が高放
出状態で動作している場合、引き続いて第2の方法を使用することを含んでよい。
【0063】
上述したシステムのなおもさらなる実装によれば、当該センサのうち少なくとも2つか
ら生じる結果は測定値でよく、又は測定値に基づく計算結果でよい。
【0064】
付加的に、当該センサのうち少なくとも2つから生じる結果間の上記不整合は、当該少
なくとも2つのセンサが機能上独立している場合に生じ得る。さらに、この不整合が所定
レベルを上回ることが、当該センサのうちの一つの誤動作の可能性を示し、又は当該セン
サのうちの少なくとも一つに給電するデバイスの誤動作の可能性さえも示し得る。
【0065】
上記無線送電システムのさらなる実装において、当該センサの少なくとも一つの測定値
の予測される通常範囲が存在し、当該センサの少なくとも一つの測定値が当該予測される
通常範囲から所定レベルを超えて逸脱している場合に当該センサの少なくとも一つによっ
て信号が与えられる。さらに、上記所定レベルのいずれも、少なくとも一つの既知の安全
基準によって定義され得る。
【0066】
上記無線送電システムのさらなる実装によれば、送信器が少なくとも一つの低放出状態
から当該少なくとも一つの高放出状態のいずれかへ切り替わるのを防止する方法は、
(i)ビームが人アクセス可能であれば、ビームの衝突放出が少なくとも一つの既知の安
全基準未満となるように、放出を十分に低いレベルのままにすることと、
(ii)ビームをオフ状態に維持することと、
(iii)ビームが人アクセス可能であれば、ビームの衝突放出が少なくとも一つの既知
の安全基準未満となるように、ビームを十分に迅速にスキャンすることと、
(iv)ビームをビームブロックの方に向けることと、
(v)拡散器をビームの経路内へと動かすことと、
(vi)ビームを複数のビームに分割することと
のうち少なくとも一つを含んでよい。
【0067】
かかる場合、少なくとも一つの既知の安全基準は、規制上の安全基準としてよい。
【0068】
さらに他の実装例によれば、無線送電システムからの人アクセス可能放出が所定レベル
よりも大きい可能性を示す信号は、少なくとも2つのセンサにより得られる測定値の組み
合わせが、無線送電システムからの人アクセス可能放出が所定レベルよりも大きい可能性
を示す場合に、当該少なくとも2つのセンサの測定値のいずれもが、当該無線送電システ
ムからの人アクセス可能放出が所定レベルよりも大きい可能性を個別に示さない場合に与
えられてよい。
【0069】
代替的に、無線送電システムからの人アクセス可能放出が所定レベルよりも大きい可能
性を示すこれらの信号は、少なくとも2つのセンサにより得られる測定値を使用した計算
の結果が、当該無線送電システムからの人アクセス可能放出が所定レベルよりも大きい可
能性を示す場合に与えられてよい。
【0070】
本開示のさらに他の実装例によれば、光パワーのビームを、受信器制御ユニット、受信
器機能モニタユニット及びパワー変換デバイスを有する少なくとも一つの受信器に伝送す
る無線送電システムが与えられる。このシステムは、
(i)少なくとも一つの低放出状態及び少なくとも一つの高放出状態を有する送信器であ
って、各高放出状態は、当該低放出状態の最高放出よりも高い放出を有し、当該受信器機
能モニタユニットは、受信器制御ユニット故障の検出時に当該送信器が当該低放出状態の
少なくとも一つから当該高放出状態へ切り替わるのを防止するべく適合され、当該送信器
はさらに、ビーム生成器ユニット及びビーム偏向ユニットを有する送信器と、
(ii)送信器制御ユニットと、
(iii)当該送信器制御ユニット故障の検出時に当該送信器が少なくとも一つの低放出
状態から当該少なくとも一つの高放出状態のいずれかへ切り替わるのを防止するべく適合
される送信器機能モニタユニットと、
(vi)当該無線送電システムからの人アクセス可能放出が所定レベルよりも大きい可能
性を示す信号を与えるべく構成される少なくとも2つのセンサと
を含み、
当該送信器制御ユニットは、当該可能性を示す信号の少なくとも一つの受信時に当該送信
器が少なくとも一つ低放出状態から当該高放出状態のいずれかへ切り替わるのを防止する
べく適合され、
当該送信器制御ユニットは、当該少なくとも2つのセンサがいずれも、当該可能性を示す
信号を与えない場合、当該センサの少なくとも2つから生じた結果間の不整合を検出する
と、当該送信器が少なくとも一つの低放出状態から当該少なくとも一つの高放出状態のい
ずれかへ切り替わるのを防止するべく適合され、
当該送信器制御ユニットはさらに、当該送信器が少なくとも一つの低放出状態から当該高
放出状態のいずれかへ切り替わるのを防止する少なくとも第1の方法及び第2の方法を、
(a)第1の方法及び第2の方法の双方を実質的に同時に使用し、又は
(b)第1の方法を使用した後に第2の方法を使用するように、実装するべく構成される
【0071】
光パワーのビームを、受信器制御ユニット、受信器機能モニタユニット及びパワー変換
デバイスを有する少なくとも一つの受信器に伝送する無線送電システムの他の実装例は、
(i)少なくとも一つの低放出状態及び少なくとも一つの高放出状態を有する送信器であ
って、各高放出状態は、当該低放出状態の最高放出よりも高い放出を有し、当該受信器機
能モニタユニットは、受信器制御ユニット故障の検出時に当該送信器が当該低放出状態の
少なくとも一つから当該高放出状態のいずれかへ切り替わるのを防止するべく適合される
送信器と、
(ii)送信器制御ユニットと、
(iii)当該送信器制御ユニット故障の検出時に当該送信器が少なくとも一つの低放出
状態から当該少なくとも一つの高放出状態のいずれかへ切り替わるのを防止するべく適合
される送信器機能モニタユニットと、
(vi)当該無線送電システムからの人アクセス可能放出が所定レベルよりも大きい可能
性を示す信号を与えるべく構成される少なくとも2つのセンサと
を含み、
当該送信器制御ユニットは、当該少なくとも2つのセンサがいずれも、当該無線送電シス
テムからの人アクセス可能放出が所定レベルよりも大きい可能性を示す信号を与えない場
合、当該センサの少なくとも2つから生じた結果間の不整合を検出すると、当該送信器が
少なくとも一つの低放出状態から当該少なくとも一つの高放出状態のいずれかへ切り替わ
るのを防止するべく適合される。
【0072】
最後に、光パワーのビームを、受信器制御ユニット、受信器機能モニタユニット及びパ
ワー変換デバイスを有する少なくとも一つの受信器に伝送する方法も与えられる。この方
法は、
(i)少なくとも一つの低放出状態及び少なくとも一つの高放出状態を有する送信器にお
いて光パワーのビームを生成することであって、各高放出状態は、当該低放出状態の最高
放出よりも高い放出を有し、当該受信器機能モニタユニットは、受信器制御ユニット故障
の検出時に当該送信器が当該低放出状態の少なくとも一つから当該高放出状態へ切り替わ
るのを防止するべく適合されることと、
(ii)送信器機能モニタユニットに問い合わせることにより、送信器制御ユニット故障
が生じたか否かを決定し、生じた場合、当該送信器が少なくとも一つの低放出状態から当
該少なくとも一つの高放出状態のいずれかへ切り替わるのを防止することと、
(iii)当該無線送電システムからの人アクセス可能放出が所定レベルよりも大きい可
能性を示す信号を与える少なくとも2つのセンサを使用することと
を含み、
当該無線送電システムからの人アクセス可能放出が当該所定レベルよりも大きい可能性を
示す信号の少なくとも一つを受信するときに、当該送信器は少なくとも一つの低放出状態
から当該高放出状態のいずれかへ切り替わるのを防止され、
当該少なくとも2つのセンサがいずれも、当該可能性を示す信号を与えない場合、当該セ
ンサの少なくとも2つから生じた結果間の任意の不整合が検索され、当該送信器は少なく
とも一つの低放出状態から当該少なくとも一つの高放出状態のいずれかへ切り替わるのを
防止され、
当該送信器が少なくとも一つの低放出状態から当該高放出状態のいずれかへ切り替わるの
を防止する少なくとも第1の方法及び第2の方法が、
(a)第1の方法及び第2の方法の双方を実質的に同時に使用し、又は
(b)第1の方法を使用した後に第2の方法を使用するように、実装される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】様々な波長及び時間での最大許容暴露レベルのグラフを示す。
図2】レーザ安全警告ラベルの一例を示す。
図3】因子の組み合わせゆえに潜在的に危険であって、本開示のシステムの一例により検出可能な送電システムの状況を示す。
図4】安全関連事象に応答する本開示の方法の一例を示す。
図5】安全関連事象に応答する本開示の方法の代替例を示す。
図6】複合的コンポーネントにおける異常、故障又は誤動作の検出時に安全を維持する本開示の方法の一例を示す。
図7】本開示に記載される完全な送電システムの一例の模式的な表現を示す。
図8】最小限の複合的電子機器が必要とされる低放出状態を達成するべく適合された本開示の送電システムの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本開示のシステムは、複数のソースから生じる潜在的な危険の組み合わせを検出及び評
価することができる。ここで図3を参照すると、因子の組み合わせゆえに潜在的に危険な
状況の典型例が示される。この状況は、本開示に記載されるタイプのシステムの一例によ
り検出可能である。図3のシステムは、パワービーム33を受信器31に向けて投影する
送信器32を示す。人の目36が当該受信器の近傍に示される。このシステムに示される
潜在的危険のソースは、2つの別個であるが安全な状況、
a.受信器31の前面からの小さく低出力の無害な反射35と、
b.送信器32からの他の小さく無害なゴースト放出34と
の組み合わせから生じ得る。
【0075】
例えば、センサ上のほこりの存在により、上記2つの効果の測定に不確かさが生じ得る
。これらの因子はそれぞれ、それ自体安全であり得るが、組み合わせられると、図3に示
されるように、放出又は反射が結合して危険なレベルになる空間内のポイントが存在し得
る。ここで、上記効果の双方によるビームは、目36に衝突しているように示される。本
開示のシステムは、かかる現象の潜在性の検出、多くの場合は推定、を試みて安全を確保
するべく適切に応答するように構成される。
【0076】
以下の注釈は、図3に示されるシステムの潜在的な危険、及びかかるリスクが本システ
ムにより無効にされる態様、を説明するのに適している。目36はパワービーム33近く
のどこにも存在していないので、ビーム経路内の物体を特定的に探すのみの先行技術安全
システムはいずれもトリガされない。実際のところ、図3のシナリオでは、このような先
行技術安全システムが検出するビーム経路内の異物は何も存在しない。
【0077】
受信器31は、その通常動作の一部としてビーム33をほぼ完全に吸収する。
【0078】
フレネル反射ゆえに、ビーム33のわずかな部分が、受信器31の前面から、拡散又は
鏡面反射となり得る反射35の形態で反射される。
【0079】
反射されたビーム35は、安全限界未満であり、目36に対して何らの害も引き起こし
得ない。
【0080】
送信器32は、主要ビーム33を、安全な低出力のわずかなゴーストビーム34ととも
に放出する。ゴーストビーム34は例えば、フレネル反射の結果として送信器32内部の
光コンポーネントから放出され得る。
【0081】
ゴーストビーム34はまた、目36にランダムに向けられる。
【0082】
ゴーストビーム34はまた、安全であり、安全基準しきい値未満である。
【0083】
しかしながら、ゴーストビーム34と反射35との組み合わせは特に、例えば、当該状
況にノイズが加わる場合に危険となり得る。
【0084】
本開示のシステムは、「何かがビーム経路に存在する」か否かではなく、一般的な言葉
で言えば「何かがおかしい」か否かを見るようにチェックする。本開示のシステムは、曖
昧であって確定的でない潜在的危険を扱うことができ、通常は、様々なセンサからの境界
線信号の蓄積を特徴とする。図3に示される状況のような、しきい値未満信号の組み合わ
せのような単純なタイプの状況のほか、いくつかのこのような信号又はそれを生じさせる
効果は、
確認信号が受信されたがレーザ送信と確認信号の受信との間のタイミングが長いことと、
コンポーネントの高温/低温と、
通信チャネルへの干渉と、
低すぎる信号対雑音比と、
高すぎる信号対雑音比と、
エラーの蓄積と、
追跡信号の喪失又は追跡信号の劣化と、
予測された値とは異なるスポットサイズと、
波長ドリフトと、
タイミングドリフトと、
様々な周波数が信号に現れること(例えばレーザ出力の周期的変動)と、
境界線出力測定値と、
他の示唆的な信号と
を含み得る。
【0085】
かかる信号は、いずれの特定的な危険も示さないが、かかる信号の2つ以上の組み合わ
せが、潜在的な危険又は誤動作を示し、安全サブシステムが適切に作動しなくなり得る。
本システムは、潜在的に危険な人アクセス可能放出の可能性を推定するべく、そのような
信号を使用する。かかる推定は、数値、バイナリ表示又はしきい値変化のような多くの形
態で与えることができる。かかる信号は、人アクセス可能暴露の潜在性に対して線形又は
単調である必要はなく、それを示しさえすればよい。この概念の代替的な実装例は、安全
マージンが様々なコンポーネントの関数として変化している異なる「レジーム」を決定す
ること、又は温度のようなパラメータに基づいて測定値を補償することとなる。
【0086】
例えば組み合わされた潜在的危険のような複合的な推定、又は潜在的に危険な人アクセ
ス可能放出の評価は、典型的に、CPU、コントローラ、組み込みコンピュータシステム
、ASIC、及び他の複合的な電子回路の使用を必要とする。これらのすべては故障する
傾向があるので、システムが安全に動作しているか否かを決定するために単独で頼るべき
ではないが、システムが高放出モードに切り替わることを防止するべく単独で又は組み合
わせて使用することができる。
【0087】
ここで図4を参照すると、安全関連事象に応答する方法の一例が示される。本システム
により使用される方法は、システムが高放出状態に切り替わるのを防止し、必要であれば
、システムが低放出状態に切り替わるようにする。かかる方法は、先行技術のシステムよ
りも高信頼性である。先行技術のシステムは一般に、任意の安全関連事象がセンスされる
状況においてビームを低出力に又はオフに切り替える。これは、いくつかの場合には良好
な実務となり得る一方、これが無効になる状況においてはシステムの利用可能性を不必要
に制限してしまう。本開示のシステムは冗長な安全システムを有するので、システムを直
ちに低放出に切り替え又はオフにする差し迫った必要性が必ずしも存在するわけではない
。本システムは、システムの放出を低減する抜本的な手段なしに解決することができる状
況同士を区別することができるからである。ステップ40において、システムは、連続的
又は周期的に安全関連事象をチェックする。安全関連事象が発見されない場合、システム
は、一つ以上のセンサからのデータを使用してチェックを続ける。ステップ41において
、安全関連事象が発見される。かかる事象は、例えば、受信器機能モニタユニットによる
受信器制御ユニット誤動作の検出、送信器機能モニタユニットによる送信器制御ユニット
誤動作の検出、無線送電システムからの人アクセス可能放出が所定レベルよりも大きな可
能性を示す一つ以上のセンサが与える信号、又は少なくとも2つのセンサから生じる結果
間の不整合の検出としてよい。ステップ42において、システムは、低放出状態へ切り替
わる正当な理由が存在するか否かを決定する。これは、例えば、履歴データベースにアク
セスして現行状況のデータセットを比較することにより、当該データに対する統計分析を
行うことにより、又は検出された故障に関する現行データポイントが危険な状況をもたら
す確率を予測することにより、決定することができる。低放出状態へ切り替わる強力なス
テップをとる正当な理由が存在しない場合、システムは、当該システムが正常な動作を続
けるのを許容しながら十分な保護を与えるステップ44において当該システムが高放出状
態に到達するのを防止する。ステップ43において低放出状態に切り替わる正当な理由が
存在すると決定される場合、システムは、第1の切り替わり又は方法を使用して低放出状
態へ切り替わる。ステップ44において、システムは、当該システムが高放出状態に切り
替わるのを防止する。ステップ45において、システムは、例えば、第1の切り替わりが
失敗したとの決定により、又は当該システムが低放出状態にあるとの決定により、第1の
切り替わりの成功を試験する。ステップ45において成功する場合、第2の切り替わり又
は方法を使用する必要がなく、システムは、所定の時間インターバルの後直ちに又は周期
的にステップ40において安全関連事象を検索し続ける。ステップ47において第1の切
り替わりが成功しなかったと決定された場合、システムは、第2の切り替わり又は方法を
使用して低放出状態に切り替わる。第2の方法は、
(i)無線送電システムからの人アクセス可能放出が所定レベルよりも大きい可能性を示
す信号を送信器が受信するステップと、
(ii)当該センサの少なくとも2つから生じる結果間の不整合を送信器制御ユニットが
検出するステップと、
(iii)送信器制御ユニット誤動作を送信器機能モニタユニットが検出するステップと

(iv)受信器制御ユニット誤動作を受信器機能モニタユニットが検出するステップと
の少なくとも一つが生じる場合に使用することができる。
【0088】
ステップ48において、方法は、システムが高放出状態に切り替わるのを防止する。す
なわち、この方法は、第1の切り替わり又は方法の失敗に対し、第2の異なる切り替わり
を使用することによる弾力性を有し、さらには、第1の切り替わりが成功したか否かを決
定するべくチェックすることにより付加的な信頼性を与える。
【0089】
ここで図5を参照すると、安全関連事象に応答する代替方法が示される。ステップ50
において、システムは、連続的又は周期的に安全関連事象をチェックする。安全関連事象
が発見されない場合、システムは、一つ以上のセンサからのデータを使用してチェックを
続ける。ステップ52において、安全関連事象が発見された場合、低放出状態へ切り替わ
る正当な理由が存在するか否かが決定される。これは、例えば、履歴データベースにアク
セスして現行状況のデータセットを比較することにより、当該データに対する統計分析を
行うことにより、又は検出された故障に関する現行データポイントが危険な状況をもたら
す確率を予測することにより、決定することができる。低放出状態へ切り替わる正当な理
由が存在しなければ、システムは、ステップ53において高放出状態に切り替わるのを防
止する。正当な理由が存在すれば、2つの異なる方法であって、通常は機能上独立の方法
が同時に使用される。ステップ54において、方法1は、システムを低放出状態に切り替
える。ステップ55において、方法1はさらに、システムが高放出状態に切り替わるのを
防止する。ステップ54と実質的に同時に行われるステップ57において、方法2は、シ
ステムを低放出状態に切り替える。ステップ58において、方法2は、システムが高放出
状態に切り替わるのを防止する。すなわち、この方法は、方法1の失敗及び方法2の失敗
の双方に対して弾力的である。これらの方法が双方ともが同時に使用されて双方の方法が
同時に失敗する確率は無視可能な程度に極めて小さいことが通常だからである。
【0090】
ここで図6を参照すると、複合的コンポーネントにおける異常、故障又は誤動作の検出
時に安全を維持する代替方法が示される。ステップ60において、システムは、一つ以上
のセンサからのデータを使用して故障をチェックする。ステップ61において故障が検出
される。ステップ62において、機能モニタが、システムが任意の高放出状態で動作する
のを防止するべくスイッチ#1を動作させる。ステップ63において、機能モニタが、シ
ステムが高放出状態で動作するのを停止したことを検証する。停止していなかった場合、
ステップ64において、システムが高放出状態で動作するのを防止するべくスイッチ#2
を動作させる。実際に高放出状態が停止したと場合、システムは、ステップ60において
故障の検出をチェックし続ける。確認ステップ63と、異なる独立したスイッチ2の使用
との双方により、システムの信頼性が高くなり、人アクセス可能放出が所定しきい値を超
えるリスクが低減される。
【0091】
以下は、2つの異なるセンサからの測定値を比較することによって欠陥センサを検出す
る方法の一例である。
【実施例1】
【0092】
センサ1は、汎用センサであり、例えば、以下の関数を計算することにより送信器及び
受信器間で喪失した電力を「センス」する。
センス値=[ILDD*γ]-[Ipv*β]
ここで、
LDDはレーザに供給される電流であり、
pvはPVから収集される電流であり、
γ及びβは(とりわけ効率に関連する)修正係数である。
【0093】
センサ2は、汎用センサであり、これもまた、例えば、以下の関数を計算することによ
り送信器及び受信器間で喪失した電力を「センス」する。
センス値=[PTX]-[Prx/μ]
ここで、
TXは送信器から放出される電力であり(典型的には、送信器内部を通過す
る電力の小部分を測定することにより計算され、その測定される部分は典型的に送信器か
ら放出されない)、
rxはPVから収集される電力であり、
μは、修正係数(一般に受信器効率)である。
【0094】
理論上、センサ1及びセンサ2は常に、ノイズのみが異なる同じ結果を与えるはずであ
る。
【0095】
現実には、センサ1がセンサ2とは著しく異なる結果を与え、その差異がノイズのせい
であるとすべきでないと決定できる程度に十分長い時間にわたる場合、センサ1又はセン
サ2のいずれかに欠陥があると疑うべき理由が存在する。かかる状況において本システム
は、いずれのセンサからも潜在的に危険なアクセス可能放出が示されていなくても、低放
出状態に切り替わる。
【0096】
以下は、2つの異なるスイッチ、すなわちスイッチ1及びスイッチ2を使用して低放出
状態に切り替わるフェイルセーフの方法の一例である。
【実施例2】
【0097】
1.システムを既知の低放出状態にもたらすべく、及び/又は、必要に応じて、システム
が高放出状態に切り替わるのを防止するべく、スイッチ1を使用する。
2.システムが実際に低放出状態に切り替わったことと、システムが低放出状態から高放
出状態に切り替わるのが防止されることとを、センサを使用して検証する。
3.システムが低放出状態に切り替わっていなかった場合、スイッチ2を使用して切り替
える。この文脈での低放出状態への切り替わりは、スイッチ1の成功の肯定的な指標であ
るが、他の方法はまた、スイッチ2を使用する前にスイッチ1の成功又は失敗を決定する
ように使用され得る。この方法は、システムを低放出状態にもたらし、及び/又はシステ
ムが低放出状態から高放出状態に切り替わるのを防止する、フェイルセーフメカニズムを
与える。代替実装例において、コントローラは、スイッチ1及びスイッチ2の双方を同時
に使用する。しかしながら、当該スイッチの通常一方は、回復時間、ノイズ、クライアン
トへのサービス低下、追跡喪失、又はシステムへの物理的損傷のような高い「コスト」と
なる一方、他方は「低いコスト」となり得る。例えば、レーザドライバを使用してレーザ
をオフにすることは、レーザシステム全体への電力を終了させることよりも好ましい。こ
の電力をオフにすることはまた、冷却システムも終了させることとなり、ハードウェア損
傷をもたらし得るからである。したがって、いくつかのシステムにおいては、実施例2の
方法を使用する方が効率的となり得る。
【0098】
ここで図7を参照すると、本開示に記載される送電システム全体の一例の模式的な表現
が示される。
【0099】
送信器761が、遠隔の受信器762に給電するように示される。受信器762は、パワー変換デバイス(図7に示さず)及び受信器機能モニタを組み入れる。受信器機能モニタは、受信器コントローラの故障を検出する必要がある(これも図7に示さない。その機能回路のいくつかは送信器において遠隔に配置され得るからである)。送信器は、ビーム生成器763及びビーム偏向ユニット764を含む。加えて、送信器はまた、様々なセンサ及び制御ユニット要素も含む。これらは、少なくとも2つの危険センサ、例えば767~771、並びに少なくとも一つの故障検出器772、及び機能モニタ766を含む。後者のアイテムのすべて又は一部は、送信器制御ユニット765の一部であり、又は送信器制御ユニット765に関連付けられる。
【0100】
制御ユニット765は、ビーム生成器763が低放出状態から高放出状態(773及び774)に切り替わるのを防止する2つの方法を有する。かかる方法はまた、機能モニタ766によるトリガを受け得る。少なくとも一つの危険センサ767~771により危険が検出されると、制御ユニット765は、ビーム生成器763が高放出状態に切り替わるのを防止する。可能な故障を検出すると、故障検出器772により、又は危険センサ767~771間の不整合により、若しくは、異常な信号対雑音比のような特徴的故障パターンにより、制御ユニット765は、ビーム生成器763が高放出状態に切り替わるのを防止する。
【0101】
ここで図8を参照すると、低放出状態を達成するべく最小限の複合的電子機器を必要と
する方法の複数例が示される。すなわち、かかる方法は、欠陥コンポーネントに依存する
可能性が低いので、故障検出の事象において安全に使用される。レーザ81は、オフにさ
れ若しくは低出力モードにおいて動作してよく、若しくは既知の目に安全な波長で動作し
てよく、又は放出されたビームが発散若しくは拡散ビーム83となる態様で動作してよい
。代替実装例はビーム減衰器84を使用する。ビーム減衰器84は、ビーム83をブロッ
クするシャッター84としてよく、若しくはビームを拡散させる拡散器(図8に示さず)
としてよく、又はビームを減衰させる減衰器(図8に示さず)としてよい。さらに他の実
装例はビーム偏向ユニット82を使用する。ビーム偏向ユニット82は、ビームに周囲環
境を迅速にスキャンさせてよく、又はビームをビームブロック85の方に向けてもよい。
ビームブロック85は、ビームをブロックし、吸収し、減衰させ、又は拡散させることが
できる。これらの方法はいずれも、現行状況のデータパラメータに応じて個別に又は同時
に使用することができる。システムは、上述した方法のどれを、どの時間の中に組み入れ
るのが最適かを決定するアルゴリズムを有してよい。これらの方法はいずれも、システム
を低放出状態に切り替える方法、又はシステムが高放出状態へ切り替わるのを防止する方
法のいずれかのような、図4、5及び6の方法に応じて使用することができる。
【0102】
当業者によりわかることだが、本発明は、特定的に図示され上述されたものによって制
限されるわけではない。むしろ、本発明の範囲は、上述した様々な特徴のコンビネーショ
ン及びサブコンビネーション双方と、当業者が上記説明を読んで想到するが先行技術では
ない変形例及び修正例とを含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8