(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】遠心振り子、遠心振り子を含むトルク伝達装置、および車両
(51)【国際特許分類】
F16F 15/14 20060101AFI20240308BHJP
F16F 7/10 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
F16F15/14 Z
F16F7/10
(21)【出願番号】P 2022507923
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(86)【国際出願番号】 CN2020107870
(87)【国際公開番号】W WO2021027733
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】201910734829.7
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522048982
【氏名又は名称】ヴァレオ、カペック、トルク、コンバーターズ、(ナンジン)、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VALEO KAPEC TORQUE CONVERTERS(NANJING) CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ションチャン
(72)【発明者】
【氏名】フー、シュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、マオホイ
(72)【発明者】
【氏名】イン、イン
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0231098(US,A1)
【文献】特開昭61-149635(JP,A)
【文献】特開2017-198335(JP,A)
【文献】特表2018-532088(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016124908(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0139641(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/14
F16F 7/10
F16H 45/02
F16H 55/36
F16D 13/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸Xを中心に回転可能な第1支持プレート1と、
前記第1支持プレート1と軸方向に対向し、前記第1支持プレート1に固定される第2支持プレート2と、
前記第1支持プレート1と前記第2支持プレートとの間に軸方向に配置される質量体3と、
を含み、
前記第1支持プレート1は、軸方向に延びる第1突起11を含み、前記第1突起は、前記第1支持プレート1と単一の部材で一体に形成され、第1トラックR1を定義し;
前記質量体3は、軸方向に延びる貫通ホール31を含み、前記貫通ホール31は、第2トラックR2を定義し;
前記第1トラックR1が半径方向に前記第2トラックR2に対向するように、前記第1突起11は、前記貫通ホール31内に延び;および
ローラ5は、前記第1トラックR1と前記第2トラックR2との間に半径方向に配置され、前記第1トラックR1と前記第2トラックR2に対してローリング可能で、前記質量体3は、前記第1支持プレート1と前記第2支持プレート2に対して移動可能であり、前記第1支持プレート1と前記第2支持プレート2上にトルクを印加できる遠心振り子。
【請求項2】
前記第1支持プレート1は、軸方向に凹んだ第1溝12を含み、
前記第1溝12は、前記第1突起11に対向する前記第1支持プレート1の外側面に配置される、請求項1に記載の遠心振り子。
【請求項3】
前記第1支持プレート1は、前記第1突起11と前記第1溝12を同時に形成するようにスタンピングされる、請求項2に記載の遠心振り子。
【請求項4】
前記第2支持プレート2は、前記第1突起11に向かって軸方向に延びる第2突起21を含み、前記第2突起21は、前記第2支持プレート2と単一の部材で一体に形成され;および
前記第2突起21は、前記貫通ホール31内に延び、前記第1突起11と前記第2突起21は共に、前記第1トラックR1を定義する、請求項1に記載の遠心振り子。
【請求項5】
前記第1突起11および前記第2突起21それぞれが前記第1トラックR1の半分を形成するように、前記第1突起11と前記第2突起21は、同一の突出高さを有する、請求項4に記載の遠心振り子。
【請求項6】
前記第1突起11と前記第2突起21は、互いに異なる突出高さを有する、請求項4に記載の遠心振り子。
【請求項7】
前記第1支持プレート1と前記第2支持プレート2は、結合部材4によって前記第1突起11に互いに固定される、請求項1~6のいずれか1項に記載の遠心振り子。
【請求項8】
前記第1支持プレート1と前記第2支持プレート2は、結合部材4によって前記第1突起11に互いに固定され、
前記第2支持プレート2は、軸方向に凹んだ第2溝22を含み、前記第2溝22は、前記第2突起21に対向する前記第2支持プレート2の外側面に配置される、請求項
4~6のいずれか1項に記載の遠心振り子。
【請求項9】
前記第1トラックR1は、第1凹表面Bを含み、前記第2トラックR2は、第2凹表面Dを含み、前記ローラ5は、前記第1凹表面Bと前記第2凹表面Dとの間に位置する、請求項1~6のいずれか1項に記載の遠心振り子。
【請求項10】
前記第1トラックR1は、前記第1突起11の半径方向の内側に位置し、前記第2トラックR2は、前記貫通ホール31の半径方向の内側に位置する、請求項9に記載の遠心振り子。
【請求項11】
前記第1トラックR1’は、前記第1突起11’の半径方向の外側に位置し、前記第2トラックR2’は、前記貫通ホール31’の半径方向の外側に位置する、請求項9に記載の遠心振り子。
【請求項12】
前記第1支持プレート1は、軸方向に延びる第3突起13を含み、前記第3突起13は、前記第1支持プレート1と一体に形成され、第3トラックR3を定義し;
前記質量体3は、軸方向に延びる他の貫通ホール32を含み、前記他の貫通ホール32は、前記貫通ホール31から円周方向に角度だけオフセットされ、前記他の貫通ホール32は、第4トラックR4を定義し;
前記第3トラックR3が半径方向に前記第4トラックR4に対向するように、前記第3突起13は、前記他の貫通ホール32内に延び;および
前記他のローラ6は、前記第3トラックR3と前記第4トラックR4との間に半径方向に配置され、前記第3トラックR3と前記第4トラックR4に対してローリング可能である、請求項1~6のいずれか1項に記載の遠心振り子。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の遠心振り子を含むトルク伝達装置。
【請求項14】
前記トルク伝達装置は、トルクコンバータ、クラッチ装置またはデュアルマスフライホイールを含む、請求項13に記載の前記トルク伝達装置。
【請求項15】
請求項13または14に記載のトルク伝達装置を含む車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、遠心振り子に関する。また、本出願は、遠心振り子を含むトルク伝達装置、およびトルク伝達装置を含む車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の動力伝達システムにおいて、内燃エンジンの出力の固有のねじり振動を除去するために、内燃エンジンとギヤボックスとの間に、一般にダンパが配置される。遠心振り子は、支持プレートと、支持プレートに装着される質量体とを含む一般的なねじり振動ダンパである。支持板のトルクが変動する時、質量体は、支持プレートに対して制限された方式でスイングすることができ、支持プレートに反対方向に変動トルクを印加してダンピング効果を実現することができる。
【0003】
従来の遠心振り子は、支持プレートの両側に位置する2つの質量体を含み、2つの質量体は、連結部材によって互いに固定される。連結部材は、支持プレート上の貫通ホールを貫通する。予め定められた経路に沿った質量体の移動を抑制するためには、連結部材と貫通ホールに特定のプロファイルを有するトラック面を形成することが必要である。このような構造の遠心振り子において、支持プレートの両側面から質量体が突出していて、質量体の回転を干渉しないようにするためには、遠心振り子の両側に存在する構成要素の配列と大きさに特別な注意を払う必要がある。また、このような遠心振り子は、別途の連結部材を必要とし、部品数が多くて加工および組立が複雑である。
【0004】
したがって、従来技術に存在する多くの問題を少なくとも克服するために、改善された構造を有する遠心振り子を提供することが要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、遠心振り子の構造と組立を単純化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様において、回転軸を中心に回転可能な第1支持プレートと、前記第1支持プレートと軸方向に対向し、前記第1支持プレートに固定される第2支持プレートと、前記第1支持プレートと前記第2支持プレートとの間に軸方向に配置される質量体とを含む遠心振り子が提供される。前記第1支持プレートは、軸方向に延びる第1突起を含み、前記第1突起は、前記第1支持プレートと一体に形成され、第1トラックを定義し;前記質量体は、軸方向に延びる貫通ホールを含み、前記貫通ホールは、第2トラックを定義し;前記第1トラックが半径方向に前記第2トラックに対向するように、前記第1突起は、前記貫通ホール内に延びる。ローラは、前記第1トラックと前記第2トラックとの間に半径方向に配置され、前記第1トラックと前記第2トラックに対してローリング可能で、前記質量体は、前記第1支持プレートと前記第2支持プレートに対して移動可能であり、前記第1支持プレートと前記第2支持プレート上にトルクを印加する。このトルクは、遠心振り子に伝達されるトルク振動を相殺することができる。
【0007】
前記技術的解決手段によれば、第1トラックを定義する第1突起は、第1支持プレートと一体に形成され、特に第1トラックを定義する構成要素を別途に処理し組立てる必要がないので、遠心振り子の部品数を減少させ、構造と組立を単純化する。また、2つの支持プレートの間に質量体が位置して、質量体が遠心振り子の外部に露出するのを防止し、質量体と外部構成要素との間の干渉を防止する。
【0008】
一部の実施例において、第1支持プレートは、軸方向に凹んだ第1溝を含み、第1溝は、第1突起に対向する第1支持プレートの外側表面に配置される。
【0009】
一部の実施例において、第1支持プレートは、スタンピングされて形成されてもよく、第1突起と第1溝は、同時に形成される。この場合、簡単なスタンピング段階により支持プレートに突起と溝とを一体に形成可能で、支持プレートの製造を単純化することができる。
【0010】
一部の実施例において、前記第2支持プレートは、前記第1突起に向かって軸方向に延びる第2突起を含み、前記第2突起は、前記第2支持プレートに一体に形成され;および前記第2突起は、前記貫通ホール内に延び、前記第1突起と前記第2突起は共に、前記第1トラックを定義する。前記第1突起および前記第2突起それぞれが前記第1トラックの半分を形成するように、前記第1突起と前記第2突起は、同一の突出高さを有することができる。他の実施例において、前記第1突起と前記第2突起は、互いに異なる突出高さを有してもよい。
【0011】
一部の実施例において、前記第1支持プレートと前記第2支持プレートは、結合部材によって前記第1突起に互いに固定される。この場合、前記結合部材は、前記第1突起に対応する第1溝に少なくとも部分的に収容されて、遠心振り子の軸方向の大きさを減少させることができる。前記結合部材は、リベット、ねじ、および溶接物などであってもよい。
【0012】
一部の実施例において、前記第2支持プレートは、軸方向に凹んだ第2溝を含み、前記第2溝は、前記第2突起に対向する前記第2支持プレートの外側面に配置される。前記結合部材の第1端部は、第1支持プレートの外側表面を越えて延びずに第1溝に収容され、結合部材の反対側の第2端部は、第2支持プレートの外側表面を越えて延びずに第2溝に収容される。この場合、第1支持プレートと第2支持プレートの外側表面は、いかなる突出部分なしに同一の高さになっていて、遠心振り子の軸方向の大きさを減少させることができ、他の隣接した構成要素との干渉を防止することができる。
【0013】
一部の実施例において、前記第1トラックは、第1凹表面を含み、前記第2トラックは、第2凹表面を含むと、前記第1凹表面と前記第2凹表面は、互いに対向して眼のような(eye-like)形状を形成する。前記ローラは、前記第1凹表面と前記第2凹表面との間に位置し、前記第1凹表面と前記第2凹表面に同時にローリングすることができる。したがって、前記質量体は、前記第1凹表面と前記第2凹表面の円周方向の幅の合計と実質的に同一の円周方向の距離において前記第1支持プレートと前記第2支持プレートに対してスイングすることができる。
【0014】
一部の実施例において、前記第1トラックは、第1突起の半径方向の内側に位置することができ、前記第2トラックは、前記貫通ホールの半径方向の内側に位置することができる。
【0015】
一部の実施例において、前記第1トラックは、前記第1突起の半径方向の外側に位置することができ、前記第2トラックは、前記貫通ホールの半径方向の外側に位置することができる。
【0016】
一部の実施例において、前記第1支持プレートは、軸方向に延びる第3突起を含み、前記第3突起は、前記第1支持プレートと一体に形成され、第3トラックを定義する。前記質量体は、軸方向に延びる他の貫通ホールを含み、前記他の貫通ホールは、前記貫通ホールから円周方向に角度だけオフセットされ、前記他の貫通ホールは、第4トラックを定義する。前記第3トラックが半径方向に前記第4トラックに対向するように、前記第3突起は、前記他の貫通ホール内に延びる。また、他のローラは、前記第3トラックと前記第4トラックとの間に半径方向に配置され、前記第3トラックと前記第4トラックに対してローリング可能で、前記質量体は、前記第1支持プレートと前記第2支持プレートに対して移動可能であり、前記第1支持プレートと前記第2支持プレートにトルクを印加する。
【0017】
この場合、前記第1トラック、前記第2トラックおよび前記ローラから構成された第1スライディング配置は、前記第3トラック、前記第4トラックおよび他のローラから構成された第2スライディング配置と同一であってもよく、前記回転軸に対して設定角度オフセットされる。したがって、前記質量体は、前記第1および第2支持プレートに対してさらにスムーズにスイングすることができる。
【0018】
本発明の他の態様において、上記の説明による遠心振り子を含むトルク伝達装置が提供される。前記遠心振り子は、トルク伝達装置のトルク振動を減少させることができ、構造がコンパクトであり、組立が簡単である。
【0019】
一部の実施例において、前記トルク伝達装置は、トルクコンバータ、クラッチ装置またはデュアルマスフライホイールであってもよい。
【0020】
本発明のさらに他の態様において、上記の説明によるトルク伝達装置を含む車両が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】第1実施例による遠心振り子の部分分解斜視図;
【
図3】第1実施例による遠心振り子の支持プレートの部分図;
【
図5】第2実施例による遠心振り子の部分分解斜視図;
【
図6】第2実施例による遠心振り子の支持プレートの部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付した図面を参照して、本発明の具体的な実施例を詳細に説明する。図面において、同一で類似の参照番号を有する構成要素は同一または類似の機能を有する。
【0023】
以下の説明において、「軸方向」は、遠心振り子Pの回転軸Xに対して平行な方向を示し;「円周方向」は、回転軸X周囲の円周方向を示し;「半径方向」は、回転軸Xに垂直な方向を示し;「外部」や「外側」などは、回転軸Xから半径方向の外側へ遠くなる方向を示し、「内部」や「内側」などは、回転軸Xに向かう半径方向の内側方向を示す。
【0024】
図1に示されているように、本発明による遠心振り子Pは、軸方向に互いに対向し、互いに固定される第1支持プレート1および第2支持プレート2を含む。第1支持プレート1と第2支持プレート2との間に軸方向に質量体3が配置される。
【0025】
2つの第1支持プレート1と第2支持プレート2は、同一の直径を有するディスク形状であり、重畳(overlap)することができる。第1支持プレート1と第2支持プレート2の中心は、回転軸を組立るようにするための貫通ホールが提供される。回転シャフトは、内燃エンジンからトルクを受けて中心を貫通する回転軸Xを中心に回転するように、第1支持プレート1と第2支持プレートを駆動させる。
【0026】
他の実施例において、第1支持プレート1と第2支持プレート2は、他の適切な形状(例えば、リング)を有することができる。また、第1支持プレート1と第2支持プレート2は、既存の装置(例えば、トルクコンバータのタービンディスク)の回転ディスクボディに結合(例えば、リベット)される。
【0027】
2つのグループの質量体3は、第1支持プレート1と第2支持プレート2との間に配置され、2つのグループの質量体3は、第1支持プレート1と第2支持プレート2の周縁に配置され、回転軸Xを中心に対称となり得る。他の実施例において、3つのグループ、4つのグループなどといった他の数のグループを有する複数の質量体グループが提供されてもよく、複数の質量体グループは、回転軸Xの周囲に均一に配列される。それぞれの質量体グループは、扇形状を有することができ、つまり、一定の角度で延びる内側弧角と同一の角度で延びる外側弧角を有することができる。他の実施例において、他の形状の質量体が提供されてもよい。
【0028】
図2は、第1支持プレート1、第2支持プレート2および質量体3の構造を示す。
【0029】
第1支持プレート1は、軸方向に延びる第1突起11を含み、第1突起は、第1支持プレート1と一体に形成される。第2支持プレート2は、第1突起11に向かって軸方向に延びる第2突起21を含み、第2突起21は、第2支持プレート2と一体に形成される。第1突起11と第2突起21は共に、第1トラックR1を定義する。質量体3は、軸方向に延びる貫通ホール31を含み、貫通ホール31は、第2トラックR2を定義する。第1突起11と第2突起21はすべて前記貫通ホール31内に延びて、第1トラックR1は、第2トラックR2と半径方向に対向する。
【0030】
質量体3は、第1支持プレート1と第2支持プレート2に対して所定の円周方向の距離内でスイングすることができ、スイングする間、質量体3がローラ5を介して第1支持プレート1と第2支持プレート2にトルクを印加して第1支持プレート1と第2支持プレート2上のトルク変動を相殺するように、ローラ5は、第1トラックR1と第2トラックR2との間に半径方向に配置され、第1トラックR1と第2トラックR2に対してローリングすることができる。
【0031】
特に、本発明の支持プレート1、2は、それぞれスタンピングされて形成されて、第1突起11と第2突起21がその上に一体に形成される。第1支持プレート1を例として説明する。スタンピング工程において、第1支持プレート1の材料の一部は、前記支持プレート1の残りの材料との強固な連結を維持しながら質量体3の側面に向かって一定の距離だけ前進する。これによって、所定の円周方向の高さを有する第1突起11が支持プレート1の内側面に形成され;したがって、所定の円周方向の深さを有する第1溝12が第1支持プレート1の外側面と第1突起11の反対面に形成される。
【0032】
遠心振り子Pの組立過程は、次の通りである:
第一、
図2に示されているように、第1突起11および第2突起21ともが対応する貫通ホール31に整列されるように、2つの支持プレート1、2と質量体3を整列し、貫通ホール31上の第2トラックR2と第1突起11および第2突起21上の第1トラックR1との間にローラ5を配置する;
第二、第1突起11と第2突起21が貫通ホール31の内部に延びて互いに接触し、ローラ5の内側および外側縁がそれぞれ第1トラックR1と第2トラックR2に接触するように、2つの支持プレート1、2を軸方向に押す;
第三、2つの突起11、21をリベット4と共にリベッティングして、2つの支持プレート1、2は共にリベッティングされる。
【0033】
2つの突起11、21の高さの合計が貫通ホール31の深さ(つまり、質量体3の厚さ)より大きいため、組立てられた支持プレート1、2と質量体3との間に軸方向のギャップが存在し、質量体3が回転軸Xに垂直な平面で支持プレート1、2に対してスイングすることを許容する。
【0034】
本発明によれば、支持プレート1、2とその上に突起11、21とが一体化されているため、第1トラックR1が別途の部品として提供される場合と比較して、本発明の遠心振り子Pは、部品の数を減少させ、組立工程を単純化させる。
【0035】
また、リベット4の両端部は、2つの支持プレート1、2の外側面の第1溝12、第2溝22にそれぞれ収容され、好ましくは、2つの支持プレート1、2の外側面を越えて延びない。この場合、支持プレート1、2の外側面に突出部がなくて、遠心振り子Pの軸方向の距離が減少し、他の隣接した部品との干渉を避けるのに役立つ。他の実施例において、スクリューや溶接物といった他の結合部材4がさらに、2つの支持プレート1、2を固定するために用いられてもよく、結合部材4はさらに、支持プレート1、2の外側面から突出することができる。
【0036】
図2に示された実施例において、第1突起11と第2突起21の高さは同一であり、2つはそれぞれ第1トラックR1の半分を定義する。図示しない他の実施例において、第1突起11と第2突起21の高さはさらに、異なっていてもよい。ただし、第2突起21は形成されず、単に第1突起11だけが第1トラックR1を形成するのに用いられてもよい。この時、第1突起11の高さは、貫通ホール31の深さとほぼ同一であり、第1突起11自体は、第2支持プレート2に固定結合される。
【0037】
また、質量体3のスイングをスムーズにするために、他の貫通ホール32が質量体3に形成される。
図2に示されているように、貫通ホール31、32は、同一の幾何学的構造を有し、これらは円周方向に設定された角度だけオフセットされる。この場合、第1支持プレート1は、軸方向に延びる第3突起13を含み、第3突起13は、第1支持プレート1に一体に形成され、第3トラックR3を定義する。追加的な他の貫通ホール32は、第4トラックR4を定義する。第3トラックR3が半径方向に第4トラックR4に対向するように、第3突起13は、他の貫通ホール32の内部に延びる。さらに、他のローラ6が半径方向に第3トラックR3と第4トラックR4との間に配置され、第3トラックR3と第4トラックR4に対してローリング可能である。この場合、質量体3は、2つのローラ5、6を介して第1支持プレート1と第2支持プレートに対してスイングし、これと同時に、2つのローラ5、6を介してトルクを印加する。2つのローラ5、6がスイング方向の前方と後方に配置されるため、支持プレート1、2に対する質量体3の円滑な回転を実現することができる。他の実施例において、他の個数(例えば、3つ)の貫通ホールがさらに、それぞれの質量体3に備えられてもよい。
【0038】
第1トラックR1と第2トラックR2の配置のために、本発明は、以下の2つの実施例を提案する。
【0039】
第1実施例
図1~
図3は、第1実施例による遠心振り子Pを示す。
図3に示されているように、第1支持プレート1の突起11を例に挙げると、それぞれの突起11は、第1支持プレート1の外側周辺側に形成され、つまり、それぞれの突起11の外側角は、第1支持プレート1の外側周辺角の一部である。また、それぞれの突起11の半径方向の内側角は、ローラ5の半径方向の外側と接触し、ローラ5のローリングをガイドするための特定のプロファイルを有する第1トラックR1を定義する。それぞれの突起11の内側および外側角は、2つの半径方向の側面角を介して両側で連結される。第1支持プレート1および第2支持プレート2上の突起は、同一の構造を有する。
【0040】
図2に示されているように、第1貫通ホール31を例に挙げると、それぞれの貫通ホール31の半径方向の外側角は、貫通ホール31に向かって延びる第1突起11と第2突起21の半径方向の外側角と接触するための弧形状であり;したがって、第1突起11と第2突起21の外側角は、質量体3を支持し、円周方向にスイングするようにガイドすることができる。貫通ホール31の半径方向の内側角は、ローラ5の半径方向の内側面と接触し、ローラ5のローリングをガイドするための特定のプロファイルを有する第2トラックR2を定義する。貫通ホール31の内側角と外側角は、2つの半径方向の側面角を介して両側で連結される。
【0041】
作動中に、支持プレート1、2のトルクが変動すれば、質量体3がローラ5、第1トラックR1および第2トラックR2の協力により予め設計された経路に沿って円周方向と半径方向に支持プレート1、2に対してスイングすることができ、支持プレート1、2上のトルク変動を相殺するために、質量体3がローラ5を介して反対方向に支持プレート1、2にトルクを印加する。
【0042】
図2および
図3は、第1トラックR1と第2トラックR2の例示的なプロファイルを示す。第1トラックR1は、半径方向の内側に突出した第1および第2凸面Aを含み、半径方向の外側に凹んだ第1凹面Bは、第1および第2凸面Aの間で定義される。第2トラックR2は、半径方向の外側に突出した第3および第4凸面Cを含み、半径方向の内側に凹んだ第2凹面Dは、第3および第4凸面Cの間で定義される。ローラ5は、第1凹面Bと第2凹面Dとの間に位置する。質量体3のスイング過程中に、ローラ5は、第1凹面Bと第2凹面Dの表面に沿ってローリングし、作用力は、ローラ5と第1凹面Bおよび第2凹面Dの接触線に伝達されて反対方向に変動トルクを発生させる。
【0043】
また、
図2に示されているように、質量体3において、半径方向の内側に凹んだ側面の凹面は、第3および第4凸面Cと貫通ホールの隣接した側面角の間にそれぞれ定義されて、スイング中に第1トラックR1の第1および第2凸面Aが第2トラックR2の表面と干渉するのを防止することができる。
【0044】
一部の実施例において、質量体3が支持プレート1、2と接触する時に発生する衝撃を低減するために、ゴムパッドのような振動減衰要素が質量体3の貫通ホール31の両側面および/または支持プレート1、2の突起11、21の両側面に配置される。
【0045】
第2実施例
図4~
図6は、第2実施例による遠心振り子P’を示す。この遠心振り子P’は、第1実施例の遠心振り子Pと基本的に同一であり、以下、差異点についてのみ説明する。
【0046】
第2実施例において、
図6に示されているように、第1支持プレート1’の第1突起11’を例に挙げると、それぞれの突起11’は、第1支持プレート1’の外側周辺から離隔して形成され、つまり、突起11’の半径方向の外側角は、支持プレート1’の外側周辺角から設定された距離だけ離隔する。また、それぞれの突起11’の半径方向の外側角は、ローラ5’の半径方向の内側面と接触し、ローラ5’のローリングをガイドするための特定のプロファイルを有する第1トラックR1’を定義する。
【0047】
図5に示されているように、貫通ホール31’の半径方向の内側角は、貫通ホール31’の内部に延びる突起11’の半径方向の内側角と接触するための弧形状であり;したがって、突起11’の半径方向の内側角は、質量体3’を支持し、円周方向にスイングするようにガイドすることができる。貫通ホール31’の半径方向の外側角は、ローラ5’の外側面と接触し、ローラ5’のローリングをガイドするための特定のプロファイルを有する第2トラックR2’を定義する。
【0048】
作動中に、支持プレート1’、2’のトルクが変動すれば、質量体3’がローラ5’、第1トラックR1’および第2トラックR2’の協力により予め設計された経路に沿って円周方向と半径方向に支持プレート1’、2’に対してスイングすることができ、支持プレート1’、2’上のトルク変動を相殺するために、質量体3’がローラ5’を介して反対方向に支持プレート1’、2’にトルクを印加する。
【0049】
図5および
図6は、第1トラックR1’と第2トラックR2’の例示的なプロファイルを示す。第1トラックR1’は、半径方向の外側に突出した第1および第2凸面A’を含み、半径方向の内側に凹んだ第1凹面B’は、第1および第2凸面A’の間で定義される。第2トラックR2’は、半径方向の内側に突出した第3および第4凸面C’を含み、半径方向の外側に凹んだ第2凹面D’は、第3および第4凸面C’の間で定義される。ローラ5’は、第1凹面B’と第2凹面D’との間に位置する。質量体3’のスイング過程中に、ローラ5’は、第1凹面B’と第2凹面D’の表面に沿ってローリングし、これと同時に、作用力は、ローラ5’と第1凹面B’および第2凹面D’の接触線に伝達されて反対方向に変動トルクを発生させる。
【0050】
本発明のトルク伝達装置は、上述した遠心振り子を含む。トルク伝達装置は、トルクコンバータ、クラッチ装置またはデュアルマスフライホイールであってもよい。遠心振り子は、内燃エンジンからトルクコンバータ、クラッチ装置またはデュアルマスフライホィールに伝達されるトルク変動を減少させることができる。
【0051】
本発明による車両は、上述したトルク伝達装置を含む。車両は、例えば、自動車、エンジニアリング車両、農業車両などである。このようなトルク伝達装置は、車両の内燃エンジンで発生するトルク振動を除去する減衰効果を提供することができる。これは、燃料消耗を低減し、ノイズを低減し、車両の信頼性を向上させるのに有用である。
【0052】
以上、本発明を実現するための最善の実施例およびその他の実施例について詳細に説明したが、このような実施例は例示に過ぎず、特許の権利範囲、適用または構成を制限しないことを理解しなければならない。本発明の権利範囲は添付した特許請求の範囲およびその均等物によって制限される。通常の技術者は、本発明の教示下で上述した実施例に多くの変更を加えることができ、すべての変更は本発明の保護範囲内に属する。
【符号の説明】
【0053】
P、P’ 遠心振り子
1、1’ 第1支持プレート
11、11’ 第1突起
12 第1溝
13 第3突起
2、2’ 第2支持プレート
21 第2突起
22、22’ 第2溝
3、3’ 質量体
31、31’ 貫通ホール
32 他の貫通ホール
4、4’ 結合部材、リベット
5、5’ ローラ
6 他のローラ
R1、R1’ 第1トラック
A、A’ 第1および第2凸面
B、B’ 第1凹面
R2、R2’ 第2トラック
C、C’ 第3および第4凸面
D、D’ 第2凹面
R3 第3トラック
R4 第4トラック