(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】発泡性ポリプロピレン組成物、発泡ポリプロピレン及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20240308BHJP
C08J 9/06 20060101ALI20240308BHJP
C08J 9/12 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/06
C08J9/12 CES
(21)【出願番号】P 2022523490
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 CN2020083950
(87)【国際公開番号】W WO2021077690
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】201911002652.8
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520335934
【氏名又は名称】国家能源投資集団有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】CHINA ENERGY INVESTMENT CORPORATION LIMITED
(73)【特許権者】
【識別番号】520380978
【氏名又は名称】北京低▲タン▼清▲潔▼能源研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】于 芳
(72)【発明者】
【氏名】梁 文斌
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼ 伊
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 寅▲リン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 志成
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-044181(JP,A)
【文献】特開2005-002228(JP,A)
【文献】国際公開第2011/111696(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0220730(US,A1)
【文献】国際公開第2005/026255(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/073998(WO,A1)
【文献】特開2019-099665(JP,A)
【文献】特開平08-143743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/04
C08J 9/06
C08J 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン、ポリプロピレン改質剤、発泡剤、及び任意選択的な核形成剤を含有する発泡性ポリプロピレン組成物であって、
前記ポリプロピレン改質剤は、製剤(2)中の、成分Aで改質した極性モノマーグラフト化ポリプロピレンであり、
製剤(2)において、前記極性モノマーは、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、エポキシアクリレート、三量体アクリルイソシアヌレート、及びアクリルアミドから選ばれた少なくとも1つであり、前記成分Aは、アミン基含有物質であり、前記アミン基含有物質は、化合物Iであり、前記化合物Iは、アミン基、エーテル結合、及びアリール基を含む有機物であり、
各製剤中の極性モノマーグラフト化ポリプロピレンと成分Aの総重量を基準として、前記極性モノマーグラフト化ポリプロピレンの使用量は95~99.8重量%、前記成分Aの使用量は0.2~5重量%である、
ことを特徴とする発泡性ポリプロピレン組成物。
【請求項2】
前記発泡性ポリプロピレン組成物の総重量を基準として、前記ポリプロピレンの含有量は75~91重量%、前記ポリプロピレン改質剤の含有量は5~15重量%、前記発泡剤の含有量は4~10重量%である、
請求項1に記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
【請求項3】
前記化合物Iは、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、フェノキシアニリン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、及び3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルエーテルから選ばれた1つまたは複数である、
請求項1または2に記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
【請求項4】
前記極性モノマーグラフト化ポリプロピレンのグラフト率は、0.1~3重量%である、
請求項1または2に記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
【請求項5】
前記発泡剤は、アゾジカーボンアミド、炭酸水素ナトリウム、クエン酸、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、及び4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホノヒドラジド)から選ばれた少なくとも1つである、
請求項1または2に記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
【請求項6】
前記発泡剤は、プロパン、ブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、N
2、CO
2、CH
4、H
2、空気、及びフロンから選ばれた少なくとも1つである、
請求項1または2に記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
【請求項7】
前記発泡性ポリプロピレン組成物は、前記ポリプロピレン、ポリプロピレン改質剤、発泡剤、及び任意選択的な核形成剤を150~180℃で押出造粒することによって得られる、
請求項1から5の何れか1項に記載の発泡性ポリプロピレン組成物。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の発泡性ポリプロピレン組成物を発泡成形して発泡ポリプロピレンを得ることを含む、
発泡ポリプロピレンの製造方法。
【請求項9】
前記発泡成形過程は、マスターバッチ状の前記発泡性ポリプロピレン組成物のプレス発泡成形を行うことを含み、
前記プレス発泡成形の条件は、温度180~210℃、圧力0.1~0.2MPa、プレス成形時間5~15minを含む、
請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記発泡成形過程は、前記発泡性ポリプロピレン組成物中の各成分を押出発泡装置で混合・発泡させることを含み、
前記混合温度は150~210℃、前記発泡温度は160~180℃である、
請求項8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡プラスチックの分野に関し、具体的には、発泡性ポリプロピレン組成物、発泡ポリプロピレン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡プラスチックは、軽量、低熱伝導率、断熱、防音、緩衝などの優れた性能を有し、日用、荷造り、運輸、建築などの分野で広く用いられている。ポリプロピレン樹脂は、供給源が広く、価格が低廉であり、発泡材料としては、ポリスチレン、ポリエチレンなどの従来の発泡材料よりも優れた性能を有し、例えばより良好な剛性、硬度、耐衝撃性能、耐熱性能などを有する。然しながら、通常のポリプロピレン樹脂を用いて発泡を行う場合、加工操作可能な温度範囲が狭く、発泡成形が困難である。何故かと言うと、ポリプロピレンは結晶性プラスチックであるため、その発泡が結晶融点付近でしか行われなく、通常のポリプロピレン樹脂は発泡時に融点から気泡破裂になるまでの温度差が小さいからである。通常のポリプロピレンの場合、その溶融結晶化温度に達したと、その溶融粘度が急速に低下していき、結晶化過程において大量の結晶化熱が放出され、その溶融粘度及び溶融強度がさらに低下していく。従って、通常のポリプロピレンでは、溶融強度が小さくて気泡を包み込むことができないので、発泡過程におけるガスの脱出現象が発生しやすく、気泡が陥没したり気泡が併合したりすることがあり、優れた発泡製品を製造することができない。
【0003】
高発泡倍率で均一な気泡を有するポリプロピレン発泡材料を製造するには、ポリプロピレン樹脂原料の性能改善は、第一に重要なことである。ポリプロピレンの性能を改善する手段としては、高溶融強度ポリプロピレンの利用、ポリプロピレンの部分架橋、ポリプロピレンの混合改質などが挙げられる。
【0004】
CN105273314Aには、物理混合方法によって、発泡材料の基体樹脂としてランダムポリプロピレン及び塩素化ポリエチレンを用いて、塩素化ポリエチレンを適量添加することでPPの発泡性能を改善するとともに、強靭化の役割を果たすポリプロピレン発泡断熱材が開示されている。
【0005】
CN103756124Aには、成分にエチレンアクリル酸共重合体を含み、過酸化物の作用下でポリプロピレンとグラフトしてポリプロピレン長い分岐鎖を形成することによって、高溶融強度ポリプロピレンを生成することが可能なポリプロピレン発泡材料が開示されている。
【0006】
CN104356305Aには、固相グラフトに基づく高溶融強度ポリプロピレンの製造方法が開示されており、その原料成分は、ポリプロピレン100重量部、開始剤0.01~1重量部、多官能性モノマー0.1~5重量部、酸化防止剤0.1~5重量部である。具体的なステップを以下に記載する。ポリプロピレン、多官能性モノマー、酸化防止剤を高速混合機内に投入して均一に攪拌し、容器の加熱温度を90~120℃に設定し、高速混合機の回転数を700~1400rpmに設定し、その次に開始剤を投入して10~60minで攪拌しながら反応させ、反応終了後、反応生成物を冷間混練機内に投入し、酸化防止剤を0~0.5重量部添加し、冷間混練により降温させてから排出すれば、前記高溶融強度ポリプロピレンが得られる。
【0007】
US5047446には、線状重合物質を高エネルギー電離放射線で照射する段階と、照射された重合物質中の残存遊離基を熱失活させる段階とを含む線状、半結晶質、通常固体のプロピレン重合物質から、高分子量、長鎖枝分れプロピレン重合物質を製造する方法であって、この方法の改善点は、照射された重合物質を、残留遊離基の失活の間に40~110℃の温度範囲内で少くとも10min加熱する点を含むことを特徴とする方法が開示されている。
【0008】
US5414027及びUS5541236には、歪み硬化性伸長粘度及び向上した溶融強度をもち、通常固体でかつ高分子量、非線形であり、実質的にゲルを含まないプロピレン重合体材料が開示されている。高エネルギー電離放射線架橋により高溶融強度ポリプロピレンが得られる。
【0009】
さらに、ポリプロピレンの発泡方法は一般的には、物理発泡と化学発泡との2方法に分けられる。物理発泡法では、発泡剤専用の計量、加圧、注入システムを用いる必要があり、発泡剤は一般的には、ポリプロピレンが完全に溶融した押出機の対応する位置で添加される。ポリプロピレン化学発泡では、通常の押出を用いて製造される。CN105566751Aでは、高結晶性ポリプロピレン樹脂発泡マスターバッチ及びその製造方法が開示されており、かかる方法は、化学発泡法によって、基体樹脂としてPP及びLDPEを用いて、化学発泡剤、核形成剤、潤滑剤、界面活性剤などの助剤を添加して高速混合機内で均一に混合してから、二軸押出機内に投入して押出造粒を行うことによって、ポリプロピレン射出発泡や、発泡シート、発泡プロファイル及び発泡パイプの押出用高結晶度のポリプロピレン発泡マスターバッチを得られる。
【0010】
また、イギリスのZote社により、微細架橋の熱成形PP発泡プラスチックが生産された。スイスのAlveo社により、自動車工業に適用される放射線架橋PP/PE発泡体が生産された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】CN105273314A
【文献】CN103756124A
【文献】CN104356305A
【文献】US5047446
【文献】US5414027
【文献】US5541236
【文献】CN105566751A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来技術では、通常、ポリプロピレン溶融改質剤の添加によりポリプロピレンの発泡倍率を向上させることができるが、発泡ポリプロピレン製品の機械的特性が低いので、発泡プラスチックの応用が制限されてしまう。従って、高発泡倍率及び機械的特性を両立させた発泡ポリプロピレン製品をどのように得られるかは、本分野で早急に解決を要する問題である。
【0013】
本発明の目的は、製造された発泡ポリプロピレンの発泡倍率を向上させるとともに、発泡ポリプロピレンに優れた引張りや曲げなどの機械的特性を持たせることが可能な発泡性ポリプロピレン組成物、発泡ポリプロピレン及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1態様によれば、ポリプロピレン、ポリプロピレン改質剤、発泡剤、及び任意選択的な核形成剤を含有し、
前記ポリプロピレン改質剤の製造方法は、製剤(1)又は製剤(2)中の極性モノマーグラフト化ポリプロピレンを成分Aに接触させて反応させてから、押出造粒を行うことを含み、前記極性モノマーグラフト化ポリプロピレン中の極性モノマーは、成分Aと化学反応可能なものであり、
製剤(1)において、前記極性モノマーは、無水マレイン酸、アクリル酸、アクリレート、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニルネオデカノエト(Vinyl neodecanoate)、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、エポキシアクリレート、三量体アクリルイソシアヌレート(Trimeric acrylic isocyanurate)、及びアクリルアミドから選ばれた少なくとも1つであり、前記成分Aは、ポリイソシアネート及びポリエチレンオキシドから選ばれた少なくとも1つであり、
製剤(2)において、前記極性モノマーは、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、エポキシアクリレート、三量体アクリルイソシアヌレート、及びアクリルアミドから選ばれた少なくとも1つであり、前記成分Aは、ポリイソシアネート、ポリエチレンオキシド、及びアミン基含有物質から選ばれた少なくとも1つであり、前記アミン基含有物質は、化合物I及び化合物IIから選ばれた少なくとも1つであり、前記化合物Iは、アミン基、エーテル結合、及びアリール基を含む有機物であり、前記化合物IIはポリアミンであり、
各製剤中の極性モノマーグラフト化ポリプロピレンと成分Aの総重量を基準として、前記極性モノマーグラフト化ポリプロピレンの使用量は95~99.8重量%、前記成分Aの使用量は0.2~5重量%である、
発泡性ポリプロピレン組成物が提案されている。
【0015】
本発明の第2態様によれば、本発明の第1態様に記載の発泡性ポリプロピレン組成物を発泡成形して発泡ポリプロピレンを得ることを含む、発泡ポリプロピレンの製造方法が提案されている。
【0016】
本発明の第3態様によれば、本発明の第2態様に記載の製造方法により製造された発泡ポリプロピレンが提案されている。
【0017】
本発明による発泡性ポリプロピレン組成物に、ポリプロピレン改質剤として前記化合物Aによって改質された極性モノマーグラフト化ポリプロピレンを添加することにより、より高い発泡倍率を有しかつ機械的特性が良好な発泡ポリプロピレンを製造することができる。当該発泡ポリプロピレンは、発泡倍率が12倍以上に達したとともに、良好な引張り及び曲げ特性を有する。
本発明の他の特徴及び利点について、以下の[発明を実施するための形態]部分で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施例1で製造された発泡ポリプロピレンの気泡の、走査型電子顕微鏡写真である。
【
図2】
図2は、実施例2で製造された発泡ポリプロピレンの気泡の、走査型電子顕微鏡写真である。
【
図3】
図3は、実施例3で製造された発泡ポリプロピレンの気泡の、走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書に開示された範囲の端点及び任意の値は、当該精確な範囲又は値に制限されるものでなく、これらの範囲又は値は、それらに近接する値を含むよう理解されるべきである。数値範囲については、各範囲の端点値の間、各範囲の端点値と独自の点値の間、及び独自の点値の間を互いに組み合わせて1つ又は複数の新しい数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は、本明細書で具体的に開示されるものと見なされるべきである。
【0020】
本発明の第1態様によれば、ポリプロピレン、ポリプロピレン改質剤、発泡剤、及び任意選択的な核形成剤を含有する発泡性ポリプロピレン組成物が提案されている。
【0021】
本発明において、前記ポリプロピレン改質剤の製造方法は、製剤(1)又は製剤(2)中の極性モノマーグラフト化ポリプロピレンを成分Aに接触させて反応させてから、押出造粒を行うことを含む。
【0022】
本発明による前記製剤(1)において、前記極性モノマーは、無水マレイン酸、アクリル酸、アクリレート、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニルネオデカノエト(Vinyl neodecanoate)、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、エポキシアクリレート、三量体アクリルイソシアヌレート、及びアクリルアミドから選ばれた少なくとも1つであり、前記成分Aは、ポリイソシアネート及びポリエチレンオキシドから選ばれた少なくとも1つであり、選ばれた極性モノマーと選ばれた成分Aが併用されて前記反応押出過程中に化学反応が発生する。
【0023】
前記製剤(1)において、前記アクリレートは、具体的には、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、及びイソオクチルアクリレートから選ばれた少なくとも1つであり得る。前記メタクリル酸エステルは、具体的には、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、及びヒドロキシエチルメタクリレートから選ばれた少なくとも1つであり得る。
【0024】
本発明による前記製剤(2)において、前記極性モノマーは、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、エポキシアクリレート、三量体アクリルイソシアヌレート、及びアクリルアミドから選ばれた1つまたは複数であり、前記成分Aは、ポリイソシアネート、ポリエチレンオキシド、及びアミン基含有物質から選ばれた少なくとも1つであり、選ばれた極性モノマーと選ばれた成分Aが併用されて前記反応押出過程中に化学反応が発生する。
【0025】
本発明において、前記成分Aがアミン基含有物質である場合、前記極性モノマーは、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、エポキシアクリレート、三量体アクリルイソシアヌレート、及びアクリルアミドから選ばれた少なくとも1つであり、両者の併用により、製剤(1)と同様に、ポリプロピレン改質剤の溶融強度のみならず、発泡ポリプロピレンの機械的特性も向上する目的を実現することができる。
【0026】
本発明による前記ポリプロピレン改質剤において、各製剤中の極性モノマーグラフト化ポリプロピレン及び成分Aの総重量を基準として、前記極性モノマーグラフト化ポリプロピレンの使用量は95~99.8重量%、好ましくは97~99.5重量%であり、前記成分Aの使用量は0.2~5重量%、好ましくは0.5~3重量%である。
【0027】
本発明において、前記ポリイソシアネートは、前記極性モノマーと化学反応可能な任意のポリイソシアネートであり得る。一般的には、前記ポリイソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-キシレンジイソシアネート、2,6-キシレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びトリフェニルメタン4,4,4-トリイソシアネートから選ばれた1つまたは複数である。前記ジフェニルメタンジイソシアネートは4,4-ジフェニルメタンジイソシアネートであることが好ましい。
【0028】
本発明において、前記ポリエチレンオキシドの分子量は50×104~200×104g/molである。
【0029】
本発明において、前記アミン基含有物質は、化合物I及び/又は化合物IIから選ばれたものである。前記化合物Iは、アミン基、エーテル結合、及びアリール基を含む有機物であり、前記化合物IIはポリアミンであり、前記化合物Iと前記化合物IIとは異なるものである。
【0030】
具体的な一実施形態によれば、前記化合物Iは、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、フェノキシアニリン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、及び3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルエーテルから選ばれた1つまたは複数であり、好ましくは、フェノキシアニリン及び/又は3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルエーテルである。
【0031】
本発明において、前記化合物IIは、アルキルジアミン、アルキレンジアミン、アルキレントリアミン、アルキレンテトラアミン、アルキレンペンタミン、及びアリールジアミンから選ばれた1つまたは複数であり、例えばC2~C12のアルキルジアミン、C2~C12のアルキレンジアミン、C2~C12のアルキレントリアミン、C2~C12のアルキレンテトラアミン、C2~C12のアルキレンペンタミン、及びC6~C18のアリールジアミンから選ばれた1つまたは複数であり得る。
【0032】
具体的な一実施形態によれば、前記化合物IIは、テトラエチレンペンタミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、及び1,12-ジアミノドデカンから選ばれた1つまたは複数であり、好ましくは、ジエチレントリアミン及び/又は1,9-ジアミノノナンである。
【0033】
本発明において、前記極性モノマーグラフト化ポリプロピレン(「ポリ(プロピレン-グラフト-極性モノマー」とも呼ばれる)は、市販により得られたものであっても、溶液グラフト法、溶融グラフト法、固相グラフト法、放射グラフト法などの本分野に周知の方法により得られたものであってもよい。一実施形態によれば、前記溶融グラフト法による前記極性モノマーグラフト化ポリプロピレンの製造は、前記極性モノマー(1~10%)をポリプロピレン(90~99%)、開始剤(0.1~3%)と均一に混合した後、二軸押出機内に投入して溶融及び押出を行い、押出機の温度を160~230℃、押出機の回転数を100~400r/min、フィードレートを5~15Hzに設定し、水槽による冷却後に造粒を行い、生成物を乾燥させ、その結果、極性モノマーグラフト化ポリプロピレンが得られたことを含む。前記開始剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ビス(tert.ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、過安息香酸tert-ブチル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、及び2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンから選ばれた少なくとも1つであり得る。
【0034】
一実施形態によれば、前記極性モノマーグラフト化ポリプロピレンのグラフト率は、0.1~3重量%、好ましくは0.5~2重量%である。前記極性モノマーグラフト化ポリプロピレンの230℃、2.16kg下での溶融指数(MI)は、30~600g/10min、好ましくは45~350g/10minである。
【0035】
本発明による前記ポリプロピレン改質剤の製造過程において、反応押出方式としては、従来の操作に従って行うことができ、本発明の場合、反応押出温度は150~220℃であることが好ましい。押出機の回転数は、例えば50~100r/min、フィード回転数は、例えば3~8Hzであり得る。前記反応押出は、種々の二軸押出機内で行われることができる。押出造粒後、生成物を80~95℃で30~120min乾燥させる。
本発明において、前記発泡性ポリプロピレン組成物、前記ポリプロピレンは、種々の重合方法により得られたホモポリマーポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ランダム共重合ポリプロピレンなどから選ばれる。前記ポリプロピレンの230℃、2.16kg下での溶融指数は、好ましくは1~10g/10min、より好ましくは2~4g/10minである。前記ポリプロピレンの分子量分布は、例えば2~6であり得る。前記ポリプロピレンは、市販により得られる。
【0036】
本発明において、前記発泡性ポリプロピレン組成物中の発泡剤について、ポリプロピレン発泡が可能であればよく、特に限定されないが、具体的には化学発泡剤又は物理発泡剤であり得る。前記化学発泡剤は、アゾジカーボンアミド(発泡剤AC)、炭酸水素ナトリウム、クエン酸、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、及び4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホノヒドラジド)から選ばれた少なくとも1つであることが好ましい。前記物理発泡剤は、プロパン、ブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、N2、CO2、CH4、H2、空気、及びフロンから選ばれた少なくとも1つであることが好ましく、CO2であることがさらに好ましい。
【0037】
本発明において、前記発泡性ポリプロピレン組成物の総重量を基準として、前記ポリプロピレンの含有量は75~91重量%、前記ポリプロピレン改質剤の含有量は5~15重量%、前記発泡剤の含有量は4~10重量%である。
【0038】
本発明において、任意選択で、前記発泡性ポリプロピレン組成物は、核形成剤をさらに含む。前記核形成剤は、タルク粉末、マイカ、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、マイカ、カオリン、シリカから選ばれた少なくとも1つであり得る。前記核形成剤の含有量は、前記発泡性ポリプロピレン組成物の総重量を基準として0~3重量%であり得る。
【0039】
一実施形態によれば、前記発泡性ポリプロピレン組成物は、前記ポリプロピレン、前記ポリプロピレン改質剤、前記発泡剤、及び任意選択的な核形成剤を150~180℃で押出造粒することによって得られる。発泡性ポリプロピレンマスターバッチとして粒状の前記発泡性ポリプロピレン組成物が得られ、次の発泡性ポリプロピレン製造には便利である。
【0040】
本発明の第2態様によれば、本発明の第1態様に記載の発泡性ポリプロピレン組成物を発泡成形して発泡ポリプロピレンを得ることを含む、発泡ポリプロピレンの製造方法が提案されている。
【0041】
一実施形態によれば、発泡ポリプロピレンがプレス発泡プロセスによって製造され、前記発泡成形過程は具体的には、マスターバッチ状の前記発泡性ポリプロピレン組成物(即ち発泡性ポリプロピレンマスターバッチ)のプレス発泡成形を行ってから冷却することを含む。ここでは、先ず前記発泡性ポリプロピレン組成物中の各成分を150~180℃で混合して造粒を行うことで発泡性ポリプロピレンマスターバッチを得ることができ、前記発泡性ポリプロピレン組成物中の発泡剤は化学発泡剤である。この実施形態において、前記プレス発泡成形の条件は、温度180~210℃、圧力0.1~0.2MPa、プレス成形時間5~15minを含む。本発明に係る圧力は何れもゲージ圧である。前記冷却温度は128~140℃である。前記冷却後、圧力を放出してモールドを開いた結果、発泡ポリプロピレンが得られた。
【0042】
別の一実施形態によれば、発泡ポリプロピレンが押出発泡プロセスによって製造され、前記発泡成形過程は具体的には、前記発泡性ポリプロピレン組成物中の各成分を押出発泡装置で混合・発泡させることを含む。前記混合温度は150~210℃、前記発泡温度は150~180℃であり得る。前記押出発泡装置は、順次直列接続された二軸押出機と一軸押出機を含み、前記発泡段階が一軸押出機内で行われる。この実施形態において、前記発泡性ポリプロピレン組成物に前記核形成剤を含有することが好ましい。
【0043】
本発明の第3態様によれば、上記した製造方法により製造された発泡ポリプロピレンが提案されている。前記発泡ポリプロピレンは、発泡倍率が12倍以上であり、引張強度が2.0MPaより大きく、曲げ弾性率が25MPaより大きい。一般的には、前記発泡ポリプロピレンの平均気泡径は400μm以下、好ましくは200μm以下、例えば50μm、100μm、150μm、200μmである。
【0044】
以下、本発明について詳しい例示的な実施例を用いてさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
以下の実施例及び比較例において、
(1)主な原料
無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン:ブランド番号がPO1020、エクソンモービルから購入、グラフト率が1.2%、MIが348g/10min
ポリエチレンオキシド:分子量が1,000,000g/mol、アラジン試薬から購入
ポリプロピレンL5E89:通常の線形ポリプロピレン、神華石炭製油化工有限会社の包頭石炭化学支社から購入
ポリプロピレンWB140:高溶融強度ポリプロピレン、ボレアリス社から購入
PE100:ブランド番号が3490、ボレアリス社から購入。
(2)特徴付け及び特性測定
島津IRPresidge-21型フーリエ変換赤外分光光度計を用いてポリプロピレン改質剤の赤外スペクトル分析を行った。
発泡サンプルの気泡構造を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した。具体的には、発泡サンプルを液体窒素に浸漬して1h冷却させ、取り出した後に急速に脆性破壊させ、断面に金を吹き付け後、表面気泡の形態をSEMで観測した。
引張強度はISO527-1に基づいて測定され、曲げ強度はISO178/Aに基づいて測定される。
本明細書に言及された部数は何れも重量部を指す。
【0046】
以下の実施例は何れも本発明によるポリプロピレン組成物、発泡ポリプロピレン及びその製造方法を説明するためのものである。
【0047】
実施例1
(1)ポリプロピレン改質剤の製造
アクリル酸グラフト化ポリプロピレン(グラフト率が1.2%、MIが52g/10min)を99部、2,4-キシレンジイソシアネートを1部秤取して十分に混合した。完全に混合した原料をHAAKE二軸押出機内に投入し、押出温度を190℃、押出機の回転数を50r/min、フィード回転数を3Hzとした。押出造粒を行い、得られた製品を90℃で60min乾燥させた結果、ポリプロピレン改質剤が得られた。ポリプロピレン改質剤サンプルを赤外線分析したところ、赤外スペクトルにおいて、3350cm-1及び1540cm-1で-NCOと-OHが反応して生成したカルバメートの特徴ピークが現れ、-OHの3400cm-1及び3500cm-1での特徴ピークが著しく低下し、エステル基-C=Oの1727cm-1での特徴ピークが著しく増強し、このことから明らかなように、アクリル酸とイソシアネートが反応して製造された製品は目的製品である。
【0048】
(2)発泡ポリプロピレンの製造
ポリプロピレン改質剤を5部、L5E89を90部、アゾジカーボンアミドを5部秤取して均一に混合した後に、HAAKE二軸押出機内に投入し、押出温度を180℃、押出機の回転数を100r/min、フィード回転数を7Hzとした。押出造粒後、90℃で30min乾燥させた結果、発泡性ポリプロピレンマスターバッチが得られた。
発泡性ポリプロピレンマスターバッチを20g秤取して、幅10cm、長さ12cm、高さ1mmのモールド内に置き、そして制錠機の下圧台上に置き、加圧板を閉じた。200℃、圧力0.2MPaで10min加熱・保圧した後、130℃まで冷却した結果、発泡ポリプロピレンが製造された。
発泡ポリプロピレンの性質は表1に示す通り、気泡構造は
図1に示す通りである。
【0049】
実施例2
ポリプロピレン改質剤の製造過程中に、2,4-キシレンジイソシアネートを等質量のヘキサメチレンジイソシアネートに置換して発泡ポリプロピレンを製造した点で違う以外、実施例1の方法に従ってポリプロピレン改質剤及び発泡ポリプロピレンを製造した。
発泡ポリプロピレンの性質は表1に示す通り、気泡構造は
図2に示す通りである。
【0050】
実施例3
ポリプロピレン改質剤の製造過程中に、アクリル酸グラフト化ポリプロピレンを等質量の無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレンに置換して発泡ポリプロピレンを製造した点で違う以外、実施例1の方法に従ってポリプロピレン改質剤及び発泡ポリプロピレンを製造した。
発泡ポリプロピレンの性質は表1に示す通り、気泡構造は
図3に示す通りである。
【0051】
比較例1
PE100を5部、L5E89を90部、アゾジカーボンアミドを5部秤取して均一に混合した後に、HAAKE二軸押出機内に投入し、押出温度を180℃、押出機の回転数を100r/min、フィード回転数を7Hzとした。押出造粒後、90℃で30min乾燥させた結果、発泡性ポリプロピレンマスターバッチが得られた。
【0052】
発泡性ポリプロピレンマスターバッチを20g秤取して、幅10cm、長さ12cm、高さ1mmのモールド内に置き、そして制錠機の下圧台上に置き、加圧板を閉じた。200℃、圧力0.2MPaで10min加熱・保圧した後、130℃まで冷却した結果、発泡ポリプロピレンが製造された。
発泡ポリプロピレンの性質は表1に示す通りである。
【0053】
比較例2
WB140を5部、L5E89を90部、アゾジカーボンアミドを5部秤取して均一に混合した後に、HAAKE二軸押出機内に投入し、押出温度を180℃、押出機の回転数を100r/min、フィード回転数を7Hzとした。押出造粒後、90℃で30min乾燥させた結果、発泡性ポリプロピレンマスターバッチが得られた。
【0054】
発泡性ポリプロピレンマスターバッチを20g秤取して、幅10cm、長さ12cm、高さ1mmのモールド内に置き、そして制錠機の下圧台上に置き、加圧板を閉じた。200℃、圧力0.2MPaで10min加熱・保圧した後、130℃まで冷却した結果、発泡ポリプロピレンが製造された。
発泡ポリプロピレンの性質は表1に示す通りである。
【0055】
比較例3
L5E89を92部、アゾジカーボンアミドを8部秤取して均一に混合した後に、HAAKE二軸押出機内に投入し、押出温度を160℃とした。押出機の回転数を100r/min、フィード回転数を5Hzとした。押出造粒後、90℃で60min乾燥させた結果、発泡性ポリプロピレンマスターバッチが得られた。
【0056】
発泡性ポリプロピレンマスターバッチを20g秤取して、幅10cm、長さ12cm、高さ1mmのモールド内に置き、そして制錠機の下圧台上に置き、加圧板を閉じた。200℃、圧力0.2MPaで10min加熱・保圧した後、130℃まで冷却した結果、発泡ポリプロピレンが製造された。
発泡ポリプロピレンの性質は表1に示す通りである。
【0057】
実施例4
(1)ポリプロピレン改質剤の製造
イソオクチルアクリレートグラフト化ポリプロピレン(グラフト率が1.0%、MIが89g/10min)を99.4部秤取してポリエチレンオキシド0.6部と十分に混合した。完全に混合した原料をHAAKE二軸押出機内に投入し、押出温度を190℃、押出機の回転数を50r/min、フィード回転数を5Hzとした。押出造粒を行い、得られた製品を90℃で30min乾燥させた結果、ポリプロピレン改質剤が得られた。
【0058】
(2)発泡ポリプロピレンの製造
ポリプロピレン改質剤を10部、L5E89を83部、炭酸水素ナトリウムを7部秤取して均一に混合した後に、HAAKE二軸押出機内に投入し、押出温度を170℃、押出機の回転数を100r/min、フィード回転数を7Hzとした。押出造粒後、90℃で60min乾燥させた結果、発泡性ポリプロピレンマスターバッチが得られた。
【0059】
発泡性ポリプロピレンマスターバッチを20g秤取して、幅10cm、長さ12cm、高さ1mmのモールド内に置き、そして制錠機の下圧台上に置き、加圧板を閉じた。200℃、圧力0.1MPaで8min加熱・保圧した後、135℃まで冷却した結果、発泡ポリプロピレンが製造された。
発泡ポリプロピレンの性質は表1に示す通りである。
【0060】
比較例4
ポリプロピレン改質剤の製造過程中に、ポリエチレンオキシドを質量比1:1の4,4’-ジアミノジフェニルエーテル及びテトラエチレンペンタミンに置換した点で違う以外、実施例4の方法に従ってポリプロピレン改質剤及び発泡ポリプロピレンを製造した。
製造された発泡ポリプロピレンの性質は表1に示す通りである。
【0061】
実施例5
(1)ポリプロピレン改質剤の製造
アクリルアミドグラフト化ポリプロピレン(グラフト率が2.0%、MIが104g/10min、以下では同じ)を98部秤取して、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート2部と十分に混合した。完全に混合した原料をHAAKE二軸押出機内に投入し、押出温度を190℃、押出機の回転数を50r/min、フィード回転数を5Hzとした。押出造粒を行い、得られた製品を95℃で60min乾燥させた結果、ポリプロピレン改質剤が得られた。
【0062】
(2)発泡ポリプロピレンの製造
ポリプロピレン改質剤を15部、L5E89を77部、アゾジカーボンアミドを8部秤取して均一に混合した後に、HAAKE二軸押出機内に投入し、押出温度を190℃、押出機の回転数を100r/min、フィード回転数を7Hzとした。押出造粒後、90℃で60min乾燥させた結果、発泡性ポリプロピレンマスターバッチが得られた。
【0063】
発泡性ポリプロピレンマスターバッチを20g秤取して、幅10cm、長さ12cm、高さ1mmのモールド内に置き、そして制錠機の下圧台上に置き、加圧板を閉じた。210℃、圧力0.2MPaで10min加熱・保圧した後、140℃まで冷却した結果、発泡ポリプロピレンが製造された。
発泡ポリプロピレンの性質は表1に示す通りである。
【0064】
実施例6
(1)ポリプロピレン改質剤の製造
アクリルアミドグラフト化ポリプロピレンを98.8部秤取して、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート1.2部と十分に混合した。完全に混合した原料をHAAKE二軸押出機内に投入し、押出温度を200℃、押出機の回転数を100r/min、フィード回転数を5Hzとした。押出造粒を行い、得られた製品を90℃で30min乾燥させた結果、ポリプロピレン改質剤が得られた。
【0065】
(2)発泡ポリプロピレンの製造
ポリプロピレン改質剤を5部、L5E89を90部、アゾジカーボンアミドを4部、シリカを1部秤取して均一に混合した後に、二軸押出機内に投入して混合してから押出し、押出温度を170℃とした。押出機の回転数を150r/min、フィード回転数を8Hzとし、その後に押出発泡を行い、二軸押出機に直列接続された一軸押出発泡装置の発泡温度を170℃とし、押出により発泡ポリプロピレンが製造された。
発泡ポリプロピレンの性質は表1に示す通りである。
【0066】
実施例7
(1)ポリプロピレン改質剤の製造
三量体アクリルイソシアヌレート(Trimeric acrylic isocyanurate)グラフト化ポリプロピレン(グラフト率が1.6%、MIが78g/10min、以下では同じ)を99部秤取して、フェノキシアニリン1部と十分に混合した。完全に混合した原料をHAAKE二軸押出機内に投入し、押出温度を200℃、押出機の回転数を70r/min、フィード回転数を3Hzとした。押出造粒を行い、得られた製品を90℃で70min乾燥させた結果、ポリプロピレン改質剤が得られた。
【0067】
(2)発泡ポリプロピレンの製造
ポリプロピレン改質剤を5部、L5E89を90部、アゾジカーボンアミドを5部秤取して均一に混合した後に、HAAKE二軸押出機内に投入し、押出温度を180℃、押出機の回転数を100r/min、フィード回転数を7Hzとした。押出造粒後、90℃で30min乾燥させた結果、発泡性ポリプロピレンマスターバッチが得られた。
【0068】
発泡性ポリプロピレンマスターバッチを20g秤取して、幅10cm、長さ12cm、高さ1mmのモールド内に置き、そして制錠機の下圧台上に置き、加圧板を閉じた。200℃、圧力0.2MPaで10min加熱・保圧した後、135℃まで冷却した結果、発泡ポリプロピレンが製造された。
発泡ポリプロピレンの性質は表1に示す通りである。
【0069】
比較例5
ポリプロピレン改質剤の製造過程中に、三量体アクリルイソシアヌレートグラフト化ポリプロピレンを等質量の無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレンに置換した点で違う以外、実施例7の方法に従ってポリプロピレン改質剤及び発泡ポリプロピレンを製造した。
製造された発泡ポリプロピレンの特性は表1に示す通りである。
【0070】
比較例6
(1)ポリプロピレン改質剤の製造
無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレンを99部秤取して、フェノキシアニリン0.5部及びp-フェニレンジアミン0.5部と十分に混合した。完全に混合した原料をHAAKE二軸押出機内に投入し、押出温度を200℃、押出機の回転数を100r/min、フィード回転数を7Hzとした。押出造粒後、90℃で70min乾燥させた結果、発泡性ポリプロピレンマスターバッチが得られた。
【0071】
(2)発泡ポリプロピレンの製造
実施例7と同じである。
製造された発泡ポリプロピレンの性質は表1に示す通りである。
【0072】
実施例8
(1)ポリプロピレン改質剤の製造
エポキシアクリレートグラフト化ポリプロピレン(グラフト率が1.4%、MIが159g/10min)を98.3部秤取して、1,9-ジアミノノナン1.7部と十分に混合した。完全に混合した原料をHAAKE二軸押出機内に投入し、押出温度を200℃、押出機の回転数を100r/min、フィード回転数を5Hzとした。押出造粒を行い、得られた製品を90℃で30min乾燥させた結果、ポリプロピレン改質剤が得られた。
【0073】
(2)発泡ポリプロピレンの製造
ポリプロピレン改質剤を5部、L5E89を90部、炭酸水素ナトリウムを5部秤取して均一に混合した後に、HAAKE二軸押出機内に投入し、押出温度を180℃、押出機の回転数を100r/min、フィード回転数を7Hzとした。押出造粒後、90℃で30min乾燥させた結果、発泡性ポリプロピレンマスターバッチが得られた。
【0074】
発泡性ポリプロピレンマスターバッチを20g秤取して、幅10cm、長さ12cm、高さ1mmのモールド内に置き、そして制錠機の下圧台上に置き、加圧板を閉じた。200℃、圧力0.2MPaで10min加熱・保圧した後、135℃まで冷却した結果、発泡ポリプロピレンが製造された。
発泡ポリプロピレンの性質は表1に示す通りである。
【0075】
実施例9
(1)ポリプロピレン改質剤の製造
メタクリル酸ジメチルアミノエチルグラフト化ポリプロピレン(グラフト率が1.8%、MIが76g/10min)を97.2部秤取して、ジエチレントリアミン2.8部と十分に混合した。完全に混合した原料をHAAKE二軸押出機内に投入し、押出温度を200℃、押出機の回転数を50r/min、フィード回転数を3Hzとした。押出造粒を行い、得られた製品を90℃で120min乾燥させた結果、ポリプロピレン改質剤が得られた。
【0076】
(2)ポリプロピレン材料の製造
ポリプロピレン改質剤を5部、L5E89を86部、シリカを1部秤取して均一に混合した後に、二軸押出機内に投入して混合してから押出したと同時に、超臨界CO2注入システムで超臨界CO2を3部注入し、押出温度を180℃とした。押出機の回転数を150r/min、フィード回転数を8Hzとし、その後に押出発泡を行い、二軸押出機に直列接続された一軸押出発泡装置の発泡温度を160℃とし、押出により発泡ポリプロピレンが製造された。
発泡ポリプロピレンの特性は表1に示す通りである。
【0077】
比較例7
ポリプロピレン改質剤の製造過程中に、メタクリル酸ジメチルアミノエチルグラフト化ポリプロピレンを等質量のメタクリル酸グラフト化ポリプロピレン(グラフト率が1.5%、MIが94g/10min)に置換した点で違う以外、実施例9の方法に従ってポリプロピレン改質剤及び発泡ポリプロピレンを製造した。
製造された発泡ポリプロピレンの性質は表1に示す通りである。
【0078】
実施例10
(1)ポリプロピレン改質剤の製造
アクリルアミドグラフト化ポリプロピレンを99.2部秤取して、ポリエチレンオキシド0.8部と十分に混合した。完全に混合した原料をHAAKE二軸押出機内に投入し、押出温度を200℃、押出機の回転数を50r/min、フィード回転数を3Hzとした。押出造粒を行い、得られた製品を90℃で120min乾燥させた結果、ポリプロピレン改質剤が得られた。
【0079】
(2)発泡ポリプロピレンの製造
実施例8と同じである。製造された発泡ポリプロピレンの特性は表1に示す通りである。
【0080】
実施例11
ポリプロピレン改質剤の製造過程中に、アクリルアミドグラフト化ポリプロピレンを三量体アクリルイソシアヌレートグラフト化ポリプロピレンに置換した点で違う以外、実施例10の方法に従ってポリプロピレン改質剤及び発泡ポリプロピレンを製造した。
製造された発泡ポリプロピレンの性質は表1に示す通りである。
【0081】
【0082】
表1の結果から明らかなように、本発明による発泡性ポリプロピレン組成物から製造された発泡ポリプロピレンは、より高い発泡倍率を有するとともに、より良好な引張り及び曲げ特性を有することが可能である。製造された発泡ポリプロピレン材料の平均気泡径は小さく、200μm以下である。本発明による発泡性ポリプロピレン組成物から製造された発泡ポリプロピレンは、気泡が緻密で均一であり、発泡効果が良好であることは、
図1~
図3からも観察された。
【0083】
比較例1~2では、ポリプロピレン改良剤を添加せずにポリプロピレンを用いてポリエチレン(PE100)または市販の高溶融強度ポリプロピレン(WB140)とそれぞれ混合してから、発泡剤を添加することにより、発泡生成物を製造した。比較例3では、ポリプロピレン及び発泡剤のみを用いて発泡ポリプロピレンを製造した。比較例1~3で得られた発泡生成物は、発泡倍率がかなり低く、3~7倍にしか達さない。
【0084】
比較例6で製造された発泡ポリプロピレンは、発泡倍率が高く、10倍以上に達したことができるが、引張強度及び曲げ弾性率が低く、本発明で製造された発泡材料よりも機械的特性が劣る。
【0085】
以上、本発明の好適な実施形態について詳しく説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の技術案に対して、本発明の技術的構想の範囲内で、各技術特徴を任意の他の適宜方式で組み合わせるなどのような、様々な簡単な変更を行うことができ、これらの簡単な変更及び組合せは同様に、本発明に開示された内容と見なされるべきであり、本発明の保護範囲に含まれるものとする。