(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】スパッタ堆積装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/35 20060101AFI20240308BHJP
C23C 14/34 20060101ALI20240308BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C23C14/35 C
C23C14/34 V
H05H1/46 L
(21)【出願番号】P 2022528181
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(86)【国際出願番号】 GB2020052840
(87)【国際公開番号】W WO2021094723
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-07-06
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500024469
【氏名又は名称】ダイソン・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エドワード レンダル
(72)【発明者】
【氏名】ロバート イアン ジョセフ グルアー
【審査官】西田 彩乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-064171(JP,A)
【文献】特開2003-147519(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0085122(US,A1)
【文献】特開2003-293130(JP,A)
【文献】特開2015-232158(JP,A)
【文献】特開平08-302465(JP,A)
【文献】特開2013-206652(JP,A)
【文献】特開平10-018034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/35
C23C 14/34
H05H 1/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタ堆積装置であって、
使用中、第一のターゲットから基板にターゲット材料をスパッタ堆積するために、基板をスパッタ堆積領域に置く基板保持手段と、
使用中、第二のターゲットから基板にターゲット材料をスパッタ堆積するために、第二のターゲットをターゲットプライミング領域からスパッタ堆積領域に移動させるターゲット装填手段と、
プラズマを発生させるプラズマ源と、
装置内で、
使用中、それぞれのターゲットがプラズマに曝されるターゲットプライミング領域と、
ターゲット材料をスパッタ堆積するスパッタ堆積領域と、にわたって一連のプラズマを閉じ込めるように構成される磁石配列と、
を備える、スパッタ堆積装置。
【請求項2】
ターゲット装填手段が、第一のターゲットの代わりに、第二のターゲットをスパッタ堆積領域に移動させるように配置される、請求項1に記載のスパッタ堆積装置。
【請求項3】
ターゲット装填手段が、使用中、第一のターゲット及び第二のターゲットから基板にターゲット材料をスパッタ堆積するために、第二のターゲットをスパッタ堆積領域に移動させるように配置される、請求項1に記載のスパッタ堆積装置。
【請求項4】
ターゲット装填手段が、第二のターゲットをスパッタ堆積領域に移動させるとき、第一のターゲットをスパッタ堆積領域から移動させるように配置される、請求項1に記載のスパッタ堆積装置。
【請求項5】
ターゲット装填手段が、第二のターゲットをスパッタ堆積領域から取り除き、第一のターゲットをスパッタ堆積領域に戻すように配置される、請求項4に記載のスパッタ堆積装置。
【請求項6】
ターゲット装填手段が、第二のターゲットをスパッタ堆積領域に移動させるとき、第三のターゲットをスパッタ堆積領域から移動させるように配置される、請求項1から5のいずれか一項に記載のスパッタ堆積装置。
【請求項7】
磁石配列が、使用中、それぞれのターゲットの表面の少なくとも一部と相互作用するプラズマを、ターゲットプライミング領域内に閉じ込めるように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のスパッタ堆積装置。
【請求項8】
ターゲットプライミング領域内で、プラズマが、使用中、アブレーティブプロセスにおいてそれぞれのターゲットと相互作用する、請求項1から7のいずれか一項に記載のスパッタ堆積装置。
【請求項9】
スパッタ堆積領域が、スパッタ堆積チャンバーを備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のスパッタ堆積装置。
【請求項10】
ターゲットプライミング領域が、ターゲットプライミングチャンバーを備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のスパッタ堆積装置。
【請求項11】
ターゲットプライミングチャンバーが、使用中、少なくとも部分真空下である、請求項10に記載のスパッタ堆積装置。
【請求項12】
ターゲット装填手段が、ターゲットプライミング領域とスパッタ堆積領域の間で、第一の運搬方向に第二のターゲットを運搬するターゲットコンベアを備える、請求項1から11のいずれか一項に記載のスパッタ堆積装置。
【請求項13】
基板保持手段が、スパッタ堆積領域を通って、第二の運搬方向に基板を導くように配置される、請求項12に記載のスパッタ堆積装置。
【請求項14】
第一の運搬方向及び第二の運搬方向が、互いに実質的に平行であるか、
第一の運搬方向及び第二の運搬方向が、互いに実質的に直交するか、又は
第一の運搬方向が回転する、請求項13に記載のスパッタ堆積装置。
【請求項15】
ターゲット装填手段は、第二のターゲットが、ターゲットプライミング領域内に少なくとも所定の時間あった後、第二のターゲットをスパッタ堆積領域に移動させるように構成される、請求項1から14のいずれか一項に記載のスパッタ堆積装置。
【請求項16】
装置が、第二のターゲットの表面の均質性を検出するセンサーを有するデバイスを備え、
ターゲット装填手段が、センサーによるセンサーデータの出力に基づき、第二のターゲットをスパッタ堆積領域に移動させるように構成される、請求項1から15のいずれか一項に記載のスパッタ堆積装置。
【請求項17】
基板保持手段が、湾曲部材を備える、請求項1から16のいずれか一項に記載のスパッタ堆積装置。
【請求項18】
湾曲部材が、ローラーを備える、請求項17に記載のスパッタ堆積装置。
【請求項19】
磁石配列が、プラズマをシート状に閉じ込めるように構成される、請求項1から18のいずれか一項に記載のスパッタ堆積装置。
【請求項20】
磁石配列が、一以上の磁性素子を備える、請求項1から19のいずれか一項に記載のスパッタ堆積装置。
【請求項21】
装置が、一以上の磁性素子の磁場強度を制御する磁性コントローラーを備える、請求項20に記載のスパッタ堆積装置。
【請求項22】
プラズマ源が、誘導結合プラズマ源である、請求項1から21のいずれか一項に記載のスパッタ堆積装置。
【請求項23】
プラズマ源が、一以上の細長いアンテナを備える、請求項1から22のいずれか一項に記載のスパッタ堆積装置。
【請求項24】
スパッタ堆積方法であって、
第一のターゲットから基板にターゲット材料をスパッタ堆積するために、基板保持手段を使用して、基板をスパッタ堆積領域に置くことと、
第二のターゲットから基板にターゲット材料をスパッタ堆積するために、ターゲット装填手段を使用して、第二のターゲットをターゲットプライミング領域からスパッタ堆積領域に移動させることと、
プラズマ源を使用して、プラズマを発生させることと、
磁石配列を使用して、
使用中、それぞれのターゲットがプラズマに曝されるターゲットプライミング領域と、
ターゲット材料をスパッタ堆積するスパッタ堆積領域と、に
わたって一連のプラズマを閉じ込めることと、
を含む、スパッタ堆積方法。
【請求項25】
第一のターゲットの代わりに、第二のターゲットをスパッタ堆積領域に移動させること、
第一のターゲット及び第二のターゲットから基板に、ターゲット材料をスパッタ堆積するために、第二のターゲットをスパッタ堆積領域に移動させること、又は
第二のターゲットをスパッタ堆積領域に移動させるときに、第一のターゲットをスパッタ堆積領域から移動させること、を含む、請求項24に記載のスパッタ堆積方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆積に関するものであり、限定されるものではないが、より具体的には基板にターゲット材料をスパッタ堆積することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
堆積は、基板上にターゲット材料が堆積されるプロセスである。堆積の例は、薄い層(通常、おおよそナノメートル又はナノメートルの数分の1から数マイクロメートル又は数十マイクロメートルまで)をシリコンウエハーやウェブなどの基板上に堆積する薄膜堆積である。薄膜堆積技術の例としては、凝縮相のターゲット材料を蒸発させて蒸気を生成させ、次に蒸気を基板の表面上に凝縮させる物理気相成長(PVD)がある。PVDの例としては、イオンなどのエネルギー粒子による衝撃を受けて粒子がターゲットから放出されるスパッタ堆積である。スパッタ堆積の例では、アルゴンなどの不活性ガスであり得るスパッタガスを、低圧で真空チャンバーに導入し、プラズマを生成させるエネルギー電子を使用して、スパッタガスをイオン化させる。プラズマイオンによるターゲットへの衝撃により、ターゲット材料を放出させ、該ターゲット材料は、その後、基板表面に堆積し得る。スパッタ堆積は、ターゲット材料を加熱せずに堆積させることができ、結果として、基板への熱によるダメージを低減、防止できる点で、蒸着などの他の薄膜堆積方法より有利である。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第一の態様によると、スパッタ堆積装置が提供され、該スパッタ堆積装置は、
使用中、第一のターゲットから基板にターゲット材料をスパッタ堆積するために、基板をスパッタ堆積領域に置く基板保持手段と、
使用中、第二のターゲットから基板にターゲット材料をスパッタ堆積するために、第二のターゲットを、ターゲットプライミング領域からスパッタ堆積領域に移動させるターゲット装填手段と、
プラズマを発生させるプラズマ源と、
装置内で、
使用中、それぞれのターゲットがプラズマに曝されるターゲットプライミング領域と、
ターゲット材料をスパッタ堆積するスパッタ堆積領域と、にプラズマを閉じ込めるように構成される磁石配列と、
を備える。
【0004】
生成されるプラズマを、この方法でターゲットプライミング領域とスパッタ堆積領域の両方に閉じ込めることにより、生成されるプラズマのより効率的な使用が可能になり得る。結果として、既知の装置及びプロセスに比べ、よりエネルギー効率の良いスパッタ堆積プロセスを実現できる。例えば、スパッタ堆積に本装置を使用することは、ターゲットが堆積領域に導入される前に、生成されるプラズマによりターゲットをプライミングできることを意味し得る。それゆえ、これは堆積領域で未使用のターゲットに取り換え、次にプライミングすることにより生じ得るスパッタ堆積プロセスの遅れを減らすことができる。本装置は、プラズマを閉じ込める磁石配列によりもたらされる制御を考慮すると、例えば別個のプラズマ源を使用する既知のスパッタ堆積装置に比べ、空間効率の向上ももたらし得る。
【0005】
いくつかの例において、ターゲット装填手段は、第一のターゲットの代わりに、第二のターゲットをスパッタ堆積領域に移動させるように配置される。それゆえ、例えば規定量より多くのターゲット材料がスパッタされた、「使用済み」であり得るターゲットを、新しいターゲットと原位置で取り換え得る。
【0006】
いくつかの例において、ターゲット装填手段は、使用中、第一のターゲット及び第二のターゲットから基板にターゲット材料をスパッタ堆積するために、第二のターゲットをスパッタ堆積領域に移動させるように配置される。それゆえ、多数のターゲットを、それらからターゲット材料をスパッタ堆積するために、スパッタ堆積領域に設置し得る。異なるターゲットは、例えばターゲット材料の混合物がスパッタされ、基板に堆積され得るように、異なるターゲット材料を含んでいてもよい。
【0007】
いくつかの例において、ターゲット装填手段は、第二のターゲットをスパッタ堆積領域に移動させるとき、第一のターゲットをスパッタ堆積領域から移動させるように配置される。それゆえ、原位置で、第一のターゲットを、スパッタ堆積領域に入る第二のターゲットと完全に取り換え得る。例えば上述の他の例において、第一のターゲットは、第二のターゲットがスパッタ堆積領域に移動させられた後も堆積領域にあるままでもよい。場合によっては、例えばターゲット装填手段は、第一のターゲットをスパッタ堆積領域から移動させ、第二のターゲットをスパッタ堆積領域に移動させた後、第二のターゲットをスパッタ堆積領域から取り除き、第一のターゲットをスパッタ堆積領域に戻すように配置される。このようにして、例えばターゲットをスパッタ堆積領域で交換することにより、異なるターゲット材料を交互に基板に堆積させ得る。
【0008】
場合によっては、ターゲット装填手段は、第二のターゲットをスパッタ堆積領域に移動させるとき、第三のターゲットをスパッタ堆積領域から移動させるように配置される。このようにして、ターゲット装填手段は、使用済みであり得る他のターゲット(例えば第三のターゲット)を取り除く間に、二以上のターゲット(例えば第一のターゲット及び第二のターゲット)を堆積領域に配置し得る。
【0009】
いくつかの例において、磁石配列は、使用中、それぞれのターゲットの表面の少なくとも一部と相互作用するプラズマをターゲットプライミング領域内に閉じ込めるように構成される。この相互作用は、ターゲットがスパッタ堆積領域に入る前に、ターゲットの表面の処理をもたらすことができ、堆積中、基板へのターゲット材料の堆積を向上させることができる。
【0010】
いくつかの例において、ターゲットプライミング領域内で、プラズマは、使用中、アブレーティブプロセスにおいてそれぞれのターゲットと相互作用する。ターゲットのアブレーションにより、堆積の前にターゲット表面の均質性及び/又は粗さを増大させることが可能になり得る。これは、スパッタ堆積プロセス中、基板へのターゲット材料の堆積の均一性及び/又は結晶化度の制御を向上させることができる。
【0011】
例において、スパッタ堆積領域はスパッタ堆積チャンバーを備える。例において、ターゲットプライミング領域は、ターゲットプライミングチャンバーを備える。ターゲットプライミングチャンバーは、使用中、少なくとも部分真空下であり得る。
【0012】
いくつかの例において、ターゲット装填手段は、ターゲットプライミング領域とスパッタ堆積領域の間で、第一の運搬方向に第二のターゲットを運搬するターゲットコンベアを備える。基板保持手段は、スパッタ堆積領域を通って第二の運搬方向に基板を導くように配置され得る。
【0013】
例において、第一の運搬方向と第二の運搬方向は、互いに実質的に平行であるか、互いに実質的に直交するか又は第一の運搬方向が回転してもよい。
【0014】
例において、ターゲット装填手段は、第二のターゲットがターゲットプライミング領域内に少なくとも所定の時間あった後、第二のターゲットを、スパッタ堆積領域に移動させるように配置される。これにより、対応するターゲットの所定のプライミング量、例えば表面アブレーション量を実現することが可能になり得る。
【0015】
例において、装置は、第二のターゲットの表面均質性を検出するセンサーを有するデバイスを備える。ターゲット装填手段は、センサーによるセンサーデータの出力に基づき、第二のターゲットをスパッタ堆積領域に移動させるように構成され得る。これにより、スパッタ堆積領域に入るターゲットが、少なくとも所定の表面均質性レベルを有することが可能になり得、結果として、スパッタ堆積プロセス中、基板に堆積されるターゲット材料の均一性及び/又は結晶化度の制御を向上させることができる。
【0016】
例において、基板保持手段は湾曲部材を備える。湾曲部材はローラーを備えてもよい。
【0017】
例において、磁石配列は、プラズマをシート状に閉じ込めるように構成される。
【0018】
例において、磁石配列は一以上の磁性素子を備える。装置は、一以上の磁性素子の磁場強度を制御する磁性コントローラーを備え得る。これにより、堆積領域内で、基板及び/又はターゲット材料のプラズマ密度を調節することが可能になり得、それゆえスパッタ堆積における制御を向上させることが可能になり得る。これは、結果として、スパッタ堆積装置の操作における柔軟性を向上させることを可能にし得る。さらに、磁場強度を制御できることで、同様に、ターゲットプライミング領域内の基板におけるプラズマ密度の調節が可能になり得る。これにより、結果として、ターゲットプライミングプロセスの制御を向上させることが可能になり得、また、スパッタ堆積装置の操作における柔軟性を増大させ得、これは異なるタイプの基板及び/又はターゲット材料を利用できることを意味する。
【0019】
例において、プラズマ源は誘導結合プラズマ源である。プラズマ源は、一以上の細長いアンテナを備えていてもよい。
【0020】
本発明の第二の態様によると、スパッタ堆積方法が提供され、該スパッタ堆積方法は、
第一のターゲットから基板にターゲット材料をスパッタ堆積するために、基板保持手段を使用して、基板をスパッタ堆積領域に配置することと、
第二のターゲットから基板にターゲット材料をスパッタ堆積するために、ターゲット装填手段を使用して、第二のターゲットを、ターゲットプライミング領域からスパッタ堆積領域に移動させることと、
プラズマ源を使用して、プラズマを発生させることと、
磁石配列を使用して、
使用中、それぞれのターゲットがプラズマに曝されるターゲットプライミング領域と、
ターゲット材料をスパッタ堆積するスパッタ堆積領域と、に前記プラズマを閉じ込めることと、
を含む。
【0021】
例において、この方法は、
第一のターゲットの代わりに、第二のターゲットをスパッタ堆積領域に移動させること、
第一のターゲット及び第二のターゲットから基板にターゲット材料をスパッタ堆積するために、第二のターゲットをスパッタ堆積領域に移動させること、又は
第二のターゲットをスパッタ堆積領域に移動させるときに、第一のターゲットをスパッタ堆積領域から移動させること、を含む。
【0022】
添付の図面を参照して作成された、単に例として与えられる以下の説明から、発明のさらなる特徴及び利点が明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】磁力線例を含む
図1の装置例の模式図である。
【
図3】
図1及び2の装置例の一部の平面図の模式図である。
【
図4】磁力線例を含む
図3の装置例の一部の平面図の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
例による装置及び方法の詳細は、図を参照して、以下の説明から明らかになるだろう。この説明では、説明の目的で、特定の例の多くの具体的な詳細が示される。明細書における「例」又は類似の用語への言及は、例に関連して説明される特定の特徴、構造又は特性が少なくとも一つの例に含まれるが、必ずしも他の例に含まれるとは限らないことを意味する。さらに、特定の例は、例の根底にある概念の説明及び理解を容易にするために、特定の特徴を省略及び/又は必然的に簡略化して概略的に記載されることに注意されたい。
【0025】
図1から5を参照すると、スパッタ堆積装置例100が示されている。装置100は、基板116にターゲット材料108をスパッタ堆積するために使用される。それゆえ、装置100は、幅広い、多くの産業用途、例えば薄膜堆積の実用性を有する用途で実行され得る。産業用途には、例えば光学コーティング、磁気記録媒体、電子半導体デバイス、LED、薄膜太陽電池等のエネルギー発電デバイス及び薄膜電池等のエネルギー貯蔵デバイスの製造などがある。したがって、本開示の背景は、エネルギー貯蔵デバイスやそれらの一部の製造に関連する場合があるが、本明細書に記載されるスパッタ堆積装置100及びスパッタ堆積方法は、それらの製造に制限されないことを理解されたい。
【0026】
明確にするため図には示されていないが、いくつかの例において、装置100は、通常ハウジング(図示せず)を具備し、ハウジングは、使用中、スパッタ堆積に適した低圧、例えば3×10-3torrに排気されることを理解されたい。そのようなハウジングは、ポンプシステム(図示せず)により、適切な圧力(例えば1×10-5torr未満)に排気され得る。使用中、アルゴンや窒素などのプロセスガス又はスパッタガスが、ガス供給システム(図示せず)を使用して、スパッタ堆積に適した圧力が達成される程度、例えば3×10-3torrまで導入される。
【0027】
図1から5で示される例に戻ると、概観において、装置100は、基板保持手段118、ターゲット装填手段106、プラズマ源102、及び磁石配列104を備える。
【0028】
基板保持手段118は、基板116をスパッタ堆積領域114に置くように配置される。基板保持手段118は、基板116、例えば基板のウェブを基板運搬方向115に導き得る。例えば、基板保持手段118は、(
図1及び2において、矢印Cにより示される)湾曲経路に沿って基板116を導く湾曲部材118を備えてもよい。
【0029】
湾曲部材118は、例えば心棒120により与えられる軸120の周りを回転するように配置され得る。
図3で示される例において、軸120は、湾曲部材118の長手方向軸でもある。いくつかの例において、湾曲部材118は、ローラーである。ある場合には、湾曲部材118は、基板供給アセンブリ119の全体で実質的に円筒状のドラム又はローラー118により与えられる。基板供給アセンブリ119は、基板116が、ローラー118の曲面の少なくとも一部により運ばれるように、基板116をローラー118へ及びローラー118から供給するように配置され得る。いくつかの例において、基板供給アセンブリは、基板116をドラム118上に送り込むように配置される第一ローラー110a及び基板116が湾曲経路Cを追従した後、基板116をドラム118から送り込むように配置される第二ローラー110bを備える。基板供給アセンブリ119は、「リールツーリール」プロセス配置(図示せず)の一部であってもよく、基板116は、基板116の第一リール又はボビン(図示せず)から送られ、装置100を通過後、処理後の基板を積み重ねたリール(図示せず)を形成するために、第二リール又はボビン(図示せず)に送られる。
【0030】
いくつかの例において、基板116はシリコン又はポリマーであるか、或いは少なくともシリコン又はポリマーを含む。いくつかの例において、例えばエネルギー貯蔵デバイスの製造のために、基板116は、ニッケル箔であるか、或いは、少なくともニッケル箔を含む。しかし、任意の適した金属、例えばアルミニウム、銅若しくは鋼、又はポリエチレンテレフタラート(PET)上のアルミニウムのような金属化プラスチックなどの金属化材料を、ニッケルの代わりに使用できることを理解されたい。
【0031】
「プラズマ生成配列」とも称され得るプラズマ源102は、プラズマ112を発生させるように配置される。
【0032】
プラズマ源102は、例えば誘導結合プラズマ112を発生させるように配置される誘導結合プラズマ源であってもよい。
図1及び2で示されるプラズマ源102は、アンテナ102a、102bを具備し、該アンテナ102a、102bを通じて、ハウジング(図示せず)内で、プロセスガス又はスパッタガスから誘導結合プラズマ112を発生させるために、無線周波数電力供給システム(図示せず)により、適切な無線周波数(RF)電力が送られ得る。いくつかの例において、無線周波数電流を、一以上のアンテナ102a、102bを通じて、例えば1MHzから1GHzの周波数、1MHzから100MHzの周波数、10MHzから40MHzの周波数、又はおおよそ13.56MHz若しくはそれの倍数の周波数で送ることにより、プラズマ112が生成される。RF電力は、プラズマ112を発生するプロセスガス又はスパッタガスのイオン化を引き起こす。一以上のアンテナ102a、102bを通って送られるRF電力を調節することにより、前処理領域内で、プラズマ112のプラズマ密度に作用することができる。それゆえ、プラズマ源102におけるRF電力の制御によって、前処理プロセスを制御できる。これは、結果として、スパッタ堆積装置100の操作における柔軟性の向上を可能にし得る。
【0033】
いくつかの例において、プラズマ源102は、基板保持手段118から離れて配置される。例えばプラズマ源102は、湾曲部材118から半径方向に離れて配置されてもよい。そうすることで、プラズマ112は、基板保持手段118から離れて生成される。
【0034】
プラズマ源102の一以上のアンテナ102a、102bは、細長いアンテナであってもよく、いくつかの例においては、実質的に線形である。いくつかの例において、一以上のアンテナ102a、102bは、細長いアンテナであって、湾曲部材108の長手方向軸120(例えば、ローラー118の曲率半径の原点を通るローラー118の軸120)に実質的に平行な方向に延在する。
図1の例において、ローラー118の長手方向軸120は、ローラー118の回転軸でもある。一以上の細長いアンテナ102a、102bは、湾曲していてもよい。例えばそのような湾曲したアンテナ102a、102bは、湾曲部材118の曲面の曲率に追従し得る。場合によっては、一以上の湾曲した細長いアンテナ102a、102bは、湾曲部材118の長手方向軸120に実質的に垂直な平面に延びる。
【0035】
いくつかの例において、プラズマ源102は、誘導結合プラズマ112を発生させるための二つのアンテナ102a、102bを備える。(例えば
図3に示されるような)いくつかの例において、アンテナ102a、102bは、細長く、実質的に線形であり、湾曲部材118の(回転軸120でもあり得る)長手方向軸120に平行に延びる。アンテナ102a、102bは、互いに実質的に平行に延び得、互いから横方向に配置され得る。これにより、二つのアンテナ102a、102b間のプラズマ112の細長い領域を正確に生成することが可能になり、以下でより詳細に説明するように、結果として、生成されるプラズマ112を、少なくとも堆積領域114に正確に閉じ込めることに役立ち得る。いくつかの例において、アンテナ120a、120bは、基板保持手段118と同様の長さであってもよく、その結果、基板保持手段118により導かれる基板116の幅と同様になる。アンテナ102a、102bは、基板ガイド118の長さと一致する長さ(及びそれゆえ基板116の幅と一致する長さ)を有する領域にわたって生成されるプラズマ112をもたらせるようにし、それゆえ、プラズマ112を、基板116の幅にわたって、均等に又は均一に利用可能にし得る。以下でより詳細に説明するように、これは、結果として、均等な又は均一なスパッタ堆積をもたらすことに役立ち得る。
【0036】
磁石配列104は、使用中、基板116にターゲット材料108のスパッタ堆積をもたらすために、装置100内で、プラズマ112(例えば、プラズマ生成配列102により生成されるプラズマ)をスパッタ堆積領域114に閉じ込めるように配置される。例において、スパッタ堆積領域114は、スパッタ堆積チャンバー(例えば上記で説明した「ハウジング」、図に示さず)を備える。例えばスパッタ堆積チャンバーは、少なくとも部分真空下であり得る。場合によっては、アルゴンなどの不活性ガスが、低圧でスパッタ堆積チャンバーに導入され、イオン化され得る。プラズマのイオンによるターゲットへの衝撃により、基板116に堆積させるターゲット材料108を放出させることができる。
【0037】
基板保持手段118は、第一のターゲット108aから基板116に、ターゲット材料をスパッタ堆積するために、基板116をスパッタ堆積領域114に置くように配置される。ターゲット装填手段106は、第二のターゲット108bから基板116にターゲット材料をスパッタ堆積するために、第二のターゲット108bをターゲットプライミング領域113からスパッタ堆積領域114に移動させるように配置される。
【0038】
磁石配列104は、装置100内で、プラズマ112を、使用中、それぞれのターゲットがプラズマ112に曝されるターゲットプライミング領域113に閉じ込めるようにも構成される。いくつかの例において、ターゲットプライミング113は、ターゲットプライミングチャンバー(説明した「ハウジング」と同様である、図に示さず)を備える。使用中、ターゲットプライミングチャンバーは、通常、少なくとも部分真空下である。
図1及び
図2において、スパッタ堆積領域114は、ターゲット運搬方向113で、ターゲットプライミング領域117の後に位置する。使用中、これは、例えばそれぞれのターゲットの「前処理」又は「プライミング」として、堆積が生じる前に、ターゲット108a、108b、108cの処理を可能にし得る。そのようなターゲット108のプライミングは、通常、スパッタ堆積の間、材料がスパッタされ、基板116に堆積されるターゲット108の表面から物質を取り除くことを含む。スパッタ堆積プロセスは、堆積の前に、プラズマ112により処理又は「プライミング」されるターゲットにより向上され得る。例えば、ターゲット108のプライミングは、スパッタ堆積領域114内で、堆積プロセスの間、基板116へのターゲット材料108のより良好な付着を促進できる。それゆえ、スパッタ堆積は、結果として、より一様に実行され得る。これは、例えば処理後の基板の一様性を向上させ得、また、例えば品質管理の必要性を減らし得る。さらに、本セットアップは、生成されるプラズマ112のより効率的な使用を可能にし得、それゆえ、より効率的なスパッタ堆積プロセスを可能にするだけでなく、空間効率の高い方法で行うことも可能にし得る。例えば、同一のプラズマ源102を、ターゲット108a、108b、108cのプライミングのため及び基板116にターゲット材料のスパッタ堆積をもたらすための両方に使用することができる。
【0039】
使用中、磁石配列104は、それぞれのターゲット108a、108b、108cの表面の少なくとも一部と相互作用するプラズマ112をターゲットプライミング領域117内に閉じ込め得る。プラズマ112とそれぞれのターゲット108a、108b、108cの表面の間の相互作用により、ターゲット108a、108b、108cがスパッタ堆積領域114に入る前に、ターゲット108a、108b、108cを処理できる。これは、基板116へのターゲット材料108の堆積を向上させることができる。場合によっては、例えばプラズマ112は、使用中、ターゲットプライミング領域117内で、アブレーティブプロセスにおいて、それぞれのターゲット108a、108b、108cと相互作用する。プラズマ112は、例えば酸化物などの不純物及び/又は他の不均質性を含み得る、ターゲット108の表面から物質を取り除くための処理の一環として、ターゲット表面をアブレーションし得る。そのような不均質性は、ターゲットを製造するときに生じる可能性がある。それゆえ、そのようなターゲット108のプライミングにより、ターゲット表面の均質性を向上させることができる。結果として、そのようなプライミングは、ターゲット108がスパッタ堆積領域114に到達するとき、基板116へのターゲット材料108のより均一な堆積を可能にし得る。それゆえ、スパッタ堆積は、結果として、より一様に実行され得る。これは、処理後の基板の一様性を向上させることができ、品質管理の必要性を減らすことができる。
【0040】
ターゲットのプライミング(又は「粗面化」)のメカニズムとしてのアブレーションは、ターゲットのスパッタリング閾値を超えるかどうかに依存する。例えば、ターゲットのスパッタリング閾値は、ターゲット材料に対応する規定の最小エネルギー閾値であり得る。
【0041】
スパッタリング閾値は、プラズマイオンからターゲット材料の原子へのエネルギーの移動が、ターゲット材料の表面原子の結合エネルギーと等しくなるエネルギーの規定量であり得る。言い換えると、プラズマイオンが、ターゲット材料の表面から原子が抜け出すのに必要なエネルギーより大きいエネルギーをターゲット材料に移動させることができるとターゲットのスパッタリング(又はアブレーション)が起こる。しかしながら、ターゲット材料のスパッタリング閾値未満であっても、ターゲットのプライミング又は粗面化は、ターゲット材料の再構成により起こり得る。例えば、ターゲット材料のスパッタリング閾値未満のプラズマエネルギーでのプラズマイオンからターゲット材料へのエネルギーの移動は、結合の破壊や再構成、例えば基板材料の原子間の化学結合の破壊や再構成を引き起こし得る。これにより、アブレーションを伴わずに、ターゲット表面の活性化又は粗面化を起こすことができる。
【0042】
図1及び2の例において、磁石配列104は、ターゲットプライミング領域117及びスパッタ堆積領域114にプラズマを閉じ込め、例えばいくつかの例ではプラズマを導く閉じ込め磁場を供給するように配置される磁性素子104a、104b、104cを備える。磁石配列104、例えば磁性素子104a、104b、104cは、湾曲部材118の曲線の外側に配置され得る。
【0043】
磁力線が、磁場の配置又は形状を描くために使用され得ることを理解されたい。磁性素子例104a、104b、104cにより供給される磁場例を、
図2及び4で概略的に示しており、磁力線(慣習通り矢印により示されている)は、使用中、供給される磁場を描くために使用される。
【0044】
ターゲットプライミング領域117及びスパッタ堆積領域114に影響を及ぼすように配置される磁力線は、生成されるプラズマ112をターゲットプライミング領域117及びスパッタ堆積領域114に閉じ込める。生成されるプラズマ112が、磁力線に追従する傾向があるため、これが生じ得る。例えば閉じ込め磁場内の初速度を持つプラズマ112のイオンは、磁力線の周りでイオンに周期的な運動に従わせるローレンツ力を受ける。初動が磁場と厳密に垂直でないと、イオンは磁力線を中心とするらせん経路をたどる。それゆえ、そのようなイオンを含むプラズマは、磁力線に追従する傾向があり、それゆえ、それにより画定される経路に閉じ込められ、例えば導かれる。したがって、磁力線は、ターゲットプライミング領域117及びスパッタ堆積領域114に入るように配置されるため、プラズマ112は、ターゲットプライミング領域117及びスパッタ堆積領域114に閉じ込められ、例えば導かれる。
【0045】
いくつかの例において、プラズマ112は、湾曲部材118の曲面の少なくとも一部の曲率に実質的に従う。例えば、
図2及び4で示されるように、閉じ込め磁場を描く磁力線は、湾曲部材118の曲面の少なくとも一部の曲率に実質的に従うように、例えば湾曲経路Cの曲線に実質的に追従するように、それぞれ湾曲している。そのような例において、原理上は、磁性素子104a、104b、104cにより供給される全部又は全体の磁場は、通常、湾曲部材118の曲面の少なくとも一部の曲率に従うように、例えば湾曲経路Cの曲線に追従するように、配置されない磁力線により描かれ得る部分を、含むことを理解されたい。そうであるが、そのような例において、供給される閉じ込め磁場、すなわち、プラズマ112を、ターゲットプライミング領域114に閉じ込める磁性素子104a、104b、104cにより供給される全部又は全体の磁場の一部は、湾曲部材118の曲面の少なくとも一部の曲率に実質的に従う磁力線により描かれる。
【0046】
いくつかの例において、閉じ込め磁場を描く磁力線は、湾曲部材118の本質的な又はかなりのセクター又は部分の周りで、湾曲部材又はローラー118の曲線に従うように、例えば追従するように配置される。例えば、使用中、磁力線は、基板116を運搬し又はこれと接触する湾曲部材118の概念的なセクターの全体又は本質的部分にわたって、湾曲部材118の曲線に従い得る。例えば、湾曲部材118は、通常、円筒状であり、閉じ込め磁場を描く磁力線は、湾曲部材118の円周の少なくとも約1/16、又は少なくとも約1/8、又は少なくとも約1/4、又は少なくとも約1/2の周りで湾曲部材118の曲線に追従するように配置され得る。例えば、
図2における閉じ込め磁場を描く磁力線は、湾曲部材118の円周の少なくとも約1/4の周りで湾曲経路に追従する。それゆえ、例において、プラズマ112は、湾曲部材118の曲面、例えば円周の少なくとも約1/16、又は少なくとも約1/8、又は少なくとも約1/4、又は少なくとも約1/2の周りの曲率に実質的に従う。
【0047】
例において、一以上の磁性素子104a、104b、104cは、プラズマ源102が、磁性素子104a、104b、104cのうちの第一のサブセットを、磁性素子104a、104b、104cの第二のサブセットから離隔するように配置される。例えば、
図1は、磁性素子104cの一つが、それらの間に位置するプラズマ源102により、他の磁性素子104a、104bから離隔されていることを示す。例えば、磁性素子104a、104b、104cのうちの第一のサブセット104cは、プラズマ112をプラズマ源102からターゲットプライミング領域117まで閉じ込めるように構成される。例えば磁性素子104a、104b、104cのうちの第二のサブセット104a、104bは、プラズマ112を、プラズマ源102からスパッタ堆積領域114まで閉じ込めるように構成される。合わせて、磁性素子104a、104b、104cは、本明細書で説明するように、プラズマ112をターゲットプライミング領域117及びスパッタ堆積領域114に閉じ込めるように構成される。
【0048】
ある例において、湾曲経路Cの曲線が言及される場合、該曲線は経路が湾曲している程度として理解して良く、該経路に沿って基板ガイド118が基板116を運搬する。例えば、湾曲部材118、例えばドラム又はローラーは、湾曲経路Cに沿って基板116を運搬する。そのような例において、湾曲経路Cの曲線は、基板116を運搬する湾曲部材118の曲面が湾曲している程度、例えば平面から逸脱する程度に由来する。言い換えると、湾曲経路Cの曲線は、湾曲部材118が基板116を追従させる湾曲経路Cが湾曲している程度と理解してもよい。実質的に湾曲経路Cの曲線に追従することは、湾曲経路Cの湾曲形状に実質的に一致すること又は湾曲経路Cの湾曲形状を再現することと理解してもよい。例えば磁力線は、湾曲経路Cと共通の曲率中心を有するが、湾曲経路Cとは異なる(示されている例では大きい)曲率半径を有する湾曲経路に追従し得る。例えば、磁力線は、基板116の湾曲経路Cから半径方向にずれるが、これと実質的に平行である湾曲経路に追従してもよい。例において、磁力線は、湾曲部材118の曲面から半径方向にずれるが、これと実質的に平行である湾曲経路に追従する。例えば、
図2における閉じ込め磁場を描く磁力線は、少なくともスパッタ堆積領域114において、湾曲経路Cから半径方向にずれるが、これに実質的に平行な湾曲経路に追従し、それゆえ、湾曲経路Cの曲線に実質的に追従する。
【0049】
閉じ込め磁場を描く磁力線は、湾曲経路Cの本質的な又はかなりのセクター又は部分の周りで、湾曲経路Cの曲線に追従するように配置され得る。例えば磁力線は、基板116が湾曲部材118により導かれる湾曲経路Cの概念的なセクターの全体又は本質的部分にわたって、湾曲経路Cの曲線に追従し得る。例において、湾曲経路Cは、概念的な円の円周の一部を表し、閉じ込め磁場を特徴付ける磁力線は、概念的な円の円周の少なくとも約1/16、又は概念的な円の円周の少なくとも約1/8、又は概念的な円の円周の少なくとも約1/4、又は概念的な円の円周の少なくとも約1/2の周りで、湾曲経路Cの曲線に追従するように配置される。
【0050】
湾曲部材118の曲面の少なくとも一部の曲率に実質的に従うように、例えば湾曲経路Cの曲線に追従するように、生成されるプラズマ112を閉じ込めることで、少なくとも湾曲部材118の曲面周りの方向、例えば湾曲経路Cの曲線周りの方向で、基板116におけるプラズマ密度のより均一な分布を可能にし得る。これは、結果として、湾曲部材118周りの方向、例えば湾曲経路C周りの方向で、基板116へのより均一なスパッタ堆積を可能にし得る。それゆえ、スパッタ堆積は、結果として、より一様に実行され得る。これは、例えば、生成される磁場を描く磁力線が基板の中に及び外に詰まったループを描き、それゆえ、基板で均一なプラズマ密度の分布とならないマグネトロンタイプのスパッタ堆積装置と比較して、処理後の基板の一様性を向上させることができ、品質管理の必要性を減らすことができる。
【0051】
代わりに又は加えて、湾曲部材118の曲面の少なくとも一部の曲率に実質的に従うように、例えば湾曲経路Cの曲線に追従するように、生成されるプラズマ112を閉じ込めることで、プラズマ112に曝される基板116の面積を増加することが可能になり得、それゆえ、スパッタ堆積がもたらされ得る面積を増加させることが可能になり得る。これにより、リールツーリールタイプの装置を通して、所与の堆積度のために、より速い速度で基板116を供給することが可能になり、それゆえ、より効率的なスパッタ堆積が可能になり得る。
【0052】
いくつかの例において、磁石配列(又は「磁性閉じ込め配列」)104は、磁場を供給するように配置される少なくとも二つの磁性素子104a、104bを備える。場合によっては、少なくとも二つの磁性素子104a、104bは、少なくとも二つの磁性素子104a、104b間で画定される比較的強い磁場強度の領域が、シート状になるように配置される。それゆえ、磁石配列104は、プラズマ112を、シート状、すなわち、プラズマ112の奥行き(又は厚さ)が、実質的にそれ自体の長さ又は幅より小さくなる形状で閉じ込めように構成され得る。プラズマ112のシートの厚さは、シートの長さ及び幅に沿って実質的に一定であり得る。プラズマ112のシートの密度は、それ自体の幅及び長さ方向のうち一つ又はその両方で実質的に均一であり得る。
【0053】
いくつかの例において、少なくとも二つの磁性素子104a、104b間で供給される比較的強い磁場強度の領域は、湾曲部材118の曲面の少なくとも一部の曲率に実質的に従い、例えば湾曲経路Cの曲線に実質的に追従する。
【0054】
図1及び2で概略的に示される例において、二つの磁性素子104a、104bは、ドラム118を挟んで互いに逆側に位置しており、それぞれ(
図1における)ドラム118の最下部より上に配置される。二つの磁性素子104a、104bは、湾曲部材118の両側で、湾曲部材118の曲面の少なくとも一部の曲率に従うように、例えば湾曲経路Cの曲線に追従するようにプラズマ112を閉じ込める。例えば、プラズマ112は、基板116が湾曲部材118に供給される供給側、及び湾曲部材118から基板116が排出される排出側において湾曲経路Cの曲線に追従する。少なくとも二つの磁性素子を有することにより、スパッタ堆積領域114において、プラズマ112に曝される基板116の面積を(さらに)増加させ得、それゆえ、スパッタ堆積がもたらされ得る面積を増加させ得る。これにより、リールツーリールタイプの装置を通して、所与の堆積度のために、より速い(より一層速い)速度で基板116を供給することが可能になり、それゆえ、例えばより効率的なスパッタ堆積が可能になり得る。
【0055】
説明したように、いくつかの例において、磁性素子104a、104b、104cの第一のサブセットは、プラズマ源102を挟んで磁性素子104a、104b、104cの第二のサブセットの逆側に配置され得る。例えば、磁石配列104は、磁場を供給するように配置される、少なくとも三つの磁性素子104a、104b、104cを備えてもよい。例において、図中、二つの磁性素子104a、104bとして示される少なくとも三つの磁性素子104a、104b、104cのうちの少なくとも二つは、上記の例で説明したように、スパッタ堆積領域114に影響を及ぼす磁場を供給するように配置される。図において磁性素子104cとして示される少なくとも三つの磁性素子104a、104b、104cのうちの少なくとも一つは、ターゲットプライミング領域117に影響を及ぼす磁場を供給するように配置される。それゆえ、少なくとも三つの磁性素子104a、104b、104cのうちの少なくとも二つの磁性素子104a、104bは、プラズマ112を少なくともスパッタ堆積領域114に閉じ込めるように構成され得、一方、少なくとも三つの磁性素子104a、104b、104cのうちの少なくとも一つの磁性素子104cは、プラズマ112をターゲットプライミング領域117に閉じ込めるように構成され得る。合わせて、本明細書で説明するように、少なくとも三つの磁性素子104a、104b、104cは、プラズマ112をターゲットプライミング領域117及びスパッタ堆積領域114に閉じ込めるように構成される。
【0056】
いくつかの例において、一以上の磁性素子104a、104b、104cは、電磁石104a、104b、104cである。装置100は、例えば一以上の電磁石104a、104b、104cにより供給される磁場強度を制御するための磁性コントローラー(図示せず)を備え得る。これは、閉じ込め磁場を描く磁力線の配置を制御することを可能にし得る。結果として、スパッタ堆積領域114内で、基板116及び/又はターゲット材料108におけるプラズマ密度の調節が可能になり、それゆえスパッタ堆積の制御を向上させることができる。これにより、結果として、スパッタ堆積装置100の操作における柔軟性を向上させることが可能になり得る。さらに、磁石配列104により供給される磁場強度を制御することにより、同様に、ターゲットプライミング領域117内で、基板116のプラズマ密度の調節が可能になる。これは、結果として、例えばアブレーションの量などのターゲットプライミングプロセスの制御を向上させることを可能にし得、また、異なるタイプの基板及び/又はターゲット材料を利用できるというような、スパッタ堆積装置100の操作における柔軟性を増大させ得る。ターゲットプライミング領域117内のプラズマ密度と同様に、磁石配列104により供給される閉じ込め磁場を描く磁力線の配置を制御することで、ターゲットプライミング領域117内で、プラズマ112の形状を制御することを可能になる。これは、結果として、ターゲットプライミング領域117の大きさ、例えば使用中に常時プラズマに曝される基板116の領域のサイズを調節することを可能にし得る。それゆえ、異なるタイプの基板及び/又はターゲット材料を利用できるというようなスパッタ堆積装置100の操作におけるさらなる柔軟性がもたらされ得る。
【0057】
いくつかの例において、磁性素子104a、104b、104cの一以上は、ソレノイド104a、104b、104cにより提供される。例において、ソレノイド104a、104b、104cは断面が細長い。例えば、ソレノイド104a、104b、104cは、湾曲部材118、例えばローラー118の回転軸に実質的に平行な方向に断面が細長くてもよい。各ソレノイド104a、104b、104cは、使用中、プラズマ112が通る(閉じ込められる)開口部を画定し得る。
図1及び2で概略的に示されている例のように、三つのソレノイド104a、104b、104cがあり、各ソレノイド104a、104b、104cは、比較的強い磁場強度の領域が、ソレノイド104a、104b、104cの間で、例えば実質的に湾曲経路Cの曲線に追従して供給されるように、曲げられる。そのような方法で、
図1で示されるように、一方向で、生成されるプラズマ112は、第一のソレノイド104aを通り、(
図1における)ドラム118の下で堆積領域114に入り、上昇して、第二のソレノイド104bを通過する。他の方向では、生成されるプラズマ112は、第一のソレノイド104aを通り、ドラム118から離れて第三のソレノイド104cに向かい、第三のソレノイド104cを通過して、ターゲットプライミング領域117に入る。
【0058】
三つの磁性素子104a、104b、104cのみ
図1及び2において示されているが、さらなる磁性素子(図示なし)、例えばさらなる前記ソレノイドを、プラズマ112の経路に沿って配置してもよいことを理解されたい。これにより、閉じ込め磁場の強化が可能になり得、それゆえプラズマの正確な閉じ込めが可能になり得る。加えて又は代わりに、これは、閉じ込め磁場の制御の自由度をより大きくし得る。
【0059】
図1及び2で示され、上記で説明したように、スパッタ堆積装置100は、使用中、第二のターゲット108bから基板116にターゲット材料をスパッタ堆積するために、第二のターゲット108bを、ターゲットプライミング領域117からスパッタ堆積領域114に移動させるように配置されるターゲット装填手段106を備える。そのような場合において、堆積領域114は、通常、ターゲット装填手段106の一部と基板保持手段118の間に位置する。例えば、ターゲット装填手段106の一部と基板保持手段118は、それらの間に堆積領域114が形成されるように互いから距離を空けている。堆積領域114は、使用中、ターゲット材料108から基板116へのスパッタ堆積が起こる装置100内の面積又は体積、例えば基板保持手段118と前記ターゲット装填手段106の一部の間の面積又は体積とみなしてもよい。
【0060】
例において、ターゲット装填手段106は、ターゲットプライミング領域117とスパッタ堆積領域114の間で、ターゲット運搬方向113に第二のターゲット108bを運搬するターゲットコンベア107を備える。ターゲット材料108は、基板116にスパッタ堆積を行う素となる材料であってもよい。例えば、ターゲット材料108は、スパッタ堆積により基板116に堆積される材料であるか又はスパッタ堆積により基板16に堆積される材料を含む。
【0061】
例において、ターゲット装填手段106は、例えばすでにスパッタ堆積領域114にある第一のターゲット108aに代えて、第二のターゲット108bをスパッタ堆積領域114に移動させるように配置される。例えばスパッタリングの目的で、効率的に第一のターゲット108aと取り換えるために、第二のターゲット108bは、第一のターゲット108aの上に装填される。代わりに、ターゲット108a、108bの両方を、同時にスパッタリングするために、第一のターゲット及び第二のターゲット108a、108bが、両方ともスパッタ堆積領域114に置かれてもよい。例えばターゲット装填手段106は、使用中、第一のターゲット及び第二のターゲット108a、108bから基板116に、ターゲット材料をスパッタ堆積するために、第二のターゲット108bをスパッタ堆積領域114に移動させるように配置される。
【0062】
いくつかの例において、ターゲット装填手段106は、第二のターゲット108bをスパッタ堆積領域114に移動させるとき、第一のターゲット108aをスパッタ堆積領域114から移動させるように配置される。例えば、すでに堆積領域114にあるターゲット108aは、新しいターゲット108bが、ターゲット装填手段106により堆積領域114に装填されるとき、堆積領域114から取り除かれる。ある場合には、ターゲット装填手段は、第二のターゲット108bをスパッタ堆積領域114から取り除き、第一のターゲット108aをスパッタ堆積領域114に戻すように配置される。例えば、これは、例として、第一のターゲット及び第二のターゲット108a、108bの堆積を交互に行うことにより、異なるターゲット材料の堆積を交互に行うことを含む。
【0063】
例において、ターゲット装填手段106は、第二のターゲット108bをスパッタ堆積領域114に移動させるとき、第三のターゲット108cをスパッタ堆積領域114から移動させるように構成される。例えば、二以上のターゲット(例えば第一のターゲット及び第二のターゲット108a、108b)は、他の、例えば使用済みのターゲット108cが堆積領域から取り除かれるときに、ターゲット装填手段106により堆積領域に置かれる。
【0064】
例において、ターゲット装填手段106は、第二のターゲット108bが、ターゲットプライミング領域117内に所定の時間あった後、第二のターゲット108bをスパッタ堆積領域114に移動させるように構成される。ターゲット108がターゲットプライミング領域117内にある所定の時間は、達成されるターゲット108のプライミングの量、例えば表面アブレーション量に対応し得る。それゆえ、所定の時間は、第二のターゲット108bの所望のプライミング量に対応し得る。
【0065】
例において、装置100は、第二のターゲット108bの表面均質性を検出するセンサーを有するデバイスを備える。ターゲット装填手段106は、センサーによるセンサーデータの出力に基づいて、第二のターゲット108bをスパッタ堆積領域114に移動させるように構成され得る。
【0066】
例において、ターゲット運搬方向113及び基板運搬方向115は、実質的に互いに平行である。例えば、
図1及び2に示されるように、ターゲットコンベア107は、基板保持手段118により運搬される基板116の方向と平行な方向に、ターゲット108a、108b、108cを運搬する。他の例において、ターゲット運搬方向及び基板運搬方向(又は第一の運搬方向及び第二の運搬方向)113、115は、互いに実質的に直交する。例えば、
図1で右から左であるターゲット運搬方向113の代わりに、ターゲット運搬方向113は、その代わりにページに入る方向又はページから出る方向であってもよい。代わりに、
図1及び2の基板供給アセンブリ119は、ターゲット運搬方向113が、左から右に進み続ける間、基板運搬方向115が、ページに入るように又はページから出るように位置を変えてもよい。
【0067】
ある場合には、ターゲット運搬方向113は回転する。例えばターゲット装填手段106は、楕円形の、例えば円形の経路でターゲット108a、108b、108cを運搬するように配置される回転ターゲットコンベア107を備える。例えば楕円形の経路は、基板保持手段108の下で平面に描かれ得る。代わりに、ターゲットコンベア107が、楕円形の経路を描き、軸の周りでターゲットコンベア107を回転させずに、ターゲット108a、108b、108cを運搬する。例えば、ターゲットコンベア107は、代わりに、基板保持手段108の下で、平面に描かれる楕円形の経路を回る。
【0068】
いくつかの例において、例えばエネルギー貯蔵デバイスの製造のために、ターゲット材料108は、エネルギー貯蔵デバイスのカソード層であるリチウムイオンを貯蔵するのに適した材料、例えばコバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、又は多硫化アルカリ金属塩などであるか、又はこれらを含む(或いはそれらの前駆体物質であるか、又はそれらの前駆体物質を含む)。加えて又は代わりに、ターゲット材料108は、エネルギー貯蔵デバイスのアノード層、例えばリチウム金属、グラファイト、シリコン、又は酸化インジウムスズなどであるか、又はこれらを含む(或いはそれらの前駆体であるか、又はそれらの前駆体物質を含む)。加えて又は代わりに、ターゲット材料108は、エネルギー貯蔵デバイスの電解質層であるイオン電導性であるが電気絶縁体でもある材料、例えば窒化リン酸リチウム(LiPON)であるか、又はこれを含む。例えばターゲット材料108は、例えばターゲット材料108の領域で窒素ガスとの反応を経て、基板116にLiPONを堆積させるための前駆体物質としてLiPOであるか、又はこれを含む。
【0069】
いくつかの例において、例えば一以上の磁性素子104a、104b、104cを備える磁石配列104は、プラズマ112をシート状に閉じ込めるように構成される。例えば、磁石配列104は、プラズマ112をシート状に閉じ込める磁場を供給するように配置される。いくつかの例において、磁石配列104は、例えば少なくとも堆積領域114及び/又はターゲットプライミング領域117で、実質的に均一な密度を有するシート状のプラズマ112を閉じ込めるように構成される。ある場合において、磁石配列104は、プラズマ112を湾曲シート状に閉じ込めるように構成される。
【0070】
例えば、
図4及び5で示されるように、いくつかの例において、ソレノイド104a、104b、104cの一以上は、使用中、その内部に生成される磁力線の方向に実質的に垂直な方向に細長い。例えば、
図3から5で最もよく分かるように、ソレノイド104a、104b、104cは、それぞれ開口部を有しており、該開口部を通して、使用中、プラズマ112が閉じ込められ(該開口部を通して、使用中、プラズマ112が通り)、開口部が、湾曲部材118の長手方向軸120に実質的に平行な方向に細長い。
図3及び4で最もよく分かるように、細長いアンテナ102a、102bは、ソレノイド104a、104b、104cに平行に延び、ソレノイド104a、104b、104cと一直線に並んでいる。上記で説明したように、プラズマ112は、細長いアンテナ102a、102bの長さに沿って生成され得、細長いソレノイド104a、104cは、細長いアンテナ102a、102bから離れる方向にプラズマ112を閉じ込め、例えば導き、各細長いソレノイド104a、104cを通ってプラズマ112を閉じ込め、例えば導く。
【0071】
プラズマ112は、細長いアンテナ102a、102bから細長いソレノイド104a、104cまで、シート状に閉じ込められ得、例えば導かれ得る。つまり、プラズマ112の奥行(又は厚さ)は、実質的にその長さ又は幅より小さい。プラズマ112のシートの厚さは、シートの長さ及び幅に沿って実質的に一定であってもよい。プラズマ112のシートの密度は、その幅方向及び長さ方向のうち一つ又はその両方で実質的に均一であり得る。プラズマ112は、シート状であり、堆積領域114内で、湾曲部材118の曲面の曲率に実質的に従うように、例えば湾曲経路Cの曲線に追従するように、湾曲部材118の周りで、ソレノイド104a、104b、104cにより供給される磁場により閉じ込められ得る。上述のとおり、場合によっては、プラズマ112は、湾曲シート状に閉じ込められてもよい。プラズマ112のそのような湾曲シートの厚さは、湾曲シートの長さ及び幅に沿って実質的に一定であってもよい。湾曲シート状のプラズマ112は、実質的に均一な密度を有していてもよく、例えば湾曲シート状のプラズマ112の密度は、長さ及び幅のうち一つ又はその両方で実質的に均一である。
【0072】
湾曲シート状にプラズマを閉じ込めることにより、湾曲部材118により運搬され、プラズマ112に曝される基板116の面積を増加させることが可能になり得、それゆえ、スパッタ堆積がもたらされ得る面積を増加させることが可能になり得る。これは、例えば、リールツーリールタイプの装置を通して、所与の堆積度のために、より速い(より一層速い)速度で基板116を提供することを可能にし、それゆえ、より効率的なスパッタ堆積を可能にし得る。
【0073】
(例えば、少なくともスパッタ堆積領域114において)湾曲シート状のプラズマ112、例えば実質的に均一な密度を有する湾曲シート状のプラズマ112を閉じ込めることにより、代わりに又は加えて、例えば湾曲部材118の曲線周りの方向、及び湾曲部材118の長さ方向の両方において、基板116におけるプラズマ密度のより均一な分布を可能にする。これは、結果として、例えば湾曲部材118の表面周りの方向及び基板116の幅にわたって、基板116により均一なスパッタ堆積を可能にし得る。それゆえ、スパッタ堆積を、結果として、より一様に実行することができる。それゆえ、例えば生成される磁場を特徴づける磁力線が、基板の中へ及び外へ詰まったループを描き、それゆえ、基板で均一なプラズマ密度の分布とならないマグネトロンタイプのスパッタ堆積装置に比べ、処理後の基板の一様性を向上させることができ、品質管理の必要性を減らすことができる。
【0074】
いくつかの例において、閉じ込められるプラズマ112は、少なくとも堆積領域114において、高密度プラズマである。例えば、(湾曲シート状又は他の形状の)閉じ込められるプラズマ112は、少なくとも堆積領域114で、1011cm-3以上の密度である。堆積領域114で高密度のプラズマ112により、効率的な及び/又は高速のスパッタ堆積が可能になり得る。
【0075】
図6を参照すると、スパッタ堆積方法例600がフロー図で示されている。方法600で、第一のターゲットから基板にターゲット材料をスパッタ堆積するために、基板保持手段を使用して、基板をスパッタ堆積領域に置く。第二のターゲットから基板にターゲット材料をスパッタ堆積するために、ターゲット装填手段を使用して、第二のターゲットを、ターゲットプライミング領域からスパッタ堆積領域に移動させる。プラズマ源を使用してプラズマを発生させ、磁石配列によってターゲットプライミング領域及びスパッタ堆積領域に閉じ込める。ターゲットプライミング領域において、それぞれのターゲットが、プラズマに曝され、例えばターゲット運搬方向でターゲットプライミング領域の後に位置するスパッタ堆積領域において、(基板に)ターゲット材料のスパッタ堆積がもたらされる。
【0076】
第一のターゲット及び第二のターゲット、ターゲット材料、基板、基板保持手段、プラズマ源、磁石配列、ターゲットプライミング領域及びスパッタ堆積領域は、
図1から5に関して、上記で説明した例のいずれかであってもよい。いくつかの例において、この方法は、
図1から5に関して説明した装置100により実行されてもよい。
【0077】
この方法は、ステップ602において、第一のターゲットから基板にターゲット材料をスパッタ堆積するために、ターゲット装填手段を使用して、基板をスパッタ堆積領域に置くことを含む。例えば基板は、
図1から5に関して、上記で説明した基板保持手段、例えば湾曲部材118により導かれる。
【0078】
ステップ604において、この方法は、第二のターゲットから基板にターゲット材料をスパッタ堆積するために、ターゲット装填手段を使用して、第二のターゲットをターゲットプライミング領域からスパッタ堆積領域に移動させることを含む。例えば第二のターゲットは、
図1から5に関して、上記で説明したターゲット装填手段106により動かされる。
【0079】
ステップ606において、この方法は、プラズマ源を使用して、プラズマを発生させることを含む。例えばプラズマは、
図1から5に関して、上記で説明したプラズマ生成配列102によって生成される。
【0080】
ステップ608において、この方法は、磁石配列を使用して、プラズマをターゲットプライミング領域及びスパッタ堆積領域に閉じ込めることを含む。例えば、プラズマは、
図1から5に関して、上記で説明した磁石配列104により閉じ込められる。ターゲットプライミング領域内で、それぞれのターゲットはプラズマに曝される。スパッタ堆積領域は、基板にターゲット材料のスパッタ堆積をもたらす。
【0081】
上述のとおり、この方法で、生成されるプラズマを閉じ込めることにより、生成されるプラズマのより効率的な使用が可能になり得、それゆえ、より効率的なスパッタ堆積プロセスが可能になるだけでなく、より空間効率の高い方法で行うことも可能になり得る。例えば、この方法で、生成されるプラズマを閉じ込めることで、同一のプラズマ源を、ターゲットをプライミングすること及びターゲット材料108のスパッタ堆積をもたらすことの両方で使用することが可能になる。
【0082】
場合によっては、方法600は、第一のターゲットの代わりに、第二のターゲットをスパッタ堆積領域に移動させることを含む。代わりに、第一のターゲット及び第二のターゲットから基板にターゲット材料をスパッタ堆積するために、例えば両方のターゲットから同時にターゲット材料をスパッタ堆積するために、第二のターゲットを、スパッタ堆積領域に移動させる。さらなる選択肢として、第二のターゲットをスパッタ堆積領域に移動させるときに、第一のターゲットをスパッタ堆積領域から移動させてもよい。そのような例は、
図1から5に関して、上記でより詳細に説明している。
【0083】
上記の例は、発明の例示的な例として理解されたい。さらなる実施形態が予想される。例えば説明した例の多くは、基板を導くために湾曲部材を利用する。湾曲部材、例えばローラー又はドラムは、基板を運搬するために、ロールツーロールシステムの一部を形成し得又はロールツーロールシステムに連動し得る。ある場合において、湾曲部材は、ローラーでなくてもよいが、それでもなお、基板を運搬できる湾曲経路を画定し得る。しかし、いくつかの例において、湾曲した基板保持手段が好ましいが、例えばロールツーロールシステムが実行されない実施形態も予想される。そのようなスパッタ堆積装置又はスパッタ堆積方法の実施形態は、例えば、KR20130029488で説明されるような、シートツーシート及び/又は基板支持レーザーリフト技術を利用したシステムで実施され得る。
【0084】
任意の一つの例に関連して説明される任意の特徴は、単独で、又は説明される他の特徴と組み合わせて使用され得、他の任意の例の一つ以上の特徴、又は他の例の任意の組み合わせと組み合わせて使用され得ることを理解されたい。さらに、上記で説明していない均等物及び改良物もまた、添付の特許請求の範囲で定義される発明の範囲から逸脱しないで使用され得る。