(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】III族窒化物半導体集積回路構造、その製造方法および使用
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20240308BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20240308BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20240308BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20240308BHJP
H01L 21/337 20060101ALI20240308BHJP
H01L 29/808 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
H01L29/80 E
H01L29/80 H
H01L21/20
H01L29/80 W
(21)【出願番号】P 2022530180
(86)(22)【出願日】2021-03-03
(86)【国際出願番号】 CN2021078955
(87)【国際公開番号】W WO2021218371
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】202010361160.4
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522184383
【氏名又は名称】広東致能科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】黎 子蘭
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110224019(CN,A)
【文献】特開2018-046168(JP,A)
【文献】特開2002-033399(JP,A)
【文献】特開2016-100450(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0264379(US,A1)
【文献】特開2014-072397(JP,A)
【文献】特開2013-041986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/338
H01L 21/20
H01L 21/337
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1トランジスタと少なくとも1つの第2トランジスタとを備え、
前記少なくとも1つの第1トランジスタは、
第1導電型二次元キャリアガスを有する、第1分極接合を有する第1窒化物半導体構造と、
前記第1窒化物半導体構造に設置される第1ゲート電極と、
前記第1ゲート電極の両側に対向して配置されるとともに、前記第1導電型二次元キャリアガスと結合する、第1ソース電極および第1ドレイン電極
と、
前記第1ゲート電極と対向して前記第1窒化物半導体構造の側面に設置された第1ボディ電極と、を備え、
少なくとも1つの第2トランジスタは、
第2導電型二次元キャリアガスを有する、第2分極接合を有する第2窒化物半導体構造と、
前記第2窒化物半導体構造に設置される第2ゲート電極と、
前記第2ゲート電極の両側に対向して配置されるとともに、前記第2導電型二次元キャリアガスと電気的に結合する、第2ソース電極および第2ドレイン電極
と、
前記第2ゲート電極と対向して前記第2窒化物半導体構造の側面に設置された第2ボディ電極と、を備え、
前記第1分極接合と前記第2分極接合とは、結晶方位が異なり、
前記第1導電型二次元キャリアガスと前記第2導電型二次元キャリアガスとは、導電型が異なり、
前記第1導電型二次元キャリアガスおよび前記第2導電型二次元キャリアガスは、それぞれ前記第1分極接合および前記第2分極接合に平行な方向にキャリアチャネルを形成するように構成され
、
前記第1窒化物半導体構造は、第1ドーピング構造をさらに含み、該第1ドーピング構造が前記第1導電型二次元キャリアガスと電気的に結合され、
前記第2窒化物半導体構造は、第2ドーピング構造をさらに含み、該第2ドーピング構造が前記第2導電型二次元キャリアガスと電気的に結合され、
前記第1ドーピング構造は、少なくとも1つの第2導電型ドーピング領域を含み、前記第2導電型ドーピング領域が前記結晶方位投影方向で前記第1ゲート電極と少なくとも部分的に重なり合い、
前記第2ドーピング構造は、少なくとも1つの第1導電型ドーピング領域を含み、前記第1導電型ドーピング領域が前記結晶方位投影方向で前記第2ゲート電極と少なくとも部分的に重なり合い、
前記第1ボディ電極は、前記第2導電型ドーピング領域と電気的に接続され、
前記第2ボディ電極は、前記第1導電型ドーピング領域と電気的に接続され、
前記第1窒化物半導体構造および第2窒化物半導体構造は、同一の基板にエピタキシャル成長され、
前記第1分極接合および前記第2分極接合は、それぞれ垂直界面を有し、
前記第1窒化物半導体構造は、凹字形トレンチが形成された基板に形成された第1窒化物半導体層、および第2窒化物半導体層を含み、前記第1窒化物半導体層が前記凹字形トレンチの制限下で前記凹字形トレンチに沿って成長したものであり、前記第2窒化物半導体層が前記第1窒化物半導体層の第1極性面および第2極性面に形成されており、前記第1分極接合が前記第1窒化物半導体層の前記第1極性面と前記第2窒化物半導体層との接触面に形成されており、
前記第2窒化物半導体構造は、前記第1窒化物半導体層および第2窒化物半導体層を含み、前記第2分極接合が前記第1窒化物半導体層の前記第2極性面と前記第2窒化物半導体層との接触面に形成されており、前記第1分極接合が前記第1窒化物半導体層の前記第1極性面と前記第2窒化物半導体層との接触面に形成されている、
ことを特徴とする集積回路構造。
【請求項2】
前記第1トランジスタと前記第2トランジスタとが相補型のものであるとともに直列接続され、前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極が接続して入力端とされ、前記第1ソース電極または前記第2ソース電極が接地しまたは外部負電源VSSに結合し、前記第2ソース電極または前記第1ソース電極が外部正電源VDDに結合し、前記第1ドレイン電極と前記第2ドレイン電極とが接続して出力端とされる
ことを特徴とする請求項1に記載の集積回路構造。
【請求項3】
少なくとも2つの前記第1トランジスタが直列接続または並列接続して第1ユニットとされ、少なくとも2つの前記第2トランジスタが並列接続または直列接続して第2ユニットとされ、前記第1ユニットにおける直列接続または並列接続と第2ユニットにおける並列接続または直列接続とが対応しており、
前記第1ユニットと前記第2ユニットとが直列接続し、前記第1ユニットと前記第2ユニットとの直列接続する接続端が出力端とされ、前記第1ユニットにおける前記第1トランジスタと前記第2ユニットにおける前記第2トランジスタとが、相補的に対をなすように構成され、相補的に対をなすトランジスタの前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極とが接続してそれぞれ入力端とされる
ことを特徴とする請求項1に記載の集積回路構造。
【請求項4】
前記第1ユニットにおける前記第1トランジスタが任意の数で直列接続または並列接続され、前記第2ユニットにおける、前記第1ユニットにおける前記第1トランジスタと相補的に対をなす前記第2トランジスタが相応な数で並列接続または直列接続される
ことを特徴とする請求項
3に記載の集積回路構造。
【請求項5】
核生成層をさらに含む
ことを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の集積回路構造。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の集積回路構造を含む
ことを特徴とする電子設備。
【請求項7】
少なくとも1つの第1トランジスタを形成するステップと、
少なくとも1つの第2トランジスタを形成するステップとを含み、
少なくとも1つの第1トランジスタを形成するステップは、
第1導電型二次元キャリアガスを有する、第1分極接合を有する第1窒化物半導体構造を形成することを含み、
少なくとも1つの第2トランジスタを形成するステップは、
第2導電型二次元キャリアガスを有する、第2分極接合を有する第2窒化物半導体構造を形成することを含み、
前記第1窒化物半導体構造と前記第2窒化物半導体構造とは、同時に形成し、
前記第1分極接合と前記第2分極接合とは、結晶方位が異なり、
前記第1分極接合および前記第2分極接合が、それぞれ垂直界面を有し、
前記第1導電型二次元キャリアガスと前記第2導電型二次元キャリアガスとは、導電型が異なり、
前記第1導電型二次元キャリアガスおよび前記第2導電型二次元キャリアガスは、それぞれ前記第1分極接合および前記第2分極接合に平行な方向にキャリアチャネルを形成
し、
前記第1窒化物半導体構造は、凹字形トレンチが形成された基板に形成された第1窒化物半導体層、および第2窒化物半導体層を含み、前記第1窒化物半導体層が前記凹字形トレンチの制限下で前記凹字形トレンチに沿って成長され、前記第2窒化物半導体層が前記第1窒化物半導体層の第1極性面および第2極性面に形成され、前記第1分極接合が前記第1窒化物半導体層の前記第1極性面と前記第2窒化物半導体層との接触面に形成され、
前記第2窒化物半導体構造は、前記第1窒化物半導体層および第2窒化物半導体層を含み、前記第2分極接合が前記第1窒化物半導体層の前記第2極性面と前記第2窒化物半導体層との接触面に形成されており、前記第1分極接合が前記第1窒化物半導体層の前記第1極性面と前記第2窒化物半導体層との接触面に形成され、
少なくとも1つの第1トランジスタを形成するステップは、
前記第1窒化物半導体構造に設置する第1ゲート電極を形成することと、
前記第1ゲート電極の両側に対向して配置するとともに前記第1導電型二次元キャリアガスと結合する、第1ソース電極と第1ドレイン電極とを形成することとをさらに含み、
少なくとも1つの第2トランジスタを形成するステップは、
前記第2窒化物半導体構造に設置する第2ゲート電極を形成することと、
前記第2ゲート電極の両側に対向して配置するとともに前記第2導電型二次元キャリアガスと電気的に結合する、第2ソース電極と第2ドレイン電極とを形成することとをさらに含み、
第1分極接合を有する第1窒化物半導体構造を形成することは、
前記第1導電型二次元キャリアガスと電気的に結合する第1ドーピング構造を形成することをさらに含み、
第2分極接合を有する第2窒化物半導体構造を形成することは、
前記第2導電型二次元キャリアガスと電気的に結合する第2ドーピング構造を形成することをさらに含み、
前記第1ドーピング構造は、少なくとも1つの第2導電型ドーピング領域を含み、該第2導電型ドーピング領域が前記結晶方位投影方向で前記第1ゲート電極と少なくとも部分的に重なり合い、
前記第2ドーピング構造は、少なくとも1つの第1導電型ドーピング領域を含み、前記第1導電型ドーピング領域が前記結晶方位投影方向で前記第2ゲート電極と少なくとも部分的に重なり合う、
ことを特徴とする集積回路構造製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関係出願の相互参照
【0002】
本開示は、2020年4月29日に中国専利局に提出された、出願番号が202010361160.4であり、名称が「III族窒化物半導体集積回路構造、その製造方法および使用」である中国出願に基づいて優先権を主張し、その内容のすべては本開示に参照として取り込まれる。
【0003】
本開示は、半導体集積回路分野に属し、より具体的に、III族窒化物半導体集積回路構造、その製造方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
III族窒化物半導体のようなワイドバンドギャップ半導体は、臨界破壊電界が高く、電子の飽和速度が大きく、熱伝導率が高く、放射線耐性が強いなどの優れた性能を有するため、半導体業界での研究がブームになっている。近年、III族窒化物の半導体およびデバイスは、高周波/マイクロ波、移動通信、半導体照明、パワー集積回路設計などの分野で広く応用されている。III族窒化物半導体ディスクリートデバイスは、これまでにないスイッチング速度および作動周波数を有するが、実際の回路応用において、チップ間の寄生インダクタンスによって、III族窒化物半導体ディスクリートデバイスのスイッチング速度が大きく制限される。寄生インダクタンスを低減する1つの有効な方法として、III族窒化物半導体を用いる集積回路を研究、開発することである。
【0005】
III族窒化物半導体集積回路の実現にとって、III族窒化物半導体を用いる相補型回路技術を突破することが肝心である。例えば、従来のシリコンをベースにした集積回路は、その論理回路の基本構成として、相補型金属酸化物半導体(Complementary Metal Oxide Semiconductor、CMOS)により構成されている。CMOSは、PチャネルMOSデバイスとNチャネルMOSデバイスとからなる相補型集積回路である。III族窒化物半導体材料の場合、二次元電子ガス(Two-Dimensional Electron Gas、2DEG)に基づくNチャネルトランジスタ(High Electron Mobility Transistor、HEMT)の開発は比較的に成熟しており、これに対して、P型AlGaN/GaN構造に対する研究は、比較的に少なく、そして多くの課題があり、例えば、如何にソース領域、ドレイン領域でのP型ドーピング困難のことを克服し、PチャネルデバイスとNチャネルデバイスのモノリシック集積を実現するかなどの課題がある。このため、現在、相補型高移動度トランジスタ(Complementary High Mobility Transistor、CHMT)の技術的難点は、Pチャネルトランジスタ(High Hole Mobility Transistor、HHMT)の開発にあり、すなわち、異種材料界面での二次元正孔ガス(Two-Dimensional Hole Gas、2DHG)をP型チャンネル層としてPチャネルトランジスタを作製し、Nチャネルトランジスタとをモノリシックに集積化させることを実現することにある。
【0006】
また、他の技術的難点も存在する。III族窒化物半導体ヘテロ接合の大きな分極効果のため、ヘテロ接合界面で比較的高濃度の二次元キャリアガスが存在し、この二次元キャリアガスによって作製される高移動度トランジスタは、一般的にノーマリオン型のものである。しかし、実際の回路応用において、電力の節約、容易な制御のため、ノーマリオフ型のトランジスタが求められる。このため、耐電圧が高く、パワーが高く、オン抵抗が低いなど高い性能をもつエンハンスメント型高移動度トランジスタの実現は、当業界で注目されている課題の一つである。
【発明の概要】
【0007】
上記の状況に鑑みて、本開示は、相補型III族窒化物半導体集積回路構造およびその製造方法を提供する。
【0008】
本開示のいくつかの形態に対する基本的な理解を提供するため、以下、本開示の簡略内容を提供する。なお、この内容は、本開示のすべての内容ではないことが理解すべきである。これは、本開示の肝心または重要な部分を特定するためのものでもないし、本開示の範囲を限定するためのものでもなく、いくつかの概念を簡略に提出してその後のより詳細な説明の前書きとされるものにすぎない。
【0009】
本開示の内容の一局面において、本出願に係る集積回路構造は、
少なくとも1つの第1トランジスタと少なくとも1つの第2トランジスタとを備え、
前記少なくとも1つの第1トランジスタが、
第1導電型二次元キャリアガスを有する、第1分極接合を有する第1窒化物半導体構造と、
前記第1窒化物半導体構造に設置される第1ゲート電極と、
前記第1ゲート電極の両側に対向して配置されるとともに、前記第1導電型二次元キャリアガスと結合する、第1ソース電極および第1ドレイン電極とを備え
少なくとも1つの第2トランジスタが、
第2導電型二次元キャリアガスを有する、第2分極接合を有する第2窒化物半導体構造と、
前記第2窒化物半導体構造に設置される第2ゲート電極と、
前記第2ゲート電極の両側に対向して配置されるとともに、前記第2導電型二次元キャリアガスと電気的に結合する、第2ソース電極および第2ドレイン電極とを備え、
前記第1分極接合と前記第2分極接合とは、結晶方位が異なり、
前記第1導電型二次元キャリアガスと前記第2導電型二次元キャリアガスとは、導電型が異なり、
前記第1導電型二次元キャリアガスおよび前記第2導電型二次元キャリアガスは、それぞれ前記第1分極接合および前記第2分極接合に平行な方向にキャリアチャネルを形成するように構成される。
【0010】
任意選択で、前記第1窒化物半導体構造および第2窒化物半導体構造は、同一の基板にエピタキシャル成長される。
【0011】
任意選択で、前記第1分極接合および前記第2分極接合は、それぞれ垂直界面を有する。
【0012】
任意選択で、前記第1窒化物半導体構造の前記第1分極接合は、結晶方位が<0001>であり、表面が(0001)である。
【0013】
任意選択で、前記第2窒化物半導体構造の前記第2分極接合は、結晶方位が<0001 ̄>であり、表面が(0001 ̄)面である。
【0014】
任意選択で、前記基板は、シリコン、サファイア、炭化珪素または窒化ガリウムである。
【0015】
任意選択で、前記第1導電型二次元キャリアガスは、二次元電子ガスである。
【0016】
任意選択で、前記第2導電型二次元キャリアガスは、二次元正孔ガスである。
【0017】
任意選択で、前記第1窒化物半導体構造は、第1ドーピング構造をさらに含み、該第1ドーピング構造が前記第1導電型二次元キャリアガスと電気的に結合される。
【0018】
任意選択で、前記第2窒化物半導体構造は、第2ドーピング構造をさらに含み、該第2ドーピング構造が前記第2導電型二次元キャリアガスと電気的に結合される。
【0019】
任意選択で、前記第1ドーピング構造は、少なくとも1つの第2導電型ドーピング領域を含み、前記第2導電型ドーピング領域が前記結晶方位投影方向で前記第1ゲート電極と少なくとも部分的に重なり合う。
【0020】
任意選択で、前記第1ドーピング構造は、複数の第1導電型ドーピング領域をさらに含み、前記第1導電型ドーピング領域が前記第1ソース電極および前記第1ドレイン電極と電気的に結合される。
【0021】
任意選択で、前記第2ドーピング構造は、少なくとも1つの第1導電型ドーピング領域を含み、前記第1導電型ドーピング領域が前記結晶方位投影方向で前記第2ゲート電極と少なくとも部分的に重なり合う。
【0022】
任意選択で、前記第2ドーピング構造は、複数の第2導電型ドーピング領域をさらに含み、前記第2導電型ドーピング領域が前記第2ソース電極および前記第2ドレイン電極と電気的に結合する。
【0023】
任意選択で、前記第1トランジスタは、前記結晶方位投影方向で前記第1ゲート電極と少なくとも部分的に重なり合う第2導電型ドーピング領域によりノーマリオフ型を実現する。
【0024】
任意選択で、前記第2トランジスタは、前記結晶方位投影方向で前記第2ゲート電極と少なくとも部分的に重なり合う第1導電型ドーピング領域によりノーマリオフ型を実現する。
【0025】
任意選択で、前記第1窒化物半導体構造は、第1窒化物半導体層の第1領域と第2窒化物半導体層とからなる積層構造をさらに含み、前記第1窒化物半導体層と前記第2窒化物半導体層とは、禁制帯幅が異なり、前記キャリアチャネルが前記第1窒化物半導体層の第1領域と前記第2窒化物半導体層との界面に形成される。
【0026】
任意選択で、前記第2窒化物半導体構造は、第1窒化物半導体層の第2領域と第2窒化物半導体層とからなる積層構造をさらに含み、前記第1窒化物半導体層と前記第2窒化物半導体層とは、禁制帯幅が異なり、前記キャリアチャネルが前記第1窒化物半導体層の第2領域と前記第2窒化物半導体層との界面に形成される。
【0027】
任意選択で、前記第1トランジスタと前記第2トランジスタとが相補型のものであるとともに直列接続され、前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極とが接続して入力端とされ、前記第1ソース電極または前記第2ソース電極の任意の1つが接地しまたは外部負電源VSSに結合し、前記第2ソース電極または前記第1ソース電極の任意の1つが外部正電源VDDに結合し、前記第1ドレイン電極と前記第2ドレイン電極とが接続して出力端とされる。
【0028】
任意選択で、少なくとも2つの前記第1トランジスタが直列接続または並列接続して第1ユニットとされ、少なくとも2つの前記第2トランジスタが並列接続または直列接続して第2ユニットとされ、前記第1ユニットにおける直列接続または並列接続と第2ユニットにおける並列接続または直列接続とが対応しており、
前記第1ユニットと前記第2ユニットとが直列接続して出力端とされ、前記第1ユニットにおける前記第1トランジスタと前記第2ユニットにおける前記第2トランジスタとが、相補的に対をなすように構成され、相補的に対をなすトランジスタの前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極とが接続してそれぞれ入力端とされる。
【0029】
任意選択で、前記第1ユニットにおける少なくとも2つの第1トランジスタが直列接続される場合、前記第1ソース電極の任意の1つが接地しまたは外部負電源VSSに結合し、前記第1ドレイン電極の任意の1つが出力端として第2ユニットと結合し、残りの前記第1ソース電極および前記第1ドレイン電極が順に直列接続される。
【0030】
任意選択で、前記第2ユニットにおける少なくとも2つの第2トランジスタが並列接続される場合、前記第1ソース電極が接続してさらに外部正電源VDDに結合し、前記第1ドレイン電極が接続して出力端として第1ユニットと結合する。
【0031】
任意選択で、前記第1ユニットにおける少なくとも2つの第1トランジスタが並列接続される場合、前記第1ソース電極が接続してさらに接地しまたは外部負電源VSSに結合し、前記第1ドレイン電極が接続して出力端として第2ユニットと結合する。
【0032】
任意選択で、前記第2ユニットにおける少なくとも2つの第2トランジスタが直列接続される場合、前記第1ソース電極の任意の1つが外部正電源VDDに結合し、前記第1ドレイン電極の任意の1つが出力端として第1ユニットと結合し、残りの前記第1ソース電極および残りの前記第1ドレイン電極が順に直列接続される。
【0033】
任意選択で、前記第1ユニットにおける前記第1トランジスタが任意の数で直列接続または並列接続され、前記第2ユニットにおける、前記第1ユニットにおける前記第1トランジスタと相補的に対をなす前記第2トランジスタが相応な数で並列接続または直列接続される。
【0034】
任意選択で、前記集積回路構造は、核生成層をさらに含む。
【0035】
任意選択で、前記直列接続または並列接続される前記ソース電極/ドレイン電極が、接地しまたは外部負電源VSSに結合する。
【0036】
任意選択で、前記直列接続または並列接続される前記ソース電極/ドレイン電極が、外部正電源VDDに結合する。
【0037】
任意選択で、前記第2導電型ドーピング領域と電気的に接続する第1ボディ電極をさらに含む。
【0038】
任意選択で、前記第1導電型ドーピング領域と電気的に接続される第2ボディ電極をさらに含む。
【0039】
本開示の内容の他の局面において、電子装置を提供する。
【0040】
本開示の内容の他の局面において、本出願に係る集積回路構造製造方法は、
少なくとも1つの第1トランジスタを形成するステップと、
少なくとも1つの第2トランジスタを形成するステップとを含み、
少なくとも1つの第1トランジスタを形成するステップが、
第1導電型二次元キャリアガスを有する、第1分極接合を有する第1窒化物半導体構造を形成することを含み、
少なくとも1つの第2トランジスタを形成するステップが、
第2導電型二次元キャリアガスを有する、第2分極接合を有する第2窒化物半導体構造を形成することを含み、
前記第1窒化物半導体構造と前記第2窒化物半導体構造とが、同時に形成し、
前記第1分極接合と前記第2分極接合とは、結晶方位が異なり、前記分極接合が、それぞれ垂直界面を有し、
前記第1導電型二次元キャリアガスと前記第2導電型二次元キャリアガスとは、導電型が異なり、
前記第1導電型二次元キャリアガスおよび前記第2導電型二次元キャリアガスは、それぞれ前記第1分極接合および前記第2分極接合に平行な方向にキャリアチャネルを形成する。
【0041】
任意選択で、少なくとも1つの第1トランジスタを形成するステップは、
前記第1窒化物半導体構造に設置する第1ゲート電極を形成することと、
前記第1ゲート電極の両側に対向して配置するとともに前記第1導電型二次元キャリアガスと結合する、第1ソース電極と第1ドレイン電極とをそれぞれ形成することとをさらに含む。
【0042】
任意選択で、少なくとも1つの第2トランジスタを形成するステップは、
前記第2窒化物半導体構造に設置する第2ゲート電極を形成することと、
前記第2ゲート電極の両側に対向して配置するとともに前記第2導電型二次元キャリアガスと電気的に結合する、第2ソース電極と第2ドレイン電極とをそれぞれ形成することとをさらに含む。
【0043】
任意選択で、1つの基板を用い、前記基板に前記第1窒化物半導体構造および第2窒化物半導体構造を形成する。
【0044】
任意選択で、前記第1窒化物半導体構造および第2窒化物半導体構造は、それぞれ第1窒化物半導体層の異なる領域と第2窒化物半導体層とからなる積層構造を含む。
【0045】
任意選択で、前記基板に前記第1窒化物半導体構造および第2窒化物半導体構造を形成するステップは、
基板に複数の第1トレンチを形成し、前記第1トレンチを充填するように前記第1トレンチの側壁に前記第1窒化物半導体層を側方にエピタキシャル成長させることと、
前記第1窒化物半導体層の間の一部の基板を除去して複数の第2トレンチを形成することと、
前記第2トレンチ内に前記第1窒化物半導体層の異なる領域の側面にそれぞれ第2窒化物半導体層をエピタキシャル成長させることとをさらに含む。
【0046】
任意選択で、前記トランジスタを形成するステップは、
前記第2トレンチ内に前記第1窒化物半導体構造および第2窒化物半導体構造にそれぞれ1つまたは複数の第1ゲート電極、第1ソース電極および第1ドレイン電極、1つまたは複数の第2ゲート電極、第2ソース電極および第2ドレイン電極を形成することをさらに含む。
【0047】
任意選択で、結晶方位<0001>方向に前記第1窒化物半導体構造の前記第1分極接合を形成し、それが(0001)結晶面を有する。
【0048】
任意選択で、結晶方位<0001 ̄>方向に前記第2窒化物半導体構造の前記第2分極接合を形成し、それが(0001 ̄)結晶面を有する。
【0049】
任意選択で、前記基板は、シリコン、サファイア、炭化珪素または窒化ガリウムである。
【0050】
任意選択で、前記第1導電型二次元キャリアガスは、二次元電子ガスであり、前記第2導電型二次元キャリアガスは、二次元正孔ガスである。
【0051】
任意選択で、分極接合を有する第1窒化物半導体構造を形成することは、
前記第1導電型二次元キャリアガスと電気的に結合する第1ドーピング構造を形成することをさらに含む。
【0052】
任意選択で、分極接合を有する第2窒化物半導体構造を形成することは、
前記第2導電型二次元キャリアガスと電気的に結合する第2ドーピング構造を形成することをさらに含む。
【0053】
前記第1ドーピング構造は、少なくとも1つの第2導電型ドーピング領域を含み、該第2導電型ドーピング領域が前記結晶方位投影方向で前記第1ゲート電極と少なくとも部分的に重なり合う。
【0054】
任意選択で、前記第1ドーピング構造は、複数の第1導電型ドーピング領域をさらに含み、前記第1導電型ドーピング領域が前記第1ソース電極および前記第1ドレイン電極と電気的に結合する。
【0055】
任意選択で、前記第2ドーピング構造は、少なくとも1つの第1導電型ドーピング領域を含み、前記第1導電型ドーピング領域が前記結晶方位投影方向で前記第2ゲート電極と少なくとも部分的に重なり合う。
【0056】
任意選択で、前記第2ドーピング構造は、複数の第2導電型ドーピング領域をさらに含み、前記第2導電型ドーピング領域が前記第2ソース電極および前記第2ドレイン電極と電気的に結合する。
【0057】
任意選択で、前記第2導電型ドーピング領域と電気的に接続する第1ボディ電極をさらに形成する。
【0058】
任意選択で、前記第1導電型ドーピング領域と電気的に接続する第2ボディ電極をさらに形成する。
【0059】
任意選択で、さらに、前記第1トランジスタの間および/または前記第2トランジスタの間の前記二次元キャリアガスを除去し、絶縁媒体を充填する。
【0060】
任意選択で、分極接合を有する第1窒化物半導体構造を形成するステップは、
第1窒化物半導体層の第1領域と第2窒化物半導体層とからなる積層構造を形成することをさらに含み、
前記第1窒化物半導体層と前記第2窒化物半導体層とは、禁制帯幅が異なり、前記キャリアチャネルが前記第1窒化物半導体層の第1領域と前記第2窒化物半導体層との界面に形成される。
【0061】
任意選択で、分極接合を有する第2窒化物半導体構造を形成するステップは、
第1窒化物半導体層の第2領域と第2窒化物半導体層とからなる積層構造を形成することをさらに含み、
前記第1窒化物半導体層と前記第2窒化物半導体層とは、禁制帯幅が異なり、前記キャリアチャネルが前記第1窒化物半導体層の第2領域と前記第2窒化物半導体層との界面に形成される。
【0062】
III族窒化物半導体集積回路構造は、
少なくとも1つの第1トランジスタと少なくとも1つの第2トランジスタとを備え、
前記少なくとも1つの第1トランジスタが、
第1導電型二次元キャリアガスを有する、第1分極接合を有する第1窒化物半導体構造と、
前記第1窒化物半導体構造に設置される第1ゲート電極と、
前記第1ゲート電極の両側に対向して配置されるとともに、前記第1導電型二次元キャリアガスと結合する、第1ソース電極および第1ドレイン電極とを備え、
少なくとも1つの第2トランジスタが、
第2導電型二次元キャリアガスを有する、第2分極接合を有する第2窒化物半導体構造と、
前記第2窒化物半導体構造に設置される第2ゲート電極と、
前記第2ゲート電極の両側に対向して配置されるとともに、前記第2導電型二次元キャリアガスと電気的に結合する、第2ソース電極および第2ドレイン電極とを備え、
前記第1分極接合と前記第2分極接合とは、結晶方位が異なり、
前記第1導電型二次元キャリアガスと前記第2導電型二次元キャリアガスとは、導電型が異なり、
前記第1導電型二次元キャリアガスおよび前記第2導電型二次元キャリアガスは、それぞれ前記第1分極接合および前記第2分極接合に平行な方向にキャリアチャネルを形成するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
本開示の上記の目的および他の目的、特徴および利点をより容易に理解するため、図面を参照しながら本開示の具体的な内容を説明する。図面は、本開示の原理を示すものにすぎない。図面において、ユニットの寸法および相対位置を比例で描いたとは限らない。
【
図1】高電子移動度トランジスタおよび高正孔移動度トランジスタの回路符号の模式図である。
【
図2】III族窒化物半導体の集積回路構造10の平面図およびA-A断面図である。
【
図3】選択可能なIII族窒化物半導体の集積回路構造10′の平面図およびA-A断面図である。
【
図4】選択可能な付加する電気接続と回路素子を有する位相反転器回路構造の模式図である。
【
図5】選択可能な付加する電気接続と回路素子を有するNAND回路構造の模式図である。
【
図6】選択可能な付加する電気接続と回路素子を有するNOR回路構造の模式図である。
【
図7】選択可能な付加する電気接続と回路素子を有する複雑CMOS回路構造の模式図である。
【
図8】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図9】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図10】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図11】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図12】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図13】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図14】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図15】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図16】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図17】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図18】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図19】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図20】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図21】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図22】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図23】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図24】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図25】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図26】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図27】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図28】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図29】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図30】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図31】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図32】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図33】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図34】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図35】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図36】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図37】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図38】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図39】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図40】窒化物集積回路構造の製造方法の模式図である。
【
図41】窒化物集積回路構造の製造方法の模式的ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、図面を参照しながら、本開示の例示的な内容を説明する。明瞭および簡単のため、明細書において、本開示の内容を実現するすべての特徴を説明するのではない。ここで、必須でない細部で本開示の内容が曖昧にされることを避けるために、図面において、本開示の案に深く関わっているデバイス構造のみを示し、本開示の内容と関連性が低い他の細部を省略する。同様な符号は、異なる図面において同様の部分を示す。そして、本開示の説明において、「第1」、「第2」などの用語は、区別して説明するためのものにすぎず、相対重要性を明示又は暗示するものではなく、序列または順序を暗示するものではない。
【0065】
なお、以下、図面を用いて本開示の内容を説明したが、本開示の内容は、説明された実施形態に限定されない。本明細書において、「例示的」、「1種」および「任意選択」などの類似意味をもつ用語は、例示、実例または説明に使用する。本明細書において、「例」として説明される任意の例または実施例は、必ずしも他の実施例よりも好ましいまたは有利であるとは限らない。実施可能である限り、異なる実施案の間で特徴を置き換えまたは借用してもよく、1つの実施案において1つまたは複数の特徴を省略してもよい。
【0066】
具体的に、
図41に示すように、本開示に係る集積回路構造は、III族窒化物半導体に基づく相補型集積回路であり、少なくとも1つの第1トランジスタと少なくとも1つの第2トランジスタとを備える。第1トランジスタは、第1導電型二次元キャリアガスを有する、第1分極接合を有する第1窒化物半導体構造と、前記第1窒化物半導体構造に設置される第1ゲート電極と、前記第1ゲート電極の両側に対向して配置されるとともに、前記第1導電型二次元キャリアガスと結合される第1ソース電極および第1ドレイン電極とを備える。第2トランジスタは、第2導電型二次元キャリアガスを有する、第2分極接合を有する第2窒化物半導体構造と、前記第2窒化物半導体構造に設置される第2ゲート電極と、第2ゲート電極の両側に対向して配置されるとともに、前記第2導電型二次元キャリアガスと電気的に結合される第2ソース電極および第2ドレイン電極とを備える。前記第1分極接合と前記第2分極接合とは、結晶方位が異なり、前記第1導電型二次元キャリアガスと前記第2導電型二次元キャリアガスとは、導電型が異なり、前記第1導電型二次元キャリアガスおよび前記第2導電型二次元キャリアガスは、それぞれ前記第1分極接合および前記第2分極接合に平行な方向にキャリアチャネルを形成する。
【0067】
本開示に係る集積回路構造は、位相反転器、増幅器、インバータ、NANDゲート、NORゲートなどのアナログおよび/またはディジタル集積回路を有する電子設備に広く適用して、演算、増幅、伝送、変換/転換、論理などの機能を実現する。
【0068】
図1~
図7を参照しながら、本開示に係る1種の集積回路構造を説明する。
図1は、高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor、HEMT)および高正孔移動度トランジスタ(High Hole Mobility Transistor、HHMT)の回路符号を示す。HEMT 100は、第1ソース電極101と、第1ドレイン電極103と、第1ゲート電極102と、第1ボディ電極104とを含み、第1ソース電極101と第1ドレイン電極103との間に二次元電子ガス(Two-Dimensional Electron Gas、2DEG)チャネル105が設けられ、中実球で電子を表す。HHMT 200は、第2ソース電極201と、第2ドレイン電極203と、第2ゲート電極202と、第2ボディ電極204とを含み、第2ソース電極201と第2ドレイン電極203との間に二次元正孔ガス(Two-Dimensional Hole Gas、2DHG)チャネル205が設けられ、中空球で正孔を表す。第1ゲート電極102および第2ゲート電極202は、それぞれHEMT 100およびHHMT 200の導電チャネルの導通および遮断を制御するように構成され、第1ボディ電極104および第2ボディ電極204は、それぞれHEMT100およびHHMT200の閾値電圧を制御するように構成される。本開示において、HEMT100を第1トランジスタとし、HHMT200を第2トランジスタとしてもよく、その逆にしてもよい。
【0069】
図2は、III族窒化物半導体の集積回路構造10の平面図およびA-A断面図である。
図2に示すように、集積回路構造10は、核生成層121と、第1窒化物半導体層122と、第2窒化物半導体層123と、複数の電極101、102、103、104、201、202、203、204とを含む。以下で詳細に説明した内容のように、集積回路構造10は、第1窒化物半導体層122の第1領域124の内またはその上に形成される第1導電型(例えば、N-チャネルまたはN-型)の少なくとも1つの第1トランジスタ100と、第1窒化物半導体層122の第2領域125の内またはその上に形成される第2導電型(例えば、P-チャネルまたはP-型)の少なくとも1つの第2トランジスタ200とを備える。トランジスタ100、200が同一の半導体層(すなわち、第1窒化物半導体層122)に形成されるため、集積回路構造10およびトランジスタ100、200がモノリシックに集積化されたものとみなされる。また、トランジスタ100、200は導電型が異なるため、集積回路構造10を相補型集積回路とみなすことができる。また、トランジスタ100、200が形成される基層は、第1窒化物半導体層122であるため、集積回路構造10は、本開示において相補型窒化物集積回路構造とも称される。
【0070】
例示的に、核生成層121は、AlN層であってもよい。任意選択で、核生成層を設けなくてもよい。第1窒化物半導体層122は、ドーパントを含まないGaNにより形成されてもよい。任意選択で、第1窒化物半導体層122は、1つまたは複数の窒化物半導体サブ層を含んでもよく、GaN、InN、AlN、AlGaN、InAlN、InGaN、AlGaInNまたは他の適切な合金材料から選ばれる材料により形成されてもよい。第1窒化物半導体層122の厚さは、1μm~10μmであってもよい。任意選択で、第1窒化物半導体層122は、より厚くしてもよく、より薄くしてもよい。なお、本開示に記載の数値範囲は、例示するためのものにずぎず、本開示を限定するものではない。また、第1窒化物半導体層122の第1領域124は、核生成層121から離間する領域であり、第1窒化物半導体層122の第2領域125は、核生成層121と対向または隣接する領域である。前記第1領域124および前記第2領域125の表面は、異なる結晶面であり、例えば、前者が(0001)面であり、後者が(0001 ̄)面である。つまり、第1窒化物半導体層122の第1領域124と第2領域125とは、結晶方位が異なり、例えば、前者が<0001>結晶方位であり、後者が<0001 ̄>結晶方位であり、前記<0001>結晶方位および<0001 ̄>結晶方位が互いに逆方向となる。
【0071】
窒化物集積回路構造10の機械的安定性を向上させるため、第1窒化物半導体層122を別体の基板120にエピタキシャル成長させてもよい。基板120は、シリコン基板、サファイア基板、炭化珪素基板または窒化ガリウム基板などであってもよい。つまり、第1窒化物半導体層122のエピタキシャル成長に用いられる基板は、シリコン、サファイア、炭化珪素、窒化ガリウムまたは他の適切な材料により形成されてもよい。任意選択で、第1窒化物半導体層122自身が、基板120を含むものであってもよい。このため、本開示に使用される用語の「第1窒化物半導体層」は、窒化ガリウム基板、または基板に成長した窒化物半導体層を指す。任意選択で、閾値電圧を同調させまたはノーマリオフ型特性を実現し、或いはオーミック接触を実現するため、第1窒化物半導体層122に対して適切なドーピングを行ってもよく、その詳細は、下記で詳細に説明する。
【0072】
第2窒化物半導体層123は、第1窒化物半導体層122に形成され、第1窒化物半導体層122の第1領域124および第2領域125のそれぞれと積層構造を形成する。第2窒化物半導体層123は、障壁層またはキャリア供給層であり、例えば、III族窒化物の合金により形成されてもよい。任意選択で、第2窒化物半導体層123は、1つまたは複数の窒化物半導体サブ層を含み、AlGaN、InAlN、InGaN、AlNまたは他の適切な合金材料により形成される。第2窒化物半導体層123は、アルミニウム原子が約20%~30%であるAlGaN合金により形成されてもよい。任意選択で、アルミニウムの百分率は、より低くしてもよく、より高くしてもよい。
【0073】
第1窒化物半導体層122は、第1バンドギャップを有し、第2窒化物半導体層123は、第2バンドギャップを有し、第2バンドギャップが第1バンドギャップより大きい。第1窒化物半導体層122、例えば、GaN層は、バンドギャップが約3.4eVであり、第2窒化物半導体層123、例えば、AlGaN層は、バンドギャップが約4.0eVである。任意選択で、第2窒化物半導体層123のバンドギャップは、より高くしてもよく、より低くしてもよい。いずれの場合でも、第1窒化物半導体層122および第2窒化物半導体層123は、バンドギャップが互いに異なる。このため、第1窒化物半導体層122の第1領域124と第2窒化物半導体層123とは、接触界面で第1分極接合126を有し、これによって、第1窒化物半導体構造を形成し、第1窒化物半導体層122の第2領域125と第2窒化物半導体層123とは、接触界面で第2分極接合127を有し、第2窒化物半導体構造を形成する。つまり、第1窒化物半導体構造は、第1窒化物半導体層122の第1領域124と第2窒化物半導体層123との積層構造を含み、該積層構造が、複数のサブ層を有するものであり、第2窒化物半導体構造は、第1窒化物半導体層122の第2領域125と第2窒化物半導体層123との積層構造を含み、該積層構造が、複数のサブ層を有するものである。任意選択で、積層構造は、例えば、第1窒化物半導体層122の第1サブ層/第2サブ層と第2窒化物半導体層123の第1サブ層/第2サブ層とからなるものである。前記第1窒化物半導体構造および前記第2窒化物半導体構造は、同時に形成してもよく、別々で形成してもよい。自発分極効果およびピエゾ分極効果が存在し、そして、第1窒化物半導体層122および第2窒化物半導体層123が反転対称性を有しないため、<0001>結晶方位または<0001 ̄>結晶方位に垂直な結晶面の(0001)面および(0001 ̄)面が極性面であり、両者の接触する遷移領域においてそれぞれ分極接合が形成される。
【0074】
図2を参照し、第1分極接合126と第2分極接合127とは、結晶方位が異なり、例えば、前者が<0001>結晶方位であり、後者が<0001 ̄>結晶方位であり、第1分極接合126および第2分極接合127が垂直界面を有する。相応に、第1分極接合126の垂直界面で非常に強い分極正電荷を有し、第2分極接合127の垂直界面で非常に強い分極負電荷を有し、このため、これらの分極正電荷または負電荷が存在するため、互いに吸引し、界面で二次元電子ガス(例えば、第1導電型または第2導電型という)および二次元正孔ガス(相応に、例えば、第2導電型または第1導電型という)が生成される。以下で詳細に説明した内容のように、第1導電型二次元キャリアガスおよび第2導電型二次元キャリアガスは、それぞれ第1分極接合126および第2分極接合127に平行な方向にキャリアチャネルを形成する。二次元電子ガスは、第1トランジスタ100の導電チャネル105に対応する領域に位置し、第1トランジスタ100の第1ソース電極101と第1ドレイン電極103との間を流れる電流を提供する。二次元正孔ガスは、第2トランジスタ200の導電チャネル205と対応する領域に位置し、第2トランジスタ200の第2ソース電極201と第2ドレイン電極203との間を流れる電流を提供する。
【0075】
図2を参照し、前記複数の電極101、102、103、104、201、202、203、204は、それぞれ第1窒化物半導体構造および第2窒化物半導体構造に設置される。第1ソース電極101、第1ドレイン電極103は、第1ゲート電極102の両側に対向して配置し、第1導電型二次元キャリアガスと結合して、少なくとも1つの第1トランジスタ100が構成される。第2ソース電極201、第2ドレイン電極203は、第2ゲート電極202の両側に対向して配置し、第2導電型二次元キャリアガスと結合して、少なくとも1つの第2トランジスタ200が構成される。任意選択で、第1トランジスタ100は、第1ボディ電極104をさらに含み、該第1ボディ電極104が第1ゲート電極102と対向して第1窒化物半導体構造の側面に設置され、第2トランジスタ200は、第2ボディ電極204をさらに含み、該第2ボディ電極204が第2ゲート電極202と対向して第2窒化物半導体構造の側面に設置される。
【0076】
任意選択で、第1窒化物半導体層122は、少なくとも1つの第2導電型(例えば、P-型)のドーピング領域150をさらに含み、該ドーピング領域150が、<0001>結晶方位投影方向で第1ゲート電極102と少なくとも部分的に重なり合うとともに、第1導電型二次元キャリアガスと電気的に結合し、これによって、該第1導電型二次元キャリアガスのほとんどを空乏化して第1トランジスタ100をノーマリオフ型にする。第1トランジスタ100の閾値電圧を制御するため、第1ボディ電極104を、該第2導電型(例えば、P-型)のドーピング領域150と電気的に接続するように設置する。任意選択で、第1窒化物半導体層122は、少なくとも1つの第1導電型(例えば、N-型)のドーピング領域140をさらに含み、該ドーピング領域140が、<0001 ̄>結晶方位投影方向で第2ゲート電極202と少なくとも部分的に重なり合うとともに、第2導電型二次元キャリアガスと電気的に結合し、これによって、該第2導電型二次元キャリアガスのほとんどを空乏化して第2トランジスタ200をノーマリオフ型にする。第2トランジスタ200の閾値電圧を制御するため、第2ボディ電極204を該第1導電型(例えば、N-型)のドーピング領域140と電気的に接続するように設置する。任意選択で、第1窒化物半導体層122は、それぞれ第1ゲート電極102および第2ゲート電極202付近の二次元キャリアガスを空乏化する少なくとも1つの第2導電型(例えば、P-型)のドーピング領域150および第1導電型(例えば、N-型)のドーピング領域140をともに含み、これによって、第1トランジスタ100および第2トランジスタ200をともにノーマリオフ型にする。
【0077】
図3は、もう1種の、III族窒化物半導体の集積回路構造10′の平面図およびA-A断面図である。任意選択で、第1窒化物半導体層122において複数の第1導電型(例えば、N-型)のドーピング領域140と複数の第2導電型(例えば、P-型)のドーピング領域150が交互に形成されてもよい。第1トランジスタ100において、第2導電型(例えば、P-型)のドーピング領域150が<0001>結晶方位投影方向で第1ゲート電極102と少なくとも部分的に重なり合うとともに、第1ゲート電極102付近の第1導電型二次元キャリアガスのほとんどを空乏化し、第1導電型(例えば、N-型)のドーピング領域140が第1ソース電極101および第1ドレイン電極103のそれぞれと電気的に結合する。第2トランジスタ200において、第1導電型(例えば、N-型)のドーピング領域140が<0001 ̄>結晶方位投影方向で第2ゲート電極202と少なくとも部分的に重なり合うとともに、第2ゲート電極102付近の第2導電型二次元キャリアガスのほとんどを空乏化し、第2導電型(例えば、P-型)のドーピング領域150が第2ソース電極201および第2ドレイン電極203のそれぞれと電気的に結合する。
【0078】
以下、
図4~
図7を参照しながら、各種の付加する回路素子が第1トランジスタ100および第2トランジスタ200に電気的に結合して各種のタイプの電気回路を形成することを説明する。
図4~
図7は、
図2における相補集積回路構造を利用した各種の回路を例示的に示すが、
図4~
図7における各種の回路が
図3における相補集積回路構造を利用して実施してもよいと理解すべきできる。
【0079】
図4は、付加する電気接続と回路素子を有する位相反転器回路構造を示すものである。位相反転器回路構造400は、1つの第1トランジスタ100と1つの第2トランジスタ200とを含み、第1トランジスタと前記第2トランジスタとが直列接続し、該第1トランジスタ100および第2トランジスタ200が
図2または
図3の回路構造を有する。任意選択で、第1トランジスタ100がHEMTであり、第2トランジスタ200がHHMTであり、第1ゲート電極102と第2ゲート電極202とが接続して入力端V
inとされ、第1ソース電極101が接地しまたは外部負電源V
SSに結合し、前記第2ソース電極201が外部正電源V
DDに結合し、第1ドレイン電極103と第2ドレイン電極203とが接続されて出力端とされる。
【0080】
図5は、付加する電気接続と回路素子を有するNAND回路構造を示すものである。NAND回路構造500は、少なくとも2つの第1トランジスタ100と少なくとも2つの第2トランジスタ200とを含み、該第1トランジスタ100および第2トランジスタ200が
図2または
図3の回路構造を有する。任意選択で、第1トランジスタ100がHEMTであり、第2トランジスタ200がHHMTである。少なくとも2つの第1トランジスタ100が直列接続して第1ユニット501とされ、少なくとも2つの第2トランジスタ200が並列接続して第2ユニット502とされ、第1ユニット501と第2ユニット502との直列接続の接続端が出力端V
outとされる。また、第1ユニットの第1トランジスタ100と第2ユニットの第2トランジスタ200とは、相補的に対をなし、相補的に対をなす2つのトランジスタのゲート電極102、202が接続してそれそれ入力端A、Bとされる。より具体的に、第1ユニットにおける複数の第1トランジスタ100が順に直列接続し、そのうち、1つの第1ソース電極101が接地しまたは外部負電源V
SSに結合し、1つの第1ドレイン電極103が第1ユニット501の出力端V
outとして第2ユニット502と電気的に結合する。第2ユニット502における複数の第2トランジスタ200が並列接続し、複数の第2ドレイン電極203が接続して出力端V
outとして第1ユニット501と電気的に結合し、複数の第2ソース電極201が接続して外部正電源V
DDに結合する。
【0081】
図6は、付加する電気接続と回路素子を有するNOR回路構造を示すものである。NOR回路構造600は、少なくとも2つの第1トランジスタ100と少なくとも2つの第2トランジスタ200とを含み、該第1トランジスタ100および第2トランジスタ200が
図2または
図3の回路構造を有する。任意選択で、第1トランジスタ100がHEMTであり、第2トランジスタ200がHHMTである。少なくとも2つの第1トランジスタ100が並列接続して第1ユニット601とされ、少なくとも2つの第2トランジスタ200が直列接続して第2ユニット602とされ、第1ユニット601と第2ユニット602との直列接続の接続端が出力端V
outとされる。また、第1ユニット601の第1トランジスタ100と第2ユニット602の第2トランジスタ200とは、相補的に対をなし、相補的に対をなす2つのトランジスタのゲート電極102、202が接続してそれぞれ入力端A、Bとされる。より具体的に、第1ユニット601における複数の第1トランジスタ100が並列接続し、複数の第1ソース電極101が接続して接地しまたは外部負電源V
SSに結合し、複数の第1ドレイン電極103が接続して第1ユニット601の出力端V
outとして第2ユニット602と電気的に結合する。第2ユニット601における複数の第2トランジスタ200が順に直列接続し、そのうち、1つの第1ソース電極101が外部正電源V
DDに結合し、1つの第1ドレイン電極103が第2ユニット602の出力端V
outとして第1ユニット601と電気的に結合する。
【0082】
図7は、付加する電気接続と回路素子を有する複雑CMOS回路構造を示すものである。複雑CMOS回路構造700は、少なくとも2つの第1トランジスタ100と少なくとも2つの第2トランジスタ200とを含み、該第1トランジスタ100および第2トランジスタ200が
図2または
図3の回路構造を有する。任意選択で、第1トランジスタ100がHEMTであり、第2トランジスタ200がHHMTである。複数の第1トランジスタ100が任意の数で直列接続または並列接続して第1ユニット701とされる。複数の第2トランジスタ200と第1ユニット701における複数の第1トランジスタ100とが、相補的に対をなし、任意の数で対応に並列接続または直列接続して第2ユニット702とされる。第1ユニット701と第2ユニット702との直列接続の接続端が出力端V
outとされる。また、上記の相補的に対をなす2つのトランジスタのゲート電極102、202が接続してそれぞれ入力端A、B、C、Dとされる。より具体的に、第1ユニット701において4つの第1トランジスタ100を有し、それぞれ第1トランジスタ100
11、100
12、100
13、100
14で表し、第2ユニット702において、第1ユニット701における4つの第1トランジスタ100と相補的に対をなす4つの第2トランジスタ200を有し、それぞれ第2トランジスタ200
11、200
12、200
13、200
14で表す。第1ユニット701における2つの第1トランジスタ100
11、100
12が並列接続するとともに第1トランジスタ100
13と直列接続して直列接続ユニットを形成し、該直列接続ユニットがさらに第1トランジスタ100
14と並列接続し、それらの第1ソース電極101が接続して接地しまたは外部負電源V
SSに結合し、それらの第1ドレイン電極103が接続して出力端V
outとして第2ユニット702と電気的に結合する。第2ユニット702における2つの第2トランジスタ200
11、200
12が直列接続して直列接続ユニットを形成し、さらに第2トランジスタ200
13と並列接続して1つの並列接続ユニットを形成し、それらの第2ソース電極201が接続して外部正電源V
DDに結合し、該並列接続ユニットがさらに第2トランジスタ200
14と直列接続し、200
14の第2ドレイン電極203が第2ユニットの出力端V
outとして第1ユニット701と電気的に結合する。
【0083】
また、第1トランジスタ100および第2トランジスタ200が互いに直接隣接するように示されるが、両者が空間的に分離してもよく(同一の第1窒化物半導体層122に位置する)、任意の数の挿入デバイス、および/または1種または複数種のアイソレーション構造がトランジスタ100、200の間に設置されてもよい。例えば、
図32に示すように、アイソレーション構造は、アイソレーショントレンチとトレンチに充填されるアイソレーション媒体とを含む。
【0084】
各種の相補型窒化物集積回路構造10を実現する回路の上記の例以外、各種の窒化物集積回路構造10が、他のタイプの回路を有する電子設備において実現されることもできる。このような回路は、AC~DC変換器(整流器)、DC~DC変換器、DC~ACインバータ、AC~AC変換器、増幅器および各種の他のタイプの回路を含むが、これらに限定されない。したがって、上記の例は、限定するためのものではない。
【0085】
窒化物集積回路構造10は、アクティブデバイスおよびパッシブデバイスの少なくとも一方を付加した任意の組合せを含んでもよく、少なくとも1つの第1トランジスタ100(例えば、HEMT)、少なくとも1つの第2トランジスタ200(例えば、HHMT)、ダイオード、抵抗、コンデンサ、インダクタなどを含み、これらとデバイス間の導電接続との任意の組合せにより、演算、増幅、輸送、転換、論理などの機能を実現することができる。
【0086】
以下、
図8~
図40を参照しながら上記の窒化物集積回路構造10を製造する製造方法を詳細に説明する。上記の相補型窒化物集積回路構造10を実現するため、同一の基板にHEMTおよびHHMTを形成する必要があり、HEMTおよびHHMTを同時に実現することが好ましく、もちろん、HEMTおよびHHMTを別々に実現してもよく、そして、ドーピング構造を含むチャネル構造を形成することによりノーマリオフ型トランジスタを実現する。その原理から考えると、チャネル構造外のドーピング窒化物半導体ゲート電極により実現してもよい。本開示において、主にドーピング構造を含むチャネル構造を形成することを説明する。また、その原理から、HEMTおよびHHMTを同時に実現するには、無制限成長で得る垂直チャネルと、水平トレンチ制限成長で得る垂直チャネルと、垂直トレンチ制限成長で得る垂直チャネルとの3種のプロセスがある。そのうち、水平トレンチ限制の場合最も高い集積密度を得ることができ、かつプロセスが比較的に簡単であるため、本開示において、水平トレンチ制限の状況だけを説明する。
【0087】
図8~
図9に示すように、1つの基板120を用い、前記基板が(110)または(112)面を用いるシリコン基板であってもよい。任意選択で、基板120がサファイア基板、炭化珪素基板または窒化ガリウム基板などであってもよい。前記基板120の第1表面801において第1絶縁層802を形成し、例示的に、前記第1絶縁層802が熱酸化処理または気相成長により形成されるSiO
2層である。例示的に、前記第1絶縁層802の厚さは、約0.5μmである。第1絶縁層802にフォトレジスト層が形成され、フォトレジスト層に下方の第1絶縁層802を露出する開口が形成される。
【0088】
図10に示すように、前記第1絶縁層802におけるフォトレジスト層に形成された開口で、前記第1絶縁層802およびその下方の前記基板120に対してエッチングを行って、複数の垂直な第1トレンチ803を形成し、前記第1トレンチ803が間隔をあけて並び、前記第1トレンチの側壁が、六方対称の格子構造を有し、例えば、Si(111)面である。
【0089】
図11に示すように、上記の形成した構造をもとに、同一面蒸着により犠牲層804を形成し、例示的に、前記犠牲層804が窒化ケイ素層であり、その厚さが約100nmである。なお、前記第1絶縁層802および犠牲層804を選択するとき、両方が高エッチング選択比を有すればよく、例えば、前記犠牲層804をエッチングするとき、エッチング剤で前記犠牲層804をエッチングするとき、第1絶縁層802がほとんどエッチングされなく、またはそれに対するエッチングが非常に遅い。
【0090】
図12に示すように、ドライエッチングを行い、前記第1絶縁層802の表面における前記犠牲層804および前記第1トレンチ803の底部における前記犠牲層804を除去し、前記第1トレンチ803の側面、例えば、第1側面805および第2側面806における前記第1犠牲層804を残す。
【0091】
図13に示すように、酸化工程により、前記トレンチの底面に第2絶縁層807(二酸化ケイ素層)を形成し、前記第1トレンチ803の側面、例えば、第1側面805および第2側面806が、残された前記第1犠牲層804の保護下で酸化されなく、前記第2絶縁層807により、この後窒化物半導体が成長するときにガリウム原子とシリコン基板との不適合を避け、メルトバック(melt-back)現象の発生を防止することができる。そして、該第2絶縁層807によれば、窒化物半導体とシリコン基板との間の漏れ電流を効果的に遮断し、シリコン基板による寄生容量を効果的に低減することができる。
【0092】
図14に示すように、選択的なウェットエッチングにより、前記第1犠牲層804と前記第2絶縁層807とのエッチング選択比を利用して、前記第1トレンチ803の側面、例えば、第1側面805および第2側面806における前記第1犠牲層804を除去する。
【0093】
図15に示すように、酸化工程により、前記第1トレンチ803の第1側面805および第2側面806のそれぞれに比較的に薄い第3絶縁層808(二酸化ケイ素層)を形成し、第3絶縁層808の厚さを第1絶縁層、第2絶縁層の厚さと異なって設定する。第3絶縁層808の厚さは、この後前記第3絶縁層808が除去されたとき、前記基板を保護できる十分厚い第1絶縁層および第2絶縁層が残されるようにすればよい。これらの絶縁層は、この後窒化物半導体が成長するときにガリウム原子とシリコン基板との不適合を避け、メルトバック(melt-back)現象の発生を防止することができ、シリコン基板に窒化物半導体デバイスを作製することにとって不可欠なものである。
【0094】
図16に示すように、上記の構造にフォトレジスト809を塗布し、当業者が周知する露光現像プロセスにより、前記第1トレンチ803の間にフォトエッチングパターンを形成して前記第1トレンチ803の間の一部の前記第3絶縁層808および前記第1絶縁層802に対して露光する。
【0095】
図17に示すように、露光した前記複数の第1トレンチ803の側面における一部の前記第3絶縁層808および前記第1絶縁層802を除去し、前記第1絶縁層802の厚さが前記第3絶縁層808の厚さよりもはるかに大きいため、前記第3絶縁層808を除去する過程において、前記露光された第1絶縁層802部分は、完全に除去されることなく、非常に薄くエッチングされる。さらに、残された前記フォトレジスト809を除去し、これによって、前記第1トレンチ803において前記基板120の一部の側面805、806が露出される。
【0096】
図18に示すように、シリコン基板とガリウムとの間のメルトバック(melt-back)効果により、シリコン基板にGaNを直接成長させることができない。一般的に、AlNの核生成層を先に成長させる必要があり、さらに、それをもとに窒化物半導体構造を形成する。したがって、露出された前記第1トレンチ803の側面805、806のそれぞれに単結晶AlN核生成層121を形成し、前記単結晶AlN結晶の成長方向が<0001>であり、その表面が(0001)面である。なお、AlNの選択性が非常に低くて、通常のプロセス条件下で絶縁層に多結晶または非晶質のAlNを生成することも発生しやすいため、所望の構造の形成に不利である。このため、核生成層が形成されたあと、二酸化ケイ素層におけるAlNを別途除去する必要がある。または、AlN核生成層を形成するとき、前記二酸化ケイ素層に成長しなく前記シリコン基板だけに成長することを保証するように、塩素含有ガスを導入する。
【0097】
なお、他の基板、例えば、Al2O3を採用する場合、核生成層がGaNであってもよい。この場合、プロセス調整により、露出された基板の表面だけでの核生成が容易に実現できる。
【0098】
図19に示すように、核生成層121を核として第1窒化物半導体層122を側方にエピタキシャル成長させ、前記第1トレンチ803の存在のため、前記第1窒化物半導体層122が核生成層から前記第1トレンチ803に沿って側方にエピタキシャル成長し、成長方向が<0001>であり、前記<0001>結晶方位と<0001 ̄>結晶方位とが互いに逆方向である。前記第1窒化物半導体層122が前記トレンチの外に成長することもあり、平坦化またはエッチング技術により前記第1トレンチ803の外の第1窒化物半導体層122を除去する。側方エピタキシャルによれば、側方エピタキシャル領域の窒化物半導体結晶の質を効果的に向上させて、デバイスの電気的性能を向上させることができる。前記トレンチの外の第1窒化物半導体層122を除去する。また、前記第1トレンチ803の外に成長した前記第1窒化物半導体層122を除去しなく、前記第1トレンチ803から突出した部分として形成させてもよい。
【0099】
本実施例において、第1窒化物半導体層122は、ドーパントを含まないGaNにより形成されてもよい。任意選択で、第1窒化物半導体層122は、1つまたは複数の窒化物半導体サブ層を含み、GaN、InN、AlN、AlGaN、InAlN、InGaN、AlGaInNまたは他の適切な合金材料により形成されてもよい。第1窒化物半導体層122の厚さは、1.0μm~10μmであってもよい。任意選択で、第1窒化物半導体層122は、より厚くしてもよく、より薄くしてもよい。なお、本開示に記載の数値範囲は、例示するためのものにすぎず、本開示を限定するものではない。
【0100】
なお、前記第1窒化物半導体層を成長させる前に1つのバッファ層を先に成長させて形成してもよく、もちろん、バッファ層を形成しなくてもよい。
【0101】
任意選択で、第1窒化物半導体層122において、少なくとも1つの第2導電型(例えば、P-型)のドーピング領域150を形成し、該ドーピング領域150が、<0001>結晶方位投影方向で上記の第1ゲート電極102と少なくとも部分的に重なり合うとともに、第1導電型二次元キャリアガスと電気的に結合し、これによって、該第1導電型二次元キャリアガスのほとんどを空乏化して第1トランジスタ100をノーマリオフ型にする。前記第2導電型のドーピング領域150のドーピング濃度、サイズパラメータなどは、第1導電型二次元キャリアガスのほとんどを空乏化し、つまり、第1導電型二次元キャリアガスの95%~100%を空乏化するように、デバイスパラメータにより設定する。第1導電型二次元キャリアガスの濃度が高いほど、対応のドーピング濃度をそれに応じて上げる。
【0102】
任意選択で、第1窒化物半導体層122において、少なくとも1つの第1導電型(例えば、N-型)のドーピング領域140を形成し、該ドーピング領域140が<0001 ̄>結晶方位投影方向で上記の第2ゲート電極202と少なくとも部分的に重なり合うとともに、第2導電型二次元キャリアガスと電気的に結合し、これによって、該第2導電型二次元キャリアガスのほとんどを空乏化して第2トランジスタ200をノーマリオフ型にする。前記第1導電型(例えば、N-型)のドーピング領域140のドーピング濃度、サイズパラメータなどは、第2導電型二次元キャリアガスのほとんどを空乏化し、つまり、第2導電型二次元キャリアガスの95%~100%を空乏化するように、デバイスパラメータにより設定する。第2導電型二次元キャリアガスの濃度が高いほど、対応のドーピング濃度をそれに応じて上げる。
【0103】
任意選択で、第1窒化物半導体層122において、それぞれ第1ゲート電極102および第2ゲート電極202付近の二次元キャリアガスを空乏化する少なくとも1つの第2導電型(例えば、P-型)のドーピング領域150および第1導電型(例えば、N-型)のドーピング領域140を同時に形成することもでき、これによって、第1トランジスタ100および第2トランジスタ200を同時にノーマリオフ型にする。
【0104】
図20に示すように、前記第1窒化物半導体層122の間のシリコン基板120に対してエッチングを行って、前記第1絶縁層802と一部の前記シリコン基板120とを除去し、複数の第2トレンチ810を形成する。シリコン基板120に対してエッチングを行ったあと、第1窒化物半導体層122において核生成層以外側面に第3絶縁層808が残されることもある。ここで、該第3絶縁層808を除去して前記第1窒化物半導体層122の<0001>および<0001 ̄>方向における側面180、190を露出し、側面180、190の対応する結晶面がそれぞれ(0001)面および(0001 ̄)面である。つまり、第1窒化物半導体層122の<0001>方向における側面180は、前記第1窒化物半導体層122の第1領域124であり、第1窒化物半導体層122の<0001 ̄>方向における側面190は、前記第1窒化物半導体層122の第2領域125である。任意選択で、第3絶縁層808を残して後の工程において除去するようにしてもよく、ここで説明を省略する。
【0105】
図21に示すように、前記エッチングがされたあとの基板120に第4絶縁層811を形成することにより前記第2トレンチ810を充填し、平坦化を行って露出の前記シリコン基板を隔離し、前記第4絶縁層811が、例示的に、二酸化ケイ素層である。
【0106】
図22に示すように、前記第2トレンチ810内の底部および側壁における前記第4絶縁層811の一部をエッチングして、前記第1窒化物半導体層122の第1領域124および第2領域125を部分的に露出する。
【0107】
図23に示すように、露出された前記第1窒化物半導体層122の第1領域124および第2領域125に第2窒化物半導体層123を形成し、第1窒化物半導体層122の第1領域124および第2領域125のそれぞれと積層構造を形成する。任意選択で、第2窒化物半導体層123は、障壁層またはキャリア供給層であり、1つまたは複数の窒化物半導体サブ層を含む。第2窒化物半導体層123は、AlGaN、InAlN、InGaN、AlNまたは他の適切な合金材料により形成される。第2窒化物半導体層123は、アルミニウム原子が約20%~30%であるAlGaN合金により形成されてもよい。任意選択で、アルミニウムの百分率は、より低くしてもよく、より高くしてもよい。
【0108】
任意選択で、第1窒化物半導体層122は、第1バンドギャップを有し、第2窒化物半導体層123は、第2バンドギャップを有し、第2バンドギャップが第1バンドギャップより大きい。第1窒化物半導体層122、例えば、GaN層は、バンドギャップが約3.4eVであり、第2窒化物半導体層123、例えば、AlGaN層は、バンドギャップが4.0eVである。任意選択で、第2窒化物半導体層123のバンドギャップは、より高くしてもよく、より低くしてもよい。いずれも場合でも、第1窒化物半導体層122および第2窒化物半導体層123は、バンドギャップが互いに異なる。
【0109】
自発分極効果およびピエゾ分極効果が存在し、そして、第1窒化物半導体層122および第2窒化物半導体層123が反転対称性を有しないため、<0001>結晶方位または<0001 ̄>結晶方位に垂直な結晶面の(0001)面および(0001 ̄)面が極性面であり、両者の接触する遷移領域においてそれぞれ分極接合が形成される。このため、第1窒化物半導体層122の第1領域124と第2窒化物半導体層123とは、接触界面で第1分極接合126を有し、これによって、第1窒化物半導体構造を形成し、第1窒化物半導体層122の第2領域125と第2窒化物半導体層123とは、接触界面で第2分極接合127を有し、第2窒化物半導体構造を形成する。つまり、第1窒化物半導体構造は、第1窒化物半導体層122の第1領域124と第2窒化物半導体層123との積層構造を含み、該積層構造が、複数のサブ層を有するものであり、第2窒化物半導体構造は、第1窒化物半導体層122の第2領域125と第2窒化物半導体層123との積層構造を含み、該積層構造が、複数のサブ層を有するものである。任意選択で、積層構造は、例えば、第1窒化物半導体層122の第1サブ層/第2サブ層と第2窒化物半導体層123の第1サブ層/第2サブ層とからなるものである。前記第1窒化物半導体構造および前記第2窒化物半導体構造は、同時に形成したものである。
【0110】
任意選択で、前記第1分極接合126と第2分極接合127とは、結晶方位が異なり、例えば、前者が<0001>結晶方位であり、後者が<0001 ̄>結晶方位であり、第1分極接合126および第2分極接合127が垂直界面を有する。第1導電型二次元キャリアガスおよび第2導電型二次元キャリアガスは、それぞれ第1分極接合126および第2分極接合127に平行な方向にキャリアチャネルを形成する。
【0111】
図24に示すように、上記の構造に第5絶縁層812を形成して前記第2トレンチ810を充填し、前記第5絶縁層812をフォトエッチングしてソース電極ウィンドウ、ドレイン電極ウィンドウおよびゲート電極ウィンドウを形成する。
図2に示すように、当業者の周知の技術を用い、例えば、電子ビーム蒸着技術を用いてソース電極ウィンドウ、ドレイン電極ウィンドウおよびゲート電極ウィンドウでTi、Al、Ti、TiNの4層の金属を蒸着させ、厚さが、例えば20nm、130nm、25nm、70nmであり、そして、リフトオフ、焼なましを経て、二次元キャリアガスとオーミック接触するオーミック電極、および、前記第2窒化物半導体層123と絶縁しまたはショットキー接触するゲート電極を形成し、つまり、前記HEMT100およびHHMT200のソース電極101、201、ドレイン電極103、203およびゲート電極102、202を形成する。具体的に、第1ソース電極101、第1ドレイン電極103は、第1ゲート電極102の両側に対向して配置し、第1導電型二次元キャリアガスと結合して、少なくとも1つの第1トランジスタ100を構成する。第2ソース電極201、第2ドレイン電極203は、第2ゲート電極202の両側に対向して配置し、第2導電型二次元キャリアガスと結合して、少なくとも1つの第2トランジスタ200を構成する。
【0112】
図25、
図3に示すように、トランジスタの閾値電圧を制御するため、上記の構造に、それぞれ該第2導電型(例えば、P-型)のドーピング領域150および該第1導電型(例えば、N-型)のドーピング領域140と電気的に接続するボディ電極104、204を形成してもよい。具体的に、任意選択で、第1トランジスタ100は、第1ボディ電極104をさらに含み、該第1ボディ電極104が第1ゲート電極102と対向して第1窒化物半導体構造の側面に設置され、第2トランジスタ200は、第2ボディ電極204をさらに含み、該第2ボディ電極204が第2ゲート電極202と対向して第2窒化物半導体構造の側面に設置される。
【0113】
任意選択で、第4絶縁層811の代わりに、酸化工程を利用して第6絶縁層811’を形成して上記の第2トレンチにおけるシリコン基板120を隔離してもよい。具体的に、シリコン基板の一部をエッチングして得た構造、つまり、
図20に示される構造をもとに説明し、図番号を
図26にする。以下、上記の内容と異なる構造または方法だけを説明し、同じ構造や方法について詳細な説明を省略する。
【0114】
図27に示すように、
図26に示される構造に対して酸化処理を行い、前記第2トレンチ810で露出されるシリコン基板120および前記第1窒化物半導体層122の側面に第6絶縁層811’を形成する。窒化物半導体が酸化されにくいため、第1窒化物半導体層122の表面で形成される第6絶縁層811’が比較的に薄い。
【0115】
図28に示すように、前記第1窒化物半導体層122の側面を囲む第6絶縁層811’を除去して、前記第1窒化物半導体層122の第1領域124および第2領域125を部分的に露出する。
図20(26)に示される構造を形成する過程において第1窒化物半導体層122の側面における第3絶縁層808を残してもよい。該第3絶縁層は
図27に示される酸化工程において第1窒化物半導体層122の側面を保護し、その後の
図28に示される工程において除去する。
【0116】
図29に示すように、露出された前記第1窒化物半導体層122の第1領域124および第2領域125に第2窒化物半導体層123を形成し、第1窒化物半導体層122の第1領域124および第2領域125のそれぞれと積層構造を形成する。任意選択で、第2窒化物半導体層123の材質は、上記の実施例と同じである。任意選択で、積層構造は、例えば、第1窒化物半導体層122の第1サブ層/第2サブ層と第2窒化物半導体層123の第1サブ層/第2サブ層とからなるものである。前記第1窒化物半導体構造および前記第2窒化物半導体構造は、同時に形成したものである。
【0117】
図30、
図2に示すように、上記の構造にソース電極ウィンドウ、ドレイン電極ウィンドウおよびゲート電極ウィンドウを形成する。当業者の周知の技術を用い、例えば、電子ビーム蒸着技術を用いてソース電極ウィンドウ、ドレイン電極ウィンドウでTi、Al、Ti、TiNの4層の金属を蒸着させ、厚さが、例えば20nm、130nm、25nm、70nmであり、そして、リフトオフ、焼なましを経て、二次元キャリアガスとオーミック接触するオーミック電極を形成し、ゲート電極ウィンドウでTiN金属を蒸着させて前記第2窒化物半導体層123と絶縁しまたはショットキー接触するゲート電極を形成し、つまり、前記HEMT100およびHHMT200のソース電極101、201、ドレイン電極103、203およびゲート電極102、202を形成する。エッチングの方法でこれらの電極構造を形成してもよい。
【0118】
図31に示すように、トランジスタの閾値電圧を制御するため、上記の構造に、それぞれ該第2導電型(例えば、P-型)のドーピング領域150および該第1導電型(例えば、N-型)のドーピング領域140と電気的に接続するボディ電極104、204を形成してもよい。
【0119】
図32に示すように、異なるトランジスタの間の二次元キャリアガス、すなわち2DEGおよび2DHGを除去して、2DEGおよび2DHGによる異なるトランジスタの間の電気的接続を防止する。具体的に、当業者の周知の技術を用い、例えば、誘導結合プラズマエッチング(すなわち、ICPエッチング)を用いて、異なるトランジスタの間にトレンチを形成し、第7絶縁媒体812で充填してトレンチアイソレーション構造を形成する。
【0120】
以下、第1窒化物半導体121のドーピング構造の形成を説明する。以下、上記の構造と異なる構造または方法だけを説明し、同じである構造や方法について詳細な説明を省略する。
【0121】
図33に示すように、上記の方法で形成された
図18に示される構造をもとに説明し、図番号を
図33にする。
【0122】
任意選択で、
図34に示すように、核生成層121を核として第1窒化物半導体層122を側方にエピタキシャル成長させ、前記第1トレンチ803の存在のため、前記第1窒化物半導体層122が核生成層から前記第1トレンチ803に沿って側方にエピタキシャル成長する。前記第1窒化物半導体層122が前記トレンチの外に成長することもあり、平坦化またはエッチング技術により前記第1トレンチ803の外の第1窒化物半導体層122を除去する。任意選択で、第1窒化物半導体層122の材質は、上記の構造の材質と同じである。
【0123】
側方にエピタキシャルするとき、前記第1窒化物半導体層122において複数の第1導電型(例えば、N-型)のドーピング領域140と複数の第2導電型(例えば、P-型)のドーピング領域150を交互に形成することにおいて、上記の構造と相違している。
【0124】
図35に示すように、前記第1窒化物半導体層122の間のシリコン基板120に対してエッチングを行い、前記第1絶縁層802および一部の前記シリコン基板120を除去し、第2トレンチ810を形成し、これによって、前記第1窒化物半導体層122の<0001>および<0001 ̄>方向における側面180、190が露出され、側面180、190の対応する結晶面がそれぞれ(0001)面および(0001 ̄)面である。つまり、第1窒化物半導体層122の<0001>方向における側面180は、前記第1窒化物半導体層122の第1領域124であり、第1窒化物半導体層122的<0001 ̄>方向における側面190は、前記第1窒化物半導体層122の第2領域125である。
【0125】
図36に示すように、前記エッチングがされた基板120に第4絶縁層811を形成することにより前記第2トレンチ810を充填し、平坦化を行って露出の前記シリコン基板を隔離し、前記第4絶縁層811が、例示的に、二酸化ケイ素層である。
【0126】
図37に示すように、前記第2トレンチ810内の底部および側壁における前記第4絶縁層811の一部をエッチングして、前記第1窒化物半導体層122の第1領域124および第2領域125を部分的に露出する。
【0127】
図38に示すように、露出された前記第1窒化物半導体層122の第1領域124および第2領域125に第2窒化物半導体層123を形成し、第1窒化物半導体層122の第1領域124および第2領域125のそれぞれと積層構造を形成する。任意選択で、第2窒化物半導体層123の材質は、上記の構造の材質と同じである。任意選択で、積層構造は、例えば、第1窒化物半導体層122の第1サブ層/第2サブ層と第2窒化物半導体層123の第1サブ層/第2サブ層とからなるものである。前記第1窒化物半導体構造および前記第2窒化物半導体構造は、同時に形成したものである。
【0128】
図39、
図2、
図3に示すように、上記の構造に第5絶縁層812を形成することにより前記第2トレンチ810を充填し、前記第5絶縁層812をフォトエッチングしてソース電極ウィンドウ、ドレイン電極ウィンドウおよびゲート電極ウィンドウを形成する。当業者の周知の技術を用い、例えば、電子ビーム蒸着技術を用いてソース電極ウィンドウ、ドレイン電極ウィンドウでTi、Al、Ti、TiNの4層の金属を蒸着させ、厚さが、例えば20nm、130nm、25nm、70nmであり、そして、リフトオフ、焼なましを経て、二次元キャリアガスとオーミック接触するオーミック電極を形成し、ゲート電極ウィンドウで前記第2窒化物半導体層123と絶縁しまたはショットキー接触するゲート電極を形成し、つまり、前記HEMT100およびHHMT200のソース電極101/201、ドレイン電極103/203およびゲート電極102/202を形成する。エッチングの方法でこれらの電極構造を形成してもよい。
【0129】
具体的に、第1ソース電極101、第1ドレイン電極103は、第1ゲート電極101の両側に対向して配置し、第1導電型二次元キャリアガスと結合して、少なくとも1つの第1トランジスタ100を構成する。第1トランジスタ100において、第2導電型(例えば、P-型)のドーピング領域150が<0001>結晶方位投影方向で第1ゲート電極102と少なくとも部分的に重なり合うとともに、第1ゲート電極102付近の第1導電型二次元キャリアガスのほとんどを空乏化し、第1導電型(例えば、N-型)のドーピング領域140が第1ソース電極101および第1ドレイン電極103のそれぞれと電気的に結合する。また、第2ソース電極201、第2ドレイン電極203は、第2ゲート電極202の両側に対向して配置し、第2導電型二次元キャリアガスと結合して、少なくとも1つの第2トランジスタ200を構成する。第2トランジスタ200において、第1導電型(例えば、N-型)のドーピング領域140が<0001 ̄>結晶方位投影方向で第2ゲート電極202と少なくとも部分的に重なり合うとともに、第2ゲート電極102付近の第2導電型二次元キャリアガスのほとんどを空乏化し、第2導電型(例えば、P-型)のドーピング領域150が第2ソース電極201および第2ドレイン電極203のそれぞれと電気的に結合する。
【0130】
図40、
図3に示すように、トランジスタの閾値電圧を制御するため、上記の構造に、それぞれ該第2導電型(例えば、P-型)のドーピング領域150および該第1導電型(例えば、N-型)のドーピング領域140と電気的に接続するボディ電極104、204を形成してもよい。具体的に、任意選択で、第1トランジスタ100は、第1ボディ電極104をさらに含み、該第1ボディ電極104が第1ゲート電極102と対向して第1窒化物半導体構造の側面に設置される。第2トランジスタ200は、第2ボディ電極204をさらに含み、該第2ボディ電極204が第2ゲート電極202と対向して第2窒化物半導体構造の側面に設置される。
【0131】
任意選択で、異なるトランジスタの間の二次元キャリアガス、すなわち2DEGおよび2DHGを除去して、2DEGおよび2DHGによる異なるトランジスタの間の電気的接続を防止するため、異なるトランジスタの間にトレンチアイソレーション構造を形成してもよい。
【0132】
本開示に係る案は、下記の効果の少なくとも1つを実現することができる。本開示に係る集積回路構造は、III族窒化物半導体に基づく、HEMTとHHMTとの相補型回路であり、同一の基板においてHEMTとHHMTとの集積を実現することができ、HEMTおよびHHMTが、それぞれ垂直界面の分極接合を有し、両者の分極接合の結晶方位が異なり、二次元キャリアガスが前記分極接合に平行な方向にキャリアチャネルを形成し、埋め込みドーピング領域により対応のチャネルキャリアのほとんどを空乏化する。本開示は、III族窒化物半導体の分極特性を利用し、異なる結晶方位における分極接合界面で相補型の二次元キャリアガスを生成することを実現し、III族窒化物半導体のHEMTとHHMTとを1つの基板に集積させて、相補型の集積回路構造を形成する。CMOSのような従来のシリコンをベースにした相補型回路に比べて、本開示に係る集積回路構造は、2DEGおよび2DHGが、キャリア移動度、オン電流密度、スイッチング速度などの面で優位に立ち、オン抵抗、寄生インダクタンスが低くなり、そして、デバイスがノーマリオフ状態であり、オン電流密度がより高く、集積度がより高く、消費電力が少ない技術的効果を得ることができる。
【0133】
本開示に係る案は、下記の効果の少なくとも1つを実現することができる。本開示に係る集積回路構造は、電子設備の核心部分として位相反転器、増幅器、NAND、NORなどアナログまたはディジタル集積回路に広く適用される。
【0134】
本開示に係る案は、下記の効果の1つを実現することができる。本開示に係る集積回路構造の製造方法は、単位面積でより高いチャネル密度を実現でき、平面化プロセスに適し、トランジスタの集積密度の向上に寄与でき、上記の集積回路構造のプロセスが比較的に簡単であり、生産コストを効果的に削減することができる。
【0135】
上記の説明は、「接続」または「結合」される要素または接続箇所または特徴に対するものである。本開示での使用のように、特に断りがない限り、「接続」とは、1つの要素が他の要素に直接接続される(または直接連通)ことを意味し、必ずしも機械的な接続ではない。同様、特に断りがない限り、「結合」とは、1つの要素が他の要素に直接または非直接接続される(直接または非直接連通)ことを意味し、必ずしも機械的な結合ではない。したがって、図面における模式図が要素の例示的な配置を示すが、説明される主題の実施例に、中間要素、デバイス、特徴また部品を付加してもよい。
【0136】
上記の詳細な説明において少なくとも1つの例示的な実施例を提出したが、変化してもよい。当業者であればわかるように、これらの説明は、例示的なものにすぎず、本開示の保護範囲を限定するものではない。当業者は、本開示の精神および原理を逸脱しない限り、本開示に対して行った各種の変形および変更も本開示の範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本開示に係るIII族窒化物半導体集積回路構造は、製造方法のプロセスが簡単で、コストが低く、単位面積でより高い集積度を実現でき、耐電圧が高く、パワーが高く、オン抵抗が低いなどの高い性能をもつ相補型半導体集積回路構造を実現できる。