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特許7450745ヒートポンプシステムおよびヒートポンプシステムを制御するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】ヒートポンプシステムおよびヒートポンプシステムを制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
F25B1/00 304R
F25B1/00 331E
F25B1/00 101E
F25B1/00 101J
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022552139
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2021008586
(87)【国際公開番号】W WO2021177429
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】20161356.9
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510048875
【氏名又は名称】ダイキン ヨーロッパ エヌ.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】DAIKIN EUROPE N.V.
【住所又は居所原語表記】Zandvoordestraat 300,Oostende 8400,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】河野 聡
(72)【発明者】
【氏名】コーネリス,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】デプレ,マーティン
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-119220(JP,A)
【文献】国際公開第2018/062177(WO,A1)
【文献】特開2012-067967(JP,A)
【文献】特開2013-015264(JP,A)
【文献】特開2010-054186(JP,A)
【文献】特開2009-229055(JP,A)
【文献】特開昭64-090960(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0247350(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F24F 11/00 - 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒圧縮機と、
前記冷媒圧縮機の吐出ポートに接続される高圧冷媒管と、
前記冷媒圧縮機の吸入ポートに接続される低圧冷媒管と、
前記高圧冷媒管および前記低圧冷媒管のうちの一方に接続されるとともに、内部を流れる冷媒と通過する流体との間で熱交換を行うよう構成される熱源側熱交換器と、
前記熱源側熱交換器に接続されるとともに、内部を流れる冷媒と通過する流体との間で熱交換を行うよう構成される利用側熱交換器に接続されるよう構成される液冷媒管と、
前記高圧冷媒管および前記低圧冷媒管のうちの他方に接続されるとともに、前記利用側熱交換器に接続されるよう構成されるガス冷媒管と、
前記液冷媒管に配置される主膨張機構と
一バイパス管と、
前記液冷媒管内を流れる冷媒と前記第一バイパス管内を流れる冷媒との間で熱交換を行うよう構成される冷媒熱交換器と、
前記液冷媒管と前記冷媒熱交換器との間の点で前記第一バイパス管に配置される第一バイパス弁と、
前記主膨張機構と前記利用側熱交換器との間の点で前記液冷媒管に接続されるとともに、前記低圧冷媒管に接続される第二バイパス管と、
前記第二バイパス管に配置される第二バイパス弁と、
前記第一バイパス管内を流れる冷媒の過熱度を示すパラメータを検出するよう構成される過熱度検出器と、
前記冷媒圧縮機と、前記熱源側熱交換器および前記利用側熱交換器のうちの一方と、の間で、前記高圧冷媒管内を流れる冷媒の温度を吐出温度として検出するよう構成される吐出側センサと、
検出された前記パラメータによって示される前記過熱度と前記吐出温度とに基づいて前記第一バイパス弁の開度を制御し、前記吐出温度に基づいて前記第二バイパス弁の開度を制御するよう構成されるコントローラと、
を備え
前記第一バイパス管は、前記主膨張機構と前記冷媒熱交換器との間の点で前記液冷媒管に接続されるとともに、前記低圧冷媒管又は前記冷媒圧縮機のインジェクションポートに接続され、
前記コントローラは、少なくとも前記第二バイパス弁の開度が第一開度閾値に達したときに、前記第一バイパス弁の開度を増加させるよう構成される、
ヒートポンプシステム。
【請求項2】
冷媒圧縮機と、
前記冷媒圧縮機の吐出ポートに接続される高圧冷媒管と、
前記冷媒圧縮機の吸入ポートに接続される低圧冷媒管と、
前記高圧冷媒管および前記低圧冷媒管のうちの一方に接続されるとともに、内部を流れる冷媒と通過する流体との間で熱交換を行うよう構成される熱源側熱交換器と、
前記熱源側熱交換器に接続されるとともに、内部を流れる冷媒と通過する流体との間で熱交換を行うよう構成される利用側熱交換器に接続されるよう構成される液冷媒管と、
前記高圧冷媒管および前記低圧冷媒管のうちの他方に接続されるとともに、前記利用側熱交換器に接続されるよう構成されるガス冷媒管と、
前記液冷媒管に配置される主膨張機構と、
第一バイパス管と、
前記液冷媒管内を流れる冷媒と前記第一バイパス管内を流れる冷媒との間で熱交換を行うよう構成される冷媒熱交換器と、
前記液冷媒管と前記冷媒熱交換器との間の点で前記第一バイパス管に配置される第一バイパス弁と、
前記主膨張機構と前記利用側熱交換器との間の点で前記液冷媒管に接続されるとともに、前記低圧冷媒管に接続される第二バイパス管と、
前記第二バイパス管に配置される第二バイパス弁と、
前記第一バイパス管内を流れる冷媒の過熱度を示すパラメータを検出するよう構成される過熱度検出器と、
前記冷媒圧縮機と、前記熱源側熱交換器および前記利用側熱交換器のうちの一方と、の間で、前記高圧冷媒管内を流れる冷媒の温度を吐出温度として検出するよう構成される吐出側センサと、
検出された前記パラメータによって示される前記過熱度と前記吐出温度とに基づいて前記第一バイパス弁の開度を制御し、前記吐出温度に基づいて前記第二バイパス弁の開度を制御するよう構成されるコントローラと、
を備え、
前記第一バイパス管は、前記主膨張機構と前記冷媒熱交換器との間の点で前記液冷媒管に接続されるとともに、前記低圧冷媒管又は前記冷媒圧縮機のインジェクションポートに接続され、
前記コントローラは、
前記吐出温度が第一目標吐出温度以下のときに、前記過熱度が目標過熱度に近づき、
前記吐出温度が前記第一目標吐出温度より高いときに、前記吐出温度が前記第一目標吐出温度に近づくように、
前記第一バイパス弁の開度を制御するように構成され、
前記コントローラは、前記第二バイパス弁の開度が第一開度閾値に達したとき、前記第一目標吐出温度の値を小さくするよう構成される、
ヒートポンプシステム。
【請求項3】
冷媒圧縮機と、
前記冷媒圧縮機の吐出ポートに接続される高圧冷媒管と、
前記冷媒圧縮機の吸入ポートに接続される低圧冷媒管と、
前記高圧冷媒管および前記低圧冷媒管のうちの一方に接続されるとともに、内部を流れる冷媒と通過する流体との間で熱交換を行うよう構成される熱源側熱交換器と、
前記熱源側熱交換器に接続されるとともに、内部を流れる冷媒と通過する流体との間で熱交換を行うよう構成される利用側熱交換器に接続されるよう構成される液冷媒管と、
前記高圧冷媒管および前記低圧冷媒管のうちの他方に接続されるとともに、前記利用側熱交換器に接続されるよう構成されるガス冷媒管と、
前記液冷媒管に配置される主膨張機構と、
第一バイパス管と、
前記液冷媒管内を流れる冷媒と前記第一バイパス管内を流れる冷媒との間で熱交換を行うよう構成される冷媒熱交換器と、
前記液冷媒管と前記冷媒熱交換器との間の点で前記第一バイパス管に配置される第一バイパス弁と、
前記主膨張機構と前記利用側熱交換器との間の点で前記液冷媒管に接続されるとともに、前記低圧冷媒管に接続される第二バイパス管と、
前記第二バイパス管に配置される第二バイパス弁と、
前記第一バイパス管内を流れる冷媒の過熱度を示すパラメータを検出するよう構成される過熱度検出器と、
前記冷媒圧縮機と、前記熱源側熱交換器および前記利用側熱交換器のうちの一方と、の間で、前記高圧冷媒管内を流れる冷媒の温度を吐出温度として検出するよう構成される吐出側センサと、
検出された前記パラメータによって示される前記過熱度と前記吐出温度とに基づいて前記第一バイパス弁の開度を制御し、前記吐出温度に基づいて前記第二バイパス弁の開度を制御するよう構成されるコントローラと、
を備え、
前記第一バイパス管は、前記主膨張機構と前記冷媒熱交換器との間の点で前記液冷媒管に接続されるとともに、前記低圧冷媒管又は前記冷媒圧縮機のインジェクションポートに接続され、
前記コントローラは、
前記第二バイパス弁の開度が第一開度閾値より小さいときに、前記過熱度が目標過熱度に近づき、
前記第二バイパス弁の開度が前記第一開度閾値より大きいときに、前記吐出温度が第一目標吐出温度に近づくように、
前記第一バイパス弁の開度を制御するように構成される、
ヒートポンプシステム。
【請求項4】
前記第一バイパス管は前記低圧冷媒管に接続されており、
前記過熱度検出器は、前記冷媒熱交換器の下流側で前記第一バイパス管内を流れる冷媒の温度を検出するよう構成されるバイパスセンサと、前記低圧冷媒管内を流れる冷媒の圧力を検出するよう構成される吸入側センサと、を含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項5】
前記第一バイパス管は前記冷媒圧縮機の前記インジェクションポートに接続されており、
前記過熱度検出器は、
前記冷媒熱交換器の下流側で前記第一バイパス管内を流れる冷媒の温度を検出するよう構成される第一バイパスセンサと、前記第一バイパス弁と前記冷媒熱交換器との間で前記第一バイパス管内を流れる冷媒の温度を検出するよう構成される第二バイパスセンサと、を含む、
又は、
前記冷媒熱交換器の下流側で前記第一バイパス管内を流れる冷媒の温度を検出するよう構成される第一バイパスセンサと、前記第一バイパス弁の下流側で前記第一バイパス管内を流れる冷媒の圧力を検出するよう構成される第二バイパスセンサと、を含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項6】
前記低圧冷媒管に配置されるアキュムレータを更に備え、
前記第一バイパス管は、前記アキュムレータと、前記低圧冷媒管に接続される前記熱源側熱交換器および前記利用側熱交換器のうちの一方と、の間の点で前記低圧冷媒管に接続され、
前記第二バイパス管は、前記アキュムレータと前記冷媒圧縮機との間の点で前記低圧冷媒管に接続される、
請求項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項7】
前記低圧冷媒管に配置されるアキュムレータを更に備え、
前記第二バイパス管は、前記アキュムレータと前記冷媒圧縮機との間の点で前記低圧冷媒管に接続される、
請求項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、少なくとも前記吐出温度が吐出温度閾値に達したときに、前記第一バイパス弁の開度を増加させるよう構成される、
請求項1~のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記第二バイパス弁の開度が、前記第一開度閾値以下である第二開度閾値へと低下したとき、前記第一目標吐出温度の値を大きくするよう構成される、
請求項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、
前記吐出温度が、前記第一目標吐出温度以下である第二目標吐出温度へと低下したとき、かつ/又は、前記第二バイパス弁の開度が、前記第一開度閾値以下である第二開度閾値へと低下したときに、
前記吐出温度が前記第一目標吐出温度に近づくよう前記第一バイパス弁の開度を制御する第一制御から、前記過熱度が前記目標過熱度に近づくよう前記第一バイパス弁の開度を制御する第二制御へと、切り換えるよう構成されている、
請求項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項11】
前記ヒートポンプシステムは、R32冷媒を使用するよう構成されている、
請求項1~1のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項12】
前記ヒートポンプシステムの状態を、記熱源側熱交換器が前記高圧冷媒管に接続されかつ前記ガス冷媒管が前記低圧冷媒管に接続される冷却動作モードと、前記熱源側熱交換器が前記低圧冷媒管に接続されかつ前記ガス冷媒管が前記高圧冷媒管に接続される加熱動作モードと、の間で切り換えるよう構成されるモード切換機構と、
前記第二バイパス管の状態を、前記第二バイパス管が前記冷媒熱交換器と前記利用側熱交換器との間の点で前記液冷媒管に接続される第一接続モードと、前記第二バイパス管が前記主膨張機構と前記冷媒熱交換器との間の点で前記液冷媒管に接続される第二接続モードと、の間で切り換えるよう構成される接続切換機構と、
を更に備え、
前記コントローラは、前記ヒートポンプシステムが前記冷却動作モードにあるときには前記第二バイパス管が前記第一接続モードとなり、前記ヒートポンプシステムが前記加熱動作モードであるときには前記第二バイパス管が前記第二接続モードとなるよう、前記接続切換機構を制御するように構成される、
請求項1~1のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項13】
ートポンプシステムを制御するための方法であって、
前記ヒートポンプシステムは、
冷媒圧縮機と、
前記冷媒圧縮機の吐出ポートに接続される高圧冷媒管と、
前記冷媒圧縮機の吸入ポートに接続される低圧冷媒管と、
前記高圧冷媒管および前記低圧冷媒管のうちの一方に接続されるとともに、内部を流れる冷媒と通過する流体との間で熱交換を行うよう構成される熱源側熱交換器と、
前記熱源側熱交換器に接続されるとともに、内部を流れる冷媒と通過する流体との間で熱交換を行うよう構成される利用側熱交換器に接続されるよう構成される液冷媒管と、
前記高圧冷媒管および前記低圧冷媒管のうちの他方に接続されるとともに、前記利用側熱交換器に接続されるよう構成されるガス冷媒管と、
前記液冷媒管に配置される主膨張機構と、
第一バイパス管と、
前記液冷媒管内を流れる冷媒と前記第一バイパス管内を流れる冷媒との間で熱交換を行うよう構成される冷媒熱交換器と、
前記液冷媒管と前記冷媒熱交換器との間の点で前記第一バイパス管に配置される第一バイパス弁と、
前記主膨張機構と前記利用側熱交換器との間の点で前記液冷媒管に接続されるとともに、前記低圧冷媒管に接続される第二バイパス管と、
前記第二バイパス管に配置される第二バイパス弁と、
前記第一バイパス管内を流れる冷媒の過熱度を示すパラメータを検出するよう構成される過熱度検出器と、
前記冷媒圧縮機と、前記熱源側熱交換器および前記利用側熱交換器のうちの一方と、の間で、前記高圧冷媒管内を流れる冷媒の温度を吐出温度として検出するよう構成される吐出側センサと、
検出された前記パラメータによって示される前記過熱度と前記吐出温度とに基づいて前記第一バイパス弁の開度を制御し、前記吐出温度に基づいて前記第二バイパス弁の開度を制御するよう構成されるコントローラと、
を備え、
前記第一バイパス管は、前記主膨張機構と前記冷媒熱交換器との間の点で前記液冷媒管に接続されるとともに、前記低圧冷媒管又は前記冷媒圧縮機のインジェクションポートに接続され、
前記ヒートポンプシステムを制御するための方法は、
前記吐出温度が第一目標吐出温度以下であるときには前記過熱度が目標過熱度に近づくよう、前記吐出温度が前記第一目標吐出温度より高いときには前記吐出温度が前記第一目標吐出温度に近づくよう、前記第一バイパス弁の開度を制御する工程と、
前記第二バイパス弁の開度が第一開度閾値に達したとき前記第一目標吐出温度の値を小さくする工程と、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプシステムおよびヒートポンプシステムを制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際特許出願公開第2018/062177号には、過冷却システムおよびインジェクションシステムを有するヒートポンプシステムが提案されている。過冷却システムは、第一バイパス管と冷媒熱交換器と第一バイパス弁とを有する。インジェクションシステムは、第二バイパス管と第二バイパス弁とを有する。
【0003】
過冷却システムの第一バイパス管は、ヒートポンプシステムの液冷媒管と低圧冷媒管とを接続する。冷媒熱交換器は、液冷媒管内を流れる冷媒と第一バイパス管内を流れる冷媒との間で熱交換を行うよう構成される。第一バイパス管内を流れる冷媒は、第一バイパス管に配置されている第一バイパス弁によって減圧されて膨張するので、液冷媒管内を流れる冷媒より冷たくなる。こうして、液冷媒管内を流れる冷媒は、熱交換箇所を流れるときに冷却される。液冷媒管内を流れる冷媒の温度が所定の目標温度へと冷却されるよう、第一バイパス弁の開度は制御される。これにより、液冷媒管の下流側に配置されている熱交換器の冷却効率を向上できる。
【0004】
インジェクションシステムの第二バイパス管もまた、液冷媒管と低圧冷媒管とを接続する。第二バイパス管の冷媒は、熱交換器を流れることなく低圧冷媒管へと流れて、熱交換器を流れた冷媒と合流する。また、第二バイパス管内を流れる冷媒は、第二バイパス管に配置されている第二バイパス弁によって減圧されて膨張するので、低圧冷媒管内を流れる冷媒より冷たくなる。こうして、冷媒圧縮機によって吸入される冷媒は冷やされ、その結果、冷媒圧縮機から吐出される冷媒の温度(以下「吐出温度」という)は低下する。吐出温度が他の所定の目標温度へと冷却されるよう、第二バイパス弁の開度は制御される。これにより、ヒートポンプシステムの信頼性および安全性を向上できる。
【0005】
しかしながら、上記インジェクションシステムの冷媒を流す能力が不十分な場合、吐出温度を十分に低下させることができない場合がある。一方、第二バイパス管の厚みを大きくする、かつ/又は、第二バイパス管の数を増やすと、生産コストが上昇してしまう、かつ/又は、ヒートポンプシステムの寸法が大きくなってしまう。また、吐出温度を更に低下させるために第二バイパスを通ってバイパスする冷媒の量を単に増加した場合、熱交換器へと送出される冷媒の量は減少する。その結果、ヒートポンプシステムの性能は逆に低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際特許出願公開第2018/062177号
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、可能な限り生産コストの上昇および/又はシステムの寸法の増大を防止しながら、ヒートポンプシステムの効率、信頼性および安全性を向上することにある。
【0008】
本発明の第一の面では、冷媒圧縮機と、高圧冷媒管と、低圧冷媒管と、熱源側熱交換器と、液冷媒管と、ガス冷媒管と、主膨張機構と、第一バイパス管と、冷媒熱交換器と、第一バイパス弁と、第二バイパス管と、第二バイパス弁と、過熱度検出器と、吐出側センサと、コントローラとを備えるヒートポンプシステムを提供する。高圧冷媒管は、冷媒圧縮機の吐出ポートに接続される。低圧冷媒管は、冷媒圧縮機の吸入ポートに接続される。熱源側熱交換器は、高圧冷媒管および低圧冷媒管のうちの一方に接続されるとともに、内部を流れる冷媒と通過する流体との間で熱交換を行うよう構成される。液冷媒管は、熱源側熱交換器に接続されるとともに、内部を流れる冷媒と通過する流体との間で熱交換を行うよう構成される利用側熱交換器に接続されるよう構成される。ガス冷媒管は、高圧冷媒管および低圧冷媒管のうちの他方に接続されるとともに、利用側熱交換器に接続されるよう構成される。主膨張機構は、液冷媒管に配置される。第一バイパス管は、主膨張機構と利用側熱交換器との間の点で液冷媒管に接続されるとともに、低圧冷媒管又は圧縮機のインジェクションポートに接続される。冷媒熱交換器は、液冷媒管内を流れる冷媒と第一バイパス管内を流れる冷媒との間で熱交換を行うよう構成される。第一バイパス弁は、液冷媒管と冷媒熱交換器との間の点で第一バイパス管に配置される。第二バイパス管は、主膨張機構と利用側熱交換器との間の点で液冷媒管に接続されるとともに、低圧冷媒管に接続される。第二バイパス弁は、第二バイパス管に配置される。過熱度検出器は、第一バイパス管内を流れる冷媒の過熱度を示すパラメータを検出するよう構成される。吐出側センサは、冷媒圧縮機と、熱源側熱交換器および利用側熱交換器のうちの一方と、の間で高圧冷媒管内を流れる冷媒の温度を吐出温度として検出するよう構成される。コントローラは、検出されたパラメータによって示される過熱度と吐出温度とに基づいて第一バイパス弁の開度を制御し、吐出温度に基づいて第二バイパス弁の開度を制御するよう構成される。
【0009】
この構成では、第一バイパス弁の開度は、過熱度にだけでなく吐出温度にも基づいて制御される。これにより、本来は過冷却システムのために配置される第一バイパス管を、第二バイパス管に加えて、吐出温度を低下するようインジェクションシステムを支援するために使用することができる。こうして、第二バイパス管の厚みおよび/又は数を増加することなく、吐出温度を低下するために、利用側熱交換器をバイパスして冷媒を流す能力を向上できる。したがって、可能な限り生産コストの上昇および/又はシステムの寸法の増大を防止しながら、ヒートポンプシステムの効率、信頼性および安全性を向上することができる。
【0010】
上述のヒートポンプシステムの好ましい態様では、第一バイパス管は、低圧冷媒管に接続される。過熱度検出器は、冷媒熱交換器の下流側で第一バイパス管内を流れる冷媒の温度を検出するよう構成されるバイパスセンサと、低圧冷媒管内を流れる冷媒の圧力を検出するよう構成される吸入側センサと、を含む。
【0011】
この構成では、第一バイパス管内を流れる冷媒を低圧冷媒管へと送ることができる。こうして、冷媒圧縮機がインジェクションポートを有していない場合であっても、吐出温度を低下するために第一バイパス管を利用することができる。また、容易にかつ妥当な価格で入手可能な温度センサおよび圧力センサを用いて、過熱度を検出できる。こうして、ヒートポンプシステムの効率を、システムの生産コストの上昇を回避しながら、向上することができる。
【0012】
上述のヒートポンプシステムのうちのいずれか一に関する他の好ましい態様では、第一バイパス管は圧縮機のインジェクションポートに接続される。過熱度検出器は、冷媒熱交換器の下流側で第一バイパス管内を流れる冷媒の温度を検出するよう構成される第一バイパスセンサと、第一バイパス弁と冷媒熱交換器との間で第一バイパス管内を流れる冷媒の温度を検出するよう構成される第二バイパスセンサと、を有する。又は、過熱度検出器は、冷媒熱交換器の下流側で第一バイパス管内を流れる冷媒の温度を検出するよう構成される第一バイパスセンサと、第一バイパス弁の下流側で第一バイパス管内を流れる冷媒の圧力を検出するよう構成される第二バイパスセンサと、を有する。
【0013】
この構成では、第一バイパス管内を流れる冷媒を冷媒圧縮機のインジェクションポートへと送ることができる。こうして、冷媒圧縮機の効率を向上すると同時に、吐出温度を低下するために第一バイパス管を利用することができる。また、容易にかつ妥当な価格で入手可能な、温度センサ、および圧力センサもしくは他の温度センサを用いて、過熱度を検出することができる。こうして、ヒートポンプシステムの効率を、システムの生産コストの上昇を回避しながら、向上することができる。二つの温度センサが用いられ、それらのうちの一つが第一バイパス弁と冷媒熱交換器との間に配置される場合、過熱度をより容易に取得できる。
【0014】
第一バイパス管は低圧冷媒管に接続されている上述のヒートポンプシステムのいずれかにおける更なる他の好ましい態様では、ヒートポンプシステムは、低圧冷媒管に配置されるアキュムレータを更に備える。第一バイパス管は、アキュムレータと、低圧冷媒管に接続される熱源側熱交換器および利用側熱交換器のうちの一方と、の間の点で、低圧冷媒管に接続される。第二バイパス管は、アキュムレータと冷媒圧縮機との間の点で低圧冷媒管に接続される。
【0015】
この構成では、第一バイパス管を流れた冷媒はアキュムレータに受け取られ、第二バイパス管を流れた冷媒はアキュムレータに受け取られない。第一バイパスを流れた冷媒は、冷媒熱交換器における熱交換のため、含んでいる液冷媒が少ない傾向があり、第二バイパス管を流れた冷媒は、含んでいる液冷媒が多い傾向がある。こうして、液状態又は気液二相状態の冷媒を低圧冷媒管に送出でき、これにより、いわゆる液インジェクションを効率的に実行できる。
【0016】
第一バイパス管が圧縮機のインジェクションポートに接続されている上述のヒートポンプシステムのいずれかの更なる他の好ましい態様では、システムは、低圧冷媒管に配置されるアキュムレータを更に備える。第二バイパス管は、アキュムレータと冷媒圧縮機との間の点で低圧冷媒管に接続される。
【0017】
この構成では、第二バイパス管を流れた冷媒はアキュムレータに受け取られない。第二バイパス管を流れた冷媒は、含んでいる液冷媒が多い傾向がある。こうして、液状態又は気液二相状態の冷媒を低圧冷媒管に送出でき、これにより、いわゆる液体インジェクションを効率的に実行できる。
【0018】
上述のヒートポンプシステムのいずれかに関する更なる他の好ましい態様では、コントローラは、少なくとも第二バイパス弁の開度が第一開度閾値に達したときに、第一バイパス弁の開度を増加させるよう構成される。
【0019】
この構成では、第二バイパス弁の開度が増加することによって第一バイパス弁の開度も増加する。これにより、吐出温度が過度に上昇する前に、第一バイパス弁の開度を急速に増加できる。こうして、吐出温度を速やかに低下させて、吐出温度が過度に高くなるのを効果的に防止することができる。また、吐出温度が高くても第二バイパス弁が吐出温度を低下する潜在能力が残っている場合がありえる。したがって、第一バイパス弁の開度を不必要に増加してしまうことを防止できる。
【0020】
上述のヒートポンプシステムのうちのいずれかの更なる他の好ましい態様では、コントローラは、少なくとも吐出温度が吐出温度閾値に達したときに、第一バイパス弁の開度を増加させるよう構成される。
【0021】
この構成では、吐出温度が上昇することによって第一バイパス弁の開度が増加する。吐出温度が高いときには、第二バイパス弁はすでに大きく開いている可能性が高い。こうして、上記の吐出温度の上昇をトリガとして、吐出温度をより信頼性高く低下させることができる。また、第二バイパス弁が大きく開いている際、吐出温度が高くない場合もありえる。したがって、第一バイパス弁の開度が不必要に増加してしまうことを防止することができる。
【0022】
上述のヒートポンプシステムのうちのいずれか一に関する更なる他の好ましい態様では、コントローラは、吐出温度が第一目標吐出温度以下のときに過熱度が目標過熱度に近づき、吐出温度が第一目標吐出温度より高いときには吐出温度が第一目標吐出温度に近づくように、第一バイパス弁の開度の制御を行うよう構成される。
【0023】
この構成では、第一バイパス管は、吐出温度が低く保持されるときには、過熱度を調節するよう機能し、吐出温度が第一目標吐出温度へと上昇したときには、吐出温度を調節するよう機能する。こうして、ヒートポンプシステムの効率を向上するために第一バイパス管の過冷却システムとしての機能を可能な限り実現しながら、第一バイパス管を利用することによって吐出温度が過度に高くなることを防止することができる。また、第二バイパス弁が吐出温度を低下する潜在能力が残っている場合に、第一バイパス弁を開くこともできる。第二バイパス弁によって吐出温度を低下する全体的効果は、第一バイパス弁より大きい。このため、吐出温度を急速に低下できる。また、第二バイパス弁が大きく開いている際、吐出温度が高くない場合もありえる。したがって、第一バイパス弁の開度が不必要に増加してしまうことを防止できる。
【0024】
吐出温度が第一目標吐出温度より高いときに吐出温度が第一目標吐出温度に近づくよう、コントローラが第一バイパス弁の開度を制御するように構成される上述のヒートポンプシステムの更なる他の好ましい態様では、コントローラは、第二バイパス弁の開度が第一開度閾値に達したとき、第一目標吐出温度の値を小さくするよう構成される。
【0025】
この構成では、第二バイパス弁が開くほど、吐出温度に基づいて第一バイパス弁の開度がより大きくなるよう制御されることになるであろう。こうして、吐出温度をより信頼性高く低下させることができる。
【0026】
コントローラが、第二バイパス弁の開度が第一開度閾値に達したとき第一目標吐出温度の値を小さくするよう構成される上述のヒートポンプシステムの更なる他の好ましい態様では、コントローラは、第二バイパス弁の開度が、第一開度閾値以下である第二開度閾値へと低減したとき、第一目標吐出温度の値を大きくするよう構成される。
【0027】
この構成では、第一バイパス管が吐出温度を調節するよう機能する必要がもはやないときには、第一バイパス管は過熱度を調節する機能に戻る。こうして、ヒートポンプシステムの効率を向上するために、第一バイパス管の過冷却システムとしての機能を可能な限り実現することができる。
【0028】
上述のヒートポンプシステムのうちのいずれかの更なる他の好ましい態様では、制御部は、第二バイパス弁の開度が第一開度閾値より低いときに過熱度が目標過熱度に近づき、第二バイパス弁の開度が第一開度閾値より高いときに吐出温度が第一目標吐出温度に近づくように、第一バイパス弁の開度を制御するよう構成される。
【0029】
上記の構成では、第一バイパス管は、第二バイパス弁の開度が低く保持されるときには過熱度を調節するよう機能し、第二バイパス弁の開度が増加したときには吐出温度を調節するよう機能する。こうして、ヒートポンプシステムの効率を向上するために第一バイパス管の過冷却システムとしての機能を可能な限り実現しながら、第一バイパス管を利用することによって吐出温度が過度に高くなることを防止することができる。また、吐出温度を低下する第二バイパス弁の大きなポテンシャルがすでに用いられた後には、第一バイパス弁の開度が開かれる。吐出温度が高くとも、第二バイパス弁に吐出温度を低下する潜在能力が残っている場合がありえる。したがって、第一バイパス弁の開度を不必要に増加してしまうことを防止することができる。さらにまた、吐出温度が過度に上昇してしまう前に、第一バイパス弁の開度を急速に増加させることできる。こうして、吐出温度を速やかに低下させて、吐出温度が過度に高くなってしまうのを効果的に防止できる。
【0030】
第一目標吐出温度を用いる上述のヒートポンプシステムのうちのいずれかの他の好ましい態様では、コントローラは、吐出温度が第一目標吐出温度以下である第二目標吐出温度へと低下したとき、かつ/又は、第二バイパス弁の開度が第一開度閾値以下である第二開度閾値へと低減したときに、吐出温度が第一目標吐出温度に近づくよう第一バイパス弁の開度を制御する第一制御から、過熱度が目標過熱度に近づくよう第一バイパス弁の開度を制御する第二制御へと、切り換えるよう構成される。
【0031】
この構成では、第一バイパス管が吐出温度を調節するよう機能する必要がもはやないときには、第一バイパス管は過熱度を調節する機能に戻る。こうして、ヒートポンプシステムの効率を向上するために、第一バイパス管の過冷却システムとしての機能を可能な限り実現することができる。
【0032】
上述のヒートポンプシステムのいずれかの更なる他の好ましい態様では、ヒートポンプシステムはR32冷媒を使用するよう構成される。
【0033】
化学式CHで表されるHFC-32冷媒又はジフルオロメタン冷媒とも呼ばれているR32冷媒は、オゾン破壊係数がゼロであり地球温暖化係数が低いという特性がある。一方、R32冷媒を用いられる場合、吐出温度は比較的高くなる傾向がある。この点に関して、上述のヒートポンプシステムのいずれかのヒートポンプシステムは、吐出温度を低下させることができる。したがって、信頼性および安全性を確実に高めながら環境にやさしいヒートポンプシステムを達成することができる。
【0034】
上述のヒートポンプシステムのいずれかの更なる他の好ましい態様では、システムは、ヒートポンプシステムの状態を冷却動作モードと加熱動作モードとの間で切り換えるよう構成されるモード切換機構と、第二バイパス管の状態を第一接続モードと第二接続モードとの間で切り換えるよう構成される接続切換機構と、を更に備える。冷却動作モードにおいては、熱源側熱交換器が高圧冷媒管に接続され、かつガス冷媒管が低圧冷媒管に接続される。加熱動作モードにおいては、熱源側熱交換器が低圧冷媒管に接続され、かつガス冷媒管が高圧冷媒管に接続される。第一接続モードにおいては、第二バイパス管が冷媒熱交換器と利用側熱交換器との間の点で液冷媒管に接続される。第二接続モードにおいては、第二バイパス管が主膨張機構と冷媒熱交換器との間の点で液冷媒管に接続される。コントローラは、ヒートポンプシステムが冷却動作モードにあるときには第二バイパス管が第一接続モードとなり、ヒートポンプシステムが加熱動作モードであるときには第二バイパス管が第二接続モードとなるよう、接続切換機構を制御するように構成される。
【0035】
この構成では、利用側熱交換器が蒸発器として機能する冷却動作モードと、利用側熱交換器が凝縮器として機能する加熱動作モードと、の間でヒートポンプシステムの動作モードを切り換えることができる。また、動作モードに関係なく、第二バイパス管を冷媒熱交換器の下流側に常に接続することができ、温度が低い冷媒をバイパスさせることができる。こうして、冷却動作モードおよび加熱動作モードの両方において、吐出温度をより効果的に低下させることができる。
【0036】
本発明の第二の面では、上述のヒートポンプシステムのいずれかのヒートポンプシステムを制御するための方法を提供する。方法は、第一バイパス弁の開度を制御する工程と、第一目標吐出温度の値を小さくする工程と、を含む。第一バイパス弁の開度を制御する工程においては、吐出温度が第一目標吐出温度以下であるときには過熱度が目標過熱度に近づくよう、吐出温度が第一目標吐出温度より高いときには吐出温度が第一目標吐出温度に近づくよう、第一バイパス弁の開度が制御される。第一目標吐出温度の値を下げる工程においては、第二バイパス弁の開度が第一開度閾値に達したとき第一目標吐出温度の値が小さくされる。
【0037】
上記方法によって、第一バイパス管は、吐出温度が低く保持されるときには、過熱度を調節するよう機能し、吐出温度が上昇したときには、吐出温度を調節するよう機能する。こうして、可能な限りヒートポンプシステムの効率を向上させながら、吐出温度が過度に高くなることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、本発明の第一実施形態にかかるヒートポンプシステムの概略的構成図である。
図2図2は、図1に示すコントローラの機能的な構成を示すブロック図である。
図3図3は、コントローラによって実行される工程を示すフローチャートである。
図4図4は、本発明の第二実施形態にかかるヒートポンプシステムの概略的構成図である。
図5図5は、本発明の第三実施形態にかかるヒートポンプシステムの概略的構成図である。
図6図6は、図5に示すコントローラの機能的な構成を示すブロック図である。
図7図7は、コントローラによって実行される工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
<第一実施形態>
本発明にかかるヒートポンプシステムの好ましい実施形態(以下「第一実施形態」という)を、図面を参照して説明する。第一実施形態にかかるヒートポンプシステムは、例えばR32冷媒を用いて対象空間を冷却するための冷却システムである。
【0040】
-システムの回路構成-
図1は、第一実施形態にかかるヒートポンプシステムの概略的構成図である。
【0041】
図1に示す通り、第一実施形態にかかるヒートポンプシステム100は、利用側ユニット200およびヒートポンプ回路を形成している熱源側ユニット300を有する。例えば、利用側ユニット200は対象空間に配置され、熱源側ユニット300は対象空間の外部に配置される。利用側ユニット200および熱源側ユニット300は別体で製造され、その後、後述する配管を介して互いに接続することができる。任意選択的に、利用側ユニット200および熱源側ユニット300を単一ユニットとして一体化することもできる。複数の利用側ユニット200を、一の又は複数の熱源側ユニット300に接続することもできる。
【0042】
利用側ユニット200は、利用側膨張機構211と利用側HEX(熱交換器)212とを有する。利用側ユニット200の各要素をハウジング(図示せず)に収容できる。
【0043】
利用側膨張機構211は、熱源側ユニット300から延設される後述する液冷媒管322に配置されるとともに、液冷媒管内を流れる熱源側ユニット300からの冷媒を減圧して膨張させるよう構成される。利用側膨張機構211を電気膨張弁とすることができる。利用側HEX212は、液冷媒管322の端部に接続されるとともに、熱源側ユニット300から延設される後述するガス冷媒管323の端部に接続される。利用側HEX212は、液冷媒管322およびガス冷媒管323から内部を流れる冷媒と、通過する流体と、の間で熱交換が行われるよう構成される。液冷媒管322内の冷媒が利用側HEX212に向かって流れるときに、冷媒は利用側膨張機構211によって減圧されて膨張する。利用側HEX212を通過する流体を、空気、水又は他の冷媒とすることができる。利用側HEX212は、流体の流れを促進するために、ファン、ポンプ等を備えることができる。
【0044】
熱源側ユニット300は、冷媒圧縮機311と、熱源側HEX312と、主膨張機構313と、冷媒HEX(熱交換器)314と、液側閉止弁315と、ガス側閉止弁316と、アキュムレータ317とを有する。また、熱源側ユニット300は、高圧冷媒管321と、液冷媒管322と、ガス冷媒管323と、低圧冷媒管324と、第一バイパス管331と、第二バイパス管332と、を有する。熱源側ユニット300は、第一バイパス弁341と、第二バイパス弁342と、バイパスセンサ351と、吸入側センサ352と、吐出側センサ353と、コントローラ400と、を更に有する。熱源側ユニット300の各要素をハウジング(図示せず)に収容できる。
【0045】
冷媒圧縮機311は、吸入ポートおよび吐出ポート(図示せず)を有し、吸入ポートを介して冷媒を吸入し、吸入した冷媒を圧縮し、吐出ポートから圧縮した冷媒を吐出するよう構成される。低圧冷媒管324の端部は、吸入ポートに接続される。高圧冷媒管321の端部は、吐出ポートに接続される。
【0046】
熱源側HEX312は、高圧冷媒管321の他方の端部に接続され、また、液冷媒管322の他方の端部に接続される。熱源側HEX312は、高圧冷媒管321から液冷媒管322へと内部を流れる冷媒と、通過する流体と、の間で熱交換が行われるよう構成される。熱源側HEX312内を流れる冷媒は、冷媒圧縮機311によって圧縮された冷媒である。熱源側HEX312を通過する流体を、空気、水又は他の冷媒とすることができる。熱源側HEX312は、流体の流れを促進するために、ファン、ポンプ等を備えることができる。
【0047】
主膨張機構313は、液冷媒管322に配置され、液冷媒管322内を流れる熱源側HEX312からの冷媒を減圧して膨張させるよう構成される。主膨張機構313を電気膨張弁とできる。
【0048】
冷媒HEX314は、液冷媒管332内を流れる冷媒と第一バイパス管331内を流れる冷媒との間で熱交換を行わせるよう構成される。冷媒HEX314は、二つの流れ流路を有し、二つの流路の間では熱伝導が行われる。二つの流路は、それぞれ、液冷媒管322の一部および第一バイパス管331の一部を形成する。
【0049】
液側閉止弁315は、熱源側ユニット300内で、液冷媒管322の、冷媒圧縮機311から最も離れた部分に配置されており、熱源側ユニット300から液冷媒管322を介して外部へと流れる冷媒を遮断できる。液側閉止弁315を電気膨張弁とすることができる。
【0050】
ガス冷媒管323の他方の端部は、低圧冷媒管324の他方の端部に接続される。こうして、利用側ユニット200の利用側HEX212は、ガス冷媒管323と低圧冷媒管324とを介して、冷媒圧縮機311に接続される。
【0051】
ガス側閉止弁316は、熱源側ユニット300内で、ガス冷媒管323の、冷媒圧縮機311から最も離れた部分に配置されており、熱源側ユニット300内へとガス冷媒管323を介して流れる冷媒を遮断できる。ガス側閉止弁316を電気膨張弁とすることができる。
【0052】
アキュムレータ317は、低圧冷媒管324に配置されるとともに、ヒートポンプ回路における過剰な冷媒を蓄積するよう構成される。また、アキュムレータ317は、アキュムレータ317へと流入した冷媒からガス冷媒を分離して、分離したガス冷媒を冷媒圧縮機311へと送出するよう、構成される。
【0053】
第一バイパス管331の端部は、主膨張機構313と冷媒HEX314との間に点P1で液冷媒管に接続される。第一バイパス管331の他方の端部は、アキュムレータ317と利用側HEX212との間の点P2で、つまりアキュムレータ317とガス冷媒管323との間で、低圧冷媒管324に接続される。
【0054】
第一バイパス弁341(EVT)は、点P1と冷媒HEX314との間の位置で第一バイパス管331に配置され、第一バイパス管331内を流れる液冷媒管322からの冷媒を減圧して膨張させるよう構成される。このように、第一バイパス弁341は、冷媒HEX314へと液冷媒管322内を流れる冷媒より温度が低い、気液二相冷媒を供給するよう構成される。これにより、冷媒HEX314を通過するときに、液冷媒管322内を流れる冷媒は冷却される。また、第一バイパス弁341は、冷媒の流れを遮断することもできる。第一バイパス弁341を電気膨張弁とできる。
【0055】
第二バイパス管332の端部は、点P3で液冷媒管322に接続される。本実施形態において、点P3は、冷媒HEX314と液側閉止弁315との間に位置する。第二バイパス管332の他方の端部は、アキュムレータ317と冷媒圧縮機311との間の点P4で低圧冷媒管に接続される。
【0056】
第二バイパス弁342(EVL)は、第二バイパス管332に配置され、第二バイパス管332内を流れる液冷媒管322からの冷媒を減圧して膨張させるよう構成される。こうして、第二バイパス弁341は、ガス冷媒管323から低圧冷媒管324へと流れる冷媒より温度が低い気液二相冷媒を供給するよう構成される。温度が低いこの冷媒が、アキュムレータ317から流出する冷媒と合流することによって、冷媒圧縮機311によって吸入されることになる冷媒の温度を低下させることができる。また、第二バイパス弁342は、冷媒の流れを遮断することもできる。第二バイパス弁342を電気膨張弁とできる。
【0057】
バイパスセンサ351は、冷媒HEX314と点P2との間の点で第一バイパス管331に取り付けられる。バイパスセンサ351は、冷媒HEX314の下流側で、第一バイパス管331内を流れる冷媒の温度(以下「バイパス冷媒温度Tsh」と呼ぶ)を検出し、検出したバイパス冷媒温度Tshを示す信号をコントローラ400に出力するよう、構成される。バイパスセンサ351をサーミスタとすることができる。
【0058】
吸入側センサ352は、点P2の上流側上で低圧冷媒管324に取り付けられる。吸入側センサ352は、低圧冷媒管324内を流れる冷媒流れる圧力(以下「吸入側圧力Psu」と呼ぶ)を検出し、検出した吸入側圧力Psuを示す信号をコントローラ400に出力するよう、構成される。吸入側センサ352を静電容量式圧力センサとすることができる。
【0059】
低圧冷媒管内を流れる冷媒の飽和温度Tegは、使用している冷媒が分かっている場合、吸入側圧力Psuから特定できる。第一バイパス管331内を流れる冷媒の過熱度SHは、飽和温度Tegに対するバイパス冷媒温度Tshの差から特定できる。こうして、バイパスセンサ351および吸入側センサ352は、第一バイパス管331内を流れる冷媒の過熱度SHを示すパラメータとしてバイパス冷媒温度Tshおよび吸入側圧力Psuを検出するよう構成される過熱度検出器を形成している、と言うことができる。
【0060】
吐出側センサ353は、高圧冷媒管321に取り付けられる。吐出側センサ353は、高圧冷媒管321内を流れる冷媒の温度(以下「吐出温度Tdi」と呼ぶ)を検出し、検出吐出温度Tdiを示す信号をコントローラ400に出力するよう、構成される。
【0061】
コントローラ400は、図示しないが、CPU(中央処理装置)などの演算回路と、CPUによって用いられるRAM(ランダムアクセスメモリ)などの作業メモリと、CPUによって用いられる制御プログラムおよび情報を記憶するROM(読み出し専用メモリ)などの記録媒体と、を有する。コントローラ400は、ヒートポンプシステム100の動作を制御するために制御プログラムを実行するCPUによって情報処理および信号処理を行うよう構成される。特に、コントローラ400は、第一バイパス弁341および第二バイパス弁342の開度を制御するよう構成される。
【0062】
この構成により、冷媒圧縮機311を運転するときに、熱源側HEX312および利用側HEX212は、それぞれ、ヒートポンプ回路の凝縮器および蒸発器として機能する。これにより、対象空間を冷却することができる。さらに、第一バイパス弁341がある程度開いたとき、第一バイパス管331は、液冷媒管322内を流れる冷媒の温度を低下するための過冷却システムとして機能する。これにより、冷媒HEX314の冷却効率を向上させるために、冷媒熱交換によって液冷媒管内を流れる冷媒を冷却することができる。
【0063】
熱源側ユニット300と利用側ユニット200との間の配管長が比較的長い場合、この構成はより効果的となる。管長が長い場合、液冷媒管322における冷媒の圧力損失は増加する傾向がある。この点に関して、第一バイパス弁341を開くことによって、冷媒の過冷却度を増加することができる。結果として、液冷媒管322の冷媒循環量が減少するが、利用側ユニット200における冷却の性能を維持することができる。
【0064】
さらに、第二バイパス弁342がある程度開いたときに、第二バイパス管332は、低圧冷媒管324内を流れる冷媒の温度を低下するためのインジェクションシステムとして機能する。これにより、吐出温度Tdiを低下させて、ヒートポンプシステム100の信頼性および安全性を向上できる。この構成は、R32冷媒が用いられる場合に、より効果的である。
【0065】
第一バイパス弁341および第二バイパス弁342の開度は、バイパスセンサ351、吸入側センサ352、および吐出側センサ353(以下では必要に応じて「各センサ」と呼ぶ)からの信号に基づいて、コントローラ400によって制御される。
【0066】
-コントローラの機能的構成-
図2は、コントローラ400の機能的構成を示しているブロック図である。
【0067】
図2に示す通り、コントローラ400は、記憶部410と、情報入力部420と、運転部430と、情報出力部440と、弁制御部450とを有する。
【0068】
記憶部410は、弁制御部450によって読取り可能な形式で情報を記憶する。記憶する情報には、実験等に基づいて予め準備された飽和温度情報および弁制御情報が含まれる。
【0069】
飽和温度情報は、ヒートポンプシステム100において使用される冷媒の圧力と飽和温度と間の関係を示す。飽和温度情報から、冷媒の吸入側圧力Psuを検出したときに、冷媒の飽和温度Tegを特定することができる。
【0070】
弁制御情報は、目標過熱度SH_tgtの値を決定するための所定の基準を示す。目標過熱度SH_tgtは、例えば5K(ケルビン)である。目標過熱度SH_tgtを、冷媒HEX314の下流側で第一バイパス管331内を流れる冷媒を気体状態に保持するが可能な限り低い温度となるよう、決定することができよう。これにより、過熱度が過剰に高くなってしまうことによる吐出温度への悪影響を回避しながら、液冷媒管322内に過冷却された液冷媒を生成するよう、冷媒HEX314の全潜在能力を引き出すことができる。
【0071】
また、弁制御情報は、第一目標吐出温度Tdi_tgt1の第一温度値T1および第三温度値T3を示す。目標過熱度SH_tgtおよび第一目標吐出温度Tdi_tgt1は、第一バイパス弁341の開度を制御するために弁制御部450によって用いられる基準値である。弁制御情報は、第二目標吐出温度Tdi_tgt2の第二温度値T2を更に示す。第二目標吐出温度Tdi_tgt2は、第二バイパス弁342の開度を制御する弁制御部450によって用いられる基準値である。
【0072】
ここで、第一温度値T1は、第二温度値T2および第三温度値T3のうちのいずれか一方より大きい。好ましくは、第二温度値T2は第三温度値T3より小さい。R32冷媒を用いる場合、例えば、第一温度T1は115(℃)であり、第二温度T2は95(℃)であり、第三温度T3は90(℃)である。なお、第一温度値T1、第二温度値T2および第三温度値T3のうちの一つ以上を、状況(例えばヒートポンプシステム100の動作状態)に応じて可変値とできる。この場合、弁制御情報は、第一温度値T1、第二温度値T2および/又は第三温度値T3を決定するための所定の基準を示す。これらの温度値T1,T2,T3を、冷媒圧縮機311において使用される油および/又はモータコイル絶縁材の劣化を防止するよう、決定できる。
【0073】
さらに、弁制御情報は、開度閾値ODthを示す。開度閾値ODthは、第一温度値T1と第三温度値T3との間で切換を行うために弁制御部450によって用いられる基準値である。
【0074】
情報入力部420は、ヒートポンプシステム100の動作を制御するために必要な情報を入力するよう構成される。入力される情報には、センサから出力される信号が含まれる。情報入力部420は、弁制御部450へと入力される信号(以下では必要に応じて「検知結果」と呼ぶ)によって示されるバイパス冷媒温度Tsh、吸入側圧力Psuおよび吐出温度Tdiを出力するよう、構成される。情報入力部420は、定期的に又は検知結果が変化したときに、検知結果を取得して出力する。情報入力部420は、センサと通信するための有線/無線通信インタフェース(信号線は図示せず)とできる。
【0075】
運転部430は、冷媒圧縮機311、利用側膨張機構211、ファン等を運転することによって、ヒートポンプ動作を実行するためにヒートポンプシステム100を動作させるよう、構成される。さらに、運転部430は、弁制御部450からコマンドに従って、第一バイパス弁341および第二バイパス弁342を動作するよう構成される。運転部430を上記の機構と通信するための有線/無線通信インタフェースとすることができ、運転部430は上記の機構のための電源ユニットを有することができる。
【0076】
情報出力部440は、弁制御部450からのコマンドに従ってヒートポンプシステム100のユーザに情報を出力するよう構成される。情報出力部440を、表示装置、電灯、拡声器、情報出力デバイス等に情報を送信するための有線/無線通信インタフェース等とすることができる。
【0077】
弁制御部450は、少なくとも第二バイパス弁332の開度が開度閾値ODthに達したときに、第一バイパス弁341の開度を増加させるよう、構成される。弁制御部450は、第一弁制御部451と、第二弁制御部452と、モード制御部453と、を有する。
【0078】
第一弁制御部451は、吐出温度Tdiが第一目標吐出温度Tdi_tgt1以下であるときには、過熱度SHが目標過熱度SH_tgtに近づくよう、第一バイパス弁341の開度を制御するように構成される(第二制御)。また、第一弁制御部451は、吐出温度Tdiが第一目標吐出温度Tdi_tgt1より高いときには、吐出温度Tdiが第一目標吐出温度Tdi_tgt1に近づくよう、第一バイパス弁341の開度を制御するように構成される(第一制御)。以下で説明する通り、第一目標吐出温度Tdi_tgt1の温度値は、モード制御部453によって決定される。第一弁制御部451は、コマンドを運転部430に出力することによって、第一バイパス弁341の開度を制御する。
【0079】
第二弁制御部452は、吐出温度Tdiが第二目標吐出温度Tdi_tgt2以下であるときには第二バイパス弁342は閉じるよう、第二バイパス弁342の開度を制御するように構成される。この場合、第二バイパス弁342が最小開度であるが完全には閉じていない状態を含めることができる。また、第二弁制御部452は、吐出温度Tdiが第二目標吐出温度Tdi_tgt2より高いときには、吐出温度Tdiが第二目標吐出温度Tdi_tgt2に近づくよう、第二バイパス弁342の開度を制御するように構成される。第二目標吐出温度Tdi_tgt2の温度値は、第二温度値T2に固定される。なお、第二温度値T2を、モード制御部453によって変更することもできる。第二弁制御部452は、コマンドを運転部430に出力することによって、第二バイパス弁342の開度を制御する。
【0080】
モード制御部453は、第二バイパス弁342の開度が開度閾値ODthに達したとき、第一目標吐出温度Tdi_tgt1の値を下げるよう構成される。より詳細には、モード制御部453は、第二バイパス弁342の開度が開度閾値ODthを超えたとき、第一目標吐出温度Tdi_tgt1を第一温度値T1から第三温度値T3へと切り換えるよう構成される。
【0081】
上記の構成では、第二バイパス弁342が大きく開いているときには、コントローラ400は、吐出温度Tdiに基づいて第一バイパス弁341を制御する条件を緩和する。こうして、吐出温度が過度に高くなるという可能性があるときには、吐出温度Tdiを低下するよう、コントローラ400は、通常は過熱度SHに基づいて制御される第一バイパス弁341の開度を、吐出温度Tdiに基づく制御が行われやすくなるようにすることができる。
【0082】
-コントローラによる動作-
図3は、コントローラ450によって実行されるプロセスを示すフローチャートである。
【0083】
ステップS1100において、モード制御部453は、まず第一温度値T1を第一目標吐出温度Tdi_tgt1に設定し、第二温度値T2を第二目標吐出温度Tdi_tgt2に設定する。上述の通り、第一温度値T1は第二温度値T2より高い。好ましくは、第一温度値T1は、第二バイパス弁342の開度を増加することによって吐出温度Tdiが低下する可能性がある場合であっても、吐出温度Tdiが到達すべきでない値である。
【0084】
ステップS1200において、弁制御部450は、吐出温度Tdiと過熱度SHとを取得する。より具体的には、弁制御部450は、バイパス冷媒温度Tsh、吸入側圧力Psuおよび吐出温度Tdiをバイパスセンサ351、吸入側センサ352および吐出側センサ353から情報入力部420を介して取得する。その後、弁制御部450は、飽和温度情報を参照することによって、吸入側圧力Psuから飽和温度Tegを特定する。弁制御部450は、特定された飽和温度Tegをバイパス冷媒温度Tshから差し引くことによって取得される値を、過熱度SHとして、特定する。弁制御部450は、検知結果のそれぞれの移動平均を使用することができる。
【0085】
ステップS1300において、第二弁制御部452は、取得した吐出温度Tdiが第二目標吐出温度Tdi_tgt2(すなわち第二温度値T2)より高いか否かを判定する。吐出温度Tdiが第二目標吐出温度Tdi_tgt2以下である場合(S1300:No)、第二弁制御部452はステップS1400へ移行する。吐出温度Tdiが第二目標吐出温度Tdi_tgt2より高い場合(S1300:Yes)、第二弁制御部452はステップS1500へ移行する。
【0086】
ステップS1400において、第二弁制御部452は第二バイパス弁342を閉じるよう制御する。第二バイパス弁342がすでに閉じている場合、第二弁制御部452はこの閉じた状態を維持する。第二バイパス弁342が開いている場合、第二弁制御部452は第二バイパス弁342を閉じる。
【0087】
ステップS1500において、第二弁制御部452は、第二バイパス弁342を開くよう制御すると同時に、上述した通り、吐出温度Tdiに基づいて第二バイパス弁342の開度を制御する。より具体的には、第二弁制御部452は、吐出温度Tdiが可能な限り第二目標吐出温度Tdi_tgt2(すなわち第二温度値T2)へと低下する(近づく)よう、第二バイパス弁342を制御する。
【0088】
第二バイパス弁342が大きく開いている場合には、吐出温度Tdiを低下させることはもはや困難である。
【0089】
このため、ステップS1600において、モード制御部453は、第二バイパス弁342の開度が開度閾値ODthより大きいか否かを判定する。第二バイパス弁342の開度が開度閾値ODth以下である場合(S1600:No)、モード制御部453はステップS1700へ移行する。第二バイパス弁342の開度が開度閾値ODthより大きい場合(S1600:Yes)、モード制御部453はステップS1800へ移行する。
【0090】
ステップS1700において、モード制御部453は、第一目標吐出温度Tdi_tgt1を初期値(すなわち第一温度値T1)として保持する。先のプロセスサイクルで後述するステップS1800において第三温度値T3が設定されていた場合には、モード制御部453は、第一温度値T1を第一目標吐出温度Tdi_tgt.1に設定する。
【0091】
ステップS1800において、モード制御部453は、第三温度値T3を第一目標吐出温度Tdi_tgt.1に設定する。こうして、第二バイパス弁342の開度が開度閾値ODthを超えたときには第一目標吐出温度Tdi_tgt1の値が第一温度値T1から第三温度値T3へと下げられる。先のプロセスサイクルですでに第三温度値T3が設定されていた場合には、モード制御部453は、第一目標吐出温度Tdi_tgt.1をそのまま維持する。
【0092】
第一目標吐出温度Tdi_tgt.1が第三温度値T3である場合に第二バイパス弁332の開度が開度閾値ODthに低減されたとき、ステップS1700において、モード制御部453は、第一目標吐出温度Tdi_tgt.1の値を第三温度値T3から第一温度値T1へと上げる。なお、第一目標吐出温度Tdi_tgt.1が第一温度値T1であるときに用いられる開度閾値ODth(第一開度閾値)と、第一目標吐出温度Tdi_tgt.1が第三温度値T3であるときに用いられる開度閾値ODth(第二開度閾値)と、を異なる値とすることもできる。この場合、第一目標吐出温度Tdi_tgt.1が短時間に頻繁に変更されるのを防止するために、第二開度閾値は第一開度閾値より低いことが好ましい。
【0093】
ステップS1900において、第一弁制御部451は、吐出温度Tdiが第一目標吐出温度Tdi_tgt1より高いか否かを判定する。第一目標吐出温度Tdi_tgt1は、上述したステップS1600の判断結果によって、第一温度値T1又は第三温度値T3である。吐出温度Tdiが第一目標吐出温度Tdi_tgt1以下である場合(S1900:No)、第一弁制御部451はステップS2000へ移行する。吐出温度Tdiが第一目標吐出温度Tdi_tgt1より高い場合(S1900:Yes)、第一弁制御部451はステップS2100へ移行する。
【0094】
ステップS2000において、第一弁制御部451は、上述した通り、過熱度SHに基づいて第一バイパス弁341の開度を制御する。より具体的には、第一弁制御部451は、弁制御情報に基づいて目標過熱度SH_tgtを決定し、過熱度SHが可能な限り目標過熱度SH_tgtに近づくよう第一バイパス弁341の開度を制御する。
【0095】
ステップS2100において、第一弁制御部451は、上述した通り、吐出温度Tdiに基づいて第一バイパス弁341の開度を制御する。より具体的には、第一弁制御部451は、吐出温度Tdiが可能な限り第一目標吐出温度Tdi_tgt1(すなわち第一温度値T1又は第三温度値T3)へと低下する(近づく)よう、第一バイパス弁341を制御する。
【0096】
したがって、第二バイパス弁342が開度閾値ODthを超えて大きく開くときに、第一目標吐出温度Tdi_tgt.1は低下し、第二弁制御部452は、よりいっそう吐出温度Tdiを低下するよう第一バイパス弁341の開度を制御することになる。言い換えれば、第一バイパス弁341の動作を、主に過冷却システムを達成するための動作から主に吐出温度を低下させるための他の動作へと、切り換える。第一バイパス弁341の開度の増加の結果、液冷媒管322内を流れる冷媒がよりいっそう過冷却されることになり、これにより、第二バイパス管332による冷却効果が高まる。
【0097】
また、吐出温度が過剰に高くなっている可能性があることをユーザに通知するよう、弁制御部450は、ステップS2100において、コマンドを情報出力部440に出力することによって、情報出力部440を通じて画像、光、音、通信信号等によって警告情報を出力することもできる。弁制御部450は、他の条件に基づいて、例えば吐出温度Tdiが所定の閾値に達したときに又は第二バイパス弁342の開度が所定の開度閾値を超えたときに、警告情報を出力することもできる。
【0098】
また、弁制御部450は、第一目標吐出温度Tdi_tgt1より高い所定の閾値よりも吐出温度Tdiが高いとき、冷媒圧縮機311の運転を停止するコマンドを運転部430に出力することもできる。
【0099】
ステップS2200において、コントローラ400は、運転の終了が示されたか否かを判断する。その指定は、ユーザの操作、他のデバイス、又はコントローラ400自体によって行われる。運転の終了が指定されていない場合(S2200:No)、コントローラ400はステップS1200に戻る。運転の終了が指定された場合(S2200:Yes)、コントローラ400はその動作を終了する。
【0100】
コントローラ400の上記の動作によって、インジェクション機能が不十分である場合には、ヒートポンプシステム100は、第二バイパス管332のインジェクション機能を支援するよう過冷却システムに配置される第一バイパス管331を速やかに利用できる。
【0101】
なお、上述した、ステップS1300~S1500と、ステップS1600~S1800と、ステップS1900~S2100と、の実行順序を変更できることを記載しておく。また、少なくともステップS1300およびS1900の前の他のタイミングで、ステップS1200における吐出温度Tdiを取得するステップを実行することもでき、少なくともステップS2000の前の他のタイミングで、ステップS1200における過熱度SHを取得するステップを実行することもできる。
【0102】
-利点のある効果-
第一実施形態では、本来は液冷媒管322内を流れる冷媒の過冷却のために配置される第一バイパス管331および第一バイパス弁341を利用することによって、利用側HEX212をバイパスする冷媒を流す能力を増加させることができる。これにより、吐出温度Tdiを効果的に低下させ、過度に高くなることを防止することができる。また、この効果は、第二バイパス管332の厚みおよび/又は数を増加することなく、達成できる。したがって、可能な限り生産コストの上昇および/又はシステムの寸法の増大を防止しながら、ヒートポンプシステム100の効率、信頼性および安全性を向上することができる。
【0103】
ヒートポンプ回路が比較的長いときに、かつ/又は、R32冷媒のような特定の冷媒が用いられる場合、吐出温度Tdiが高くなる傾向がある。このため、長い回路を有するこのようなヒートポンプシステムに、上記の構成は適している。言い換えれば、配管状況に関係なく、吐出温度を許容範囲内に制御することができる。
【0104】
第二バイパス管332の流れ容量を向上するために第二バイパス管332の厚み又は数を単に増加する場合、生産コスト又は熱源側ユニット300の寸法が増加することになる。したがって、可能な限り生産コストの上昇および/又はシステムの寸法の増大を防止しながら効率、信頼性および安全性が高いヒートポンプシステム100を提供することができる。
【0105】
<第一実施形態の変形例>
上記実施形態においては、第一目標吐出温度Tdi_tgt1の値を切り換えるトリガは、第二バイパス弁342の開度が開度閾値ODthを超えることであった。しかしながら、トリガを、吐出温度Tdiが吐出温度閾値に達したこととすることもできる。このように、コントローラ400を、第二バイパス弁342の開度が開度閾値ODthに達したとき、かつ/又は、吐出温度Tdiが吐出温度閾値に達したときに、第一バイパス弁341の開度を増加するよう構成できる。また、これにより、吐出温度Tdiを効果的に低下させ、過度に高くなることを防止することができる。
【0106】
さらに、上記実施形態においては、高圧冷媒管321は熱源側HEX312に接続され、低圧冷媒管324はガス冷媒管323を介して利用側HEX212に接続されていた。しかしながら、ガス冷媒管323を介して高圧冷媒管321を利用側HEX212に接続し、低圧冷媒管324を熱源側HEX312に接続することもできる。この構成の場合、熱源側HEX312および利用側HEX212はヒートポンプ回路の蒸発器および凝縮器としてそれぞれ機能する。第二バイパス管332の接続ポイントP3は、冷媒HEX314の下流側に位置することが好ましい。
【0107】
<第二実施形態>
本発明にかかるヒートポンプシステムの他の好ましい実施形態(以下「第二実施形態」と呼ぶ)を、図面を参照して、説明する。以下に説明する特徴を除いて、第二実施形態にかかるヒートポンプシステムは、上述の第一実施形態にかかるヒートポンプシステム100とほぼ同じ特徴を有する。
【0108】
図4は、第二実施形態にかかるヒートポンプシステムの概略的構成図である。
【0109】
図4に示す通り、本実施形態にかかるヒートポンプシステム100aの熱源側ユニット300aにおいては、第一バイパス管331aは、低圧冷媒管324でなく、冷媒圧縮機311のインジェクションポート(点P5)に接続される。インジェクションポートは、冷媒圧縮機311の中間圧力室と連通する。
【0110】
第一実施形態のバイパスセンサ351と同一であるバイパスセンサ(以下「第一バイパスセンサ351」と呼ぶ)と、他のバイパスセンサ(以下「第二バイパスセンサ351a」と呼ぶ)と、が第一バイパス管331aに取り付けられる。第一バイパスセンサ351および第二バイパスセンサ351aのセンサタイプを二つのパターンとできる。
【0111】
第一パターンにおいては、第一バイパスセンサ351は、冷媒HEX314の下流側の第一バイパス管331a内を流れる冷媒の温度を検出するよう構成され、第二バイパスセンサ351aは、第一バイパス弁341と冷媒HEX314との間で第一バイパス管331a内を流れる冷媒の温度を検出するよう構成される。
【0112】
第二パターンにおいては、第一バイパスセンサ351は、第一バイパス弁341の下流側の第一バイパス管331a内を流れる冷媒の温度を検出するよう構成され、第二バイパスセンサ351aは、第一バイパス弁341の下流側の第一バイパス管331a内を流れる冷媒の圧力を検出するよう構成される。したがって、第二パターンにおいては、第二バイパスセンサ351aを、第一バイパス弁341と冷媒HEX314との間に配置する必要はない。
【0113】
第一バイパス弁341から冷媒HEX314へと第一バイパス管331a内を流れる冷媒は、気液二相状態にある。こうして、第一パターンの第二バイパスセンサ351aは、第一バイパス管331a内を流れる冷媒の飽和温度Tsを検出することができる。これにより、第一パターンの場合には、コントローラ400は、第二バイパスセンサ351aによって検出される温度を第一バイパスセンサ351によって検出される温度から単に差し引くことによって、第一バイパス管331a内を流れる冷媒の過熱度SHを容易に得ることができる。
【0114】
第二パターンの場合には、第二バイパスセンサ351aによって検出される圧力を、実施形態の吸入側圧力Psuと同様に利用できる。こうして、第一バイパス管331a内を流れる冷媒の過熱度SHを、いずれにせよ第一実施形態と同様に、取得できる。
【0115】
冷媒HEX314において使用する冷媒が冷媒圧縮機311のインジェクションポートにインジェクションされるので、冷媒圧縮機311の効率を向上できる。また、吐出温度Tdiに基づいて第一バイパス弁341を制御することによって、吐出温度Tdiを効率的に低下させることができる。
【0116】
<第三実施形態>
本発明にかかるヒートポンプシステムの更なる他の好ましい実施形態(以下「第三実施形態」という)を、図面を参照して説明する。以下に説明する特徴を除いて、第三実施形態にかかるヒートポンプシステムは、上述の第一実施形態にかかるヒートポンプシステム100とほぼ同じ特徴を有する。
【0117】
図5は、第三実施形態にかかるヒートポンプシステムの概略的構成図である。
【0118】
図5に示す通り、本実施形態にかかるヒートポンプシステム100bの熱源側ユニット300bは、更に、モード切換機構325bと接続切換機構333bとを備える。
【0119】
モード切換機構325bは、ヒートポンプシステム100bの状態を冷却動作モードと加熱動作モードとの間で切り換えるよう構成される。冷却動作モードにおいて、熱源側HEX312は高圧冷媒管321に接続され、ガス冷媒管323は低圧冷媒管324に接続される。この接続状態は、図1の第一実施形態の構成に対応しており、図5のモード切換機構325bにおいては破線で示している。加熱動作モードにおいて、熱源側HEXは低圧冷媒管324に接続され、ガス冷媒管323は高圧冷媒管321に接続される。この接続状態は、図5のモード切換機構325bの実線で示している。モード切換機構325bを、四方向選択弁とでき、又は、分岐管と選択バルブとの組合せとできる。
【0120】
接続切換機構333bは、第二バイパス管の状態を第一接続モードと第二接続モードとの間で切り換えるよう構成される。第一接続モードにおいては、第一実施形態と同じく、第二バイパス管332は点P3で液冷媒管322に接続される。第二接続モードにおいては、第二バイパス管332は、主膨張機構313と冷媒HEX314との間に点P6で液冷媒管322に接続される。第一接続モードの接続状態を、図5の接続切換機構333bにおける破線で示し、第二接続モードの接続状態を、図5の接続切換機構333bにおける実線で示す。接続切換機構333bを、第二バイパス管332から分岐される二つの接続管と、二つの接続管にそれぞれ配置される二つの閉止弁(例えば電磁弁)と、で構成できる。
【0121】
また、熱源側ユニット300bは、第一実施形態のコントローラ400の機能に追加した機能を有するコントローラ400bを有する。
【0122】
図6は、コントローラ400bの機能的構成を示しているブロック図である。
【0123】
図6に示す通り、コントローラ400bは、第一実施形態の運転部430の機能に追加した機能を有する運転部430bを有する。また、コントローラ400bの弁制御部450bは、接続制御部454bを更に有する。
【0124】
運転部430bは、ヒートポンプシステム100bの状態を上述した冷却動作モードと加熱動作モードとの間で切り換えるようモード切換機構325bを動作させるように更に構成される。弁制御部450bからのコマンド、運転部430b自体によって行われた判定、又はユーザの操作に応じて、上記の状態を切り換えるよう、運転部430bは構成される。また、運転部430bは、弁制御部450bからのコマンドに応じて接続切換機構333bを動作させるよう構成される。
【0125】
接続制御部454bは、運転部430bを介して接続切換機構325bを制御するよう構成される。ヒートポンプシステム100bが冷却動作モードにあるときには第二バイパス管332が第一接続モードとなるよう、そして、ヒートポンプシステム100bが加熱動作モードであるときには第二バイパス管332が第二接続モードとなるよう、接続制御部454bは、接続切換機構325bを制御するように構成される。
【0126】
図7は、コントローラ400bによって実行されるプロセスを示すフローチャートである。
【0127】
まず、コントローラ400bは、図3に示す第一実施形態のステップS1100を実行する。次に、ステップS1110aおよびステップS1120bにおいて、接続制御部454bは、ヒートポンプシステム100bが冷却動作モード又は加熱動作モードのいずれで動作すべきかを判定する。ヒートポンプシステム100bが冷却動作モードで動作すべき場合(S1100b:Yes)、接続制御部454bはS1130bへ移行する。ヒートポンプシステム100bが加熱動作モードで動作すべき場合(S1120b:Yes)、接続制御部454bはS1140bへ移行する。判定ステップS1110aおよびステップS1120bを繰り返すことができる(S1110a:No、S1120b:No)。
【0128】
ステップS1130bにおいて、接続制御部454bは、第二バイパス管332が点P3に接続されるよう、接続切換機構333bを制御する。次に、コントローラ400bは、図3に示す第一実施形態のステップS1200~S2100を実行する。
【0129】
ステップS2110bにおいて、コントローラ400bは、動作の終了が示されたか否かを判断する。動作の終了が指定されていない場合(S2110b:No)、コントローラ400bはステップS1130bに戻る。動作の終了が指定された場合(S2110b:Yes)、コントローラ400bはその動作を終了する。動作の終了には、冷却動作モードと加熱動作モードとの間に動作モードの変更を含めることができる。
【0130】
一方、ステップS1140bにおいて、接続制御部454bは、第二バイパス管332が点P6に接続されるよう、接続切換機構333bを制御する。次に、コントローラ400bは、図3に示す第一実施形態のステップS1200~S2100を実行する。なお、ステップS2000は、第一弁制御部451が第一バイパス弁341を閉じるステップS2000bと置き換えられる。この場合、第一バイパス弁341が最小開度であるが完全には閉じていない状態を含めることができる。
【0131】
ステップS2120bにおいて、コントローラ400bは、動作の終了が示されたか否かを判断する。動作の終了が指定されていない場合(S2120b:No)、コントローラ400bはステップS1140bに戻る。動作の終了が指定された場合(S2120b:Yes)、コントローラ400bはその動作を終了する。
【0132】
上記の構成により、第二バイパス管332を冷媒HEX314の下流側に常に接続しながら、ヒートポンプシステム100bの動作モードを冷却動作モードと加熱動作モードとの間で切り換えることができる。液冷媒管322内を流れる冷媒の温度は、冷媒HEX314によって低下する。このように、第二バイパス管332内を流れる冷媒の温度を低下させることができ、冷却動作モードおよび加熱動作モードの両方において吐出温度Tdiをより効果的に低下させることができる。
【0133】
<他の変形例>
本発明の説明のためにいくつかの実施例が選択されたに過ぎず、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の変更、変形ができることは、本開示から当業者には明らかであろう。
【0134】
第二バイパス弁332の開度が開度閾値ODthに達したときには、図3および図7に示すステップS1700~S2100を実行することなく、第一バイパス弁341の開度を単に増加させるよう、コントローラ400,400bを構成することもできる。任意選択的に又は追加的に、吐出温度Tdiが吐出温度閾値に達したときには、図3および図7に示すステップS1700~S2100を実行することなく、第一バイパス弁341の開度を単に増加させるよう、コントローラ400,400bを構成することもできる。
【0135】
熱源側ユニット300および利用側ユニット200の要素の構成は、上述の構成に限定されない。例えば、熱源側HEX312を、熱源側ユニット300のハウジングの外部に配置することもできる。また、第一実施形態および第二実施形態のヒートポンプシステム100,100aを、熱源側HEX312が蒸発器として機能し、利用側HEX212が凝縮器として機能するよう、構成することもできる。この場合、加熱動作モードにある第三実施形態のヒートポンプシステム100bの管接続を適用できる。これにより、冷媒によって熱い温度を利用側ユニット200に供給することができる。
【0136】
第一実施形態~第三実施形態のうちの二つ以上の構成を組み合わせることもできる。例えば、第三実施形態のモード切換機構325bを、第一実施形態又は第二実施形態に適用することもできる。第二実施形態の第一バイパス管331aを第三実施形態に適用することもできる。
【0137】
また、特に記載しない限り、必要に応じておよび/又は所望により、種々のコンポーネントの大きさ、形状、配置、向きを、変更によりそれらの意図する機能を損なわない限り、変更できる。特に記載しない限り、直接的に接続された、又は互いが接触しているよう示した二つのコンポーネントは、変更によりそれらの意図する機能を損なわない限り、それらの間に中間構造を有することができる。特に記載しない限り、一つのエレメントの機能は二つによって達成することができ、またその逆の場合も同様である。一の態様の構造および機能を他の態様に適用することもできる。すべての利点が必ずしも同時に特定の態様にもたらされる必要はない。したがって、本発明にかかる実施形態の上記説明は例示のためのみのものである。
【符号の説明】
【0138】
100,100a,100b ヒートポンプシステム
200 利用側ユニット
211 利用側膨張機構
212 利用側HEX
300,300a 熱源側ユニット
311 冷媒圧縮機
312 熱源側HEX
313 主膨張機構
314 冷媒HEX
315 液側閉止弁
316 ガス側閉止弁
317 アキュムレータ
321 高圧冷媒管
322 液冷媒管
323 ガス冷媒管
324 低圧冷媒管
325b モード切換機構
331,331a 第一バイパス管
332 第二バイパス管
333b 接続切換機構
341 第一バイパス弁
342 第二バイパス弁
351 バイパスセンサ(第一バイパスセンサ)
351a 第二バイパスセンサ
352 吸入側センサ
353 吐出側センサ
400,400b コントローラ
410 記憶部
420 情報入力部
430,430b 運転部
440 情報出力部
450,450b 弁制御部
451 第一弁制御部
452 第二弁制御部
453 モード制御部
454b 接続制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7